JP7238792B2 - 情報取得方法 - Google Patents

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Description

本発明は、情報取得方法に関する。
がんは、心筋梗塞や脳梗塞に代表される血管系疾患とともに成人の死亡原因を二分する疾患である。例えば、乳がん罹患率は、日本人では欧米諸国に比べて低いが、近年では増加傾向にあり、1998年には胃がんの罹患率を抜いて女性罹患率の第1位となった。最近の報告である2005年の厚生労働省統計によれば、乳がんの年間罹患数は5万人を超えている。世界でも同様にその数は年々増加しており、2008年のWHOの報告によれば、乳がんは男女合わせても第1位の罹患率となっており、その年間罹患数は138万人を超え、女性のがん全体の約23%を占めている。
がん細胞を取り巻く微小環境は、がんの増殖に対して大きな影響を及ぼしており、特に腫瘍組織の免疫系環境は近年「がん免疫」というキーワードで注目されている。免疫系では、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、T細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、抑制性T細胞)、ナチュラルキラー細胞などのさまざまな免疫細胞が働いており、なかでも、マクロファージは特に重要な免疫細胞である。
マクロファージは線維芽細胞や血管内皮細胞などとともに、がんの微小環境を形成する重要な細胞であり、多数のマクロファージががん細胞周囲に存在していることが知られている。マクロファージは炎症促進的なM1型(以下、M1マクロファージと称する)と炎症抑制的なM2型(以下、M2マクロファージと称する)という、生理的な役割が全く異なる2つのフェノタイプに分かれる(非特許文献1)。腫瘍組織に浸潤しているマクロファージは腫瘍関連マクロファージ(腫瘍随伴マクロファージ:Tumor-associated macrophages,TAM)とよばれる。
TAMは、主にM2マクロファージ集団からなることが知られており(非特許文献2)、TAMはT細胞活性を効果的に抑制し、シグナル伝達を調節することにより、細胞増殖およびがんの転移を促進することが知られている(非特許文献3)。臨床研究においても、TAMの状態とヒト腫瘍の予後不良についての関連が明らかになっており、TAMは、現在、腫瘍治療の有望な標的と考えられている(非特許文献4)。
非特許文献5では、TAMを標的とした腫瘍治療における標的タンパク質であって、かつマクロファージタンパク質であるCSF-1R(Colony stimulating factor 1 receptor/MCSFR)に着目し、発色基質DABを用いた免疫染色によりその染色を行っている。
しかしながら、DAB染色のような酵素による染色は、染色濃度が温度・時間などの環境条件により大きく左右されるため、染色濃度から実際の抗原等の量を正確に見積もることが難しいという課題がある。さらに当該文献においてはM2マクロファージマーカーとしてCD163およびCD68の染色を行っているが、これらの染色はCSF-1Rの染色を行ったのものとは異なる組織切片上で染色されているため、検出されたCSF-1Rが確かにマクロファージ内に発現しているものかどうかは明らかでない。
特許文献1にはタンパク質の分子数および位置を輝度の高い輝点として高い精度で示す蛍光体集積粒子を用いて目的とするタンパク質の免疫染色を行う方法が記載されている。
国際公開WO2013/035703号
Mantovani A et al., Trends Immunol , 2004; 23:549-55. Mills et al., J.Immunol.164, 2000, p.6166-6173 Mantovaniet al., Novartis.Found.Symp.、256、2004、p.137-145 Weigert Aet al., Immunotherapy. 2009 Jan; 1(1):83-95. Cancer Cell 25, 846-859, June 16, 2014
本発明は、マクロファージなどの免疫細胞における標的タンパク質を高精度に検出することにより、検体中の標的タンパク質に係る情報を取得することを課題とする。
本発明者は、マクロファージタンパク質などの免疫細胞タンパク質および標的タンパク質を同一切片上で染色することにより、マクロファージなどの免疫細胞タンパク質に発現している標的タンパク質をより高精度に検出できることを見出した。
すなわち、本発明は次のような情報取得方法を提供する。
[項1]
下記工程(A)~(D)を含む、情報取得方法であって、下記工程(A)~(C)を同一の検体に対して行う、情報取得方法:
工程(A):第1の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(B):第2の免疫細胞タンパク質を染色する;
工程(C):標的タンパク質を染色する;
工程(D):工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する。
[項2]
前記工程(A)および工程(B)における染色によって免疫細胞の位置および数を特定する工程(E)を更に含む、項1に記載の情報取得方法。
[項3]
前記工程(D)で計測された標的タンパク質に由来するシグナルに基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、項1または2に記載の情報取得方法。
[項4]
前記工程(E)で特定された免疫細胞の位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、項2または3に記載の情報取得方法。
[項5]
前記工程(A)および工程(B)における染色が色素染色であり、
前記工程(C)における染色が蛍光染色である、
項1~4のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項6]
前記工程(A)~工程(C)において、前記工程(C)における蛍光染色が工程(A)および工程(B)の後に行われる、項1~5のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項7]
前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質および前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質が、それぞれ異なった色素で染色されている、項1~6のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項8]
前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質が3,3’-diaminobenzidineで染色され、前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質がHistogreenで染色されており、
工程(B)が工程(A)の後に行われる、項1~7のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項9]
前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、および形質細胞から選択される、項1~8のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項10]
前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージである、項9に記載の情報取得方法。
[項11]
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞または前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、項9に記載の情報取得方法。
[項12]
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、T細胞応答の増強および抗腫瘍効果から選択される少なくとも一以上の効果を有するタンパク質を含む、項1~11のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項13]
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つがCD4、CD8、CD25、CD16、CD56、およびFoxP3から選択される、項1~8、および12のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項14]
前記第1の免疫細胞タンパク質または第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、マクロファージに発現するタンパク質である、項1~11のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項15]
前記第1の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現する第1のマクロファージタンパク質であり、前記第2の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現し、かつ前記第1のマクロファージタンパク質とは異なる第2のマクロファージタンパク質である、項14に記載の情報取得方法。
[項16]
前記第1のマクロファージタンパク質または第2のマクロファージタンパク質の少なくとも一つがM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質を含む、項15に記載の情報取得方法。
[項17]
前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質が、CD68、CD163、およびCD204から選ばれる、項15または16に記載の情報取得方法。
[項18]
前記標的タンパク質が、マクロファージに発現するタンパク質である、項1~17のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項19]
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記標的タンパク質が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質である、項18に記載の情報取得方法。
[項20]
前記標的タンパク質が、CSF-1R、IDO、CXCR2、またはPD-L1である、項19に記載の情報取得方法。
[項21]
前記標的タンパク質に由来するシグナルを、蛍光染色された標的タンパク質に由来する輝点数として計測する、項1~20のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項22]
前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によってM2マクロファージの位置および数を特定する工程である、項10に記載の情報取得方法。
[項23]
前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によって腫瘍関連マクロファージ(TAM)の位置および数を特定する工程である、項11に記載の情報取得方法。
[項24]
前記工程(C)において染色される前記標的タンパク質が2種以上である
項1~23のいずれか一項に記載の情報取得方法。
[項25]
前記標的タンパク質の少なくとも一つが、CSF-1Rである、項24に記載の情報取得方法。
[項26]
前記標的タンパク質が、IDO、PD-L1、PD-1またはCXCR2を更に含む、項25に記載の情報取得方法。
[項27]
前記工程(A)、工程(B)、および工程(C)における染色の一以上が免疫染色である、項1~26のいずれか一項に記載の情報取得方法。
本発明の情報取得方法によれば、マクロファージなどの免疫細胞タンパク質における標的タンパク質を高精度に検出することにより、検体中の標的タンパク質に係る情報を取得することが可能になる。
図1は本発明の情報取得方法の実施形態の一例(例えば実施例1)を表すフローチャートである。 図2は実施例1で撮影した色素染色画像である。 図3は実施例1で撮影した蛍光画像(上;白が輝点を示す)および該蛍光画面を反転させた画像(下)である。
本発明の情報取得方法について、以下詳細に説明する。
(情報取得方法)
本発明の情報取得方法の一態様としては、第1のマクロファージタンパク質を染色する工程(A)、第2のマクロファージタンパク質を染色する工程(B)、標的タンパク質を染色する工程(C)、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する工程(D)を含む。なお、工程(A)~(C)は同一の検体に対して行われる工程である。本発明の情報取得方法において工程(A)~(C)の順序は特に限定されないが、通常は工程(A)→工程(B)→工程(C)の順で行うことが好ましく、その後工程(D)を行うことが好ましい。
また、本発明の別の様態においては、工程(A)または工程(B)で染色されるのは免疫細胞で発現するタンパク質(免疫細胞タンパク質)であればよく、例えば、マクロファージ、および/またはヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞等のT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、形質細胞等の、免疫に関与する細胞から選択される一以上の細胞で発現されるタンパク質であればよい。つまり、ここで前記免疫細胞タンパク質はマクロファージタンパク質を含有してもよい。
したがって、本発明の一様態においては、第1の免疫細胞タンパク質を染色する工程(A)、第2の免疫細胞タンパク質を染色する工程(B)、標的タンパク質を染色する工程(C)、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する工程(D)を含む。なお、工程(A)~(C)は同一の検体に対して行われる工程である。本発明の情報取得方法において工程(A)~(C)の順序は特に限定されないが、通常は工程(A)→工程(B)→工程(C)の順で行い、その後工程(D)を行うことが好ましい。
本発明の情報取得方法においては前記工程(A)~(D)に加え、さらに工程(E)を含むことが好ましく、工程(E)および(F)を含むことがより好ましい。ここで前記工程(E)は、前記工程(A)および工程(B)における染色によってマクロファージの位置および数を特定する工程であり、好ましくはM2マクロファージの位置および数を特定する工程である。前記工程(F)は、前記工程(D)で計測された標的タンパク質に由来するシグナルおよび前記工程(E)で特定されたマクロファージの位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程である。
前記「標的タンパク質の発現状態の情報」は特に限定されず、組織内や細胞内において標的タンパク質が発現している位置、1細胞当たりのもしくは組織の単位面積あたりの標的タンパク質の発現量、または標的タンパク質の1細胞あたりの発現量とそれに対応する細胞数によって表されるヒストグラムもしくは曲線、などが挙げられる。
本発明の情報取得方法において取得されうる情報は、前記工程(D)で計測される標的タンパク質に由来するシグナルに基づくものを含むことが好ましく、前記工程(E)において特定されたマクロファージの位置および数、ならびに前記工程(F)において特定された標的タンパク質の発現状態の情報に基づくものがより好ましい。
そのような情報は特に限定されないが、例えば、検体の単位面積あたりにおける標的タンパク質の発現量、例えば検体の単位面積あたりのマクロファージの数、検体に含まれる全マクロファージの数に対するTAMの割合、検体の単位面積あたりにおける標的タンパク質のうち腫瘍細胞に発現している量とマクロファージ(TAM)に発現している量、およびそれらの割合、検体に含まれる組織や細胞の形態等が挙げられ、特にマクロファージ内における標的タンパク質の位置または発現量の少なくとも一方を含むことが好ましく、位置および発現量を含むことがより好ましい。
工程(A)および工程(B)において行われる染色は色素染色であることが好ましく、工程(C)において行われる染色は蛍光染色であることが好ましく、この場合、工程(C)における蛍光染色は工程(A)および工程(B)の後に行われることがより好ましい。
また、「標的タンパク質に由来するシグナル」は蛍光染色された標的タンパク質に由来する輝点数に基づいたものであることが好ましい。
前記工程(A)~(C)において行われる染色は、後述する検体と標識物質とを接触させることにより、染色の目的となるマクロファージタンパク質および標的タンパク質に標識物質を直接的または間接的に結合させて行なうことが好ましく、例えば、マクロファージタンパク質または標的タンパク質と直接的または間接的に結合する抗体に標識物質を結合させた標識化抗体を、検体と反応させて行う免疫染色であることが好ましい。
本発明の情報取得方法の一側面としては、第1のマクロファージタンパク質を染色する工程(A)および第2のマクロファージタンパク質を染色する工程(B)、において、後述する色素染色が行われる場合、所望のマクロファージタンパク質を色素で標識することで、さまざまな細胞腫のなかからあるいは数種類のマクロファージ種の中から細胞識別が可能となる。このような細胞識別については、前記工程(A)および工程(B)において、用いられた色素についての明視野下での観察または明視野画像の解析により実施することができる。
例えば、工程(A)において、DABを用い、工程(B)においてHistGreenを用いて染色を行っている場合、DAB(茶色)とHistGreen(緑色)との両方によって染色された細胞はTAMであると識別することができ、つまり明視野画像の解析のみで(後述する標的タンパク質の蛍光染色のシグナル計測に先立って)識別することも可能である。
また、上記細胞識別とは、色素の着色度合い(着色の濃さ)を観察することで特定の細胞、例えばTAMであると識別することも含む。 また、前記細胞識別はマクロファージを識別する他にも、T細胞の種類の識別、がん細胞の種類や細胞周期の識別、アポトーシス/ネクローシス細胞の識別、死細胞/生細胞/正常細胞/がん細胞/がん幹細胞の識別などの例が挙げられる。このような細胞識別は、1種類の識別にかぎらず、同時に複数の識別を行うことも可能であり、さらに明視野画像解析により識別された細胞間の位置関係の把握等によって、さらに多くの情報を得ることができる。
<マクロファージタンパク質>
本発明の情報取得方法における、工程(A)において染色される第1のマクロファージタンパク質および工程(B)において染色される第2のマクロファージタンパク質は、少なくとも一方がM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質であることが好ましく、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質であることも好ましい。第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質は、マクロファージ、M2マクロファージ、またはTAMのうち、目的のものを特定することができるタンパク質であれば、特に限定されず、マクロファージにおいて特異的に発現されるタンパク質から任意に選択することができる。
マクロファージに特異的に発現されるタンパク質としては、CD163、CD204、CD68、Iba1、CD11c、CD206、CD80、CD86、CD163、CD181、CD197、iNOS、Arginase1、CD38、Egr2等が挙げられる。
また、M2マクロファージまたはTAMに特異的に発現するタンパク質としては、CD163、CD204、CD206が挙げられる。
また、上述したように、本発明の一様態においては、工程(A)または工程(B)で染色されるのは免疫細胞で発現するタンパク質(免疫細胞タンパク質)であってもよい。例えば、マクロファージ、および/またはヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞等のT細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、形質細胞等の、免疫に関与する細胞から選択される一以上の細胞で発現されるタンパク質であればよい。
CD4(ヘルパーT細胞)、CD8(キラーT細胞)、CD16あるいはCD56(ナチュラルキラー細胞)、CD25((IL-2R1、Tacまたはp55)またはFoxP3(制御性T細胞)等が挙げられる。
(色素染色)
工程(A)および工程(B)では、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質に対して色素染色が行われることが好ましい。ここで、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質に対して色素染色が行われることが好ましい。
工程(A)および工程(B)において色素染色を行った場合、上述したように本発明の情報取得方法の一側面である、細胞識別を可能とすることができる。
ここで、前記色素染色は各マクロファージタンパク質を明視野観察可能な色素で染色する手法であれば特に限定されず、例えば、標識物質(酵素)を任意の方法で染色の対象であるマクロファージタンパク質に結合させ、酵素基質反応により呈色する色素(基質)を添加することで色素を検体に沈着させることにより標的物質を染色する方法が広く用いられている。例えば、前記標的タンパク質と直接的または間接的に結合する抗体に前記酵素を結合させた標識化抗体をあらかじめ反応させた検体に、該酵素の基質である色素を添加することで行う、免疫染色であることが好ましい。前記酵素としてはペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼが、前記色素としては3,3'-diaminobenzidine(DAB)、Histogreen、TMB、Betazoid DAB、Cardassian DAB、Bajoran Purple、Vina Green、Romulin AEC、Ferangi Blue、Vulcan Fast Red、Warp Red等が挙げられる。
工程(A)で染色する第1のマクロファージタンパク質と工程(B)で染色する第2のマクロファージタンパク質が異なったものである場合は各工程で用いる色素は互いに異なった色相である色素であることが好ましく、また、工程(A)で染色する第1のマクロファージタンパク質と工程(B)で染色する第2のマクロファージタンパク質は同一の場合には各工程で用いる色素は同一のものを用いることが好ましい。
工程(A)および工程(B)のいずれか一方でDABを用いた色素染色を行う場合、色素の安定性の観点からDABを用いる工程を先に行うことが好ましい。
例えば、後述する実施例における組織アレイスライドを用いた組織染色を行う場合における色素染色について、色素としてDABおよびHistoGreenを用いる場合、まずDABで第1のマクロファージタンパク質(CD68)を染色し、その後HistoGreenで第2のマクロファージタンパク質(CD163)を染色した場合では、DABおよびHistGreenの両方の発色については問題なく、その結果当該実施例においてはCD68およびCD163で染色された細胞をTAMと正確に判断することができる。しかしながらDABとHistoGreenの順番を変えた場合(例えば、HistoGreenでCD163を染めた後DABでCD68を染めた場合など)においては、HistoGreenの発色が弱くなってしまうことが観察された。これはHistoGreenが1回目の染色後に行われる賦活化に耐えられず、色素が脱落してしまうからだと考えられる。
<標的タンパク質>
本発明の情報取得方法における工程(C)において染色される標的タンパク質は、検体、好ましくは腫瘍組織に含まれる少なくとも1種、好ましくは2種以上のタンパク質であり、特に限定されるものではないが、例えば、CSF-1Rなどのコロニー刺激因子の受容体(レセプター)、PD-1、PD-L1(Programmed cell death1 ligand 1)、B7-1/2、CD8、CD30、CD48、CD59などのがんに係る病理診断においてバイオマーカーとして利用することができるタンパク質、IDO(インドールアミン酸素添加酵素:Indoleamine-2,3-dioxygenase-1)などの免疫細胞の代謝に関わるタンパク質、EGFR(HER1)、HER2、HER3、HER4、VEGFR、IGFR、HGFRなどの増殖因子の受容体、CXCR2などのサイトカインやケモカインの受容体等が挙げられる。
具体的な標的タンパク質としては、CSF-1R、IDO、PD-1、PD-L1、B7-1/2、CD8、CD30、CD48、CD59、またはCXCR2が好ましく、特にCSF-1R、IDO、CXCR2、PD-1、またはPD-L1がより好ましい。
前記標的タンパク質は、特にマクロファージに発現するタンパク質(抗原)であることが好ましく、マクロファージに特異的に発現するタンパク質であることがより好ましく、M2マクロファージに特異的に発現するタンパク質であることが特に好ましい。また、検体として腫瘍組織を用いる場合には、標的タンパク質はTAMに発現するタンパク質であることが好ましく、TAMに特異的に発現するタンパク質であることがより好ましい。
TAMに特異的に発現するタンパク質である標的タンパク質としては、CSF-1R、IDO、PD-L1、B7-1/2、CD8、CD30、CD48、CD59、またはCXCR2が好ましく、特にCSF-1R、IDO、CXCR2、またはPD-L1がより好ましい。
また、前記標的タンパク質として二以上のものを用いる場合、その一方が、CSF-1Rであることが好ましい。この場合、腫瘍の治療においてターゲットとされるタンパク質を標的タンパク質とすることが好ましく、具体的には、CSF-1Rと併用することで、T細胞応答の増強、抗腫瘍効果等があるタンパク質を標的タンパク質とすることが好ましい。そのような具体例としては、IDO、PD-L1、PD-1、CXCR2等が挙げられる。
(蛍光染色)
工程(C)における標的タンパク質の染色は蛍光染色であることが好ましい。このとき、前記工程(A)および(B)が色素染色である場合には、工程(C)の蛍光染色は工程(A)および(B)の後に行われることが好ましい。色素染色のあとに蛍光染色を行うことで、蛍光物質に色素が沈着することによる定量性の低下を防ぐことができる。
例えば、後述する実施例における組織アレイスライドを用いた組織染色を行う場合において、色素染色としてDABによる染色をHitoGreenに先行させることが好ましいことは既述したが、さらにDAB染色の後、HitoGreen染色の前に蛍光染色(標的タンパク質の染色)を行った場合においては、標的タンパク質の定量性が低下するという問題が生じる場合がある。
標的タンパク質の定量性の低下の原因としては、HistoGreen染色時の賦活時における蛍光物質の脱落や劣化、またはHistoGreen染色時における当該色素が蛍光物質上に沈着するなどの理由が考えられる。
つまり本発明の情報取得方法においては、前述したように、(i)1つのマクロファージタンパク質および1つの標的タンパク質、(ii)2つのマクロファージタンパク質および1つの標的タンパク質、(iii)1つのマクロファージタンパク質および2つ以上の標的タンパク質、ならびに(iv)2つのマクロファージタンパク質および2つ以上の標的タンパク質を染色する様態が包含される。
(i)の様態で本発明を実施する際においては、例えば、まず、DABで第1のマクロファージタンパク質(例えば、CD68)を染色し、その後標的タンパク質(例えば、PD-L1)を所望の蛍光色素により蛍光染色を行うことが好ましい。また、(ii)の様態で本発明を実施する際においては、例えば、まず、DABで第1のマクロファージタンパク質(例えば、CD68)を染色し、その後HistoGreenで第2のマクロファージタンパク質(例えば、CD163)を染色し、さらにその後、標的タンパク質(例えば、PD-L1)を所望の蛍光色素により蛍光染色を行うことが好ましい。
また、(iii)の様態で本発明を実施する際においては、例えば、まず、DABでマクロファージタンパク質(例えば、CD68)を染色し、検出目的とする標的タンパク質について、所望の2以上の蛍光色素により蛍光染色を行うことが好ましい。このとき、それぞれの標的タンパクを染色するための前記蛍光色素はその発光波長が後述する蛍光観察に問題がない程度に離れていることが好ましく、40nm~150nm離れていることがより好ましい。
また、(iv)の様態で本発明を実施する際においても同様に、例えば、まず、DABで第1のマクロファージタンパク質(例えば、CD68)を染色し、その後HistoGreenで第2のマクロファージタンパク質(例えば、CD163)を染色し、さらにその後、検出目的とする標的タンパク質について、所望の2以上の蛍光色素により蛍光染色を行うことが好ましい。
なお、上述した通り(ii)および(iv)の様態で蛍光染色を行う場合、各標的タンパク質に対する蛍光染色はそれぞれ順次行われてもよいし、また同時に行われてもよい。
また、前記標的タンパク質は、生体内に発現するものでなくても良い。例えば、前記標的タンパク質は、外部から生体内に導入された薬物の構成成分であっても良い。前記薬物は、生体内に発現する物質(例えばタンパク質など)と特異的に結合するものであることが好ましい。
(蛍光染色)
前記蛍光染色は標的タンパク質を蛍光観察可能な色素で染色する手法である。ここで「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
前記蛍光染色は、標的タンパク質と直接的または間接的に結合する抗体に標識物質(蛍光物質)を結合させた標識化抗体を、検体と反応させて行う蛍光免疫染色であることが好ましい。蛍光物質は、所望の蛍光観察を行うために適当な蛍光物質であれば特に限定されないが、標的タンパク質を輝点として定量的に検出するという目的から、蛍光体集積粒子を用いることが好ましい。
<蛍光体集積粒子>
蛍光体集積粒子は、有機物または無機物でできた母体となる粒子の内部または表面に複数の蛍光体(たとえば蛍光色素)を固定して集積した構造を有するナノサイズの粒子であることが好ましい。本発明で用いる蛍光体集積粒子は、適切な蛍光体および母体を形成する原料を選択した上で、公知の方法により作製することができる。
粒子の母体を形成する原料としては、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、多糖、シリカ等、安定的に蛍光色素を内包できる物質が挙げられる。蛍光体をこのような粒子中に内包させることにより、蛍光体単独よりも励起光の照射による劣化の起こりにくい(耐光性の強い)、蛍光体集積粒子を作製することができる。たとえば、ポリスチレン、ポリメラミン、シリカなどの疎水性の化合物は、耐光性の高い蛍光体集積粒子の母体として好ましい。
蛍光体集積粒子に内包される蛍光体は特に限定されないが、例えば公知の様々な有機蛍光色素や半導体ナノ粒子(量子ドット等と称されることもある)を用いることが好適である。
<有機蛍光色素>
蛍光体としての使用可能な有機蛍光色素の例としては、特に限定されず、たとえば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、スクアリリウム系色素、ピロメテン系色素、オキソノール系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素分子、Texas Red(登録商標)系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素等、有機蛍光色素として知られている物質を挙げることができ、特に、Texas Red(登録商標)系色素、フルオレセイン系色素、およびピロメテン系色素が好ましく、具体的には特に、テキサスレッド、FITC、またはピロメテンがより好ましい。
<半導体ナノ粒子>
蛍光体として使用可能な半導体ナノ粒子は特に限定されるものではなく、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、またはIV族元素を成分として含有する半導体ナノ粒子(それぞれ、「II-VI族半導体ナノ粒子」、「III-V族半導体ナノ粒子」、「IV族半導体ナノ粒子」ともいう。)、例えば具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geが挙げられる。
半導体ナノ粒子をコアとし、その周囲にシェルを設けたコアシェル型の半導体ナノ粒子を用いることもできる。コアおよびシェルを有する半導体ナノ粒子の表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記すると、例えば、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、InP/ZnS、InGaP/ZnS、Si/SiO2、Si/ZnS、Ge/GeO2、Ge/ZnS等を用いることができる。
(シグナル計測)
工程(D)では、上記工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルの計測を行う。本発明の情報取得方法における工程(A)~(C)においては同一の検体に対してそれぞれの染色を行うものであり、すなわち工程(D)のシグナルの計測は工程(A)~(C)において染色されたものと同一の検体に対して行われる。標的タンパク質に由来するシグナルとは、具体的には標的タンパク質を標識した物質に由来するシグナルを指し、工程(C)の染色が蛍光染色である場合においては標的タンパク質を標識した蛍光物質に由来する蛍光シグナルを指す。以下、工程(A)および工程(B)の染色が色素染色であり、工程(C)の染色が蛍光染色である、好ましい一実施形態における、標的タンパク質に由来するシグナルの計測について詳細に説明する。
工程(A)~(C)において染色を行った検体に対して、工程(C)の蛍光染色に用いた蛍光物質に対応した励起光を照射し、暗視野での撮影を行うことにより、標的タンパク質について行った蛍光染色の染色画像を蛍光画像として取得することができる。当該励起光は蛍光顕微鏡が備えるレーザー光源等の光源と、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる励起光用光学フィルターとを用いることで照射することができる。
本発明の情報取得方法においては、この蛍光染色の蛍光画像によって前記標的タンパク質に由来するシグナルの計測を行うことができる。前記標的タンパク質に由来するシグナルは、標的タンパク質を標識した蛍光物質の輝点やその輝度であることが好ましく、標的タンパク質を標識した蛍光物質の輝点数であることがより好ましい。特に蛍光物質として蛍光体集積粒子を用いたとき、輝点1個は蛍光体集積粒子1個に対応するため大きさが一定であることから定量的にシグナルを計測できる。このとき、輝点1個当たりの大きさが一定値(例;観測される蛍光体集積粒子の平均値)より大きなものは凝集輝点と判断する。凝集輝点についてはその輝度を蛍光体集積粒子1つあたりの輝度で割ることにより、算出した凝集輝点に含まれる蛍光体集積粒子の数を算出し、その数を輝点数とみなすことができる。
さらに同一視野において、前記検体に対して照明光を当てて撮影を行うことにより、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質について行った色素染色の染色画像が得られる。本発明の一実施形態においては、この色素染色の染色画像によってマクロファージの位置および数を特定する工程(E)を行う。また、前記工程(E)が、色素染色の染色画像によってM2マクロファージの位置および数を特定する工程であることが好ましく、TAMの位置および数を特定する工程であることがより好ましい。
具体的には例えば、工程(A)および工程(B)において染色される各マクロファージタンパク質がともにM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質である場合、各マクロファージタンパク質がともに発現している細胞はM2マクロファージであると判定することができる。さらに、例えば、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質の片方がM1およびM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質であり、他方がM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質である場合、各マクロファージタンパク質がともに発現している細胞はM2マクロファージであり、片方のマクロファージタンパク質が発現している細胞はM1マクロファージであると判定することができる。さらに、前記工程(E)においては、色素染色の染色画像において関心領域(ROI:region of interest)となる領域を設定し、その関心領域に含まれるマクロファージの位置および数を特定してもよい。例えば、検体に含まれる腫瘍領域を関心領域として設定することで、TAMを判定することができる。
このように、染色画像に含まれている細胞のうち、マクロファージ、好ましくはM2マクロファージやTAMを判定することで、それらの位置および数を特定することができる。さらにこの特定された位置および数から、例えば、検体の単位面積あたりにおけるマクロファージ(M2マクロファージやTAM)の細胞数や検体における分布、検体に含まれる総マクロファージ数に対するM2マクロファージ数やTAM数の割合等を計測することができる。
本発明の一実施形態においては、上述した標的タンパク質に由来するシグナルおよび前記工程(E)で特定されたマクロファージ(M2マクロファージ、TAM)の位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を行うことにより、マクロファージ内の標的タンパク質の位置または発現量に係る情報を取得することができる。
例えば、色素染色の染色画像および蛍光染色画像を画像処理により重ねあわせた画像に基づいて、マクロファージの位置および数を特定し、さらに当該マクロファージに含まれる標的タンパク質のシグナルを抽出して測定することで、マクロファージ内の標的タンパク質の発現状態の情報を特定することができる。具体的には、例えば、標的タンパク質がTAMに発現するタンパク質である場合、前記画像処理を行った画像においてTAMであると判定された細胞における蛍光は標的タンパク質を示していると判定することができるため、この蛍光を標的タンパク質に由来するシグナルとして計測する。
一方前記画像処理を行った画像においてTAMであると判定されなかった細胞について、仮にその細胞に蛍光が観察されたとしても、その蛍光は、例えば腫瘍細胞に発現した標的タンパク質に由来するシグナルまたは非特異的な蛍光などであって、TAMに発現した標的タンパク質に由来するシグナルではないと判定する。また、前記工程(F)においては、色素染色の染色画像および蛍光染色画像を画像処理により重ねあわせた画像において関心領域(ROI:region of interest)となる領域を設定し、その関心領域に含まれるマクロファージ内の標的タンパク質の発現状態の情報を特定してもよい。
このようにマクロファージ、好ましくはM2マクロファージ、およびTAMの一方、より好ましくはM2マクロファージおよびTAMを正確に判定し、当該マクロファージに含まれる標的タンパク質のシグナルを抽出して測定することで、標的タンパク質の発現状態の情報をより詳細に特定することができる。具体的には例えば、マクロファージ(例えばTAM)1細胞あたりにおける標的タンパク質の平均発現量や密度、マクロファージにおける標的タンパク質の局在、検体の単位面積あたりにおける標的タンパク質の全発現量に対するマクロファージに発現している標的タンパク質の発現量の割合などが挙げられる。
上述した画像処理および蛍光シグナル等の計測に用いることができるソフトウェアとしては、例えば、画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)、全輝点自動計測ソフト「G-Count」(ジーオングストローム社製)等が挙げられる。このようなソフトウェアを利用することにより、ある特定の細胞における輝点を抽出してその輝度の総和を算出したり、所定の輝度以上の輝点の数を計測したりする処理を、半自動的に、迅速に行うことができる。
(免疫染色)
本発明の一実施形態においては、前記工程(A)~(C)は、それぞれ同一の検体において、第1のマクロファージタンパク質、第2のマクロファージタンパク質、および標的タンパク質について行われる免疫染色であることが好ましく、特に工程(C)が標的タンパク質を染色する蛍光免疫染色であることが好ましい。以下本発明の一実施形態における、免疫染色法の一例について説明する。
(検体)
「検体」とは、被験体から採取された組織切片や、被験体から採取された組織に含まれる細胞を培養した細胞であって、一般的には、免疫染色法により目的タンパク質の発現量を評価する場合などで慣用されているような、前記組織切片や細胞を載置した標本スライドの形態をとる。
本発明の情報取得方法の対象となる検体は正常組織由来であってもよいが、病変組織由来、特に腫瘍組織由来の検体を好適に用いることができる。「腫瘍組織」は、被験体から常法にしたがって採取したがん細胞を含む組織であって、がん細胞に加えて、例えば正常細胞、血管、間質細胞(線維芽細胞、内皮細胞、白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球)等)等が含まれ得る。このとき前記被験体はヒト(がん患者またはがんの罹患が疑われる者)であってもよいし、またヒト以外の動物であってもよい。なお、「腫瘍組織由来の検体」とは、腫瘍を有する(または腫瘍を有する疑いのある)被験体の病変部から採取された腫瘍組織切片やがん細胞塊、または前記被験体から採取された腫瘍組織に含まれる腫瘍細胞を培養した細胞であり、好ましくは上述したような標本スライドの形態をとる。「腫瘍組織由来の検体」が腫瘍組織切片である場合、該検体には腫瘍組織に加えて周辺の正常組織も含まれ得る。本明細書においては腫瘍組織由来の検体中における腫瘍組織(がん細胞)を含む領域を「腫瘍領域」と称する。
組織切片および標本スライドの作製法は特に限定されず、一般的には、例えば、被験体から採取した組織を、ホルマリン等を用いて固定し、アルコールで脱水処理した後、キシレン処理を行い、高温のパラフィン中に浸すことでパラフィン包埋を行うことで作製した組織試料を3~4μmの切片にすることで得ることができ、該組織切片をスライドガラス上に載置して乾燥することで標本スライドを作製することができる。
「腫瘍」は、典型的には固形腫瘍(がん)であり、特に限定されるものではないが、例えば、細胞腫、黒色腫、肉腫、脳腫瘍、頭頸部がん、胃がん、肺がん、乳がん、肝がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、膀胱がんなどの固形がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、などが挙げられる。
本発明の情報取得方法は、そのような検体を用いて、被験体の生体外において実施される。
(染色前処理)
(脱パラフィン処理)
キシレンを入れた容器に、検体を浸漬させ、パラフィン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でキシレンを交換してもよい。
次いでエタノールを入れた容器に検体を浸漬させ、キシレン除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中でエタノールを交換してもよい。
水を入れた容器に、検体を浸漬させ、エタノール除去する。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましい。また必要により浸漬途中で水を交換してもよい。
(賦活化処理)
前記脱パラフィン処理を行った検体に対して、工程(A)の前に、好ましくは工程(A)の前に加えて工程(B)の前に、目的物質の賦活化処理を行うことが好ましい。賦活化は常法により行うことができ、例えば、検体に熱処理を行う方法やタンパク質分解酵素を賦活液として検体を浸漬処理する方法が挙げられる。
熱処理により行う場合、賦活液としては、0.01Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)、1mMのEDTA溶液(pH8.0)、5%尿素、0.1Mのトリス塩酸緩衝液などを用い、オートクレーブ、マイクロウェーブ、圧力鍋、ウォーターバスなどを用いて50~130℃、10~20分程度加熱することにより賦活化を行うことができる。
タンパク質分解酵素を用いる場合、賦活液としては、例えば、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)にペプシン、プロテナーゼK、トリプシンなどを溶解したものを用いることができ、例えば室温環境下、5~30分浸漬することによりことができる。
賦活化処理後の検体をPBSを入れた容器に浸漬させることで洗浄を行う。温度は特に限定されるものではないが、室温で行うことができる。浸漬時間は、3分以上30分以下であることが好ましく、また必要により浸漬途中でPBSを交換してもよい。
(任意処理)
賦活化処理後、各染色を行う前にバックグラウンドノイズの低減等を目的として、必要に応じてブロッキング等の処理を行うことが好ましい。例えば、各染色が免疫染色である場合、BSA(ウシ血清アルブミン)含有PBSやTween20などの界面活性剤をブロッキング剤として滴下することで抗体の検体への非特異的な吸着を抑制することがでる。また、例えば、色素染色においてペルオキシダーゼの酵素基質反応を用いる場合などにおいては、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的な呈色反応を防ぐために過酸化水素によるペルオキシダーゼブロック等の処理を行うことが好ましい。また、各処理の後など必要であれば前処理の各ステップで、組織スライドを固定するためホルマリン溶液に一定時間浸漬する処理を行うことが好ましい。
これらの処理を行った後にはPBS等により洗浄を行うことが好ましい。洗浄条件は行った処理に応じて適宜調節することができ、例えば、室温で、3分以上30分以下で行うことができる。
(染色処理)
前記洗浄後の検体に対して、第1のマクロファージタンパク質の染色(工程(A))、第2のマクロファージタンパク質の染色(工程(B))および標的タンパク質を染色するための染色(工程(C))を順次行う。なお、各染色工程前には、BSA含有PBSなど公知のブロッキング剤やTween20などの界面活性剤を滴下する、ブロッキング処理を行うことが好ましい。また、各染色の前後にはPBS等で適宜洗浄することが好ましい。
免疫染色では、検出の目的となるタンパク質(各マクロファージタンパク質および標的タンパク質)に直接的または間接的に結合しうる抗体と標識物質とを直接的間接的に結合させた標識化抗体を適当な媒体に分散させ、組織切片等の検体に載せ、目的とする生体物質と反応させることで、検出の目的となるタンパク質を染色する。
一次抗体に標識物質を結合させたものを標識化抗体としてもよいし、二次抗体に標識物質を結合させたものを標識化抗体としてもよい。
一次抗体に標識物質を結合させたものを標識化抗体とした場合には、標識化抗体は検体中のマクロファージタンパク質または標的タンパク質と直接結合することによりそれらを染色する。
二次抗体に標識物質を結合させたものを標識化抗体とした場合には、標識化抗体は、検体中のマクロファージタンパク質または標的タンパク質にあらかじめ結合させておいた一次抗体に結合することにより、検体中のマクロファージタンパク質または標的タンパク質を染色する。
また、抗体と標識物質との結合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば標識化抗体が二次抗体であり、二次抗体と標識物質が間接的に結合している染色の様態の一つとして、[検体(目的タンパク質)]…[一次抗体(プローブ)]…[二次抗体]-[ビオチン]/[アビジン]-[標識物質]("…"は抗原抗体反応により結合していることを表し、"-"は必要に応じてリンカー分子を介していてもよい共有結合により結合していることを表し、"/"はアビジン・ビオチン反応により結合していることを表す。)となる実施形態が挙げられる。このような染色は、例えば、最初に一次抗体の溶液に検体を浸漬し、次に二次抗体-ビオチン結合体の溶液に検体を浸漬し、最後にアビジン-標識物質の溶液に検体を浸漬することによって行うことができる。
上記の、[検体(目的タンパク質)]…[一次抗体(プローブ)]…[二次抗体]-[ビオチン]/[アビジン]-[標識物質]という態様は、[検体(目的タンパク質)]…[一次抗体(プローブ)]…[二次抗体]-[ハプテン]/[抗ハプテン抗体]-[標識物質]に置き換えることができ、ハプテンとしてはDIG、DNP、FITC、Cy3などを挙げることができる。
[一次抗体]
一次抗体は、染色の目的となるタンパク質にユニークなエピトープを認識して特異的に結合する抗体であり、ポリクローナル抗体であってもよいが、定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。たとえば、標的タンパク質としてHER2を選択し、染色する場合は抗HER2抗体を用いることができる。1次抗体は、標的物質を特異的に認識することができれば、いずれのアイソタイプの抗体を用いてもよいが、特にIgG抗体(免疫グロブリンG)が好適に用いられる。また、一次抗体は、標的物質に結合可能であれば、天然の抗体のように全長を有するものである必要はなく、抗体断片または誘導体、キメラ抗体(ヒト化抗体等)、多機能抗体であってもよい。
[二次抗体]
二次抗体は、検体内に含まれる染色の対象となるタンパク質と結合した一次抗体における、標的物質と反応していない部分(例:Fc、F(ab)、またはF(ab'))を特異的に認識して結合する抗体であって、染色の対象となるタンパク質それ自体には結合しないものを指す。2次抗体には、抗IgG抗体を好適に用いることができる。また、該1次抗体がハプテン修飾されている場合には、そのハプテンを認識する抗ハプテン抗体も、同様の効果を持って使用することができる。
なお、1次抗体および2次抗体を産生する動物(免疫動物)の種類は特に限定されず、従来と同様、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどから選択すればよい。通常、二次抗体は、一次抗体と異なる免疫動物で作製されたものを選択する。
免疫染色を行う上での条件、例えば、免疫染色を行う際の温度および処理時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができ、例えば、室温で、30分以上24時間以下で行うことができる。
(任意染色)
上記染色に併せて、細胞が有するマクロファージタンパク質および標的タンパク質以外の物質(例えば核)に、蛍光物質(例えば核染色剤:Nuclear Fast Red)を結合させる染色を行ってもよいし、形態観察用染色剤(例えばエオジン)によって細胞の形状が特定できるような染色を行ってもよい。
これらの染色は、常法に従って行うことができ、またこれらの染色を行う場合は、染色の目的であるマクロファージタンパク質および標的タンパク質の染色後、つまり前記工程(C)の後に行うことが好ましい。
(染色後処理)
染色工程を終えた標本スライドは、上述したシグナル計測のための撮影等に適したものとなるよう、固定化・脱水、透徹、封入などの処理を行うことが好ましい。
固定化・脱水処理は、標本スライドを固定処理液(ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、アセトン、エタノール、メタノール等の架橋剤)に浸漬すればよい。透徹は、固定化・脱水処理を終えた標本スライドを透徹液(キシレン等)に浸漬すればよい。封入処理は、透徹処理を終えた標本スライドを封入液に浸漬すればよい。これらの処理を行う上での条件、たとえば標本スライドを所定の処理液に浸漬する際の温度および浸漬時間は、従来の免疫染色法に準じて、適切なシグナルが得られるよう適宜調整することができる。
以下、実施例に基づいて本発明の好適な態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[作製例1]
(ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体の作製)
50mMTris溶液に、抗ウサギIgG抗体(AbD社;LO-RG-1)50μgを溶解した。この溶液に、最終濃度3mMとなるようにDTT(ジチオトレイトール)溶液を添加、混合し、37℃で30分間反応させた。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社、Cat.#89882)に通して、DTTで還元化した2次抗体を精製した。精製した抗体全量のうち200μLを50mMTris溶液に溶解して抗体溶液を調製した。その一方で、リンカー試薬「Maleimide-PEG2-Biotin」(サーモサイエンティフィック社、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。この反応溶液を脱塩カラムに通して精製した。脱塩した反応溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光高度計(日立製「F-7000」)を用いて測定することにより、反応溶液中のタンパク質(ビオチン修飾IgG抗体)の濃度を算出し、50mMTris溶液を用いて、ビオチン修飾IgG抗体の濃度を250μg/mLに調整した。
[作製例2]
(FITC修飾抗マウスIgG2b抗体の作製)

FITC標識キット(Fluorescein Labeling kit-NH2/LK01:株式会社同人化学研究所製)を用いて、キットの説明書に従って、抗マウスIgG2b抗体(SouthernBiotech社;clone SB74g)にFITC試薬(NANOCS 品番:PG2-FCNS-2k)を反応させることによってFITC標識抗マウスIgG抗体を作製した。
[作製例3]
(FITC修飾抗マウスIgG2a抗体の作製)
標識キット(biotin Labeling kit-SH/LK10:株式会社同人化学研究所製)を用いて、キットの説明書に従って、まず抗マウスIgG2a抗体( サザンバイオテック(SouthernBiotech、SBA)社;clone: SB84a)を還元した。次いで、キット付属のビオチン試薬に代えてFITC試薬(FITC-5-maleimide(東京化成工業株式会社、F0810))を反応させることによってFITC標識抗マウスIgG2a抗体を作製した。
[作製例4]
(ストレプトアビジン化テキサスレッド集積粒子の作製)
テキサスレッド色素分子「Sulforhodamine 101」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持ながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX-035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に混合物として含まれるテキサスレッド色素内包メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた樹脂粒子の1000個についてSEM観察を行い、上述のように平均粒子径を測定したところ、平均粒子径152nmであった。このようにして作製されたテキサスレッド色素内包メラミン樹脂粒子を次の手順で表面修飾した。
得られた粒子0.1mgをEtOH1.5mL中に分散し、アミンプロピルトリメトキシシランLS-3150(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間反応させて表面アミノ化処理を行なった。
次いで、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて上記表面アミノ化処理を行なった粒子を3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleimidopropionamido)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10,000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことでマレイミド修飾されたテキサスレッド集積メラミン粒子を得た。
一方、ストレプトアビジン(和光純薬社製)をN-succinimidyl S-acetylthioacetate(SATA)を用いてチオール基付加処理を行ったのち、ゲルろ過カラムによるろ過を行い、チオール修飾されたストレプトアビジンを得た。
上記のマレイミド修飾されたテキサスレッド集積メラミン粒子とチオール修飾されたストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、室温で1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、得られたストレプトアビジン結合テキサスレッド集積メラミン粒子を回収した。得られたストレプトアビジン結合テキサスレッド集積メラミン粒子はBSAを1%含有するPBSに分散させ、0.09auに希釈した。
[作製例5]
(抗FITC抗体結合ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子の作製)
水22mLに、緑色蛍光色素であるピロメテン(Pyrromethene)556を14.4mg加えて溶解させた。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤の「エマルゲン」(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王株式会社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料「ニカラックMX-035」(日本カーバイド工業株式会社製)を0.35g加えた。
当該溶液に反応開始剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学株式会社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温してさらに20分間加熱撹拌した。
得られたピロメテン集積メラミン樹脂粒子の分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素などの不純物を除くため、純水による洗浄を行った。具体的には、遠心分離機「マイクロ冷却遠心機3740」(久保田商事株式会社製)にて20000Gで15分間、遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加え、超音波照射することにより再分散する手順を5回繰り返した。
以上の工程により、ピロメテン集積メラミン樹脂粒子(励起波長490nm、発光波長520nm)を作製した。平均粒子径は79nmであった。
上記のピロメテン集積メラミン樹脂粒子の末端にNHS-PEG(polyethylene glycol)-マレイミド試薬(SM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleimidopropionamido)-dodecaethyleneglycol]ester))を用いてマレイミドを導入し、これに作製例1のストレプトアビジンのチオール化と同様の手順でチオール化した抗FITC抗体(abcam社製;[2A3] (ab10257))を結合させた。
[作製例6]
(抗FITC抗体修飾ピロメテン556集積シリカ粒子の作製)
ピロメテン556 13.4gに塩化チオニル0.1mLを加え、654時間、加熱混合した後、真空乾燥を行なって余剰の塩化チオニルを除去した。得られたピロメテン556と塩化チオニルとの反応物と3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLを1.2mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
得られたオルガノアルコキシシラン化合物液0.3mLを、99%エタノール24mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.3mL、超純水0.75mL、および28質量%のアンモニア水0.75mLと25°Cで1時間混合した。
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をするリンスを行った。さらに同様のリンスを2回繰り返し、ピロメテン556集積シリカ粒子を得た。平均粒子径は122nmであった。
前記ピロメテン556集積シリカ粒子について、作製例4と同様の手法でマレイミド修飾を行い、当該マレイミド修飾ピロメテン556集積シリカ粒子に、抗FITC抗体(abcam社製;[2A3] (ab10257))の代わりに抗FITC抗体(abcam社製;[F4/1] (ab112511))を、作製例5と同じ手法で結合させることで、抗FITC抗体修飾ピロメテン556集積シリカ粒子を得た。
[実施例1]
(1)染色前処理
(1-1)脱パラフィン処理
肺腺がん組織アレイスライド(HLug-Ade150Sur-02:US Biomax社)に対して、以下の手順で脱パラフィン処理を行った。組織アレイスライドを、65℃インキュベーター内に15分間静置することでスライド内のパラフィンを融解した。キシレンを入れた容器3つにそれぞれ5分間ずつ浸け、脱水エタノール(関東化学;14599-95)で洗浄を行い、さらに脱水エタノールに5分間×2回浸けた。その後99.5%エタノール(関東化学;14033-70)でさらに脱水を行い、10分間純水に流して洗浄した。
(1-2)賦活化処理
あらかじめ95℃に予備加熱した賦活液(10mMトリス緩衝液(pH9.0))に脱パラフィン処理した組織アレイスライドを浸け、40分間放置する。室温になるまで放置した後10分間流水させた純水に曝して洗浄を行い、さらにPBSを入れた染色バットに切片スライドを浸漬し、5分間×3回洗浄する。
(1-3)内因性ペルオキシダーゼブロック
賦活化した組織アレイスライドを3%過酸化水素に15分間浸け、内因性ペルオキシダーゼブロックを行った。
(1-4)ブロッキング
前記処理を行った組織アレイスライドをBSAを1%含有するPBSに浸け、室温で15分ブロッキング処理を行った。
(2)CD68染色工程
(2-1)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて抗CD68マウスモノクロナール抗体[PG-M1](Dako社)を100倍希釈し、上記ブロッキング処理を行った組織アレイスライドに添加し、室温で1時間反応させた。
(2-2)2次抗体反応
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、ヒストファインシンプルステインMAX-PO(MULTI)(ニチレイバイオサイエンス社;049-22831)を添加し、室温で30分間反応させた。
(2-3)DAB染色
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、0.05mol/Lのトリス塩酸バッファー(pH7.6)で調整し、使用直前に30%過酸化水素を加えたDABを添加し、室温で3分間反応させた後、純水に5分間浸漬させた。
(3)CD163染色工程
(3-1)賦活化処理
DAB染色後の組織アレイスライドを、(1-2)と同様の手法で再度賦活化処理した。
(3-2)ブロッキング
(3-1)で賦活化処理を行った組織アレイスライドに対して(1-4)と同様にブロッキングを行った。
(3-3)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて抗CD163マウスモノクロナール抗体(abcam社製;[10D6])を50倍希釈し、(3-2)でブロッキング処理を行った組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させる。
(3-4)2次抗体反応
(3-3)でブロッキング処理を行った組織アレイスライドに対して、(2-2)と同様の手法で2次抗体反応を行った。
(3-5)HistoGreen染色
(3-4)2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、HistoGreen(AbCys社;E109)を添加し、室温で3分間反応させる。反応後はPBSで5分間×3回洗浄し、さらに純水で洗浄した。
(4)MCSFR(CSF-1R)蛍光染色工程
(4-1)ブロッキング
(3-4)で洗浄を行った後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
(4-2)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて抗MCSFRラビットモノクロナール抗体(abcam社製;[SP211])を50倍希釈し、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
(4-3)2次抗体反応
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例1で作製したビオチン化2次抗体をBSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加し、30分間反応させた。
(4-4)蛍光標識
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例4で作製したストレプトアビジン化テキサスレッド集積粒子の分散液を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
(5)細胞核染色工程
PFA反応後の組織アレイスライドを1分間純水の流水に曝した後、マイヤーヘマトキシリン液に1分間浸漬した。
(6)封入処理工程
(6-1)脱水・透徹
ヘマトキシリン染色後の切片スライドを水洗槽に移し、10分間純水を流した。その後切片スライドを「99.5%EtOH槽」、「脱水EtOH槽」×3、「キシレン槽」×3の順に浸けた。
(6-2)封入 脱水・透徹後の切片スライドを、自動封入機により封入した。その後切片スライドを遮光下で保存した。
(7)撮影工程
まず、蛍光顕微鏡「BX-53」(オリンパス株式会社)に取り付けた顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(オリンパス株式会社)を用いて、色素染色画像(400倍)の撮影を行った。
次に、蛍光顕微鏡「BX-53」(オリンパス株式会社)を用いて蛍光画像の撮影を行った。(4-4)の蛍光標識に用いたビオチン化蛍光体集積粒子に対応する励起光を標本に照射して蛍光を発光させ、その状態の染色画像を撮影した。この際、励起光の波長は、蛍光顕微鏡が備える励起光用光学フィルターを用いて575~600nmに設定し、観察する蛍光の波長は、蛍光用光学フィルターを用いて612~692nmに設定した。蛍光顕微鏡による観察および画像撮影時の励起光の強度は、視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないような範囲で調節し、例えば4000μ秒に設定した。
画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いて色素染色画像および蛍光画像を重ね合わせ、画像処理を行った。組織アレイスライドに含まれる150の検体の内、DABおよびHistGreenの両方で染色された細胞、つまりCD68およびCD163が染色された細胞を、その画像を重ね合わせた結果からTAMと識別し、TAMが存在する検体を抽出した。TAMが存在する検体について、さらにTAM1細胞あたりのCSF-1Rに由来する輝点を計測した。なお、蛍光体集積粒子を表す輝点は輝度が所定の値以上のものの数を計測した。なお、腫瘍組織中に存在するマクロファージは、M2マクロファージが主であるため、本実施例においてはM2マクロファージの数をTAM数としたが、TAM中のM1マクロファージの数(割合)、M2マクロファージの数(割合)を個別に求めてもよい。
TAMが存在する検体について、画像に含まれたTAMの数およびTAM1細胞あたりの輝点数の平均値を表1に示す。検体ごとに、含まれるTAMの数とTAM1細胞あたりの輝点数(CSF-1Rの発現量)が異なることが分かる。
Figure 0007238792000001
[実施例2]
実施例1と同様の手法で(1)染色前工程、(2)CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行った。
実施例1の(4)蛍光染色工程において、CSF-1R染色に続いてIDO染色を行った。当該蛍光染色工程を蛍光染色工程(4’)として、詳細を以下に示す。
(4’)蛍光染色工程
(4’-1)ブロッキング
(2)実施例1と同様の手法で、CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行ない、CSF-1R蛍光染色を行った後に、洗浄した後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
IDO蛍光染色工程
(4’-2)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて、抗IDOマウスモノクローナル抗体(abcam社製/Mouse IgG2b/ab55305)を100倍にそれぞれ希釈した溶液を、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
(4’-3)2次抗体反応
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例2
で作製したFITC修飾抗マウスIgG2b抗体を、BSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加して30分間反応させた。
(4’-4)蛍光標識
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例5で作製した抗FITC抗体結合ピロメテン集積メラミン樹脂粒子の分散液を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
上記蛍光標識を行った組織アレイスライドに対して、実施例1と同様に、(5)細胞核染色工程、(6)封入処理工程、および(7)撮影工程を行った。
(7)撮影工程の色素染色画像(400倍)の撮影(CD68染色およびCD163染色)は実施例1と同様に行った。
テキサスレッド、つまりCSF-1Rを観察・撮影する場合における励起光の波長は、実施例1と同様に575~600nmに設定し、観察する蛍光の波長は612~692nmに設定した。またピロメテン、つまりIDOを観察・撮影する場合における励起光の波長は、420~520nmに設定し、観察する蛍光の波長は517.5~532.5nmに設定した。
(考察)
上述したように、本実施例においては、第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質(CD68およびCD163)、および複数の標的タンパク質(CSF-1RとIDO)とを観察している。CSF-1Rはがん治療におけるターゲットタンパク質として期待されているタンパク質であり、これを阻害することによってTAMの減少やそれによる腫瘍増殖が抑制される効果が認められている。IDOはがん細胞のチェックポイント阻害に関わることが知られており、この機構を阻害することで腫瘍の増殖を抑制できるという観点からこれもがん治療のターゲットタンパク質であり、IDO阻害剤によりCSF-1Rのシグナル伝達を遮断することで腫瘍退行が誘発されることは知られている(EBioMedicine. 2016 Apr; 6: 50-58. )。
本実施例のように第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質により、TAMを特定し、さらに当該マクロファージ内のCSF-1RとIDOを同時に検出することで、例えば、臨床において検体に由来する患者の予後を予測できることが期待できる。例えば、TAMが存在する検体について、画像に含まれたTAMの数およびTAM1細胞あたりにおけるそれぞれの輝点数の平均数を求め、それらの輝点数が多いほど、当該患者の予後は不良であるという結果を得られることが期待できる。
この理由として、標的タンパク質を示す輝点が多い、つまりこの場合がん治療のターゲットタンパク質である、CSF-1RとIDOが多いということは、腫瘍の進行が一定以上進んでいるということを意味しており(換言すると腫瘍組織内の微小環境が腫瘍増殖亢進の状態にある)、したがって輝点が少ない(ターゲットタンパク質が少ない、つまり比較的ステージが低い)ほうが予後が良いこと、また、ターゲットタンパク質が発現している細胞の数が少ない方が薬剤による取り残しが少なく、逆に言えばターゲットタンパク質が発現している細胞の数が多いと、薬剤により大多数のターゲットタンパク質の腫瘍亢進に係る機能が不活性化することで一時的に腫瘍が寛解したかのように見えても、ターゲットタンパク質が不活化されない細胞が残って再び増殖する結果、腫瘍が再発する可能性が高いということが予測できる。
このように2種類の、特にCSF-1RおよびCSF-1Rと関連して腫瘍亢進について機能しているタンパク質を標的タンパク質として用いて本発明の情報取得方法を行うことで、患者の予後に対する予測など、治療方針等について有益な情報を得ることができる。
[実施例3]
実施例1と同様の手法で(1)染色前工程、(2)CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行った。
実施例1の(4)蛍光染色工程において、CSF-1R染色に続いてCXCR2染色を行った。当該蛍光染色工程を蛍光染色工程(4’’)として、詳細を以下に示す。
(4’’)蛍光染色工程
(4’’-1)ブロッキング
(2)CD68染色工程および(3)CD163染色工程を行ない、CSF-1R蛍光染色を行った後に、洗浄した後の組織アレイスライドに対して、(1-4)と同様にブロッキングを行った。
(4’’-2)1次抗体反応
BSAを1%含有するPBSを用いて、FITC修飾された抗CXCR2マウスモノクローナル抗体(R&D SYSTEMS社製、Clone: 48311)を50倍にそれぞれ希釈した溶液を、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに添加し、4℃で1晩反応させた。
(4’’-3)2次抗体反応
1次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例3で作製したFITC修飾抗マウスIgG2a抗体を、それぞれBSAを1%含有するPBSで2μg/mLに希釈したものを添加して30分間反応させた。
(4’’-4)蛍光標識
2次抗体反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後に、作製例6で作製した抗FITC抗体標識された抗FITC抗体結合ピロメテン集積メラミン樹脂粒子を添加し、室温で2時間反応させた。2時間後PBSで5分間×3回洗浄し、4%PFAを切片スライドに添加して10分間反応させた。
上記蛍光標識を行った組織アレイスライドに対して、実施例1と同様に、(5)細胞核染色工程、(6)封入処理工程、を行った。
(7)撮影工程の色素染色画像(400倍)の撮影(CD68染色およびCD163染色)は実施例1と同様に行った。
テキサスレッド、つまりCSF-1Rを観察・撮影する場合における励起光の波長は、実施例1と同様に575~600nmに設定し、観察する蛍光の波長は612~692nmに設定した。またピロメテン556、つまりCXCR2を観察・撮影する場合における励起光の波長は、420~520nmに設定し、観察する蛍光の波長は517.5~532.5nmnmに設定した。
画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いて色素染色画像および蛍光画像を重ね合わせ、画像処理を行った。DABおよびHistGreenの両方で染色された細胞、つまりCD68およびCD163が染色された細胞をTAMと判断して、TAMが存在する検体を抽出することができる。
TAMが存在する検体について、さらにTAM1細胞あたりのCSF-1Rに由来する輝点を計測した。なお、蛍光体集積粒子を表す輝点は輝度が所定の値以上のものの数を計測した。なお、腫瘍組織中に存在するマクロファージは、M2マクロファージが主であるため、本実施例においてはM2マクロファージの数をTAM数としたが、検体中のM1マクロファージの数(割合)、M2マクロファージの数(割合)を個別に求めてもよい。
(考察)
本実施例において標的タンパク質の一つとして用いたCXCR2(そのリガンドであるCXCL1は腫瘍微小環境下における血管新生について関与することで腫瘍の増殖を亢進する)も、実施例2で用いたIDOと同様に、CSF-1Rとともに阻害することで、腫瘍増殖が著明に減少することがしられているタンパク質であり、同様に2者の輝点数について解析して本発明の情報取得方法を行うことで、患者の予後に対する予測など、治療方針等について有益な情報を得ることができる。
[実施例4]
実施例2の蛍光染色工程において、抗IDO抗体の代わりに抗PD-L1抗体(株式会社医学生物学研究所製、clone: 27A2)を用いる以外は実施例2と同様の手法で本発明の情報取得方法を行った。
(考察)
実施例4において標的タンパク質の一つとして用いたPD-L1は、抗原提示細胞の表面上に発現するタンパク質である。PD-L1はこれらのみを阻害するだけでも腫瘍増殖を抑制することができるが、いずれも上記実施例で用いたIDO等のタンパク質と同様にCSF-1Rとともに阻害することで、腫瘍増殖が著明に減少することが知られている(日本臨床免疫学会会誌(Vol. 40 No. 4))タンパク質である。これらについても、上述した実施例と同様に、CSF-1R/PD-L1の輝点数について解析して本発明の情報取得方法を行うことで、患者の予後に対する予測など、治療方針等について有益な情報を得ることができる。
[実施例5]
実施例1の染色工程における、(2)CD68染色工程において、抗CD68マウスモノクローナル抗体を抗CD8抗体(Dako社製、型番:M7103、Clone: c8/144B)に変更することでキラーT細胞を染色するとともに(3)CD163染色工程において、抗CD163マウスモノクローナル抗体を抗FoxP3抗体(Epitomics社製、型番:AC-0304RUO、Clone:EP340)に変更することで、制御性T細胞を染色した。
実施例1と同様に、(5)細胞核染色工程、(6)封入処理工程を行い、さらに同様に工程(7)撮影工程を行うことにより取得した画像を解析することで細胞識別と輝点計測を実施した。
ここで、PD-L1染色に際しては、抗PD-L1抗体(医学生物学株式会社社製、clone: 27A2 / cord. D230-3)を作成例2と同じ手法でFITC修飾することで、FITC修飾抗PD-L1抗体を作成した。実施例1の(4-2)において抗MCSFRラビットモノクロナール抗体に代えて前記FITC修飾抗PD-L1抗体を反応させ、その後実施例1の(4-4)蛍光標識においてストレプトアビジン化テキサスレッド集積粒子に代えて、作成例6で作成した抗FITC抗体修飾ピロメテン556集積シリカ粒子を反応させた。
(考察)
CD8染色画像の結果から、染色された細胞をキラーT細胞と識別できるとともに、FoxP3染色画像の結果から、染色された細胞を制御性T細胞と識別することができた。そして、それらの細胞とPD-L1輝点の位置関係から、それぞれの細胞にPD-L1がどのように分布しているかを示す分布マップを作成できた。この分布マップは、患者ごとに異なることが予想され、有用な情報と考えられる。

Claims (20)

  1. 下記工程(A)~(D)を含む、情報取得方法であって、下記工程(A)~(C)を同一の検体に対して行う、情報取得方法:
    工程(A):第1の免疫細胞タンパク質を染色する;
    工程(B):第2の免疫細胞タンパク質を染色する;
    工程(C):標的タンパク質を染色する;
    工程(D):工程(A)~(C)の後に、標的タンパク質に由来するシグナルを計測する;
    ただし、前記工程(A)における前記第1の免疫細胞タンパク質が3,3'-diaminobenzidineで染色され、前記工程(B)における第2の免疫細胞タンパク質がHistogreenで染色されており、
    前記工程(B)が前記工程(A)の後に行われ、
    前記工程(C)における染色が、蛍光染色であって、工程(B)の後に行われ、
    前記蛍光染色が、標的タンパク質と直接的または間接的に結合する抗体に蛍光体集積粒子を結合させた標識化抗体を、検体と反応させて行う蛍光免疫染色であり、
    前記標的タンパク質に由来するシグナルを、蛍光染色された標的タンパク質に由来する輝点数として計測する。
  2. 前記工程(A)および工程(B)における染色によって免疫細胞の位置および数を特定する工程(E)を更に含む、請求項1に記載の情報取得方法。
  3. 前記工程(D)で計測された標的タンパク質に由来するシグナルならびに前記工程(E)で特定された免疫細胞の位置および数に基づいて、標的タンパク質の発現状態の情報を特定する工程(F)を更に含む、請求項2に記載の情報取得方法。
  4. 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、顆粒球、および形質細胞から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報取得方法。
  5. 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージである、請求項4に記載の情報取得方法。
  6. 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である、請求項4に記載の情報取得方法。
  7. 前記第1の免疫細胞タンパク質および第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つが、マクロファージに発現するタンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報取得方法。
  8. 前記第1の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現する第1のマクロファージタンパク質であり、前記第2の免疫細胞タンパク質が、マクロファージに発現し、かつ前記第1のマクロファージタンパク質とは異なる第2のマクロファージタンパク質である、請求項7に記載の情報取得方法。
  9. 前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質の少なくとも一つがM2マクロファージに特異的に発現するタンパク質を含む、請求項8に記載の情報取得方法。
  10. 前記第1のマクロファージタンパク質および第2のマクロファージタンパク質が、CD68、CD163、およびCD204から選ばれる、請求項8または9に記載の情報取得方法。
  11. 前記標的タンパク質が、マクロファージに発現するタンパク質である、請求項1~10のいずれか一項に記載の情報取得方法。
  12. 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記標的タンパク質が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に発現するタンパク質である、請求項11に記載の情報取得方法。
  13. 前記標的タンパク質が、CSF-1R、IDO、CXCR2、またはPD-L1である、請求項12に記載の情報取得方法。
  14. 前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、M2マクロファージであって、
    前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によってM2マクロファージの位置および数を特定する工程である、請求項2に記載の情報取得方法。
  15. 前記検体が腫瘍組織由来の検体であり、前記第1の免疫細胞タンパク質を発現する細胞および前記第2の免疫細胞タンパク質を発現する細胞の少なくとも一方が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)であって、
    前記工程(E)が、前記工程(A)および工程(B)における染色によって腫瘍関連マクロファージ(TAM)の位置および数を特定する工程である、請求項2に記載の情報取得方法。
  16. 前記工程(C)において染色される前記標的タンパク質が2種以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載の情報取得方法。
  17. 前記標的タンパク質の少なくとも一つが、CSF-1Rである、請求項16に記載の情報取得方法。
  18. 前記標的タンパク質が、T細胞応答の増強および抗腫瘍効果から選択される少なくとも一以上の効果を有するタンパク質を含む、請求項17に記載の情報取得方法。
  19. 前記標的タンパク質が、IDO、PD-L1、PD-1またはCXCR2を更に含む、請求項17に記載の情報取得方法。
  20. 前記第1の免疫細胞タンパク質および第2の免疫細胞タンパク質の少なくとも一つがCD4、CD8、CD25、CD16、CD56、およびFoxP3から選択される、請求項1~3、および16~19のいずれか一項に記載の情報取得方法。
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