以下、本発明が適用された地形変動を観測する観測システムについて説明する。
〔概要〕
図1に示すように、観測システム1は、観測対象となる地形を撮像する撮像装置としての測量装置20と、測量装置20を制御する観測制御装置60とを備えている。一例として、観測システム1は、地震、豪雨等によって地すべり等の地形変動が発生する可能性が高い観測対象2を定点観測し、当該観測対象2の地形の変位を検出する。一例として、既に地すべりが発生した地域の復旧工事を行う際に、工事個所や工事個所の近くであって、地すべり等の地形変動が発生する可能性が高い場所を観測対象2に設定し、当該観測対象2をモニタリングし変位を検出する。観測対象2は、一箇所でもよいし、複数箇所であってもよい。一例として、観測対象2は、変位が想定される領域、変位した場合に被害が想定される領域、他の点の変位内容を把握するために参照とする領域等を含む観測範囲である。一例として、観測対象2は、撮像装置の画角に対応した撮像範囲である。図1の例では、図中最も左側の観測対象2は、岩を含む領域を捉えている。
地形変動の発生する可能性の高い観測対象2及びその周辺領域は、実際に作業者が赴いて調査することが困難な場所である。そこで、一例として、撮像装置として測量装置20を用い、各観測対象2から離れた撮像位置3に測量装置20を設置し、当該撮像位置3から観測対象2を観測する。測量装置20が設置される撮像位置3は地すべりが発生しても、測量装置20が土砂等により飲み込まれない場所である。また、一例として、撮像位置3は、観測対象2で地すべりが発生しても被害を受ける可能性の低い場所である。複数の観測対象2を観測する場合は、1台の測量装置20で複数の観測対象2を観測してもよいし、各観測対象2を1台の測量装置20で観測するようにしてもよい。一例では、観測対象2が複数存在する場合、複数台の測量装置20で分担して観測する。
一例として、地形変動を観測する各測量装置20は、長期間に亘って設置される。このため、一例として、測量装置20は、風雨等から保護するため、観測小屋4等の建物の中に設置される。観測小屋4には、一例として、測量装置20を遠隔操作するための通信装置5等が設置される。観測小屋4には、一例として、観測条件を取得するために、外部装置としての温度計測装置6や湿度計測装置7や気圧計測装置8等が設置される。一例として、観測小屋4には、外部から送電したり、二次電池等のバッテリや発電機等を設置して電源装置10を設けたりすることで、測量装置20等に対して長期間に亘って電力を供給し、長期間に亘ってモニタリングをできるようにする。観測小屋4としては、一例として、組み立て式家屋やテントである。
測量装置20は、一例として、観測小屋4からさらに離れた場所に建てられた作業小屋9に設置された観測装置としての観測制御装置60によって制御される。作業小屋9としては、一例として、組み立て式家屋やテントである。測量装置20と観測制御装置60とは、有線または無線によりネットワーク17を介して接続される。測量装置20は、一例として、定期的に観測対象2を観測する。一例として、測量装置20は、地形変動を検出するため、数分から数時間程度の間隔で観測対象2を撮像し、撮像により生成された画像データを、ネットワーク17を介して接続された記憶装置14等に保存する。勿論、画像データは、測量装置20の記憶部、観測制御装置60の記憶部等に保存されてもよい。以上のようにして、測量装置20は、観測対象2をモニタリングする。
一例として、測量装置20は、GNSS(全地球測位システム(Global Navigation Satellite System))によって観測対象2の変位が検出された場合、観測する間隔を短くする。一例として5分間隔で観測していたところ、3分間隔や1分間隔に変更する。一例として、観測対象2の変位が検出されない場合、観測する間隔を長くする。一例として、5分間隔で観測していたところ、10分間隔に変更する。
一例として、複数の観測対象2を観測している場合において、特定の観測対象2で変位を検出したとき、測量装置20は、変位を検出した観測対象2を他の変位を観測しなかった観測対象2より優先して観測する。一例として、変位を検出しなかった観測対象2より変位を検出した観測対象2を短い周期で観測する。一例として、複数の観測対象2で変位が検出された場合、測量装置20は、検出された変位量が大きい観測対象2から順に観測する。
一例として、観測対象となっている広域観測対象12に設置されているGNSS受信装置16の位置が変わった場合、変位が検出されたGNSS受信装置16に近い観測対象2から順に観測する。
測量装置20でモニタリングを行うまでの手順について概略説明すると、先ず、観測システム1では、観測対象2を選定し、次いで、測量装置20を設置する撮像位置3を選定する必要がある。そこで、モニタリングを開始する前には、有人航空機、無人航空機(Unmanned Aerial Vehcle(UAV)、(ドローン))、マルチコプタ等の飛翔体11を飛行させて、飛翔体11が備えたカメラ等によって、観測対象となっている広域観測対象12を撮像する。そして、写真撮影した航空写真等から地形モデルデータを生成し、地形モデルデータを用いて広域観測対象12の中から1つ又は複数の観測対象2を選定する。観測対象2が選定されると、次いで、測量装置20を設置する撮像位置3を選定する。この後、撮像位置3において、測量装置20を器械設置する。これにより、測量装置20がグローバル座標、ローカル座標等の座標上に設置される。
観測対象2の選定や測量装置20の撮像位置3の選定は、一例として、3次元計測装置15によって広域観測対象12をスキャンして、記憶装置14等に保存された地形モデルデータに従ってするようにしてもよい。3次元計測装置15は、一例として、観測小屋4やその他の場所に設置される。
一例として、広域観測対象12を複数エリアに分割してそれぞれ計測した複数の分割地形モデルデータを合成することで地形モデルデータを作成してもよい。一例として、第1位置に設置した3次元計測装置15で広域観測対象12のうち第1分割エリアを計測して第1分割地形モデルデータを作成する。一例として、第1分割地形モデルデータを作成したら、3次元計測装置15を第1位置から第2位置へ移動して設置する。第2位置に設置した3次元計測装置15で広域観測対象12のうち第2分割エリアを計測して第2分割地形モデルデータを作成する。なお、第2分割地形モデルデータを作成する場合、第2位置に設置した3次元計測装置15では、第1分割地形モデルデータを作成するときに3次元計測装置15で計測する点のうち少なくとも2点以上が含まれるように計測する。それぞれ作成した第1分割地形モデルデータと第2分割地形モデルデータを合成することで、広域観測対象12の地形モデルデータとする。なお、1台の3次元計測装置15で複数の分割地形モデルデータを作成したが、これに限るものではなく、複数台の3次元計測装置15を用いて複数の分割地形モデルデータを作成しても良い。例えば、第1位置に3次元計測装置15を設置して第1分割地形モデルデータを作成し、第2位置に3次元計測装置15´を設置して第2分割地形モデルデータを作成するようにしても良い。なお、3次元計測装置15と3次元計測装置15´とをまとめて3次元計測装置15とも言う。
次いで、器械設置された測量装置20で観測対象2を観測するとともに撮像し、地形の変位を検出する際の特徴領域を含む観測画像の画像データを記憶装置14や観測制御装置60の記憶部や測量装置20の記憶部等に保存する。この観測は、後述する測量装置20の測距部33での測距及び水平角測角部51及び鉛直角測角部52による測角をいう。画像データは、測距部33が測距した測距データと水平角測角部51及び鉛直角測角部52が測角した測角データとターゲット102の位置情報(一例として座標データ)とともに記憶装置14や観測制御装置60の記憶部や測量装置20の記憶部等に保存される。
特徴領域は、観測対象2に存在する特徴的なターゲット102が観測画像上に現れた領域である。ターゲット102は、一例として、特徴的な自然物である。特徴的な自然物としては、一例として、観測対象2に存在する上述のような岩や大木等の樹木等である。一例として、ターゲット102は、飛翔体11を観測対象2まで飛行させ、飛翔体11によって設けた人工の部位であり、例えば、観測用塗料が塗布された領域であり、観測用ターゲットである。このようなターゲット102に対応した特徴領域は、作業者が実際に観測場所に赴く必要のないこのような手段によって設定されるものとなっている。このような特徴領域を設けることにより、観測制御装置60は、測量装置20が観測対象2を撮像することで、特徴領域の変位を検出することが可能となり、特徴領域の変位をモニタリングによって検出することができる。すなわち、観測システム1では、測量装置20で撮像して生成した画像データ及びターゲット102の位置情報を観測制御装置60へ送信し、観測制御装置60が画像データ及び位置情報に基づいて変位を検出する。勿論、定時に行うモニタリング以外にも、撮像位置3に作業者が赴いて、又は、観測制御装置60からの遠隔操作によって、任意のタイミングで観測対象2を撮像することも可能である。
一例として、モニタリング開始当初において、変位が見られない期間は定時に観測を行う。一例として、変位が見られた場合には、測量装置20による撮像間隔を変更する。なお、定時に行うモニタリングにおいて、撮像間隔が5分に対して4分59秒や5分1秒となってしまっても、このような多少の時間差をもって行われるモニタリングは、定時のモニタリングに含まれる。
観測対象2のモニタリングにおいて、観測制御装置60は、測量装置20を代表位置に視準させ、特徴領域を含む観測対象2を撮像し、撮像により生成された画像データを記憶装置14等に保存する。観測制御装置60は、基準観測画像で設定された特徴領域とモニタリングの比較観測画像の特徴領域に対応する比較画像とを比較し、基準画像に対する比較画像の変位を検出する。
以上のようなモニタリングにおいて、観測制御装置60は、特徴領域の変位を検出したとき、警告データを生成する。一例として、観測制御装置60は、電子メールシステムに登録された作業者の端末に対して、変位があったことを知らせる電子メールを送信し、作業者に変位があったことを知らせる。なお、電子メールに限るものではなく、作業者に対して文字で配信できればよい。作業者等に知らせる手段としては、その他に、市町村の防災無線等の屋外スピーカから当該内容を報知するようにしてもよいし、電光掲示板などで報知するようにしてもよい。一例として、電子掲示板、SNS(Social Networking Service)等の投稿を共有するサービスを用いて作業者等に知らせるようにしてもよい。一例として、警告灯など光で報知するようにしてもよい。一例として、作業者の位置をGNSS等で把握できていれば、観測制御装置60は、変位が検出された特徴領域に近い場所にいると判断した作業者にのみ変位があったことを報知し、変位が検出された特徴領域から遠い場所にいると判断した作業者には変位があったことを報知しないようにしてもよいし、作業者全員に報知するようにしてもよい。
また、観測制御装置60では、特定の時刻の観測画像や特定の観測対象2の観測画像を検索することができる。一例として、観測制御装置60は、特定の撮像領域の撮像画像を検索キーとしたとき、複数の時刻における特徴領域を表示部に表示させる。特徴領域の画像が選択されたときには、例えば1つの観測画像上に、複数の特徴領域が表示され、特徴領域の変位の過程を確認できるようにする。
観測システム1は、一例として、GNSSと接続されていてもよい。例えば、測量装置20がGNSS受信部58を備え、測量装置20は、撮像時の時刻情報をGNSSから取得する。これにより、モニタリングにおいて、観測対象2を撮像する時刻をGNSSに従ったものとすることで、より正確な時刻に観測対象2を撮像することができる。一例として、時刻情報は、外部装置であるNTP(Network Time Protocol)サーバから測量装置20や観測制御装置60が取得するようにしてもよい。
また、広域観測対象12には、外部装置としてのGNSS受信装置16を設置するようにしてもよい。GNSS受信装置16は、複数の人工衛星がそれぞれ送信する信号を比較し、電波を受信した時間差を計算してGNSS受信装置16の位置情報を算出する。観測対象2と離れた複数場所にGNSS受信装置16を設置したときには、GNSS受信装置16によって当該場所での変位も検出することができる。そして、GNSS受信装置16で変位を検出したときには、測量装置20を用いて観測する時刻の間隔を短くすることによって、観測対象2での変位の開始時点や変位の最中の状態をきめ細かに観測することができる。一例として、GNSS受信装置16の位置が変わった場合、変位が検出されたGNSS受信装置16に近い観測対象2から順に観測する。
測量装置20は、撮像時刻を含むある期間のみ電源をオンにし、その他の時刻は電源をオフにするように制御し、省電力化を図るようにしてもよい。観測対象2の変位を検出可能な画像データが得られるとおもわれる日中(昼間)は測量装置20の電源をオンにし、観測対象2の変位を検出できない若しくは難しい画像データが得られると思われる夜間は測量装置20の電源をオフにするように制御して、省電力化を図るようにしてもよい。
一例として、観測システム1において、観測制御装置60は、観測対象2を撮像した際における観測条件を観測画像の画像データと関連付けて記憶装置14等に保存するようにしてもよい。観測条件とは、一例として、観測小屋4の温度計測装置6で計測した温度データや湿度計測装置7が計測した湿度データや気圧計測装置8が計測した気圧データである。また、測量装置20における撮像部の撮像条件や明るさ等である。これにより、モニタリング時等の撮像時において、観測対象2を撮像したときの観測条件を記憶装置14等に保存することができる。
一例として、観測制御装置60は、インターネット等のネットワーク17を介して外部装置としての気象サーバ18から観測対象2を撮像したときの観測対象2を含むエリアの気象情報を取得するようにしてもよい。これにより、モニタリングにおいて、観測対象2を撮像したときの気象情報を記憶装置14等に保存することができる。
〔測量装置の構成〕
図2に示すように、測量装置20は、整準部22と、本体部26と、撮像部27とを備えている。整準部22は、例えば整準台である。整準部22は、底板23と、上板24と、整準ねじ25とを含んでいる。底板23は、三脚に固定される部材である。底板23は、例えば、ねじ等で三脚の脚頭に固定される。上板24は、整準ねじ25を用いることで、底板23に対する傾きが変更可能に構成されている。上板24には、本体部26が取り付けられている。測量装置20の第1軸である鉛直軸O1の傾きは、整準ねじ25を用いることで変更可能である。
整準とは、測量装置20の鉛直軸を鉛直にすることである。整準した測量装置20は、鉛直軸O1が鉛直方向に沿った状態である。整準した測量装置20は、鉛直軸O1が鉛直方向に沿った状態であり、且つ、測量装置20の第2軸である水平軸O2が鉛直軸O1に対して直角の状態である。整準は、レベリング(leveling)と表現することがある。
求心とは、測量装置20の鉛直中心を第2ターゲット(測標)の中心に一致させることである。求心とは、地上の測量基準位置(基準点)等の測点の鉛直線上に測量装置20の機械中心を一致させることである。求心は、致心やセンタリング(centering)と表現することがある。求心した測量装置20は、鉛直軸O1が第2ターゲットの中心を通過する状態である。第2ターゲットは、例えば器械高計測用ターゲットや測量鋲である。
図2及び図3に示すように、本体部26は、整準部22により鉛直軸周りに回転可能に支持されている。そのため、本体部26は、整準部22に対して鉛直軸周りに回転可能である。本体部26は、整準部22の上方に位置している。本体部26は、撮像部27を水平軸周りに回転可能に支持している。本体部26は、支柱部である。本体部26は、托架部である。本体部26は、第1表示部38と、第2表示部39と、水平角操作部43と、鉛直角操作部44と、把持部45と、第3撮像部34(図4参照)とを含んでいる。
第1表示部38及び第2表示部39は、画像やオブジェクトを表示する表示機能を有している。一例として、第1表示部38及び第2表示部39は、各表示部の表示面に、撮像部27が生成した画像データに基づく画像や観測データに基づく情報を表示する。一例として、第1表示部38及び第2表示部39は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイである。一例として、第1表示部38は、反側に配置されている。一例として、第1表示部38は、例えば反観測を行う場合に利用される。第2表示部39は、正側に配置されている。一例として、第2表示部39は、正観測を行う場合に利用される。一例として、第1表示部38及び第2表示部39は、ユーザによる操作を受け付ける操作部としての機能を有している。この場合、第1表示部38及び第2表示部39は、静電容量式のタッチパネルや感圧式のタッチパネル等により構成されている。一例として、第1表示部38は、水平軸周り又は鉛直軸周りに回転可能である。一例として、第2表示部39は、水平軸周り又は鉛直軸周りに回転可能である。一例として、第2表示部39は、鉛直方向の傾斜変更が可能なチルト機能付き表示部としてもよい。
水平角操作部43は、本体部26を鉛直軸O1周りに回転するためにユーザにより操作される部材である。ユーザにより水平角操作部43が操作されると、本体部26及び撮像部27はともに鉛直軸O1周りに回転する。鉛直角操作部44は、撮像部27を水平軸O2周りに回転するためにユーザにより操作される部材である。水平角操作部43及び鉛直角操作部44は、例えばノブである。把持部45は、例えば測量装置20を持ち運ぶ際にユーザが把持するための部材である。把持部45は、例えばキャリングハンドルである。把持部45は、例えば本体部26の上面に固定されている。
図4に示すように、第3撮像部34は、第3対物レンズ30を含む第3光学系と、第3撮像素子とを含んでいる。第3光学系は、第2ターゲットからの光を第3撮像素子に導く。第3撮像素子は、第2ターゲットを撮像して、画像データを生成する。第3撮像部34は、測量装置20の下方を撮像して、画像データを生成する。第3撮像部34は、鉛直軸O1を含む下方を撮像して、画像データを生成する。一例として、第3撮像素子は、CCDやCMOSで構成されている。第3撮像部34で生成された画像データは、画像処理部53に出力される。一例として、第3撮像部34は、ユーザが測量装置20を整準したり求心したりする場合に、測量装置20の下方の画像を第1表示部38や第2表示部39に表示させるための画像データを生成する。第3撮像部34は、本体部26に固定されている。一例として、第3撮像部34は、求心カメラである。一例として、第3撮像部34は、求心望遠鏡である。
撮像部27は、本体部26によって水平軸周りに回転可能に支持されている。撮像部27は、水平軸O2周りに回転可能に構成されている。撮像部27は、整準部22に対して鉛直軸O1周りに回転可能に構成されている。撮像部27は、鉛直軸O1周りに回転可能であり、且つ、水平軸O2周りに回転可能である。撮像部27は、ユーザにより水平角操作部43が操作された操作量に応じて、水平方向に回転する。撮像部27は、ユーザにより鉛直角操作部44が操作された操作量に応じて、鉛直方向に回転する。
撮像部27は、第1撮像部31と、第2撮像部32とを備えている。一例として、第1撮像部31及び第2撮像部32は、CCDやCMOSで構成されている。第1撮像部31及び第2撮像部32で生成された画像データは、画像処理部53に出力される。一例として、第1撮像部31及び第2撮像部32は、視準する場合に、第1ターゲットを含む視野の画像を第1表示部38や第2表示部39に表示させるための画像データを生成する。一例として、プリズム方式の場合、第1撮像部31及び第2撮像部32は、測量対象物である第1ターゲットを撮像する。一例として、ノンプリズム方式の場合、第1撮像部31及び第2撮像部32は、観測対象2等の測定面を測定する。第1撮像部31及び第2撮像部32が撮像する視野は、第3撮像部34が撮像する視野とは異なり、第3撮像部34が撮像する視野とは重複しない。
第1撮像部31は、第1対物レンズ28を含む第1光学系と、第1撮像素子とを含んでいる。第1光学系は、撮像視野内の光(例えば第1ターゲットからの光を含む)を第1撮像素子に導く。一例として、第1撮像部31は、望遠カメラである。一例として、第1撮像部31は、視準カメラである。一例として、第1撮像部31は、視準望遠鏡である。一例として、第1撮像部31は、第1画角を有する。一例として、第1撮像部31は、第1視野を有する。
第2撮像部32は、第2対物レンズ29を含む第2光学系と、第2撮像素子とを含んでいる。第2光学系は、撮像視野内の光(例えば第1ターゲットからの光を含む)を第2撮像素子に導く。第2対物レンズ29は、第1対物レンズ28とは別個に備えている。一例として、第2対物レンズ29は、撮像部27において第1対物レンズ28が配置されている面と同じ面に配置されている。一例として、第2対物レンズ29は、第1対物レンズ28と鉛直方向に並んで配置されている。一例として、第2対物レンズ29の光軸は、第1対物レンズ28の光軸と平行である。第2撮像部32は、第1撮像部31の第1画角より広い第2画角を有する。第1撮像部31の第1画角は、第2撮像部32の第2画角より狭い。第2撮像部32の第2視野角は、第1撮像部31の第1視野角より広い。第1撮像部31の第1視野角は、第2撮像部32の第2視野角より狭い。一例として、第2撮像部32は、視準する場合に第1ターゲットを含み第1視野よりも広い第2視野の画像を第1表示部38や第2表示部39に表示させるための画像データを生成する。一例として、第2撮像部32は、広角カメラである。一例として、第2撮像部32は、広角望遠鏡である。
視準とは、対物レンズをターゲットに向けて、視準軸をターゲットの中心に一致させることである。視準軸は、対物レンズの光学的な中心点を通り、水平軸に直角(90°)に交差する軸である。視準軸は、第1撮像部31の第1対物レンズ28の光学的な中心点を通り、水平軸O2に直角(90°)に交差する軸である。視準軸は、セオドライトの対物レンズの中心を通り水平軸と直交する軸である。視準軸は、第1対物レンズ28の光軸と一致している。視準した測量装置20は、第1対物レンズ28を第1ターゲットに向けて、測量装置20の第3軸である視準軸O3が第1ターゲットの中心に一致した状態である。視準軸において測量装置20内部から測量装置20外部に向かう方向を視準方向と呼ぶ場合がある。
〔測量装置のシステム構成〕
図5は、測量装置20のシステム構成を示すブロック図である。
測量装置20は、第1撮像部31及び第2撮像部32を含む撮像部27と第3撮像部34とを備えている。また、測量装置20は、測距部33と、水平角駆動部35と、送光部36と、鉛直角駆動部37と、第1表示部38と、第2表示部39と、通信部40と、水平角操作部用エンコーダ41と、鉛直角操作部用エンコーダ42と、水平角操作部43と、鉛直角操作部44と、水平角測角部51と、鉛直角測角部52と、画像処理部53と、一時記憶部54と、記憶部55と、操作部56と、制御部57と、GNSS受信部58とを備えている。
第1撮像部31及び第2撮像部32は、制御部57により設定された撮像条件(ゲイン、蓄積時間(シャッタ速度)等)に基づいて撮像して生成した第1画像データおよび第2画像データを画像処理部53に出力する。第1撮像部31及び第2撮像部32は、撮像して生成した画像データに基づく画像の明るさが適正となるよう制御部57により適正露出が自動的に設定される。第1撮像部31及び第2撮像部32は、制御部57により自動露出機能が実行される。第1撮像部31における第1光学系は、制御部57によるフォーカス調節指示に応じてフォーカスレンズ駆動部がフォーカスレンズの位置を光軸方向に沿って変更可能に構成されている。第3撮像部34は、制御部57により設定された撮像条件(ゲイン、蓄積時間(シャッタ速度)等)に基づいて撮像して生成した第3画像データを画像処理部53に出力する。第1撮像部31は、オートフォーカス部31aを備えている。
画像処理部53は、第1撮像部31、第2撮像部32及び第3撮像部34から出力された画像データに対して画像処理を施す。画像処理部53で画像処理が施された画像データは、一時記憶部54に記憶される。例えばライブビュー動作時において、第1撮像部31や第2撮像部32、第3撮像部34が連続して撮像した場合、順次出力される画像データは、一時記憶部54に順次記憶される。
一時記憶部54は、画像データを一時的に記憶する。一例として、一時記憶部54は、揮発性メモリである。一例として、一時記憶部54は、RAM(Random Access Memory)である。
画像処理部53で施される画像処理は、表示用画像データを生成する処理、圧縮した画像データを生成する処理、記録用画像データを生成する処理、画像データに基づく画像から一部切り出すことで電子的に画像を拡大する(デジタルズーム)処理等が挙げられる。画像処理部53により生成された表示用画像データは、制御部57の制御により第1表示部38や第2表示部39に表示される。
なお、測量装置20は、視準用接眼光学系や求心用接眼光学系を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
画像処理部53により生成された記録用画像データは、通信部40を介して外部メモリに記録される。一例として、外部メモリは、不揮発性メモリである。一例として、外部メモリは、フラッシュメモリやハードディスクや光ディスクである。
測距部33は、測量部であり、一例として、発光素子とダイクロイックミラーと受光素子とを備える光波距離計として構成されている。一例として、発光素子は、パルスレーザダイオード(PLD)等のレーザダイオード、赤外発光ダイオード等の発光ダイオードである。一例として、測距部33は、発光素子が出射する測距光を、ダイクロイックミラーによって第1対物レンズ28と同軸の光線として測量対象物である第1ターゲット(例えば反射プリズムや構造物の測定面)に向けて送光する。測量対象物で反射された光は、再び第1対物レンズ28に戻り、ダイクロイックプリズムで測距光と分離され、受光素子へ入射する。測量対象物までの距離は、発光素子から測距部33内部で受光素子に入射する参照光と、測量対象物からの測距光との時間差から算出される。なお、測距部33は、位相差に基づいて測量対象物までの距離を算出する位相差測距方式であってもよい。
送光部36は、第1ターゲットに対して送光し第1ターゲットを照射する。一例として、送光部36は、測距部33の発光ダイオードである。一例として、送光部36と測距部33は、同一の発光ダイオードを兼用する。送光部36は、第1対物レンズ28と同軸の光線を第1ターゲットに向けて送光する。一例として、送光部36は、測距部33とは別に設けられた発光ダイオードである。
水平角測角部51は、視準軸O3の水平方向の回転角度(鉛直軸O1周りの角度)を検出する。水平角測角部51は、検出した回転角度に対応する信号を制御部57に出力する。水平角測角部51は、一例として、エンコーダにより構成されている。水平角測角部51は、一例として、光学式アブソリュート形ロータリエンコーダにより構成されている。水平角測角部51は、水平角を検出する角度検出部である。
鉛直角測角部52は、視準軸O3の鉛直(高低)方向の回転角度(水平軸O2周りの角度)を検出する。鉛直角測角部52は、検出した角度に対応する検出信号を制御部57に出力する。鉛直角測角部52は、一例として、エンコーダにより構成されている。鉛直角測角部52は、一例として、光学式アブソリュート形ロータリエンコーダにより構成されている。鉛直角測角部52は、鉛直角を検出する角度検出部である。
水平角操作部用エンコーダ41は、水平角操作部43の回転角度を検出する。水平角操作部用エンコーダ41は、検出した回転角度に対応する信号を制御部57に出力する。
水平角駆動部35は、整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動する。水平角駆動部35が整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動することで、撮像部27は、整準部22に対して鉛直軸O1周りに回転する。一例として、水平角駆動部35は、モータで構成されている。
一例として、水平角駆動部35は、ユーザにより第1表示部38や第2表示部39のタッチパネルがタッチされた位置に基づき制御部57が算出した駆動量に応じて、整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動する。
一例として、水平角駆動部35は、観測制御装置60等の外部装置から回転駆動指示を受け付けた場合、外部装置から受け付けた回転駆動指示に基づき制御部57が算出した駆動量に応じて、整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動する。
一例として、水平角駆動部35は、水平角操作部43が操作された場合、整準部22に対して本体部26を測量装置20の鉛直軸O1周りに回転駆動する。
鉛直角操作部用エンコーダ42は、鉛直角操作部44の回転角度を検出する。鉛直角操作部用エンコーダ42は、検出した回転角度に対応する信号を制御部57に出力する。
鉛直角駆動部37は、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。鉛直角駆動部37は、例えばモータで構成されている。
一例として、鉛直角駆動部37は、ユーザにより第1表示部38や第2表示部39のタッチパネルがタッチされた位置に基づき制御部57が算出した駆動量に応じて、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。
一例として、鉛直角駆動部37は、外部装置から回転駆動指示を受け付けた場合、外部装置から受け付けた回転駆動指示に基づき制御部57が算出した駆動量に応じて、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。
一例として、鉛直角駆動部37は、鉛直角操作部44が操作された場合、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。
通信部40は、外部装置である観測制御装置60との通信を行う。通信部40は、外部装置とのデータ入出力を行うインタフェースである。通信部40として、例えば、ActiveSync規格の通信用インタフェースや、USB(Universal Serial Bus)規格の通信用インタフェースや、Bluetooth(登録商標)規格の無線通信用インタフェースや、RS−232Cシリアル通信規格の通信用インタフェースが挙げられる。通信部40は、測量装置20で撮像された観測対象2の画像データや代表位置情報を観測制御装置60に対して送信し、また、観測制御装置60から送信された測量装置20を制御する指示信号を受信する。
記憶部55は、測量装置20の動作に必要なプログラムやパラメータ等を記憶する。記憶部55は、プログラム及びパラメータを測量装置20の非動作時にも失われないように格納する。記憶部55は、一例として、不揮発性メモリやハードディスクである。一例として、記憶部55は、ROM(Read Only Memory)である。一例として、記憶部55は、測量装置20が撮像した画像の画像データを保存する。一例として、記憶部55は、広域観測対象12の地形モデルデータを保存する。
操作部56は、一例として、筐体に配置された押ボタン、ボリュームスイッチ、スライドスイッチ等の機械的な操作部材である。操作部56は、一例として、第1表示部38や第2表示部39の表示部の表示面に配置されたタッチパネルである。機械的な操作部材は、ユーザにより操作されると、各操作部材に関連付けられた機能を実行する指示信号を制御部57に出力する。また、タッチパネルは、表示されたオブジェクトがタッチされたとき、オブジェクトに定義づけられた機能を実行する指示信号を制御部57に出力する。
制御部57は、測量装置20の全体の動作を制御する。
一例として、制御部57は、操作部56や外部装置からの指示信号に従って、整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動する。一例として、制御部57は、ユーザにより水平角操作部43が操作されたことに応じて、整準部22に対して本体部26を鉛直軸O1周りに回転駆動する。一例として、制御部57は、操作部56や外部装置からの指示に従って、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。一例として、制御部57は、ユーザにより鉛直角操作部44が操作されたことに応じて、本体部26に対して撮像部27を水平軸O2周りに回転駆動する。
一例として、制御部57は、第1撮像部31及び第2撮像部32を動作して、設定された撮像条件に基づいて、観測対象2を撮像し、撮像して生成した画像データを画像処理部53に出力する。
一例として、制御部57は、観測制御装置60から駆動指示信号が入力されると、指示信号に従って、第1撮像部31(オートフォーカス部31aを含む)、第2撮像部32、第3撮像部34、撮像部27、水平角駆動部35、鉛直角駆動部37等を駆動する。
一例として、制御部57は、観測制御装置60に対して撮像部27が生成した画像データや観測データを通信部40から出力する。
GNSS受信部58は、モニタリングにおいて、観測対象2を撮像する時刻をGNSSに従ったものとすることで、より正確な時刻に観測対象2を撮像することができる。また、GNSS受信部58は、複数の人工衛星がそれぞれ送信する信号を比較し、電波を受信した時間差を計算して測量装置20の位置情報を算出する。
〔観測制御装置のシステム構成〕
図6は、観測制御装置60のシステム構成を示すブロック図である。
観測制御装置60は、制御部61と、表示部62と、操作部63と、記憶部64と、通信部65とを備えている。
制御部61は、コンピュータと同様な構成を有しており、CPU61a、ROM61b及びRAM61cがバスを介して相互に接続されている。一例として、制御部61は、記憶部64を構成するハードディスク等にインストールされた観測プログラム64aを実行する。観測プログラム64aは、撮像領域をモニタリングするために測量装置20の動作を制御するプログラムである。また、一例として、制御部61は、表示部62に画像等を表示させる表示制御部として機能する。制御部61は、撮像部27が生成した画像データに基づく画像を表示部62に表示させる。一例として、制御部61は、観測対象2の画像を表示部62に表示させる。一例として、制御部61は、観測対象2における異なる時刻に撮像された画像を比較し、観測対象2における特徴領域の変位を検出する検出部として機能する。一例として、制御部61は、地形モデルデータに基づいて撮像部27が撮像する観測対象2や測量装置20の撮像位置3を設定する設定部として機能する。一例として、ターゲット102が設置されるターゲット位置を含む観測対象2にターゲット102を用意するとき、飛翔体11の飛行ルートにターゲット位置を設定する。そして、制御部61は、飛翔体11に対し指示信号を送信し遠隔操作する。一例として、制御部61は、測量装置20に対して、第1撮像部31、第2撮像部32、第3撮像部34、撮像部27、水平角駆動部35、鉛直角駆動部37等を駆動する指示信号を通信部65を介して出力する。
表示部62は、画像やオブジェクトを表示する表示機能を有している。一例として、表示部62は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTである。一例として、表示部62は、表示部の表示面に、第1撮像部31や第2撮像部32が生成した画像データに基づく画像を表示する。
操作部63は、一例として、キーボードであり、マウスであり、表示部62の表示面に配置されたタッチパネルである。操作部63は、表示部62に表示されたオブジェクトを選択することによって、オブジェクトに定義づけられた機能を実行する指示を制御部61に出力する。
記憶部64は、プログラムやパラメータ等を測量装置20の非動作時にも失われないように格納する。一例として、記憶部64は、不揮発性メモリやハードディスクである。一例として、記憶部64は、観測プログラム64a、電子メールを送受信する電子メールプログラム64bを格納している。一例として、記憶部64には、観測プログラム64aに従って撮像された観測対象2を撮像した画像の画像データ等が保存される。一例として、記憶部64には、飛翔体11の遠隔操作プログラムが格納されている。
通信部65は、測量装置20の通信部40と通信をする。一例として、通信部65は、測量装置20で撮像され画像の画像データや位置情報を受信し、また、測量装置20を制御する指示信号を出力する。一例として、通信部65は、ワイドエリアネットワークやローカルエリアネットワーク等のネットワーク17を介して外部装置と通信する。一例として、通信部65は、外部装置であるサーバ装置と通信する。一例として、通信部65は、時刻取得部となって、測量装置20から観測対象2の撮像時の時刻情報を取得する。一例として、通信部65は、GNSS受信装置16から時刻情報を受信する。一例として、通信部65は、GNSS受信装置16から当該GNSS受信装置16が設置された場所の位置情報を受信する。一例として、通信部65は、観測条件取得部となって、観測条件としての観測小屋の温度計測装置6で計測した温度データや湿度計測装置7が計測した湿度データや気圧計測装置8が計測した気圧データを取得する。一例として、通信部65は、気象情報取得部となって、気象サーバ18から観測対象を撮像したときの観測対象2を含むエリアの気象情報を取得する。一例として、通信部65は、電子メールプログラム64bによって、アドレス帳に登録された作業者の端末に対して電子メールを送信し、また、作業者の端末から送信された電子メールを受信する。また、電子掲示板、SNS等にアクセスする。
〔第1モニタリング方法〕
地滑り等の地形の変位を監視するには、広域観測対象12の中から所定の観測対象2を選定し、選定した観測対象2を撮像する測量装置20を設置する撮像位置3を選定する必要がある。そこで、図7に示すように、先ず、ステップS1において、地形モデルデータを生成する。一例として、地形モデルデータを作成するには次の2つがある。
(1)飛翔体11を飛行させる。飛行している飛翔体11のカメラにより広域観測対象12を撮像して写真測量用の画像データを生成し(広域観測対象12をすべてカバーするように、一回又は場所を変えて複数回撮像して画像データを生成)、標定することで、地形モデルデータを作成する。
(2)3次元計測装置15で広域観測対象12を直接計測することで、地形モデルデータを作成する。
一例として、(1)の方法だけで地形モデルデータを作成してもよいし、(2)の方法だけで地形モデルデータを作成してもよいし、(1)及び(2)の方法で地形モデルデータを作成してもよい。また、一例として、(1)、(2)の何れの場合であっても、広域観測対象12の全域の地形モデルデータを作成するようにしてもよいし、1つ又は複数の観測対象2又は撮像位置3となりそうな領域の地形モデルデータを作成してもよい。すなわち、後述のステップで説明するように、広域観測対象12の全域でなくても、観測対象2や撮像位置3を選定することができる広域観測対象12の一部の地形モデルデータが作成されればよい。
(1)の方法で飛翔体11を用いる場合、一例として、飛翔体11は、無人航空機であり、マルチコプタである。また、ここでの写真撮影は、有人航空機によって行ってもよい。
地形モデルデータは、一例として、直交座標で表現された3D点群データであり、3D点群データから作成される地表面を三角形の集合で表現するデジタルデータ構造であるTin(triangulated irregular network)や、地表面を一定のルールに従い、多数の正方形等に分割した正方メッシュデータである。一例として、地形モデルデータは、グローバル座標、ローカル座標等の座標系に合わせて作成される。
ステップS2において、一例として、写真撮影した航空写真や地形モデルデータを参照して、1つ又は複数の観測対象2を選定し座標上で位置を特定する。選定する観測対象2は、実際に作業者が赴いて調査することは困難な場所であり、変位が想定される領域、変位した場合に被害が想定される領域、他の点の変位内容を把握するために参照とする領域等である。
ステップS3において、観測対象2を撮像するため、測量装置20を設置する1つ又は複数の撮像位置3を選定する。一例として、写真撮影した航空写真や地形モデルデータを参照して、1つ又は複数の撮像位置3を選定し座標上で位置を特定する。また、一例として、航空写真から1つ又は複数の撮像位置3を選定する。選定する撮像位置3は、観測対象2から離れ、地すべりが発生しても、測量装置20が土砂等により飲み込まれない安全な場所である。なお、実際に現場に赴いて観測対象2や撮像位置3を選定する選定作業を行ってもよい。
ステップS4において、撮像位置3が選定されると、測量装置20は、撮像位置3にまで運搬され、撮像位置3に設置され、測量装置20は器械設置される。器械設置では、測量装置20を整準及び求心し、少なくとも既知点2点それぞれを測角及び測距することにより、測量装置20がグローバル座標、ローカル座標等の座標上に設置される。器械設置の作業は、現場で作業者によって行われてもよいし、観測制御装置60による遠隔操作で行ってもよい。
ステップS5において、観測制御装置60は、測量装置20を用いて、観測対象2を撮像するとともに、レチクルが示す観測点を観測(測距及び測角)する。具体的に、ここでの観測では、観測対象2のレチクルが示す代表的な観測点の観測データ(測距データと測角データと観測位置情報(一例として観測座標データ))を算出する。そして、観測制御装置60は、測量装置20が算出したこれらのデータを記憶装置14等に保存する。これにより、観測対象2を座標上で特定することができ、観測対象2に含まれる特徴領域を選定することができるようになる。
図8に示すように、第1観測方法では、観測対象2を撮像した観測画像101における特徴領域102´を観測対象2におけるターゲット102の対応領域とし、この特徴領域102´を含む指定領域103を作業者が指定することができる。これにより、作業者が観測対象2に赴くことなしに、特徴領域102´を含む範囲を変位検出のための範囲を設定できるようにしている。なお、ここで観測対象2の撮像は、第1撮像部31、第2撮像部32の何れを用いてもよいため、以下、単に撮像部27という。
ステップS6において、観測制御装置60の制御部61は、記憶装置14等からステップS5で観測した観測位置情報の示す位置に測量装置20を視準させ、測量装置20が現在視準している観測対象2を撮像することで得られた観測画像を表示部62に表示する。図8は、測量装置20が観測対象2を撮像した観測画像101を示す。ここで、作業者は、表示部62に表示された観測画像101を見て、特徴領域102´を選定する。一例として、観測画像101の中で観測対象2におけるターゲット102に対応する領域が特徴領域102´である。一例として、特徴領域102´は、ターゲット102となる岩や大木等の樹木等の自然物であって、通常の風雨等によっては形状が変位しない自然物に対応した観測画像101上の領域である。観測制御装置60では、マウス等の操作部63を用いて特徴領域102´を含む指定領域103を指定する。指定領域103は、特徴領域102´を囲む閉領域であり、一例として四角形状、三角形状、五角形状等の多角形状である。また、自由曲線で囲まれた領域である。また、指定領域103は、一例として、特徴領域102´の外形をなぞった形状である。以下、指定領域103は、四角形状を例に説明する。そして、指定領域103を、基準画像とし、変位を検出する際の基準とする。また、基準画像は、観測対象2のターゲット102と対応する領域であるから、検索時のインデックスとしても使用され、表示部62に検索結果が一覧表示される際の画像となる。
ステップS7において、制御部61は、指定領域103の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。なお、代表位置は重心位置に限定されるものではない。測量装置20は、観測のため、撮像部27を、当該代表位置が画角の中心位置となるように鉛直軸回り及び水平軸回りに回転させる。図9に示すように、これにより、指定領域103の重心が画角の中心に位置する基準観測画像101aが生成される。指定領域103の外周は、一例として、重心位置からの距離や座標で特定される。また、この指定領域103で囲まれた領域の画像は、変位を検出する際の基準画像となる。基準観測画像101aでは、基準画像(指定領域103)が画角の中央に位置することで、変位が発生しターゲット102の位置が何れかの方向に変位して特徴領域102´も同方向に変位したとしても、画角の中の何れかの位置に特徴領域102´が含まれるようにすることができる。そして、制御部61は、撮像部27が撮像した基準観測画像101aの画像データとともに、基準観測データを記憶装置14等に保存する。ここでの基準観測データは、測量装置20から代表位置までの測距データ及び測角データであり、さらに代表位置の基準位置情報(一例として座標データ)である。
一例として、制御部61は、基準観測画像101aの画像データ及び基準観測データを記憶装置14等に保存するときに、GNSS受信装置16や測量装置20やNTPサーバ等の外部装置から正確な時刻情報を取得し記憶装置14等に保存する。また、一例として、観測条件として、温度計測装置6で計測した温度データや湿度計測装置7が計測した湿度データや気圧計測装置8が計測した気圧データや測量装置20における撮像部の撮像条件や明るさ等を取得し記憶装置14等に保存する。さらに、一例として、気象サーバ18から気象情報を取得し記憶装置14等に保存する。
ステップS8において、制御部61は、観測対象2のモニタリングを開始する。具体的に、変位を観測できるように、制御部61は、観測プログラム64aに従って1日から数日に1回といった長い間隔ではなく、変位の開始時点や変位の途中を把握できるように、数分から数時間程度の短い周期(一例として、5分周期や10分周期)で観測対象2を撮像する。なお、ここでは観測対象2を撮像する撮像時刻を「i」(iは1以上の整数)とし、第i時刻に撮像された画像を第i比較観測画像という。制御部61は、最初の第1時刻に観測対象2を撮像できるように、i=1を設定する。
ステップS9において、制御部61は、第1時刻になると、基準位置情報の示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第1比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。ここでの比較観測データは、測量装置20から代表位置までの測距データ及び測角データであり、さらに代表位置の基準位置情報(一例として座標データ)である。但し、比較観測データに含まれる測距データは、基準位置情報が示す位置に地形が発生しているときには、基準観測画像101aを撮像したときと異なる値となる。
ステップS10において、制御部61は、「i」に「1」を加算し、ステップS9からの処理を繰り返す。一例として、制御部61は、第2時刻になると、再度、基準位置情報が示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第2比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。一例として、制御部61は、第i時刻になると、基準位置情報が示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。第1モニタリング方法では、指定領域103をモニタリングし、基準観測画像101aの特徴領域102´の変位を、基準観測画像101aの指定領域103と第i比較観測画像101bの比較指定領域103´と比較することで検出する(図10参照)。
1つの測量装置20が複数の観測対象2をモニタリングする場合、測量装置20は、第i時刻と第i+1時刻との間に、撮像部27を鉛直軸回り及び水平軸回り回転し、次の観測対象2の基準位置情報が示す位置を視準し撮像することになる。
一例として、制御部61は、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存する。
ステップS11において、制御部61は、モニタリングにおいて撮像した第i比較観測画像から、ステップS7で設定した指定領域103と同じ位置の比較指定領域103´を画像認識により抽出し(図10参照)、この画像を基準画像と比較するための比較画像とする。そして、制御部61は、順次、観測対象2が撮像され、比較観測画像101bが生成されると、基準画像と比較画像とを比較する。ターゲット102が変位していれば、比較画像は、基準画像と異なる画像となる。ステップS12において、制御部61は、各基準観測画像101aの基準画像に対する比較画像の差が閾値以上であるかどうかを判断する。閾値は、基準画像と比較画像との変位が例えばターゲット102の変位のような大きな変位ではなく、草木の揺らぎといった小さな変位までをも変位として検出してしまうことを抑制するような値に設定する。そして、制御部61は、基準画像に対する比較画像の差が閾値以上であり、基準画像と比較画像との間で変位を検出したとき、ステップS13に進み、変位を検出しなかったとき、処理を終了する。
図10は、ターゲット102が基準観測画像101aの中心から変位したときの比較観測画像101bを示している。
ところで、ステップS12では、指定領域103の変位を検出しても、どの程度、ターゲット102が変位しているかは不明である。場合によっては、基準観測画像101aから外れている可能性もある。そこで、図11に示すように、ステップS13において、制御部61は、観測対象2より更に広範囲を撮像すべく、測量装置20を介して現在の観測対象2の周囲の観測対象周辺2aを撮像する。観測対象周辺2aとは、一例として、観測対象2を中央にして、上下左右の4つの領域と右上、左上、右下、左下の4つの領域を合わせた合計8つの領域である。各領域は、撮像部27の撮像範囲に対応した大きさである。制御部61は、観測対象周辺2aを構成する各周辺撮像領域2bの代表位置を視準して観測(測距及び測角)し、各周辺撮像領域2bの画像データと関連付けて観測データを保存する。ここでの観測データは、測量装置20から各周辺撮像領域2bの視準位置までの測距データ及び測角データであり、さらに視準位置情報(一例として座標データ)である。これにより、中心に位置する観測対象2の観測対象周辺2aの状態も把握することができる。なお、制御部61は、一例として、観測対象2を撮像した比較観測画像101bと観測対象周辺2aの観測画像とを繋ぎ合わせたスティッチング画像を生成してもよい。
変位を検出したときには、ステップS14において、制御部61は、指定領域103の再設定を行う。すなわち、変位後における特徴領域102´を含む指定領域103をマウス等の操作部63を用いて再度指定する。そして、制御部61は、指定領域103の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、撮像部27で撮像し、撮像により生成された画像データとともに当該代表位置の観測データを記憶装置14等に保存する。これが、変位検出後における新たな基準観測画像101aとなり、制御部61は、図7に示すステップS9からのモニタリングの処理を繰り返す。すなわち、変位後の状態を基準観測画像101aしたモニタリングが行われる。これにより、さらに変位が発生し、最初の比較観測画像101bから特徴領域102´が外れてしまう、すなわち写らなくなってしまうことを防ぐことができる。
一例として、変位を検出したときは、一例として以降のモニタリングを5分間隔から3分間隔や1分間隔に変更する。一例として、変位を所定期間以上検出しなかったときは、5分間隔で観測していたところを、これより長くし、一例として10分間隔としてもよい。
なお、基準観測画像101aにおける基準画像(指定領域103)中の特徴領域102´を画像認識により輪郭を検出することによって抽出し、特徴領域102´の重心位置を示す基準位置情報を求めるようにする。一例として、基準観測画像101aにおける基準画像(指定領域103)中の特徴領域102´を画像認識により輪郭を検出することによって抽出し、特徴領域102´の重心位置を示す基準位置座標データを求めるようにする。また、比較観測画像101bにおける比較画像中の特徴領域102´を画像認識により輪郭を検出することによって抽出し、特徴領域102´の重心位置を示す変位後位置情報を求めるようにする。この場合、基準観測画像101aにおける特徴領域102´の位置と比較観測画像101bにおける特徴領域102´の位置とが分かっている。したがって、基準観測画像101a及び比較観測画像101bの中の何れか1つの観測画像に、基準観測画像101aから抽出した特徴領域102´と比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´とを表示することができる。また、基準位置情報と変位後位置情報の差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。一例として、基準位置座標データと変位後位置座標データの差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。
ステップS15において、制御部61は、変位があったことを作業者に知らせる文面の電子メールを生成し、出力部としての電子メールプログラム64bのアドレス帳に登録されている電子メールアドレスに対して電子メールを送信する。一例として、電子メールには、変位の前後を撮像した基準観測画像101a及び比較観測画像101bの画像データを添付する。また、一例として、送信する電子メールに、基準観測データと比較観測データ、特に基準観測データに含まれる測距データと比較観測データに含まれる測距データを含ませる。例えば、基準画像において存在している特徴領域102´が比較画像では存在しなくなり指定領域103に変位が認められるときは、基準観測データに含まれる測距データと比較観測データに含まれる測距データとは異なるデータとなり、地形に変位が発生していることになる。そこで、電子メールに測距データを含ませることで、測距データの変化を作業者に知らせることもできる。また、一例として、観測対象周辺2aの各周辺撮像領域2bの画像データを電子メールに添付する。また、一例として、電子メールを受信した作業者の端末では、この観測制御装置60からの電子メールを受信したとき、スピーカから警告音を作業者が直ちに気づくように出力する。一例として、制御部61は、市町村の防災無線等の屋外スピーカから当該内容を報知する。作業者等に知らせる手段としては、その他に、電光掲示板などで報知するようにしてもよいし、電子掲示板、SNS等の投稿を共有するサービスを用いて作業者等に知らせるようにしてもよい。
なお、モニタリングが夜間に行われるとき、制御部61は、基準観測画像101aを撮像したときの基準観測データに含まれる測距データと比較観測画像101bを撮像したときの比較観測データに含まれる測距データとを比較する。そして、2つの測距データの差が閾値以上であるときに、指定領域103に変位があると判断する。夜間に撮像された比較観測画像101bは、画角全体が一様に暗く、特徴領域の変位を画像上で検出することが困難だからである。
また、モニタリングを行っている間に、測量装置20と観測対象2との間に障害物が介在してしまい、測距データが異なる場合もある。このような場合は、障害物を除去する作業を行うか、又は、観測対象2の位置変更の作業を行うことができる。
〔第2モニタリング方法〕
図12に示すように、第2モニタリング方法では、飛翔体11によって観測対象2におけるターゲット102として観測用塗料111aが塗布された塗布領域を用いる。これにより、観測対象2におけるターゲット102を、測量装置20によって第1モニタリング方法での自然物よりも確実に検出できる。また、観測用塗料111aを塗布した場合には、観測対象2にターゲットとしやすい自然物が地表に存在しない場合であっても、ターゲット102を人工的に設けることができる。一例として、観測用塗料111aは、測距部33の距離測定用光波に対して反射率の優れた塗料である。一例として、観測用塗料111aは、水性塗料である。一例として、観測用塗料111aは、有害化学物質を含まない塗料である。観測用塗料111aは、観測対象2に自然物(例えば岩や木)が存在するときは当該自然物に塗布するようにしてもよいし、観測対象2に自然物が存在しないときは当該土砂や砂地の地面に塗布するようにしてもよい。
なお、後述の第3モニタリング方法では、人工的なターゲット102として、観測用ターゲット111bを用い、保持部11bで観測用ターゲット111bを保持するようにしている。
第2モニタリング方法においても、図13に示すように、ステップS21において、地形モデルデータを生成する。ここでの地形モデルデータは、第1モニタリング方法と同様に、飛翔体11のカメラにより広域観測対象12を撮像して写真測量用の画像データを生成し、標定することで、地形モデルデータを作成する。また、3次元計測装置15で広域観測対象12を直接計測することで、地形モデルデータを作成する。
ステップS22において、一例として、写真撮影した航空写真や地形モデルデータを参照して、1つ又は複数の観測対象2を選定し座標上で位置を特定する。ステップS23において、観測対象2を撮像するため、測量装置20を設置する1つ又は複数の撮像位置3を選定する。ステップS24において、撮像位置3が選定されると、測量装置20は、撮像位置3にまで運搬され、撮像位置3に設置され、測量装置20は器械設置される。
ステップS25において、観測制御装置60は、測量装置20を用いて、観測対象2を撮像するとともに、レチクルが示す観測点を観測(測距及び測角)する。具体的に、ここでの観測では、観測対象2のレチクルが示す代表的な観測点の観測データ(測距データと測角データと観測位置情報(一例として観測座標データ))を算出する。そして、観測制御装置60は、測量装置20が算出したこれらのデータを記憶装置14等に保存する。これにより、観測対象2を座標上で特定することができ、観測対象2に飛翔体11を誘導できるようになる。
ステップS26において、観測制御装置60の制御部61は、ターゲット102を観測対象2に設けるため、飛翔体11に観測用塗料111aを搭載し、選定された観測対象2に向けて飛翔体11を誘導する。飛翔体11は、観測用塗料111aを観測対象2における目標位置に塗布する。
図12に示すように、観測対象2に観測用塗料111aを塗布して形成されたターゲット102を設けるには、マルチコプタ等の無人航空機である飛翔体11を用意する。飛翔体11は、例えば下方を撮像可能なカメラ11aと、観測用塗料111aを保持する保持体111を保持する保持部11bとを備えている。飛翔体11は、地形モデルデータを用いて作業者が指定した観測位置情報の示す位置に誘導される。一例として、飛翔体11は、観測位置情報の示す位置まで遠隔操作装置114により遠隔操作されて誘導される。一例として、飛翔体11は、GNSS受信部を備えることで自身の位置を特定できる場合、観測位置情報をプログラムに設定することで、自動的に(遠隔操作装置114で飛翔体11を操作することなく)観測位置情報の示す位置まで飛行される。そして、観測対象2において、観測用塗料111aを塗布する。カメラ11aで撮像して生成された画像データに基づく静止画像や動画像は、遠隔操作装置114のモニタ115や観測制御装置60の表示部62に表示され、作業者は、モニタ115や表示部62の表示を見ながら、塗布作業の指示を行い、観測用塗料111aの塗布作業を行う。塗布作業を行うとき、作業者は、カメラ11aの画像がモニタ115や表示部62に表示されることで、飛翔体11より下方の様子を見ることができる。また、測量装置20が撮像した静止画像や動画像がモニタ115や表示部62に表示されることで、測量装置20の方向から見た飛翔体11や観測対象2の様子を見ることができる。モニタ115や表示部62には、カメラ11aにより得られた画像と測量装置20により得られた画像を切り替えて表示するようにしてもよいし、カメラ11aにより得られた画像と測量装置20により得られた画像を画面に並べて表示するようにしてもよい。
また、目標位置に観測用塗料111aを正確に塗布することができなかったときは、一例として、作業者は追加指示として、飛翔体11の位置修正指示を遠隔操作装置114を用いて行う。
飛翔体11の保持部11bは、一例として、飛翔体11のジンバルに固定されたかご等の保持体111を保持する。保持体111は、観測用塗料111aが含浸させたカラーボールや観測用塗料111aが貯留された風船等を保持する。飛翔体11が観測対象2に到達すると、作業者はカメラ11aや測量装置20で撮像された画像を見ながら、保持体111を遠隔操作により回転又は傾けてカラーボールや水風船を落下させる。そして、落下の衝撃で、カラーボールに含浸された観測用塗料111aを飛散させ、また、風船を破裂させることによって観測用塗料111aを地面等に飛散させる。これにより、観測対象2の中には、観測用塗料111aが濡れ広がった特徴領域102´が設けられる。
保持部11bは、一例として、飛翔体11のジンバルに装着され底部が開閉するかごで構成された保持体111を保持する。この保持体111は、閉じた状態において、観測用塗料111aが含浸させたカラーボールや観測用塗料111aが貯留された風船等を保持する。飛翔体11は、観測対象2に到達すると、カメラ11aや測量装置20で撮像された画像を見ながら、遠隔操作により保持体111を開き、カラーボールや水風船を落下させる。
以上の例では、高所から観測用塗料111aが含浸させたカラーボールや観測用塗料111aが貯留された風船を落下させることになる。正確な位置に観測用塗料111aを塗布するためには、より低い場所からカラーボールや風船を落下させることが好ましい。
保持部11bは、一例として、飛翔体11のジンバルに、観測用塗料111aを貯留した容器で構成された保持体111を保持する。この保持体111は、地面に接触した際の押圧力や衝撃によって、保持体111の底面が開く機構を有する。飛翔体11は、観測対象2において、カメラ11aや測量装置20で撮像された画像を見ながら降下し、保持体111を地面等に接触させ、そのときの押圧力や衝撃によって、保持体111の底面が開け、観測用塗料111aを地面等に塗布する。この方法は、地面と近い場所から観測用塗料111aを塗布できることから、上述した観測用塗料111aを高所から落下させる場合より、より正確な位置に観測用塗料111aを塗布することができる。
保持部11bは、一例として、飛翔体11のジンバルに、観測用塗料111aのスプレー缶を備える。この場合、観測対象2において降下し、カメラ11aや測量装置20で撮像された画像を見ながら、地面等の近くで、スプレー缶から観測用塗料111aを噴霧することによって塗布する。
観測用塗料111aが塗布された後、飛翔体11は、上昇し、カメラ11aや測量装置20で撮像した画像によって、正しい位置に観測用塗料111aが塗布されターゲット102が設けられたかを確認することができる。正しい場所に観測用塗料111aが塗布されていないときには、再度、観測用塗料111aの塗布作業を繰り返す再試行の処理を行う。正しく観測用塗料111aが塗布されているときには、次の観測対象2へ誘導される。
一例として、選定された観測対象2が複数ある場合、飛翔体11は、1つの観測対象2に観測用塗料111aを塗布し、ターゲット102を設けると、続けて、次の観測対象2に誘導され、当該観測対象2に観測用塗料111aを塗布し、ターゲット102を設ける。複数の観測対象2に連続して観測用塗料111aを塗布しターゲット102を設けるときは、最短ルートで飛翔体11を飛行させることが好ましい。
また、飛翔体11は、遠隔操作装置114や観測制御装置60の指示信号に従って、カメラ11aや駆動部を構成するモータやエンジンを制御する制御部116を備えている。制御部116は、遠隔操作装置114や観測制御装置60に基づいて、保持部11bを駆動し、カラーボールや風船を落下させる制御を行う。また、制御部116は、駆動部を制御して、飛翔体11を飛行ルートに沿って飛行させ、ターゲット位置にカラーボールや風船を落下させる制御を行う。
ステップS26において、制御部61は、記憶装置14からステップS25で観測した観測位置情報の示す位置に測量装置20を視準させ、図14に示すように、測量装置20が現在視準している観測対象2を撮像することで得られた観測画像101を表示部62に表示する。制御部61は、観測画像101の中から画像認識により観測用塗料111aの塗布領域によって構成されたターゲット102の輪郭を検出することによって特徴領域102´を抽出する。一例として、ステップS27において、制御部61は、特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。なお、代表位置は、重心位置に限定されるものではなく、例えば、ターゲット102における特徴的な形状の部分が現れた特徴領域102´の対応部分としてもよい。そして、図15に示すように、これを基準観測画像101aとし、撮像部27で撮像した基準観測画像101aの画像データとともに当該代表位置の基準観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、特徴領域102´の重心が画角の中心に位置する基準観測画像101aとなる。そして、基準観測画像101aにおける特徴領域102´が基準画像となる。基準観測画像101aでは、基準画像(特徴領域102´)が画角の中央に位置することで、変位が発生しターゲット102の位置が何れかの方向に変位して特徴領域102´も同方向に変位したとしても、画角の中の何れかの位置に特徴領域102´が含まれるようにすることができる。そして、制御部61は、撮像部27が撮像した基準観測画像101aの画像データとともに、基準観測データを記憶装置14等に保存する。
一例として、制御部61は、基準観測画像101aの画像データ及び基準観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存するようにしてもよい。
ステップS28において、制御部61は、観測対象2のモニタリングを開始する。具体的に、制御部61は、最初の第1時刻に観測対象2を撮像できるように、i=1を設定する。第1時刻になると、ステップS29において、制御部61は、基準位置情報の示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第1比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。
ステップS30において、制御部61は、「i」に「1」を加算し、ステップS29からの処理を繰り返す。一例として、制御部61は、第i時刻になると、基準位置情報が示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。すなわち、第2モニタリング方法では、観測用塗料111aにより形成されたターゲット102をモニタリングし、基準観測画像101aの特徴領域102´の変位を、基準観測画像101aの特徴領域102´と、第i比較観測画像101bの特徴領域102´と同じ比較領域102´´(図16参照)を比較することで検出する。
一例として、制御部61は、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存する。
1つの測量装置20が複数の観測対象2をモニタリングする場合、測量装置20は、第i時刻と第i+1時刻との間に、撮像部27を鉛直軸回り及び水平軸回り回転し、次の観測対象2の基準位置情報が示す位置を視準し撮像することになる。
次に、特徴領域102´の変位検出について説明する。
ステップS31において、制御部61は、モニタリングにおいて撮像した第i比較観測画像101bから、ステップS27で設定した基準画像(特徴領域102´)と同じ位置の画像を画像認識により抽出し、この画像を基準画像(特徴領域102´)と比較するための比較画像102´´とする(図16参照)。そして、制御部61は、順次、観測対象2が撮像され比較観測画像101bが生成されると、基準画像(特徴領域102´)と比較画像102´´とを比較する。基準画像(特徴領域102´)が変位していれば、比較画像102´´は、基準画像(特徴領域102´)と異なる画像となる。
ステップS32において、制御部61は、基準画像(特徴領域102´)に対する比較画像102´´の差が閾値以上であるかどうかを判断する。閾値は、基準画像(特徴領域102´)と比較画像102´´との変位が例えば風雨によって地表の土砂がわずかに変位してしまったような小さな変位までをも変位として検出してしまうことを抑制する値に設定する。そして、制御部61は、基準画像(特徴領域102´)に対する比較画像102´´の差が閾値以上であり、基準画像と比較画像との間で変位を検出したとき、次の処理に進み、変位を検出しなかったとき、処理を終了する。
また、図16に示すように、制御部61は、比較観測画像101bにおける変位後の特徴領域102´を画像認識によりターゲット102の輪郭を検出することによって抽出する。一例として、制御部61は、比較観測画像101bにおける特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。ここでの変位後観測データは、測量装置20から代表位置までの測距データ及び測角データであり、さらに変位後の代表位置の変位後位置情報(一例として座標データ)である。そして、当該代表位置の変位後観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、基準画像を構成する特徴領域102´の位置と比較観測画像101bにおける特徴領域102´とを比較することができる。一例として、基準観測画像101a及び比較観測画像101bの中の何れか1つの観測画像に、基準観測画像101aから抽出した特徴領域102´と比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´とを表示することができる。また、基準位置情報と変位後位置情報の差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。一例として、基準位置座標データと変位後位置座標データの差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。
この後、ステップS33において、上述したように、制御部61は、中心に位置する観測対象2の観測対象周辺2aの状態も把握するため、観測対象2より更に広範囲を撮像するように測量装置20を介して現在の観測対象2の周囲の観測対象周辺2aを撮像する。
変位を検出したときには、ステップS34において、制御部61は、基準画像の再設定を行う。すなわち、制御部61は、比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、撮像部27で観測画像101を撮像し、撮像により生成された画像データとともに当該代表位置の観測データを記憶装置14等に保存する。これが、変位検出後における新たな基準観測画像101aとなり、制御部61は、ステップS28からのモニタリングの処理を繰り返す。すなわち、変位後の状態を基準観測画像101aしたモニタリングが行われる。これにより、さらに変位が発生し、最初の比較観測画像101bから特徴領域102´が外れてしまう、すなわち写らなくなってしまうことを防ぐことができる。
一例として、変位を検出したときは、一例として以降のモニタリングを5分
間隔から3分間隔や1分間隔に変更する。一例として、変位を所定期間以上検出しなかったときは、5分間隔で観測していたところを、これより長くし、一例として10分間隔としてもよい。
ステップS35において、制御部61は、変位があったことを作業者に知らせる文面の電子メールを生成し、電子メールプログラム64bのアドレス帳に登録されている電子メールアドレスに対して電子メールを送信する。作業者等に知らせる手段としては、その他に、電光掲示板などで報知するようにしてもよいし、電子掲示板、SNS等の投稿を共有するサービスを用いて作業者等に知らせるようにしてもよい。
〔第3モニタリング方法〕
図17に示すように、第3モニタリング方法では、観測対象2領域におけるターゲット102を観測用ターゲット111bで構成する。これにより、観測対象2におけるターゲット102を、測量装置20によって第1モニタリング方法での岩等の自然物よりも確実に検出できる。また、観測用ターゲット111bで構成した場合には、自然物が存在しておらず、土砂等で一面が覆われてターゲットとし易い自然物が地表に存在しない場合であっても、ターゲット102を人工的に設けることができる。一例として、観測用ターゲット111bを用いた場合にも、観測用ターゲット111bは、飛翔体11によって、観測対象2の目的位置まで運搬されることになる。
観測用ターゲット111bは、モニタリングを行うために、測量装置20が認識できるようにする構成を有している。そのため、観測用ターゲット111bに反射部分を設けるようにしている。一例として、ターゲット部112自体を反射材料で構成する。一例として、ターゲット部112に反射部材を固定する。反射部材は、接着や係合によってターゲット部112に固定することができる。反射部材は、例えば反射シートやプリズムである。ターゲット部112において、反射部分は、再帰性反射材料で構成してもよい。これにより、観測用ターゲット111bは、例えば測量装置20から射出された測距光を測量装置20に向けて反射することができる。したがって、測量装置20は、観測用ターゲット111bに対する測距をより行いやすくなる。このような反射部分は、ターゲット部112全体に亘って設けられてもよいし、一部に設けられているだけでもよい。
図18(a)〜(c)は、観測用ターゲット111bを模式的に示す。図18(a)に示す観測用ターゲット111bは、一例として、ターゲット部112と、複数の脚部113とを備えている。ターゲット部112は、一例として、球体であり、一例として、表面全体が反射部材となっている。脚部113は、複数本である。脚が3本以上であるときには、ターゲット部112を安定して支持することができる。
図18(b)に示す観測用ターゲット111bは、一例として、脚部113が1本である。地表が軟質であるときには、脚部113を地表に突き刺してターゲット部112を支持することができる。この例では、反射部材112aがターゲット部112に複数設けられている。反射部材112aは、ターゲット部112に1つ設けられているだけでもよい。
ターゲット部112が球体である場合、仮に、観測用ターゲット111bが脚部113に支持されず倒れた状態となっても、測量装置20でターゲット部112を検出することができる。
図18(c)に示す観測用ターゲット111bは、一例として、ターゲット部112が三角形の板体であり、両面、または、一方の面に反射部材112aを備えている。反射部材112aは、各面の全体に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。反射部材112aは、測量装置20からの測距光を反射しやすい材質とする。反射部材112aは、一例として、プリズムや再帰性反射材である。一例として、ターゲット部112は、測量装置20と正対していない場合にターゲットの傾き方向を識別できる正三角形である。ターゲット部112の一側縁部には、1本の脚部113を備えている。脚部113としては、一側縁部に複数本の脚部を備えていてもよいし、各側縁部に1本又は複数本の脚部113を備えていてもよい。また、脚部113は、一方の主面(裏面)から斜め下方に向けて1本又は複数本の脚部113が延出していてもよい。
第3モニタリング方法の処理手順について図19を参照して説明する。ステップS41において、地形モデルデータを生成する。ここでの地形モデルデータは、第1モニタリング方法及び第2モニタリング方法と同様に、飛翔体11のカメラにより広域観測対象12を撮像して写真測量用の画像データを生成し、標定することで、地形モデルデータを作成する。また、3次元計測装置15で広域観測対象12を直接計測することで、地形モデルデータを作成する。
ステップS42において、一例として、写真撮影した航空写真や地形モデルデータを参照して、1つ又は複数の観測対象2を選定し座標上で位置を特定する。ステップS43において、観測対象2を撮像するため、測量装置20を設置する1つ又は複数の撮像位置3を選定する。ステップS44において、撮像位置3が選定されると、測量装置20は、撮像位置3にまで運搬され、撮像位置3に設置され、測量装置20は器械設置される。
ステップS45において、観測制御装置60は、測量装置20を用いて、観測対象2を撮像するとともに、レチクルが示す観測点を観測(測距及び測角)する。具体的に、ここでの観測では、観測対象2のレチクルが示す代表的な観測点の観測データ(測距データと測角データと観測位置情報(一例として観測座標データ))を算出する。そして、観測制御装置60は、測量装置20が算出したこれらのデータを記憶装置14等に保存する。これにより、観測対象2を座標上で特定することができ、観測対象2に飛翔体11を誘導できるようになる。
ステップS46において、観測制御装置60の制御部61は、観測用ターゲット111bによって特徴領域102´を観測対象2に設けるため、飛翔体11に観測用ターゲット111bを搭載し、選定された観測対象2に向けて飛翔体11を誘導し、観測用ターゲット111bを目標位置に設置する。観測用ターゲット111bは、飛翔体11から落下させて目標位置に設置してもよいし、飛翔体11を地面に近接させて地面に置くように設置してもよい。飛翔体11は、地形モデルデータを用いて作業者が指定した観測位置情報の示す位置に誘導される。一例として、飛翔体11は、観測位置情報の示す位置まで遠隔操作装置114により誘導される。一例として、飛翔体11は、GNSS受信部を備えることで自身の位置を特定できる場合、観測位置情報をプログラムに設定することで、自動的に(遠隔操作装置114で飛翔体11を操作することなく)観測位置情報の示す位置まで飛行される。そして、観測対象2において、観測用ターゲット111bが設置される。
一例として、選定された観測対象2が複数ある場合、飛翔体11は、1つの観測対象2に観測用ターゲット111bを設置し、ターゲット102を設けると、続けて、次の観測対象2に誘導され、当該観測対象2に観測用ターゲット111bを設置し、ターゲット102を設ける。
ステップS47において、制御部61は、記憶装置14からステップS45で観測した観測位置情報の示す位置に測量装置20を視準させ、図20に示すように、測量装置20が現在視準している観測対象2を撮像することで得られた観測画像101を表示部62に表示する。制御部61は、観測画像101の中から画像認識により観測用ターゲット111bによって構成されたターゲット102の輪郭を検出することによって特徴領域102´を抽出する。一例として、制御部61は、特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。なお、代表位置は、重心位置に限定されるものではなく、例えば、観測用ターゲット111bにおける特徴的な形状の部分が現れた特徴領域102´の当該部分としてもよい。そして、図21に示すように、これを基準観測画像101aとし、撮像部27で撮像した基準観測画像101aの画像データとともに当該代表位置の基準観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、特徴領域102´の重心が画角の中心に位置する基準観測画像101aとなる。そして、基準観測画像101aにおける特徴領域102´が基準画像となる。基準観測画像101aでは、基準画像(特徴領域102´)が画角の中央に位置することで、変位が発生しターゲット102の位置が何れかの方向に変位して特徴領域102´も同方向に変位したとしても、画角の中の何れかの位置に特徴領域102´が含まれるようにすることができる。そして、制御部61は、撮像部27が撮像した基準観測画像101aの画像データとともに、基準観測データを記憶装置14等に保存する。
一例として、制御部61は、基準観測画像101aの画像データ及び基準観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存するようにしてもよい。
ステップS48において、制御部61は、観測対象2のモニタリングを開始する。具体的に、制御部61は、最初の第1時刻に観測対象2を撮像できるように、i=1を設定する。第1時刻になると、ステップS49において、制御部61は、基準位置情報の示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第1比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。
ステップS50において、制御部61は、「i」に「1」を加算し、ステップS49からの処理を繰り返す。一例として、制御部61は、第i時刻になると、基準位置情報が示す位置を視準して観測(測距及び測角)し、観測対象2を撮像し、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。すなわち、第3モニタリング方法では、観測用ターゲット111bにより形成されたターゲット102をモニタリングし、基準観測画像101aの特徴領域102´の変位を、基準観測画像101aの特徴領域102´と、第i比較観測画像101bの特徴領域102´と同じ比較領域102´´を比較することで検出する。
一例として、制御部61は、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存する。
1つの測量装置20が複数の観測対象2をモニタリングする場合、測量装置20は、第i時刻と第i+1時刻との間に、撮像部27を鉛直軸回り及び水平軸回り回転し、次の観測対象2の基準位置情報が示す位置を視準し撮像することになる。
次に、特徴領域102´の変位検出について説明する。
ステップS51において、制御部61は、モニタリングにおいて撮像した第i比較観測画像101bから、ステップS47で設定した基準画像(特徴領域102´)と同じ位置の画像を画像認識により抽出し、この画像を基準画像(特徴領域102´)と比較するための比較画像102´´とする(図22参照)。そして、制御部61は、順次、観測対象2が撮像され比較観測画像101bが生成されると、基準画像(特徴領域102´)と比較画像102´´とを比較する。基準画像(特徴領域102´)が変位していれば、比較画像102´´は、基準画像(特徴領域102´)と異なる画像となる。
ステップS52において、制御部61は、基準画像(特徴領域102´)に対する比較画像102´´の差が閾値以上であるかどうかを判断する。閾値は、基準画像(特徴領域102´)と比較画像102´´との変位が例えば風雨によって地表の土砂がわずかに変位してしまったような小さな変位までをも変位として検出してしまうことを抑制する値に設定する。そして、制御部61は、基準画像(特徴領域102´)に対する比較画像102´´の差が閾値以上であり、基準画像と比較画像との間で変位を検出したとき、次の処理に進み、変位を検出しなかったとき、処理を終了する。
また、図22に示すように、制御部61は、比較観測画像101bにおける変位後の特徴領域102´を画像認識によりターゲット102の輪郭を検出することによって抽出する。一例として、制御部61は、比較観測画像101bにおける特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、当該代表位置の変位後観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、基準画像を構成する特徴領域102´の位置と比較観測画像101bにおける特徴領域102´とを比較することができる。一例として、基準観測画像101a及び比較観測画像101bの中の何れか1つの観測画像に、基準観測画像101aから抽出した特徴領域102´と比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´とを表示することができる。また、基準位置情報と変位後位置情報の差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。一例として、基準位置座標データと変位後位置座標データの差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。
この後、ステップS53において、上述したように、制御部61は、中心に位置する観測対象2の観測対象周辺2aの状態も把握するため、観測対象2より更に広範囲を撮像するように測量装置20を介して現在の観測対象2の周囲の観測対象周辺2aを撮像する。
変位を検出したときには、ステップS54において、制御部61は、基準画像の再設定を行う。すなわち、制御部61は、比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、撮像部27で観測画像101を撮像し、撮像により生成された画像データとともに当該代表位置の観測データを記憶装置14等に保存する。これが、変位検出後における新たな基準観測画像101aとなり、制御部61は、ステップS48からのモニタリングの処理を繰り返す。すなわち、変位後の状態を基準観測画像101aしたモニタリングが行われる。これにより、さらに変位が発生し、最初の比較観測画像101bから特徴領域102´が外れてしまう、すなわち写らなくなってしまうことを防ぐことができる。
一例として、変位を検出したときは、一例として以降のモニタリングを5分間隔から3分間隔や1分間隔に変更する。一例として、変位を所定期間以上検出しなかったときは、5分間隔で観測していたところを、これより長くし、一例として10分間隔としてもよい。
ステップS55において、制御部61は、変位があったことを作業者に知らせる文面の電子メールを生成し、電子メールプログラム64bのアドレス帳に登録されている電子メールアドレスに対して電子メールを送信する。作業者等に知らせる手段としては、その他に、電光掲示板などで報知するようにしてもよいし、電子掲示板、SNS等の投稿を共有するサービスを用いて作業者等に知らせるようにしてもよい。
〔第4モニタリング方法〕
第4モニタリング方法では、測量装置20が撮像する観測画像101に対して、地形モデルデータである正方メッシュデータ(図24参照)、Tinデータ(図25参照)を重畳表示する。
第4モニタリング方法の処理手順について図23を参照して説明する。ステップS61において、地形モデルデータを生成する。ここでの地形モデルデータは、第1モニタリング方法〜第3モニタリング方法と同様に、飛翔体11のカメラにより広域観測対象12を撮像して写真測量用の画像データを生成し、標定することで、地形モデルデータを作成する。また、3次元計測装置15で広域観測対象12を直接計測することで、地形モデルデータを作成する。勿論、これ以外の方法で作成された地形モデルデータであってもよい。
ステップS62において、一例として、写真撮影した航空写真や地形モデルデータを参照して、1つ又は複数の観測対象2を選定し座標上で位置を特定する。ステップS63において、観測対象2を撮像するため、測量装置20を設置する1つ又は複数の撮像位置3を選定する。ステップS64において、撮像位置3が選定されると、測量装置20は、撮像位置3にまで運搬され、撮像位置3に設置され、測量装置20は器械設置される。
ステップS65において、観測制御装置60は、測量装置20を用いて、観測対象2を撮像するとともに、レチクルが示す観測点を観測(測距及び測角)する。具体的に、ここでの観測では、観測対象2のレチクルが示す代表的な観測点の観測データ(測距データと測角データと観測位置情報(一例として観測座標データ))を算出する。そして、観測制御装置60は、測量装置20が算出したこれらのデータを記憶装置14等に保存する。
ステップS66において、観測制御装置60の制御部61は、記憶部64等に地形モデルデータが読み込まれる。なお、測量装置20の一時記憶部54や記憶部55に読み込まれてもよい。ここで読み込まれる地形モデルデータは、ステップS61で作成された地形モデルデータである。また、他で作成された地形モデルデータであってもよい。ステップS67において、制御部61は、記憶装置14からステップS25で観測した観測位置情報の示す位置に測量装置20を視準させ、図24及び図25に示すように、測量装置20が現在視準している観測対象2を撮像することで得られた観測画像101を表示部62に表示する。そして、制御部61は、観測制御装置60の表示部62に、測量装置20の撮像部27が撮像している観測画像101に対して正方メッシュデータ142又はTinデータ141を重畳表示する。
図24は、測量装置20の撮像部27が撮像している観測画像101に対して正方メッシュデータ142を重畳している状態を示している。図25は、測量装置20の撮像部27が撮像している観測画像101に対してTinデータ141を重畳している状態を示している。図24及び図25において、岩が観測対象2においてターゲット102であり、観測画像101において特徴領域102´である。また、正方メッシュデータ142では、矩形の各格子の頂点が三次元の座標データを備えており、Tinデータ141では、三角形の各格子の頂点が三次元の座標データを備えている。
ステップS68において、マウス等の操作部63を用いて特徴領域102´を指定する。制御部61は、観測画像101の中から画像認識によりターゲット102の輪郭を検出することによって特徴領域102´を抽出する。ステップS69において、一例として、制御部61は、特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、図26及び図27に示すように、これを基準観測画像101aとし、撮像部27で撮像した基準観測画像101aの画像データとともに当該代表位置の基準観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、特徴領域102´の重心が画角の中心に位置する基準観測画像101aとなる。そして、基準観測画像101aにおける特徴領域102´を囲む1つ又は複数の格子領域143が基準画像となる。基準観測画像101aでは、特徴領域102´が画角の中央に位置することで、変位が発生し特徴領域102´が何れかの方向に変位したとしても、画角の中の何れかの位置に特徴領域102´が含まれるようにすることができる。
なお、図26は、正方メッシュデータ142の例において、特徴領域102´が画角の中心位置に位置している状態を示す。図27は、Tinデータ141の例において、特徴領域102´が画角の中心位置に位置している状態を示す。
なお、測量装置20が代表位置を観測することができないときには、地形モデルデータの座標データが用いられる。
一例として、制御部61は、基準観測画像101aの画像データ及び基準観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存する。
ステップS70において、制御部61は、観測対象2のモニタリングを開始する。具体的に、制御部61は、最初の第1時刻に観測対象2を撮像できるように、i=1を設定し、ステップS71において、第1時刻になると、基準位置情報の示す位置を視準して観測し、観測対象2を撮像し、第1比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存する。ステップS72において、制御部61は、「i」に「1」を加算し、ステップS71からの処理を繰り返す。すなわち、第4モニタリング方法では、特徴領域102´をモニタリングし、基準観測画像101aの特徴領域102´の変位を、格子領域143との比較において検出する。
一例として、制御部61は、第i比較観測画像の画像データ及び比較観測データを記憶装置14等に保存するときに、上述した正確な時刻情報や観測条件の各種データや気象情報のデータを外部装置から取得し、記憶装置14等に保存する。
1つの測量装置20が複数の観測対象2をモニタリングする場合、測量装置20は、第i時刻と第i+1時刻との間に、撮像部27を鉛直軸回り及び水平軸回り回転し、次の観測対象2の基準位置情報が示す位置を視準し撮像することになる。
次に、特徴領域102´の変位検出について説明する。制御部61は、モニタリングにおいて撮像した第i比較観測画像から、ステップS69で設定した格子領域143と同じ位置の格子領域143の画像を画像認識により抽出し、この画像を基準画像と比較するための比較画像とする。そして、ステップS73において、制御部61は、順次、観測対象2が撮像され比較観測画像101bが生成されると、基準画像と比較画像とを比較する。ステップS74において、制御部61は、基準画像に対する比較画像の差が閾値以上であるかどうかを判断する。そして、制御部61は、基準画像に対する比較画像の差が閾値以上であり、基準画像と比較画像との間で変位を検出したとき、次の処理に進み、変位を検出しなかったとき、処理を終了する。
なお、図28は、正方メッシュデータ142の例において、特徴領域102´が画角の中心位置から変位した状態を示す。図29は、Tinデータ141の例において、特徴領域102´が画角の中心位置から変位した状態を示す。
正方メッシュデータ142やTinデータ141を表示部62に重畳表示しているときには、第i比較観測画像において、特徴領域102´が変位しているかどうかを、基準画像となる格子領域143に対して特徴領域102´がどの程度ずれているか、基準とした格子を構成する辺又は格子点からの距離等を目安に変位しているかを確認することもできる。
また、制御部61は、比較観測画像101bにおける特徴領域102´を抽出する。制御部61は、特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、当該代表位置の変位後観測データを記憶装置14等に保存する。これにより、基準画像を構成する特徴領域102´の位置と比較観測画像101bにおける特徴領域102´とを比較することができる。一例として、基準観測画像101a及び比較観測画像101bの中の何れか1つの観測画像に、基準観測画像101aから抽出した特徴領域102´と比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´とを表示することができる。また、基準位置情報と変位後位置情報の差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを把握することができる。一例として、基準位置座標データと変位後位置座標データの差分を求めることにより、特徴領域102´が何れの方向にどれだけ変位したかを求めることができる。
この後、ステップS75において、上述したように、制御部61は、中心に位置する観測対象2の観測対象周辺2aの状態も把握するため、観測対象2より更に広範囲を撮像するように測量装置20を介して現在の観測対象2の周囲の観測対象周辺2aを撮像する。
ステップS76において、制御部61は、基準画像の再設定を行う(ステップS34参照)。すなわち、制御部61は、比較観測画像101bから抽出した特徴領域102´の重心位置を算出し、この重心位置を代表位置とし、測量装置20を介して当該代表位置が画角の中心位置となるように視準し直し当該代表位置を観測(測距及び測角)する。そして、撮像部27で撮像した観測画像101の画像データとともに当該代表位置の観測データを記憶装置14等に保存する。これが、変位検出後における新たな基準観測画像101aとなり、制御部61は、ステップS70からのモニタリングの処理を繰り返す。すなわち、変位後の状態を基準観測画像101aしたモニタリングが行われる。これにより、さらに変位が発生し、最初の比較観測画像101bから特徴領域102´が外れてしまう、すなわち写らなくなってしまうことを防ぐことができる。
一例として、変位を検出したときは、一例として以降のモニタリングを5分間隔から3分間隔や1分間隔に変更する。一例として、変位を所定期間以上検出しなかったときは、5分間隔で観測していたところを、これより長くし、一例として10分間隔としてもよい。
ステップS77において、制御部61は、変位があったことを作業者に知らせる文面の電子メールを生成し、電子メールプログラム64bのアドレス帳に登録されている電子メールアドレスに対して電子メールを送信するようにしてもよい。作業者等に知らせる手段としては、その他に、電光掲示板などで報知するようにしてもよいし、電子掲示板、SNS等の投稿を共有するサービスを用いて作業者等に知らせるようにしてもよい。
〔特徴領域の変位表示〕
上述した第1モニタリング方法から第4モニタリング方法によれば、観測制御装置60の制御部61は、何れも、基準観測画像101aの基準観測データや比較観測画像101bの比較観測データや特徴領域の変位後観測データを記憶装置14等に保存している。したがって、制御部61は、基準観測画像101aの示す特徴領域の位置と比較観測画像101bの特徴領域の位置を把握している。図30に示すように、そこで、制御部61は、一例として、特徴領域131の変位を検出したとき、変位前である基準観測画像101aの特徴領域131´を、変位後の比較観測画像101bに重畳して表示する。なお、変位後である比較観測画像101bの特徴領域131を、変位前の基準観測画像101aに重畳して表示してもよい。これにより、1つの観測画像に、変位前の特徴領域131´と変位後の特徴領域131が表示されることになる。すなわち、第1時刻と前記第2時刻の間でターゲット102が変位した場合、第1時刻を示すオブジェクトと第1時刻におけるターゲット102の位置を示すオブジェクトとを関連付け、第2時刻を示すオブジェクトと第2時刻におけるターゲット102の位置を示すオブジェクトとを関連付けて表示部62に表示する。これにより、観察者は、2つの時刻の間に、特徴領域131が何れの方向にどれだけ変位したのかを視覚的に把握することができる。なお、一例として、各特徴領域131,131´の近傍には撮像時刻を示す時刻オブジェクト132を表示するようにしてもよい。また、変位方向を示す矢印で構成した変位方向オブジェクト133を表示するようにしてもよい。また、この変位方向オブジェクト133は、矢印の大きさを異ならせることで、変位速度を表現することもできる。一例として、変位速度が速くなるほど矢印を大きく表示する。また、観測条件や気象情報を表示するオブジェクトを重畳して表示するようにしてもよい。なお、特徴領域131が何れの方向にどれだけ変位したのかを視覚的に把握することができれば、特徴領域131ではなく、他のオブジェクトを表示するようにしてもよい。
図31に示すように、モニタリングのときではなく、事後的に、例えば変位の検証の際に、特徴領域136の変位を確認できるようにしてもよい。一例として、観測制御装置60では、特定の観測対象2を検索し、当該観測対象2における複数の時刻の画像を抽出する。検索結果画面では、基準画像が表示されることによって、視覚的に検索結果を確認することができる。そして、複数の時刻に撮像した基準観測画像101aや比較観測画像101bにおける特徴領域131の観測データに基づいて、1つの観測画像101上に、各時刻における特徴領域136を表示して、変位の履歴を視認できるようにしてもよい。図31の例では、3つの時刻における特徴領域136の変位履歴を表示している。これにより、最初の時刻と最終の時刻との間において、特徴領域136が何れの方向にどれだけ変位したのかを視覚的に把握することができる。なお、一例として、各特徴領域136の近傍には撮像時刻を示す時刻オブジェクト132を表示するようにしてもよい。また、変位方向を示す矢印で構成した変位方向オブジェクト133を表示するようにしてもよい。また、この変位方向オブジェクト133は、矢印の大きさを異ならせることで、変位速度を表現することもできる。一例として、変位速度が速くなるほど矢印を大きく表示する。また、観測条件や気象情報を表示するオブジェクトを重畳して表示するようにしてもよい。なお、特徴領域131が何れの方向にどれだけ変位したのかを視覚的に把握することができれば、特徴領域131ではなく、他のオブジェクトを表示するようにしてもよい。
なお、1つの観測画像上に表示される特徴領域136の数は、3つに限定されるものではなく、4つ以上であってもよい。
〔GNSS受信装置での変位検出〕
図1に示すように、観測対象2以外の場所には、GNSS受信装置16が設置されている。図32に示すように、ステップS81において、観測制御装置60の制御部61は、通信部65でGNSS受信装置16からネットワーク17を介して当該GNSS受信装置16の位置情報を受信し、記憶装置14等に保存する。ステップS82において、制御部61は、各GNSS受信装置16の位置情報について、先の時刻の位置情報に対して現在の時刻の位置情報が変化しているかを判断する。ステップS83において、制御部61は、位置情報の変化を検出したとき、測量装置20によるモニタリングの撮像間隔を短くする処理を行う。また、位置情報の変化を検出しなかったとき、制御部61は、例えば撮像時間間隔を変えることなく通常のモニタリングを続ける。
一例として、GNSS受信装置16の位置情報の変化を検出するまでは、5分間隔(第1間隔)で観測対象2を撮像していたものを、位置情報の変化を検出したとき、観測対象2を撮像する間隔を3分や1分間隔(第2間隔)に変更する処理を行う。このように、観測対象2とは別の位置に設置されているGNSS受信装置16の位置情報が変化したときは、観測対象2で変位が発生する予兆と捉えることができる。そこで、制御部61は、GNSS受信装置16の位置情報の変化を検出したとき、モニタリングにおける観測対象2の撮像間隔を第1間隔から第2間隔に短くして、よりきめ細かに特徴領域の変化を検出できるようにしている。
一例として、複数の観測対象2を観測している場合において、特定の観測対象2で変位を検出したとき、測量装置20は、変位を検出した観測対象2を他の変位を観測しなかった観測対象2より優先して観測する。一例として、変位を検出しなかった観測対象2より変位を検出した観測対象2を短い周期で観測する。一例として、複数の観測対象2で変位が検出された場合、測量装置20は、検出された変位量が大きい観測対象2から順に撮像間隔を短くして観測する。一例として、観測対象となっている広域観測対象12に設置されているGNSS受信装置16の位置が変わった場合、変位が検出されたGNSS受信装置16に近い観測対象2から順に撮像間隔を短くして観測する。一例として、複数の観測対象2において変位量が異なっている場合において、変位量の大きい観測対象2ほど撮像間隔を短くする。
以上のような観測制御装置60によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)基準観測画像101aの特徴領域と、基準観測画像の特徴領域に対応した比較観測画像101bの比較画像とを比較し、基準観測画像101aの特徴領域に対する比較画像の変位を検出することができる。これにより、特徴領域の変位を迅速かつ正確に検出することができる。
(2)第1モニタリング方法によれば、観測画像の中から特徴的部分を閉領域で指定することで、実際に観測対象2に赴くことなく特徴領域を選定することができる。
(3)第2モニタリング方法によれば、飛翔体11によって観測用塗料111aを観測対象2に塗布することで、実際に観測対象に赴くことなく特徴領域を設けることができる。
(4)第3モニタリング方法によれば、飛翔体11によって観測用ターゲット111bを観測対象2に設置することで、実際に観測対象2に赴くことなく特徴領域を設けることができる。
(5)第4モニタリング方法によれば、観測対象の表示に対して地形モデルデータが表示されることで、地形モデルデータに対する変位を視覚的に確認することができる。また、代表位置を測量装置20で観測できないときは、地形モデルデータの座標データで代表位置を特定することができる。
(6)飛行している飛翔体11のカメラにより広域観測対象12を撮像して写真測量用の画像データを生成し、標定することで、地形モデルデータを作成することができる。地形モデルデータをグローバル座標、ローカル座標等の座標系に合わせることで、観測対象2や撮像位置3を座標系で特定することができる。そして、飛翔体11を観測対象2や撮像位置3の座標データに従って誘導することができる。そして、この座標データで特定される観測対象2まで飛翔体11を誘導することで観測用塗料111aや観測用ターゲット111bによって特徴領域102´を設けることができる。
(7)観測対象2は、広域観測対象12の中において複数箇所に設定することができる。したがって、広域観測対象12の中で複数の箇所の変位を観測することができる。
(8)複数の時刻において、観測対象2を撮像することができる。各時刻における比較観測画像101bについて基準観測画像101aと比較することができる。
(9)撮像装置として測量装置20を使用することで、撮像位置の正確な観測を行うことができる。また、3次元計測装置15等を用いる時よりも迅速に変位を見つけだすことができる。
(10)1つの観測画像に複数の時刻における特徴領域を重畳して表示することができ、特徴領域の変位の経過を視覚的に容易に把握することができる。あわせて、時刻オブジェクト132や変位方向オブジェクト133を表示することで、特徴領域の変位を一層見やすくすることができる。
(11)GNSS受信装置16を使用して広域観測対象12の変位を観測することができる。そして、GNSS受信装置16で検出した変位を、観測対象2で発生する変位の予兆と捉えることで、モニタリングの撮像間隔を短くすることができ、これにより、変位が発生した際に、変位をしている最中の様子をきめ細かく観測することができる。
(12)変位を検出したことを出力して作業者に知らせることができる。
(13)外部装置から時刻情報を取得することで、撮像時刻をより正確なものとすることができる。
(14)外部装置から観測条件を取得することで、撮像時の観測条件を把握することができる。そして、変位が発生したときには、変位と観測条件との関係を把握することができる。
(15)外部装置から気象情報を取得することで、撮像時の気象情報を把握することができる。そして、変位が発生したときには、変位の発生原因と天候との関係性を探ることもできる。
なお、上記観測システム1は、以下のように変更してもよい。
・観測制御装置60は、気象情報を観測対象2を撮像するたびに取得するようにしなくてもよい。例えば、1日に1回、1日に2回など1日の内で定時に気象情報を取得するようにしてもよい。また、観測制御装置60は、他から気象情報を取得できるのであれば、気象サーバ18と接続されていなくてもよい。
・観測制御装置60は、観測条件のデータを観測対象2を撮像するたびに取得するようにしなくてもよい。例えば、他から取得可能であれば、観測小屋4に温度計測装置6や湿度計測装置7や気圧計測装置8を設置しなくてもよい。
・時刻は、GNSSやNTPサーバから取得せず、測量装置20や観測制御装置60の内蔵時計から取得するようにしてもよい。
・変位を検出したとき関係者に出力、すなわち報知する方法は、電子メールに限定されるものではない。例えば、緊急速報等を、テレビジョン放送やラジオ放送で放送してもよい。また、大きな変位を検出するものでないとき等には、関係者に警告をする手段を割愛してもよい。
・測量装置20を多数台設置し、多くの観測対象2を観測するときには、GNSSを利用して変位を検出することを割愛してもよい。
・時刻オブジェクト132や変位方向オブジェクト133は、表示画面が小さいときなどは、見にくくなることを抑制するため、表示を割愛してもよい。
・基準観測画像101aと比較する比較観測画像101bは、少なくとも1つあればよい。
・観測対象2は、狭い場所を観測するのであれば1か所であってもよい。
・観測制御装置60は、上述した第1モニタリング方法〜第4モニタリング方法の機能を全て備えていなくてもよい。例えば、地形モデルデータを重ねて表示する機能を割愛してもよい。また、観測用ターゲット111bや観測用塗料111aを用いて観測する機能を割愛してもよい。さらに、基準観測画像101aにおいて閉領域を指定する機能を割愛してもよい。
・第4モニタリング方法で観測画像に重畳される正方メッシュデータやTinデータは、第1モニタリング方法〜第3モニタリング方法の観測画像に重畳させるようにしてもよい。これにより、目視によっても特徴領域の変位を確認しやすくなる。
・モニタリングでプログラムされた時刻以外のタイミングで観測対象2を撮像するようにしてもよい。この場合にも、測量装置20の観測動作は、観測制御装置60によって遠隔操作される。また、観測対象2の観測は、実際に、作業者が撮像位置3に赴いて行ってもよい。
・観測用塗料111aや観測用ターゲット111bは、飛翔体11を用いて設けるのではなく、地上を走行する走行ロボットによって設置するようにしてもよい。この場合にも、飛翔体11を用いたときと同様な効果を得ることができる。勿論、実際に作業者が赴いて設置してもよい。
・撮像装置としては、一眼レフカメラ、コンパクトカメラ等のディジタルカメラであってもよい。また、撮像装置としては、測量装置20に代えて、又は、測量装置20の撮像部が赤外線カメラやサーモカメラであってもよい。赤外線カメラの場合、霧や雨でも撮影ができる。サーモカメラの場合、浸透・土砂への蓄水具合から崩落の危険の高い状況を予測することができる。また、撮像装置が撮像する画像は、カラー画像であってもよいし、白黒画像であってもよい。
・変位を検出するにあたっては、基準観測画像の特徴領域が比較観測画像において変位しているか検出できればよいので、比較観測画像において特徴領域の比較観測データを取得してなくてもよいし、比較観測画像において特徴領域を画像認識により抽出しなくてもよい。
・モニタリングにおいて、第1時刻において撮像した観測画像を基準観測画像とし、第1時刻に次ぐ第2時刻において撮像した観測画像を比較観測画像としてもよい。すなわち、モニタリング開始前に撮像した観測画像を基準観測画像としなくてもよい。モニタリングにおいて、1つ前に撮像した観測画像を基準観測画像とすることで、常に1つ前に撮像した観測画像との比較をすることができる。
・測量装置20は、観測制御装置60によって電源制御が行われるようにしてもよい。一例として、モニタリングにおいて、撮像時刻以外は、最低限の回路だけを動作状態としたスタンバイモード等省電力モードとすることで、消費電力を少なくすることができる。また、夜間は、電源を省電力モードとしてもよい。このように、電源管理することは、電源装置10に二次電池等を使用している場合に有効である。
・特徴領域の観測は、特徴領域を視準して観測しなくてもよい。例えば、撮像範囲のレチクルの中心が示す観測点の角度を算出し、撮像した観測画像の画素のグローバル座標等の座標値を、観測中心の観測点Oからの角度を変換することにより算出する。これにより、画像認識により抽出した特徴領域を視準し直すことなく、画像認識により抽出した特徴領域の基準位置情報や変位後位置情報を算出することができる。
・観測対象としては、ダムやトンネルの壁面等の構造物の変位を検出するものであってもよいし、地すべりだけでなく、地盤沈下などの地形変位であってもよい。