JPWO2017125964A1 - 無水酢酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

リン化合物の消費量および環境中へのリン化合物の放出量を低減したケテン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。反応器内でリン含有触媒の存在下で酢酸の熱分解反応を行うことによりケテンを含む熱分解ガスを生成する工程(i)、前記熱分解ガスを冷却し、ケテンを含むガス成分と、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離する工程(ii)、前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)を含み、前記工程(i)は、前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を前記反応器内に供給しつつ、前記熱分解反応を行うことを含む、ケテン誘導体の製造方法。

Description

本発明は、ケテン誘導体の製造方法に関する。
無水酢酸の製造方法は、一般的に、まずリン酸トリエチル脱水触媒を使用して酢酸を熱分解してケテン(I)を製造し、次いで、得られたケテンを酢酸と反応させて無水酢酸(II)を製造する。その他、特許文献1には、リン酸トリエチルを触媒として使用して減圧下で酢酸を熱分解することでケテンを製造する方法、そして熱分解により生成したガスは冷却され、その過程で水、未反応酢酸および無水酢酸が凝縮されることが記載されている。特許文献2には、触媒としてリン酸ジアンモニウムを使用することが記載されている。特許文献3には、触媒としてリン酸を使用することが記載されている。
上記のような各種リン化合物を触媒として、酢酸の熱分解によりケテンを製造し、そのケテンからケテン誘導体である無水酢酸を製造する方法は広く実施されており、熱分解により生成した熱分解ガスを冷却する過程で凝縮することにより得られる水、未反応酢酸および無水酢酸等を含む凝縮液の取扱いについても様々な検討がされている。未反応酢酸および無水酢酸等を含む凝縮液の取扱いとして、その未反応酢酸および無水酢酸を有効に回収および利用することが検討されている。そして、その凝縮液には各種リン化合物も含まれるところ、環境負荷を低減する観点から、各種リン化合物を排水としてプラントから放出する際には、その放出量を低減することが検討されている。
凝縮液中の酢酸や無水酢酸を回収する方法として、以下のものが挙げられる。酢酸を回収する方法として、特許文献2には、酢酸及び無水酢酸を含む凝縮液をエステル化反応器に供給し、凝縮液中の酢酸をアルコールと反応させて酢酸エステルとする方法が記載されている。次に、無水酢酸を回収する方法として、特許文献4には、無水酢酸及び酢酸を含有する水溶液と疎水性有機溶剤、ケトン類又はエステル類より選ばれる一種又は二種以上の溶剤とを接触させる方法が記載されている。
また、凝縮液中の各種リン化合物を排水として放出する際の環境中への放出量を低減する方法として、活性汚泥処理や凝集沈殿処理などの方法がある。特許文献5には、無水酢酸の製造プロセスにおける排水中に含まれるリン化合物を低減及び除去する方法として、多価金属塩を加えてpHレベルを調整し、沈殿除去する方法が記載されている。
米国特許第4455439号明細書 特許第5390770号公報 特表2001−513522号公報 特公平06−080023号公報 特表2014−0527905号公報
上記のとおり、ケテンの製造に用いる触媒として各種リン化合物を使用する方法を挙げたが、これらの方法はいずれも凝縮液中の酢酸や無水酢酸などの有機化合物を回収し、凝縮液中のリン化合物は製造プロセスの系内から除去している。そして、その除去方法としては、凝縮液中の有機化合物を回収した後、残った排水中に含まれるリン化合物を活性汚泥処理や凝集沈殿処理などを行って取り除いた上、リン濃度を確認してその排水を廃棄している。
このようなリン化合物を含む排水処理にはコストがかかるうえ、リン化合物の中でも、特に有機リン化合物については、生分解処理や凝集沈殿処理によっても分解除去が困難であるため、リン化合物の除去量には限界がある。また、リン化合物は、将来的に枯渇が懸念される。そのため、いずれの方法においてもリン化合物の消費量を低減して有効に利用することが求められ、リン化合物の放出量を低減した環境負荷の小さなケテンおよびケテン誘導体の製造方法が必要となる。本発明は、リン化合物の消費量および環境中へのリン化合物の放出量を低減したケテン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、反応器内でリン含有触媒の存在下で酢酸の熱分解反応を行うことによりケテンを含む熱分解ガスを生成する工程(i)、前記熱分解ガスを冷却し、ケテンを含むガス成分と、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離する工程(ii)、前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)を含み、前記工程(i)は、前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を前記反応器内に供給しつつ、前記熱分解反応を行うことを含む、ケテン誘導体の製造方法に関する。
前記工程(i)において、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮することにより、前記凝縮液を濃縮液とした後、前記濃縮液を前記反応器内に供給することが好ましい。
前記濃縮液に含まれる前記リン化合物(a)の濃度が、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)の濃度に対し、5〜20倍であることが好ましい。
前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮する方法が、加熱蒸発、膜分離、および電気化学的処理からなる群から選択されるいずれか1つの方法であることが好ましい。
前記工程(i)において、前記濃縮液にリン化合物(b)を添加して得られた液を、前記反応器内に供給することが好ましい。
前記リン含有触媒に対する前記酢酸の割合が、モル比で100〜2,000であることが好ましい。
本発明のケテン誘導体の製造方法によれば、リン化合物の消費量および環境中へのリン化合物の放出量を低減することができる。
ケテンおよびケテン誘導体の製造方法の例を説明するフロー図
以下、好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。本開示のケテン誘導体の製造方法は、反応器内でリン含有触媒の存在下で酢酸の熱分解反応を行うことによりケテンを含む熱分解ガスを生成する工程(i)、前記熱分解ガスを冷却し、ケテンを含むガス成分と、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離する工程(ii)、前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)を含み、前記工程(i)は、前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を前記反応器内に供給しつつ、前記熱分解反応を行うことを含む。
[熱分解ガス生成工程(i)]
反応器内でリン含有触媒の存在下で酢酸の熱分解反応を行うことによりケテンを含む熱分解ガスを生成する工程(i)(以下、熱分解ガス生成工程(i)とも称する。)の手順等について述べる。
熱分解ガス生成工程(i)で用いるリン含有触媒は、リンを含有し、酢酸の熱分解反応によりケテンを生成するための触媒であれば特に限定されず、リンのオキソ酸、およびアルキル化されたリンのオキソ酸、およびリン酸塩などを用いることができる。リンのオキソ酸としては、例えばリン酸、ピロリン酸など、アルキル化されたリンのオキソ酸としては、ジメチルホスフィン酸、リン酸トリエチルなど、およびリン酸塩としては、例えばリン酸水素二アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、リン含有触媒は、1種のみならず2種以上組み合わせてもよいし、触媒作用を有しないリン系化合物を含んでいてもよい。2種以上組み合わせる場合、触媒効率の観点から、リン酸水素二アンモニウムを含有することが好ましい。また、リン含有触媒は、水、酢酸などを溶媒とする混合溶液であってもよい。
熱分解ガス生成工程(i)においては、具体的には、例えば、水または酢酸などの溶媒に溶解したリン含有触媒を酢酸に添加した上で、予熱して高温および減圧条件とした反応器(反応炉)に導入する、または、水または酢酸などの溶媒に溶解したリン含有触媒と予熱された酢酸とを、反応器(反応炉)に導入することにより、酢酸の熱分解反応が開始および進行し、ケテンを含む熱分解ガスを発生させることができる。
酢酸の熱分解反応は、高温および減圧条件下で行われることが好ましい。高温条件とは、例えば700℃程度〜725℃程度であってもよい。また、減圧条件とは、例えば運転操作圧力として30kPa(A)程度であり、26kPa(A)程度であってもよい。
反応器内を高温および減圧条件にした後、反応器内に原料となる酢酸および触媒となるリン含有触媒を供給することにより熱分解反応が進行し、ケテンを含む熱分解ガスが発生する。ここで、運転操作圧力とは、反応器出口部分における反応器内の圧力である。
原料となる酢酸は、予熱器で100〜700℃に加熱(予熱)した後、反応器内に供給することが好ましい。リン含有触媒は、酢酸とともに予熱器で加熱してから反応器に供給する方法か、または酢酸を反応器に供給した後に反応器に直接供給する方法のいずれでもよい。熱分解ガス生成工程(i)において、リン含有触媒に対する酢酸の割合は、例えばモル比で100〜2,000であり、300〜1,000であることが好ましい。リン含有触媒に対する酢酸の割合の調整は、酢酸溶液中のリン含有触媒の濃度を調整することにより行うことができる。なお、リン含有触媒のモル量は、1種または2種以上の各種リン化合物の合計である。
[分離工程(ii)]
前記の熱分解工程(i)により酢酸はケテンと同時に水を生じる。この他、未反応の酢酸も存在し得る。これらは、熱分解ガス生成工程(i)では全て気体状態であり、熱分解ガスとして存在するので、この熱分解ガスを適当な温度に冷却することで、ケテンを含むガス成分と、水、酢酸、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離することができる。以下ケテンを含むガス成分と、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離する工程(ii)(以下、分離工程(ii)とも称する。)の手順等について述べる。
この工程での前記熱分解ガスの冷却は、ケテンを含むガス成分と、水、酢酸、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離することができれば、冷却温度としては、特に限定されないが、エネルギー使用量の観点と前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)において、純度が高いケテンを導入する観点からは、ガスの温度が−10〜220℃となるように調整することが好ましい。
熱分解ガスの冷却には、熱交換器(ガス冷却器)を用いることができる。熱交換器は1個でも複数個配列されたものであってもよい。複数個とは、例えば、2、3、4または5個を用いることができる。複数個の熱交換器が配列されている場合には、全ての熱交換器からの凝縮液をリン含有触媒として使用することができる他、任意の一部の熱交換器を選択してその凝縮液を選択的にリン含有触媒として使用することもできる観点から好ましい。凝縮液を採取する熱交換器を選択することにより、採取した凝縮液にケテン分解炉(熱分解ガス生成工程(i)における反応器)及び炉コーキング由来の炭素などの不揮発成分が含まれることを防いだり、凝縮液に含まれるリン化合物の濃度を調整することができる。
5個の熱交換器を用いた場合の一例について述べる。最初の2個の熱交換器は、冷水で満たされており、残りの3個の熱交換器は−10℃の冷たいブラインでみたされている。5個の熱交換器は、夫々同一であり、長さ2500mm、直径は700mmである。これは内径25mmの290個の管を有し、285mの総内表面積を有する。5個の熱交換器の総容量は上部および分離を含めて3.5mであり、容量に対する表面の割合は81.5m−1である。この熱交換器に、熱分解ガス生成工程(i)で生成した熱分解ガスを導入すると、第一の熱交換器で、熱分解ガスがガス成分と液体成分とに分離する。上部のガス成分は、第二の熱交換器に導入し、底部の液体成分は、液体成分収集用のカラムに採取する。続けて、第二の熱交換器、第三の熱交換器および第四の熱交換器の上部のガス成分は、それぞれ順に第三の熱交換器、第四の熱交換器および第五の熱交換器に導入し、底部の液体成分は、上記液体成分導入用のカラムに採取する。第五の熱交換器の上部からガス成分を収集する。以上の手順により、ガス成分と液体成分である凝縮液とに分離することができる。本発明のリン化合物の凝縮液は全ての熱交換器の底部の液体成分を収集するのでもよく、第一から第四のいずれか1または2以上の熱交換器の底部の液体成分を収集するのでもよい。特に、リン化合物の濃度が高い観点からは、第一から第二の熱交換器の底部の液体成分を収集するのでもよい。
[ケテン誘導体生成工程(iii)]
前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)の手順等について述べる。
他の有機化合物は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有する場合にケテンと反応し、ケテン誘導体を生成する。この反応は、例えば他の有機化合物を供給した吸収塔にケテンガスを導入することにより行うことができる。
ケテンは、その他の有機化合物が水酸基あるいはアミノ基を有する場合に、これらの官能基と反応してその他の有機化合物をアセチル化する。また、例えば、その他の有機化合物として酢酸を用いた場合は、酢酸とケテンとが反応してケテン誘導体である無水酢酸が生成する。その反応方法としては、酢酸を溜めておきその中をケテンガスをバブリングさせることが挙げられる。また、充填塔にて酢酸とケテンを向流接触(Countercurrent contact)させることでもよい。この場合、酢酸とケテンとの反応熱を除熱するため、系内の温度は、20〜70℃が好ましく、系内の圧力は、0〜30kPa(A)が好ましい。具体的には、減圧条件とした吸収塔内で酢酸およびケテンを反応させることにより、無水酢酸を得ることができる。
得られたケテン誘導体は、必要に応じ、抽出や蒸留、オゾン処理などの一般的な既知の方法により精製することができる。例えば、ケテン誘導体が無水酢酸である場合、蒸留による分離方法を用いることができる。
[工程(i)における、リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液の反応器内への供給]
本開示のケテン誘導体の製造方法においては、前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を、熱分解ガス生成工程(i)における反応器内に供給する。前記リン化合物(a)は、酢酸の熱分解反応のリン含有触媒として再利用することもできる。その場合、リン化合物(a)は、分離工程(ii)により得られた凝縮液の状態のまま、またはその濃縮液を、酢酸の熱分解反応が行われる反応器内に供給することにより酢酸の熱分解反応のリン含有触媒として用いることができる。なお、本開示において、リン化合物(a)は、凝縮液またはその濃縮液に含まれる各種リン化合物をいう。
リン化合物(a)は、リン含有触媒として用いたリン化合物にもよるが、リン含有触媒が酢酸の熱分解反応に伴って分解するため、各種リン化合物の混合物として得られる。例えば、リン含有触媒として、リン酸水素二アンモニウムを用いた場合、リン化合物(a)は、リン酸、ジメチルホスフィン酸およびその他リン化合物の混合物となる。
従来、ケテン分解炉に用いられるリン含有触媒としては、リン酸水素二アンモニウム(DAP)、リン酸トリエチル(TEP)などしか用いることができないと考えられていた。本発明者らは、副生希酢酸(チラー凝縮液)に含有されるリン化合物、例えばジメチルホスフィン酸(DMPH)などを触媒として用いても全体の触媒としての効率が損なわれないことを見出した。従来は、ジメチルホスフィン酸(DMPH)などのリン化合物(a)は触媒機能を有さないものとして認識されており、凝縮液に含まれるこれらのリン化合物(a)は排水として廃棄されていたものである。
熱分解ガス生成工程(i)において、リン化合物(a)をリン含有触媒として用いた場合でも、未だ酢酸の熱分解反応に関与していないリン含有触媒をリン含有触媒として用いた場合と同等のケテン収率を得ることができ、同等の触媒能を有する。このため、熱分解ガス生成工程(i)におけるリン含有触媒の一部をリン化合物(a)に置き換えることにより、熱分解ガス生成工程(i)における、リン含有触媒としてのリン化合物の消費量および環境中への放出量を低減することができる。ここで、リン化合物の消費量とは、反応器に供給した酢酸のモル数に対する、反応器に新規に投入した各種リン化合物のモル数の割合である。なお、リン化合物の放出量の低減比率は、リン化合物の消費量の低減比率と同程度である。
(濃縮液の調製)
前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)は、得られた凝縮液の状態のまま、熱分解ガス生成工程(i)において、触媒として用いることができるが、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮して濃縮液とし、リン化合物の濃度を高めた液の状態で、熱分解ガス生成工程(i)における反応器内に供給することが好ましい。また、濃縮液をさらに濃縮してリン化合物の固体とすることもでき、この場合は、水と混合して水溶液にした状態で触媒として用ることが好ましい。言い換えれば、リン化合物(a)を含む組成物であれば、熱分解ガス生成工程(i)におけるリン含有触媒として用いることができる。
前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮することにより、前記凝縮液を濃縮液とする手順について述べる。凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮する方法としては、例えば、加熱蒸発、膜分離、電気化学的処理など既知の一般的な方法、またはこれらを組み合わせた方法により、任意の倍率に濃縮すればよいが、凝縮液の組成は、水、酢酸、リン化合物(a)が主なものであるので、このうち水を除去するために、また凝縮液中に含まれるケテン分解炉およびコーキング由来の炭素などの不揮発分の影響を回避するために、加熱蒸発により行うことが好ましい。
加熱蒸発を行う場合、凝縮液を蒸発濃縮装置にて蒸発濃縮して、水と共に酢酸などの揮発成分を除去して濃縮することにより、高濃度のリン化合物を含む濃縮液を得ることができる。蒸発濃縮装置としては、エバポレータなどの既知の装置を使用することができる。なお、蒸発濃縮装置は、広く、常圧または減圧下で蒸発および濃縮させる装置であり、エバポレータは、減圧下で液体を積極的に蒸発および濃縮させる装置をいう。濃縮されたリン化合物(a)は、さらに水、酢酸、無水酢酸などを混合して、水および酢酸との混合溶液としてもよく、さらに水とともに酢酸などの揮発性成分も除去して濃縮することにより、揮発成分をほとんど含まない固体としてもよい。
膜分離を行う場合、例えば、RO(逆浸透膜濾過)膜による分離により、高濃度のリン化合物を回収することができる。膜分離の装置としては、中空糸型RO膜を使用することができる。
電気化学的処理を行う場合、電気浸透法による分離により、高濃度のリン化合物を回収することができる。電気浸透法による分離の装置としては、電気浸透脱水機を使用することができる。
前記濃縮液に含まれるリン化合物(a)の濃縮倍率は任意に選ぶことができるが、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)の濃度に対し、1〜100倍とすることが好ましく、2〜50倍とすることがより好ましく、5〜20倍とすることがさらに好ましい。リン化合物(a)を熱分解ガス生成工程(i)におけるリン含有触媒として使用する際の触媒能に優れるためである。また、蒸発濃縮装置を使用する場合にも、上記濃縮倍率とすればよく、5〜20倍とすることが好ましい。酢酸、水およびリンのモル比を一定にした状態で安定的にケテン誘導体を製造することができ、濃縮液の操作性に優れるためである。
リン化合物(a)の濃縮倍率は、溶液中に含まれる各種リン化合物(a)の合計濃度を基準に求められるものである。各種リン化合物(a)の合計濃度は、JIS K 0116で規定されるICP発光分光分析やJIS K 0127で規定されるイオンクロマトグラフィーなどの方法により測定することができる。
前記凝縮液またはその濃縮液に含まれるリン化合物(a)を、熱分解ガス生成工程(i)における反応器内に供給する際、酢酸の熱分解反応をより安定して進行させるために、前記凝縮液またはその濃縮液にリン化合物(b)、酢酸および水等を適宜追加して、各成分を所定の濃度となるように調製することが好ましい。なお、本開示において、リン化合物(b)は、凝縮液またはその濃縮液に新規に添加する各種リン化合物をいう。
リン化合物(b)としては、熱分解ガスを生成する工程(i)で用いるリン含有触媒として挙げたものを含むことが好ましく、リンのオキソ酸、およびアルキル化されたリンのオキソ酸、およびリン酸塩などを用いることができる。リンのオキソ酸としては、例えばリン酸、ピロリン酸など、アルキル化されたリンのオキソ酸としては、ジメチルホスフィン酸、リン酸トリエチルなど、およびリン酸塩としては、例えばリン酸水素二アンモニウムなどが挙げられ、いずれもこれらに限定されるものではない。また、1種のみならず2種以上組み合わせてもよい。これらの中でも、活性の高さと経済的理由のため、リン酸水素二アンモニウムを使用することが好ましく、リン酸水素二アンモニウムとその変化物であるリン化合物との混合物も使用することも好ましい。
凝縮液またはその濃縮液における各成分の前記所定の濃度としては、凝縮液またはその濃縮液にリン化合物(b)、酢酸および水などを追加する場合およびしない場合のいずれも、酢酸については、85〜99.9wt%であることが好ましく、90〜99wt%であることがより好ましく、リン化合物については、各種リン化合物の合計で0.1〜1wt%であることが好ましく、0.2〜0.7wt%であることがより好ましい。
前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を前記反応器内に供給しつつ、熱分解ガス生成工程(i)を工業的に行う場合、運転管理を容易とするために、リン化合物(a)を含む凝縮液または濃縮液の組成は可能な限り一定となるように調整することが好ましい。リン化合物(a)を含む凝縮液または濃縮液の組成が常に変動していると、その調整の幅や頻度が大きくなり、作業負荷が大きくなってしまうためである。
凝縮液またはその濃縮液に含まれる各成分の濃度の調整は、反応器の前に設置した触媒調製槽内において行うことが好ましい。触媒調製槽は、回分式攪拌装置、連続式攪拌装置、スタティックミキサーなど、既知の一般的な装置、またはこれらを組み合わせた装置から選定することができるが、特に限定されるものではない。
凝縮液のうち、リン化合物(a)の濃縮により濃縮液となった以外の部分には、リン化合物がほとんど含まれず、揮発成分である水や酢酸などの有機化合物が含まれている。そして、当該有機化合物は、抽出や蒸留などの一般的な既知の方法により回収および利用することができる。有機化合物を回収した後、一定のその他の有機化合物、リン化合物およびその他の無機化合物が含まれていることから、環境負荷を低減するため、排水処理を行う必要がある。排水処理は、活性汚泥処理や凝集沈殿処理などの一般的な既知の方法により、水溶液中の有機化合物、リン化合物およびその他の無機化合物を分解、除去して、それらの濃度を低減した後、放出することが好ましい。有機化合物の中では酢酸が最も多く含まれているので、これは希薄な酢酸溶液からの酢酸の回収の常用技術で回収することができる。すなわち、一例を挙げれば、特開昭57−197240号公報に記載の方法を用いることができる。この方法では、混合溶剤を用いて酢酸を水溶液から抽出し、抽出液から蒸溜で分離する酢酸の回収法において、混合溶剤が酢酸エチル/ジイソブチルケトン系であることを特徴とする酢酸の回収法である。通常、混合溶剤中酢酸エチルの割合は重量で5〜50%、特に20〜30%である。
酢酸エチル/ジイソブチルケトン系の混合溶剤を用いた場合は、脱水塔で水と酢酸エチルだけを蒸発すればよく、ジイソブチルケトンは釜側へ酢酸と共に抜き取り、酢酸回収塔で酢酸を分離した後、そのままリサイクル使用される。処理原液が抽出塔に仕込まれ、混合溶剤は別ラインから抽出塔に仕込まれる。抽出液は、酢酸を含むと同時に飽和分の水を含んでいるので、まず脱水塔に仕込まれる。脱水塔では、酢酸エチルと飽和溶解度分の水が塔頂から除去され、塔底からはジイソブチルケトンと酢酸の混合物が抜き出される。これにより、水と酢酸が分離できる。その後、脱水塔液は酢酸回収塔へ仕込まれ、塔頂から酢酸を回収する。塔底からはジイソブチルケトンが抜き出される。そして、脱水塔頂から抜き出された酢酸エチルと混合され、循環抽出溶剤として、抽出塔ヘリサイクル使用される。抽出塔で酢酸を抽出された処理後の排水は、溶剤回収塔に仕込まれて、排水中に微量に溶解する溶剤が塔頂から回収される。回収された溶剤は、循環抽出溶剤に戻される。
以下、本開示の実施形態の一例を図面を用いて説明する。図1は、ケテンおよびケテン誘導体の製造方法の例を説明するフロー図である。1は触媒調製槽を示し、酢酸の熱分解反応により熱分解ガス生成工程(i)における触媒を貯蔵する。触媒調製槽1では、触媒を貯蔵する他、後述する熱交換器4から供給された凝縮液または濃縮装置7から供給された濃縮液にリン化合物(b)、酢酸および水等を適宜追加して、各成分を目的の濃度となるように調整することができる。追加するリン化合物(b)、酢酸および水等はラインL1から触媒調製槽1に供給することができる。凝縮液は、濃縮装置7を経由せず、熱交換器4から直接供給されてもよいが、濃縮装置7を経由して濃縮液とし、ラインL13を経由して、触媒調製槽1に供給されることが好ましい。
2は原料タンクを示し、後述する反応器3に供給する酢酸を貯留する。酢酸はラインL3から原料タンク2に供給することができる。また、反応器3に酢酸を供給する前に、原料タンク2において、予め酢酸に触媒調製槽1からラインL2を経由して供給されたリン化合物を混合してもよい。
3は反応器を示し、原料タンク2から酢酸を受入れ、リン化合物を触媒とした酢酸の熱分解反応を行う。リン化合物を反応器3に供給する方法としては、原料タンク2を経由する方法および触媒調製槽1から直接反応器3に供給する方法のいずれも選択することができる。反応器3は、予熱器も含んでおり、熱分解反応の前に当該予熱器で、酢酸および触媒を100〜700℃程度、場合により725℃程度に加熱して、熱分解反応の進行を促すことができる。
P1は仕込ポンプを示し、ラインL4を経由し、酢酸および触媒を含む原料液を原料タンク2から反応器3に一定の供給速度で供給することができる。なお、仕込ポンプP1は加圧ポンプである。
4は熱交換器(ガス冷却器)を示し、反応器3における熱分解反応により生じた熱分解ガスをラインL5を経由して受入れ、当該熱分解ガスを冷却し、ガス成分と液体成分である凝縮液とに分離する。熱交換器4は、例えば水冷却器、冷水冷却器、およびブライン冷却器からなり、高温のガスを0℃近い温度まで冷やすことから温度の差異が大きいため、段階的に温度を下げる、また段階的に圧力を下げることが好ましい。なお、当該凝縮液には、水、未反応酢酸、並びに添加したリン化合物および酢酸の熱分解反応に伴って生じた種々のリン化合物が含まれる。
5は酢酸トラップを示し、熱交換器4からガス成分であるケテンをラインL6を経由して受け入れ、当該ケテンを酢酸と反応させることにより無水酢酸を生成する。酢酸はラインL7から供給し、生成した無水酢酸は、ラインL8から排出することができる。なお、酢酸トラップ5は、例えば充填塔であり、塔底から導入したケテンガスを塔頂から流下させた酢酸と向流接触させることで酢酸およびケテンを反応させることにより、無水酢酸を得ることができる。
6は真空ポンプを示し、反応器3、熱交換器4(ガス冷却器)および酢酸トラップ5内を減圧するものである。
7は濃縮装置を示し、リン化合物を含む凝縮液を任意の濃度に濃縮して濃縮液を調製するものである。熱交換器4から液体成分である凝縮液をラインL10およびラインL11を経由して濃縮装置7に供給する。凝縮液のうち、リン化合物(a)の濃縮により濃縮液となった以外の部分は、ラインL14を経由して、有機化合物と、その他リン化合物などを含む排水に分離される。分離された有機化合物は回収および利用され、リン化合物などを含む排水は、活性汚泥処理及び凝集沈殿処理が行われ、排水中のリン化合物の濃度を低減した後、環境中に放出される。
熱交換器4で生じた凝縮液は、全量を濃縮装置7に供給しない場合、濃縮装置7に供給しない凝縮液は、ラインL11を経由せずラインL12を経由して、有機化合物と、その他リン化合物などを含む排水とに分離される。分離された有機化合物は回収および利用され、リン化合物などを含む排水は、活性汚泥処理及び凝集沈殿処理が行われ、排水中のリン化合物の濃度を低減した後、環境中に放出される。
濃縮装置7で得られた濃縮液は、ラインL13を経由して、触媒調製槽1に供給され、反応器3における酢酸の熱分解反応、すなわちケテン生成反応の触媒能を有しているため、酢酸の熱分解反応による熱分解ガス生成工程(i)における触媒として、利用することが可能である。
本開示のケテン誘導体の製造方法によれば、少なくとも一度酢酸の熱分解反応の触媒として用いたリン化合物を含む凝縮液またはその濃縮液に含まれるリン化合物を再度酢酸の熱分解反応の触媒として用いることができるため、リン化合物の消費量および環境中へのリン化合物の放出量を低減することができる。
以下、実施例により本開示のケテン誘導体の製造方法を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
<無水酢酸濃度>
無水酢酸濃度は、ガスクロマトグラフィーにより求めることができる。
<無水酢酸収率>
無水酢酸収率とは、反応器に供給した酢酸のモル数に対する生成した無水酢酸のモル数の割合をいう。
無水酢酸収率は、反応器に供給した酢酸のモル数および生成した無水酢酸のモル数をそれぞれ上記ガスクロマトグラフィーにより求め、反応器に供給した酢酸のモル数に対する生成した無水酢酸のモル数の割合を算出することができる。
<リン化合物の使用量>
リン化合物の使用量とは、反応器に供給した酢酸のモル数に対する反応器に供給した各種リンのモル数の割合である。
リン化合物の使用量は、イオンクロマトグラフィーにより求めた。イオンクロマトグラフィーの測定条件は、以下のとおりである。
装置:DIONEX ICS−2000
プレカラム:AG9−HC
カラム:AS9−HC
カラム温度:40℃
検出:電気伝導検出器
溶離液:9mmol/l(NaCO
流速:1ml/min
注入量: 100μl
図1に示す、ケテンおよびケテン誘導体の製造装置を用いて、ケテンおよびケテン誘導体を製造した。
(参考例1)
触媒調製槽1にて、リン含有触媒としてリン酸水素二アンモニウム0.32重量部を、水3.03重量部に溶解し、リン含有触媒水溶液を調製した。原料タンク2にて、当該リン含有触媒水溶液に対し、酢酸96.65重量部を添加し混合することにより、原料液を調製した。当該原料液におけるリン含有触媒に対する酢酸の割合は、モル比で664であった。結果は、表1に示す。
真空ポンプ6で26kPa(A)まで減圧した725℃の反応器3に、当該原料液を供給し、酢酸の熱分解反応を進行した。当該原料液の供給速度は、仕込ポンプP1を用いて約20.2g/hに調整した。反応器3から排出された熱分解ガスを金属性の熱交換器4にて急冷することで、ガス成分であるケテン、並びに液体成分である未反応酢酸、無水酢酸、水およびリン化合物を含む凝縮液を生成した。
ガス成分であるケテンを用いて、ガラス製の吸収管である酢酸トラップ5に入れた酢酸300gに、ケテンを室温条件下、バブリングさせて無水酢酸を製造した。約0.5時間経過後の酢酸トラップ5の無水酢酸濃度は2.73wt%であった。無水酢酸収率は48.8%であった。また、生成した無水酢酸に対するリン化合物の使用量は、モル比で0.003であり、消費量は、モル比で0.003であった。
(参考例2)
触媒調製槽1にて、リン含有触媒としてジメチルホスフィン酸0.24重量部を水3.00重量部に溶解し、リン含有触媒水溶液を調製した。原料タンク2にて、当該リン含有触媒水溶液に対し、酢酸96.76重量部を添加し混合することにより、原料液を調製した。当該原料液におけるリン含有触媒に対する酢酸の割合は、モル比で631であった。
真空ポンプ6で26kPa(A)まで減圧した725℃の反応器3に、当該原料液を供給し、酢酸の熱分解反応を進行した。当該原料液の供給速度は、仕込ポンプP1を用いて約21.2g/hに調整した。反応器3における反応器3にから排出された熱分解ガスを熱交換器4にて急冷することで、ガス成分であるケテン、並びに液体成分である未反応酢酸、無水酢酸、水およびリン化合物を含む凝縮液を生成した。
ガス成分であるケテンを用いて、酢酸トラップ5に入れた酢酸300gに、ケテンをバブリングさせて無水酢酸を製造した。約0.5時間経過後の酢酸トラップ5の無水酢酸濃度は0.76wt%であった。無水酢酸収率は12.2%であった。また、生成した無水酢酸に対するリン化合物の使用量は、モル比で0.013であり、消費量は、モル比で0.013であった。結果は、表1に示す。
(実施例1)
参考例1で生成した凝縮液を、濃縮装置7としてエバポレータを用い、温度67℃、圧力11kPa(A)の条件にてリン化合物の合計量(重量)が12倍となるよう濃縮して濃縮液を調製した。
当該凝縮液に含まれるリン化合物(a)の組成は、リン酸:0.16wt%、ジメチルホスフィン酸:0.08wt%、その他リン化合物:0.31wt%であった。このリン化合物(a)は、参考例1で用いたリン酸水素二アンモニウムが酢酸の熱分解反応に伴って、分解され生じたものである。また、濃縮装置7の底部に溜まった濃縮液に含まれるリン化合物(a)の組成は、リン酸:1.90wt%、ジメチルホスフィン酸:0.88wt%、その他リン化合物:3.13wt%であった。
次いで、触媒調製槽1にて、当該濃縮液3.91重量部を水3.01重量部に溶解し、リン化合物(a)水溶液を調製した。原料タンク2にて、当該リン化合物(a)水溶液に酢酸96.76重量部を加えることにより、原料液を調製した。当該原料液におけるリン含有触媒に対する酢酸の割合は、モル比で672であった。
真空ポンプ6で26kPa(A)まで減圧した725℃の反応器3に、当該原料液を供給し、酢酸の熱分解反応を進行した。当該原料液の供給速度は、仕込ポンプP1を用いて約20.4g/hに調整した。反応器3から排出された熱分解ガスを熱交換器4にて急冷することで、ガス成分であるケテンおよび液体成分である未反応酢酸、水、リン化合物を含む凝縮液を生成した。
ガス成分であるケテンを用いて、酢酸トラップ5に入れた酢酸300gに、ケテンをバブリングさせて無水酢酸を製造した。約0.5時間経過後の酢酸トラップ5の無水酢酸濃度は2.74wt%であった。
無水酢酸収率は46.5%であった。また、生成した無水酢酸に対するリン化合物の使用量は、モル比で0.003であり、消費量は、モル比で0であった。なお、実施例1における消費量は、参考例1で凝縮液を生成する際に用いたリン含有触媒の量を、反応器に新規に投入した各種リン化合物の量として考慮せずに算出した値である。結果は、表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして、参考例1で生成した凝縮液を、濃縮装置7としてエバポレータを用い12倍に濃縮して濃縮液を得た。触媒調製槽1にて、当該濃縮液1.96重量部、および当該濃縮液1.96重量部に含まれるリン化合物と等しいモル量に相当するリン酸水素二アンモニウム0.16重量部を水3.04重量部に溶解し、リン化合物(a)水溶液を調製した。原料タンク2にて、当該リン化合物(a)水溶液に対し、酢酸96.69重量部を加えることにより、原料液を調製した。当該原料液におけるリン含有触媒に対する酢酸の割合は、モル比で675であった。
真空ポンプ6で26kPa(A)まで減圧した725℃の反応器3に、当該原料液を供給し、酢酸の熱分解反応を進行した。当該原料液の供給速度は、仕込ポンプP1を用いて約19.4g/hに調整した。反応器3から排出された熱分解ガスを熱交換器4にて急冷することで、ガス成分であるケテンおよび液体成分である未反応酢酸、水、リン化合物を含む凝縮液を生成した。
ガス成分であるケテンを用いて、酢酸トラップ5に入れた酢酸300gに、ケテンをバブリングさせて無水酢酸を製造した。約0.5時間経過後の酢酸トラップ5の無水酢酸濃度は2.00wt%であった。
無水酢酸収率は40.0%であった。また、生成した無水酢酸に対するリン化合物の使用量は、モル比で0.004であり、消費量は、モル比で0.002であった。本実施例で使用したリン化合物は、回収したリン化合物(a)と等モル量のリン化合物(b)である。そのため、“使用量”としては0.004であるが、“消費量”としては0.002(=0.004×0.50)に相当する。なお、実施例2における消費量は、参考例1で凝縮液を生成する際に用いたリン含有触媒の量を、反応器に新規に投入した各種リン化合物の量として考慮せずに算出した値である。結果は、表1に示す。
Figure 2017125964
表1に示すように、酢酸の熱分解反応により生じた凝縮液または濃縮液に含まれる各種リン化合物を、酢酸の熱分解反応の反応器内に供給しても、酢酸の熱分解反応に未だ酢酸の熱分解反応に関与していないリン含有触媒を酢酸の熱分解反応の触媒とした場合と同等の無水酢酸収率を得ることができることが分かる。つまり、凝縮液または濃縮液に含まれる各種リン化合物は、熱分解ガス生成工程(i)における酢酸の熱分解反応の触媒活性を十分に有していることが分かる。
そのため、凝縮液または濃縮液に含まれる各種リン化合物をケテンおよびケテン誘導体の製造に利用することで、その分ケテン誘導体の製造プロセスに新規に投入するリン化合物の消費量を削減することができ、ケテン誘導体製造プロセスからの環境中へのリン放出量を低減できることが分かる。
リン化合物の消費量を低減し、省資源的および環境負荷の小さなケテンおよびケテン誘導体の製造のために用いることができる。
1 触媒調製槽
2 原料タンク
3 反応器
4 熱交換器(ガス冷却器)
5 酢酸トラップ
6 真空ポンプ
7 濃縮装置
P1 仕込ポンプ
L1〜14 ライン

Claims (6)

  1. 反応器内でリン含有触媒の存在下で酢酸の熱分解反応を行うことによりケテンを含む熱分解ガスを生成する工程(i)、
    前記熱分解ガスを冷却し、ケテンを含むガス成分と、リン化合物(a)を含む凝縮液とに分離する工程(ii)、
    前記ケテンをその他の有機化合物と反応させてケテン誘導体を生成する工程(iii)を含み、
    前記工程(i)は、前記リン化合物(a)を含む凝縮液またはその濃縮液を前記反応器内に供給しつつ、前記熱分解反応を行うことを含む、ケテン誘導体の製造方法。
  2. 前記工程(i)において、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮することにより、前記凝縮液を濃縮液とした後、前記濃縮液を前記反応器内に供給する、請求項1に記載のケテン誘導体の製造方法。
  3. 前記濃縮液に含まれる前記リン化合物(a)の濃度が、前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)の濃度に対し、5〜20倍である請求項2に記載のケテン誘導体の製造方法。
  4. 前記凝縮液に含まれるリン化合物(a)を濃縮する方法が、加熱蒸発、膜分離、および電気化学的処理からなる群から選択されるいずれか1つの方法である、請求項2または3に記載のケテン誘導体の製造方法。
  5. 前記工程(i)において、前記濃縮液にリン化合物(b)を添加して得られた液を、前記反応器内に供給する、請求項2〜4のいずれか1項に記載のケテン誘導体の製造方法。
  6. 前記リン含有触媒に対する前記酢酸の割合が、モル比で100〜2,000である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のケテン誘導体の製造方法。
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