以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置100の全体構成について説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリングホイール1の操作(以下、「ステアリング操作」と称する。)に伴って回転する入力シャフト2と、車輪6を転舵するラック5に連係する出力シャフト3と、入力シャフト2と出力シャフト3を連結するトーションバー4と、を備える。入力シャフト2、出力シャフト3、及びトーションバー4によってステアリングシャフト7が構成される。
出力シャフト3の下部には、ラック5に形成されたラックギヤ5aと噛み合うピニオンギヤ3aが形成される。ステアリングホイール1が操作されると、ステアリングシャフト7が回転し、その回転がピニオンギヤ3a及びラックギヤ5aによってラック5の直線運動に変換され、ナックルアーム14を介して車輪6が転舵される。
また、電動パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリングホイール1の操舵を補助するための動力源である電動モータ10と、電動モータ10の回転をステアリングシャフト7に減速して伝達する減速機11と、運転者によるステアリング操作に伴ってステアリングシャフト7に付与される操舵トルクを検出するトルクセンサ12と、トルクセンサ12の検出結果に基づいて電動モータ10の駆動を制御するコントローラ30と、をさらに備える。
電動モータ10には、モータ回転角を検出するモータ回転角検出器としてのモータ回転角センサ10aが設けられる。モータ回転角センサ10aは、レゾルバによって構成される。モータ回転角センサ10aはレゾルバに限られず、検出周期が短いセンサであればよい。
減速機11は、電動モータ10の出力軸に連結されるウォームシャフト11aと、出力シャフト3に連結されウォームシャフト11aに噛み合うウォームホイール11bと、からなる。電動モータ10が出力するトルクは、ウォームシャフト11aからウォームホイール11bに伝達されて出力シャフト3に操舵補助トルクとして付与される。
トルクセンサ12は、運転者によるステアリング操作に伴う入力シャフト2と出力シャフト3との相対回転によるトーションバー4の捩れ量に基づいて操舵トルクを検出する。トルクセンサ12は、操舵トルクに対応する信号をコントローラ30に出力する。コントローラ30は、トルクセンサ12からの信号に基づいて、電動モータ10が出力するトルク相当の電流を演算し、その電流に基づいてトルクが発生するように電動モータ10の駆動を制御する。このように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト7に付与される操舵トルクをトルクセンサ12にて検出し、その検出結果に基づいて電動モータ10の駆動をコントローラ30にて制御して運転者のステアリング操作をアシストする。
入力シャフト2には、ステアリングホイール1の回転角度である操舵角(絶対操舵角)を検出する操舵角検出器としての操舵角センサ15が設けられる。入力シャフト2の回転角とステアリングホイール1の操舵角とは等しいため、操舵角センサ15にて入力シャフト2の回転角を検出することによってステアリングホイール1の操舵角が得られる。操舵角センサ15の検出結果は車載ネットワークを経由してコントローラ30に出力される。
操舵角センサ15は、図示しないが、例えば、入力シャフト2と一体に回転するセンターギアと、センターギアに噛み合う2つのアウターギアと、を備え、2つのアウターギアの回転に伴う磁束の変化に基づいて、センターギアの回転角、すなわち入力シャフト2の回転角を演算する。
コントローラ30には、車速を検出する車速検出器としての車速センサ16の検出結果が車載ネットワークを経由して入力される。
コントローラ30は、電動モータ10の動作を制御するCPUと、CPUの処理動作に必要な制御プログラムや設定値等が記憶されたROMと、トルクセンサ12、操舵角センサ15、及び車速センサ16等の各種センサが検出した情報を一時的に記憶するRAMと、を備える。
ラック5は、所定ストローク以上の移動が機械的に規制されている。具体的には、ラック5の一部が、ラック5を収容するラックハウジング(図示せず)に形成されたストッパに当接することによって、ストロークエンドが規定されている。つまり、ラック5がラックハウジングのストッパに当接することによってステアリングホイール1の操舵角が最大となる。
ラック5がストロークエンドまで移動してストッパに勢いよく当接すると、ラック5とストッパの当接による異音が発生する。また、ラック5がストッパに当接した後、ストロークエンドから戻る際には、ラックギヤ5aとピニオンギヤ3aの噛み合いの遊び(バックラッシュ)に起因してラックギヤ5aとピニオンギヤ3aの当接による反転音が発生する。ラックギヤ5aとピニオンギヤ3aの当接による反転音は、ラック5がストッパから勢いよく離れるほど大きくなる。電動パワーステアリング装置100では、このようなラック5のストロークエンドでの異音の発生を抑制するための制御が行なわれる。
次に、主に図2及び3を参照して、ラック5のストロークエンド付近での異音の発生を抑制するための制御、具体的には、コントローラ30による電動モータ10の制御について説明する。
図2に示すように、コントローラ30は、トルクセンサ12の検出結果に基づいて運転者によるステアリングホイール1の操舵を補助するためのアシスト基本電流(アシスト基本指令値)を演算する基本電流演算部31と、電動モータ10の駆動を制御するモータ制御部32と、ラック5のストロークエンド近傍での異音発生を抑制するための制御を行う異音抑制制御部33と、を備える。
異音抑制制御部33は、基本電流演算部31で演算されるアシスト基本電流を制限するための制限電流(制限値)を演算する。モータ制御部32は、アシスト基本電流と制限電流を用いてアシスト電流(アシスト指令値)を演算し、そのアシスト電流に基づいて電動モータ10の駆動を制御する。
以下では、異音抑制制御部33について詳しく説明する。
異音抑制制御部33は、操舵角センサ15の検出結果とモータ回転角センサ10aの検出結果とに基づいて高精度操舵角を演算する高精度操舵角演算部41と、高精度操舵角演算部41にて演算された高精度操舵角と車速センサ16にて検出された車速とに基づいて制限電流を演算する制限電流演算部42と、アシスト基本電流の制限を実施するか否かを判定する電流制限実施判定部43と、を備える。
制限電流演算部42にて制限電流を演算する際には、ステアリングホイール1の操舵角が用いられる。しかし、操舵角センサ15の検出周期では、ステアリングホイール1が素早く操舵された際には、操舵角センサ15のみではステアリングホイール1の操舵角を精度良く検出することができない。そこで、ステアリングホイール1の操舵角をより高精度に検出するために、高精度操舵角演算部41は、操舵角センサ15にて検出された操舵角を、モータ回転角センサ10aにて検出されたモータ回転角を用いて補正することによって高精度操舵角を演算する。具体的に説明すると、モータ回転角センサ10aは、操舵角センサ15の検出周期よりも短い周期で電動モータ10の回転角変化量であるモータ回転角を検出する。モータ回転角センサ10aで検出されたモータ回転角と減速機11の減速比(出力シャフト3と電動モータ10の減速比)とから出力シャフト3の回転角度変化量を得ることができる。よって、操舵角センサ15にて検出される操舵角に、モータ回転角センサ10aで検出されるモータ回転角と減速機11の減速比とから得られる出力シャフト3の回転角度変化量を加算することによって、短い周期で出力シャフト3の操舵角を演算することができる。つまり、高精度操舵角を演算することができる。これにより、ステアリングホイール1が素早く操舵された際であっても、精度の高い操舵角を得ることができる。なお、例えば、舵角センサ15の検出周期は10msec程度であり、モータ回転角センサ10aの検出周期は1msec以下であるが、舵角センサ15の検出周期が短ければ、舵角センサ15のみによって操舵角を検出するようにしてもよい。
制限電流演算部42は、高精度操舵角演算部41にて演算された高精度操舵角と車速センサ16にて検出された車速とを入力信号として、制限電流を演算して出力する。具体的には、制限電流演算部42には、車速に応じて特性が異なる複数の制限電流マップ(図3A〜3C参照)が記憶されている。制限電流演算部42は、複数の制限電流マップのうち現在の車速に対応する制限電流マップを選択し、その選択した制限電流マップを参照して現在の操舵角に対応する制限電流を演算する。制限電流は、基本電流演算部31で演算されるアシスト基本電流を制限するための電流であり、電動モータ10を駆動するためのアシスト電流の上限値となるものである。よって、基本電流演算部31で演算されるアシスト基本電流が大きい場合であっても、アシスト基本電流が制限電流によって制限された場合には、アシスト電流が制限電流よりも大きくなることはなく、電動モータ10の出力が制限される。
図3A〜3Cを参照して、制限電流演算部42に記憶された制限電流マップについて説明する。図3A〜3Cに示す制限電流マップは、操舵角と制限電流との関係を示すマップであり、図3Aは車速が0km/h時、つまり停車時のマップ、図3Bは車速が5km/h時のマップ、図3Cは車速が10km/h時のマップである。図3では、ステアリングホイール1の左操舵と右操舵で共通のマップを使用する場合について示している。
図3Aに示すように、制限電流は、操舵角が0度(中立位置)から制限開始操舵角Axまでの間では、基本電流演算部31で演算されるアシスト基本電流を制限しない大きさの一定値Imaxに設定される。また、制限電流は、ステアリングホイール1が切り込まれて操舵角が制限開始操舵角Axを超えた場合に、アシスト電流が小さくなるように一定値Imaxと比較して小さい値に設定される。つまり、アシスト基本電流の制限は、操舵角が制限開始操舵角Axを超える領域(制限領域)のみで行われる。制限開始操舵角Axは、ラック5がラックハウジングのストッパに当接することによって決まる最大操舵角Az近傍に設定される。例えば、最大操舵角Azの手前30度程度に設定される。
制限開始操舵角Axは最大操舵角Az近傍に設定されるため、通常の車両走行時におけるステアリング操作の際に、アシスト基本電流が制限されてハンドルが重くなってしまうことはない。一方、車庫入れ時等のように最大操舵角Azまでステアリングホイール1を操作する場合には、操舵角が制限開始操舵角Axを超えるとアシスト基本電流が制限電流によって制限されてアシスト電流が小さくなるため、電動モータ10の出力トルクが小さくなる。これにより、ラック5のストロークエンド付近での推力が弱くなり、ラック5がストッパに当接する衝撃が小さくなる。よって、ラック5とストッパの当接による異音の発生が抑制される。また、ラック5がストッパに当接する衝撃が小さくなることによって、ラック5がストロークエンドから戻る際に発生する、ラックギヤ5aとピニオンギヤ3aの当接による異音の発生も抑制される。
このように、操舵角が最大操舵角Az近傍の制限開始操舵角Axを超えた場合にアシスト基本電流を制限することによって、ラック5のストロークエンドでの異音の発生を抑制することができる。
図3Aに示すように、制限電流は、操舵角が制限開始操舵角Ax以上であって最大操舵角Azよりも小さい所定操舵角Ay以下の間では、操舵角が大きいほど小さくなるように設定され、操舵角が所定操舵角Ay以上では、操舵角に関係なく一定値Iminに設定される。制御電流がこのように設定されることによって、操舵角が制限開始操舵角Ax以上所定操舵角Ay以下の間では、操舵角が大きいほどアシスト電流が小さくなり、操舵角が所定操舵角Ay以上では、操舵角に関係なくアシスト電流は一定となる。このように、操舵角が制限開始操舵角Ax以上の制限領域において、操舵角が大きいほど制限電流が小さくなるように設定せずに、操舵角が最大操舵角Azである場合には制限電流を一定値Iminに設定したのは、ラック5がストロークエンドに到達した状態では車輪6からの反力に打ち勝つようにある程度アシスト電流を残す必要があるためである。つまり、Iminは、ラック5をストロークエンドに保持するための保持電流として設定される。
制限電流演算部42に記憶された複数の制限電流マップは、車速に応じて特性が異なる。図3A〜3Cからわかるように、制限開始操舵角Ax及び保持電流Iminが車速に応じて異なる。以下に、具体的に説明する。
停車時には、車庫入れのために最大操舵角までの操舵が要求され、また、ラック5がストロークエンドに向って移動するのに伴って操舵トルクが大きくなり続ける。したがって、停車時には、図3Aに示すように、制限開始操舵角Axは最大操舵角Azに極力近い方が望ましい。一方、低速走行時には、最大操舵角までの操舵の要求はそれほど大きくなく、また、ラック5がストロークエンドに向かって移動しても操舵トルクがそれほど大きくならない。したがって、低速走行時には、制限開始操舵角Axが最大操舵角Azにそれほど近くなくても問題がない。また、低速走行時においても、図3Aに示す停車時の制限電流マップを用いると、最大操舵角近傍まで操舵した際には、最大操舵角近傍で急に操舵感が重くなってしまい、運転者に操舵フィーリングの違和感を与えてしまう。そこで、低速走行時には、図3Cに示すように、制限開始操舵角Axは停車時(図3A)と比較して小さい操舵角に設定される。これにより、低速走行時に最大操舵角近傍まで操舵した際には、最大操舵角に向けて除々に操舵感が重くなるため、違和感のない自然な操舵フィーリングが実現される。
このように、制限開始操舵角Axは、車速が大きいほど小さくなるように設定される。
また、停車時には、ラック5がストロークエンドに到達した際の車輪6からの反力が大きい。したがって、停車時には、図3Aに示すように、保持電流Iminはアシスト電流をある程度残すために大きく設定される。一方、低速走行時には、ラック5がストロークエンドに到達した際の車輪6からの反力が小さい。したがって、低速走行時には、図3Cに示すように、保持電流Iminは停車時(図3A)と比較して小さく設定される。
このように、保持電流Iminは、車速が大きいほど小さくなるように設定される。
以上のように、制限電流マップは、操舵フィーリングの違和感抑制のため、車速に応じて異なる特性に設定される。これにより、ラック5のストロークエンドでの異音の発生抑制と操舵フィーリングの違和感抑制とを両立することができる。
本実施形態では、制限電流マップは、車速が0km/h、5km/h、10km/hに対応する3つのマップについて示した、しかし、制限電流マップは車速が1km/h毎又は0.5km/h毎に設定するようにしてもよい。より多くの制限電流マップを設定することによって、操舵フィーリングの違和感をより抑制することができる。
図2に戻り、電流制限実施判定部43は、制限電流演算部42にて演算された制限電流を用いてアシスト基本電流の制限を実施するか否かを判定する。つまり、電流制限実施判定部43は、ラック5のストロークエンド近傍での異音発生を抑制するための異音抑制制御を行うか否かを判定するものである。
車速が大きい場合には、ステアリングホイール1が最大操舵角近傍まで操舵されることは無い。よって、電流制限実施判定部43は、車速が所定速度以下の場合にアシスト基本電流の制限を実施すると判定する。所定速度は、例えば10km/hである。
ただ、アシスト基本電流の制限を実施するか否かを判定する速度の閾値が10km/hのみの場合には、車両が10km/h前後の速度で走行する場合には、アシスト基本電流の制限と非制限を繰り返してしまうおそれがある。そこで、車両の加速時においてアシスト基本電流の制限を解除する解除閾値と、車両の減速時においてアシスト基本電流の制限を実施する実施閾値と、を異なる速度に設定するのが望ましい。例えば、解除閾値は10km/hに設定され、実施閾値は5km/hに設定される。このように、解除閾値と実施閾値をオフセットすることによって安定した異音抑制制御が可能となる。
電流制限実施判定部43にてアシスト基本電流の制限を実施すると判定された場合には、モータ制御部32は、アシスト基本電流と制限電流を用いてアシスト電流を演算し、そのアシスト電流に基づいて電動モータ10の駆動を制御する。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
本実施形態では、電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクに基づいてアシスト基本電流を演算する基本電流演算部31と、操舵角及び車速に基づいてアシスト基本電流を制限する制限電流を演算する制限電流演算部42と、アシスト基本電流と制限電流を用いて演算されるアシスト電流に基づいて電動モータ10の駆動を制御するモータ制御部32と、を備える。制限電流演算部42は、ステアリングホイール1が切り込まれて操舵角が最大操舵角Az近傍の制限開始操舵角Axを超えた場合に、アシスト電流が小さくなるように制限電流を演算し、制限開始操舵角Axは、車速が大きいほど小さくなるように設定される。
この構成では、操舵角が最大操舵角Az近傍の制限開始操舵角Ax以上である場合にはアシスト基本電流が制限されるため、ラック5のストロークエンド付近での推力が弱くなり、ストロークエンドでの異音の発生が抑制される。また、制限開始操舵角Axは車速が大きいほど小さくなるように設定されるため、低速走行時に最大操舵角Az近傍まで操舵した際には、最大操舵角Azに向けて除々に操舵感が重くなり、違和感のない自然な操舵フィーリングが実現される。よって、ラック5のストロークエンドでの異音の発生抑制と操舵フィーリングの違和感抑制とを両立することができる。
また、本実施形態では、制限電流演算部42は、車速に応じて制限開始操舵角Axが異なる複数の制限電流マップを有し、複数の制限電流マップのうち現在の車速に対応するマップを選択する。
この構成では、制限電流は、車速に応じて制限開始操舵角Axが異なる複数の制限電流マップに基づいて演算されるため、操舵フィーリングの違和感をより抑制することができる。
また、本実施形態では、制限電流マップにおいて、制限電流は、操舵角が制限開始操舵角Ax以上であって最大操舵角よりも小さい所定操舵角Ay以下の間では、操舵角が大きいほどアシスト電流が小さくなるように設定され、操舵角が所定操舵角Ay以上では、操舵角に関係なくアシスト電流が一定値になるように設定される。
この構成では、ラック5がストロークエンドに到達した状態において、車輪6からの反力に打ち勝つアシスト電流を確保することができる。
また、本実施形態では、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール1の操舵角を検出する操舵角センサ15と、電動モータ10のモータ回転角を検出するモータ回転角センサ10aと、をさらに備え、操舵角センサ15にて検出された操舵角を、モータ回転角センサ10aにて検出されたモータ回転角を用いて補正することによって高精度操舵角が演算され、制限電流演算部42は、高精度操舵角及び車速に基づいて制限電流を演算する。
この構成では、ステアリングホイール1が素早く操舵された際であっても精度の高い操舵角を得ることができるため、制限電流の精度も向上する。
また、本実施形態では、電動パワーステアリング装置100は、制限電流を用いてアシスト基本電流の制限を実施するか否かを判定する電流制限実施判定部43をさらに備え、電流制限実施判定部43は、車速が所定速度以下の場合にアシスト基本電流の制限を実施すると判定する。
この構成では、車速が所定速度以下の場合にのみアシスト基本電流の制限が実施されるため、異音抑制制御が必要のない車両の通常走行時に、アシスト基本電流が制限されてしまう事態を防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、図3A〜3Cに示す制限電流マップのように、制限電流は、操舵角が制限開始操舵角Ax以上であって最大操舵角Azよりも小さい所定操舵角Ay以下の間では、操舵角が大きいほど小さくなるように設定され、操舵角が所定操舵角Ay以上では、操舵角に関係なく一定値Iminに設定される形態について説明した。しかし、所定操舵角Ay及び一定値Iminを設定せずに、制限電流を、操舵角が制限開始操舵角Ax以上では、操舵角が大きいほど小さくなるように設定してもよい。つまり、操舵角が制限開始操舵角Ax以上では、操舵角が大きいほどアシスト電流が小さくなるように設定してもよい。
また、上記実施形態では、制限電流演算部42は、制限電流マップを参照して制限電流を演算する形態について説明した。しかし、制限電流演算部42は、制限電流マップを参照することなく制限電流を演算する構成であってもよい。
また、上記実施形態では、精度の高い操舵角を得るために、操舵角センサ15にて検出された操舵角を、モータ回転角センサ10aにて検出されたモータ回転角を用いて補正することによって高精度操舵角を演算する形態について説明した。しかし、精度の高い操舵角が必要でない場合や、操舵角センサ15の検出周期が十分短い場合には、操舵角センサ15にて検出された操舵角のみを用いて制限電流を演算するようにしてもよい。つまり、本発明は、操舵角センサ15にて検出された操舵角のみを用いて制限電流を演算する形態を排除するものではない。
また、制限電流演算部42にて演算される制限電流を、電流制限実施判定部43を介さずにモータ制御部32に出力するようにしてもよい。つまり、電流制限実施判定部43は本発明の必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、電動モータ10の駆動力が、減速機11を介して出力シャフト3に付与される形態について説明した。これに代えて、電動モータ10の駆動力を、プーリ及びベルトを有する減速機を介してラック5に付与する構成(ベルトドライブ方式)としてもよく、また、電動モータ10の駆動力を、減速機を介さずに直接ラック5に付与する構成(ダイレクトドライブ方式)としてもよい。このように、電動モータ10は、ステアリング系に操舵補助トルクを付与するものである。
また、上記実施形態では、ラック5に形成されたラックギヤ5aと噛み合うピニオンギヤ3aが出力シャフト3に形成されたピニオン式の電動パワーステアリング装置100について説明した。しかし、本発明は、出力シャフト3にピニオンが形成されないコラム式の電動パワーステアリング装置であってもよい。
また、上記実施形態では、ドライバによる操舵トルクと電動モータ10による操舵補助トルクとが共通のステアリングシャフト11を介してラック5に入力されるシングルピニオン式の電動パワーステアリング装置100について説明した。しかし、本発明は、ドライバによる操舵トルクと電動モータ10による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラック5に入力されるデュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置であってもよい。