JP3500433B2 - 植物育成方法 - Google Patents

植物育成方法

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JP3500433B2
JP3500433B2 JP20086693A JP20086693A JP3500433B2 JP 3500433 B2 JP3500433 B2 JP 3500433B2 JP 20086693 A JP20086693 A JP 20086693A JP 20086693 A JP20086693 A JP 20086693A JP 3500433 B2 JP3500433 B2 JP 3500433B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、人工光を有効に利用し
て植物を育成する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】植物の人工光栽培は、育成室内の光エネ
ルギー,温度,炭酸ガス濃度,水耕液の養液組成,酸素
濃度を含めた環境条件を人工的に制御して植物を栽培す
る設備である。植物の育成は、環境条件に大きく左右さ
れるのは周知のとおりであり、植物の成長のためには、
光エネルギーの供給が重要な要件となる。 【0003】植物の人工光栽培では、光エネルギーの安
定供給のため、人工照明が用いられる。人工照明の光源
に要求される性能としては、植物の育成に必要とされる
波長の光を植物に適合した強度で供給することである。
このような要求を満たすためには、一般には、植物の種
類によって異なるが、高圧ナトリウムランプ,水銀ラン
プ,メタルハライドランプ,蛍光灯などを単独又は併用
して或る範囲の波長域をカバーすることが本来好ましい
とされている。 【0004】ところで、植物の人工光栽培で要求される
ことは、最少のエネルギー消費で最大の収穫をあげるこ
とである。この意味で育成室の容量が大きいことが必ず
しも有利であるとは言えない。育成室の容量が大きけれ
ば大きいほど人工照明具の数を増やさなければならず、
光エネルギーに無駄が生ずる。 【0005】上記問題を解決した先行例として、特開昭
62−55028号公報には、植物の成長に応じて天井
板を傾け、植物から人工光源までの間隔を狭めて光エネ
ルギーの低減を図るようにした植物栽培装置が記載され
ている。この装置は、植物の成長にあわせて天井の高い
方へ植物を移動させ、植物と蛍光灯との間隔を成育中常
に接近させて植物が光を有効に受け止めることができる
ようにする、という試みのものである。また、この装置
では、天井板の天井面及び周壁板の内面である周壁面を
光反射率の高い反射板によって構成されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記先行例は、要する
に、植物に光源を常に接近させることによって、光の利
用効率を高めようとするものである。 【0007】上記先行例において、光の利用高率を高め
るという意味は、単純に光源を植物に接近させるという
意味に用いられたものと思われる。しかし、光利用効率
を高めることの本来の意味は、光源から発した光のでき
るだけ多くを植物に吸収させることでなければならな
い。光源を植物に接近させることは、たしかに直接光が
照射される植物の部分についての光の利用効率が高いと
言えるが、植物が育成室内の空間の大部分を占めて密植
状態か又はそれに近い状態になっているときには、直接
光を受光する部分は植物のごく一部にすぎない場合があ
り、植物の全体について必ずしも光利用効率が高いとい
うわけではない。 【0008】逆に植物の大きさに比して容量が十分に大
きい育成室内で植物を栽培するときに、育成室の内面に
反射板を設けることは、反射光を利用する上に有効では
あるが、反射板間で光が反射を繰り返すことは、光エネ
ルギーが熱エネルギーとなって消費されることであり、
育成室内が明るいことが必ずしも植物への光利用効率が
高いことにはならないが、植物が成長してゆくために必
要な光の強さ(光量)は、植物の品種,成長過程によっ
て定められるべき問題であり、植物の種類,成長過程の
如何に関わらず、一様に光エネルギーを供給すること、
あるいは光利用効率が高いから優れた成長効果が得られ
るというものではない。 【0009】 本発明の目的は、光源の直射光線とその
反射光を有効に利用して植物を育成させる方法を提供す
ることにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明による植物育成方法においては、天井板の高
さと反射膜の引き下げ量とを制御して同一品種の複数株
の植物を育成室内で生育させ、同一時機に収穫する植物
育成方法であって、育成室は、正面開閉扉を設けた箱体
であり、扉には透明ガラスがはめ込まれ、室内の区画に
育成床を有し栽培床は、同一品種の複数株の植物を植え
付ける水槽であり、苗を差し込む穴を有する植物育成板
にて施蓋され、植物育成板の上面に反射板を有し、天井
板は、区画内を上下させて植物育成板からの高さを調整
可能に設置されたものであり、下面に反射面を有し、蛍
光灯が設置され、蛍光灯は、栽培床の植物に光線を照射
するものであり、天井板と一体に上下動し、反射板は、
扉面を除く育成室の区画内部に付されたものであり、反
射膜は、扉の透明ガラスの内面を覆い、巻き上げあるい
は引き下げ可能であり、巻き上げ状態で区画内は5面反
射、引き下げ状態で区画内は6面反射となるものであ
り、植物の種類あるいは植物の成長状況に応じて天井板
の高さを上下に変化させるとともに、扉を覆う反射膜の
面積の大小によって区画内の有効反射面積を調整して育
成室内の区画の反射光量を制御し、育成室内の植物に、
その成長に適正な光量を与えるものである。 【0011】 【0012】 【0013】 【作用】植物の生育には光は必須のものである。その強
さ(光量)については一般的に照度(ルックス)で表し
ている。しかし、光は不足していると成長が遅く、成長
不全が生じ、過剰であっても焼け等の照度障害が生じて
成育によくなく、適正な値が必要となる。その強さ
(量)は植物の種類によって大巾に異なっており、種々
の見解があるが概ね表1のように分類される。 【0014】 【表1】【0015】また、植物の種類のみならず、その成長過
程(播種〜収穫)においても異なっており、植物の人工
光栽培では、成長過程を通し、その適正時期を外さぬよ
う注意して管理することが必要である。 【0016】太陽光は強く、10万ルックス以上に達
し、その光強度は、すべての植物に対し充分であるが、
個々の植物の成長に対する適合性は、天候,地域,時節
に制約される。一方、人工光は、照度は、著しく弱く、
すべての植物に対して充分な必要照度を得ることは難し
い。現状の植物工場では、高圧ナトリウムランプ,メタ
ルハロイドランプや水銀灯を併用してようやく18,0
00〜20,000ルックスを得て低照度,低温度,低
照度,低温度植物を栽培しているに過ぎない。一般に蛍
光灯については、光の弱さ,電力効率等の点から上述の
光源に劣り、植物工場では、殆ど採用されていない。 【0017】本発明は、蛍光灯の特性を生かして植物の
成育に可能な方法を見出したことであって、その主な方
法は、反射光の制御によって植物に必要な光を得ること
である。本発明によれば、強照度高温性の植物をも作り
得ることができ、更に驚くべきことに、植物の光補償点
といわれる1500〜3000ルックス程度でも充分に
植物を成長させることができたことである。 【0018】植物に必要な光は、その種類や成長過程に
おいても異なるため、一定の強さ(量)の光では植物の
必要に応じられない。光の強さを変位させるためには、
光源の光の強さ(量)そのものを変化させることも考え
られるが、その経済性や操作性に無理がある。 【0019】本発明は、基本的に、主光源の強さを変化
させるのではなく、光源の位置を反射光の量を増減させ
ることにより植物に必要な光としたことである。 【0020】 【実施例】以下に本発明の実施例を図によって説明す
る。図1,図2において、育成室1は、正面に開閉扉2
を設けた箱体であり、扉2には透明ガラス3が嵌め込ま
れ、底面,背面及び左右両側面の各内面には反射板4が
取付けられている。あるいは、箱体がステンレス板の鏡
面仕上げのような高反射の鏡面を有する金属板を組立て
たものであってもよい。 【0021】箱体の底面には、栽培床5が設置されてい
る。栽培床5は、要するに水耕栽培用の水槽であり、水
槽内には養液が満たされ、水槽を施蓋する植物育成板6
の穴に苗を挿入し、その根を水槽内の養液に浸して養分
を吸収させる通常形式のものである。植物育成板6に
は、ステンレスの鏡面仕上げ板あるいは、蒸着金属膜を
付着した樹脂板などの反射面を有する板を用いている。
天井板7は、下面に反射面8を有し、箱体の上底の留具
9に鎖10で吊され、鎖10の長さを調整して植物育成
板6からの高さを自由に調整できるようになっている。 【0022】天井板7の下面には蛍光灯13を設置す
る。蛍光灯13は、栽培床5に植付けられた植物Pの光
エネルギー供給源であるが、また、植物Pの成育状況を
観察する照明灯でもある。 【0023】扉2の上方には、巻胴11を横架させ、巻
胴11には、図3のように内面側を反射面とした反射膜
14を巻付けている。反射膜14は、巻胴11に内蔵し
たばね12の弾性に抗して扉2に沿って吊下げ、透明ガ
ラス3の内面を覆い、育成室1の両側に設けた止具15
に、反射膜14の下端の杆16を引掛けて、反射膜14
による区画内の有効反射面積を調整するものである。反
射膜14を巻き上げて扉2のガラス面を開放すれば、区
画内は5面反射となり、反射膜14を引き下げて扉2の
ガラス全面を覆えば、区画内は6面反射となる。その
間、扉2を覆う反射膜14の面積の大小によって有効反
射面積が制御される。植物の種類,成育状況にあわせて
有効反射面積を調整する。栽培床5上の植物Pには、蛍
光灯13の発光による直射光と、箱体内壁の反射面から
の反射光とが各面から植物に照射される。 【0024】箱体の容量にもよるが、光源が面又は線状
光源の場合に、植物と光源間の距離が多少増大しても、
拡散による光損失の程度は僅かである。しかし、反射光
は内面の反射面の相互間で反射を繰返して反射面に吸収
されるため、植物への光エネルギー供給量の大小は、専
ら有効反射面積の割合によって制御されることになる。
なお、図においては、箱体内に一区画の育成室1を設け
た例を示しているが、箱体内を上下2段以上に仕切り、
各段を一区画として複数の育成室を設けることができ
る。 【0025】(実施例)以下に本発明の実施例を示す。 A.植物育成装置 実施例に用いた育成室は以下のとおりである。 1)構造 断熱密閉式箱型 2)栽培室 幅W1250mm×奥行D450mm×
高さH1000mm 内壁(6面) 正面 前 ガラス 内部に巻揚げ式の反射膜を取付
けた。 正面 奥 鏡 側面 左 ガラス面にアルミ蒸着のフィルムを張り
付けた。 側面 右 ガラス面にアルミ蒸着のフィルムを張り
付けた。 天井 天井とは別に、ステンレススチール鏡面
仕上板に蛍光灯を取付け、上下動可能に吊下げた。 底 ステンレススチール鏡面仕上板を置いた
(植物育成板は、20m/mφ穴開き板を使用した。) 3)段数 2段 各段高さ 50cm 4)栽培水槽 ステンレススチール製 W1100×D
340×H100mm3(上部植物育成板は、鏡面仕
上) 5)光源 蛍光灯 3波長域発光形 40W 1段
につき2本 6)環境条件の設定 i)制御関係 育成室の温度のみエアコンによ
り制御 ii)エアポンプ 4.5W 5リットル/分 iii)CO2発生器 接触酸化方式 iv)循環ポンプ イワキ マグネットポンプ 4
リットル/分 v)冷凍機 375W 【0026】B.栽培方法 1)水耕 i)養液循環式 循環ポンプ(15分毎の間欠運転)の
稼動により下段の水槽より液を上段の水槽へ液を掲げ、
上段の水槽が一杯(規定量)になったら、サイフォンに
より下段の水槽に落下させて戻す。水槽内の水深を15
〜70m/mの範囲で変動させた。 ii)空気CO2吹込 エアポンプにより高濃度のCO2
を含有した空気を養液中に吹込む。 2)栽培室 i)照射 蛍光灯を取り付けた天井板(鏡面)を上下さ
せ、植物の照射を行う。 ii)CO2濃度 炭酸ガス発生器により栽培期間中高
濃度とする。 3)定植 播種−発芽−育苗(挿木−育苗)により本葉
2〜3枚の頃(挿木は根着いた頃)の苗をウレタンチッ
プに挾み、根が養液に充分漬るように栽培床の孔を通し
て水槽に挿し込む。但し、ハイビスカス,アジサイ等の
挿し木の場合は、鉢と礫を用い、鉢ごと液に浸す礫耕と
した。 4)成育条件の設定 i)温度 18〜23℃ ii)湿度 65〜85% iii)栽培室CO2濃度 800〜1200ppm iv)養液関係 イ)温度 19〜21℃ ロ)pH 7.0〜5.5 ハ)EC 1.0〜1.8(EC:
電気伝導液=肥料濃度) ニ)吹込空気中のCO2濃度 800〜1200ppm v)光関係 イ)照度 3000〜11000ル
ックス ロ)照射時間 16〜24時間/1日 【0027】C.試験の方法 1)方法 以下の1),2)について試験を行った。 i)5面を反射体とし、残りの1面を透過ガラスのまま
としたもの(5面反射) ii)5面を反射体とし、1面透過ガラスの内面を反射
膜で少なくともその一部を覆ったもの(6面反射) iii)天井板 蛍光灯を取付けた天井板を上下に動か
してその高さを調節した。 2)検査 i)成育速度 収穫となるまでの期間 ii)光り障害 成長段階における萎縮,焼け,色素を
観察した。 【0028】D.成育結果 各種植物の成育結果は、表2のとおりである。 【0029】 【表2】【0030】表2において、青ちしゃ,焼肉レタス,ハ
イビスカス,あじさいについては、植物の成長にあわせ
て成長期間中、植物と蛍光灯との間隔がほぼ一定(10
cm、又は35cm)になるように天井板の高さを調整
したものである。 【0031】また、モロヘイヤと、日日草については、
成長初期は、天井板を植物に近付け、成長後期は、植物
より引き離してその高さを制御したものである。 【0032】E.考察 以上の結果により、あじさいを除いて5面反射の育成室
を用いても十分に成育させることができた。この植物の
成長速度を、変動しやすい自然条件の下での成長速度と
一概に比較することはできないが、一般に考えられてい
る各植物の成長速度の1/2〜1/3である。 【0033】青ちしゃ,焼肉レタスに関しては、6面反
射のときにも光障害が表われていないことから、その成
育には光エネルギーが大きいほど好ましいといえる。他
の植物に関しては、6面反射としたときには、成長途中
に何らかの光障害が表われた。これは、光エネルギーの
供給が大きすぎるためであり、これらの植物には反射光
を減少させる必要があることがわかる。 【0034】特にあじさいに関しては、5面反射でも光
障害が生じており、光源として40Wの蛍光灯2本では
光量が多すぎるという結果になった。 【0035】以上実施例においては、箱型の育成室に本
発明を適用した例について説明したが、育成室は必ずし
も箱型に限らず、トンネル式、その他の形式の育成室で
あってもよい。トンネル式の育成室の場合には、トンネ
ル内面を反射面とし、また床土上には、反射面を有する
シート類を敷設し、トンネルの天井より、蛍光灯などを
吊下げ、植物の種類,成育状況にあわせてトンネルシー
トの一部を開いて植物に対する反射光量を調整する要領
は全く同じである。 【0036】 【発明の効果】以上のように本発明によるときには、光
源を設置した成育室の区画の反射光量を植物の成長状況
にあわせて調整することにより、植物の成長に適正な光
量を与え、自然環境下に較べて短期間で成長させること
が可能となり、蛍光灯を光エネルギー源に用い、その反
射光量を制御しつつ適正な光量を植物に与えて収穫時機
を制御することができ、また、一定容量で必要により天
井板を上下させ、一部の反射面に反射膜を用いてこれを
開閉するのみのため、成長室で同一品種の複数株の植物
を同一条件で成育させ、すべての株を同一時機に収穫で
きる。本発明は、従来補助光源として使用されていた蛍
光灯のような弱い光の人工光源でよいため、消費電力が
少なく、省エネルギー化に有効である。 【0037】 また、本発明方法によれば、箱体一面に
ガラス扉を設けて内部を透視できるため、成育状況の観
察が容易であり、箱体は、そのままショーケースとして
店頭に陳列できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例を示す一部断面斜視図であ
る。 【図2】同断面側面図である。 【図3】反射膜の取付構造を示す図である。 【符号の説明】 1 育成室 2 扉 3 透明ガラス 4 反射板 5 栽培床 6 植物育成板 7 天井板 8 反射面 9 留具 10 鎖 11 巻胴 12 ばね 13 蛍光灯 14 反射膜 15 止具 16 杆
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01G 31/00 612 A01G 7/00 601 A01G 9/20

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 天井板の高さと反射膜の引き下げ量とを
    制御して同一品種の複数株の植物を育成室内で生育さ
    せ、同一時機に収穫する植物育成方法であって、 育成室は、正面開閉扉を設けた箱体であり、扉には透明
    ガラスがはめ込まれ、室内の区画に育成床を有し 栽培床は、同一品種の複数株の植物を植え付ける水槽で
    あり、苗を差し込む穴を有する植物育成板にて施蓋さ
    れ、植物育成板の上面に反射板を有し、 天井板は、区画内を上下させて植物育成板からの高さを
    調整可能に設置されたものであり、下面に反射面を有
    し、蛍光灯が設置され、 蛍光灯は、栽培床の植物に光線を照射するものであり、
    天井板と一体に上下動し、 反射板は、扉面を除く育成室の区画内部に付されたもの
    であり、 反射膜は、扉の透明ガラスの内面を覆い、巻き上げある
    いは引き下げ可能であり、巻き上げ状態で区画内は5面
    反射、引き下げ状態で区画内は6面反射となるものであ
    り、 植物の種類あるいは植物の成長状況に応じて天井板の高
    さを上下に変化させるとともに、 扉を覆う反射膜の面積
    の大小によって区画内の有効反射面積を調整して育成室
    内の区画の反射光量を制御し、育成室内の植物に、その
    成長に適正な光量を与えることを特徴とする植物育成方
    法。
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