JPWO2018042480A1 - 固体酸化物形燃料電池スタック及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本明細書の開示は、一体焼結型SOFCスタック及びその製造方法を提供する。本明細書は、燃料極2と、固体電解質6と、空気極4とを有する単セルCをインターコネクタを介して備える固体酸化物形燃料電池スタックであって、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む非多孔質層を含む拘束層を備えるスタックを提供する。

Description

本明細書は、固体酸化物形燃料電池スタック及びその製造方法に関する。
積層型固体酸化物形燃料電池(以下、単に、SOFCともいう。)に用いるスタック構造体として、燃料極層と、固体電解質層と、空気極層とを備えるセルの2以上がセパレータ層を介して積層されたスタック構造体が開示されている(特許文献1)。
異なる材料を積層して一体的に焼成を行ってセルを製造するため、焼成による収縮が発生する。かかる収縮は、セル全体で均一には発生しないため、セルの面方向における変形を引き起こす。また、ガス流路において意図しない変形や歪みを生じさせる場合もある。さらに、発現要素において、クラックを発生させたり、セルの割れを生じさせる場合もある。
多層セラミックス基板(回路基板)の製造時には、焼成工程における面方向の収縮を抑制するために、いわゆる無収縮工法が採用されている(特許文献2)。この工法によれば、拘束層を一体性よく基板に積層して、拘束層によって有効に収縮を抑制することができることが記載されている。
国際公開第WO2009/119771号 特開2007−335871号公報
しかしながら、一体焼結型SOFCスタックにおいては、各層におけるガス流通性や遮断性などの各種機能を十分に確保する必要がある。また、スタックのコンパクト化を指向するとき、各層の薄膜化によって、一層収縮を抑制する必要が生じる。さらに、本発明者らによれば、ガス流通性を考慮すると、面方向(x−y平面)だけでなく、積層方向における変形も無視することができない。
さらに、一般に、拘束層は、ガラスなどを含んで、セラミックス材料の焼結時には焼結しないあるいはし難いように構成される。しかしながら、かかる焼結特性の拘束層を備えると焼結温度に制限が生じてしまい、材料の焼結挙動の制御が返って困難になる場合もあった。この結果、良好な焼結一体型SOFCスタックを製造しがたいという問題があった。また、別に焼結したセラミックスの単板を拘束として用いる場合もあるが、スタックの製造プロセスが複雑化するという問題があった。
本明細書は、焼成挙動の調整能に優れる一体焼結型SOFCスタック及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、拘束層として、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む非多孔質層を用いることで、スタック製造時においてはスタックの焼成挙動を制御し、その後においても、そのままスタックに備えられて、スタックの起動時の加熱挙動を制御するとともにスタックの機械的強度や集電性の向上に寄与できることを見出した。本明細書によれば、これらの知見等に基づき以下の手段が提供される。
(1) 燃料極と、固体電解質と、空気極とを有する単セルをインターコネクタを介して備える固体酸化物形燃料電池スタックであって、
導電性セラミックス材料と前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む非多孔質層を含む拘束層を備える、スタック。
(2) 前記拘束層は、さらに、前記導電性セラミックス材料と前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む多孔質層を含む、(1)に記載のスタック。
(3) 前記拘束層は、2以上の前記非多孔質層と2以上の前記多孔質層との積層構造を有する、(2)に記載のスタック。
(4) 前記非多孔質層と前記多孔質層とが交互に積層されている、(3)に記載のスタック。
(5) 前記拘束層を、前記固体酸化物形燃料電池スタックの少なくとも一方の終端部に備える、(1)〜(4)のいずれかに記載のスタック。
(6) 前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料は、酸素イオン伝導性材料である、(1)〜(5)のいずれかに記載のスタック。
(7) 少なくとも2つの前記単セルは、前記インターコネクタを介して焼結により一体化されている、(1)〜(6)のいずれかに記載のスタック。
(8) 前記単セルの厚みは、150μm以上1000μm以下である、(1)〜(7)のいずれかに記載のスタック。
(9) 前記燃料極の厚みは15μm以上500μm以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載のスタック。
(10) 燃料極、固体電解質及び空気極を備える単セルを複数備える固体酸化物形燃料電池スタックの製造方法であって、
少なくとも第1の単セルと第2の単セルとをインターコネクタを介して積層されたスタックを得るのにあたって、
前記第1の単セルの前記燃料極の材料を含む燃料極材料層と、前記インターコネクタの材料を含むインターコネクタ材料層と、前記第2の単セルの前記空気極の材料を含む空気極材料層と、を少なくとも含む前記スタックの前駆体を、焼成により一体化する工程、
を備え、
前記前駆体は、導電性セラミックス材料と酸素イオン伝導性材料とを含む非多孔質層を形成可能な拘束層材料層を、前記前駆体の少なくとも一部に備える、製造方法。
インターコネクタを含むSOFCスタックの一部(単セルC)を例示する図である。 インターコネクタを含むSOFCスタックの一部(単セルC)を例示する図である。 インターコネクタの積層構造の一例を示す図である。 インターコネクタの積層構造の他の一例を示す図である。 インターコネクタの積層構造の他の一例を示す図である。 SOFCスタックの一例を示す図である。 実施例のSOFCスタックの製造工程で用いるグリーンシートの一部を示す図である。 実施例のSOFCスタックの製造工程で用いるグリーンシートの他の一部を示す図である。 実施例のSOFCスタックの製造工程で用いるグリーンシートの他の一部を示す図である。 実施例のSOFCスタックの製造工程で用いるグリーンシートの他の一部を示す図である。 実施例におけるSOFCスタックの製造工程の一部を示す図である。 実施例におけるSOFCスタックの製造工程の他の一部を示す図である。 実施例において得られるSOFCスタックを示す図である。
本明細書は、SOFCに用いるインターコネクタ及び当該インターコネクタを用いたSOFC等に関する。本明細書に開示されるインターコネクタは、インターコネクタが隣接する燃料極と空気極とに対して、それぞれに適合する電気的特性及び異なる流通ガス耐性等を有する第1の層と第2の層とを備えるため、全体として優れた導電性と耐ガス性とを維持して接続能を発揮することができる。
また、インターコネクタによれば、燃料極に接する第1の層と空気極に接する第2の層とを備えるために、燃料極及び空気極との密着性等の制御も容易に行うことができ、積層型SOFCスタックの製造にあたって、単セル間をインターコネクタの各材料層で一体焼結することにも好都合となっている。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、さらに改善されたインターコネクタ及びその利用等を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
なお、本明細書において、還元性雰囲気は、1種又は2種以上の還元性のガスを含む組成のガスをいう。還元性雰囲気としては、また、還元性ガスにより特徴付けられるガスであり、還元性ガスを主成分として含むことが好ましい。また、還元性雰囲気は、実質的に1種又は2種以上の還元性ガスからなるか、還元性ガス以外に不活性ガスを含む組成のガスであることが好ましい。還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素、硫化水素等が挙げられる。なお、還元性ガスとしては、還元性ガスでないガス(例えば、メタンなどの炭化水素ガスと水蒸気)をセル内で改質して還元性のガスを含むようになったガスを含む。
本明細書において、酸化性雰囲気とは、1種又は2種以上の酸化性のガスを含む組成のガスをいう。酸化性雰囲気としては、また、酸化性ガスにより特徴付けられるガスであり、酸化性ガスを主成分として含むことが好ましい。また、酸化性雰囲気は、実質的に1種又は2種以上の酸化性ガスからなるか、酸化性ガス以外には不活性ガスを含む組成のガスであることが好ましい。酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素等が挙げられる。
(インターコネクタ)
インターコネクタは、燃料極と、固体電解質と、空気極とを備える、SOFCに用いるインターコネクタである。以下、適宜、図1等の図面を参照しながら、インターコネクタについて説明し、その後、インターコネクタが適用されるSOFCについて説明する。なお、図1及び2では、還元性ガス流路22と酸化性ガス流路24とを明示的に示すため、これらが平行するように記載している。
(第1の層)
インターコネクタ10は、少なくとも、第1の層12を備えている。第1の層12は、インターコネクタ10において燃料極2側に位置されている。第1の層12は、インターコネクタ10において、燃料極2側又は燃料極2側となることが予定される側(以下、単に、燃料極側という。)にあればよく、インターコネクタ10において最も燃料極2側に位置されることを限定するものではない。また、直接的又は間接的に燃料極2に接合していればよい。
第1の層12は、還元性雰囲気において高い電気伝導性と還元性ガス遮断性を備えることが好ましい。より具体的には、第1の層12は、還元性雰囲気において、後述する第2の層よりも高い電気伝導性とガス遮断性とを備えることができる。かかる第1の層を備えることで、燃料極2と高い導電性で接続できるとともに、水素などの還元性ガスを確実に遮断することができる。一方、第1の層12は、酸素などの酸化性雰囲気において電気伝導性が低いか又は実質的に電気伝導性を有していなくてもよく、また、酸化性雰囲気に対する耐性を有しておらず、結果として酸化性雰囲気におけるガス遮断性が低いか又は実質的にそれを有していなくてもよい。インターコネクタにおける第1の層12は、後述する第2の層14で空気極4との一体焼結性、空気極4との電気的接続性、酸化性ガスに対する耐性を発揮させればよいため、従来公知のインターコネクタの材料を容易に適用することができる。
第1の層12は、SOFCに用いられる従来公知のセラミックス系インターコネクタ材料として用いられる導電性セラミックス材料を適宜選択して用いることができる。導電性セラミックス材料としては、各種公知のABO3のペロブスカイト型酸化物が挙げられる。例えば、かかる酸化物は、希土類元素がドープされたペロブスカイト型酸化物であり、(Lna1 b)M23と(ただし、a+b=1などペロブスカイト構造に整合する数値である。)して表される。Lnは希土類元素であり、原子番号57〜71までの元素が挙げられる。希土類元素としては、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)等の比較的イオン半径の大きな元素を用いることができ、Laを好ましく用いることができる。M1は、アルカリ土類金属を示し、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。M2は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の遷移元素から選択される1種又は2種以上である。が挙げられる。好ましくは、Ti、Cr、Mn、Fe及びCoから選択される1種又は2種以上である。
こうした導電性セラミックス材料としては、例えば、AサイトにLaとSr若しくはCaとが共存するLaCoO3系酸化物、LaMnO3系酸化物、La(CoFe)O3系酸化物、LaCrO3系酸化物、LaTiO3系酸化合物等が挙げられる。各種酸化物のBサイトには、Co、Mn、Tiとともに、別の元素として、Cr、Fe、Mgなどが存在していてもよい。より具体的には、(LaSr)MnO3、(LaSr)CoO3、(LaSr)(CoFe)O3、(LaSr)TiO3、LaCrMgO3等が挙げられる。
第1の層12は、導電性セラミックス材料を、1種又は2種以上含むことができる。第1の層12は、かかるセラミックス材料をインターコネクタとしての特性を発揮可能に一部に含むほか、実質的に当該材料から構成されるものであってもよいし、当該材料のみからなるものであってもよい。好ましくは、第1の層12は、金属又は金属合金などの金属製導電性材料を含まない。なお、本明細書において、「実質的にある材料から構成される」とは、用いる材料がインターコネクタに付与する特性に大きな影響を与える可能性のある他の材料を含んでいないことを意味している。
第1の層12に用いる材料は、例えば、インターコネクタが適用されるSOFCの燃料極2の材料、空気極4の材料、作動温度、スタック30の焼結温度等を考慮して、適宜選択される。第1の層は、還元性雰囲気で高い導電性を示すLaTiO3系酸化物、なかでも、La0.3Sr0.7TiO3などの(LaSr)TiO3系酸化物を用いることが好ましい。
第1の層12は2以上の異なる組成の第1の層を積層して構成されてもよい。2以上の第1の層12は、同系のセラミックス材料を含んでいてもよいし、異なる系のセラミックス材料を含んでいてもよい。また、連続的又は断続的な傾斜組成を有していてもよい。
第1の層12は、一般的にインターコネクタが備える緻密性を備えている。例えば、第1の層12は、相対密度(アルキメデス法による)は、93%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であることが好ましい。また、第1の層12の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、スタック全体の大きさや導電性を考慮すると、1μm以上50μm以下とすることができる。また、好ましくは1μm以上30μm以下とすることもできる。さらに、1μm以上20μm以下とすることもできる。
(第2の層)
インターコネクタ10は、少なくとも、第2の層14を備えている。第2の層14は、インターコネクタ10において空気極4側に位置されている。第2の層14は、インターコネクタにおいて、空気極4側又は空気極4側となることが予定される側(以下、単に、空気極側という。)にあればよく、インターコネクタ10において最も空気極4側に位置されることを限定するものではない。また、直接的又は間接的に空気極4に接合していればよい。
第2の層14は、酸化性雰囲気において、第1の層12よりも高い電気伝導性とガス遮断性とを備えることができる。かかる第2の層14を備えることで、空気極4と高い導電性で接続できるとともに、空気などの酸化性ガスを確実に遮断することができる。一方、第2の層14は、水素ガスなどを含む還元性雰囲気において電気伝導性が低いか又は実質的に有していなくてもよく、また、還元性雰囲気に対する耐性を有しておらず、還元性雰囲気におけるガス遮断性が低いか又は実質的に有していなくてもよい。
第2の層14は、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含むことが好ましい。第2の層14は、導電性セラミックス材料を用いることで酸化性雰囲気で高い導電性と耐性と空気極4に対する一体性を発揮し、固体電解質に含まれる酸化物材料を含むことにより、固体電解質6との熱膨張係数を適合させることができる。こうした構成によれば、空気極4との一体性、熱膨張係数の適合性及び酸化性ガスに対する耐性及び遮断性を確保することができる。
第2の層14は、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含むことができる。第2の層14は、これらのセラミックス材料をインターコネクタとしての特性を発揮可能に一部に含むほか、実質的に当該材料から構成されるものであってもよいし、当該材料のみからなるものであってもよい。好ましくは、第2の層14は、金属又は金属合金などの金属製導電性材料を含まない。
第2の層14に用いる導電性セラミックス材料としては、SOFCの空気極材料として用いられている公知の空気極材料から適宜選択して用いることができる。例えば、La又はLa及びSrを含有するABO3型のペロブスカイト型酸化物が挙げられる。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、例えば、AサイトにLa又はLaとSr若しくはCaとが共存するLaCoO3系酸化物、LaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物等が挙げられる。また、AサイトにLa又はLaとSr若しくはCaとが共存するLaTiO3系酸化物等が挙げられる。なお、各種酸化物のBサイトには、Co、Mn、Tiとともに、別の元素として、Cr、Fe、Mgなどが存在していてもよい。より具体的には、(LaSr)MnO3、(LaCa)MnO3、LaCoO3、(LaSr)CoO3、(LaSr)(CoFe)O3、(LaSr)(TiFe)O3等が挙げられる。なお、第2の層14において用いる空気極材料は、インターコネクタが介在される単セルにおける空気極4の材料と同一又は共通であってもよいが、異なっていてもよい。
固体電解質に含まれる元素の酸化物材料としては、特に限定するものではなく、公知の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、Y、Sc、Yb等の希土類元素で少なくとも部分的に安定化されたZrO2(ジルコニア)、Gd、Smなどの希土類元素がドープされたCeO2(セリア)、SrやMgなどのアルカリ土類金属で、La及びGaの一部を置換したLaGaO3(ランタンガレート)等が挙げられる。
第2の層14に用いる固体電解質に含まれる元素の酸化物材料のイオン伝導性は、固体電解質に用いる酸素イオン伝導性材料に比較して低減されていることが好ましい。インターコネクタにおいてイオン伝導性により、インターコネクタの性能を制限するのを抑制される場合があるからである。酸素イオン伝導性のイオン伝導性を調節するには、酸素イオン伝導性材料における希土類元素の酸化物の添加量を抑制することが好ましい。例えば、インターコネクタ10が適用される固体電解質に用いられる部分安定化酸化物における希土類元素の酸化物の添加率の20%以上60%以下程度とすることが好適である。固体電解質にジルコニアが用いられるとき、概して6モル%〜10モル%程度のイットリア等が添加される。例えば、第2の層14に用いる安定化材としての希土類元素の酸化物は、ジルコニア等の酸化物材料に対して、1.5モル%以上5モル%以下程度添加されていることが好ましい。より好ましくは2モル%以上4モル%以下程度である。
導電性セラミックス材料及び固体電解質に含まれる元素の酸化物材料は、それぞれ、例えば、インターコネクタ10が適用されるSOFCの燃料極2の材料、空気極4の材料、作動温度、スタックの焼結温度等を考慮して、適宜選択される。導電性セラミックス材料と空気極材料との配合比率は特に限定するものではないが、例えば、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを、質量比で、30:70〜70:30などとすることができ、40:60〜60:40とすることもできる。
第2の層14は2以上の異なる組成の第2の層を積層して構成されてもよい。2以上の第2の層は、同系のセラミックス材料を含んでいてもよいし、異なる系のセラミックス材料を含んでいてもよい。また、連続的又は段階的な傾斜組成を有していてもよい。
インターコネクタ10は、その第1の層12と第2の層14とが、互いに直接一体化されていてもよいし、これらの層の間に1又は2以上の他の第3の層が介在されていてもよい。第1の層12と第2の層14とは、好ましくは焼結により一体化されている。より好ましくは、特別な介在層を備えることなく、直接焼結により一体化されている。
第2の層14は、一般的にインターコネクタが備える緻密性を備えている。例えば、第2の層14は、相対密度(アルキメデス法による)は、93%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であることが好ましい。また、第2の層14の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、スタック30全体の大きさや導電性を考慮すると、例えば、第2の層14として最も薄い部分において、1μm以上50μm以下とすることができる。また、好ましくは1μm以上30μm以下とすることもできる。さらに、1μm以上20μm以下とすることもできる。
インターコネクタ10における第1の層12及び第2の層14の積層形態は、特に限定するものではなく、インターコネクタ10が適用されるSOFCにおける単セル構造等によって適宜決定される。インターコネクタの各種形態については、後段にて詳述する。
インターコネクタ10は、後述するように、SOFCスタック30の製造工程において単セルと単セルとの間に介在させて単セルの積層体を製造するのと同時に製造されることが好ましい。例えば、第1の層12の材料層と第2の層14の材料層を適切に含む未焼結積層体を、インターコネクタ前駆体として準備し、SOFCスタック30の製造工程に供してもよい。また、例えば、第1の層12の材料層と第2の層14の材料層を必要な順序で積層するようにして、SOFCスタック30の製造工程に供してもよい。SOFC及びその製造方法については後段で詳述する。
インターコネクタ10全体の形態は、特に限定するものではないが、適用されるSOFCスタック30に応じた形態を採ることができる。例えば、平板型SOFCに適用される場合には、平板状体等となる。また、インターコネクタ10の全体の厚みを特に限定するものではないが、例えば、もっとも薄い部分において1μm以上μm100μm以下とすることができる。好ましくは、2μm以上60μm以下とすることができ、より好ましくは2μm以上40μm以下である。
インターコネクタの第1の層12及び第2の層14のそれぞれの熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、8×10-6-1以上〜12×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、空気極層あるいは燃料極層とのはく離を抑えることができるからである。スタック構造体の残留応力を考慮すると、より好ましくは、9.5×10-6-1以上11.5×10-6-1以下である。
以上説明したインターコネクタ10は、接続すべき一方の単セルの燃料極2と他方の単セルの空気極4とに対してそれぞれ適したインターコネクタ特性、すなわち、導電性とガス耐性及び遮断性、を有しているため、全体として薄層でかつ十分なインターコネクタ特性を備えたものとすることができる。また、一体焼結型の金属材料非含有(換言すると全セラミックス製)SOFCスタック30の製造にあたり、燃料極に応じたセラミックス系の第1の層12の材料層と空気極に応じたセラミックス系の第2の層14の材料層の各材料層をそれぞれ適用することで、第1の層12及び第2の層14がそれぞれ燃料極2及び空気極4に一体焼結されるとともに、第1の層12及び第2の層14も相互に一体焼結される。このため、優れた導電性とガス遮断性とを確実に実現することができるとともに、スタック30の積層工程を簡易かつ効率化できるとともに、スタック20の一体焼結性を向上させることができる。
(固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタック)
本明細書に開示されるSOFCスタックは、少なくとも2つの単セル間に、インターコネクタを備えることができる。こうしたSOFCスタックによれば、これら単セル間を高い電気伝導性とガス遮断性で接続及び分離され、また、セルに対して一体焼結される場合には、高い一体性により、電気伝導性及びガス遮断性も向上されるほか、SOFCスタックの製造工程も簡略化される。以下、図1、2等を参照しながら、SOFC単セルをインターコネクタで積層したSOFCスタックについて説明する。
(単セル)
SOFCにおけるセル(発電要素)Cは、燃料極2、固体電解質6及び空気極4を含んでいる。より具体的には、燃料極2及び空気極4が固体電解質6を介して積層された構造を有している。
(燃料極)
燃料極2は、特に限定することなく、SOFCの燃料極に適用される導電性セラミックス材料の1種又は2種以上からなる多孔質体とすることができる。例えば、燃料極材料としては、希土類元素が固溶したジルコニア又はセリアと、Ni/NiOと、を含むことができる。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)等を用いることができる。具体的には、イットリア部分安定化又は安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア部分安定化又は安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニア固溶セリア(GDC)とNi/NiOとを含むNiサーメットが挙げられる。
燃料極2は多孔質であり、その気孔率は、適宜設定されるが、好ましくは、15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上40%以下程度である。なお、本明細書において、気孔率は、機械的に切断研磨して作成した複数の断面を、走査型電子線顕微鏡で撮影した断面画像の気孔部と緻密部の面積比から測定することができる。例えば、5つの切断面のそれぞれについて当該層を含む500μm×500μmの視野で当該層の気孔部と緻密部を画像処理によって二値化して面積比を求めて、全ての切断面の平均をとることで気孔率を求めることができる。
燃料極2における気孔形状は不定形状、繊維状、球状など任意の形状をとることができる。球状の場合は平均気孔径は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは2μm以上5μm以下である。なお、本明細書において、平均気孔径は、機械的に切断研磨して作成した複数の断面を、走査型電子線顕微鏡で撮影した断面画像の気孔部を複数の球状の気孔が接続したと仮定した場合の平均径から測定することができる。例えば、5つの切断面のそれぞれについて当該層を含む500μm×500μmの視野で当該層の気孔部と緻密部を画像処理によって二値化し、視野に含まれる全ての気孔部に対して円近似した場合の直径を求めて、全ての切断面の平均をとることで平均気孔径を求めることができる。
(燃料極バッファ層)
燃料極2は、略単一の気孔率及び/又は平均気孔径を備えていてもよいが、これらに関して異なる分布を有していてもよい。例えば、図2に示すように、燃料極2において固体電解質6から遠位あるいはインターコネクタ10の第1の層12に近位な部分においては、その気孔率及び/又は平均気孔径を固体電解質6に近位又はインターコネクタ10の第1の層12に遠位な部分に比べて小さくした燃料極バッファ層2aを備えることができる。こうすることで、燃料極2とインターコネクタ(第1の層)10との密着性を高めることができ、一体性を向上させ剥離を抑制できる。一方、燃料極2内にガス流路22を設けて、燃料極2自体にガス流路22に倣った凸状部26を備えさせる場合には、燃料極バッファ層2aはこうした凸状部26によく追従して、薄い層であっても、ガス流路(SOFCの製造工程においては、ガス流路形成用の消失部材)22を燃料極2内に確実に内在させることができる。これにより、ガス流路22の天面を直接インターコネクタ10の第1の層12に接することを回避して、燃料極2の導電経路の抵抗を下げることができる。
なお、燃料極2がガス流路22に倣った凸状部26を有する形態を備えるようにすることで、燃料極2自体の厚みを薄くでき、SOFCスタック30の起動及び停止時に生じる、燃料極2に含まれるNiの酸化還元に伴う燃料極2の堆積変動を抑制でき、SOFCスタック30における剥離、変形及び破壊を抑制できる。
(燃料極バッファ層の平均気孔径)
燃料極バッファ層2aは、また、例えば、燃料極2の固体電解質6側(燃料極2の固体電解質6側に接する層、以下、燃料極主層2bともいう。)の平均気孔径の40%以上90%以下であることが好ましい。この程度平均気孔径が小さいことで、燃料極バッファ層2aの凸状部26などの曲面・変形面に対する追従性が向上する。より好ましくは50%以上80%以下程度である。また、例えば、燃料極バッファ層2aの気孔が燃料極主層2bとともに球状の場合には平均気孔径は、燃料極主層2bのそれよりも小さく、かつ、1μm以上5μm以下程度とすることができる。
(燃料極バッファ層の気孔径分布)
また、燃料極バッファ層2aの気孔が球状の場合の気孔径分布(細孔径分布)は、燃料極主層2bと比べて多分散であることが好ましい。多分散性であることにより、多様な曲面・変形面に対する追従性を付与することができる。例えば、燃料極バッファ層2aの気孔径分布は、平均値±0.2σに50%以下の気孔が存在する分布であることが好ましい。なお、本明細書において、気孔径分布は、機械的に切断研磨して作成した複数の断面を、走査型電子線顕微鏡で撮影した断面画像の気孔部を複数の球状の気孔が接続したと仮定した場合の平均径から測定することができる。
(燃料極バッファ層の気孔率)
燃料極バッファ層2aの気孔率を、燃料極主層2bの気孔率よりも小さくすることができる。湾曲するなど変形する表面に対する追従性を高めるとともに、インターコネクタ10の第1の層12との密着性を高めることができる。燃料極バッファ層2aの気孔率は、燃料極主層2bの気孔率の40%以上80%以下とすることが好ましく、より好ましくは60%以上80%以下である。
燃料極バッファ層2aは、気孔に関する上記の3つの特性、平均気孔径、気孔径分布及び気孔率のうち1又は2以上を備えることができる。好ましくは、3つ備えることができる。
また、燃料極2が、燃料極主層2bと燃料極バッファ層2aとを備える場合、こうした気孔に関する傾斜組成は、連続的であってもよく、段階的であってもよい。気孔は、カーボン、またはでんぷん、アクリル等の高分子材料で焼失後にその形状を反映した気孔を形成する造孔剤を用いて形成することができる。例えば、燃料極2において、球状の気孔の平均気孔径及び/又は気孔径分布を調節するには、異なる粒径及び/又は粒径分布を持つ球状の造孔剤を用いることができる。また、気孔率を調節するには、任意の造孔剤の使用量を変更することができる。例えば、燃料極主層2bを、平均粒径のより大きな及び/又は粒径分布がより小さい球状造孔剤を含む燃料極材料から形成し、燃料極バッファ層2aを、平均粒径がより小さい及び/又は粒径分布が大きい球状造孔剤を含む燃料極材料から形成することができる。なお、セラミックスにおける気孔の制御方法は当業者において周知の手法である。
燃料極2の厚みは、特に限定するものではなく、ガス流路22の有無や流路形態によっても異なるが、例えば、15μm以上500μm以下とすることができる。より好ましくは20μm以上500μm以下とすることができる。さらに好ましくは、50μm以上400μm以下とすることができ、なお、好ましくは50μm以上300μm以下とすることができる。なお、後述するように、燃料極2及び空気極4の厚みは、1つの層において必ずしも一定ではない。したがって、燃料極2及び空気極4の厚みに関する記載は、特に言及されない限り、1つの層がこうした厚みの範囲にあることを意味している。
また、燃料極バッファ層2aの厚みも、特に限定するものではないが、例えば、5μm以上50μm以下とすることができ、さらに例えば、5μm以上20μm以下とすることもできる。
(空気極)
空気極4は、特に限定することなく、SOFCの空気極4に適用される導電性セラミックス材料の1種又は2種以上からなる多孔質体とすることができる。例えば、空気極材料としては、既に、インターコネクタ10の第2の層14の材料として例示した導電性セラミックス材料が挙げられる。
空気極4は多孔質であり、その気孔率は、適宜設定されるが、好ましくは、15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上40%以下程度である。空気極4における気孔が球状である場合の平均気孔径は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは2μm以上5μm以下である。
空気極4の厚みは、特に限定するものではなく、酸化性のガス流路24の有無や流路形態によっても異なるが、例えば、15μm以上500μm以下とすることができ、また例えば、20μm以上500μm以下とすることができる。より好ましくは、50μm以上400μm以下とすることができる。
(固体電解質)
固体電解質6は、特に限定することなく、SOFCの固体電解質に適用される酸素イオン伝導性材料の1種又は2種以上からなる緻密質体とすることができる。例えば、固体電解質材料としては、既に、例示した酸素イオン伝導性材料が挙げられる。
固体電解質6は緻密質であり、ガス透過性を遮断する観点から、インターコネクタ10と同様の相対密度を有していることが好ましい。また、固体電解質6の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。より好ましくは、3μm以上40μm以下とすることができ、さらに好ましくは5μm以上30μm以下とすることができる。
(ガス流路)
SOFCの単セルCは、燃料極2に供給される水素を含有する還元性ガス及び空気極4に供給される酸素を含有する酸化性ガスのためのガス流路22、24をそれぞれ備えている。ガス流路22、24は、単セルを構成する1又は2つの層に亘って形成することができる。すなわち、ガス流路22、24は、それぞれ燃料極2、空気極4内に備えられていてもよいし、インターコネクタ10内に備えられていてもよいし、燃料極2とインターコネクタ10にわたって備えられていてもよいし、空気極4とインターコネクタ10にわたって備えられていてもよい。
例えば、図1に示すように、これらのガス流路22、24は、燃料極2及び空気極4の厚み範囲に完全に埋設されたように内在させることもできる。こうすることで、抵抗の高いインターコネクタの体積の増大を抑制して発電性能の低下を抑制できる。あるいは、図示はしないが、燃料極2及び空気極4に接するインターコネクタ10において燃料極2側及び空気極4側に開口するように設けることもできる。こうすることで、燃料極2の体積を抑制して、Niの酸化還元に伴う体積変動を抑制することができる。
また、例えば、図2に示すような形態で、少なくとも、燃料極2内にガス流路22を備える形態とすることができる。すなわち、燃料極2でガス流路22を被覆するように内包するが、ガス流路22の厚みのうちの一部分の厚みしか備えない形態である。
例えば、図2に示すように、燃料極2を、ガス流路22の外形形態、配置パターン等に基づいて、単セルCの外方に向かって凸となる1又は2以上の凸状部26を備えるようにすることができる。こうすることで、燃料極2の層厚を薄くすることができ、燃料極2の体積増大によるNiの酸化還元(SOFCの起動及び停止に伴う)による燃料極2の体積変動を抑制することができる。
こうした内在させるガス流路22に基づく凸状部26を有する燃料極2は、ガス流路22が形成されない領域において、ガス流路22の厚み(積層方向における厚み又は高さ)を充足しない厚みで燃料極2を備えるようにすることで形成される。すなわち、ガス流路22の厚みの100%未満の厚みで燃料極2を備えるようにする。こうすることで、燃料極2の厚みを有効に低減して酸化還元耐性を向上させることができる。また、インターコネクタ10の第1の層12の厚みを適度に薄膜化することができ、電気抵抗を低下させることができる。例えば、当該領域において燃料極2はガス流路22の厚みの90%以下、また例えば、80%以下、さらに例えば、70%以下、さらにまた例えば、60%以下等とすることができる。また、当該領域において、燃料極2は、ガス流路22の厚みの1%以上であり、例えば、同10%以上であり、また例えば、20%以上であり、さらに例えば、30%以上である。典型的には、燃料極2の厚みは、ガス流路非形成領域において、ガス流路22の厚みの30%以上70%以下等とすることができる。
例えば、当該領域において燃料極2は燃料極2内におけるガス流路22の最大高さの90%以下、また例えば、80%以下、さらに例えば、70%以下、さらにまた例えば、60%以下、さらに例えば、50%以下、さらにまた例えば、40%、さらに例えば30%、また例えば、20%以下等とすることができる。また、当該領域において、燃料極2は、ガス流路22の厚みの1%以上であり、例えば、同5%以上であり、また例えば、10%以上等とすることができる。典型手気には、燃料極2の厚みは、ガス流路非形成領域において、ガス流路22の最大高さの5%以上50%以下等とすることができる。
さらに、こうした燃料極2を形成するには、既述のように燃料極2を、燃料極主層2bと燃料極バッファ層2aとで形成することで、ガス流路22に基づく凸状部26に密着し、ガス流路22を内包又は被覆する燃料極2を容易に形成することができる。特に限定するものではないが、ガス流路22の上部には、燃料極バッファ層2aを主として備えることが好ましい。
さらに、1又は2以上のガス流路22に応じた凸状部26を備える表面形態を有する燃料極2に対して好適な特性を備えるインターコネクタ10の第1の層12を備えることで、還元性雰囲気での電気伝導性、ガス遮断性を確保し、さらに第2の層14を備えることで、隣接する単セルCの空気極4に由来する酸化性雰囲気での電気伝導性及びガス遮断性を確保できる。このように、インターコネクタ10のセラミックス2層含有構造によれば、隣接する電極の特性のみならず変化を有する表面形態に応じて、優れた追従性及び密着性を発揮して、こうして変化した表面形態を緩衝して良好な一体性、成型性、形状のSOFCスタック30を構築することができる。また、インターコネクタ10のセラミックス2層含有構造によれば、こうした変化を有する電極表面に応じて2層の存在形態、すなわち、各層の厚みや配置パターンも変化させて、インターコネクタ10及びスタック30としての性能を最適化することができる。
なお、燃料極2内にガス流路22を内在させる形態について種々説明したが、上記内在形態は空気極4におけるガス流路24についても適用することができる。
ガス流路22、24の厚み(すなわち、セルCにおける要素の積層方向に沿う厚み又は流路高さ)は、ガス流路22、24が備えられる部位(インターコネクタか電極内か)やガス流路パターン等によっても異なり、特に限定するものではないが、例えば、50μm以上400μm以下とすることができる。また、例えば、燃料極2内におけるガス流路22の厚みは、100μm以上200μm以下であることが好ましく、空気極4におけるガス流路24の厚みは、150μm以上300μm以下であることが好ましい。
還元性ガス及び酸化性ガスの各ガス流路22、24のパターンは特に限定するものでなく、種々のパターンを採ることができる。SOFCの形態にもよるが、例えば、平板型SOFCの場合には、平面視で、複数の直線状の流路が一定間隔で整列するパターン、複数のサイズの異なるコの字状の流路がよりサイズが小さくなる順に内側に配置されるパターン、渦巻き状の一続きの1又は2以上の流路が配置されるパターン等が挙げられる。
このようにして構成される単セル(燃料極、空気極、固体電解質)Cの厚みは、特に限定するものではないが、例えば、100μm以上1000μm以下とすることができる。また、好ましくは150μm以上1000μm以下とすることができる。さらに、好ましくは200μm以上1000μm以下とすることができる。また、好ましくは300μm以上600μm以下とすることができる。
また、単セルCの燃料極2及び/又は空気極4の表面は、内在させたガス流路22、24の外形形態及び配置パターンに基づく凸状部26等を備えることもできる。
SOFCの単セルC及びSOFCスタック30は、燃料極2及び空気極4に供給される各ガスを封止するためのシール部20を適宜備えることができる。シール部20の形態は特に限定するものではないが、例えば、国際公開第WO2009/119771号に開示されるシール部のほか、適宜公知のシール構造を採用することができる。
(SOFC及びSOFCスタックに対するインターコネクタの構造)
本明細書に開示されるSOFCは、単セルCに対してインターコネクタ10又はその一部を備えることができ、また、SOFCスタック30は、少なくとも2つの単セルCがインターコネクタ10を介して接続された構造を有している。図1、2に示すように、燃料極2、空気極4及び固体電解質6が積層された単セルCは、他の単セルCとインターコネクタ10を介して接続されてSOFCスタック30を構成している。インターコネクタ10の第1の層12及び第2の層14は、SOFCにおける各発電要素の態様に応じて様々な積層形態を採ることができる。
例えば、平板型SOFCの場合には、図3に示すような形態が挙げられる。なお、図3に示す形態では、適宜ガス流路を省略している。図3Aは、第1の層12及び第2の層14が、それぞれ平坦な層である形態を示す。この形態においては、各ガス流路22,24は、インターコネクタにあっても電極内にあってもよいが、電極内にある場合においては、ガス流路は、電極の層厚に内包されており、電極表面にガス流路に起因する凸状部が現れていない状態となっている。
また、図3Bは、第1の層12が燃料極2に内在するガス流路22に基づく1又は2以上の凸状部26に対応する1又は2以上の湾曲部12aを有する層であり、第2の層14が、第1の層12の湾曲部12aでない部分、すなわち、底部12bを充填してインターコネクタ10全体として略均一な厚みの層となるような充填部14bを有する層である形態を示す。ここで、第1の層12は、おおよそ均一な厚みの波状又はコルゲート状の層である。また、第2の層14は、還元性ガス流路22上又はその周囲に対応する湾曲部12aにおいては、相対的に層厚の薄い被覆部14aを備え、還元性ガス流路22間に相当する底部12bにおいては、相対的に層厚の厚い充填部14bを備えている。このインターコネクタ形態によれば、全体として均一な厚みを確保するとともに、燃料極2に対して必要十分な形態で第1の層12を適用できる。また、第2の層14で、インターコネクタ10を全体として略平坦で均一な厚みにすることができる。
さらに、図3Cは、図3Bとは異なり、空気極4に対する第2の層14が空気極4のガス流路24に基づく凸状部28を有する表面形態に倣った湾曲部14cと底部14dを有して波状又はコルゲート状で略均一な厚みの層であり、第1の層12が、第2の層14の底部14dを充填する充填部12dを有し、湾曲部14cを薄く被覆する被覆部12cを備える形態を示す。すなわち、酸化性ガス流路24上又はその周囲に対応する湾曲部14cにおいては、第1の層12は相対的に薄く、酸化性ガス流路24間である底部14dにおいては、第1の層12は相対的に厚くなっている。この形態においても、空気極4に対して必要十分な形態で第2の層を適用できる。また、第2の層12で、インターコネクタ10を全体として略平坦で均一な厚みにすることができる。
(拘束層)
図4に示すように、SOFCの単セルC又はSOFCスタック30は、その積層体において少なくとも1つの拘束層40を備えることができる。拘束層40は、少なくとも、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料を含む非多孔質層42を含むことができる。かかる拘束層40を備えることで、積層体の平面(x−y平面)内における収縮率偏差を抑制するとともに、積層方向(z方向)における反りや曲げを抑制するように焼成挙動を調整することができる。これにより、ガス流路22、24の変形や歪み、燃料極2、空気極4及び固体電解質6等におけるクラックや剥がれ、セル等の割れを抑制して、発電特性及び一体性に優れるSOFC単セルC及びSOFCスタック30を得ることができる。
拘束層40に使用する導電性セラミックス材料は、既述した空気極4に好適である導電性セラミックス材料を用いることができる。また、固体電解質に含まれる元素の酸化物材料としては、既述した固体電解質6に好適な酸素イオン伝導性材料から用いることができる。かかる組成とすることで、拘束層40の熱膨張係数を容易に調整して、拘束層40による焼成挙動の調整を可能とすることができる。拘束層40の熱膨張係数(20℃〜1000℃)は、10×10-6-1以上15×10-6-1以下であることが好ましい。この範囲であると、インターコネクタ10あるいは空気極4との界面ではく離が起きにくいからである。SOFCスタック30の残留応力を考慮すると、より好ましくは、10×10-6-1以上12×10-6-1以下である。
拘束層40は、少なくとも非多孔質層42を備えている。非多孔質層42は、固体電解質6やインターコネクタ10と同様の緻密性を備えることができる。また、気孔率としては、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。非多孔質層42の厚みは特に限定するものではないが、例えば10μm以上200μm以下、好ましくは50μm以上100μm以下とすることができる。
拘束層40は、さらに、非多孔質層42と同様、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物を含んで多孔質である多孔質層44を備えることができる。非多孔質層42と多孔質層44とを備えることで、焼成挙動の調整がより容易になる。多孔質層44における気孔率は、非多孔質層42よりも大きければ特に限定するものではないが、例えば、10%以上50%以下とすることができる。この範囲であると、非多孔質層42との組合せによる焼成挙動の調整が容易であるからである。多孔質層44の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、10μm以上200μm以下、好ましくは50μm以上100μm以下とすることができる。
なお、非多孔質層42は、SOFC単セルC及びSOFCスタック30の空気極4側の終端部に配置されるとき、空気極4に対してインターコネクタ10としても機能することができる。したがって、例えば、その場合には、インターコネクタ10の第2の層14を省略することができる。
拘束層40が非多孔質層42と多孔質層44とを備えるとき、これらの積層形態は特に限定するものではないが、非多孔質層42と多孔質層44とを交互に備えることができる。これらの層の双方を備えるとき、各層の積層数や厚みは異なっていても同一であってもよいが、焼成挙動の調節の観点からは、非多孔質層42と多孔質層44の積層数を同数とするか及び/又は各層の厚みの合計を同一とすることが好ましい。
拘束層40としての非多孔質層42及び多孔質層44は、それぞれ、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含むことができる。これら2種類の層42,44において同一種類の導電性セラミックス材料及び固体電解質に含まれる元素の酸化物材料を用いてもよいし、少なくとも一方が異なっていてもよい。好ましくは、これら2種類の層42,44は、組成(配合)は異なっていてもよい同一であってもよいが、同一種類の材料を用いる。なお、複数の非多孔質層42を備えるとき、これらの非多孔質層42同士においても、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料に関し、上記と同様の態様が適用される。また、複数の多孔質層44を備えるとき、これらの多孔質層44同士においても、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料に関し、上記と同様の態様が適用される。
これら2種類の層42,44における、導電性セラミックス材料と固体電解質に含まれる元素の酸化物材料との配合比率は、特に限定するものではないが、例えば、導電性セラミックス材料:固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とは、質量比で、30:70〜70:30などとすることができ、40:60〜60:40とすることもできる。
また、各層42,44は、それぞれ焼結性を高めたり、高温焼成時の耐熱性を向上させるために適宜添加剤を含むことができる。例えば、既述の各種添加剤のほか、耐熱性の観点からは、セリア等を添加することができる。セリア等の高温耐熱性添加剤は、特に限定するものではないが、多孔質層44に添加することが好ましい。これら添加剤の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、各層42,44における全セラミックス材料(添加剤を含む)に対して0.5質量%以上10質量%以下とすることができ、好ましくは2質量%以上8質量%以下とすることができる。
多孔質層44における気孔形状は特に限定するものではないが、球状気孔を形成することができる。球状の場合には平均気孔径は特に限定するものではないが、例えば、0.5μm以上5μm以下とすることができる。0.5μm未満及び5μm超では、いずれも十分な焼成挙動の調整が困難であるからである。
セラミックス材料における気孔率及び平均気孔径の調節は、当業者において周知であり、当業者であれば、適宜意図した気孔率及び平均気孔径のセラミックス層を作製できる。
拘束層40は、SOFCにおいて、任意の部位に備えることができる。すなわち、拘束層は、単セルCにおける燃料極2側及び空気極4側のいずれか一方又は双方に備えることができるほか、スタック30に含まれる複数の単セルCの少なくとも一部に対して拘束層40を備えていてもよい。また、スタック30の最も外側の一方又は双方に備えることができる。
例えば、図4に示すように、SOFCの単セルCの燃料極2側においては、単セルCに対して付与されたインターコネクタ10の第1の層12に対して、すなわち、第1の層12よりもセルCの外側に位置するように拘束層40を備えることができる。また、空気極4側においては、空気極4が流路を内包する場合には、空気極4に対して、すなわち、空気極4よりもセルCの外側に位置するように拘束層40を備えることができる。
これらの場合において、拘束層40としての非多孔質層42及び多孔質層44の積層形態は特に限定しないが、例えば、非多孔質層42を第1の層12及び空気極4に対して備え、さらに、必要に応じて、より外側に多孔質層44を備えることができる。好ましくは、最外層に多孔質層44を備える。また、こうした積層形態は、焼成挙動の制御の観点からは、非多孔質層42及び多孔質層44は、固体電解質6を挟んで対称的に配置されていることが好ましい。
また、例えば、図4に示すように、SOFCスタック30において、燃料極2側の終端部(スタック30の積層方向に沿う一方の端部)及び/又は空気極4側の終端部(スタック30の積層方向に沿う他方の端部)に備えることができる。
以上説明したように、インターコネクタ10は、導電性と、SOFCに適用される還元性ガスと酸化性ガスとに対する耐性と、をそれぞれ発揮し、さらにセルCとの一体焼結に好適なものとなっている。この結果、インターコネクタ10によれば、製造工程を複雑化することなく、発電特性及び一体性に優れたSOFC及びSOFCスタックを得ることができる。
(SOFCスタックの製造方法)
本明細書に開示されるSOFCスタックの製造方法は、少なくとも第1の単セルと第2の単セルとをインターコネクタを介して積層されたスタックを得るのにあたって、第1の単セルの燃料極の材料を含む燃料極材料層と、インターコネクタの材料を含むインターコネクタ材料層と、第2の単セルの空気極の材料を含む空気極材料層と、を少なくとも含むスタックの前駆体を、焼成により一体化する工程、を備えることができる。この製造方法において、インターコネクタ材料層は、燃料極材料層側に位置される第1の層と、空気極材料層側に位置される第2の層と、備えており、第1の層は、還元性雰囲気において第2の層よりも高い電気伝導性とガス遮断性とを備え、第2の層は、酸化性雰囲気において第1の層よりも高い電気伝導性とガス遮断性とを備えることができる。
この製造方法によれば、燃料極及び空気極のそれぞれに対して好適なインターコネクタ特性(導電性及びガス遮断性)を有する層をそれぞれ適用でき、優れた導電性と一体性を発揮させることができる。しかも、第1の層と第2の層とは、セルの要素との一体焼結性に好適であるため、製造工程を複雑化することなく、スタックの一体焼結が可能である。さらに、第1の層及び第2の層は、それぞれ独立した特性を発揮できることから、燃料極や空気極の種々の態様に応じて厚みやパターンを適宜することができる。
本明細書におけるSOFCスタックの製造方法は、概して公知の焼結一体型のSOFCスタックの製造方法に準じることができる。当業者であれば、例えば、国際公開WO2009/119771号公報に開示される方法を適宜参照して本製造方法を実施することができる。
SOFCスタックの製造方法は、特に限定するものではないが、概して、単セル及びスタックを構成する1又は2以上の要素の材料を含むグリーンシートを予め準備した上で積層したり、適宜、こうした材料層をスラリーとして直接積層したりしつつ、これらを必要な順序で積層し、一体焼成する。どのような要素を含むグリーンシートを準備するか、あるいはスラリーとして供給するか、さらには、積層順序等は、SOFCスタックを得られる範囲で当業者であれば適宜決定して実施することができる。
また、SOFCスタックの各要素の材料層の積層体(スタック前駆体)の焼成方法も、概して、公知の焼結一体型のSOFCスタックの製造方法に準じることができる。すなわち、スタック前駆体の焼成は、前駆体を構成するセラミックス材料が少なくとも一部が焼結されて緻密質又は多孔質の所望の焼成体を得られるように実施する。好ましくは、全ての要素を共焼結させる。例えば、1250℃以上1550℃以下の温度で加熱処理することができ、好ましくは1250℃以上1500℃以下である。より好ましくは1250℃以上1400℃以下である。なお、空気中で焼成することができる。上記焼成温度での焼成時間は、特に限定するものではないが、例えば、1〜数時間程度などとすることができる。
焼成に先だって、スタック前駆体を、60℃〜120℃程度の温度で、必要に応じて冷間等方圧プレス(CIP)することにより圧着した。この圧着体を温度300℃〜500℃の範囲内で脱脂処理を施すことができる。
なお、スラリーやグリーンシート自体の作製方法は、当業者に周知である。例えば、各層のためのスラリーは、各要素の材料を主成分等として、さらにバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えることで調製することができる。また、グリーンシートは、調製したスラリーを、ナイフコート、ドクターブレードなどの塗工装置を用いたテープキャスト法などのキャスティングによるシート成形法、あるいはスクリーン印刷法やスプレー法などを用いてグリーンシート前駆体を得ることができる。なお、得られたシート前駆体を、常法に従い、乾燥後、必要に応じて加熱処理することでグリーンシート(未焼成のセラミックスグリーンシート)を得ることができる。
また、燃料極、空気極、拘束層の多孔質層の作製方法も、当業者に周知である。例えば、当業者は、公知の方法に従って粒子状の消失材料をスラリーの配合に含めるか、あるいは造孔剤等を含めることで、所望の平均気孔径、気孔率、気孔径分布等や適度な多孔質性を焼成により発現できるグリーンシートを作製することができる。なお、消失材料自体も周知であるとともに、各種材料を商業的に入手可能である。
燃料極、空気極及びインターコネクタにガス流路を形成する方法も、当業者に周知である。当業者であれば、公知の方法に従い、燃料極材料のグリーンシート等に所望のガス流路パターンを形成可能な消失材料を配置して、さらに燃料極材料のグリーンシート等を積層するなど適宜実施することができる。
また、適宜、燃料極材料層や空気極材料層に隣接してシール部となるシール材料層を備える電極グリーンシートも製造できる。
本製造方法において、インターコネクタほか、燃料極バッファ層、拘束層を適宜採用することにより、それぞれの要素に応じた利点を製造方法においても発揮させることができ、発電特性、一体性等に優れるSOFCスタックを得ることができる。
以下に、本製造方法の概要の一例を説明する。固体電解質の材料を含むスラリーから固体電解質用グリーンシートを準備した。燃料極の材料と造孔剤とを含む燃料極用スラリーとシール材料を含むシール用スラリーから燃料極用グリーンシートを作製し、その上に、消失材料からなる流路形成材をスクリーン印刷等により付与し、さらに、燃料極用スラリーとシール用スラリーとを、例えば、流路形成材の高さの30%以上70%以下程度の範囲となるまで所定のパターンで付与する。さらに、インターコネクタの第1の層用スラリーを、燃料極材料層の凸部を含む表面形態に沿っておおよそ均一の厚みで付与する。さらに、その後、第1の層用スラリー表面に、燃料極材料層の凸部を覆って略平坦な層表面となるように、インターコネクタの第2の層用のスラリーを付与して燃料極材料層を含むグリーンシートを準備する。なお、別個の燃料極用スラリーとして、燃料極バッファ用材料を含む燃料極バッファ用スラリーをさらに付与することもできる。
また、空気極の材料と造孔剤とを含む空気極用スラリーとシール材料を含むシール用スラリーから空気極用グリーンシートを作製し、その上に、消失材料からなる流路形成材をスクリーン印刷等により付与し、さらに、空気極用スラリーとシール用スラリーとを所定のパターンで付与して、空気極材料層を含むグリーンシートを作製した。また、空気極材料層を含むグリーンシートに、非多孔質拘束層材料用スラリーとシール用スラリーとを付与して、空気極側終端用グリーンシートを準備する。
別途、非多孔質拘束層用スラリーとシール用スラリーとを用いて非多孔質拘束層用グリーンシートを燃料極側終端用グリーンシートを準備する。また、多孔質拘束層用スラリーとシール材料とを用いて、多孔質拘束層用グリーンシートを準備する。
これらのグリーンシートを、適数個、例えば、2個以上30個以下、また例えば、5個以上20個以下程度含むように積層して、SOFCスタック前駆体を作製することができる。この前駆体を圧着、脱脂処理後に、所定の温度で焼成する。
例えば、以上のような製造工程により、インターコネクタを備えるSOFCスタックを得ることができる。また、特殊形態の燃料極に対応するインターコネクタ構造を備えるSOFCスタックを製造することもできる。さらに、燃料極バッファ層も備えるSOFCスタックを製造することができる。さらにまた、拘束層を備えるSOFCスタックを備えることもできる。
以上説明したSOFCスタックは、さらに、必要に応じて集電体等を接続し、還元性ガス及び酸化性ガスの供給源などを適宜接続し、さらに、加熱装置を備えるようにすることで、SOFCシステムを構築できる。
なお、以上説明したSOFCスタックの製造方法は、本明細書に開示されるSOFCスタックの製造方法の一例に過ぎない。したがって、従来公知のSOFCの製造方法に従い、SOFCの単セルやSOFCスタックを構成する層の少なくとも1層を含むグリーンシートの積層や構成層を直接スラリーを塗布等することによる積層を適宜組み合わせて、SOFC単セル及びSOFCスタックを製造することができる。
以下、本明細書の開示を具現化した実施例を説明するが、本明細書の開示は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、SOFCスタックの製造例である。以下、SOFCスタックにおける各要素のセラミックス材料を示し、次いで、図5A〜図5Dに示すスタックの製造工程について説明する。
(SOFCスタックの原料)
(1)固体電解質
添加量8モル%のイットリア(Y23)で安定化されたジルコニア(ZrO)(8モル%イットリア安定化ジルコニア:8YSZ)
(2)燃料極
酸化ニッケル(NiO)60質量%と8YSZ40質量%の混合物
(3)空気極
La0.8Sr0.2MnO350質量%と8YSZ45質量%とセリア(CeO2)5質量%との混合物
(4)燃料側インターコネクタ(インターコネクタの第1の層)
La0.3Sr0.7TiO3
(5)空気側インターコネクタ(インターコネクタの第2の層)
La0.8Sr0.2MnO350質量%と3YSZ45質量%とセリア5質量%との混合物
(6)シール部
8YSZ
(7)拘束層
La0.8Sr0.2MnO350質量%と8YSZ45質量%とセリア(CeO2)5質量%の混合物
(2)製造工程
(2−1)グリーンシートの製造
(固体電解質用グリーンシート)
固体電解質原料と、ポリビニルブチラール系バインダーと、有機溶媒としてのエタノール(以下、単に溶媒という。)とを混合して固体電解質用スラリーとした。その後、図5Aに示すように、ドクターブレード法により、固体電解質用グリーンシート101を作成した。
(燃料極用グリーンシート)
燃料極原料100質量部に対しての平均粒子径10μm及び平均粒径の±0.1σに50%以上の粒子が分布するアクリル粒子を20質量部添加し、この混合粉末と、ポリビニルブチラール系バインダーと、溶媒とを混合して燃料極用スラリーとした。また、燃料極原料100質量部に対して、先のアクリル粒子よりも小径の平均粒子径5μm及び平均粒径の±0.1σに50%以下の粒子が分布するアクリル粒子を20質量部添加し、この混合粉末と、ポリビニルブチラール系バインダーと、混液とを混合して第1の燃料極バッファ用スラリーとした。また、燃料極用スラリーに用いたアクリル粒子を12質量部(燃料極用スラリーの60%相当)を用いる以外は同様にして第2の燃料極バッファ用スラリーとした。
次いで、シール部原料と、ポリビニルブチラール系バインダーと、溶媒とを混合してシール部用スラリーとした。その後、図5B(a)に示すように、燃料極用スラリーとシール部用スラリーとを、複数の塗布口を有するドクターブレードを用いて、グリーンシートの中央に燃料極材料層102a、両端にシール部102bを備えるように燃料極用グリーンシート102を作製した。
次いで、図5B(b)に示すように、燃料極用グリーンシート102に、アクリル樹脂組成物を用いて、複数の直線状の流路形成材103が一定間隔を置いて整列したライン・アンド・スペース状の流路形成材103のパターンをスクリーン印刷法により作製した。その後、図5B(c)に示すように、かかるパターン印刷した燃料極グリーンシート102上に、ドクターブレード法で燃料極用スラリーを、流路形成材の高さの60%程度となるまで、流路形成材103間に直接積層して燃料極材料層104aを形成した。なお、燃料極材料層104aの両端には、シール部用スラリーを用いてシール部104bを同時に形成した。この燃料極材料層104aを含む層を燃料極材料層104ともいう。
さらに、図5C(d)に示すように、ドクターブレード法で、第1の燃料極バッファ用スラリーを、流路形成材103を含む全体を覆うように一定の厚みで積層してコルゲート状の第1の燃料極バッファ材料層105aを形成した。このときも両端にシール部105bを同時に形成した。この第1の燃料極バッファ材料層105aを含むコルゲート状の層を第1の燃料極バッファ材料層105ともいう。
次いで、図5C(e)に示すように、ドクターブレード法で燃料極側インターコネクタ用スラリーを第1の燃料極バッファ材料層105に倣うコルゲート状に付与して燃料極側インターコネクタ材料層106を形成した。
その後、図5C(f)に示すように、空気極側インターコネクタ用スラリーを、流路形成材103に起因する凸部間を充填し、燃料極側インターコネクタ材料層106を覆うように積層して、空気極側インターコネクタ材料層107を含むグリーンシート110を作製した。
(空気極用グリーンシート)
空気極原料100質量部に対して平均粒子径10μm及び平均粒径の±0.1σに50%以上の粒子が分布するアクリル粒子を20質量部添加し、この混合粉末と、ポリビニルブチラール系バインダーと、溶媒とを混合して空気極用スラリーとした。その後、図5D(a)に示すように、空気極用スラリーとシール部用スラリーとを、複数の塗布口を有するドクターブレードを用いて、グリーンシートの中央に空気極材料層112a、両端にシール部112bを備えるように空気極用グリーンシート112を作製した。
次いで、図5D(b)に示すように、空気極用グリーンシート112に、アクリル樹脂組成物を用いて、複数の直線状の流路形成材が一定間隔を置いて整列したライン・アンド・スペース状の流路形成材113のパターンをスクリーン印刷法により作成した。その後、図5D(c)に示すように、かかるパターン印刷した空気極グリーンシート112上に、ドクターブレード法で空気極用スラリーを、流路形成材113の高さの全体及び流路形材113の天面を覆うように、直接積層して空気極材料層114aを形成した。このときも両端にシール部114bを同時に形成して、空気極用グリーンシート115を作製した。
(拘束層用グリーンシート)
図5A(b)に示すように、拘束層原料と、ポリビニルブチラール系バインダーと、溶媒と、を混合して非多孔質拘束層用スラリーとし、ドクターブレード法で非多孔質拘束層用グリーンシート120を作製した。
図5A(b)に示すように、拘束層の原料100質量部に対してアクリル粒子を10質量部添加した混合物と、ポリビニルブチラール系バインダーと、溶媒と、を混合して多孔質拘束層用スラリーとし、ドクターブレード法により、多孔質拘束層用グリーンシート121を作製した。
(2−2)グリーンシートの積層及びSOFCスタックの作製
ついで、作製した各種グリーンシートを、以下の順序で積層した。すなわち、図6A(a)〜(b)に示すように、多孔質拘束層用グリーンシート121を積層し、非多孔質拘束層用グリーンシート120を積層し、更に空気極用グリーンシート115を積層した。さらに固体電解質用グリーンシート101を積層し、ついで、図6A(c)に示すように、燃料極用グリーンシート110の燃料極層が接するように積層して、最下層のセル前駆体201を形成した。さらに、図6B(d)に示すように、燃料極用グリーンシート110の空気極側インターコネクタ材料層107に対して、空気極用グリーンシート115、固体電解質用グリーンシート101及び燃料極用グリーンシート110を積層して、第2のセル前駆体202を形成した。さらに、図6B(e)に示すように、同様に、グリーンシートを積層して第3のセル前駆体203を形成し、この空気極側インターコネクタ材料層107に対して、非多孔質拘束層用グリーンシート120を積層し、さらに、多孔質拘束層用グリーンシート121を積層して、本実施例のスタック前駆体130を得た。
(2−3)焼成
このスタック前駆体130を、100MPa、80℃の温度で2分間、冷間等方圧プレス(CIP)することにより圧着した。この圧着体を温度400℃で脱脂処理を施した後、温度1400℃で2時間保持することにより、焼成して実施例のスタックを得た。
なお、第1の燃料極バッファ層用スラリーに替えて第2の燃料極バッファ層用スラリーを用いる以外は、上記と同様にして別の実施例のスタックを得た。
焼成によって得られた実施例のスタックの概要を図6Cに示す。図6Cに示すように、本実施例のスタック30は、固体電解質6の厚みが約20μmであり、還元性ガス流路22の間の燃料極2の厚みが約50μmであり、還元性ガス流路22の厚みが約100μmであり、酸化性ガス流路24の間の空気極4の厚みが約50μm、酸化性ガス流路24の厚みが約200μmであり、燃料極側インターコネクタ(第1の層)12の厚みが約10μmであり、空気極側インターコネクタ(第2の層)14の厚みが約10〜100μm(最少部分〜最大部分)であった。
なお、比較例として、以下の態様のSOFCスタックも同時に作製した。すなわち、インターコネクタの第2の層材料を、La0.8Sr0.2MnO350質量%と「3YSZ」45質量%とセリア5質量%との混合物に替えて、La0.8Sr0.2MnO350質量%と「8YSZ」45質量%とセリア5質量%との混合物を用いた以外は、上記したSOFCスタックと同一の製造工程で作製して比較例1のSOFCスタックを作製した。また、グリーンシート110において、第1の燃料極バッファ用スラリーを、流路形成材103の高さ全体を覆うような厚みで付与して燃料極材料層の表面を平坦にする以外は、上記したSOFCスタックと同一の製造工程で比較例2のSOFCスタックを作製した。さらに、第1の燃料極バッファ層を備えないようにする以外は、上記したSOFCスタックと同一の製造工程で比較例3のSOFCスタックを作製した。
本実施例のスタックは、インターコネクタとして第1の層及び第2の層を備えることにより、優れた一体性と電気伝導性を備えるスタックが得られたことを確認した。例えば、空気極側インターコネクタ(第2の層)において固体電解質に含まれる元素の酸化物材料として3YSZを用いたときの、空気極/空気極側インターコネクタ/燃料極側インターコネクタ/燃料極の電気抵抗値は0.13Ω・cm2であったのに対し、3YSZに替えて8YSZを用いた比較例1では、0.54Ω・cm2であった。
また、本実施例のスタックは、ガス流路に基づく凸状部を備える電極(燃料極)に対して、燃料極側インターコネクタ(第1の層)を追従させてコルゲート状の燃料極側インターコネクタとするとともに、燃料極インターコネクタの凸部でない部分を充填するように空気極側インターコネクタ(第2の層)を備えるようにしたことで、燃料極の体積を抑制することができた。これにより、SOFCの起動及び停止に伴う酸化還元による燃料極ひいてはスタックの体積変動を抑制することができる。例えば、比較例2のスタックにおけるNiの全使用量を100とすると、本実施例のスタックのNi使用量は40%であった。
また、本実施例のスタックは、燃料極バッファ層を備えることにより、燃料極と燃料極側インターコネクタ(第1の層)との密着性及び一体性が良好となり、また、燃料極の凸状部によく倣うことができ、還元性ガス流路の天面を良く覆うことができた。本実施例のスタックと比較例3(燃料極バッファ層なし)のスタックとの還元性ガス流路周辺の断面構造を顕微鏡観察により観察したところ、燃料極バッファ層により、燃料極側インターコネクタ(第1の層)によく密着していることがわかった。なお、燃料極よりも気孔率を低下させた第2の燃料極バッファ層を備える別の実施例のスタックも、燃料極と燃料極側インターコネクタ(第1の層)との密着性及び一体性が良好となり、燃料極の凸状部によく倣うことができ、還元性ガス流路の天面を良く覆うことができた。
また、拘束層を備えないセルは大きく変形した一方で、拘束層を備えたセルは平坦に焼結できた。

Claims (10)

  1. 燃料極と、固体電解質と、空気極とを有する単セルをインターコネクタを介して備える固体酸化物形燃料電池スタックであって、
    導電性セラミックス材料と前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む非多孔質層を含む拘束層を備える、スタック。
  2. 前記拘束層は、さらに、前記導電性セラミックス材料と前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料とを含む多孔質層を含む、請求項1に記載のスタック。
  3. 前記拘束層は、2以上の前記非多孔質層と2以上の前記多孔質層との積層構造を有する、請求項2に記載のスタック。
  4. 前記非多孔質層と前記多孔質層とが交互に積層されている、請求項3に記載のスタック。
  5. 前記拘束層を、前記固体酸化物形燃料電池スタックの少なくとも一方の終端部に備える、請求項1〜4のいずれかに記載のスタック。
  6. 前記固体電解質に含まれる元素の酸化物材料は、酸素イオン伝導性材料である、請求項1〜5のいずれかに記載のスタック。
  7. 少なくとも2つの前記単セルは、前記インターコネクタを介して焼結により一体化されている、請求項1〜6のいずれかに記載のスタック。
  8. 前記単セルの厚みは、100μm以上1000μm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のスタック。
  9. 前記燃料極の厚みは15μm以上500μm以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のスタック。
  10. 燃料極、固体電解質及び空気極を備える単セルを複数備える固体酸化物形燃料電池スタックの製造方法であって、
    少なくとも第1の単セルと第2の単セルとをインターコネクタを介して積層されたスタックを得るのにあたって、
    前記第1の単セルの前記燃料極の材料を含む燃料極材料層と、前記インターコネクタの材料を含むインターコネクタ材料層と、前記第2の単セルの前記空気極の材料を含む空気極材料層と、を少なくとも含む前記スタックの前駆体を、焼成により一体化する工程、
    を備え、
    前記前駆体は、導電性セラミックス材料と酸素イオン伝導性材料とを含む非多孔質層を形成可能な拘束層材料層を、前記前駆体の少なくとも一部に備える、製造方法。
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