JPWO2017204365A1 - ラメラ構造改善剤、水分保持改善剤 - Google Patents

ラメラ構造改善剤、水分保持改善剤 Download PDF

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Abstract

N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤、肌における水分保持改善剤。

Description

本発明は、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する、ラメラ構造改善剤、水分保持改善剤に関する。
生体表面にある細胞間脂質は、細胞どうしを繋ぎとめることで、脂質バリアを構築している。例えば、皮膚表面の角層における角質細胞間脂質は、バリア能により、外部からの異物の侵入を防止すると共に、皮膚内部に水分を維持する役割を担っている。
一方、乾燥や老化等により細胞間脂質の微細構造には乱れが生じ、細胞間脂質が本来備えるバリア能が衰退・喪失することがある。バリア能の衰退・喪失は、細菌の感染や皮膚の崩壊を招き、ひいては肌の美しさが失われることとなる。
かかる事情から、細胞間脂質の微細構造を改善・改質することが可能な、化粧水、乳液、クリーム等の化粧料等の開発が望まれている(非特許文献1参照)。
油化学,44,10,751−766(1995)
本発明は、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造を改善する及び/又は充填構造を改質することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤。
[2]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する細胞間脂質の微細構造における充填構造改質剤。
[3]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する細胞間脂質の微細構造における直方晶比率維持・改善剤。
[4]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する肌における水分保持改善剤。
[5]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する肌におけるバリア能改善剤。
[6]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有する肌における抗老化剤。
[7]N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、肌における抗シワ剤。
[8]細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤の製造のためのN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくともの使用。
[9]肌における水分保持改善剤の製造のためのN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくともの使用。
本発明によれば、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分として用いることによって、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造を改善する及び/又は充填構造を改質することができる。
(a)は、ある対象の示差走査熱量測定の結果を模式的に示す図であり、(b)は、(a)に示す示差走査熱量測定のピークを非線形最小二乗法によるカーブフィッティングにより分割した3つの小ピーク(A)〜(C)を模式的に示す図である。図中、「×」は小ピーク(A)〜(C)のピークトップを示し、それぞれのピークトップの位置における温度をS1〜S3で示す。 (a)は、ある対象の小角X線散乱測定の結果を示す図であり、(b)は、ある対象の広角X線散乱測定の結果を示図である。(a)中、「×」はピーク(X)〜(Z)のピーク位置(それぞれ、0.27nm−1、0.23nm−1、0.22nm−1)を示し、それぞれの位置における温度T1〜T3は相転移温度を示す。(b)中、「×」は、25℃における、ピーク(V)、(W)のピーク位置(それぞれ、2.4nm−1、2.7nm−1)を示す。 実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法を示す概略図である。 第一実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法を示す概略図である。 第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)、及び細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)の示差走査熱量測定の結果を、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つの小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して示す図である。 第一実施形態の方法の好適な形態において、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)のピーク及び/又は複数の小ピークと、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)のピーク及び/又は複数の小ピークとを、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つの小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して比較した結果を示す図である。 第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)について、微細構造の詳細を既知とするための広角X線散乱測定の結果を示す図である。なお、細胞間脂質サンプルについては広角X線散乱測定を行っていない。 第一実施形態の方法のより好適な形態において、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)のピーク及び/又は複数の小ピークと、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)のピーク及び/又は複数の小ピークとを、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つ小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して比較した結果を示す図である。 第一実施形態の方法のより好適な形態により得られる結果の概略を示す図である。 第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)について、微細構造の詳細を確認するための広角X線散乱測定の結果を示す図である。 第二実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法を示す概略図である。 第二実施形態の方法の一例である実施例の方法における、薬剤添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)、及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)の示差走査熱量測定の結果を、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つ小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して示す図である。 第二実施形態の方法の好適な形態において、薬剤添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)のピーク及び/又は複数の小ピークと、薬剤未添加の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)のピーク及び/又は複数の小ピークとを、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つの小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して比較した結果を示す図である。 バリア能を向上させるのに適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミン)添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)について、微細構造の詳細を確認するための広角X線散乱測定の結果を示す図である。 バリア能を向上させるのに適した薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン)添加前後の角層シートについての広角X線散乱測定の結果を直方晶と六方晶との比率について示す図である。 第二実施形態の方法の一例である実施例の方法における、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミン以外のアミノ酸添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)について、微細構造の詳細を確認するための広角X線散乱測定の結果を示す図である。 水分保持を向上させるのに適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対する水分保持効果試験の結果を示す図である。 シワ改善効果試験の目視評価における被験者のグローバルフォトダメージスコアの内訳をその人数割合(%)にて示す図である。 抗老化に適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対するシワ改善効果試験の目視評価の結果を示す図である。 抗老化に適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対するシワ改善効果試験のレプリカ評価の結果を示す図である。
以下、本発明の、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤、充填構造改質剤、直方晶比率維持・改善剤、及び、本発明の肌における水分保持改善剤、バリア能改善剤の実施形態について詳細に例示説明する。
なお、本願に記載の評価等については、特に断らない限り、特開2016−224030号公報又は特開2016−222645号公報記載の細胞間脂質の微細構造を評価する方法を用いることも可能である。また、本願において直方晶とは従前に斜方晶とも称されることもあったものである。
本発明における有効成分として挙げられているN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、N−アセチル−L−チロシン、N−アセチル−L−グルコサミンは、天然のL−ヒドロキシプロリン、L−チロシン、L−グルコサミンのアミノ基をアセチル基で修飾したものであり、有機化学合成されたものとしてよい。
N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種が投与される対象となる細胞間脂質及び肌としては、ヒト由来、非ヒト動物(例えば、ブタ、ウシ、トリ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ等)由来のものとしてよく、これらの試験管内で調製される細胞間脂質モデルとしてもよい。
また、細胞間脂質及び肌の生体における部位は、特に限定されることなく、皮膚、毛髪等としてよい。
以下、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種の有効成分の作用効果について詳述する。以下、これらN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種の有効成分のことを、「当該有効成分」と表現する場合がある。
本実施形態では、有効成分として、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンが特に好ましい。
有効成分としては、上述のN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種に、他の成分を含むものであってもよい。この場合、処方におけるアミノ酸の配合量は、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
また、有効成分としては、上述のアミノ酸の特定の組み合わせであってもよい。この場合、全アミノ酸における各アミノ酸の配合量は、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
例えば、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンを用いる場合、かかる組み合わせとしては、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの組み合わせを好適に用いてもよい。この場合、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンに対するセリンの配合割合は、0.1〜2が好ましく、0.15〜1.5が更に好ましく用いられる。
当該有効成分が細胞間脂質(例えば、ヒトの皮膚の細胞間脂質)に対して投与された場合、細胞間脂質に含まれる、脂肪酸、コレステロール、セラミド等の分子どうしのパッキングが良好になる、例えば、コレステロールがセラミドのスフィンゴイド部分に沿い、脂肪酸がセラミドの脂肪酸部分に沿って配向するようになり、ひいては、細胞間脂質において優れた結晶構造が得られるものと推測される。
より具体的には、後述の実施例にて示す通り、
当該有効成分の細胞間脂質への投与により、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造(短周期ラメラ構造、長周期ラメラ構造)が改善される、あるいは、ラメラ構造が増加する。
具体的には、小角・広角X線散乱(SWAXS)測定等により示されるように、細胞間脂質の微細構造のラメラ構造の絶対量(短周期ラメラ構造と長周期ラメラ構造との合計量)が増加する。
また、皮膚等に当該有効成分を投与することによって、細胞間脂質の微細構造における充填構造が改質される、あるいは、充填構造がより密になる。
詳細には、小角・広角X線散乱(SWAXS)測定等により示されるように、細胞間脂質の微細構造における直方晶比率(直方晶の直方晶と六方晶との合計に対する割合)が維持・改善される、あるいは、直方晶比率が保持・増加される。
更に、当該有効成分の肌への投与により、肌における水分保持性が改善される、あるいは、水分保持性が向上する。
具体的には、後述の実施例のバリア能評価試験により示されるように、肌におけるバリア能が改善される、あるいは、バリア能が向上する。
更に、皮膚等に当該有効成分を投与することによって、肌における抗老化(アンチエイジング)の効果が得られる。
近年、皮膚の最外層である角層における角層細胞間脂質の充填構造は加齢により緩む傾向があることが報告されている(IFSCC2014パリ大会・国内報告会講演要旨集参照)。具体的には、20代から50代までの健常な日本人女性を被験者として、頬の角層についてラマンスペクトル測定により分析したところ、50代の被験者の角層の充填構造のパッキングの指標は、20代の被験者の当該指標と比較して十数パーセントも低いものであることがわかった。
ここで、前述の通り、当該有効成分の肌への投与により充填構造が改質される効果が得られることから、皮膚等に当該有効成分を投与することによって、肌における抗老化(アンチエイジング)の効果が得られることとなる。
上記のラメラ構造改善剤や上記の水分保持改善剤の投与方法としては、経皮投与が挙げられる。経皮投与は、例えば、当該有効成分を含むラメラ構造改善剤や水分保持改善剤を、手指にて直接取り出す、あるいは、スプーン、スパチュラ等の小道具を用いて、塗布、付着、堆積等することによって、行ってよい。
上記のラメラ構造改善剤や上記の水分保持改善剤の投与量としては、効果が得られる量であれば特に限定されず、被験者の状態、体重、性別、年齢等により適宜調整されてよいが、特に、皮膚への塗布により投与する場合には、好適には、0.1〜100mg/cmであり、更に好適には、1〜100mg/cmであり、より好適には、10〜100mg/cmである。
上記のラメラ構造改善剤や上記の水分保持改善剤の投与間隔としては、効果が得られる間隔であれば特に限定されないが、好適には、1〜48時間であり、更に好適には、1〜24時間であり、より好適には、1〜12時間である。
本発明の各剤は、当該有効成分以外に、必要に応じて添加剤が含まれていてよい。
かかる添加剤としては、細胞賦活剤、抗酸化剤、保湿剤、紫外線防止剤、溶剤(水、アルコール類等)、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、乳化剤、安定化剤、着色剤、光沢剤、矯味剤、矯臭剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、香料等が挙げられる。
本発明のラメラ構造改善剤や水分保持改善剤は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ゲル状、ペースト状等、種々の形態で調製してよい。
また、各剤は、油性系、油中水型乳化系、水中油型乳化系等、種々の剤形で調製してよい。
具体的には、各剤は、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧油、リップクリーム、ハンドクリーム、洗顔料、クレンジング料等のスキンケア化粧料;ファンデーション、メイクアップ下地、ほほ紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅、リップグロス等のメイクアップ化粧料;ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪料等の頭皮又は毛髪用の化粧料;マッサージ化粧料等、種々の化粧料とすることができる。
なお、本発明の各剤は、化粧品に含めてもよく、医薬部外品に含めてもよく、更に、医薬品、例えば、皮膚外用剤にも含めることも可能である。
本発明の各剤の製造方法としては、特に限定されることなく、当該技術分野において通常の方法としてよい。
上述の通り、本発明は、当該有効成分を、ラメラ構造改善剤や水分保持改善剤を製造するために使用することも、その範囲に含む。
上述の当該有効成分の作用効果は、本発明者らが開発した、特開2016−224030号公報又は特開2016−222645号公報記載の細胞間脂質の微細構造を評価する方法により、確認することもできる。この方法は、示差走査熱量測定(以下、「DSC測定」ともいう)を用いることを特徴としている。
細胞間脂質の微細構造を評価する方法としては、様々な手法があるが、その代表例として、X線回折(XRD)測定、より詳細には、小角・広角X線散乱(SWAXS)測定が挙げられる。小角X線散乱測定では、主として細胞間脂質のラメラ構造に関する情報が得られ、広角X線散乱測定では、主として細胞間脂質の充填構造に関する情報が得られるとされている。
図1(a)に、ある対象の示差走査熱量測定の結果を模式的に示し、図1(b)に、(a)に示す示差走査熱量測定のピークを非線形最小二乗法によるカーブフィッティングにより分割した3つの小ピーク(A)〜(C)を模式的に示す。図中、「×」は小ピーク(A)〜(C)のピークトップを示し、それぞれのピークトップの位置における温度をS1〜S3で示す。
図2(a)に、ある対象の小角X線散乱測定の結果を示し、図2(b)に、ある対象の広角X線散乱測定の結果を示す。
図2(a)中、「×」は、ピーク(X)〜(Z)のピーク位置(それぞれ、0.27nm−1、0.23nm−1、0.22nm−1)を示し、それぞれの位置における温度T1〜T3は相転移温度を示す。
図2(b)中、「×」は、25℃における、ピーク(V)、(W)のピーク位置(それぞれ、2.4nm−1、2、7nm−1)を示す。なお、2.4nm−1のピーク(V)は、六方晶及び直方晶に由来するもの、2.7nm−1のピーク(W)は、直方晶に由来するものである。また、ピーク(V)の散乱強度を(Sv)、ピーク(W)の散乱強度を(Sw)としたときに、直方晶の直方晶と六方晶との合計に対する割合(%)は、[Sw/{(Sv−2×Sw)/3+Sw}]×100で算出される。
これまでに、示差走査熱量測定のピークの面積と、小角X線散乱測定の回折ピークの強度の積分値とは、相関を有する、具体的には、前者が増加・減少するに従って後者も増加・減少する、ことが知られており、これに基づいて、示差走査熱量測定のピークの面積からラメラ構造の絶対量(直方晶と六方晶との合計の絶対量)を評価することができることが知られている(図1(a)、図2(a)参照)。
今回、発明者らは、対象の示差走査熱量測定のピークを非線形最小二乗法によるカーブフィッティングにより複数の小ピークに分割するという新規な手法を試みたところ、この分割された小ピーク(A)〜(C)のピーク位置におけるそれぞれの温度(図1(b)中、S1〜S3にて示す)と、対象の温度走査小角X線散乱測定による回折ピーク(X)〜(Z)のピーク位置における温度(図2(a)中、T1〜T3にて示す)とが、相関を有する、具体的には、上記温度S1〜S3が、それぞれT1〜T3と極めて近い値である、ことを見出した(図1(b)、図2(a)参照)。
この発見により、示差走査熱量測定のピークから、ラメラ構造の全体量等といった微細構造の概要に留まらず、直方晶と六方晶との比率等といった微細構造の詳細にまで至る情報が得られる可能性が示された。
その後、発明者らの研究により、特に、対象の温度走査小角X線散乱測定による回折ピーク(Y)は、脂肪酸、コレステロール、セラミド類から構成されるラメラ構造に由来するものであると推測されるようになった。
そこで、発明者らは、示差走査熱量測定のピークから、例えば、広角X線散乱測定から得られる情報である、細胞間脂質の微細構造(例えば、直方晶と六方晶との比率等)に関する情報が得られる可能性があることに想到した(図1(b)、図2(b)参照)。
以下、図面を参照して、細胞間脂質の微細構造を評価する方法の実施形態について詳細に例示説明する。
実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法(以下、「実施形態の方法」ともいう。)は、示差走査熱量測定(以下、「DSC測定」ともいう)によるものである。
実施形態の方法では、DSC測定の結果とXRD測定の結果との間の関係性についての前述の知見に基づいて、興味の対象について小角・広角X線散乱(SWAXS)測定を行うことを必須とすることなく、興味の対象について示差走査熱量測定を行うことによって、細胞間脂質の微細構造を評価することができ、ひいては、多数の興味の対象について簡便に細胞間脂質の微細構造を評価することを可能にする。
また、実施形態の方法によれば、細胞間脂質の微細構造の詳細を評価することが可能となる。
更に、実施形態の方法によれば、細胞間脂質の微細構造を薬剤の添加前後における変化を評価することが可能となる。これにより、細胞間脂質の充填構造に影響を与える化粧料・薬剤をスクリーニングすることができ、細胞間脂質の充填構造を緩める成分であるか、充填構造を密にする成分であるかを評価することができる。ひいては、角層のバリアをコントロールすること、化粧料に配合される有効成分の経皮吸収を高めることも可能となる。また、有効成分を投与した後のステップにおいて充填構造を密にする成分を使用することによって、角層における経皮水分蒸散量を低く保ち、皮膚の恒常性を維持することも可能となる。
上記した実施形態の方法については、特開2016−224030号公報又は特開2016−222645号公報に記載されたものを参考にすることも可能である。
実施形態の方法を適用することが可能な細胞間脂質としては、皮膚の角質、毛髪内部の細胞膜複合体(CMC(Cell Membrane Complex))部分、更に詳細には、キューティクルCMC(CU−CU)、キューティクル−コルテックス間CMC(CU−CO)、コルテックス−コルテックス間CMC(CO−CO)、これらのモデル系(後述)等が挙げられ、特に、脂質濃度が高い状態で示差走査熱量測定を行うことができ、ピーク検出が容易であるため、モデル系が好ましい。
そして、実施形態の方法では、複数の対象について示差走査熱量測定を行うことが好ましい。対象を複数とすることによって、示差走査熱量測定の結果を対象間で比較することができ、細胞間脂質の微細構造について詳細な知見を得ることが可能となる。
ここで、複数の対象とは2つ以上の対象をいい、対象は3つ以上であることが好ましい。
図3に、実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法の概略図を示す。
実施形態の方法は、まず、複数の対象(図3では、対象A及び対象B)について示差走査熱量測定を行う(DSC測定工程)。
実施形態の方法は、次いで、複数の対象の示差走査熱量測定のピークを、非線形最小二乗法により、それぞれ複数の小ピークに分割する(ピーク分割工程)。
ここで、複数の小ピークとは2つ以上の小ピークをいい、小ピークは3つ以上であることが好ましい。
この工程は、例えば、コンピュータ等の計算機器を用いて行ってよい。
非線形最小二乗法において、ピーク形状に対するカーブフィッティングに用いられる関数としては、例えば、ガウス関数、ローレンツ関数、これら2つを畳み込んだフォークト関数等が挙げられ、特に、ガウス関数、ローレンツ関数とすることが好ましい。
ピーク解析用ソフトとしては、例えば、Origin等が挙げられる。
該解析ソフトに搭載されるアルゴリズムとしては、例えば、Levenberg−Marquardt(LMA)等が挙げられる。
実施形態の方法は、続いて、複数の対象のうちの一方の示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークと、これらのピークに対応する、複数の対象のうちの他方の示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークとを比較する(比較工程)。
この工程は、ピーク及び/又は複数の小ピークどうしで、その面積やピーク位置等を比較してよい。
ここで、前述の複数の対象としては、特に限定されないが、比較検討され得るものが好ましく、例えば、細胞間脂質サンプル及び細胞間脂質コントロール、薬剤添加後の細胞間脂質被験体及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体、美肌から採取した角層及び荒れ肌から採取した角層、健常毛髪及びダメージ毛髪等が挙げられる。
これらの複数の対象では、他方を一方に薬剤を与えたものとしてもよい。
なお、薬剤とは、細胞間脂質の微細構造(ラメラ構造、充填構造)に変化を与え得るものをいい、通常、化粧料等に配合する成分等であれば特に限定されるものではなく、例えば、美白成分や抗肌荒れ成分、保湿成分等の有効成分等が挙げられる。
(第一実施形態)
図4に、第一実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法の概略図を示す。
第一実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法(以下、「第一実施形態の方法」ともいう。)は、前述の複数の対象を、細胞間脂質サンプル及び細胞間脂質コントロールとし、細胞間脂質サンプルにおける細胞間脂質の微細構造の詳細を評価するものである。
なお、細胞間脂質サンプルとは、微細構造の詳細を評価する対象となる細胞間脂質を指し、細胞間脂質コントロールとは、該細胞間脂質サンプルに対する比較対象となる細胞間脂質を指す。
ここで、第一実施形態の方法の一例である実施例の方法(後述)では、細胞間脂質の微細構造の詳細を、細胞間脂質の充填構造における直方晶と六方晶との比率としている。
また、この実施例の方法では、細胞間脂質サンプルを細胞間脂質モデルとして、細胞間脂質コントロールを該細胞間脂質モデルに薬剤(エタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)、これらの混合物)を添加したものとしている。
第一実施形態の方法では、まず、細胞間脂質サンプル及び細胞間脂質コントロールについて示差走査熱量測定を行う(DSC測定工程)。
次いで、細胞間脂質サンプル及び細胞間脂質コントロールの示差走査熱量測定のピークを、非線形最小二乗法により、それぞれ複数の小ピークに分割する(ピーク分割工程)。
ここに示す例では、細胞間脂質モデル及び細胞間脂質モデルに薬剤を添加したもののDSCピークを、第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの3つの小ピークに分割している(図4参照)。
図5に、第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)、及び細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)の示差走査熱量測定の結果を、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つの小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して示す。
第一実施形態の方法では、続いて、細胞間脂質サンプルの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークと、細胞間脂質コントロールの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークとを比較する(サンプル−コントロール比較工程)。
ここに示す例では、細胞間脂質モデルのDSCピーク、及びそれを分割して得られる第1ピーク、中間ピーク、第2ピークと、該細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもののDSCピーク、及びそれを分割して得られる第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのそれぞれとを比較している(図6、図8参照)。
特に、第一実施形態の方法の好適な形態では、前述のサンプル−コントロール比較工程において下記の通りとしてよい。
図6に、第一実施形態の方法の好適な形態において、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)のピーク及び/又は複数の小ピークと、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)のピーク及び/又は複数の小ピークとを、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つ小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して比較した結果を示す。
この好適な形態では、まず、細胞間脂質コントロールとして、細胞間脂質サンプルの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積と比較して小さい示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積を有するものを選択する。
ここに示す例では、細胞間脂質モデルに薬剤(エタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)、これらの混合物)を添加した細胞間脂質モデルの全てのDSCピークの面積が、細胞間脂質モデルのDSCピークの面積と比較して小さくなっている(図6参照)。これに基づいて、細胞間脂質コントロールとして、上記薬剤を添加した細胞間脂質モデルの全てを選択している。
そして、この好適な形態では、細胞間脂質サンプルの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積から、細胞間脂質コントロールの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積を、減じて得られるピーク及び/又は複数の小ピークの面積を、細胞間脂質サンプルにおける六方晶に由来するピーク及び/又は複数の小ピークの面積とみなす。
ここに示す例では、細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのそれぞれの面積から、細胞間脂質モデルに各薬剤を添加した細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのそれぞれの面積を減じて得られる小ピークの面積、すなわち、図6中に破線にて示した部分に係るピークの面積を、細胞間脂質モデルにおける六方晶に由来するピークの面積とみなしている。
上記の第一実施形態の方法の好適な形態は、細胞間脂質においてラメラ構造が失われるとき、直方晶に優先して六方晶が失われていく、すなわち、直方晶の絶対量は大きく変動せず、場合によっては維持されながら、六方晶の絶対量が減少する、という発明者らの知見に基づくものである。上記知見は、言い換えれば、ある対象が別の対象と比較してそのラメラ構造が少ないとき、当該ある対象では、直方晶よりもむしろ六方晶が少ない、すなわち、直方晶の絶対量は上記の別の対象と比較してほぼ同じでありながら、直方晶の絶対量は上記の別の対象と比較して少ない、ということも意味する。
ここで、第一実施形態の方法では、評価の精度を高める観点から、細胞間脂質コントロールについて、微細構造の詳細が既知である、この場合、充填構造における直方晶と六方晶との比率が既知であることが好ましい場合がある。
充填構造における直方晶と六方晶との比率は、前述の小角・広角X線散乱(SWAXS)測定等の公知の手法により、既知とすることができる。
図7に、第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)について、微細構造の詳細を既知とするための広角X線散乱測定の結果を示す。なお、細胞間脂質サンプルについては広角X線散乱測定を行っていない。
また、第一実施形態の方法のより好適な形態では、前述の第一実施形態の方法の好適な形態において下記の通りとしてよい。
図8に、第一実施形態の方法のより好適な形態において、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)のピーク及び/又は複数の小ピークと、細胞間脂質コントロール(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)のピーク及び/又は複数の小ピークとを、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つ小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して比較した結果を示す。
このより好適な形態では、まず、細胞間脂質コントロールとして、直方晶と六方晶との比率が80:20〜100:0であるものを選択する。
ここに示す例では、細胞間脂質コントロールとして、直方晶と六方晶との比率が90:10である、細胞間脂質モデルにグリセリンを添加した細胞間脂質モデルを選択している。
そして、このより好適な形態では、細胞間脂質コントロールの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積は、(実質的に)細胞間脂質サンプルにおける直方晶に由来するピーク及び/又は複数の小ピークの面積とみなすことができることに基づいて、細胞間脂質サンプルにおける直方晶と六方晶との比率は、細胞間脂質コントロールの示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークの面積と、細胞間脂質サンプルにおける六方晶に由来するピーク及び/又は複数の小ピークの面積との比率であるとみなす。
ここに示す例では、グリセリンを添加した細胞間脂質モデルのDSCピークの面積が、細胞間脂質モデルに直方晶に由来するピークの面積とみなすことができることに基づいて、細胞間脂質モデルにおける直方晶と六方晶との比率は、グリセリンを添加した細胞間脂質モデルのDSCピークの面積、すなわち、図8中に黒色にて示した部分に係るピークの面積と、細胞間脂質モデルのDSCピークの面積から、グリセリンを添加した細胞間脂質モデルのDSCピークの面積を減じて得られる小ピークの面積、すなわち、図8中に破線にて示した部分に係るピークの面積との比率であるとみなしている。
なお、ここに示す例では、細胞間脂質モデルのみならず、細胞間脂質モデルにグリセリン以外の薬剤を添加したものも、細胞間脂質サンプルとして、同様に、直方晶と六方晶との比率を求めている(図8参照)。
上記の第一実施形態の方法のより好適な形態は、細胞間脂質コントロールとして、充填構造が実質的に全て直方晶であるものを選択する点に特徴を有している。
図9に、第一実施形態の方法のより好適な形態により得られる結果の概略を示す。
ここに示す例では、図9中に囲み線にて示す通り、細胞間脂質モデルにおける直方晶と六方晶との比率を求めることができる。
(第二実施形態)
図11に、第二実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法の概略図を示す。
第二実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法(以下、「第二実施形態の方法」ともいう。)は、複数の対象を、薬剤添加後の細胞間脂質被験体及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体とし、薬剤添加後の細胞間脂質被験体と薬剤未添加の細胞間脂質被験体との間での細胞間脂質の微細構造の薬剤添加前後における変化を評価するものである。
なお、細胞間脂質被験体とは、微細構造の薬剤添加前後における変化を評価する対象となる細胞間脂質を指す。
ここで、第二実施形態の方法の一例である実施例の方法(後述)では、薬剤として、前述の第一実施形態の方法でも用いたエタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)、これらの混合物、及びN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンとしている。
第二実施形態の方法では、まず、薬剤添加後の細胞間脂質被験体及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体について示差走査熱量測定を行う(DSC測定工程)。
第二実施形態の方法では、次いで、薬剤添加後の細胞間脂質被験体及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピークを、非線形最小二乗法により、それぞれ複数の小ピークに分割する(ピーク分割工程)。
ここに示す例では、薬剤添加後の細胞間脂質被験体及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体のDSCピークを、第1ピーク、中間ピーク、第2ピークに分割している(図11参照)。
図12に、第二実施形態の方法の一例である実施例の方法における、薬剤添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデルに各薬剤を添加したもの)、及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)の示差走査熱量測定の結果を、DSCピーク、及びそれを分割して得られる3つ小ピーク(第1ピーク、中間ピーク、第2ピーク)の面積に関して示す。
第二実施形態の方法では、続いて、薬剤添加後の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークと、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピーク及び/又は複数の小ピークとを比較する(薬剤添加前後比較工程)。
ここに示す例では、薬剤未添加の細胞間脂質被験体のDSCピーク、及びそれを分割して得られる第1ピーク、中間ピーク、第2ピークと、薬剤添加後の細胞間脂質被験体のDSCピーク、及びそれを分割して得られる第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのそれぞれとを比較している(図13参照)。
特に、第二実施形態の方法の好適な形態では、薬剤により細胞間脂質被験体のバリア能が向上したかどうかを評価することを目的として、前述の薬剤添加前後比較工程において、下記の通りとしてよい。
より詳細には、薬剤添加前後比較工程において、下記(A)及び(B)の条件を満たす場合に、薬剤により細胞間脂質被験体のバリア能が向上したと評価する。
(A)薬剤添加後の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピークの面積と比較して、大きい。
(B)細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の複数の小ピークのうち、直方晶による部分と六方晶による部分との合計における直方晶による部分の割合が第1番目に大きいものを第1直方晶主体小ピークとしたときに、薬剤添加後の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の第1直方晶主体小ピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の第1直方晶主体小ピークの面積と比較して、大きい。
ここで、上記(A)の点は、DSCピークの面積とラメラ構造の絶対量との間に相関があるという公知の事実(例えば、Netsu Sokutei 34 (4) 159−166参照)に基づくものである。
上記(A)の条件を満たす場合には、薬剤添加後に細胞間脂質被験体におけるラメラ構造の絶対量が増大したことを意味する。
また、上記(B)の点は、示差走査熱量測定のピーク全体における直方晶と六方晶との比率と、示差走査熱量測定のピークを分割して得られる各小ピークにおける直方晶と六方晶との比率は、必ずしも一致するものではなく、ピーク全体における直方晶と六方晶との比率と比較して大きい比率を有する小ピーク、及びピーク全体における直方晶と六方晶との比率と比較して小さい比率を有する小ピークが存在するという、発明者らの新たな知見に基づくものである。
そして、上記(B)の点における第1直方晶主体小ピークは、薬剤未添加の細胞間脂質被験体について公知の手法を用いることによって、定めてよく、例えば、薬剤未添加の細胞間脂質被験体を細胞間脂質サンプルとし、グリセリンを添加した細胞間脂質被験体を細胞間脂質コントロールとして、前述の第一実施形態の方法のより好適な形態を用いることによって、定めることができる。
すなわち、まず、図13に示す通り、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の複数の小ピークにおける直方晶による部分と六方晶による部分との比率を、それぞれ、薬剤添加後の細胞間脂質被験体の複数の小ピークにおける直方晶による部分の面積と、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の複数の小ピークの面積から、薬剤添加後の細胞間脂質被験体の複数の小ピークにおける直方晶による部分の面積を減じて得られる小ピークの面積との比率とみなす。
ここに示す例では、薬剤未添加の細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークにおける直方晶による部分と六方晶による部分との比率を、それぞれ、グリセリンを添加した細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークにおける直方晶による部分の面積(図13中、黒色にて示す)と、薬剤未添加の細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの面積から、グリセリンを添加した細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークにおける直方晶による部分の面積を減じて得られる第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの面積(図13中、破線にて示す)との比率とみなす。
次いで、細胞間脂質被験体における上記の複数の小ピークのうち直方晶による部分と六方晶による部分との合計における直方晶による部分の割合が第1番目に大きいものを第1直方晶主体小ピークと定める。
ここに示す例では、細胞間脂質モデルの第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのうち直方晶による部分と六方晶による部分との合計における直方晶による部分の割合が第1番目に大きい中間ピークを第1直方晶主体小ピークと定めている。
ここに示す例での第二実施形態の方法の好適な形態では、図13に示す通り、
(A)について、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを添加した細胞間脂質モデルの示差走査熱量測定のピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピークの面積と比較して、大きくなっている。
また、図13に示す通り、
(B)について、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを添加した細胞間脂質モデルの示差走査熱量測定の第1ピーク、中間ピーク、第2ピークのうち直方晶と六方晶との合計における直方晶による部分の割合が第1番目に大きい中間ピークが、直方晶主体小ピークとなり、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミン添加後の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の中間ピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の中間ピークの面積と比較して、大きくなっている。
上記の通り、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを添加した細胞間脂質モデルは、(A)及び(B)の条件を満たすため、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンにより細胞間脂質被験体のバリア能が向上したと評価している。そして、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを細胞間脂質被験体のバリア能を向上させるのに適した薬剤と評価することができる。
なお、第二実施形態の方法の好適な形態では、前述の薬剤添加前後比較工程において、前述の(A)又は(B)((A)及び(B)のいずれか一方)を満たさない場合に、薬剤により細胞間脂質被験体のバリア能が向上しないと評価してもよい。
ここに示す例では、図8に示す通り、
グリセリンを添加した細胞間脂質モデルの示差走査熱量測定のピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピークの面積と比較して、小さくなっており、前述の(A)を満たしていない。よって、グリセリンにより細胞間脂質被験体のバリア能が向上しないと評価している。そして、グリセリンを細胞間脂質被験体のバリア能を向上させるのに適しない薬剤と評価することができる。
また、グリセリンの場合と同様に、エタノール、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)、これらとグリセリンとの混合物についても、前述の(A)を満たしておらず、これらの薬剤を細胞間脂質被験体のバリア能を向上させるのに適しない薬剤と評価することができる。
また、第二実施形態の方法の好適な形態では、前述の(B)の条件を下記の(B’)の条件としてもよい。
(B’)細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の複数の小ピークのうち、直方晶による部分と六方晶による部分との合計における直方晶による部分の割合が、細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定のピーク全体における直方晶と六方晶との合計における直方晶による部分の割合と比較して大きいものを直方晶主体小ピークとしたときに、薬剤添加後の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の直方晶主体小ピークの面積が、薬剤未添加の細胞間脂質被験体の示差走査熱量測定の直方晶主体小ピークの面積と比較して、大きい。
ここで、直方晶主体小ピークは、1つでも複数でもよい。
また、直方晶主体小ピークにおける直方晶による部分と六方晶による部分との合計における直方晶による部分の割合は、用いる細胞間脂質被験体に依存して定められる。
例えば、ピーク全体における上記割合が28%であり、3つの小ピークにおける上記割合が45%、30%、25%である場合には、45%の割合を有する小ピーク及び30%の割合を有する小ピークを、直方晶主体小ピークとしてよい。
上記比率としては、例えば、0:100〜50:50としてもよく、また、50:50〜100:0としてもよく、70:30〜100:0としてもよい。
上記第二実施形態の方法は、細胞間脂質被験体のバリア能を向上させるのに適切した又は適しない薬剤をスクリーニングするために用いることができる。すなわち、第二実施形態の方法を用いる、薬剤のスクリーニング方法を提供することもできる。
実施形態の細胞間脂質の微細構造を評価する方法において好適に用いられる細胞間脂質モデルとしては、直方晶と六方晶とを形成させる観点から、脂肪酸、コレステロール、セラミド類の混合物を含むものが好ましく、該混合物からなるものが更に好ましい。
細胞間脂質モデルに用いられる脂肪酸としては、炭素数14〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16〜18のものが更に好ましい。より具体的には、脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましい。脂肪酸として、これらの塩を用いてもよい。
細胞間脂質モデルに用いられるセラミド類とは、スフィンゴイド類と脂肪酸とがアミド結合した構造を基本構造として有する化合物(以下、「基本セラミド」とも称する)、上記基本セラミドの誘導体(以下、「セラミド誘導体」とも称する)、上記基本セラミド及びその誘導体を模倣して合成された類縁体(以下、「セラミド類似体」とも称する)、スフィンゴイド類を指す。
本発明におけるセラミド類は、合成物、天然物(例えば、植物抽出物)等の由来を問わない。
−−基本セラミド−−
基本セラミドが有する基本構造としては、下記式(S1)に示す構造が挙げられる。
なお、上記式(S1)に示す基本セラミドのうち、セラミド1〜セラミド10は、特に、ヒトの角質層に含まれるセラミド(肌セラミド)である。
また、実際には、ヒトやそれ以外の動物等に由来するセラミドの中には、上記式(S1)中に示されるスフィンゴイド類及び脂肪酸のアルキル鎖長に関して様々な変形例が存在する。上記基本セラミドには、アルキル鎖長以外について上記式(S1)中に示す化合物と同じ骨格を有する化合物も含まれるものとする。
更に、上記基本セラミドとしては、天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に、天然型と非天然型との混合物を用いてもよい。上記基本セラミドの構造中の複数の不斉炭素についての相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。
セラミド類に含まれるスフィンゴイド類部分としては、天然型スフィンゴシン及びその類縁体が挙げられる。天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、スフィンゴシン、スフジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、6−ヒドロキシスフィンゴシン(以上、上記式(S1)に示す)、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、並びにこれらのN−アルキル化体(例えばN−メチル化体)及びアセチル化体等の誘導体等が挙げられ、スフィンゴシンが好ましい。
セラミド類に含まれる脂肪酸部分としては、炭素数14〜34の、ヒドロキシル基を有しない飽和又は不飽和脂肪酸、α−ヒドロキシ脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの誘導体等が挙げられ、炭素数14〜34のα−ヒドロキシ脂肪酸が好ましい。
セラミド類に含まれるスフィンゴイド類部分及び脂肪酸部分は、合成物、天然物(例えば、植物抽出物)等の由来を問わない。
−−セラミド誘導体−−
セラミド誘導体としては、糖類により分子内で修飾されたセラミド化合物(以下、「糖セラミド」とも称する)等が挙げられる。糖セラミドに用いられる糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース等の単糖類;ラクトース、マルトース等の二糖類;これらの単糖類や二糖類がグルコシド結合により高分子化されているオリゴ糖類や多糖類等が挙げられる。また、別のセラミド誘導体として、上記糖セラミドにおいて、糖類の糖単位に含まれるヒドロキシル基が他の官能基で置換されている糖類類縁体により分子内で修飾されたセラミド化合物(以下、「糖セラミド類縁体」とも称する)も挙げられる。糖セラミド類縁体に用いられる糖類類縁体としては、例えば、グルコサミン、グルクロン酸、N−アセチルグルコサミン等が挙げられる。
糖セラミド及び糖セラミド類縁体における糖単位の数は、組成物中における分散安定性の観点から、1〜5であることが好ましく、1又は2(糖セラミドの場合、糖類がそれぞれ、グルコース又はラクトース)であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
糖セラミド及び糖セラミド類縁体は、化学的合成により入手してもよく、市販品の購入により入手してもよい。
糖セラミドの市販品としては、例えば、岡安商店社製の(商品名)「植物スフィンゴ液FR1」が挙げられる。
−−セラミド類似体−−
セラミド類似体としては、例えば、下記式(S2)に示すセラミド化合物が挙げられる。
−−スフィンゴイド類−−
更に、本発明におけるセラミド類には、スフィンゴイド類も含まれる。スフィンゴイド類として、前述のセラミド類に含まれるスフィンゴイド類部分に用いられるものが挙げられる。
本発明に好適に用いられるフィトスフィンゴシンの具体例としては、例えば、Evonik Goldschmidt GmbH社製の(商品名)「Phytosphingosine」が挙げられる。
上記セラミド類として例示されたものは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
細胞間脂質モデルに用いられるセラミド類としては、天然の細胞間脂質における存在比率が比較的大きい、セラミドAS(セラミド5)、セラミドNS(セラミド2)、セラミドEOS(セラミド1)が好ましい。これらの中でも、更にバリア能の高い長周期ラメラ構造を形成する傾向がある、セラミドEOS(セラミド1)が好ましく、天然の細胞間脂質における存在比率が特に大きい、セラミドAS(セラミド5)、セラミドNS(セラミド2)が好ましい。
細胞間脂質モデルとして、脂肪酸、コレステロール、セラミド類の混合物を用いた場合、各成分の混合比は、この順に、45〜75:0〜25:10〜50であることが好ましく、55〜65:10〜15:20〜40であることが更に好ましい。
特に、細胞間脂質モデルとして、パルミチン酸、コレステロール、セラミドAS(セラミド5)の混合物を用いた場合、各成分の混合比は、59.6:13.9:26.5であることが特に好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
本実施例では、パルミチン酸:コレステロール:セラミドAS(セラミド5)=59.6:13.9:26.5の混合物からなり、直方晶と六方晶との比率が31:69であることを確認している、細胞間脂質モデルを用いた。
また、本実施例では、細胞間脂質サンプルに対する細胞間脂質コントロール、及び薬剤未添加の細胞間脂質被験体に対する薬剤添加後の細胞間脂質被験体を調製するために、下記の薬剤を用いた。
・エタノール(日本アルコール社製)
・グリセリン(阪本薬品工業社製)
・1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)
・N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社製)
・L−プロリン(味の素株式会社製)
・N−アセチル−L−チロシン(東京化成工業株式会社製)
・L−トレオニン(純正化学株式会社製)
・L−メチオニン(東京化成工業株式会社製)
・N−アセチル−L−グルコサミン(片倉コープアグリ株式会社製)
・L−セリン(協和発酵バイオ社製)
そして、本実施例における対象を、下記の通り調製した。
細胞間脂質モデル溶液200mL(脂質濃度10mmol/L)を準備した(以下、この場合の対象を「Blank」ともいう。)。
また、上記細胞間脂質モデル溶液が200mLとなるように薬剤溶液を加え、相転移温度以上とし、これに超音波処理を行い、続いて、35℃の恒温槽で24時間保管した。そして、この溶液の水分を除去することによって、薬剤を添加した細胞間脂質モデルの薄膜を得た。
上記操作中の薬剤溶液としては、エタノール10%水溶液20g(以下、この場合の対象を「エタノール」ともいう。)、グリセリン10%水溶液20g(以下、この場合の対象を「グリセリン」ともいう。)、1,3−ブチレングリコール10%水溶液20g(以下、この場合の対象を「1,3−BG」ともいう。)、更にエタノール5%水溶液12.56mL、グリセリン10%水溶液25.12mL、1,3−ブチレングリコール10%水溶液20mLの混合溶液(以下、この場合の対象を「混合」ともいう。)、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」ともいう。)、L−プロリン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「L−プロリン」ともいう。)、N−アセチル−L−チロシン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「N−アセチル−L−チロシン」ともいう。)、L−トレオニン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「L−トレオニン」ともいう。)、L−メチオニン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「L−メチオニン」ともいう。)、N−アセチル−L−グルコサミン2%水溶液20g(以下、この場合の対象を「N−アセチル−L−グルコサミン」ともいう。)を用いた。また、特に、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン(以下において、「AHYP」と称する場合がある)とセリンとを併用した場合については、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン2%且つL−セリン3%水溶液20gを用いた(以下、この場合の対象を「AHYP+L−セリン」ともいう。)。
実施例で用いた分析方法について以下に説明する。
(1)示差走査熱量測定
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)社製、DSC6200)を用いて、温度範囲:5〜95℃、昇温速度:3℃/分の条件にて行った。
示差走査熱量測定のピークの解析用ソフトとして、LightStone社製、Originを用いた。
(2)小角・広角X線散乱(SWAXS)測定
SPring−8/BL40B2を用いて、温度:32℃の条件にて行い、データを取得した。
下記の手順に従って、本発明の細胞間脂質の微細構造を評価する方法を実施した。
・上記調製した、「Blank」、「エタノール」、「グリセリン」、「1,3−BG」、「混合」の5つの対象について、(1)に従って示差走査熱量測定を行った(図5参照)。
・第一に、「Blank」を細胞間脂質サンプルとして、細胞間脂質サンプルにおける細胞間脂質の微細構造の詳細(充填構造における直方晶と六方晶との比率)を評価することを試みた。
・次に、5つの対象のDSCピークを、それぞれ、(1)に従って小ピークに分割したところ、第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの3つの小ピークに分割された(図5参照)。
・ここで、5つの対象のうち「Blank」を除く4つの対象については、(2)に従って広角X線散乱測定を行った(図7参照)。その結果、図7に示す通り、「エタノール」、「グリセリン」、「1,3−BG」、「混合」における直方晶と六方晶との比率は、それぞれ、65:35、90:10、70:30、90:10であることがわかった。
・続いて、「Blank」のDSCピークの面積と比較して小さいDSCピークの面積を有し、また、直方晶と六方晶との比率が80:20〜100:0である「グリセリン」を細胞間脂質コントロールとして選択した。
そして、「Blank」のDSCピークの面積から、「グリセリン」のDSCピークの面積を減じて得られるピークの面積(図8中に破線にて示す)を、「Blank」における六方晶に由来するピークの面積とみなしたうえで、「Blank」における直方晶と六方晶との比率は、「グリセリン」のDSCピークの面積(図8中に黒色にて示す)と、「Blank」のDSCピークの面積から、「グリセリン」のDSCピークの面積を減じて得られるピークの面積との比率であるとみなした。
その結果、図9に示す通り、「Blank」における直方晶と六方晶との比率は、35:65であると評価した(図9中に囲み線にて示す)。なお、「エタノール」、「1,3−BG」、「混合」における直方晶と六方晶との比率についても、同様に、65:35、70:30、100:0であると評価した。
・ここで、「Blank」についても、確認のため、(2)に従って広角X線散乱測定を行った(図10参照)。
図10に、第一実施形態の方法の一例である実施例の方法における、細胞間脂質サンプル(細胞間脂質モデル)について、微細構造の詳細を確認するための広角X線散乱測定の結果を示す。
その結果、図10に示す通り、「Blank」における直方晶と六方晶との比率は、31:69であることがわかった。
以上より、本実施例の方法により得られた、細胞間脂質サンプルにおける細胞間脂質の微細構造の詳細(充填構造における直方晶と六方晶との比率)の評価が、微細構造の詳細の分析において確立された方法である広角X線散乱測定による評価と高い相関を有することが実証された。
・第二に、「Blank」を薬剤未添加の細胞間脂質被験体として、「Blank」を除く5つの対象を薬剤添加後の細胞間脂質被験体として、細胞間脂質の微細構造の薬剤添加前後における変化を評価することを試みた。
・ここで、上記調製した、「Blank」、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−プロリン」、「N−アセチル−L−チロシン」、「L−トレオニン」、「L−メチオニン」、「N−アセチル−L−グルコサミン」、「AHYP+L−セリン」について、(1)に従って示差走査熱量測定を行った(図12参照)。
また、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−プロリン」、「N−アセチル−L−チロシン」、「L−トレオニン」、「L−メチオニン」、「N−アセチル−L−グルコサミン」、「AHYP+L−セリン」のDSCピークを、それぞれ、(1)に従って小ピークに分割したところ、第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの3つの小ピークに分割された(図12参照)。
・ここで、「Blank」の第1ピーク、中間ピーク、第2ピークにおける直方晶による部分と六方晶による部分との比率は、前述の通り、図8に示す通り、それぞれ、26:74、50:50、22:78であると評価している。この結果より、この系においては、中間ピークを、第1直方晶主体小ピークとした。
・このとき、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−プロリン」、「N−アセチル−L−チロシン」、「L−トレオニン」、「L−メチオニン」、「N−アセチル−L−グルコサミン」、「AHYP+L−セリン」のDSCピークの面積が、「Blank」のDSCピークの面積と比較して、大きく、且つ、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−プロリン」、「N−アセチル−L−チロシン」、「L−トレオニン」、「L−メチオニン」、「N−アセチル−L−グルコサミン」、「AHYP+L−セリン」の中間ピークの面積が、「Blank」の中間ピークの面積と比較して、大きい、ことを見出した。
これにより「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−プロリン」、「N−アセチル−L−チロシン」、「L−トレオニン」、「L−メチオニン」、「N−アセチル−L−グルコサミン」、「AHYP+L−セリン」の添加により細胞間脂質モデルのバリア能が向上したと評価した(図13参照)。
・ここで、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」について、確認のため、(2)に従って広角X線散乱測定を行った(図14参照)。
図14に、第二実施形態の方法の一例である実施例の方法における、バリア能を向上させるのに適した薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン)添加後の細胞間脂質被験体(細胞間脂質モデル)について、微細構造の詳細を確認するための広角X線散乱測定の結果を示す。
その結果、図14に示す通り、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」における直方晶と六方晶との比率は、34:66であり、「Blank」におけるそれ(31:69)と比較して大きくなっていることがわかった。
以上より、本実施例の方法により得られた、細胞間脂質の微細構造の薬剤添加前後における変化(薬剤による細胞間脂質モデルのバリア能の向上)の評価が、微細構造の詳細の分析において確立された方法である広角X線散乱測定による評価と高い相関を有することが実証された。
本発明者らは、図14に示される「Blank」及び「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」のDSCピークの面積及び直方晶と六方晶との比率に着目して、細胞間脂質においてラメラ構造(直方晶及び六方晶)が増加するとき、直方晶と六方晶との比率を少なくとも維持する(ときに直方晶割合を増大させる)傾向がある、という新たな知見を得た。
続いて、木発明者らは、上記知見を深めるため、また、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンによる細胞間脂質のバリア能の向上の効果を確認するため、細胞間脂質モデルの代わりに角層シートを用いて、薬剤添加前後の角層シートについて広角X線散乱測定を行った。
角層シートとして、ヒト胸部の皮膚より剥離した皮膚をトリプシン処理した角層シート(BIOPREDIC International社(フランス)製)を用いた。
また、薬剤としては、前述のN−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとその対照としての水とを用いた。
ここでは、図15に示すように、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン添加前の角層シート、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン添加後の角層シートについて広角X線散乱測定を行った)。水についても同様に広角X線散乱測定を行った。
具体的な実験項を以下の通りとした。
ヒト胸部の皮膚より剥離した皮膚をトリプシン処理した角層シート(BIOPREDIC International社(フランス)製)(以下、単に「角層シート」ともいう。)を用意した。
角層シートから3×3mmのサイズのシートを5枚切り出し、これらを積層させて、広角X線散乱測定の試料とした。
薬剤溶液としてN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン(以下、「NHYP」と記載することもある)20%水溶液を用い、対照液として精製水を用いた。
準備した角層シートの試料をSWAXS測定用のワッシャーに挟み込んだ。
ここで、下記条件において、小角・広角X線散乱(SWAXS)測定を行った(以下、同じ);測定装置:SPring−8ビームラインBL19B2、露光時間:120秒/回、測定温度23℃、単回照射、X線波長:0.083nm(25keV)、カメラ長:539.281(mm)、検出器:PILATUS。散乱像を取得した後、円環平均を計算し、1次元散乱プロファイルデータを得た。得られた回折ピークをガウス関数にフィッティングすることにより解析を行った。
試料のワッシャー中央部からAHYP20%水溶液を20μL添加し、35℃の恒温槽で保管した。保管中、試料に薬剤溶液中の薬剤を吸収させつつ、水分を薬剤溶液から揮発させた。
添加した後、約2時間経過後、角層シートの試料は乾燥状態であった。このとき、再び広角X線散乱測定を行った。
図15に、バリア能を向上させるのに適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン)添加前後の角層シートについての広角X線散乱測定の結果を直方晶と六方晶との比率について示す。
図15に示す通り、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンの添加により角層シートにおいてラメラ構造中の直方晶比率が増加することが確認された。
図15に示す通り、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン添加前の角層シートにおける直方晶と六方晶との比率は、45:55であり、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン添加2時間後の角層シートにおける直方晶と六方晶との比率は、55:45であった(図15下図参照)。
なお、対照である水の場合、直方晶と六方晶との比率は、添加前において44:56であり、添加2時間後において45:55であった(図15上図参照)。
この結果から、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンの添加により角層シートにおいて直方晶と六方晶との比率は増大することが確認された。
また、薬剤として、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミン以外のアミノ酸を用いて、細胞間脂質の微細構造の薬剤添加前後における変化を評価することも試みた。
薬剤添加後の細胞間脂質被験体を調製するために用いた、細胞間脂質モデル溶液(脂質濃度10mmol/L)、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン2%水溶液としては、前述の通りとした。
N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミン以外のアミノ酸として、L−フェニルアラニン(純正化学株式会社製)、L−チロシン(純正化学株式会社製)、L−トリプトファン(純正化学株式会社製)、N−アセチル−L−グルタミン酸(日本プロティン株式会社製)、グリシン(純正化学株式会社製)、L−グルタミン(純正化学株式会社製)、L−アスパラギン酸(純正化学株式会社製)、L−セリン(協和発酵バイオ社製)を用いた。そして、薬剤溶液として、それぞれのアミノ酸の溶解度を考慮して、できるだけ高い濃度を設定し、L−フェニルアラニン1%水溶液、L−チロシン0.01%水溶液、L−トリプトファン1%水溶液、N−アセチル−L−グルタミン酸2%水溶液、グリシン15%水溶液、L−グルタミン4%水溶液、L−アスパラギン酸0.1%水溶液、L−セリン20%水溶液を、それぞれ20mLずつ準備した(以下、それぞれの場合の対象を、「L−フェニルアラニン」、「L−チロシン」、「L−トリプトファン」、「N−アセチル−L−グルタミン酸」、「グリシン」、「L−グルタミン」、「L−アスパラギン酸」、「L−セリン」ともいう。)。
ここで、上記調製した、「Blank」、「N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン」、「L−フェニルアラニン」、「L−チロシン」、「L−トリプトファン」、「N−アセチル−L−グルタミン酸」、「グリシン」、「L−グルタミン」、「L−アスパラギン酸」、「L−セリン」についても、(1)に従って示差走査熱量測定を行った(図16参照)。
また、各アミノ酸溶液を添加した対象のDSCピークを、それぞれ、(1)に従って小ピークに分割したところ、第1ピーク、中間ピーク、第2ピークの3つの小ピークに分割された(図16参照)。
前述の通り、「Blank」の第1ピーク、中間ピーク、第2ピークにおける直方晶による部分と六方晶による部分との比率は、前述の通り、図8に示す通り、それぞれ、26:74、50:50、22:78であると評価している。この結果より、この系においては、中間ピークを、第1直方晶主体小ピークとした。
このとき、「L−フェニルアラニン」、「L−チロシン」、「L−トリプトファン」、「N−アセチル−L−グルタミン酸」、「グリシン」、「L−グルタミン」、「L−アスパラギン酸」、「L−セリン」のDSCピークの面積が、「Blank」のDSCピークの面積と比較して小さいことを見出した(図16参照)。
これにより、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン、N−アセチル−L−グルタミン酸、グリシン、L−グルタミン、L−アスパラギン酸、L−セリンの添加によっては、細胞間脂質モデルのバリア能を向上させる効果は見受けられないと評価した。(図16参照)。
以下では、上記のように有用な薬剤候補として見出されたN−アセチル−L−ヒドロキシプロリンを用いて、その水分保持や抗老化の効果を評価した。
水分保持効果試験を下記のとおり実施した。
使用テスト期間:12週間
被験者:24名の健常人女性(36〜51歳)
実験手順:試料(試験サンプル)及び偽薬(プラセボ)を適量で1日に2回、目尻の小じわ部位に適用した。測定時点として2時点、適用開始前及び適用12週間後において、室温に馴化の上、コルネオメーター(CM825 Courage&Khazaka社 ;ドイツ)を用いて適用部位の測定を行った。結果に関しては統計解析(対応のあるt検定)を行った。
試料の性状:透明ゲル状
試料中の有効成分:N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン1.0質量%、L−セリン0.3質量%
図17に、水分保持を向上させるのに適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対する水分保持効果試験の結果を示す。縦軸に保持率(%)を示し、横軸に時間(週)を示す。
図17において、各測定時点での試料(試験サンプル)及び偽薬(プラセボ)の有意差はP値:0.2169(4週間時点)、P値:0.0005(8週間時点)、P値:0.0007(12週間時点)となり、8週間時点と12週間時点においてP値が0.05未満であり、プラセボに対して試験サンプルは有意に水分保持効果が高いことが確認された。
シワ改善効果試験を下記のとおり実施した。
使用テスト期間:12週間
被験者:24名の健常人女性(36〜51歳)
実験手順:試料(試験サンプル)及び偽薬(プラセボ)を適量で1日に2回、目尻の小じわ部位に適用した。測定時点として2時点、適用開始前及び適用12週間後において、室温に馴化の上、適用部位である目尻の小じわ部位において、以下の目視評価及びレプリカのVisiometer測定によるシワ改善効果の評価を行った。結果に関しては統計解析(対応のあるt検定)を行った。
試料の性状:透明ゲル状
試料中の有効成分:N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン1.0質量%、L−セリン0.3質量%
<目視評価>
試験方法:functional cosmetics(2004−80)のプロトコール及びレギュレーションに従い行った。試験は、ランダム化された二重盲検法により行った。また、2名の専門パネルにより、試料及び偽薬の適用前後において、被験者に対して、以下のグローバルフォトダメージスコアを付与し、その平均点を算出した。
グローバルフォトダメージスコアは損傷度合いに応じて下記のとおりに定められた。
0:none なし
1:none/mild なし/緩やか
2:mild 緩やか
3:mild/moderate 緩やか/中程度
4:moderate 中程度
5:moderate/severe 中程度/激しい
6:severe 激しい
7:very severe 非常に激しい
被験者は、上記のグローバルフォトダメージスコア(Arch Dermatol 137(8):1043−1051(2001)参照)が2〜6を有する者とした。
図18に、シワ改善効果試験の目視評価における被験者のグローバルフォトダメージスコアの内訳をその人数割合(%)にて示す。
図19に、抗老化に適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対するシワ改善効果試験の目視評価の結果を示す。縦軸にグローバルフォトダメージスコア(―)を示し、横軸に時間(週)を示す。
<レプリカ評価>
被験者は目視評価の場合と同じとした。シリコン製のレプリカの作製を通して、Visiometer(Skin−Visiometer SV 600(Courage&Khazaka社 ;ドイツ))による機器測定を行った。機器測定は、ランベルトベールの法則に従い、レプリカの透過光の強度変化を測定することにより、皮膚の変化を観察した。
R1:しわ等高線の最高値と最低値との差の値
R2:しわ等高線を任意に5個ずつ分けた後、R1値のうち最高値
R3:しわ等高線を任意に5個ずつ分けた後、R1値の平均値
R4:しわ等高線のベースライン(baseline)としわ等高線の最高値のラインとで囲まれた面積
R5:しわ等高線のベースライン(baseline)と中央線とで囲まれた面積に相当する、R4の平均偏差
図19において、各測定時点での試料(試験サンプル)及び偽薬(プラセボ)の有意差はP値:0.328(4週間時点)、P値:0.022(8週間時点)、P値:0.001(12週間時点)となり、8週間時点と12週間時点において、P値が0.05未満であり、プラセボに対して試験サンプルはシワ改善効果が有意に高いことが示された。
図20に、抗老化に適し得る薬剤(N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンとセリンとの混合物)と偽薬とについての被験者に対するシワ改善効果試験のレプリカ評価の結果を示す。縦軸に横軸に示す各評価指数(Ri(i=1〜5))の変化量ΔRiの大きさを示す。
図20において、12週間時点での試料(試験サンプル)及び偽薬(プラセボ)の有意差はP値:0.125(R1)、P値:0.041(R2)、P値:0.036(R3)、P値:0.517(R4)、P値:0.373(R5)となり、R2とR3においてP値が0.05未満であり、プラセボに対して試験サンプルはシワ改善効果が有意に高いことが示された。
本発明によれば、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを有効成分として用いることによって、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造を改善する及び/又は充填構造を改質することができる。
本発明によれば、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを有効成分とする、細胞間脂質の微細構造における、ラメラ構造改善剤、充填構造改質剤、直方晶比率維持・改善剤;N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンを有効成分とする、肌における、水分保持改善剤、バリア能改善剤、抗老化剤、抗シワ剤;を提供することができる。

Claims (9)

  1. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤。
  2. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、細胞間脂質の微細構造における充填構造改質剤。
  3. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、細胞間脂質の微細構造における直方晶比率維持・改善剤。
  4. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、肌における水分保持改善剤。
  5. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、肌におけるバリア能改善剤。
  6. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、肌における抗老化剤。
  7. N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種を有効成分とする、肌における抗シワ剤。
  8. 細胞間脂質の微細構造におけるラメラ構造改善剤の製造のためのN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種の使用。
  9. 肌における水分保持改善剤の製造のためのN−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、L−プロリン、N−アセチル−L−チロシン、L−トレオニン、L−メチオニン、N−アセチル−L−グルコサミンから選ばれる少なくとも一種の使用。
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