JPWO2017014152A1 - 無線通信デバイスおよびそれを備えた物品 - Google Patents

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Abstract

無線通信デバイス10は、物品Gの金属面Gaに取り付けられる誘電体部材12と、誘電体部材12に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子100と、物品Gの金属面Gaに対して所定の距離をあけて平行に対向するように誘電体部材12に設けられ、RFIC素子100の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極14と、物品Gの金属面Gaに対して所定の距離をあけて平行に対向するように誘電体部材12に設けられ、RFIC素子100の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極16と、を有する。第1および第2の放射電極14、16が、互いに交差する方向に延在し、第1の放射電極14が、第2の放射電極16に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い。

Description

本発明は、無線通信デバイス、特に物品の金属面に取り付けても無線通信可能な無線通信デバイスおよびそれを備えた物品に関する。
物品の金属面に取り付けても無線通信可能な無線通信デバイスとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載された無線通信デバイスは、アルミニウム箔など帯状の金属部材を、直方体形状の誘電体部材に巻回することによって構成されている。これにより、誘電体部材の上面と下面とに放射体が設けられる。誘電体部材の下面側の放射体が物品の金属面に対向するように、無線通信デバイスはその物品の金属面に取り付けられる。このような構造であるため、誘電体部材の上面側の放射体と下面側の放射体との間の浮遊容量は、物品の金属面に取り付けられても、物品に取り付けられる前と実質的に変わらない。したがって、物品の金属面に取り付けても、物品に取り付けられる前と同様に、無線通信デバイスは、無線通信を行うことができる。
特開2012−146000号公報
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信デバイスの場合、薄型化が困難である。薄型化のために誘電体部材の厚さを小さくすると、上面側の放射体と下面側の放射体との間の距離が小さくなり、これらの間の浮遊容量が大きくなる。浮遊容量が大きくなると、放射体を流れる多くの電流が浮遊容量での電界形成に消費され、その結果として放射体からの電波の放射効率が低下する。すなわち、無線通信デバイスの通信距離が短くなる。
そこで、本発明は、物品の金属面に取り付けられても無線通信可能な無線通信デバイスを、通信可能距離の低下を抑制しつつ薄型化することを課題とする。
上記技術的課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
物品の金属面に取り付けられた状態で使用可能な無線通信デバイスであって、
前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、
前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、
前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、
前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極と、を有し、
前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、
前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い、無線通信デバイスが提供される。
また、本発明の別の態様によれば、
少なくとも一部に金属面を備え、前記金属面に取り付けられた無線通信デバイスを有する物品であって、
前記無線通信デバイスが、
前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、
前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、
前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、
前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極と、を有し、
前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、
前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い、物品が提供される。
本発明によれば、物品の金属面に取り付けられても無線通信可能な無線通信デバイスを、通信距離の低下を抑制しつつ薄型化することができる。
物品に取り付けられた状態の本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイスの斜視図 図1に示す無線通信デバイスの上面図 図1に示す無線通信デバイスの断面図 物品に取り付けられた状態の図1に示す無線通信デバイスの等価回路を示す図 RFIC素子の斜視図 図5に示すRFIC素子の内部構造を示す斜視図 多層基板として構成されているRFIC素子における上側の絶縁層の上面図 RFIC素子における中央の絶縁層の上面図 RFIC素子における下側の絶縁層の上面図 図7Aに示すB1−B1線に沿った上側絶縁層の断面図 図7Bに示すB2−B2線に沿った中央絶縁層の断面図 図7Cに示すB3−B3線に沿った下側絶縁層の断面図 物品の一例である台車に取り付けられた状態の無線通信デバイスを示す図 物品の一例であるガスボンベに取り付けられた状態の無線通信デバイスを示す図 物品の一例であるリングに取り付けられた状態の無線通信デバイスを示す図 別の実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 さらに別の実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 異なる実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 さらに異なる実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 図15に示す無線通信デバイスの断面図 よりさらに異なる実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 図17に示す無線通信デバイスの断面図 よりさらに異なる実施の形態に係る無線通信デバイスの斜視図 図19に示す無線通信デバイスの断面図 よりさらに異なる無線通信デバイスの断面図 よりさらに異なる実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図 図22に示す無線通信デバイスの通信信号の周波数特性を示す図
本発明の一態様の無線通信デバイスは、物品の金属面に取り付けられた状態で使用可能な無線通信デバイスであって、前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極とを有し、前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い。
この態様によれば、物品の金属面に取り付けられても無線通信可能な無線通信デバイスを、通信距離の低下を抑制しつつ薄型化することができる。
無線通信デバイスは、前記第1および第2の放射電極に対して独立した状態で前記誘電体部材の取り付け面に設けられた導電層を有してもよい。これにより、物品のどのような表面形状の金属面に取り付けられても、無線通信デバイスは、一様な通信特性を示すことができる。
前記第1の放射電極の延在方向長さが、前記第2の放射電極の幅に等しくてもよい。これにより、無線通信デバイスをコンパクトなサイズにすることができる。
前記第2の放射電極が、延在方向と直交する断面の面積が他の部分に比べて小さい電流集中部を備えてもよい。これにより、十分な通信距離を実現しつつ、第2の放射電極を短くすることができ、その結果として、無線通信デバイスをコンパクトなサイズにすることができる。
前記第2の放射電極が、幅方向の一方の端に設けられて前記幅方向の中央に向かって延在する第1の切り欠き部を備えてもよい。これにより、無線通信デバイスの通信周波数の帯域を拡げることができる。
前記第1の切り欠き部に加えて、前記第2の放射電極は、前記幅方向の他方の端に設けられて前記幅方向の中央に向かって延在する第2の切り欠き部を備えてもよく、この場合には、前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部とが、前記第2の放射電極の延在方向に間隔をあけて並んでいる。これにより、無線通信デバイスの通信周波数の帯域を拡げることができる。
前記RFIC素子が、前記第1の端子電極に接続された第1のコイルと、前記第2の端子電極に接続された第2のコイルとを備え、前記第1の端子電極が、前記RFIC素子の第1の端子電極と接続するランド部を備え、且つ、前記第2の端子電極が、前記RFIC素子の第2の端子電極と接続するランド部を備える場合、前記RFIC素子の第1のコイルと前記誘電体部材の取り付け面との間に前記第1の放射電極のランド部が存在するように、且つ、前記RFIC素子の第2のコイルと前記誘電体部材の取り付け面との間に前記第2の放射電極のランド部が存在するように、前記RFIC素子、前記第1の放射電極、および前記第2の放射電極が接続されるのが好ましい。これにより、RFIC素子の第1および第2のコイルは、物品の金属面の電位の影響を受けにくく、第1および第2のコイルは安定して機能することができる。
前記誘電体部材が、前記第1および第2の放射電極の角部に対向する位置に凹部を備えてもよい。これにより、電流が集中する角部において、その角部と物品の金属面との間の浮遊容量が小さくなる、すなわちその浮遊容量での電界形成に消費される電流が少なくなる。その結果、第1および第2の放射電極の放射効率が上がり、無線通信デバイスの通信距離が長くなる。
前記所定の距離は、例えば、0.2mm以上1mm以下である。
本発明の別態様の物品は、少なくとも一部に金属面を備え、前記金属面に取り付けられた無線通信デバイスを有する物品であって、前記無線通信デバイスが、前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極と、を有し、前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い。
この態様によれば、物品の金属面に取り付けられても無線通信可能な無線通信デバイスを、通信距離の低下を抑制しつつ薄型化することができる。したがって、無線通信デバイスを有する物品も薄型化される。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、物品に取り付けられた状態の本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイスの斜視図である。図2は無線通信デバイスの上面図であり、図3は無線通信デバイスの断面図である。なお、図面には、発明の理解を助けるために、互いに直交し合うX軸、Y軸、およびZ軸を備えるX−Y−Z座標系を示している。なお、本明細書においては、Z軸方向を無線通信デバイスの厚さ方向とし、X軸方向を幅方向とし、Y軸方向を長さ方向とする。
図1に示す無線通信デバイス10は、UHF帯、例えば900MHzのキャリア周波数で無線通信を行うRFID(Radio Frequency Identification)タグであって、様々な物品Gに取り付けられて使用される。本実施の形態に係る無線通信デバイス10は、詳細は後述するが、物品Gの金属面Ga(例えば金属体)に取り付けられても無線通信可能に構成されている。
図1に示すように、無線通信デバイス10は、誘電体部材(誘電体基板)12と、誘電体基板12の主面12aに設けられた第1および第2の放射電極14、16とを有する。無線通信デバイス10はまた、誘電体基板12の主面12aに設けられたRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)素子100を有する。
無線通信デバイス10の誘電体基板12は、図1〜図3に示すように、主面12aとその主面12aに対して平行に対向する裏面(取り付け面)12bとを備える平面視で矩形状の薄板形状であって、一様な厚さを備える。誘電体基板12はまた、低誘電率(好ましくは比誘電率が10以下)の誘電材料から作製されている。誘電体基板12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、紙などの可撓性の誘電材料から作製される。また、誘電体基板12は、磁性体材料から作製されてもよい。
誘電体基板12の主面12a側には、図2に示すように、第1の放射電極14、第2の放射電極16、およびRFIC素子100が設けられている。一方、取り付け面12bは、図3に示すように電極等が設けられておらず、図1に示すように物品Gの金属面Gaに取り付けられる手段として機能する。なお、図示されてはいないが、誘電体基板12の取り付け面12bには、物品Gに無線通信デバイス10を貼り付けるための導電性のシール層が設けられている。このような誘電体基板12により、第1および第2の放射電極14、16が、誘電体基板12の厚さに相当する所定の距離をあけて、物品Gの金属面Gaに対して平行に対向することができる。すなわち、誘電体基板12は、第1および第2の放射電極14、16を物品Gの金属面Gaに対して距離をあけて設けるためのブラケットの役割をしている。
第1および第2の放射電極14,16は、例えば銅膜、アルミニウム膜などであって、可撓性且つ導電性の材料によって作製されている。本実施の形態の場合、第1および第2の放射電極14、16は、長手方向と短手方向とを備える矩形状である。
また、第1および第2の放射電極14、16は、無線通信デバイス10の長さ方向(Y軸方向)に対向している。具体的には、第2の放射電極16が、第1の放射電極14に対して独立した状態で、すなわち第1の放射電極14から形状的に距離をあけて離れた状態である。
第1の放射電極14は、図2に示すように、長さL1と幅W1とを備え(L1>W1)、無線通信デバイス10の幅方向(X軸方向)に、主面12aに沿って延在している。一方、第2の放射電極16は、長さL2と幅W2とを備え(L2>W2)、無線通信デバイス10の長さ方向(Y軸方向)に、主面12aに沿って延在している。すなわち、主面12aにおいて、第1および第2の放射電極14、16は、互いに交差する方向、例えば互いに90度異なる方向に延在している。
第1の放射電極14の幅W1は、第2の放射電極16の幅W2に比べて小さい。また、第1の放射電極14の長さL1(延在方向の長さ)は、第2の放射電極16の長さL2に比べて短い。したがって、第1の放射電極14の大きさ(上面視での大きさ)は、第2の放射電極16の大きさに比べて小さい。
なお、本実施の形態の場合、第1の放射電極14の長さL1は、第2の放射電極16の幅W2とほぼ等しい。これにより、無線通信デバイス10の幅方向(X軸方向)のサイズがコンパクト化される。
さらに、第1および第2の放射電極14、16は、詳細は後述するが、RFIC素子100と接続するためのランド部14a、16aを備える。ランド部14a、16aそれぞれは、第1および第2の放射電極14、16の間で互いに対向するように設けられている。
図4は、物品Gの金属面Gaに取り付けられた状態の無線通信デバイス10の等価回路を示している。
図4に示すように、第1の放射電極14と物品Gの金属面Gaの一部(第1の放射電極14と対向する部分)との間には浮遊容量C1が存在する。
また、第2の放射電極16と物品Gの金属面Gaの一部(第2の放射電極16と対向する部分)との間には、浮遊容量C2が存在する。この浮遊容量C2と、第2の放射電極16の寄生インダクタL5とにより、共振周波数が所定の周波数(例えば900MHz)の並列共振回路が形成されている。
次に、RFIC素子100について説明する。
図4に示すRFIC素子100は、例えば、900MHz帯、すなわちUHF帯の通信周波数に対応するRFIC素子である。また、RFIC素子100は、詳細は後述するが、可撓性を備える。さらに、RFIC素子100は、RFICチップ106と、RFICチップ106と第1および第2の放射電極14、16との間でインピーダンス整合をとるための整合回路108とを有する。
RFICチップ106はまた、第1および第2の入出力端子106a、106bを備える。第1の入出力端子106aは、整合回路108を介して第1の放射電極14に接続されている。第2の入出力端子106bは、整合回路108介して第2の放射電極16に接続されている。
RFICチップ106は、アンテナとして機能する第1および第2の放射電極14、16が外部から高周波信号を受信すると、その受信によって誘起された電流の供給を受けて起動する。また、起動したRFICチップ106は、高周波信号を生成し、その生成信号を第1および第2の放射電極14、16を介して電波として外部に出力する。
ここからは、RFIC素子100の具体的な構成について説明する。
図5は、RFIC素子100の斜視図である。本実施の形態の場合、RFIC素子100は、RFICチップ106と整合回路108とが設けられる素子基板として多層基板120を有する。多層基板120は、可撓性を備える複数の絶縁層を積層して構成されている。複数の絶縁層は、例えば、ポリイミドや液晶ポリマ等の可撓性を有する樹脂絶縁層である。
図6は、図5に示すRFIC素子の内部構造を示す斜視図である。なお、ここからは、第1および第2の端子電極102、104が設けられている側、すなわち無線通信デバイス10において誘電体基板12と対向する側をRFIC素子100の上側として説明を行う。
図7Aは、多層基板120の上側の絶縁層の上面図である。図7Bは、多層基板120の中央の絶縁層の上面図である。図7Cは、多層基板120の下側の絶縁層の上面図である。図8Aは、図7Aに示すB1−B1線に沿った絶縁層の断面図である。図8Bは、図7Bに示すB2−B2線に沿った絶縁層の断面図である。図8Cは、図7Cに示すB3−B3線に沿った絶縁層の断面図である。
多層基板120には、図6に示すように、RFICチップ106と、整合回路108として機能する給電回路122とが内蔵されている。また、多層基板120には、第1の端子電極102および第2の端子電極104が形成されている。第1の端子電極102は、第1の放射電極14のランド部14aに接続される。第2の端子電極104は、第2の放射電極16のランド部16aに接続される。
RFICチップ106は、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ106には、図7Cに示すように、第1の入出力端子106aおよび第2の入出力端子106bが形成されている。
給電回路122は、図6に示すように、コイル導体124および層間接続導体126、128によって構成されている。コイル導体124は、図7Bまたは図7Cに示すコイルパターン124a〜124cによって構成されている。コイルパターン124aは、第1のコイル部CIL1を構成する。コイルパターン124bは、第2のコイル部CIL2を構成する。コイルパターン124cは、第3のコイル部CIL3および第4のコイル部CIL4を構成する。
第1のコイル部CIL1、第3のコイル部CIL3、および層間接続導体126は、長さ方向(Y軸方向)の一方側の位置において、厚さ方向(Z軸方向)に並ぶように配置されている。第2のコイル部CIL2、第4のコイル部CIL4、および層間接続導体128は、長さ方向(Y軸方向)の他方側の位置において、厚さ方向(Z軸方向)に並ぶように配置されている。
RFICチップ106は、多層基板120を高さ方向(Z軸方向)に見たとき、第1コイル部CIL1と第2コイル部CIL2との間に配置されている。また、RFICチップ106は、第3のコイル部CIL3と第4のコイル部CIL4との間にも配置されている。
第1の端子電極102は長さ方向(Y軸方向)の一方側の位置に配置され、第2の端子電極104は他方側の位置に配置されている。第1および第2の端子電極102、104は、可撓性を備える銅箔から作製され、同一サイズの短冊状に形成されている。
多層基板120は、図7A〜図7Cに示すように、積層された3つのシート状の絶縁層120〜120cによって構成されている。上側の絶縁層120aと下側の絶縁層120cとの間に絶縁層120bが位置する。
絶縁層120aには、第1の端子電極102および第2の端子電極104が形成されている。
絶縁層120bの中央には、矩形断面を備える貫通孔HL1が形成されている。貫通孔HL1は、RFICチップ106を収容するサイズに形成されている。また、絶縁層120bの貫通孔HL1の周辺には、帯状のコイルパターン124cが形成されている。コイルパターン124cは、可撓性を有する銅箔を素材として構成されている。
コイルパターン124cの一端部は、厚さ方向視(Z軸方向視)において第1の端子電極102と重なり、厚さ方向(Z軸方向)に延在する層間接続導体130によって第1の端子電極102と接続されている。また、コイルパターン124cの他端部は、厚さ方向視において第2の端子電極104と重なり、厚さ方向に延在する層間接続導体132によって第2の端子電極104と接続されている。層間接続導体130、132は、Snを主成分とする金属バルクで構成されている。
コイルパターン124cは、一端部の周りを反時計回りの方向に2回転し、その後、屈曲して長さ方向(Y軸方向)に延在する。その長さ方向(Y軸方向)に延在したコイルパターン124cは、幅方向(X軸方向)に屈曲し、他端部の周りを反時計回りの方向に2回転してから他端部に達する。
絶縁層120cには、帯状のコイルパターン124a、124bが形成されている。コイルパターン124a、124bは、可撓性を有する銅箔を素材として構成されている。
コイルパターン124aの外側の端部(第1のコイル端T1)は、矩形状貫通孔HL1の1つのコーナー部と重なる位置に配置されている。また、コイルパターン124bの外側の端部(第2のコイル端T2)は、矩形状貫通孔HL1の4つのコーナー部のうち、第1のコイル端T1が配置されているコーナー部に対して長さ方向(Y軸方向)に並ぶコーナー部と重なる位置に配置されている。
コイルパターン124aの中心側の端部を起点としたとき、コイルパターン124aは、中心側端部の周りを時計回りの方向に2.5回転し、その後に幅方向(X軸方向)に屈曲して他端部(第1のコイル端T1)に達する。同様に、コイルパターン124bの中心側の端部を起点としたとき、コイルパターン124bは、中心側端部の周りを反時計回りの方向に2.5回転し、その後に幅方向(X軸方向)に屈曲して他端部(第2のコイル端T2)に達する。また、コイルパターン124aの中心側端部は、厚さ方向(Z軸方向)に延在する延びる層間接続導体126によってコイルパターン124cの一端部と接続されている。コイルパターン124bの中心側端部は、厚さ方向に延びる層間接続導体128によってコイルパターン124cの他端部と接続されている。層間接続導体126、128は、Snを主成分とする金属バルクで構成されている。
絶縁層120cには、ダミー導体134、136が形成されている。ダミー導体134、136は、可撓性を有する銅箔を素材として構成されている。絶縁層120b,120cを厚さ方向視(Z軸方向視)したとき、ダミー導体134、136は、矩形状貫通孔HL1の4つのコーナー部のうち、第1および第2のコイル端T1、T2が配置されているコーナー部と幅方向(X軸方向)に対向するコーナー部にそれぞれ重なるように配置されている。
RFICチップ106は、その4つのコーナー部が第1のコイル端T1、第2のコイル端T2、およびダミー導体134、136とそれぞれ対向するように、絶縁層120cに実装されている。第1の入出力端子106aが第1のコイル端T1に接続され、第2の入出力端子106bが第2のコイル端T2に接続されている。
なお、絶縁層120a〜120cの厚さは、10μm以上100μm以下である。このため、多層基板120に内蔵されたRFICチップ106および給電回路122は、外側から透けて見える。従って、RFICチップ106および給電回路122の接続状態(断線の有無)を容易に確認することができる。
図4において等価回路で示されるRFIC素子100において、インダクタL1は、第1コイル部CIL1に対応している。インダクタL2は、第2コイル部CIL2に対応している。インダクタL3は、第3コイル部CIL3に対応している。インダクタL4は、第4コイル部CIL4に対応している。給電回路122によるインピーダンス整合の特性は、インダクタL1〜L4の値によって規定される。
インダクタL1の一端部は、RFICチップ106の第1の入出力端子106aに接続されている。インダクタL2の一端部は、RFICチップ106の第2の入出力端子106bに接続されている。インダクタL1の他端部は、インダクタL3の一端部に接続されている。インダクタL2の他端部は、インダクタL4の一端部に接続されている。インダクタL3の他端部は、インダクタL4の他端部に接続されている。第1の端子電極102は、インダクタL1、L3の接続点に接続されている。第2の端子電極104は、インダクタL2、L4の接続点に接続されている。
また、図4に示す等価回路から分かるように、第1のコイル部CIL1、第2のコイル部CIL2、第3のコイル部CIL3、および第4のコイル部CIL4は、磁界が同相となるように巻回され且つ互いに直列接続されている。したがって、これらのコイル部CIL1〜CIL4から発生する磁界は、同一方向に向く。
また、図7Bおよび図7Cから分かるように、第1のコイル部CIL1および第3のコイル部CIL3は、ほぼ同一のループ形状で且つ同一の第1の巻回軸を有している。同様に、第2のコイル部CIL2および第4のコイル部CIL4は、ほぼ同一のループ形状で且つ同一の第2の巻回軸を有している。第1の巻回軸および第2の巻回軸は、RFICチップ106を挟む位置に配置されている。
すなわち、第1のコイル部CIL1および第3のコイル部CIL3は、磁気的且つ容量的に結合している。同様に、第2のコイル部CIL2および第4のコイル部CIL4は、磁気的且つ容量的に結合している。
RFICチップ106は、半導体基板で構成されている。そのため、第1のコイル部CIL1、第2のコイル部CIL2、第3のコイル部CIL3、および第4のコイル部CIL4に対して、RFICチップ106は、グランド又はシールドとして機能する。その結果、第1のコイル部CIL1と第2のコイル部CIL2は、また、第3のコイル部CIL3と第4のコイル部CIL4は、磁気的にも容量的にも互いに結合し難くなる。これによって、通信信号の通過帯域が狭くなる懸念を軽減することができる。
また、図6示すように、RFIC素子100の第1のコイル部CIL1、第3のコイル部CIL3が、第1の放射電極14のランド部14aに重なり、第2のコイル部CIL2、第4のコイル部CIL4が、第2の放射電極16のランド部16aに重なっている。すなわち、RFIC素子100内のコイル部CIL1、CIL2、CIL3、CIL4と誘電体基板12の取り付け面12bとの間に、第1および第2の放射電極14、16のランド部14a、16aが存在する。ランド部14a、16aはそれぞれ開放端電極であり、RF素子100のコイル部(CIL1、CIL2、CIL3、CIL4)は、この2つの電極間にまたがる形で一つのコイルを形成しているので、コイルの開口部を完全にふさぐ一つの電極が形成されない。これにより、RFIC素子100内のコイル部CIL1、CIL2、CIL3、CIL4は、誘電体基板12の取り付け面12bに取り付けられる物品Gの金属面Gaの電位の影響を受けにくく、それにより、これらのコイル部CIL1、CIL2、CIL3、CIL4、すなわち整合回路108は、安定して機能することができる。
以上、上述した構成によれば、無線通信デバイス10は、物品Gの金属面Gaに取り付けられても通信可能であって、また可撓性を備え、且つ、高い通信能力を備える、すなわち高い放射効率で電波を放射することができる。このことについて具体的に説明する。
上述したようにおよび図4に示すように、RFIC素子100の整合回路108が、第1および第2の放射電極14、16とRFIC素子100のRFICチップ106との間でインピーダンス整合をとる。また、第2の放射電極16の寄生インダクタL5と、第2の放射電極16とそれに対向する物品Gの金属面Gaとの間の浮遊容量C2とにより、共振回路が形成されている。したがって、無線通信デバイス10は、例えばUHF帯の周波数(例えば900MHz)で良好な通信特性を示す。
また、無線通信デバイス10は、図1に示すように、その誘電体基板12を介して物品Gの金属面Gaに取り付けられる。誘電体基板12の厚みが一様であるために、誘電体基板12の取り付け面12bに取り付けられる物品Gの金属面Gaと第1の放射電極14との間の距離、すなわちこれらの間の浮遊容量C1は、第1の放射電極14上の位置によらず一様である。また、第2の放射電極16と物品Gの金属面Gaとの間の距離、すなわちこれらの間の浮遊容量C2も、第2の放射電極16上の位置によらず一様である。したがって、物品Gの種類によらず、図4に示すように、第2の放射電極14の寄生インダクタL5と浮遊容量C2とによって構成される共振回路の共振周波数が安定する。
さらに、本実施の形態の場合、無線通信デバイス10は可撓性を備える。すなわち、無線通信デバイス10の構成要素である、誘電体基板12、第1の放射電極14、第2の放射電極16、およびRFIC素子100が、可撓性の材料から作製されている。そのため、無線通信デバイス10は、平面のみならず曲面に取り付けられても密着することができる。
したがって、無線通信デバイスは、様々な物品に取り付けられても一様な通信特性を示す。例えば、図9に示すように台車G1の平面状の金属面G1aに平坦な状態で取り付けられても、図10に示すガスボンベG2の曲面状の金属面G2aに湾曲した状態で取り付けられても、さらに図11に示す可撓性の金属薄板から形成されたリング(バンド)G3の金属面G3aに取り付けられて撓んでも、物品の金属面と第1および第2の放射電極14、16との間の距離が一様で、それにより一様な通信特性を示す。
さらにまた、本実施の形態の場合、無線通信デバイス10は、薄型化が可能である。すなわち、通信距離の低下を抑制しつつ薄型化が可能である。
無線通信デバイス10を薄型化すると、すなわちその誘電体基板12を薄型化すると(物品Gの金属面Gaと第1および第2の放射電極14、16との間の距離が小さくなると)、物品Gの金属面Gaと第1および第2の放射電極14、16との間の浮遊容量C1、C2が大きくなる。浮遊容量C1、C2が大きくなると、第1および第2の放射電極14,16を流れる電流の多くが浮遊容量C1、C2での電界形成に消費され、それにより、これらの放射電極14、16からの電波の放射効率が低下する。放射効率が低下すると、低い電波強度で電波が放出されるため、無線通信デバイスの通信距離は短くなる。
しかしながら、第1および第2の放射電極14、16の形状により、誘電体基板12の薄型化を原因とする無線通信デバイスの通信距離の低下を抑制することが可能であることを発明者は見出した。
まず、図2に示すように、第1の放射電極14と第2の放射電極16は、その形状が異なる。具体的には、第1の放射電極14は無線通信デバイス10の幅方向(X軸方向)に延在し、第2の放射電極16は長さ方向(Y軸方向)に延在している。また、第1の放射電極14の幅W1および長さL1は、第2の放射電極16の幅W2および長さL2に比べて小さい。
このような第1の放射電極14と第2の放射電極16とによれば、第1の放射電極14に流れる電流の方向と第2の放射電極16に流れる電流の方向は、実質的に交差する、すなわち実質的に90度異なる。具体的には、第1の放射電極14では主に無線通信デバイス10の幅方向(X軸方向)に電流が流れ、第2の放射電極16では主に長さ方向(Y軸方向)に電流が流れる。
このように、第1の放射電極14に流れる電流の方向と第2の放射電極16に流れる電流の方向とが実質的に90度異なる場合、その無線通信デバイス10は、その誘電体基板12が薄くても(例えば0.2mm以上1mm以下であっても)、長い通信距離(例えば約2.0m以上の通信距離を備えることを、後述のテストによって発明者は確認している。
表1は、発明者がテストした複数の無線通信デバイスのサンプルA〜Gの形状的特徴と、そのテスト結果である通信距離dとを示している。
Figure 2017014152
サンプルA〜Dは、図12に示すような相対的に細長い無線通信デバイス210である。サンプルE〜Gは、図2に示すような相対的に幅広な無線通信デバイス10である。これらのサンプルA〜D、E〜Gにおける第2の放射電極の長さL2は、電波の約半波長である。サンプルDについては後述する。
これらの無線通信モジュールのサンプルA〜Gの電極は、アルミニウム膜から作製されている。また、誘電体基板は、2.8の誘電率を備える多孔性のEVA樹脂から作製されている。さらに、通信距離の測定は、サンプルA〜Gそれぞれを、物品の金属面を想定した15cm×15cmのアルミニウム箔の中央に配置した状態で実施した。
これらのサンプルを比較すると、特にサンプルA、B、およびEを比較すると、第1の放射電極の長さL1が増加すると通信距離dが長くなることが分かる。
なお、第1の放射電極のL1の長さが増加すると、無線通信デバイスの幅(X軸方向のサイズ)が増加する。無線通信デバイスの幅の増加を抑えつつ、第1の放射電極のL1の長さを増加させる場合、図13に示す無線通信デバイス310のように、第1の放射電極314の両方の端部314bを曲げてもよい。図13に示す無線通信デバイス310の場合、無線通信デバイス310の幅方向(X軸方向)に延在する第1の放射電極314の両方の端部314bが、約90度、第2の放射電極316側に曲げられている。これにより、無線通信デバイス310は、第1の放射電極314が曲がることなく直線状に延在する場合に比べて、幅方向についてコンパクトなサイズを備える。
また、誘電体基板の厚さt、すなわち第1および第2の放射電極と物品の金属面との間の距離が1mm以下であっても、RFIDタグとしては長距離である約2mの通信距離が実現できることが分かる。
さらに、サンプルB、Dを比較すると、これらは、第2の放射電極の形状と、通信距離とが異なる。サンプルBの場合、第2の放射電極の長さL2が、サンプルDに比べて長く、且つ、約半波長である。そのため、サンプルBの通信距離dは、RFIDタグとしては十分すぎる5.4mである。
一方、サンプルDの場合、第2の放射電極の長さL2が半波長より短いが、それでも通信距離dは、RFIDタグとして十分な2mである。これは、図14に示すように、サンプルDの無線通信デバイス410が、第2の放射電極416にくびれ部416bを備えることによる。
具体的に説明すると、サンプルDを除くサンプルの場合、第2の放射電極の長さL2が約半波長の状態で、第2の放射電極の寄生インダクタと、第2の放射電極と物品の金属面との間の浮遊容量(すなわち誘電体基板の厚さ)とから所望の共振周波数(例えば900MHz)を得る共振回路を構成している。したがって、第2の放射電極の長さL2が半波長より短くなると、その寄生インダクタンスが減少し、共振回路の共振周波数が所望の共振周波数からずれる。その結果、無線通信デバイスの感度が低下し、通信距離が短くなる。
図14に示すように、くびれ部416bは、第2の放射電極416の幅方向(X軸方向)の両端それぞれに対向し合う切り欠き部を形成することによって構成されている。くびれ部416bは、すなわち電流が主に流れる方向である第2の放射電極416の延在方向(Y軸方向)と直交する断面の面積が他の部分に比べて小さい部分は、電流が集中する電流集中部として機能する。電流が集中すると、第2の放射電極の寄生インダクタンスが増加する。したがって、第2の放射電極の長さL2が短くなって減少した寄生インダクタンスを、くびれ部416b、すなわち電流集中部によって補うことができる。
サンプルDの場合、第2の放射電極416の長さL2が電波の半波長に比べて短いためにサンプルBに比べて通信距離は短い。しかし、サンプルDは、第2の放射電極416にくびれ部416bを設けることにより、約2mの通信距離dを確保している。
したがって、くびれ部の形状を適切に調節することにより、無線通信デバイスの長さ(第2の放射電極の長さL2)と通信距離dとを所望に調節することができる。例えば、通信距離は数mでよいが可能な限りコンパクトなサイズの無線通信デバイスが望まれる場合には、図14に示すサンプルDのように、第2の放射電極416にくびれ部を設ければよい。一方、サイズは問わないが通信距離は可能な限り長い無線通信デバイスが望まれる場合には、第2の放射電極の長さL2を電波の約半波長にすればよい。
このような本実施の形態によれば、物品の金属面に取り付けられても無線通信可能な無線通信デバイスを、通信距離の低下を抑制しつつ薄型化することができる。
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、上述の実施の形態の場合、図4に示すように、RFIC素子100は、RFICチップ106と、そのRFICチップ106と第1および第2の放射電極14、16との間でインピーダンス整合をとる整合回路108とを有する。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。RFICチップ106自体のインピーダンスによって該RFICチップ106と第1および第2の放射電極14、16との間でインピーダンス整合をとることができるのであれば、整合回路108を省略してもよい。この場合、RFICチップ106そのものがRFIC素子100を構成する。
また、上述の実施の形態の場合、図3に示すように、無線通信デバイス10の誘電体基板12の取り付け面12bには、主面12aとは異なり、電極などが設けられていない。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、図15および図16に示す無線通信デバイス510は、その誘電体基板512の取り付け面512bに導電層(例えば、銅膜、アルミニウム膜など)518を備える。この導電層518は、誘電体基板512の主面512aに設けられた第1および第2の放射電極514、516に対して直流的に接続されておらず、これらの放射電極514、516に対して独立した状態である。無線通信デバイス510は、この導電層518に設けられたシール層(図示せず)を介して、物品Gの金属面Gaに取り付けられる。
図16に示すように、誘電体基板512の取り付け面512bに導電層518を設ける理由について説明する。
無線通信デバイスが取り付けられる物品の金属面は、必ずしも滑らかな表面とは限らない。金属面が凹凸を備える場合がある。導電層を備えていない取り付け面が凹凸な金属面に取り付けられた場合、第2の放射電極と金属面との間の浮遊容量が、第2の放射電極上の位置によって異なる。すなわち、第2の放射電極に対する浮遊容量が一様でなくなる。同様に、第1の放射電極に対する浮遊容量も一様でなくなる。
無線通信デバイス510が取り付けられる物品の金属面がどのような表面形状であっても一様な通信特性を実現するために、図15および図16に示す無線通信デバイス510は、その誘電体基板512の取り付け面512bに導電層518を備える。
図15に示すように、導電層518は、第1の放射電極514全体と第2の放射電極516全体に対して誘電体基板512を挟んで対向する。それにより、第1の放射電極514と導電層518(対向する部分)との間に浮遊容量が形成され、第2の放射電極516と導電層518(対向する部分)との間に浮遊容量が形成される。
無線通信デバイス510がどのような物品に取り付けられても、第1および第2の放射電極514、516それぞれと導電層518との間の浮遊容量は変わらない。それにより、無線通信デバイスが取り付けられる物品の金属面がどのような表面形状であっても、無線通信デバイス510は、一様な通信特性を示すことができる。
なお、この無線通信デバイス510の改良の形態である無線通信デバイスが図17および図18に示されている。
図17および図18に示す無線通信デバイス610も、無線通信デバイス510と同様に、その誘電体基板612の取り付け面612bに導電層618を備える。しかしながら、図17に示すように、その導電層618は、誘電体基板612の主面612aに設けられた第2の放射電極616に対して対向するが、第1の放射電極614には対向していない。そのため、第2の放射電極616と導電層618との間にのみ浮遊容量が形成される。
一方、無線通信デバイス610の取り付け面612bに導電層618を介して取り付けられた物品の金属面と第1の放射電極614との間に浮遊容量が形成されるが、その容量値は小さい。その理由は、第1の放射電極614が、誘電体基板612と、空気層(導電層618の厚さによって生じる誘電体基板612と金属面との間の隙間)とを介して物品の金属面に対向するからである。
第1の放射電極614と物品の金属面との間に形成される浮遊容量が小さいために、第1の放射電極614を流れる電流の多くが電波の放射に使用される。したがって、無線通信デバイス610の通信距離が、図16に示す第1の放射電極514と導電層518とが対向する無線通信デバイス510に比べて長い。
補足すると、上述したようにまた図5に示すように、第2の放射電極とそれに対向する物品の金属面とによって共振回路が構成され、それにより無線通信デバイスの共振周波数が決定されている。したがって、第1の放射電極に対向する導電体の部分の面積がゼロであっても(第1の放射電極に対して厚さ方向に対向する位置に導電体がなくても)、無線通信デバイスの通信特性は実質的には変わらない。
さらに上述の実施の形態の場合、図1に示すように第1および第2の放射電極14、16は、基板状の誘電体部材、すなわち誘電体基板12に設けられている。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。
図19および図20に示す無線通信デバイス710の場合、第1および第2の放射電極714、716が設けられる誘電体部材712は、基板状ではなく、外部と連通する内部空間712dを備える構造体である。
具体的には、誘電体部材712は、第1および第2の放射電極714、716が設けられる主面712aと、物体の金属面が取り付けられる取り付け面712bとの間に、複数の内部空間712dを備える。誘電体部材712はまた、無線通信デバイス710を物品に取り付けるためのボルト(図示せず)の通し穴712cを、その長さ方向(Y軸方向)の両端に備える。
内部空間712dを備えることにより、第1および第2の放射電極714、716それぞれと、取り付け面712bに取り付けられた物品の金属面との間の浮遊容量が小さくなる(内部空間712dを備えない場合に比べて)。すなわち、内部空間712dの空気の比誘電率が約1であるために、浮遊容量が小さくなる。
このように内部空間712dを備えることにより、誘電体部材712を薄型化することが可能である(内部空間712dがない場合に比べて)。すなわち、薄型化することによって生じる第1および第2の放射電極714、718と物体の金属面との間の浮遊容量の増加分を、内部空間712dによって相殺することができる。
また、図19に示すように、電流が集中する(電流密度が高い)RFIC素子100側の第2の放射電極716の角部716cは、誘電体部材712に支持されていない。すなわち、誘電体部材712は、第2の放射電極716の角部716cに対向する位置に凹部712eを備える。
この凹部712eにより、第2の放射電極716の角部716cと取り付け面712bに取り付けられた物品の金属面との間の浮遊容量が小さくなる。その理由は、凹部712eにより、これらの間に比誘電率が約1の空気の層が設けられるからである。
凹部712eによって浮遊容量が小さくなると、電流が集中する第2の放射電極716の角部716cにおいて、この浮遊容量の電界形成に消費される電流が少なくなる(凹部712eがない場合に比べて)。その分、電波に放射される電流が増加し、放射効率が上がる。その結果、無線通信デバイス710の通信距離が長くなる。
なお、このような凹部712eは、電流が集中する第1の放射電極714の角部に設けることも可能である。
さらにまた、上述の実施の形態の場合、図1に示すように、第1および第2の放射電極14、16の誘電体基板12の主面12a外部表面に設けられている。しかしながら、第1および第2の放射電極14、16が設けられる位置は、誘電体基板の主面に限らない。
図21に示す無線通信デバイス810の誘電体部材812は、内部空間812aと、物品の金属面に取り付けられる取り付け面812bとを備える。第1および第2の放射電極814、816は、内部空間812aの天面812c(取り付け面812bから遠い内部表面)に取り付けられる。そのため、第1および第2の放射電極814、816は、内部空間812aの空気層と、誘電体部材812(内部空間812aと取り付け面812bとの間の部分)とを介して取り付け面812bに取り付けられた物品の金属面と対向する。空気層を介することにより、第1および第2の放射電極814、816と物品の金属面との間の浮遊容量を小さくすることができる。これにより、薄型化することによって生じる第1および第2の放射電極814,816と物体の金属面との間の浮遊容量の増加分を、内部空間812aによって相殺することができる。
なお、誘電体部材812の内部空間の床面(取り付け面812bに近い内部表面)に導電層を設けてもよい。これにより、取り付け面812bがどのような物品の金属面に取り付けられても、第1および第2の放射電極814、816と導電層との間の浮遊容量が一様であるために、無線通信デバイスは一様な通信特性を示すことができる。
また、図21に示す無線通信デバイス810の改良形態として、第1および第2の放射電極814、816と物品の金属面との間に、誘電体部材812の部分が存在しない形態も可能である。すなわち、誘電体部材812をキャップ状(有底筒状)に形成し、その開口縁が取り付け面812bとして機能する。この場合、第1および第2の放射電極と物品の金属面との間に空気層のみが存在し、それによりこれらの間の浮遊容量をさらに小さくすることができる。その結果、無線通信デバイスをさらに薄型化することができる。
さらにまた、上述の実施の形態の場合、例えば図1に示す無線通信デバイス10の場合、第1および第2の放射電極14、16とRFIC素子100は、誘電体部材12の主面12aに設けられているが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、第1および第2の放射電極とRFIC素子とが誘電体部材に内蔵されてもよい。
さらにまた、上述の実施の形態の場合、無線通信デバイス10は、平面のみならず曲面にも取り付け可能とするために、可撓性を備える。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、無線通信デバイスは、可撓性を備えず、平面を備える平板状であってもよいし、あるいは曲面を備える湾曲板状であってもよい。
加えて、無線通信デバイスは、汎用性を高めるために、通信信号の周波数(すなわち共振周波数)の帯域が拡がるように構成されてもよい。
図22は、共振周波数の帯域が拡がるように構成された無線通信デバイスを示している。
上述の実施の形態で説明したように、無線通信デバイス910の共振周波数は、第2の放射電極916によって決定される。本実施の形態の場合、無線通信デバイス910の共振周波数の帯域が拡がるように、第2の放射電極916には、複数の切り欠き部916a、916bが形成されている。
具体的には、第2の放射電極916は、幅方向(X軸方向)の一方の端に設けられて該幅方向の中央に向かって(または中央を越えて)延在する第1の切り欠き部916aを備える。また、幅方向の他方の端に設けられて該幅方向の中央に向かって(または中央を越えて)延在する第2の切り欠き部916bを備える。
第1の切り欠き部916aと第2の切り欠き部916bは、例えばスリット(幅方向に細長い凹部)状である。また、第1の切り欠き部916aと第2の切り欠き部916bは、長さ方向(Y軸方向)に間隔をあけて並んでいる。さらに、本実施の形態の場合、第1の切り欠き部916aと第2の放射電極916の長さ方向の一端(第1の放射電極914から遠い端)との間の距離と、第2の切り欠き部916bと第2の放射電極916の長さ方向の他端との間の距離とが、同一のA1である。さらにまた、第1の切り欠き部916aと第2の切り欠き部916bの幅方向の長さが、同一のA2である。
このような構成の第2の放射電極916によれば、無線通信デバイス910は、図23に示す周波数特性を備える。具体的には、図23に示すように、周波数f1(例えば860MHz)とf2(例えば930MHz)との間の広い帯域幅bfでアンテナ利得が高い周波数特性を備える。
図23に示す帯域幅bfは、図22に示す距離A1によって決まる。具体的に説明すると、図22に示すように、第2の放射電極916では、2つの異なる共振モードが起こる(2つの異なる定在波SW1、SW2が生じる)。すなわち、第2の放射電極916において波長が最短であって周波数がf2の定在波SW1が生じる。また、第2の放射電極1524において波長が最大であって周波数がf1の定在波SW2が生じる。定在波SW1が生じる共振モードと定在波SW2が生じる共振モードとが結合することによって通信信号の周波数の帯域が拡がる。また、その帯域幅bfは、図22に示す距離A1に比例する。したがって、距離A1を適宜設定することで、所望の共振周波数の帯域幅bfを得ることができる。また、共振周波数の帯域の下限の周波数f1と上限の周波数f2は、第1および第2の切り欠き部916a、916bの長さ(X軸方向)を適宜設定することで所望の値を得ることができる。その結果、無線通信デバイス910は、通信信号の周波数(すなわち共振周波数)の帯域が拡がり、より様々な用途に使用できる(汎用性が高まる)。
なお、図22に示す無線通信デバイス910の場合、第2の放射電極916において、幅方向(X軸方向)の一方の端に1つの第1の切り欠き部916aが設けられ、他方の端に1つの第2の切り欠き部916bが設けられている。これに代わって、例えば、第1の切り欠き部916aを複数設けるとともに、第2の切り欠き部916bを複数設けてもよい。この場合、複数の第1の切り欠き部916aと複数の第2の切り欠き部916bは、第2の放射電極916の長さ方向(Y軸方向)に等間隔に交互に並べられる。また例えば、1つの第1の切り欠き部916aのみまたは1つの第2の切り欠き部916bのみが、第2の放射電極916に設けられてもよい。
加えてまた、本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスは、UHF帯の周波数の信号の送受信に使用されることに限定されるものではなく、様々な帯域の周波数の信号を送受信するために使用可能である。本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスは、例えば、HF帯の周波数の信号の送受信のために使用されてもよい。
最後に、本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスは、上述では物品の金属面に取り付けられて使用されるものとして説明してきたが、物品の金属面に取り付けなくても、さらに言えば物品に取り付けずに単体でも無線通信可能であることは明らかである。すなわち、本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスは、物品の金属面に取り付けられても、物品に取り付けない場合とほぼ同様の通信距離で、無線通信を実行することができる無線通信デバイスである。
以上、複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、ある実施の形態に対して少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。
本発明は、電波を放射する電極とその電極を支持する誘電体部材とを有する無線通信デバイスであれば適用可能である。
10 無線通信デバイス
12 誘電体部材
12b 取り付け面
14 第1の放射電極
16 第2の放射電極
100 RFIC素子
G 物品
Ga 金属面

Claims (10)

  1. 物品の金属面に取り付けられた状態で使用可能な無線通信デバイスであって、
    前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、
    前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、
    前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、
    前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極と、を有し、
    前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、
    前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い、無線通信デバイス。
  2. 前記第1および第2の放射電極に対して独立した状態で前記誘電体部材の取り付け面に設けられた導電層を有する、請求項1に記載の無線通信デバイス。
  3. 前記第1の放射電極の延在方向長さが、前記第2の放射電極の幅に等しい、請求項1または2に記載の無線通信デバイス。
  4. 前記第2の放射電極が、延在方向と直交する断面の面積が他の部分に比べて小さい電流集中部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信デバイス。
  5. 前記第2の放射電極が、幅方向の一方の端に設けられて前記幅方向の中央に向かって延在する第1の切り欠き部を備える、請求項4に記載の無線通信デバイス。
  6. 前記第2の放射電極が、前記幅方向の他方の端に設けられて前記幅方向の中央に向かって延在する第2の切り欠き部を備え、
    前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部とが、前記第2の放射電極の延在方向に間隔をあけて並んでいる、請求項5に記載の無線通信デバイス。
  7. 前記RFIC素子が、前記第1の端子電極に接続された第1のコイルと、前記第2の端子電極に接続された第2のコイルとを備え、
    前記第1の放射電極は、前記第1の端子電極に接続される第1のランド部を備え、
    前記第2の放射電極は、前記第2の端子電極に接続される第2のランド部を備え、
    前記金属面から見たとき、前記第1のコイルと前記第1のランド部とが重ねられており、且つ、前記第2のコイルと前記第2のランド部とが重ねられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の無線通信デバイス。
  8. 前記誘電体部材が、前記第1および第2の放射電極の角部に対向する位置に凹部を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の無線通信デバイス。
  9. 前記所定の距離が0.2mm以上1mm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の無線通信デバイス。
  10. 少なくとも一部に金属面を備え、前記金属面に取り付けられた無線通信デバイスを有する物品であって、
    前記無線通信デバイスが、
    前記物品の金属面に取り付けられる取り付け面を備える誘電体部材と、
    前記誘電体部材に設けられ、第1および第2の端子電極を備えるRFIC素子と、
    前記物品の金属面に対して所定の距離をあけて平行に対向するように前記誘電体部材に設けられ、前記RFIC素子の第1の端子電極に接続されている第1の放射電極と、
    前記物品の金属面に対して前記所定の距離をあけて平行に対向するように、前記誘電体部材に設けられ、前記第1の放射電極に対して独立した状態で、前記RFIC素子の第2の端子電極に接続されている第2の放射電極と、を有し、
    前記第1および第2の放射電極が、互いに交差する方向に延在し、
    前記第1の放射電極が、前記第2の放射電極に比べて、幅が小さく且つ延在方向長さが短い、物品。
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