本発明において「上下方向」とは、本発明の細胞処理容器を水平面上に載置した状態で収容空間に培養液等の液体を収容したときに該液体の深さ方向(すなわち鉛直方向)と一致する方向を指す。そして本発明において、上下方向に沿って細胞処理容器、収容部又は容器状部の底から開口に向かう向きを「上向き」、上下方向に沿って収容部の開口から底に向かう向きを「下向き」とする。
本発明の細胞処理容器を水平面上に載置したときに該水平面上と当接する表面を「容器下面」とし、図示する実施形態では容器下面112とする。容器下面112は図示する実施形態では連続した平坦面であるが、これには限定されず、前記水平面と当接できる1つ又は複数の点状又は線状の表面からなっていてもよい(例えば図37A、B、Cに示す実施形態7の変形例13)。この場合前記水平面と当接する表面を含む平面を容器下面とみなすことができる。そして、本発明の細胞処理容器において、ある部位Aから別の部位Bまでの上下方向に沿った距離を、部位Aから部位Bまでの「高さ」と呼ぶことがある。そして、細胞処理容器に含まれる2つの部分のうち、一方の部分の、上下方向に沿った容器下面からの距離が、他方の部分の、上下方向に沿った容器下面からの距離よりも大きい場合に、一方の部分は、他方の部分も「上」、「上側」、又は「上方」にある又は位置すると言い、他方の部分は一方の部分よりも「下」、「下側」、又は「下方」にある又は位置すると言う。また、本発明の細胞処理容器に含まれる部位において、該部位の上下方向に沿った断面上での容器下面から離れた側の端部を該部位の「上端」と呼ぶ。
本発明において容器底部の周縁とは、本発明の細胞処理容器を水平面上に載置し平面視したとき、容器底部の外側輪郭となる部分を指す。
本発明では面の傾斜角を以下のように定義する。図1Fに示すように、部材Xの表面である面S上の点Pを通る法線をNとし、前記点Pを通る上下方向(上記で定義した通り)に沿った仮想直線をLとし、法線Nのうち点Pから部材Xの存在しない側の半直線部分をN1とし、仮想直線Lのうち点Pから上方側の半直線部分をL1としたとき、法線Nと仮想直線Lとの成す角のうち、半直線部分N1と、点Pと、半直線部分L1との間に形成される角θ1を、面Sの点Pの位置での傾斜角と定義する。
本発明の細胞処理容器は、細胞処理液を用いて細胞を処理する用途に広く用いることができる。細胞の処理には、細胞の培養、洗浄、融解等の液体中で行われる細胞の各種の処理が包含される。
本発明の細胞処理容器を用いて処理し、必要に応じて観察する細胞としては、特に限定されないが、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)及びiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞をさし、未成熟卵母細胞及び成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えてゆき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚及び8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞及び脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ここに挙げた受精卵のうち、母体への移植直前のものを本明細書では移植用胚と呼ぶ。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性又は全能性細胞を指す。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞を指す。すなわち、本発明において処理の対象となる細胞には、受精卵や胚盤胞のように複数の細胞の集合体も包含される。本発明の細胞処理容器100は、哺乳動物及び鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の処理に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物を指し、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギなどの齧歯類、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマ及びブタなどの家畜が挙げられる。本発明の細胞処理容器は、ヒト又はウシの受精卵の処理に特に好適である。
細胞処理液としては、細胞に応じて選択される培養液や、移植用胚を母体への移植直前に処理するための専用の培養液である移植液、細胞洗浄用液、細胞融解用液等が挙げられる。
本発明の細胞処理容器の材質は特に制限されない。具体的には、金属、ガラス、およびシリコン等の無機材料、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。本発明の細胞処理容器は、1種類以上のプラスチック材料を含むことが好ましく、1種類以上のプラスチック材料からなることがより好ましい。前記プラスチック材料は日本薬局方に記載された溶出試験の規格値を満たす材料であることが好ましく、例えば日本薬局方、一般試験法、7.02 プラスチック製医薬品容器試験法、1.2 溶出試験、(iv) 紫外吸収スペクトルに記載の手順を実施し、紫外線吸収スペクトルにおいて、波長220nm以上241nm未満における吸光度が0.08以下、波長241nm以上350nm以下における吸光度は0.05以下である材料であることが好ましい。本発明の細胞処理容器は、当業者に公知の方法で製造することができる。例えば、プラスチック材料からなる細胞処理容器を製造する場合には、慣用の成形法、例えば射出成形により製造することができる。
前記プラスチック材料には、マスターバッチ法、ドライブレンド法、練り込み法、表面コート法等により、透明プラスチック成型品の製造に用いられるブルーイング剤や、各種顔料等のような添加剤を添加することができ、それによって、所望の透明度及び色の組み合わせを付与することができる。それ故、本発明の細胞処理容器に収容された細胞を観察する場合に、鮮明な像を得ることができる。
前記プラスチック材料には、マスターバッチ法、ドライブレンド法、練り込み法、表面コート法等により、プラスチック成型品の製造に用いられる帯電防止剤や静電気防止剤等の添加剤を添加することができ、それによって、プラスチック製品の帯電を防止することができる。それ故、本発明の細胞処理容器への静電気による汚れの付着や成型ラインでの電撃傷害を防ぐことが出来る。
光学顕微鏡での観察のためには、本発明の細胞処理容器は光透過性の材料により形成されていることが好ましい。
本発明の細胞処理容器は、受精卵の発育を促進するような表面処理又は表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、他の器官の細胞(例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞)と共培養をする場合、これらの細胞をあらかじめ細胞処理容器の形成面に接着させる必要がある。このような場合に、細胞処理容器の形成面に細胞接着性の材料をコートすると有利である。
製造された本発明の細胞処理容器は、日本薬局方に記載された溶出試験の規格値を満たすことが好ましい。例えば、日本薬局方、一般試験法、7.02 プラスチック製医薬品容器試験法、1.2 溶出試験、(iv) 紫外吸収スペクトルに記載の手順を実施し、紫外線吸収スペクトルにおいて、波長220nm以上241nm未満における吸光度が0.08以下、波長241nm以上350nm以下における吸光度は0.05以下であることが好ましい。本発明の細胞処理容器の全体がこの特性を有することが好ましく、容器内面がこの特性を有することがより好ましい。
製造された本発明の細胞処理容器は、高圧蒸気滅菌、エチレンオキシド滅菌、放射線滅菌等で滅菌処理されていることが好ましく、放射線滅菌により滅菌処理されていることが好ましい。放射線滅菌の際の滅菌線量としては10kGy〜100kGyが例示でき、15kGy〜40kGyが好ましい。
製造された本発明の細胞処理容器のエンドトキシン量は20EU(エンドトキシンユニット)/容器以下であることが好ましく、2.15EU(エンドトキシンユニット)/容器以下であることが更に好ましい。エンドトキシン量の測定方法は、日本薬局方4.01エンドトキシン試験法、米国薬局方USP<85>に記載された方法により測定することができる。
以下、本発明の細胞処理容器の構造を、図面に示す実施形態を参照して説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書の図面では各構成の寸法及び形状に関わらず同じ機能を有する構成は同じ符号を付しており、特段の相違点を除き説明を省略する。
<実施形態1(図1A〜1J)>
図1A〜1Jに、本発明の細胞処理容器100の実施形態1を示す。
細胞処理容器100は容器底部110と、容器底部110の周縁から起立した外周壁部120と、容器底部110に設けられた1つ以上の収容部130とを備える。本明細書で説明する実施形態はいずれも、収容部130が細胞処理容器100に1つ設けられた実施形態のみであるが、収容部130は2以上、例えば2〜9個、好ましくは2〜4個容器底部110上に設けられてもよい。
収容部は、細胞及び細胞処理液を収容するための収容空間が形成され上向きに開口した構造を有する。収容部はどのように形成されていてもよいが、典型的には図示する収容部130のように、容器底部110から起立した収容部周壁部140により形成することができる。収容部周壁部140は、内側に、収容空間150を形成する面である形成面141を備え、外側に、収容空間150の外側に向いた収容部外壁面144を備え、収容部開口側端に収容部上端145を備える。なお収容部上端145は図示するような平坦な上端面である必要はなく、曲面であってもよいし、稜線であってもよい。
細胞処理容器100は、外周壁部120の外周壁部内周面121により形成された、上向きに開口した開口を有する。図示するように細胞処理容器100は全体としてディッシュの形状をしていることが好ましい。外周壁部120の上端を外周壁部上端122とする。外周壁部上端122は図示するような平坦な上端面である必要はなく、曲面であってもよいし、稜線であってもよい。
外周壁部上端122の内周側輪郭及び/又は外周側輪郭を平面視したときの図形の形状は、例えば円状(円形および楕円形を含む)等の任意の形状であることができ、好ましくは円形である。細胞処理容器の開口幅(外周壁部上端122の内周側輪郭を平面視したときの図形において、該図形の重心を間に介して対向する、該図形の周縁上の一対の点の間の距離の最大値)は好ましくは15mm〜100mm、より好ましくは30mm〜70mmであり、35mmや60mmの直径等、既存のシャーレで多く存在する寸法とほぼ同等であることが更に好ましい。
容器底部110の上面である容器底面111と、外周壁部120の内周面である外周壁部内周面121と、収容部外壁面144とにより、下方に閉じ上方に開放した外周空間160が形成される。
図1Cに示すように、本実施形態の細胞処理容器100は更に、細胞処理容器100の開口を閉じることができる着脱可能な外蓋部170を備えていてもよい。
次に収容部130の特徴について詳述する。
収容部130の形成面141は、収容部130の上下方向に沿った深さが最も深い部分である最深部148と、最深部148の周りを囲うように形成された収容部底傾斜面142とを有し、収容部底傾斜面142は最深部148と連続している。最深部148は平面視において形成面141のなかで1つだけ存在する。本発明において、収容部底傾斜面142等の傾斜面は、より好ましくは、図示する各実施形態のように、形成面141の周縁から最深部148に亘って形成されている。ここで形成面141の「周縁」とは、細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態で収容部130の開口を通じて観察される形成面141を前記水平面上に投影したときに形成される図形において外周となる、形成面141の部分を指す。本発明において「前記傾斜面は、前記形成面の周縁から前記最深部に亘って形成されている」という表現において、収容部底傾斜面142等の傾斜面は、形成面141の周縁から最深部148に亘って形成されていればよく、傾斜面の全ての部分において平面視で最深部に近づくほど収容部130の深さが増すように形成されている必要はない。例えば、後述する細胞保持領域146に細胞を保持するという本発明の目的を損なわない範囲であれば、収容部底傾斜面142等の傾斜面は、上記で定義した上下方向に垂直な方向(すなわち、水平方向)に沿った部分を一部に含む階段状の部分や、平面視において最深部に近づくほど収容部130の深さが浅くなる部分を含んでいてもよい。
図示する実施形態1では形成面141は、収容空間150の底を形成する面である収容部底面400と収容部底面400の周縁から起立する収容部側面143とを含む。このうち収容部底面400は、最深部148と、最深部148の周りを囲うように形成された最深部148と連続する収容部底傾斜面142とを含む。形成面141の、上記で定義した平面視での周縁に相当する部分のうち、上方の縁を形成面上端149とする。実施形態1では形成面141のうち、少なくとも収容部底傾斜面142が傾斜面を有している。
収容部側面143は典型的には、形成面141のうち、形成面上端149から延びる面であり、通常は傾斜角が45°よりも大きい。収容部側面143は、傾斜角が90°を越える面であってもよいし、90°の面であってもよいし、傾斜角が90°未満、例えば70°以上90°未満、好ましくは80°以上90°未満、の面であってもよいが、好ましくは傾斜角が90°又は90°未満の面である。収容部側面143が90°未満の面である場合は、収容部側面143と収容部底傾斜面142とが一体となって、形成面141の周縁から最深部148に亘る傾斜面を形成する。
本実施形態1では、形成面141のうち最深部148は、細胞処理容器100の平面視において後述する直径Dの円Cに収まるように形成される。最深部148は、直径Dの円Cの範囲内に収まるよう形成されている限り、面であってもよいし、点であってもよいし、線であってもよいし、これらのうち2つ以上を組み合わせた形状あってもよい。なお本発明において、最深部148が、細胞処理容器100の平面視における直径Dの円Cの範囲内に収まるとは、最深部148の前記平面視における形状が直径Dの円Cと同じであるか、又は、前記形状が円Cに内包される形状であることを指し、最深部148の前記平面視における形状を内包する最小外接円の直径(該直径をdとする)がD以下であることと同義である。例えば最深部148が平面視で点の形状、直径0.1μmの円の形状、長さ2μmの直線形状等の形状であるとき、このような形状の最深部148はいずれも、直径2μm、或いはそれより大きな直径の円Cの範囲内に収まるように形成されていると言える。
形成面141のうち、最深部148と、収容部底傾斜面142の最深部148に隣接する部分との少なくとも一方により、細胞を保持する細胞保持領域146が形成される。
細胞保持領域146は、重力下において細胞処理容器100が水平面上に載置された状態で収容空間150に細胞10及び細胞処理液20を収容し重力により細胞10が鉛直方向下方に移動し移動が最終的に停止したときに細胞10を保持する領域である。重量下では、細胞保持領域146に保持された細胞10は、振動により水平方向に移動した場合でも、最深部148に隣接する収容部底傾斜面142により最深部148上に戻ることができる。
図1Hには、最深部148が点である細胞保持領域146の例(実施例1A〜1Gに示す実施形態と同じ)を示す。この例では、最深部148は点であるため、細胞処理容器100の平面視において後述する直径Dの円Cの範囲内に収まる。細胞10が細胞処理液20(図1Hでは省略する)とともに収容空間150(同)内に加えられると、重力により細胞10は形成面141の傾斜面部分である収容部底傾斜面142上を伝わって細胞保持領域146に至り、細胞10の周囲が収容部底傾斜面142のうち最深部148に隣接する部分により囲われ、細胞10が支持される。このとき細胞10の位置は一点に定まる。このため細胞処理時に細胞10が意図せぬ水平方向の移動により顕微鏡での観察視野から消失することを回避することができる。
図1Iには、最深部148が面である細胞保持領域146の例を示す。この例では最深部148は水平方向に拡がりを有するが、後述する直径Dの円Cの範囲内に収まるように形成されている。最深部148の外周は収容部底傾斜面142により囲われている。仮に、図1Iで図示するように細胞10の寸法が面状の最深部148の幅よりも小さく最深部148内で水平方向に移動できるとしても、最深部148を囲う収容部底傾斜面142により水平方向の移動が制限されるため、細胞10が水平方向に移動できる範囲は、直径Dの円Cの範囲に収まる最深部148の範囲に限定される。なお図示しないが、面状又は線状の最深部148の面積が、処理対象の細胞10に対して相対的に小さく細胞10により覆い隠される場合には、図1Hに示す例と同様に、細胞10の周囲は収容部底傾斜面142のうち最深部148に隣接する部分により囲われ、細胞10が支持されて、細胞10の位置は一点に定まる。
本実施形態1では、円Cの直径Dは3mmである。円Cの直径Dが3mmである場合、収容部130の収容空間150内に収容された細胞は、平面視において最大でも直径3mmの狭い円の範囲内に存在することから、最初から作業者が作業しやすい観察倍率(例えば30倍〜50倍等)で最深部148を含む所定位置を観察して細胞を確認することができるため、細胞処理時に細胞10が顕微鏡での観察視野から消失することを回避することができるとともに、低倍率(例えば20倍)での顕微鏡観察により細胞の位置を予め確認する必要がないため作業が簡単となる。円Cの直径Dが3mmであるとき、最深部148の細胞処理容器100の平面視での形状を内包する最小外接円の直径dは3mm以下である。当該直径dと同じか或いはより大きい外径を有するカテーテルを用いるとき、カテーテル先端を細胞保持領域146に近づけるように移動させれば、カテーテル先端が最深部148の全体を覆う位置に位置決めされるため、カテーテルによる細胞(胚)10の取り扱いが容易である。すなわち、胚を取り扱うカテーテルとして外径がd以上のものを用いれば、カテーテル先端を毎回同じ位置に移動することで安定して作業することが可能になる。胚を取り扱うために用いられるカテーテルの外径は、3mm以下であることが通常である。細胞処理容器100では、直径3mmの円Cの範囲内に最深部148が収まる、すなわち直径dが3mm以下となるように構成されているため、一般的な寸法(外径が3mm以下)を有する、胚を取り扱うためのカテーテルのなかから、カテーテル先端の外径がdと同じ或いはdよりも大きく最深部148の全体を覆うことができるカテーテルを適宜選択して使用することができる。
本実施形態1の好ましい実施形態では、円Cの直径Dはより好ましくは2.5mm、より好ましくは2mm、より好ましくは1.8mm、より好ましくは1.6mm、より好ましくは1.5mm、より好ましくは1.4mm、より好ましくは1.2mm、より好ましくは1mm、より好ましくは970μm、より好ましくは900μm、より好ましくは700μm、より好ましくは500μm、より好ましくは300μm、より好ましくは200μm、より好ましくは100μm、より好ましくは50μm、より好ましくは10μm、特に好ましくは5μm、最も好ましくは2μmである。円Cの直径Dが小さいほど、細胞10の位置が狭い範囲内に定まるため、高倍率の顕微鏡での観察時に細胞10を消失する可能性を低減することができる。しかも、細胞処理容器100は、円Cの直径Dが小さいほど、より患者への負担が小さい、外径の小さなカテーテルの使用に適するため好ましい。特に、直径Dが1mm、好ましくは970μm、より好ましくは更に小さい値である細胞処理容器100は、外径が3Fr(1mm)、4Fr(1.33mm)等の、外径の小さなカテーテルを用いた細胞10の取り扱いに適しており好適である。
本実施形態1の別の好ましい実施形態では、形成面141のうち最深部148は、細胞処理容器100の平面視において面積が0.75mm2未満、好ましくは0.74mm2以下、より好ましくは0.7mm2以下、より好ましくは0.5mm2以下、より好ましくは0.3mm2以下となるように形成される。この場合、収容部130の収容空間150内に収容された細胞は、平面視において前記の面積の小さい領域内に存在することから、最初から作業者が作業しやすい観察倍率で面積の小さい領域内を観察して細胞を確認することができるため、細胞処理時に細胞10が顕微鏡での観察視野から消失することを回避することができる。当該別の好ましい実施形態において、直径Dは3mm以下であれば特に限定されないが、前記好ましい実施形態における直径Dの好ましい値と同様の値であることが好ましい。
また、本実施形態では、収容部底傾斜面142は、形成面141の周縁から最深部148に亘って形成されているため、途中で細胞10が定着する可能性が低い。そして、上記の通り、細胞10は細胞保持領域146に保持されるため、顕微鏡による観察が容易である。また図1Eに示すようにカテーテル30により細胞10を吸い取る場合に、細胞10の位置が定まっているため容易に吸い取りが可能である。
細胞保持領域146に含まれる、傾斜面(収容部底傾斜面142)の最深部148に隣接する部分は、傾斜面のうち、細胞10の水平方向の移動を制限する役割を果たす部分であり、細胞10の大きさ等に応じて定まる。例えば細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態での平面視において、傾斜面(収容部底傾斜面142)のうち、最深部148との接点から1mmまでの範囲の部分である。
本実施形態では、収容部底傾斜面142等の、形成面141中の傾斜面の勾配は、形成面141の周縁から最深部148に至るまで、一定であってもよいし、連続的又は段階的に変化してもよいが、好ましくは、少なくとも細胞保持領域146においては、一定である。勾配が一定の傾斜面では、上下方向に沿った平面による断面上での形状が直線状となる。細胞保持領域146の傾斜面での勾配変化が小さい場合、細胞10の顕微鏡での観察時に光散乱が少なく良好に観察することができる。より好ましくは、図示するように、収容部底傾斜面142の全体が、収容部底傾斜面142の周縁から最深部148に至るまで、一定の勾配を有する。なお傾斜面142の勾配が一定であるとは、完全に一定であるとは限らず、実質的に一定である場合も包含する。勾配が実質的に一定であるとは、例えば、上記の顕微鏡での観察時の効果が奏される程度に勾配の変化が小さいことが挙げられる。
形成面141に含まれる、収容部底傾斜面142等の傾斜面の部分の傾斜角θ1は、少なくとも細胞保持領域146においては、好ましくは1°〜45°、より好ましくは2°〜25°、特に好ましくは5°〜10°である。傾斜角θ1がこの範囲内であれば細胞保持領域146上の細胞10を顕微鏡で透過観察する際の傾斜面での反射、散乱が起こりにくくなり、鮮明な観察像を得ることができる。より好ましくは、収容部底傾斜面142に含まれる傾斜面の全体について傾斜角θ1が前記範囲である。この場合は、重力を動力源として細胞10を細胞保持領域146に移動させやすい。
傾斜面の表面粗さは、大きい値であると、顕微鏡で透過観察を行った画像を輪郭抽出処理に付す際に、傾斜面上の凹凸に起因して明瞭な輪郭が得られない恐れがあるため、可能な限り小さい値であることが好ましい。具体的には、最大高さRy(粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分における山頂線と谷底線との間隔をいう)が4.0μm未満であることが好ましく、1.0μm未満であることがより好ましく、0.5μm未満であることが特に好ましい。最大高さRyは、JIS B0601−1994に準拠する。傾斜面の表面粗さがこの範囲であるとき、光散乱を十分に抑制することができ、透過観察時に明確な輪郭を得ることができる。なお、傾斜面の表面粗さは、細胞処理容器の鋳型を作製する際に磨き処理を施す等して、鋳型の加工精度を高めることにより小さくすることができる。
最深部が面である場合、最深部の表面粗さも上記と同様の範囲であることが好ましい。
より好ましくは、少なくとも細胞保持領域146において、形成面141に含まれる傾斜面の対向する部分同士が成す角(下記のθ2に相当する角)は90°よりも大きく、より好ましくは150°以上であり、更に好ましくは160°以上である。上限は180°未満であれば特に限定されない。ここで当該角を説明するために図1Gを参照する。図1Gは、細胞保持領域146近傍の拡大図である。収容部底傾斜面142の対向する部分とは、収容部底傾斜面142に含まれる上下方向位置が同じ一対の部分A、Bであって、部分Aを通る収容部底傾斜面142の法線LAと、部分Bを通る収容部底傾斜面142の法線LBとが上下方向に平行な1つの平面上を通る一対の部分A、Bを指す。そして、前記部分が成す角とは、前記平面上において、部分Aから法線LA、部分Bから法線LBを引き、その交点をPとしたとき、AとPとBとの間の角の外角θ2を指す。形成面141の少なくとも細胞保持領域146においてθ2が90°よりも大きい場合、収容された細胞10の、細胞保持領域146からの取り出しが容易であり、図1Eに示すようにカテーテル30を用いた細胞10の取り扱いの際に細胞10を損傷する可能性が低い。
更に好ましくは、図示するように、形成面141のうち、細胞保持領域146だけでなくその近傍部分も上記θ2が前記条件を満たす。形成面141のうち、細胞保持領域146の近傍とは、細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態での形成面141の平面視において、最深部148から好ましくは10mmまでの範囲、より好ましくは8mmまでの範囲、更に好ましくは3mmまでの範囲となる形成面141上の部分である。移植用胚を取り扱うために用いるカテーテル30の外径は通常1mm〜3mmであるから、形成面141上の、細胞保持領域146の近傍部分が前記θ2の条件を満たす場合には、カテーテル30を用いた細胞10の取り扱いが更に容易となる。
細胞処理容器100は好ましくは、図1に示す実施形態1のように、形成面141が収容部底面400(収容部底面傾斜面142及び最深部148)と収容部側面143とを備える。実施形態1では更に好ましくは、収容部底面400と収容部側面143とが交差する部分である底面側面交差部分147において、収容部底面400と収容部側面143とが収容空間150内で成す角θ3は90°よりも大きく、より好ましくは95°以上であり、上限は特に限定されないが例えば135°以下である。θ3は、収容部底面400の底面側面交差部分147での法線LDと収容部側面143の底面側面交差部分147での法線LCとが成す角(法線LDのうち底面側面交差部分147から収容空間150とは反対側に延びる半直線と、法線LCのうち底面側面交差部分147から収容空間150の側に延びる半直線とが成す角)と一致する(図1B)。角θ3がこの範囲であるとき、細胞10が底面側面交差部分147に入り込んだとしても細胞10の取り出しが比較的容易であり、細胞10を傷つけることなくカテーテルにより取り出すことが可能である。
形成面141の最深部148から上端149までの高さは好ましくは2mm以上12mm以下(2mm〜12mm又は2〜12mm)であり、好ましくは3mm以上、好ましくは4mm以上、好ましくは5mm以上であり、好ましくは11mm以下、好ましくは9mm以下、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは3mm以上11mm以下(3mm〜11mm又は3〜11mm)、更に好ましくは4mm以上9mm以下(4mm〜9mm又は4〜9mm)、更に好ましくは5mm以上8mm以下(5mm〜8mm又は5〜8mm)である。ここで形成面141の最深部148から上端149までの高さとは、形成面141の最深部148から、形成面141の上端149までの、収容部130の上下方向に沿った距離を指す。形成面141の上端149上の任意の点が、上下方向に垂直な一平面上に載らない場合は、形成面141の前記高さのうち最も小さい高さを、より好ましくは全ての高さを、前記数値範囲内とすればよい。形成面141の前記高さが前記数値範囲内にあるとき、収容空間150に細胞処理液20を収容した時に、液面から細胞保持領域146までの深さが十分な深さとなるため、細胞保持領域146に位置決めされた細胞処理液20中の細胞10をカテーテル30等で取り扱い易いため有利である。特に、移植用胚の取り扱いに用いるシリコーンゴム製カテーテルのような、先端が柔軟で幅広のカテーテルを用いる場合に有利である。また、形成面141の前記高さが2mm以上の場合、移植胚等の細胞10を十分に浸漬し、短時間の放置等で細胞処理液20の揮発による成分の変更を抑制する液量の保持が可能であるため好ましい。前記高さが4mm以上の場合、液面から細胞保持領域146までの深さが十分な深さとなるためカテーテル作業時に容易にカテーテル先端が細胞処理液20中に浸漬し、気泡の吸い取り等の作業ミスのリスクを低減できるため好ましい。前記高さが5mm以上であると、細胞処理液20の液深を3mm程度とする際に液漏れのリスク低減ができるため好ましい。前記高さが12mm以下の場合、顕微鏡観察時にカテーテルやガラスキャピラリー等の作業時の角度が比較的鈍角となるため、鋭角の場合に生じ得る顕微鏡のレンズに接触するというリスクや、作業時にカテーテルやガラスキャピラリー等の先端を、形成面141を含む収容部周壁部140等に接触させて傷や破損を起こすというリスクを低減できるため好ましい。前記高さが9mm以下の場合、前記リスクを更に低減できるため好ましい。
本発明のより好ましい態様は、本実施形態のように、細胞処理容器100を水平面H上に載置したときに、形成面141上の、最深部148に含まれる1点と、形成面上端149に含まれる1点とを結んだ仮想直線L2が水平面Hとなす鋭角θ4のうち最も小さい角度が45°以下である態様である(図1J参照)。上記の通り、形成面上端149は形成面141の平面視での周縁のうち上方の縁であり、最深部148は点状であるとは限らず面状又は線状であってもよい。このため、θ4は1つの細胞処理容器100において様々な値を取り得るが、本実施形態ではθ4のうち最も小さい角度が上記範囲であればよい。θ4の最も小さい角度が上記範囲であるとき、次の効果が達成できる。最深部148を含む細胞保持領域146に保持された受精卵等の細胞をカテーテルで吸い上げる場合、カテーテルの先端から4mm程度の位置まで細胞を吸い上げることが一般的である。θ4の最も小さい上記範囲であれば、細胞保持領域146に保持された細胞にカテーテル先端を近づけカテーテル先端から4mmの位置まで吸引する操作を、細胞保持領域146に保持された細胞に焦点を合わせた状態で倍率20倍の実体顕微鏡で観察しながら行う場合に、カテーテルの長さ方向と水平面Hとがなす角度を45°以下とすることができ、細胞保持領域146とカテーテル先端から4mmの部分との上下方向位置の差は小さいため、前記顕微鏡の観察視野内で細胞を視認することができる。より好ましくはθ4の最も小さい角度が40°以下であり、更に好ましくはθ4がどの部分でも45°以下、最も好ましくは40°以下である。
本実施形態では更に、外周壁部内周面121の上方の縁を、外周壁部内周面上端123とする。細胞処理容器100を水平面H上に載置したときに、形成面141の最深部148に含まれる1点と、外周壁部内周面上端123に含まれる1点とを結んだ仮想直線L3が水平面Hとなす鋭角θ5のうち最も小さい角度が好ましくは45°以下であり、より好ましくは40°以下であり、更に好ましくはθ5がどの部分でも45°以下、最も好ましくは40°以下である。
また、θ4及びθ5は最大でも81°以下であることが好ましい。このとき、実験5において確認している通り倍率20倍の実体顕微鏡での観察の際にカテーテルが対物レンズ、収容部周壁部140及び外周壁部120に干渉しない。
また、形成面141の最深部148から上端149までの高さが4mm以下である場合には、θ4の最も小さい角度が25°以上であることが好ましい。カテーテルとして先端の幅が4mm以上のものを用いるとき、当該角度が25°未満であるとカテーテルの長さ方向と水平面Hとがなす角度が25°未満となるようにカテーテルの先端を細胞保持領域148に近づけることができるが、その際にカテーテルに気泡が入り易く作業ミスによって細胞を死滅させるリスクがある。この課題は、先端の幅が1mm〜2mm程度のカテーテルを用いた時に特に顕著である。θ4の最も小さい角度が25°以上であれば、前記リスクを回避することができるため好ましい。
また収容部130の開口が平面視において形成する図形、すなわち収容部上端145の内周側輪郭が囲む図形、の形状は、特に限定されず、実施形態1、後述する実施形態2、4、5のような円状(円形および楕円形を含む)や、後述する実施形態3のような矩形(正方形及び長方形を含む)、その他の多角形や、後述する実施形態1変形例1及び2のような複数の形状が組み合わされた形状であることができる。
前記図形は、平面視において、実施形態3、4、実施形態1変形例1のように一方向に長い形状(例えば楕円、扁平円、長方形)であってもよいし、実施形態1、2、5、実施形態1変形例2のようにN回対称(Nは3以上の整数、好ましくは4以上の整数、より好ましくは4〜8の整数である)の形状(例えば円形、正多角形)であってもよい。ここで「N回対称の形状」は厳密な対称性を有する必要はなく、ほぼN回対称の形状である場合も含む。
収容部130の開口が平面視において形成する図形が、実施形態3、4のように一方向に長い形状の場合、収容部130の開口の向きを認識することができるため、作業者にとっては作業のミスを低減できる利点がある。また、収容部130の開口が、以下で定義する長軸方向に広がった拡張された作業領域を提供するため、収容空間150内に収容された細胞をカテーテル等の器具で取り扱う場合に器具を配置できる領域が広がり作業性が向上する、といった利点がある。この実施形態において、前記一方向を「長軸方向」とし、該長軸方向に沿って前記図形の重心を間に介して対向する前記図形の周縁上の一対の点の間の距離を「長軸方向幅」とし、該長軸方向と平面視において直交する方向を「短軸方向」とし、該短軸方向に沿って対向する前記図形の周縁上の一対の点の間の距離のうち最も大きい距離を「短軸方向幅」とする。短軸方向幅は例えば3mm以上15mm以下(3mm〜15mm又は3〜15mm)であることができ、長軸方向幅は例えば3.6mm以上30mm以下(3.6mm〜30mm又は3.6〜30mm)であることができる。収容部130の開口の短軸方向幅と長軸方向幅とが上記範囲である場合、先端が幅広のカテーテルを用いた細胞の取り扱いが特に容易である。前記短軸方向幅と前記長軸方向幅との比は1:1.2〜1:3であることが好ましく、1:1.5〜1:2であることがより好ましい。短軸方向幅と長軸方向幅とがこの範囲である場合、収容部130の開口の向きを更に明確に認識することが可能である。
収容部130の開口が平面視において形成する図形が、N回対称の形状である場合、前記図形の重心を間に介して直線上で対向する該図形の周縁上の一対の点の間の距離の最小値を「最小幅」としたとき、該最小幅は3mm〜30mmであることが好ましく、3.6mm〜15mmであることがより好ましい。
収容部130の開口が平面視において形成する図形の他の好ましい形態は、図26に示す実施形態1変形例1及び図27に示す実施形態1変形例2のように、第一部分261、271と、第一部分261、271から少なくとも一方向に延在した1つ以上の第二部分262、272(272−1、272−2、272−3、272−4)とが組み合わされた形状となる形態である。これらの形態では、収容空間150が第二部分262、272の部分まで拡張されるため、収容空間150内に収容された細胞をカテーテル等の器具で取り扱う場合に器具を配置できる領域が広がり作業性が向上する、といった利点がある。
また細胞処理容器100の平面視において、形成面141の細胞保持領域146は、収容部130の開口が形成する図形、すなわち収容部上端145の内周側輪郭が囲む図形、の重心に対してどの位置にあってもよく、実施形態1及び後述する実施形態3、4、5のように細胞保持領域146が前記重心と重複する位置にあってもよいし、後述する実施形態2のように細胞保持領域146が前記重心と重複しない位置、すなわち収容部130の開口が形成する図形に対して細胞保持領域146が偏心した位置にあってもよい。
また収容部130の容器底部110上での位置は特に限定されない。収容部130が1つのみ存在する場合は、細胞処理容器100の平面視において、細胞処理容器100の開口の内周側輪郭(外周壁部120の上端の内周側輪郭)が形成する図形の重心と重複する位置に収容部130が形成されていることが好ましい。より好ましくは、細胞処理容器100の平面視において、収容部130の開口の内周側輪郭が形成する図形の重心と、細胞処理容器100の開口の内周側輪郭が形成する図形の重心とが同一の位置にある。ここで「同一」とは「ほぼ同一」も含む。
収容部130が形成する収容空間150の容量は200μl以上1000μl以下(200μl〜1000μl又は200〜1000μl)であり、好ましくは250μl以上、好ましくは300μl以上であり、好ましくは800μl以下、好ましくは500μl以下、好ましくは400μl以下であり、より好ましくは200μl以上800μl以下(200μl〜800μl又は200〜800μl)であり、特に好ましくは250μl以上500μl以下(250μl〜500μl又は250〜500μl)であり、最も好ましくは300μl以上400μl以下(300μl〜400μl又は300〜400μl)である。本実施形態において「収容空間の容量」とは、細胞処理容器を平坦な水平面上に載置した状態において、収容空間150を形成する形成面141の上端である形成面上端149のなかで最も下方に位置する部分を通り且つ前記水平面に平行な仮想平面と、前記形成面141とにより囲まれた空間の容積を指す。
収容空間150の容量が200μl以上であれば、収容空間150内に十分な量の細胞処理液20を収容することができるため、細胞処理液20の揮発による消失や組成変化を十分に抑制することができる。このため、本実施形態の細胞処理容器100は、移植用胚の移植液による移植直前での処理等の、細胞処理液表面をオイルで被覆することができない用途に好適に用いることができる。一方、収容空間150の容量が1000μl以下であるため、収容空間150に細胞処理液20を多量に収容する余り細胞処理液がこぼれやすくなるという問題が起こりにくい。また細胞処理液20のなかには高価なものも存在するが、収容空間150の容量を1000μl以下とすることで処理コストを抑制することができる。また、200μl以上1000μl以下という容量は、1つの移植用胚を、母体への移植直前に移植液で処理する用途には特に適した容量である。
更に、収容空間150の容量が1000μlよりも大きくするには、収容部周壁部140の、容器下面112又は最深部148から収容部上端145までの高さを大きくする、或いは、収容空間150の平面視における幅を大きくする必要がある。しかし、収容部周壁部140の高さが増すと、収容空間150内に収容された細胞をカテーテルで操作する場合に、収容部周壁部140によりカテーテル操作が妨げられるため操作が複雑になる問題がある。また、収容空間150の平面視における幅を大きくすると操作の妨げとなる収容部周壁部140の高さを増すこととなる大容量化が可能であるが、一方で、収容される処理液の表面積が増すため液の揮発が促進されるという問題があり、処理液の使用量を少なくすると揮発が促進されるため、処理液を少量化する調整が困難である。また、収容空間150の容量が大きくなると、収容される処理液量も大きくなり、カテーテル等の器具が処理液に浸漬される範囲が広くなるため、微生物による汚染の発生確率が高まるという問題もある。収容空間150の容量を1000μl以下とすることにより、上記の問題を解決することができる。
細胞として移植用胚を用い、細胞処理液として移植液を用いて、移植用胚を処理する場合、図1Dに示すように、移植用胚10及び移植液20を収容空間150に収容し、必要に応じて外蓋部170により覆い、温度、湿度、ガス濃度等が管理されたインキュベーター内に置く。一般的な細胞培養では、細胞処理液20の揮発を防ぐために、容器底面111と、細胞10及び細胞処理液20が収容された状態の収容部130との全体を覆うようにオイルを充填することができる(図示せず)。しかし移植用胚を処理する場合はオイルによる被覆はできない。本実施形態の細胞処理容器100では、収容空間150の容量が200μl以上であり比較的大容量であるため、オイルを用いない場合においても、細胞処理液20の揮発が比較的少ないため有利である。
以下、図面に示す他の実施形態を説明する。本明細書の図面では各構成の寸法及び形状に関わらず同じ機能を有する構成は同じ符号を付しており、上記実施形態1との特段の相違点を除き説明を省略する。
<実施形態2(図2A、2B)>
実施形態2は、実施形態1の一形態であって、形成面141の細胞保持領域146が、細胞処理容器100の平面視において、収容部130の開口が形成する図形、すなわち収容部上端145の内周側輪郭が囲む図形、の重心と重複しない位置に形成されていることを特徴とする。
実施形態2によれば、平面視において、細胞保持領域146が収容空間150内の偏った位置にあるため、収容空間150内の細胞保持領域146が形成されていない側に比較的大きなスペースの余裕ができる。このため、該細胞保持領域146に支持された細胞をカテーテル、ピペットにより取り扱う場合に、カテーテル、ピペットを前記スペースを通じて挿入することができ、操作が容易となるため有利である。
また細胞保持領域146の位置が偏心した位置にあることにより、使用者にとっては細胞処理容器100の向きを把握することが容易となる。
実施形態2における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様である。
<実施形態3(図3A、3B)>
実施形態3は、実施形態1の一形態であって、収容部130の開口が平面視において形成する図形、すなわち収容部上端145の内周側輪郭が囲む図形、の形状が長方形であることを特徴とする。実施形態3では収容部底面400の上端である、底面側面交差部分147が囲う図形も矩形であり、収容部底傾斜面142は逆四角錐面である。
実施形態3では、収容部130の開口が平面視において形成する長方形の短軸方向幅と長軸方向幅との比は特に限定されないが、好ましくは1:1.2〜1:3である。
収容部130の開口が平面視において形成する図形が長方形である場合、使用者にとっては細胞処理容器100の向きを把握することが容易である。また、収容空間150内では長軸方向に沿って比較的大きなスペースの余裕ができる。このため、該細胞保持領域146に支持された細胞をカテーテルにより取り扱う場合に、カテーテルを前記スペースを通じて挿入することができ、操作が容易となるため有利である。
実施形態3における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様である。
<実施形態4(図4A、4B)>
実施形態4は、実施形態1の一形態であって、収容部130の開口が平面視において形成する図形、すなわち収容部上端145の内周側輪郭が囲む図形、の形状が扁平円であることを特徴とする。実施形態4では収容部底面400の上端である、底面側面交差部分147により囲われる図形も同形の扁平円である。
実施形態4では、収容部130の開口が平面視において形成する扁平円の短軸方向幅と長軸方向幅との比は特に限定されないが、好ましくは1:1.2〜1:3である。
収容部130の開口が平面視において形成する図形が扁平円である場合、使用者にとっては細胞処理容器100の向きを把握することが容易である。また、収容空間150内では長軸方向に沿って比較的大きなスペースの余裕ができる。このため、該細胞保持領域146に支持された細胞をカテーテルにより取り扱う場合に、カテーテルを前記スペースを通じて挿入することができ、操作が容易となるため有利である。
実施形態4における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様である。
<実施形態5(図5)>
実施形態5は、実施形態1の一形態であって、形成面141が、最深部148と、形成面上端149から最深部148に至る収容部底傾斜面142とを有しており、且つ収容部底傾斜面142の傾斜角がどの部分でも45°以下であることを特徴とする。
実施形態5では収容空間150の、上下方向と垂直な方向への膨らみが小さい。このため、収容部底傾斜面142に傾斜角が45°を超える部分を含んでいる場合と比較して、形成面141の最深部148から上端149までの高さを所定値にする場合の収容空間150の容量を小さくすることができる。細胞処理液のなかには非常に高価なものがあるが、実施形態5によれば、収容空間150内に収容される細胞処理液の深さをカテーテル等の操作に十分な深さとしながらも収容する液量を低減することが可能である点で有利である。
実施形態5における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様である。
<実施形態6(図6A〜6G)>
本発明の細胞処理容器は、容器底部に、細胞及び/又は液体を収容するための収容空間が形成された1つ以上の容器状部が更に設けられていてもよい。ここで「容器状部」とは、前記収容部とは別に、本発明の細胞処理容器の一部分に設けることができる、細胞及び/又は液体を収容するための収容空間(容器状部収容空間)が形成された構造である。容器状部収容空間は、細胞の培養や、細胞の洗浄等の目的で細胞及び/又は液体を収容可能な空間である限りどのような形状を有していてもよい。容器状部は、前記容器状部収容空間が形成されている限りどのような形状を有していてもよいが、一般的には上向きに開口した有底の形状を有する。1つ以上の容器状部は、細胞の培養、細胞の洗浄、カテーテルの洗浄等の目的で利用することが可能である。本発明のこの形態の一例として図6A〜6Gに実施形態6を示す。
実施形態6の細胞処理容器100は、実施形態1の細胞処理容器100において更に、容器底部110上に、1つの培養用容器状部610と、3つの洗浄用容器状部620が設けられている。実施形態6では培養用容器状部610及び洗浄用容器状部620は容器底部110から外周空間160中に突出するように形成されている。
1つの細胞処理容器100が、収容部130に加えて、1つ以上の容器状部610、620を備えることで次の有利な効果が実現できる。例えば胚を移植のために培養するためには、受精後の胚を培養液中で培養する工程1と、培養後の胚から前記培養液や前記培養液の被覆に用いたオイルを洗浄する工程2と、洗浄後の胚を移植液に浸して処理する工程3とを行う場合がある。これらの工程をそれぞれ異なる容器で行う場合、容器間で胚を移す際に取り違えのリスクがあり、取り違えを防ぐための管理が必要となるため、操作が非常に複雑であり時間がかかり、胚の移植を迅速に行うことが困難である。実施形態6の細胞処理容器100を用いれば、工程1は培養用容器状部610で行い、工程2は洗浄用容器状部620で行い、工程3は収容部130で行うことができるため、容器間での胚の移し替えが不要となり作業が簡略化できるとともに胚の取り違えや損傷の危険を低減できる。
培養用容器状部610は、容器底部110から起立した培養用容器状部周壁部611を備え、培養用容器状部周壁部611に囲われた空間として培養用容器状部収容空間612を形成している。培養用容器状部610は、培養用容器状部収容空間612を形成する面として、該空間の底を形成する培養用容器状部底面613と、下端が培養用容器状部底面613の周縁と接続し上端が培養用容器状部収容空間612の開口を囲う培養用容器状部側面614とを備える。培養用容器状部底面613には、細胞630を位置決めするためのマイクロウェル615が1または複数個形成されている。
培養用容器状部610において、培養用容器状部収容空間612の容量は特に限定されず、例えば10μl〜1000μlとすることができる。培養用容器状部収容空間612の容量の定義は、収容部収容空間150の容量の定義と同様であり、細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態において、培養用容器状部側面614の上端のなかでも最も下方に位置する部分を通り且つ前記水平面と平行な仮想平面と、培養用容器状部底面613と、培養用容器状部側面614とにより囲まれた空間の容積を指す。より好ましくは、培養用容器状部収容空間612に小容量の培養液、例えば10μl〜100μlの培養液のドロップ(液塊)を収容でき、かつ10μl〜100μlの培養液のドロップによって培養用容器状部底面613の全面を覆うことが可能であり、ドロップの高さが0.35mm以上、より好ましくは0.5mm以上となるように培養用容器状部収容空間612が形成されている。このためには、培養用容器状部底面613の面積は、好ましくは0.75mm2以上、より好ましくは3mm2以上、さらに好ましくは5mm2以上であり、好ましくは20mm2以下、より好ましくは13mm2以下である。培養用容器状部底面613の面積を0.75mm2以上とすることにより、細胞、好ましくはヒト受精卵を収容可能な複数のマイクロウェル615を培養用容器状部底面613に配置することができる。また、培養用容器状部底面613の面積を、20mm2以下とすることにより、小容量の培養液(例えば10μl)のドロップでも、培養用容器状部底面613の全面を覆うことが可能であり、ドロップが培養用容器状部底面613上で大きく移動することを防止できる。
培養用容器状部610は、図6Cに示すように、培養用容器状部収容空間612にドロップ状の培養液640を形成し、該培養液640で覆われたマイクロウェル615に細胞630を配置して、細胞630の培養のための培養容器として用いることができる。このとき、図示するように、培養用容器状部周壁部611の上端616が、収容部上端145よりも容器下面112に近い場合には、ドロップ状の培養液640の上面を覆うように外周空間16にオイル650を加えることができ、培養液640の乾燥をオイル650の層により抑制しながら、収容部内部空間150にオイル650が入り込まない状態で細胞630の培養が可能である。
マイクロウェル615の好ましい実施形態を説明するために、1つのマイクロウェル615の近傍を拡大して図6D、図6E、図6F及び図6Gに示す。
図6Dに示すマイクロウェル615の一実施形態では、マイクロウェル615は培養用容器状部底面613に形成され、上向きに開口した形状を有する。マイクロウェル615には、細胞を収容するためのマイクロウェル内空間6153が形成されている。マイクロウェル内空間6153は、マイクロウェル底面6151と、マイクロウェル底面6151の周縁から起立したマイクロウェル側面6152とにより形成される。なおマイクロウェル底面6151とマイクロウェル側面6152は、図示するような明確に区別可能な面である必要はなく、互いに滑らかに連続した面であってもよい。マイクロウェル底面6151は図示するように下方に窪んだ面であってもよいし、マイクロウェル内空間6153に向け突出した面であってもよいし、平坦な面であってもよい。マイクロウェル底面6151が下方に窪んだ面である場合、マイクロウェル側面6152は存在しなくてもよく、その場合、マイクロウェル底面6151の周縁が、マイクロウェル615の開口を形成する。
マイクロウェル615のより好ましい実施形態としては、マイクロウェル側面6152に凹凸構造が形成された実施形態が挙げられる。マイクロウェル側面6152に凹凸構造を形成することにより、培養用容器状部610に培養液640を収容したときに、微小なマイクロウェル内空間6153に気泡が残存することを抑制でき、気泡を抜く作業を行う頻度を低減させることができる。マイクロウェル側面6152上に形成することができる凹凸構造としては、2以上のライン状の凹部及び/又は2以上のライン状の凸部を含む構造や、2以上のドット状の突起及び/又は2以上のドット状の窪みを含む構造が挙げられる。
2以上のライン状の凹部及び/又は2以上のライン状の凸部を含む凹凸構造としては、2以上のライン状の凸部がスペースを挟んで連続して形成されている構造や、2以上のライン状の凹部がスペースを挟んで連続して形成されている構造などが挙げられる。2以上のライン状の凸部がスペースを挟んで連続して形成されている構造は、スペース部分を凹部とみなすことができるので、実質的には、2以上のライン状の凹部がスペースを挟んで連続して形成されている構造であり、また、ライン状の凸部とライン状の凹部とが交互に形成された構造でもある。
図6E及び図6Fに示すマイクロウェル615の実施形態は、マイクロウェル側面6152に、2以上のライン状の凹部6154及び2以上のライン状の凸部6155が交互に形成された一実施形態である。以下、凹部6155を隣接する2つの凸部6154間のスペースとして説明する。ライン状の凸部6154及びライン状の凹部6155はそれぞれ、マイクロウェル615の底から開口に向かう方向に形成されていることが好ましい。マイクロウェル底面6151の平面視での重心を通り且つ細胞処理容器100の上下方向に沿った仮想直線をマイクロウェル側面6152上に投影した線の方向を「方向1」としたとき、ライン状の凸部6154及びライン状の凹部6155はそれぞれ方向1に対する角度が30°以下の方向に沿うように形成されていることが好ましい。
ライン状の凸部6154及び凹部6155は直線状でも曲線状でもよいが、成形が容易であること、および気泡抜け効果が高いことから直線状であることが好ましい。
2以上のライン状の凸部6154はずれも実質的に同一の幅および高さを有することが好ましい。また、2以上のスペースに相当する凹部6155は、いずれも実質的に同一の幅および高さ(深さ)を有することが好ましい。
2以上のライン状の凹凸構造において、ライン状の凸部6154の幅(X11)およびライン状の凹部6155の幅(X12)は、それぞれ、マイクロウェル615の開口の縁部の長さの1/3140〜1/4.5の範囲、好ましくは1/314〜1/4.5の範囲、さらに好ましくは1/165〜1/15の範囲、特に好ましくは1/82.5〜1/15の範囲である。具体的な寸法としては、ライン状の凸部6154の幅(X11)およびライン状の凹部6155の幅(X12)は、それぞれ、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上、とりわけ好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。前記の各幅(X11、X12)は、例えば、三次元測定レーザー顕微鏡によって任意のマイクロウェル615における複数の凹凸構造の凸部の幅および凹部の幅を測定し、該測定値の平均値をそれぞれ算出することにより、決定することができる。凸部6154および凹部6155の幅を一定以上とすることで、加工成形精度が悪くなるおそれを回避できる。また、一定以下とすることで、マイクロウェル615の構造に対して凹凸構造が大きくなり形状の作成が困難になることを回避できる。
ライン状の凸部6154及びライン状の凹部6155はそれぞれ、細胞処理容器100の上下方向に垂直な平面による断面の形状が、方形状または円弧状となるように形成されることが好ましく、前記方形状における各辺及び角は丸みを帯びていてもよい。
ライン状の凸部6154のスペース部分であるライン状の凹部6155に対する高さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。ここで、ライン状の凸部6154のスペース部分であるライン状の凹部6155に対する高さとは、凸部6154の天面と、該凸部6154に隣接する凹部6155の底面との間の、距離の最大値を指す。ライン状の凸部6154の幅に対する高さの比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。凸部6154の凹部6155に対する高さは、例えば、三次元測定レーザー顕微鏡によって任意のマイクロウェル615における複数の凸部614の高さを測定し、該測定値の平均値を算出することにより、決定することができる。また、凸部6154の幅に対する高さの比は、前記で説明した手段によって決定された凸部6154の幅および高さの値を用いて算出することができる。
マイクロウェル側面6152に形成することができる、2以上のドット状の突起及び/又は2以上のドット状の窪みを含む凹凸構造において、各突起及び窪みの形状は特に限定されず、錐体、錐台、柱体、ランダムな異方性凹凸状等が挙げられる。錐体状、錐台状、および柱体状の突起および窪みが加工性の点から好ましい。
図6Gに示すマイクロウェル615の実施形態は、マイクロウェル側面6152に、2以上の円柱体状の突起6156が形成された一実施形態である。
錐体状突起および錐台状突起の場合は、突起の先端ほど細くなる形状が加工性の点から好ましく、錐体状窪みおよび錐台状窪みの場合は、窪みの開口側ほど開口幅が広くなる形状が加工性の点から好ましい。
ドット状突起の幅及びドット状窪みの開口幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。突起の幅および窪みの開口幅を一定以上とすることで、加工成形精度が悪くなるおそれを回避できる。また、一定以下とすることで、マイクロウェルの構造に対して窪み部分が大きくなり形状の作成が困難になることを回避できる。突起の幅は、突起の軸に垂直な切断面の図形における最大径の最大値を指す。窪みの開口幅は、窪みの開口部の図形における最大径を指す。
ドット状突起の高さ及びドット状窪みの深さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。突起の幅に対する突起の高さの比(高さ/幅)、並びに窪みの開口幅に対する窪みの深さの比(深さ/開口幅)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下である。
ドット状突起の高さ及びドット状窪みの深さを一定以上とすることで、加工成形精度が悪くなるおそれを回避できる。また、一定以下とすることで、マイクロウェルの構造に対して突起部分および窪み部分が大きくなり形状の作成が困難になることを回避できる。また、高さの比を一定以下とすることで、側面の窪みや突起形状を射出成形等で形成する場合に、金型から垂直剥離する際の剥離が困難になったり、形状が破壊されてしまったりする可能性を回避できる。
ドット状突起のピッチ及びドット状窪みのピッチは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
ピッチを一定以上とすることで、加工成形精度が悪くなるおそれを回避できる。また、一定以下とすることで、マイクロウェルの構造に対して突起部分および窪み部分が大きくなり形状の作成が困難になることを回避できる。
ドット状突起のピッチは、隣り合う2つの突起の間隔であり、突起の中心間の距離をさす。ここで、突起の中心は、突起の先端部における図形の重心とする。ドット状窪みのピッチは、隣り合う2つの窪みの間隔であり、窪みの中心間の距離をさす。ここで、窪みの中心は、窪みの開口部の図形の重心とする。ピッチは通常平均ピッチを指し、平均ピッチは、ある突起に関しては、近接する全ての突起とのピッチから平均値を算出したものをさし、ある窪みに関しては、近接する全ての窪みとのピッチから平均値を算出したものをさす。
ドット状突起とドット状窪みは混在していてもよいが、加工性の観点から、ドット状突起のみまたはドット状窪みのみが形成されていることが好ましく、ドット状突起のみが形成されていることがより好ましい。
各マイクロウェル615は細胞を収容可能な開口幅を有することが好ましい。各マイクロウェル615の開口幅は、各マイクロウェル615の開口の周縁を、前記上下方向に垂直な仮想平面上に投影したときに、前記周縁が形成する図形の幅の寸法を指す。更に、開口幅の最小値とは、前記図形の重心を間に介して対向する、前記図形の周縁上の一対の点の間の距離の最小値(例えば前記図形が円の場合は直径の長さ、楕円の場合は短径の長さ)を指す。各マイクロウェル615の開口幅の最小値が、培養する細胞の最大寸法より大きいとき、各マイクロウェル615は細胞を収容可能である。培養用容器状部610を用いて受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、各マイクロウェル615の開口幅の最小値は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいものであることが望ましい。胚盤胞の段階の細胞の最大寸法は通常100μm〜280μmであることから、各マイクロウェル615の開口幅の最小値は、通常100μm以上であり、より好ましくは250μm以上である。更に、各マイクロウェル615は、小さい面積の領域内に密集して配置することができる寸法を有することが好ましい。各マイクロウェル615の開口幅の最大値は、通常、隣接するマイクロウェル615間のピッチよりも小さくなるように設定される。各マイクロウェル615の開口幅の最大値は好ましくは1000μm未満であり、より好ましくは700μm未満である。ここで、各マイクロウェル615の開口幅の最大値とは、各マイクロウェル615の開口の周縁を、前記上下方向に垂直な仮想平面上に投影したときに、前記周縁が形成する図形において、前記図形の重心を間に介して対向する、前記図形の周縁上の一対の点の間の距離の最大値を指す。各マイクロウェル615の開口幅の最大値を1000μm未満とすることにより隣接するマイクロウェル615間のピッチを小さい値にすることができ、培養用容器状部底面613内の小さな面積の領域に複数個のマイクロウェル615を密集させることが可能となるため、細胞を個別に管理しつつ複数個の細胞を同時に培養でき、更に顕微鏡の一視野に多くの細胞が入るため、一度に多くの細胞を観察することができる。また、各マイクロウェル615の開口幅の最大値を1000μm未満とすることにより、各マイクロウェル615内での細胞の移動が小さく観察が容易となる。近接するマイクロウェル615は1mm2あたり好ましくは1個以上、より好ましくは4個以上の密度で配置されている。
培養用容器状部610内でウシ受精卵を培養する場合、各マイクロウェル615の開口幅の最小値は、通常250μm以上、好ましくは260μm以上、さらに好ましくは270μm以上であり、各マイクロウェル615の開口幅の最大値は通常1000μm未満、さらに好ましくは700μm未満である。また、各マイクロウェル615の開口幅の最小値は、X+m(ここでXは細胞の最大径を表す)と規定することもできる。ここで、mは、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
近接するマイクロウェル615の間のピッチは、近接するマイクロウェル615の中心間の距離である。マイクロウェル615の中心は、マイクロウェル615の開口の周縁を、前記上下方向に垂直な仮想平面上に投影したときに、前記周縁が形成する図形の重心位置とし、開口の周縁が円形であればその円の中心である。マイクロウェル615間のピッチは通常平均ピッチを指し、平均ピッチは、あるマイクロウェル615に関しては、近接する全てのマイクロウェル615とのピッチから平均値を算出したものを指す。
マイクロウェル615の開口の周縁が円形である場合、近接するマイクロウェル615間のピッチは、X+m+n(ここで、Xは細胞の最大径を表し、mはマイクロウェル615の開口の周縁が形成する円の直径から細胞の最大径を引いた長さを表し、nはマイクロウェル615間の仕切りの長さを表す)と規定することもできる。マイクロウェル615間の仕切りとは、近接するマイクロウェル615間の開口の周縁の間の最短距離を指す。ここでmは通常100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、nは通常600μm以下、好ましくは350μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
上記のようなピッチでマイクロウェル615を密に配置することにより、細胞を個別に管理しつつ多くの細胞を同時に培養でき、さらに顕微鏡の一視野に多くの細胞が入るため、一度に多くの細胞を観察することができる。
また、各マイクロウェル615の深さは、特に限定されるものではないが、浅過ぎると、培養容器の輸送時や細胞の分裂時などに細胞が動き、細胞が各マイクロウェル615の範囲外に出てしまう恐れがあるため、確実に細胞を各マイクロウェル615内に保持できるように適宜設定される。一方、深過ぎると、各マイクロウェル615内に培養液や細胞を導入することが難しくなるため、細胞を各マイクロウェル615内に保持しつつ、深過ぎない値になるよう適宜設定される。例えば、深さの上限を、各マイクロウェル615の開口幅の最大値と最小値との平均値に対して3倍以下とすることができる。さらに、培養液の導入を容易にするためには、深さは、各マイクロウェル615の開口幅の最大値と最小値との平均値の1倍以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。また、各マイクロウェル615の開口幅の最大値と最小値との平均値が小さく、深さが深いほど対流が起きにくくなるため、細胞の呼吸や代謝に伴って、周辺の培養液の組成変化が起きやすくなる可能性がある。細胞は、周辺の培養液の組成の影響を受けて成長しやすさが変化するため、細胞の成長を促すように生物学的な影響を考慮して直径と深さを設定することが好ましい。各マイクロウェル615の深さは50μm〜500μm、特に50μm〜300μm、とりわけ100μm〜300μmの範囲であると、作業性向上および培養細胞を安定的に保持できる点から好ましい。例えば、ウシ受精卵を培養するための培養用容器状部610の場合、各マイクロウェル615の深さは80μm以上、さらに好ましくは125μm以上とすることが好ましい。なお、各マイクロウェル615の深さはマイクロウェル底面6151の最深部から、マイクロウェル615の開口までの前記上下方向に沿った距離を指す。
なお培養用容器状部610の培養用容器状部底面613にマイクロウェル615が設けられていることは必須ではなく、培養用容器状部底面613は平坦な面であってもよいし、全体が下方に窪んだ凹面であってもよい(図示せず)。
洗浄用容器状部620は、容器底部110から起立し上向きに開口した洗浄用容器状部周壁部621を備え、洗浄用容器状部周壁部621に囲われた空間として洗浄用容器状部収容空間622を形成している。洗浄用容器状部620は、洗浄用容器状部収容空間622を形成する面として、該空間の底を形成する洗浄用容器状部底面623と、下端が洗浄用容器状部底面623の周縁と接続し上端が洗浄用容器状部収容空間622の開口を囲う洗浄用容器状部側面624とを備える。
洗浄用容器状部620において、洗浄用容器状部収容空間622の容量は特に限定されず、例えば10μm〜1000μlとすることができる。洗浄用容器状部収容空間622の容量の定義は、収容部収容空間150の容量の定義と同様であり、細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態において、洗浄用容器状部側面624の上端のなかでも最も下方に位置する部分を通り且つ前記水平面と平行な仮想平面と、洗浄用容器状部底面623と、洗浄用容器状部側面624とにより囲まれた空間の容積を指す。
洗浄用容器状部底面623の形状は特に限定されず、平坦面であってもよい。より好ましくは、洗浄用容器状部底面623は、洗浄用容器状部620の深さが最も深い部分である最深部625と、最深部625の周りを囲う、最深部625と連続した洗浄用容器状部底傾斜面627を含み、最深部625の近傍の細胞保持領域626において、傾斜した面により細胞の周囲を囲い細胞を保持することができるように形成されている。この構成によって、洗浄対象細胞を細胞保持領域626に集めることが可能となり、カテーテルやピペットを用いた細胞の洗浄操作が容易となる。
洗浄用容器状部620は1つであってもよいが、図示するように複数個設けられていることが好ましい。洗浄用容器状部620が複数個設けられていれば、それぞれの洗浄用容器状部620に洗浄用液を収容し、細胞を1つの洗浄用容器状部620中で洗浄し、洗浄後の細胞を別の浄用容器状部620に移し替えて更に洗浄する、といった操作が可能である。複数個の洗浄用容器状部620は、同じ形状、寸法である必要はなく、相互に異なる形状、寸法を有するものであってもよい。
また洗浄用容器状部620は細胞を洗浄する目的だけでなく、カテーテル、ピペット等の器具を洗浄するための洗浄液を収容する目的で設けることもできる。
<実施形態7(図7A、7B)>
図7A、7Bに示す実施形態7の細胞処理容器100は、容器底部110に1つ以上の容器状部が設けられている他の具体例である。
実施形態7では、実施形態1等の細胞処理容器100が、容器底部110から起立し、収容部周壁部140と外周壁部120とを架橋する2つ以上の隔壁701、702、703を更に備え、各容器状部710、720、730が、容器底部110を底部とし、周囲が収容部周壁部140と外周壁部120と前記2つ以上の隔壁701、702、703のうち隣接する一対とに囲われて形成されている。図示する実施形態7では3つの隔壁が設けられており、それぞれを区別するために第1隔壁701、第2隔壁702、及び第3隔壁704とする。第1容器状部710には、容器底面111により底面が形成され、周囲が収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第1隔壁701の一方の面704と第2隔壁702の一方の面705とにより囲われた、下方が閉塞し上方にされた第1容器状部収容空間161が形成されている。以下、収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第1隔壁701の一方の面704と第2隔壁702の一方の面705とを「第1容器状部収容空間161を囲う側壁面」という。第2容器状部720には、容器底面111により底面が形成され、周囲が収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第2隔壁702の他方の面706と第3隔壁703の一方の面707とにより囲われた、下方が閉塞し上方に開放された第2容器状部収容空間162が形成されている。以下、収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第2隔壁702の他方の面706と第3隔壁703の一方の面707とを「第2容器状部収容空間162を囲う側壁面」という。第3容器状部730には、容器底面111により底面が形成され、周囲が収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第3隔壁703の他方の面708と第1隔壁701の他方の面709とにより囲われた、下方が閉塞し上方に開放された第3容器状部収容空間163が形成されている。以下、収容部外壁面144と外周壁部内周面121と第3隔壁703の他方の面708と第1隔壁701の他方の面709とを「第3容器状部収容空間163を囲う側壁面」という。
隔壁の数は2以上であればよく3に限らず、2、4、5、6等であることができる。
第1容器状部710、第2容器状部720及び第3容器状部730はそれぞれ、実施形態6での容器状部610、620と同様に、培養用、洗浄用等の目的で使用することができる。細胞培養用に用いる場合、第1容器状部710、第2容器状部720又は第3容器状部730内の容器底面111には、実施形態6で説明したのと同様のマイクロウェル615が1または複数個形成されてもよい(図示せず)。また、後述する実施形態7変形例10(図34参照)に示すように、収容部周壁部140と外周壁部120と隣接する一対の隔壁とにより形成される容器状部710、720,730内の容器底面111上に、更に別の容器状部が形成されていてもよい。
収容部周壁部140と外周壁部120と隣接する一対の隔壁とにより形成される容器状部の個数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。細胞処理容器100を平面視したときの各容器状部の収容空間の面積は均一であってもよいし、均一でなくてもよい。各容器状部は、細胞の培養、洗浄等の異なる目的で利用することが可能である。容器状部が2つ以上あれば、各容器状部を異なる目的で利用することができる。また、細胞の洗浄、カテーテルの洗浄等を、処理する対象物毎に別の容器状部を用いて実施できるようにするためには、容器状部は3つ以上形成されていることが好ましい。
第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162、第3容器状部収容空間163のそれぞれの容量は特に限定されないが、例えば0.25mL〜5mLの範囲である。各収容空間161、162、163の容量の定義は収容部130の収容空間150の容量の定義と同様である。第1容器状部収容空間161(或いは第2容器状部収容空間162の容積、又は第3容器状部収容空間164)の容積は、細胞処理容器100を平坦な水平面上に載置した状態において、第1容器状部収容空間161を囲う側壁面(或いは第2容器状部収容空間162を囲う側壁面、又は第3容器状部収容空間163を囲う側壁面)の上端のなかでも最も下方に位置する部分を通り且つ前記水平面と平行な仮想平面と、容器底面111と、第1容器状部収容空間161を囲う側壁面(或いは第2容器状部収容空間162を囲う側壁面、又は第3容器状部収容空間163を囲う側壁面)とにより囲まれた空間の容積を指す。
実施形態7の細胞処理容器100は、実施形態6の細胞処理容器100と同様に使用することができ、同様の効果を実現することができる。
実施形態7の細胞処理容器、及び後述する実施形態8〜22の細胞処理容器では、収容部130を、容器底部110に設けられた、細胞及び細胞処理液を収容するための収容空間が形成され上向きに開口した1つ以上の他の収容部に置き換えることもできる(図示せず)。
実施形態7の細胞処理容器100において第1隔壁上端711、第2隔壁上端712、第3隔壁上端713、収容部上端145、外周壁部上端122の、容器底面111からの細胞処理容器100の上下方向に沿った距離(前記各上端が、上下方向に垂直な1つの平面に沿っていない場合は、前記各上端の、容器底面111からの細胞処理容器100の上下方向に沿った距離のうち最も短い距離)をそれぞれd1、d2、d3、e、fとする。実施形態7の細胞処理容器100において、各寸法d1、d2、d3、e、fの値は特に限定されない。
ただし各隔壁701、702、703の高さに相当するd1、d2、d3は相互に独立して1mm〜15mmであることが好ましい。各隔壁701、702、703は第1〜第3容器状部710、720、730の各収容空間161、162、163に液体を供給する場合に、各隔壁701、702、703の壁面に液体を含んだカテーテルやピペットの先端を近接させ、該壁面に前記液体を伝わせながら供給するために用いることができる。このときd1、d2、d3が15mm以下であれば、液体が容器外に漏れにくく、操作性に優れる。またd1、d2、d3が1mm以上であれば、各隔壁と接する収容空間161、162、163に十分な深さで液体を収容することができるため、各収容空間161、162、163に収容された細胞や培養液をピペットやカテーテル等で取り扱うことが容易である。
<実施形態7〜19(図7A、7B、8〜19)>
実施形態7の細胞処理容器100において、第1隔壁701の上端を第1隔壁上端711とし、第2隔壁702の上端を第2隔壁上端712とし、第3隔壁703の上端を第3隔壁上端713とする。図示する例では第1隔壁上端711、第2隔壁上端712、第3隔壁上端713はそれぞれ平坦面であるが、平坦面であることは必須ではなく曲面であってもよいし、稜線であってもよい。外周壁部上端122、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712、第3隔壁上端713の、容器下面112からの細胞処理容器100の上下方向に沿った距離(前記各上端が、上下方向に垂直な1つの平面に沿っていない場合は、前記各上端の、容器下面112からの細胞処理容器100の上下方向に沿った距離のうち最も短い距離)をそれぞれa、b、c1、c2、c3とする。
実施形態7の細胞処理容器100ではa>b>c1=c2=c3の関係にある。
図8〜19に示す実施形態8〜19の細胞処理容器100は、a、b、c1、c2、c3の相対的な大小関係が異なる点を除いて実施形態7の細胞処理容器100と同じ構造を有する変形例である。
実施形態8(図8)の細胞処理容器100ではa=b=c1=c2=c3の関係にある。
実施形態9(図9)の細胞処理容器100ではc1=c2=c3>a=bの関係にある。
実施形態10(図10)の細胞処理容器100ではa=b>c1=c2=c3の関係にある。
実施形態11(図11)の細胞処理容器100ではa>b=c1=c2=c3の関係にある。
実施形態12(図12)の細胞処理容器100ではb=c1=c2=c3>aの関係にある。
実施形態13(図13)の細胞処理容器100ではa=c1=c2=c3>bの関係にある。
実施形態14(図14)の細胞処理容器100ではb>a=c1=c2=c3の関係にある。
実施形態15(図15)の細胞処理容器100ではb>a>c1=c2=c3の関係にある。
実施形態16(図16)の細胞処理容器100ではa>c1=c2=c3>bの関係にある。
実施形態17(図17)の細胞処理容器100ではb>c1=c2=c3>aの関係にある。
実施形態18(図18)の細胞処理容器100ではc1=c2=c3>a>bの関係にある。
実施形態19(図19)の細胞処理容器100ではc1=c2=c3>b>aの関係にある。
実施形態7〜19の各細胞処理容器100ではa、b、c1、c2、c3の大小関係が異なることにより、それぞれ特徴が異なり、異なる用い方が可能である。
(特徴1)実施形態7〜19の細胞処理容器100のいずれも、水平面上に載置された状態で、収容空間150、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162、第3容器状部収容空間163のぞれぞれに、前記各収容空間を囲う面の上端を越えない範囲で液体を収容すれば、前記各収容空間に収容された液体が相互に混じり合わないため、前記各収容空間内で個別に細胞の処理、洗浄、培養等の個別の管理が可能である。
(特徴2)実施形態7、8、10、11、13、16の細胞処理容器100では、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713が、それぞれ独立して、外周壁部上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部上端122よりも下方にある。このため、外周壁部上端122と当接する外蓋部170により、細胞処理容器100の、外周壁部120により形成される開口の全体を覆うことができる。一例として実施形態8の細胞処理容器100を外蓋部170により覆った状態を図20に示す。外蓋部170は外周壁部上端122と全周に亘って当接するため、比較的気密性の高い状態で細胞処理容器100を封じることができる。
当該特徴2の効果を得るためには、収容部130の上端145と、2つ以上の隔壁701、702、703の各々の上端711、712、713とが、それぞれ独立して、外周壁部120の上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部120の上端122よりも下方にある、という条件を満たせばよい。
(特徴3)実施形態7、11、16の細胞処理容器100では、外周壁部内周面121の上端が、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713よりも上方に突出しているため、周縁が外周壁部内周面121の上端の内周に収まる形状の中蓋部210により収容空間150、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162、第3容器状部収容空間163を覆うことができる。一例として実施形態11の細胞処理容器100を中蓋部210により覆った状態を図21に示す。
当該特徴3の効果を得るためには、外周壁部120の上端122が、収容部130の上端145及び2つ以上の隔壁701、702、703の各々の上端711、712、713よりも上方にある、という条件を満たせばよい。
(特徴4)実施形態8、9、10、12、14、15、17,19の細胞処理容器100では、収容部上端145が、外周壁部上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部上端122よりも上方にある。このため、実施形態8、9、10、12、14、15、17,19の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162及び/又は第3容器状部収容空間163に、液面が外周壁部120の上端に至るまで液体を収容した場合でも、該液体が収容部上端145を越えて収容空間150に移動することがない。このため収容部130と第1〜第3容器状部710、720,730とで相互に細胞処理液が混じり合わず個別に細胞の処理、培養、洗浄等の操作を行うことが容易である。
当該特徴4の効果を得るためには、収容部130の上端145が、外周壁部120の上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部120の上端122よりも上方にある、という条件を満たせばよい。
(特徴5)実施形態7、11、13、16、18の細胞処理容器100では、外周壁部上端122が、収容部上端145よりも上方にある。このため、実施形態7、11、13、16、18の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162及び第3容器状部収容空間163に、液面が収容部上端145を越えるまで液体を収容することが可能であり、収容空間150と、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162及び第3容器状部収容空間163とに共通の液体を収容することができる。このため収容部130と第1〜第3容器状部710、720,730とで共通の細胞処理液を用いて細胞の処理、培養、洗浄等の操作を行うことが容易である。
当該特徴5の効果を得るためには、外周壁部120の上端122が、収容部130の上端145よりも上方にある、という条件を満たせばよい。
(特徴6)実施形態8、9、12、14、17、19の細胞処理容器100では、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713が、それぞれ独立して、外周壁部上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部上端122よりも上方にある。このため、実施形態8、9、12、14、17、19の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162及び/又は第3容器状部収容空間163に、液面が外周壁部120の上端に至るまで液体を収容した場合でも、該液体が収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712または第3隔壁上端713を越えて隣接する容器状部収容空間161、162、163に移動することがない。このため第1〜第3容器状部710、720、730の各々で相互に細胞処理液が混じり合わず個別に細胞の処理、培養、洗浄等の操作を行うことが容易である。
当該特徴6の効果を得るためには、収容部130の上端145と、2つ以上の隔壁701、702、703のうち少なくとも隣接する一対(例えば701と702、702と703、703と701)の上端711、712、713とが、それぞれ独立して、外周壁部120の上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部120の上端122よりも上方にある、という条件を満たせばよい。より好ましくは、収容部130の上端145と、2つ以上の隔壁701、702、703の全ての上端711、712、713とが、それぞれ独立して、外周壁部120の上端122と上下方向位置が同じである、或いは、外周壁部120の上端122よりも上方にある。収容部130が複数含まれる場合は、少なくとも1つの収容部130の上端145と、該少なくとも1つの収容部130と外周壁部120とを架橋する2つ以上の隔壁701、702、703のうち少なくとも隣接する一対の上端711、712、713とが前記条件を満たせばよい。
(特徴7)実施形態7、10、11、13、15、16、18の細胞処理容器100では、外周壁部上端122が、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713よりも上方にある、或いは、外周壁部上端122が、収容部上端145よりも上方にある。このため、実施形態7、10、11、13、15、16、18の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161、第2容器状部収容空間162及び第3容器状部収容空間163に、液面が第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713を越えるまで、或いは、収容部上端145を越えるまで液体を収容することが可能であり、第1容器状部収容空間161と、第2容器状部収容空間162と、第3容器状部収容空間163とで共通の液体を収容することができる。このため第1〜第3容器状部710、720,730において共通の細胞処理液を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行うことが容易である。
当該特徴7の効果を得るためには、外周壁部120の上端122が、2つ以上の隔壁701、702、703の各々の上端711、712、713及び収容部130の上端145から選択される少なくとも1つよりも上方にある、という条件を満たせばよい。2つ以上の隔壁701、702、703のうち少なくとも1つを介して隣接する2つ以上の容器状部収容空間で、或いは、収容部130を介して隣接する2つ以上の容器状部収容空間で共通する液体を収容することができる。
(特徴8)実施形態9、12、14、15、17、18、19の細胞処理容器100では、収容部上端145並びに/又は第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713が、外周壁部上端122よりも上方にある。このため、これらの容器が外蓋体170を更に含む場合、外蓋体170は、収容部上端145並びに/又は第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713に当接し、外周壁部上端122には当接しないで細胞処理容器100を覆うことができる。一例として、実施形態9の細胞処理容器100を外蓋部170により覆った状態を図22に示す。外蓋部170は外周壁部上端122に当接しないため、容器内の内気と外気との通気性が比較的保たれた状態で細胞処理容器100の開口を覆うことができる。
(特徴9)実施形態9、12、14、15、17、18、19の細胞処理容器100では、収容部上端145並びに/又は第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713が、外周壁部上端122よりも上方にある。従ってこれらの実施形態では、収容部130並びに/又は第1〜第3容器状部710、720、730は外周壁部上端122よりも上方に突出した壁面を有する。このため収容部130並びに/又は第1〜第3容器状部710、720、730の各収容空間に液体を供給する場合に、前記突出した壁面に液体を含んだカテーテルやピペットの先端を近接させ、前記突出した壁面に前記液体を伝わせながら供給することが容易であり、液体供給時の液跳ねを抑制することが容易である。
当該特徴8及び9の効果を得るためには、2つ以上の隔壁701、702、703の各々の上端711、712、713及び収容部130の上端145から選択される少なくとも1つが、外周壁部120の上端122よりも上方にある、という条件を満たせばよい。
図示する実施形態7〜19では、各隔壁701、702、703の上端711、712、713の上下方向位置に相当する、容器底面112からの高さ(c1、c2、c3)は全て同一である。しかしながら、上記の特徴1〜9の効果を得るためには、各特徴1〜9について詳述した各条件を満たしている限り、各隔壁701、702、703の上端711、712、713の上下方向位置は同一であってよいし、異なっていてもよい。また収容部130が複数含まれる場合は、各収容部130の収容部上端145の上下方向位置に相当する、容器底面112からの高さ(b1)は同一であっても異なっていてもよい。
<実施形態20、21、22(図23、24、25)>
図23、24、25に示す実施形態20、21、22の細胞処理容器100はa、b、c1、c2、c3の相対的な大小関係が異なる点を除いて実施形態7の細胞処理容器100と同じ構造を有する変形例である。
実施形態20(図23)の細胞処理容器100ではa>b>c1=c2>c3の関係にある。
実施形態21(図24)の細胞処理容器100ではa>b>c2=c3>c1の関係にある。
実施形態22(図25)の細胞処理容器100ではa>b>c1=c3>c2の関係にある。
実施形態20の細胞処理容器100では、第1隔壁上端711及び第2隔壁上端712が、第3隔壁上端713よりも上方にある。このため、実施形態20の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第2容器状部収容空間162及び第3容器状部収容空間163に、液面が第3隔壁上端713を越えるが、第1隔壁上端711及び第2隔壁上端712は超えないように液体を収容することができる。すなわち、第2容器状部収容空間162及び第3容器状部収容空間163に共通の液体を収容することができ、同時に、第1容器状部収容空間161には、別の液体を混じり合うことなく収容することができる。このため第2及び第3容器状部720,730において共通の液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行い、第1容器状部710では別途独立した液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行うことができる。
実施形態21の細胞処理容器100では、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713が、第1隔壁上端711よりも上方にある。このため、実施形態21の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161及び第3容器状部収容空間163に、液面が第1隔壁上端711を越えるが、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713は超えないように液体を収容することができる。すなわち、第1容器状部収容空間161及び第3容器状部収容空間163に共通の液体を収容することができ、同時に、第2容器状部収容空間162には、別の液体を混じり合うことなく収容することができる。このため第1及び第3容器状部710,730において共通の液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行い、第2容器状部720では別途独立した液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行うことができる。
実施形態22の細胞処理容器100では、第1隔壁上端711及び第3隔壁上端713が、第2隔壁上端712よりも上方にある。このため、実施形態22の細胞処理容器100を水平面上に載置した状態で、第1容器状部収容空間161及び第2容器状部収容空間162に、液面が第2隔壁上端712を越えるが、第1隔壁上端711及び第3隔壁上端713は超えないように液体を収容することができる。すなわち、第1容器状部収容空間161及び第2容器状部収容空間162に共通の液体を収容することができ、同時に、第3容器状部収容空間163には、別の液体を混じり合うことなく収容することができる。このため第1及び第2容器状部710,720において共通の液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行い、第3容器状部730では別途独立した液体を用いて細胞の培養、洗浄等の操作を行うことができる。
すなわち、実施形態20、21、22に係る細胞処理容器100では、収容部130の少なくとも1つと外周壁部120とを架橋する隔壁701、702、703を3つ以上備え、該3つ以上の隔壁701、702、703が、1つの又は隣接した2つ以上の隔壁Aと、隔壁Aに隣接する一対の隔壁Bと、を含み、一対の隔壁Bの各々の上端は、隔壁Aの各々の上端よりも上方にあり、収容部130の上端及び外周壁部120の上端がともに、隔壁Aの各々の上端よりも上方にある、という条件を満たすことで上記の効果を得ることができる。ここで実施形態20では第3隔壁703が隔壁Aに、第1隔壁701及び第2隔壁702が一対の隔壁Bに相当し、実施形態21では第1隔壁701が隔壁Aに、第2隔壁702及び第3隔壁703が一対の隔壁Bに相当し、実施形態22では第2隔壁702が隔壁Aに、第1隔壁701及び第3隔壁703が一対の隔壁Bに相当する。細胞処理容器100に液面が隔壁Aの各々の上端を越えるが、隔壁Bの上端は超えないように液体を収容することにより、隔壁Aを介して隣接する2つ以上の容器状部収容空間で共通の液体を収容することができる。
<実施形態1変形例1(図26)>
図26に示す細胞処理容器100は実施形態1の変形例1であって、収容部130の開口が平面視において形成する図形が、ほぼ円形の第一部分261と、第一部分261から一方向に延在した1つの第二部分262とが組み合わされた形状を有する点を除いて図1に示す実施形態1の細胞処理容器100と同様の特徴を有する。この実施形態1変形例1によれば、収容部130の開口が平面視において形成する図形がほぼ円形の第一部分261のみからなる場合と比較して、収容空間150が第二部分262の部分だけ拡張されるため、収容空間150内に収容された細胞をカテーテル等の器具で取り扱う場合に器具を配置できる領域が広がり作業性が向上する、といった利点がある。
<実施形態1変形例2(図27)>
図27に示す細胞処理容器100は実施形態1の変形例2であって、収容部130の開口が平面視において形成する図形が、ほぼ正方形の第一部分271と、第一部分271から4つの方向に延在した4つの第二部分272−1、272−2、272−3、272−4とが組み合わされた形状を有する点を除いて図1に示す実施形態1の細胞処理容器100と同様の特徴を有する。この実施形態1変形例2によれば、収容部130の開口が平面視において形成する図形がほぼ正方形の第一部分271のみからなる場合と比較して、収容空間150が4つの第二部分272−1、272−2、272−3、272−4の部分だけ拡張されるため、収容空間150内に収容された細胞をカテーテル等の器具で取り扱う場合に器具を配置できる領域が更に広がり作業性が更に向上する、といった利点がある。
<他の好適な実施形態>
<壁部の厚さに関する他の好適な実施形態>
本発明の細胞処理容器100では、各部分を構成する樹脂材料を含む壁部の厚さは特に限定されないが、0.3mm〜3mmであることが好ましい。具体的には、図7A、7Bに示すように、収容部周壁部140のうち、収容部側面143と収容部外壁面144とで挟まれる部分の厚さT1、第1隔壁701の厚さT2−1、第2隔壁702の厚さT2−2、第3隔壁703の厚さT2−3、外周壁部120の厚さT3、及び、容器底部110の厚さが0.3mm〜3mmであることが好ましい。本発明の細胞処理容器100は出荷前に放射線滅菌されることがあるが、細胞処理容器100が樹脂材料により形成されている場合、放射線照射によって樹脂材料が黄色に変化し、無色透明の性質が失われる場合がある。細胞処理容器100において樹脂材料を含む壁部の厚さを3mm以下であれば、放射線滅菌をした場合でも、細胞処理容器100を肉眼で見たときに樹脂材料の無色透明の性質は維持され、好適な外観となる。また、各壁部の厚さが0.3mm以上であれば、細胞処理容器100を使用する際に破損しにくい十分な強度が付与される。
<収容部周壁部の形状に関する他の好適な実施形態>
本発明の細胞処理容器100の収容部周壁部140他の好適な実施形態を、図7A、7Bに示す実施形態7の細胞処理容器100の変形例として以下に説明する。本発明の細胞処理容器100の実施形態1等の他の実施形態も、同様の特徴を備える変形例とすることができる。
図28は、本発明の実施形態7変形例1の細胞処理容器100の、図7AでのA−A端面に相当する端面の模式図である。実施形態7変形例1では収容部周壁部140の収容部側面143と収容部底傾斜面142とが、丸みを帯びた収容部側面−底傾斜面接続曲面281により接続されている。収容部側面−底傾斜面接続曲面281は、上下方向に沿った仮想平面(具体的には、収容部側面143の法線を含み且つ上下方向に沿った仮想平面)による収容部周壁部140及びその近傍の断面上での、本明細書で定義する傾斜角が、収容部側面143から収容部底傾斜面142にかけて連続的に変化するように、収容部側面143と収容部底傾斜面142とを接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mm、より好ましくは10μm〜1mmとなる曲面である。この特徴を有する実施形態7変形例1の細胞処理容器100では、底面側面交差部分147を有する実施形態1よりも更に、細胞10が収容部側面143と収容部底傾斜面142との間に入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。また細胞10を含む液滴を収容部側面143から形成面141上で伝わらせて細胞保持領域146に移動させる場合に細胞10の移動が容易である。
また、図28に示す実施形態7変形例1では収容部周壁部140の収容部外壁面144と、容器底部110の容器底面111とが、丸みを帯びた収容部外壁面−容器底面接続曲面282により接続されている。収容部外壁面−容器底面接続曲面282は、上下方向に沿った仮想平面(具体的には、収容部外壁面144の法線を含み且つ上下方向に沿った仮想平面)による収容部周壁部140及びその近傍の断面上で、本明細書で定義する傾斜角が、収容部外壁面144から容器底面111にかけて連続的に変化するように、収容部外壁面144と容器底面111とを接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mm、より好ましくは10μm〜1mmとなる曲面である。この特徴を有する実施形態7変形例1の細胞処理容器100では、収容部外壁面144と容器底面111との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。
図示しないが、実施形態7変形例1の更なる変形例としては、収容部側面−底傾斜面接続曲面281と、収容部外壁面−容器底面接続曲面282の一方のみを有するものが挙げられる。
図29A、29B、29Cは、本発明の実施形態7変形例2、3、4の細胞処理容器100の、図7AでのA−A端面に相当する端面の模式図である。説明の都合上、実施形態7の細胞処理容器100での収容部周壁部140のうち、第1隔壁701と第3隔壁703とに挟まれた部分の変形例についてのみ説明するが、収容部周壁部140のうち、第1隔壁701と第2隔壁702とに挟まれた部分や、収第2隔壁702と第3隔壁703とに挟まれた部分や、実施形態1における収容部周壁部140も同様の変形を加えることができ、その場合の効果は、下記の各変形例による効果の説明における「第3容器状部収容空間163」を、それぞれ「第1容器状部収容空間161」、「第2容器状部収容空間162」、「外周空間160」に置き換えて理解すればよい。
図29Aに示す実施形態7変形例2では収容部周壁部140の収容部側面143の傾斜角が90°未満である。収容部側面143の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。収容部側面143の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に収容部側面143上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。実施形態7変形例2において収容部外壁面144の傾斜角は特に限定されないが典型的には90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。収容部外壁面144の傾斜角がこの範囲の場合、第3容器状部収容空間163に収容された液体が、収容部周壁部140を乗り越えて収容空間150内に流入することを抑制することができる。
図29Bに示す実施形態7変形例3では収容部周壁部140の収容部外壁面144の傾斜角が90°未満である。収容部外壁面144の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。収容部外壁面144の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に収容部外壁面144上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。実施形態7変形例3において収容部側面143の傾斜角は特に限定されないが典型的には90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。収容部側面143の傾斜角がこの範囲の場合、収容部130の収容空間150に収容された液体が、収容部周壁部140を乗り越えて第3容器状部収容空間163内に流入することを抑制することができる。
図29Cに示す実施形態7変形例4では収容部周壁部140の収容部側面143の傾斜角が90°未満である。収容部側面143の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。このとき実施形態7変形例1と同様に収容部側面143上での擦れ傷の可能性を低減することができる。実施形態7変形例4では収容部外壁面144の傾斜角が90°未満である。収容部外壁面144の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。このとき実施形態7変形例2と同様に収容部外壁面144上での擦れ傷の可能性を低減することができる。
図示しないが、実施形態7の他の変形例としては、収容部周壁部140の収容部側面143の傾斜角と収容部外壁面144の傾斜角がそれぞれ独立して90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。この変形例では収容部130の収容空間150に収容された液体が収容部周壁部140を乗り越えて第3容器状部収容空間163内に流入すること、及び、第3容器状部収容空間163に収容された液体が、収容部周壁部140を乗り越えて収容空間150内に流入することを抑制することができる。
本欄で詳述した各変形例では、収容部側面143の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、収容部側面143のうち少なくとも収容部上端145近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。同様に、本欄で詳述した各変形例では、収容部外壁面144の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、収容部外壁面144のうち少なくとも収容部上端145近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。
<隔壁の形状に関する他の好適な実施形態(1)>
本発明の実施形態7の細胞処理容器100の隔壁701、702、703の他の好適な変形例を以下に説明する。説明の都合上第1隔壁701についてのみ説明するが、他の第2隔壁702、第3隔壁703も同様の特徴を備えることができる。
図30は、本発明の実施形態7変形例5の細胞処理容器100の、図7AでのB−B端面に相当する端面の模式図である。実施形態7変形例5では第1隔壁701の一方の面704と容器底部110の容器底面111とが、丸みを帯びた第1の隔壁側面−底面接続曲面301により接続されている。第1の隔壁側面−底面接続曲面301は、上下方向に沿った仮想平面(具体的には、第1隔壁701の一方の面704の法線を含み且つ上下方向に沿った仮想平面)による第1隔壁701及びその近傍の断面上で、本明細書で定義する傾斜角が、第1隔壁701の一方の面704から容器底部110の容器底面111にかけて連続的に変化するように、第1隔壁701の一方の面704と容器底部110の容器底面111とを接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mm、より好ましくは10μm〜1mmとなる曲面である。この特徴を有する実施形態7変形例5の細胞処理容器100では、第1隔壁701の一方の面704と容器底部110の容器底面111との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。
実施形態7変形例5では更に、第1隔壁701の他方の面709と容器底部110の容器底面111とが、丸みを帯びた第2の隔壁側面−底面接続曲面302により接続されている。第2の隔壁側面−底面接続曲面302は、上下方向に沿った仮想平面(具体的には、第1隔壁701の他方の面709の法線を含み且つ上下方向に沿った仮想平面)による第1隔壁701及びその近傍の断面上で、本明細書で定義する傾斜角が、第1隔壁701の他方の面709から容器底部110の容器底面111にかけて連続的に変化するように、第1隔壁701の他方の面709と容器底部110の容器底面111とを接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mm、より好ましくは10μm〜1mmとなる曲面である。この特徴を有する実施形態7変形例5の細胞処理容器100では、第1隔壁701の他方の面709と容器底部110の容器底面111との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。
<隔壁の形状に関する他の好適な実施形態(2)>
本発明の実施形態7の細胞処理容器100の隔壁701、702、703の更なる他の好適な変形例を以下に説明する。説明の都合上第3隔壁703についてのみ説明するが、他の第1隔壁701、第2隔壁702も同様の特徴を備えることができる。
図31は、本発明の実施形態7変形例6の細胞処理容器100の、図7Aでの領域310に相当する領域の平面図である。実施形態7変形例6では、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144とが、丸みを帯びた第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311により接続されており、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121とが、丸みを帯びた第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313により接続されている。第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311は、上下方向に垂直な方向に沿った仮想平面による第3隔壁703及びその近傍の断面上で、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144とを滑らかに接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mmとなる曲面である。同様に、第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313は、上下方向に垂直な方向に沿った仮想平面による第3隔壁703及びその近傍の断面上で、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121とを滑らかに接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mmとなる曲面である。第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311が存在することにより、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313も同様に、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。
第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311及び第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313はまた、次の好適な効果も奏することができる。第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311及び第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313が存在しない場合には以下の課題が存在する。すなわち、細胞処理容器100の第2容器状部収容空間162にオイル、細胞洗浄液、培養液等の液体を収容する場合であって、第3隔壁703の一方の面707、収容部周壁部140の収容部外壁面144及び外周壁部120の外周壁部内周面121が、収容される液体に対して親和性を有する場合(例えば前記液体がオイルであり、且つ、前記各面が疎水性表面である場合)には、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144とが交差する部分、及び、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121とが交差する部分を伝って前記液体が拡散し第2容器状部収容空間162から隣接する第3容器状部収容空間163に移動してしまうという課題がある(実験6参照)。第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311及び第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313を設けることにより、この課題を解消することができる。
本明細書において、ある液体に対してある表面が「親和性を有する」とは、該表面上での該液体の接触角が好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下であることを言う。ある液体に対してある表面が「親和性を有さない」とは、該表面上での該液体の接触角が好ましくは60°以上、より好ましくは80°以上であることを言う。接触角の測定温度は細胞処理容器100を使用が想定される温度、例えば20℃〜40℃の範囲、において測定すればよい。
図31に示す実施形態7変形例6では、第3隔壁703の他方の面708と収容部周壁部140の収容部外壁面144とが、丸みを帯びた第2の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面312により接続されており、第3隔壁703の他方の面708と外周壁部120の外周壁部内周面121とが、丸みを帯びた第2の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面314により接続されている。第2の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面312は、上下方向に垂直な方向に沿った仮想平面による第3隔壁703及びその近傍の断面上で、第3隔壁703の他方の面708と収容部周壁部140の収容部外壁面144とを滑らかに接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mmとなる曲面である。同様に、第2の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面314は、上下方向に垂直な方向に沿った仮想平面による第3隔壁703及びその近傍の断面上で、第3隔壁703の他方の面708と外周壁部120の外周壁部内周面121とを滑らかに接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mmとなる曲面である。第2の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面312及び第2の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面314は、それぞれ、第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311及び第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313と同様の効果を奏することができる。
<隔壁の形状に関する他の好適な実施形態(3)>
本発明の実施形態7の細胞処理容器100の隔壁701、702、703の更なる他の好適な変形例を以下に説明する。説明の都合上第1隔壁701についてのみ説明するが、他の第2隔壁702、第3隔壁703も同様の特徴を備えることができ、その場合は下記説明における「第1隔壁701」を「第2隔壁702」又は「第3隔壁703」に適宜置き換え、「一方の面704」、「他方の面709」も「第2隔壁702」又は「第3隔壁703」での対応する符号に適宜置き換えて理解すればよい。
図32A、32B、32Cは、本発明の実施形態7変形例7、8、9の細胞処理容器100の、図7AでのB−B端面に相当する端面の模式図である。
図32Aに示す実施形態7変形例7では第1隔壁701の一方の面704の傾斜角が90°未満である。一方の面704の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。一方の面704の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に一方の面704上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。実施形態7変形例7において第1隔壁701の他方の面709の傾斜角は特に限定されないが典型的には90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。第1隔壁701の他方の面709の傾斜角がこの範囲の場合、第3容器状部収容空間163に収容された液体が第1隔壁701を乗り越えて第1容器状部収容空間161内に流入することを抑制することができる。
図32Bに示す実施形態7変形例8では第1隔壁701の他方の面709の傾斜角が90°未満である。他方の面709の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。他方の面709の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に他方の面709上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。実施形態7変形例8において第1隔壁701の一方の面704の傾斜角は特に限定されないが典型的には90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。第1隔壁701の一方の面704の傾斜角がこの範囲の場合、第1容器状部収容空間161に収容された液体が第1隔壁701を乗り越えて第3容器状部収容空間163内に流入することを抑制することができる。
図32Cに示す実施形態7変形例9では第1隔壁701の一方の面704の傾斜角が90°未満である。一方の面704の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。このとき実施形態7変形例7と同様に一方の面704上での擦れ傷の可能性を低減することができる。実施形態7変形例9では第1隔壁701の他方の面709の傾斜角が90°未満である。他方の面709の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。このとき実施形態7変形例8と同様に一方の面709上での擦れ傷の可能性を低減することができる。
図示しないが、実施形態7の他の変形例としては、第1隔壁701の一方の面704の傾斜角と他方の面709の傾斜角がそれぞれ独立して90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。この変形例では第3容器状部収容空間163に収容された液体が第1隔壁701を乗り越えて第1容器状部収容空間161内に流入すること、及び、第1容器状部収容空間161に収容された液体が第1隔壁701を乗り越えて第3容器状部収容空間163内に流入することを抑制することができる。
本欄で詳述した各変形例では、第1隔壁701の一方の面704の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、第1隔壁701の一方の面704のうち少なくとも第1隔壁上端711近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。同様に、本欄で詳述した各変形例では、第1隔壁701の他方の面709の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、第1隔壁701の他方の面709のうち少なくとも第1隔壁上端711近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。
<隔壁の形状に関する他の好適な実施形態(4)>
図33には、本発明の実施形態7の細胞処理容器100が外蓋部170を備えた例を示す。外蓋部170の容器内に向いた表面を蓋内面331とする。
図33に示す実施形態7の細胞処理容器100の例では、第1隔壁701、第2隔壁702、第3隔壁703の容器底面111からの高さd1、d2、d3及び収容部周壁部140の容器底面111からの高さeが、それぞれ独立に、外周壁部120の容器底面111からの高さfよりも小さい又は最大でもfと同じである。説明の都合上第1隔壁701についてのみ説明するが、他の第2隔壁702、第3隔壁703も同様の特徴を備えることができ、その場合は下記説明における「第1隔壁701」を「第2隔壁702」又は「第3隔壁703」に、「d1」を「d2」又は「d3」に適宜置き換えて理解すればよい。
図33に示す実施形態7の細胞処理容器100において、第1隔壁701の一方の面704が、第1容器状部収容空間161に収容される液体に対して親和性を有する表面(例えば前記液体がオイルであり、第1隔壁701の一方の面704が、親水処理をしていないスチレン表面等の、疎水性表面)であり、且つ、蓋内面331が、前記液体に対して親和性を有する表面である場合には、第1隔壁701の容器底面111からの高さd1は、fより1mm以上小さい値であることが好ましい。液体は親和性を有する基材表面上で拡散しやすいが、d1がfより1mm以上小さい値であれば、第1容器状部収容空間161に前記液体を第1隔壁701の上端711まで収容し外蓋部170で蓋をした場合であっても、前記液体が蓋内面331を伝って第1隔壁701を乗り越えて第3容器状部収容空間163に移動する可能性が低いため好ましい。この態様は、第1隔壁701の一方の面704を含む「第1容器状部収容空間161を囲う側壁面」の全体、第1隔壁上端711、第1隔壁701の他方の面709、及び容器底面111のうち第1容器状部収容空間161内の領域が前記液体に親和性を有する表面である場合に特に好適である。d1の下限は特に限定されないが2mmより大きい値であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがより好ましい。第1隔壁701の一方の面704を含む「第1容器状部収容空間161を囲う側壁面」の全体、及び容器底面111のうち第1容器状部収容空間161内の領域が前記液体に親和性を有する表面である本発明の細胞処理容器100の用い方として、前記領域とは親和性を有さない、細胞等を含む第1液体(例えば領域が疎水性である場合に、水等の親水性の液体)のドロップを前記領域上に形成し、前記ドロップを覆うように前記ドロップとは親和性を有さず前記領域等と親和性を有する第2液体を第1容器状部収容空間161に収容するという用い方がある。例えば、第1液体が細胞10を含む水を基調とする細胞処理液であり、第2液体がオイルである。ドロップを形成する第1液体の量としては15μL以上が一般的である。15μLの第1液体のドロップを、第1液体とは親和性を有さない容器底面111上で形成した時の容器底面111からドロップ頂部までの高さは2mm程度である(実験7参照)。従ってd1が2mmよりも大きい値、特に3mm以上であれば、第2液体により、容量15μL以上の第1液体のドロップの全体を被覆することができる。更にd1が8mm以上であれば第2液体の液体漏れを防ぐのに好適である。
また、図33に示す実施形態7の細胞処理容器100において、第1隔壁701の一方の面704が、第1容器状部収容空間161に収容される液体に対して親和性を有する表面であり、且つ、蓋内面331が、前記液体に対して親和性を有さない表面(例えば前記液体がオイルであり、蓋内面331が親水処理された表面)である場合には、第1隔壁701の容器底面111からの高さd1は、fと同じ値又はより小さい値とすることができる。この場合、前記液体の蓋内面331を伝った拡散が生じ難いため、前記液体が蓋内面331を伝って第1隔壁701を乗り越えて第3容器状部収容空間163に移動する可能性が低い。この態様は、第1隔壁701の一方の面704を含む「第1容器状部収容空間161を囲う側壁面」の全体、第1隔壁上端711、第1隔壁701の他方の面709、及び容器底面111のうち第1容器状部収容空間161内の領域が前記液体に親和性を有する表面である場合に特に好適である。d1の下限は特に限定されないが、上記と同様の理由により2mmより大きい値であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがより好ましい。
更にまた、図33に示す実施形態7の細胞処理容器100において、第1隔壁701の一方の面704が、第1容器状部収容空間161に収容される液体に対して親和性を有さない表面(例えば前記液体がオイルであり、第1隔壁701の一方の面704が親水処理された表面)である場合には、第1隔壁701の容器底面111からの高さd1は、fと同じ値又はより小さい値とすることができる。この態様では、第1隔壁701の一方の面704上での前記液体の拡散が生じ難いため、前記液体が第1隔壁701を乗り越えて第3容器状部収容空間163に移動する可能性が低い。この態様は、第1隔壁701の一方の面704を含む「第1容器状部収容空間161を囲う側壁面」の全体、第1隔壁上端711、第1隔壁701の他方の面709、及び容器底面111のうち第1容器状部収容空間161内の領域が前記液体に親和性を有さない表面である場合に特に好適である。d1の下限は特に限定されないが、上記と同様の理由により2mmより大きい値であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがより好ましい。
<容器状部に関する他の好適な実施形態>
図34は、本発明の実施形態7変形例10の細胞処理容器100の平面図である。
実施形態7変形例10の細胞処理容器100では、収容部周壁部と、外周壁部と、隣接する一対の隔壁とにより囲われる容器状部内に、更に別の容器状部が形成されている。
図示する例では、第1容器状部710の底部を構成する容器底部110に、更なる培養用容器状部610が形成されている。培養用容器状部610の具体的な構成は実施形態6に関して上述した通りである。培養用容器状部610の内部の、培養用容器状部収容空間612に細胞及び培養液を収容し、第1容器状部710の第1容器状部収容空間161をオイルで満たして、培養用容器状部610の全体を被覆することができる。このとき、第2容器状部720及び第3容器状部730等の隣接する容器状部では細胞の洗浄、カテーテルの洗浄等の別の操作を行うことができる。更なる培養用容器状部610の個数は特に限定されず1つであってもよいし複数であってもよい。更なる培養用容器状部610の培養用容器状部周壁部611の上端616の、容器底面611からの高さは特に限定されないが、最大でも、前記d1、d2、e及びfのうち最も小さい値と同じであるかより小さい値であることが好ましく、1mm以上であることが好ましい。前記上限値以下であれば、第1容器状部710の全体を覆うように、第1容器状部収容空間161内にオイルを満たすことができる。前記下限値以上であれば、更なる培養用容器状部610内に収容された細胞や細胞処理液をピペットやカテーテルで取り扱うことが容易である。
図示する例では更に、第3容器状部730の底部を構成する容器底部110に、更なる洗浄用容器状部620が形成されている。更なる洗浄用容器状部620の具体的な構成は実施形態6に関して上述した通りである。更なる洗浄用容器状部620の個数は特に限定されず1つであってもよいし複数であってもよい。
<外周壁部の形状に関する他の好適な実施形態(1)>
本発明の実施形態7の細胞処理容器100の外周壁部120に関する他の好適な変形例を以下に説明する。
図35は、本発明の実施形態7変形例11の細胞処理容器100の、図7AでのC−C端面に相当する端面の模式図である。実施形態7変形例11では外周壁部120の外周壁部内周面121と容器底部110の容器底面111とが、丸みを帯びた外周壁部内周面−底面接続曲面351により接続されている。外周壁部内周面−底面接続曲面351は上下方向に沿った仮想平面(具体的には、外周壁部内周面121の法線を含み且つ上下方向に沿った仮想平面)による外周壁部120及びその近傍の断面上で、本明細書で定義する傾斜角が、外周壁部120の外周壁部内周面121から容器底部110の容器底面111にかけて連続的に変化するように、外周壁部120の外周壁部内周面121と容器底部110の容器底面111とを接続する曲面であり、好適には、該断面上での曲率半径が10μm〜15mm、より好ましくは10μm〜1mmとなる曲面である。この特徴を有する実施形態7変形例11の細胞処理容器100では、外周壁部120の外周壁部内周面121と容器底部110の容器底面111との間に細胞10が入り込む可能性を低減できるとともに、入り込んだ場合のカテーテルやピペットによる取り出しが容易である。
<外周壁部の形状に関する他の好適な実施形態(2)>
本発明の実施形態7の細胞処理容器100の外周壁部120に関する更なる他の好適な変形例を以下に説明する。
図36は、本発明の実施形態7変形例12の細胞処理容器100の、図7AでのC−C端面に相当する端面の模式図である。説明の都合上、実施形態7の細胞処理容器100での外周壁部120のうち、第1隔壁701と第3隔壁703とに挟まれた部分の変形例についてのみ説明するが、外周壁部120のうち、第1隔壁701と第2隔壁702とに挟まれた部分や、収第2隔壁702と第3隔壁703とに挟まれた部分や、実施形態1における外周壁部120も同様の変形を加えることができ、その場合の効果は、下記の各変形例による効果の説明における「第3容器状部収容空間163」を、それぞれ「第1容器状部収容空間161」、「第2容器状部収容空間162」、「外周空間160」に置き換えて理解すればよい。
図36に示す実施形態7変形例12では外周壁部120の外周壁部内周面121の傾斜角が90°未満である。外周壁部内周面121の傾斜角は更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である。外周壁部内周面121の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に外周壁部内周面121上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。
図示しないが、実施形態7の他の変形例としては、外周壁部120の外周壁部内周面121の傾斜角が90°(実質的に90°、例えば89.5°〜90.5°も含む)又は90°よりも大きく、好ましくは90°である。この変形例では第3容器状部収容空間163に収容された液体が外周壁部120を乗り越えて容器外に流出することを抑制することができる。
図示しないが、実施形態7の他の変形例としては、外周壁部120の外周壁部外周面124の傾斜角が90°未満、更に好ましくは70°〜89°、特に好ましくは83°〜85°、最も好ましくは85°である例が挙げられる。外周壁部外周面124の傾斜角がこの範囲であるとき、細胞処理容器100を、樹脂材料を金型に充填して成形する場合に、金型から細胞処理容器100を取り出す際に外周壁部外周面124上に擦れ傷が発生する可能性を低減することができる。
本欄で詳述した各変形例では、外周壁部内周面121の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、外周壁部内周面121のうち外周壁部上端122近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。同様に、本欄で詳述した各変形例では、外周壁部外周面124の高さ方向の全体に亘って傾斜角が上記の各範囲であることが好ましいが必須ではなく、外周壁部外周面124のうち外周壁部上端122近傍の高さ位置の部分での傾斜角が前記範囲であればよい。
<外周壁部の形状に関する他の好適な実施形態(3)>
本発明の細胞処理容器100は、外周壁部120の外周壁部上端122の容器下面112からの高さaは特に限定されないが、15mm以下であることが好ましい。aが15mm以下であれば、細胞処理容器100を複数個、例えば5〜15個、特に10個、重ねて静置した場合でも、安定して静置することができる。aの下限は特に限定されないが1mm以上であることが好ましい。aが1mm以上であれば、細胞処理容器100内に収容された細胞や細胞処理液をピペットやカテーテルで取り扱うことが容易である。
<外周壁部の形状に関する他の好適な実施形態(4)>
図37Aには、実施形態7変形例13に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。図37Bには、実施形態7変形例13に係る本発明の細胞処理容器100の、図37Aに示すD−D断面の断面模式図を示す。
この実施形態7変形例13では、外周壁部120が以下の特徴を備える。
実施形態7変形例13では外周壁部120の外周側に位置する外周壁部外周面124は少なくとも1つの段が形成された段付き構造を有する。具体的には、外周壁部外周面124の下端寄りの部分に、傾斜角が90°よりも大きく上方に行くほど周囲径が拡大する形状の傾斜面124’を含み、外周壁部外周面124の上端寄りの部分124’’’と傾斜面124’とは接続面124’’により接続され段が形成されている。外周壁部外周面124が段付き構造であることにより、細胞処理容器100を手で移動させる操作が容易になり、操作者が細胞処理容器100を落とす危険性を低減できる。
また実施形態7変形例13では外周壁部120の下端に、容器底部110の容器底部下面113よりも下方に突出した底突出部125が全周に亘って形成されている。底突出部125の下端により容器下面112が規定される。
また実施形態7変形例13では外周壁部120の一部に、外周壁部120が内方に落ち窪んで形成される窪み部371が存在する。図37Cには、細胞処理容器100の外周壁部120の、窪み部371の近傍部分の斜視図である。窪み部371は、細胞処理容器100の方向や位置などを識別するためのマーキングの一例である。顕微鏡観察等の際に、細胞処理容器100の方向や位置を、マーキングをもとに容易に把握することができる。マーキングの種類は特に限定されず、接触して識別可能なものであってもよいし、視覚的に識別可能なものであってもよいし、他の手段により識別可能なものであってもよい。細胞処理容器100に含まれるマーキングの個数は1つであってもよいし複数であってもよい。実施形態7変形例13の細胞処理容器100では、操作者が外周壁部外周面124に触れ、窪み部371に基づいて細胞処理容器100の方向や位置を識別することができる。
図示しないが、本発明の細胞処理容器100の実施形態7変形例13の更なる変形例である実施形態7変形例13’では、収容部上端145の容器下面112からの高さbと、第1隔壁上端711の容器下面112からの高さc1と、第2隔壁上端712の容器下面112からの高さc2と、第3隔壁上端713の容器下面112からの高さc3とが同一であり、更に好ましくは、外周壁部上端122の容器下面112からの高さaよりもb、c1、c2、c3は小さく、外周壁部上端122、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713の相対的な高さの関係は図11と同一である。実施形態7変形例13’において、第1隔壁701、第2隔壁702、第3隔壁703の容器底面111からの高さd1、d2、d3及び収容部周壁部140の容器底面111からの高さeは好ましくは同一であり、その値は特に限定されないが4mmが例示できる。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(1)>
図38には、実施形態7変形例14に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。D−D断面は実施形態7変形例13について図37Bに示したのと同一である。
この実施形態7変形例14もまた、外周壁部120にマーキングが設けられた例であり、具体的には、外周壁部120の一部が外側に突出して形成されるマーキング突起381を備える。実施形態7変形例14の細胞処理容器100では、操作者が外周壁部外周面124に触れマーキング突起381を元に細胞処理容器100の方向や位置を識別することができる。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(2)>
図39には、実施形態7変形例15に係る本発明の細胞処理容器100の側面図を示す。細胞処理容器100の他の部分の構成は実施形態7に関して説明した通りである。
実施形態7変形例15は、外周壁部120に視覚的に識別可能なマーキング391、392が設けられた例である。視覚的に識別可能なマーキング391、392は特に限定されず、外周壁部120の表面に描かれた着色した線であってもよいし、樹脂製の外周壁部120の内部に含まれる視覚的に認識できるウェルドライン等の線であってもよい。
マーキング391、392は図示する例では2つ設けられているが、個数は特に限定されず1つであってもよいし、2又は3以上の複数であってもよい。複数のマーキングを設ける場合、1つのマーキング391と他のマーキング392とを異なる長さや形状とすることで、細胞処理容器100の上下や左右を更に容易に識別できるようにすることができる。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(3)>
本発明の細胞処理容器100において、マーキングは容器底部110に設けてもよい。容器底部110にマーキングを設けることにより、顕微鏡観察時に細胞処理容器100の方向や位置を容易に把握することができる。
図40Aは、実施形態7変形例16に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。実施形態7変形例16の細胞処理容器100は、容器底部110の一部に識別ライン401を備える。図40Bには図40AにおけるE−E端面の端面図を示す。識別ライン401は、容器底部110の表面である容器底面111の一部がわずかに隆起して形成することができる。図示しないが、容器底部110の容器下面112に識別ライン401を形成してもよい。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(4)>
図41Aは、実施形態7変形例17に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。実施形態7変形例17の細胞処理容器100は、容器底部110の一部に識別円411〜416を備える。識別円411〜416は、図41Bに示すように、容器底部110の容器底面111上の僅かな段差により形成することができる。図示しないが、容器底部110の容器下面112に識別ライン401を形成してもよい。図示する例では複数の識別円411〜416が非回転対称的に配置されており、観察者は、細胞処理容器100の方向を容易に識別することができる。
図41Aに示すように、比較的大きい寸法の識別円411、412、413、414と、比較的小さい寸法の識別円415、416とを、容器底部110に、非回転対称的に配置することにより、細胞処理容器100の上下及び左右の方向を更に容易に識別できるようにすることが好ましい。また、図示しないが、寸法及び/又は形状の異なる3種類以上の識別円を容器底部110に配置してもよい。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(5)>
図42は、実施形態7変形例18に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。実施形態7変形例18の細胞処理容器100は、容器底部110の一部に十字状の識別印421、422、423を備える。十字状の識別印421、422、423は、例えば、容器底部110の容器下面112上に僅かな段差により形成することができる。図示する例では複数の識別印421、422、423が非回転対称的に配置されており、観察者は、細胞処理容器100の方向を容易に識別することができる。また、図示しないが、寸法及び/又は形状の異なる2種類以上の識別印を容器底部110に配置して、細胞処理容器100の上下及び左右の方向を更に容易に識別できるようにしてもよい。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(6)>
図43は、実施形態7変形例19に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。実施形態7変形例19の細胞処理容器100は、容器底部110の一部に、視覚的に識別可能なマーキング431、432を備える。マーキング431、432の種類は特に限定されず、容器底部110の表面に描かれた着色した線であってもよいし、樹脂製の容器底部110の内部に含まれる視覚的に認識できるウェルドライン等の線であってもよい。図示する例では複数のマーキング431、432が非回転対称的に配置されており、観察者は、細胞処理容器100の方向を容易に識別することができる。
マーキング431、432は図示する例では2つ設けられているが、個数は特に限定されず1つであってもよいし、2又は3以上の複数であってもよい。複数のマーキングを設ける場合、1つのマーキング431と他のマーキング432とを異なる長さや形状とすることで、細胞処理容器100の上下や左右を更に容易に識別できるようにすることができる。
<マーキングに関する他の好適な実施形態(7)>
複数種の異なるマーキングを組み合わせて用いることができる。
図44は、実施形態7変形例20に係る本発明の細胞処理容器100の平面図を示す。実施形態7変形例20の細胞処理容器100は、マーキングの1種として窪み部371を備える実施形態7変形例13(図37A、37B、37C)又は実施形態7変形例13’に係る細胞処理容器100の容器底部110に、実施形態7変形例16(図40A、40B)と同様の識別ライン401と、実施形態7変形例17(図41A、41B)と同様の識別円411〜416とを更に形成した例である。
このように複数種のマーキングを組み合わせて用いることで、細胞処理容器100の上下、左右の方向を更に容易に識別することが可能となる。
実施形態7変形例13’に係る細胞処理容器100の容器底部110に、識別ライン401と、識別円411〜416とを形成した場合、好ましくはbとc1とc2とc3とが同一であり、更に好ましくはaよりもb、c1、c2、c3は小さく、外周壁部上端122、収容部上端145、第1隔壁上端711、第2隔壁上端712及び第3隔壁上端713の相対的な高さの関係は図11と同一である。更に、好ましくはd1、d2、d3及びeは同一であり、その値は特に限定されないが4mmが例示できる。
<マイクロタグを組み合わせる好適な実施形態(1)>
本発明の細胞処理容器100には、更に情報を記録し、適当な読み取り装置で記録された情報を読み取ることができるマイクロタグを結合させることができる。マイクロタグとしてはRF(radio frequency)タグを利用することができる。RFタグとしては電池を内蔵せず小型化が可能な受動タグが好適である。
図1C、20、22、33に示すような外蓋部170を備えた本発明の細胞処理容器100や、図21に示すような中蓋部210を備えた本発明の細胞処理容器100では、外蓋部170又は中蓋部210(以下これらを「蓋部」と総称する)に第1のマイクロタグを設け、細胞処理容器100の蓋部以外の容器部分(以下「容器本体部」と称する)に第2のマイクロタグを設けることが好ましい。
蓋部を備える細胞処理容器100を特定の患者に由来する細胞又は特定の患者に移植する細胞の処理に用いる場合に、マイクロタグに記録する情報の組み合わせとしては以下に挙げるような態様を例示できる。
(態様1)蓋部の第1のマイクロタグに、該蓋部を特定するID番号(蓋部ID番号)を記憶させ、容器本体部の第2のマイクロタグに、該容器本体部を特定するID番号(容器本体部ID番号)を記憶させる。別途、患者を特定するID番号(患者ID番号)を設定し、特定の蓋部ID番号と、容器本体部ID番号と、患者ID番号とを関連付けたデータを作成する。関連付けたデータはサーバなどに別途記録してデータベースとして活用してもよい。また、前記蓋部ID番号や前記容器本体部ID番号は、マイクロタグがもともと保持している、マイクロタグごとに異なるユニークIDを利用しても良いし、別途IDを発番しマイクロタグに書き込み記憶させたものであってもよい。
(態様2)患者を特定するID番号(患者ID番号)を設定し、蓋部の第1のマイクロタグと、容器本体部の第2のマイクロタグに、それぞれ前記患者ID番号を記憶させる。
いずれの態様でも、特定の患者に由来する細胞又は特定の患者に移植する細胞の処理に用いる細胞処理容器100の蓋部と容器本体部を、マイクロタグに記憶された情報を読み取ることにより特定することができるため、容器の取り違いを防止することとができるとともに、追跡可能性(トレーサビリティ)の向上を図ることができる。また、蓋部と容器本体部が同一患者を対象としたものではない場合に警告を発するシステムや、患者のカルテの患者ID番号を読み、第1及び/又は第2のマイクロタグに記録された情報を読み取って不一致がある場合に警告を発するシステムや、各作業の開始時と終了時に第1及び/又は第2のマイクロタグに記録された情報を読みとって該情報と時刻とを記録して、作業の履歴を残してトレーサビリティを向上させるシステム等の各種システムを構築することができる。
マイクロタグの平面視形状は特に限定されず円形(真円、楕円、扁平した真円、扁平した楕円等も含む)であっても矩形であってもよく、その他の多角形形状であってもよい。
RFタグの周波数帯は特に限定されず13.56MHzでも、860MHz〜960MHzでも、2.45GHzでもよい。
マイクロタグの読み取り距離は特に限定されない。例えば、蓋部と容器本体部の両方にそれぞれマイクロタグを結合させる場合に、両方のマイクロタグの情報を同時に読み取ることができる程度に無線出力やアンテナを組み合わせてもよいし、敢えて数mm程度の距離でしか通信できないようにして細胞処理容器100を特定の場所に確実に設置したことを確認できるようにしてもよい。
マイクロタグは蓋部と容器本体部の両方に結合させてもよいし、どちらか一方のみに結合させてもよい。細胞は容器本体部に収容されることから、少なくとも容器本体部にマイクロタグを結合させることが好ましい。
蓋部及び容器本体部のうち少なくとも一方に複数のマイクロタグを結合させてもよいし。複数のタグを設けた場合、通信範囲が広がる効果や、1つのタグが壊れた場合のバックアップができる効果が期待できる。
マイクロタグの種類は特に限定されない。小型なマイクロタグの一例として、RFタグであるミューチップ(株式会社日立製作所の商品名)が例示できる。
<マイクロタグを組み合わせる好適な実施形態(2)>
本発明の細胞処理容器100にマイクロタグを結合させる形態は特に限定されないが、作業の邪魔にならない箇所や、観察時に視野を遮らない位置にマイクロタグを結合させることが好ましい。
例えば、図45では、実施形態7変形例13(図37A、37B、37C)に係る本発明の細胞処理容器100の、窪み部371の内面にマイクロタグ451を結合させた例を示す。マイクロタグ451は小さいため窪み部371に収容することができ、作業の邪魔にならない。細胞処理容器100にマイクロタグ451を結合させる方法は特に限定することができず、接着剤や粘着テープで結合したり、樹脂に包埋して細胞処理容器100の表面(図示する例では窪み部371の内面)に結合させることができる。窪み部371にマイクロタグ451を収容し樹脂で包埋して結合する場合には、マイクロタグ451を収容した窪み部371を樹脂で完全に満たして樹脂層の表面が外周壁部120の外周壁部外周面124の下寄りの部分124’と一致するようにしてもよいし、窪み部371を樹脂で部分的に埋めて窪みが残るようにしてもよい。
また図46では、実施形態7変形例13(図37A、37B、37C)に係る本発明の細胞処理容器100の、容器底部110の容器底部下面113上にマイクロタグ461を結合させた例を示す。この例では、細胞処理容器100のより容器下面112よりも容器底部下面113は窪んだ位置に位置するため、マイクロタグ461を容器底部下面113に配置しても作業の邪魔にはならない。
細胞処理容器100の容器底部110にマイクロタグ461を配置する場合、作業者が上から顕微鏡や目視で観察したり、下から顕微鏡で観察する場合に観察の邪魔にならないことが好ましい。例えば容器底部110の容器内面である容器底面111の平面視の面積が800mm2以上、例えば800mm2〜2000mm2、例えば900mm2〜1000mm2である場合、好ましくは容器底部110が平面視円形である場合、マイクロタグ(チップ及びアンテナを含む)が容器底面111と重複する部分の面積の、容器底面111の面積に対する割合は5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。前記割合が5%以下であれば容器底面111上での細胞の観察がマイクロタグにより妨げられる可能性が低く、前記割合が低いほど前記可能性が更に低い。容器底面111の平面視での全体形状が直径D1の円形である場合、マイクロタグは0.1D1以下の直径の円の範囲内に収まる大きさであれば、前記割合は1%以下となる。
<細胞処理容器の形状に関する他の好適な実施形態>
本発明の細胞処理容器100の表面を構成する各面は断面が直線形状となる面である必要はく、断面が曲線となるような面であってもよい。また本発明の細胞処理容器100の各部位は歪んだ形状であってもよい。
図47では、実施形態1に係る本発明の細胞処理容器100の、外周壁部120が径方向内側に向けて部分的に窪んだ変形例の、図1AでのX−X断面に相当する断面の模式図を示す。この変形例では、外周壁部120の外周側面124に窪みがあるため手で持ち易いため好ましい。
図48では、実施形態1に係る本発明の細胞処理容器100の、容器底部110の中央部分が容器内に向け部分的に突出した変形例の、図1AでのX−X断面に相当する断面の模式図を示す。この変形例では、容器底部110の、収容部130と外周壁部120とに挟まれた容器底面111は、外周壁部120の近傍において外周空間160の深さが増す(すなわち容器下面112に近づく)ように形成されているため、細胞処理容器100の収容部130の外の容器底面111上にある細胞が容器底面111の周縁領域に集まり易く、細胞を探し易いため好ましい。
図49では、実施形態1に係る本発明の細胞処理容器100の、外周壁部120が径方向内側に向けて部分的に窪み且つ容器底部110の中央部分が容器内に向け部分的に突出した変形例の、図1AでのX−X断面に相当する断面の模式図を示す。図49に示す変形例は、図47に示す変形例と図48に示す変形例の両方の効果を有する。
<1.容器の製造>
<製造例1>
図1A〜Cに示す形状の実施形態1の細胞処理容器100を作製した。
容器底部110の周縁に、内周輪郭が直径35mmの円形であり、容器下面112から外周壁部上端122までの高さが約10mmの外周壁部120を備え、容器底部110の中央に収容部130を有する細胞処理容器100を作製した。収容部形成面141は平面視で直径13mmの円形である。収容部形成面141は収容部底面400と、収容部底面142の周縁から起立する収容部側面143とを含む。収容部形成面141の、収容部130の形成面141の最深部148から上端149までの高さは5.8mmとし、収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さは5mmとした。収容部底面400のうち収容部底傾斜面142は、傾斜角7°で、平面視での収容部底面400の重心位置が点状の最深部148となるように窪んだ逆円錐形状とした。収容部側面143の傾斜角は85°とした。収容空間150の容量は約660μLであった。最深部148は実質的に幅を有さない点状であり、細胞処理容器100を平面視したとき直径3mmの範囲内に収まる形状である。
<製造例2>
収容部底面400の逆円錐形状の頂点に相当する最深部148が、平面視での収容部底面400の重心から偏心した位置にある以外は製造例1と同じ設計とした図2Aおよび2Bに示す実施形態2の細胞処理容器100を作製した。
<製造例3>
図3Aおよび3Bに示す形状の実施形態3の細胞処理容器100を作製した。
容器底部110の周縁に、内周輪郭が直径35mmの円形であり、容器下面112から外周壁部上端122までの高さが約10mmの外周壁部120を備え、容器底部110の中央に、平面視での形状が長方形の収容部130を有する細胞処理容器100を作製した。収容部形成面141は平面視で短辺が5mm、長辺が13mmの長方形であり、収容部形成面141の最深部148から上端149までの高さは5.8mmとし、収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さは5mmとした。収容部底傾斜面142は、長辺と接続する部分の傾斜角7°、短辺と接続する部分の傾斜角が約18°、平面視での収容部底面400の重心が最深部148となるように窪んだ逆四角錐形状とした。収容部側面143の傾斜角は85°とした。収容空間150の容量は約325μLであった。最深部148は実質的に幅を有さない点状であり、細胞処理容器100を平面視したとき直径3mmの範囲内に収まる形状である。
<製造例4>
収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さが3mmである点を除いて製造例1の細胞処理容器と同様の容器を製造した。
<製造例5>
収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さが7mmである点を除いて製造例1の細胞処理容器と同様の容器を製造した。
<2.作業性の検証>
<実験1>
下記表に示す実施例1〜7及び比較例1、2の細胞処理容器を製造した。
実施例4の容器は、上記の製造例1で得られた容器である。実施例3の容器は、上記の製造例4で得られた容器である。実施例5の容器は、上記の製造例5で得られた容器である。
他の実施例及び比較例1,2の容器は、全体形状、収容部底傾斜面142の傾斜角、及び収容部側面143の傾斜角は実施例4の容器と同一であり、収容部形成面141の最深部148から上端149までの高さ(表中での「形成面高さ」)と、収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さ(表中での「側面高さ」)と、収容部形成面141の平面視での直径(表中での「直径」)と、収容空間150の容量が下記表に示す寸法である。
実施例1〜7、比較例1、2の容器の操作性を評価した。
収容部130の収容空間150にHTFメディウム(IRVINE SCIENTIFIC社製)を満たし、胚に相当する大きさのガラスビーズ(直径約150μm)を入れ、カテーテル(KITAZATO製 ET catheter(カテーテルサイズ4Fr))を収容空間150内に浸漬して、カテーテルによる吸引作業が容易であるか否か(評価項目1)、並びに、カテーテル作業を顕微鏡観察しながら実施した際にカテーテル先端が周壁部140にぶつかる、或いは、顕微鏡レンズにぶつかることで作業がしにくいといった問題がないか否か(評価項目2)を評価した。
結果を表の「カテーテル作業」の欄に示す。評価項目1及び評価項目2に関してそれぞれ作業性がよいものを○(「A」としてもよい)、中程度のものを△(「B」としてもよい)、悪いものを×(「C」としてもよい)とし、評価項目1及び2のどちらか一方でも×であれば「カテーテル作業」の評価は×(「C」としてもよい)とし、評価項目1及び2のどちらでも×がなく且つ一方又は両方が△であれば「カテーテル作業」の評価は△(「B」としてもよい)とし、評価項目1及び2の両方について○であれば「カテーテル作業」の評価は○(「A」としてもよい)とした。
いずれの実施例1〜7の容器はいずれも「カテーテル作業」が×となる容器はなかった。ただし、実施例1の容器については、評価項目1に関して△であり、カテーテルによる吸引作業の際にカテーテルに気泡が入り易い傾向が認められた。実施例7の容器は評価項目2に関して△であり、カテーテルの傾きを変更できる範囲が限定され、作業が困難になり胚の吸引等に時間がかかり易くミスが増える傾向が認められた。
比較例1の容器は、評価項目1に関して×であり、カテーテルによる吸引作業の際にカテーテルに気泡が入り込む問題が顕著であった。
比較例2の容器は、評価項目2に関して×であり、カテーテルの傾きを変更できる範囲が限定され、作業が困難になり胚の吸引等に時間がかかりミスが増える問題が顕著であった。
上記評価試験の間に収容空間150内の培地液が揮発するかどうかを確認したところ、実施例1及び2の容器では若干量の培地液の揮発が確認された。比較例2の容器では培地液の揮発量が多いことが確認された。
<実験2>
下記表に示す実施例8〜13及び比較例3、4の細胞処理容器を製造した。
実施例8〜13及び比較例3、4の容器は、全体形状、収容部底傾斜面142の傾斜角、及び収容部側面143の傾斜角は製造例3の容器と同一であり、収容部形成面141の最深部148から上端149までの高さ(表中での「形成面高さ」)と、収容部側面143の底面側面交差部分147から上端149までの高さ(表中での「側面高さ」)と、収容部形成面141の平面視での長軸長さ及び短軸長さと、収容空間150の容量とが下記表に示す寸法である。
実施例8〜13、比較例3、4の容器の作業性及び方向認識性を評価した。
収容部130の収容空間150にHTFメディウム(IRVINE SCIENTIFIC社製)を満たし、カテーテル(KITAZATO製 ET catheter(カテーテルサイズ4Fr))を、収容部130の開口の長軸方向に沿って、短軸側から収容空間150に挿入し、中央にアクセスした時の、作業性(評価項目3)と方向認識性(評価項目4)を確認した。
評価項目3及び4のそれぞれについて、良好のものを○(「A」としてもよい)、中程度のものを△(「B」としてもよい)、悪いものを×(「C」としてもよい)とし、評価項目3及び4のどちらか一方でも×であれば「カテーテル作業」の評価は×(「C」としてもよい)とし、評価項目3及び4のどちらでも×がなく且つ一方又は両方が△であれば「カテーテル作業」の評価は△(「B」としてもよい)とし、評価項目3及び4の両方について○であれば「カテーテル作業」の評価は○(「A」としてもよい)とした。結果を上記表の「カテーテル作業」の欄に示す。
実施例8〜13の容器のなかで、評価項目3及び4の一方又は両方が×である容器はなかった。ただし実施例8の容器は、短軸方向幅がカテーテル先端幅と同等かそれ以下のため作業性が若干悪く評価項目3に関して△であった。実施例13の容器は、収容部130の開口は長方形であるが外見上は長軸方向と短軸方向の区別が難しく、また、短軸長が比較的長いため顕微鏡観察時には視野内で土手構造が見えにくいことから、方向認識性が若干悪く評価項目4に関して△であった。
<実験3>
本実験では実施例4の容器(製造例1で得られる容器)を用いた。
本実験で比較例として用いた比較例5の容器は、収容部底面400が、周縁の輪郭が平面視において円形であり、傾斜面が0°である平坦な平面により形成されており、収容部側面143の高さが5mmである点以外は実施例4の容器と同様の構造を有する容器である。この比較例5の容器では、収容部底面400は直径13mmの円により形成されており、容器を平面視したとき直径3mmの範囲内に収まる形状ではない。
各容器の収容部収容空間内に直径150μmの球状のガラスビーズ1個と、HTFメディウム(IRVINE SCIENTIFIC社製)、400μLとを収容した。収容したガラスビーズを顕微鏡により観察後、容器全体を持って僅かに振動させ、静置した。静置後、顕微鏡によりガラスビーズが初期の配置位置にあるかを確認した。
実施例4の容器ではガラスビーズは、振動前も後もともに、最深部148を含む細胞保持領域146に位置していた(評価○)。ここで評価○は評価Aと表してもよい。
比較例5の容器ではガラスビーズは、振動後は、振動前の底面上の位置から大きく移動し、底面の辺縁の側面と接触する部分に位置しており、観察が困難であった(評価×)。ここで評価×は評価Cと表してもよい。
<実験4>
全体形状、収容部底傾斜面142の傾斜角及び収容部側面143の傾斜角は実施例4の容器と同一であり、収容部形成面141の最深部148から上端149までの高さを4mmとした容器を実施例14の細胞処理容器100とした。この容器ではθ4は全て32°であり、θ5は全て27°である。
実施例14の容器を水平なステージ上に載置し、収容部130の収容空間150にHTFメディウム(IRVINE SCIENTIFIC社製)を満たし、細胞保持領域146に胚に相当する直径約150μmの球形のガラスビーズを加えた。前記ガラスビーズに焦点を合わせて倍率20倍の実体顕微鏡で観察しながら、カテーテル(KITAZATO製 ET catheter(カテーテルサイズ4Fr))によりガラスビーズをカテーテル先端から4mm程度吸い上げる操作を行った。このとき、カテーテルの長さ方向と前記ステージの載置面に沿った平面とがなす角度のうち鋭角を60°から40°の範囲内となるようにした。その結果、前記鋭角が60°〜50°ではカテーテル内の細胞がぼやけで見えなくなるという問題があるが、45°以下であれば視野内で細胞を視認することができ、40°以下であればこのような問題がないことが明らかとなった。
<実験5>
実施例14の細胞処理容器100を水平なステージ上に載置し、半径40mmの円筒形の対物レンズを備え対物レンズの光軸が前記ステージの載置面に垂直な倍率20倍の実体顕微鏡で焦点を最深部148に合わせたとき、対物レンズと前記最深部との距離は114mmとなった。このためθ4及びθ5は共に最も大きい部分において81°以下であれば、前記顕微鏡において最深部148を観察しながらカテーテル(KITAZATO製 ET catheter(カテーテルサイズ4Fr))を最深部148に近づける操作の際にカテーテルが対物レンズ、収容部周壁部140及び外周壁部120に干渉しないことが明らかとなった。θ4及びθ5の下限は特に限定されず1°でも問題はない。
<実験6>
図11に示す本発明の実施形態11に係る細胞処理容器100を形成した。
第1隔壁701、第2隔壁702、第3隔壁703の容器底面111からの高さd1、d2、d3(図7A参照)、及び収容部周壁部140の容器底面111からの高さe(図7A参照)を全て4mmとした。収容空間150の形成面上端149の直径が13mm、7mm、3.8mmの3種類の容器を作成した。
細胞処理容器100の形成面141、第2容器状部収容空間162を囲う側壁面、容器底面111等の容器内の面は全て疎水性表面とした。
この細胞処理容器100では、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121はそれぞれ直接交差しており曲面処理されていない。
この細胞処理容器100の第2容器状部収容空間162に、オイルを0.5mmの深さとなるように加えたところ、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121とが交差する部分を伝ってオイルが拡散して第3容器状部収容空間163に流入した。
一方、この細胞処理容器100の収容部130の収容空間150にオイルを、形成面141の上端である形成面上端149から下方に0.5mm離れた位置に液面が位置するように加えたところ、形成面上端149の直径が13mm、7mm又は3.8mmのいずれの容器を用いた場合でも、オイルは形成面上端149を越えることなく収容空間150内に留まった。
このことから、図31に示すように、第3隔壁703の一方の面707と収容部周壁部140の収容部外壁面144、第3隔壁703の一方の面707と外周壁部120の外周壁部内周面121を、それぞれ丸みを帯びた第1の隔壁側面−収容部外壁面接続曲面311及び第1の隔壁側面−外周壁部内周面接続曲面313により滑らかに接続すれば、第2容器状部収容空間162から第3容器状部収容空間163へのオイルの拡散を防止できることが明らかとなった。
<実験7>
細胞培養において培養液を基板上でドロップ状にし、培養液の蒸発防止のためにオイルなどで該ドロップを被覆し、ドロップ内で細胞を培養する場合がある。
受精卵を培養液のドロップ中で培養する場合、ドロップを形成する培養液量は15μL又はそれ以上であることが通常である。
そこで、水に各成分が溶解した水溶液である細胞培養液15μLを、親水性処理が施されていない疎水性のポリスチレン基材の表面に載せてドロップを形成し、該ドロップの基材表面からの高さを確認した。その結果ドロップの高さは2mmであることが確認された。該ドロップを被覆するためには2mmよりも深いオイルの層が必要である。