JPWO2016108288A1 - 骨格筋前駆細胞の製造方法 - Google Patents

骨格筋前駆細胞の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を製造する方法であって、下記の工程(1)と(2A)または(2B)とを含む方法:(1)多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程(2A)(1)の工程で得られた細胞を、HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程(2B)(1)の工程で得られた細胞を、(i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、(ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および(iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中で順次培養する工程を提供する。当該方法は、さらに下記の工程(3):(3)(2A)または(2B)の工程で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程を含み得る。

Description

本発明は、新規な骨格筋前駆細胞の製造方法、当該方法に用いる分化誘導用試薬キットおよび当該方法により製造された骨格筋前駆細胞を含む筋原性疾患治療剤に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や、体細胞へ未分化細胞特異的遺伝子を導入することで得られる人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの多能性を有する細胞が報告されて以来、筋原性疾患の治療方法、とりわけ、筋ジストロフィーの治療方法として、これらの多能性幹細胞から分化誘導された骨格筋前駆細胞を移植する治療法が注目されている。
これまで、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞または骨格筋を分化誘導する方法として、(1)単一のヒトES細胞を浮遊培養により増殖させた細胞を無血清培養液中で接着培養した後、CD73陽性細胞を単離しさらに培養した後、NCAM陽性細胞を単離し増殖する方法(非特許文献1)、(2)5-Azacytidine(脱メチル化剤)で処理したヒトES細胞を浮遊培養して胚様体を形成させた後、さらに接着培養する方法(非特許文献2)、(3)多能性幹細胞を浮遊培養し、次いで接着培養を行い、その後解離して再び接着培養を行う方法(特許文献1)などが開発されている。
しかしながら、これらの方法では、得られた骨格筋前駆細胞などが移植先に十分に生着しないという問題を抱えており、筋肉の再生医療を行うためには、移植に適した適切な成熟段階の骨格筋前駆細胞が必要であり、そのような細胞の製造方法が開発される必要があった。
特表2013-527746
Barberi T, et al. Nat Med. 13:642-8, 2007 Zheng JK, et al. Cell Res. 16:713-22, 2006
本発明の目的は、多能性幹細胞から骨格筋前駆細を製造する新規な方法を提供することである。本発明の目的はまた、移植に適した骨格筋前駆細胞を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定の因子を用いた段階的な分化誘導法を採用することにより、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を高効率で誘導することに成功した。また、本発明者らは、そのような方法により得られた骨格筋前駆細胞が、移植において極めて高い生着率を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を製造する方法であって、下記の工程(1)と(2A)または(2B)とを含む方法。
(1)多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程
(2A)(1)の工程で得られた細胞を、HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程
(2B)(1)の工程で得られた細胞を、
(i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、
(ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および
(iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中
で順次培養する工程
[2]さらに下記の工程(3)を含む、[1]に記載の方法。
(3)(2A)または(2B)の工程で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程
[3]前記工程(1)、(2B)および(3)のTGF-β阻害剤がSB431542である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記工程(1)のGSK3β阻害剤がCHIR99021であり、当該CHIR99021の培地中での濃度が5μM以上である、[1]から[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記工程(2B)のGSK3β阻害剤がLiClである、[1]から[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記工程(3)の血清がウマ血清である、[2]から[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]さらに下記の工程(4)を含む、[2]から[6]のいずれか1項に記載の方法。
(4)(3)の工程で得られた細胞からMyf5を発現する細胞を単離する工程
[8]さらに下記の工程(5)を含む、[7]に記載の方法。
(5)(4)の工程で得られた細胞を少なくとも24時間培養する工程
[9]前記工程(5)が、SB431542、IGF1およびウマ血清を含む培養液中で培養する工程である、[8]に記載の方法。
[10]多能性幹細胞がヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、[1]から[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11]SB431542、CHIR99021、IGF1、HGF、およびウマ血清を含有することを特徴とし、任意でLiClおよびbFGFをさらに含んでもよい、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞への分化誘導用試薬キット。
[12]多能性幹細胞がヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、[11]に記載のキット。
[13][1]から[10]のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞を含む筋原性疾患治療剤。
[14]前記筋原性疾患が筋ジストロフィーである、[13]に記載の剤。
[15]有効量の[1]から[10]のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞を対象に投与することを含む、筋原性疾患の治療方法。
[16]筋原性疾患の治療に使用するための、[1]から[10]のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞。
本発明の方法により、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を効率的に作製することが可能となる。また、得られた骨格筋前駆細胞は、生体への高い生着率を示すため、移植治療において極めて有用である。
骨格筋前駆細胞への分化誘導7日目における分化状態を調べた結果を示す。(A)は、分化誘導7日目の細胞群を、CD271(NGFR)およびPax3-GFPにより選別したFACS解析の結果を示す。(B)は、各区画((1)NGFR-Pax3+、(2)NGFR+Pax3+、(3)NGFR+Pax3-および(4)NGFR-Pax3-)における細胞群について、Pax3、T、Tbx6、Mesp2、PDGFRa、KDR、CD56、Sox10、NGFR、Pax7およびMyf5の各遺伝子の発現量をPCRで測定した結果を示す。値は、28日目のテラトーマにおける発現量に対する比較値を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導7日目において継代を行った場合の14日目におけるPax3の陽性率をFACSで調べた結果を示す。図中の75%は、Pax3陽性細胞の含有率を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導工程の各日数における、Tbx6、Wnt3a、Mesp2、PDGFRa、Pax3、Meox1の発現量をPCRで測定した結果を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導35日目の細胞の蛍光像の結果を示す。(A)は、MHC(赤色)およびDAPI(青色)の免疫染色像、(B)は、Myogenin(赤色、DAPI(青色)の免疫染色像および明視野像を重ね合わせ像、ならびに(C)は、Pax3-GFP(緑色)の蛍光像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導工程の各日数における、Myf5およびMyoDの発現量をPCRで測定した結果を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導57日目(A)および60日目(B)の細胞の蛍光像の結果を示す。(A)は、Pax3-GFP(緑色)の蛍光像を示し、(B)は、Embryonic MHCおよびMyogeninの抗体を用いた免疫染色像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導84日目のPax3-GFP陽性細胞(A)および陰性細胞(B)について、分離後7日目の細胞の免疫染色像を示す。上段は、MHC(赤色)およびDAPI(青色)の免疫染色像を示し、下段は、Myogenin(赤色)および明視野像を重ね合わせ像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導84日目における細胞群のPax7(緑色)およびMyf5(赤色)の抗体を用いた免疫染色像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導51日目の細胞群をNSGマウスへの移植後4週間目の移植部位におけるヒト核およびSpectrin(桃色)、eMYH(緑色)、ラミニン(白色)およびマウス核(青色)の免疫染色像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導84日目のPax3-GFP陽性細胞をNSGマウスに移植した実験の結果を示す。(A)は、分化誘導84日目の細胞群のFACS解析像を示す。(B)は、Pax3-GFP陽性細胞を、NSGマウスへの移植後4週間目の移植部位におけるヒト核(赤色)およびエオシン(桃色)の免疫染色像(左図)ならびにラミニン(緑色)およびマウス核(青色)の免疫染色像(右図)を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導工程の各日数における、Myf5-tdTomato陽性細胞(図中、C3+、赤色にて示す)および陰性細胞(図中、C3-、青色にて示す)のMyf5、MyoD、Pax3およびPax7の発現量をPCRで測定した結果を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導44日目のMyf5-tdTomato陽性細胞(上段)および陰性細胞(下段)について、分離後1日目(左図)、7日目(中央図)および14日目(右図)の細胞の免疫染色像を示す。1日目(左図)および7日目(中央図)は、Myf5-tdTomato(赤色)および明視野像を重ね合わせ像を示し、14日目(右図)は、MHC(赤色)およびMyogenin(緑色)の免疫染色像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導71日目のMyf5-tdTomato陽性細胞(左図)またはMyf5-tdTomato陰性細胞(右図)をNSGマウスへの移植後、4週間目の各移植部位におけるヒトspectrinに対する免疫染色像を示す。 骨格筋前駆細胞への分化誘導78日目のMyf5-tdTomato陽性細胞を24時間再培養した後NSGマウスに移植した移植部位におけるヒトspectrin(緑色)の免疫染色像(左図)ならびに、ヒト核(赤色)、ラミニン(白色)およびDAPI(青色)の免疫染色像(右図)を示す。 工程(1)におけるTGF-β阻害剤並びにGSK3β阻害剤の濃度を変更した場合の、骨格筋前駆細胞への分化誘導14日目におけるPax3の陽性率をFACSで調べた結果を示す。図中の95%及び92%は、Pax3陽性細胞の含有率を示す。 工程(2A)においてTGF-β阻害剤、IGF-1、HGF、bFGFの添加・非添加を種々組み合わせた場合の、骨格筋前駆細胞への分化誘導50日目におけるMyf5陽性率をFACSで調べた結果を示す。図の縦軸は、全ての添加剤を添加した条件でのMyf5陽性率を1とした時の、各条件でのMyf5陽性率の比である。 骨格筋前駆細胞への分化誘導35日目のMyf5-tdTomato陽性細胞をNSGマウスに移植した移植部位におけるヒトSpectrin(緑色)、ヒト核(赤色)、ラミニン(白色)およびDAPI(青色)の免疫染色像を示す。
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明は、上記のとおり、特定の因子を特定の工程において用いた、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を製造する方法、当該方法に用いる特定の因子を含有する分化誘導用試薬キットおよび当該方法により製造された骨格筋前駆細胞を含む筋原性疾患治療剤に関する。
本発明において、「骨格筋」とは、成熟筋を意味し、筋繊維すなわち多核細胞である筋細胞を含む。また、本発明において「骨格筋前駆細胞」とは、成熟した筋細胞へは至っていないもののその前段階にある細胞であって、筋細胞へ選択的に分化し得る能力を有する細胞を意味する。ここで、骨格筋前駆細胞は、骨芽細胞や脂肪細胞などの他の中胚葉細胞への分化能を全く有しないことを意味するものではなく、場合によっては、筋細胞以外の細胞への分化能を有している細胞も本発明の骨格筋前駆細胞に包含され得る。骨格筋前駆細胞は、特定の遺伝子の発現によって特徴づけられ、例えば、MyoD、Myf5、Pax7、Myogenin、ミオシン重鎖、NCAM、Desmin、SkMAct、MF20、M-Cadherin、Fgfr4およびVCAME1などのマーカー遺伝子の発現を検出することによって同定可能である。本発明における骨格筋前駆細胞は、好ましくは、Myf5陽性の細胞であり得、より好ましくは、Myf5およびPax7陽性の細胞である。本発明における骨格筋前駆細胞は、特に断りがない限り、骨格筋幹細胞またはサテライト細胞を含み、少なくともその一部は移植後に骨格筋幹細胞またはサテライト細胞として生着し得るものとする。
本発明において、分化誘導された骨格筋前駆細胞は、他の細胞種が含まれる細胞集団として提供されてもよく、純化された細胞集団であってもよい。骨格筋前駆細胞は、ヒトにおいて天然に生じる骨格筋前駆細胞と同一でなくともそれにかなり類似した特性をもっていればよく、生体に移植したときに生体適合性であって、かつ、損傷部位を補填し代替する能力のあるような特性を有するものが特に望ましい。
本発明の方法によって製造される骨格筋前駆細胞は、少なくとも骨格筋前駆細胞を含んだ細胞集団であればよく、骨格筋前駆細胞と共に他の種類の細胞を含んだ細胞集団を含んでもよい。骨格筋前駆細胞の割合は、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%などであるが、これらに限定されない。好ましくは、骨格筋前駆細胞を製造後、細胞集団から骨格筋前駆細胞を単離することが好ましい。
<多能性幹細胞>
本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、それには、以下のものに限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、精子幹(GS)細胞、胚性生殖(EG)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、Muse細胞などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ES細胞、iPS細胞およびntES細胞であり、筋原性疾患治療に用いるという観点から、より好ましくは、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞であり、さらに好ましくは、ヒトiPS細胞である。
(A) 胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された (J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20% KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培養液を使用し、37℃、2% CO2/98% 空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O. Fumitaka et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:215-224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2および20% KSRを含有するPBS中の0.25% トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
(B) 精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,羊土社(東京、日本))。
(C) 胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。
(D) 人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNAまたはタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720に記載の組み合わせが例示される。
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸 (VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LT、UTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。
iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12またはDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。
培養法の例としては、例えば、37℃、5% CO2存在下にて、10%FBS含有DMEMまたはDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(例えば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日またはそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(例えば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日またはそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2あたり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。
本明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子、卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
本発明において、体細胞を採取する由来となる哺乳動物個体は特に制限されないが、好ましくはヒトである。得られるiPS細胞がヒトの再生医療用途に使用される場合には、拒絶反応が起こらないという観点から、患者本人またはHLAの型が同一もしくは実質的に同一である他人から体細胞を採取することが特に好ましい。ここでHLAの型が「実質的に同一」とは、免疫抑制剤などの使用により、該体細胞由来のiPS細胞から分化誘導することにより得られた細胞を患者に移植した場合に移植細胞が生着可能な程度にHLAの型が一致していることをいう。例えば、主たるHLA(例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座、あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座)が同一である場合などが挙げられる(以下同じ)。
(E) 核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している (T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B. Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。
(F) Multilineage-differentiating Stress Enduring cells(Muse細胞)
Muse細胞は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。
<多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を製造する方法>
本発明によれば、多能性細胞から骨格筋前駆細胞を製造するにあたって、下記の工程(1)と(2A)または(2B)とを含む方法を用いることができる。
(1)多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程
(2A)(1)の工程で得られた細胞を、HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程
(2B)(1)の工程で得られた細胞を、
(i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、
(ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および
(iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中
で順次培養する工程
本発明はまた、前記工程(1)から(2A)または(2B)に加えて、工程(3)(2A)または(2B)の工程で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程を含む方法を用いることができる。
さらに本発明は、前記工程(1)から(3)に加えて、工程(4)(3)の工程で得られた細胞集団からMyf5を発現している細胞を単離する工程を含む方法を用いることができる。
さらに本発明は、前記工程(1)から(4)に加えて、工程(5)(4)の工程で得られた細胞を再培養する工程を含む方法を用いることができる。
本発明における骨格筋前駆細胞の分化誘導方法について、下記に詳述する。
分化誘導前準備
本工程では、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞への分化誘導に先立って、多能性幹細胞を培養する工程を含み得る。ここでは、多能性幹細胞を任意の方法で分離し、浮遊培養により培養してもよく、あるいはコーティング処理された培養皿を用いて接着培養により培養してもよい。本工程では、好ましくは、接着培養が用いられる。ここで、多能性幹細胞の分離方法としては、例えば、力学的に分離する方法、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する分離溶液(例えば、Accutase(TM)およびAccumax(TM)など)またはコラゲナーゼ活性のみを有する分離溶液を用いた分離方法、Trypsin/ EDTAを用いた解離方法などが挙げられる。好ましくは、Trypsin/ EDTAを用いて細胞を解離する方法が用いられる。
本発明において、浮遊培養とは、細胞を培養皿へ非接着の状態で培養することで胚様体を形成させることであり、特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックスなどによるコーティング処理)されていない培養皿、若しくは、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)によるコーティング処理)した培養皿を使用して行うことができる。
本発明において、接着培養とは、フィーダー細胞上で、または細胞外基質によりコーティング処理された培養容器を用いて培養することによって行い得る。コーティング処理は、細胞外基質を含有する溶液を培養容器に入れた後、当該溶液を適宜除くことによって行い得る。
本発明において、フィーダー細胞とは、目的の細胞の培養条件を整えるために用いる補助的役割を果たす他の細胞を意味する。本発明において、細胞外基質とは、細胞の外に存在する超分子構造体であり、天然由来であっても、人工物(組換え体)であってもよい。例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリン、ラミニンといった物質またはこれらの断片が挙げられる。これらの細胞外基質は、組み合わせて用いられてもよく、例えば、BD Matrigel(TM)などの細胞からの調製物であってもよい。人工物としては、ラミニンの断片が例示される。本発明において、ラミニンとは、α鎖、β鎖、γ鎖をそれぞれ1本ずつ持つヘテロ三量体構造を有するタンパク質であり、特に限定されないが、例えば、α鎖は、α1、α2、α3、α4またはα5であり、β鎖は、β1、β2またはβ3であり、ならびにγ鎖は、γ1、γ2またはγ3が例示される。本発明において、ラミニンの断片とは、インテグリン結合活性を有しているラミニンの断片であれば、特に限定されないが、例えば、エラスターゼにて消化して得られる断片であるE8フラグメントが例示される。
多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞への分化誘導に先立って、多能性幹細胞を培養する工程は、好ましくは、接着培養であり、当該接着培養は、Matrigel(TM)でコーティングされた培養容器を用いた接着培養であり得る。多能性幹細胞を培養する工程において、使用する培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、mTeSR1およびこれらの混合培地などが包含される。本工程において、好ましくは、mTeSR1が用いられる。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい培地は、mTeSR1である。
多能性幹細胞を培養する工程の培養期間は、1日以上10日以下が例示され、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日などであり得て、好ましくは、4日である。
多能性幹細胞を培養する工程において、多能性幹細胞を分離する場合、培地中に、ROCK阻害剤が含まれていることが好ましい。ROCK阻害剤は、Rhoキナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものであれば特に限定されないが、例えば、Y-27632が本発明において好適に使用され得る。
培地中におけるY-27632の濃度は、特に限定されないが、1μM〜50μMが好ましく、例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10μMである。
培地中に、ROCK阻害剤を添加する期間は、多能性幹細胞を培養する工程の培養期間であってもよく、単一分散時の細胞死を抑制する期間であればよく、例えば、少なくとも1日である。
多能性幹細胞を培養する工程において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
多能性幹細胞を培養する工程において、培養期間の途中で培地交換を行うことができる。培地交換に用いられる培地は、培地交換前の培地と同じ成分を有する培地であっても、異なる成分を有する培地であってもよい。好ましくは、同じ成分を有する培地が用いられる。培地交換の時期は、特に限定されないが、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎に行われる。本工程において、培地交換は、好ましくは、2日毎に行われる。
工程(1):多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程
本工程(1)は、多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程である。本工程(1)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、およびこれらの混合培地などが包含される。本工程(1)において、好ましくは、IMDM培地およびHam's F12培地の混合培地である。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本工程(1)において、好ましい基礎培地は、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、セレンおよびチオールグリセロールを添加したIMDM培地およびHam's F12培地の混合培地である。
本発明において、TGFβ阻害剤は、TGFβの受容体への結合からSMADへと続くシグナル伝達を阻害する物質である限り特に限定されないが、例えば、TGFβの受容体であるALKファミリーへの結合を阻害する物質、ALKファミリーによるSMADのリン酸化を阻害する物質などが挙げられる。本発明において、TGFβ阻害剤は、例えば、Lefty-1(NCBI Accession No.として、マウス:NM_010094、ヒト:NM_020997が例示される)、SB431542、SB202190(以上、R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer, 2003, 2:20)、SB505124 (GlaxoSmithKline)、 NPC30345 、SD093、SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、 LY580276 (Lilly Research Laboratories)、A-83-01(WO 2009146408) およびこれらの誘導体などが例示される。
本工程(1)で使用されるTGFβ阻害剤は、好ましくは、SB431542であり得る。
培地中におけるSB431542の濃度は、特に限定されないが、1μM〜50μMが好ましく、例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、2μM〜10μM、特に好ましくは5μMである。
本発明において、GSK-3β阻害剤は、GSK-3βタンパク質のキナーゼ活性(例えば、βカテニンに対するリン酸化能)を阻害する物質として定義され、既に多数のものが知られているが、例えば、GSK-3β阻害剤として最初に見出されたLithium chloride (LiCl)、インジルビン誘導体であるBIO(別名、GSK-3β阻害剤IX;6-ブロモインジルビン3'-オキシム)、マレイミド誘導体であるSB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、フェニルαブロモメチルケトン化合物であるGSK-3β阻害剤VII(4-ジブロモアセトフェノン)、細胞膜透過型のリン酸化ペプチドであるL803-mts(別名、GSK-3βペプチド阻害剤;Myr-N-GKEAPPAPPQSpP-NH2)および高い選択性を有するCHIR99021(6-[2-[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(4-methyl-1H-imidazol-2-yl)pyrimidin-2-ylamino]ethylamino]pyridine-3-carbonitrile)が挙げられる。これらの化合物は、例えばCalbiochem社やBiomol社等から市販されており容易に利用することが可能であるが、他の入手先から入手してもよく、あるいはまた自ら作製してもよい。
本工程(1)で使用されるGSK-3β阻害剤は、好ましくは、CHIR99021であり得る。
培地中におけるCHIR99021の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、GSK-3β阻害において使用される濃度である1μMよりも高い濃度が使用され、例えば、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μM等であるがこれらに限定されない。より好ましくは、5μM以上(例えば、5μM〜50μM、好ましくは5μM〜10μM)である。
本工程(1)において、培養期間は、10日以上30日以下が例示され、例えば、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日などであり得て、好ましくは、16日から21日の間、より好ましくは16日である。
本工程(1)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
本工程(1)において、所望の細胞の含有率を上昇させる観点から、好ましくは、工程内において継代を含む。本発明において、継代とは、培養中の細胞を容器から解離させ、再播種する操作である。細胞を解離させる工程においては、互いに接着して集団を形成している細胞を個々の細胞に解離(分離)させる。細胞を解離させる方法としては、例えば、力学的に解離する方法、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する解離溶液(例えば、Accutase(TM)およびAccumax(TM)など)、コラゲナーゼ活性のみを有する解離溶液を用いた解離方法、Trypsin/ EDTAを用いた解離方法などが挙げられる。好ましくは、Trypsin/ EDTAを用いて細胞を解離する方法が用いられる。
本工程(1)において、継代は、特に限定されないが、本工程の開始から4〜10日毎、例えば、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、好ましくは、7日毎に行われる。
継代直後の培養液は、再播種された細胞の細胞死を防ぐ目的で、ROCK阻害剤を含んでいてもよい。ROCK阻害剤は、前記と同様の条件で用いることができる。
本工程(1)において、適宜培地交換を行うことが望ましい。培地交換の時期は、特に限定されないが、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎に行われる。本工程において、培地交換は、好ましくは、2日毎に行われる。
工程(2A): HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程
本工程(2A)は、前記工程(1)で得られた細胞を、HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程である。本工程(2A)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、SF-O3培地(エーディア株式会社)およびこれらの混合培地などが包含される。本工程(2A)において、好ましくは、SF-O3培地が用いられる。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本工程(2)において、好ましい基礎培地は、アルブミンおよび2-メルカプトエタノールを添加したSF-O3培地である。
本工程(2A)で使用する培地中におけるHGFの濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本工程(2A)では、HGFに加えて、さらにIGF1を含有する培養液中で培養を行うことが好ましい。本工程(2A)で使用する培地中におけるIGF1の濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本工程(2A)において、培養期間は、1日以上40日以下が例示され、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日などであり得て、好ましくは、20日である。
本工程(2A)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
工程(2B):(i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、(ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および(iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中で順次培養する工程
本工程(2B)は、前記工程(1)で得られた細胞を、
(i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、
(ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および
(iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中
で順次培養する工程である。本工程は前期工程(2A)の代わりに行われる工程である。以下、サブ工程(i)〜(iii)について順に説明する。
サブ工程(i):TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中で培養する工程
本サブ工程(i)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、SF-O3培地(エーディア株式会社)およびこれらの混合培地などが包含される。本サブ工程(i)において、好ましくは、SF-O3培地が用いられる。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本サブ工程(i)において、好ましい基礎培地は、アルブミンおよび2-メルカプトエタノールを添加したSF-O3培地である。
本サブ工程(i)で使用するTGFβ阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、SB431542であり得る。本サブ工程(i)で使用する培地中におけるSB431542の濃度は、特に限定されないが、1μM〜50μMが好ましく、例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10μMである。
本サブ工程(i)で使用されるGSK-3β阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、LiClであり得る。本サブ工程(i)で使用する培地中におけるLiClの濃度は、特に限定されないが、1mM〜50mMが好ましく、例えば、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、50mMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、5mMである。
本サブ工程(i)で使用する培地中におけるIGF1の濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(i)で使用する培地中におけるHGFの濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(i)で使用する培地中におけるbFGFの濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(i)において、培養期間は、1日以上10日以下が例示され、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日などであり得て、好ましくは、4日である。
本サブ工程(i)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
サブ工程(ii):TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中で培養する工程
本サブ工程(ii)は、前記サブ工程(i)で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中で培養する工程である。本サブ工程(ii)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、SF-O3培地およびこれらの混合培地などが包含される。本サブ工程(ii)において、好ましくは、SF-O3培地が用いられる。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本サブ工程(ii)において、好ましい基礎培地は、アルブミンおよび2-メルカプトエタノールを添加したSF-O3培地である。
本サブ工程(ii)で使用するTGFβ阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、SB431542であり得る。本サブ工程(ii)で使用する培地中におけるSB431542の濃度は、特に限定されないが、1μM〜50μMが好ましく、例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10μMである。
本サブ工程(ii)で使用されるGSK-3β阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、LiClであり得る。本サブ工程(ii)で使用する培地中におけるLiClの濃度は、特に限定されないが、1mM〜50mMが好ましく、例えば、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、50mMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、5mMである。
本サブ工程(ii)で使用される培地中におけるIGF1の濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(ii)において、培養期間は、1日以上10日以下が例示され、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日などであり得て、好ましくは、3日である。
本サブ工程(ii)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
サブ工程(iii):TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中で培養する工程
本サブ工程(iii)は、前記サブ工程(ii)で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中で培養する工程である。本サブ工程(iii)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base medium、SF-O3培地およびこれらの混合培地などが包含される。本サブ工程(iii)において、好ましくは、SF-O3培地が用いられる。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本サブ工程(iii)において、好ましい基礎培地は、アルブミンおよび2-メルカプトエタノールを添加したSF-O3培地である。
本サブ工程(iii)で使用するTGFβ阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、SB431542であり得る。本サブ工程(iii)で使用する培地中におけるSB431542の濃度は、特に限定されないが、1μM〜50μMが好ましく、例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10μMである。で使用されるTGFβ阻害剤は、好ましくは、SB431542であり得る。
本サブ工程(iii)で使用される培地中におけるIGF1の濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(iii)で使用される培地中におけるHGFの濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本サブ工程(iii)において、培養期間は、7日以上20日以下が例示され、例えば、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日などであり得て、好ましくは、14日である。
本サブ工程(iii)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
本サブ工程(iii)において、適宜培地交換を行うことが望ましい。培地交換の時期は、特に限定されないが、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎に行われる。好ましくは、2日毎に行われる。あるいは、別の観点から培地交換は、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、週1回、週2回、週3回、週4回行われ得る。好ましくは、週2回行われる。
工程(3):TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程
本工程(3)は、前記工程(2A)または(2B)で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程である。本工程(3)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、StemPro34(invitrogen)、RPMI-base mediumおよびこれらの混合培地などが包含される。本工程(3)において、好ましくは、DMEM培地が用いられる。
基礎培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、セレン(亜セレン酸ナトリウム)、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール(2ME)、チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。本工程(3)において、好ましい基礎培地は、血清、L-グルタミンおよび2-メルカプトエタノールを添加したDMEM培地である。本工程(3)において用いる血清は、ウマ血清であり、基礎培地中の濃度は、1から10%、より好ましくは、2%である。
本工程(3)で使用するTGFβ阻害剤は、前記と同様のものを用いることができるが、好ましくは、SB431542であり得る。本工程(3)で使用される培地中におけるSB431542の濃度は、特に限定されないが、500nM〜50μMが好ましく、例えば、500nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM 、45μM、50μMであるがこれらに限定されない。より好ましくは、5μMである。
本工程(3)で使用される培地中におけるIGF1の濃度は、特に限定されないが、1ng/ml〜50ng/mlが好ましく、例えば、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35g/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/mlであるがこれらに限定されない。より好ましくは、10ng/mlである。
本工程(3)において、培養期間は、9日以上50日以下が例示され、好ましくは、20日以上40日以下、30日以上40日以下である。例えば、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日などが挙げられる。
本工程(3)において、培養温度は、以下に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは5%である。
本工程(3)において、適宜培地交換を行うことが望ましい。培地交換の時期は、特に限定されないが、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎に行われる。好ましくは、2日毎に行われる。あるいは、別の観点から培地交換は、新鮮な培地での培養を開始してから、例えば、週1回、週2回、週3回、週4回行われ得る。好ましくは、週2回行われる。
工程(4):Myf5を発現している細胞を単離する工程
本工程(4)は、工程(3)で得られた骨格筋前駆細胞を含む細胞集団からMyf5を発現する細胞を単離する工程である。本工程(4)において、Myf5を発現する細胞の単離は、細胞内におけるMyf5の発現を検知し、それに基づいてMyf5を発現している細胞を選択的に得ることができる方法もしくはMyf5を発現していない細胞を検知し、それに基づいてMyf5を発現していない細胞を選択的に除去できる方法であれば特に限定されない。従って、Myf5を代替する遺伝子を用いて単離しても良い。Myf5を代替する遺伝子としては、細胞表面に存在する遺伝子が好ましく、例えば、CD34またはM-cadherinが例示される。
Myf5を発現している細胞の単離は、例えば、Myf5またはMyf5を代替する遺伝子に特異的に結合する抗体を用いて行うことができる。このほかにも、Myf5のプロモーターと機能的に連結したマーカー遺伝子を検出することによって行うこともできる。本発明において、「マーカー遺伝子」とは、細胞内で翻訳され指標として機能しうるタンパク質をコードする遺伝子であり、該タンパク質には、例えば、蛍光タンパク質、発光タンパク質、蛍光、発光もしくは呈色を補助するタンパク質、薬剤耐性遺伝子によってコードされるタンパク質などが含まれるが、これらに限定さない。
本発明において、蛍光タンパク質としては、Sirius、BFP、EBFPなどの青色蛍光タンパク質;mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFPなどのシアン蛍光タンパク質;TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green (例えば、hmAG1)、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPerなどの緑色蛍光タンパク質;TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBananaなどの黄色蛍光タンパク質;KusabiraOrange (例えば、hmKO2)、mOrangeなどの橙色蛍光タンパク質;TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberryなどの赤色蛍光タンパク質;TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed(例えば、hdKeimaRed)、mRasberry、mPlumなどの近赤外蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、発光タンパク質としては、イクオリンを例示することができるが、これに限定されない。また、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質として、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、βラクタマーゼなどの蛍光、発光又は呈色前駆物質を分解する酵素を例示することができるが、これらに限定されない。
本発明において、薬剤耐性遺伝子によってコードされるタンパク質は、対応する薬剤に対して抵抗性を有するタンパク質であれば何でもよい。本発明における薬剤耐性遺伝子は、例えば、抗生物質耐性遺伝子を含むが、これらに限定されない。抗生物質耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明において、マーカー遺伝子を検出する場合、例えば、上記のマーカー遺伝子の上流にMyf5遺伝子のプロモーター領域の配列を連結したベクターを細胞内に導入することにより行われ得る。この場合、Myf5を発現している細胞は、マーカー遺伝子を発現している細胞と同一視できるため、マーカー遺伝子が陽性であるか否かにより、Myf5を発現している細胞を単離することができる。
本発明において、細胞の単離は、特に限定されないが、例えば、フローサイトメトリー法によって行うことができる。フローサイトメトリー法は、非常に細い流液中に細胞粒子を高速度で流し、レーザー光を照射して、粒子が発生する蛍光(細胞が予め蛍光標識された場合)、散乱光などの光を測定するものであり、セルソーターを備えると、目的の細胞を単離することができる。
工程(5)単離された細胞を再培養する工程
本工程(5)は、前記工程(4)で単離された骨格筋前駆細胞を培養液中で再培養する工程である。本工程(5)において用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができ、例えば、前記工程(3)と同様の培地が用いられるが、これに限定されない。
本工程(5)において、培養期間は、骨格筋前駆細胞を移植した際に、移植先における生着率が高まる期間であればいくらでもよいが、6時間以上60時間以下が例示され、例えば、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間などであり得て、好ましくは、24時間である。
<多能性幹細胞からの骨格筋前駆細胞分化誘導用試薬キット>
本発明の一つの態様において、多能性幹細胞からの骨格筋前駆細胞の分化誘導用試薬キットを提供する。本キットには、上記した骨格筋前駆細胞の誘導のための特定の因子を含む骨格筋前駆細胞誘導剤(例えば、凍結乾燥物、適当な緩衝液に溶解した凍結液剤など)、細胞、試薬および培養液を含み得る。本キットには、さらに分化誘導の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。
<多能性幹細胞由来の骨格筋前駆細胞の使用>
本発明の方法により製造された多能性幹細胞由来の骨格筋前駆細胞は、種々の目的で使用することができる。例えば、対象、またはHLAの型が同一もしくは実質的に同一である他人から採取した体細胞を用いて誘導したiPS細胞から分化させた骨格筋前駆細胞を該患者に移植する、自家もしくは同種異系移植による幹細胞療法が可能となる。本発明における対象となる疾患は、筋原性疾患(ミオパチー)が例示される。筋原性疾患は、例えば、筋ジストロフィー(例、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー等)、先天性ミオパチー、遠位型ミオパチー、ミトコンドリアミオパチーなどの遺伝性ミオパチー、多発性筋炎、皮膚筋炎、重症筋無力症などの非遺伝性ミオパチー筋ジストロフィー、糖原病、周期性四肢麻痺、が例示される。より好ましい対象は、筋ジストロフィーである。
本発明の他の態様として、対象由来のiPS細胞から分化させた骨格筋前駆細胞は、対象の体内での筋細胞の状態をより反映していると考えられるので、筋疾患治療薬の薬効や毒性のin vitro評価系にも好適に用いることができる。さらに原因が未解明の筋疾患の病理学的研究のツールとしても好ましく用いられ得る。
筋原性疾患治療剤
本発明は、前記方法により多能性幹細胞から製造される骨格筋前駆細胞を含む筋原生疾患治療剤を提供する。後記実施例に示されるように、本発明の骨格筋前駆細胞をCardiotoxin(CTx)処理することで筋障害を起こしたNSGマウスに移植したところ、移植した骨格筋前駆細胞の生着が認められた。したがって、本発明で提供される骨格筋前駆細胞は、筋原生疾患を治療するのに有用である。
筋ジストロフィーをはじめとする遺伝性筋疾患の治療用の骨格筋前駆細胞としては、患者とHLAの型が同一もしくは実質的に同一である他人から誘導された多能性幹細胞から分化誘導した骨格筋前駆細胞が好ましく使用される。ヒトの再生医療においては、HLAの型が同一もしくは実質的に同一なヒトES細胞を入手することは容易でないため、骨格筋前駆細胞を誘導するための多能性幹細胞としては、ヒトiPS細胞を用いることが好ましい。
別の一実施態様においては、遺伝性筋疾患治療用の骨格筋前駆細胞として、患者本人の体細胞由来のiPS細胞から分化させた骨格筋前駆細胞を用いることも可能である。例えば、DMD患者の体細胞から誘導したiPS細胞は、ジストロフィン遺伝子が欠損しているので、iPS細胞に正常なジストロフィン遺伝子を導入する。ジストロフィンcDNAは全長14kbで、筋細胞への遺伝子導入に最適なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは約4.5kbの収容力しかないので、現在の遺伝子治療戦略としては、短縮化した機能的なジストロフィン遺伝子(マイクロジストロフィン遺伝子(3.7kb))をAAVベクターで導入するか、あるいはより大きなDNAを挿入できるレトロウイルス/レンチウイルスベクターを用いて6.4kbのミニジストロフィン遺伝子を導入する、または全長ジストロフィン遺伝子を裸でもしくはGuttedアデノウイルスベクターを用いて導入する方法が試みられている。iPS細胞の場合、レトロウイルス/レンチウイルスで最も高い導入効率が得られる他、人工染色体による全長cDNAの導入も可能であるため、遺伝子治療の選択肢が拡がるという利点がある。また肢帯型筋ジストロフィーの場合、サルコグリカン遺伝子異常が原因のため、該遺伝子をiPS細胞に導入すればよい。あるいは、iPS細胞の内因性DNA修復機構や相同組換えを利用して、原因遺伝子の変異部位を修復することもできる。即ち、変異部位を正常にした配列を有するキメラRNA/DNAオリゴヌクレオチド(chimeraplast)を導入し、標的配列に結合させてミスマッチを形成させ、内因性DNA修復機構を活性化して遺伝子修復を誘導する。あるいは、変異部位に相同な400-800塩基の一本鎖DNAを導入して相同組換えを起こさせることにより遺伝子修復を行なうこともできる。このようにして得られる、疾患原因遺伝子が修復されたiPS細胞を、上記工程を経て骨格筋前駆細胞に分化誘導することにより、患者本人由来の正常な骨格筋前駆細胞を製造することができる。
遺伝性筋疾患患者は、生来、正常な遺伝子産物を有していないことから、患者本人の骨格筋前駆細胞であっても、正常遺伝子産物(例えば、ジストロフィン)に対する免疫応答が起きる可能性があるので、いずれにせよ、骨格筋前駆細胞の移植に際しては、免疫抑制剤を併用することが好ましい。あるいは、この免疫応答を回避する目的で、DMDの場合、患者骨格筋でも発現しているジストロフィンホモログであるユートロフィン遺伝子を導入してジストロフィン機能を代替させても良い。
本発明の方法により製造される骨格筋前駆細胞は、細胞の形態で製剤化することもできるし、そのまま選別なしで製剤化することもできる。
本発明において、移植するための望ましい骨格筋前駆細胞は、本発明の製造工程(1)から(5)を経て製造された細胞である。本発明の製造工程において、工程(5)を経ることにより、移植した細胞の移植先における生着率が高まり得る。工程(5)における培養期間は、好ましくは、24時間であるが、これに限られることなく、移植先における細胞の生着率が高まる期間であればいくらでもよい。
本発明の骨格筋前駆細胞(骨格筋前駆細胞含有細胞集団を含む。以下同様。)は、常套手段にしたがって医薬上許容される担体と混合するなどして注射剤、懸濁剤、点滴剤等の非経口製剤として製造される。当該非経口製剤に含まれ得る医薬上許容される担体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などの注射用の水性液を挙げることができる。本発明の剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩酸リドカイン、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、など)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウムなど)などと配合しても良い。
本発明の剤を水性懸濁液剤として製剤化する場合、上記水性液に約1.0×105-約1.0×107細胞/mLとなるように、骨格筋前駆細胞を懸濁させればよい。このようにして得られる製剤は、安定で低毒性であるので、ヒトなどの哺乳動物に対して安全に投与することができる。投与方法は特に限定されないが、好ましくは注射もしくは点滴投与であり、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与(患部局所投与)などが挙げられる。本発明の剤の投与量は、投与対象、治療標的部位、症状、投与方法などにより差異はあるが、通常、DMD患者(体重60kgとして)においては、例えば、静脈内注射の場合、1回につき骨格筋前駆細胞量として約1.0×105-約1×107細胞を、約1-約2週間隔で、約4-約8回投与するのが好都合である。
筋原性疾患治療剤または予防剤のスクリーニング方法
本発明は、筋原性疾患の治療または予防に有用な薬剤である候補薬剤のスクリーニング方法を提供する。
本発明において、筋原性疾患の治療または予防剤のスクリーニング方法として、以下の工程を含み得る:
(1)候補物質を、筋原性疾患患者由来のiPS細胞から分化誘導した骨格筋前駆細胞と接触させる工程、
(2)候補物質と接触させなかった場合と比較して、当該骨格筋前駆細胞の病態が緩和された場合、筋原性疾患の治療剤または予防剤として選別する工程。
筋原性疾患が筋ジストロフィーである場合、骨格筋前駆細胞の病態は、当該骨格筋前駆細胞におけるジストロフィンタンパク質の欠損もしくは変異、または炎症マーカーの陽性として観察することができる。ここで、炎症マーカーとしては、プロスタグランジンD2またはNFkBの活性が例示される。病態の緩和は、例えば、ジストロフィンタンパク質もしくはエクソン・スキッピングによる短ジストロフィンタンパク質の発現または炎症マーカーの低下で確認することができる。
本発明において、候補物質は、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物発酵産物、海洋生物由来の抽出物、植物抽出物、精製タンパク質または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物、および天然化合物が例示される。
本発明において、候補物質はまた、(1)生物学的ライブラリー、(2)デコンヴォルーションを用いる合成ライブラリー法、(3)「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法、および(4)アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する合成ライブラリー法を含む当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを使用して得ることができる。アフィニティクロマトグラフィー選別を使用する生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子化合物ライブラリーに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12: 145-67)。分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野において見出され得る(DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-13; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-6; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2678-85; Cho et al. (1993) Science 261: 1303-5; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 1233-51)。化合物ライブラリーは、溶液(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412-21を参照のこと)またはビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82-4)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-6)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、同第5,403,484号、および同第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-9)若しくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249: 386-90; Devlin (1990) Science 249: 404-6; Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-82; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-10; 米国特許出願第2002103360号)として作製され得る。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
多能性幹細胞
ヒトiPS細胞(201B7)は、京都大学の山中教授より供与されたものを、従来の方法で培養した(Takahashi K, et al. Cell. 131:861-72, 2007)。
201B7を常法に従って相同組換えによりPax3遺伝子座の開始コドンの3’側へEGFP配列を連結させ、Pax3の発現と連携してEGFPを発現するiPS細胞株(Pax3-GFP iPSCs)を作製した。
分化誘導前準備
骨格筋前駆細胞への分化誘導前に、ヒトiPS細胞(Pax3-GFP iPSCsまたはMyf5-tdTomato C3 iPSCs)を、MatriGelでコーティングした培養容器上で低密度培養を行った。簡潔には、6cmディッシュ1枚分のヒトiPS細胞を、通常の継代と同様の方法で処理した。CTK溶液でMSNLフィーダーから解離させ、PBSで2回洗浄した後、1mL 0.25%Trypsin/1mM EDTAを添加して、37℃で5分間インキュベートした。続いて、5mlの培地を加えて、15回程ピペッティングし、15mlチューブに細胞を回収した。900rpmで5分間遠心分離した後、上清を除去し、10μM Y-27632を添加した2ml mTeSR1で再懸濁した。その後、細胞数をカウントした。別途、ヒトiPS細胞維持培地(bFGF不添加)でMatriGelを50倍(2時間静置の場合)または100倍(一昼夜静置の場合)に希釈し、培養容器へ添加し、静置させMatriGelコーティングを行った。培養容器から余剰のMatriGelを吸引除去し、10μM Y-27632を添加したmTeSR1を2ml/wellずつ加えた。シングルセルのヒトPax3-GFP iPSCを、MatriGel でコーティングした6cmディッシュ 1枚あたり3x104個、MatriGel でコーティングした6wellプレート1wellあたり1×104個ずつ播種した。各培養容器をよく揺らして、細胞が均一に拡散するように混和し、37℃でインキュベートした。 2日目(Day-2)に培地をmTeSR1で交換し、引き続き4日目(Day0)まで培養を行った。
骨格筋前駆細胞への分化誘導
上記で得られたiPS細胞を次の通り、骨格筋前駆細胞の分化誘導を行った。
<工程(1)(Day0〜20)>
培地を、10μM SB431542および10μM CHIR99021を添加したCDMi基本培地(1% Albumin from bovine serum (SIGMA)、1% Penicillin-Streptomycin Mixed Solution (ナカライテスク)、1% CD Lipid Concentrate (Invitrogen)、1% Insulin-Transferrin-Selenium (Invitrogen)、450μM 1-Thioglycerol (SIGMA)を添加したIMDM(1X) Iscove’s Medified Dullbecco’s Medium (+)L-Glutamine (+)25mM HEPES (Invitorogen)とF-12(1X)Nutrient Mixture(Ham) (+)L-Glutamine (Invitrogen)を1:1で混合した培地)に2ml/ wellで交換した。その後、2日目(Day2)および5日目(Day5)に培地交換を行った。
7日目(Day7)に次の方法で継代を行った。培地を吸引し、PBSで2回洗浄した後、500μL 0.25%Trypsin/1mM EDTAを添加して、37℃で5分間インキュベートした。続いて、2.5mlのCDMi基本培地を加えて、ピペッティングし、細胞をシングルセルに解離した。900rpm、4℃で5分間遠心分離した後、上清を除去し、CDMi基本培地で再懸濁した。その後、細胞数をカウントした。MatriGelでコーティングした培養容器へ、10μM SB431542、5μM CHIR99021および10μM Y-27632を添加したCDMi基本培地を加え、上記細胞を、6cmディッシュ 1枚あたり1x106個または6wellプレート1wellあたり4×105個を播種した。8日目(Day8)、10日目(Day10)およびDay12に10μM SB431542および5μM CHIR99021を添加したCDMi基本培地で培地交換を行った。
14日目(Day14)にDay7と同様の方法で継代を行った。ただし、播種される細胞の数は、10cmディッシュの場合1枚あたり6×105個、6cmディッシュの場合1枚あたり2×105個、6wellプレートの場合1wellあたり1×105個、または24wellプレートの場合1wellあたり3×104個であった。
15日目(Day15)、17日目(Day17)および19日目(Day19)に、10μM SB431542および5μM CHIR99021を添加したCDMi基本培地で培地交換を行った。
<工程(2B)(i)(Day21〜24)>
工程(1)で得られた細胞の培地を、0.2% BSA、200μM 2-ME(2-Mercaptoethanol)、5mM LiCl(Nacarai)、10μM SB431542、10ng/ml IGF-1(Peprotech)、10ng/ml HGF(Peprotech)および10ng/ml bFGF(オリエンタル酵母)を添加したSF-O3(三光純薬)に交換し、培養を継続した。
<工程(2B)(ii)(Day25〜27)>
工程(2B)(i)で得られた細胞の培地を、0.2% BSA、200μM 2-ME、5mM LiCl、10μM SB431542および10ng/ml IGF-1を添加したSF-O3に交換し、3日間培養した。
<工程(2B)(iii)(Day28〜41)>
工程(2B)(ii)で得られた細胞の培地を、0.2% BSA、200μM 2-ME、10μM SB431542、10ng/ml IGF-1および10ng/ml HGFを添加したSF-O3に交換し、2週間培養した。このとき、新鮮な同培地にて、週2回、培地交換を行った。
<工程(3)(Day42〜)>
この段階でMYH3陽性の胎児期の細い筋管細胞が散見されるようになった。そこで、さらなる成熟化を促すために、工程(2B)(iii)で得られた細胞の培地を、2% Horse Serum(HS)、5μM SB431542および10ng/ml IGF-1を添加したDMEM基本培地に交換した。以後、適宜観察を続け、少なくともDay80程度まで培養を行った。なお、培養中は、週2回培地交換を行った。
分化誘導7日目における分化状態
Day7における骨格筋前駆細胞への分化誘導状態を調べるために、FACS解析およびマーカー遺伝子発現量の比較を行った。簡潔には、FACS解析については、上記工程(1)のDay7の細胞を回収し、CD271(NGFR)およびPax3-GFPを指標として、CD271陰性Pax-GFP陽性細胞に着目した。マーカー遺伝子発現量の測定については、RT-PCRにより、Pax3、T、Tbx6、Mesp2、PDGFRa、KDR、CD56、Sox10、NGFR、Pax7およびMyf5の各遺伝子の発現量を測定することにより行った。
その結果、Pax3-GFP陽性CD271陰性の細胞群において、Paraxial mesoderm-somite期の細胞のマーカー遺伝子(T、Tbx6およびMesp2)の発現量が上昇していることが見出された(図1)。このとき低用量の1μM CHIR99021を用いて分化誘導を行った場合は、CD271陽性の細胞が多くを占めることから、5μM以上のCHIR99021を用いることで、Paraxial mesoderm-somite期の細胞が効率よく誘導されることが示唆された。
分化誘導7日目における継代の効果
Day7における継代の効果を調べるために、FACS解析を行った。簡潔には、上記工程(1)において示されたとおり、Day7で継代を行い、その後Day14まで培養を行った細胞を回収し、Pax3-GFPを指標として、FACSにより細胞を選別することにより行った。
その結果、Day7における継代により、Pax3-GFP陽性細胞の比率は、75%まで上昇することが見出された(図2)。継代を行わなかった場合と比較して、効率よくPax3-GFP陽性細胞が誘導されることが示唆された。
分化誘導14日目におけるCHiR99021並びにSB431542の効果 Day14におけるCHIR99021並びにSB431542の効果を調べるために、FACS解析を行った。簡潔には工程(1)において、CHIR99021及びSB431542を幾つかの添加量にて条件を振った培地にて、Day14まで培養を行った細胞を回収し、Pax3-GFPを指標として、FACSにより細胞を選別することにより行った。結果を図15に示す。図中、グラフ上のCH及びSBはCHIR99021及びSB431542をそれぞれ示し、右側の数字はその濃度(μM)を示す。
その結果、10μMのCHIR99021及び5μMのSB431542にてPax3-GFP陽性細胞の比率が95%まで上昇することが見出された。
Paraxial mesoderm誘導過程における遺伝子発現状態
分化誘導14日目までの継時的なマーカー遺伝子の発現状態を調べるために、RT-PCRによる解析を行った。簡潔には、Tbx6、Wnt3a、Mesp2、PDGFRa、Pax3、Meox1の各遺伝子について、RT-PCRにより発現状態を調べた。
その結果、分化誘導7日目までは、沿軸中胚葉マーカーの発現が上昇し、それ以降は、Somiteマーカーの発現が上昇することが見出された(図3)。
分化誘導35日目における細胞観察
Day35まで培養を行った細胞について、MHCおよびMyogeninの抗体染色、ならびにGFP(Pax3-GFP)の蛍光染色により分化状態を調べたところ、Pax3-GFP陽性の胎児期筋管細胞分化が誘導されることが見出された(図4)。効率よく胎児期筋管細胞が誘導されることが示唆された。
分化誘導42日目までの誘導過程における遺伝子発現状態
分化誘導42日目までの継時的なマーカー遺伝子の発現状態を調べるために、RT-PCRによる解析を行った。簡潔には、Myf5およびMyoDの各遺伝子について、RT-PCRにより発現状態を調べた。
その結果、分化誘導42日目には、骨格筋分化制御因子の発現が上昇することが見出された(図5)。
筋幹細胞の成熟化
Day42以降の筋幹細胞の成熟化を確認するために、抗体染色および蛍光染色による観察を行った。簡潔には、57日目および60日目まで培養を行った細胞について、Embryonic MHCおよびMyogeninの抗体染色、ならびにGFP(Pax3-GFP)の蛍光染色により分化状態を調べた。
その結果、Pax3-GFP陰性の成熟筋幹細胞が出現することが見出された(図6A)。また、Embryonic MHCまたはMyogenin陽性の筋管細胞が確認された(図6B)。これにより、42日目以降の既存の分化誘導により、効率よく成熟筋幹細胞が誘導できることが示唆された。
長期培養の効果
84日目(Day84)における細胞群(Pax3-GFP陽性細胞および陰性細胞)について、筋管分化能を調べるため、抗体染色を行った。簡潔には、Day84においてPax3-GFPを指標としてFACSによりソーティング後、7日間同条件で培養をした各細胞群に対して、MHCおよびMyogeninの抗体染色を行った。
その結果、分化誘導84日目のPax3-GFP陰性細胞において、MHCおよびMyogeninの強く染色される細胞が含まれていることが確認された(図7)。このことから、分化誘導84日目には、Pax3-GFP陰性であるin vitroで筋管分化された細胞が存在することが示唆された。
さらに、Day84における細胞群にサテライト細胞が存在するかについて検討するために、抗体染色を行った。簡潔には、Day84における細胞群に対して、Pax7およびMyf5の抗体染色を行った。
その結果、分化誘導84日目の細胞群には、Pax7陽性Myf5陰性というサテライト細胞と同様のマーカー遺伝子を発現する細胞が存在することが見出された(図8)。
移植実験(1)
分化誘導Day51の骨格筋前駆細胞のマウスへの移植における効果を調べた。簡潔には、上記工程(3)のday51の細胞群を、CTx処理後1日のNSGマウスの前脛骨筋に筋注で移植した。移植の4週間後に、移植部位周辺を摘出し、常法に従って切片を作製し、ヒト核、Spectrin、eMYHおよびラミニンの抗体染色を行い、移植細胞の生着および筋再生についての評価を行った。
その結果、分化誘導51日目の細胞群を移植した場合には移植細胞の生着および筋繊維の形成が確認された(図9)ことから、分化誘導51日目の細胞群には、胎児期の筋繊維を形成する能力を有する細胞が存在することが示唆された。
移植実験(2)
分化誘導Day84の骨格筋前駆細胞のマウスへの移植における効果を調べた。簡潔には、上記工程(3)のday84の細胞群について、FACSによりPax3-GFP陽性細胞を選別した。続いて、2.6×105個のPax3-GFP陽性細胞を、CTx処理後1日のNSGマウスの前脛骨筋に筋注で移植した。移植の4週間後に、ヒト核、エオシンおよびラミニンの抗体染色を行い、移植細胞の生着および筋再生についての評価を行った。
その結果、分化誘導84日目のPax3-GFP陽性細胞を移植した場合には宿主の筋繊維との融合が確認された(図10)ことから、分化誘導84日目のPax3-GFP陽性細胞群には、筋再生に寄与する細胞が存在することが示唆された。
多能性幹細胞
201B7を常法に従って相同組換えにより、Myf5遺伝子座の開始コドンの5’側へtdTomato配列を連結させ、Myf5の発現と連携してtdTomatoを発現するiPS細胞株(Myf5-tdTomato C3 iPSCs)を作製した。
骨格筋前駆細胞への分化誘導
上記で得られたiPS細胞を実施例1の通り、分化誘導前準備を行い、次の通り、骨格筋前駆細胞の分化誘導を行った。
<工程(1’)(Day0〜17)>
実施例1の工程(1)と同様の条件にて、18日間培養を行った。なお、7日目(Day7)および14日目(Day14)に上記と同様の方法で継代を行った。
<工程(2B)(i)(Day18〜21)>
工程(1’)で得られた細胞を、実施例1の工程(2B)(i)と同様の条件にて、4日間培養を行った。
<工程(2B’)(ii)(Day22〜24)>
工程(2B)(i)で得られた細胞を、実施例1の工程(2B)(ii)と同様の条件にて、3日間培養を行った。
<工程(2B’)(iii)(Day25〜39)>
工程(2B’)(ii)で得られた細胞を、実施例1の工程(2B)(iii)と同様の条件にて、14日間培養を行った。
<工程(3’)(Day40〜)>
工程(2B’)(iii)で得られた細胞を、実施例1の工程(3)と同様の条件にて、培養を継続し、適宜経過後に得られた細胞を用いた。
分化誘導過程における遺伝子発現状態
Myf5-tdTomato C3 iPSCsを用いて、実施例1に記載した方法にて、筋前駆細胞へと分化誘導した。このときの細胞群(Myf5-tdTomato陽性細胞および陰性細胞)について、Day34からDay85までの継時的なマーカー遺伝子の発現状態を調べるために、RT-PCRによる解析を行った。簡潔には、上記工程(3’)のDay84の細胞群について、FACSによりMyf5-tdTomato陽性または陰性の細胞を選別し、Myf5、MyoD、Pax3、およびPax7の各遺伝子について、それぞれRT-PCRにより発現状態を調べた。
その結果、Myf5のみならずPax7の発現が高い細胞が、Myf5-tdTomato陽性細胞群に含まれていることが見出された(図11)。すなわち、サテライト細胞である可能性が高い細胞群が含まれていることが示唆された。
Myf5陽性細胞の評価
44日目(Day44)における細胞群(Myf5-tdTomato陽性細胞および陰性細胞)について、筋管分化能を調べるため、抗体染色を行った。簡潔には、Day44においてMyf5-tdTomatoを指標としてFACSによりソーティング後、1日、7日または14日間、工程(3’)の条件で培養をした各細胞群に対して、MHCおよびMyogeninの抗体染色を行った。
その結果、分化誘導44日目のMyf5-tdTomato陽性細胞において、MHCおよびMyogeninで強く染色される細胞に変化する細胞が多く含まれていることが確認された(図12)。このことから、Myf5-tdTomato陽性細胞に筋細胞分化できる細胞が含まれることが示唆された。
移植実験(1’)
本実施例の分化誘導方法により誘導された骨格筋前駆細胞(day71のMyf5陽性細胞)について、移植における効果を調べるために、移植実験を行った。簡潔には、上記工程(3’)のday71の細胞群について、FACSによりMyf5-tdTomato陽性細胞を選別した。選別直後の7.5×105個のMyf5-tdTomato陽性細胞、または選別直後の6.1×105個のMyf5-tdTomato陰性細胞を、CTx処理後1日のNSGマウスの前脛骨筋に筋注で移植した。移植の4週間後に、ヒトspectrinの抗体染色を行い、筋再生についての評価を行った。
その結果、分化誘導71日目のMyf5陽性細胞を移植した場合には筋再生が確認された(図13)ことから、分化誘導71日目のMyf5陽性細胞には、筋再生に寄与する細胞集団が存在することが示唆された。
移植実験(2’)
本実施例の分化誘導方法により誘導された骨格筋前駆細胞(day78のMyf5陽性細胞)について、移植における効果を調べるために、移植実験を行った。簡潔には、上記工程(3’)のday78の細胞群について、FACSによりMyf5陽性細胞を選別した。続いて、5×105個のMyf5陽性細胞を24時間再培養した後、CTx処理後1日のNSGマウスの前脛骨筋に筋注で移植した。移植の4週間後に、ヒトspectrinの抗体染色を行い、筋再生についての評価を行った。
その結果、分化誘導78日目のMyf5陽性細胞を24時間再培養した後移植した場合には筋再生が確認された(図14)。
多能性幹細胞
201B7を常法に従って相同組換えにより、Myf5遺伝子座の開始コドンの5’側へtdTomato配列を連結させ、Myf5の発現と連携してtdTomatoを発現するiPS細胞株(Myf5-tdTomato C3 iPSCsおよびMyf5-tdTomato E16 iPSCs)を作製した。
骨格筋前駆細胞への分化誘導
上記で得られたiPS細胞を実施例1の通り、分化誘導前準備を行い、次の通り、骨格筋前駆細胞の分化誘導を行った。
<工程(1”)(Day0〜17)>
実施例1の工程(1)と同様の条件にて、18日間培養を行った。なお、7日目(Day7)および14日目(Day14)に上記と同様の方法で継代を行った。
<工程(2A)(Day18〜39)>
工程(1”)で得られた細胞の培地を、0.2% BSA、200μM 2-ME(2-Mercaptoethanol)を添加したSF-O3(三光純薬)に、10μM SB431542および/または10ng/ml IGF-1(Peprotech)および/または10ng/ml HGF(Peprotech)および/または10ng/ml bFGF(オリエンタル酵母)を添加した培地、あるいはいずれも非添加の培地に交換し、21日間培養を行った。
<工程(3”)(Day40〜)>
工程(2A)で得られた細胞を、実施例1の工程(3)と同様の条件にて、培養を継続し、適宜経過後に得られた細胞を用いた。
分化誘導過程における遺伝子発現状態
Myf5-tdTomato C3 iPSCsおよびMyf5-tdTomato E16 iPSCsを用いて、上記工程(1”)、(2A)および(3”)の方法にて、筋前駆細胞へと分化誘導した。このときの細胞群(Myf5-tdTomato陽性細胞および陰性細胞)について、Myf5-tdTomato陽性細胞群の割合を評価した。その結果、工程2AにおいてMyf5-tdTomato陽性細胞が存在すること、及びHGFを添加し、かつTGFβ阻害剤およびbFGFを添加していない培地、特にHGFおよびIGF1のみを添加した培地での培養後に、Myf5-tdTomato陽性細胞が多く含まれていることが見出された(図16)。
移植実験(1”)
本実施例の分化誘導方法により誘導された骨格筋前駆細胞(day35のMyf5陽性細胞)について、移植における効果を調べるために、移植実験を行った。簡潔には、上記工程(2A)のday35の細胞群について、FACSによりMyf5-tdTomato陽性細胞を選別した。選別直後の3.7×105個のMyf5-tdTomato陽性細胞、または選別直後の3.7×106個のMyf5-tdTomato陰性細胞を、CTx処理後1日のNSGマウスの前脛骨筋に筋注で移植した。移植の4週間後に、ヒトSpectrinの抗体染色を行い、筋再生についての評価を行った。
その結果、分化誘導35日目のMyf5陽性細胞を移植した場合には筋再生が確認された(図17)ことから、分化誘導35日目のMyf5陽性細胞には、筋再生に寄与する細胞集団が存在することが示唆された。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本出願は、2014年12月29日付で日本国に出願された特願2014-267085を基礎としており、ここで言及することによりその内容は全て本明細書に包含される。
本発明の方法により、効率的な多能性幹細胞から骨格筋前駆細への分化誘導方法を提供することができる。また、本発明の方法により得られた骨格筋前駆細は、生体への高い生着率を示すため、移植治療において極めて有用である。

Claims (16)

  1. 多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞を製造する方法であって、下記の工程(1)と(2A)または(2B)とを含む方法。
    (1)多能性幹細胞をTGF-β阻害剤とGSK3β阻害剤を含む培養液中で培養する工程
    (2A)(1)の工程で得られた細胞を、HGFを含み、さらにIGF1を含んでもよい培養液中で培養する工程
    (2B)(1)の工程で得られた細胞を、
    (i) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤、IGF1、HGFおよびbFGFを含む培養液中、
    (ii) TGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤およびIGF1を含む培養液中、および
    (iii) TGF-β阻害剤、IGF1およびHGFを含む培養液中
    で順次培養する工程
  2. さらに下記の工程(3)を含む、請求項1に記載の方法。
    (3)(2A)または(2B)の工程で得られた細胞を、TGF-β阻害剤、IGF1および血清を含む培養液中で培養する工程
  3. 前記工程(1)、(2B)および(3)のTGF-β阻害剤がSB431542である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記工程(1)のGSK3β阻害剤がCHIR99021であり、当該CHIR99021の培地中での濃度が5μM以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記工程(2B)のGSK3β阻害剤がLiClである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記工程(3)の血清がウマ血清である、請求項2から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. さらに下記の工程(4)を含む、請求項2から6のいずれか1項に記載の方法。
    (4)(3)の工程で得られた細胞からMyf5を発現する細胞を単離する工程
  8. さらに下記の工程(5)を含む、請求項7に記載の方法。
    (5)(4)の工程で得られた細胞を少なくとも24時間培養する工程
  9. 前記工程(5)が、SB431542、IGF1およびウマ血清を含む培養液中で培養する工程である、請求項8に記載の方法。
  10. 多能性幹細胞がヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
  11. SB431542、CHIR99021、IGF1、HGFおよびウマ血清を含有することを特徴とし、任意でLiClおよびbFGFをさらに含んでもよい、多能性幹細胞から骨格筋前駆細胞への分化誘導用試薬キット。
  12. 多能性幹細胞がヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、請求項11に記載のキット。
  13. 請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞を含む筋原性疾患治療剤。
  14. 前記筋原性疾患が筋ジストロフィーである、請求項13に記載の剤。
  15. 有効量の、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞を、対象に投与することを含む、筋原性疾患の治療方法。
  16. 筋原性疾患の治療に使用するための、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により製造された骨格筋前駆細胞。
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