JPWO2018030193A1 - 実験動物の腫瘍組織の評価に関する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、実験動物の腫瘍組織の評価に関する方法に関し、該方法は、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物における、前記腫瘍組織または腫瘍細胞を含む部位から採取された検体中の、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量を測定する工程を含む。
Description
本発明は、PDX(Patient-derived tumor xenograft:患者由来腫瘍異種移植)モデルなどの実験動物に対して適用される方法に関する。より詳しくは、本発明はそのような実験動物の腫瘍組織を評価するために用いることのできる方法に関する。
癌(腫瘍)の研究では、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞を免疫不全動物である実験動物に移植して作製されるモデル動物、例えばマウスを実験動物として用いて作製される担腫瘍マウスを、生体内の環境を再現した実験系として用いることがある。
担腫瘍マウスとしては、大きく分けて二つのタイプが知られている。一つは、患者から取り出した腫瘍細胞に由来する培養細胞をマウスに植え付け、マウス内で成長させることによって作製された培養細胞導入モデルマウス、もう一つは、患者から取り出した腫瘍組織または腫瘍細胞をマウスに植え付け、マウス内で成長させることによって作製された腫瘍組織移植モデルマウスである。このような担腫瘍マウスを用いることにより、ヒトを対象とする試験の前に行われる、創薬研究または非臨床試験の段階において、薬剤またはその候補物質の薬効や安全性(毒性)を調べることができる。また、様々な性質の癌患者由来のマウスを作製することができるので、比較評価することにより効果のある患者のプロファイルを見出すことも可能である。
前者の担腫瘍マウスは作製が容易であることから、古典的に実験動物としての地位が確立されている。このようなマウスの作製に用いる細胞は、試験管で培養することでクローン化したものであり、クローン化した細胞を移植したマウスは安定してクローン的要素を引き継ぐので、個体差の少ない担腫瘍マウスを使用したい試験には好適である。しかしながら、こうした担腫瘍マウスを使用した場合であっても、均一な性質の標本スライドを作製できない場合がしばしばあり、そのためこのようなマウスを用いて作製する標本スライドの製品化においては、内部標準の使用や出荷前検査によって、品質保証を実施している。
一方後者の腫瘍組織移植モデルマウスは、患者から取り出した腫瘍組織または腫瘍細胞を直接マウスに植え付けるという不安定性を抱えた手技が必要であるため、これまでは限られた施設での作製に限られていた。しかしながら近年、腫瘍細胞の複雑さがそれを生み出す成因(遺伝子変異など)を含めて維持され、またその複雑さが世代を超えて繰り返し再現されるため、このような担腫瘍マウスによる試験の重要性が認識されるようになった。
そのようなことがある程度の水準以上で実現できる可能性がある担腫瘍マウスとして、PDXモデルマウスが挙げられる。PDXとは、Patient-derived tumor xenograft(患者由来腫瘍異種移植)の略称であり、患者(ヒト)由来の腫瘍組織または腫瘍細胞をマウスまたはその他の実験動物に植え付けて、一定期間、マウス等の体内で成長させることをいう。PDXモデルマウスには、患者から摘出した腫瘍組織または腫瘍細胞を最初に移植した個体(初代:第0世代)と、初代の生体内で増殖させた腫瘍組織または腫瘍細胞(腫瘍部)を移植した個体(継代:第1世代、第2世代など)がある。
このようにして作製されたPDXモデルマウスには、試験管内で培養された細胞は用いられないため、PDXモデルマウスを用いることで、従来の担腫瘍マウスよりも実際のヒトの病態を高度に再現した形で、薬効や安全性を評価することができると考えられている。近年ではPDXモデルマウスを用いた非臨床的な試験方法による、診断・治療方法(診断または治療のための指標を得る方法)の開発が盛んになってきている。なお、PDXモデルは、マウスに限らず様々な実験動物について作製することが可能である。PDXモデルマウスおよびその他の各種の担腫瘍マウスについては、例えば非特許文献1を参照することができる。
ところで、PDXモデルの実験動物でも、継代することで、腫瘍部に含まれる腫瘍組織または腫瘍細胞の形質(発現遺伝子および発現タンパク質)が完全に保持されるとは限らず、変化が起きることが分かってきた。例えば、非特許文献2には、膀胱癌のPDXモデルマウスを作製したことが記載されているが、患者の違いやタンパク質の種類によって、元の患者の検体から形質が大きく変化したマウス、形質が変化しないマウス、また継代によって形質が徐々に変化するマウスなど、様々なマウスが示されている(例えばFigure 3参照)。すなわち、PDXモデルの実験動物は継代によって遺伝情報を引き継ぐものの、培養細胞導入モデルほどクローン化されておらず、これらの担腫瘍マウスから作製された標本スライドは同一とは言い難い。したがって、PDXモデルの実験動物を用いる場合には、培養細胞導入モデルを用いる場合以上に、作製された標本スライドの品質を保証するための検査が重要視される。
Sanmamed et al., Defining the optimal murine models to investigate immune checkpoint blockers and their combination with other immunotherapies, Annals of Oncology 00: 1-9, 2016
Jager et al., Patient-derived bladder cancer xenografts in the preclinical development of novel target therapies. Oncotarget, Vol.6, No. 25, 21522-21532
上述したようにPDXモデルマウスのような実験動物においても、初代PDXモデルマウスと継代PDXモデルマウスとの間で腫瘍細胞の形質が必ずしも完全に保持されているわけではなく、PDXモデルマウスの品質管理が十分とは言えない状況にある。そのようなPDXモデルマウスを用いて薬効等に関する試験を行っても、実際に患者に投与した結果を再現できているか否かは曖昧であり、解析がうまく行えないこともある。これがPDXモデルマウスが当初考えられていたほど浸透していない一因となっているのではないかと考えられる。
本発明の一実施形態では、PDXモデルマウスのような、患者(ヒト)由来の腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物の品質管理や、そのような実験動物を用いた試験結果の分析をより正確に行うための手段を提供する。
本発明者は、実験動物由来の繊維芽細胞や細胞外マトリックス、内皮細胞、さらにリンパ球、単球、その他の白血球などが、患者由来の腫瘍組織または腫瘍細胞を含む部位(腫瘍部)に浸潤することによって、腫瘍本来の性質から乖離していくことが上記問題の原因の一つではないかと考えた。そして、実験動物の腫瘍部から採取された腫瘍組織由来の検体における、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質、例えば上述したような実験動物由来の間質細胞の量を測定することにより、実験動物を使用する際に課題となる腫瘍組織の形質変化を検出し、実験動物の品質管理やより定量的な腫瘍の分析が可能となることを見出した。
すなわち、本発明は一つの側面において、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物において、前記腫瘍組織または腫瘍細胞を含む部位から採取された検体中に含まれる、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量を測定する工程を含む方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る方法により、ヒトの腫瘍細胞以外の物質の量、例えば実験動物由来の間質細胞の量を測定した結果、その量が比較的多い(例えば所定の基準値よりも多い)場合は、検体を採取した実験動物が保持する腫瘍組織は、患者ないし初代の実験動物の腫瘍組織と比較して形質が比較的大きく変化しているおそれがあり、抗癌剤等の薬剤はその実験動物およびそれから継代された実験動物に対して初代の実験動物とは異なる有効性を示す可能性がある。このような分析を行うことを可能とする本発明の方法を利用することにより、PDXモデルマウス等の各種の実験動物の品質管理や、そのような実験動物を用いた試験結果の分析を、これまでにない高い水準で正確に行うことができる。それにより、実験動物を用いた非臨床試験を様々な場面で積極的に活用できることが期待できる。
本発明の一実施形態に係る方法は、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物における、前記腫瘍組織または腫瘍細胞を含む部位(腫瘍部)から採取された検体中に含まれる、ヒトの腫瘍細胞以外の物質の量を測定する工程を含む。
本発明における「腫瘍」は、通常は悪性腫瘍を指し、皮膚や胃、腸の粘膜など上皮性細胞から発生した悪性腫瘍である「癌」(英語ではcancer・carcinoma);筋肉、線維、骨、脂肪、血管、神経など非上皮性細胞から発生した悪性腫瘍である「肉腫」(英語ではsarcoma);造血臓器から発生した白血病や悪性リンパ腫などを包含する。本明細書では、一般的に「腫瘍組織」または「腫瘍細胞」という用語を用いて説明するが、典型的な実施形態として「癌組織」または「癌細胞」という用語を用いて説明する場合もある。
本発明では「実験動物」として、ヒトに由来する腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物、すなわち一般的に担腫瘍動物と呼ばれている実験動物を使用する。PDXモデルを作製する際には通常、移植されたヒトに由来する腫瘍組織または腫瘍細胞に対する拒絶反応を抑制するため、免疫不全動物が用いられる。動物種の例としては、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、フェレット、イヌ、ミニブタ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジなど、ある程度の遺伝学的な制御がなされており、均質な遺伝的要件を備えている動物が挙げられる。
実験動物に移植される「ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞」は、第0世代の実験動物については、ヒト(患者)から採取した腫瘍組織または腫瘍細胞、あるいは培養細胞株として確立されたヒト由来の腫瘍細胞を指し、第n世代(n≧1)の実験動物については、そのような第0世代に移植された腫瘍組織または腫瘍細胞を起源とする、第n−1世代の実験動物の体内で生長した腫瘍組織または増殖した腫瘍細胞を指す。本発明の一実施形態に係る方法は、腫瘍部に含まれる腫瘍組織または腫瘍細胞の形質の変化が比較的大きい、第0世代においてヒト(患者)から採取した腫瘍組織または腫瘍細胞が移植され、継代された第n世代の実験動物(PDXモデルマウス等)に対して、品質の向上等のために適用することが好ましいが、そのような形質の変化が比較的小さい、第0世代において培養細胞株として確立されたヒト由来の腫瘍細胞が移植され、継代された第n世代の実験動物(である培養細胞導入モデルマウス等)に対して、さらなる品質の向上等のために適用することも可能である。
実験動物において、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞を移植する場所は、皮下、皮内、臓器、頭蓋内など、特に限定されるものではなく、例えば実験動物がマウスであれば、操作の簡易性や検体採取の容易さ等の観点から、背部もしくは側腹部の皮下に移植することが好ましい。
ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞を実験動物に移植し、腫瘍を担持させるための手法は特に限定されるものではなく、公知の手法を用いることができる。例えばマウスであれば、PDXによる担腫瘍モデルマウスの作製手法を用いることが好適であり、作製済みの担腫瘍モデルマウスを購入できる環境も整っている。一方、患者から取り出した腫瘍細胞に由来する培養細胞を移植した担腫瘍モデルマウスも公知の手法で作製することができ、また様々な機関から入手することもできる。
患者から取り出した培養がん細胞が移植されたマウスとしては、CDX(Cell-line derived xenograft)モデルマウスが挙げられ、ヒトに由来する腫瘍組織または腫瘍細胞が移植されたマウスとしては、PDX(Patient derived xenograft)モデルマウスのほか、Immuno-avatarモデルマウス、造血リンパ系ヒト化(Hemato-lymphoid humanized)モデルマウス、Immune-PDXモデルマウスなどが挙げられる(Sanmamed et al., Annals of Oncology 00: 1-9, 2016)。
各世代の実験動物が保持する「腫瘍部」は、上述したような「ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞」を含む部位であり、そこから「検体」が採取される。腫瘍部には、ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞とともに、「ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質」も含まれている。本発明では、腫瘍部から採取された検体に含まれる「ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質」の量を測定する。測定の対象とするヒト由来の腫瘍細胞以外の物質は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
本明細書において、本発明において必ず量を測定する「ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質」を「第1目的物質」、本発明の好ましい実施形態においてさらに量を測定する「薬効評価の対象となるヒト由来の腫瘍細胞が有する物質」を「第2目的物質」と呼ぶことがある。
本明細書において「検体」は、上述したように実験動物が保持する腫瘍部から作製する。実験動物から腫瘍部を採取する方法は特に限定されないが、メスを用いて腫瘍部の全体を摘出してもよいし、生検針を用いて腫瘍部の一部を採取してもよい。採取する腫瘍が一部であり、その後実験動物を抗がん剤などの薬効試験に用いることが可能なため、生検針を用いて採取することが好ましい。
腫瘍部から採取された「検体」は、例えば病理診断において、免疫染色法により目的とするタンパク質の発現量を評価する際などに従来慣用されているような、所定の手順に従って作製された標本スライドの形態が好ましい。本発明の一実施形態に係る方法は、そのような検体を用いて、実験動物の生体外において実施される。
腫瘍部またはそこから採取された検体に含まれる「ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質」は、典型的には、「実験動物由来の間質」または「ヒト由来の腫瘍組織の間質」である。実験動物由来の間質は、実験動物の生体内の腫瘍部に混入した実験動物由来の組織である。一方、ヒト由来の腫瘍組織の間質は、ヒトに由来する腫瘍組織または腫瘍細胞が移植されたマウスにおいて、第0世代の実験動物に移植した、ヒト(患者)から採取した腫瘍組織に含まれていた間質または該間質に由来する組織である。腫瘍組織ないし検体中に占める実験動物由来の間質の割合が大きいほど、相対的にヒト由来の腫瘍組織の間質の割合は小さくなる。
「間質」は主に、線維芽細胞、内皮細胞、白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球)などの間質細胞と、コラーゲン、プロテオグリカンなどのタンパク質からなる細胞外マトリックスとによって構成される。本発明の一実施形態では、そのような間質細胞および細胞外マトリックスのどちらの量を測定してもよいが、実験動物が担持するヒト由来の腫瘍組織の形質に対する影響がより大きいと考えられる、間質細胞の量を測定することが好ましい。また、線維芽細胞は代表的な間質細胞であり、その量を測定することが好ましい。
ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質として間質細胞を選択する場合、その量を測定する方法は特に限定されるものではなく、公知の各種の方法を利用することができる。例えば、間質細胞マーカー、つまり間質細胞をその他の細胞から区別することのできる、間質細胞の表面(細胞膜)に発現しているマーカータンパク質を利用し、そのマーカータンパク質に対応する抗体を用いた免疫染色法により間質細胞の量を測定することが好ましい。また、間質細胞をその他の細胞、少なくともヒト由来の腫瘍細胞から区別することができるのであれば、マーカータンパク質以外のタンパク質や、マーカータンパク質またはその他のタンパク質に関係する核酸(mRNA等)、タンパク質を修飾する糖などを利用して、間質細胞を染色し、その量を測定してもよい。
本発明の一実施形態において、上述したような間質細胞マーカー等は、それ自体を「ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質」に位置づけることも可能である。間質細胞マーカー等は、間質細胞の量を反映する物質であり、間質細胞の量が多ければ間質細胞マーカーの量もそれにほぼ比例して多くなるため、間質細胞マーカー等の量を、間質細胞の量の代替とみなして測定してもよい。
間質細胞マーカーとしては、例えば以下に示すような膜タンパク質の中から適切なものを選択して利用することができる。一例を挙げれば、CD140aは、線維芽細胞、巨核球、単球、赤血球、骨髄系前駆細胞、内皮細胞などの細胞表面に発現する膜タンパク質であり、本発明の一実施形態における間質細胞マーカーとして好ましい。
CD106(VCAM-1, INCAM-110; CD49d/CD29-L)…活性化血管内皮細胞、樹状細胞(DC)
CD109(Platelet activation factor, 8A3, E123)…活性化T細胞、血小板、血管内皮、巨核球、CD34+前駆細胞サブセット
CD140a(PDGF-R, PDGFR2)…繊維芽細胞、巨核球、単球、赤血球、骨髄系前駆細胞、内皮細胞
CD140b(PDGF-R, PDGFR1)…内皮細胞、ストローマ細胞
CD141(Thrombomodulin)…血管内皮、骨髄系細胞、血小板、平滑筋
CD142(Tissue Factor(TF), Thromboplastin)…上皮細胞、活性化単球、活性化血管内皮
CD143(ACE; アンジオテンシン転換酵素)…血管内皮、上皮細胞、活性化マクロファージ
CD144(VE-Cadherin, Cadherin-5:血管内皮の透過性に関与)…血管内皮
CD145(7E9, P7A5)…内皮細胞
CD146(MUC18, s-endo, Mel-CAM)…血管内皮、活性化T細胞、黒色腫
CD147(Basigin, M6, EMMRRIN)…白血球、赤血球、血管内皮、血小板
CD201(EPCR:プロテインCレセプター)…血管内皮
CD202(TIE2, TEK; Angiopoietin-1-R)…血管内皮、造血幹細胞サブセット
CD280(Endo180,TEM22,uPARAP(uPAR-associated protein);骨髄前駆細胞,繊維芽細胞,内皮細胞サブセット,マクロファージサブセット
CD299(DC-SIGN-related, L-SIGN(Liver/Lympho node specific ICAM3-grabbing nonintegrin))…内皮細胞
CD309(VEGFR2: Vascular endothelial growth factor receptor2, KDR)…内皮細胞、巨核球、血小板、幹細胞サブセット
CD322(JAM2: Junctional adhesion molecule 2)…内皮細胞、単球、B細胞、T細胞サブセット
CD331(FGFR1: Fibroblast growth factor receptor1)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD332(FGFR2, Keratinocyte growth factor receptor)…上皮細胞
CD333(FGFR3, JTK4; Achondroplasia, Thanatophoric dwarfism)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD334(FGFR4, JTK2, TKF)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD339(Jagged-1, JAG1; Alagille syndrome)…ストローマ細胞、上皮細胞。
CD106(VCAM-1, INCAM-110; CD49d/CD29-L)…活性化血管内皮細胞、樹状細胞(DC)
CD109(Platelet activation factor, 8A3, E123)…活性化T細胞、血小板、血管内皮、巨核球、CD34+前駆細胞サブセット
CD140a(PDGF-R, PDGFR2)…繊維芽細胞、巨核球、単球、赤血球、骨髄系前駆細胞、内皮細胞
CD140b(PDGF-R, PDGFR1)…内皮細胞、ストローマ細胞
CD141(Thrombomodulin)…血管内皮、骨髄系細胞、血小板、平滑筋
CD142(Tissue Factor(TF), Thromboplastin)…上皮細胞、活性化単球、活性化血管内皮
CD143(ACE; アンジオテンシン転換酵素)…血管内皮、上皮細胞、活性化マクロファージ
CD144(VE-Cadherin, Cadherin-5:血管内皮の透過性に関与)…血管内皮
CD145(7E9, P7A5)…内皮細胞
CD146(MUC18, s-endo, Mel-CAM)…血管内皮、活性化T細胞、黒色腫
CD147(Basigin, M6, EMMRRIN)…白血球、赤血球、血管内皮、血小板
CD201(EPCR:プロテインCレセプター)…血管内皮
CD202(TIE2, TEK; Angiopoietin-1-R)…血管内皮、造血幹細胞サブセット
CD280(Endo180,TEM22,uPARAP(uPAR-associated protein);骨髄前駆細胞,繊維芽細胞,内皮細胞サブセット,マクロファージサブセット
CD299(DC-SIGN-related, L-SIGN(Liver/Lympho node specific ICAM3-grabbing nonintegrin))…内皮細胞
CD309(VEGFR2: Vascular endothelial growth factor receptor2, KDR)…内皮細胞、巨核球、血小板、幹細胞サブセット
CD322(JAM2: Junctional adhesion molecule 2)…内皮細胞、単球、B細胞、T細胞サブセット
CD331(FGFR1: Fibroblast growth factor receptor1)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD332(FGFR2, Keratinocyte growth factor receptor)…上皮細胞
CD333(FGFR3, JTK4; Achondroplasia, Thanatophoric dwarfism)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD334(FGFR4, JTK2, TKF)…繊維芽細胞、上皮細胞
CD339(Jagged-1, JAG1; Alagille syndrome)…ストローマ細胞、上皮細胞。
検体中の、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量は一般的に、標本スライドの暗視野または明視野における観察および撮像により測定し、通常は、一つの視野に含まれる量、または複数の視野に含まれる量の平均値として求められる。
本発明の一実施形態に係る方法では、第1目的物質(および第2目的物質)の量を測定するほかに、必要に応じて、同じ標本スライドを用いて、第1目的物質(および第2目的物質)を有する細胞の種類、数、形態、発現部位(腫瘍組織中または検体中の分布、専有面積)等のさらなる情報を得るようにしてもよい。
また、第1目的物質および/または第2目的物質の量の測定結果と、上記のようなさらなる情報と組み合わせることで、1つまたは2つ以上の新たな情報を導き出し、それを所望の用途に利用することも可能である。そのような新たな情報としては、例えば、検体(標本スライド)における、(i)第1目的物質および/または第2目的物質の細胞1個あたりの量(平均の量)、(ii)第1目的物質および/または第2目的物質の組織の単位面積あたりの量、(iii)第1目的物質および/または第2目的物質の細胞1個あたりの量とそれに対応する細胞数によって表されるヒストグラム、(iv)第1目的物質および/または第2目的物質の細胞あたりの発現量とそれに対応する細胞数によって表される曲線、などに関する情報が挙げられる。以下、各情報の求め方について、第1目的物質または第2目的物質としてタンパク質を選択し(以下「目的タンパク質」と呼ぶ。)、蛍光ナノ粒子を用いた免疫染色法によりその発現量を測定する実施形態に沿って記載する。
(i)目的タンパク質の細胞1個あたりの平均発現量を定量する場合、例えば、検体(標本スライド)を蛍光ナノ粒子により免疫染色すると共に、形態観察用染色剤(例えばエオジン)によって細胞の形状が特定できるように染色する。蛍光ナノ粒子に対応する所定の波長を有する励起光を照射しながら行われる、暗視野における観察および撮像により、目的タンパク質を標識した蛍光ナノ粒子が輝点として表れている画像を取得する。一方で、明視野における観察および撮像により、細胞の形状を表すように染色されている画像を取得する。これらの2枚の画像を、画像処理により重ねあわせると、画像全体、または画像中の特定の領域(例えば腫瘍組織のみ)に含まれる、個々の細胞について、発現している目的タンパク質を表す輝点数を計測することができる。計測した輝点数を目的タンパク質の発現量の指標値としてもよい。また、複数の蛍光ナノ粒子が1つの輝点を形成している場合もあるので、ある1つの輝点の明るさ(輝度、蛍光強度)を、別途測定しておいた蛍光ナノ粒子1つあたりの明るさで割ることにより、その輝点に含まれる蛍光ナノ粒子の数を算出することができ、その粒子数を目的タンパク質の発現量の指標値として用いてもよい。画像に含まれる全ての細胞について輝点数または粒子数を求めることにより、細胞当たりの平均発現量を定量することが可能である。
(ii)目的タンパク質の組織の単位面積あたりの発現量を定量する場合、(i)と同様にして画像中の特定の領域にある組織における輝点数または粒子数の総和を求めた後、その組織の面積で割るようにすればよい。
(iii)目的タンパク質の細胞1個あたりの発現量とそれに対応する細胞数によって表されるヒストグラムを作成する場合、まず、(i)と同様にして、画像全体、または画像中の特定の領域(例えば腫瘍組織のみ)に含まれる、個々の細胞について、発現している目的タンパク質を表す輝点数または粒子数を計測する。そして、横軸に細胞あたりの目的タンパク質の発現量を所定の数ごとに区切ってとり、それぞれの区切りに対応する細胞数(頻度)を計測して縦軸にとることにより、ヒストグラムを作成することができる。
(iv)目的タンパク質の細胞1個あたりの発現量とそれに対応する細胞数によって表される曲線を作成する場合、まず、(i)と同様にして、画像全体、または画像中の特定の領域(例えば腫瘍組織のみ)に含まれる、個々の細胞について、発現している目的タンパク質を表す輝点数または粒子数を計測する。そして、細胞あたりの目的タンパク質の発現量を連続的に(ヒストグラムのように区切らずに)横軸にとり、それぞれの発現量に対応する細胞数(頻度)を計測して縦軸にとることにより、曲線を作成することができる。
上記(iii)のヒストグラムおよび(iv)の曲線からは、分布(ヒストグラムまたは曲線の形状、ピークの数)がどのようになっているか、平均値または中央値、分散(CV)がどのような値か、また特にヒストグラムの場合、細胞1個あたりの輝点数または粒子数について最大の区切りがどの程度の細胞数(頻度)になっているか、などの情報を得ることができる。
ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質(第1目的物質)の量の測定方法は、所望の精度で第1目的物質の量を測定することができる限り、特に限定されるものではない。例えば、第1目的物質として間質細胞を選択する場合、前述したように間質細胞マーカーを利用した免疫染色法によりその量を測定することができる。本発明の一実施形態における好ましい実施形態として、下記の2つの代表的な測定方法を用いる実施形態が挙げられる。
測定方法の第1の実施形態(第1測定方法)は、蛍光ナノ粒子、すなわち、量子ドット(集積化していないもの)、または蛍光色素や量子ドットなどの蛍光体を樹脂等を母体として集積させた蛍光体集積粒子(Phosphor Integrated Dot:PID)のように、直径がナノサイズの粒子を用いて、第1目的物質(例えば間質細胞の数またはそれとほぼ比例する間質細胞マーカーの数)を標識し、定量する手法である。中でも、後述する実施例において開示されているような、PIDを用いる測定方法(本明細書において「PID法」と称する。)は、第1目的物質の検出感度に優れ、正確な定量が行えるため特に好ましい。例えば、間質細胞ないしその細胞膜に発現している間質細胞マーカーを第1目的物質とする場合、それらの第1目的物質の量と、蛍光ナノ粒子、好ましくはPIDによって生じる輝点数、ないし第1目的物質に結合する粒子数(1つの輝点の輝度を1粒子あたりの輝度で割ることにより、その輝点に含まれる粒子数を算出することができる)との間には正の相関関係が成り立ち、第1目的物質の量が多いほど当該輝点数ないし粒子数は多くなる傾向にある。
PID法を用いてタンパク質を定量するための基本的な実施形態は、国際公開第2012/029752号、国際公開第2013/035703号、またはその他の特許文献または非特許文献により公知である。本発明の一実施形態でも、例えば標本スライドを用いて病理診断を行う場合に準じた実施形態で、PID法を実施することができる。
測定方法の第2の実施形態(第2測定方法)は、従来のIHC(Immunohistochemistry:免疫組織化学)法において慣用されている、酵素と基質の反応を利用する染色法である。中でも、ペルオキシダーゼとジアミノベンジジン(DAB)との反応を利用するDAB染色法は、染色性に優れるため特に好ましい。DAB染色法を用いる場合、第1目的物質を酵素(ペルオキシダーゼ)で標識した後、基質であるジアミノベンジジン(DAB)を反応させて色素を生じさせることにより、第1目的物質の周辺は褐色に染色される。例えば、間質細胞ないしその細胞膜に発現している間質細胞マーカーを第1目的物質とする場合、それらの第1目的物質の量と、DABから生成した色素の量、すなわち褐色に染色された細胞数、ないし褐色に染色された領域が標本スライドの視野を占める面積比、あるいは褐色の濃さとの間には正の相関関係が成り立ち、第1目的物質の量が多いほど当該細胞数ないし面積比が高くなり、あるいは褐色は濃くなる傾向にある。
第1測定方法および第2測定方法によって得られる指標値、すなわち第1測定方法であれば蛍光体集積粒子(PID)の粒子数など、第2測定方法であれば酵素反応により生成した色素で染色された領域が標本スライドの視野に占める面積比などは、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量を反映したものとなっている。また、そのような指標値は、数個(例えば2〜5個)の数値範囲を設定して層別化(スコア化)するように、すなわち指標値が所定の範囲内にある検体同士をグループ化するようにして取り扱ってもよい。
また、第1目的物質の量は、蛍光ナノ粒子、好ましくはPIDのような蛍光標識体を用いる前記第1測定方法によって測定してもよいし、DAB染色のような酵素と基質の反応を利用する前記第2測定方法によって測定してもよいが、より定量性に優れ、精度の高い薬効の評価を行うことのできる前者によって測定することが好ましい。
本発明の一実施形態に係る方法は、好ましい実施形態においてはさらに、薬効評価の対象となるヒト由来の腫瘍細胞が有する物質の量を測定する工程を含む。
「薬効評価の対象となるヒト由来の腫瘍細胞が有する物質」、すなわち本発明の一実施形態における第2目的物質は特に限定されるものではなく、公知の様々な物質の中から選択することができる。測定の対象とする第2目的物質は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
第2目的物質としては、例えば、分子標的薬のターゲットとなる、腫瘍細胞に発現するタンパク質、具体的には、EGFR(HER1)、HER2、HER3、VEGFR、PD−L1、Bcr−Abr、Kit、ALK、JAK、Btk、PI3K、BRAF、mTOR、CDK4/6などが挙げられる。
また、第2目的物質としては、上記のような腫瘍細胞の膜タンパク質に関係する核酸、例えば当該膜タンパク質のmRNAや、HER2遺伝子のように腫瘍細胞において増幅することのある遺伝子、および腫瘍細胞の膜タンパク質を修飾する糖(糖鎖)、例えば腫瘍化することにより正常細胞とは異なるものとなる糖(糖鎖)も挙げられる。
第2目的物質は、前述した第1目的物質と同様の方法により、その量を測定することができる。例えば、第2目的物質としてタンパク質を選択する場合は、第1目的物質としてタンパク質を選択した場合と同様、そのタンパク質に対応する(特異的に結合する)抗体を用いた免疫染色法により量を測定することが好ましい。一方、第2目的物質として核酸または糖を選択する場合も、その核酸に対応する(相補的な塩基配列を有する)核酸プローブや、その糖を認識して結合するレクチンを用いて量を測定することが好ましい。
また、第2目的物質の量は、蛍光ナノ粒子、好ましくはPIDのような蛍光標識体を用いる前記第1測定方法によって測定してもよいし、DAB染色のような酵素と基質の反応を利用する前記第2測定方法によって測定してもよいが、より定量性に優れ、精度の高い薬効の評価を行うことのできる前者によって測定することが好ましい。
なお、DAB染色法は、乳癌細胞等の細胞膜におけるHER2タンパク質の発現量を評価し、抗HER2モノクローナル抗体(トラスツズマブ)を用いた治療の有効性を判定するための、標準化された検査方法において用いられている手法である(「HER2検査ガイド第三版」,トラスツズマブ病理部会作成,2009年9月参照)。この検査方法では、乳癌細胞の細胞膜の染色性およびその染色強度(染色パターン)に基づいて、3+(強く完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>30%である場合:陽性)、2+(弱〜中程度の完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞≧10%、または強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞≧10%〜≦30%である場合:equivocal)、1+(ほとんど識別できないほどかすかな細胞膜の染色がある癌細胞≧10%で、癌細胞は細胞膜のみが部分的に染色されている場合:陰性)および0(細胞膜に陽性染色がない、あるいは細胞膜の陽性染色がある癌細胞>10%である場合(細胞膜に限局する陽性染色は判定対象外):陰性)の4段階のスコアでHER2タンパク質の発現量を評価する。このようなHER2の発現量の評価方法は、やや定量性が低いかもしれないが、本発明における第2目的物質の量の測定方法の一実施形態として、本発明において利用することができる。
本発明の一実施形態に係る方法の用途、より具体的には本発明の一実施形態に係る方法により測定される、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量ないしその量を反映した指標値の用途は、特に限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係る方法は、例えば次のようにして、実験動物の品質管理のために使用することができる。ある世代の実験動物の腫瘍部から腫瘍組織の切片を2つ作製し、そのうちの1つは検体として標本スライドを作製し、もう1つは別個体の免疫不全動物に移植して次世代の実験動物を作製する。上記標本スライドについて本発明一実施形態に係るの方法を用いて得られた第1目的物質の量の測定値(ないし階層化したときのスコア)と、上記次世代の実験動物に薬剤(抗癌剤)を投与したときの薬効に関する情報とを関連づけることができる。仮に、第1目的物質の量が異なる場合に、次世代の実験動物に対する薬効の異なる、例えば第1目的物質の量が少ないと薬効が大きく、第1目的物質の量が少ないと薬効が小さいといった傾向が見られるとすれば、その第1目的物質の量は実験動物の品質、すなわち薬剤の有効性に影響を与える可能性がある。その場合、製品化する実験動物は、腫瘍部における第1目的物質の量が、薬剤の有効性に影響を与えない所定の範囲に収まっている実験動物またはそれから継代された実験動物に限定することが考えられる。
このような分析は、第1目的物質の量(検体中ないし顕微鏡観察時の視野中の全量)そのものではなく、前述したようなその他の情報と組み合わせることで導き出される新たな情報、例えば第1目的物質の細胞1個あたりの量に基づいて行うことも可能である。
さらに、本発明の一実施形態に係る方法において必要に応じて測定される、薬効評価の対象となるヒト由来の腫瘍細胞が有する物質の量ないしその量を反映した指標値の用途も、特に限定されるものではない。
例えば、上述したような第1目的物質の量と次世代の実験動物に対する薬効との関係とともに、第2目的物質の量と実験動物に対する薬効との関係も分析することにより、製品化する実験動物は、腫瘍部における第1目的物質および第2目的物質の量が、ともに薬剤の有効性に影響を与えない、それぞれ所定の範囲に収まっている実験動物またはそれから継代された実験動物に限定するといったように、より厳密な品質が行える可能性がある。
以下、実施例に基づいて本発明の好適な態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[作製例1]テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の作製
テキサスレッド(Sulforhodamine 101;シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の混合液にギ酸100μLを加え、混合液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その混合液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の混合液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、混合液に含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた粒子の1000個についてSEM観察を行い、平均粒子径を測定したところ、平均粒子径152nmであった。
テキサスレッド(Sulforhodamine 101;シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の混合液にギ酸100μLを加え、混合液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その混合液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の混合液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、混合液に含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた粒子の1000個についてSEM観察を行い、平均粒子径を測定したところ、平均粒子径152nmであった。
[作製例2]ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の作製
作製例1で得られた粒子0.1mgをEtOH1.5mL中に分散させ、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業社)2μLを加えて8時間反応させることで表面アミノ化処理を行なった。
作製例1で得られた粒子0.1mgをEtOH1.5mL中に分散させ、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業社)2μLを加えて8時間反応させることで表面アミノ化処理を行なった。
次いで、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて上記表面アミノ化処理を行なった粒子を3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社、succinimidyl-[(N-maleimidopropionamido)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10,000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことでマレイミド修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を得た。
一方、ストレプトアビジン(和光純薬社)について、N-succinimidyl S-acetylthioacetate(SATA)を用いてチオール基付加処理を行ったのち、ゲルろ過カラムによるろ過を行なうことで、マレイミド修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子に結合可能なストレプトアビジン溶液を得た。
上記マレイミド修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子と上記処理によりチオール基を付加したストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、室温で1時間反応させた。その後、10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた混合液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を作製した。
[実施例1]
以下の手順に従って、第1世代のPDXマウスの腫瘍組織における第1目的物質(タンパク質)であるCD140aの発現量の測定と、第2世代のPDXマウスにおける抗癌剤の薬効の判定を行った。実施例1の概念図を図1に示す。
以下の手順に従って、第1世代のPDXマウスの腫瘍組織における第1目的物質(タンパク質)であるCD140aの発現量の測定と、第2世代のPDXマウスにおける抗癌剤の薬効の判定を行った。実施例1の概念図を図1に示す。
[実施例1−1]PIDを用いてCD140aの発現量を測定する実施形態
DAB染色によるHER2検査で3+と評価された乳癌患者から採取した同一の乳癌組織(約3mm角)を免疫不全マウスに移植したPDXマウス(第0世代:P0)を10個体購入した。このPDXマウス(P0)を飼育していき、腫瘍を3日ないし4日おきに計測して腫瘍体積が500mm3となったところでメスを用いて腫瘍組織を摘出した。腫瘍体積は、ノギスを用いて腫瘍部分の長径および短径を計測し、(長径)×(短径)×(短径)×0.5(mm3)の計算式から求めた。加熱滅菌処理したメス、カッターを用いて、摘出した腫瘍組織から約3mm角の切片を10個作製した。
DAB染色によるHER2検査で3+と評価された乳癌患者から採取した同一の乳癌組織(約3mm角)を免疫不全マウスに移植したPDXマウス(第0世代:P0)を10個体購入した。このPDXマウス(P0)を飼育していき、腫瘍を3日ないし4日おきに計測して腫瘍体積が500mm3となったところでメスを用いて腫瘍組織を摘出した。腫瘍体積は、ノギスを用いて腫瘍部分の長径および短径を計測し、(長径)×(短径)×(短径)×0.5(mm3)の計算式から求めた。加熱滅菌処理したメス、カッターを用いて、摘出した腫瘍組織から約3mm角の切片を10個作製した。
PDXマウス(P0)10個体から作製した各10個の切片、計100個の切片を別の免疫不全マウス(第1世代:P1)100個体に継代し、PDXマウス(P1)とした。先程と同様にPDXマウス(P1)を飼育していき、腫瘍を3日ないし4日おきに計測して腫瘍体積が500mm3となったところでメスを用いて腫瘍組織を摘出した。加熱滅菌処理したメス、カッターを用いて、摘出した腫瘍組織から約3mm角の切片を2個作製した。
2個の切片のうち1つは、繊維芽細胞や巨核球、単球、赤血球、骨髄系前駆細胞、内皮細胞の細胞表面に発現が見られるCD140aと呼ばれる抗原の発現量を測定するための、標本スライドの作製に使用した。残りの1つは後述する第2世代:P2への継代に使用した。
<CD140aの発現量の測定>
(標本スライド作製工程)
上記のように作製したPDXマウス(P1)の腫瘍組織の約3mm角の切片2個のうちの1個を、10%中性緩衝ホルマリン(武藤化学社)に24時間浸漬し、ホルマリン固定処理を行った。その後、固定処理を行った腫瘍組織を100%エタノール中で1晩、99.5%エタノール中で30分×5回、100%エタノール中で30分の順で処理することで脱水した。脱水後、キシレンに30分×2回浸漬することで腫瘍組織中のエタノールをキシレンに置換した。該切片を60℃に設定したパラフィン溶融器中で溶融したパラフィンに30分、4回浸漬させることで、パラフィン包埋処理を行った。包埋処理を行ったパラフィンブロックをミクロトームにより薄切して標本スライドを作製した。
(標本スライド作製工程)
上記のように作製したPDXマウス(P1)の腫瘍組織の約3mm角の切片2個のうちの1個を、10%中性緩衝ホルマリン(武藤化学社)に24時間浸漬し、ホルマリン固定処理を行った。その後、固定処理を行った腫瘍組織を100%エタノール中で1晩、99.5%エタノール中で30分×5回、100%エタノール中で30分の順で処理することで脱水した。脱水後、キシレンに30分×2回浸漬することで腫瘍組織中のエタノールをキシレンに置換した。該切片を60℃に設定したパラフィン溶融器中で溶融したパラフィンに30分、4回浸漬させることで、パラフィン包埋処理を行った。包埋処理を行ったパラフィンブロックをミクロトームにより薄切して標本スライドを作製した。
(免疫染色工程)
・賦活化処理
標本スライドは脱パラフィン処理した後、組織中のキシレンを水に置換するための洗浄を行った。洗浄した標本スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。賦活化処理後の標本スライドをPBSにより洗浄し、洗浄した標本スライドに対してBSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、室温で15分間ブロッキング処理を行った。
・賦活化処理
標本スライドは脱パラフィン処理した後、組織中のキシレンを水に置換するための洗浄を行った。洗浄した標本スライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。賦活化処理後の標本スライドをPBSにより洗浄し、洗浄した標本スライドに対してBSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、室温で15分間ブロッキング処理を行った。
・抗原抗体反応処理(CD140aに係る免疫染色用の1次反応処理)
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、ビオチン修飾抗マウスCD140aラットモノクローナル抗体(クローン:APA5、BioLegend社)を5μg/mLの濃度で含有する1次反応処理液を調製した。この1次反応処理液に賦活化処理工程を終えた標本スライドを浸漬し、4℃で1晩反応させた。
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、ビオチン修飾抗マウスCD140aラットモノクローナル抗体(クローン:APA5、BioLegend社)を5μg/mLの濃度で含有する1次反応処理液を調製した。この1次反応処理液に賦活化処理工程を終えた標本スライドを浸漬し、4℃で1晩反応させた。
・蛍光標識処理(2次反応処理)
作製例2で作製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド色素集積メラミン樹脂粒子を、カゼインおよびBSAを含有する蛍光ナノ粒子用希釈液を用いて0.02nMに希釈した蛍光標識反応処理液を調製した。抗原抗体反応処理工程を終えた標本スライドをPBSで5分間×3回洗浄後、この蛍光標識反応処理液に浸漬し、中性のpH環境下(pH6.9〜7.4)、室温にて3時間反応させた。
作製例2で作製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド色素集積メラミン樹脂粒子を、カゼインおよびBSAを含有する蛍光ナノ粒子用希釈液を用いて0.02nMに希釈した蛍光標識反応処理液を調製した。抗原抗体反応処理工程を終えた標本スライドをPBSで5分間×3回洗浄後、この蛍光標識反応処理液に浸漬し、中性のpH環境下(pH6.9〜7.4)、室温にて3時間反応させた。
(形態観察用染色工程)
蛍光標識処理を行った標本スライドを、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った後、室温の流水で10分間洗浄した。
蛍光標識処理を行った標本スライドを、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った後、室温の流水で10分間洗浄した。
(脱水・透徹・封入工程)
免疫染色工程および形態観察用染色工程を終えた標本スライドを、100%エタノールに浸漬する操作を4回行う固定化・脱水処理を行った。続いて、その標本スライドをキシレンに浸漬する操作を4回行う透徹処理を行った。最後に、標本スライドに封入剤「エンテランニュー」(メルク社)を載せて、カバーガラスを被せる封入処理を行い、観察に用いる標本スライド(CD140a/PID染色標本スライド)とした。
免疫染色工程および形態観察用染色工程を終えた標本スライドを、100%エタノールに浸漬する操作を4回行う固定化・脱水処理を行った。続いて、その標本スライドをキシレンに浸漬する操作を4回行う透徹処理を行った。最後に、標本スライドに封入剤「エンテランニュー」(メルク社)を載せて、カバーガラスを被せる封入処理を行い、観察に用いる標本スライド(CD140a/PID染色標本スライド)とした。
(PID染色標本スライド評価工程)
・観察・撮影工程
この工程における励起光の照射および蛍光の発光の観察には蛍光顕微鏡「BX−53」(オリンパス株式会社)を用い、免疫染色像(400倍)の撮影には、当該蛍光顕微鏡に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いた。
・観察・撮影工程
この工程における励起光の照射および蛍光の発光の観察には蛍光顕微鏡「BX−53」(オリンパス株式会社)を用い、免疫染色像(400倍)の撮影には、当該蛍光顕微鏡に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いた。
まず、第1目的タンパク質であるCD140aの蛍光標識に用いたテキサスレッドに対応する励起光を標本に照射して蛍光を発光させ、その状態の免疫染色像を撮影した。この際、励起光の波長は、蛍光顕微鏡が備える励起光用光学フィルターを用いて575〜600nmに設定し、観察する蛍光の波長は、蛍光用光学フィルターを用いて612〜692nmに設定した。蛍光顕微鏡による観察および画像撮影時の励起光の強度は、視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないような範囲で調節し、例えば8000μ秒に設定した。
次に、蛍光顕微鏡の明視野における観察および画像撮影により、細胞の形態観察用のヘマトキシリン染色による染色像を撮影した。このような免疫染色像および形態観察用染色像の撮影は、同一視野において行った後、視野を変えて同じ操作を繰り返し、1つの標本スライドにつき5視野ずつ行った。
・画像処理・計測工程
この工程における画像処理には、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いた。視野(画面)上の輝点のうち輝度が所定の値以上のものの数を計測し、その輝点の輝度を蛍光体集積粒子(PID)1粒子あたりの輝度で除して粒子数に換算し、これをその視野におけるCD140aの発現量として取り扱った。5視野におけるCD140aの発現量(粒子数)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「PIDスコア」とした。
この工程における画像処理には、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いた。視野(画面)上の輝点のうち輝度が所定の値以上のものの数を計測し、その輝点の輝度を蛍光体集積粒子(PID)1粒子あたりの輝度で除して粒子数に換算し、これをその視野におけるCD140aの発現量として取り扱った。5視野におけるCD140aの発現量(粒子数)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「PIDスコア」とした。
<抗癌剤の薬効の判定>
前述したように作製した第1世代PDXマウス(P1)の腫瘍組織の約3mm角の切片2個のうち、標本スライドの作製に使用しなかった切片を別の免疫不全マウス(第2世代:P2)100個体に継代し、第2世代PDXマウス(P2)とした。継代時の腫瘍体積を計測したこれらのマウスに対して、抗癌剤トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)15mg/kgを腫瘍移植後3日後、4日後、5日後に各1回静脈内投与し、投与から3週間後の腫瘍体積を計測し、薬剤投与時の腫瘍体積を100としたときの相対値を算出した。この相対値が小さいほど、腫瘍体積が減少している、または腫瘍体積の増加が抑制されていることを意味し、薬効が表れていると評価することができる。
前述したように作製した第1世代PDXマウス(P1)の腫瘍組織の約3mm角の切片2個のうち、標本スライドの作製に使用しなかった切片を別の免疫不全マウス(第2世代:P2)100個体に継代し、第2世代PDXマウス(P2)とした。継代時の腫瘍体積を計測したこれらのマウスに対して、抗癌剤トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)15mg/kgを腫瘍移植後3日後、4日後、5日後に各1回静脈内投与し、投与から3週間後の腫瘍体積を計測し、薬剤投与時の腫瘍体積を100としたときの相対値を算出した。この相対値が小さいほど、腫瘍体積が減少している、または腫瘍体積の増加が抑制されていることを意味し、薬効が表れていると評価することができる。
上記のPID染色標本スライド評価工程により、100個体分の標本スライドについて、第1世代PDXマウス(P1)におけるCD140aのPIDスコアを算出し、PIDスコアが0以上50000以下(P1−1)、50000より大きく100000以下(P1−2)、100000より大きく150000以下(P1−3)、および150000より大きい(P1−4)の4つの群に分けた。また、P1−1、P1−2、P1−3およびP1−4のどの群に属する第1世代PDXマウス(P1)から継代されたかによって、第2世代PDXマウス(P2)をそれぞれP2−1、P2−2、P2−3およびP2−4の4つの群に分けた(ひもづけ)。P2−1、P2−2、P2−3およびP2−4の各群について、上述した薬剤投与3週間後の腫瘍体積の相対値の平均値を算出した。そして、この平均値が200以下の場合の薬効を優(◎)、200より大きく400以下の場合を良(○)、400より大きく600以下の場合を可(△)、600より大きい場合を不可(×)と評価した。第1世代PDXマウス(P1)の各群のPIDを用いて測定したCD140a発現量と、それぞれに対応する第2世代PDXマウス(P2)の各群の腫瘍体積の相対値および薬効の判定結果を表1に示す(後記<分析>参照)。
[実施例1−2]DABを用いてCD140aの発現量を測定する実施形態
実施例1−1と同様にして、100個体の第1世代のPDXマウス(P1)への継代および各マウスの腫瘍組織の2個の切片の作製を行った。2個の切片のうちの1個を用いて、下記のように実施例1−1の手順を変更して、CD140a/DAB染色標本スライドを作製し、CD140aの発現量を測定した。また、前記2個の切片のうちのもう1個を用いて、実施例1−1と同様にして、100個体の第2世代のPDXマウス(P2)への継代を行ない、さらに抗癌剤の薬効の判定を行った。
実施例1−1と同様にして、100個体の第1世代のPDXマウス(P1)への継代および各マウスの腫瘍組織の2個の切片の作製を行った。2個の切片のうちの1個を用いて、下記のように実施例1−1の手順を変更して、CD140a/DAB染色標本スライドを作製し、CD140aの発現量を測定した。また、前記2個の切片のうちのもう1個を用いて、実施例1−1と同様にして、100個体の第2世代のPDXマウス(P2)への継代を行ない、さらに抗癌剤の薬効の判定を行った。
DAB染色標本スライドの作製にあたって、標本スライド作製工程、ならびに免疫染色工程に含まれる賦活化処理および抗原抗体反応処理は実施例1−1と同様にして行い、蛍光標識処理は下記のDAB染色処理に置き換え、形態観察用染色工程は行わず、DAB染色処理後に脱水・透徹・封入工程を実施例1−1と同様にして行った。
(DAB染色処理)
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いてストレプトアビジン標識ホースラディッシュペルオキシダーゼ(SA−HRP、サーモフィッシャー社)を0.1μg/mLの濃度で含有する溶液を調製した。この溶液に抗原抗体反応処理を経た標本スライドを浸漬し、室温にて1時間反応させた。続いて、標本スライドをPBSにて5分間×3回洗浄後、3、3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)溶液(タカラバイオ社)を用いて室温にて10分間反応させた。反応を終えた標本スライドを室温の流水で10分間洗浄した。
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いてストレプトアビジン標識ホースラディッシュペルオキシダーゼ(SA−HRP、サーモフィッシャー社)を0.1μg/mLの濃度で含有する溶液を調製した。この溶液に抗原抗体反応処理を経た標本スライドを浸漬し、室温にて1時間反応させた。続いて、標本スライドをPBSにて5分間×3回洗浄後、3、3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)溶液(タカラバイオ社)を用いて室温にて10分間反応させた。反応を終えた標本スライドを室温の流水で10分間洗浄した。
(DAB染色標本スライド評価工程)
・観察・撮影工程
Aperio ScanScope CS2(ライカ社)を用いて、DAB染色した標本スライドに含まれる、DABによって染色された領域の面積を求めた。具体的な方法としては、Aperio ScanScope Consoleソフトウェアを立ち上げ、標本スライドをセット後、サンプル全体を低解像度で撮影するプレスキャンを行った。プレスキャン終了後、スキャンエリア、フォーカスポイント、ホワイトバランスの設定を行い、画像の取り込みを実行した。画像の取り込み後、Aperioに付属のImageScopeソフトウェアを立ち上げ、Annotationsから解析する領域を選択し、AnalysisのAlgorithmsからPositive Pixel Count (v9)を選択してDABによる染色の解析を行った。5視野におけるCD140aのPositivity(DABで染色されたピクセル数/視野全体のピクセル数×100)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「DABスコア」とした。
・観察・撮影工程
Aperio ScanScope CS2(ライカ社)を用いて、DAB染色した標本スライドに含まれる、DABによって染色された領域の面積を求めた。具体的な方法としては、Aperio ScanScope Consoleソフトウェアを立ち上げ、標本スライドをセット後、サンプル全体を低解像度で撮影するプレスキャンを行った。プレスキャン終了後、スキャンエリア、フォーカスポイント、ホワイトバランスの設定を行い、画像の取り込みを実行した。画像の取り込み後、Aperioに付属のImageScopeソフトウェアを立ち上げ、Annotationsから解析する領域を選択し、AnalysisのAlgorithmsからPositive Pixel Count (v9)を選択してDABによる染色の解析を行った。5視野におけるCD140aのPositivity(DABで染色されたピクセル数/視野全体のピクセル数×100)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「DABスコア」とした。
<抗癌剤の薬効の判定>
実施例1−1と同様にして、第2世代のPDXマウス(P2)を作製し、抗癌剤トラスツズマブを投与して、投与前後の腫瘍体積を比較し、薬剤投与3週間後の腫瘍体積の相対値を算出した。上記のDAB染色標本スライド評価工程により、100個体分の標本スライドについて、第1世代PDXマウス(P1)におけるCD140aのDABスコアを算出し、DABスコアが0以上10%以下(P1−5)、10%より大きく20%以下(P1−6)、20%より大きく30%以下(P1−7)、および30%以上(P1−8)の4つの群に分けた。また、P1−5、P1−6、P1−7およびP1−8のどの群に属する第1世代PDXマウス(P1)から継代されたかによって、第2世代PDXマウス(P2)をそれぞれP2−5、P2−6、P2−7およびP2−8の4つの群に分けた。P2−5、P2−6、P2−7およびP2−8の各群について、上述した薬剤投与3週間後の腫瘍体積の相対値の平均値を算出した。そして、この平均値が200以下の場合の薬効を優(◎)、200より大きく400以下の場合を良(○)、400より大きく600以下の場合を可(△)、600より大きい場合を不可(×)と評価した。第1世代PDXマウス(P1)の各群のDAB染色により測定したCD140a発現量と、それぞれに対応する第2世代PDXマウス(P2)の各群の腫瘍体積の相対値および薬効の判定結果を表2に示す。
実施例1−1と同様にして、第2世代のPDXマウス(P2)を作製し、抗癌剤トラスツズマブを投与して、投与前後の腫瘍体積を比較し、薬剤投与3週間後の腫瘍体積の相対値を算出した。上記のDAB染色標本スライド評価工程により、100個体分の標本スライドについて、第1世代PDXマウス(P1)におけるCD140aのDABスコアを算出し、DABスコアが0以上10%以下(P1−5)、10%より大きく20%以下(P1−6)、20%より大きく30%以下(P1−7)、および30%以上(P1−8)の4つの群に分けた。また、P1−5、P1−6、P1−7およびP1−8のどの群に属する第1世代PDXマウス(P1)から継代されたかによって、第2世代PDXマウス(P2)をそれぞれP2−5、P2−6、P2−7およびP2−8の4つの群に分けた。P2−5、P2−6、P2−7およびP2−8の各群について、上述した薬剤投与3週間後の腫瘍体積の相対値の平均値を算出した。そして、この平均値が200以下の場合の薬効を優(◎)、200より大きく400以下の場合を良(○)、400より大きく600以下の場合を可(△)、600より大きい場合を不可(×)と評価した。第1世代PDXマウス(P1)の各群のDAB染色により測定したCD140a発現量と、それぞれに対応する第2世代PDXマウス(P2)の各群の腫瘍体積の相対値および薬効の判定結果を表2に示す。
<分析>
実施例1−1(表1)および実施例1−2(表2)の結果から、CD140aのPIDスコアまたはDABスコアが最も高値の群、すなわちマウス由来の間質細胞の割合が高い場合には、それらの群から継代されたマウスにおける薬効がその他の群と異なる傾向を示すことがわかった。従って、CD140aの発現量を層別化することで、マウスにおける薬効をある程度予測することが可能となる。この場合、CD140aのPIDスコアまたはDABスコアが最も高値の群を薬効試験から予め除くことで、より再現性の高い実験が可能になること、また、動物愛護の観点からも、実験動物を無駄にしないというメリットが得られると考えられる。なお、この実施例では、CD140aの発現量を層別化したマウスと、薬効の判定を行ったマウスは世代が1世代異なるため、本来はこの継代の間にも形質が変わるはずであるが、それにも関わらず、一定の薬効の予測に寄与出来る結果が得られたことから、本発明は世代が異なったとしても形質の変化を検出するのに有効な手段であると言える。
実施例1−1(表1)および実施例1−2(表2)の結果から、CD140aのPIDスコアまたはDABスコアが最も高値の群、すなわちマウス由来の間質細胞の割合が高い場合には、それらの群から継代されたマウスにおける薬効がその他の群と異なる傾向を示すことがわかった。従って、CD140aの発現量を層別化することで、マウスにおける薬効をある程度予測することが可能となる。この場合、CD140aのPIDスコアまたはDABスコアが最も高値の群を薬効試験から予め除くことで、より再現性の高い実験が可能になること、また、動物愛護の観点からも、実験動物を無駄にしないというメリットが得られると考えられる。なお、この実施例では、CD140aの発現量を層別化したマウスと、薬効の判定を行ったマウスは世代が1世代異なるため、本来はこの継代の間にも形質が変わるはずであるが、それにも関わらず、一定の薬効の予測に寄与出来る結果が得られたことから、本発明は世代が異なったとしても形質の変化を検出するのに有効な手段であると言える。
実施例1−1および1−2で作製した第1世代PDXマウス(P1)100個体分の標本スライド(PID染色標本スライドまたはDAB染色標本スライドとは別の、新たな標本スライド)を用いて、第2目的物質(タンパク質)として乳癌細胞等の細胞膜に発現するHER2の発現量の測定を行った。実施例2の概念図を図2に示す。
[作製例3]ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の作製
50mM Tris溶液に、2次抗体として用いる抗ウサギIgG抗体50μgを溶解した。この溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(ジチオトレイトール)溶液を添加、混合し、37℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社、Cat.#89882)に通して、DTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mM Tris溶液に溶解して抗体溶液を調製した。その一方で、リンカー試薬「Maleimide-PEG2-Biotin」(サーモサイエンティフィック社、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように濃度を調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。この反応溶液を脱塩カラムに通して精製した。脱塩した反応溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光光度計(F−7000;日立ハイテクサイエンス社)を用いて測定することにより、反応溶液中のタンパク質(ビオチン修飾2次抗体)の濃度を算出した。50mM Tris溶液を用いて、ビオチン修飾2次抗体の濃度を250μg/mLに調整した溶液を、ビオチン修飾2次抗体の溶液とした。
50mM Tris溶液に、2次抗体として用いる抗ウサギIgG抗体50μgを溶解した。この溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(ジチオトレイトール)溶液を添加、混合し、37℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社、Cat.#89882)に通して、DTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mM Tris溶液に溶解して抗体溶液を調製した。その一方で、リンカー試薬「Maleimide-PEG2-Biotin」(サーモサイエンティフィック社、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように濃度を調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。この反応溶液を脱塩カラムに通して精製した。脱塩した反応溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光光度計(F−7000;日立ハイテクサイエンス社)を用いて測定することにより、反応溶液中のタンパク質(ビオチン修飾2次抗体)の濃度を算出した。50mM Tris溶液を用いて、ビオチン修飾2次抗体の濃度を250μg/mLに調整した溶液を、ビオチン修飾2次抗体の溶液とした。
[実施例2−1]DABを用いてHER2の発現量を測定する実施形態
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドを、ベンタナI−VIEWパスウェーHER2(4B5)キットを用い、ベンタナベンチマークULTRAで染色し、DAB法によりHER2のスコアを判定し、腫瘍領域と間質細胞領域を形態学的に同定した。HER2のスコアは標準的に使用されている基準に従った(例えば「HER2検査ガイド第三版」(トラスツズマブ病理部会作成、2009年9月)参照)。
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドを、ベンタナI−VIEWパスウェーHER2(4B5)キットを用い、ベンタナベンチマークULTRAで染色し、DAB法によりHER2のスコアを判定し、腫瘍領域と間質細胞領域を形態学的に同定した。HER2のスコアは標準的に使用されている基準に従った(例えば「HER2検査ガイド第三版」(トラスツズマブ病理部会作成、2009年9月)参照)。
[実施例2−2]PIDを用いてHER2の発現量を測定する実施形態
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドについて、そこに含まれるHER2を、PIDを用いた免疫染色法により染色した。免疫染色工程の具体的な手順は次の通りである。
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドについて、そこに含まれるHER2を、PIDを用いた免疫染色法により染色した。免疫染色工程の具体的な手順は次の通りである。
(免疫染色工程)
・賦活化処理
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドを脱パラフィン処理した後、組織中のキシレンを水に置換するための洗浄を行った。洗浄した標本スライドを10mMクエン酸緩衝液中(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。賦活化処理後の標本スライドをPBSにより洗浄し、洗浄した標本スライドに対してBSAを1%含有するPBSを用いて、室温で1時間ブロッキング処理を行った。
・賦活化処理
実施例1−1の標本スライド作製工程と同様の方法で作製した標本スライドを脱パラフィン処理した後、組織中のキシレンを水に置換するための洗浄を行った。洗浄した標本スライドを10mMクエン酸緩衝液中(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。賦活化処理後の標本スライドをPBSにより洗浄し、洗浄した標本スライドに対してBSAを1%含有するPBSを用いて、室温で1時間ブロッキング処理を行った。
・抗原抗体反応処理(HER2に係る免疫染色用の1次反応処理)
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、抗HER2ウサギモノクローナル抗体「4B5」(ベンタナ社)を0.05nMの濃度で含有する1次反応処理液を調製した。この1次反応処理液に賦活化処理を終えた標本スライドを浸漬し、4℃で1晩反応させた。
BSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、抗HER2ウサギモノクローナル抗体「4B5」(ベンタナ社)を0.05nMの濃度で含有する1次反応処理液を調製した。この1次反応処理液に賦活化処理を終えた標本スライドを浸漬し、4℃で1晩反応させた。
・2次抗体反応処理(2次反応処理)
作製例3で作製したビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の溶液を、さらにBSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、6μg/mLに希釈した2次反応処理液を調製した。1次反応処理を終えた標本スライドをPBSで洗浄した後、この2次反応処理液に浸漬し、室温で30分間反応させた。
作製例3で作製したビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の溶液を、さらにBSAを1(w/v)%含有するPBSを用いて、6μg/mLに希釈した2次反応処理液を調製した。1次反応処理を終えた標本スライドをPBSで洗浄した後、この2次反応処理液に浸漬し、室温で30分間反応させた。
・蛍光標識処理(3次反応処理)
作製例1で作製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を、カゼインおよびBSAを含有する蛍光ナノ粒子用希釈液を用いて0.02nMに希釈した、蛍光標識反応処理液を調製した。2次反応処理を終えた標本スライドをこの蛍光標識反応処理液に浸漬し、中性のpH環境下(pH6.9〜7.4)、室温で3時間反応させた。
作製例1で作製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を、カゼインおよびBSAを含有する蛍光ナノ粒子用希釈液を用いて0.02nMに希釈した、蛍光標識反応処理液を調製した。2次反応処理を終えた標本スライドをこの蛍光標識反応処理液に浸漬し、中性のpH環境下(pH6.9〜7.4)、室温で3時間反応させた。
(形態観察用染色工程)
蛍光標識処理を行った標本スライドを、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った後、45℃の流水で3分間洗浄した。
蛍光標識処理を行った標本スライドを、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った後、45℃の流水で3分間洗浄した。
(脱水・透徹・封入工程)
免疫染色工程および形態観察用染色工程を終えた標本スライドを、100%エタノールに浸漬する操作を4回行う固定化・脱水処理を行った。続いて、その標本スライドをキシレンに浸漬する操作を4回行う透徹処理を行った。最後に、標本スライドに封入剤「エンテランニュー」(メルク社製)を載せて、カバーガラスを被せる封入処理を行い、観察に用いる標本スライド(HER2/PID染色標本スライド)とした。
免疫染色工程および形態観察用染色工程を終えた標本スライドを、100%エタノールに浸漬する操作を4回行う固定化・脱水処理を行った。続いて、その標本スライドをキシレンに浸漬する操作を4回行う透徹処理を行った。最後に、標本スライドに封入剤「エンテランニュー」(メルク社製)を載せて、カバーガラスを被せる封入処理を行い、観察に用いる標本スライド(HER2/PID染色標本スライド)とした。
(PID染色標本スライド評価工程)
・観察・撮影工程
この工程における励起光の照射および蛍光の発光の観察には蛍光顕微鏡「BX−53」(オリンパス株式会社)を用い、免疫染色像(400倍)の撮影には、当該蛍光顕微鏡に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いた。
・観察・撮影工程
この工程における励起光の照射および蛍光の発光の観察には蛍光顕微鏡「BX−53」(オリンパス株式会社)を用い、免疫染色像(400倍)の撮影には、当該蛍光顕微鏡に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いた。
まず、第2目的タンパク質であるHER2の蛍光標識に用いたテキサスレッドに対応する励起光を標本スライドに照射して蛍光を発光させ、その状態の免疫染色像を撮影した。この際、励起光の波長は、蛍光顕微鏡が備える励起光用光学フィルターを用いて575〜600nmに設定し、観察する蛍光の波長は、蛍光用光学フィルターを用いて612〜692nmに設定した。蛍光顕微鏡による観察および画像撮影時の励起光の強度は、視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないような範囲で調節し、例えば4000μ秒に設定した。
次に、蛍光顕微鏡の明視野における観察および画像撮影により、細胞の形態観察用のヘマトキシリン染色による染色像を撮影した。このような免疫染色像および形態観察用染色像の撮影は、同一視野において行った後、視野を変えて同じ操作を繰り返し、1つの標本スライドにつき5視野ずつ行った。
・画像処理・計測工程
この工程における画像処理には、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いた。形態観察用染色像を用いた画像処理により、細胞の形状(細胞膜の位置)を特定し、免疫染色像と重ねあわせて、細胞膜上に発現しているHER2タンパク質を標識したテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を表す輝点を抽出した。なお、間質細胞領域にはHER2は発現しないので、間質細胞内に位置する輝点は非特異的シグナルすなわちノイズとして処理した。細胞膜上の輝点のうち輝度が所定の値以上のものの数を計測し、その輝点の輝度を蛍光体集積粒子(PID)1粒子あたりの輝度で除して粒子数に換算し、これをその細胞のHER2の発現量として取り扱った。そして、1つの標本スライド(5視野)あたり1000個の細胞についてHER2の発現量(粒子数)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「PIDスコア」とした。
この工程における画像処理には、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いた。形態観察用染色像を用いた画像処理により、細胞の形状(細胞膜の位置)を特定し、免疫染色像と重ねあわせて、細胞膜上に発現しているHER2タンパク質を標識したテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を表す輝点を抽出した。なお、間質細胞領域にはHER2は発現しないので、間質細胞内に位置する輝点は非特異的シグナルすなわちノイズとして処理した。細胞膜上の輝点のうち輝度が所定の値以上のものの数を計測し、その輝点の輝度を蛍光体集積粒子(PID)1粒子あたりの輝度で除して粒子数に換算し、これをその細胞のHER2の発現量として取り扱った。そして、1つの標本スライド(5視野)あたり1000個の細胞についてHER2の発現量(粒子数)を測定し、その平均値を算出して、その標本スライドの「PIDスコア」とした。
<分析>
実施例2−1では、実施例1−2において行った100個体の第1世代PDXマウス(P1)のDABスコアによる層別化に加えて、さらにHER2のDABスコアが3+かそうでないかによる層別化を行った。また、実施例1−2と同様にして、それらの個体から継代された第2世代PDXマウス(P2)の抗腫瘍試験の結果とのひもづけを行った。結果を表3に示す。
実施例2−1では、実施例1−2において行った100個体の第1世代PDXマウス(P1)のDABスコアによる層別化に加えて、さらにHER2のDABスコアが3+かそうでないかによる層別化を行った。また、実施例1−2と同様にして、それらの個体から継代された第2世代PDXマウス(P2)の抗腫瘍試験の結果とのひもづけを行った。結果を表3に示す。
一方、実施例2−2では、実施例1−2において行った100個体の第1世代PDXマウス(P1)のDABスコアによる層別化に加えて、さらにHER2のPIDスコアが500以上か500未満かにより層別化を行った。結果を表4に示す。
表3の結果から、例えば、P2−5−1、P2−6−1を選択するなど、CD140aだけでなくHER2を用いて層別化することで、トラスツズマブに対して薬効を示す形質を維持していると思われるPDXマウスを選択することが出来ることが判る。さらに、表4の結果からは、P2−5−3、P2−5−4、P2−6−3、P2−7−3を選択することで薬効を示す形質を維持しているPDXマウスを選択することが出来ることが判る。
これはHER2のDABスコアが同じ3+と判定されるマウスであっても、PIDスコアを用いることで、よりHER2を多く発現しているマウスをさらに層別することが可能になることから、より薬効を示す形質を維持していると思われるPDXマウスを選択することができる可能性を示す。
Claims (7)
- ヒト由来の腫瘍組織または腫瘍細胞が移植された実験動物における、前記腫瘍組織または腫瘍細胞を含む部位から採取された検体中に含まれる、ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質の量を測定する工程を含む方法。
- 前記ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質が実験動物由来の間質細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質がヒト由来の腫瘍組織の間質細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記間質細胞の量を、当該細胞の表面に発現しているマーカータンパク質に対応する抗体を用いた免疫染色法により測定する、請求項2または3に記載の方法。
- さらに、前記検体中に含まれるヒト由来の腫瘍細胞が有する物質の量を測定する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記ヒト由来の腫瘍細胞が有する物質が、タンパク質、核酸または糖であり、当該タンパク質、核酸または糖に対応する抗体、核酸プローブまたはレクチンを用いた染色法により当該タンパク質、核酸または糖の量を測定する、請求項5に記載の方法。
- 前記ヒト由来の腫瘍細胞以外の物質および/または前記ヒト由来の腫瘍細胞が有する物質がタンパク質であり、その量を蛍光ナノ粒子を用いた定量法により測定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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2017
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