JP6248256B2 - 完全人工光型植物栽培設備 - Google Patents
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Description
近年、野菜等の安全性や食糧の通年計画生産、安定供給の観点により、自然環境から隔離された人工環境下で光、温湿度、気流速度、二酸化炭素濃度を制御し、高品質・高機能な植物を高密度で生産する手法として植物工場が注目されている。その中でも完全密閉人工光型植物工場は、一定の収穫量で安定的に無菌・無農薬・ゼロベクレルの農作物を栽培可能な利点がある。
しかしながら、完全人工光型植物工場は、従来の農業生産方法と比較して、照明費や空調費等の面で、植物の生産コストが高く、省エネによるコスト削減が大きな課題である。これにより、植物工場を事業化しても利益を出すことは困難となり、この分野の市場の広がりが妨げられているのが現状である。
一方、植物周囲の風速分布により、植物から発生する水蒸気、酸素(O2)や二酸化炭素(CO2)の濃度分布が栽培棚内に形成されるため、植物工場において栽培棚内の空気環境の制御は極めて重要である。特に、植物周辺の気流が滞り、自身の蒸散作用によって周囲の空気が飽和状態に近い高湿度になった場合、それ以降の蒸散が妨げられるため、根から水分と共に光合成に必要な養分を吸い上げることが困難となり、光合成速度と植物内の養分移動速度のバランスが崩れることによる植物のストレス応答及び生育障害等が発生する。更に、気流が停滞し、葉柄と茎の隙間に水滴が付着し続けた場合、カビ等の温床となる可能性がある。
植物栽培装置に関する先行技術文献として、例えば、特許文献1が挙げられ、高光反射性の栽培パネルや高光反射性の反射板で栽培空間を覆うこと、及び、温度・湿度を調節する空調装置が既に開示されている。また、特許文献2〜4にも、反射板で栽培空間を覆うことが開示されている。
しかしながら、特許文献1においては、白色塗装された反射板を使用すること以上の詳細、例えば、植物工場用反射板に求められる反射率の具体的な値や、反射率が植物工場の生産コストに及ぼす影響等についての定量的な検討結果は何も開示・示唆されていない。また、特許文献2や4の反射面には鏡面材が使用されることが開示され、特許文献3の反射面には白色樹脂板が使用されることが開示されているが、反射材に関するそれ以上の詳細な検討については、開示されていない。
また、特許文献1での空気を取得・排出する流路構造は、栽培棚の側面に給気用或いは排気用ファンを設けただけの単純な構造であり、植物周囲の風速・濃度分布を適正に保つことのできるものであるとの確証は無い。なお、特許文献2〜4については、気流案内構造はおろか空調機器自体が取り付けられていない。
また、特許文献1〜4では人工光源として蛍光灯が使用・開示されているため、照明費等の生産コストを十分に抑えることができない。なお、LED、特に点光源型のLEDは、従来の蛍光灯に比べ照明費を抑制可能であるが、照射される光に指向性があるため、これを植物工場に採用した場合には、LEDとの相対位置によって、栽培棚内に定植した植物の育成(繁茂)具合に偏りが生じる恐れある。
直方体状を成し、該直方体の下面に植物の定植が可能な内部空間と、
前記内部空間に空気を供給する給気口と、
前記内部空間から空気を排気する排気口と、
前記内部空間を照射可能な複数のLED光源と、
を有した栽培棚を備え、かつ、
前記内部空間の全面は、全反射率95%以上の超高効率光反射材で覆われ、
前記給気口は前記内部空間の上面又は短辺側面の少なくとも一方に設けられるとともに、
前記排気口は前記内部空間の長辺側面の中央部分に設けられることを特徴とする完全人工光型植物栽培設備。
(態様2)
前記給気口は前記内部空間の前記中央部分を挟んで前記上面の左右に複数設けられることを特徴とする態様1に記載の完全人工光型植物栽培設備。
(態様3)
前記LED光源は複数の点光源であり、前記内部空間の全面の少なくとも一面に不均一に配置されていることを特徴とする態様1又は2に記載の完全人工光型植物栽培設備。
(態様4)
前記光反射材が光拡散型反射材であることを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
(態様5)
前記光反射材の全反射率が99%以上であることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
(態様6)
前記植物の生育状況及び生育条件に応じて、前記LED光源の一部又は全部を消灯可能な、又は、前記LED光源の一部又は全部で発する光量を変更可能な光環境制御装置をさらに備えていることを特徴とする態様1〜5のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
実施例1では、栽培設備内の空気環境制御方法を検討するため、数値流体解析(CFD)を行った。図1に本発明の栽培設備の数値解析モデルの概要を示す。図1(a)ではcaseAのモデルを、図1(b)ではcaseBのモデルを示す。双方のモデルとも、栽培設備内には、給気口(50mm×50mm)が8箇所、排気口(345mm×50mm)が2箇所設けられている。なお、給気口(ファン)は、caseAでは栽培棚の内部空間の上面に設けて下向きに給気する。より具体的には、給気口は内部空間の中央部分を挟んで上面の左右に複数(4個ずつ)均等に設けられた構成である。一方、caseBでは内部空間の左右側面に設けて横向きに給気する。より具体的には、給気口は、左右側面に複数(4個ずつ)設けられるが、そのうちの3個が植物に近い下側に、残りの1個が上面(天井)に近い上側に設けられた構成である。なお、排気口は両モデルとも設備長辺側の両側面中央部に設ける。
図2(a)及び(b)に本実施例の栽培設備の風速分布を示す。尚、caseAの(1),(2),(3)と、caseBの(1),(2),(3)は、それぞれ拡散物質発生位置がパラメータであり、風速分布自体はそのパラメータの影響を受けないので同様である。従って、図2(a)に示すようにcaseAで1つ、図2(b)に示すようにcaseBで1つの風速分布が示されている。
図3に本実施例の栽培設備の拡散物質度分布を示す。図3の各グラフでは、濃度分布を拡散物質発生量とファンの風量により、完全拡散濃度で基準化して表示する。どの拡散物質発生位置においても、caseB(水平方向に給気)と比較してcaseA(鉛直方向に給気)の方が、植物周囲の濃度が低い。従って、栽培設備ダクト内において植物から発生する水蒸気等が栽培棚内に滞ることなく、比較的効率良く換気されるのはダクト型栽培設備の上面から鉛直下向きに給気するcaseAの方式であると考えられる。
次の実施例では、本発明の栽培設備を試作・使用してリーフレタスの栽培実験を行った。図4に本実験に供した栽培棚の外観を示す。栽培設備内には栽培棚、養液タンク、育苗棚、光・温熱空気環境の制御・実測機器等が設置された。
以上説明した実験設備及び実験条件により、栽培実験を行い、後述する実験結果を得た。
表2に各設備機器の電力消費量を、図5に各栽培条件における1日当たりの電力消費量を示す。case5,6の照明用電力消費量はそれぞれ46W(赤色LEDで23W、青色LED)であり、case4に比較して約1/2に設定されている。case5,6の電力消費量は、1日当たりの電力消費量が最も大きな条件であるcase1(蛍光灯)と比べると、約43%(約1.2kWh/日)も小さい。又、case5,6ではダクト内の換気用に設置されているファンの電力消費量が全体の約20%を占めている。
表3に各栽培条件の収穫重量(より具体的には、最大重量、最小重量、平均重量、総重量、変動係数)を示す。図6(a)は、表3で示した各栽培条件の平均重量、最大重量及び最小重量をグラフ化し、図6(b)は各栽培条件の総重量及び変動係数をグラフ化したものである。表3の収穫結果は、各栽培条件ともリーフレタス8株(全定植時は各条件32株)を収穫した場合であり、平均重量と総重量は、各栽培条件で収穫した株の中で収穫重量が最も大きい株と小さい株の2株を除いて算出した。
表4に各栽培条件での電力消費量及び収穫重量(総重量)を、図7に各栽培条件の単位電力消費量当たりの収穫重量(左側棒グラフ)及び単位照明用電力消費量当たりの収穫重量(右側棒グラフ)を示す。ここで、case5,6では、ファンを用いた為、ファンでの消費電力を除いて導出された右側の棒グラフが左側の棒グラフに比べて高い値となった。
Claims (6)
- 直方体状を成し、該直方体の下面に植物の定植が可能な内部空間と、
前記内部空間に空気を供給する給気口と、
前記内部空間から空気を排気する排気口と、
前記内部空間を照射可能な複数のLED光源と、
を有した栽培棚を備え、かつ、
前記内部空間の全面は、全反射率95%以上の超高効率光反射材で覆われ、
前記給気口は前記内部空間の上面又は短辺側面の少なくとも一方に設けられるとともに、
前記排気口は前記内部空間の長辺側面の中央部分に設けられることを特徴とする完全人工光型植物栽培設備。 - 前記給気口は前記内部空間の前記中央部分を挟んで前記上面の左右に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の完全人工光型植物栽培設備。
- 前記LED光源は複数の点光源であり、前記内部空間の全面の少なくとも一面に不均一に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の完全人工光型植物栽培設備。
- 前記光反射材が光拡散型反射材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
- 前記光反射材の全反射率が99%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
- 前記植物の生育状況及び生育条件に応じて、前記LED光源の一部又は全部を消灯可能な、又は、前記LED光源の一部又は全部で発する光量を変更可能な光環境制御装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の完全人工光型植物栽培設備。
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