JP2007289125A - 植物栽培方法及び植物栽培装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 イチゴなどの植物の花芽分化率の向上、収穫量の増加、作業の省力化、省電力化を達成することを可能とした植物栽培方法及び植物栽培装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 植物栽培における花芽分化形成段階において人工光源を利用し、照明点灯時間と消灯時間の制御により短日処理を行う花芽形成において、照明点灯時間の処理温度を消灯時間内の処理温度より3℃以上の増加変温処理を施す植物栽培方法。
【選択図】 図12

Description

本発明は、人工光を利用して植物を栽培する植物栽培方法及び植物栽培装置に関する。
植物栽培の内、イチゴは低温と短日によって花芽分化が促進されるため、一般的には秋に花芽形成が行われ、冬は休眠状態となる。春になると目覚め再成長を開始して、5〜6月に収穫されるのが本来の姿である。通常の露地栽培では9月下旬に花芽分化が起こり、10月下旬に完了し、その後は低温に耐えるため休眠状態に入り、ロゼット化した草姿で冬を迎える。
春になると休眠が明けたイチゴは活発に葉を展開するとともに花房を出す。そのため収穫時期は4〜5月になる。その頃になると、花房の花の開花とともにランナーも出し始める。低温期を経過したイチゴは、生殖生長から栄養生長へと進み、子苗の基となるランナーを発生する。発生したランナーは同年の9月下旬に花芽を分化し翌年花を咲かせることになる。
ハウス内でイチゴを栽培する場合、9月下旬に花芽分化した苗を定植し、休眠状態に完全に入る前(10月下旬)に保温を開始して、花を展開させ花房を出させる。こうすることでイチゴは半休眠のまま花房を次々に出す。しかし、3月下旬にはハウス内のイチゴも休眠から明け、生殖生長から栄養生長へと移行するものの、この移行程度は露地栽培と比べて遅く、花房の発生は6月いっぱいまで続くことになる。通常の促成栽培では、12月中から6月までの収穫が可能となる。
花芽分化を促進させる方法として実際に用いられているのは、低温暗黒処理、すなわち一定期間、低温「15℃以下」で暗黒中に保管する方法と、夜冷処理、すなわち昼間は室外「太陽下」に放置し、夜間は低温庫に放置するがある。これらの方法は、低温処理では花芽分化率が非常に悪く、処理中に枯死する苗も出てしまう。また、夜冷処理においては、低温庫と室外の間を移動させるために大掛かりな設備が必要であり、大規模な初期投資が発生する。
これらを解決する方法として、人口光源を用いた方法が以下のように提案されている。すなわち、温度15℃、赤色成分の光を0.6μmol/m/s照射することによって花芽形成を促進させる方法(特許文献1参照)や、青色成分の光を10μmol/m/s以上照射することで花芽分化を促進させるという報告がある(特許文献2参照)。
特許文献1においては、温度条件15℃、光量3.2〜6.0μmol/m/sの条件が記されているが、この光量では十分な花芽分化率を得ることができず、また、特許文献2においては、光量に関しては30〜150μmol/m/sと記載されているものの、温度との関係は記されていない。
野菜や果実の生産、育苗、植物の鑑賞あるいは接木などにおいて、省エネルギ化、無農薬化、生産性の向上、省スペース化などを目的として、人工光源を利用する植物栽培手段が広く採用されつつある。すなわち、太陽光を利用する植物の自然栽培では、例えば日照量(例えば日照不足)などの変動要因が大きく左右し、生育させた植物の品質にバラツキを生じ、あるいは生産量などに影響する。これに対して、人工光源を利用する植物栽培では、日射量などを任意に制御できるので、所要の生育環境を人工的に造ることが可能である。
イチゴの花芽処理を形成させる条件として、低温(10℃〜15℃)と短日(日長8時間以下)により花芽が形成されるということが公知である。従来の栽培方法には大きく分けて3つの方法がある。
露地栽培などの自然条件にまかせる方法は、低温や短日などの処理をせずに太陽光下、植えっ放しで栽培する方法である。この方法では3月頃に花芽をつけ4月〜5月に収穫される。このときの販売単価は非常に低く、11月〜12月のイチゴ単価に比べ15%〜25%であり、総収穫量も少ない。
暗黒・低温処理は、2週間から3週間、暗黒の低温にて処理されるため光があたらず、苗質が悪い状態で出される。また、苗の状態により花芽分化率がばらつくという問題がある。
夜冷処理をすると夜間は低温庫に苗を移動させ、昼間は太陽光下に移さないといけないため、出し入れの労力が大変であり、自動化の設備を導入すると大がかりな設備が必要であり、大規模な初期投資が発生する。また、気象条件(曇りや雨)により苗の花芽分化や苗質にばらつきが大きいという問題がある。そこで、コンテナを使い人工光源を搭載した栽培装置も提案されているが、この提案されている光源装置の明るさと温度条件にて処理した花芽分化率よりも、顧客は更に高い分化率を求めている(特許文献3参照)。
特開平7−322759号公報 特開2001−258389号公報 特開2005−40013号公報
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、イチゴなどの植物の花芽分化率の向上、収穫量の増加、作業の省力化、省電力化を達成することを可能とした植物栽培方法及び植物栽培装置を提供することを目的とする。
本発明に係わる植物栽培方法は、植物栽培における花芽分化形成段階において人工光源を利用し、照明点灯時間と消灯時間の制御により短日処理を行う花芽形成において、照明点灯時間の処理温度を消灯時間内の処理温度より3℃以上の増加変温処理を施すことを特徴とする。
また、本発明に係わる植物栽培装置は、上面が開口しているコンテナと、このコンテナの対向する側面上部中央に形成された一対の貫通口と、前記一対の貫通口のいずれか一方から前記コンテナの開口部に挿入され上端が前記開口部上端から上方へ突出することなく配置された光源装置と、前記コンテナの側面並びに前記開口部を被覆するカバーとを具備することを特徴とすることを特徴とする。
イチゴなどの植物の花芽分化率が向上し、総収穫量も通常栽培に比べて高い結果が得られ、健全で活性の高い苗に仕上がる効果がある。また、苗の出し入れがなく、設置したまま24時間タイマーによる動作の確認と水やりのみでよく、作業の省力化が認められた。更に、栽培密度を上げることができ小さい冷温庫で多くの低温・短日処理ができ、建物や空調設備に必要な初期投資が少なくてすみ、冷却を行う空調設備の容量も小さくてすむ。また、空調を行う容積も栽培密度が増加したため、少なくてすみ省電力化が可能となる。
以下に本発明の実施形態をイチゴ苗の栽培例に図を参照して説明する。図1には本発明の実施形態にて対象なるイチゴ苗を示してある。イチゴ苗11は各々角形のポット12に植栽されて長方形の苗トレー13に50個配列して収納される。この苗トレー13は図2に示したコンテナ14内に収納される。コンテナ14は、プラスチック製であって、幅52cm、奥行き32cm、高さ31cmで、短側面15並びに長側面16には多数のスリット17が形成されている。短側面15の上部であって開口部18の近傍にはコンテナ14の内外を貫通する長方形の取っ手口19が形成されている。また、短側面15ならびに長側面16に形成されている多数のスリット17の各々は長形で、4段にわたってコンテナ14の内外を貫通して形成されている。
取っ手口19は長方形の開口によって形成されており、文字通りコンテナ14の運搬に際して利用されるが、本発明にあっては、後述するように光源装置の装着にあたって重要な役割を果たすことになる。また、取っ手口19を囲む板状体の内、上部の板状体は鍔部20に形成されている。このようなコンテナ14の内部には図3に示すように苗トレー13に配列された状態で収納される。
このようにコンテナ14内に配列されたイチゴ苗を栽培する際に装着される光源装置について図4、図5、図6を参照して説明する。図4はコンテナ14に光源装置21を装着した構成を示す斜視図、図5は図4の上面図、図6は図5のA−A線断面図である。
光源装置21は、その詳細は後述するが長形であって一端に点灯回路22を有し、この点灯回路22から側方へ延びる冷陰極蛍光ランプ23を有している。この冷陰極蛍光ランプ23はコンテナ14の取っ手口19からコンテナ14の開口部18中央に配置されるよう挿入される。この際点灯回路22は取っ手口19の外部に配置される。
冷陰極ランプ23はコンテナ14の上端、すなわち開口部18の上端から上方へ突出することなく若干コンテナ内部に位置するように配置される。このように配置することにより、光源装置21を装着したコンテナ14上に他のコンテナを重畳しても上部のコンテナが下部のコンテナの光源装置に接触することはない。
図7、図8には光源装置21を示してあり、図7は斜視図、図8(a)は図7の側面図、図8(b)は下方から見た図、図8(c)は図8(a)を左方から見た図である。冷陰極蛍光ランプ23は、透光性のランプ保護管24によって覆われており破損防止のために保護されている。ランプ保護管24の上部は反射板25に固定されている。冷陰極蛍光ランプ23、ランプ保護管24は反射板25の一端に取着されているランプ取付金具26に装着されている。また、反射板25の一端、すなわちランプ取付金具26が取着されている端部には光源装着部材27が取着されている。この光源装着部材27は幅広の金属板を屈曲して形成されているが、この幅は前述したコンテナ14の取っ手口19の開口幅より小に形成されている。光源装着部材27は、階段状に屈曲して形成されているが、上部平坦部28には反射板25が固定される。
さて、このようにして構成された光源装置21をコンテナ14へ装着する方法について図9を参照して説明する。光源装置21の反射板25の一方の取って口19から矢印の方向、すなわちコンテナ14の内部へ挿入する。この結果、光源装置21は点灯回路22がコンテナ14の外部に残存し、冷陰極蛍光ランプが取着された反射板25がコンテナ14の上部中央に着脱自在に装着される。
また、上述した光源装置21には冷陰極蛍光ランプ23を使用したが、図10にはLED29を用いた例を示してある。図10(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)を下方から見た図である。反射板25の下部には多数のLED29が取着されている。
次に具体的にイチゴ苗を最適条件で栽培する方法について図を参照して説明する。図11にはイチゴ苗を低温庫30内で栽培する例を示してある。コンテナ14内にはイチゴ苗が収納されており、各コンテナ14ごとに光源装置21が挿入されている。そして、図の例では光源装置21が装着されたコンテナ14を5段に重ねて設置してある。このように多段にコンテナ14を重畳することにより、限られた床面積あたりの栽培量を増加させることが可能となる。低温庫30には空調機31が設置されていて、庫内の温度を精密に設定可能としてある。
低温庫30内に設置されたコンテナ14の光源装置21の照明条件は、24時間タイマーにより8:00〜16:00まで点灯状態にセットし、16:00〜8:00までは消灯時間とした。庫内の設定温度は消灯時間中は17℃とし、光源装置21の点灯時は20℃に設定した変温管理を行った。また、コンテナ14の四辺の側面及び上面をカバーなどで覆うことにより、光源装置21からの発熱を利用して温度増加に利用してもよい。
なお、図12に示したように多段に重ねたコンテナ14に通気性のある敷き布やメッシュシートからなる風除けカバー32をかぶせることによって通風性を低下させ、光源装置21からの熱が逃げにくい構成とすることも可能である。この場合には、光源装置21の照明点灯時は設定温度17℃に対して、ランプからの発熱量によって平均して2〜3℃位コンテナ14内の温度が上昇するため、この上昇温度を利用して変温条件を達成するようにしてもよい。
また、イチゴ苗の花芽処理を上述した例のように低温庫を利用せず、図13に示すような各段の上面に蛍光ランプ33が取り付けられた棚34に、イチゴ苗11が植えられたポット12を配列収納した苗トレー13を設置して行う場合がある。この場合には、栽培環境に空調機31を設置することができても、ほぼ開放状態となるため変温管理が十分にできない。そこで、図13に示すようにイチゴの生殖組織などが集約されているクラウン(茎)に絶縁カバー付きの電熱用ニクロム線35を接触させて変温管理を行う。温度を感じ取る組織があるクラウンを加温することによって変温管理が実施される。
さて、さちのかの品種を使い、8月に表1に示した各花芽処理を20日間行い、花芽分化率を評価した後、高設栽培ベッドに植え付け評価を行った。
Figure 2007289125
上記表1のように、本発明によりイチゴ花芽分化率が高く、総収量も通常栽培に比べて高い結果であった。花芽処理期間中に呼吸により失ったエネルギをランプからの光による光合成のエネルギ補給により、健全で活性の高い苗に仕上がる効果がある。また、苗の出し入れがなく、設置したまま24時間タイマーによる動作の確認と水やりのみでよく、作業の省力化となる。
装置の構成としてイチゴ苗を植えたコンテナを立体的に設置することができ、栽培密度を上げることができ、小さな低温庫で多くの低温・短日処理ができる。このため、建物や空調設備に必要な初期投資が少なくてすみ、更に冷却を行う空調設備の容量も小さくてすむ。また、空調を行う容積も栽培密度が増加したため少なくてすみ省電力化が可能となる。
積層したコンテナであっても容易に光源装置を着脱することが可能で、コンテナの片側のみの取って口から挿入する構造のため、奥側の側面状況の確認もする必要がない。すなわち、光源装置をただ挿入すればよいため作業の省力化となった。また、水やりなどであっても簡単に光源装置を抜き差しできるため、安全にかつ簡単に作業ができるようになった。
また、更に高い安定した花芽分化率を確保するため検討した結果、日中と夜温の温度差がイチゴ花芽分化に寄与していることを実験評価結果からヒントが得られた。その結果を表2に示すとともに、温度差による花芽分化率の影響を図14に示す。本発明の最も重要な栽培方法の特徴は、この日較差(温度差)を利用するということである。
Figure 2007289125
表2及び図14の各処理条件における花芽分化率の状態を調査した結果から、3℃以上の変温管理を行うと80%以上の高い花芽分化率を確保することが可能となった。この理由としてはイチゴの自然な状態(露地栽培)において、イチゴの花芽分化を生じる季節の状態は秋の9月下旬から10月であり、低温(15℃以下)で短日(日長時間)の条件以外に日中と夜温との日較差(温度差)が大きくなり始める季節でもある。
その状態を感じ取り、季節を察知していることが考えられ、花芽分化を生じる組織の活性化が始まっていると考えられる。イチゴの品種にもよるが、今まで低温短日処理を施せば花芽分化が行えるということが知られていたが、より高くて安定した花芽分化率を確保しようとするとこの日較差の条件(温度差)を追加する必要があるということが今回判明した。そして、処理温度が上がると消灯時における呼吸量が増えエネルギを消耗するために、多くの光合成エネルギを供給してやる必要があり、光量が低いと苗質が弱くなる。
また、この実験は、8月〜9月にかけての夏期での実験であり、実際に行われる花芽分化処理においても前記の時期に行われることになる。この時期の外気の環境温度は30℃前後であり、表3のような低温環境を作りだすためには、温度が低くなるほど電力量としては大きくなってしまう。そこで、花芽分化率や消費電力・苗質などを総合的に考慮すると温度15℃〜17℃で、照明点灯時に3℃以上の昇温が現状の最適条件である。
Figure 2007289125
本発明の実施形態にて栽培対象となる植物を示す斜視図。 本発明の実施形態に用いられるコンテナの斜視図。 図2のコンテナに栽培対象植物を収納した状態を説明する透視図。 本発明の実施形態に用いられる栽培装置を示す斜視図。 図4の上面図。 図5のA−A線断面図。 本発明の実施形態に用いられる光源装置の斜視図。 図7に示す光源装置を各方向から見た状態を示す図。 図4に示す栽培装置の動作を説明するための図。 本発明の実施形態に用いられる光源装置の他の例を示す図。 本発明の実施形態を説明するための透視図。 本発明の他の実施形態を説明するための透視図。 本発明の更に他の実施形態を説明するための図。 本発明の実施形態の動作を説明するためのグラフ。
符号の説明
11…イチゴ苗、12…ポット、13…苗トレー、14…コンテナ、15…短側面、16…長側面、17…スリット、18…開口部、19…取っ手口、20…鍔部、21…光源装置、22…点灯回路、23…冷陰極蛍光ランプ、24…ランプ保護管、25…反射板、27…光源装着部材、28…上部平坦部、29…LED、30…低温庫、31…空調機、32…風除けカバー、33…蛍光ランプ、34…棚、35…電熱用ニクロム線。

Claims (9)

  1. 植物栽培における花芽分化形成段階において人工光源を利用し、照明点灯時間と消灯時間の制御により短日処理を行う花芽形成において、照明点灯時間の処理温度を消灯時間内の処理温度より3℃以上の増加変温処理を施すことを特徴とする植物栽培方法。
  2. 前記花芽分化形成段階において、前記照明点灯時間の光量子束密度を10〜150μmol/m・s、処理温度を10〜25℃に設定することを特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
  3. 前記栽培植物を上面が開口されたコンテナ内に収納し、前記人工光源は前記コンテナの開口部に配置された光源であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の植物栽培方法。
  4. 前記コンテナを加温のためにカバーで被覆することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の植物栽培方法。
  5. 前記栽培植物がイチゴ苗であることを特徴とする請求項1又は4のいずれか1項記載の植物栽培方法。
  6. 前記イチゴ苗のクラウン部に電熱線を接触させて加温を行うことを特徴とする請求項5記載の植物栽培方法。
  7. 上面が開口しているコンテナと、このコンテナの対向する側面上部中央に形成された一対の貫通口と、前記一対の貫通口のいずれか一方から前記コンテナの開口部に挿入され上端が前記開口部上端から上方へ突出することなく配置された光源装置と、前記コンテナの側面並びに前記開口部を被覆するカバーとを具備することを特徴とする植物栽培装置。
  8. 前記光源装置は、冷陰極蛍光ランプであることを特徴とする請求項7記載の植物栽培装置。
  9. 前記光源装置は、LEDであることを特徴とする請求項7記載の植物栽培装置。
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