JPWO2016136447A1 - 負帯電性基板の研磨方法、及び、高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法 - Google Patents

負帯電性基板の研磨方法、及び、高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

高い研磨速度を実現しながら、表面平滑性に優れる負帯電性基板を生産性良く与えることが可能な研磨方法を提供すること。また、高表面平滑性の負帯電性基板を実現するための製造方法を提供すること。研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する方法であって、該研磨材スラリーは、組成式:ABO3(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとを含み、該研磨方法は、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する負帯電性基板の研磨方法。

Description

本発明は、負帯電性基板の研磨方法、及び、高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法に関する。
負帯電性基板の代表例としてガラス基板がある。ガラス基板は、研磨材を用いて研磨されることにより、レンズやプリズム等の高い透明性や精度が要求される精密な光学ガラス製品を与えることができる。
従来、ガラス基板の研磨では、まず酸化セリウム系の研磨材を用いてガラス基板を粗研磨する工程を行った後、ガラス基板表面の平滑度を高めるために、コロイダルシリカを用いて精密研磨する工程を経ることが一般的であった。また最近では、複数の研磨工程で酸化セリウムを用いる研磨方法も開発されている(特許文献1参照)。
特開2014−83598号公報
上述のとおり、従来のガラス基板では、酸化セリウム系の研磨材を用いた粗研磨工程の後に、コロイダルシリカを用いた精密研磨工程を行うことが一般的であった。しかし、この手法では、研磨材を酸化セリウム系の研磨材からコロイダルシリカに切り替えるため、その切り替え作業やガラス基板の洗浄作業が必要になる他、酸化セリウム系の研磨材が茶色であることに起因して、研磨機・装置の洗浄作業や、他の材料への着色を防ぐために酸化セリウム系の研磨材を用いる場合専用の研磨機・装置が必要になることもあり、作業や設備面で課題があった。また、コロイダルシリカを用いた研磨工程は研磨速度が非常に遅いため、この点でも課題があった。
また酸化セリウム系の研磨材は、いわゆるレアアース(希土類)を多く含む鉱物を焼成して粉砕することによって製造されているが、レアアースはその需要が増大し、供給が不安定になっている。そこで、酸化セリウムの使用量を低減させる技術や代替材料を用いた技術の開発が望まれているが、酸化セリウムを必須に用いる研磨方法(例えば特許文献1の手法等)では、このような要望に応えることができない。
本発明は、上記現状に鑑み、高い研磨速度を実現しながら、表面平滑性に優れる負帯電性基板を生産性良く与えることが可能な研磨方法を提供することを目的とする。また、高表面平滑性の負帯電性基板を実現するための製造方法を提供することも目的とする。
本発明者は、ガラス基板に代表される負帯電性基板の研磨方法について種々検討するうち、所定の酸化物と酸化ジルコニウムとを含む研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で研磨する工程aと、当該研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で研磨する工程bとを、少なくとも1回ずつ実施することにより、高い研磨速度を実現しながら、表面平滑性に優れる負帯電性基板を生産性良く与えることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する方法であって、
該研磨材スラリーは、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとを含み、
該研磨方法は、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する負帯電性基板の研磨方法である。
上記酸化物は、SrZrO及び/又はCaZrOであることが好ましい。研磨材スラリーが、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)及び/又はジルコン酸カルシウム(CaZrO)と、酸化ジルコニウム(ZrO)とを含むことで、より一層高い研磨速度を実現することができる。上記酸化物として最も好ましくは、SrZrOである。
上記研磨工程aを、研磨材スラリーのpHが、上記負帯電性基板の等電点より大きく、かつ該研磨材スラリーの等電点未満となる条件下で実施することが好ましい。これにより、研磨装置・器具への負担が小さくなるため、作業面でより有利な製造方法となる他、研磨材が強酸下で溶解してしまうことを充分に防止することができる。また、研磨速度をより高めることができる。
上記研磨工程bを、研磨材スラリーのpHが、該研磨材スラリーの等電点より大きく、かつ13以下となる条件下で実施することが好ましい。これにより、研磨装置・器具への負担が小さくなるため、作業面でより有利な製造方法となる他、研磨材が強塩基下で溶解してしまうことを充分に防止することができる。また、得られる基板の表面平滑性をより一層高めることができる。
上記負帯電性基板は、ガラス基板であることが好ましい。これにより、本発明による作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
本発明はまた、上記研磨方法を用いる高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法でもある。
本発明の負帯電性基板の研磨方法により、酸化セリウムを主成分としない1種類の研磨材を少なくとも用いるのみで、高い研磨速度を実現しながら、表面平滑性に優れる負帯電性基板を生産性良く与えることが可能になる。それゆえ、本発明の研磨方法は、従来一般的に行われてきた研磨手法(酸化セリウム系の研磨材を用いた粗研磨工程の後に、コロイダルシリカを用いた精密研磨工程を行う手法)では必要であった研磨材の切り替え作業や洗浄作業、専用装置等を不要にするとともに、近年のレアアース供給不足にも充分に対応できるため、工業的に極めて有利な技術といえる。また、本発明の負帯電性基板の研磨方法を用いれば、高表面平滑性の負帯電性基板を生産性良く与えることができるため、このような研磨方法を用いる高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法は、工業的に極めて有利な手法といえる。
図1は、製造例1で用いたZr原料である酸化ジルコニウムのX線回折パターンである。 図2は、製造例1で得た研磨材のX線回折パターンである。 図3は、製造例1で得た研磨材のSEM画像である。 図4は、実施例又は比較例で用いた各研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を示すグラフである。 研磨材スラリーAのpHが5.5となる条件下でガラスの研磨工程aを行った場合((a))、及び、研磨工程(a)で粗研磨したガラスに対して、研磨材スラリーAのpHが10となる条件下でガラスの研磨工程bを行った場合((b))の概念図を示す図である。 従来の研磨方法と、本発明の研磨方法の好ましい形態とにおける、加工時間(研磨時間)と研磨対象の表面粗さとの関係を概念的に示したグラフである。
以下、本発明の一例について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
〔負帯電性基板の研磨方法〕
本発明の第一の態様である、負帯電性基板の研磨方法について説明する。
本明細書中、負帯電性基板とは、pHが4より大きい水溶液中で常に負に帯電している基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板(ガラスの等電点=約2.0)が挙げられる。その他、炭化ケイ素基板(炭化ケイ素の等電点=約4.0)等も挙げられる。
なお、ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の透明又は半透明のものが挙げられる。
本発明の研磨方法では、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施する。これらの研磨工程の順序は特に限定されず、研磨工程aの後に研磨工程bを行ってもよいし、研磨工程bの後に研磨工程aを行ってもよい。中でも、表面平滑性により優れた負帯電性基板を得るには、研磨工程aを少なくとも1回行った後、研磨工程bを少なくとも1回行うことが特に好適である。また、各研磨工程を複数回行ってもよいし、研磨工程aと研磨工程bとを交互に実施してもよい。研磨工程aを複数回行う場合、研磨材スラリーのゼータ電位が正である限り、ゼータ電位を変更して実施してもよいし、変えないで実施してもよい。研磨工程bを複数回行う場合も同様であり、研磨材スラリーのゼータ電位が負である限り、ゼータ電位を変更して実施してもよいし、変えないで実施してもよい。
本明細書中、「研磨材スラリーのゼータ電位」とは、後述する実施例に記載の測定条件下で求められる値である。
本発明では、研磨工程aにおいて静電引力による作用が発揮され、研磨工程bにおいて静電斥力による作用が発揮されることで、これらの相乗効果により、高い研磨速度と、研磨後の負帯電性基板における優れた表面平滑性とを実現することになると推測される。
通常、研磨前の負帯電性基板の表面には、微細な傷や穴等からなる凹部が存在する。研磨工程aでは、研磨対象である基板は負に帯電しているのに対し、研磨材スラリーは正に帯電しているため、静電引力により研磨材が凹部の深くまで浸透し、研磨を促進するために、研磨速度が高められると考えられる。一方、研磨工程bでは、研磨対象である基板も研磨材スラリーも負に帯電しているため、静電斥力により研磨材は凹部の深くまでは浸透しないものの、研磨パッドと基板との間にかかる圧力によって、研磨材が基板表面の凸部に多く存在することになり、これにより基板表面が平滑化されると考えられる。したがって、研磨対象が負帯電性基板であれば同様の作用機構となるため、本発明の研磨方法は、ガラス基板だけでなく、各種の負帯電性基板に適用することができる。
ここで、図5を用いて本発明の研磨方法の好ましい形態のメカニズムを説明するが、本発明の研磨方法はこの図で示す方法のみに限定されない。
図5では、実施例1で得た研磨材スラリーA(研磨材としてSrZrOとZrOとの複合体を含む。等電点:6.4)を用いて、研磨材スラリーAのpHが5.5となる条件下でガラスの研磨工程を行った場合(図(a))、及び、研磨材スラリーAのpHが10となる条件下でガラスの研磨工程を行った場合(図(b))の概念図を示している。
まずこの研磨材スラリーAを研磨パッド(符号3)上に供給しながらガラス(符号2)の研磨工程を行った場合、pH=5.5の条件下では、研磨材A(符号1)は正に帯電するため、研磨材Aが負に帯電したガラスに吸着し、ガラス表面の微細な凹凸部の深くまで侵入することができる。つまりこの工程は粗研磨工程といえ、研磨速度は著しく大きい。
一方、上記研磨工程の後にpH=10の条件下で研磨工程を行った場合、研磨材A(符号1)は負に帯電するため、研磨材が負に帯電したガラスから反発し、研磨材がガラス表面の凸部を選択的に研磨する。つまりこの工程は精密研磨工程といえ、研磨速度は小さいものの、研磨対象物(図5ではガラス)の表面平滑性が著しく高められる。
また図6として、従来の研磨方法(i)と、本発明の研磨方法の好ましい形態(ii)とにおける、加工時間(研磨時間)と研磨対象物の表面粗さとの関係を概念的にグラフに示すが、本発明の研磨方法はこのグラフで示される方法(ii)のみに限定されない。
従来の研磨方法(i)では、後述の比較例1のように、まず符号4の時点まで酸化セリウム質研磨材で粗研磨を行った後、研磨材を切り替え(符号4)、その後、コロイダルシリカにより精密研磨を行うことで、目標となる表面粗さ(符号6)を達成している。
一方、本発明の研磨方法の好ましい形態(ii)では、まず符号7の時点まで研磨工程aによる粗研磨を行った後、研磨材スラリーのゼータ電位(好ましくは研磨材スラリーのpH)を切り替え(符号7)、その後、研磨工程bによる精密研磨を行うことで、目標となる表面粗さ(符号6)を達成している。その達成時間(符号8)は、従来の研磨方法における達成時間(符号5)よりも充分に短縮されることになる。
上記研磨工程a及び研磨工程bのいずれの工程も、研磨材スラリーの存在下で研磨を行う。研磨工程aと研磨工程bとでは、同じ研磨材スラリーを使用、すなわち連続使用(再利用)して、該スラリーのゼータ電位の制御のみを行うこととしてもよいし、ゼータ電位がを正又は負となる研磨材スラリーをそれぞれ別個に用意して、各研磨工程で研磨材スラリーを切り替えてもよい。いずれの場合も、研磨材スラリーとして、組成式:ABOで表される酸化物と酸化ジルコニウムとを含むものを用いればよい。このように本発明では、研磨材スラリーを連続使用(再利用)でき、切り替える場合でも種類が大きく異なる研磨材スラリーを用意する必要がないので、従来の手法のように研磨材切り替え時に必要となる洗浄作業や専用装置等が不要となる。また、酸化セリウムを必須に用いなくても高い研磨速度と優れた表面平滑性とを実現できるため、本発明の研磨方法は、従来の研磨方法に比べて非常に有利な手法といえる。
上記研磨工程aは、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で、該研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する工程である。この研磨工程では、従来の酸化セリウム系の研磨材を用いた場合とほぼ同等の高い研磨速度を実現することができ、しかも酸化セリウム系の研磨材を用いた場合よりも負帯電性基板の表面平滑性を高めることもできる。
上記研磨工程bは、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で、該研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する工程である。この研磨工程では、従来のコロイダルシリカを用いた精密研磨工程よりも著しく高い研磨速度を実現しながら、コロイダルシリカを用いた精密研磨工程とほぼ同等の精密な研磨を実施でき、研磨後の負帯電性基板において高い表面平滑性を実現することができる。
上述のとおり本発明では、研磨工程aでは研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で、研磨工程bでは研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で、それぞれ負帯電性基板を研磨することになるが、研磨材スラリーのゼータ電位の絶対値がそれぞれ5mV以上となる条件下で各研磨工程を行うことが好適である。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。それぞれ、より好ましくは10mV以上、更に好ましくは15mV以上、特に好ましくは20mV以上である。また、各工程での当該絶対値の上限は特に限定されないが、例えば制御しやすさ(例えば、研磨工程aでゼータ電位が過大すぎると、ガラス基板表面に研磨材が残留付着する可能性があるため、これを防止する等。また例えば、研磨工程bでゼータ電位が過小すぎると、負帯電性基板と研磨材スラリーの静電斥力が強く働きすぎて、研磨速度を充分に高めることができない可能性があるため、これを防止する等)の観点から、それぞれ、100mV以下であることが好ましい。
研磨材スラリーのゼータ電位は、該研磨材スラリーのpHを調整することで制御することができる。研磨材スラリーが組成式:ABOで表される酸化物と酸化ジルコニウムとを含むものであれば、研磨材スラリーのpHを該研磨材スラリーの等電点未満に調整すると、そのゼータ電位は正となる一方で、研磨材スラリーのpHを該研磨材スラリーの等電点を超える範囲に調整すると、そのゼータ電位は負となる。なお、これまでの研磨材は、研磨速度を高める、又は、表面平滑性を高めるといったことを重視していたが、本発明で使用する研磨材は、pHだけで研磨性を簡単にコントロールすることができるものであり、この点で従来技術からは着想し得ない特異な効果を発揮し得るものである。
pHの調整は、研磨材スラリーにpH調整剤を添加することで行ってもよいし、pH緩衝液を用いて研磨材スラリーのpHを調整してもよい。
なお、既に研磨材スラリーのpHが研磨に好ましい領域にある場合は、pH調整を行わなくてもよい。
上記pH調整剤としては、酸やアルカリを用いることができる。酸を用いれば研磨材スラリーのpHを酸性側に調整することができ、アルカリを用いれば研磨材スラリーのpHをアルカリ側に調整することができる。酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸等の有機酸;が好ましく、アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア水、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液が好ましい。
本発明の研磨方法では、研磨工程aを、研磨材スラリーのpHが、上記負帯電性基板の等電点より大きく、かつ該研磨材スラリーの等電点未満となる条件下で実施することが好ましい。これにより、強酸によって研磨材が溶解することが充分に抑制されて、研磨材による研磨作用がより発揮される他、研磨機・装置への負担を軽減することもできる。研磨工程aにおける研磨材スラリーのpHの下限値として具体的には、2以上であることが好ましい。より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。
また研磨工程bを、研磨材スラリーのpHが、該研磨材スラリーの等電点より大きく、かつ13以下となる条件下で実施することが好ましい。これにより、強塩基によって研磨材が溶解することが充分に抑制されて、研磨材による研磨作用がより発揮される他、研磨機・装置への負担を軽減することもできる。研磨工程bにおける研磨材スラリーのpHの上限値は、12以下であることがより好ましい。更に好ましくは11以下である。
本明細書中、研磨材スラリー(及び研磨材)の等電点とは、研磨材スラリー中の砥粒(研磨材)に帯びた電荷の代数和がゼロである点、すなわち砥粒に帯びた正電荷と負電荷とが等しくなる点をいい、その点における研磨材スラリーのpHで表すことができる。参考までに、例えば、CaZrOとZrOとの複合体(Ca含有量:CaO換算で27重量%)からなる研磨材の等電点は6.1であり、CaTiOとZrOとの複合体(Ca含有量:CaO換算で30重量%)からなる研磨材の等電点は5.9であり、SrTiOとZrOとの複合体(Sr含有量:SrO換算で40重量%)からなる研磨材の等電点は5.7である。
<研磨材スラリー>
次に、本発明の研磨方法で使用する研磨材スラリーについて説明する。
研磨材スラリーは、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとを含むものである。
本明細書中、組成式:ABOで表される酸化物を「ABO酸化物」とも称し、ABO酸化物と酸化ジルコニウムとからなるものを「研磨材」とも称する。
上記研磨材スラリー中の研磨材の含有量(ABO酸化物と酸化ジルコニウムとの総量)は、例えば、研磨材スラリー100重量%中、0.001〜90重量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜30重量%である。
上記研磨材スラリーは、更に、分散媒を含むことが好ましい。
分散媒としては特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒又はこれらの混合物等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。有機溶媒としては、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。分散媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
上記研磨材スラリーはまた、必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲で添加剤を1種又は2種以上含んでもよい。添加剤としては特に限定されず、例えば、pH調整剤(酸、アルカリ等)、キレート化剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、凝集防止剤、潤滑剤、還元剤、防錆剤、公知の研磨材料等が挙げられる。
なお、本発明の研磨方法による効果を高める観点からは、pH調整剤以外の添加剤の含有量は少ないほど好ましい。例えば、研磨材スラリーの総量100重量%に対し、pH調整剤以外の添加剤の含有量が5重量%以下であることが好ましい。言い換えると、研磨材スラリーの総量100重量%中、研磨材、分散媒及びpH調整剤が90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは99重量%以上である。
上記研磨材スラリーは、ABO酸化物と酸化ジルコニウムとを含むものであれば特に限定されないが、ABO酸化物と酸化ジルコニウムとをこれらの複合体として含むことが好ましい。すなわちABO酸化物と酸化ジルコニウムとからなる研磨材は、ABO酸化物と酸化ジルコニウムとの複合体であることが好ましい。言い換えれば、本発明における研磨材スラリーは、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとの複合体を研磨材として含むことが好適である。これにより、セリウムフリーの研磨材において高い研磨速度をより実現することができる。なお、上記ABO酸化物と酸化ジルコニウムとの複合体とは、ABO酸化物と酸化ジルコニウムとのそれぞれの一次粒子が部分的に焼結して形成された二次粒子のことを言う。例えば、複合体についてエネルギー分散X線分光法(EDS)による元素マッピングを行えば、Aに含まれる元素とBに含まれる元素とが検出される一次粒子とZrのみが検出される一次粒子とが、二次粒子を形成している様子が観察される。
上記研磨材としてより好ましくは、ABO酸化物の結晶相と、酸化ジルコニウム(ZrO)の結晶相とを含むことである。研磨材に含まれるABO酸化物の結晶相が化学研磨作用を担い、ZrOの結晶相が機械研磨作用を担うことで、より良好な研磨速度を示すことができる。更に、ABO酸化物とZrOとが複合体を形成している場合には、ABO酸化物による化学研磨作用とZrOの結晶相による機械研磨作用とがより効果的に発揮される。
上記ABO酸化物の結晶相として特に好ましくは、SrZrO及び/又はCaZrOの結晶相であり、最も好ましくはSrZrOの結晶相である。この場合、線源としてCuKα線を用いたX線回折における斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピーク及び/又はCaZrOの(121)面に由来するピークの半価幅が0.1〜3.0°であることが好ましい。半価幅がこの範囲にあると、化学研磨作用を効果的に発揮するSrZrO及び/又はCaZrOの結晶性が程よくなるため、化学研磨作用を充分に発揮することができる。より好ましくは0.1〜1.0°、更に好ましくは0.1〜0.7°、特に好ましくは0.1〜0.4°である。
上記研磨材は、体積基準粒度分布のシャープさの指標となるD90のD10に対する比(D90/D10)が1.5〜50であることが好ましい。D90/D10が1.5〜50の範囲にあると、粒子径のバラツキが適度なものとなり、研磨材と研磨対象の基板とが充分に接触できるため、より良好な研磨速度を実現することができる。より好ましくは1.5〜45、更に好ましくは1.5〜40である。
なお、D90/D10が大きい程、粒度分布がブロードであることを意味し、この値が小さい程、粒度分布がシャープであることを意味する。
10、D90はそれぞれ、粒度分布を測定することにより得られる値である。D10とは体積基準での10%積算粒径を意味し、D90とは体積基準での90%積算粒径を意味する。
上記研磨材は、比表面積が1.0〜50m/gであることが好ましい。比表面積が1.0m/g以上であると、研磨対象の基板に充分に接触できるため、より好適に研磨することが可能になる。また、50m/g以下では、研磨材を構成する砥粒の大きさが適度なものになるため、機械研磨作用がより高められる。より好ましくは1.0〜45m/g、更に好ましくは1.0〜40m/gである。
本明細書中、比表面積(SSAとも称する)は、BET比表面積を意味する。
BET比表面積とは、比表面積の測定方法の一つであるBET法により得られた比表面積のことをいう。なお、比表面積とは、ある物体の単位質量あたりの表面積のことをいう。
BET法は、窒素などの気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から比表面積を測定する気体吸着法である。具体的には、圧力Pと吸着量Vとの関係からBET式によって、単分子吸着量VMを求めることにより、比表面積を定める。
上記研磨材はまた、ABO酸化物中の元素Aを、酸化物換算で10〜43重量%含むことが好ましい。例えば、SrをSrO換算で10〜43重量%含むことが好ましい。この範囲にあると、化学研磨作用及び機械研磨作用がより発揮されるため、研磨効率をより高めることができる。より好ましくは11〜43重量%、更に好ましくは12〜43重量%である。
まず、ABO酸化物について、以下に説明する。
ABO酸化物は、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される化合物である。
式中、Aは、ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表すが、中でも、Srが好ましい。また、Bは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表すが、中でも、Ti及び/又はZrが好ましく、より好ましくはZrである。
上記ABO酸化物は、例えば、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種と、酸化チタン、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、及び酸化ハフニウムからなる群より選択される少なくとも1種とを、反応させることにより得られるものが好ましい。この反応は容易に進行するため、ABO酸化物を簡便に得ることができる。
上記ABO酸化物の製造原料である酸化物のうち、酸化チタン(TiO)の製法、形状、結晶型、粒子径等は特に限定されない。例えば、酸化チタンの製法として塩素法を用いてもよいし、硫酸法を用いてもよい。結晶型は、ルチル型であってもよいし、アナタース型であってもよいし、ブルカイト型であってもよいし、これらの混合物であってもよい。酸化ハフニウム(HfO)の製法、形状、結晶型、粒子径等も特に限定されない。酸化ジルコニウム(ZrO)も特に限定されないが、後述する酸化ジルコニウムと同様の形態であることが好適である。
上記ABO酸化物として特に好ましくは、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)及び/又はジルコン酸カルシウム(CaZrO)であり、最も好ましくはジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)である。これにより、より一層高い研磨速度を実現することができる。
なお、ジルコン酸ストロンチウムは、例えば、炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムからなる群より選択される少なくとも1種と、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種との反応によって得ることが好適である。この反応は容易に進行するため、ジルコン酸ストロンチウムが生成しやすい。
また、ジルコン酸カルシウムは、例えば、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種と、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種との反応によって得ることが好適である。この反応は容易に進行するため、ジルコン酸カルシウムが生成しやすい。
次に、酸化ジルコニウム(ZrO)について説明する。
酸化ジルコニウムの結晶形態としては、単斜晶、正方晶、立方晶のいずれかの結晶構造、又は、これら結晶構造の混晶であることが好ましい。
上記酸化ジルコニウムは特に限定されないが、例えば、線源としてCuKα線を用いたX線回折における2θ=27.00〜31.00°での最大ピークの半価幅(以降、単に「ZrOの最大ピークの半価幅」ともいう)が0.1〜3.0°であるものが好ましい。半価幅が3.0°以下であることで、研磨材スラリーに含まれるZrOの結晶性が高くなり、ZrOに由来する機械研磨作用を充分に得ることができる。また、半価幅が0.1°以上であることで、研磨速度により優れる研磨材スラリーを得ることができる。より好ましくは0.1〜1.0°、更に好ましくは0.1〜0.7°、特に好ましくは0.1〜0.4°である。
なお、本明細書において、X線回折の線源はすべてCuKα線を用いる。
本発明で使用する研磨材スラリーとして特に好ましくは、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)及び/又はジルコン酸カルシウム(CaZrO)と、酸化ジルコニウム(ZrO)とからなる研磨材を含むものであり、より好ましくは、ジルコン酸ストロンチウム及び/又はジルコン酸カルシウムと、酸化ジルコニウムとの複合体を含むものであり、最も好ましくは、ジルコン酸ストロンチウムと酸化ジルコニウムとの複合体を含むものである。この研磨材(ジルコン酸ストロンチウムと酸化ジルコニウムとの複合体)は、例えば、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する混合工程と、該混合工程により得られた混合物を焼成する焼成工程とを含む製造方法により得ることが好ましい。この製造方法は、固相反応法により行われるため、噴霧熱分解法よりも製造プロセスが簡便となり、特殊な設備を導入することなく低コストでの製造が可能となる。ジルコン酸カルシウムと酸化ジルコニウムとの複合体も、これとほぼ同様の製造方法(但し、ストロンチウム化合物に代えて、例えば炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム化合物を用いる。)にて得ることが好ましい。
以下、各工程について更に説明する。
−混合工程−
混合工程では、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物とを混合する。混合する際の原料の割合は、酸化物換算の重量比でSrO:ZrO=10:90〜43:57であることが望ましい。
混合の方法は特に限定されず、湿式混合であっても、乾式混合であってもよいが、混合性の観点から、湿式混合が好ましい。湿式混合に用いる分散媒としては、特に限定されず、水や低級アルコールを用いることができるが、製造コストの観点から、水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。湿式混合の場合、ボールミルやペイントコンディショナー、サンドグラインダーを用いてもよい。また、分散媒を除去するために湿式混合に続いて乾燥工程を行うことが好ましい。
上記ストロンチウム化合物は、ストロンチウム原子を含む化合物である限り特に限定されないが、中でも、炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。炭酸ストロンチウム及び水酸化ストロンチウムは、ジルコニウム化合物との反応が容易に進行してジルコン酸ストロンチウム(SrZrO)を生成しやすい。
上記ジルコニウム化合物は、ジルコニウム原子を含む化合物である限り特に限定されないが、中でも、酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム及び水酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらは、ストロンチウム化合物との反応性が高く、研磨特性がより良好な研磨材を与えることができる。
なお、酸化ジルコニウム以外のジルコニウム化合物(例えば、炭酸ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウム)を用いる場合、酸化ジルコニウム合成時の焼成・粉砕工程等を省略できる。
上記ジルコニウム化合物は、合成で得たケーキ状で混合工程に供することもできる。
上記酸化ジルコニウムの比表面積は、2.0〜200m/gであることが好ましい。これにより、研磨速度により優れる研磨材スラリーを得ることができる。より好ましくは2.0〜180m/g、更に好ましくは2.0〜160m/gである。
上記酸化ジルコニウム以外のジルコニウム化合物の比表面積は、0.1〜250m/gであることが好ましい。これにより、研磨速度により優れる研磨材スラリーを得ることができる。より好ましくは0.3〜240m/g、更に好ましくは0.5〜230m/gである。
上記ジルコニウム化合物として酸化ジルコニウム以外の化合物を用いる場合は、当該ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物のSO換算量が、該ジルコニウム化合物のZrO換算量100重量部に対し、2.0重量部以下であることが好ましい。これにより、研磨速度がより一層良好な研磨材が得られる。硫黄化合物の含有量(SO換算量)は、より好ましくは1.5重量部以下、更に好ましくは1.1重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。
本明細書中、ジルコニウム化合物に含まれる硫黄化合物のSO換算量は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:型番 ZSX PrimusII)の含有元素スキャニング機能であるEZスキャンを用い、測定サンプル台にプレスしたサンプルをセットし、次の条件を選択する(測定範囲:F−U、測定径:30mm、試料形態:酸化物、測定時間:長い、雰囲気:真空)ことで、求めることができる。
−乾燥工程−
上記混合工程の後、必要に応じて乾燥工程を行ってもよい。
乾燥工程では、混合工程で得られたスラリーから分散媒を除去して乾燥させる。スラリーを乾燥させる方法は、混合時に用いた溶媒を除去できれば特に限定されず、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。また、スラリーをそのまま乾燥してもよく、濾過してから乾燥してもよい。
なお、混合物の乾燥物を乾式粉砕してもよい。
−焼成工程−
続いて、焼成工程について説明する。
焼成工程では、混合工程により得られた原料混合物(更に乾燥工程を経て得られた乾燥物であってもよい)を焼成する。これにより、研磨材として特に好適な複合体を好ましく得ることができる。焼成工程では、原料混合物をそのまま焼成してもよいし、所定の形状(例えばペレット状)に成型してから焼成してもよい。焼成雰囲気は特に限定されない。焼成工程は1回だけ行ってもよく、2回以上行ってもよい。
上記焼成工程における焼成温度は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物との反応に充分な温度であればよい。例えば、700〜1500℃であることが好ましい。焼成温度がこの範囲内であると反応がより充分に進み、また焼成温度が1500℃以下であると、得られる研磨材の研磨速度がより高まる。下限値は、より好ましくは730℃以上、更に好ましくは750℃以上であり、上限値は、より好ましくは1300℃以下、更に好ましくは1270℃以下、特に好ましくは1250℃以下である。なお、特にジルコニウム化合物として酸化ジルコニウム以外の化合物を用いる場合は、焼成温度を高くすることが特に好ましく、例えば、好ましくは800℃以上、より好ましくは850℃以上、更に好ましくは900℃以上、一層好ましくは930℃以上である。
本明細書中、焼成工程における焼成温度とは、焼成工程での最高到達温度を意味する。
上記焼成温度での保持時間は、ストロンチウム化合物とジルコニウム化合物との反応に充分な時間であればよい。例えば、5分〜24時間であることが好ましい。保持時間がこの範囲内であると反応がより充分に進み、また保持時間が24時間以下であると、生成した焼成物(ジルコン酸ストロンチウム)が激しく焼結することが充分に抑制されるため、研磨速度をより高めることができる。より好ましくは7分〜22時間、更に好ましくは10分〜20時間である。
上記焼成工程では、最高温度(焼成温度)に達するまでの昇温時の昇温速度を0.2〜15℃/分とすることが好ましい。昇温速度が0.2℃/分以上であると昇温にかかる時間が長時間となり過ぎることがないので、エネルギーと時間の浪費を充分に抑制でき、また、15℃/分以下であると、炉内容物の温度が設定温度に充分に追随でき、焼成むらがより充分に抑制される。より好ましくは0.5〜12℃/分、更に好ましくは1.0〜10℃/分である。
−粉砕工程−
上記焼成工程の後、必要に応じて粉砕工程を行ってもよい。
粉砕工程では、焼成工程により得られた焼成物を粉砕する。粉砕方法及び粉砕条件は特に限定されず、例えば、ボールミルやライカイ機、ハンマーミル、ジェットミル等を用いてもよい。
〔高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法〕
本発明の第二の態様である、高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法について説明する。
本発明の高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法は、上述した本発明の負帯電性基板の研磨方法を用いる。すなわち当該製造方法は、研磨材スラリーの存在下、該研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーの存在下、該研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ含み、該研磨材スラリーは、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとを含む、というものである。このような製造方法を用いれば、高い研磨速度と優れた表面平滑性とを実現できるため、高表面平滑性の負帯電性基板を生産性良く与えることができる。
本発明を詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
製造例1(研磨材Aの作製)
(1)Zr原料準備工程
オキシ塩化ジルコニウム8水和物(昭和化学株式会社製)3.0kgを、イオン交換水6.7Lに撹拌しながら溶解させた。この溶液を撹拌しながら25℃に調整し、この温度を維持しながら、180g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、pH9.5になるまで1時間かけて撹拌しながら添加し、更に1時間撹拌した。このスラリーをろ過水洗し、洗液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで水洗することにより、水酸化ジルコニウムケーキを得た。
この水酸化ジルコニウムケーキ500gを120℃の温度で充分に乾燥した。次いで得られた乾燥品のうち40gを、外径55mm、容量60mLのアルミナ製るつぼに入れて、電気マッフル炉(ADVANTEC社製、KM−420)を用いて焼成し、酸化ジルコニウムを得た。焼成条件は、室温から800℃まで240分間かけて昇温し、800℃で300分間保持し、その後ヒーターへの通電を中止し室温まで冷却した。なお、焼成は大気中で行った。
(2)混合工程
Sr原料として炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製:SW−P−N)26.1gと、Zr原料として上記(1)Zr原料準備工程により得られた酸化ジルコニウム31.3gを300mLマヨネーズ瓶に計り取り、イオン交換水172mLと1mmφジルコニアビーズ415gを添加してペイントコンディショナー(レッドデビル社製:5110型)を用いて、30分間混合した。
(3)乾燥工程
上記(2)混合工程により得られたスラリーを、400メッシュ(目開き38μm)の篩にかけてジルコニアビーズを除去し、続いて濾過して得られた混合物のケーキを120℃の温度で充分に乾燥することにより混合物の乾燥物を得た。
(4)焼成工程
上記(3)乾燥工程により得られた混合物の乾燥物のうち30gを、外径55mm、容量60mLのアルミナ製るつぼに入れて、電気マッフル炉(ADVANTEC社製、KM−420)を用いて焼成し、焼成物を得た。焼成条件は、室温から950℃まで285分間かけて昇温し、950℃で180分間保持し、その後ヒーターへの通電を中止し室温まで冷却した。なお、焼成は大気中で行った。
(5)粉砕工程
上記(4)焼成工程により得られた焼成物を10g、自動乳鉢(ライカイ機)(日陶科学株式会社製:ANM−150)に仕込み、10分間粉砕することにより、SrZrOとZrOとの複合体から成る研磨材を得た。これを「研磨材A」とも称す。
<研磨材及び用いたZr原料の性能評価>
製造例1で得た研磨材及び製造例1で用いたZr原料(酸化ジルコニウム)のそれぞれについて、下記(i)〜(vi)に記載の方法に従って、各種物性を評価した。
(i)粉末X線回折の測定
Zr原料(酸化ジルコニウム)及び研磨材のそれぞれについて、以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折パターンともいう)を測定した。
使用機:株式会社リガク製、RINT−UltimaIII
線源:CuKα
電圧:40kV
電流:40mA
試料回転速度:回転しない
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:FT
計数時間:2.0秒
ステップ幅:0.0200°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000〜70.0000°
積算回数:1回
単斜晶ZrO:JCPDSカード 00−037−1484
正方晶ZrO:JCPDSカード 00−050−1089
立方晶ZrO:JCPDSカード 00−049−1642
斜方晶SrZrO:JCPDSカード 00−044−0161
斜方晶CaZrO:JCPDSカード 00−035−0645
製造例1で用いたZr原料のX線回折パターンを図1に、得られた研磨材のX線回折パターンを図2に示す。
図2に示される研磨材のX線回折パターンは、ピーク位置が既知のデータベース(JCPDSカード)におけるZrOとSrZrOのピークの両方を含んでいた。そのため、製造例1で得た研磨材は、SrZrOの結晶相とZrOの結晶相を有していることが分かった。
(ii)半価幅の測定
Zr原料のX線回折の測定により得た回折パターンからZrOの2θ=27.00〜31.00°での最大ピークの半価幅を測定し、研磨材のX線回折の測定により得た回折パターンから斜方晶SrZrO(040)半価幅を測定した。結果を表1に示す。
なお、線源としてCuKα線を用いたX線回折において、単斜晶ZrOの最大ピークである(−111)面に由来するピークは2θ=28.14°付近にあり、正方晶ZrOの最大ピークである(011)面に由来するピークは2θ=30.15°付近にあり、立方晶ZrOの最大ピークである(111)面に由来するピークは2θ=30.12°付近にあり、斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークは2θ=44.04°付近にあり、斜方晶CaZrOの(121)面に由来するピークは2θ=31.5°付近にある。
図1に示すように、製造例1で用いたZr原料(酸化ジルコニウム)のX線回折パターンでは単斜晶ZrOの(−111)面に由来するピークが確認され、2θ=27.00〜31.00°での最大ピークの半価幅は0.38°であった。
図2に示すように、製造例1で得た研磨材のX線回折パターンでは斜方晶SrZrOの(040)面に由来するピークが確認され、その半価幅は0.33°であった。
(iii)比表面積の測定
Zr原料及び研磨材のそれぞれについて、以下の条件により比表面積の測定を行った。結果を表1に示す。
使用機:マウンテック社製、Macsorb Model HM−1220
雰囲気:窒素ガス(N
外部脱気装置の脱気条件:200℃−15分
比表面積測定装置本体の脱気条件:200℃−5分
(iv)電子顕微鏡画像の測定
研磨材について、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製:型番JSM−6510A)によりSEM画像を撮影した。製造例1で得た研磨材のSEM画像を図3に示す。
図3に示すように、製造例1で得た研磨材は、複数の一次粒子がランダムに集合した不定形の二次粒子を形成している。
(v)元素分析
研磨材について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:型番 ZSX PrimusII)の含有元素スキャニング機能であるEZスキャンにより元素分析を行った。測定サンプル台にプレスしたサンプルをセットし、次の条件を選択(測定範囲:F−U、測定径:30mm、試料形態:酸化物、測定時間:長い、雰囲気:真空)し、Sr含有量(SrO換算)及びCa含有量(CaO換算)を測定した。結果を表1に示す。
(vi)粒度分布のシャープさ(D90/D10
研磨材について、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製:型番 マイクロトラックMT3300EX)により粒度分布測定を行った。
まず、研磨材0.1gにイオン交換水60mLを加え、ガラス棒を用いて室温にてよく撹拌することにより、研磨材の懸濁液を準備した。なお、超音波を用いた分散操作は行わなかった。この後、イオン交換水180mLを試料循環器に準備し、透過率が0.71〜0.94になるように上記懸濁液を滴下して、流速50%にて、超音波分散をさせずに循環させながら測定を行った。
製造例2(研磨材B)
製造例1の「(2)混合工程」におけるZr原料として、「(1)Zr原料準備工程」により得られた水酸化ジルコニウムケーキを、ZrO換算で31.3g使用した以外は、製造例1と同様にして、SrZrOとZrOとの複合体から成る研磨材Bを得た。
この研磨材Bについて、製造例1と同様に半価幅、比表面積、元素分析及び粒度分布のシャープさを測定又は評価し、製造例2で用いたZr原料(水酸化ジルコニウム)についても、製造例1と同様に、比表面積を測定した。結果を表1に示す。
製造例3(研磨材E)
製造例1の「(2)混合工程」におけるCa原料として、炭酸カルシウム(堺化学工業株式会社製:CWS−20)22.5gを使用し、Zr原料として製造例1の「(1)Zr原料準備工程」により得られた酸化ジルコニウム42.4gを使用した以外は、製造例1と同様にして、CaZrOとZrOとの複合体から成る研磨材Eを得た。
この研磨材Eについて、製造例1と同様に半価幅、比表面積、元素分析及び粒度分布のシャープさを測定又は評価した。結果を表1に示す。
製造例4(研磨材スラリーA)
製造例1で作製した研磨材Aを用い、研磨材スラリーAを作製した。
具体的には、研磨材A20.0gをイオン交換水380.0gに分散させ、25℃にて10分間撹拌した。このようにして研磨材スラリーAを得た。
研磨材スラリーAについて、以下の条件によりゼータ電位の測定を行った。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図4に示す。また、研磨材スラリーAの等電点は6.4であった。ここで、等電点とは、研磨材スラリー中の砥粒(研磨材)に帯びた電荷の代数和がゼロである点、すなわち砥粒に帯びた正電荷と負電荷とが等しくなる点をいい、その点における研磨材スラリーのpHで表すことができる。
<ゼータ電位の測定条件>
測定機:大塚電子株式会社製、ゼータ電位測定システム、型番ELSZ−1
pHタイトレーター:大塚電子株式会社製、型番ELS−PT
研磨材スラリー6gをイオン交換水を用いて5倍希釈し、ガラス棒で撹拌しながら超音波洗浄機にて1分間分散させた。このスラリー10ccにイオン交換水50ccを加え、超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して1分間分散処理を行った。このようにして得たゼータ電位測定用研磨材スラリー30ccをゼータ電位測定機に充填した。
なお、後述するコロイダルシリカを用いた研磨材スラリーDは、研磨材スラリーD60ccを超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して1分間分散処理を行った。このようにして得たゼータ電位測定用研磨材スラリー30ccをゼータ電位測定機に充填した。
なお、研磨材スラリーのpH調整のために、必要に応じて以下のpH調整剤を用いた。
酸性側pH調整溶液:塩酸水溶液、0.1mol/L
アルカリ性側pH調整溶液:水酸化ナトリウム水溶液、1mol/L
製造例5(研磨材スラリーB)
製造例2で作製した研磨材Bを用いた以外は、製造例4(研磨材スラリーA)と同様にして、研磨材スラリーBを作製した。
この研磨材スラリーBについて、上記測定条件によりゼータ電位の測定を行った。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図4に示す。また、研磨材スラリーBの等電点は6.2であった。
製造例6(研磨材スラリーC)
研磨材としてガラス研磨用酸化セリウム質研磨材(昭和電工株式会社製、SHOROX(R)A−10、酸化セリウム含有量:60重量%、等電点:10.4)を用いたこと以外は、製造例4と同様にして研磨材スラリーCを作製した。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図4に示す。
製造例7(研磨材スラリーD)
コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社、クォートロン(R)PL−7、等電点:5.8)52.2gをイオン交換水347.8gに分散させ、25℃にて10分間撹拌した。これを研磨材スラリーDとして用いた。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図4に示す。
製造例8(研磨材スラリーE)
製造例3で作製した研磨材Eを用いた以外は、製造例4(研磨材スラリーA)と同様にして、研磨材スラリーEを作製した。
この研磨材スラリーEについて、上記測定条件によりゼータ電位の測定を行った。この研磨材スラリーの、pHに対するゼータ電位の関係を図4に示す。研磨材スラリーEの等電点は6.1であった。
実施例1
(1)第1研磨工程
製造例4で得た研磨材スラリーAのゼータ電位が表2に示す値になるよう、スラリーのpHを調整した後、このスラリーの存在下で、以下の研磨条件にてガラス基板の研磨を行った。この工程での研磨材スラリーAのpH値を表2に示す。また、第1研磨工程での研磨速度、及び、第1研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、以下の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
(2)第2研磨工程
上記第1研磨工程で使用した研磨材スラリーAをそのまま連続使用し、そのゼータ電位が表2に示す値になるようにスラリーのpHを調整した後、このスラリーの存在下で、第1研磨工程と同じ研磨条件にてガラス基板の研磨を行った。この工程での研磨材スラリーAのpH値を表2に示す。また、第2研磨工程での研磨速度、及び、第2研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、以下の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
<研磨条件>
使用ガラス板:ソーダライムガラス(松浪硝子工業株式会社製、サイズ36×36×1.3mm、比重2.5g/cm
研磨機:卓上型研磨機(株式会社エム・エー・ティ製、MAT BC−15C、研磨定盤径300mmφ)
研磨パッド:発泡ポリウレタンパッド(ニッタ・ハース株式会社製、MHN−15A、セリア含浸なし)
研磨圧力:101g/cm
定盤回転数:70rpm
研磨材スラリーの供給量:100mL/min
研磨時間:60min
<研磨速度の測定>
各研磨工程前後のガラス基板の重量を電子天秤で測定した。重量減少量、ガラス基板の面積及びガラス基板の比重から、ガラス基板の厚さ減少量を算出し、研磨速度(μm/min)を算出した。
3枚のガラス基板を同時に研磨し、60分研磨後にガラス基板と研磨材スラリーを交換した。この操作を3回行い、計9枚の研磨速度を平均した値を各実施例及び比較例における研磨速度の値とした。
<ガラス基板の表面平滑性の測定>
各研磨工程後のガラス基板について、以下の条件により表面粗さの測定を行った。
測定機:ZYGO株式会社製、白色干渉顕微鏡、型番NewViewTM7100
水平解像度:<0.1nm
対物レンズ:50倍
フィルター:なし
測定視野サイズ:X=186μm、Y=139μm
評価方法:研磨後のガラス基板に対し、中心点、及び、中心点から半径6mm、12mmの同心円とガラス基板の対角線の交点の計9点のRaを測定し、平均値を算出した。この操作を上記の研磨速度の測定に用いた計9枚のガラス基板に対して行い、各ガラス基板のRaの平均値を用いて平均することにより、表面粗さを評価した。
実施例2
第1研磨工程の後に研磨材スラリーAを取り出し、新しい研磨材スラリーA(但し、当該スラリーのpHを表2に示す値に調整する)に切り替えて第2研磨工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして第1研磨工程及び第2研磨工程を実施した。各工程での、研磨材スラリーのpH、ゼータ電位、研磨速度及びガラス基板の表面粗さを表2に示す。
実施例3
研磨材スラリーAの代わりに研磨材スラリーBを用いたこと以外は、実施例2と同様にして第1研磨工程及び第2研磨工程を実施した。各工程での、研磨材スラリーのpH、ゼータ電位、研磨速度及びガラス基板の表面粗さを表2に示す。
実施例4
研磨材スラリーAの代わりに研磨材スラリーEを用いたこと以外は、実施例2と同様にして第1研磨工程及び第2研磨工程を実施した。各工程での、研磨材スラリーのpH、ゼータ電位、研磨速度及びガラス基板の表面粗さを表2に示す。
比較例1
(1)第1研磨工程
製造例6で得た研磨材スラリーCのゼータ電位が表2に示す値になるよう、スラリーのpHを調整した後、このスラリーの存在下で実施例1と同じ研磨条件にてガラス基板の研磨を行った。この工程での研磨材スラリーCのpH値を表2に示す。また、第1研磨工程での研磨速度、及び、第1研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、上述した方法に従って評価した。結果を表2に示す。
(2)第2研磨工程
上記第1研磨工程で用いた研磨材スラリーCを研磨機から取り出し、研磨機の洗浄を行った。別途用意しておいた研磨材スラリーDのゼータ電位が表2に示す値になるようにpHを調整した後、この研磨材スラリーDの存在下で第1研磨工程と同じ研磨条件にてガラス基板の研磨を行った。この工程での研磨材スラリーDのpH値を表2に示す。また、第2研磨工程での研磨速度、及び、第2研磨工程後のガラス基板の表面粗さを、上述した方法に従って評価した。結果を表2に示す。
上記実施例及び比較例より以下のことが確認された。
実施例1、2と比較例1とでは、最終的に得られた基板(第2研磨工程後の基板)の表面粗さはほぼ同等であるにも関わらず、実施例1、2では、比較例1に比べて研磨速度が著しく向上されている。これとほぼ同様のことが、実施例3及び4と比較例1との対比からも確認できた。したがって、本発明の負帯電性基板の研磨方法は、セリウムフリーの研磨材料において高い研磨速度と優れた表面平滑性とを実現できることが分かった。また、比較例1においては、第1研磨工程では酸化セリウム系の研磨材を、第2研磨工程ではコロイダルシリカを使用しているため、研磨機の洗浄作業等を行う必要があったが、実施例1〜4では第1研磨工程と第2研磨工程とで同種類の研磨材スラリーを使用しているため、研磨機の洗浄作業等が不要となり、作業面、設備面で非常に有利であった。
なお、実施例1の第2研磨工程では第1研磨工程で使用した研磨材スラリーAをそのまま連続使用したのに対し、実施例2の第2研磨工程では、第1研磨工程で使用した研磨材スラリーAと同じものではあるが、新しい研磨材スラリーAに切り替えて研磨を行った点において、実施例1と実施例2とは相違する。だが、この相違は、研磨速度及び得られる基板の表面平滑性に殆ど影響を与えないことが分かった。
1:研磨材A
2:ガラス
3:研磨パッド
4:従来の研磨方法(i)における研磨材の切り替え時間
5:従来の研磨方法(i)において、目標の表面粗さに達する時間
6:目標の表面粗さ
7:本発明の好ましい形態の研磨方法(ii)において、研磨材スラリーのゼータ電位(好ましくは研磨材スラリーのpH)を切り替える時間
8:本発明の好ましい形態の研磨方法(ii)において、目標の表面粗さに達する時間

Claims (6)

  1. 研磨材スラリーを用いて負帯電性基板を研磨する方法であって、
    該研磨材スラリーは、組成式:ABO(Aは、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。Bは、Ti、Zr及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。)で表される酸化物と、酸化ジルコニウムとを含み、
    該研磨方法は、研磨材スラリーのゼータ電位が正となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程aと、研磨材スラリーのゼータ電位が負となる条件下で負帯電性基板を研磨する研磨工程bとを、それぞれ少なくとも1回ずつ実施することを特徴とする負帯電性基板の研磨方法。
  2. 前記酸化物は、SrZrO及び/又はCaZrOであることを特徴とする請求項1に記載の負帯電性基板の研磨方法。
  3. 前記研磨工程aを、研磨材スラリーのpHが、前記負帯電性基板の等電点より大きく、かつ該研磨材スラリーの等電点未満となる条件下で実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の負帯電性基板の研磨方法。
  4. 前記研磨工程bを、研磨材スラリーのpHが、該研磨材スラリーの等電点より大きく、かつ13以下となる条件下で実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の負帯電性基板の研磨方法。
  5. 前記負帯電性基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の負帯電性基板の研磨方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の研磨方法を用いることを特徴とする高表面平滑性の負帯電性基板の製造方法。
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