JPWO2016136518A1 - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
更に本発明では、積層フィルムの樹脂層表面の表面比抵抗値を1011Ω/□以下とすることで、本発明の積層フィルムに高屈折率ハードコート層を積層したフィルムにおいて、積層したハードコート層の表面においても帯電防止性を発現することができる。この理由については、次のように推定している。一般的な高屈折率を有するハードコート層はアクリル樹脂で構成される場合が多く、カルボキシル基といった極性官能基を有する。そのため、ハードコート層は、カルボン酸をはじめとする極性官能基の分極が可能となるため、完全な絶縁体ではなく、大きな抵抗を有するものの通電体となる。積層フィルムの表面比抵抗値が1011Ω/□以下である場合、高屈折率ハードコート層の表面に帯電が発生した(電荷が溜まった)としても、電荷は高屈折率ハードコート層の内部へ流れ、さらにその下にある積層フィルムの樹脂層に流れるため、電荷を効率的に流すことができる。その結果、積層フィルムに高屈折率ハードコート層を積層したフィルムにおいて、高屈折率ハードコート層の表面比抵抗を低くできる(帯電しにくくできる)ものと推定している。
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層は、数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)を含むことが好ましい。かかる金属酸化物粒子(A)を用いることで、樹脂層表面の波長550nmにおける反射率を高くすることができる。その結果、本発明の積層フィルムの樹脂層に高屈折率ハードコート層を積層した際の干渉斑の抑制が可能となる。また、該金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径が可視光の波長より十分小さいため、積層フィルムの透明性を高めることが可能となる。
アクリル樹脂(D)が上記モノマー単位を有することで、透明性を維持しつつ、煮沸試験前後での樹脂層表面のエネルギー変化量Δγを小さくすることができ、ハードコート層との接着性を強固なものにすることができるため好ましい。式(3)のR3基をカルボキシル基としたモノマー単位を有するアクリル樹脂(D)を用いると、より接着性を向上させることができるため特に好ましい。
本発明において、樹脂層は、π電子共役系高分子化合物(B)を含有することが好ましい。本発明において、π電子共役系とは、交互の単結合および多重結合、あるいは、単結合および多重結合と酸素や窒素など利用可能なp軌道を有している原子によってπ電子が非局在化していることを表す。本発明において、高分子化合物とは、数平均分子量が3000以上の化合物を表す。上記、π電子共役系高分子化合物(B)は、導電性を有する(表面比抵抗値が10×10乗以下である)ことが好ましい。本発明に用いられるπ電子共役系高分子化合物としては、その繰り返し単位が、アニリンおよび/またはその誘導体、ピロールおよび/またはその誘導体、イソチアナフテンおよび/またはその誘導体、アセチレンおよび/またはその誘導体、チオフェンおよび/またはその誘導体などであることが好ましい。それらの中でも着色が少なく、高い全光線透過率が得られる点から、繰り返し単位がチオフェンおよび/またはその誘導体であるπ電子共役系高分子化合物であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムは、樹脂層がエポキシ化合物(C)を含有することが好ましい。本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層がエポキシ化合物(C)を含有することで、樹脂層の硬化時の流動性を向上させ、その結果、金属酸化物粒子(A)の凝集を抑制することができ、積層フィルムの透明性が付与することができる。また、金属酸化物粒子(A)の凝集を抑制することにより、樹脂層の表面粗さを小さくすることができるため、加工時の塗膜削れを抑制することができる。例えば、ハードコート層加工時のキズを抑制することができ、また、ハードコート層の上にさらに蒸着やスパッタなどを行う際の、加工欠点を抑制することができる。なお、本発明において、樹脂層がエポキシ化合物(C)を含むとは、エポキシ化合物またはエポキシ化合物誘導体(エポキシ化合物が開環した化合物など)を含むことを表す。
本発明の積層フィルムにおいて、帯電防止性を向上させる観点からは、樹脂層は、π電子共役系高分子化合物(B)に代えて、イオン導電性化合物(E)を含有してもよい。本発明において、イオン導電性樹脂とは、樹脂組成中にイオンを導電する特性を有する樹脂をあらわし、具体的には、ポリスチレンスルホン酸金属塩や、アンモニウム金属塩といった構造を有する樹脂が挙げられる。樹脂層中にイオン導電性化合物(E)を含有すると、イオン導電によって、電荷を移動させることができ、優れた帯電防止性を発現することができる。
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムについて述べる。まずポリエステルとは、エステル結合を主鎖に有する高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分とするものを好ましく用いることができる。
本発明の積層フィルムの樹脂層の作製方法について以下に例を示すが、以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す例により限定的に解釈されるべきものではない。
本発明の積層フィルムの樹脂層の形成方法について以下に例を示して説明するが、以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す例により限定的に解釈されるべきものではない。
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
ヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度50%)において、積層フィルムサンプルを40時間放置した後、日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS
K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準ずる方式で行った。なお、サンプルの樹脂層が積層された面側から光を照射して測定した。サンプルは一辺50mmの正方形のものを10サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計10回測定した平均値をサンプルのヘイズ値とした。
また、透明性はヘイズ値により、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:0.6%以下
A:0.6%を超えて1.0%以下
B:1.0%を超えて1.5%以下
C:1.5%を超える。
A4カットサイズに裁断したフィルムシートを縦横それぞれ3分割し、合計9点を測定サンプルとして用いた。長辺側を長手方向とした。分光反射率の測定は、測定面(該樹脂層)の裏面に50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛みこまないようにサンプルとテープの長手方向を合わせて貼り合わせた後、約4cm角のサンプル片に切り出し、分光光度計((株)島津製作所製、UV2450)に入射角5°での分光反射率を測定した。サンプルを測定器にセットする方向は、測定器の正面に向かって前後の方向にサンプルの長手方向を合わせた。なお反射率を基準化するため、標準反射板として付属のAl2O3板を用いた。反射率は、波長550nmにおける樹脂層側の反射率を求めた。なお、測定値には、10点の平均値を用いた。
(3−1)初期接着性
積層フィルムの樹脂層側に、下記の割合で混合したUV硬化型樹脂を、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が2μmとなるように均一に塗布した。
<ハードコート剤の調整>
・二酸化チタン微粒子(石原産業(株)製、TTO−55B):30重量部
・カルボン酸基含有モノマー(東亜合成(株)製、アロニックスM−5300):4.5重量部
・シクロヘキサノン:65.5重量部
上記混合物を、サンドグラインダーミルにより分散し、平均粒子径が55nmの二酸化チタン微粒子の分散液を調整した。
次いで、UV硬化樹脂層を積層した面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製、H03−L31)で、積算照射強度が300mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層ポリエステルフィルム上にハードコート層が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製、UVR−N1)を用いた。得られたハードコート積層ポリエステルフィルムについて、得られたハードコート積層ポリエステルフィルムのハードコート積層面に、1mm2のクロスカットを100個入れ、“セロテープ”(登録商標)(ニチバン(株)製、CT405AP)を貼り付け、ハンドローラーで1.5kg/cm2の荷重で押しつけた後、ハードコート積層ポリエステルフィルムに対して90度方向に急速に剥離した。接着性は残存した格子の個数により、4段階評価を行った。評価は10回実施した平均の値で行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:90〜100個残存
A:80〜89個残存
B:50〜79個残存
C:0〜50個未満残存。
(3−1)初期接着性と同様にハードコート積層ポリエステルフィルムを得た後、高温高湿度環境下(温度85℃、相対湿度85%)で240時間保管し、湿熱処理後のハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。この湿熱処理後のハードコート積層ポリエステルフィルムについて、ハードコート積層ポリエステルフィルムのハードコート積層面に、1mm2のクロスカットを100個入れ、“セロテープ”(登録商標)(ニチバン(株)製、CT405AP)を貼り付け、ハンドローラーで1.5kg/cm2の荷重で押しつけた後、ハードコート積層ポリエステルフィルムに対して90度方向に急速に剥離した。接着性は残存した格子の個数により、4段階評価を行った。評価は10回実施した平均の値で行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:90〜100個残存
A:80〜89個残存
B:50〜79個残存
C:0〜50個未満残存。
帯電防止性は、表面比抵抗値により測定した。表面比抵抗値の測定は、相対湿度23%において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印加電圧100V、10秒間印加後、測定を行った。単位は、Ω/□である。積層サンプルの樹脂積層面を評価し、合計10回測定した平均値をサンプルの表面比抵抗値(R1)とした。
1×1011Ω/□以下は良好であり、1×1012Ω/□以下は実用上レベル、1×1012Ω/□を超える場合は実用上問題あるレベルとした。
金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により積層フィルムの断面構造を観察することにより求めた。倍率を50万倍とし、その画面内に存在する10個の粒子の外径を、10視野について合計100個の粒子を測定し、その平均粒子径を求めた。画面内に10個の粒子が存在しない場合は、同じ条件で別の箇所を観察し、その画面内に存在する粒子の外径を測定して、合計で100個の粒子の外径を測定して平均値とした。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、ポリエステルフィルム上の樹脂層の厚みを測定した。樹脂層の厚みは、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から樹脂層の厚みを読み取った。合計で20点の樹脂層厚みを測定して平均値とした。
(3)と同様の方法にて、積層ポリエステルフィルム上に厚み2μmのハードコート層(屈折率1.65)が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。
次いで、得られた光学用積層フィルムから、8cm(積層ポリエステルフィルム幅方向)×10cm(積層ポリエステルフィルム長手方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製、ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を、気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にて3波長蛍光灯(パナソニック(株)製、3波長形昼白色(F・L
15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により干渉斑の程度を観察し、以下の評価を行った。A以上のものを良好とした。
S:干渉斑がほぼ見えない
A:干渉斑がわずかに見える
B:弱い干渉斑が見える。
C:干渉斑が強い。
積層フィルムサンプルを10cm×10cmの大きさに切り出し煮沸処理試験後の反射率評価サンプルを得た。該サンプルをクリップに固定し吊り下げた状態にした後、ビーカーに準備した純水からなる沸騰した湯(100℃)の中に積層フィルム全面が浸漬する状態で2時間入れた。その後、煮沸処理試験後の反射率評価サンプルを取り出し、風量1m/分で30分乾燥させ、水分を除去し、常態(23℃、相対湿度65%)にて12時間乾燥させ、煮沸処理試験後の反射率評価用サンプルを得た。
(9−1)表面エネルギーの算出方法
積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、積層フィルムの樹脂層(X)側表面に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
γS : 樹脂層(X)の表面自由エネルギー
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γS d: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの分散力成分
γS p: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの極性力成分
γS h: 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL d : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL p : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL h: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γS L=γS+γL−2(γS d・γL d)1/2−2(γS p・γL p)1/2−2(γS h・γL h)1/2 ・・・ 数式(1)。
(γS d・γL d)1/2+(γS p・γL p)1/2+(γS h・γL h)1/2=γL(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
煮沸処理試験後の樹脂層の表面エネルギーから煮沸処理試験前の樹脂層の表面エネルギーを引いた値の絶対値(Δγ=|煮沸処理試験後の樹脂層の表面エネルギー − 煮沸処理試験前の樹脂層の表面エネルギー|)にて算出した。煮沸処理試験後の評価用サンプルは、(8)の方法に従って得たサンプルを用いた。A以上のものを良好とした。
S:3mN/m以下
A:3mN/mを超えて5mN/m以下
B:5mN/mを超えて7mN/m以下
C:7mN/mを超える。
BRUKER製原子間力顕微鏡「Dimension Icon ScanAsyst」のScanAsyst Airモードにて、積層フィルムの樹脂層側を測定範囲10μm×10μm、測定ライン数512本、測定レート1.0Hzで測定し、得られた表面情報から、JIS−B−0601−1994に定められた方法にて算術平均粗さ(Ra)を算出した。具体的には、ソフトウェアとして「NanoScope Analysis」を用い、「Flatten Order」の「3rd」を選択し、三次元でのうねり処理を行なう。その後「Roughness」を選択し、該画面の「Image Ra」に記載される数値を算術平均粗さとする。また、合計10回測定し、最大値と最小値を除いた計8個のデータの平均値をサンプルの算術平均粗さ(Ra)とした。
なお、算術平均粗さは、4段階評価を行った。Cは実用上問題のあるレベル、Bは実用レベルであり、AとSのものは良好とした。
S:10nm以下
A:10nmを超えて15nm以下
B:15nmを超えて20nm以下
C:20nmを超える。
樹脂層の組成分析は、積層フィルムの表面について、X線光電子分光分析装置(ESCA)、フーリエ赤外分光光度計(FT−IR)ATR法、飛行時間型二次イオン重量分析装置(TOF−SIMS)により行った。また、樹脂層を溶剤にて溶解抽出し、クロマトグラフィーで分取した後、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(13C−NMR)、フーリエ赤外分光光度計(FT−IR)により構造を解析し、熱分解ガスクロマトグラフィー重量分析(GC−MS)を行い樹脂層の組成分析を行った。上記方法により、樹脂層中における金属酸化物粒子(A)、π電子共役系高分子化合物(B)、エポキシ化合物(C)、アクリル樹脂(D)、イオン導電性化合物(E)の有無を確認した。樹脂層中に、上記化合物を含有する場合はA、含有しない場合はBとした。
(3)と同様の方法にて、積層ポリエステルフィルム上に厚み2μmのハードコート層(屈折率1.65)が積層されたハードコート積層ポリエステルフィルムを得た。該ハードコート積層ポリエステルフィルムのハードコート層表面の表面比抵抗値を測定した。なお、表面比抵抗値の測定は(4)に記載の方法で行い、合計5回測定した平均値をサンプルの表面比抵抗値とし、B以上のものを良好とした。
A:1×1012Ω/□以下
B:1×1012Ω/□を超えて、1×1013Ω/□以下
C:1×1013Ω/□を超える
Aは良好であり、Bは実用上レベル、Cは実用上問題あるレベルである。
積層フィルムの樹脂層側に、(3−1)初期密着性で用いたものと同じUV硬化型樹脂を、硬化後の膜厚が2μmとなるようにバーコーターを用いて均一に塗布し、ロール形状に巻き取り、ハードコート積層フィルムを巻き取ったフィルムロールを得た。その後巻き取られたハードコート積層フィルムロールを巻きだした際の、巻きだし面から5cm離れた位置においてハードコート層表面の電位を測定した。なお、帯電量の測定はシシド電機製STATIRON TYPE-THを用いて測定し、合計5回測定した平均値をサンプルの帯電量とし、B以上のものを良好とした。
A:電位の絶対値が2kV以下
B:電位の絶対値が2kVを超えて、5kV以下
C:電位の絶対値が5kVを超える。
酸性ポリマー化合物であるポリスチレンスルホン酸を20.8重量部含む1887重量部の水溶液中に、1重量%硫酸鉄(III)水溶液49重量部、チオフェン化合物である3,4−エチレンジオキシチオフェン8.8重量部、および10.9重量%のペルオキソ二硫酸水溶液117重量部を加えた。この混合物を18℃で、23時間攪拌した。ついで、この混合物に、154重量部の陽イオン交換樹脂および232重量部の陰イオン交換樹脂を加えて、2時間攪拌した後、イオン交換樹脂をろ別して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる混合物の水分散体(固形分濃度は1.3重量%)を得た。
攪拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、溶剤としてイソプロピルアルコール100部を仕込み、加熱攪拌して100℃に保持した。この中に、(メタ)アクリレート(d1’)として、n=19のノナデシルメタクリレート40部、(メタ)アクリレート(d2’)として、2個の環を有するイソボニルメタクリレート40部、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(d3’)として、メタクリル酸20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。そして、滴下終了後、100℃で1時間加熱し、次にt−ブチルパーオキシ2エチルヘキサエート1部からなる追加触媒混合液を仕込んだ。次いで、100℃で3時間加熱した後冷却し、アクリル樹脂(D)を得た。
窒素ガス雰囲気下かつ常温(25℃)下で、容器1に、水200重量部、過硫酸アンモニウム1重量部を仕込み、これを85℃に昇温し、溶解させ、85℃の溶液1を得た。
はじめに、樹脂組成物1を次の通り調製した。
<樹脂組成物>
水系溶媒に、上記の粒子(A)とアクリル樹脂(D)、π電子共役系高分子化合物(B)とエポキシ化合物(C)をこの順に添加し、表1に記載の比率で混合し、樹脂組成物を得た。・粒子(A)とアクリル樹脂(D)の混合体(AD)
・π電子共役系高分子化合物(B)
・エポキシ化合物(C):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)性“デナコール(登録商標)”EX−512(分子量役630、エポキシ当量168、水溶率100%)
<積層フィルム>
次いで、実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
ヘイズが低く、反射率が高く、表面エネルギー変化量、表面比抵抗値も小さく、透明性、干渉斑抑制性、接着性、さらには帯電防止性に優れるものであった。
塗液中の樹脂組成物の比率を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
金属酸化物粒子(A)の数平均粒子径を3nm(実施例13)、15nm(実施例14)、30nm(実施例15)、50nm(実施例16)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
金属酸化物粒子(A)を酸化チタン粒子である“NanoTek”(登録商標)TiO2スラリー(シーアイ化成(株)、数平均粒子径20nm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
金属酸化物粒子(A)を酸化亜鉛粒子であるFINEX−50(堺化学工業(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例18)、ITOスラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例19)、酸化イットリウムである“NanoTek” (登録商標)Y2O3スラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(実施例20)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
樹脂層の膜厚を10nm(実施例21)、30nm(実施例22)、50nm(実施例23)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
(メタ)アクリレートモノマー(d3’)を、3級アミノ基を有するN、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートに変更した(式(3)で表されるモノマー単位のR3基をカルボキシル基を有さないアクリル樹脂とした)以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
アクリル樹脂(D)として、アクリル樹脂(日本カーバイド(株)製、RX7013ED)に変更した(式(1)で表されるモノマー単位、および式(2)で表されるモノマー単位を有さないアクリル樹脂とした)以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
金属酸化物粒子(A)に変えて、ジルコニアキレート(マツモトファインケミカル“オルガチックス”(登録商標)ZC300)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
π電子共役系高分子化合物(B)に変えて、イオン導電性化合物(アンモニウム塩)((株)ADEKA製、アデカカチオエース PD50)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
π電子共役系高分子化合物(B)に変えて、イオン導電性化合物(スチレンスルホン酸リチウム塩)(E−1)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
実施例1における金属酸化物粒子(A)を、シリカ粒子である“スノーテックス”(登録商標)CM(日産化学工業(株)製、数平均粒子径20nm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
実施例1における金属酸化物粒子(A)を、MgF2粒子である“NanoTek”(登録商標)MgF2スラリー(シーアイ化成(株)製、数平均粒子径20nm)(比較例2)、中空のシリカ粒子である“スルーリア”(登録商標)TR112(日揮触媒化成(株)製、数平均粒子径20nm)(比較例3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性などを表1に示す。
実施例1におけるπ電子共役系高分子化合物(B)を用いない以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。実施例1と比較して、表面比抵抗値が高く、同等の透明性、視認性、積層体との接着性を示したものの、帯電防止性に欠けるものであった。
実施例1におけるエポキシ化合物(C)にかえて、ポリエステル樹脂(高松油脂製、ペスレジンA110)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。実施例1と比較して、ポリエステル樹脂を用いたことで、煮沸処理後の表面エネルギーの変化が大きく、湿熱接着性に欠けるものであった。
実施例1におけるアクリル樹脂(D)を用いない以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。実施例1と比較し、アクリル樹脂を用いないことで、煮沸処理後の表面エネルギーの変化が大きく、湿熱接着性に欠けるものであった。
実施例1における樹脂層の厚みを7nmとする以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。実施例1と比較し、表面比抵抗値が高く、同等の透明性、視認性、積層体との接着性を示したものの、帯電防止性に欠けるものであった。
Claims (10)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片側に樹脂層が設けられた積層フィルムであって、該樹脂層表面の波長550nmにおける反射率が6.0%以上であり、該樹脂層表面の表面比抵抗値が1012Ω/□以下であり、該樹脂層表面の煮沸試験前後の表面エネルギー変化量Δγ(Δγ=|煮沸処理試験後の樹脂層の表面エネルギー − 煮沸処理試験前の樹脂層の表面エネルギー|)が5mN/m以下であることを特徴とする積層フィルム。
- 前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
- 前記樹脂層が、数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、π電子共役系高分子化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、アクリル樹脂(D)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 前記樹脂層における金属酸化物粒子(A)の含有量が、樹脂層全体に対して30重量%以上90重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の積層フィルム。
- 前記樹脂層におけるエポキシ化合物(C)の含有量が、樹脂層中の金属酸化物粒子(A)の含有量を100重量部としたときに20〜60重量部であることを特徴とする請求項3または4に記載の積層フィルム。
- 前記金属酸化物粒子(A)が、その表面に前記アクリル樹脂(D)を有する粒子であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
- 前記金属酸化物粒子(A)が、酸化チタン粒子(A1’)および/または酸化ジルコニウム粒子(A2’)である請求項3〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
- 前記アクリル樹脂(D)が、式(1)で表されるモノマー単位(d1)と、式(2)で表されるモノマー単位(d2)と、式(3)で表されるモノマー単位(d3)を有する樹脂であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに積層フィルム。
- 前記樹脂層の厚みが、10〜80nmである請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
- ポリエステルフィルムの少なくとも片側に樹脂層が設けられた積層フィルムの製造方法であって、
前記樹脂層が、数平均粒子径が3nm以上50nm以下の金属酸化物粒子(A)と、π電子共役系高分子化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、アクリル樹脂(D)を含有する樹脂組成物をポリエステルフィルムの少なくとも片側に塗布した後、乾燥することにより形成される層であり、
前記樹脂組成物中におけるエポキシ化合物(C)の含有量が、樹脂組成物中の金属酸化物粒子(A)の含有量を100重量部としたときに20〜60重量部であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
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