JPWO2017022817A1 - 光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

基板と、基板上に設けられ、互いに溝を介して配置された複数の導電層とを有する光電変換素子が開示されている。この光電変換素子は、少なくとも1つの光電変換セルを有する。光電変換セルは、複数の導電層のうちの1つの導電層と、導電層に対向する対向基板と、導電層及び対向基板の間に設けられる酸化物半導体層とを有し、複数の導電層同士間の溝の長手方向に沿って基板上に導電性膜が設けられ、導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している。

Description

本発明は、光電変換素子に関する。
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素を用いた光電変換素子が注目されており、色素を用いた光電変換素子に関して種々の開発が行われている。
色素を用いた光電変換素子は少なくとも1つの光電変換セルを備えており、光電変換セルは一般に、基板上に導電層を設けた導電性基板と、導電層に対向する対向基板と、導電層と対向基板との間に設けられる酸化物半導体層とを備えている(例えば下記特許文献1参照)。
特開2014−192008号公報
しかし、上述した特許文献1に記載の光電変換素子は、光電変換特性の点で未だ改善の余地を有していた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換特性を十分に向上させることができる光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため上記特許文献1記載の光電変換素子について検討した。その結果、光電変換素子に含まれる隣接する2つの光電変換セルの導電層同士間の抵抗値を測定したところ、抵抗値が比較的小さいことが分かった。このことから、本発明者は、隣接する2つの光電変換セルの導電層同士間の溝の底部において、すなわち、溝の長手方向に沿って基板上に導電性物質からなる導電性膜が残存しており、この残存する導電性物質からなる導電性膜が、隣接する2つの光電変換セルの導電層同士間の抵抗値を小さくしているのではないかと考えた。そこで、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、隣接する2つの光電変換セルの導電層同士間の溝の底部において、すなわち溝の長手方向に沿って基板上に設けられる導電性膜において、溝の長手方向に沿った特定の長さ当たりに観察される、特定値以上の長さを持つ亀裂の数と光電変換特性との間に相関関係が見られることを突き止め、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、互いに溝を介して配置された複数の導電層とを有する光電変換素子であって、少なくとも1つの光電変換セルを有し、前記光電変換セルが、前記複数の導電層のうちの1つの導電層と、前記導電層に対向する対向基板と、前記導電層及び前記対向基板の間に設けられる酸化物半導体層とを有し、前記複数の導電層同士間の前記溝の長手方向に沿って、前記基板上に導電性膜が設けられ、前記導電性膜において、長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している、光電変換素子である。
本発明の光電変換素子によれば、複数の導電層同士間の溝の底部において、すなわち溝の長手方向に沿って基板上に設けられる導電性膜において、長さ5μm以上の亀裂が、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している。このため、この亀裂によって導電性膜における導電パスが十分に切断され、導電層同士間の絶縁性を十分に確保することができる。その結果、光電変換素子の光電変換特性を向上させることができる。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜は導電層と同一の材料で構成されていることが好ましい。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり200個以下の割合で存在していることが好ましい。
この場合、亀裂が溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり200個を超える割合で存在している場合に比べて、溝の透明度がより高くなる。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり40個以下の割合で存在していることが特に好ましい。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記導電性膜において前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり34個以上の割合で存在していることが好ましい。
この場合、光電変換素子の光電変換特性をより向上させることができる。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜において、互いに交差する亀裂が存在していることが好ましい。
この場合、導電性膜において互いに交差する亀裂が存在することによって、導電性膜における導電パスをより長い距離にわたって切断することが可能となる。このため、光電変換素子の光電変換特性をより十分に向上させることができる。
上記光電変換素子においては、前記複数の導電層同士間の前記溝が絶縁材料で覆われていることが好ましい。
この場合、亀裂に絶縁材料が入り込むことで、導電層同士間の絶縁性をより十分に確保することができる。
上記光電変換素子においては、前記導電性膜の最大厚さが150nm以下であり、前記溝の幅が200nm以下であり、前記亀裂の底部が前記基板と前記導電性膜との界面に達していることが好ましい。
この場合、亀裂によって導電性膜における導電パスが効果的に切断され、導電層同士間の絶縁性を効果的に確保することができる。その結果、光電変換素子の光電変換特性を効果的に向上させることができる。
上記光電変換素子において、前記亀裂の底部が、前記基板において前記基板と前記導電性膜との界面よりも前記導電性膜から離れた位置に達していることが好ましい。
この場合、亀裂の長さ方向において導電パスがより確実に切断されるので、導電性膜の抵抗をより増大させることができる。
上記光電変換素子においては、前記亀裂が前記導電層に接触していることが好ましい。
この場合、亀裂が導電層に接触しない場合に比べて、隣り合う導電層同士間の絶縁性がより向上する。
なお、本発明において、「導電性膜」とは、前記導電層よりも小さい最大厚さを有する層をいう。
また、本発明において、「亀裂」の数は、複数の導電層同士間の溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)にて観察した場合に観察される亀裂の数の平均値を言うものとする。ここで、観察される線が亀裂であるかどうかは、その線の幅が0.1〜2μmであり、且つその線がその周囲よりも明度が低い線であるか、あるいは明度が高い線であるかどうかによって判断することができる。
さらに、本発明において、「導電性膜の最大厚さ」とは、複数の導電層同士間の溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)にて観察した場合に、その各々の領域で観察される導電性膜の最大厚さの平均値を言うものとする。
本発明によれば、光電変換特性を十分に向上させることができる光電変換素子が提供される。
本発明の光電変換素子の第1実施形態を示す切断面端面図である。 本発明の光電変換素子の第1実施形態の一部を示す平面図である。 図1の光電変換素子における透明導電層のパターンを示す平面図である。 図3の隣り合う透明導電層同士間の溝の底部を示す部分平面図である。 図4のV−V線に沿った部分切断面端面図である。 図1の第1一体化封止部を示す平面図である。 図1の第2一体化封止部を示す平面図である。 図2のVIII−VIII線に沿った部分切断面端面図である。 絶縁材、バックシートを固定するための連結部及び酸化物半導体層を形成した導電性基板を示す平面図である。 図6の第1一体化封止部を形成するための第1一体化封止部形成体を示す平面図である。 本発明の光電変換素子の第2実施形態を示す部分切断面端面図である。
以下、本発明の光電変換素子の好適な実施形態について図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の光電変換素子の好適な実施形態を示す切断面端面図、図2は、本発明の光電変換素子の好適な実施形態の一部を示す平面図、図3は、図1の光電変換素子における透明導電層のパターンを示す平面図、図4は、図3の隣り合う透明導電層同士間の溝の底部を示す部分平面図、図5は、図4のV−V線に沿った部分切断面端面図、図6は、図1の第1一体化封止部を示す平面図、図7は、図1の第2一体化封止部を示す平面図、図8は、図2のVIII−VIII線に沿った部分切断面端面図、図9は、絶縁材、バックシートを固定するための連結部及び酸化物半導体層を形成した導電性基板を示す平面図である。
図1に示すように、光電変換素子100は、透明基板11と、透明基板11上に互いに溝90を介して配置された複数の透明導電層12とを設けてなる導電性基板15を有する。
光電変換素子100は一つの透明基板11と透明基板11上に形成された複数(本実施形態では4つ)の光電変換セル50を有している。以下、これら複数の光電変換セル50については、説明の便宜上、必要に応じて光電変換セル50A〜50Dと呼ぶこととする。光電変換セル50は、複数の透明導電層12のうちの1つの透明導電層12と、透明導電層12に対向する対向基板20と、透明導電層12と対向基板20との間に設けられる酸化物半導体層13とを備えている。本実施形態では、酸化物半導体層13は透明導電層12上に設けられている。導電性基板15及び対向基板20は環状の封止部30Aによって接合され、導電性基板15、対向基板20及び環状の封止部30Aによって形成されるセル空間には電解質40が充填されている。酸化物半導体層13は、環状の封止部30Aの内側に配置され、酸化物半導体層13には色素が担持されている。そして、図2に示すように、複数の光電変換セル50は導電材60Pによって直列に接続されている。また光電変換セル50の対向基板20側にはバックシート80が設けられている(図1参照)。
対向基板20は対極で構成され、電極としての金属基板21と、金属基板21の導電性基板15側に設けられて触媒反応を促進する触媒層22とを備えている。また隣り合う2つの光電変換セル50において、対向基板20同士は互いに離間している。
図3に示すように、導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11上に設けられ、互いに溝90を介して配置された電極としての複数の透明導電層12A〜12Fとを有している。複数の透明導電層12A〜12Fのうち透明導電層12A〜12Dは、光電変換セル50A〜50Dの電極を構成する透明導電層12であり、透明導電層12E,12Fは、光電変換セル50A〜50Dの電極を構成しない透明導電層12である。透明導電層12E,12Fは、透明導電層12A〜12Dの周囲に設けられている。透明導電層12Eは、封止部30Aに沿って折れ曲がるようにして配置されている。透明導電層12Fは、バックシート80の周縁部80aを固定するための環状の透明導電層12である(図1参照)。
図3に示すように、透明導電層12A〜12Dはいずれも、側縁部12bを有する四角形状の本体部12aと、本体部12aの側縁部12bから側方に突出する突出部12cとを有している。
図2に示すように、透明導電層12A〜12Dのうち光電変換セル50Cの透明導電層12Cの突出部12cは、光電変換セル50A〜50Dの配列方向Xに対して側方に張り出す張出し部12dと、張出し部12dから延びて、隣りの光電変換セル50Dの本体部12aに溝90を介して対向する対向部12eとを有している。
光電変換セル50Bにおいても、透明導電層12Bの突出部12cは、張出し部12dと対向部12eとを有している。また光電変換セル50Aにおいても、透明導電層12Aの突出部12cは、張出し部12dと対向部12eとを有している。
なお、光電変換セル50Dは、既に光電変換セル50Cと接続されており、他に接続されるべき光電変換セル50が存在しない。このため、光電変換セル50Dにおいて、透明導電層12Dの突出部12cは対向部12eを有していない。すなわち透明導電層12Dの突出部12cは張出し部12dのみで構成される。
但し、透明導電層12Dは、光電変換素子100で発生した電流を外部に取り出すための第1電流取出し部12fと、第1電流取出し部12fと本体部12aとを接続し、透明導電層12A〜12Cの側縁部12bに沿って延びる接続部12gとをさらに有している。第1電流取出し部12fは、光電変換セル50Aの近傍であって透明導電層12Aに対して透明導電層12Bと反対側に配置されている。
一方、透明導電層12Eも、光電変換素子100で発生した電流を外部に取り出すための第2電流取出し部12hを有しており、第2電流取出し部12hは、光電変換セル50Aの近傍であって透明導電層12Aに対して透明導電層12Bと反対側に配置されている。そして、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、光電変換セル50Aの周囲において溝90B(90)を介して隣り合うように配置されている。
ここで、溝90は、透明導電層12の本体部12aの縁部に沿って形成される第1の溝90Aと、透明導電層12のうち本体部12aを除く部分の縁部に沿って形成され、バックシート80の周縁部80aと交差する第2の溝90Bとで構成されている。
そして、図4に示すように、隣り合う透明導電層12同士間の溝90の底部において、すなわち、溝90の長手方向に沿って透明基板11上に設けられる導電性膜92において、亀裂91は、溝90の両側の縁部の各々から反対側の溝90の縁部に向かうように延びている。ここで、亀裂91は、溝90の縁部、すなわち透明導電層12に接触している。そして、導電性膜92において長さ5μm以上の亀裂91が、溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している。また隣り合う透明導電層12同士間の溝90の底部において、すなわち、溝90の長手方向に沿って透明基板11上に設けられる導電性膜92においては、他の亀裂91と交差しない亀裂91c,91dと、他の亀裂91と交差する亀裂91a,91bとが存在している。なお、図4において、溝90の縁部は直線状になっているが、直線状でなくてもよい。
図2に示すように、透明導電層12A〜12Cの各突出部12cおよび透明導電層12Eの上には、接続端子16が設けられている。各接続端子16は、導電材60Pと接続され、封止部30Aの外側で封止部30Aに沿って延びる導電材接続部16Aと、導電材接続部16Aから封止部30Aの外側で封止部30Aに沿って延びる導電材非接続部16Bとを有する。本実施形態では、透明導電層12A〜12Cにおいては、接続端子16のうち少なくとも導電材接続部16Aは、突起部12cの対向部12e上に設けられており、接続される隣りの光電変換セル50の本体部12aに対向している。透明導電層12Eにおいては、接続端子16のうちの導電材接続部16Aは、接続される隣りの光電変換セル50Aの本体部12aに対向している。
そして、光電変換セル50Cにおける透明導電層12Cの突出部12c上に設けられる接続端子16の導電材接続部16Aと隣りの光電変換セル50Dにおける対向基板20の金属基板21とが導電材60Pを介して接続されている。導電材60Pは、封止部30Aの上を通るように配置されている。同様に、光電変換セル50Bにおける接続端子16の導電材接続部16Aと隣りの光電変換セル50Cにおける対向基板20の金属基板21とは導電材60Pを介して接続され、光電変換セル50Aにおける接続端子16の導電材接続部16Aと隣りの光電変換セル50Bにおける対向基板20の金属基板21とは導電材60Pを介して接続され、透明導電層12E上の接続端子16の導電材接続部16Aと隣りの光電変換セル50Aにおける対向基板20の金属基板21とは導電材60Pを介して接続されている。
また第1電流取出し部12f、第2電流取出し部12h上にはそれぞれ、外部接続端子18a,18bが設けられている。
図1に示すように、封止部30Aは、導電性基板15と対向基板20との間に設けられる環状の第1封止部31Aと、第1封止部31Aと重なるように設けられ、第1封止部31Aと共に対向基板20の縁部20aを挟持する第2封止部32Aとを有している。そして、図6に示すように、隣り合う第1封止部31A同士は一体化されて第1一体化封止部31を構成している。別言すると、第1一体化封止部31は、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられていない環状の部分(以下、「環状部」と呼ぶ)31aと、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられており、環状の部分31aの内側開口31cを仕切る部分(以下、「仕切部」と呼ぶ)31bとで構成されている。また図7に示すように、第2封止部32A同士は、隣り合う対向基板20の間で一体化され、第2一体化封止部32を構成している。第2一体化封止部32は、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられていない環状の部分(以下、「環状部」と呼ぶ)32aと、隣り合う2つの対向基板20の間に設けられており、環状の部分32aの内側開口32cを仕切る部分(以下、「仕切部」と呼ぶ)32bとで構成されている。
また図1に示すように、第1封止部31Aと溝90との間には、隣り合う透明導電層12A〜12F同士間の溝90に入り込み且つ隣り合う透明導電層12にまたがるように絶縁材33が設けられている。すなわち、溝90のうち第1封止部31Aに沿った部分は、絶縁材33によって覆われている。
また、図8に示すように、第2一体化封止部32は、対向基板20のうち導電性基板15と反対側に設けられる本体部32dと、隣り合う対向基板20同士の間に設けられる接着部32eとを有している。第2一体化封止部32は、接着部32eによって第1一体化封止部31に接着されている。
図1に示すように、導電性基板15の上にはバックシート80が設けられている。バックシート80は、耐候性層と、金属層とを含む積層体80Aと、積層体80Aに対し金属層と反対側に設けられ、連結部14を介して導電性基板15と接着する接着部80Bとを含む。ここで、接着部80Bは、バックシート80を導電性基板15に接着させるためのものであり、図1に示すように、積層体80Aの周縁部に形成されていればよい。但し、接着部80Bは、積層体80Aのうち光電変換セル50側の面全体に設けられていてもよい。バックシート80の周縁部80aは、接着部80Bによって、連結部14を介して透明導電層12のうち透明導電層12D,12E,12Fと接続されている。ここで、接着部80Bは光電変換セル50の封止部30Aと離間している。また連結部14も封止部30Aと離間している。
また図2に示すように、透明導電層12Dにおいては、本体部12a、接続部12gおよび電流取出し部12fを通るように、透明導電層12Dよりも低い抵抗を有する集電配線17が延びている。この集電配線17は、バックシート80と導電性基板15との連結部14と交差しないように配置されている。別言すると、集電配線17は、連結部14よりも内側に配置されている。
なお、図2に示すように、各光電変換セル50A〜50Dにはそれぞれ、バイパスダイオード70A〜70Dが並列に接続されている。具体的には、バイパスダイオード70Aは、光電変換セル50Aと光電変換セル50Bとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定され、バイパスダイオード70Bは、光電変換セル50Bと光電変換セル50Cとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定され、バイパスダイオード70Cは、光電変換セル50Cと光電変換セル50Dとの間の第2一体化封止部32の仕切部32b上に固定されている。バイパスダイオード70Dは、光電変換セル50Dの封止部30A上に固定されている。そして、バイパスダイオード70A〜70Dを通るように対向基板20の金属基板21に導電材60Qが固定されている。またバイパスダイオード70A,70B間、バイパスダイオード70B,70C間、バイパスダイオード70C,70D間の導電材60Qからはそれぞれ導電材60Pが分岐し、透明導電層12A上の導電材接続部16A、透明導電層12B上の導電材接続部16A、透明導電層12C上の導電材接続部16Aにそれぞれ接続されている。また光電変換セル50Aの対向基板20の金属基板21にも導電材60Pが固定され、この導電材60Pは、バイパスダイオード70Aと、透明導電層12E上の接続端子16の導電材接続部16Aとを接続している。さらにバイパスダイオード70Dは、導電材60Pを介して透明導電層12Dに接続されている。
なお、図1に示すように、各光電変換セル50の対向基板20上には、乾燥剤95が設けられている。
上記光電変換素子100によれば、複数の透明導電層12同士間の溝90の底部において、すなわち、溝90の長手方向に沿って透明基板11上に設けられる導電性膜92において、長さ5μm以上の亀裂91が、溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している。このため、この亀裂91によって導電性膜92における導電パスが十分に切断され、透明導電層12同士間の絶縁性を十分に確保することができる。その結果、光電変換素子100の光電変換特性を向上させることができる。
また光電変換素子100においては、隣り合う透明導電層12同士間の導電性膜92において、亀裂91が、溝90の縁部、すなわち透明導電層12に接触している。このため、亀裂91が、溝90の縁部、すなわち透明導電層12に接触しない場合に比べて、隣り合う透明導電層12同士間の絶縁性がより向上する。
また光電変換素子100においては、隣り合う透明導電層12同士間の溝90の底部において、他の亀裂91と交差する亀裂91a,91bが存在している。このように、互いに交差する亀裂91が存在することによって、隣り合う透明導電層12同士間の溝90の底部における導電パスをより長い距離にわたって切断することが可能となる。このため、光電変換素子100の光電変換特性をより十分に向上させることができる。
また光電変換素子100では、溝90のうち第1封止部31Aに沿った部分は、絶縁材33によって覆われている。この場合、溝90に存在する亀裂91に絶縁材料が入り込むことで、透明導電層12同士間の絶縁性をより十分に確保することができる。
また光電変換素子100では、封止部30Aと絶縁材33とが重なるように配置されている。このため、絶縁材33が封止部30Aと重ならないように配置されている場合に比べて、光電変換素子100の受光面側から見た、発電に寄与する部分の面積をより増加させることができる。このため、開口率をより向上させることができる。
また光電変換素子100では、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hは、光電変換セル50Aの近傍であって透明導電層12Aに対し透明導電層12Bと反対側に配置され、透明導電層12Aの第1電流取出し部12fおよび透明導電層12Fの第2電流取出し部12hは互いに溝90を介して隣り合うように配置されている。このため、光電変換素子100においては、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hのそれぞれに外部接続端子18a,18bを隣り合うように配置することが可能となる。従って、外部接続端子18a,18bから電流を外部に取り出すためのコネクタの数を1つとすることが可能となる。すなわち、仮に、第1電流取出し部12fが透明導電層12Dに対し透明導電層12Cと反対側に配置されている場合、第1電流取出し部12fおよび第2電流取出し部12hが互いに大きく離れて配置されるため、外部接続端子18a,18bも大きく離れて配置されることになる。この場合、光電変換素子100から電流を取り出すには、外部接続端子18aに接続するコネクタと、外部接続端子18bに接続するコネクタの2つのコネクタが必要になる。しかし、光電変換素子100によれば、外部接続端子18a,18bを隣り合うように配置することが可能となるため、コネクタは1つで済む。このため、光電変換素子100によれば、省スペース化を図ることができる。また、光電変換素子100は、低照度下で使用されると、発電電流が小さい。具体的には、発電電流は2mA以下である。このため、光電変換セル50A〜50Dの両端の光電変換セル50A,50Dのうち一端側の光電変換セル50Dの透明導電層12Dの一部を、他端側の光電変換セル50Aの対向基板20の金属基板21に電気的に接続された第2電流取出し部12hの隣りに溝90を介して第1電流取出し部12fとして配置しても、光電変換素子100の光電変換性能の低下を十分に抑制することができる。
また、光電変換素子100では、光電変換セル50A〜50DがX方向に沿って一列に配列されており、光電変換セル50A〜50Dの両端の光電変換セル50A,50Dのうち一端側の光電変換セル50Dの透明導電層12Dが、封止部30Aの内側に設けられる本体部12aと、第1電流取出し部12fと、本体部12aと第1電流取出し部12fとを接続する接続部12gとを有する。このため、光電変換セル50A〜50Dの一部である光電変換セル50C、50Dを途中で折り返し、光電変換セル50Aと光電変換セル50Dとをそれらが互いに隣り合うように配置する場合に比べて、隣り合う2つの光電変換セル50同士を接続するために光電変換セル50A〜50Dの配列方向(図2のX方向)に沿って設けられる接続端子16の設置領域をより短くすることが可能となり、より省スペース化を図ることが可能となる。また、光電変換素子100によれば、当該光電変換素子100が低照度環境下で使用される場合、通常、発電電流が小さいため、光電変換素子100が、本体部12aと第1電流取出し部12fとを接続する接続部12gをさらに有していても、光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
さらに、光電変換素子100では、集電配線17が、バックシート80と導電性基板15との連結部14と交差しないように配置されている。集電配線17は一般に、多孔質であるため通気性を有しており、水蒸気等のガスが透過可能となっているが、集電配線17が、バックシート80と導電性基板15との連結部14と交差しないように配置されていると、集電配線17を通してバックシート80と導電性基板15との間の空間に外部から水蒸気等が侵入することを防止することができる。その結果、光電変換素子100は優れた耐久性を有することが可能となる。また集電配線17は、透明導電層12Dよりも低い抵抗を有するため、発電電流が大きくなっても、光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
また、隣り合う2つの光電変換セル50のうち一方の光電変換セル50における対向基板20の金属基板21に接続された導電材60Pは、他方の光電変換セル50における突出部12c上の導電材接続部16Aと接続され、導電材接続部16Aは、突出部12c上で封止部30Aの外側に設けられている。すなわち、隣り合う2つの光電変換セル50同士の接続が封止部30Aの外側で行われる。このため、光電変換素子100によれば、開口率を向上させることが可能となる。
また光電変換素子100では、光電変換セル50A〜50Dのうち隣りの光電変換セル50と接続される光電変換セル50において、突出部12cが、本体部12aから側方に張り出す張出し部12dと、張出し部12dから延びて、隣りの光電変換セル50の本体部12aに対向する対向部12eとを有し、接続端子16のうち少なくとも導電材接続部16Aが対向部12e上に設けられている。
この場合、接続端子16のうち少なくとも導電材接続部16Aが、隣りの光電変換セル50の本体部12aに対向する対向部12e上に設けられている。このため、接続端子16のうち少なくとも導電材接続部16Aが、隣りの光電変換セル50の本体部12aに対向する対向部12e上に設けられていない場合と異なり、導電材接続部16Aに接続される導電材60Pが、隣りの光電変換セル50の対向基板20の金属基板21を横切ることを十分に防止することが可能となる。その結果、隣り合う光電変換セル50同士間の短絡を十分に防止することが可能となる。
また光電変換素子100では、導電材接続部16Aおよび導電材非接続部16Bはいずれも封止部30Aに沿って配置されている。このため、導電材接続部16Aおよび導電材非接続部16Bを封止部30Aから遠ざかる方向に沿って配置する場合に比べて、接続端子16のために要するスペースを省くことができる。
さらに光電変換素子100では、バックシート80の接着部80Bは、光電変換セル50の封止部30Aと離間している。このため、接着部80Bが、低温時において収縮することにより封止部30Aを引っ張って、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力が加わることが十分に抑制される。また、高温時においても、接着部80Bが、膨張することにより封止部30Aを押して、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力を加えることが十分に抑制される。すなわち、高温時でも低温時でも、封止部30Aと導電性基板15又は対向基板20との界面に過大な応力が加わることが十分に抑制される。このため、光電変換素子100は、優れた耐久性を有することが可能となる。
また光電変換素子100においては、第2封止部32Aが、第1封止部31Aと接着されており、対向基板20の縁部20aが第1封止部31Aと第2封止部32Aとによって挟持されている。このため、対向基板20に対して導電性基板15から離れる方向の応力が作用しても、その剥離が第2封止部32Aによって十分に抑制される。また、第2一体化封止部32の仕切部32bは、隣り合う対向基板20同士間の隙間Sを通って第1封止部31Aに接着されている。このため、隣り合う光電変換セル50の対向基板20同士が接触することが確実に防止される。
次に、導電性基板15、酸化物半導体層13、絶縁材33、連結部14、色素、対向基板20、封止部30A、電解質40、導電材60P,60Q、バックシート80および乾燥剤95について詳細に説明する。
(導電性基板)
導電性基板15は、上述したように、透明基板11と、複数の透明導電層12A〜12Fとを有している。
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、および、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
透明導電層12に含まれる材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物を含む複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層12が単層で構成される場合、透明導電層12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOを含むことが好ましい。透明導電層12は、ガラスフリットをさらに含んでもよい。透明導電層12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
溝90の幅Wは特に制限されるものではないが、400μm以下であることが好ましい(図4参照)。この場合、溝90の幅Wが400μmを超える場合に比べて、余分なスペースをより省くことができる。溝90の幅Wは250μm以下であることが好ましく、220μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがより一層好ましい。
また溝90の幅Wは、40μm以上であることが好ましい。この場合、溝90の幅Wが40μm未満である場合に比べて、隣り合う透明導電層12同士間の絶縁性がより向上する。溝90の幅Wは60μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが一層好ましい。
導電性膜92は透明導電層12と同一の材料で構成されている。
導電性膜92の最大厚さは特に制限されるものではないが、150nm以下であることが好ましい。この場合、導電性膜92の最大厚さが150nmを超える場合に比べて、隣り合う2つの透明導電層12同士間の抵抗が低減され、光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。導電性膜92の最大厚さは、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましい。但し、導電性膜92の最大厚さは、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
複数の透明導電層12同士間の溝90の長手方向に沿って、長さ5μm以上の亀裂91が、透明基板11上に設けられる導電性膜92において溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在していればよいが、長さ5μm以上の亀裂91が、導電性膜92において溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり20個以上の割合で存在していることが好ましい。この場合、光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。長さ5μm以上の亀裂91は、導電性膜92において溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり34個以上の割合で存在していることが好ましい。この場合、光電変換素子の光電変換特性をより向上させることができる。
但し、上記亀裂91は導電性膜92において溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり200個以下の割合で存在していることが好ましい。この場合、亀裂91が導電性膜92において溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり200個を超える割合で存在している場合に比べて、溝90の透明度がより高くなる。上記亀裂91は、溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり100個以下の割合で存在していることがより好ましく、溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり50個以下の割合で存在していることがより一層好ましく、溝90の長手方向に沿った長さ100μmあたり40個以下の割合で存在していることが特に好ましい。
図5に示すように、亀裂91の底部Bは、透明基板11と導電性膜92との界面Sに達していても達していなくてもよいが、界面Sに達していることが好ましい。この場合、亀裂91の長さ方向において導電パスが切断されるので、導電性膜92の抵抗をより増大させることができる。
光電変換素子100においては、亀裂91の底部Bが界面Sに達している場合に、導電性膜92の最大厚さが150nm以下であり、溝90の幅Wが200nm以下であることが特に好ましい。
この場合、亀裂91によって導電性膜92における導電パスが効果的に切断され、透明導電層12同士間の絶縁性を効果的に確保することができる。その結果、光電変換素子100の光電変換特性を効果的に向上させることができる。
ここで、導電性膜92の最大厚さは、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましい。但し、導電性膜92の最大厚さは、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
また、溝90の幅Wは、40μm以上であることが好ましい。この場合、溝90の幅Wが40μm未満である場合に比べて、隣り合う透明導電層12同士間の絶縁性がより向上する。溝90の幅Wは60μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが一層好ましい。
亀裂91の底部Bは、透明基板11において界面Sよりも導電性膜92から離れた位置に達していることが好ましい。この場合、亀裂91の長さ方向において導電パスがより確実に切断されるので、導電性膜92の抵抗をより増大させることができる。
接続端子16は、金属材料を含む。金属材料としては、例えば銀、銅およびインジウムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いてもよい。
また接続端子16は、導電材60Pと同一の材料で構成されていても異なる材料で構成されていてもよいが、同一の材料で構成されていることが好ましい。
この場合、接続端子16および導電材60Pが同一の材料で構成されているため、接続端子16と導電材60Pとの密着性をより十分に向上させることができる。このため、光電変換素子100における接続信頼性をより向上させることが可能となる。
(酸化物半導体層)
酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子で構成される。このような酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)が挙げられる。
(絶縁材)
絶縁材33としては、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いることができる。これらのうち無機絶縁材料が絶縁材33として好ましい。この場合、無機絶縁材料は有機絶縁材料に比べて劣化しにくいため、光電変換素子100の耐久性をより向上させることができる。
無機絶縁材料としては、例えばガラスフリットなどを用いることができる。
有機絶縁材料としては、例えばポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。
(連結部)
連結部14を構成する材料は、バックシート80と透明導電層12とを接着させることができるものであれば特に制限されず、連結部14を構成する材料としては、例えばガラスフリット、封止部31Aに用いられる樹脂材料と同様の樹脂材料などを用いることができる。中でも、連結部14は、ガラスフリットであることが好ましい。ガラスフリットは樹脂材料に比べて高い封止性能を有するため、バックシート80の外側からの水分等の侵入を効果的に抑制することができる。
(色素)
色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などの光増感色素や、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト結晶などの有機−無機複合色素などが挙げられる。ハロゲン化鉛系ペロブスカイト結晶としては、例えばCHNHPbX(X=Cl、Br、I)が用いられる。上記色素の中でも、ビピリジン構造又はターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体が好ましい。この場合、光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。なお、色素として、光増感色素を用いる場合には、光電変換素子100は色素増感光電変換素子となる。
(対向基板)
対向基板20は、上述したように、金属基板21と、金属基板21のうち導電性基板15側に設けられて対向基板20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備える。
金属基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス等の耐食性の金属材料で構成される。金属基板21の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンナノチューブが好適に用いられる。
(封止部)
封止部30Aは、第1封止部31Aと、第2封止部32Aとで構成される。
第1封止部31Aを構成する材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。
第1封止部31Aの厚さは通常、20〜90μmであり、好ましくは40〜80μmである。
第2封止部32Aを構成する材料としては、第1封止部31Aと同様、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。第2封止部32Aを構成する材料は、第1封止部31Aを構成する材料と同一であっても異なってもよいが、同一であることが好ましい。この場合、第2封止部32Aと第1封止部31Aとの界面がなくなるため、外部からの水分の侵入や電解質40の漏洩を効果的に抑制することができる。
第2封止部32Aの厚さは通常、20〜45μmであり、好ましくは30〜40μmである。
(電解質)
電解質40は、例えば酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I )、臭化物イオン/ポリ臭化物イオンなどのハロゲン原子を含む酸化還元対のほか、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。なお、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオンは、ヨウ素(I)と、アニオンとしてのアイオダイド(I)を含む塩(イオン性液体や固体塩)とによって形成することができる。アニオンとしてアイオダイドを有するイオン性液体を用いる場合には、ヨウ素のみ添加すればよく、有機溶媒や、アニオンとしてアイオダイド以外のイオン性液体を用いる場合には、LiIやテトラブチルアンモニウムアイオダイドなどのアニオンとしてアイオダイド(I)を含む塩を添加すればよい。
また電解質40は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、又は、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイドが好適に用いられる。
また、電解質40は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
また電解質40には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1−ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
なお、電解質40は、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I )からなる酸化還元対を含み、ポリヨウ化物イオン(例えばI )の濃度が0.010mol/リットル以下であることが好ましく、0.005mol/リットル以下であることがより好ましく、0〜2×10−4mol/リットル以下であることがさらにより好ましい。この場合、電子を運ぶmol/リットル以下であることがの濃度が低いため、漏れ電流をより減少させることができる。このため、開放電圧をより増加させることができるため、光電変換特性をより向上させることができる。
(導電材)
導電材60P,60Qとしては、例えば金属膜が用いられる。金属膜を構成する金属材料としては、例えば銀又は銅などを用いることができる。
(バックシート)
バックシート80は、上述したように、耐候性層と、金属層とを含む積層体80Aと、積層体80Aの光電変換セル50側の面に設けられ、積層体80Aと連結部14とを接着する接着部80Bとを含む。
耐候性層は、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで構成されていればよい。
耐候性層の厚さは、例えば50〜300μmであればよい。
金属層は、例えばアルミニウムを含む金属材料で構成されていればよい。金属材料は通常、アルミニウム単体で構成されるが、アルミニウムと他の金属との合金であってもよい。他の金属としては、例えば銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、鉛、及び、ビスマスが挙げられる。具体的には、98%以上の純アルミニウムにその他の金属が微量添加された1000系アルミニウムが望ましい。これは、この1000系アルミニウムが、他のアルミニウム合金と比較して、安価で、加工性に優れているためである。
金属層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば12〜30μmであればよい。
積層体80Aは、さらに樹脂層を含んでいてもよい。樹脂層を構成する材料としては、例えばブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。樹脂層は、金属層のうち耐候性層と反対側の表面全体に形成されていてもよいし、周縁部にのみ形成されていてもよい。
接着部80Bを構成する材料としては、例えばブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。接着部80Bの厚さは特に制限されるものではないが、例えば300〜1000μmであればよい。
(乾燥剤)
乾燥剤95は、シート状であっても、粒状であってもよい。乾燥剤95は、例えば水分を吸収するものであればよく、乾燥剤95としては、例えばシリカゲル、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。
次に、光電変換素子100の製造方法について図3、図9および図10を参照しながら説明する。図10は、図6の第1一体化封止部を形成するための第1一体化封止部形成体を示す平面図である。
まず1つの透明基板11の上に透明導電膜を形成してなる積層体を用意する。
透明導電膜の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD)又はCVD法などが用いられる。
次に、図3に示すように、透明導電膜に対して溝90を形成し、互いに溝90を介在させて絶縁状態で配置される透明導電層12A〜12Fを形成する。具体的には、光電変換セル50A〜50Dに対応する4つの透明導電層12A〜12Dは、四角形状の本体部12a及び突出部12cを有するように形成する。このとき、光電変換セル50A〜50Cに対応する透明導電層12A〜12Cについては、突出部12cが張出し部12dのみならず、張出し部12dから延びて、隣りの光電変換セル50の本体部12aに対向する対向部12eをも有するように形成する。また透明導電層12Dについては、四角形状の本体部12a及び張出し部12dのみならず、第1電流取出し部12fと、第1電流取出し部12fと本体部12aとを接続する接続部12gとを有するように形成する。このとき、第1電流取出し部12fは、透明導電層12Aに対し、透明導電層12Bと反対側に配置されるように形成する。さらに、透明導電層12Eは、第2電流取出し部12hが形成されるように形成する。このとき、第2電流取出し部12hは、透明導電層12Aに対し、透明導電層12Bと反対側に配置され、且つ、第1電流取出し部12fの隣りに溝90を介して配置されるように形成する。
上述した溝90は、例えばファイバレーザを光源として用いたレーザスクライブ法によって形成する。
溝90においては透明基板11上に導電性膜92が設けられているが、導電性膜92に亀裂91を発生させて長さ5μm以上の亀裂91の数が15個/100μm以上の割合で存在するようにするためには、溝90を形成した後、溝90の部分を急冷すればよい。溝90の部分を急冷するのは以下の理由によるものである。すなわち、透明導電膜にファイバレーザのような高エネルギーをもつレーザを照射することによって溝90を形成する場合、透明導電膜の照射部位が高温になって溶融する。このとき、照射部位において溶融した導電性物質が溝90において透明基板11上に残ると、徐々に導電性物質の温度が低下して固化し、薄い導電性残渣膜である導電性膜92が形成される。その後、溝90における導電性膜92を急冷すると、溝90を形成した後、薄い導電性膜92が熱収縮することにより導電性膜92に亀裂91が発生する。この亀裂91により、透明導電層12同士間の導電パスが十分に切断されるため、透明導電層12同士間の短絡が十分に抑制されることとなる。
急冷は、具体的には溝90に圧縮空気を吹き付けたり、溝90における導電性膜92を水に浸漬させたりすることなどによって実現することができる。
ここで、急冷は、冷却速度の調整が容易であることから、圧縮空気の吹付けによって行うことが好ましい。この場合、圧縮空気の圧力は例えば0.1〜0.8MPaとすればよい。
こうして、透明基板11の上に複数の透明導電層12A〜12Fを形成し、導電性基板15を得る。
次に、透明導電層12A〜12Cのうちの突出部12c上に、導電材接続部16Aと導電材非接続部16Bとで構成される接続端子16の前駆体を形成する。具体的には、接続端子16の前駆体は、導電材接続部16Aが対向部12e上に設けられるように形成する。また透明導電層12Eにも接続端子16の前駆体を形成する。接続端子16の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
さらに、透明導電層12Dの接続部12gの上には集電配線17の前駆体を形成する。集電配線17の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
また、透明導電層12Aの第1電流取出し部12f,第2電流取出し部12h上にはそれぞれ外部に電流を取り出すための外部接続用端子18a,18bの前駆体を形成する。外部接続用端子の前駆体は、例えば銀ペーストを塗布し乾燥させることで形成することができる。
さらに、本体部12aの縁部に沿って形成される第1の溝90Aに入り込むように、絶縁材33の前駆体を形成する。絶縁材33は、例えばガラスフリットなどの絶縁材を含むペーストを塗布し乾燥させることによって形成することができる。
またバックシート80を固定するために、絶縁材33と同様にして、絶縁材33を囲むように且つ透明導電層12D、透明導電層12E、透明導電層12Fを通るように環状の連結部14の前駆体を形成する。
さらに透明導電層12A〜12Dの各々の本体部12aの上に、酸化物半導体層13の前駆体を形成する。
酸化物半導体層13の前駆体は、酸化物半導体層13を形成するための酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、乾燥することによって得られる。酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化チタンなどからなる酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコール、エチルセルロースなどの樹脂及び、テルピネオールなどの溶媒を含む。
酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又はバーコート法などを用いることができる。
最後に、接続端子16の前駆体、絶縁材33の前駆体、連結部14の前駆体、酸化物半導体層13の前駆体を一括して焼成し、接続端子16、絶縁材33、連結部14、および酸化物半導体層13を形成する。
このとき、焼成温度は酸化物半導体粒子や絶縁材33の種類により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子や絶縁材33の種類により異なるが、通常は1〜5時間である。
こうして、図9に示すように、絶縁材33、バックシート80を固定するための連結部14及び酸化物半導体層13が形成された導電性基板15が得られる。
次に、酸化物半導体層13に色素を担持させる。このためには、酸化物半導体層13を、色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、色素を酸化物半導体層13に吸着させればよい。但し、色素を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって色素を酸化物半導体層13に吸着させても、色素を酸化物半導体層13に担持させることが可能である。
次に、酸化物半導体層13の上に電解質40を配置する。
次に、図10に示すように、第1一体化封止部31を形成するための第1一体化封止部形成体131を準備する。第1一体化封止部形成体131は、第1一体化封止部31を構成する材料からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに光電変換セル50の数に応じた四角形状の開口131aを形成することによって得ることができる。第1一体化封止部形成体131は、複数の第1封止部形成体131Aを一体化させてなる構造を有する。
そして、この第1一体化封止部形成体131を、導電性基板15の上に接着させる。このとき、第1一体化封止部形成体131は、絶縁材33と重なるように接着する。第1一体化封止部形成体131の導電性基板15への接着は、第1一体化封止部形成体131を加熱溶融させることによって行うことができる。また第1一体化封止部形成体131は、透明導電層12の本体部12aが第1一体化封止部形成体131Aの内側に配置されるように導電性基板15に接着する。
一方、光電変換セル50の数と同数の対向基板20を用意する。
対向基板20は、金属基板21上に、対向基板20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22を形成することにより得ることができる。
次に、上述した第1一体化封止部形成体131をもう1つ用意する。そして、複数の対向基板20の各々を、第1一体化封止部形成体131の各開口131aを塞ぐように貼り合わせる。
次に、対向基板20に接着した第1一体化封止部形成体131と、導電性基板15に接着した第1一体化封止部形成体131とを重ね合わせ、第1一体化封止部形成体131を加圧しながら加熱溶融させる。こうして導電性基板15と対向基板20との間に第1一体化封止部31が形成される。第1一体化封止部31の形成は、大気圧下で行っても減圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。
次に、第2一体化封止部32を準備する(図7参照)。第2一体化封止部32は、複数の第1封止部32Aを一体化させてなる構造を有する。第2一体化封止部32は、1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに光電変換セル50の数に応じた四角形状の開口32cを形成することによって得ることができる。第2一体化封止部32は、第1一体化封止部31と共に対向基板20の縁部20aを挟むように対向基板20に貼り合わせる。第2一体化封止部32の対向基板20への接着は、第2一体化封止部32を加熱溶融させることによって行うことができる。
封止用樹脂フィルムとしては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を含む変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。第2一体化封止部32の形成のための封止用樹脂フィルムの構成材料は、第1一体化封止部31の形成のための封止用樹脂フィルムの構成材料よりも高い融点を有することが好ましい。この場合、第2封止部32Aは、第1封止部31Aよりも硬くなるため、隣り合う光電変換セル50の対向基板20同士の接触を効果的に防止することができる。また第1封止部31Aは第2封止部32Aよりも軟らかくなるため、封止部30Aに加わる応力を効果的に緩和することができる。
次に、第2封止部32の仕切部32bにバイパスダイオード70A,70B,70Cを固定する。また光電変換セル50Dの封止部30A上にもバイパスダイオード70Dを固定する。
そして、バイパスダイオード70A〜70Dを通るように導電材60Qを光電変換セル50B〜50Cの対向基板20の金属基板21に固定する。さらにバイパスダイオード70A,70B間、バイパスダイオード70B,70C間、バイパスダイオード70C,70D間の各導電材60Qと、透明導電層12A上の導電材接続部16A、透明導電層12B上の導電材接続部16A、透明導電層12C上の導電材接続部16Aとをそれぞれ接続するように導電材60Pを形成する。また、透明導電層12E上の導電材接続部16Aとバイパスダイオード70Aとを接続するように光電変換セル50Aの対向基板20の金属基板21に導電材60Pを固定する。さらに、透明導電層12Dとバイパスダイオード70Aとを導電材60Pによって接続する。
このとき、導電材60Pは、導電材60Pを構成する金属材料を含むペーストを用意し、このペーストを、対向基板20から、隣りの光電変換セル50の接続端子16の導電材接続部16Aにわたって塗布し、硬化させる。導電材60Qは、導電材60Qを構成する金属材料を含むペーストを用意し、このペーストを、各対向基板20上に隣り合うバイパスダイオードを結ぶように塗布し、硬化させる。このとき、上記ペーストとしては、色素への悪影響を避ける観点から、90℃以下の温度で硬化させることが可能な低温硬化型のペーストを用いることが好ましい。
最後に、バックシート80を用意し、このバックシート80の周縁部80aを連結部14に接着させる。このとき、バックシート80の接着部80Bと光電変換セル50の封止部30Aとが離間するようにバックシート80を配置する。
以上のようにして光電変換素子100が得られる。
なお、上述した説明では、接続端子16、絶縁材33、連結部14、および酸化物半導体層13を形成するために、接続端子16の前駆体、絶縁材33の前駆体、連結部14の前駆体、酸化物半導体層13の前駆体を一括して焼成する方法を用いているが、接続端子16、絶縁材33、連結部14、および酸化物半導体層13はそれぞれ別々に前駆体を焼成して形成してもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、隣り合う透明導電層12同士間の溝90における導電性膜92において、亀裂91が、溝90の縁部、すなわち透明導電層12に接触しているが、亀裂91は、必ずしも溝90の縁部に接触していなくてもよい。
また上記実施形態では、隣り合う透明導電層12同士間の溝90における導電性膜92において、他の亀裂91と交差する亀裂91a,91bが存在しているが、他の亀裂91と交差する亀裂91a,91bは存在していなくてもよい。すなわち、亀裂91は、他の亀裂91と交差しない亀裂91c,91dのみで構成されていてもよい。
また上記実施形態では、導電性基板15が絶縁材33を有しているが、絶縁材33を有していなくてもよい。この場合、封止部30Aおよび第1一体化封止部31Aは、透明基板11及び透明導電層12に直接接合されることになる。
また上記実施形態では、溝90が第2の溝90Bを有しているが、第2の溝90Bは必ずしも形成されていなくてもよい。
また上記実施形態では、導電材接続部16Aおよび導電材非接続部16Bはそれぞれ封止部30Aに沿って設けられているが、これらは、封止部30Aから遠ざかる方向に延びるように形成されていてもよい。但し、この場合、導電材接続部16Aが導電材非接続部16Bよりも封止部30Aに近い位置に配置されていることが好ましい。この場合、導電材60Pをより短くすることができる。なお、接続端子16は必ずしも透明導電層12上に設けられていなくてもよい。
また上記実施形態では、第2封止部32Aが第1封止部31Aに接着されているが、第2封止部32Aは第1封止部31Aに接着されていなくてもよい。
さらに上記実施形態では、封止部30Aが第1封止部31Aと第2封止部32Aとで構成されているが、第2封止部32Aは省略されてもよい。
また上記実施形態では、バックシート80と透明導電層12とが、連結部14を介して接着されているが、バックシート80と透明導電層12とは、必ずしも連結部14を介して接着されている必要はない。
さらにまた上記実施形態では、連結部14と絶縁材33とが離間しているが、連結部14と絶縁材33とは一体化されていてもよい。
また上記実施形態では、光電変換素子100がバックシート80を有しているが、光電変換素子100は必ずしもバックシート80を有していなくてもよい。
さらに上記実施形態では、光電変換素子100がバイパスダイオードを有しているが、光電変換素子100は必ずしもバイパスダイオードを有していなくてもよい。
また上記実施形態では、導電層として透明導電層12が用いられているが、対向基板20が透明である場合には、導電層は必ずしも透明でなくてもよい。この場合、導電層を支持する基板も必ずしも透明である必要はない。
さらに上記実施形態では、酸化物半導体層13が透明導電層12上に設けられているが、光電変換素子100がバックシート80を有しておらず、対向基板20が透明であり且つ導電性を有する場合には、酸化物半導体層13は対向基板20側に設けられてもよい。
さらに上記実施形態では、光電変換素子100が複数の光電変換セル50を有しているが、1つの光電変換セル50の透明導電層12に対し溝90を介して透明導電層12が配置されているならば、1つの光電変換セル50のみを有していてもよい。
また上記実施形態では、対向基板20が対極で構成されているが、図11に示す光電変換素子200のように、対向基板20として、対極に代えて、絶縁性基板201を用いてもよい。この場合、絶縁性基板201と封止部31と導電性基板15との間の空間には構造体202が配置される。構造体202は、導電性基板15のうち絶縁性基板201側の面上に設けられている。構造体202は、導電性基板15側から順に、酸化物半導体層13、多孔質絶縁層203及び対極220で構成される。また上記空間には電解質240が配置されている。電解質240は、酸化物半導体層13及び多孔質絶縁層203の内部にまで含浸されている。電解質240としては、電解質40と同様のものを用いることができる。ここで、絶縁性基板201としては、例えばガラス基板又は樹脂フィルムなどを用いることができる。また対極220としては、対向基板20と同様のものを用いることができる。あるいは、対極220は、例えばカーボン等を含む多孔質の単一の層で構成されてもよい。多孔質絶縁層203は、主として、酸化物半導体層13と対極220との物理的接触を防ぎ、電解質240を内部に含浸させるためのものである。このような多孔質絶縁層203としては、例えば酸化物の焼成体を用いることができる。なお、図11に示す光電変換素子200においては、封止部31と導電性基板15と絶縁性基板201との間の空間に構造体202が1つのみ設けられているが、構造体202は複数設けられていてもよい。また、多孔質絶縁層203は、酸化物半導体層13と対極220との間に設けられているが、酸化物半導体層13と対極220との間に設けず、多孔質酸化物半導体層13を囲むように、導電性基板15と対極220の間に設けてもよい。この構成でも、酸化物半導体層13と対極220との物理的接触を防ぐことができる。
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まずガラスからなる5cm×10cm×1mmの透明基板の上に、厚さ0.1μmのFTOからなる透明導電膜を形成してなる積層体を準備した。
次に、ファイバレーザ(製品名「50Wパルス発振ファイバレーザ」、株式会社フジクラ製)によって透明導電膜の中央を横切る1本の線状部位にレーザを照射して溝を形成し、2つの透明導電層を形成した。このとき、溝の幅は84μmとした。
溝を形成した後、溝に対し、表1に示す圧力の圧縮空気を10秒間吹き付けることによって溝の底部を急冷処理した。
そして、2つの透明導電層間の抵抗値をテスターにて測定した。結果を表1に示す。但し、表1において、実施例1の抵抗値は、比較例1における2つの透明導電層間の抵抗値を1としたときの相対値とした。また溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域をSEMにて観察し、各領域において、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたりに存在する長さ5μm以上の亀裂の数を数え、10箇所の領域における亀裂の数の平均値を求めた。結果を表1に示す。また透明導電層同士間の溝には交差する亀裂が存在していた。さらに、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域をTEMにて観察した。その結果、10箇所のすべての領域において透明基板の上に導電性膜(導電性残渣)が設けられており、この導電性膜に亀裂が存在していることが分かった。さらに、各領域において導電性膜の最大厚さを求め、その平均値を求めた。結果を表1に示す。さらに、10箇所のすべての領域において導電性膜及び透明基板の断面をTEMで観察したところ、導電性膜に存在している亀裂はすべて、透明基板と導電性膜との界面に達していた。
次に、2つの透明導電層の各々の上に、酸化物半導体層13の前駆体を形成した。酸化物半導体層13の前駆体は、透明導電層の表面における1cm×1cmの領域に酸化チタンナノペーストを印刷した後、焼成することにより厚さ10μmの酸化チタン多孔質膜からなる酸化物半導体層を得た。
こうして得られた積層体をZ907色素溶液中に浸漬することにより、酸化物半導体層にZ907色素を吸着させた。このとき、色素溶液中の溶媒としては、t−ブタノールとアセトニトリルとの混合溶媒を用いた。そして、2つの透明導電層の各々の上に形成した酸化物半導体層が包囲されるように、無水マレイン酸変性ポリエチレン(商品名:バイネル、デュポン社製)からなる厚さ50μmの環状の封止部を配置した。
次に、酸化物半導体層上に電解質を塗布した。
一方、白金をガラス基板上にスパッタしてなる導電膜付きガラスであって5cm×5cm×1mmの導電膜付きガラスを対極として用意した。
そして、この対極を、酸化物半導体層に対向するように配置し、封止部を加熱して溶融させることにより透明導電層と対極とを接続させた。こうして2つの色素増感太陽電池セルからなる光電変換素子を得た。
(実施例2〜8)
透明導電膜に溝を形成した後、急冷する時の圧縮空気の圧力を表1に示す値とすることにより、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたりに存在する長さ5μm以上の亀裂の数を表1に示す値とし、溝の幅及び導電性膜の最大厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。なお、実施例2〜8の光電変換素子では、透明導電層同士間の溝には交差する亀裂が存在していることが分かった。また、実施例2〜8の光電変換素子では、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域をTEMにて観察した結果、10箇所のすべての領域において透明基板の上に導電性膜(導電性残渣)が設けられており、この導電性膜に亀裂が存在していることが分かった。また、導電性膜には交差する亀裂が存在していることも分かった。さらに、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所のすべての領域において導電性膜及び透明基板の断面をTEMで観察したところ、導電性膜に存在している亀裂はすべて、透明基板と導電性膜との界面に達していることも分かった。さらに、実施例2〜8の光電変換素子を製造する際に、2つの透明導電層間の抵抗値を実施例1と同様にして測定し、比較例1における2つの透明導電層間の抵抗値を1としたときの相対値を算出した。結果を表1に示す。
(比較例1)
透明導電膜に溝を形成した後、急冷する時の圧縮空気を吹きかけないことにより、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたりに存在する長さ5μm以上の亀裂の数を表1に示す値とし、溝の幅及び導電性膜の最大厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。なお、比較例1の光電変換素子では、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域をTEMにて観察した結果、10箇所のすべての領域において透明基板の上に導電性膜(導電性残渣)が設けられており、この導電性膜に亀裂が存在していることが分かった。また、導電性膜には交差する亀裂が存在していないことも分かった。さらに、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所のすべての領域において導電性膜及び透明基板の断面をTEMで観察したところ、導電性膜に存在している亀裂はすべて、透明基板と導電性膜との界面に達していることも分かった。さらに、比較例1の光電変換素子を製造する際に、2つの透明導電層間の抵抗値を実施例1と同様にして測定し、比較例1における2つの透明導電層間の抵抗値を1としたときの相対値を算出した。結果を表1に示す。
(比較例2及び3)
透明導電膜に溝を形成した後、急冷する時の圧縮空気の圧力を表1に示す値とすることにより、溝の長手方向に沿った長さ100μmあたりに存在する長さ5μm以上の亀裂の数を表1に示す値とし、溝の幅及び導電性膜の最大厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。なお、比較例2及び3の光電変換素子では、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所の領域をTEMにて観察した結果、10箇所のすべての領域において透明基板の上に導電性膜(導電性残渣)が設けられており、この導電性膜に亀裂が存在していることが分かった。また、導電性膜には交差する亀裂が存在していないことも分かった。さらに、溝の長手方向に沿った長さ100μmの10箇所のすべての領域において導電性膜及び透明基板の断面をTEMで観察したところ、導電性膜に存在している亀裂はすべて、透明基板と導電性膜との界面に達していることも分かった。さらに、比較例2及び3の光電変換素子を製造する際に、2つの透明導電層間の抵抗値を実施例1と同様にして測定し、比較例1における2つの透明導電層間の抵抗値を1としたときの相対値を算出した。結果を表1に示す。
こうして得られた実施例1〜8及び比較例1〜3の2つの色素増感太陽電池セルを直列接続し、白色LEDを光源として用い、1000ルクスの照度下でIV測定を行い、光電変換効率ηを求めた。結果を表1に示す。
Figure 2017022817
表1に示すように、実施例1〜8の光電変換素子では、比較例1〜3の光電変換素子に比べ、2つの透明導電層同士間の抵抗値が顕著に大きくなっており、光電変換効率もより大きくなっていることが分かった。
以上の結果から、本発明の光電変換素子によれば、光電変換特性を十分に向上させることができることが確認された。
11…透明基板(基板)
12…透明導電層(導電層)
13…酸化物半導体層
15…導電性基板
20…対向基板
50、50A〜50D…光電変換セル
90…溝
91…亀裂
92…導電性膜
100,200…光電変換素子
B…亀裂の底部
W…溝の幅
すなわち、本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、互いに溝を介して配置された複数の導電層とを有する光電変換素子であって、少なくとも1つの光電変換セルを有し、前記光電変換セルが、前記複数の導電層のうちの1つの導電層と、前記導電層に対向する対向基板と、前記導電層及び前記対向基板の間に設けられる酸化物半導体層とを有し、前記複数の導電層同士間の前記溝の長手方向に沿って、前記基板上に導電性膜が設けられ、前記導電性膜において、長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在しており、前記導電性膜の最大厚さが150nm以下であり、前記溝の幅が200nm以下であり、前記亀裂の底部が前記基板と前記導電性膜との界面に達している、光電変換素子である。
すなわち、本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、互いに溝を介して配置された複数の導電層とを有する光電変換素子であって、少なくとも1つの光電変換セルを有し、前記光電変換セルが、前記複数の導電層のうちの1つの導電層と、前記導電層に対向する対向基板と、前記導電層及び前記対向基板の間に設けられる酸化物半導体層とを有し、前記複数の導電層同士間の前記溝の長手方向に沿って、前記基板上に導電性膜が設けられ、前記導電性膜において、長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在しており、前記導電性膜の最大厚さが150nm以下であり、前記溝の幅が200μm以下であり、前記亀裂の底部が前記基板と前記導電性膜との界面に達している、光電変換素子である。
光電変換素子100においては、亀裂91の底部Bが界面Sに達している場合に、導電性膜92の最大厚さが150nm以下であり、溝90の幅Wが200μm以下であることが特に好ましい。

Claims (10)

  1. 基板と、前記基板上に設けられ、互いに溝を介して配置された複数の導電層とを有する光電変換素子であって、
    少なくとも1つの光電変換セルを有し、
    前記光電変換セルが、
    前記複数の導電層のうちの1つの導電層と、
    前記導電層に対向する対向基板と、
    前記導電層及び前記対向基板の間に設けられる酸化物半導体層とを有し、
    前記複数の導電層同士間の前記溝の長手方向に沿って前記基板上に導電性膜が設けられ、前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり15個以上の割合で存在している、光電変換素子。
  2. 前記導電性膜が前記導電層と同一の材料で構成されている、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり200個以下の割合で存在している、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり40個以下の割合で存在している、請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 前記導電性膜において長さ5μm以上の亀裂が、前記溝の長手方向に沿った長さ100μmあたり34個以上の割合で存在している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  6. 前記導電性膜において、互いに交差する亀裂が存在している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  7. 前記複数の導電層同士間の前記溝が絶縁材料で覆われている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  8. 前記導電性膜の最大厚さが150nm以下であり、
    前記溝の幅が200nm以下であり、
    前記亀裂の底部が前記基板と前記導電性膜との界面に達している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  9. 前記亀裂の底部が、前記基板において前記基板と前記導電性膜との界面よりも前記導電性膜から離れた位置に達している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
  10. 前記亀裂が前記導電層に接触している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光電変換素子。
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