JPWO2017057360A1 - 新規なテトラカルボン酸二無水物、及び該テトラカルボン酸二無水物から誘導されるポリイミド、及び該ポリイミドからなる成形体 - Google Patents
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Abstract
で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるポリイミドにより、上記課題は解決できる。
Description
一方、これらの欠点を克服したポリイミドが提案されている。例えば、ポリイミド構造中にフッ素原子を導入する方法(非特許文献1)や、ポリイミドを構成するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分の一方、または両方に脂環式化合物を用いることにより分子内共役及び電荷移動相互作用を抑制し、透明性を高める方法が提案されている(非特許文献2、3)。これらの先行技術によって透明性と溶液加工性を両立したポリイミドが開発されたが、加工性に加えて低熱膨張性を併せ持つポリイミドの報告例は限られている。
その数少ない報告例として、エステル基を有する特定のポリイミドが提案されている(特許文献1)。このポリイミドは、透明性、耐熱性に加えて、無機材料と同等の低線熱膨張係数を有するものの、様々な種類の有機溶媒に対する溶解性が十分ではなく、この点で改善の余地があった。
更に、熱可塑性をも併せ持つ優れた加工性を有するポリイミドは知られていない。
1.下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物。
4.2または3に記載のポリイミドと有機溶媒とを含有するポリイミド溶液であって、固形分濃度が5重量%以上であることを特徴とするポリイミド溶液。
5.2または3に記載のポリイミド成形体。
そこで、本発明にかかる式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの次に記載する第二の特徴によって、この問題を解決することが可能になる。つまり、テトラカルボン酸二無水物部位の中央フェニレン基に嵩高いシクロヘキシル基が置換され、且つジアミン部位の側鎖に電子求引性で嵩高いトリフルオロメチル基を置換することで、ポリイミド鎖間の面内配向を阻害せずに凝集力のみを弱めることができる。この絶妙なバランスを実現した式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、様々な種類の有機溶媒に対する溶解性に優れ、かつ、熱可塑性をも併せ持つために加工性に優れ、そして、本来両立困難であった低い線熱膨張係数を示し、更にはポリイミドの電荷移動相互作用も抑制されて高い透明性をも実現することができる。
その際に使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、メチルハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、脂環式のものとしては、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、これらを2種類以上併用することもできる。
ポリイミドの溶解性、耐熱性、透明性を更に高める観点から、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以後、6FDAと略称する場合がある)、ポリイミド成形体の更なる低熱膨張性発現という観点から、剛直で直線的な構造を有するテトラカルボン酸二無水物、即ちピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が、共重合成分として好適である。
式(1)で表されるTACHQ以外の芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用する場合には、全てのテトラカルボン酸二無水物に対するTACHQの割合は、好ましくは55mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上であるとよい。
その際に使用可能な芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられる。
また、脂肪族ジアミンとしては、鎖状脂肪族乃至脂環式ジアミンであり、脂環式ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、鎖状脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、ジアミノシロキサン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
本発明のポリイミドは、高分子主鎖の直線性、剛直性、側鎖に嵩高い置換基が存在するという化学構造上の特徴から、ポリイミド樹脂とした際に、様々な種類の有機溶媒に対する溶解性に優れ、かつ、熱可塑性をも併せ持つために加工性に優れ、更に、そのポリイミドの成形体、特にフィルムは、低い線熱膨張係数、そして高い透明性を併せ持つ材料とすることができる。
通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重合反応性は、最終的に得られるポリイミド成形体の靭性に大きな影響を及ぼす。重合反応性が十分高くないと、高重合体が得られず、結果としてポリマー鎖同士の絡み合いが低くなり、ポリイミド成形体が脆弱になる恐れがある。本発明で使用する式(1)のTACHQと式(5)のTFMBは、十分に高い重合反応性を示すため、そのような懸念がない。
また、本発明のポリイミドには、必要に応じて離型剤、フィラー、染料、顔料、シランカップリング剤、架橋剤、末端封止剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤などの添加物を加えることができる。
得られたポリイミド溶液は、公知の方法で製膜し、ポリイミド成形体やフィルムを形成できる。例えば、ポリイミド溶液をガラス基板等の支持体上にドクターブレード等を用いて流延し、熱風乾燥器、赤外線乾燥炉、真空乾燥器、イナートオーブン等を用いて、通常、40〜300℃の範囲、好ましくは、50〜250℃の範囲で乾燥することによってポリイミドフィルムを形成することができる。
なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR4100(日本分光社製)を用い、KBr透過法にてテトラカルボン酸二無水物の赤外吸収スペクトルを測定した。また、ポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルは、透過法によって測定した。
<1H−NMRスペクトル>
フーリエ変換核磁気共鳴分光光度計JNM−ECP400(JEOL製)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中でテトラカルボン酸二無水物および化学イミド化したポリイミド粉末の1H−NMRスペクトルを測定した。
<示差走査熱量分析(融点)>
テトラカルボン酸二無水物の融点は、示差走査熱量分析装置DSC3100(ネッチ社)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定した。融点が高く融解ピークがシャープであるほど、高純度であることを示す。
<固有粘度>
0.5重量%のポリアミド酸溶液、または、ポリイミド溶液の還元粘度は、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。この値をもって固有粘度とみなした。
<ポリイミド粉末の有機溶媒への溶解性試験>
ポリイミド粉末10mgに対し、表1に記載の有機溶媒1g(固形分濃度1重量%)をサンプル管に入れ、試験管ミキサーを用いて5分間撹拌して溶解状態を目視で確認した。溶媒として、クロロホルム(CF)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン(DOX)、酢酸エチル、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、m−クレゾール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロルラクトン(GBL)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(Tri−GL)を使用した。
評価結果は、室温で溶解した場合を++、加熱により溶解し、且つ室温まで放冷後も均一性を保持していた場合を+、膨潤/一部溶解した場合を±、不溶の場合を−と表示した。
<ガラス転移温度:Tg、熱可塑性>
TA Instruments社製動的粘弾性測定装置(Q800)を用いて周波数0.1Hz、振幅0.1%、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリイミドフィルムのガラス転移温度を求めた。また、ガラス転移温度直後の貯蔵弾性率曲線の低下の急峻さより熱可塑性を評価した。
<線熱膨張係数:CTE>
ポリイミドフィルムの線熱膨張係数は、ネッチ社製TMA4000を用いて(サンプルサイズ 幅5mm、長さ15mm)、荷重を膜厚(μm)×0.5gとして、5℃/minで150℃まで一旦昇温(1回目の昇温)させた後、20℃まで冷却し、さらに5℃/minで昇温(2回目の昇温)させて2回目の昇温時のTMA曲線より計算した。線熱膨張係数は100〜200℃の間の平均値として求めた。
<ポリイミド膜の透過率:T400>
日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V−650)を用いて、ポリイミドフィルム(20μm厚)の200−700nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率を透明性の指標として用いた。また、透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)も求めた。
<黄色度(イエローネスインデックス):YI>
紫外−可視分光光度計V−530(日本分光社製)を用い、波長380〜780nmにおけるポリイミドフィルムの光透過率(T%)からVWCT−615型 カラ−診断プログラム(日本分光社製)によってJISK77373に準拠して黄色度(YI)算出した。
<全光線透過率およびヘイズ>
Haze Meter NDH4000(日本電色工業製)を用い、JISK7361に準拠したポリイミドフィルムの全光線透過率とJISK7136に準拠したヘイズ(濁度)を求めた。
<複屈折:Δn>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ1T)を用いて、ポリイミドフィルム面に平行な方向(nin)と垂直な方向(膜厚方向)(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。複屈折値が高いほど、ポリマー鎖の面内配向度が高いことを意味する。
A.TAHQの合成
下記式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物(TAHQ)は次のように合成した。ナスフラスコに無水トリメリット酸クロリド12.6751g(60.1940mmol)を入れ、脱水テトラヒドロフラン(THF)33mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した。更に別のフラスコ中でハイドロキノン(HQ)2.2209g(20.1700mmol)を脱水THF8.2mL、ピリジン9.7mL(120mmol)を加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。氷浴中で冷却、撹拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジによって約5分間かけて徐々に滴下し、その後室温で24時間撹拌した。反応終了後、白色沈殿を濾別し、THFおよびイオン交換水で洗浄した。ピリジン塩酸塩の除去は、洗液に硝酸銀水溶液を添加し白色沈殿が見られなくなったことをもって確認した。洗浄した生成物を回収し、100℃で12時間真空乾燥した。得られた生成物は、白色粉末であり、収量は8.0287g、収率87.6%であった。
生成物は、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR4100(日本分光社製)より、3082cm−1に芳香族C−H伸縮振動吸収帯、1847cm−1および1781cm−1に酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1742cm−1にエステル基C=O伸縮振動吸収帯を確認した。
また、フーリエ変換核磁気共鳴分光光度計JNM−ECP400(JEOL製)を用いて1H−NMR測定を行った結果、(DMSO−d6,δ,ppm):7.54(s,4H),8.30(d,J=7.9Hz,2H),8.65(sd,J=0.72Hz,2H),8.67(dd,J=8.0Hz,1.3Hz,2H)と帰属でき、元素分析値は推定値C:62.89%,H:2.20%,実測値C:62.69%,H:2.42%であり、生成物はTAHQであることが確認された。
また、示差走査熱量分析装置DSC3100(ネッチ社)によって融点を測定したところ、272.4℃に鋭い融解ピ−クを示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。
A.テトラカルボン酸二無水物TAPhの合成
下記式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物(TAPh)は次のように合成した。ナスフラスコに無水トリメリット酸クロリド15.1116g(71.8mmol)を入れ、脱水テトラヒドロフラン(THF)16.5mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した。更に別のフラスコ中で2−フェニルハイドロキノン6.2721g(34mmol)を脱水THF23.5mL、ピリジン8.7mL(108mmol)を加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。氷浴中で冷却、撹拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジによって約5分かけて徐々に滴下し、その後室温で24時間撹拌した。反応終了後、白色沈殿を濾別し、THFおよびイオン交換水で洗浄した。ピリジン塩酸塩の除去は、洗液に硝酸銀水溶液を添加し白色沈殿が見られなくなったことをもって確認した。洗浄した生成物を回収し、80℃1時間、更に100℃で12時間真空乾燥した。得られた生成物は、白色粉末であり、収量は17.93g、収率98.7%であった。
生成物は、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR4100(日本分光社製)より、3092,3065cm−1に芳香族C−H伸縮振動吸収帯、1847cm−1および1775cm−1に酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1752cm−1にエステル基C=O伸縮振動吸収帯を確認した。
また、フーリエ変換核磁気共鳴分光光度計JNM−ECP400(JEOL製)を用いて1H−NMR測定を行った結果、(DMSO−d6,δ,ppm):7.30−7.40(m,3H),7.55−7.66(m,5H),8.23(d,J=7.8Hz,1H),8.29−8.32(m,1H),8.50−8.56(m,2H),8.66−8.70(m,2H)と帰属でき、元素分析値は推定値C:67.42%,H:2.64%,実測値C:67.49%,H:2.82%であ
り、生成物はTAPhであることが確認された。
また、示差走査熱量分析装置DSC3100(ネッチ社)によって融点を測定したところ、198.4℃に鋭い融解ピークを示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。
A.式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物TACHQの合成
式(1)で表されるTACHQは次のように合成した。ナスフラスコに無水トリメリット酸クロリド12.7003g(60.3137mmol)を入れ、脱水テトラヒドロフラン(THF)33mLに室温で溶解させ、セプタムシールして溶液Aを調製した。更に別のフラスコ中で2−シクロヘキシルハイドロキノン(CHQ)3.8551g(20.0661mmol)を脱水THF6.5mL、ピリジン9.7mL(120mmol)を加えてセプタムシールし溶液Bを調製した。
氷浴中で冷却、撹拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジによって約5分かけて徐々に滴下し、その後室温で24時間撹拌した。反応終了後、白色沈殿を濾別し、THFおよびイオン交換水で洗浄した。ピリジン塩酸塩の除去は、洗液に硝酸銀水溶液を添加し白色沈殿が見られなくなったことをもって確認した。洗浄した粗生成物を回収し、100℃で12時間真空乾燥した。得られた粗生成物は、白色粉末であり、収量は6.54g、収率87.6%であった。
(精製)
得られた粗生成物2.5526gを無水酢酸とトルエン(体積比1:10)混合溶媒に90℃で溶解させた後、自然放冷して72時間静置した。析出した白色粉末を濾別し、160℃で12時間真空乾燥した。得られた白色粉末の収量は1.3602g、再結晶収率は53.3%であった。
再結晶によって精製した生成物は、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR4100(日本分光社製)より、2928cm−1に脂肪族C−H伸縮振動吸収帯、1861cm−1および1778cm−1に酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1745cm−1にエステル基C=O伸縮振動吸収帯を確認した。
また、フーリエ変換核磁気共鳴分光光度計JNM−ECP400(JEOL製)を用いて1H−NMR測定を行った結果、(DMSO−d6,δ,ppm):1.80−1.23(m,10H),2.69(t,J=12Hz,1H),7.50−7.18(m,3H),8.33−8.29(m,2H),8.71−8.65(m,4H)と帰属でき、元素分析値は理論値C:66.67%,H:3.73%,実測値C:66.27%,H:3.78%であり、生成物はTACHQであることが確認された。
また、示差走査熱量分析装置DSC3100(ネッチ社)によって融点を測定したところ、229.1℃に鋭い融解ピ−クを示したことからこの生成物は高純度であることが示唆された。
A.式(8)で表される繰り返し単位のポリイミドの合成
(ポリアミド酸の重合)TACHQ/TFMB
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)3mmolを脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した。ここに実施例1に記載のTACHQ粉末3mmolをゆっくり加え、室温で72時間撹拌し、適宜DMAcを加えポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た(固形分濃度16.7重量%)。得られたポリアミド酸の固有粘度は、1.72dL/gであった。
(化学イミド化反応)
得られたポリアミド酸溶液を脱水DMAcで固形分濃度約10.0重量%に希釈後、これを撹拌しながら2.8mL(30mmol)の無水酢酸と1.2mL(15mmol)のピリジンの混合溶液を室温でゆっくり滴下し、滴下終了後更に24時間撹拌した。得られたポリイミド溶液を大量のメタノールにゆっくりと滴下しポリイミドを沈澱させた。得られた白色沈殿物をメタノールで十分洗浄し、100℃で12時間真空乾燥した。得られた繊維状ポリイミド粉末について1H−NMR測定を行ったところ、ポリアミド酸に特有のCOOHプロトン(δ=13ppm付近)およびNHCOプロトン(δ=11ppm付近)は観測されなかったことから、化学イミド化反応は完結していることが示唆された。得られたポリイミドの固有粘度は、2.55dL/gであり、高分子量体であった。また、ポリイミド粉末の溶媒に対する溶解性を表1に示す。表1より優れた溶媒溶解性を示すことがわかる。
上記のポリイミド粉末をγ−ブチロラクトン(GBL)に加温しながら再溶解し6.0重量%の均一溶液を調製した。このポリイミド溶液をガラス基板上に流延し、80℃2時間熱風乾燥器中で乾燥した。その後、基板ごと真空中200℃で1時間乾燥して室温まで放冷後、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。このポリイミドフィルムをもう一度真空中200℃で1時間熱処理して残留歪を除去した。
得られたポリイミドフィルムの赤外吸収スペクトルを図1、動的粘弾性曲線を図2、熱的特性・光学的特性を表2に示す。図1より目的のポリイミドであることが同定できる。図2より急峻な貯蔵弾性率の低下が225℃付近で観測され、高い熱可塑性を示すことがわかる。表2より、線熱膨張係数(CTE)が11.9ppm/Kと低く、無色透明なフィルムであることがわかる。これらの優れた特性は、式(2)の構造による効果である。
A.下記式(9)で表される繰り返し単位のポリイミドの合成
(ポリアミド酸の重合)TACHQ(80)6FDA(20)/TFMB
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)3mmolを脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した。ここに実施例1に記載のTACHQ粉末2.4mmolと4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)粉末0.6mmolをゆっくり加え、室温で72時間撹拌し、適宜DMAcを加えポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た(固形分濃度22.7重量%)。得られたポリアミド酸の固有粘度は、0.91dL/gであった。
(化学イミド化反応)
得られたポリアミド酸溶液を脱水DMAcで固形分濃度約10.0重量%に希釈後、これを撹拌しながら2.8mL(30mmol)の無水酢酸と1.2mL(15mmol)のピリジンの混合溶液を室温でゆっくり滴下し、滴下終了後更に24時間撹拌した。得られたポリイミド溶液を大量のメタノールにゆっくりと滴下しポリイミドを沈澱させた。得られた白色沈殿物をメタノ−ルで十分洗浄し、100℃で12時間真空乾燥した。得られた繊維状ポリイミド粉末について1H−NMR測定を行ったところ、ポリアミド酸に特有のCOOHプロトン(δ=13ppm付近)およびNHCOプロトン(δ=11ppm付近)は観測されなかったことから、化学イミド化反応は完結していることが示唆された。得られたポリイミドの固有粘度は、1.75dL/gであり、高分子量体であった。また、ポリイミド粉末の溶媒に対する溶解性を表1に示す。表1より優れた溶媒溶解性を示すことがわかる。
上記のポリイミド粉末をシクロペンタノン(CPN)に加温しながら再溶解し8.0重量%の均一溶液を調製した。このポリイミド溶液をガラス基板上に流延し、60℃2時間熱風乾燥器で乾燥した。その後、基板ごと真空中200℃で1時間乾燥して室温まで放冷後、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。このポリイミドフィルムをもう一度真空中200℃で1時間熱処理して残留歪を除去した。得られたポリイミドフィルムの赤外吸収スペクトルを図3、動的粘弾性曲線を図4、熱的特性・光学的特性を表2に示す。図3より目的のポリイミドであることが同定できる。図4より急峻な貯蔵弾性率の低下が225℃付近で観測され、高い熱可塑性を示すことがわかる。表2より、線熱膨張係数(CTE)が24.7ppm/Kと低く、無色透明なフィルムであることがわかる。これらの優れた特性は、式(2)の構造による効果である。
A.下記式(10)で表される繰り返し単位のポリイミドの合成
(ポリアミド酸の重合)TACHQ(50)6FDA(50)/TFMB
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)2mmolを脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した。ここに実施例1に記載のTACHQ粉末1.0mmolと4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)粉末1.0mmolをゆっくり加え、室温で72時間撹拌し、適宜DMAcを加えポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た(固形分濃度30重量%)。
得られたポリアミド酸の固有粘度は、0.56dL/gであった。
(化学イミド化反応)
得られたポリアミド酸溶液を脱水DMAcで固形分濃度約10.0重量%に希釈後、これを撹拌しながら1.9mL(20mmol)の無水酢酸と0.8mL(10mmol)のピリジンの混合溶液を室温でゆっくり滴下し、滴下終了後更に24時間撹拌した。得られたポリイミド溶液を大量のメタノールにゆっくりと滴下しポリイミドを沈澱させた。得られた白色沈殿物をメタノールで十分洗浄し、100℃で12時間真空乾燥した。得られた繊維状ポリイミド粉末について1H−NMR測定を行ったところ、ポリアミド酸に特有のCOOHプロトン(δ=13ppm付近)およびNHCOプロトン(δ=11ppm付近)は観測されなかったことから、化学イミド化反応は完結していることが示唆された。得られたポリイミドの固有粘度は、0.76dL/gであった。また、ポリイミド粉末の溶媒に対する溶解性を表1に示す。表1より優れた溶媒溶解性を示すことがわかる。
上記のポリイミド粉末を室温でシクロペンタノン(CPN)に再溶解し23重量%の均一溶液を調製した。このポリイミド溶液をガラス基板上に流延し、60℃2時間熱風乾燥器で乾燥した。その後、基板ごと真空中200℃で1時間乾燥して室温まで放冷後、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。このポリイミドフィルムをもう一度真空中200℃で1時間熱処理して残留歪を除去した。
得られたポリイミドフィルムの赤外吸収スペクトルを図5、動的粘弾性曲線を図6、熱的特性・光学的特性を表2に示す。図5より目的のポリイミドであることが同定できる。図6より急峻な貯蔵弾性率の低下が230℃付近で観測され、高い熱可塑性を示すことが、更には、表2より無色透明なフィルムであることがわかる。
A.下記式(11)で表される繰り返し単位のポリイミドの合成
(ポリアミド酸の重合)TAPh(100)/TFMB
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)3mmolを脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解した。ここに合成例2に記載のTAPh粉末3mmolをゆっくり加え、室温で72時間撹拌し、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た(固形分濃度20重量%)。得られたポリアミド酸の固有粘度は、1.6dL/gであった。
B.ポリイミドフィルムの製膜
ポリアミド酸溶液をガラス基板上に流延し、80℃3時間熱風乾燥器で乾燥した。その後、基板ごと真空中250℃で1時間、350℃で1時間熱イミド化した後、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。このポリイミドフィルムをもう一度真空中200℃で1時間熱処理して残留歪を除去した。
得られたポリイミドフィルムの熱的特性・光学的特性を表2に示す。表2より、低い光透過率、そして激しい黄変と濁りがあることがわかる。式(8)の繰り返し単位のポリイミド中のシクロヘキシル基をフェニル基に変えたために、式(11)の繰り返し単位のポリイミドフィルムの光学特性は著しく悪化したと考えられる。つまり、同じような嵩高い構造であっても、シクロヘキシル基の構造が極めて有用であることがわかる。
A.式(12)で表される繰り返し単位のポリイミドの合成
(ポリアミド酸の重合)TAHQ/TFMB
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)2mmolを脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した。ここに合成例1に記載のTAHQ粉末2mmolをゆっくり加え、室温で72時間撹拌し、適宜DMAcを加えポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た(固形分濃度11.4重量%)。得られたポリアミド酸の固有粘度は、4.45dL/gであった。
(化学イミド化反応)
得られたポリアミド酸溶液を脱水DMAcで固形分濃度約10.0重量%に希釈後、これを撹拌しながら1.9mL(20mmol)の無水酢酸と0.8mL(10mmol)のピリジンの混合溶液を室温でゆっくり滴下し、滴下終了後更に3時間で溶液の流動性が消失しゲル化した。式(8)と式(12)の繰り返し単位のポリイミドの比較から嵩高いシクロヘキシル基が、溶媒に対する溶解性を極めて高めていることがわかる。
上記のポリアミド酸溶液をガラス基板上に流延し、60℃2時間熱風乾燥器で乾燥した。その後、基板ごと真空中200℃で0.5時間、250℃で2時間熱イミド化した後、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。このポリイミドフィルムをもう一度真空中300℃で1時間熱処理して残留歪を除去した。
得られたポリイミドフィルムの動的粘弾性曲線を図7、熱的特性・光学的特性を表2に示す。図7より、貯蔵弾性率の低下が始まる温度が375℃と高いため、式(8)の繰り返し単位のポリイミドよりも熱加工性に劣ることがわかる。また黄色度やヘイズも高めであり光学特性も劣っている。
つまり、式(2)のシクロヘキシル基は、極めて重要な働きをしていることがわかる。
Claims (5)
- 下記式(1):
- 下記式(2):
- 式(2)で表される繰り返し単位の含有率が、ポリイミド中の全ての繰り返し単位に対し55mol%以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリイミド。
- 請求項2または3に記載のポリイミドと有機溶媒とを含有するポリイミド溶液であって、固形分濃度が5重量%以上であることを特徴とするポリイミド溶液。
- 請求項2または3に記載のポリイミド成形体。
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