JPWO2016129636A1 - 藍藻変異株及びそれを用いたコハク酸及びd−乳酸産生方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)AckAタンパク質をコードする遺伝子の欠失変異、機能喪失変異、又は遺伝子発現抑制変異を有する藍藻変異株。
(2)前記AckAタンパク質が以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質である、(1)に記載の藍藻変異株。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質、及び
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質
(3)前記AckAタンパク質をコードする遺伝子が以下の(d)〜(g)のいずれかの遺伝子である、(2)に記載の藍藻変異株。
(e)配列番号2で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(f)配列番号2で示される塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、及び
(g)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
(4)SigEタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する、(1)〜(3)のいずれかに記載の藍藻変異株。
(5)前記SigEタンパク質が以下の(h)〜(j)のいずれかのタンパク質である、(4)に記載の藍藻変異株。
(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質、及び
(j)配列番号3で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質
(6)前記SigEタンパク質をコードする遺伝子が以下の(k)〜(n)のいずれかの遺伝子である、(5)に記載の藍藻変異株。
(l)配列番号4で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(m)配列番号4で示される塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、及び
(n)配列番号4に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
(7)前記SigEタンパク質をコードする遺伝子の過剰発現が発現ベクターに由来する、(4)〜(6)のいずれかに記載の藍藻変異株。
(8)時計タンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する、(1)〜(7)のいずれかに記載の藍藻変異株。
(9)前記時計タンパク質がKaiB3タンパク質又はKaiC3タンパク質である、(8)に記載の藍藻変異株。
(10)前記時計タンパク質をコードする遺伝子の過剰発現が発現ベクターに由来する、(8)又は(9)に記載の藍藻変異株。
(11)藍藻がSynechocystis属に属する、(1)〜(10)のいずれかに記載の藍藻変異株。
(12)(1)〜(11)の少なくとも一に記載の藍藻変異株を溶液中で嫌気的な暗条件下にて発酵させる発酵工程、及び前記発酵工程後の溶液からコハク酸を回収する回収工程を含むコハク酸の生産方法。
(13)前記発酵工程の溶液が50〜350mMの塩化カリウムを含む、(12)に記載のコハク酸の生産方法。
(14)前記嫌気的な条件が無酸素条件である、(12)又は(13)に記載のコハク酸の生産方法。
(15)前記発酵工程前に好気的な明条件で前記藍藻変異株を培養する培養工程を含む、(12)〜(14)のいずれかに記載のコハク酸の生産方法。
(16)(1)〜(11)の少なくとも一に記載の藍藻変異株を溶液中で嫌気的な暗条件下にて発酵させる発酵工程、及び前記発酵工程後の溶液からD-乳酸を回収する回収工程を含むD-乳酸の生産方法。
(17)前記発酵工程の溶液が50〜350mMの塩化塩を含む、(16)に記載のD-乳酸の生産方法。
(18)前記嫌気的条件が無酸素条件である、(16)又は(17)に記載のD-乳酸の生産方法。
(19)前記発酵工程前に好気的な明条件で前記藍藻変異株を培養する培養工程を含む、(16)〜(18)のいずれかに記載のD-乳酸の生産方法。
1.藍藻変異株
1−1.概要
本発明の第1の態様は藍藻変異株である。本発明の藍藻変異株は、ackA遺伝子に変異を有し、発酵条件下にて処理することによって、他の有機酸の生産を抑制しつつ、コハク酸及び/又はD-乳酸を効率的に生産することができる。
1−2.構成
本発明の藍藻変異株は、AckAタンパク質をコードする遺伝子の欠失変異、機能喪失変異、又は遺伝子発現抑制変異を有する。
1−3.効果
本発明の藍藻変異株によれば、所定の培養条件で培養することにより、藍藻細胞内で生産率が高い酢酸の生産量を抑え、目的のコハク酸及びD-乳酸を効率的に生産することができる。
2.コハク酸の生産方法
2−1.概要
本発明の第2の態様は、生分解性バイオマスプラスチックの原料となるコハク酸の生産方法である。本発明の生産方法では、第1態様に記載の藍藻変異株を用いて、特定条件下で発酵させることを特徴とする。本発明の生産方法によれば、藍藻細胞内で酢酸の生産量を抑制し、目的のコハク酸の生産効率を向上させることができる。
2−2.生産方法
本発明のコハク酸の生産方法は、発酵工程と回収工程を必須の工程とし、また培養工程を選択工程として包含する。以下、各工程について具体的に説明をする。
2−2−1.培養工程
「培養工程」とは、発酵工程前に行う選択工程であって、好気的な明条件(明好気条件)下で藍藻変異株を培養する工程をいう。本工程は、藍藻変異株の増殖を目的とする工程である。
2−2−2.発酵工程
「発酵工程」とは、第1態様に記載の藍藻変異株を、溶液中で嫌気的な暗条件(暗嫌気条件)下にて発酵させる必須工程である。本工程は、必須工程であり、前記藍藻変異株の細胞内でコハク酸をはじめとする有機酸を生産させると共に、該コハク酸の一部を細胞外に放出させることを目的とする。
2−2−3.回収工程
「回収工程」は、前記発酵工程後の溶液からコハク酸を回収する工程である。本工程は、溶液中に放出されたコハク酸及び/又は菌体内に含まれるコハク酸を物理的及び/又は化学的方法によって回収することを目的とする。
2−3.効果
本発明のコハク酸産生方法によれば、藍藻を用いた有機酸生産系において、生産率が高い酢酸の生産量を抑え、コハク酸を効率的に生産することができる。例えば、Synechocystis sp. PCC6803のackA遺伝子欠失型sigE遺伝子過剰発現型藍藻変異株(ΔackA/SigEox株)であれば、1.0 mg/L/hrのコハク酸を生産することができる。これは、Synechocystis sp. PCC6803の野生型株GT株の同条件下で生産されるコハク酸の約5倍に相当する。
3.D-乳酸の生産方法
本発明の第3の態様は、生分解性バイオマスプラスチックの原料となるD-乳酸の生産方法である。本発明の生産方法は、第1態様に記載の藍藻変異株を用いて、第2態様と同じ特定条件下で発酵させることを特徴とする。すなわち、本態様の目的の生産物であるD-乳酸は、第2態様と同じ製造方法により、第2態様の目的の生産物であるコハク酸と同時に生産される。したがって、基本的な工程や方法については第2態様に記載の工程及び方法に準ずる。そのため、ここでは第2態様と共通する点についてはその説明を省略し、異なる点についてのみ以下で説明をする。
(目的)
ackA遺伝子のノックイン型ベクターを用いて遺伝子が欠失した本発明の藍藻変異株ΔackAを作製する。
(方法)
(1)藍藻
藍藻は、単細胞性シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803(以下、しばしば「PCC6803」と表記する)を用いた。PCC6803は、パスツール研究所(フランス)から入手した。
(2)ackA遺伝子のクローニング
ackA遺伝子(sll1299)のORF領域をPCC6803のゲノムDNAを鋳型に、プライマーペアackA18F(配列番号29:TTCCGCATGCAGAGATTGACCTGGTGG)及びackA18R(配列番号30:TTAAGATATCGATTGCTTTCTCTGTCCC)を用いて、PCRにより増幅した。PCRは、KOD FX Neoポリメラーゼ(TOYOBO)を用いて、94℃で2分間熱変性後、98℃10秒+50℃30秒+68℃2分を1サイクルとして30サイクル行い、その後68℃で3分間処理した。得られた約900〜1000 bpの増幅産物の末端をSphI及びEcoRV(TAKARA BIO)で切断し、pUC119のSphI/SmaI部位に挿入した。ライゲーションには、DNA Ligation Kit(TAKARA BIO)を用いた。得られたプラスミドを「pUC-ackA」とした。pUC-ackAにおけるackA遺伝子の配列は、シークエンシングで確認した。
(3)ackA遺伝子ノックイン型ベクターの構築
pUC-ackAにプロモーターと薬剤耐性マーカーを導入してackA遺伝子のノックイン型ベクターを構築した。まず、pKRP10(Reece and Phillips, 1995, Gene, 165: 141-142)を鋳型として、プライマーペアpTCP2031F(配列番号33:AAATTTCTCGAGGAATTCGAGCTCGGTACC)及びpTCP2031R(配列番号34:AAACCCGACGTCGACTCACTATAGGGAGAC)を用いて、クロラムフェニコール薬剤マーカー領域をPCRにより増幅した。PCRは、KODポリメラーゼ(TOYOBO)を用いて、上記と同じ条件で行った。PCR後に得られた増幅産物の末端をXhoI及びAatIIで切断した後、pTKP2031V(Osanai et al., 2011 J. Biol. Chem. 286: 30962-30971)のXhoI-AatII部位に挿入した。ライゲーションには、DNA Ligation Kit(TAKARA BIO)を用いた。得られたベクターを「pTCP2031」とした。
(4)PCC6803の形質転換
pTCP1299をPCC6803のGT株に導入し、形質転換を行った。PCC 6803は、通常培養液にDNAを加えると細胞の中に取り込まれ、その後相同組換えを行う(Natural Transformation)。この操作により、ΔackA株が得られる。
<実施例2:sigE過剰発現型ΔackA株の作製>
(目的)
Synechocystis sp. PCC6803 GT株由来のsigE遺伝子の過剰発現型Δack株を作製する。
(方法)
(1)sigE遺伝子過剰発現型-ackA遺伝子ノックイン型ベクターの構築
実施例1で構築したackA遺伝子ノックイン型ベクターpTCP1299をHpaIで切断した。続いて、pTCHT2031VからsigE遺伝子のORF断片をNdeI及びHpaIで切り出し、pTCP1299のHpaI領域に挿入した。ライゲーションには、DNA Ligation Kit(TAKARA BIO)を用いた。得られたsigE遺伝子過剰発現型-ackA遺伝子ノックイン型ベクターを「pTCP1299-sigE」とした。
(2)PCC6803の形質転換
pTCP1299-sigEをPCC6803のGT株に導入し、形質転換を行った。基本的な方法は、実施例1(4)に記載の形質転換方法に準じた。この操作により、sigE過剰発現型ΔackA株であるΔackA/SigEox株を得た。
<実施例3:発酵工程における溶液の影響>
(目的)
有機酸の産生量について発酵工程で使用する溶液の影響を検証する。
(方法)
藍藻は、Synechocystis sp. PCC6803 GT株を使用した。発酵工程における溶液(藍藻懸濁液)には、培地(BG-110+5mM NH4Cl及びBG-110)及びバッファ(20mM HEPES-KOH(pH7.8)+5mM NH4Cl及び20mM HEPES-KOH(pH7.8))をそれぞれ使用した。
・反応液:0.2 mMブロモチモールブルー(BTB), 15 mM リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4・12H2O)
・カラム Shodex RSpak KC-811 x 2
(結果)
図1に結果を示す。X軸には発酵工程で用いた溶液を示している。BG-11(-N)とBG-11(+N)は、いずれもBG-110培地であり、(+N)は5mM NH4Clを添加した培地で、(-N)はNH4Cl無添加の培地を示す。また、Hepes(-N)とHepes(+N) は、いずれも20mM HEPES-KOH(pH7.8)バッファであり、(+N)は5mM NH4Clを添加したHepesバッファで、(-N)はNH4Cl無添加のHepesバッファを示す。
<実施例4:発酵工程における塩の効果>
(目的)
発酵工程における各種塩の有機酸生産量に対する効果について検証する。
(方法)
藍藻は、Synechocystis sp. PCC6803 GT株を使用した。発酵工程における溶液(藍藻懸濁液)には、20mM HEPES-KOH(pH7.8)を使用した。塩は、NaCl、KCl、及びCaCl2を用い、それぞれ終濃度100mMとなるようにHEPESバッファに添加した。
(結果)
図2に結果を示す。GT株は発酵工程中のバッファに塩化カリウムを添加することで、非添加の場合と比較してコハク酸の生産量が3倍以上、乳酸の生産量は5倍以上に増加することが明らかとなった。一方、他の塩を添加してもコハク酸の生産量は増加しないが、乳酸は塩化カルシウムを添加した場合に生産量が8倍以上にも増加することが判明した。
<実施例5:藍藻変異株における有機酸生産量の検証>
(目的)
本発明の藍藻変異株を用いた有機酸の生産量を検証する。
(方法)
藍藻変異株には、実施例1で作製したΔackA株及び実施例2で作製したΔackA/SigEox株を用いた。対照区として野生型GT株を用いた。
(結果)
図3に結果を示す。乳酸及びコハク酸の生産量は、GT株と比較して、ΔackA株では約2.5倍、ΔackA/SigEox株では5倍以上増加した。一方、酢酸の生産量は、ΔackA株及びΔackA/SigEox株共にGT株と比較して著しく減少した。以上の結果から、本発明の藍藻変異株は、発酵工程において酢酸の生産量を抑制し、コハク酸の産生量を増大できることが明らかとなった。
<実施例6:藍藻変異株の塩化カリウム処理による有機酸生産効率の検証>
(目的)
本発明の藍藻変異株を用いた塩化カリウムを含む発酵工程下における有機酸の生産量を検証する。
(方法)
藍藻変異株には、実施例2で作製したΔackA/SigEox株を用いた。また、対照区として野生型GT株を用いた。
(結果)
図4に結果を示す。コハク酸は、発酵工程の溶液中に塩化カリウムを添加すると、100mM、200mM、及び300mMのいずれの濃度でも無添加(0mM)の場合と比較して2倍以上生産量が増大した。ΔackA/SigEox株では、120〜140mg/L(1.7〜1.9mg/L/hr)のコハク酸が得られた。一方、ΔackA/SigEox株では、塩化カリウムを添加した場合にも酢酸の生産量が、野生株よりも生産量が低下した。
<実施例7:藍藻変異株を用いた有機酸生産方法で得られる乳酸のD/L比>
(目的)
本発明の藍藻変異株を用いた有機酸の生産方法で得られる乳酸のD/L比(D-乳酸及びL-乳酸の存在比)を検証する。
(方法)
D-乳酸及びL-乳酸の測定には、F-キットD-乳酸/L-乳酸(JKインターナショナル)を用いた。藍藻変異株には、Synechocystis sp. ΔackA/SigEox/ΔcphA/KaiC3ox株を用いた。また、対照区として野生型GT株(Synechocystis sp. PCC6803 GT)を用いた。藍藻の培養条件は、実施例3に準じ、発酵工程後の培養上清10μLに、F-キットの溶液Iを100μL、溶液IIを20μL、滅菌水を90μL、及び溶液IIIを2μL加えてOD340を測定した。この時に得られた測定値をE1とした。続いて、さらにF-キットの溶液IV又は溶液Vを2μL加えて室温で30分間インキュベートした後、再びOD340を測定した。この時に得られた測定値をE2とした。E2からE1を減じて得られる(E2−E1)値と乳酸の検量線からD-乳酸及びL-乳酸の値をそれぞれ算出した。
(結果)
野生型GT株では、L-乳酸が0.03 mg/L、D-乳酸が0.08 mg/Lであったのに対して、変異株では、L-乳酸が0.02 mg/L、D-乳酸 0.31 mg/Lであった。つまり、本発明の変異株を嫌気的な暗条件下にて発酵させることで、産生される乳酸の95%以上がD-乳酸となることが明らかになった。したがって、本発明の変異株によれば、D-乳酸を安価に生産することが可能となり得る。
Claims (19)
- AckAタンパク質をコードする遺伝子の欠失変異、機能喪失変異、又は遺伝子発現抑制変異を有する藍藻変異株。
- 前記AckAタンパク質が以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質である、請求項1に記載の藍藻変異株。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質、及び
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質 - 前記AckAタンパク質をコードする遺伝子が以下の(d)〜(g)のいずれかの遺伝子である、請求項2に記載の藍藻変異株。
(d)配列番号2で示される塩基配列からなる遺伝子、
(e)配列番号2で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(f)配列番号2で示される塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、及び
(g)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつAckA酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子 - SigEタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の藍藻変異株。
- 前記SigEタンパク質が以下の(h)〜(j)のいずれかのタンパク質である、請求項4に記載の藍藻変異株。
(h)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質、及び
(j)配列番号3で示されるアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質 - 前記SigEタンパク質をコードする遺伝子が以下の(k)〜(n)のいずれかの遺伝子である、請求項5に記載の藍藻変異株。
(k)配列番号4で示される塩基配列からなる遺伝子、
(l)配列番号4で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
(m)配列番号4で示される塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、及び
(n)配列番号4に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつSigE活性を有するタンパク質をコードする遺伝子 - 前記SigEタンパク質をコードする遺伝子の過剰発現が発現ベクターに由来する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の藍藻変異株。
- 時計タンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の藍藻変異株。
- 前記時計タンパク質がKaiB3タンパク質又はKaiC3タンパク質である、請求項8に記載の藍藻変異株。
- 前記時計タンパク質をコードする遺伝子の過剰発現が発現ベクターに由来する、請求項8又は9に記載の藍藻変異株。
- 藍藻がSynechocystis属に属する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の藍藻変異株。
- 請求項1〜11の少なくとも一項に記載の藍藻変異株を溶液中で嫌気的な暗条件下にて発酵させる発酵工程、及び
前記発酵工程後の溶液からコハク酸を回収する回収工程
を含むコハク酸の生産方法。 - 前記発酵工程の溶液が50〜350mMの塩化カリウムを含む、請求項12に記載のコハク酸の生産方法。
- 前記嫌気的条件が無酸素条件である、請求項12又は13に記載のコハク酸の生産方法。
- 前記発酵工程前に好気的な明条件で前記藍藻変異株を培養する培養工程を含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のコハク酸の生産方法。
- 請求項1〜11の少なくとも一項に記載の藍藻変異株を溶液中で嫌気的な暗条件下にて発酵させる発酵工程、及び
前記発酵工程後の溶液からD-乳酸を回収する回収工程
を含むD-乳酸の生産方法。 - 前記発酵工程の溶液が50〜350mMの塩化塩を含む、請求項16に記載のD-乳酸の生産方法。
- 前記嫌気的条件が無酸素条件である、請求項16又は17に記載のD-乳酸の生産方法。
- 前記発酵工程前に好気的な明条件で前記藍藻変異株を培養する培養工程を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載のD-乳酸の生産方法。
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