JPWO2020066336A1 - 検出方法および評価方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、励起されたブリンキングを生じる蛍光発光性粒子からのエネルギー移動によりブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を明滅させることでタンパク質複合体を検出する方法を提供する。本発明に係るタンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の検出方法は、タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体を用いて標識する工程(a)、およびタンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を行った後、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を検出し、前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を含む。
Description
本発明は、検出方法および、該検出方法を利用した評価方法に関する。
抗がん剤として、従来から低分子医薬品が広く用いられてきたが、近年ではより血漿中での安定性が高く、選択性や治療効果が高く副作用の少ない抗体医薬が数多く開発され、臨床に用いられている。
抗がん剤としてよく用いられている抗体医薬にトラスツズマブ(Trastuzumab)(ハーセプチン(登録商標);中外製薬株式会社)がある。トラスツズマブは多くの種類のがんで遺伝子増幅および過剰発現がみられるHER2タンパク質に特異的に結合する抗体医薬であり、トラスツズマブがHER2タンパク質に結合することで抗体依存性細胞障害作用を活性化したり、また細胞増殖シグナルを抑制したりすることから、抗腫瘍効果を発揮することが知られている。
近年開発されたペルツズマブ(Pertuzumab)(パージェタ(登録商標);中外製薬株式会社)もHER2を標的とするがんを対象疾患とする抗体医薬である。HER2は、同じファミリー受容体であるHER3とヘテロダイマーを形成することはよく知られている。以下、HER2と、HER3とから形成されるヘテロダイマーを、HER2/HER3ヘテロダイマーとも記す。例えば、HER2/HER3ヘテロダイマーの下流では主に細胞増殖、細胞周期進行、細胞生存の維持に関わるPI3K/Akt経路が活性化されていること(非特許文献1、2)、ペルツズマブはHER2とHER3とのダイマー形成を強力に阻害することでPI3K/Aktシグナルを抑制することでがんの進行を抑制すること(非特許文献1)、ラパチニブ(タイケルブ(登録商標);グラクソ・スミスクライン株式会社)はHER2とEGFRとのダイマー形成を阻害し、2つの受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害することで、下流のシグナル伝達を抑制してがんの進行を抑制すること(非特許文献3)が報告されている。したがって、HER2を含むヘテロダイマーの検出は、がん細胞の増殖、がんの進行や増悪と大きく関連していると考えられ、このようなヘテロダイマーを検出することは創薬分野にとって重要なことである。
タンパク質の結合や相互作用の検出に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いる方法が知られている。FRETは、異なる蛍光発色団が1〜10nm程度の距離に存在する場合において、一つの蛍光色素の蛍光スペクトルがもう一つの蛍光色素の励起スペクトルに重なる場合、最初に励起された蛍光色素(ドナー蛍光体)の電子と2番目の蛍光色素(アクセプター蛍光体)の電子が共鳴してアクセプター蛍光体の蛍光発光が起こる現象であり、バイオテクノロジー分野においては、例えばドナー蛍光体またはアクセプター蛍光体にそれぞれ目的となるタンパク質を結合させてこの現象を検出することで、それらのタンパク質の結合などの相互作用を検出する方法に用いられている。
具体的にはドナー蛍光体を結合させたドナー蛍光体結合タンパク質とアクセプター蛍光体を結合させたアクセプター蛍光体結合タンパク質とが複合体を形成していた場合、二つの蛍光体は極めて近距離に存在するため、ドナー蛍光体の励起光を照射するとアクセプター蛍光体が蛍光発光することから、それぞれのタンパク質の結合を判定できる。
特許文献1には異なった蛍光物質を含む2種類の抗体を使い、それぞれの蛍光物質間のFRETを測定することでHER2を含むヘテロダイマーが形成されているかどうかを決定する方法が記載されている(特許文献1)。
Arteaga CL. et al.,Nat Rev Clin Oncol. 2011 Nov 29;9(1):16-32.
Rosen LS. et al., Oncologist. 2010;15(3):216-35.
Lin, N et.al., J Clin Oncol. 2008 Apr 20;26(12):1993-1999.
Nirmal, M. et al.,Nature 383, 1996, 802-804.
発明者らは、2種類の蛍光色素を用いたFRETによりHER2/HER3ヘテロダイマーの検出を試みたところ、蛍光観察において数秒以内に退色が起こり、撮影が容易ではないという問題を見出した。
代替案として、蛍光物質として蛍光色素の代わりに、光耐久性の高い量子ドットと蛍光色素集積粒子を用いたFRETを行ったが、量子ドットを励起させる波長の励起光により蛍光色素集積粒子が励起されてしまう場合があり、そのような非特異的な蛍光色素集積粒子の蛍光発光のため、目的となるヘテロダイマーが形成されているかどうかの確実な判別ができなかった。
本発明は、このような現状に鑑み、ヘテロダイマー等のタンパク質複合体を、高感度で検出可能な検出方法、該検出方法を利用した薬剤の評価方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上述のような非特異的なアクセプター蛍光粒子の発光という問題を解決するため、量子ドットにみられるブリンキングと呼ばれる現象を利用することを着想した。
ブリンキングとは、ミリ秒から秒の時間間隔で蛍光発光性物質が明滅を繰り返す現象であり、蛍光タンパク質、有機蛍光色素、量子ドットなど、1分子で用いられる蛍光分子においてみられる現象であり(非特許文献4)、このような明滅は蛍光色素集積粒子においては本来であれば見られない。
しかしながら、本発明者らはブリンキングを生じる蛍光発光性粒子とブリンキングを生じない蛍光発光性粒子とを用いた場合に、両者が極めて近接した距離に存在すると、励起されたブリンキングを生じる蛍光発光性粒子からのエネルギー移動により、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が明滅することがあるということを見出した。また、本発明者らは、該現象をタンパク質複合体の検出に利用する、タンパク質複合体の検出方法を完成させた。
すなわち、本発明は例えば以下の[1]〜[12]を提供する。
[1]
タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の検出方法であって、
タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体を用いて標識する工程(a)および
タンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を含み、
その後、
前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を検出し、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を含み、
前記明滅する輝点が前記タンパク質(A)と前記タンパク質(B)との複合体をあらわすタンパク質複合体の検出方法。
[2]
前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子が量子ドットであり、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が蛍光色素集積粒子である、
項1に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[3]
さらに、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数、およびタンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数を算出する工程(d)を含む、項1または2に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[4]
前記タンパク質複合体が、タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるヘテロダイマーである、項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[5]
検体に薬剤を添加する前および添加した後のそれぞれの時点において、項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法を行う工程を含む、薬剤効果の評価方法。
[6]
前記薬剤がタンパク質複合体の形成を阻害する薬剤である、項5に記載の評価方法。
[7]
前記薬剤がヘテロダイマー形成阻害薬である、項5または6に記載の評価方法。
[8]
前記タンパク質複合体がHER2とHER3とからなるヘテロダイマーである、項5〜7のいずれか一項に記載の評価方法。
[9]
前記薬剤がペルツズマブ、トラスツズマブ、またはラパチニブである、項5〜8のいずれか一項に記載の評価方法。
[10]
前記量子ドットと前記蛍光色素集積粒子とは、それぞれ異なった励起波長を有する、項5〜9のいずれか一項に記載の評価方法。
[11]
前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の10分の1以下である、項5〜10のいずれか一項に記載の評価方法。
[12]
前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の100分の1以下である、項5〜11のいずれか一項に記載の評価方法。
[1]
タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の検出方法であって、
タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体を用いて標識する工程(a)および
タンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を含み、
その後、
前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を検出し、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を含み、
前記明滅する輝点が前記タンパク質(A)と前記タンパク質(B)との複合体をあらわすタンパク質複合体の検出方法。
[2]
前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子が量子ドットであり、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が蛍光色素集積粒子である、
項1に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[3]
さらに、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数、およびタンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数を算出する工程(d)を含む、項1または2に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[4]
前記タンパク質複合体が、タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるヘテロダイマーである、項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法。
[5]
検体に薬剤を添加する前および添加した後のそれぞれの時点において、項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法を行う工程を含む、薬剤効果の評価方法。
[6]
前記薬剤がタンパク質複合体の形成を阻害する薬剤である、項5に記載の評価方法。
[7]
前記薬剤がヘテロダイマー形成阻害薬である、項5または6に記載の評価方法。
[8]
前記タンパク質複合体がHER2とHER3とからなるヘテロダイマーである、項5〜7のいずれか一項に記載の評価方法。
[9]
前記薬剤がペルツズマブ、トラスツズマブ、またはラパチニブである、項5〜8のいずれか一項に記載の評価方法。
[10]
前記量子ドットと前記蛍光色素集積粒子とは、それぞれ異なった励起波長を有する、項5〜9のいずれか一項に記載の評価方法。
[11]
前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の10分の1以下である、項5〜10のいずれか一項に記載の評価方法。
[12]
前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の100分の1以下である、項5〜11のいずれか一項に記載の評価方法。
上記手法により、蛍光色素集積粒子等のブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の非特異的な蛍光発光(ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光によらない、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の非特異的な蛍光発光)は明滅しないために検出対象から除くことができるため、目的とするタンパク質複合体の検出を高感度で行うことができる。
この手段によると、蛍光色素集積粒子等のブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が明滅を起こしている場合には、量子ドット等のブリンキングを生じる蛍光発光性粒子および蛍光色素集積粒子等のブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が、エネルギー移動が起きるほどの近距離に存在していることがわかり、このことからブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体が標識したタンパク質とブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が結合した抗体が標識したタンパク質とが結合した、タンパク質複合体を高い精度で検出できる。
具体的には、例えばHER2およびHER3にそれぞれ適当な組み合わせの、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体およびブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識し、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射し、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の明滅している蛍光輝点を観察することにより、HER2/HER3ヘテロダイマーが形成されている数を高い精度で計測することができる。
さらに上記のような蛍光観察において、細胞に励起光を照射すると細胞内に存在する物質からの非特異的な蛍光である、いわゆる自家蛍光といわれるものも検出されることもあるが、この自家蛍光もまた明滅しないために、さらに目的のタンパク質複合体を高い検出精度が期待できる。
また当該方法を用いることで薬剤の効果について評価することができる。例えば上述したようにHER2/HER3ヘテロダイマーの形成は、がん細胞の増殖等に大きく関与している。したがって腫瘍由来の培養細胞や担がん動物等の実験動物等を用いて、抗がん剤の候補薬剤の前後におけるヘテロダイマーの数の変化などを観察することで、当該候補薬剤がHER2/HER3ヘテロダイマーの形成を阻害し得るかどうかを判別することができ、したがって当該候補薬剤のがんに対する薬効を予測・評価することができる。
図1(B)は本発明の一様態である標識の模式図であって、HER2に(量子ドットを結合していない)抗HER2マウス抗体を結合させ、さらに作製例1で作製した量子ドット結合抗HER2抗体の代わりに、作製例1と同じ手法で作製した量子ドット結合抗マウスIgG抗体で標識したHER2の模式図である。
図2(A)は作製例2で作製した、蛍光色素集積粒子結合抗HER3マウスモノクローナル抗体で標識した、HER3の模式図である。図2(B)は本発明の一様態である標識の模式図であって、HER3に(蛍光色素集積粒子を結合していない)抗HER3マウスモノクローナル抗体を結合させ、さらに作製例2で作製した蛍光色素集積粒子結合抗HER3マウスモノクローナル抗体の代わりに、作製例2と同じ手法で作製した蛍光色素集積粒子結合抗マウスIgG抗体で標識したHER3の模式図である。
図3は量子ドット結合抗HER2マウスモノクローナル抗体で標識したHER2と蛍光色素集積粒子結合抗HER3マウスモノクローナル抗体で標識したHER3とからなるヘテロダイマー、および当該ヘテロダイマーの検出の模式図である。
本発明の「検出方法」においては、タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体を検出の対象とする。
<検出方法>
(工程(a)および(b))
本発明に係る検出方法は、タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(a)、タンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を含む。工程(a)および(b)は、工程(a)を先に行ってもよいし、工程(b)を先に行ってもよいし、工程(a)と工程(b)とを同時に行ってもよい。
<検出方法>
(工程(a)および(b))
本発明に係る検出方法は、タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(a)、タンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を含む。工程(a)および(b)は、工程(a)を先に行ってもよいし、工程(b)を先に行ってもよいし、工程(a)と工程(b)とを同時に行ってもよい。
工程(a)および工程(b)は、具体的には、例えばブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体およびブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体を希釈液に分散させた染色液を、検体(培養細胞や組織切片等)に対して添加することで行うことができる。
ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子としては典型的には量子ドットが選択され、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子としては典型的には蛍光色素集積粒子が選択される。
したがって好ましくは、本発明の検出方法においては、タンパク質(A)を量子ドット結合抗体で標識する工程(a')、タンパク質(B)を蛍光色素集積粒子結合抗体で標識する工程(b')を含む。以下の説明では、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子が量子ドットであり、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が蛍光色素集積粒子である場合を中心に説明する。
量子ドット結合抗体はタンパク質(A)を特異的に認識する抗体と所望の励起波長を有する量子ドットとを直接的または間接的に結合させたものであり、蛍光色素集積粒子結合抗体もまた同様に、タンパク質(B)を特異的に認識する抗体と所望の励起波長を有する蛍光色素集積粒子とを直接的または間接的に結合させたものである。
本発明において、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が明滅する理由は明らかではないが、本発明者らは、励起されたブリンキングを生じる蛍光発光性粒子から、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子へのエネルギー移動がその主因であると推測した。
すなわち、本発明では、量子ドット等のブリンキングを生じる蛍光発光性粒子が、該粒子の励起波長の光が照射されることで励起されて起きるブリンキング現象と共に、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子へエネルギー移動が起こるため、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の明滅が検出されると考えられる。
したがって量子ドットの発光波長が蛍光色素集積粒子を励起させ得る波長である組み合わせを選択する必要がある。
本発明に用いることが可能な量子ドットおよび蛍光色素集積粒子としては、後述の<量子ドット>の項、<蛍光色素集積粒子>の項で記載したものが挙げられる。
本発明に好適な量子ドットと、蛍光色素集積粒子との組み合わせとしては、(粒子ドット-蛍光色素集積粒子)具体的には、Qdot(登録商標)585(ThemoFisher Scientific社)−テキサスレッド、Qdot 585−ペリレンジイミド、Qdot 525−AlexaFluor532、Qdot 545−Cy3、Qdot 565−AlexaFluor568、Qdot 625−Cy5、Qdot 655−Cy5.5等の組み合わせが挙げられる。
前記量子ドットと前記蛍光色素集積粒子とは、それぞれ異なった励起波長を有することが好ましい。前記量子ドットの励起波長帯としては、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の10分の1以下となる励起波長帯が好ましく、100分の1以下となる励起波長帯が特に好ましい。
また、前記蛍光色素集積粒子の励起波長帯としては、前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度の10分の1以下となる励起波長帯が好ましく、100分の1以下となる励起波長帯が特に好ましい。また、前記量子ドットと前記蛍光色素集積粒子とは、それぞれ異なった発光波長を有することが好ましく、それぞれの発光波長の差が10nm〜40nmであることが好ましく、30nm〜40nmであることが特に好ましい。
前記タンパク質(A)を特異的に認識する抗体およびタンパク質(B)を特異的に認識する抗体は特に限定されないが、前記タンパク質複合体の形成に影響を与えない抗体を選択することが好ましい。また、タンパク質(A)とタンパク質(B)とが同じタンパク質である場合には、前記タンパク質(A)を特異的に認識する抗体とタンパク質(B)を特異的に認識する抗体は、それぞれ異なったエピトープを認識する抗体であることが好ましい。なお、いずれに用いられる抗体もモノクローナル抗体が好ましい。抗体を産生する動物(免疫動物)の種類は特に限定されるものではなく、従来と同様、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどから選択すればよい。例えば、タンパク質(A)としてHER2を選択する場合には抗HER2マウス モノクローナル抗体、タンパク質(B)としてHER3を選択する場合には抗HER3マウスモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
さらに目的のタンパク質を特異的に認識して結合する能力を有するものであれば、天然の全長の抗体でなく、抗体断片またはキメラ抗体(ヒト化抗体等)および多機能抗体等の抗体誘導体を用いることもできる。
前記量子ドット結合抗体および蛍光色素集積粒子結合抗体における、量子ドットまたは蛍光色素集積粒子と、抗体との結合の態様としては特に限定されず、量子ドットまたは蛍光色素集積粒子と、抗体とが直接的に結合する場合の様態としては、例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着または化学吸着等が挙げられる。また、あらかじめ所望の抗体に所望の量子ドットまたは蛍光色素集積粒子が結合されている製品が市販されていれば、それを利用してもよいし、また、公知の手法に基づいて作製してもよい。
量子ドットまたは蛍光色素集積粒子と、抗体とが間接的に結合する場合の様態としては、例えば、アビジン類およびビオチンを介して公知の様態により結合していてもよいし、リンカー分子を介して結合してもよい。
量子ドット結合抗体は、前記タンパク質(A)を特異的に認識する抗体(いわゆる一次抗体)に、当該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を結合させ、さらに量子ドットを結合させた様態であってもよい。
また、蛍光色素集積粒子結合抗体は、前記タンパク質(B)を特異的に認識する抗体(いわゆる一次抗体)に、当該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を結合させ、さらに蛍光色素集積粒子を結合させた様態であってもよい。
量子ドット結合抗体が、一次抗体に、二次抗体を結合させ、さらに量子ドットを結合させた様態である場合には、蛍光色素集積粒子結合抗体は、一次抗体に二次抗体と結合させ、さらに蛍光色素集積粒子を結合させた様態であることが好ましいが、このとき量子ドット結合抗体における一次抗体と蛍光色素集積粒子結合抗体における一次抗体はそれぞれ異なった免疫動物に由来するものであることが好ましい。同じ免疫動物に由来した一次抗体を用いる際には、量子ドット結合抗体および蛍光色素集積粒子結合抗体における二次抗体は、交差反応を防ぐため、異なったエピトープを認識する抗体をそれぞれ用いる必要がある。
(工程(c))
本発明においては、前記工程(a)および(b)を行った後、前記量子ドット等のブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、蛍光色素集積粒子等のブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を顕微鏡により検出し、前記蛍光色素集積粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を行う。
(工程(c))
本発明においては、前記工程(a)および(b)を行った後、前記量子ドット等のブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、蛍光色素集積粒子等のブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を顕微鏡により検出し、前記蛍光色素集積粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を行う。
前記蛍光輝点を検出する顕微鏡は、蛍光を検出できる、いわゆる「蛍光顕微鏡」と総称されるものであれば特に限定されないが、例えば、落射蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、全反射照明蛍光顕微鏡、透過型蛍光顕微鏡、多光子励起顕微鏡、構造化照明顕微鏡などが挙げられる。
本工程(c)において抽出した明滅する輝点は、タンパク質(A)とタンパク質(B)とが結合したタンパク質複合体をあらわす。したがって明滅する輝点を抽出してその輝点数を計測することで、タンパク質複合体の量を定量することができる。
蛍光色素集積粒子の輝点における明滅の間隔は、前記量子ドットの明滅の間隔に依存するが、通常は1/1000秒〜1秒であり、検出の容易さという観点から1/4秒〜1秒の間隔であるものが用いられる。
励起光の照射は、例えば、蛍光顕微鏡が備える超高圧水銀灯、Xeランプ、LED(light emitting diode)、レーザー装置等の光源と、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる励起光用光学フィルターを用いることで照射することができる。
前記蛍光輝点は、 例えば、蛍光画像の撮影を行うことができる装置、例えば蛍光顕微鏡が備えるデジタルカメラによって撮影することで蛍光画像として取得することができる。
撮影の際には、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させる蛍光用光学フィルターを用いることで、目的とする波長の蛍光のみを含み、目的としない蛍光やノイズとなる励起光およびその他の光を排除した蛍光画像を撮影することができる。
蛍光画像は動画であってもよいし複数枚の静止画(タイムラプス撮影)により継時的に複数の蛍光画像を取得したものでもよい。また、タイムラプス撮影した画像は公知のソフトを用いて動画に変換してもよい。動画撮影を行う場合の1秒間あたりのコマ数や、タイムラプス撮影を行う場合の撮影の間隔は、前記蛍光色素集積粒子の明滅の間隔に併せて任意に調節することができる。
取得された蛍光画像はデジタル画像として変換されていることが好ましく、また公知の手段によって加工または画像処理がされていてもよい。
画像処理に用いることができるソフトウェアとしては、例えば「ImageJ」(オープンソース)が挙げられる。このような画像処理ソフトウェアを利用することにより、蛍光画像から、所定の波長の輝点の検出、明滅している輝点の抽出、所定の輝度以上の輝点の数の計測等、さらに所望により複数の画像を重ね合わせる処理、画像に含まれる細胞数を計測する処理等を半自動的かつ迅速に行うことができる。
(工程(d))
また、量子ドットの励起波長を照射すると同時に量子ドットの発光波長を検出することで量子ドットの数、すなわち、タンパク質(A)の総数を計測することができる。また、蛍光集積粒子の励起波長を照射すると同時に蛍光集積粒子の発光波長を計測することでタンパク質(B)の総数を検出することができる。したがってこれらの検出を行うことにより、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数、およびタンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の数についての情報を複合的に取得することができる。
(工程(d))
また、量子ドットの励起波長を照射すると同時に量子ドットの発光波長を検出することで量子ドットの数、すなわち、タンパク質(A)の総数を計測することができる。また、蛍光集積粒子の励起波長を照射すると同時に蛍光集積粒子の発光波長を計測することでタンパク質(B)の総数を検出することができる。したがってこれらの検出を行うことにより、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数、およびタンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の数についての情報を複合的に取得することができる。
具体的には、前記タンパク質(A)の総数から前記タンパク質複合体の数を引くことで、前記タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数が算出でき、また前記タンパク質(B)の総数から前記タンパク質複合体を引くことで、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数を算出できる。
この手法により、例えばタンパク質複合体を形成しているタンパク質(A)の数をタンパク質の(A)の総数で除することにより、タンパク質複合体を形成しているタンパク質(A)の割合を算出することができるし、また、同様にタンパク質複合体を形成しているタンパク質(B)の割合を算出することができる。
また、タンパク質(A)とタンパク質(B)とが同じタンパク質であり、タンパク質複合体が後述するようなホモダイマーである場合には上記と同様の手法を用いることで、タンパク質複合体を形成しているタンパク質(A)(タンパク質(B))と形成していない当該タンパク質との数を算出することができる。
また、もしも必要であれば、明視野観察用の染色を行うことができる。明視野観察用染色方法としては特に限定されないが、典型的にはヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)が行われる。形態観察染色工程を含める場合は、工程(a)および工程(b)の後に行うことが好ましい。当該形態観察染色工程を行う場合には例えば一細胞あたりのタンパク質複合体の数や、検体組織中のタンパク質複合体の局在等の情報を取得することができる。本工程(c)において明滅している輝点数を抽出することにより定量したタンパク質複合体の量を、例えば、1細胞あたりのタンパク質複合体の平均数として求めてもよいし、検出に用いた蛍光画像の単位面積あたりの平均数として求めてもよい。
また、もしも必要であれば、組織切片に含まれる細胞の核染色を行うことができる。核を染色する方法としては特に限定されないが、前記量子ドットや蛍光集積粒子の励起波長および発光波長とは異なる波長特性を有する蛍光物質を用いた蛍光染色を行うことが好ましい。そのような蛍光物質も特に限定されないが、染色処理や取扱いの容易さ、および核内DNAと強力に結合することで強い蛍光を発することにより核を明確に判別できるという観点から、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)が好適に用いられる。
<タンパク質複合体>
本発明において検出されるタンパク質複合体はタンパク質(A)とタンパク質(B)が任意の結合様式(水素結合、分子間力等)により複合体を形成したものである。タンパク質(A)とタンパク質(B)はそれぞれが同じものでも異なったものでもよいが、異なったタンパク質であることが好ましい。また、それぞれが細胞内(細胞膜上も含む)で結合するタンパク質であることがより好ましく、さらにそれぞれが細胞内で結合して複合体を形成することでシグナル伝達に関わるタンパク質であることがより好ましい。典型的には前記タンパク質複合体はタンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるヘテロダイマーである。タンパク質(A)とタンパク質(B)が発現する場所は特に限定されないが、典型的にはがん細胞の細胞膜上に発現しているものが選択される。
<タンパク質複合体>
本発明において検出されるタンパク質複合体はタンパク質(A)とタンパク質(B)が任意の結合様式(水素結合、分子間力等)により複合体を形成したものである。タンパク質(A)とタンパク質(B)はそれぞれが同じものでも異なったものでもよいが、異なったタンパク質であることが好ましい。また、それぞれが細胞内(細胞膜上も含む)で結合するタンパク質であることがより好ましく、さらにそれぞれが細胞内で結合して複合体を形成することでシグナル伝達に関わるタンパク質であることがより好ましい。典型的には前記タンパク質複合体はタンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるヘテロダイマーである。タンパク質(A)とタンパク質(B)が発現する場所は特に限定されないが、典型的にはがん細胞の細胞膜上に発現しているものが選択される。
タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体としては、例えば、HERファミリー間で複合体(好ましくはダイマー)となり得る組み合わせ、さらに具体的にはHER2/HER3、HER2/HER2、HER2/HER4、HER3/HER4、HER4/HER4、HER2/CD74、ERα/ERβ、ERα/ERα、Oct4/Smad3、Integrin αV/β6、HOX/PBX、EGFR/HER2、EGFR/EGFR、EGFR/HER4、VEGFR−1/VEGFR−1、VEGFR−2/VEGFR−2、VEGFR−3/VEGFR−3、PDGFR/c−kit等のタンパク質複合体から選択されることが好ましい。
なかでも、タンパク質(A)とタンパク質(B)とが異なるヘテロダイマーであることがより好ましく、HER2とHER3とからなるヘテロダイマーが特に好ましい。
<量子ドット>
量子ドット(半導体ナノ粒子とも称される)は光を照射すると、蛍光を発する半導体からなるナノサイズの粒子であり、通常、粒径が0.5〜100nm、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは1〜10nmである。
<量子ドット>
量子ドット(半導体ナノ粒子とも称される)は光を照射すると、蛍光を発する半導体からなるナノサイズの粒子であり、通常、粒径が0.5〜100nm、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは1〜10nmである。
本発明において用いられる量子ドットとしては、例えば、II−VI族化合物、III−V族化合物、またはIV族元素を含有するものが挙げられ、具体的には、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、InP、InN、InAs、InGaP、GaP、GaAs、Si、Geなどが挙げられる。
量子ドットとしては、コア/シェル構造を有する量子ドットであってもよく、例えば、CdSe/ZnSe(コア/シェル)、InP/ZnS(コア/シェル)、InGaP/ZnS(コア/シェル)等の量子ドットを用いることができる。このような量子ドットとして、具体的には例えば、Themo Fisher Scientific社の、Qdot(登録商標)585、Qdot565、Qdot605、Qdot655、Qdot705、Qdot800などが挙げられる。
前記量子ドットの励起波長および発光波長は特に限定はされないが、後述する蛍光色素集積粒子の励起波長および発光波長とは異なる量子ドットを選択することが好ましい。
<蛍光色素集積粒子>
本発明において用いられる蛍光色素集積粒子は、有機物または無機物でできた母体に、複数の蛍光色素が母体内部に集積している(内包されている)および/または母体表面に吸着している構造を有する、ナノサイズの粒子である。蛍光色素が母体に内包されている場合、蛍光体は母体内部に分散されていればよく、母体自体と化学的に結合していても、していなくてもよい。例えば、母体(例えば樹脂)と蛍光色素が静電的相互作用により結合していてもよいし、共有結合していてもよい。
<蛍光色素集積粒子>
本発明において用いられる蛍光色素集積粒子は、有機物または無機物でできた母体に、複数の蛍光色素が母体内部に集積している(内包されている)および/または母体表面に吸着している構造を有する、ナノサイズの粒子である。蛍光色素が母体に内包されている場合、蛍光体は母体内部に分散されていればよく、母体自体と化学的に結合していても、していなくてもよい。例えば、母体(例えば樹脂)と蛍光色素が静電的相互作用により結合していてもよいし、共有結合していてもよい。
前記蛍光色素集積粒子の励起波長および発光波長は特に限定はされないが、量子ドットの励起波長および発光波長とは異なる蛍光色素集積粒子を選択することが好ましい。
なお、本明細書における「蛍光色素」は、所定の波長の電磁波(X線、紫外線または可視光線)が照射されてそのエネルギーを吸収することで電子が励起し、その励起状態から基底状態に戻る際に余剰のエネルギーを電磁波として放出する、つまり「蛍光」を発する物質であり、炭素骨格を有する有機蛍光化合物である有機蛍光色素であることが好ましい。また、「蛍光」は広義的な意味を持ち、励起のための電磁波の照射を止めても発光が持続する発光寿命の長い燐光と、発光寿命が短い狭義の蛍光とを包含する。
蛍光色素としては、例えば、ローダミン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、芳香環系色素、オキサジン系色素、カルボピロニン系色素、ピロメセン系色素などが挙げられ、具体的には、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、Cy(登録商標、GEヘルスケア社製)系色素、DY(登録商標、DYOMICS社製)系色素、HiLyte(登録商標、アナスペック社製)系色素、DyLight(登録商標、サーモサイエンティフィック社製)系色素、ATTO(登録商標、ATTO−TEC社製)系色素、MFP(登録商標、Mobitec社製)系色素などを用いることができる。なお、このような色素の総称は、化合物中の主要な構造(骨格)または登録商標に基づき命名されており、それぞれに属する蛍光色素の範囲は当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく適切に把握できるものである。
蛍光色素集積粒子を形作る母体のうち、有機物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂など、一般的に熱硬化性樹脂に分類される樹脂;スチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)など、一般的に熱可塑性樹脂に分類される樹脂;ポリ乳酸等のその他の樹脂;多糖を例示することができ、無機物としてはシリカ、ガラスなどを例示することができる。
蛍光色素集積粒子は所望の蛍光色素集積粒子を作製するための公知の方法で作製することができ、例えば特開2013−57937号公報に記載の方法に従って作製することができる。具体的には、例えば、シリカを母体とする蛍光色素集積粒子は、蛍光色素と、シリカ前駆体とが溶解している溶液を、エタノールおよびアンモニアが溶解している溶液に滴下し、シリカ前駆体を加水分解することにより作製することができ、樹脂を母体とする蛍光色素集積樹脂粒子は、それらの樹脂の溶液ないし微粒子の分散液を先に用意しておき、そこに蛍光色素を添加して撹拌することにより作製することができる。
蛍光色素集積粒子の平均粒径は、蛍光染色に適した粒径であれば特に限定されないが、輝点としての検出のしやすさなどを考慮すると、通常は10〜500nm、好ましくは50〜200nmである。また、粒径のばらつきを示す変動係数は、通常は20%以下であり、好ましくは5〜15%である。このような条件を満たす蛍光色素集積粒子は、製造条件を調整することにより製造することができる。例えば、乳化重合法により蛍光色素集積粒子を作製する場合は、添加する界面活性剤の量によって粒径を調節することができる。
なお、量子ドットおよび蛍光色素集積粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影して求めることが好ましい。複数の蛍光体集積粒子からなる集団の平均粒径および変動係数は、十分な数(例えば1000個)の蛍光体集積粒子について上記のようにして粒径を算出した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径、により算出される。
<薬剤効果の評価方法>
本発明の薬剤効果の評価方法は、検体(培養細胞や組織切片等)に薬剤を添加する前および添加した後のそれぞれの時点において、前述の記載のタンパク質複合体の検出方法を行う工程を含む。前記検体は、例えば前記薬剤が抗がん剤である場合は、担がん動物等の実験動物から採取した組織切片や、腫瘍組織由来の培養細胞を用いることができる。
<薬剤効果の評価方法>
本発明の薬剤効果の評価方法は、検体(培養細胞や組織切片等)に薬剤を添加する前および添加した後のそれぞれの時点において、前述の記載のタンパク質複合体の検出方法を行う工程を含む。前記検体は、例えば前記薬剤が抗がん剤である場合は、担がん動物等の実験動物から採取した組織切片や、腫瘍組織由来の培養細胞を用いることができる。
当該方法を用いることで薬剤添加前後のタンパク質複合体の量や、タンパク質複合体を形成しているタンパク質(A)やタンパク質(B)の割合変化などを観察することができることから、タンパク質複合体の形成に影響を及ぼす薬剤の効果について評価することができる。
タンパク質複合体の形成に影響を及ぼす薬剤としては、タンパク質複合体の形成を阻害する薬剤であることが好ましく、前記タンパク質複合体がヘテロダイマーである場合には、ヘテロダイマー形成阻害薬であることがより好ましく、例えば、HER2とHER3とからなるヘテロダイマーの形成阻害薬であることが特に好ましく、前記薬剤がペルツズマブ、ラパチニブ、アファチニブであることが最も好ましい。
また、前記タンパク質複合体がホモダイマーである場合には、ホモダイマー形成阻害薬であることが好ましく、前記薬剤がトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン(登録商標)、中外製薬株式会社)、セツキシマブ(商品名:アービタックス(登録商標)、ブリストルマイヤーズ スクイブ社)、パニツムマブ(商品名:ベクティビックス(登録商標)、アムジェン社)であることが好ましい。
薬剤添加前後におけるタンパク質複合体を形成しているタンパク質(A)(タンパク質(B))と形成していない当該タンパク質との数を算出することにより薬剤の効果について評価することができる。
また、がん治療の候補薬剤の投与前後におけるタンパク質複合体の量の変化などを観察することで、当該候補薬剤がタンパク質複合体の形成を阻害し得るかどうかを判別することができ、したがって当該候補薬剤の薬効を予測・評価することができる。
次に本発明について実験例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[作製例1]
<量子ドット結合抗HER2抗体>
ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit-NH2;(株)同仁化学研究所)を用いて、抗HER2マウスモノクローナル抗体(Invitrogen社;製品番号3B5)をビオチン標識した。
<量子ドット結合抗HER2抗体>
ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit-NH2;(株)同仁化学研究所)を用いて、抗HER2マウスモノクローナル抗体(Invitrogen社;製品番号3B5)をビオチン標識した。
Qdot(登録商標)585 ストレプトアビジンコンジュゲート(Invitrogen社)2nMと前記ビオチン標識した抗HER2抗体20μg/mLとを混合して、量子ドット(Qdot(登録商標)585;励起波長365nm、発光波長585nm)が結合した抗HER2抗体を得た。以下の実験例においては、得られた量子ドット結合抗HER2抗体は、希釈液Power Block (10×Concentrated)(BIOGENEX LABORATORIES,INC;Code No.B-HK0855)を純水で10倍に希釈したものを使用した。
[作製例2]
<蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体>
(ビオチン標識抗体)
ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit-NH2;(株)同仁化学研究所)を用いて、抗HER3マウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc.;製品番号5A12)をビオチン標識した。
(ストレプトアビジン標識抗体蛍光色素集積粒子)
蛍光色素集積粒子は、テキサスレッド(登録商標)系色素「Sulforhodamine 101:;励起波長595nm、発光波長615nm)」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子(以下、蛍光色素集積粒子)を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した蛍光色素集積粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた蛍光色素集積粒子の1000個についてSEM観察を行い、平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は80nmであった。
<蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体>
(ビオチン標識抗体)
ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit-NH2;(株)同仁化学研究所)を用いて、抗HER3マウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc.;製品番号5A12)をビオチン標識した。
(ストレプトアビジン標識抗体蛍光色素集積粒子)
蛍光色素集積粒子は、テキサスレッド(登録商標)系色素「Sulforhodamine 101:;励起波長595nm、発光波長615nm)」(シグマアルドリッチ社)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業株式会社)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子(以下、蛍光色素集積粒子)を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した蛍光色素集積粒子をエタノールおよび水で洗浄した。得られた蛍光色素集積粒子の1000個についてSEM観察を行い、平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は80nmであった。
前記蛍光色素集積粒子0.1mgをEtOH1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業社)2μLを加えて8時間反応させて表面アミノ化処理を行なった。
次いで、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて上記表面アミノ化処理を行なった粒子を3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社、succinimidyl-[(N-maleimidopropionamido)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10,000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことでマレイミド修飾蛍光色素集積粒子を得た。
一方、ストレプトアビジン(和光純薬社)について、N-succinimidyl S-acetylthioacetate(SATA)を用いてチオール基付加処理を行ったのち、ゲルろ過カラムによるろ過を行なうことで、マレイミド修飾蛍光色素集積粒子に結合可能である、チオール基が付加されたストレプトアビジン溶液を得た。
上記マレイミド修飾蛍光色素集積粒子と上記処理によりチオール基を付加したストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、室温で1時間反応させた。その後、10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた混合液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積粒子を得た。
前記ビオチン標識した抗HER3抗体20μg/mLと前記ストレプトアビジン修飾蛍光色素集積粒子2nMとを混合して、蛍光色素集積粒子が結合した抗HER3抗体を得た。得られた蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体を作製例1と同様に希釈して、以下の実験例において使用した。
[実験例1]
ヒト乳がん由来培養細胞(細胞名 AU565;ATCC(登録商標)NO. CRL-235;住商ファーマインターナショナル株式会社)1.0×107個を、4%パラホルムアルデヒド溶液に懸濁して室温で10分間反応させることで固定化したのち、アルギン酸ゲル内に包埋した細胞ブロックを作製した。なお、AU565はHER2およびHER3をともに発現している(HER2陽性;HER3陽性)細胞であることが知られている。
ヒト乳がん由来培養細胞(細胞名 AU565;ATCC(登録商標)NO. CRL-235;住商ファーマインターナショナル株式会社)1.0×107個を、4%パラホルムアルデヒド溶液に懸濁して室温で10分間反応させることで固定化したのち、アルギン酸ゲル内に包埋した細胞ブロックを作製した。なお、AU565はHER2およびHER3をともに発現している(HER2陽性;HER3陽性)細胞であることが知られている。
作成した細胞ブロックを3μmの厚さのパラフィン切片にし、作製例1で作製した量子ドット結合抗HER2抗体、および作製例2で作製した蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体を最終濃度10%となるように細胞に添加し、4℃で8時間静置することで染色を行った。
顕微鏡ステージにインキュベーター(株式会社東海ヒット)を取り付けたシステム生物正立顕微鏡 BX53(オリンパス株式会社)を用いて、37℃、5%CO2の環境下で、水銀ランプおよび励起光用光学フィルター(株式会社オプトライン「QDLP-C シングルバンド蛍光フィルターセット」)により、励起波長370/DF36(352〜388nm)の紫外線を(露光時間250m秒、ND25、ゲイン×8)の条件下で細胞に照射することで、蛍光観察を行った。
なお、当該励起波長はQdot(登録商標)585は励起される波長であり、前記蛍光色素集積粒子のテキサスレッドは励起されない波長である。
顕微鏡用デジタルカメラ(DP80:オリンパス株式会社)のモノクロモードにおいて、100倍油浸レンズを用い、解像度512×512、ピクセルサイズ64.5nm/pixel、Line Averageを16に設定したレゾナントスキャナーを用いて、露光時間250m秒、400ミリ秒/1フレームのスキャン速度で60秒間連続撮影することでタイムラプス撮影を行った。撮影の結果から、Qdot(登録商標)585の平均明滅頻度を計測したところ、0.5秒/回であった。
次に、同励起波長(352〜388nm)における、蛍光色素集積粒子(テキサスレッド)に由来する蛍光輝点を、Qdot(登録商標)585の撮影と同条件(露光時間250m秒、400ミリ秒/1フレームのスキャン速度で60秒間連続撮影)におけるタイムラプス撮影を行い、蛍光用光学フィルター(558〜584nm)を用いることで撮影した。
上記撮影画像について、画像解析ソフトImageJ(オープンソース)を用いて、細胞の自家蛍光に由来する蛍光から目視により1画面内の細胞数を求め、さらに励起波長352〜388nmにおける蛍光色素集積粒子に由来する一画面内の全輝点数、および当該輝点から明滅している輝点のみを抽出したもの数をそれぞれ測定した。さらに、1画面内の蛍光色素集積粒子に由来する明滅輝点数を1画面内の細胞数で除することにより、1細胞あたりの輝点数を算出した。結果を表1に示す。
なお、前記明滅輝点の抽出は、点滅時に発光している輝点のうち輝度が所定の値以上のもののみを抽出して計測している。また、輝度または大きさが一定値(例;観測される蛍光体集積粒子の平均値)より大きなシグナルは凝集輝点と判断した。なお、前記明滅輝点の抽出および個数の計測、ならびに凝集輝点に含まれる輝点の個数の計測は、前記画像解析ソフトImageJを用いて行うことができる。
なお、上記撮影の結果から、蛍光色素集積粒子(テキサスレッド)の平均明滅頻度を計測したところ、0.5秒/回であった。これはQdot(登録商標)585の明滅間隔と一致しており、このことから、Qdot(登録商標)585の蛍光発光によるエネルギーが、蛍光色素集積粒子にエネルギー移動することで蛍光色素集積粒子の明滅を引き起こしたことを示唆している。
[実験例2]
ヒト卵巣がん由来培養細胞(細胞名 SKOV3;ATCC(登録商標)NO.HTB-77;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、実験例1と同じ手法で染色および明滅輝点の検出を行った。なお、SKOV3はHER2を発現する一方、HER3は少量のみを発現する細胞であることが知られている。実験例1と同様に、1画面内の蛍光色素集積粒子に由来する明滅輝点数を1画面内の細胞数で除することにより1細胞あたりの輝点数を求めた。結果を表1に示す。
ヒト卵巣がん由来培養細胞(細胞名 SKOV3;ATCC(登録商標)NO.HTB-77;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、実験例1と同じ手法で染色および明滅輝点の検出を行った。なお、SKOV3はHER2を発現する一方、HER3は少量のみを発現する細胞であることが知られている。実験例1と同様に、1画面内の蛍光色素集積粒子に由来する明滅輝点数を1画面内の細胞数で除することにより1細胞あたりの輝点数を求めた。結果を表1に示す。
[実験例3]
ヒト卵巣がん由来培養細胞(細胞名 MCF7;ATCC(登録商標)NO.HTB-22;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、実験例1と同じ手法で染色および明滅輝点の検出を行った。なお、MCF7はHER2をほとんど発現せず一方で、HER3は発現する細胞であることが知られている。
ヒト卵巣がん由来培養細胞(細胞名 MCF7;ATCC(登録商標)NO.HTB-22;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、実験例1と同じ手法で染色および明滅輝点の検出を行った。なお、MCF7はHER2をほとんど発現せず一方で、HER3は発現する細胞であることが知られている。
実験例1と同様に、細胞の自家蛍光に由来する蛍光から目視により求めた1画面内の細胞数で、1画面内の蛍光色素集積粒子に由来する明滅輝点数を除することにより、1細胞あたりの輝点数を求めた。結果を表1に示す。
**:全輝点数=励起波長352〜388nmで明滅する蛍光色素集積粒子と明滅しない蛍光色素集積粒子との総和
(考察)
実験例1のAU565細胞は、HER2とHER3とが共に発現している。そしてそのうち励起波長352〜388nmの条件下で輝点が明滅しているものは量子ドット(HER2)の蛍光発光の影響により明滅している蛍光色素集積粒子(HER3)であり、つまりHER2/HER3ダイマーが形成されていると推測される。
したがって実験例1で観察された明滅しない蛍光色素集積粒子(HER3;550−400=150個)は、量子ドットの励起波長により非特異的に励起してしまった蛍光色素集積粒子であり、つまりこれらの蛍光色素集積粒子のHER3はHER2とダイマーを形成しているものではないことが推測できる。
つまり本来蛍光色素集積粒子に対する励起波長ではない、352〜388nmの条件下で観察される輝点のうち、約27%の輝点がHER2/HER3ダイマーの形成に基づくものではないことがわかる。
次に実験例2のSKOV3細胞は、AU565細胞と比べるとHER3の発現量は少量であることから、励起波長352〜388nmの条件下における蛍光色素集積粒子に由来する輝点は45個とAU565細胞と比べて少量であった。なお、「45個」は明滅している蛍光色素集積粒子と量子ドットの励起波長である370nmの波長で非特異的に励起した蛍光色素集積粒子の総和である。また、明滅している輝点は25個であり、少なくとも20個の輝点はHER2/HER3ダイマーの形成に基づくものではないことがわかった。つまり約44%の輝点は量子ドットの励起光による非特異的なものだとわかる。
同様に実験例3のMCF7細胞は、上述したようにMCF7はHER2をほとんど発現しないが、HER3は発現する。HER2はほとんど発現していないため、量子ドットの蛍光発光の影響により明滅している蛍光色素集積粒子の輝点数はそれに準して非常に少ないものとなった(1細胞当たり10個の輝点)。輝点数の総和は15個であり、少なくとも5個の輝点はHER2/HER3ダイマーの形成に基づくものではないことがわかった。つまり約33%の輝点量子ドットの励起光による非特異的なものだとわかる。
以上の結果から、いずれの細胞においても明滅しない蛍光色素集積粒子が観察されることがわかる。このことは、明滅を利用しない従来技術では、ダイマーになっていないHER3(蛍光色素集積粒子)も検出の対象に含まれていることを示しており、本発明の方法においては、より正確にダイマーを形成したタンパク質複合体を検出できることがわかる。
[実験例4]
実験例1と同様の手法で作成したパラフィン切片(AU565:(HER2陽性;HER3陽性)細胞)に対して、作製例1で作製した量子ドット結合抗HER2抗体、および作製例2で作製した蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体を用いて実験例1と同じ条件下において染色を行った。
実験例1と同様の手法で作成したパラフィン切片(AU565:(HER2陽性;HER3陽性)細胞)に対して、作製例1で作製した量子ドット結合抗HER2抗体、および作製例2で作製した蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体を用いて実験例1と同じ条件下において染色を行った。
実験例1と同じ条件下で、Qdot(登録商標)585は励起される波長であるが前記蛍光色素集積粒子のテキサスレッドは励起されない波長である、352〜388nmの紫外線を励起光として照射してQdot(登録商標)585についての蛍光観察を行った。
さらに実験例1と同様の手法を用いて、Qdot(登録商標)585の輝点の画像撮影を行った。
次に、実験例1と同条件(露光時間250m秒、400ミリ秒/1フレームのスキャン速度で60秒間連続撮影)下において同様に352〜388nmの紫外線を励起光として照射して、蛍光用光学フィルター(558〜584nm)を用いることで蛍光色素集積粒子のタイムラプス撮影を行った。
画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いて、撮影した1画面内に含まれるQdot(登録商標)585、および蛍光色素集積粒子(テキサスレッド)由来の輝点数を計測し、該輝点を1画面内の細胞数で除することで、1細胞あたりの輝点数を求めた。
実験例4の結果を表2に示す。
**:全輝点数=励起波長352〜388nmで明滅する蛍光色素集積粒子と明滅しない蛍光色素集積粒子との総和
(考察)
上記のように、量子ドットの励起波長を照射すると同時に量子ドットの蛍光を検出することでHER2の数を検出することができ、また、同様に蛍光集積粒子の励起波長を照射すると同時に蛍光集積粒子の発光波長を検出することでHER3の数を検出することができる。さらにこれらの検出とともに、明滅する蛍光色素集積粒子の蛍光を求めることでHER2/HER3ダイマーの数を検出することもできる。
このように本発明を用いることで、HER2/HER3ダイマーの定量を行ったものと同一切片を使用して、HER2およびHER3それぞれの定量も行うことができる。
例えば量子ドット染色像をもとにHER2の輝点数を求めると480であり、一方実験例1でもとめたHER2/HER3ダイマーの輝点数は400と異なる。すなわちHER2のうち400÷480=83%がダイマー、のこりがモノマーとして存在していることまで求めることができる。
[実験例5]
ヒト乳がん由来培養細胞(細胞名 AU565;ATCC(登録商標)NO. CRL-235;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、35mm 培養ディッシュ No1.5に播種した。
ヒト乳がん由来培養細胞(細胞名 AU565;ATCC(登録商標)NO. CRL-235;住商ファーマインターナショナル株式会社)を培養し、35mm 培養ディッシュ No1.5に播種した。
播種後1日後において、ペルツズマブ(Pertuzumab)(パージェタ(登録商標);中外製薬株式会社)を最終濃度20μg/mLとなるように培養液で希釈したものを細胞に添加した。
ペルツズマブを細胞に添加してから24時間後、トリプシン処理によって細胞を回収し、実験例1と同じ手法で細胞ブロックを作製した。作製例1および2で作製した量子ドット結合抗HER2抗体、および蛍光色素集積粒子結合抗HER3抗体を用いて、実験例1と同じ手法で染色および明滅輝点の検出を行った。その結果、明滅輝点の数は18個であった。また、比較対象としてペルツズマブを作用させなかった細胞についても同様の操作を行って明滅輝点の数を測定したところ、その結果明滅輝点は225個確認された。
1・・・HER2
3・・・細胞膜
5・・・抗HER2マウスモノクローナル抗体
6・・・抗マウスIgG抗体
10・・・量子ドット
20・・・HER3
25・・・抗HER3マウスモノクローナル抗体
30・・・蛍光色素集積粒子
40・・・HER2/HER3ヘテロダイマー
50・・・量子ドットの励起光
60・・・量子ドットからのエネルギー移動
3・・・細胞膜
5・・・抗HER2マウスモノクローナル抗体
6・・・抗マウスIgG抗体
10・・・量子ドット
20・・・HER3
25・・・抗HER3マウスモノクローナル抗体
30・・・蛍光色素集積粒子
40・・・HER2/HER3ヘテロダイマー
50・・・量子ドットの励起光
60・・・量子ドットからのエネルギー移動
Claims (12)
- タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるタンパク質複合体の検出方法であって、
タンパク質(A)を、ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子を結合した抗体を用いて標識する工程(a)および
タンパク質(B)を、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子を結合した抗体で標識する工程(b)を含み、
その後、
前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子の励起波長の光を照射すると同時に、ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点を検出し、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子の発光波長の蛍光輝点から、明滅する輝点を抽出する工程(c)を含み、
前記明滅する輝点が前記タンパク質(A)と前記タンパク質(B)との複合体をあらわすタンパク質複合体の検出方法。 - 前記ブリンキングを生じる蛍光発光性粒子が量子ドットであり、
前記ブリンキングを生じない蛍光発光性粒子が蛍光色素集積粒子である、
請求項1に記載のタンパク質複合体の検出方法。 - さらに、タンパク質複合体を形成していないタンパク質(A)の数、およびタンパク質複合体を形成していないタンパク質(B)の数を算出する工程(d)を含む、請求項1または2に記載のタンパク質複合体の検出方法。
- 前記タンパク質複合体が、タンパク質(A)とタンパク質(B)とからなるヘテロダイマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法。
- 検体に薬剤を添加する前および添加した後のそれぞれの時点において、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質複合体の検出方法を行う工程を含む、薬剤効果の評価方法。
- 前記薬剤がタンパク質複合体の形成を阻害する薬剤である、請求項5に記載の評価方法。
- 前記薬剤がヘテロダイマー形成阻害薬である、請求項5または6に記載の評価方法。
- 前記タンパク質複合体がHER2とHER3とからなるヘテロダイマーである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記薬剤がペルツズマブ、トラスツズマブ、またはラパチニブである、請求項5〜8のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記量子ドットと前記蛍光色素集積粒子とは、それぞれ異なった励起波長を有する、請求項5〜9のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の10分の1以下である、請求項5〜10のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記量子ドットの励起波長帯が、前記蛍光色素集積粒子1粒子あたりの励起スペクトル強度が前記量子ドット1粒子あたりの励起スペクトル強度の100分の1以下である、請求項5〜11のいずれか一項に記載の評価方法。
Applications Claiming Priority (3)
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JP2018180418 | 2018-09-26 | ||
JP2018180418 | 2018-09-26 | ||
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JPWO2020066336A1 true JPWO2020066336A1 (ja) | 2021-09-24 |
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- 2019-08-08 WO PCT/JP2019/031419 patent/WO2020066336A1/ja active Application Filing
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