JPWO2017109819A1 - 耐荷材 - Google Patents
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Abstract
Description
また、防護構造物であるロックシェッドにおいて、床版を支える主構部材に鋼管を耐荷材として用いることも知られている(特許文献4)。
上記したように防護構造物の耐荷材としては、一般的に中空鋼管が用いられ、大きな耐荷力が求められる場合は鋼管内にセメント系の充填材を充填した充填鋼管が用いられる。
さらに大きな耐荷力が求められる耐荷材としては、充填鋼管内にアンポンドタイプのPC材を埋設したもの(特許文献5)や、鋼管を二重にした充填鋼管(特許文献6)が知られている。
図8を参照して説明すると、この耐荷材は鋼管製の外管aと、外管aに内挿した複数の鋼管製の内管bと、外管aの内面と内管bの外面との間に充填した充填材cとを具備していて、複数の内管bは外管a内に互いに近接し合う状態で位置決めされていて、耐荷材に曲げモーメントが生じたときに内管bが扁平状に圧縮変形することで外管aの変形性を良くして、外管aの局部的な応力集中を抑制するといった特性を有している。
<1>内管bは補強部材を兼ねていることから、耐荷材の曲げ耐力を確保するためには内管bに肉厚が厚く強度の高い鋼管を使用する必要があった。
内管bに高強度の鋼管を使用すると、内管bの圧縮変形性が損なわれて外管aの局部的な応力集中の抑制効果を十分に発揮することができなかった。
逆に内管bの肉厚を薄くして強度を下げると、耐荷材の曲げ耐力が著しく低下する。
このように従来の耐荷材は、外管aの局部的な応力集中を抑制することと、耐荷材の曲げ耐力を高めることを両立させることが技術的に困難であった。
<2>従来の耐荷材は内管bに高強度の鋼管を使用すると、耐荷材のコストが高くなり、また内管bに一般鋼と比べて肉厚の薄い合金鋼管を使用すると、耐荷材のコストがさらに高くなる。
このように従来の耐荷材は、曲げ耐力の確保と低コスト化を両立させることも困難であった。
本発明の他の実施形態において、前記複数の補強材は外管内で等間隔に配置する。
本発明の他の実施形態において、前記複数の内管が互いに外面を接するように配置する。
本発明の他の実施形態において、前記外管内に複数の内管及び複数の補強材を位置決めする手段が、外管内に充填した充填材である。
耐荷材10は、円筒形の外管20と、外管20内で略同心円状に配置した円筒形を呈する複数の内管30と、複数の内管30の外方であって、外管20及び内管30から離隔した位置に配置した棒状の補強材50と、外管20の内面と内管30の外面との間に充填した充填材40とを具備する。
外管20は耐荷材10の全長に亘って外殻を構成する部材であり、断面が円形を呈する鋼製の円筒管である。
内管30は、外管20と比べて小径で、かつ肉厚が薄い断面が円形を呈する金属製の円筒管であり、複数の内管30は互いに近接して配置する。
内管30の肉厚t1は外管20の肉厚t2より薄い関係にある。
複数の内管のみを配置した従来の耐荷材は、内管を補強部材(強度部材)として扱い、耐荷材の設計強度に応じて内管の肉厚を選定していた。
これに対し、本発明では内管30を補強部材として扱わず、外管20及び複数の補強材50を補強部材として扱い、耐荷材10の設計強度に応じて複数の補強材50の材質や径を選定するものである。
このように本発明では耐荷材10の強度設計にあたり内管30の強度を特別考慮する必要がないので、内管30の厚t1を、補強材50を併用しない従来の耐荷材の内管の肉厚t5(図8)と比べて大幅に薄くできる。
換言すれば内管30の曲げ強度は、外管20の曲げ強度より大幅に低い関係にあるだけでなく、従来の耐荷材で使用していた内管と比べても曲げ強度が低い内管30を使用することができる。
内管30の素材は鉄や鋼鉄以外に、紙管、樹脂管でもよく、或いはアルミニウム、ステンレス、又はこれらの合金等の公知の素材の管体を適用できる。
本例では同径、同厚の7本の内管30を使用し、外管20の中心部に1本の内管30を配置し、この中心の内管30の外方に6本の内管30を六角形(ハニカム)の頂点位置に互いに隣接して配置した形態について説明する。
外管20の略同心円状に配置した6本の内管30は互いに接しており、かつ中心に位置する内管30とも接している。
換言すれば合計7本の内管30は、2本又は3本単位で直列に配列されていて、2本又は3本単位で配列した複数の内管30列は、外管20の中心を通る断面中心線S1に対して平行に位置する。
尚、耐荷材10に曲げモーメントが生じたときに内管30が変形可能なように、内管30の内部は充填材40を充填せずに中空のままにしておくことが望ましいが、内管30の内部に変形を阻害しない性質の各種中詰材(防錆油等の液体、発泡ウレタン等)を装填する場合もある。
充填材40としては、例えばモルタル、コンクリート等のセメント系固結材や、樹脂系固結材が使用可能である。
充填材40は外管20の全断面に充填せず、外管20の内面と内管30の外面との間に充填する。
充填材40の充填前は、スペーサやバンド材等により複数の内管30及び複数の補強材50を位置決めするが、最終的には外管20内に充填した充填材40により、簡単に複数の内管30及び複数の補強材50を位置決めできる。
耐荷材10は複数の内管30群を設置した充填材40の中心部が空洞化することで、充填材40の節約と軽量化が図れる。
補強材50は外管20の変形を抑制しつつ、内管30の湾曲変形を促進するために機能する補強部材である。
補強材50としては例えば鉄筋、異形棒鋼、丸鋼、PC鋼棒、異形PC棒鋼等の棒材が使用可能である。補強材50の素材やその径は要求される耐荷材10の曲げ耐力等を考慮して適宜選択する。
本例では同径の6本の補強材50を使用し、互いに当接させて束ねた複数の内管30群の外方であって、隣り合う内管30の中間位置に1本の補強材50を配置した形態を示す。
ここで、外管20内に複数の内管30群と複数の補強材50の結束体を挿入したときに、各補強材50が両管20,30から離隔した状態となるように位置決めしておくことが肝要である。
補強材50を両管20,30から離隔させたのは、図4に示すように各管20,30に対する充填材40の被り厚t3,t4を確保して、内管30と充填材40が互いに強度面で干渉し合うことを避けるためである。
外管20の挿入前に、間隔保持用のスペーサや結束用のバンド材等を使用して複数の内管30と複数の補強材50とをユニット化しておくと、外管20に対して内管30及び補強材50の配置位置が正確となる。
図2〜5を参照しながら耐荷材10の強度特性について説明する。
耐荷材10の両端部を支承した状態、又は耐荷材10の一端を片持ちした状態で耐荷材10に曲げ力Fが作用すると、曲げ力Fは耐荷材10を構成する外管20、充填材40、及び複数の内管30へ夫々伝達され、これらの各部材に曲げモーメントを生じる。
複数の内管30は互いに接する範囲で荷重を伝達し合い、充填材40と同様に同一領域に圧縮応力と引張応力を生じる。
内管30の肉厚を薄厚にして外管20との間に強度差を設けてあることから、外管20に先行して複数の内管30群が扁平状に圧縮変形を生じ、複数の内管30が圧縮変形をする際にエネルギーを吸収する。
内管30の変形に際し、補強材50が内管30から離隔して位置するので、補強材50が内管30の変形を阻害することはない。
複数の内管のみを配置した従来の耐荷材は、曲げモーメントが生じたときに内管の強度が充填材40の変形を阻害していたために外管の引張領域における局部的な応力集中を十分に抑制することができなかった。
すなわち、充填材40の中心部が複数の内管30により空洞化しているため、曲げに伴い膨張しようとする充填材40が中心部へ向けて変形する。
空洞を形成する複数の内管30は扁平状に圧縮変形しながら充填材40の変形を許容するため、外管20の引張領域における局部的な応力集中を抑制することができる。
したがって、耐荷材10が曲げ変形を開始しても、直ちに外管20の引張側に亀裂等を生じることはなく、耐荷材10の変形に追従する。
尚、外管20及び充填材40が曲げ変形する際にエネルギーを吸収する。
このように本発明では、曲げモーメントが生じた際、外管20に先行して内管30が扁平状に変形するように構成したから、複数の内管30及び複数の補強材50の補強作用により耐荷材10に十分な曲げ耐力を確保できる。
殊に、内管30の肉厚を薄くして強度を下げても複数の補強材50が内管30の強度低下分を補えるので、耐荷材10を低コストに製作できる。
外管20及び内管30から離隔した各補強材50はその全長、全周に亘って充填材40と固着するので、充填材40の補強効果が確実なものとなる。
内管30及び補強材50の配置形態は前記した形態に限定されず、以下に例示する配置形態も可能である。説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
以降に説明する各耐荷材10の強度的特性は既述した実施例と基本的に同じであるので詳しい説明省略する。
図6Aは3本の内管30を三角形の頂点位置に互いに隣接して配置すると共に、隣り合う内管30,30の中間位置であって、両管20,30から離隔して3本の補強材50を配置した他の耐荷材10の形態を示す。
図6Bは4本の内管30を方形の頂点位置に互いに隣接して配置すると共に、隣り合う内管30,30の中間位置であって、両管20,30から離隔して4本の補強材50を配置した他の耐荷材10の形態を示す。
図6Cは6本の内管30を六角形の頂点位置に互いに隣接して配置すると共に、隣り合う内管30,30の中間位置であって、両管20,30から離隔して6本の補強材50を配置した他の耐荷材10の形態を示す。
本例では耐荷材10の中心部に内管30を配置せず、充填材40を充填している。
本例では耐荷材10の中心部に内管30を配置せず、充填材40を充填している。
本例にあっては、中心部に位置する内管30と、その外周に位置する12本の内管30は当接せずに離隔している。
図6Fは6本の内管30aと、12の内管30bとを二つの相似関係にある各六角形の頂点位置に互いに隣接して配置すると共に、12本の内管30bの外方側の隣り合う内管30,30の中間位置であって、両管20,30bから離隔して12本の補強材50を配置した他の耐荷材10の形態を示す。
本例では内方側の6本の内管30aと外方側の12本の内管30bは互いに隣接している。
耐荷材10の中心部は内管30を配置せずに充填材40を充填している。
本例では相似関係になるように複数の内管30a,30bを内外二重に配置した形態を示すが、三重以上の多重に配置してもよい。
この配置形態の場合も、最外周に位置する内管の外方に複数の補強材50を配置する。
本例では中心の内管30が内方側の6本の内管30aと互いに隣接している。
次に本発明に係る耐荷材10(図2,3)の実施品と、補強材50を具備しない耐荷材(図8)の比較品についての実験例について説明する。
上記実施品1,2と比較品1,2の両端を支持し、その中央に荷重を加えた結果を図7に示す。
縦軸に載荷点のモーメント、横軸に載荷点の回転角度θを示す。
同図の左側に示すように、本発明の実施品1,2は比例範囲が大きく、耐力が高いことが分かる。
また、本発明の実施品1,2は、600kN-m程度までが概ね弾性変形範囲できるのに対して、比較品1,2では、300〜450kN-m程度までが弾性変形範囲であり、これを超えると塑性変形を起こすことが確認された。
本発明の実施品1,2の曲げ耐力が向上する要因のひとつは、内管30の肉厚を比較品より大幅に薄くしたことで比較品1,2と比べて内管30の変形がし易くなり、これにより外管20の脆性破壊の抑制効果が高くなったことによる。
更に、実施品1,2の曲げ耐力の向上要因は、複数の補強材50が肉厚を薄くして内管30の曲げ強度が低下した分以上の補強効果を発揮するためである。
尚、実施品1,2と比較品1,2の支柱全長が6mである場合、回転角度θの1°で105mmの変位となり、5°で523mmの変位となる。
20・・・・・外管
30・・・・・内管
40・・・・・充填材
50・・・・・補強材
本発明の他の実施形態において、前記複数の補強材は外管内で等間隔に配置する。
本発明の他の実施形態において、前記複数の内管が互いに外面を接するように配置する。
本発明の他の実施形態において、前記外管内に複数の内管及び複数の補強材を位置決めする手段が、外管内に充填した充填材である。
Claims (4)
- 断面円形を呈する金属製の外管と、該外管内で略同心円状に位置決めして配置した断面円形を呈する複数の内管と、外管の内面と内管の外面との間に充填した充填材とを具備し、曲げモーメントが生じた際、外管に先行して複数の内管が扁平状に変形するようにした耐荷材であって、
前記複数の内管の外方で該内管及び外管から離隔した位置に棒状を呈する複数の補強材を位置決めして配置したことを特徴とする、
耐荷材。 - 前記複数の補強材を外管内で等間隔に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の耐荷材。
- 前記複数の内管が互いに外面を接するように配置したことを特徴とする、請求項1又は2記載の耐荷材。
- 前記外管内に複数の内管及び複数の補強材を位置決めする手段が、外管内に充填した充填材であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の耐荷材。
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