JPWO2017033459A1 - スピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカ - Google Patents

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Abstract

磁気回路は、マグネットと、トッププレートと、ボトムプレートと、ヨークとを有する。マグネットは、第1面と、第2面とを有する。第2面は、第1面に対し第1方向に位置するとともに第1面に平行である。第1面と第2面とは着磁されている。トッププレートは、マグネットの第1面に設置され、ボトムプレートは、マグネットの第2面に磁気的に結合されている。ヨークは、ボトムプレートに磁気的に結合されてボトムプレートから第1方向に沿って設けられている。ヨークは、トッププレートに対向する磁極面を有する。ヨークにおける磁極面を形成する部分には、磁気飽和を発生させる磁気飽和部が設けられている。磁気飽和部は、第1方向に沿ってヨークの先端に向かって、第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する。

Description

本発明は、音響機器に使用される動電型のスピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカに関する。
スピーカにおいて、周波数帯域の設定は重要であり、特にフルレンジスピーカは、低域から高域までの広い周波数帯域を必要とする。そのため、スピーカにおいては、周波数帯域を高域まで広げる対策が必要に応じて施されてきている。
スピーカの高域の周波数帯域を狭める要因としては、スピーカ用磁気回路の高域のインピーダンス上昇がある。そのため、スピーカの高域の周波数帯域を広げるには、スピーカ用磁気回路の高域のインピーダンス上昇を抑制し、高域の音圧低下を防止する必要がある。
高域のインピーダンス上昇を抑制したスピーカ用磁気回路としては、センターポールの上端部にリング状の非磁性導電体キャップ、例えば銅キャップを被覆する方法が知られている。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開平11−168797号公報
本発明は、音圧レベル低下を防止しながら高域のインピーダンス上昇の抑制を図ったスピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカを提供する。
本発明の磁気回路は、マグネットと、トッププレートと、ボトムプレートと、ヨークとを有する。マグネットは、第1面と、第2面とを有する。第2面は、第1面に対し第1方向に位置するとともに第1面に平行である。第1面と第2面とは着磁されている。トッププレートは、マグネットの第1面に設置され、ボトムプレートは、マグネットの第2面に磁気的に結合されている。ヨークは、ボトムプレートに磁気的に結合されてボトムプレートから第1方向に沿って設けられている。ヨークは、トッププレートに対向する磁極面を有する。ヨークにおける磁極面を形成する部分には、磁気飽和を発生させる磁気飽和部が設けられている。磁気飽和部は、第1方向に沿ってヨークの先端に向かって、第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する。ボトムプレートとヨークとは一体化されていても良いし、別体として構成されていても良い。
以上のように本発明によれば、ヨークの磁気ギャップの磁極面の形成部分に設けられた磁気飽和部により磁気飽和を発生させることによりインダクタンスを抑え、高域のインピーダンス上昇を抑制することができる。本発明は、このようなスピーカ用磁気回路、およびこれを備えたスピーカを提供することができる。よって、スピーカの音圧レベルの向上、歪の低減、高域限界周波数の伸長を図ることができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図である。 図2は、図1の要部を示す断面図である。 図3は、本発明の第2の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図である。 図4は、図3の要部を示す断面図である。 図5は、図3に示す磁気回路を用いた本発明の第3の実施の形態によるスピーカの断面図である。 図6は、本発明の第4の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図である。 図7は、図6の要部を示す断面図である。 図8は、図6に示す磁気回路を用いた本発明の第5の実施の形態によるスピーカの断面図である。
本発明の実施の形態の説明に先立ち、従来の磁気回路における問題点を簡単に説明する。まず、センターポールに非磁性導電体キャップを被覆するスピーカ用磁気回路は、部品点数の増加、生産性の低下等の製造上の観点から好ましくない。
また、センターポールに非磁性導電体キャップを被覆するスピーカ用磁気回路は、非磁性導電体キャップの厚み分磁気ギャップが広がることになる。そのため、磁気ギャップ中の磁束密度が低下する。そのため、このような磁気回路を用いたスピーカは音圧レベルが低下するという点で不利になる。
以下、本発明の実施の形態によるスピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカについて、図1〜図8を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図、図2は図1における要部を示す断面図である。
このスピーカ用磁気回路は、外磁型である。すなわち、リング状のマグネット1と、リング状のトッププレート2と、センターポール4が一体的に形成された円盤状のボトムプレート3とを有する。マグネット1はフェライト系であり、上下の厚み方向に着磁されている。そしてマグネット1はボトムプレート3に設置されている。トッププレート2は、マグネット1の上面に設置されている。ボトムプレート3は、マグネット1の下面に磁気的に結合されている。センターポール4は、マグネット1の中央の孔を貫通するように立ち上げられている。トッププレート2とセンターポール4との間には磁気ギャップ5が形成され、磁気ギャップ5内には、ボイスコイル6が配置される。
トッププレート2、ボトムプレート3およびセンターポール4は例えば熱間圧延鋼板(SPHCやSPHD)により構成されている。
センターポール4はトッププレート2と対向するヨークとして作用し、トッププレート2との間に磁気ギャップ5を形成している。
センターポール4は底を有する穴が中央に形成されている。センターポール4の上部には、磁気ギャップ5側と反対側にセンターポール4のボトムプレート3側の他部分と比べて断面積が減少された磁気飽和部7が形成されている。
磁気飽和部7はセンターポール4の磁気ギャップ5の磁極面4Aを形成する部分にセンターポール4の内周側に段差形状に設けられ、センターポール4の前記磁極面4Aの裏面側の肉厚を削減するように設けられている。すなわち、磁気飽和部7はセンターポール4におけるトッププレート2の磁気ギャップ5方向への延長線上の位置に設けられており、磁気ギャップ5の略磁極幅の範囲となっている。
磁気飽和部7は、例えばボトムプレート3およびセンターポール4をメタルインジェクションモールディングにより成形する場合は同時に成形される。また、ボトムプレート3およびセンターポール4が成形でない場合、磁気飽和部7は切削により形成される。また、特に寸法的に高い精度を要求されない場合には、通常の多段フォーマーによる成形であっても良い。
このように構成されるスピーカ用磁気回路は、マグネット1によりトッププレート2とセンターポール4とが互いに相違する極性に磁化される。トッププレート2が一方の磁極、例えばN極に、センターポール4が他方の磁極、例えばS極にそれぞれ磁化される。そのため、トッププレート2からセンターポール4に向けて磁束が発生される。すなわち、磁気ギャップ5内において紙面の略水平方向に磁束が発生される。
一方、磁気ギャップ5内に配置されるボイスコイル6は、紙面を垂直に貫く方向に駆動電流が流れるようにボビン8に巻回されている。そのため、磁気ギャップ5にはボイスコイル6に対して有効磁束が発生される。ボイスコイル6は流される駆動電流の向きに応じて磁気ギャップ5内の有効磁束方向と直交する方向の紙面の上下方向に変位される。
第1の実施の形態のスピーカ用磁気回路においては、磁気飽和部7は磁気ギャップ5に有効磁束を発生させる磁気経路中に磁気飽和を発生させている。また、磁気飽和部7はセンターポール4の磁気ギャップ5の磁極面4Aを形成する部分に略磁極幅の範囲に対応させて設けられている。すなわち、センターポール4の肉厚はボイスコイル6に駆動電流が流されることによりボイスコイル6から発生する交流磁束の向きに対して略直交する方向に削減されている。ここで、磁性体中を通る磁束は、表皮効果により交流磁束の周波数が高くなるのに応じて磁性体の表面付近に集中する。そのため、磁気飽和部7はボイスコイル6のインダクタンス上昇の抑制に有効に作用する。この結果、スピーカの周波数特性は高域まで高い音圧レベルを維持することができ良好となる。
この場合、磁気飽和部7はセンターポール4の磁気ギャップ5の磁極面4Aを形成する部分に略磁極幅の範囲に対応させて設けられている。そして、磁気ギャップ5を形成する磁気飽和部7および磁極面4A間に、銅キャップ等の別部材を介在させることがない。そのため、磁気ギャップ5の磁極幅およびギャップ間距離は磁気飽和部7を設けることに関わらず適切に設定できる。
また、磁気飽和部7は、磁気ギャップ5に有効磁束を発生させる磁気経路において磁気飽和を発生させており、ボイスコイル6により発生する交流磁界の強さに対する磁束密度の変化量を小さくしている。すなわち、磁気ギャップ5に発生される磁界は、透磁率の小さい領域でボイスコイル6により発生する交流磁界に作用するようになっている。そのため、磁気飽和部7はボイスコイル6により発生する交流磁界における透磁率の変化を小さくし、高調波歪(特に3次高調波歪)を低減させる。
また、磁気飽和部7により磁気飽和が発生されることにより漏れ磁束が発生する。磁気飽和部7はセンターポール4の磁気ギャップ5の形成部分において略磁極幅の範囲に対応させて設けられているので、漏れ磁束が磁気ギャップ5内に漏れて磁気ギャップ5の有効磁束として作用することになる。これにより磁気ギャップ5の有効磁束密度の低下が抑制される。
以上のように、本実施の形態による磁気回路は、マグネット1と、トッププレート2と、ボトムプレート3と、ヨークとして機能するセンターポール4とを有する。マグネット1は、第1面1Aである上面と、第2面1Bである下面とを有する。第2面1Bは、第1面1Aに対し第1方向、すなわち下側に位置するとともに第1面1Aに平行である。第1面1Aと第2面1Bとは着磁されている。トッププレート2は、マグネット1の第1面1Aに設置され、ボトムプレート3は、マグネット1の第2面1Bに磁気的に結合されている。センターポール4は、ボトムプレート3に磁気的に結合されてボトムプレート3から第1方向に沿って設けられている。センターポール4は、トッププレート2に対向する磁極面4Aを有する。センターポール4における磁極面4Aを形成する部分には、磁気飽和を発生させる磁気飽和部7が設けられている。磁気飽和部7は、第1方向に沿ってセンターポール4の先端に向かって、第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する。
センターポール4は、磁極面4Aの裏面4Bを有している。そして、裏面4Bが磁極面4Aに対して傾斜することで磁気飽和部7が形成されている。
(第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図、図4は図3の要部を示す断面図である。図3および図4において、図1および図2と同一の構成要素には同一の符号を付している。
本実施の形態によるスピーカ用磁気回路は、トッププレート12の形状が第1の実施の形態とは相違する。また、センターポール14はトッププレート12の板厚をマグネット1に設置される部分において薄くした分高さを低く形成されている。
第1の実施の形態によるスピーカ用磁気回路と同様に、センターポール14は底を有する穴が中央に形成されている。そして、センターポール14の上部には、磁気ギャップ15側と反対側にボトムプレート13から先端に向けて断面積が減少された磁気飽和部17が形成されている。
磁気飽和部17はセンターポール14の磁気ギャップ15の磁極面14Aを形成する部分にセンターポール14の内周側に段差形状に凹ませて設けられている。すなわち、磁気飽和部17はセンターポール14の前記磁極面14Aの裏面側の肉厚を削減するように設けられている。磁気飽和部17は磁気ギャップ15に有効磁束を発生させる磁気経路中に磁気飽和を発生させる。
トッププレート12の板厚は磁気ギャップ15の磁極幅より薄くなっているが、ボイスコイル6の巻回幅に対応させて磁気ギャップ15の磁極幅を確保するため磁極部12Aが下側に突出して延びて形成されている。トッププレート12の磁極部12Aは先細りするテーパー形状に形成され、磁気飽和を発生させる第2の磁気飽和部となっている。そのため、磁極部12Aは、ボイスコイル6により発生する交流磁界における透磁率の変化を小さくし、ボイスコイル6のインダクタンス上昇の抑制、および3次高調波歪の低減に有効に作用する。
そして、トッププレート12の磁極部12Aはセンターポール14の磁気飽和部17に対して断面形状が磁気ギャップ15の中心を中点Cとして点対称、あるいは点対称に近似させるように形成されている。磁気飽和部17および磁極部12Aの磁気飽和により磁気ギャップ15内に漏れ磁束が発生する。その漏れ磁束の分布は磁気ギャップ15内の磁束に有効となるように調整されている。そのため、磁気ギャップ15の磁極幅全域における磁束密度分布の偏りが解消され、磁気ギャップ15内の磁束密度分布の非対称性が改善される。磁場解析の結果、磁気ギャップ15内の磁束密度が均一に近づき、磁気ギャップ15内の磁束密度の非対称性が改善されたことが確認できた。この場合、磁気ギャップ15の中心とボイスコイル6の中心を一致、あるいは近づければボイスコイル6に流される駆動信号に対して作用する磁気ギャップ15の磁束強度の均等度が増す。
したがって、磁気飽和部17および磁極部12Aの磁気飽和により磁気ギャップ15内に漏れる漏れ磁束の分布が調整されている。そのため、磁気ギャップ15の磁極幅全域における磁束密度分布の偏りが解消され、磁気ギャップ15内の磁束密度分布の非対称性が改善される。トッププレート12に第2の磁気飽和部となる磁極部12Aを設けたスピーカ用磁気回路は、2次高調波歪の低減が達成される。
以上のように、本実施の形態による磁気回路は、マグネット1と、トッププレート12と、ボトムプレート13と、ヨークとして機能するセンターポール14とを有する。トッププレート12は、マグネット1の第1面1Aに設置され、ボトムプレート13は、マグネット1の第2面1Bに磁気的に結合されている。センターポール14は、ボトムプレート13に磁気的に結合されてボトムプレート13から第1方向に沿って設けられている。センターポール14は、トッププレート12に対向する磁極面14Aを有する。センターポール14における磁極面14Aを形成する部分には、磁気飽和を発生させる磁気飽和部17が設けられている。磁気飽和部17は、第1方向に沿ってセンターポール14の先端に向かって、第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する。
センターポール14は、磁極面14Aの裏面14Bを有している。そして、裏面14Bが磁極面14Aに対して傾斜することで磁気飽和部17が形成されている。
トッププレート12は、センターポール14に対向する磁極部12Aを有する。トッププレート12において、マグネット1の第1面1Aに設置された部分の厚さは、磁極部12Aの第1方向の長さより小さい。
磁極部12Aは、先細りするテーパー形状に形成されており、磁気飽和を発生させる第2の磁気飽和部として機能する。
磁気飽和部17と磁極部12Aとは、それぞれの断面形状が磁気ギャップ15の中心を中点として点対称、あるいは点対称に近似するように形成されている。
(第3の実施の形態)
図5は本発明の第3の実施の形態のスピーカの断面図であり、第2の実施の形態によるスピーカ用磁気回路を用いたスピーカの一例を示している。図5において、図3および図4と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略している。
このスピーカにおいて、ボイスコイル6は円筒状のボビン8に巻回され、振動板9は中央部分がボビン8に固定されている。センターキャップ10はドーム形状であり、振動板9の中央の孔を塞ぐように接着され、磁気ギャップ5に塵芥が侵入するのを防止している。フレーム11は振動板9の周囲および背面を囲い下端がトッププレート12上に固定されている。振動板9の外周端はフレーム11に一端が固定されるエッジ18の他端に固定され、ボビン8はフレーム11に一端が固定されるダンパー19の他端に固定されている。エッジ18およびダンパー19はサスペンションとなり、振動板9をフレーム11に対して磁気ギャップ15内の磁束の方向と直交する振動板9の前後方向(紙面の上下方向)に変位可能に支持している。
フレーム11に固定される端子32にはスピーカを駆動する駆動信号が供給され、その駆動信号は金糸線33を介してボイスコイル6に供給される。ボイスコイル6に駆動信号が供給されると、ボビン8はその駆動信号の向きおよび大きさに応じて磁気ギャップ15内の有効磁束方向と直交する方向に駆動される。そのため、振動板9は振動板9の前後方向(紙面の上下方向)に駆動される。
このように構成されるスピーカは、センターポール14の磁気飽和部7およびトッププレート12の磁極部12Aにより磁気飽和を発生させている。その為、ボイスコイル6のインダクタンス上昇の抑制が図れ、高域まで周波数特性が良好となる。更に、高調波歪の低減が図れ、中高域の歪が少なくなる。
また、磁気飽和部7は磁気ギャップ5の磁極幅およびギャップ間距離に影響されない箇所に形成されている。そして、磁気飽和部7およびトッププレート12の磁極部12Aによる漏れ磁束は磁気ギャップ5の有効磁束として作用されるので、スピーカの音圧低下の防止に有効利用される。
出願人は、このような磁気飽和部7および磁極部12Aを有する磁界回路を用いた本実施形態のスピーカおよびセンターポールの上端部に銅キャップを被覆した磁界回路を用いた銅キャップ使用のスピーカを、従来型の磁界回路を用いた従来型スピーカと比較実験した。この比較実験の結果は、20kHzのインピーダンスにおいて本実施形態のスピーカは従来型スピーカと比較して8.8Ω低減され、銅キャップ使用のスピーカは従来型スピーカと比較して14Ω低減された。この20kHzのインピーダンスにおいて、本実施形態のスピーカは銅キャップ使用のスピーカ程のインピーダンス低減効果は得られないが、周波数依存性の関係で6〜7kHzまでは銅キャップ使用のスピーカと差はなかった。300Hz,400Hz,500Hz,600Hzの中低域の音圧レベル平均値においては、本実施形態のスピーカは従来型スピーカと比較して差は確認されず、銅キャップ使用のスピーカは従来型スピーカと比較して約1dB低下した。すなわち、前記中低域の音圧レベル平均値において、本実施形態のスピーカは銅キャップ使用のスピーカより約1dB高くなっている。
本実施形態のスピーカは銅キャップ使用のスピーカほどの周波数依存性を有していない。そのため、本実施形態のスピーカはインピーダンス上昇の抑制および3次高調波歪の低減に関して銅キャップ使用のスピーカより6〜7kHzまでは効果が大きい。
(第4の実施の形態)
図6は本発明の第4の実施の形態によるスピーカ用磁気回路の断面図、図7は図6における要部を示す断面図である。
このスピーカ用磁気回路は、内磁型である。すなわち、円柱状のマグネット21と、円盤状のトッププレート22と、ヨーク24が一体的に形成されたボトムプレート23とを有する。マグネット21はネオジム系であり、上下の厚み方向に着磁されている。トッププレート22は、マグネット21の上面に設置されている。ボトムプレート23は、有底の円筒状に形成され、底板にマグネット21が設置されてマグネット21の下面に磁気的に結合されている。ヨーク24は、マグネット21およびトッププレート22を囲うように底板から円筒状に立ち上げられている。トッププレート22とヨーク24との間には磁気ギャップ25が形成され、磁気ギャップ25内にボビン28に巻回されたボイスコイル26が配置される。
ヨーク24の上部はトッププレート22と対向する対向ヨークとして作用し、トッププレート22との間に磁気ギャップ25を形成している。
ヨーク24の上部には、磁気ギャップ25側と反対側にヨーク24のボトムプレート23側の他部分と比べて断面積を減少させた磁気飽和部27が形成されている。磁気飽和部27は磁気飽和を発生させるようにヨーク24の外周側を段差形状に構成されている。
磁気飽和部27はヨーク24の磁気ギャップ25の磁極面24Aを形成する部分に設けられ、ヨーク24の前記磁極面24Aの裏面側の肉厚を削減するように設けられている。すなわち、磁気飽和部27はヨーク24におけるトッププレート22の磁気ギャップ25方向への延長線上の位置に設けられており、磁気ギャップ25の磁極幅の範囲に対応している。
トッププレート22の板厚は磁気ギャップ25の磁極幅より薄くなっており、ボイスコイル26の巻回幅に対応させて磁気ギャップ25の磁極幅を確保するため磁極部22Aは下側に延びて形成されている。トッププレート22の磁極部22Aは断面積が先細りするテーパー形状に形成され、トッププレート22において磁気飽和させる第2の磁気飽和部となっている。
そして、トッププレート22の磁極部22Aはヨーク24の磁気飽和部27に対して断面形状が磁気ギャップ25の中心を中点Cとして点対称、あるいは点対称に近似させるように形成されている。そのため、磁極部22Aおよび磁気飽和部27の磁気飽和により磁気ギャップ25内に漏れる漏れ磁束は、有効に作用するような分布に調整されている。
このように構成される第4の実施の形態の内磁型スピーカ用磁気回路において、第1および第2の実施の形態の外磁型スピーカ用磁気回路と同様に、磁気飽和部27は磁気ギャップ25に有効磁束を発生させる磁気経路中において磁気飽和を発生させている。
そして、磁気飽和部27はヨーク24の磁気ギャップ25の磁極面24Aを形成する部分に磁極幅の範囲に対応させて設けられている。磁気飽和部27はボイスコイル26に駆動信号を流した際にボイスコイル26から発生する交流磁束の向きに対して略直交する方向の肉厚を削減して形成されている。磁性体中を通る磁束は、表皮効果により交流磁束の周波数が高くなるのに応じて磁性体の表面付近に集中する。そのため、磁気飽和部27はボイスコイル26のインダクタンス上昇の抑制に有効に作用する。
この場合、磁気飽和部27はヨーク24の磁気ギャップ25の磁極面24Aを形成する部分に磁極幅の範囲に対応させて設けられている。そして、磁気ギャップ25を形成する磁気飽和部27および磁極面24A間に、銅キャップのような別部材を介在させることがない。そのため、磁気ギャップ25の磁極幅およびギャップ間距離は磁気飽和部27を設けることに関わらず適切に設定できる。
また、磁気飽和部27は、磁気ギャップ25に有効磁束を発生させる磁気経路において磁気飽和を生じさせる。一方、トッププレート22の磁極部22Aは先細りするテーパー形状によりトッププレート22の本体部の肉厚より薄く形成されている。そのため、磁極部22Aは磁気ギャップ25に有効磁束を発生させる磁気経路において磁気飽和を生じさせる。そして、磁気飽和部27および磁極部22Aは、ボイスコイル26により発生する交流磁界における透磁率の変化を小さくし、ボイスコイル26のインダクタンス上昇の抑制、および3次高調波歪の低減に有効に作用する。
また、磁気飽和部27はヨーク24の磁気ギャップ25の形成部分において略磁極幅の範囲に対応させて設けられている。そのため、磁気飽和部27により発生する漏れ磁束は、磁気ギャップ25内に漏れて磁気ギャップ25の有効磁束として作用させることができる。これにより磁気ギャップ25の有効磁束密度の低下が抑制できる。
更に、トッププレート22の磁極部22Aおよび磁気飽和部27から磁気ギャップ25内に漏れる漏れ磁束は、磁気ギャップ25内で有効に利用可能に調整されている。そのため、磁気ギャップ25の磁極幅全域における磁束密度分布の偏りが解消され、磁気ギャップ25内の磁束密度分布の非対称性が改善される。これにより2次高調波歪の低減が図られる。
以上のように、本実施の形態による磁気回路は、マグネット21と、トッププレート22と、ボトムプレート23と、ヨーク24とを有する。トッププレート22は、マグネット21の第1面21Aに設置され、ボトムプレート23は、マグネット21の第2面21Bに磁気的に結合されている。ヨーク24は、ボトムプレート23に磁気的に結合されてボトムプレート23から第1方向に沿って設けられている。ヨーク24は、トッププレート22に対向する磁極面24Aを有する。ヨーク24における磁極面24Aを形成する部分には、磁気飽和を発生させる磁気飽和部27が設けられている。磁気飽和部27は、第1方向に沿ってヨーク24の先端に向かって、第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する。
ヨーク24は、磁極面24Aの裏面24Bを有している。そして、裏面24Bが磁極面24Aに対して傾斜することで磁気飽和部27が形成されている。
トッププレート22は、ヨーク24に対向する磁極部22Aを有する。トッププレート22において、マグネット21の第1面21Aに設置された部分の厚さは、磁極部22Aの第1方向の長さより小さい。
磁極部22Aは、先細りするテーパー形状に形成されており、磁気飽和を発生させる第2の磁気飽和部として機能する。
磁気飽和部27と磁極部22Aとは、それぞれの断面形状が2磁気ギャップ25の中心を中点として点対称、あるいは点対称に近似するように形成されている。
(第5の実施の形態)
図8は本発明の第5の実施の形態のスピーカの断面図であり、第4の実施の形態によるスピーカ用磁気回路を用いたスピーカの一例を示している。図8において、図6および図7と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略している。
このスピーカにおいて、ボイスコイル26は円筒状のボビン28に巻回され、振動板29は中央部分がボビン28に固定されている。センターキャップ30はドーム形状であり、振動板29の中央の孔を塞ぐように接着され、磁気ギャップ25に塵芥が侵入するのを防止している。フレーム31は振動板29の周囲および背面を囲うべく下端がヨーク24の外周側面に固着されている。振動板29の外周端はフレーム31に一端が固定されるエッジ38の他端に固定され、ボビン28はフレーム31に一端が固定されるダンパー39の他端に固定されている。振動板29はサスペンションとなるエッジ38およびダンパー39によりフレーム31に対して磁気ギャップ25内の磁束の方向と直交する振動板29の前後方向(紙面の上下方向)に変位可能に支持されている。
スピーカを駆動する駆動信号はフレーム31に固定される端子34に供給され、金糸線35を介してボイスコイル26に供給される。ボイスコイル26に駆動信号が供給されると、ボビン28がその駆動信号の向きおよび大きさに応じて磁気ギャップ25内の有効磁束方向と直交する方向に駆動される。そして、振動板29は振動板29の前後方向(紙面の上下方向)に駆動される。
このように構成されるスピーカは、ヨーク24の磁気飽和部27およびトッププレート22の磁極部22Aによりボイスコイル26のインダクタンス上昇の抑制が図れ、高域まで周波数特性が良好となる。また、高調波歪の低減が図れ、中高域の歪が少ないものとなる。更に、磁気飽和部27をヨーク24に設けることにより磁気ギャップ25の磁極幅およびギャップ間距離に影響されることがない。その為、ヨーク24の磁気飽和部27およびトッププレート22の磁極部22Aによる漏れ磁束を磁気ギャップ25の有効磁束として作用させることができ、スピーカの音圧の低下が防止される。
なお、以上説明した種々の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、実施の形態により説明したスピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカを構成する各構成要素の材料や形状は種々変更可能であり、本発明を限定して解釈するためのものではない。
本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
本発明によるスピーカ用磁気回路、およびこれを用いたスピーカは、車載用音響機器および家庭用音響機器に適用され、音圧レベル低下を防止しながら高域のインピーダンス上昇を抑制するのに有用である。
1,21 マグネット
1A,21A 第1面
1B,21B 第2面
2,12,22 トッププレート
3,13,23 ボトムプレート
4,14 センターポール
4A,14A,24A 磁極面
4B,14B,24B 裏面
5,15,25 磁気ギャップ
6,26 ボイスコイル
7,17,27 磁気飽和部
8,28 ボビン
9,29 振動板
10,30 センターキャップ
11,31 フレーム
12A,22A 磁極部(第2の磁気飽和部)
18,38 エッジ(サスペンション)
19,39 ダンパー(サスペンション)
24 ヨーク

Claims (6)

  1. 第1面と、前記第1面に対し第1方向に位置するとともに前記第1面に平行な第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とが着磁されているマグネットと、
    前記マグネットの前記第1面に設置されたトッププレートと、
    前記マグネットの前記第2面に磁気的に結合されたボトムプレートと、
    前記ボトムプレートに磁気的に結合されて前記ボトムプレートから前記第1方向に沿って設けられ、前記トッププレートに対向する磁極面を有するヨークと、を備え、
    前記ヨークにおける前記磁極面を形成する部分に、磁気飽和を発生させる磁気飽和部が設けられ、
    前記磁気飽和部は、前記第1方向に沿って前記ヨークの先端に向かって、前記第1方向に垂直な断面積が減少した形状を有する、
    スピーカ用磁気回路。
  2. 前記ヨークは、前記磁極面の裏面をさらに有し、
    前記裏面が前記磁極面に対して傾斜することで前記磁気飽和部が形成されている、
    請求項1記載のスピーカ用磁気回路。
  3. 前記トッププレートは、前記ヨークに対向する磁極部を有し、
    前記トッププレートにおいて、前記マグネットの前記第1面に設置された部分の厚さは、前記磁極部の前記第1方向の長さより小さい、
    請求項1または2に記載のスピーカ用磁気回路。
  4. 前記トッププレートの前記磁極部は、先細りするテーパー形状に形成されており、磁気飽和を発生させる第2の磁気飽和部として機能する、
    請求項3記載のスピーカ用磁気回路。
  5. 前記磁気飽和部と前記磁極部とは、それぞれの断面形状が前記磁気ギャップの中心を中点として点対称、あるいは点対称に近似するように形成されている、
    請求項4記載のスピーカ用磁気回路。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のスピーカ用磁気回路と、
    前記スピーカ用磁気回路に固定されるフレームと、
    前記スピーカ用磁気回路の前記トッププレートと前記ヨークとの間に形成された磁気ギャップ内に配置されたボビンと、
    前記ボビンに巻回されて前記磁気ギャップ内に配置され、前記第1方向に沿って変位可能に配置されたボイスコイルと、
    前記ボビンに固着されると共に、サスペンションにより前記フレームに対して前記第1方向に変位可能に支持された振動板と、を備えた、
    スピーカ。
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