JP7238792B2 - 情報取得方法 - Google Patents
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Description
[項1]
下記工程(A)~(D)を含む、情報取得方法であって、下記工程(A)~(C)を同一の検体に対して行う、情報取得方法:
工程(A):第1の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(B):第2の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(C):標的タンパク質を染色する;
工程(D):工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する。
前記工程(A)および工程(B)における染色によって免疫細胞の位置および数を特定する工程(E)を更に含む、項1に記載の情報取得方法。
前記工程(D)で計測された標的タンパク質に由来するシグナルに基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、項1または2に記載の情報取得方法。
前記工程(E)で特定された免疫細胞の位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、項2または3に記載の情報取得方法。
前記工程(A)および工程(B)における染色が色素染色であり、
前記工程(C)における染色が蛍光染色である、
項1~4のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記工程(A)~工程(C)において、前記工程(C)における蛍光染色が工程(A)および工程(B)の後に行われる、項1~5のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質および前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質が、それぞれ異なった色素で染色されている、項1~6のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質が3,3’-diaminobenzidineで染色され、前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質がHistogreenで染色されており、
工程(B)が工程(A)の後に行われる、項1~7のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、および形質細胞から選択される、項1~8のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージである、項9に記載の情報取得方法。
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞または前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、項9に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、T細胞応答の増強および抗腫瘍効果から選択される少なくとも一以上の効果を有するタンパク質を含む、項1~11のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つがCD4、CD8、CD25、CD16、CD56、およびFoxP3から選択される、項1~8、および12のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、マクロファージに発現するタンパク質である、項1~11のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記第1の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現する第1のマクロファージタンパク質であり、前記第2の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現し、かつ前記第1のマクロファージタンパク質とは異なる第2のマクロファージタンパク質である、項14に記載の情報取得方法。
前記第1のマクロファージタンパク質または第2のマクロファージタンパク質の少なくとも一つがM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質を含む、項15に記載の情報取得方法。
前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質が、CD68、CD163、およびCD204から選ばれる、項15または16に記載の情報取得方法。
前記標的タンパク質が、マクロファージに発現するタンパク質である、項1~17のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記標的タンパク質が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質である、項18に記載の情報取得方法。
前記標的タンパク質が、CSF-1R、IDO、CXCR2、またはPD-L1である、項19に記載の情報取得方法。
前記標的タンパク質に由来するシグナルを、蛍光染色された標的タンパク質に由来する輝点数として計測する、項1~20のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によってM2マクロファージの位置および数を特定する工程である、項10に記載の情報取得方法。
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によって腫瘍関連マクロファージ(TAM)の位置および数を特定する工程である、項11に記載の情報取得方法。
前記工程(C)において染色される前記標的タンパク質が2種以上である
項1~23のいずれか一項に記載の情報取得方法。
前記標的タンパク質の少なくとも一つが、CSF-1Rである、項24に記載の情報取得方法。
前記標的タンパク質が、IDO、PD-L1、PD-1またはCXCR2を更に含む、項25に記載の情報取得方法。
前記工程(A)、工程(B)、および工程(C)における染色の一以上が免疫染色である、項1~26のいずれか一項に記載の情報取得方法。
(情報取得方法)
本発明の情報取得方法の一態様としては、第1のマクロファージタンパク質を染色する工程(A)、第2のマクロファージタンパク質を染色する工程(B)、標的タンパク質を染色する工程(C)、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する工程(D)を含む。なお、工程(A)~(C)は同一の検体に対して行われる工程である。本発明の情報取得方法において工程(A)~(C)の順序は特に限定されないが、通常は工程(A)→工程(B)→工程(C)の順で行うことが好ましく、その後工程(D)を行うことが好ましい。
<マクロファージタンパク質>
本発明の情報取得方法における、工程(A)において染色される第1のマクロファージタンパク質および工程(B)において染色される第2のマクロファージタンパク質は、少なくとも一方がM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質であることが好ましく、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質であることも好ましい。第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質は、マクロファージ、M2マクロファージ、またはTAMのうち、目的のものを特定することができるタンパク質であれば、特に限定されず、マクロファージにおいて特異的に発現されるタンパク質から任意に選択することができる。
(色素染色)
工程(A)および工程(B)では、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質に対して色素染色が行われることが好ましい。ここで、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質に対して色素染色が行われることが好ましい。
<標的タンパク質>
本発明の情報取得方法における工程(C)において染色される標的タンパク質は、検体、好ましくは腫瘍組織に含まれる少なくとも1種、好ましくは2種以上のタンパク質であり、特に限定されるものではないが、例えば、CSF-1Rなどのコロニー刺激因子の受容体(レセプター)、PD-1、PD-L1(Programmed cell death1 ligand 1)、B7-1/2、CD8、CD30、CD48、CD59などのがんに係る病理診断においてバイオマーカーとして利用することができるタンパク質、IDO(インドールアミン酸素添加酵素:Indoleamine-2,3-dioxygenase-1)などの免疫細胞の代謝に関わるタンパク質、EGFR(HER1)、HER2、HER3、HER4、VEGFR、IGFR、HGFRなどの増殖因子の受容体、CXCR2などのサイトカインやケモカインの受容体等が挙げられる。
(蛍光染色)
工程(C)における標的タンパク質の染色は蛍光染色であることが好ましい。このとき、前記工程(A)および(B)が色素染色である場合には、工程(C)の蛍光染色は工程(A)および(B)の後に行われることが好ましい。色素染色のあとに蛍光染色を行うことで、蛍光物質に色素が沈着することによる定量性の低下を防ぐことができる。
前記蛍光染色は標的タンパク質を蛍光観察可能な色素で染色する手法である。ここで「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
蛍光体集積粒子は、有機物または無機物でできた母体となる粒子の内部または表面に複数の蛍光体(たとえば蛍光色素)を固定して集積した構造を有するナノサイズの粒子であることが好ましい。本発明で用いる蛍光体集積粒子は、適切な蛍光体および母体を形成する原料を選択した上で、公知の方法により作製することができる。
蛍光体としての使用可能な有機蛍光色素の例としては、特に限定されず、たとえば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、スクアリリウム系色素、ピロメテン系色素、オキソノール系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができ、特に、Texas Red(登録商標)系色素、フルオレセイン系色素、およびピロメテン系色素が好ましく、具体的には特に、テキサスレッド、FITC、またはピロメテンがより好ましい。
蛍光体として使用可能な半導体ナノ粒子は特に限定されるものではなく、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、またはIV族元素を成分として含有する半導体ナノ粒子(それぞれ、「II-VI族半導体ナノ粒子」、「III-V族半導体ナノ粒子」、「IV族半導体ナノ粒子」ともいう。)、例えば具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられる。
(シグナル計測)
工程(D)では、上記工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルの計測を行う。本発明の情報取得方法における工程(A)~(C)においては同一の検体に対してそれぞれの染色を行うものであり、すなわち工程(D)のシグナルの計測は工程(A)~(C)において染色されたものと同一の検体に対して行われる。標的タンパク質に由来するシグナルとは、具体的には標的タンパク質を標識した物質に由来するシグナルを指し、工程(C)の染色が蛍光染色である場合においては標的タンパク質を標識した蛍光物質に由来する蛍光シグナルを指す。以下、工程(A)および工程(B)の染色が色素染色であり、工程(C)の染色が蛍光染色である、好ましい一実施形態における、標的タンパク質に由来するシグナルの計測について詳細に説明する。
(免疫染色)
本発明の一実施形態においては、前記工程(A)~(C)は、それぞれ同一の検体において、第1のマクロファージタンパク質、第2のマクロファージタンパク質、および標的タンパク質について行われる免疫染色であることが好ましく、特に工程(C)が標的タンパク質を染色する蛍光免疫染色であることが好ましい。以下本発明の一実施形態における、免疫染色法の一例について説明する。
「検体」とは、被験体から採取された組織切片や、被験体から採取された組織に含まれる細胞を培養した細胞であって、一般的には、免疫染色法により目的タンパク質の発現量を評価する場合などで慣用されているような、前記組織切片や細胞を載置した標本スライドの形態をとる。
(脱パラフィン処理)
キシレンを入れた容器に、検体を浸漬させ、パラフィン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
前記脱パラフィン処理を行った検体に対して、工程(A)の前に、好ましくは工程(A)の前に加えて工程(B)の前に、目的物質の賦活化処理を行うことが好ましい。賦活化は常法により行うことができ、例えば、検体に熱処理を行う方法やタンパク質分解酵素を賦活液として検体を浸漬処理する方法が挙げられる。
賦活化処理後、各染色を行う前にバックグラウンドノイズの低減等を目的として、必要に応じてブロッキング等の処理を行うことが好ましい。例えば、各染色が免疫染色である場合、BSA(ウシ血清アルブミン)含有PBSやTween20などの界面活性剤をブロッキング剤として滴下することで抗体の検体への非特異的な吸着を抑制することがでる。また、例えば、色素染色においてペルオキシダーゼの酵素基質反応を用いる場合などにおいては、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的な呈色反応を防ぐために過酸化水素によるペルオキシダーゼブロック等の処理を行うことが好ましい。また、各処理の後など必要であれば前処理の各ステップで、組織スライドを固定するためホルマリン溶液に一定時間浸漬する処理を行うことが好ましい。
前記洗浄後の検体に対して、第1のマクロファージタンパク質の染色(工程(A))、第2のマクロファージタンパク質の染色(工程(B))および標的タンパク質を染色するための染色(工程(C))を順次行う。なお、各染色工程前には、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤やTween20などの界面活性剤を滴下する、ブロッキング処理を行うことが好ましい。また、各染色の前後にはPBS等で適宜洗浄することが好ましい。
一次抗体は、染色の目的となるタンパク質にユニークなエピトープを認識して特異的に結合する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもよいが、定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。たとえば、標的タンパク質としてHER2を選択し、染色する場合は抗HER2抗体を用いることができる。1次抗体は、標的物質を特異的に認識することができれば、いずれのアイソタイプの抗体を用いてもよいが、特にIgG抗体(免疫グロブリンG)が好適に用いられる。また、一次抗体は、標的物質に結合可能であれば、天然の抗体のように全長を有するものである必要はなく、抗体断片または誘導体、キメラ抗体(ヒト化抗体等)、多機能抗体であってもよい。
二次抗体は、検体内に含まれる染色の対象となるタンパク質と結合した一次抗体における、標的物質と反応していない部分(例:Fc、F(ab)、またはF(ab'))を特異的に認識して結合する抗体であって、染色の対象となるタンパク質それ自体には結合しないものを指す。2次抗体には、抗IgG抗体を好適に用いることができる。また、該1次抗体がハプテン修飾されている場合には、そのハプテンを認識する抗ハプテン抗体も、同様の効果を持って使用することができる。
上記染色に併せて、細胞が有するマクロファージタンパク質および標的タンパク質以外の物質(例えば核)に、蛍光物質(例えば核染色剤:Nuclear Fast Red)を結合させる染色を行ってもよいし、形態観察用染色剤(例えばエオジン)によって細胞の形状が特定できるような染色を行ってもよい。
染色工程を終えた標本スライドは、上述したシグナル計測のための撮影等に適したものとなるよう、固定化・脱水、透徹、封入などの処理を行うことが好ましい。
(ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の作製)
50mMTris溶液に、抗ウサギIgG抗体(AbD社;LO-RG-1)50μgを溶解した。この溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(ジチオトレイトール)溶液を添加、混合し、37℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社、Cat.#89882)に通して、DTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mMTris溶液に溶解して抗体溶液を調製した。その一方で、リンカー試薬「Maleimide-PEG2-Biotin」(サーモサイエンティフィック社、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。この反応溶液を脱塩カラムに通して精製した。脱塩した反応溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光高度計(日立製「F-7000」)を用いて測定することにより、反応溶液中のタンパク質(ビオチン修飾IgG抗体)の濃度を算出し、50mMTris溶液を用いて、ビオチン修飾IgG抗体の濃度を250μg/mLに調整した。
(FITC修飾抗マウスIgG2b抗体の作製)
FITC標識キット(Fluorescein Labeling kit-NH2/LK01:株式会社同人化学研究所製)を用いて、キットの説明書に従って、抗マウスIgG2b抗体(SouthernBiotech社;clone SB74g)にFITC試薬(NANOCS 品番:PG2-FCNS-2k)を反応させることによってFITC標識抗マウスIgG抗体を作製した。
(FITC修飾抗マウスIgG2a抗体の作製)
標識キット(biotin Labeling kit-SH/LK10:株式会社同人化学研究所製)を用いて、キットの説明書に従って、まず抗マウスIgG2a抗体( サザンバイオテック(SouthernBiotech、SBA)社;clone: SB84a)を還元した。次いで、キット付属のビオチン試薬に代えてFITC試薬(FITC-5-maleimide(東京化成工業株式会社、F0810))を反応させることによってFITC標識抗マウスIgG2a抗体を作製した。
(ストレプトアビジン化テキサスレッド集積粒子の作製)
テキサスレッド色素分子「Sulforhodamine 101」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持ながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX-035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に混合物として含まれるテキサスレッド色素内包メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた樹脂粒子の1000個についてSEM観察を行い、上述のように平均粒子径を測定したところ、平均粒子径152nmであった。このようにして作製されたテキサスレッド色素内包メラミン樹脂粒子を次の手順で表面修飾した。
(抗FITC抗体結合ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子の作製)
水22mLに、緑色蛍光色素であるピロメテン(Pyrromethene)556を14.4mg加えて溶解させた。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤の「エマルゲン」(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王株式会社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料「ニカラックMX-035」(日本カーバイド工業株式会社製)を0.35g加えた。
(抗FITC抗体修飾ピロメテン556集積シリカ粒子の作製)
ピロメテン556 13.4gに塩化チオニル0.1mLを加え、654時間、加熱混合した後、真空乾燥を行なって余剰の塩化チオニルを除去した。得られたピロメテン556と塩化チオニルとの反応物と3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLを1.2mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
(1)染色前処理
(1-1)脱パラフィン処理
肺腺がん組織アレイスライド(HLug-Ade150Sur-02:US Biomax社)に対して、以下の手順で脱パラフィン処理を行った。組織アレイスライドを、65℃インキュベーター内に15分間静置することでスライド内のパラフィンを融解した。キシレンを入れた容器3つにそれぞれ5分間ずつ浸け、脱水エタノール(関東化学;14599-95)で洗浄を行い、さらに脱水エタノールに5分間×2回浸けた。その後99.5%エタノール(関東化学;14033-70)でさらに脱水を行い、10分間純水に流して洗浄した。
あらかじめ95℃に予備加熱した賦活液(10mMトリス緩衝液(pH9.0))に脱パラフィン処理した組織アレイスライドを浸け、40分間放置する。室温になるまで放置した後10分間流水させた純水に曝して洗浄を行い、さらにPBSを入れた染色バットに切片スライドを浸漬し、5分間×3回洗浄する。
賦活化した組織アレイスライドを3%過酸化水素に15分間浸け、内因性ペルオキシダーゼブロックを行った。
前記処理を行った組織アレイスライドをBSAを1%含有するPBSに浸け、室温で15分ブロッキング処理を行った。
(2-1)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて抗CD68マウスモノクロナール抗体[PG-M1](Dako社)を100倍希釈し、上記ブロッキング処理を行った組織アレイスライドに添加し、室温で1時間反応させた。
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、ヒストファインシンプルステインMAX-PO(MULTI)(ニチレイバイオサイエンス社;049-22831)を添加し、室温で30分間反応させた。
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、0.05mol/Lのトリス塩酸バッファー(pH7.6)で調整し、使用直前に30%過酸化水素を加えたDABを添加し、室温で3分間反応させた後、純水に5分間浸漬させた。
(3-1)賦活化処理
DAB染色後の組織アレイスライドを、(1-2)と同様の手法で再度賦活化処理した。
(3-1)で賦活化処理を行った組織アレイスライドに対して(1-4)と同様にブロッキングを行った。
BSAを1%含有するPBSを用いて抗CD163マウスモノクロナール抗体(abcam社製;[10D6])を50倍希釈し、(3-2)でブロッキング処理を行った組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させる。
(3-3)でブロッキング処理を行った組織アレイスライドに対して、(2-2)と同様の手法で2次抗体反応を行った。
(3-4)2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、HistoGreen(AbCys社;E109)を添加し、室温で3分間反応させる。反応後はPBSで5分間×3回洗浄し、さらに純水で洗浄した。
(4)MCSFR(CSF-1R)蛍光染色工程
(4-1)ブロッキング
(3-4)で洗浄を行った後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
BSAを1%含有するPBSを用いて抗MCSFRラビットモノクロナール抗体(abcam社製;[SP211])を50倍希釈し、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例1で作製したビオチン化2次抗体をBSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加し、30分間反応させた。
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例4で作製したストレプトアビジン化テキサスレッド集積粒子の分散液を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
PFA反応後の組織アレイスライドを1分間純水の流水に曝した後、マイヤーヘマトキシリン液に1分間浸漬した。
(6-1)脱水・透徹
ヘマトキシリン染色後の切片スライドを水洗槽に移し、10分間純水を流した。その後切片スライドを「99.5%EtOH槽」、「脱水EtOH槽」×3、「キシレン槽」×3の順に浸けた。
まず、蛍光顕微鏡「BX-53」(オリンパス株式会社)に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いて、色素染色画像(400倍)の撮影を行った。
(4’-1)ブロッキング
(2)実施例1と同様の手法で、CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行ない、CSF-1R蛍光染色を行った後に、洗浄した後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
IDO蛍光染色工程
BSAを1%含有するPBSを用いて、抗IDOマウスモノクローナル抗体(abcam社製/Mouse IgG2b/ab55305)を100倍にそれぞれ希釈した溶液を、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例2
で作製したFITC修飾抗マウスIgG2b抗体を、BSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加して30分間反応させた。
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例5で作製した抗FITC抗体結合ピロメテン集積メラミン樹脂粒子の分散液を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
上述したように、本実施例においては、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質(CD68およびCD163)、および複数の標的タンパク質(CSF-1RとIDO)とを観察している。CSF-1Rはがん治療におけるターゲットタンパク質として期待されているタンパク質であり、これを阻害することによってTAMの減少やそれによる腫瘍増殖が抑制される効果が認められている。IDOはがん細胞のチェックポイント阻害に関わることが知られており、この機構を阻害することで腫瘍の増殖を抑制できるという観点からこれもがん治療のターゲットタンパク質であり、IDO阻害剤によりCSF-1Rのシグナル伝達を遮断することで腫瘍退行が誘発されることは知られている(EBioMedicine. 2016 Apr; 6: 50-58. )。
実施例1と同様の手法で(1)染色前工程、(2)CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行った。
(4’’)蛍光染色工程
(4’’-1)ブロッキング
(2)CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行ない、CSF-1R蛍光染色を行った後に、洗浄した後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
BSAを1%含有するPBSを用いて、FITC修飾された抗CXCR2マウスモノクローナル抗体(R&D SYSTEMS社製、Clone: 48311)を50倍にそれぞれ希釈した溶液を、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例3で作製したFITC修飾抗マウスIgG2a抗体を、それぞれBSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加して30分間反応させた。
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例6で作製した抗FITC抗体標識された抗FITC抗体結合ピロメテン集積メラミン樹脂粒子を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
本実施例において標的タンパク質の一つとして用いたCXCR2(そのリガンドであるCXCL1は腫瘍微小環境下における血管新生について関与することで腫瘍の増殖を亢進する)も、実施例2で用いたIDOと同様に、CSF-1Rとともに阻害することで、腫瘍増殖が著明に減少することがしられているタンパク質であり、同様に2者の輝点数について解析して本発明の情報取得方法を行うことで、患者の予後に対する予測など、治療方針等について有益な情報を得ることができる。
実施例2の蛍光染色工程において、抗IDO抗体の代わりに抗PD-L1抗体(株式会社医学生物学研究所製、clone: 27A2)を用いる以外は実施例2と同様の手法で本発明の情報取得方法を行った。
実施例4において標的タンパク質の一つとして用いたPD-L1は、抗原提示細胞の表面上に発現するタンパク質である。PD-L1はこれらのみを阻害するだけでも腫瘍増殖を抑制することができるが、いずれも上記実施例で用いたIDO等のタンパク質と同様にCSF-1Rとともに阻害することで、腫瘍増殖が著明に減少することが知られている(日本臨床免疫学会会誌(Vol. 40 No. 4))タンパク質である。これらについても、上述した実施例と同様に、CSF-1R/PD-L1の輝点数について解析して本発明の情報取得方法を行うことで、患者の予後に対する予測など、治療方針等について有益な情報を得ることができる。
実施例1の染色工程における、(2)CD68染色工程において、抗CD68マウスモノクローナル抗体を抗CD8抗体(Dako社製、型番:M7103、Clone: c8/144B)に変更することでキラーT細胞を染色するとともに(3)CD163染色工程において、抗CD163マウスモノクローナル抗体を抗FoxP3抗体(Epitomics社製、型番:AC-0304RUO、Clone:EP340)に変更することで、制御性T細胞を染色した。
CD8染色画像の結果から、染色された細胞をキラーT細胞と識別できるとともに、FoxP3染色画像の結果から、染色された細胞を制御性T細胞と識別することができた。そして、それらの細胞とPD-L1輝点の位置関係から、それぞれの細胞にPD-L1がどのように分布しているかを示す分布マップを作成できた。この分布マップは、患者ごとに異なることが予想され、有用な情報と考えられる。
Claims (20)
- 下記工程(A)~(D)を含む、情報取得方法であって、下記工程(A)~(C)を同一の検体に対して行う、情報取得方法:
工程(A):第1の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(B):第2の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(C):標的タンパク質を染色する;
工程(D):工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する;
ただし、前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質が3,3'-diaminobenzidineで染色され、前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質がHistogreenで染色されており、
前記工程(B)が前記工程(A)の後に行われ、
前記工程(C)における染色が、蛍光染色であって、工程(B)の後に行われ、
前記蛍光染色が、標的タンパク質と直接的または間接的に結合する抗体に蛍光体集積粒子を結合させた標識化抗体を、検体と反応させて行う蛍光免疫染色であり、
前記標的タンパク質に由来するシグナルを、蛍光染色された標的タンパク質に由来する輝点数として計測する。 - 前記工程(A)および工程(B)における染色によって免疫細胞の位置および数を特定する工程(E)を更に含む、請求項1に記載の情報取得方法。
- 前記工程(D)で計測された標的タンパク質に由来するシグナルならびに前記工程(E)で特定された免疫細胞の位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、請求項2に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、および形質細胞から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージである、請求項4に記載の情報取得方法。
- 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、請求項4に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質および第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、マクロファージに発現するタンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現する第1のマクロファージタンパク質であり、前記第2の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現し、かつ前記第1のマクロファージタンパク質とは異なる第2のマクロファージタンパク質である、請求項7に記載の情報取得方法。
- 前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質の少なくとも一つがM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質を含む、請求項8に記載の情報取得方法。
- 前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質が、CD68、CD163、およびCD204から選ばれる、請求項8または9に記載の情報取得方法。
- 前記標的タンパク質が、マクロファージに発現するタンパク質である、請求項1~10のいずれか一項に記載の情報取得方法。
- 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記標的タンパク質が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質である、請求項11に記載の情報取得方法。
- 前記標的タンパク質が、CSF-1R、IDO、CXCR2、またはPD-L1である、請求項12に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージであって、
前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によってM2マクロファージの位置および数を特定する工程である、請求項2に記載の情報取得方法。 - 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)であって、
前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によって腫瘍関連マクロファージ(TAM)の位置および数を特定する工程である、請求項2に記載の情報取得方法。 - 前記工程(C)において染色される前記標的タンパク質が2種以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載の情報取得方法。
- 前記標的タンパク質の少なくとも一つが、CSF-1Rである、請求項16に記載の情報取得方法。
- 前記標的タンパク質が、T細胞応答の増強および抗腫瘍効果から選択される少なくとも一以上の効果を有するタンパク質を含む、請求項17に記載の情報取得方法。
- 前記標的タンパク質が、IDO、PD-L1、PD-1またはCXCR2を更に含む、請求項17に記載の情報取得方法。
- 前記第1の免疫細胞タンパク質および第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つがCD4、CD8、CD25、CD16、CD56、およびFoxP3から選択される、請求項1~3、および16~19のいずれか一項に記載の情報取得方法。
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