≪第1の実施の形態≫
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図14は、第1の実施の形態による乳母車1を説明するための図である。このうち、図1は、第1の実施の形態による乳母車1を正面方向から示す図である。図1に示す乳母車1では、乳母車本体2に、第1座ユニット8a及び第2座ユニット8bが支持されている。第1座ユニット8a及び第2座ユニット8bは、乳幼児が着座する場所であり、左右に並べて配置されている。座ユニット8a、8bに着座した乳幼児を日差しや風から保護するよう、各座ユニット8a、8bには、幌9a、9bが設けられている。
なお、本明細書中において、乳母車1及びその構成要素に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車1を、ハンドル20を把持しながら操作する操作者を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」を意味する。さらに詳しくは、「前後方向d1」とは、図1における紙面の表裏方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、ハンドルを押す操作者が向く側であり、図1における紙面の表側が前となる。一方、「上下方向d3」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向d3」とは鉛直方向をさす。また、「左右方向d2」とは幅方向でもあって、「前後方向d1」及び「上下方向d3」のいずれにも直交する方向である。
図2に、乳母車1を座ユニット8a、8bを取り外した状態で側方から示す。図2に示す乳母車本体2は、フレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20とにより構成されている。
フレーム本体10において、複数の車輪4が支持されたベースフレーム11に、2つの座ユニット8a、8bを支持する上部フレーム12が接続されている。上部フレーム12は、ベースフレーム11に対して傾いた状態で支持されている。上部フレーム12の前方部分とベースフレーム11の前方部分とが前方リンク部材13を介して接続され、上部フレーム12の中間部分とベースフレーム11の後方部分とが中間リンク部材14を介して接続されている。前方リンク部材13及び中間リンク部材14は、リンクとして機能し、上部フレーム12がベースフレーム11に対して回動することを可能にする。
とりわけ、ベースフレーム11には、左右方向d2に離間して配置された左右の側ベースフレーム11a、11bが設けられている。左右の側ベースフレーム11a、11bの後端は、後方ベースフレーム11cにより連結されている。本実施の形態では、単一のパイプを曲げて成形することにより、左右の側ベースフレーム11a、11bと後方ベースフレーム11cとが一体に形成されている。ただし、左右の側ベースフレーム11a、11bと後方ベースフレーム11cとは、別個の部品として形成されていてもよい。
各側ベースフレーム11a、11bには、前輪41及び後輪42が取り付けられている。本実施の形態では、各前輪41は、キャスター3を介して側ベースフレーム11a、11bに回転可能且つ旋回可能に支持されている。キャスター3は、回転軸線Ar1を中心として前輪41を回転可能に支持し、且つ、回転軸線Ar1と非平行、本実施の形態では直交する方向に平行な旋回軸線As1を中心として旋回可能である。すなわち、前輪41は、自転可能であると共にその向きを変更可能となるようにキャスター3によって支持されている。
一方、前輪41よりも後方に位置する各後輪42は、キャスターによって旋回可能に支持されていない。本実施の形態において、各後輪42は、後述する駆動源5の駆動軸51b(図5参照)に回転可能に支持され、旋回可能にはなっていない。
上部フレーム12には、左右方向d2に離間して配置された左右の側上部フレーム12a、12bが設けられている。左右の側上部フレーム12a、12bの間には、中間フレーム12cが配置されている。本実施の形態では、左側の側上部フレーム12aと中間フレーム12cとの間に第1座ユニット8aが配置され、右側の側上部フレーム12bと中間フレーム12cとの間に第2座ユニット8bが配置されている。
左右の側上部フレーム12a、12b及び中間フレーム12cの後端は、後方上部フレーム12dにより連結されている。後方上部フレーム12dには、ハンドル20が取り付けられている。ハンドル20は、操作者の手で操作される部分である。ハンドル20については、図7乃至図14を参照して後述する。
なお、図示する例では、左右の側上部フレーム12a、12bと後方上部フレーム12dとが、単一のパイプを曲げて成形することにより一体に形成されている。ただし、左右の側上部フレーム12a、12bと後方上部フレーム12dとは、別個の部品として形成されていてもよい。
左右の側上部フレーム12a、12bの前端は、横連結バー12e及び上部側リンクフレーム13aにより連結されている。このうち、横連結バー12eは、左右方向d2に沿って直線状に形成され、横連結バー12eの中間部分に中間フレーム12cの前端が接続されている。
上部側リンクフレーム13aは、リンクとして機能し、横連結バー12eよりも前方となる領域に突き出した湾曲した形状をもつ。そして、上部側リンクフレーム13aの前方部分と左右の側ベースフレーム11a、11bの前端とに、ベース側リンクフレーム13bが掛け渡されている。ベース側リンクフレーム13bは、その前端において上部側リンクフレーム13aに固着され、その左右の後端は、横連結リンクバー13cを介して左右の側ベースフレーム11a、11bに回動可能に接続されている。横連結リンクバー13cは、左右方向d2に沿って直線状に形成され、左右の側ベースフレーム11a、11bの前端に回動可能に接続されている。上部側リンクフレーム13aとベース側リンクフレーム13bと横連結リンクバー13cとにより、リンクとして機能する前方リンク部材13が構成される。
なお、左右の中間リンク部材14は、左右の側上部フレーム12a、12bの中間部分と左右の側ベースフレーム11a、11bの後方部分とに掛け渡されている。各中間リンク部材14は、リンクとして機能し、側上部フレーム12a、12b及び側ベースフレーム11a、11bの両方に対して回動可能になっている。
以上のようなフレーム構造をもつ乳母車1は、図1及び図2に示す展開状態から、図3に示す折畳状態に折り畳むことができる。図3は、図2に示す乳母車1を折畳状態にて側方から示す図である。
まず、側上部フレーム12a、12bと上部側リンクフレーム13aとのロックを解除し、ハンドル20を自重を利用して下方に下ろしていく。この動作によって、上部側リンクフレーム13a、ベース側リンクフレーム13b及び中間リンク部材14が図3中反時計回り方向に回動して、上部フレーム12がベースフレーム11に重なるように折り畳まれていく。
以上の折り畳み動作の結果、図3に示すように、ベースフレーム11と上部フレーム12とが、乳母車1の側面視において接近して略平行に配置される。一方、乳母車1を図3に示す折り畳み状態から、図2に示す展開状態に戻すためには、上述した折畳操作と逆の手順を踏めばよい。
ところで、本実施の形態による乳母車1では、操作者の負担を軽減すべく、車輪4に駆動源5が接続されている。ただし、背景技術の欄で説明したように、従来の乳母車はいわゆる自走式の乳母車として構成されていたため、意図した通りに乳母車を操作することは容易ではなかった。そこで、本実施の形態による乳母車1は、操作者の走行操作に応じて車輪4に駆動力を提供する補助駆動式の手押し乳母車として構成されている。
図4に、車輪4の駆動を補助する機構をブロック図にて模式的に示す。図4に示すように、複数の車輪4のうちのいくつかに、駆動要素51、52が接続されている。駆動要素51、52は、車輪4を駆動させる構成要素、換言すれば、車輪4に駆動力を提供する構成要素である。本実施の形態では、2つの駆動要素すなわち第1駆動要素51及び第2駆動要素52が設けられ、第1駆動要素51が左側の後輪42を駆動し、第2駆動要素52が右側の後輪42を駆動するようになっている。
図5に、駆動要素51、52の構成の一例を示す。図5に示すように、各駆動要素51、52は、対応する側の後輪42に接続された駆動軸51a、52aと、駆動軸51a、52aを駆動させる直流モータ51b、52bと、により構成されている。駆動軸51a、52aの一端は、対応する側の後輪42に接続され、当該後輪42を回転軸線Ar2を中心として回転可能となるように支持し、旋回可能には支持していない。駆動軸51a、52aの他端は、直流モータ51b、52bの主軸に不図示の動力伝達要素(例えばギア)を介して連結されている。なお、駆動軸51a、52aは、直流モータ51b、52bの主軸と一体に構成されていてもよいし、別個の部材として構成されていてもよい。
直流モータ51b、52bは、後方ベースフレーム11cに支持された収容ボックス70内に配置され、当該収容ボックス70内で後方ベースフレーム11cに支持されている。図6に、直流モータ51b、52bの接続関係を回路図にて示す。図6に示すように、2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bは、電源75に対して直列に接続されている。2つの直流モータ51b、52bが直列に接続されていることにより、接地面からの負荷に応じて駆動力を調整することに貢献するが、この点については後述する。
図4に戻って、各駆動要素51、52は、制御装置7に接続され、当該制御装置7により制御される。この制御装置7には、さらに検知要素6が接続されていて、検知要素6からの情報が入力として取り込まれる。そして、制御装置7は、検知要素6からの情報に基づいて各駆動要素51、52を制御して、各駆動要素51、52から車輪4への駆動力を調整する。また、制御装置7は、収容ボックス70に取り外し自在に固定された電源75に接続されている。このような制御装置7は、例えば、中央処理装置(CPU)及びレジスタ(REGISTER)を供えたマイクロコントローラや、プログラマブルコントローラ(PLC)の形態として実現され得る。
検知要素6は、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知するものである。検知要素6が検知する走行操作に関する情報は、操作者から乳母車本体2に入力される情報であれば特に限定されない。走行操作に関する情報の一例として、ハンドル20を操作する手からの荷重に関する情報や、操作者が乳母車1を走行させる速度及び速度に関連する車輪4の回転数に関する情報を検知してもよい。
図2に戻って、本実施の形態による検知要素6は、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知するように構成されている。先ず、ハンドル20の構成について説明し、その後、ハンドル20に設けられた検知要素6について説明していく。なお、ハンドル20に加えられる荷重に関する情報とは、ハンドル20に加えられる荷重を特定することが可能な情報をいう。
図7に、ハンドル20を拡大して示す。図7に示すように、ハンドル20には、操作者の手が掛けられる操作部材21が配置され、操作部材21と乳母車本体2とをハンドル本体22が連結している。ハンドル本体22は、上部フレーム12との連結箇所c1において、当該上部フレーム12に締結されている。
とりわけ、ハンドル本体22を構成する要素として、後方上部フレーム12dからコラム22aが延び出し、コラム22aの両側にサイドバー22b、22cが配置されている。グリップ21は、左右方向d2に間隔を空けて並べられた2つのグリップ21a、21bとして構成され、左側のグリップ21aが、左側のサイドバー22bとコラム22aとの間に掛け渡され、右側のグリップ21bが、右側のサイドバー22cとコラム22aとの間に掛け渡されている。
図8に、コラム22aに設けられた検知要素6を拡大して示し、図9に、検知要素6の回路図を示す。図8及び図9に示すように、検知要素6としての複数の歪ゲージ61が、コラム22a内のインナー角材22dに貼り付けられている。複数の歪ゲージ61は、ハンドル本体22の歪みを計測するようブリッジ回路を構成している。図9に示す例では、角型のインナー角材22dの上側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、インナー角材22dの下側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、これら4つの歪ゲージ61は互いに同一に構成される。なお、図示するインナー角材22dは中空になっているが、中実であってもよい。
図10に、歪ゲージ61が検知した歪みに応じて、駆動要素51、52により提供される駆動力を決定する制御の一例をグラフとして示す。図10のグラフにおいて、横軸は、歪ゲージ61が検知した歪みを示し、インナー角材22dの上側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が延びた場合乃至インナー角材22dの下側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が縮んだ場合を正の値とし、インナー角材22dの上側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が縮んだ場合乃至インナー角材22dの下側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が延びた場合を負の値としている。縦軸は、車輪4を駆動させる駆動力を示し、車輪4を前進方向に回転させる駆動力を正の値とし、車輪4を後退方向に回転させる駆動力を負の値としている。
図10に示すように、歪ゲージ61が検知した歪みの大きさが下限値α1よりも小さい場合、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を車輪4に提供しないように制御する。これにより、外乱や意図しない操作が乳母車1に加えられても、乳母車1が意図せず動いてしまうことを防止することができる。
歪ゲージ61が検知した歪みの大きさが下限値α1よりも大きくなると、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を、歪ゲージ61が検知した歪みの大きさに比例して車輪4に提供するように制御する。図10のグラフでは、対象となる歪ゲージ61が延びた場合には、車輪4を前進方向に回転させる駆動力を提供し、対象となる歪ゲージ61が縮んだ場合には、車輪4を後退方向に回転させる駆動力を提供する。
一方、ハンドル20に加えられる歪みの大きさが上限値α2よりも大きくなると、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を、上限駆動力Fとして車輪4に提供するように制御する。
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
とりわけ、図2から理解されるように、検知要素6を構成する4つの歪ゲージ61は、操作部材21よりも上下方向d3における上方に位置し、操作部材21は、連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置している。このような配置によれば、以下の図11乃至図14に示すように歪ゲージ61が作用する。図11乃至図14は、ハンドル20を操作したときの歪ゲージ61の作用を説明するための図である。なお、以下の説明では、インナー角材22dをその長手方向に平行な平面にて2つの部分に区画したときに、上側となる部分を上領域A1とし、下側となる部分を下領域A2とする(図8参照)。
図11に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における前方に押し進めた場合、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測される。歪ゲージ61にて計測された情報は、制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。これにより、直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を前進方向に回転させる。このようにして、駆動軸51a、52aが後輪42の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を前方に押す負担が軽減される。
走行面に段差がある場合には、操作者は操作部材21を上下方向d3における下方に押し下げて、前輪41を浮かせようとする。図12に示すように、操作者が乳母車1を下方に押し下げた場合、図11の場合と同様に、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、2つの直流モータ51b、52bが直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。これにより、直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を前進方向に回転させる。すなわち、操作部材21が下方に押し下げられた場合、操作部材21が前方に押し進められた場合と同様に、後輪42を前進方向に回転させる。結果として、段差を乗り越える動作中であっても、駆動源5による駆動力の補助を受けることができ、乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
一方、下り坂で乳母車1を押し進める場合には、図13に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における後方に引き寄せることとなる。この場合、図11及び図12の場合とは逆に、インナー角材22dの上領域A1が縮み下領域A2が延びる。上領域A1が縮み下領域A2が延びた情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が後方に引かれたと認識し、2つの直流モータ51b、52bが直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を、図11及び図12の場合と逆向きに提供する。これにより、直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を後退方向に回転させる。このようにして、駆動軸51a、52aが後輪42の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を後方に引く負担が軽減される。
次に、乳母車1を旋回させる際には、図14に示すように、2つのグリップ21a、21bを前方に押す力に差異を生じさせることにより、乳母車1を旋回させることができる。図14に示す例では、左側のグリップ21aよりも右側のグリップ21bに掛かる力を大きくすることにより、乳母車1を左回りに旋回させることができる。2つのグリップ21a、21bに異なる力を掛けても、図11の場合と同様に、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。歪ゲージ61が検知した情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、2つの直流モータ51b、52bが直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。図6に示す直列回路では、2つの直流モータ51b、52bが同一に構成されている場合、2つの直流モータ51b、52bに流れる電流の大きさも等しいため、2つの直流モータ51b、52bが車輪4に提供する駆動力も相等しいとも思われる。
ただし、乳母車1を左回りに旋回させると、内輪となる左側の車輪4に外輪となる右側の車輪4よりも接地面からの大きな抵抗が掛かり、内輪となる左側の車輪4に接続された直流モータ51bが回転し難くなる。内輪となる左側の車輪4に接続された直流モータ51bの回転数が低下すると、当該直流モータ51bに生じる逆起電力が低下し、直列回路により多くの電流が流れやすくなる。結果として、外輪となる右側の車輪4に接続された直流モータ52bに流れる電流が相対的に多くなり、外輪となる右側の車輪4により大きな駆動力を提供することが可能となる。これにより、外輪となる右側の車輪4を回転させ易くなり、この結果、旋回動作をスムーズに行うことができる。
以上のように、本実施の形態による乳母車1は、乳母車本体2と、乳母車本体2に支持された複数の車輪4と、乳母車本体2に支持され、複数の車輪4のうちの少なくとも1つに駆動力を提供する駆動源5と、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知する検知要素6と、検知要素6が検知した情報に基づいて駆動源5を制御して、駆動源5から車輪4への駆動力を調整する制御装置7と、を備える。このような形態によれば、乳母車1の走行操作に合わせて、駆動源5による車輪4への駆動力を調整することができるため、操作者の動きと乳母車の動きとの間の齟齬(ズレ)を小さくし、乳母車1を意図した通りに操作することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、複数の車輪4のうち、駆動源5から駆動力を提供される車輪が後輪42であり、複数の車輪4のうちの前輪41は、キャスター3を介して乳母車本体2に支持されている。前輪41がキャスター3を介して乳母車本体2に支持されていることで、乳母車1の旋回操作をスムーズに行うことができる。また、操作者が操作するハンドル20が後方に位置することや、乳母車1に乗車する乳幼児の重心を考慮すると、後輪42は荷重が掛かり易く接地面に安定して接地するといえる。安定して接地した後輪42に駆動源5からの駆動力が提供されることで、駆動源5による駆動補助を安定して実現することができる。
また、本実施の形態によれば、駆動源5は、複数の車輪4のうちの少なくとも1つに駆動力を提供する第1駆動要素51と、複数の車輪4のうちの第1駆動要素51から駆動力を提供される車輪4とは異なる車輪4に駆動力を提供し、第1駆動要素51とは別個に設けられた第2駆動要素52と、を有する。このような形態によれば、異なる車輪4に異なる駆動力を提供することにより、乳母車1の走行状態に応じた適切な駆動力の分配を実現することに寄与する。
また、本実施の形態によれば、第1駆動要素51から駆動力を提供される車輪4と、第2駆動要素52から駆動力を提供される車輪4とは、左右方向d2における位置が異なっており、第1駆動要素51及び第2駆動要素52は、直流モータをそれぞれ含み、第1駆動要素51の直流モータ51bと第2駆動要素52の直流モータ52bとは、電源75に対して直列に接続されている。乳母車1を旋回させる場合、内輪となる車輪4に外輪となる車輪4よりも接地面からの大きな抵抗が掛かる。このため、2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bを直列に接続した場合、内輪となる車輪4に接続された直流モータ51bが回転し難くなる。内輪となる車輪4に接続された直流モータ51bの回転数が低下すると、直流モータ51bに生じる逆起電力が低下し、直列回路により多くの電流が流れやすくなる。結果として、外輪となる車輪4に接続された直流モータ52bに流れる電流が相対的に多くなり、外輪となる車輪4により大きな駆動力を提供することが可能となる。以上のことから、2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bを直列に接続した場合、旋回動作中に外輪となる車輪4を回転させ易くなり、旋回動作をスムーズに行うことができる。
また、本実施の形態によれば、乳母車本体2は、複数の車輪4を支持するフレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20と、を有し、検知要素6は、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知する。乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報として、ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を選択することで、操作者の走行操作に関する意図に応じて駆動源5から車輪4に駆動力を提供することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、ハンドル20は、操作者の手が掛けられる操作部材21と、操作部材21と乳母車本体2とを連結するハンドル本体22と、を有し、制御装置7は、検知要素6によって、操作部材21が前方に押された情報または下方に押し下げられた情報が検知されると、駆動源5に車輪4を前進させる駆動力を提供させ、検知要素6によって操作部材21が後方に引かれた情報が検知されると、駆動源5に車輪4を後退させる駆動力を提供させる。このような形態によれば、操作者による操作部材21の操作に合わせて、駆動源5が車輪4を駆動させる向きを調整することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、接地面の段差等を乗り越えるために前輪41を浮かせるよう操作部材21を下方に押し下げた場合であっても、駆動源5が車輪4を前進させるように駆動する。このため、段差を乗り越える動作中であっても、駆動源5による駆動力の補助を受けながら乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
また、本実施の形態によれば、検知要素6は、ハンドル20のハンドル本体22に取り付けられた複数の歪ゲージ61を含み、少なくとも1つの歪ゲージ61は、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると延び操作部材21が後方に引かれると縮む、または、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると縮み操作部材21が後方に引かれると延びるようになっている。このような形態によれば、検知要素6が歪ゲージ61によって実現されるため、操作者が操作部材21を操作する情報を、複雑な構造を回避しつつ安定して検知することができる。操作者が操作部材21を操作する情報をさらに安定して検知する観点から、操作部材21は、ハンドル本体22とフレーム本体10との連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置または前方且つ上方となる位置に位置しているのがよい。
とりわけ、本実施の形態によれば、操作部材21は、連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置し、歪ゲージ61は、ハンドル本体22のうちの、操作部材21との接続箇所と連結箇所c1との間となる部分に取り付けられている。この場合、操作者から操作部材21に加えられる荷重に連動して、ハンドル本体22のうちの歪ゲージ61が貼り付けられた部分が感度良く伸縮する。このため、歪ゲージ61によって、操作者が操作部材21を操作する情報をさらに精度良く検知することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、前輪41及び後輪42を含む複数の車輪4と、複数の車輪4を支持するフレーム本体10及びフレーム本体10に接続されたハンドル20を有する乳母車本体2と、乳母車本体2に支持され、少なくとも1つの後輪42を駆動する駆動源5と、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知する検知要素6と、検知要素6が検知した情報に基づいて、駆動源5による車輪4の駆動を制御する制御装置7と、を備え、制御装置7は、検知要素6によって検知される荷重の向きに応じて、駆動させる車輪4の回転の向きを調整する、乳母車1が提供される。このような形態によれば、検知要素6によって検知される荷重の向きに応じて、駆動源5が車輪4を駆動させる向きを調整することができるため、乳母車1を意図した通りに操作することが可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態では、左右に並べて2つの座ユニット8a、8bが設けられる例を示したが、座ユニット8a、8bの数は、このような例に限定されない。例えば、単一の座ユニットが設けられていてもよいし、2つ以上の座ユニットが設けられ、この2つ以上の座ユニットが前後に並べられていてもよい。
また、上述した実施の形態では、2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが電源75に対して直列に接続された例を示したが、直流モータ51b、52bに関する回路設計は、上述した例に限定されない。2つの駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが電源75に対して並列に接続されていてもよい。
また、上述した実施の形態では、検知要素6が歪ゲージ61からなる例を示したが、検知要素6の形態は、上述した例に限定されない。検知要素6は、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知することができる限り任意であり、他の例として、ハンドル本体22に取り付けられたトルクセンサや圧力センサや磁歪センサ等として構成されていてもよい。例えば、圧力センサとしては、ハンドル20に加えられる荷重を作動流体の圧力の変化として捉え、この圧力の変化をダイヤフラムを介して感圧素子で計測した後、電気信号として出力するタイプのものであってもよい。
また、上述した実施の形態では、単一の支柱からなるコラム22aが、後方上部フレーム12dと操作部材21とを連結する例を示したが、ハンドル本体22の形態は、上述した例に限定されない。コラム22aが複数の支柱からなり、後方上部フレーム12dと操作部材21とを連結してもよい。
また、上述した実施の形態では、操作部材21が連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置した例を示したが、操作部材21の配置は、上述した例に限定されない。少なくとも1つの歪ゲージ61が、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると延び操作部材21が後方に引かれると縮む、または、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると縮み操作部材21が後方に引かれると延びるようになっている限り、操作部材21の配置は任意である。例えば、操作部材21が、連結箇所c1よりも前方且つ上方となる位置に位置し、歪ゲージ61が、操作部材21よりも後方となる位置でハンドル本体22に取り付けられていてもよい。
≪第2の実施の形態≫
次に、図15及び図16を参照して第2の実施の形態について説明する。図15は、第2の実施の形態による乳母車1を背面側から示す斜視図であり、図16は、乳母車1の構成を模式的に示すブロック図である。図15を参照して説明する第2の実施の形態は、検知要素6が第1検知部6a及び第2検知部6bを含み、制御装置7が第1制御部7a及び第2制御部7bを含む点で異なるが、その他の構成は、第1の実施形態およびその変形例と同様に構成することができる。第2の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態およびその変形例と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態およびその変形例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図15に示す乳母車1において、フレーム本体10とハンドル20とにより乳母車本体2が構成され、当該乳母車本体2に、幌9が取り付けられた単一の座ユニット8が支持されている。フレーム本体10において、複数の車輪4が支持されたベースフレーム11に、座ユニット8を支持する上部フレーム12が接続されている。上部フレーム12は、ベースフレーム11に対して傾いた状態で支持され、ベースフレーム11と重なるように折り畳み可能になっている。
図15に示すように、ハンドル20には、操作者の手が掛けられる操作部材21が配置され、操作部材21と乳母車本体2とをハンドル本体22が連結している。ハンドル本体22を構成する要素として、左右方向d2に離間して一対の湾曲バー22f、22gが配置されている。一対の湾曲バー22f、22gは、後方上部フレーム12dにその基端が支持され、左右方向d2に拡がるように湾曲した経路に沿って延びて、その先端の間で操作部材21を支持している。
本実施の形態では、左右の湾曲バー22f、22gの基端寄りの領域のそれぞれに、検知部6a、6bが貼り付けられている。各検知部6a、6bは、前述の図8及び図9に示すようにしてブリッジ回路として接続された複数の歪ゲージ61を含んでいる。左右の検知部6a、6bによって検知要素6が構成される。
図16に、駆動源5、検知要素6及び制御装置7の構成をブロック図にて模式的に示す。図16に示す例では、駆動源5を構成する第1駆動要素51が左側の後輪42を駆動し、第2駆動要素52が右側の後輪42を駆動するようになっている。第1駆動要素51は、第1制御部7aに接続され、当該第1制御部7aにより制御される。第2駆動要素52は、第2制御部7bに接続され、当該第2制御部7bにより制御される。第1制御部7aと第2制御部7bとは、別個に設けられていて、相互に情報のやり取りを行わない。すなわち、第1制御部7a及び第2制御部7bは、別個独立して対応する駆動要素51、52を制御するようになっている。なお、第1制御部7aと第2制御部7bとにより、制御装置7が構成される。また、第1制御部7a及び第2制御部7bは、電源75に接続されている。
さらに、第1制御部7aには、第1検知部6aが接続されていて、当該第1検知部6aからの情報が入力として取り込まれる。そして、第1制御部7aは、第1検知部6aからの情報に基づいて第1駆動要素51を制御して、当該第1駆動要素51による駆動力を調整する。本実施の形態の第1制御部7aは、第1検知部6aが検知する歪みの大きさに応じて、第1駆動要素51による駆動力の大きさを決定するようになっている。
同様に、第2制御部7bには、第2検知部6bが接続されていて、当該第2検知部6bからの情報が入力として取り込まれる。そして、第2制御部7bは、第2検知部6bからの情報に基づいて第2駆動要素52を制御して、当該第2駆動要素52による駆動力を調整する。本実施の形態の第2制御部7bは、第2検知部6bが検知する歪みの大きさに応じて、第2駆動要素52による駆動力の大きさを決定するようになっている。
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
操作者が操作部材21を握って操作部材21を前後方向d1における前方に押し進めた場合、第1検知部6a及び第2検知部6bが同程度の負荷を受け、その負荷を検知する。各検知部6a、6bにて検知された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。検知された情報を受け取った各制御部7a、7bは、対応する検知部6a、6bが検知した歪みの大きさに応じて、対応する駆動要素51,52による駆動力の大きさを決定する。これにより、後輪42が前進方向に回転し、操作者が乳母車1を押す負担が軽減される。
走行面に段差がある場合には、操作者は操作部材21を上下方向d3における下方に押し下げて、前輪41を浮かせて走行させようとする。この場合も、第1検知部6a及び第2検知部6bが同程度の負荷を受け、その負荷を検知する。各検知部6a、6bにて検知された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。検知された情報を受け取った各制御部7a、7bは、対応する検知部6a、6bが検知した歪みの大きさに応じて、対応する駆動要素51,52による駆動力の大きさを決定する。これにより、後輪42が前進方向に回転し、操作者が乳母車1を押す負担が軽減される。すなわち、本実施の形態によれば、段差を乗り越える動作中であっても、駆動要素51,52による駆動力の補助を受けながら乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
一方、下り坂で乳母車1を押し進める場合には、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における後方に引くこととなる。この場合、第1検知部6a及び第2検知部6bが上記とは逆向きの同程度の負荷を受け、その負荷を検知する。各検知部6a、6bにて検知された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。検知された情報を受け取った各制御部7a、7bは、対応する検知部6a、6bが検知した歪みの大きさに応じて、対応する駆動要素51,52による駆動力の大きさを決定する。これにより、後輪42が後退方向に回転し、操作者が乳母車1を押す負担が軽減される。
次に、乳母車1を旋回させる際には、左右の手で操作部材21を前方に押す力に差異を生じさせることにより、乳母車1を旋回させることができる。左右の手で操作部材21に異なる力を掛けた場合、第1検知部6a及び第2検知部6bがそれに応じた異なる負荷を受け、その負荷を検知する。各検知部6a、6bにて検知された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。検知された情報を受け取った各制御部7a、7bは、対応する検知部6a、6bが検知した歪みの大きさに応じて、対応する駆動要素51,52による駆動力の大きさを決定する。典型的には、内輪となる側の手で相対的に小さな力を掛け、外輪となる側の手で相対的に大きな力を掛けるため、内輪となる側の検知部6a、6bよりも外輪となる側の検知部6a、6bの方が相対的に大きな負荷を受ける。これに連動して、内輪となる側の駆動要素51、52よりも外輪となる側の駆動要素51、52の方が相対的に大きな駆動力を後輪42に提供する。このため、内輪となる側の後輪42よりも外輪となる側の後輪42を回転させ易くなり、この結果、旋回動作をスムーズに行うことができる。
以上のように、本実施の形態による乳母車1は、乳母車本体2と、乳母車本体2に支持された複数の車輪4と、乳母車本体2に支持され、複数の車輪4のうちの少なくとも1つに駆動力を提供する駆動源5と、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知する検知要素6と、検知要素6が検知した情報に基づいて駆動源5を制御して、駆動源5から車輪4への駆動力を調整する制御装置7と、を備える。このような形態によれば、乳母車1の走行操作に合わせて、駆動源5による車輪4への駆動力を調整することができるため、操作者の動きと乳母車の動きとの間の齟齬(ズレ)を小さくし、乳母車1を意図した通りに操作することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、駆動源5は、複数の車輪4のうちの少なくとも1つに駆動力を提供する第1駆動要素51と、複数の車輪4のうちの第1駆動要素51から駆動力を提供される車輪4とは異なる車輪4に駆動力を提供し、第1駆動要素51とは別個に設けられた第2駆動要素52と、を有する。このような形態によれば、異なる車輪4に異なる駆動力を提供することにより、乳母車1の走行状態に応じた適切な駆動力の分配を実現することに寄与する。
また、本実施の形態によれば、乳母車本体2は、複数の車輪4を支持するフレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20と、を有し、検知要素6は、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知する。乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報として、ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を選択することで、操作者の走行操作に関する意図に応じて駆動源5から車輪4に駆動力を提供することが可能となる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。