JPWO2017002785A1 - ベーン型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ベーンの下端部の構成を変更することにより、ベーンの下端部の肩部が背圧室の側方の円弧面に乗り上げ難くして、ロータの外周面から突出したベーンによってロータの回転が規制されるのを防止したベーン型圧縮機を提供する。【解決手段】ベーン溝5の底部には凹状円弧面101を有する背圧室10が形成され、ベーン6の進退移動方向の下端部61は、ベーン溝5の底部の凹状円弧面101の底部側円弧面101cに対向した凸状円弧面611aを有するとともに、ベーンの下端部61がベーン溝5の底部の凹状円弧面101の底部側円弧面101cに当接したとき、ベーン6の厚さ方向両側において、ベーン溝5の底部の凹状円弧面101との間に空隙Dが形成されるようにする。【選択図】図5
Description
この発明は、例えば冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに適したベーン型圧縮機、特にベーン型圧縮機のベーンの進退移動方向の下端部の構成に関する。
ベーン型圧縮機は、例えば特許文献1及び特許文献2等に示されるように、両側がサイドブロック等で閉塞されたシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に収容された、断面が真円状のロータと、前記ロータの外周面から径方向内側に向けて形成されたベーン溝と、前記ベーン溝に進退移動可能に収容されたベーンとを有する。そして、前記ロータの回転による遠心力および前記ベーン溝の底部に設けられた背圧室からの背圧によって前記ベーンを前記シリンダの内周面に接触摺動させる構造となっている。
特許文献1に示されるベーン型圧縮機では、ロータのベーン溝の底部を断面円弧状とするとともに、このベーン溝の底部の形状に沿うよう、ベーンの下端部の形状を円弧状とすることを提案している。これにより、ベーンの下端部がベーン溝の底部に衝突しても円弧と円弧の当接となり、衝撃音が緩和される。
また、ベーン溝の底部と、ベーンの下端部が、互いに沿うような円弧形状となっているので、それぞれの円弧上の中心が一致する位置までベーンがベーン溝の底まで進入できる。このことを考慮して、ベーンのベーン溝に沿った長さは、ベーンが最もベーン溝内に侵入したときであっても、ベーン溝から突出しない寸法に形成されている。これにより、ロータの回転に伴いベーンがシリンダ内周面の形状に合わせてベーン溝内を移動し、シリンダ内周面のラジアルシール部を通過する位置においても、ベーン溝の底と干渉することなく、シリンダ溝内に侵入できるようになっている。
ベーン型圧縮機のロータの素材は、特許文献2に示されるように例えば鍛造により形成することができる。鍛造により形成されたロータの素材には、背圧室を含むベーン溝やシャフトを挿通させる貫通孔等が予め形成されている。このように鍛造や鋳造により成形されたロータ素材からロータの完成品を形成する際には、ベーンと摺動し、寸法精度が要求されるベーン溝には研磨加工が施される一方、他部材との間で摺動したり嵌合したりしない部位である背圧室には加工は行われない。
ここで、特許文献1に示されるベーン型圧縮機のロータが、鍛造や鋳造により成形された素材から形成される場合、ロータのベーン溝は研磨により高精度に仕上げられる一方で、ベーン溝の底部に設けられた背圧室は、鍛造によって成形された形状がそのまま残されることとなる。このため、ベーン溝を研磨加工する際に、背圧室との位置関係にズレが生じ、ベーンが摺動するベーン溝の中心と背圧室の中心とがずれることが考えられる。
ベーンが摺動するベーン溝の中心と背圧室の中心がずれると、図8に示されるように、ベーンがベーン溝の最も奥まで進入したときであっても、ベーンの下端部の円弧面の中心と、ベーン溝の円弧面の中心とが一致しなくなり、ベーンの下端部の肩部がベーン溝の底部の側方の円弧面に乗り上げることとなる。このため、ベーンの下端部がベーン溝の最深位置まで進入できず、上端部がロータの外周面からはみだしてしまい、ベーンがシリンダの内周面と干渉してロータの回転不能を招く恐れがある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、ベーンの進退移動方向の下端側の構成を変更することにより、ベーンの下端部の肩部が背圧室の凹状円弧面の側方の円弧面に乗り上げ難くくし、ロータの外周面から突出したベーンによってロータの回転が規制されるのを防止したベーン型圧縮機を提供することを目的としている。
この発明に係るベーン型圧縮機は、両側がサイドブロック部材により閉塞されたシリンダと、このシリンダ内に回転可能に設けられたロータと、このロータの外周面から径方向内側に向けて形成されたベーン溝と、このベーン溝に進退移動可能に収容されるベーンとを有し、前記ロータの回転に伴って前記ベーンの一端部を前記シリンダの内周面に接触摺動させるベーン型圧縮機において、前記ベーン溝の底部には凹状円弧面を有する背圧室が形成され、前記ベーンの他端部は、前記ベーン溝の凹状円弧面に対向した凸状円弧面を有するとともに、前記ベーンの他端部が記ベーン溝の底部に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、前記ベーン溝の底部との間に空隙が形成されるようにしたことを特徴としている。そして、請求項2に記載のベーン型圧縮機では、前記ベーンの他端部の凸状円弧面の曲率半径は、前記ベーン溝の底部の凹状円弧面の曲率半径より小さくなるよう形成されており、これにより前記ベーンの他端部と前記ベーン溝の底部との当接部の両側に前記空隙が形成されるようにしたことを特徴としている。
これにより、ベーン溝のベーンの厚さ方向に沿った中心と背圧室の中心とにベーンの厚さ方向に沿ってずれが生じても、ベーンの下端部が背圧室の凹状円弧面に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン溝の底部との間に空隙が形成される。このため、ベーンが最もベーン溝内に入り込むときに、ベーンの下端部の肩部は、ベーン溝の底部の凹状円弧面のうちの背圧室の側方の円弧面に乗り上げ難くなる。従って、ベーンの上端部がロータの外周面から突出し、シリンダの内周面と干渉してロータの回転を阻害するという不具合を防止することができる。
請求項3に記載のベーン型圧縮機では、前記ベーンの他端部の厚さ方向両側に、前記凸状円弧面に連なる接平面を形成したことを特徴としている。
これにより、ベーンの他端部について、ベーン溝の底部の凹状円弧面との対峙面の全てを凸状円弧面とした場合には、ベーンの肩部の位置がロータの外周面側に上がるため、ベーンの摺動面の幅が狭くなるところ、接平面を有することによって、ベーンの肩部の位置が必要以上にロータの外周面側に上がることが抑制されるので、ベーンの摺動面の幅が狭くなることが防止される。
また、ベーン溝の底部の凹状円弧面との対峙面の全てを凸状円弧面とした場合に比し、ベーンの他端部の凸状円弧面の半径を小さくすることができるので、ベーンの他端部がベーン溝の底部に接している箇所に接触を集中させることができる。これにより、例えば微小な異物が背圧室に入り込んでも、ベーンの他端部とベーン溝の底部との間で異物が挟まれて、ベーンがベーン溝の底部の奥側まで進入することができなくなるおそれを防止することが可能である。
請求項4に記載のベーン型圧縮機では、前記ベーンの厚さ方向両側には、前記ベーン溝と摺接する摺接面が形成され、この摺接面と前記ベーンの他端部の前記凸状円弧面との間に、前記摺接面および前記凸状円弧面の一部を除去する面取りを形成し、これにより前記空隙を設けたことを特徴としている。
これにより、ベーンの肩部を削ることができ、又は、ベーンの他端部がベーン溝の凹状円弧面に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン溝の底部との間に形成される空隙を大きくすることができる。よって、ベーンが最もベーン溝内に入り込むときに、ベーンの他端部の肩部は、背圧室の凹状円弧面の側方の円弧面に、より一層乗り上げ難くなる。
以上に述べたように、本発明では、ベーン溝のベーンの厚さ方向に沿った中心と背圧室の中心とにベーンの厚さ方向に沿ってズレが生じても、ベーンの下端部が背圧室の凹状円弧面に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、背圧室の凹状円弧面との間に空隙が形成されるようにした。このため、ベーンが最もベーン溝内に入り込むときに、ベーンの下端部の肩部が、背圧室の凹状円弧面の側方の円弧面に乗り上げるのを回避することができる。よって、ベーンの上端部がロータの外周面から突出し、シリンダの内周面と干渉してロータの回転を阻害するという不具合を防止することが可能になる。
特に請求項3に記載の発明によれば、ベーンの他端部について、ベーン溝の底部の凹状円弧面との対峙面の全てが凸状円弧面とした場合には、ベーンの肩部の位置がロータの外周面側に上がるため、ベーンの摺動面の幅が狭くなるところ、接平面を有することによって、ベーンの肩部の位置が必要以上にロータの外周面側に上がることが抑制されるので、ベーンの摺動面の幅が狭くなることが防止される。
また、特に請求項3に記載の発明によれば、ベーン溝の底部の凹状円弧面との対峙面の全てを凸状円弧面とした場合に比し、ベーンの他端部の凸状円弧面の半径を小さくすることができるので、ベーンの他端部がベーン溝の底部に接している箇所に接触を集中させることができる。これにより、例えば微小な異物が背圧室に入り込んでも、ベーンの他端部とベーン溝の底部との間で異物が挟まれて、ベーンがベーン溝の底部の奥側まで進入することができなくなるおそれを防止することが可能である。
特に請求項4に記載の発明によれば、ベーンの肩部を削ることができ、又は、ベーンの下端部が背圧室の凹状円弧面に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン溝の底部との間に形成される空隙を大きくすることができる。よって、ベーンが最もベーン溝内に入り込むときに、ベーンの下端部の肩部が背圧室の凹状円弧面の側方の円弧面に乗り上げるのを、より一層回避することができる。
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1及び図2において、例えば車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられるベーン型圧縮機の一例が示されている。このベーン型圧縮機1は、シャフト3と、シャフト3に固定されて当該シャフト3の回転に伴い回転するロータ4と、このロータ4とによって後述する圧縮空間18を画成する第1のハウジング部材8及び第2のハウジング部材9とを有し、これら第1のハウジング部材8と第2のハウジング部材9とでハウジング2が構成されている。
第1のハウジング部材8は、この実施例では、ロータ4を収納するシリンダ8aと、このシリンダ8aとはシャフト3の軸方向のリア側に位置し、且つシリンダ8aと一体成形され、シリンダ8aのリア側を閉塞するリアサイドブロック8bとで構成されている。
シリンダ8aに収納されるロータ4は、断面が真円状である円柱状のもので、その真円の中心点P1には、図2に示されるように、シャフト3が圧入可能な貫通孔4aが設けられている。また、ロータ4は、当該ロータ4の外周面に開口した2つのベーン溝5内に挿入される2つのベーン6を有している。
べ−ン6の図3乃至図8で示される各例の構成の詳細は後述するが、いずれのベーン6も、当該ベーン6の厚さ方向両側に下記するベーン溝5の内側面に摺接する摺接面6a、6aを有する一端部と、下記する凸状円弧面611aを有する他端部とを備え、ベーン溝5から進退移動してシリンダ8aの内周面を摺動するものである。
ベーン溝5は、図3乃至図8で示される各例のいずれにおいても、ロータ4の外周面から径方向内側に延びた構成となっている。また、ベーン溝5の底部には下記する凹状円弧面101を有する背圧室10が形成されている。これらのベーン溝5と背圧室10とは、ロータ4の軸方向に沿ってフロント側からリア側に貫通するように形成されている。
シリンダ8aの内周面は、この実施例では、図2に示されるように、ロータ4の外径寸法よりも大きな内径寸法を有し、P2を中心とした真円状となっている。そして、ロータ4の外周面とシリンダ8aの内周面とが周方向の一箇所で微小な隙間(シリンダ8aとロータ4とが最も接近する部分:ラジアルシール部P3)を形成するように、ロータ4がシリンダ8a内に収納されている。なお、P1は、このように、シリンダ8a内にロータ4を収納することにより、シリンダ8aの内周面とロータ4の外周面との間には圧縮空間18が画成されている。この圧縮空間18は、ロータ4に形成された2つのベーン溝5にそれぞれ収納された2つのベーン6によって仕切られて2つの圧縮室19に分けられ、各圧縮室19の容積はロータ4の回転によって変化するようになっている。
第2のハウジング部材9は、シリンダ8aのフロント側端面に当接するフロントサイドブロック9aと、このフロントサイドブロック9aからシャフト3の軸方向に延設されてシリンダ8a及びリアサイドブロック8bの外周面を包囲するように形成されたシェル9bとを一体化して構成されている。また、第2のハウジング部材9は、ボルト等の連結具7を介して第1のハウジング部材8と連結されている。そして、第1のハウジング部材8をシェル9bのリア側開口部9dから挿入してシェル9bと嵌合させることにより、シリンダ8aのフロント側がフロントサイドブロック9aによって閉塞されていると共に、シェル9bのリア側開口部9dがリアサイドブロック8bによって閉塞されている。
また、第2のハウジング部材9は、フロントサイドブロック9aに一体化されたボス部9cに、車両の動力源(図示せず)よりベルト(図示せず)を介して回転動力が伝達されるプーリ20が回転自在に外装され、このプーリ20から電磁クラッチ21を介して回転動力がシャフト3に伝達されるようになっている。また、第2のハウジング部材9には、作動流体(冷媒ガス)の吸入口11及び吐出口12が形成され、吸入口11は第2のハウジング部材9に形成された空間部14a及びシリンダ8aに形成された凹部14bとで成る吸入空間14に連通している。
シャフト3は、第2のハウジング部材9のフロントサイドブロック9aと第1のハウジング部材8のリアサイドブロック8bとに保持形成された軸受部たるプレーンベアリング23、24を介して回転可能に支持されている。そして、シャフト3は、第2のハウジング部材9のボス部9cの基端近傍部位において、第2のハウジング部材9の内側面との間にシール部材13が介在されており、作動流体がボス部9cの開口から外部に漏れるのを防止している。
そして、シリンダ8aの周面には、圧縮空間18に対応して吸入空間14に連通する吸入ポート25と、吐出空間15と連通する吐出ポート26とが設けられている。したがって、シリンダ8aをシェル9bに嵌入させると、吸入空間14は吸入ポート25を介して圧縮室19に連通し、シリンダ8aの外周面とシェル9bの内側面との間には、両端側がフランジ部8c、8dによって仕切られた吐出空間15が形成され、この吐出空間15は吐出ポート26を介して圧縮室19に連通可能となっている。そして、吐出ポート26は、吐出空間15に収納される吐出弁27により開閉されるようになっている。また、吐出空間15はフランジ部8dに形成された通孔28を介してオイル分離器16に連通している。オイル分離器16は更に吐出口12と連通している。
以上の構成によれば、このベーン型圧縮機1においては、図示しない動力源からの回転動力がプーリ20及び電磁クラッチ21を介してシャフト3に伝達され、ロータ4が回転すると、吸入口11から吸入空間14に流入した作動流体が吸入ポート25を介して圧縮空間18に吸入される。圧縮空間18内のベーン6によって仕切られた圧縮室19の容積はロータ4の回転に伴って変化するので、ベーン6間に閉じ込められた作動流体は圧縮され、吐出ポート26から吐出弁27を介して吐出空間15に吐出される。吐出空間15に吐出された作動流体は、シリンダ8aの外周面(シェル9bの内側面)に沿って周方向に移動し、フランジ部8dに形成された通孔28を介してリアサイドブロック8bに形成されたオイル分離器16のオイル分離室内に導入される。その後、作動流体は、オイル分離器16のオイル分離室内を旋回する過程でオイルが分離されて、吐出口12から外部回路に吐出される。
ところで、図3ではこの発明の実施例1、図4ではこの発明の実施例1の別例、図5及び図6ではこの発明の実施例2、図7ではこの発明の実施例3が示されていると共に、図8では実施例1、実施例1の別例、実施例2、及び実施例3と対比するため対比例が示されている。以下、実施例1、実施例1の別例、実施例2及び実施例3について、対比例と対比しつつ説明する。
実施例1のベーン溝5は、前記したようにロータ4の外周面から径方向内側に延びているもので、ベーン6の摺接面6a、6aと接する内側面を、ベーン6の厚さ方向の両側に有している。図3(a)では、ベーン6の厚さ方向の中心を通る中心線Cが示されている。
実施例1の背圧室10は、図3に示されるように、2つの側方円弧面101a、101bと、これらの側方円弧面101a、101b間に位置する1つの底側円弧面101cとを有している。
前記背圧室10を形成する側方円弧面101a、底側円弧面101c、側方円弧面101bは、背圧室10の中心点P5を中心点として想定された円弧S1に沿うように配置されており、背圧室10の凹状円弧面101を構成している。背圧室10の直径L1は、図3(b)に示されるベーン溝5のベーン6の厚さ方向の寸法L2よりも大きくなっている。図3の符号103は、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の円弧上の中心を示している。
これらの背圧室10が凹状円弧面101を有すること、符号103が背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の円弧上の中心を示していること、並びにベーン6の厚さ方向の中心を通る中心線Cが示されていることは、図8で示される対比例の背圧室10でも同様となっている。
実施例1のベーン6は、前記した他端部として当該ベーン6の進退移動方向の下端側に下端部61を有している。下端部61は、背圧室10の底側円弧面102cと対峙する当接面611の全てがP5を中心点とした円弧S2に沿った凸状円弧面611aとなっている。これにより、下端部61の肩部K1、K2は、P5を中心点とした円弧S2の始端、終端と重なっている。そして、下端部61の凸状円弧面611aを成す円弧S2の曲率半径L4は、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の曲率半径L3より小さくなっている。図3の符号63は、下端部61の凸状円弧面611aを成す円弧S2の円弧上の中心を示している。図3では、例えば、凸状円弧面611aを成す円弧S2の曲率半径L4は、ベーン6の厚さ方向の寸法L2の略2分の1の寸法となっている。これにより、下端部61の凸状円弧面611aは、半円周面となっており、円弧S2の中心点P5と下端部61の肩部K1、K2とは、同一線上に位置している。そして、ベーン溝5と背圧室10との位置関係にズレが生じていない場合には、図3(a)に示されるように、円弧S1の中心点P4と円弧S2の中心点P5とにズレがなく、同じベーン溝5の中心線C上にあり、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させることができる。
対比例のベーン6の下端部61も、背圧室10の底側円弧面102と対峙する当接面611の全てが円弧S2に沿った凸状円弧面611aとなっているが、下端部61の凸状円弧面611aを成す円弧S2の曲率半径L4は、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の曲率半径L3と同じとなっている。この場合でも、ベーン溝5と背圧室10との位置関係にズレが生じていない場合には、図8(a)に示されるように、円弧S1の中心点P4と円弧S2の中心点P5とにずれがなく、同じベーン溝5の中心線C上にあり、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させることができる。
もっとも、対比例では、図8(a)に示されるように、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させるかたちで、下端部61の凸状円弧面611aを背圧室10の底側円弧面101cに当接させても、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に空隙Dが形成されない。これに対し、実施例1では、図3(a)に示されるように、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させるかたちで、下端部61の凸状円弧面611aを背圧室10の底側円弧面101cに当接させると、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に空隙Dが形成される。
一方で、本発明のロータ4を前記した製造方法により製造するにあたって、ベーン溝5を研磨加工する際に、背圧室10との位置関係にズレが生じ、図3(b)及び図8(b)に示されるように、ベーン溝5のベーン6の厚さ方向の中心線Cと背圧室10の中心点P5とが、設定された位置からベーン6の厚さ方向に沿って所定寸法X1ほどずれる可能性がある。そして、当接面611の凸状円弧面611aの円弧上の中心63と背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103とについても、図3(b)及び図8(b)に示されるように、ベーン6の厚さ方向に沿って所定寸法X1のズレが生ずる。
この点、図8の対比例では、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面との間に前記空隙Dが形成されないので、ベーン6がベーン溝5に最も入り込むときに、図8(b)に示されるように、下端部61の肩部K1、K2が背圧室10の側方円弧面101a、101bに乗り上げる。そして、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63と背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103との間にベーン6の進退移動方向に沿って隙間G1が生ずることとなる。この隙間G1は大きいので、ベーン6の上端部がロータ4の外周面からはみだしてしまい、ベーン6がシリンダ8aの内周面と干渉してロータ4の回転不能を招く恐れがある。
これに対し、実施例1では、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に前記空隙Dが形成されるので、図3(b)に示されるように、下端部61の肩部K1、K2が背圧室10の側方円弧面101a、101bに乗り上げ難くなる。なお、下端部61の凸状円弧面611aが背圧室10の凹状円弧面101の円弧に沿って持ち上がるので、図3(b)に示されるように、下端部61の円弧面の中心63と背圧室10の凹状円弧面101の円弧面の中心103との間にベーン6の進退移動方向に沿って隙間G2が生ずる。もっとも、この隙間G2は小さくてすむので、実施例1では、ベーン6の上端部がロータ4の外周面からはみだしてしまい、ベーン6がシリンダ8aの内周面と干渉してロータ4の回転不能を招く恐れがない。
図4では、上記したように、図3に示される実施例1の別例が示されている。以下、図3を用いて実施例1の別例について説明する。但し、先の実施例1と同様の構成については、原則として同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例1の別例のベーン6の下端部61は、背圧室10の底側円弧面101cと対峙する当接面611の全てが円弧S2に沿った凸状円弧面611aとなっている点では、図3に示される下端部61と共通する。その一方で、下実施例1の別例のベーン6の下端部61では、凸状円弧面611aを成す円弧S2の曲率半径L4は、ベーン6の厚さ方向の寸法L2の略2分の1の寸法より大きく、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の曲率半径L3より小さくなっている。これにより、下端部61の凸状円弧面611aは、半円周面よりも小さくなっており、円弧S2の中心点P5は、下端部61の肩部K1、K2よりもベーン6の摺接面6a側にずれて位置している。
そして、実施例1の別例でも、ベーン溝5と背圧室10との位置関係にズレが生じていない場合には、図4(a)に示されるように、円弧S1の中心点P4と円弧S2の中心点P5とにズレがなく、同じベーン溝5の中心線C上にあり、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させることができる。
更に、実施例1の別例でも、図4(a)に示されるように、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させるかたちで、下端部61の凸状円弧面611aを背圧室10の底側円弧面101cに当接させると、図8の対比例とは異なり、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面との間に空隙Dが形成される。
これにより、ベーン溝5と背圧室10とがベーンの厚さ方向に沿ってずれた場合でも、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に前記空隙Dが形成されるので、図4(b)に示されるように、下端部61の肩部K1、K2が背圧室10の側方円弧面101a、101bに乗り上げ難くなる。そして、図4(b)に示される、下端部61の凸状円弧面611aが背圧室10の凹状円弧面101の円弧に沿って持ち上がることで生ずる隙間G2も、図3の実施例1と同様に小さくてすむので、実施例1の別例でも、ベーン6の上端部がロータ4の外周面からはみだしてしまい、ベーン6がシリンダ8aの内周面と干渉してロータ4の回転不能を招く恐れがない。
図5及び図6では、上記したように、実施例2が示されている。以下、図5及び図6を用いて実施例2について説明する。但し、先の実施例1及びその別例と同様の構成については、原則として同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例2のベーン6の下端部61は、当接面611が凸状円弧面611aとこの凸状円弧面611aに連なる2つの接平面611bとで構成されたものとなっている。
凸状円弧面611aは、図5に示されるように、P6を中心とし、且つ、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の半径L3より小さな半径L5として想定された円S3のうち、底側円弧面101cに対向した円弧S3aに沿ったものとなっている。接平面611bは、この実施例2では、凸状円弧面611aを成す円弧S3aに接するように形成され、円弧S3の両端から肩部K1、K2に向けてベーン6の摺接面6a側に傾斜しつつ延びた平坦面となっている。
実施例2のベーン6の下端部61の形状は、図6に示されるように、例えば、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1とベーン溝5の内側面を延長した仮想線Vとが交差する点P7を通る円弧面(円弧S1)の接平面の傾斜角度と同じ傾斜角度にて平面611bを当該下端部61の厚さ方向の両側に設け、これらの平面611b、平面611b同士が交差する箇所を背圧室10の凹状円弧面を成す円弧S1の曲率半径L3よりも小さな曲率半径L5の接円S3の円弧S3aで接するように繋いだものとして形成することも可能である。なお、平面611bの傾斜は、図示しないが、点P7を通る円弧面(円弧S1)の接平面の傾斜角度と同じ角度よりもベーン溝5の軸線側にやや傾けたものとしても良い。
そして、実施例2でも、ベーン溝5と背圧室10との位置関係にズレが生じていない場合には、図5(a)に示されるように、円弧S1の中心点P4と円S3(円弧S3a)の中心点P6とにズレがなく、同じベーン溝5の中心線C上にあり、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させることができる。
更に、実施例2でも、図5(a)に示されるように、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させるかたちで、下端部61の凸状円弧面611aを背圧室10の底側円弧面101cに当接させると、図8の対比例とは異なり、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面との間に空隙Dが形成される。
これにより、ベーン溝5と背圧室10とがベーンの厚さ方向に沿ってずれた場合でも、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に前記空隙Dが形成されるので、図5(b)に示されるように、下端部61の肩部K1、K2が背圧室10の側方円弧面101a、101bに乗り上げ難くなる。そして、図5(b)に示される、下端部61の凸状円弧面611aが背圧室10の凹状円弧面101の円弧に沿って持ち上がることで生ずる隙間G2も、これまでの実施例と同様に小さくてすむので、実施例2でも、ベーン6の上端部がロータ4の外周面からはみだしてしまい、ベーン6がシリンダ8aの内周面と干渉してロータ4の回転不能を招く恐れがない。
図7では、上記したように、実施例3が示されている。以下、図7を用いて実施例3について説明する。但し、これまで説明してきた各実施例と同様の構成については、原則として同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例3のベーン6の下端部61は、背圧室10の底側円弧面101cと対峙する当接面611の全てがP5を中心点とした円弧S2に沿った凸状円弧面611a(円弧S2の曲率半径L4は、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の曲率半径L3と同じになっている。)に対し、ベーン6の摺接面6a及び凸状円弧面611aの一部を除去して、面取り斜面101cを形成することで、テーパ状となっている。もっとも、図示しないが、円弧S2の曲率半径L4は、背圧室10の凹状円弧面101を成す円弧S1の曲率半径L3より小さくても良い。また、ベーン6の摺接面6aの一部又は凸状円弧面611aの一部を除去して、面取り斜面101cを形成するようにしても良い。
そして、実施例3でも、ベーン溝5と背圧室10との位置関係にズレが生じていない場合には、図7(a)に示されるように、円弧S1の中心点P4と円S2の中心点P5とにズレがなく、同じベーン溝5の中心線C上にあり、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させることができる。
更に、実施例3でも、図7(a)に示されるように、下端部61の凸状円弧面611aの円弧上の中心63を背圧室10の凹状円弧面101の円弧上の中心103と一致させるかたちで、下端部61の凸状円弧面611aを背圧室10の底側円弧面101cに当接させると、図8の対比例とは異なり、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面との間に空隙Dが形成される。
これにより、ベーン溝5と背圧室10とがベーンの厚さ方向に沿ってずれた場合でも、ベーンの厚さ方向両側において、ベーン6と背圧室10の凹状円弧面101との間に前記空隙Dが形成されるので、図7(b)に示されるように、下端部61の肩部K1、K2が背圧室10の側方円弧面101a、101bに乗り上げ難くなる。そして、図7(b)に示される、下端部61の凸状円弧面611aが背圧室10の凹状円弧面101の円弧に沿って持ち上がることで生ずる隙間G2も、これまでの実施例と同様に小さくてすむので、実施例3でも、ベーン6の上端部がロータ4の外周面からはみだしてしまい、ベーン6がシリンダ8aの内周面と干渉してロータ4の回転不能を招く恐れがない。
1 ベーン型圧縮機
4 ロータ
5 ベーン溝
6 ベーン
6a 摺接面
61 下端部(他端部)
611 当接面
611a 凸状円弧面
611b 接平面、平面
611c 面取り斜面
63 凸状円弧面の円弧上の中心
8a シリンダ
10 背圧室
101 凹状円弧面
101a,101b 側方円弧面
101c 底側円弧面
103 凹状円弧面の円弧上の中心
K1、K2 ベーンの肩部
D 空隙
4 ロータ
5 ベーン溝
6 ベーン
6a 摺接面
61 下端部(他端部)
611 当接面
611a 凸状円弧面
611b 接平面、平面
611c 面取り斜面
63 凸状円弧面の円弧上の中心
8a シリンダ
10 背圧室
101 凹状円弧面
101a,101b 側方円弧面
101c 底側円弧面
103 凹状円弧面の円弧上の中心
K1、K2 ベーンの肩部
D 空隙
Claims (4)
- 両側がサイドブロック部材により閉塞されたシリンダと、このシリンダ内に回転可能に設けられたロータと、このロータの外周面から径方向内側に向けて形成されたベーン溝と、このベーン溝に進退移動可能に収容されるベーンとを有し、前記ロータの回転に伴って前記ベーンの一端部を前記シリンダの内周面に接触摺動させるベーン型圧縮機において、
前記ベーン溝の底部には凹状円弧面を有する背圧室が形成され、前記ベーンの他端部は、前記ベーン溝の凹状円弧面に対向した凸状円弧面を有するとともに、前記ベーンの他端部が記ベーン溝の底部に当接したとき、ベーンの厚さ方向両側において、前記ベーン溝の底部との間に空隙が形成されるようにしたことを特徴とするベーン型圧縮機。 - 前記ベーンの他端部の凸状円弧面の曲率半径は、前記ベーン溝の底部の凹状円弧面の曲率半径より小さくなるよう形成されており、これにより前記ベーンの他端部と前記ベーン溝の底部との当接部の両側に前記空隙が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のベーン型圧縮機。
- 前記ベーンの他端部の厚さ方向両側に、前記凸状円弧面に連なる接平面を形成したことを特徴とする請求項2に記載のベーン型圧縮機。
- 前記ベーンの厚さ方向両側には、前記ベーン溝と摺接する摺接面が形成され、この摺接面と前記ベーンの他端部の前記凸状円弧面との間に、前記摺接面および前記凸状円弧面の一部を除去する面取りを形成し、これにより前記空隙を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のベーン型圧縮機。
Applications Claiming Priority (3)
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---|---|---|---|
JP2015130554 | 2015-06-30 | ||
JP2015130554 | 2015-06-30 | ||
PCT/JP2016/069083 WO2017002785A1 (ja) | 2015-06-30 | 2016-06-28 | ベーン型圧縮機 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2017002785A1 true JPWO2017002785A1 (ja) | 2018-04-12 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017526357A Pending JPWO2017002785A1 (ja) | 2015-06-30 | 2016-06-28 | ベーン型圧縮機 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP3318760A4 (ja) |
JP (1) | JPWO2017002785A1 (ja) |
WO (1) | WO2017002785A1 (ja) |
Family Cites Families (3)
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JPH0538379U (ja) * | 1991-10-29 | 1993-05-25 | カルソニツク株式会社 | ロータリーコンプレツサ |
JP3108018B2 (ja) * | 1996-07-03 | 2000-11-13 | カルソニックカンセイ株式会社 | ロータリコンプレッサ |
-
2016
- 2016-06-28 JP JP2017526357A patent/JPWO2017002785A1/ja active Pending
- 2016-06-28 WO PCT/JP2016/069083 patent/WO2017002785A1/ja active Application Filing
- 2016-06-28 EP EP16817893.7A patent/EP3318760A4/en not_active Withdrawn
Also Published As
Publication number | Publication date |
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WO2017002785A1 (ja) | 2017-01-05 |
EP3318760A1 (en) | 2018-05-09 |
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Legal Events
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190610 |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20201012 |