JPWO2017169389A1 - 栽培棚および植物栽培設備 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の栽培用の照明装置としては、蛍光灯やLED等が用いられているが、照明装置の表面温度は高温となることが問題であり、照明装置を植物から十分に離して熱の影響をなくす必要があるが、植物から照明装置を離しすぎると、植物への光量が落ちて成長に影響が出ることから、一定の照射距離を保つ必要がある。
特許文献1には、植物の成長に応じて上下に移動させられる人工光源を備え、各段に空調設備が設けられている多段の栽培棚が開示されている。
特許文献2には、照明装置が上下動自在に設けられた栽培棚が記載されており、生育する植物の背丈に応じて適正照射距離を保つことが開示されている。また、この栽培棚の側面には各段に空調空気を吹き出す風袋が設けられている。
一方で、植物工場で多段型の栽培棚を用いて工業的生産を検討する際には、スペース効率を高めるために、各段の棚間高さは可能な限り低くして段数を多くし、一台の栽培棚の棚幅は可能な限り広くしたいとの要請がある。しかしながら、棚間高さを低くしすぎたり、棚幅を広げ過ぎたりすると、照明装置から発生する熱により植物周辺の空気が温められ、高温となりすぎて植物の栽培に支障が生じる。特に、棚幅を広げて栽培棚のスケールアップを検討した場合には、送風方向の不均一な温度分布による影響が顕著となり、問題となる可能性が高い。
本発明の課題は、送風方向に不均一な温度分布を考慮して、植物周辺の気温を栽培最適範囲に維持することが可能な栽培棚を提供することである。特に、従来の栽培棚よりもスケールアップして、植物工場におけるスペース効率を高めることが可能な栽培棚を提供できることが好ましい。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
床、側壁、及び天井を有する部屋内に、栽培棚、及び空調装置を備え、該空調装置の吹出部が、部屋内全体の空気調整を行えるように部屋の側壁面に設置され、該空調の吸込部が該側壁面と向かい合う側壁面に設置される、植物栽培設備であって、該栽培棚が、
植物を保持する保持容器、照明装置、及び該保持容器を載置可能な支持面と、支持面に対向する面であって該保持容器の上方に照明装置を設置可能な天井面とを、高さ方向に複数段有する支持構造体、を備え、
保持容器の上端面から直上の該天井面までの距離を棚間有効高さ(H)、支持構造体に載置された保持容器における送風方向と平行な方向の距離を式(2)から求められる有効棚幅(D)とした場合に、棚間有効高さ(H)と有効棚幅(D)から以下の式(1)により求められるΔTの値が、10℃以下であることを特徴とする、植物栽培設備。
ΔT:有効棚幅Dの区間における棚間下部の正味の気温上昇分[℃]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]、
Δtj:栽培棚中に設けられた空気流入出口のうち端部空気流入口から送風方向へ1から順番に数えてj番目の空気流入出口における気温降下分[℃]、
Q’:照明装置による入熱量比、
V:棚間への空気流入風速[m/s]、
H:棚間有効高さ[mm]を意味する。)
D:有効棚幅[m]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]を意味する。)
[2]
送風方向における空気流入出口間の長さ(Li)が2m以上である、上記[1]に記載の植物栽培設備。
[3]
有効棚幅(D)が15m以上である、上記[1]または[2]に記載の植物栽培設備。
[4]
端部以外の空気流入出口の数(b)が1以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[5]
前記照明装置が蛍光灯である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[6]
前記照明装置がLEDである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[7]
前記植物が、タンパク質合成用植物である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[8]
更に、前記空調装置の吹出部が、前記該栽培棚の棚間毎の空気調整を行えるように栽培棚側面に設置される、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[9]
前記栽培棚が複数台配置されている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の植物栽培設備。
[10]
空調装置により調整された空気が送風される空間で植物を栽培するために用いられる栽培棚において、該栽培棚が植物を保持する保持容器、照明装置、及び該保持容器を載置可能な支持面と、支持面に対向する面であって該保持容器の上方に照明装置を設置可能な天井面とを、高さ方向に複数段有する支持構造体、を備え、
保持容器の上端面から直上の該天井面までの距離を棚間有効高さ(H)、支持構造体に載置された保持容器おける送風方向と平行な方向の距離を式(2)から求められる有効棚幅(D)とした場合に、棚間有効高さ(H)と有効棚幅(D)から以下の式(1)により求められるΔTの値が、10℃以下であることを特徴とする、栽培棚。
ΔT:有効棚幅Dの区間における棚間下部の正味の気温上昇分[℃]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]、
Δtj:栽培棚中に設けられた空気流入出口のうち端部空気流入口から送風方向へ1から順番に数えてj番目の空気流入出口における気温降下分[℃]、
Q’:照明装置による入熱量比、
V:棚間への空気流入風速[m/s]、
H:棚間有効高さ[mm]を意味する。)
D:有効棚幅[m]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]を意味する。)
[11]
送風方向における空気流入出口間の長さ(Li)が2m以上である、上記[10]に記載の栽培棚。
[12]
有効棚幅(D)が15m以上である、上記[10]または[11]に記載の栽培棚。
[13]
前記照明装置が蛍光灯である、上記[10]〜[12]のいずれかに記載の栽培棚。
[14]
前記照明装置がLEDである、上記[10]〜[12]のいずれかに記載の栽培棚。
[15]
床、側壁、及び天井を有する部屋内に、上記[10]〜[14]のいずれかに記載の栽培棚、及び空調装置を備え、
該空調装置の吹出部が、該栽培棚の棚間毎の空気調整を行えるように栽培棚側面に設置される、植物栽培設備。
[16]
前記栽培棚が複数台配置されている、上記[15]に記載の植物栽培設備。
保持容器11を載置して植物を栽培する空間は、支持面132から天井面133までの棚間14である。棚間14は、支持面132及び天井面133を構成する柱131や板状部材等からなる仕切部材134を高さ方向に複数段備えることにより構成される。
支持構造体13に載置された保持容器11における送風方向と平行な方向の距離は有効棚幅でありD1〜D5で示される。図1(b)においては、部屋15の一方の側壁に設置された空調装置の吹出部16から、向かい合うもう一方の側壁に設置された空調装置の吸込部17へ向けて、一方向で送風されており、送風方向がx方向と一致する。なお、部屋内に空調装置を備えるとは、空調装置の吹出部16と吸込部17が部屋15に配置されていることを意味し、部屋内部の空調が可能であれば、空調装置を構成する部材のうち吹出部16と吸込部17以外は部屋内に配置しても、部屋外に配置してもよい。
図2は、栽培棚10における1段分の棚間14のy方向断面模式図である。また、図3(a)、図3(b)はそれぞれ、棚間14の端部の拡大図である。
図3(a)、図3(b)には、図2と同様に天井面133に照明装置12が設置される。該照明装置12は保持容器11の上方に配置され、照明装置12が発した光が保持容器11の中に存在する植物に適切に照射される。
これは、各棚間14の上方に設置されている照明装置12から発生した熱が下方に拡散すること、および照明装置からの放射によって温められた支持面132からの伝熱により植物周辺の気温が上昇する際に、空調装置により調整された空気が一方向から送風されることが原因であると考えられる。
本発明者らの検討により、上述のような送風方向に不均一な植物付近の温度分布は、特に栽培棚のスケールアップにより有効棚幅Dを広くする場合には、棚間14のスペース効率と温度調整とのバランスを取る際に特に問題となることを見出した。このため、従来知られている栽培棚の単なるスケールアップでは、棚間14のスペース効率と温度調整とのバランスが取れた、生産性の高い設備を提供することはできない。
ここで、棚間下部とは、栽培を想定している植物の完熟成長した際の草丈の高さ範囲を意味する。空間効率を高める観点から、棚間有効高さの下部1/4以上であることが好ましく、より好ましくは1/3以上であり、更に好ましくは1/2以上であって、2/3以下であれば照明装置からの熱の影響を直接受けにくいため本式の適用が好ましい。なお、完熟成長とは、野菜それぞれの品種において、栽培時間を延ばしてもそれ以上大きくならない植物固有の最大葉丈に達した状態をいう。
ここで、上記式(1)は栽培棚中に設けられた端部以外の空気流入出口の有無で、2種類の式に場合分けされる。
空気流入出口を端部のみに設け、b=0であって式(2)がD=L1(L)の場合には、下記式(1−1)を適用すればよい。
Dは栽培棚の有効棚幅を表し、具体的には支持構造体に載置された保持容器における送風方向と平行な方向の距離である。上述の通り、栽培棚が複数台配置されている場合に、栽培棚間の距離が2m未満である場合には、各栽培棚の棚幅に相当する長さの総和をDとする。Dは一般的な栽培棚として好ましくは1m以上、より好ましくは5m以上、更に好ましくは10m以上、それより好ましくは15m以上、特に好ましくは25m以上であり、空調効率の観点から、好ましくは500m以下、より好ましくは400m以下、更に好ましくは300m以下、それより好ましくは200m以下、特に好ましくは100m以下である。
また、bは栽培棚内部で送風方向に上昇していく植物周辺温度が不連続に低下する回数を表し、具体的には栽培棚中に設けられた端部以外の空気流入出口の数である。よって、上述の通り、栽培棚の途中に植物周辺温度が送風方向に不連続に低下する箇所がない場合にはbは0となり、DとL1は一致する。一方で、栽培棚の途中、または栽培棚間に植物周辺温度が送風方向に不連続に低下する箇所がある場合には、bが1以上となり、Dの中で連続的な温度分布を生じ得る範囲(Li)が複数存在することとなる。bが1以上となる例としては、栽培棚間の空気が冷却されている場合、栽培棚の途中で別途吸排気を行う場合、などがある。
△tjは、棚間下部内の温度測定点Aj(以下、Ajという)における温度と、棚間下部内の温度測定点Bj(以下、Bjという)における温度との差として求めることができる。なお、該Aj及びBjは、各々棚間下部内において、x方向、y方向及びz方向の3方向における位置を定めることにより決まる。該Ajのx方向の位置は、j番目の空気流入出口の中心から(j−1)番目の空気流入出口の方向に100mmの距離の位置とし、j番目の空気流入出口の中心と(j−1)番目の空気流入出口の中心との距離の1/2の距離が100mmに満たない場合には、j番目の空気流入出口の中心と(j−1)番目の空気流入出口の中心との中間に相当する位置とする。ここで、0番目の空気流入出口は端部空気流入口と一致する。該Ajのy方向の位置は、栽培棚のy方向(長手方向)長さの1/2の長さの位置とし、z方向の位置は、保持容器の上端面からの位置であって、棚間下部内であれば任意の位置でよい。該Bjのx方向の位置は、j番目の空気流入出口の中心から(j+1)番目の空気流入出口の方向に100mmの距離の位置とし、j番目の空気流入出口の中心と(j+1)番目の空気流入出口の中心との距離の1/2の距離が100mmに満たない場合には、j番目の空気流入出口の中心と(j+1)番目の空気流入出口の中心との中間に相当する位置とする。ここで、j+1番目の空気流入出口は端部空気流出口と一致する。また、該Bjのy方向の位置は、栽培棚のy方向(長手方向)長さの1/2の長さの位置とし、該Bjのz方向の位置は該Ajのz方向の位置と等しい位置とする。さらに、bが2以上の場合、各温度測定点A1、・・・及びAbとB1、・・・・及びBbにおけるz方向の位置は全て等しい。
Liは、本発明の効果を顕著に示すことから0.1m以上、好ましくは1m以上、より好ましくは2m以上、更に好ましくは3m以上、それより好ましくは4m以上、特に好ましくは5m以上であって、植物周辺の送風方向の温度分布を好ましい範囲に保つという観点から好ましくは200m以下、より好ましくは100m以下、更に好ましくは80m以下、それより好ましくは50m以下、特に好ましくは30m以下である。
Q’は照明装置による入熱量比であり、Q‘=Q/197W/mで求められる。ここで、Qは照明装置からの発熱量であり、用いる照明装置によって好ましい範囲が異なるが、通常、400W/m以下とすることが好ましい。Qは、以下の式(3)を用いて決定すればよい。
例えば、図5において、長さ1.4m、27Wの蛍光灯を100mmピッチで図5中のx方向に等間隔に配置する場合には、Qは193W/mとなり、長さ1.4m、54W蛍光灯を100mmピッチで図5中のx方向に等間隔に配置する場合には、Qは386W/mとなり、長さ1.4m、10WのLED照明を100mmピッチで図5中のx方向に等間隔に配置する場合には、Qは71W/mとなる。
ΔTは、Dの区間における棚間下部の正味の気温上昇分である。ΔTは、10℃以下とする必要があり、植物の生育環境の面から好ましくは8℃以下、より好ましくは6℃以下、更に好ましくは4℃以下、それより好ましくは2℃以下、特に好ましくは1℃以下である。
部屋は、栽培棚を収納し、植物の育成環境を所定の条件幅に管理するために用いられる。床、側壁、及び天井を有し、栽培棚を収納して、その周囲に作業のために必要な空間が用意されていればよく、植物栽培のために制御すべき空間を最小限にするのが好ましい。
一方、本発明は植物を工業的に栽培する設備として好適に用いることができるものであり、部屋の一辺の長さが通常2m以上、好ましくは3m以上、より好ましくは4m以上であり、通常30m以下、好ましくは20m以下、より好ましくは10m以下である。また、天井の高さは通常2m以上、好ましくは2.5m以上、より好ましくは3m以上であり、通常20m以下、好ましくは15m以下、より好ましくは10m以下である。
部屋の側壁、天井および床としては、植物を育成するための環境温度や環境湿度に好適な材質、特に水分で容易に腐食しない材質を使用し、表面にホコリや汚れ、カビ等が付着するのを防止するため、平滑な形状を有するものが好ましく、仮にそれらが付着した際は、水等を用いた拭き取り清浄ができるよう耐水材料を用いるのが好ましい。特に床には、その清浄に便利となるよう、汚水を排水するための排水枡や排水口が好ましく設置される。その際、排水が不適切な漏洩を起こさないように、開口部には流れ止めが適宜設けられる。建屋の内側壁、天井および床の表面は、必要な機能を備えさせるため、適宜表面処理を施してもよい。
以上の要件から、部屋の天井および側壁材の好ましい材質としては、断熱機能を有するパネルや化粧ケイカル板等が、また床材には硬質ウレタン材等が特に好適に用いられる。
2.1 保持容器11
保持容器は、植物を栽培および/または保持するためのものである。必要に応じて水を保持および/または排出する機能を有する。
形状は任意であるが、植物栽培設備に要する空間の効率を上げるために、保持容器を狭い間隔で垂直に積み上げたいことから、水平方向に比較的薄いトレー状の形状が好ましく用いられる。
保持される植物は特に限定されないが、特に葉部の多い植物に好適に用いられる。とりわけ、比較的厳格で狭い管理幅内での管理を要求する医薬、創薬、食品、健康用の植物、遺伝子組み換え技術を用いる植物、タンパク質合成用植物、中でもその実施の実績が蓄積された葉物野菜、シロイヌナズナ、タバコ等の植物の育成に好適に用いられる。
該保持容器には、植物を保持または固定するための区画や把持部分等、水を供給するための流水路、給水部、排水部等の構造を適宜付与してもよい。
該保持容器の材質に特に制限はないが、通常ABS、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、発泡スチロール等の樹脂材料およびそのアロイやフィラー複合材料、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ鋼等の金属材料、木材、ガラス材等が用いられる。中でも、生物の育成に影響を及ぼす成分が発生しにくい点で、樹脂材料が好ましい。
該保持容器は、空調効率を向上させるためにも、必要最小限の容量とすべきであり、かつ空調の気流に有利となるような形状が好ましく、かつ該保持容器は規則正しく配置するのが好ましい。
植物の栽培には光が必要であることから、栽培棚には照明装置が設けられる。植物の栽培に光が必要な場合の具体例としては、植物が所期の期間生命を維持するため、もしくは植物の育成を促進するために、明暗期を要する場合や、生物ホルモンを刺激して所期の形状や方向に成長させたい場合、光合成のための光エネルギーを要する場合等が挙げられる。
照明装置の種類の具体例としては、ナトリウム灯、水銀灯、蛍光灯、メタルハライドランプ、紫外線ランプ、赤外線ランプ、遠赤外線ランプ、マイクロ波照射装置、LED、エレクトロルミネセンス、ネオン灯等が挙げられる。中でも、発光効率の高い蛍光灯およびLEDが好ましい。照明装置から植物に向けて発する熱が少ないという面ではLEDが好ましい。
照明設備の電気接続部をキャップで覆う等の方法で防水仕様を施してもよい。
植物の栽培環境の適切な制御を妨げないように、照明装置は、発光効率が高く、発熱の小さいものが好ましく用いられる。
支持構造体は、保持容器を垂直方向に複数支持するために用いられる。前記支持は、固定でも載置でもよい。
固定の場合の方法は、支持構造体と保持容器とが必要な強度で固定されていれば特に限定されない。保持容器と支持構造体との間で直接もしくは接続部材を介して固定される。具体的には、ネジ止め、ボルト止め、溶接、接着等が挙げられる。支持構造体と保持容器との固定は、保持容器の側面で行っても底面で行ってもよい。
接続部材を介して固定される場合、接続部材は支持構造体と保持容器の側面との間に設置してもよいし、支持構造体と保持容器の底面との間に設置してもよい。支持構造体と保持容器の底面との間に設置する場合は、後述の載置部材の上面に、保持容器を直接または間接的に設置する方法が挙げられる。
支持が、保持容器の支持構造体への載置による場合、該支持構造体は、角柱状もしくは棒状の材料よりなる柱に、保持容器を載置できる部材(以下、載置部材ともいう)を、垂直方向に複数固定したものから構成され、該部材の上に保持容器が載置される。
支持が載置の場合、保持容器を支持構造体と独立して取り扱えるため、保持容器を別の場所から支持構造体に搬入でき、また、支持構造体から別の場所に搬出できる点で好ましい。
また、栽培棚は保持容器を複数段で有することが好ましく、例えば5段以上、10段以上、15段以上、20段以上とすることができる。
部屋15は、栽培棚10を含む空間の、温度、湿度、清浄度、酸素濃度、および二酸化炭素濃度からなる群から選択される1種以上を制御しうる空調装置を備える。空調装置としては公知の設備を使用できる。
本発明においては、植物の好ましい栽培環境を効果的に実現するための空調装置として、一般的な空調設備を用いることができ、それは通常、空気中の塵埃や微生物類を除去する機能を有するフィルタ、空気を搬送するための送風機、ならびに、空気を冷却、加熱および/または調湿するための熱交換器、加湿器および/または除湿機、よりなる空調装置、および空気を所望の空間に搬送するための搬送経路となるダクト設備により構成される。
部屋全体の空気調整を行う場合には、部屋の側壁面に空調装置の吹出部が設置されることが好ましい。この場合、最小の設備で空間全体を効率的に空気調整することができる。一方、栽培棚の棚間毎に空気調整を行う場合には、栽培棚側面に空調装置の吹出部が設置されることが好ましい。栽培棚間毎に設置される空調装置の吹出部としては、羽根車、電動機、ケーシングおよび整風器からなる送風機などの吹出部が挙げられる。
この場合、植物付近の空気調整を厳密に行うことができる傾向にある。
以下、タンパク質合成用植物など、厳密な栽培環境を要求される際の空気調整の条件について詳述する。
一般の、例えば食用や鑑賞用の植物であれば、その目的を達成できればよいため、温度に対する許容範囲は広く、例えば温度がΔ20℃程度まで許容しうる。
吹出部の形状は、面吹出し、縦方向または/および横方向に羽根を設けた格子板のもの(ユニバーサルタイプ)、または吹出面に多孔板をとりつけたパネル形のものが好適に用いられ、点吹き出しのもの(ノズルタイプ、空気誘因を利用した円錐状のもの(アネモ型・パン型))、線吹き出しのもの(スロット型)なども用いることができる。
本実施例で用いた二次元有限体積法シミュレーションが栽培棚内送風方向の温度分布を精度良く再現することは、発明者らが実施した植物工場栽培室内の三次元有限体積法シミュレーション結果と同栽培室内温度分布の実測結果が極めて良く一致している事実により保証されている。
照明装置12は熱源となっており、x方向への送風によって栽培棚内部では照明装置12由来の熱流が生じる。照明装置12の形状は、必ずしも円形である必要はなく、その形状は問わない。
栽培棚送風方向の任意の位置における棚間下部の気温上昇分(ΔT)[℃]は、
栽培棚入口送風方向の風速:風速(V)[m/s]、
栽培棚内部の熱源による送風方向毎の入熱量:入熱量(Q)[W/m]、
栽培棚一段分の高さ:棚間有効高さ(H)[mm]、及び
栽培棚内における熱源が設置された区間の送風方向の長さ:有効棚幅(D)[m]
の4つのパラメータによって決定される。
<シミュレーション結果>
モデル化した栽培棚において、上述の4つのパラメータを以下の通りに設定した場合について、二次元有限体積法シミュレーションを実施した。シミュレーションの結果、得られたそれぞれの植物付近(棚間下部)の気温上昇分(ΔT)の値を表1〜15に示す。なお、本結果におけるΔTの値は、棚間下部を保持容器の上端から80mm(棚間有効高さの1/5〜4/5)の高さとして算出した。
入熱量(Q):98.3、197、393[W/m]
棚間有効高さ(H):100、200、300、400[mm]
有効棚幅(D):0.0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0[m]
風速(V)を0.4 m/s、
入熱量(Q)を197 W/m、
棚間有効高さ(H)を300 mm
として得られた栽培棚内温度分布のコンター図が図5である。図5から、熱伝導、移流、対流によって栽培棚入口から送風方向に徐々に栽培棚内の温度が上昇していっている様子が分かる。
栽培棚内に配置される植物周辺の気温を、栽培最適範囲に維持可能な栽培棚の棚間有効高さ(H)および有効棚幅(D)は、本二次元有限体積法シミュレーションの実施結果に、最小二乗法でフィッティングすることで得られた式(4)を用いて決定できる。
α=710.8K・m/s、
n=1.3、
0.2m/s≦風速(V)≦1.0 m/s、
0.5≦入熱量比(Q’)=入熱量(Q)/197W/m)≦2.0、
100mm≦棚間有効高さ(H)≦400mm、
0.0m≦有効棚幅(D)、
である。
図6に、風速(V)を0.4m/s、入熱量(Q)を197W/m、棚間有効高さ(H)を400mmとして式(3)から得られた、各段の有効棚幅(D)における棚間下部の気温上昇分(ΔT)の値をプロットしたグラフを示す。
図6の条件において、仮に栽培棚内の好ましい温度分布幅が4.0℃であるとすると、図6中の網掛け範囲の棚間有効高さ(H)および有効棚幅(D)を有する栽培棚が、植物周辺の気温を栽培最適範囲に維持可能な栽培棚である。
11 保持容器
111 上端面
12 照明装置
13 支持構造体
131 柱
132 支持面
133 天井面
134 仕切部材
14 棚間
15 部屋
16 吹出部
17 吸込部
18 端部空気流入口
19 端部空気流出口
20 給気配管
21 空気流入出口
211 空気流入出口から吹き出す気流
Claims (10)
- 床、側壁、及び天井を有する部屋内に、栽培棚、及び空調装置を備え、該空調装置の吹出部が、部屋内全体の空気調整を行えるように部屋の側壁面に設置され、該空調の吸込部が該側壁面と向かい合う側壁面に設置される、植物栽培設備であって、該栽培棚が、
植物を保持する保持容器、照明装置、及び該保持容器を載置可能な支持面と、支持面に対向する面であって該保持容器の上方に照明装置を設置可能な天井面とを、高さ方向に複数段有する支持構造体、を備え、
保持容器の上端面から直上の該天井面までの距離を棚間有効高さ(H)、支持構造体に載置された保持容器における送風方向と平行な方向の距離を式(2)から求められる有効棚幅(D)とした場合に、棚間有効高さ(H)と有効棚幅(D)から以下の式(1)により求められるΔTの値が、10℃以下であることを特徴とする、植物栽培設備。
ΔT:有効棚幅Dの区間における棚間下部の正味の気温上昇分[℃]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]、
Δtj:栽培棚中に設けられた空気流入出口のうち端部空気流入口から送風方向へ1から順番に数えてj番目の空気流入出口における気温降下分[℃]、
Q’:照明装置による入熱量比、
V:棚間への空気流入風速[m/s]、
H:棚間有効高さ[mm]を意味する。)
D:有効棚幅[m]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]を意味する。) - 送風方向における空気流入出口間の長さ(Li)が2m以上である、請求項1に記載の植物栽培設備。
- 有効棚幅(D)が15m以上である、請求項1または2に記載の植物栽培設備。
- 端部以外の空気流入出口の数(b)が1以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 前記照明装置が蛍光灯である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 前記照明装置がLEDである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 前記植物が、タンパク質合成用植物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 更に、前記空調装置の吹出部が、前記該栽培棚の棚間毎の空気調整を行えるように栽培棚側面に設置される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 前記栽培棚が複数台配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の植物栽培設備。
- 空調装置により調整された空気が送風される空間で植物を栽培するために用いられる栽培棚において、該栽培棚が植物を保持する保持容器、照明装置、及び該保持容器を載置可能な支持面と、支持面に対向する面であって該保持容器の上方に照明装置を設置可能な天井面とを、高さ方向に複数段有する支持構造体、を備え、
保持容器の上端面から直上の該天井面までの距離を棚間有効高さ(H)、支持構造体に載置された保持容器における送風方向と平行な方向の距離を式(2)から求められる有効棚幅(D)とした場合に、棚間有効高さ(H)と有効棚幅(D)から以下の式(1)により求められるΔTの値が、10℃以下であることを特徴とする、栽培棚。
ΔT:有効棚幅Dの区間における棚間下部の正味の気温上昇分[℃]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]、
Δtj:栽培棚中に設けられた空気流入出口のうち端部空気流入口から送風方向へ1から順番に数えてj番目の空気流入出口における気温降下分[℃]、
Q’:照明装置による入熱量比、
V:棚間への空気流入風速[m/s]、
H:棚間有効高さ[mm]を意味する。)
D:有効棚幅[m]、
b:端部以外の空気流入出口の数、
Li:端部空気流入口から送風方向へ、1から順番に数えてi番目の空気流入出口間の距離[m]を意味する。)
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