JPWO2016098885A1 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

耐加水分解性及び耐衝撃性に優れたポリカーボネート/ABS系の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。ポリカーボネート(A)と、ゴム状重合体に少なくともスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフト共重合し、金属元素を含有するグラフト共重合体(B)と、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)と、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)とからなり、(D)の含有量が2〜25質量%である熱可塑性樹脂組成物。

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関するものである。
ポリカーボネートとABS樹脂とからなる樹脂組成物(以下、「PC/ABS系樹脂」と称する)は、耐衝撃性、耐熱性及び成形加工性に優れることから、自動車用部品、家電製品、事務機器部品をはじめとする多様な用途に使用されている。ポリカーボネートは加水分解しやすく、ABS樹脂中に不純物として存在する有機塩や無機塩によってポリカーボネートが加水分解され、PC/ABS系樹脂の衝撃強度等の物性が低下することがある。PC/ABS系樹脂の加水分解を改良する技術としては下記があり、有機塩や無機塩を低減或いは含まないABS系樹脂を使用する。
特開平6−263962号公報 特開2001−226576号公報 特表2008−525582号公報
本発明は、新規なPC/ABS系の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)ポリカーボネート(A)と、ゴム状重合体に少なくともスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフト共重合し、金属元素を含有するグラフト共重合体(B)と、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)と、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)とからなり、(A)〜(D)の合計量を100質量%としたとき、(A)の含有量が40〜93質量%、(B)の含有量が5〜30質量%、(C)の含有量が0〜40質量%、(D)の含有量が2〜25質量%である熱可塑性樹脂組成物。(2)不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位が0.5〜30質量%である(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。(3)(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐加水分解性及び耐衝撃性の要求される自動車用部品、家電製品、事務機器部品等に有用である。
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A〜B」なる記載は、A以上でありB以下であること
を意味する。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物とは、ポリカーボネート(A)と、ゴム状重合体に、少なくともスチレン系単量体、アクリロニトリル系単量体をグラフト共重合し、金属元素を含有するグラフト共重合体(B)と、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)と、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)とからなる組成物である。(A)〜(D)の合計量を100質量%としたとき、(A)の含有量は40〜93質量%、(B)の含有量は5〜30質量%、(C)の含有量は0〜40質量%、(D)の含有量は2〜25質量%であり、好ましくは、(A)の含有量は45〜80質量%、(B)の含有量は10〜20質量%、(C)の含有量は5〜30質量%、(D)の含有量は4〜20質量%である。特に(D)の含有量は、5.0〜15質量%、7.0〜13質量%であることが更に好ましい。(D)の含有量が少ないと、耐加水分解性が不足することがある。(D)の含有量が多すぎると、耐衝撃性が低下することがある。
ポリカーボネート(A)とは、一般式 −〔−O−R−O−C(=O)−〕− で表される炭酸エステル結合を有する重合体である。Rは一般的に炭化水素であり、原料となる2価ヒドロキシ化合物の種類により、例えば、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂環族ポリカーボネートがある。また、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位からなる共重合体でもよい。2価ヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを原料とするポリカーボネートは広く工業的に生産されており、好適に用いることができる。
ポリカーボネート(A)の製造方法としては、公知の手法が採用できる。例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを高温で溶融し、減圧下で生成するフェノールを除去しながらエステル交換反応させるエステル交換法(溶融法、溶融重合法とも呼ばれる)、塩化メチレンの存在下ビスフェノールAのカセイソーダ水溶液あるいは懸濁水溶液にホスゲンを作用させて合成するホスゲン法(界面重合法とも呼ばれる)、ビスフェノールAにピリジン、塩化メチレン存在下ホスゲンを反応させて合成するピリジン法などが挙げられる。
ポリカーボネート(A)の重量平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。ポリカーボネート(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値である。
グラフト共重合体(B)とは、ゴム状重合体に、少なくともスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフト共重合させたグラフト共重合体であり、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)がある。
グラフト共重合体(B)中のゴム状重合体とは、ガラス転移温度が0℃以下でゴム状弾性を示す重合体であり、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体等の共役ジエン系ゴム、及びこれらの水素添加物、アクリル酸ブチルやアクリル酸エチル等からなるアクリル系ゴム、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
グラフト共重合体(B)中のゴム状重合体の含有量は、耐衝撃性の観点から、40〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜65質量%である。ゴム状重合体の含有量は、例えば、乳化グラフト重合する際、ゴム状重合体に対するスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体の使用比率によって調整することができる。
スチレン系単量体とは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等である。これらの中でもスチレンが好ましい。スチレン系単量体は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
アクリロニトリル系単量体とは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等である。これらの中でもアクリロニトリルが好ましい。アクリロニトリル系単量体は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
その他のグラフト共重合可能な単量体として、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ブチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、アクリル酸等のアクリル酸系単量体、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体を用いることができる。
グラフト共重合体(B)のゴム状重合体を除いた構成単位は、PC/ABS系樹脂の耐衝撃性の観点から、スチレン系単量体単位70〜85質量%、アクリロニトリル系単量体単位15〜30質量%であることが好ましい。
グラフト共重合体(B)の製造法としては、公知の手法が採用できる。例えば、乳化重合法によって製造されたゴム状重合体のラテックスに、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体を乳化グラフト共重合させる方法がある(以下、「乳化グラフト重合法」と称する)。乳化グラフト重合法により、グラフト共重合体(B)のラテックスを得ることができる。乳化グラフト重合法では、ゴム状重合体にグラフトしていないスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体からなる共重合体が副生成し、グラフト共重合体中に含有することがある。グラフト共重合体(B)の製造法は、ゴム状重合体の含有率を高めることが可能であり、PC/ABS系樹脂の耐衝撃性の改善効果が高いことから、乳化グラフト重合法であることが好ましい。
乳化重合法及び乳化グラフト重合法では、水、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤を用い、重合温度は30〜90℃の範囲であることが好ましい。乳化剤は、例えば、アニオン系界面活性剤、オニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等がある。アニオン系界面活性剤として、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルフォン酸塩等があり、これらはいずれも有機塩である。重合開始剤は、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルエンゼンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスブチロニトリル等のアゾ系化合物、鉄イオン等の還元剤、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の二次還元剤及びエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム等のキレート剤等がある。連鎖移動剤は、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。
グラフト共重合体(B)のラテックスは、公知の方法により凝固し、グラフト共重合体(B)を回収することができる。例えば、グラフト共重合体(B)のラテックスに凝固剤を加えて凝固し、脱水機で洗浄脱水し、乾燥工程を経ることで粉末状のグラフト共重合体(B)が得られる。乾燥工程前の湿粉を直接ベント式押出機に投入しペレット化することもできる。凝固剤は、無機塩であり、酸を併用することもできる。無機塩(より詳しくは無機金属塩)とは、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の塩化物、酢酸カルシウム等の酢酸塩があり、いずれも金属元素を含有する。無機塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グラフト共重合体(B)の凝固過程において、乳化剤と凝固剤が反応し、有機塩を生成することがある。例えば、乳化剤として脂肪酸カリウムを使用し、凝固剤として硫酸マグネシウムを使用した場合は脂肪酸マグネシウムが生成する。
有機塩や無機塩は洗浄脱水後も残存し、グラフト共重合体(B)は有機塩や無機塩を含有する。有機塩や無機塩は、ポリカーボネートの加水分解を促進することから、凝固剤として無機酸のみで凝固する方法や、無機酸と無機塩を併用し、かつ、pHが3以下の低pH状態にて凝固する方法により、有機塩や無機塩の含有量が少ないグラフト共重合体が得られる。しかしながら、無機酸によって生産工程が腐食する問題がある。本発明では、生産工程の腐食を防止するため、凝固時のpHは6.0〜7.5であることが好ましく、より好ましくは6.5〜7.0である。グラフト共重合体(B)中の有機塩や無機塩の含有量は、金属元素として原子吸光法によって確認することができる。凝固剤として、例えば硫酸マグネシウムを使用した場合、グラフト共重合体(B)のマグネシウムの含有量は300ppm以上となる。なおグラフト共重合体(B)の金属元素含有量は100〜1500ppmが好ましく、更に200〜1200ppm、300〜1000ppm、400〜800ppmであっても良い。また、低pH状態にて凝固させた金属元素含有量が少ないグラフト共重合体(B)に、適宜有機塩または無機塩を加え、金属元素含有量を調整しても良い。
グラフト共重合体(B)のゲル分は、粒子形状であることが好ましい。ゲル分とは、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体がグラフト共重合したゴム状重合体の粒子であり、メチルエチルケトンやトルエン等の有機溶媒に不溶で遠心分離によって分離される成分である。ゴム状重合体の粒子内部に、スチレン−アクリロニトリル系共重合体が粒子状に内包されたオクルージョン構造を形成することもある。グラフト共重合体(B)とスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)とを溶融ブレンドすると、ゲル分は、スチレン−アクリロニトリル系共重合体の連続相の中に、粒子形状で分散相として存在する。ゲル分は、質量Wのグラフト共重合体(B)をメチルエチレンケトンに溶解し、遠心分離機を用いて、20000rpmにて遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得て、真空乾燥後の乾燥した不溶分の質量Sから、ゲル分(質量%)=(S/W)×100の式で算出した値である。また、グラフト共重合体(B)とスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)とを溶融ブレンドした樹脂組成物を同様に、メチルエチルケトンに溶解し、遠心分離することで、ゲル分を算出することができる。
グラフト共重合体(B)のゲル分の体積平均粒子径は、耐衝撃性及び成形品の外観の観点から、0.10〜1.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.50μmである。体積平均粒子径は、グラフト共重合体(B)とスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)とを溶融ブレンドした樹脂組成物のペレットから超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察を行い、連続相に分散した粒子の画像解析から算出した値である。体積平均粒子径は、例えば、乳化グラフト重合の際に使用するゴム状重合体のラテックスの粒子径によって調整することができる。ゴム状重合体のラテックスの粒子径は、乳化重合時に乳化剤の添加方法や水の使用量などで調整することができるが、好ましい範囲とするためには重合時間が長く生産性が低いので、0.1μm前後の粒子径のゴム状重合体を短時間で重合させ、化学的凝集法や物理的凝集法を用いてゴム粒子を肥大化する方法がある。
グラフト共重合体(B)のグラフト率は、耐衝撃性の観点から、10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜70質量%である。グラフト率は、ゲル分(G)とゴム状重合体の含有量(RC)より、グラフト率(質量%)=[(G−RC)/R]×100で算出した値である。グラフト率は、ゴム状重合体の粒子が、ゴム状重合体の単位質量当たりに含有するグラフトによって結合しているスチレン−アクリロニトリル系共重合体及び粒子に内包されるスチレン−アクリロニトリル系共重合体の量を表す。グラフト率は、例えば、乳化グラフト重合する際、単量体とゴム状重合体の比率、開始剤の種類及び量、連鎖移動剤量、乳化剤量、重合温度、仕込み方法(一括/多段/連続)、単量体の添加速度などにより調整することができる。
グラフト共重合体(B)のトルエン膨潤度は、耐衝撃性と成形品外観の観点から、5〜20倍であることが好ましい。トルエン膨潤度は、ゴム状重合体の粒子の架橋度を表し、グラフト共重合体をトルエンに溶解し、不溶分を遠心分離或いはろ過によって分離し、トルエンで膨潤した状態の質量と真空乾燥によってトルエンを除去した乾燥状態の質量比から算出される。トルエン膨潤度は、例えば、乳化グラフト重合する際に使用するゴム状重合体の架橋度の影響を受け、これはゴム状重合体の乳化重合時の開始剤、乳化剤、重合温度、ジビニルベンゼン等の多官能単量体の添加などによって調整することができる。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)とは、スチレン系単量体単位とアクリロニトリル系単量体単位を有する共重合体であり、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体がある。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)のその他の共重合可能な単量体として、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ブチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、アクリル酸等のアクリル酸系単量体、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体を用いることができる。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の構成単位は、ポリカーボネートとの相容性の観点から、スチレン系単量体単位70〜85質量%、アクリロニトリル系単量体単位15〜30質量%であることが好ましい。アクリロニトリル系単量体単位は、ケルダール法によって測定した値である。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の製造方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により製造することができる。反応装置の操作法としては、連続式、バッチ式(回分式)、半回分式のいずれも適用できる。品質面や生産性の面から、塊状重合或いは溶液重合が好ましく、連続式であることが好ましい。塊状重合或いは溶液重合の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等がある。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の塊状重合或いは溶液重合では、重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができ、重合温度は120〜170℃の範囲であることが好ましい。重合開始剤は、例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等があり、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。連鎖移動剤は、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の重合終了後の溶液から、未反応の単量体や溶液重合に用いた溶媒などの揮発成分を取り除く脱揮方法は、公知の手法が採用できる。例えば、予熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機を用いることができる。脱揮された溶融状態のスチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)は、造粒工程に移送され、多孔ダイよりストランド状に押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工することができる。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)の重量平均分子量は、PC/ABS系樹脂の耐衝撃性と成形性の観点から、50,000〜250,000であることが好ましく、より好ましくは70,000〜200,000である。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)のの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、THF溶媒中で測定されるポリスチレン換算の値である。重量平均分子量は、重合時の連鎖移動剤の種類及び量、溶媒濃度、重合温度、重合開始剤の種類及び量によって調整することができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)とは、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位とスチレン系単量体単位を有する共重合体である。本発明においては、更にマレイミド系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、アクリロニトリル系単量体単位を有することができる。不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)は、例えば、スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単量体とは、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等である。これらの中でも無水マレイン酸が好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
マレイミド系単量体単位とは、例えば、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−フェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド等に由来する構造単位である。これらの中でも、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好ましい。マレイミド系単量体単位は、単独でも良いが2種類以上でもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とは、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの各メタクリル酸エステル単量体、およびメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート等の各アクリル酸エステル単量体である。これらの中でもはメチルメタクリレート単位が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の構成単位は、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位0.5〜30質量%、スチレン系単量体単位40〜80質量%、マレイミド系単量体単位0〜60質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位0〜30質量%、アクリロニトリル系単量体単位0〜30質量%であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位は、5.0〜30質量%であることがより好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位とマレイミド系単量体単位の合計量は、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)との相溶性の観点から、10〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位が少なすぎると、PC/ABS系樹脂の耐加水分解性が低下することがあり、多すぎると、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の熱安定性が低下することがある。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位は滴定法によって測定した値である。スチレン系単量体単位、マレイミド系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位は、NMRによって測定した値である。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の製造方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、スチレン系単量体、マレイミド系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリロニトリル系単量体からなる単量体混合物を共重合させる方法がある。また、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリロニトリル系単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の一部をアンモニア又は第1級アミンを反応させてイミド化し、マレイミド系単量体単位に変換させる方法がある(以下、「後イミド化法」と称する)。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の製造方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、溶液重合、塊状重合等により製造することができる。また、連続法、バッチ法のいずれも適用できる。スチレン系単量体と不飽和ジカルボン酸無水物系単量体或いはスチレン系単量体とマレイミド系単量体との共重合では、交互共重合性が高いため、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体或いはマレイミド系単量体を分割添加しながら重合することで共重合組成が均一となることから、溶液重合が好ましい。溶液重合の溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等であり、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の脱揮回収時における溶媒除去の容易性から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の溶液重合或いは塊状重合では、重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができ、重合温度は70〜150℃の範囲であることが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスメチルプロポニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等のパーオキサイド類であり、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。連鎖移動剤は、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)のマレイミド系単量体単位の導入は、マレイミド系単量体を共重合させる方法と後イミド化法がある。後イミド化法とは、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリロニトリル系単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の一部をアンモニア又は第1級アミンを反応させてイミド化し、マレイミド系単量体単位に変換させる方法である。第1級アミンとは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、iso−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、デシルアミン等のアルキルアミン類及びクロル又はブロム置換アルキルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の芳香族アミンがあり、アニリン、シクロヘキシルアミンが好ましい。これらの第1級アミンは、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。後イミド化の際、第1級アミンと不飽和ジカルボン酸無水物単体量体単位との反応において、脱水閉環反応を向上させるために触媒を使用することができる。触媒は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の第3級アミンである。後イミド化の温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは120〜200℃である。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の溶液重合終了後の溶液或いは後イミド化終了後の溶液から、溶液重合に用いた溶媒や未反応の単量体などの揮発成分を取り除く方法は、公知の手法が採用できる。例えば、加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機を用いることができる。脱揮された溶融状態の不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)は、造粒工程に移送され、多孔ダイよりストランド状に押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工することができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の重量平均分子量は、50,000〜300,000であることが好ましく、より好ましくは80,000〜200,000である。スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)のの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、THF溶媒中で測定されるポリスチレン換算の値である。重量平均分子量は、重合時の連鎖移動剤の種類及び量、溶媒濃度、重合温度、重合開始剤の種類及び量によって調整することができる。
熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート(A)、グラフト共重合体(B)、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)及び不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)以外に、本発明の効果を損ねない範囲で、その他の樹脂成分、耐衝撃改質材、流動性改質材、硬度改質材、酸化防止剤、無機充填剤、艶消し剤、難燃剤、難燃助剤、ドリップ防止剤、摺動性付与剤、放熱材、電磁波吸収材、可塑剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、抗カビ剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、染料等を配合してもよい。
熱可塑性樹脂組成物の製造法は、公知の方法が採用できる。例えば、ポリカーボネート(A)、グラフト共重合体(B)、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)及び不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)を二軸押出機で溶融ブレンドする方法がある。二軸押出機は同方向回転でも異方向回転でも良い。溶融ブレンドの装置としては、その他、単軸押出機、多軸スクリュー押出機、二軸ローター付きの連続混練機、コニーダー、バンバリミキサーが挙げられる。二軸押出機を用いる場合、シリンダー温度設定は、200〜320℃の範囲で選択することができ、210〜290℃であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の成形方法は、公知の方法が採用できる。例えば、射出成形、シート押出成形、真空成形、ブロー成形、発泡成形、異型押出成形等が挙げられる。成形時には、通常、熱可塑性樹脂組成物を200〜280℃に加熱した後、加工されるが、210〜270℃であることが好ましい。成形品は、自動車部品、家電製品、事務機器部品等に用いることができる。
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ポリカーボネート(A)は、下記の材料を使用した。
(a−1) 三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製 ユーピロン S−3000
(a−2) CHIMEI社製 WONDERLITE PC−110
グラフト共重合体(B)は、乳化グラフト重合法にて作製した。攪拌機を備えた反応缶中に平均粒子径が0.3μmのポリブタジエンラテックス126質量部、平均粒子径が0.5μmでスチレンの含有量が24質量%のスチレン−ブタジエンラテックス17質量部、ステアリン酸ソーダ1質量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.01質量部、硫酸第一鉄0.005質量部、及び純水150部を仕込み、温度を50℃に加熱した。ここにスチレン75質量%及びアクリロニトリル25質量%の単量体混合物45質量部、t−ドデシルメルカプタン1.0質量部、クメンハイドロパーオキサイド0.15質量部を6時間で連続的に分割添加した。分割添加終了後、65℃に昇温し、さらに2時間かけて重合を完結させ、グラフト共重合体(B)のラテックスを得た。得られたラテックスは、2通りの方法で凝固した。1つは、凝固剤として硫酸マグネシウムと硫酸を用い、凝固時のスラリーのpHが6.8となるよう凝固を行い、洗浄脱水後、乾燥することで粉末状のグラフト共重合体(b−1)を得た。もう1つは、凝固剤として塩酸を用いて凝固を行い、洗浄脱水後、乾燥することで粉末状のグラフト共重合体(b−2)を得た。原子吸光法により、(b−1)及び(b−2)中の金属元素の量を測定した結果は次の通りであった。
(b−1) マグネシウム量 660ppm
(b−2) マグネシウム量 検出下限未満(<1ppm)
グラフト共重合体(b−1)及び(b−2)は、凝固方法が異なるのみで、グラフト共重合体を構成するスチレン−アクリロニトリルの含有量やポリブタジエンの含有量、ゲル分、グラフト率、トルエン膨潤度、体積平均粒子径は同じである。ポリブタジエン含有量は、乳化グラフト重合時の原料配合比より55質量%である。ゴム状重合体を除いた構成単位は、NMRによって測定し、スチレンが75質量%、アクリロニトリルが25質量%であった。ゲル分は、遠心分離法により行い、83質量%であった。ゲル分とポリブタジエン含有量からグラフト率を計算すると51%であった。トルエン膨潤度は9.2で、体積平均粒子径はTEMの観察結果から算出し、0.3μmであった。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)は、連続式の塊状重合にて作製した。反応器として完全混合槽型撹拌槽を1基使用し、20Lの容量で重合を行った。スチレン60.5質量%、アクリロニトリル21.5質量%、エチルベンゼン18.0質量%の原料溶液を作製し、反応器に6.5L/hの流量で連続的に供給した。また、原料溶液に対して、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを160ppm、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1500ppmの濃度となるよう、原料溶液の供給ラインに連続的に添加した。反応器の反応温度は145℃となるよう調整した。反応器から連続的に取り出されたポリマー溶液は、予熱器付き真空脱揮槽に供給され、未反応のスチレン及びアクリロニトリル、エチルベンゼンを分離した。脱揮槽内のポリマー温度が225℃となるように予熱器の温度を調整し、脱揮槽内の圧力は0.4kPaとした。ギヤーポンプにより真空脱揮槽からポリマーを抜出し、ストランド状に押出して冷却水にて冷却後、切断してペレット状のスチレン−アクリロニトリル系共重合体(c−1)を得た。ケルダール法にて、(c−1)のアクリロニトリル単位含有量を測定したところ、25質量%であった。また、(c−1)の重量平均分子量は、105,000であった。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、次の条件で測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製した。
不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)は、溶液重合にて作製した。反応器として、攪拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60質量部、無水マレイン酸8質量部、αメチルスチレンダイマー0.2質量部、メチルエチルケトン25質量部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を92℃に昇温し、無水マレイン酸32質量部とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.18質量部をメチルエチルケトン100質量部に溶解した溶液を7時間かけて添加した。添加後、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.03質量部を添加して、120℃に昇温し、更に1時間反応させてスチレン−無水マレイン酸共重合体のポリマー溶液を得た。その後、ポリマー溶液にアニリン30質量部、トリエチルアミン0.6質量部を加え、140℃で7時間イミド化反応させた。イミド化反応終了後のポリマー溶液をベント付き脱揮押出機に供給し、揮発分を除去し、スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体(d−1)を得た。NMR法により(d−1)の構成単位を分析した結果、スチレン単位含有量が48質量%、N−フェニルマレイミド単位含有量が45質量%、無水マレイン酸単位含有量が7質量%であった。また、(d−1)の重量平均分子量は、142,000であった。(d−1)の重量平均分子量はGPCにて、(c−1)と同じ方法で行った。
同様に、不飽和ジカルボン酸無水物単位を含有しないスチレン−N−フェニルマレイミド共重合体(d−2)を溶液重合にて作製した。反応器として、攪拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン48質量部、αメチルスチレンダイマー0.08質量部、メチルエチルケトン100質量部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を85℃に昇温し、N−フェニルマレイミド52質量部とベンゾイルパーオキサイド0.15質量部をメチルエチルケトン200質量部に溶解した溶液を8時間かけて添加した。添加後、さらに85℃で3時間反応させ、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体のポリマー溶液を得た。反応終了後のポリマー溶液をベント付き脱揮押出機に供給し、揮発分を除去し、スチレン−N−フェニルマレイミド(d−2)を得た。NMR法により(d−2)の構成単位を分析した結果、スチレン単位含有量が48質量%、N−フェニルマレイミド単位含有量が52質量%であった。また、(d−2)の重量平均分子量は、150,000であった。(d−2)の重量平均分子量はGPCにて、(c−1)と同じ方法で行った。
表1に示す配合で、ポリカーボネート(A)、グラフト共重合体(B)、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)をドライブレンドした後、二軸押出機を用いて溶融押出を行い、実施例、比較例及び参考例の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。二軸押出機は、スクリュー径D=15mm、L/D=45のテクノベル社製のKZW15TW−30MG−NH−700を用い、押出条件は、スクリュー回転数250rpm、シリンダー温度280℃、吐出量400g/hとした。次に得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを成形して、評価用の試験片を作製した。射出成形機は、日精樹脂工業製の改良型AU3Eを用い、成形条件はノズル温度280℃、金型温度60℃、射出速度100mm/s、保持圧力70MPaとした。評価用の試験片寸法は、全長50mm、厚さ2mm、平行部長さ12mm、平行部幅2mmのダンベル状とした。
熱可塑性樹脂組成物のペレットを用い、280℃、5kg荷重条件でのメルトマスフローレート(MFR)を測定した。測定器は、東洋精機製作所製のメルトフローインデクサF−F01を用い、長さ8.000mm±0.025mm、内孔2.095mmのオリフィスを使用して測定を行った。測定結果を表1に示す。
評価用の試験片を用い、Izod衝撃強度を測定した。試験機は、東洋精機製作所製Digital Impact Testerを用い、エネルギー1J、負荷速度2.9m/minの条件にて、測定を行った。測定可能な最大衝撃強さは、15kJ/m2であり、NBは破壊しなかったことを表す。ノッチ形状はJISK7110に記載されているタイプAである。測定結果を表1に示す。
比較例1は、硫酸マグネシウムをマグネシウム量として660ppm含有するグラフト共重合体を用いた例で、ポリカーボネートの加水分解が著しいため、耐衝撃性が低く、MFRの上昇が見られる。参考例1及び比較例5は、乳化剤と凝固剤の反応により生成した有機塩、凝固剤由来の無機塩を含有させないために、塩酸単独でラテックスを凝固させて得られたグラフト共重合体を用いた例で、比較例1に比べると耐衝撃性はやや高い。しかしながら、塩酸単独使用によって低pH条件であるため、グラフト共重合体の生産工程に腐食の問題が生じる。一方、実施例では不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(d−1)を2〜25質量%配合することで、耐衝撃性の著しい向上が見られる。(d−1)を5〜15質量%配合している実施例1〜3及び5では、耐衝撃性が特に高く、その中でも(d−1)を7.0〜13質量%配合している実施例1及び5において耐衝撃性が特に高かった。
比較例2では(d−1)の配合量が少なすぎることから加水分解を抑制する効果が見られない。比較例3では(d−1)の配合量が多すぎることによって、耐衝撃性が低い。比較例4で用いた(d−2)は不飽和カルボン酸無水物単位を含有しないことから、加水分解を抑制する効果が見られない。また、比較例5では、マグネシウムを実質的に含有しない(B)成分を用いているために(d−1)を配合しても、参考例1と比べて衝撃強度が向上しなかった。
本発明の樹脂組成物は、耐加水分解性及び耐衝撃性に優れることから、自動車用部品、家電製品、事務機器部品等に有用である。ABS樹脂として一般的である有機塩や無機塩を含有するグラフト共重合体を適用できることから、工業的に有用である。

Claims (3)

  1. ポリカーボネート(A)と、ゴム状重合体に少なくともスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフト共重合し、金属元素を含有するグラフト共重合体(B)と、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(C)と、不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)とからなり、(A)〜(D)の合計量を100質量%としたとき、(A)の含有量が40〜93質量%、(B)の含有量が5〜30質量%、(C)の含有量が0〜40質量%、(D)の含有量が2〜25質量%である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 不飽和ジカルボン酸無水物系共重合体(D)の不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位が0.5〜30質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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