JP6511817B2 - 細胞培養容器 - Google Patents

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Description

本発明は培養細胞の観察に適した細胞培養容器に関する。
培養系で精子と卵子とを体外受精させて受精卵(接合子)を作製して、さらに受精卵を卵割、桑実胚、胚盤胞の段階を経て、透明帯から孵化した脱出胚盤胞の段階まで培養することが可能となり、この卵割から胚盤胞の段階にある受精卵を子宮に移植して産子を得る補助的生殖技術(ART)が、家畜領域のみならずヒトの不妊医療でも確立されている。
体外受精においては、容器中に培養液のドロップを作り、この中に受精卵を入れて体外培養するマイクロドロップ法が用いられることが多い。従来、このマイクロドロップ法には、細胞培養容器として、底面が単一平面の、直径が30〜60mmのシャーレが使用され、シャーレの底面に、培養液のドロップを、間隔をあけて複数個作製する方法が使用されてきた。しかし通常のシャーレでドロップを作成するとドロップ形成位置が定まらず、振動等でドロップがずれてしまうといった問題があった。ドロップがずれてしまうと、その中で培養して観察していた受精卵の特定が難しくなるという問題があった。そこで特許文献1等では、ドロップの位置が制御でき、受精卵培養作業時や培養時の振動による影響を抑制できる細胞培養容器が開示されている。
特許文献1には図8A、8Bに示す細胞培養容器800が開示されている。細胞培養容器800は、容器底部810と容器底部810の周縁から起立した外周壁部820と、容器底部810から起立した周壁部830とを備える。周壁部830により囲われた上方に開口した空間が、細胞及び培養液を収容するための収容空間840である。収容空間840の底を形成する面上には、細胞を位置決めするための複数の窪み850が形成されている。細胞培養容器800を用い、培養液のマイクロドロップを収容空間840内に保持し、細胞を窪み850に配置することで、マイクロドロップ及び細胞の位置を固定することが可能になる。
特許第4724854号公報
従来の細胞培養容器800での周壁部830は、収容空間840に向いた内壁面831と、収容空間800の外側に向いた外壁面832と、内壁面831及び外壁面832の開口側端を接続する上面833とを有するものであった。
細胞培養容器800の周壁部830で囲われた収容空間840に細胞を含む培養液のドロップを保持して培養を行う場合、収容空間800内を観察するために顕微鏡が用いられる。しかし、細胞培養容器800の全面から観察したい対象物を探そうとすると、周壁部830の上面833にも対象物が保持されてしまう恐れがあるため、細胞が配置されている収容空間800の底から焦点をずらして上面833も観察する必要があった。
観察したい対象物としては、培養対象である細胞等には限らず、異物等も考えられる。異物管理は細胞培養において非常に重要である。細胞培養時に存在する異物によって細胞が様々な影響を受け、発育阻害や機能喪失、特性の変化などが生じる場合があるからである。また、異物の存在は細胞の品質評価にも影響を与える。特に顕微鏡等での光学的な観察の邪魔になる。更に、培養液を解析する際にもデータのノイズ要因となる。更に、再生医療や不妊治療を目的として細胞培養する場合、細胞とともに異物までも移植されてしまうことが考えられ、大きな問題となる。異物のサイズが小さい場合、例えば、収容空間800の全体を顕微鏡で観察することが行われている。
そこで本発明は、周壁部により囲われた細胞及び培養液を収容するための収容空間が形成された細胞培養容器であって、周壁部の表面上における細胞や異物の意図せぬ保持の可能性が低減された細胞培養容器を提供することを解決課題とする。
そこで本明細書では上記課題を解決する手段として以下の発明を開示する。
(1)
細胞及び培養液を収容するための収容空間が形成された細胞培養容器であって、
前記収容空間は、容器底部から起立した周壁部により囲われた、上方に開口した空間であり、
前記周壁部は、前記収容空間に向いた内壁面と、前記収容空間の外側に向いた外壁面とを有し、
前記内壁面と前記外壁面とは開口側端において交差している
ことを特徴とする細胞培養容器。
(2)
前記内壁面と前記外壁面とが交差した部分が、平面視において、前記収容空間の開口を囲う連続した線である、上記(1)に記載の細胞培養容器。
上記(1)の発明によれば、周壁部の開口側端部に上面が存在しないため、周壁部の表面上に細胞や異物が保持される可能性が低い。
上記(2)の発明によれば、周壁部の開口側端部が、平面視において実質的に幅のない線状の頂部を形成するため、周壁部の開口側端部に細胞や異物が保持される可能性が更に低い。
本発明によれば、周壁部により囲われた細胞及び培養液を収容するための収容空間が形成された細胞培養容器であって、周壁部の表面上における細胞や異物の意図せぬ保持の可能性が低減された細胞培養容器が提供される。
本発明の実施形態1に係る細胞培養容器100の平面図の模式図である。 図1Aに示す細胞培養容器100のX−X断面の模式図である。 本発明の実施形態2に係る細胞培養容器100の断面の模式図である。 本発明の実施形態3に係る細胞培養容器100の断面の模式図である。 本発明の実施形態4に係る細胞培養容器100の断面の模式図である。 本発明の実施形態5に係る細胞培養容器100の断面の模式図である。 比較例である細胞培養容器600の断面の模式図である。 本発明の実施形態6に係る細胞培養容器100の平面図の模式図である。 図7Aに示す細胞培養容器100のX−X断面の模式図である。 特許文献1に開示されている従来の細胞培養容器800の平面図の模式図である。 図8Aに示す従来の細胞培養容器800のY−Y断面の模式図である。 面の傾斜角の定義を説明する図である。 上下方向に沿った平面に沿った、周壁部120の端面の模式図である。 実施形態3の効果を説明するための図である。 実施形態4の変更例1での周壁部120の模式図である。 実施形態4の変更例2での周壁部120の模式図である。
本発明の細胞培養容器を、図面に示す実施形態を参照して説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書の図面では各構成の寸法及び形状に関わらず同じ機能を有する構成は同じ符号を付しており、特段の相違点を除き説明を省略する。
<傾斜角について>
後述する実施形態1〜7の詳細を説明する前に、周壁部の内壁面と外壁面との傾斜角について説明する。以下の説明で参照する符号は実施形態1〜7を説明するための符号と同じとした。
本発明において「上下方向」とは、本発明の細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で収容空間140に培養液等の液体を収容したときに該液体の深さ方向(すなわち鉛直方向)と一致する方向を指す。そして本発明において、上下方向に沿って収容空間140の底から開口に向かう方向を上方、上下方向に沿って収容空間の開口から底に向かう方向を下方とする。
本発明では面の傾斜角を以下のように定義する。図9に示すように、部材Xの表面である面S上の点Pを通る法線をNとし、前記点Pを通る上下方向(上記で定義した通り)に沿った仮想直線をLとし、法線Nのうち点Pから部材Xの存在しない側の半直線部分をNとし、仮想直線Lのうち点Pから上方側の半直線部分をLとしたとき、法線Nと仮想直線Lとの成す角のうち、半直線部分Nと、点Pと、半直線部分Lとの間に形成される角θを、面Sの点Pの位置での傾斜角と定義する。周壁面120の内壁面123又は外壁面124の全体又はある一部分の傾斜角とは、該全体又は該一部分に含まれる点を点Pとし、周壁部120を部材Xとし、内壁面123又は外壁面124を面Sとしたときの、上記で定義した点Pの位置での傾斜角θを指す。
本発明の細胞培養容器100は、周壁部120を備える。周壁部120は、収容空間140に向いた内壁面123と、収容空間140の外側に向いた外壁面124とを有する。
本発明の細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間の重心を通り且つ上下方向に沿った平面による周壁部120の端面の模式図を図10に示す。
周壁部120の内壁面123の傾斜角は、開口側端またはその近傍において好ましくは0°よりも大きく、より好ましくは10°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは75°以下、特に好ましくは65°以下である。ただし開口側端150においては内壁面123の傾斜角は0°であっても好ましい。外壁面124の開口側端またはその近傍での傾斜角が90°である場合には内壁面123の開口側端またはその近傍での傾斜角は90°未満であることが好ましい。周壁部120の内壁面123は、開口側端またはその近傍において、ほぼ一定の傾斜で開口側端まで延びていている(実施形態1、2、3、5、7、実施形態4変形例2等)、或いは、開口側端に近づくほど傾斜が小さくなる(実施形態4、実施形態4変形例1等)ことが好ましい。
周壁部120の外壁面124の傾斜角は、開口側端またはその近傍において好ましくは0°よりも大きく、より好ましくは10°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは75°以下、特に好ましくは65°以下、である。ただし開口側端150においては外壁面124の傾斜は0°であっても好ましい。内壁面123の開口側端またはその近傍での傾斜角が90°である場合には外壁面124の開口側端またはその近傍での傾斜角が90°未満であることが好ましい。周壁部120の外壁面124は、開口側端またはその近傍において、ほぼ一定の傾斜で開口側端まで延びていている(実施形態1、2、3、5、7、実施形態4変形例2等)、或いは、開口側端に近づくほど傾斜が小さくなる(実施形態4、実施形態4変形例1等)ことが好ましい。
本発明において内壁面又は外壁面の「開口側端またはその近傍」とは、例えば、内壁面又は外壁面の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、内壁面又は外壁面の開口側端から底側端に向けて上下方向に沿って好ましくは20以下、より好ましくは10以下、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の部分を指す。
周壁部120の内壁面123の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分の傾斜角は特に限定されず、好ましくは0°以上であり、より好ましくは0°よりも大きく、より好ましくは10°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは90°未満であり、より好ましくは75°以下であり、特に好ましくは65°以下である。
周壁部120の外壁面124の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分の傾斜角は特に限定されず、例えば0°以上であり、好ましくは0°よりも大きく、より好ましくは10°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは140°以下であり、より好ましくは120°以下であり、より好ましくは90°以下であり、より好ましくは90°未満であり、より好ましくは75°以下であり、特に好ましくは65°以下である。
内壁面123及び外壁面124はそれぞれ、底側端から開口側端に向かって傾斜角がほぼ一定であってもよいし(例えば実施形態1、2、3、7)、底側端から開口側端に向かって連続的または段階的に傾斜角が変化するように形成されていてもよい(例えば実施形態4、5)。或いは、内壁面123及び/又は外壁面124の開口側端またはその近傍以外の部分に階段状に立ち上がった1つ又は複数の段付き部が形成されていてもよい(例えば実施形態2の外壁面124)。
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
<実施形態1(図1A,1B)>
図1Aおよび図1Bに、本発明の細胞培養容器100の実施形態1を示す。
細胞培養容器100は容器底部110と、容器底部110の周縁に立設した外周壁部130とを含み、容器底部110から起立した周壁部120を更に含む。
収容空間140は、細胞及び培養液を収容するための空間であって、周囲が周壁部120により囲われ上方に開口した空間である。
実施形態1では、容器底部110のうち、収容空間140の底を形成する部分を収容空間底部111と称し、周壁部120と外周壁部130とを接続する部分を外縁底部112と称する。
実施形態1では、周壁部120は、逆円錐状の内壁部121と、内壁部の上端に接続され下方に延びる円筒状の外壁部122とが組み合わされており、内壁部121と外壁部122との間が中空構造となるように存在するように構成されている。ただし当該中空構造は必要な構成ではなく、図10、12、13に示す周壁部120のように、周壁部120全体が中実の構造を有していてよい。
1つの細胞培養容器100に含まれる収容空間140の個数は図示した例では1のみであるが、2以上、例えば2〜4であってもよい。
外周壁部130の開口端である上端の内周側輪郭を平面視したときの図形の形状は、例えば円状(円形および楕円形を含む)等の任意の形状であることができ、好ましくは円形であり、その開口幅(前記図形において、該図形の重心を間に介して対向する、該図形の周縁上の一対の点の間の距離の最大値)は好ましくは30〜60mmである。
次に周壁部120の特徴について詳述する。
本発明の細胞培養容器100では、周壁部120は、収容空間140に向いた内壁面123と、収容空間140の外側に向いた外壁面124とを有する。
ここで収容空間に向いた内壁面は、周壁部の側面のうち収容空間を囲う面であり、本発明の細胞培養容器を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間の内側に向いた面である。収容空間の外側に向いた外壁面は、周壁部の側面のうち、本発明の細胞培養容器を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間の外側に向いた面である。内壁面及び外壁面はともに、本発明の細胞培養容器を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間の重心を通り上下方向に沿った仮想直線に対して、該仮想直線に垂直に投影した場合に、点ではなく線として投影される。図示する実施形態では、内壁面123は収容空間140の外側に向いた面を含まず、外壁面124は収容空間140に向いた面を含まない。
内壁面123と外壁面124とは開口側端において交差していることを特徴とする。ここで内壁面123と外壁面124とが開口側端において「交差」しているとは、本発明の細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間の重心を通り且つ上下方向に沿った、周壁部120の断面上で、内壁面123と外壁面124とが開口側端において実質的に交わっていることを意味する。「実質的に交わっている」とは、前記断面上で内壁面123と外壁面124とが開口側端において交わっている、或いは、実質的に幅を有さない面を介して接続していることを指し、「実質的に幅を有さない」は次段落で説明する通りである。この構成により、細胞培養時には、周壁部120の開口側端部上に細胞、異物等が安定に保持されることはできず、内壁面123と外壁面124のどちらかを伝って落下する。このため、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に載った状態で残存する可能性が低減される。
より好ましくは、図1A,Bに示すように、内壁面123と外壁面124とが交差した部分が、本発明の細胞培養容器100を水平面上に載置した状態での平面視(本発明では単に「平面視」ともいう)において、収容空間140の開口を囲う連続した線150である。線150は、内壁面123の開口側端での傾斜角と、外壁面124の開口側端での傾斜角とが共に0°である場合を除いて形成され、周壁部120の開口側端の表面は線150を境に傾斜が不連続に変化する。このとき、周壁部120の開口側端の表面は、細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間140の重心を通り上下方向に沿った仮想平面による断面において、線150を頂点として折れ曲がった形状となる。線150は実質的に幅を有さない。ここで「実質的に幅を有さない」とは、培養対象細胞と比較して平面視での幅が全くない又は幅が十分に小さいことを指し、例えば培養対象細胞の幅の1/2以下、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/20であり、例えば卵細胞又は胚を培養する細胞培養容器100では線150は平面視において50μm以下、好ましくは10μm以下の幅を有していてもよい。この場合、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に載った状態で保持される可能性が大幅に低減されることから好ましい。更に好ましい実施形態では、内壁面123と外壁面124とが交差して線150を形成するとき、細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間140の重心を通り上下方向に沿った平面による断面上で、内壁面123と外壁面124とが線150において成す、周壁部120内に形成される角θ(図10参照)は、好ましくは90°以下、より好ましくは45°以下、より好ましくは20°以下であり、特に好ましくは10°以下である。θが小さいほど周壁部120の開口側端が先鋭の形状となり、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に載った状態で保持される可能性が更に低減される。
なお、内壁面123と外壁面124との交差部分は適宜面取りされていてもよい。このとき、内壁面123と外壁面124との交差部分は上下方向に垂直な平坦面が形成されないように面取りされていることが好ましく、丸みを帯びた面が形成されるように面取りされていることがより好ましい。面取りされている場合の交差部分の丸みを帯びた面は、細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間140の重心を通り上下方向に沿った仮想平面による断面において、曲率半径が好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは10μm以下の円弧の一部と近似できる面であることが好ましい。このとき内壁面123と外壁面124との交差部分に細胞、異物等が保持される可能性が低いため好ましい。
実施形態1において、周壁部120の内壁面123の開口側端及びその近傍での傾斜角、及び、周壁部120の内壁面123の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分での傾斜角の好ましい範囲は<傾斜角について>で説明した通りである。更に好ましくは、内壁面123の傾斜角は底側端から開口側端に至るまでの全体において、内壁面123の開口側端およびその近傍での傾斜角の好ましい範囲として挙げた範囲内である。図示する実施形態1では底から開口に向かって収容空間140が広がるように内壁面123が形成されており、内壁面123の傾斜角は底側端から開口側端に至るまでほぼ一定であるが、この形態には限定されない。
内壁面123は好ましくは、円錐状または円錐台状の部分を含む。円錐状または円錐台状の部分は、培養容器の底部側に、円錐の頂点または円錐台の上面および下面のうち面積の狭い方がくるように形成される。円錐状には、円錐および楕円錐、これらに類似の形状、例えば、円錐または楕円錐の頂点が丸みを帯びている形状、円錐面が外側に膨らんでいる形状、円錐面が内側に凹んでいる形状などが含まれる。円錐台状には、円錐台および楕円錐台、これらに類似の形状、例えば、円錐台または楕円錐台の上面または下面と円錐面との接合部が丸みを帯びている形状、円錐面が外側に膨らんでいる形状、円錐面が内側に凹んでいる形状などが含まれる。内壁面123は、上記に限らず、多角錐状、多角錐台状などの形態であってもよい。
実施形態1において、周壁部120の外壁面124の開口側端及びその近傍での傾斜角、及び、周壁部120の外壁面124の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分での傾斜角の好ましい範囲は、それぞれ<傾斜角について>で説明した通りである。より好ましくは、外壁面124の傾斜角は底側端から開口側端に至るまでの全体が、外壁面124の開口側端およびその近傍での傾斜角の好ましい範囲として挙げた範囲内である。図示する実施形態1では外壁面124の傾斜角は底側端から開口側端に至るまでほぼ一定であるが、この形態には限定されない。
周壁部120の内壁面123及び外壁面124の傾斜角が上記の範囲である場合に、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に載った状態で保持される可能性を特に効果的に低減することができる。
実施形態1では、内壁面123と外壁面124との傾斜角の大小関係は特に限定されないが、典型例としては、少なくとも開口側端及びその近傍において、内壁面123の傾斜角が、外壁面124の傾斜角よりも小さい例が挙げられ、この場合は内壁面123の開口側端及びその近傍での傾斜角は好ましくは10°以上、より好ましくは20°以上、特に好ましくは30°以上、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、特に好ましくは50°以下であり、外壁面124の開口側端及びその近傍での傾斜角は好ましくは30°以上、より好ましくは50°以上、好ましくは90°以下、より好ましくは85°以下、特に好ましくは80°以下である。
収容空間140の底は、収容空間底部111の上面である収容空間底面113により形成される。細胞培養容器100は通常、収容空間底面113が水平となるように設置され使用される。収容空間底面113の周縁及び周壁部120の開口側端(実施形態1では線150と同じ)を上下方向に沿って平面視したときの形状は特に限定されないが、好ましくは互いに相似であり、好ましくはそれぞれ円状(円形および楕円形を含む)である。
なお、本発明において収容空間底面は好ましくは平面であるが、これには限定されない。底面が平面でない場合は、底面の周縁の線を含む平面を「収容空間底面」とみなす。平面でない底面としては、中央部が上方に突出した凸面や、中央部が下方に窪んだ凹面が例示できる。
収容空間140は小容量の培養液、例えば10μl〜100μlの培養液のドロップを収容できるように構成されており、且つ、収容空間底面113の面積は、10μl〜100μlの培養液のドロップによって収容空間底面113の全面を覆うことが可能であり、ドロップの高さが0.35mm以上、より好ましくは0.5mm以上となる面積であることが好ましい。したがって、収容空間底面113の面積は、好ましくは0.75mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは9mm以上であり、好ましくは80mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは16mm以下である。収容空間底面113の面積を0.75mm以上とすることにより、複数の細胞、好ましくはヒト受精卵を、互いが重なることなく、収容空間底面113に配置して培養することができる。複数の細胞、特に受精卵を、同じ系で培養することにより、培養液内部に蓄積したタンパク質、ホルモン、酵素等の細胞分泌物が互いの細胞に作用するパラクライン効果を期待できる。また、細胞同士が平面上で重なっていると、顕微鏡等による細胞や受精卵の評価が困難であることから、底面は一定の面積を有することが好ましい。また、後述する実施形態6のように、収容空間底面113に、細胞の位置決めをするための窪みを形成する場合も、底面はある程度の面積を有することが好ましい。また、収容空間底面113の面積を、80mm以下とすることにより、小容量の培養液のドロップでも、底面の全面を覆うことが可能になり、すなわち、ドロップが収容空間底面113上で大きく移動することを防止できる。収容空間底面113の最大幅(該底面の輪郭を平面視した図形において、該図形の重心を間に介して対向する、該図形の周縁上の一対の点の間の距離の最大値であり、該底面が円の場合は直径)は好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは3.5mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは4.5mm以下である。
収容空間140に収容できる液体の最大の容量は、例えば100μl〜3ml、特に200μl〜1mlである。この容量を一定以下とすることにより、細胞分泌物によるオートクライン効果や複数の細胞の相互作用によるパラクライン効果を期待できる。また、たとえば受精卵培養時には2日間培養後に培養液を半分だけ新しい培養液に交換するなどの作業を行う培養手法を実施することもある。これらの作業時には、培養液が200μl以上あることで作業が容易となる。
本発明の細胞培養容器100の材質は特に制限されない。具体的には、金属、ガラス、およびシリコン等の無機材料、プラスチック(例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)で代表される有機材料を挙げることができる。細胞培養容器100は、当業者に公知の方法で製造することができる。例えば、プラスチック材料からなる培養容器を製造する場合には、慣用の成形法、例えば射出成形により製造することができる。
光学顕微鏡での観察のためには、細胞培養容器100は光透過性の材料により形成されていることが好ましい。
本発明の細胞培養容器100は、受精卵の発育を促進するような表面処理又は表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、他の器官の細胞(例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞)と共培養をする場合、これらの細胞をあらかじめ細胞培養容器100の収容空間140に面する表面113、123に接着させる必要がある。このような場合に、細胞培養容器100の表面113、123に細胞接着性の材料をコートすると有利である。
本発明の細胞培養容器100を用いて培養し、必要に応じて観察する細胞としては、特に限定されないが、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)及びiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞を指し、未成熟卵母細胞及び成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えてゆき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚及び8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞及び脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性又は全能性細胞を指す。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞を指す。すなわち、本発明において培養の対象となる細胞には、受精卵や胚盤胞のように複数の細胞の集合体も包含される。本発明の細胞培養容器100は、哺乳動物及び鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の培養に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物を指し、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギなどの齧歯類、イヌ及びネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマ及びブタなどの家畜が挙げられる。本発明の細胞培養容器100は、ウシの受精卵の培養に特に好適である。
以下、図面に示す他の実施形態を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態には限定されない。また、本明細書の図面では各構成の寸法及び形状に関わらず同じ機能を有する構成は同じ符号を付しており、上記実施形態1との特段の相違点を除き説明を省略する。
<実施形態2(図2)>
図2に、本発明の細胞培養容器100の実施形態2を示す。
実施形態2に係る細胞培養容器100は、実施形態1と異なり、外周壁部130及び外縁底部112を備えず、容器底部110から起立した周壁部120自体が容器の外周壁部を構成している。実施形態2では容器底部110としては収容空間底部111を備える。
図2に示す実施形態2では、外壁面124の開口側端の近傍以外の部分に階段状に立ち上がった段付き部125が1つ形成されていているが、段付き部125は必須の構成ではない。
図2に示す実施形態2では、外壁部122が、実施形態1における外周壁部130と同様の形態、寸法であり、内壁部121が、実施形態1における外周壁部130の開口側端部まで延長した形態である。この実施形態2では、線150の平面視における形状は、例えば円状(円形および楕円形を含む)等の任意の形状であることができ、好ましくは円形であり、その開口幅(前記図形において、該図形の重心を間に介して対向する、該図形の周縁上の一対の点の間の距離の最大値)は好ましくは30〜60mmであり、収容空間140の容量は、500μl〜10mlである。実施形態2における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様であることができる。或いは、実施形態2の変形例として、実施形態2における周壁部120(内壁部121、外壁部122を含む)の寸法、形状、角度、収容空間140の容量を実施形態1と同様とした変形例、すなわち、実施形態1において外縁底部112と外周壁部130とが存在しない変形例が挙げられる。
実施形態2では実施形態1について上述したのと同様の効果が実現できる。
実施形態2における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様であることができる。
<実施形態3(図3)>
図3に、本発明の細胞培養容器100の実施形態3を示す。
実施形態3は、少なくとも開口側端及びその近傍において、内壁面123の傾斜角が外壁面124の傾斜角よりも大きい例であり、実施形態1に包含される一例である。
実施形態3では内壁面123の開口側端及びその近傍での傾斜角は好ましくは30°以上、より好ましくは50°以上、好ましくは90°以下、より好ましくは85°以下、特に好ましくは80°以下であり、外壁面124の開口側端及びその近傍での傾斜角は好ましくは10°以上、より好ましくは20°以上、特に好ましくは30°以上、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、特に好ましくは50°以下である。実施形態3では、更に好ましくは、内壁面123及び外壁面124の傾斜角は底側端から開口側端に至るまでの全体において、内壁面123及び外壁面124の開口側端およびその近傍での傾斜角の好ましい範囲として挙げた上記範囲内であり、且つ、内壁面123の傾斜角のほうが外壁面124の傾斜角よりも大きい。
実施形態3のように内壁面123を比較的大きな傾斜の面とすることにより、収容空間140に収容された液体に気泡が含まれていた場合に気泡が内壁面123の近傍に集まり易いという利点がある。その機構は以下の通りである。図11は実施形態3の細胞培養容器100の収容空間140に培養液Dを収容したときの、培養液Dの液面Dの縁部が内壁面123と接する部分を鉛直方向の平面に沿って切った端面の模式図である。Hは水平面を示し、Eは、培養液Dの液面Dと内壁面123との接点を示し、θは内壁面123の培養液Dに対する接触角を示す。内壁面123の傾斜角θがθよりも大きい場合、培養液Dの液面Dは、接点Eにおいて高く、接点Eから収容空間140の内方に近づくほど低くなる。収容空間140に収容された培養液Dに気泡が含まれている場合、気泡は接点Eの近傍に集まり易く、培養液Dの液面の中央部の観察が容易である。
<実施形態4(図4)及び実施形態4の変形例1、2(図12、13)>
図4に、本発明の細胞培養容器100の実施形態4を示す。
実施形態4では内壁面123は底側領域123(1)と、開口側領域123(2)により構成される。内壁面123の開口側領域123(2)は傾斜角が開口側端に近づくほど減少し、開口側端で0°となるように形成された曲面を含む。一方、外壁面124もまた、底側領域124(1)と、開口側領域124(2)により構成される。外壁面124の開口側領域124(2)は傾斜角が開口側端に近づくほど減少し、開口側端で0°となるように形成された曲面を含む。そして、内壁面123と外壁面124とは、傾斜角がともに0°である開口側端において交差し、周壁部120の開口側端の表面は、細胞培養容器100を水平面上に載置した状態で平面視したときの収容空間140の重心を通り上下方向に沿った仮想平面による断面において折れ曲がった部分のない、傾斜が連続的に変化する一つながりの曲面を形成する。この場合は、内壁面123と外壁面124とが交差した部分は、平面視において明確な線を形成しない。実施形態4における、内壁面123と外壁面124との交差部分の丸みを帯びた面は、前記仮想平面による断面において、曲率半径が好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは10μm以下の円弧の一部と近似できる面であることが好ましい。実施形態4によっても、周壁部120の開口側端に上下方向に垂直な平坦面が形成されないため、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に保持されにくく好ましい。
実施形態4の変形例1としては、図示する実施形態4において、内壁面123の開口側領域123(2)及び外壁面124の開口側領域124(2)がともに開口側端に近づくほど傾斜角が減少するが、図12に示すように、内壁面123の開口側領域123(2)及び外壁面124の開口側領域124(2)の少なくとも一方、好ましくは両方の開口側端の傾斜角が0°よりも大きい例である。実施形態4の変形例1では、周壁部120の開口側端の表面は、内壁面123と外壁面124とが交差する部分を境に傾斜が不連続に変化する折れ曲がりのある曲面となり、当該部分は、平面視において、収容空間140の開口を囲う連続した線150を形成する。
実施形態4の変形例2としては、図示する実施形態4において、内壁面123の開口側領域123(2)及び外壁面124の開口側領域124(2)がそれぞれ、図13に示すように、ほぼ一定の傾斜で開口側端まで延びた例である。実施形態4の変形例2では、内壁面123と外壁面124とが交差する部分は、平面視において、収容空間140の開口を囲う連続した線150を形成する。
実施形態4の上記変形例1及び2では、実施形態1等と同様に、周壁部120の開口側端部は尖った形状となるため、細胞培養時に細胞、異物等が周壁部120の開口側端に載った状態で保持される可能性が低減されることから好ましい。
内壁面123の開口側領域123(2)の傾斜角は、<傾斜角について>において内壁面123の開口側端及びその近傍での傾斜角の範囲として説明した通りであり、好ましくは10°以上であり、より好ましくは20°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは70°以下であり、より好ましくは60°以下であり、特に好ましくは50°以下である。内壁面123の開口側領域123(2)の傾斜角が上記の各下限値以上の場合、対象物が留まりにくく、収容空間底面113に落ちやすいため有利であり、上記の各上限値以下の場合、周壁部120の高さを低く構成できるため有利である。
内壁面123の底側領域123(1)の傾斜角は、<傾斜角について>において内壁面123の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分での傾斜角の範囲として説明した通りであり、好ましくは30°以上であり、より好ましくは50°以上であり、特に好ましくは70°以上であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは85°以下であり、特に好ましくは80°以下である。より好ましくは、内壁面123の底側領域123(1)での傾斜角はほぼ一定である。内壁面123の底側領域123(1)の傾斜角が上記の各下限値以上の場合、対象物が留まりにくく、収容空間底面113に落ちやすいため有利であり、上記の各上限値以下の場合、収容空間140が上方に近づくほど広がる形状となるため収容空間140の容積を大きくすることができ有利である。
実施形態4及び変形例1、2のより好ましい実施形態では、内壁面123の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、内壁面123の底側端から開口側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50以上、より好ましくは60以上、特に好ましくは70以上、好ましくは90以下、より好ましくは80以下の部分が底側領域123(1)である。また、内壁面123の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、内壁面123の開口側端から底側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50未満、より好ましくは40未満、特に好ましくは40未満、好ましくは10超、より好ましくは20超の部分が開口側領域123(2)である。このように内壁面123の幅に占める、底側領域123(1)の幅の割合が開口側領域123(2)の幅の割合より大きい場合は、底側領域123(1)の高さ(上下方向幅)を調節することで、収容空間140の容積を所望の容積に設計することが容易となる。
外壁面124の開口側領域124(2)の傾斜角は、<傾斜角について>において外壁面124の開口側端及びその近傍での傾斜角の範囲として説明した通りであり、好ましくは10°以上であり、より好ましくは20°以上であり、特に好ましくは30°以上であり、好ましくは70°以下であり、より好ましくは60°以下であり、特に好ましくは50°以下である。外壁面124の開口側領域124(2)の傾斜角が上記の各下限値以上の場合、対象物が留まりにくく、外周空間160の底に落ちやすいため有利であり、上記の各上限値以下の場合、周壁部120の高さを低く構成できるため有利である。
外壁面124の底側領域124(1)の傾斜角は、<傾斜角について>において外壁面124の開口側端の近傍よりも底側端寄りの部分での傾斜角の範囲として説明した通りであり、好ましくは30°以上であり、より好ましくは50°以上であり、特に好ましくは70°以上であり、好ましくは90°以下であり、より好ましくは85°以下であり、特に好ましくは80°以下である。より好ましくは、外壁面124の底側領域124(1)での傾斜角はほぼ一定である。外壁面124の底側領域124(1)の傾斜角が上記の各下限値以上の場合、対象物が留まりにくく、外周空間160の底に落ちやすいため有利であり、上記の各上限値以下の場合、本発明の細胞培養容器100を射出成形により製造する際に、抜きテーパーがあるため製造し易いため有利であり、また、外周空間160が上方に近づくほど広がる形状となるため外周空間160の容積を大きくすることができ有利である。
実施形態4及び変形例1、2のより好ましい実施形態では、外壁面124の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、外壁面124の底側端から開口側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50以上、より好ましくは60以上、特に好ましくは70以上、好ましくは90以下、より好ましくは80以下の部分が底側領域124(1)である。また、外壁面124の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、外壁面124の開口側端から底側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50未満、より好ましくは40未満、特に好ましくは30未満、好ましくは10超、より好ましくは20超の部分が開口側領域124(2)である。このように外壁面124の底側領域124(1)の割合が開口側領域124(2)より大きい場合は、底側領域124(1)の高さ(上下方向幅)を調節することで、外周空間160の容積を所望の容積に設計することが容易となる。
実施形態4及び変形例1、2における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様であることができる。
<実施形態5(図5)>
図5に、本発明の細胞培養容器100の実施形態5を示す。
実施形態5の細胞培養容器100は、周壁部120の外壁面124が、傾斜角が90°よりも大きい底側領域124(3)を少なくとも含み、且つ、内壁面123と外壁面124とが開口側端において交差していることを特徴とする。実施形態5の細胞培養容器100はまた、周壁部120の底側端から外側に張り出した外縁底部112と、外縁底部112の周縁に立設した外周壁部130とを備え、外周壁部130と、外縁底部112と、周壁部120とに囲われ上方に開口した外周空間160が形成されていることを特徴とする。
実施形態1、3、4のように外周壁部130と外縁底部112とを備える細胞培養容器100を用いる細胞培養では、外周壁部130と、外縁底部112と、周壁部120とに囲われた外周空間160に、収容空間140とは異なる液体を収容して培養する場合がある。この用いられ方において、図1A,Bで図示するように周壁部120の外壁面124の傾斜角が底側端から開口側端まで90°に近い角度でほぼ一定である場合や、図3で図示するように周壁部120の外壁面124の傾斜角が底側端から開口側端まで90°未満の角度でほぼ一定である場合や、図4で図示する実施形態4のように周壁部120の外壁面124の傾斜角が90°に近い角度の部分と90°未満の角度の部分との組み合わせである場合には、使用時の振動により外周空間160に収容された液体が収容空間140に流入し易い。
上記問題点を解決する手段としては図6に示す比較例の細胞培養容器600が考えられる。細胞培養容器600は、実施形態1等における周壁部120が、周壁部610に置換されたものである。周壁部610は、内壁部121と、外壁部122と、内壁部121及び外壁部122の開口側端を連結する上壁部602とにより構成されており、外周空間160に面する外壁面124の傾斜角は90°よりも大きい。この構成によれば、外壁面124の開口側端よりも下方の位置に液面が位置するように外周空間160に液体を収容する場合には、培養時に振動等を受けても外周空間160内の液体が収容空間140に流入し難いという利点がある。しかし図6に示す比較例の細胞培養容器600では、内壁面123と外壁面124との開口側端が交差しておらず、傾斜角がほぼ0°である上壁部602により連結されているため、上壁部602上に細胞、異物等が保持され易いという問題がある。
図5に示す実施形態5は上記の問題を解決することを意図したものである。すなわち、壁面124の底側領域124(3)の傾斜角は90°よりも大きく、好ましくは95°以上であり、より好ましくは100°以上であり、好ましくは140°以下であり、より好ましくは120°以下であることにより、外壁面124の底側領域124(3)の開口側端よりも下方の位置に液面が位置するように外周空間160に液体を収容する場合には、培養時に振動等を受けても外周空間160内の液体が収容空間140に流入し難い。しかも内壁面123と外壁面124とが開口側端において交差している構成により、実施形態1等と同様に、周壁部120の開口側端に細胞、異物等が保持され難い。
外壁面124の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、外壁面124の底側端から開口側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50以上、より好ましくは60以上、特に好ましくは70以上、好ましくは90以下、より好ましくは80以下の部分が上記傾斜角を有する底側領域124(3)である。底側領域124(3)は、より好ましくは、上記の範囲内でほぼ一定の傾斜角を有する面により構成される。
外壁面124の開口側端の近傍における傾斜角は実施形態1について説明した通りである。より好ましくは、外壁面124の開口側領域124(4)は、10°以上90°未満、好ましくは30以上70°以下のほぼ一定の傾斜角を有する領域である。外壁面124の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、外壁面124の開口側端から底側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50未満、より好ましくは40未満、特に好ましくは30未満、好ましくは10超、より好ましくは20超の部分が上記傾斜角を有する開口側領域124(4)である。
一方、内壁面123の傾斜角は開口側端において外壁面124と交差できるように適宜設定することができ、好ましい傾斜角の範囲は<傾斜角について>で説明した通りである。より好ましくは、図5に示すように、内壁面123が底側領域123(3)と開口側領域123(4)とを含む。
内壁面123の底側領域123(3)の傾斜角は好ましくは0より大きくより好ましくは15°以上、好ましくは90°以下、より好ましくは80°以下である。内壁面123の底側領域123(3)は、より好ましくは、上記の範囲内でほぼ一定の傾斜角を有する面により構成される。内壁面123の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、内壁面123の底側端から開口側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50以上、より好ましくは60以上、特に好ましくは70以上、好ましくは90以下、より好ましくは80以下の部分が上記傾斜角を有する底側領域123(3)である。
内壁面123の開口側領域123(4)の傾斜角は好ましくは10°以上、より好ましくは30°以上、好ましくは90°以下、より好ましくは70°以下である。内壁面123の開口側領域123(4)は、より好ましくは、上記の範囲内でほぼ一定の傾斜角を有する面により構成される。内壁面123の、底側端から開口側端までの上下方向に沿った幅を100としたとき、内壁面123の開口側端から底側端に向けて上下方向に沿って好ましくは50未満、より好ましくは40未満、特に好ましくは30未満、好ましくは10超、より好ましくは20超の部分が上記傾斜角を有する開口側領域123(4)である。
実施形態5における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様であることができる。
<実施形態6(図7A、7B)>
本発明の細胞培養容器100は、収容空間140の底を形成する面である、収容空間底面113に、細胞を位置決めするための窪み114が形成されていることが更に好ましい。本発明のこの実施形態を実施形態6として図7A、図7Bに示す。
図7A、図7Bに示す実施形態6に係る細胞培養容器100は、収容空間底面113に窪み114が複数形成されている点を除いて、実施形態1に係る細胞培養容器100と同様の構成を備える。窪み114内に細胞を配置することにより、細胞の移動を抑制することができ、細胞をそれぞれ特定した上で評価や判定を行うことができる。この窪みの形状は特に制限されないが、開口部の外縁が円形であり、窪みの壁面が、最も低い位置から外縁に進むに従って高くなるように傾斜した曲面を有することが好ましい。窪みの壁面は、好ましくは円錐状または円錐台状の部分を含む。円錐状または円錐台状の部分は、培養容器の底部側に、円錐の頂点または円錐台の上面および下面のうち面積の狭い方がくるように形成される。円錐状には、円錐および楕円錐、これらに類似の形状、例えば、円錐または楕円錐の頂点が丸みを帯びている形状、円錐面が外側に膨らんでいる形状、円錐面が内側に凹んでいる形状などが含まれる。円錐台状には、円錐台および楕円錐台、これらに類似の形状、例えば、円錐台または楕円錐台の上面または下面と円錐面との接合部が丸みを帯びている形状、円錐面が外側に膨らんでいる形状、円錐面が内側に凹んでいる形状などが含まれる。なお、窪み114は、上記に限らず、多角錐状、多角錐台状などの形態であってもよい。
窪み114の寸法は、少なくとも1つの細胞を収容可能な寸法であれば特に制限されない。ここで、窪みの寸法は、窪み114の開口部の外縁が形成する図形の最長径の長さをさす。従って、窪み114の開口部の外縁が円形である場合、その直径は、培養する細胞の最大寸法と同じかそれより大きいものとなる。本発明の細胞培養容器により受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、円形の開口部の直径は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいものであることが望ましい。胚盤胞の段階の細胞の最大寸法は通常100μm〜280μmであることから、円形の開口部の直径は、通常100μm以上である。
例えば、ヒト受精卵の場合、窪み114の開口部の直径は、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、さらに好ましくは250μm以上であり、通常1000μm以下、好ましくは900μm以下、さらに好ましくは800μm以下である。また、窪み114の開口部の直径は、X+α(ここでXは細胞の最大寸法を表す)と規定することもできる。ここで、αは、好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.02mm以上である。
実施形態6における他の部分の構造、形状、寸法、角度等の特徴は、実施形態1に関して上述したのと同様であることができる。
100:細胞培養容器
140:収容空間
110:容器底部
120:周壁部
123:内壁面
124:外壁面
150:平面視において収容空間140の開口を囲う連続した線

Claims (2)

  1. 細胞及び培養液を収容するための収容空間が形成された細胞培養容器であって、
    前記収容空間は、容器底部から起立した周壁部により囲われた、上方に開口した空間であり、
    前記収容空間の底を形成する底面の面積は0.75mm 以上であり、
    前記周壁部は、前記収容空間に向いた内壁面と、前記周壁部の側面のうち、前記細胞培養容器を水平面上に載置した状態で平面視したときの前記収容空間の外側に向いた面である外壁面とを有し、
    前記外壁面は、前記細胞培養容器を水平面上に載置した状態で平面視したときの前記収容空間の重心を通り上下方向に沿った仮想直線に垂直に投影した場合に、線として投影される面であり、
    前記内壁面と前記外壁面とは開口側端において交差している
    ことを特徴とする細胞培養容器。
  2. 前記内壁面と前記外壁面とが交差した部分は、平面視において、前記収容空間の開口を囲う連続した線である、請求項1に記載の細胞培養容器。
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