JPWO2016084413A1 - 多孔質複合体および骨再生材料 - Google Patents

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Abstract

従来よりも圧縮強度に優れたOCPとコラーゲンとを含む多孔質複合体、それを含む骨再生材料、および、多孔質複合体の製造方法を提供する。第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含み、水銀ポロシメーターでの測定による気孔径が5〜40μmであり、200μm以下の気孔全体における71〜200μmの気孔の割合が8%以下であることを特徴とする多孔質複合体。

Description

本発明は、多孔質複合体、骨再生材料、および、多孔質複合体の製造方法に関する。
従来より使用されている骨再生材料としては、ヒドロキシアパタイト(HA)などのリン酸カルシウムが知られている(例えば、特許文献2:特開2010−273847号公報、特許文献3:特開2003−260124号公報、特許文献4:特開2009−132601号公報、特許文献5:特開2005−279078号公報参照)。
近年、HAの前駆物質である第8リン酸カルシウム(Octacalcium phosphate、以下、「OCP」という)は、HAやβ−第3リン酸カルシウム(β−TCP)等の他のリン酸カルシウムに比して、骨再生の促進作用が高く、生体内での吸収性も高いことが分かってきた(例えば、特許文献1:特開2006−167445号公報参照)。このようにOCPは、リン酸カルシウムの中でも骨再生材料として特に優れた特性を有している。
しかし、OCPは無機物であるために形状付与性に乏しい。このため、OCP単独では、広範囲の骨欠損部の再生等への適用は難しい。そこで、OCPとコラーゲンとの複合体を骨再生材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−167445号公報 特開2010−273847号公報 特開2003−260124号公報 特開2009−132601号公報 特開2005−279078号公報
骨再生材料は、一般に不定形の骨欠損に適用される。骨再生材料には、骨再生促進能は言うまでもなく、体内等への適用の際における良好な操作性が求められる。しかし、骨再生材料に用いられるOCPとコラーゲンとの複合体は、骨再生のための骨芽細胞の足場として機能するために多孔質体である必要がある。このような多孔質複合体は、一般に圧縮強度が低く、取り扱い時に破損等が生じ易いため、操作性が悪いという問題点があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも圧縮強度に優れたOCPとコラーゲンとを含む多孔質複合体、それを含む骨再生材料、および、多孔質複合体の製造方法を提供することを目的とする。
多孔質複合体からなる骨再生材料は、多孔質体構造によって、多孔質内部に骨芽細胞が進入し、新生骨の形成を促進する内部骨形成を実現している。骨芽細胞が進入するためには一定の孔径が必要であり、一般に大きな孔径を有するほど多孔質内部に骨芽細胞が進入し易くなる。一方、発明者らは孔径が大きくなると多孔質複合体自体の強度が弱くなることを見出した。そこで、発明者らが鋭意検討した結果、多孔質複合体が一定の孔径を有することにより内部に骨芽細胞が進入しやすく、骨再生の足場として有効に機能すると共に、適度な強度を有し、臨床手術等の際に取り扱い易く、操作性に優れた多孔質複合体を見出した。本発明は以下に代表される発明を提供する。
(1) 第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含み、水銀ポロシメーターでの測定による気孔径が5〜40μmであり、200μm以下の気孔全体における71〜200μmの気孔の割合が8%以下であることを特徴とする多孔質複合体。
(2) (1)に記載の多孔質複合体を含む骨再生材料。
(3) 第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含む多孔質複合体の製造方法であって、
第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含むゲル、ゾルまたは液体を液体冷媒に浸漬し凍結する工程を含むことを特徴とする、多孔質複合体の製造方法。
(4) (3)に記載の製造方法によって得られる、第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含む多孔質複合体。
本発明によれば、従来よりも圧縮強度に優れたOCPとコラーゲンとを含む多孔質複合体、それを含む骨再生材料、および、多孔質複合体の製造方法を提供することができる。本発明の多孔質複合体は、所定の気孔径を有することにより骨芽細胞が内部に進入し、骨再生を促進する。また、適度な圧縮強度を有することにより、手術等の際にピンセット等で骨欠損部の形状に合わせて切断等の加工が容易にでき、かつ取り扱い時に破損等が生じにくいという優れた効果を有する。
実施例1についての気孔径測定における細孔分布曲線を示すグラフである。 圧縮強度の測定方法を説明するための模式図である。 実施例1で作製した多孔質複合体の断面をSEMで撮影した拡大写真である。 比較例1で作製した多孔質複合体の断面をSEMで撮影した拡大写真である。 実施例1と比較例1の気孔径測定における細孔分布曲線の比較を示すグラフである。
[多孔質複合体]
本発明の多孔質複合体は、第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含む多孔質の複合体(OCP/コラーゲン複合体)である。本発明の多孔質複合体の好ましい態様は、コラーゲンが線維状またはフィルム状として3次元にランダムに存在するスポンジ状構造を形成し、OCPが該スポンジ状構造中に顆粒として存在している多孔質複合体である。
OCP(Ca82(PO46・5H2O)は、種々公知の方法によって調製することができ、例えば、LeGerosの滴下法(LeGeros RZ,Calcif Tissue Int 37:194-197,1985)や特開平5−070113号公報に開示される合成装置(三流管)を使用した方法などによって調製することができる。また、混合法によって調製することができ、具体的には、例えば、リン酸二水素ナトリウム水溶液と、酢酸カルシウム水溶液を適切な条件下で混合し、生成した沈殿物を回収することにより、OCPを得ることができる。沈殿物から得られたOCPは、乾燥させ、電動ミル等を用い粉砕し、粒子状の粉体にして用いることが好ましい。粒径は10〜1000μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは300〜500μmに調製することが好ましい。
コラーゲンとしては、その由来、性状などは特に限定されず、種々のコラーゲンを使用することができる。好ましくは、蛋白分解酵素(例えばペプシン、プロナーゼ等)で可溶化することにより得られ、テロペプチドが除去されている酵素可溶化コラーゲンが使用される。コラーゲンのタイプとしては、繊維性コラーゲンであるI型、II型、III型およびIV型コラーゲンが好ましく、生体内に大量に含まれるI型コラーゲン、又はI型およびIII型コラーゲンの混合物が特に好ましい。原料としては、特に限定されないが、豚、牛などの皮膚、骨、腱などに由来するコラーゲンを好ましく用いることができる。コラーゲンは生体由来成分であるので、安全性が高いという特長を有し、特に酵素可溶化コラーゲンはアレルゲン性も低く好ましい。上記のコラーゲンとしては、市販の製品を使用してもよい。
本発明の多孔質複合体において、OCPとコラーゲンの配合比は、所望する形状付与性、操作性、生体親和性などに応じて適宜調整することができる。コラーゲン1重量部に対するOCPの配合比は、好ましくは0.5〜35重量部、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは2〜10重量部である。コラーゲン1に対してOCPが0.5未満であると、得られた複合体の骨再生機能が劣るおそれがあり、また35を超えると形状付与性が低下するおそれがある。
本発明の多孔質複合体の気孔径は、5〜40μmであることが好ましい。気孔径が40μmを超える場合、多孔質複合体の圧縮強度が0.3MPa未満に低下する傾向がある。一方、気孔径が5μm未満である場合、骨芽細胞等の骨代謝系細胞の侵入が起こり難くなり、骨再生の促進作用が低下する恐れがある。
本発明の多孔質複合体の気孔径は、より好ましくは7〜36μmであり、更に好ましくは10〜20μmである。
気孔径は水銀ポロシメーター(Mercury porosimeter)による細孔分布測定を用いて測定し、具体的には以下の方法により測定される。
(気孔径測定)
前処理として、サンプルを120℃で4時間恒温乾燥する。前処理後の各サンプルについて、以下の測定装置を用いた水銀圧入法により、以下の条件で細孔径0.0018〜200μmの細孔分布を求める。
測定装置:オートポアIV9520(micromeritics社製)
測定条件:サンプルと水銀の接触角:140deg
水銀の表面張力:0.48N/m(1dyne=10−5Nで換算)
本発明における気孔径とは、水銀圧入法による測定圧力から得られた細孔分布曲線において、最も大きな面積を有するピークの極大値を示す細孔径の値である。
さらに、本発明の多孔質複合体は、上記水銀圧入法により測定された細孔分布において、200μm以下の気孔全体に占める71〜200μmの大きさの気孔の割合が8%以下であることを特徴とする。好ましくは3〜8%である。
気孔割合は水銀ポロシメーターにより測定された累積細孔容積および全細孔容積とを用いて下式で表される。
気孔割合(%)= 累積細孔容積/全細孔容積×100
本発明の多孔質複合体は気孔の分布が比較的狭く、より均一な気孔径を有することを意味している。これにより、多孔質複合体全体にわたって均質な細胞足場を提供することができるとともに、均一な構造的特性を付与することができる。従来、より均一な細孔を実現することは困難であった。例えば、TANUMA Y. et al.(TISUUE ENGINEERING:Part A,Volume 18,Numbers 5 and 6,2012)には、OCPとコラーゲンからなる複合体であって気孔径が30μm以下である複合体が記載されている。しかしながら、本発明者らがTANUMA Y. et al.に記載された細孔分布曲線を解析した結果、気孔全体に占める71μm以上の気孔径の割合は約9〜15%であり、細孔分布が広く、大きな気孔径が比較的多く存在している。
本発明の多孔質複合体は前記範囲の気孔径を有することにより、圧縮強度に優れる。多孔質複合体の圧縮強度は、好ましくは0.3MPa以上であり、より好ましくは0.3MPa以上3.0MPa以下であり、更に好ましくは0.3MPa以上1.0MPa以下である。圧縮強度が0.3MPa未満である場合、多孔質複合体の操作性が低下する傾向がある。すなわち、本発明の多孔質複合体を骨欠損部に充填する際に、前記複合体が崩壊してしまったり、気孔が潰れてしまったりすると、その後の骨再生に悪影響を与えることになる。具体的には、さまざまな形状を有する骨欠損部に、医師が冶具を用いて多孔質複合体を隙間なく充填する施術を行う際に、前記複合体の崩壊や気孔潰れが生じないことを示す指標が圧縮強度0.3MPa以上である。上限は特に定められるものではないが、骨欠損部への充填の際の操作容易性の観点から、3.0MPa以下であることが好ましい。
本発明における圧縮強度は下記の方法により測定される。
(圧縮強度測定)
温度:25℃、湿度:65%の環境下、直径9.0mm、高さ15mmの円柱状試料(サンプル)をリン酸緩衝生理食塩水(10mMリン酸ナトリウム、0.14M塩化ナトリウム、pH7.4)に30分間浸漬する。その後、サンプル表面の水気を軽く拭い、引張・圧縮試験機(ロードセル容量:1kN)を用いて、円柱の上下方向に単軸荷重を負荷する。そして、段階的に荷重を変化させたときにサンプルが崩壊する最小荷重を崩壊時荷重とする。「サンプルの崩壊を認めた」とは、試料を目視で観察した時に明確な亀裂または剥がれが生じていることが確認されたことを意味する。目視は肉眼観察で行うことができ、肉眼観察が困難な場合はビデオカメラ等で拡大撮影してモニターで目視により観察する方法を用いることもできる。
具体的には、図2を参照して、サンプル1を試料台21にセットした後、クロスヘッド(押圧治具)22を10mm/minの速度で下げ、ロードセルが2.5Nを示した時にクロスヘッド22を止めて荷重を解く。試料台のサンプルを観察し、崩壊していなければ、そのサンプルを試料台に戻して再びセットし、同様にロードセルが5Nを示すまでクロスヘッドを下げる。荷重を2.5Nずつ増加させて、この操作を繰り返し、初めてサンプルの崩壊を認めたときの荷重を崩壊時荷重とする。
本発明における圧縮強度は、上記崩壊時荷重とサンプルの断面積(円柱の厚さ方向に垂直な断面における断面積)とから、式1で表される。
Cs=F/S ・・・(式1)
Cs:圧縮強度(Pa)
F :崩壊時荷重(N)
S :サンプルの断面積(m2
多孔質複合体の気孔率(空隙率)は80〜98%であることが好ましく、より好ましくは85〜95%である。更に好ましくは85〜90%である。気孔率は水銀圧入法による全細孔容積と見かけ密度を用いて下記の式2により求められる。
気孔率(%)=全細孔容積/{(1/見かけ密度)+全細孔容積}×100 (式2)
本発明の多孔質複合体の形状は、直方体(ブロック体)、円筒体もしくはタブレット状、又は顆粒であることが好ましい。直方体である場合の大きさは5mm×5mm×5mm以上の大きさが好ましく、一般に上限は100mm×100mm×100mm以内の範囲であることが好ましい。直方体は立方体に限られない。円筒状である場合の大きさは、直径が5〜50mmであることが好ましく、高さは1〜50mmの範囲であることが好ましい。顆粒状である場合、形状は球体に限られず不定形でもよいが、直径が0.1〜10mmであることが好ましい。
本発明の多孔質複合体は骨欠損部に補填することにより使用されるが、骨欠損部に十分な血液もしくは体液が認められる場合には、多孔質複合体をそのまま、もしくは適当な形状に切断し補填することができる。骨欠損部に十分な血液等が認められない、又は多孔質複合体を元の形状で補填できない場合は、多孔質複合体を血液もしくは生理食塩水等に浸漬し、多孔質複合体がスポンジ状の弾力性を示すことを確認した上で骨欠損部に補填することができる。
[多孔質複合体の製造方法]
本発明の多孔質複合体の製造方法は、OCPとコラーゲンとを混合する製造方法が好ましく、下記のような製造方法を用いることができる。
(a)OCPとコラーゲンとを混合して複合化する方法
まず、濃度、pH等をゲル化し得る範囲に調整されたコラーゲン溶液にOCPを添加し、十分に混練してOCPとコラーゲンの混合物を作製する。次いで、当該混合物を適当な型に加えて成型し、凍結し、凍結乾燥することにより複合体を得る。得られた当該複合体は、熱脱水架橋処理を施し、更に、慣用の滅菌法(例えば、γ線照射、電子線照射、エチレンオキサイドガス等)により滅菌する。
(b)OCP懸濁液を混合して複合化する方法
適当な濃度のコラーゲン酸性溶液を、適当な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)で無菌的にpH5.5〜7.5に調整し、コラーゲンがゲル化する前にOCPを添加して、コラーゲンとOCPの懸濁液を調製する。その後、pHを中性から弱アルカリ性に保持した状態で型に流し込み、形状を付与した後、適当な温度(例えば37℃)でゲル化させ、水洗浄を繰り返して緩衝液の塩などを除去して複合担体とし、上記と同様に凍結乾燥および滅菌処理する。
(c)OCPをコラーゲンに析出させて複合化する方法
適当な濃度のコラーゲン酸性溶液を、適当な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)で無菌的にpHを5.5〜7.5に調整し、コラーゲンがゲル化する前に、カルシウム溶液およびリン酸溶液を添加してコラーゲン上にOCPを析出させる。その後、pHを中性から弱アルカリ性に保持したところで型に流し込んで、形状を付与した後、適当な温度(例えば37℃)でゲル化した後、水洗浄を繰り返して緩衝液などの塩を除去して複合担体とし、上記と同様に凍結乾燥および滅菌処理する。
なお、OCPの析出は、Ca2+,PO4 3-,pHなどにより決まる過飽和度(イオン積/溶解度積)に基づく。このため、OCPに関して過飽和となる条件でCa2+溶液およびPO4 3-溶液を、pHを調節したコラーゲン溶液に注加してOCPを析出させることができる。OCPは、コラーゲン間隙に自発的に析出するか、又はコラーゲン線維の表面を核として析出する。
本発明の多孔質複合体の製造方法は、第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含むゲル、ゾルまたは液体を液体冷媒に浸漬し凍結した後、凍結乾燥する工程を含むことが好ましい。なお、「ゲル、ゾルまたは液体を液体冷媒に浸漬し凍結し」とは、例えば、ゲル、ゾルまたは液体が収容された容器を密閉した後に該容器を液体冷媒に浸漬して、ゲル、ゾルまたは液体を凍結させる態様も含んでいる。
液体冷媒は、第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含むゲル、ゾルまたは液体の凍結温度より低い温度の液体であり、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、液体窒素が挙げられる。該液体冷媒の温度は、好ましくは−20℃以下であり、より好ましくは−40℃以下であり、さらに好ましくは−80℃以下である。
第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含むゲル、ゾルまたは液体を液体冷媒に浸漬することによって急速に凍結させることにより、得られる多孔質複合体の気孔径を小さくすることができると考えられる。従来、−20℃のフリーザーや−80℃のディープフリーザーで凍結する方法が広く知られてきた。本発明は、液体冷媒を使用することにより、−196℃の液体窒素のみならず、−40℃や−80℃等の比較的高い温度でも作製できることが特徴の一つであり、気孔径の大きさが温度だけに依存しないことを見出した点で優れた効果を有する。
本発明の多孔質複合体は、熱処理が施されていることが好ましい。熱処理により、OCP分子構造の一部が崩れて骨形成系細胞の侵入が起こり易くなり、骨再生が促進されると共に、コラーゲンが架橋して形状保持力が向上する。
熱処理の温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは60〜180℃である。また、熱処理は、減圧条件下で行うことが好ましい。圧力は、好ましくは0〜3000Pa、より好ましくは0〜300Paである。熱処理の処理時間は、好ましくは0.1〜10日、より好ましくは0.5〜5日である。
[骨再生材料]
本発明は、さらに上記の多孔質複合体を含む骨再生材料に関する。骨再生材料は歯科口腔外科領域、整形外科領域における骨欠損修復、開頭または開胸術後の骨欠損修復などに用いることができる。例えば、歯科口腔外科領域においては、歯周病、嚢胞腔、萎縮歯槽堤、顎裂部、抜歯窩等により生じた骨欠損に対し、多孔質複合体からなる骨再生材料を補填することにより、数週間から数ヶ月後には優れた骨再生効果が確認できる。整形外科領域においては、例えば骨腫瘍切除後の骨欠損、骨折等外傷により生じた骨欠損に対し、本骨再生材料を骨欠損部に補填し、骨再生を促進することができる。
骨再生材料は、OCPおよびコラーゲンの他に、例えば、骨形成能を有するサイトカイン(bone morphogenetic protein-2、transforming growth factor β1など)を含有していてもよく、係るサイトカインを含有させることにより、骨再生速度を速めることができる。
骨再生材料は、それ以外にも、この分野で慣用の配合成分を含ませることができる。かかる配合成分としては、例えば、生体吸収性高分子(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール共重合体等)、OCP以外の生体吸収性リン酸カルシウム(β−TCP等)を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)OCPの調製
まず、OCP調製用の1液および2液を次の通り調製した。
[1液] リン酸二水素ナトリウム二水和物31.2gを蒸留水2500gに溶解し、1液を調製した。
[2液] 酢酸カルシウム一水和物35.2gを蒸留水2500gに溶解し、2液を調製した。
次に、1液をセパラブルフラスコに入れ、マントルヒーターにて70℃に昇温した。次に、撹拌機(東京理化器械社製、MAZELA Z)に撹拌翼(羽径12cm)を取り付け、250rpmの速度で撹拌しながら、1液に対して2液を約28mL/minの速度で滴下した。滴下終了後、1液と2液の混合液を70℃、250rpmでさらに2時間撹拌した。
次に、上記混合液中に生成した沈殿物をメンブレンフィルター(孔径3μm、アドバンテック東洋社製、A300A293C)を用いてろ過し、回収した。回収した沈殿物を蒸留水1500mLに分散させ、15分間撹拌し洗浄した。同様のろ過、洗浄の工程をさらに3回繰り返した。
次に、洗浄後の沈殿物を、恒温乾燥機を用いて30℃で24時間乾燥した。乾燥後の沈殿物を電動ミルにて粉砕した後、ふるいを用いて粒径を300〜500μmに分級し、粉体を得た。最後に、得られた粉体に対して120℃で2時間の乾熱滅菌を行った。
(2)OCP/コラーゲン複合体(多孔質複合体)の調製
I型およびIII型コラーゲンを含むブタ真皮由来コラーゲン(日本ハム社製、NMPコラーゲンPS)1重量部を4℃に冷却した蒸留水200重量部に溶解し、約0.5重量%のコラーゲン溶液を得た。液温を4℃に保ちながらコラーゲン水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを約7.4に調整しコラーゲン懸濁液を得た。次いで、コラーゲン懸濁液にOCP(粒径300〜500μm)をコラーゲンとOCPが重量比で77:23となるように加えた後、室温でさらに撹拌しOCP/コラーゲン懸濁液を得た。
次に、得られたOCP/コラーゲン懸濁液を遠心瓶に入れ、遠心分離機(トミー精工社製、GRX−250)を用い7000×gの遠心力で20分間遠心した。次いで、OCP/コラーゲン懸濁液中のコラーゲンが3重量%となるように上清を廃棄した後、内容物を薬さじで約2分間混合し、OCP/コラーゲン複合ゲルを得た。これを円柱状の内部空間を有するプラスチック容器(内径8.5mm、容積約3.0cm3)に入れて、230×gの遠心力で1分間遠心して脱泡した。
容器を密閉し、被凍結体の容積に対して大過剰の−80℃に冷却したメタノールに浸漬して急速に凍結した。容器を開栓した後、凍結体を凍結乾燥機により乾燥(−10℃、48時間)させ成形した。次いで、これを減圧下、150℃で24時間加熱し熱脱水架橋を行った後、メスで厚さ1.5mmまたは15mmにカットした。最後に、電子線を照射(15kGy)し、滅菌を行った。このようにして、実施例1の多孔質複合体(OCP/コラーゲン複合体)を得た。
(実施例2、実施例3、比較例1および比較例2)
実施例2では、被凍結体の凍結を−196℃の液体窒素を用いて行った。実施例3では、被凍結体の凍結を−40℃に冷却したメタノールを用いて行った。比較例1では、被凍結体の凍結を−80℃に設定した冷凍庫を用いて行った。比較例2では、被凍結体の凍結を−20℃に設定した冷凍庫を用いて行った。
それ以外の点は、実施例1と同様にして、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2の多孔質複合体(OCP/コラーゲン複合体)を得た。
(気孔径測定)
上記実施例1〜3並びに比較例1および2で得られた直径8.5mm、厚さ1.5mmの円柱状(タブレット状)のサンプルについて、気孔径を以下のようにして測定した。
前処理として、サンプルを120℃で4時間恒温乾燥した。前処理後の各サンプルについて、以下の測定装置を用いた水銀圧入法により、以下の条件で細孔径0.0018〜100μmの細孔分布を求めた。得られた細孔分布曲線を図1に示す。
測定装置:オートポアIV9520(micromeritics社製)
測定条件:サンプルと水銀の接触角:140deg
水銀の表面張力0.48N/m(1dyne=10-5Nで換算)
細孔径は、下記のWashburnの式を用いて算出した。
Washburnの式: PD=−4σcosθ
P:圧力(Pa)
σ:水銀の表面張力(N/m)
D:細孔直径(m)
θ:水銀と試料との接触角(deg)
なお、本発明における気孔径とは、水銀圧入法による測定圧力から得られた細孔分布曲線において、最も大きな面積を有するピークの極大値を示す細孔径の値である。ただし、図1に示される孔径分布曲線(Log Differential Intrusion)の細孔径は半径であるため、実施例1のサンプルの気孔径は、7.5×2=15μmである。
(気孔割合)
気孔割合は水銀ポロシメーターにより測定された累積細孔容積および全細孔容積から下記式を用いて算出した。
気孔割合(%)= 累積細孔容積/全細孔容積×100
例えば、実施例1の場合、71μmを超える範囲の累積細孔容積は0.203m/gであり、全細孔容積は6.22mL/gであった。したがって、71μmを超える気孔の割合は0.203/6.22×100=3.2%であった。
また、同一条件で作製したサンプル3つに対して気孔径の測定を行い、気孔径の平均値を求めた。また、孔径(細孔直径)分布曲線全体における71μm〜200μmの気孔の割合を求めた。上記実施例および比較例についての気孔径の測定結果を表1に示す。また、代表として実施例1と比較例1の気孔径の様子を図3および図4に示し、実施例1と比較例1の孔径分布曲線の比較を図5に示す。
(圧縮強度測定)
温度:25℃、湿度:65%の環境下、直径9.0mm、高さ15mmの円柱状試料(サンプル)をリン酸緩衝生理食塩水(10mMリン酸ナトリウム、0.14M塩化ナトリウム、pH7.4)に30分間浸漬した。その後、試料表面の水気を軽く拭い、精密万能試験機(オートグラフAGS−J、株式会社島津製作所製、ロードセル容量:1kN)を用いて、図2に示すように単軸荷重を負荷した。そして、段階的に荷重を変化させたときに試料が崩壊する最小荷重を崩壊時荷重とした。
具体的には、図2を参照して、サンプル1を試料台21にセットした後、クロスヘッド(押圧治具)22を10mm/minの速度で下げ、ロードセルが2.5Nを示した時にクロスヘッド22を止めて荷重を解く。試料台のサンプルを観察し、崩壊していなければ、そのサンプルを試料台に戻して再びセットし、同様にロードセルが5Nを示すまでクロスヘッドを下げる。荷重を2.5Nずつ増加させて、この操作を繰り返し、初めてサンプルの崩壊を認めたときの荷重を崩壊時荷重とした。なお、本試験において、「サンプルの崩壊を認めた」とは、試料を目視で観察した時に明確な亀裂または剥がれが生じていることが確認されたことを意味する。
本発明における圧縮強度は、上記崩壊時荷重とサンプルの断面積(円柱の厚さ方向に垂直な断面における断面積)とから、式1で表される。
Cs=F/S ・・・(式1)
Cs:圧縮強度(Pa)
F :崩壊時荷重(N)
S :サンプルの断面積(m2
なお、サンプルの断面積は、およそ(0.0045)2×3.14=6.36×10-52であった。
また、同一条件で作製したサンプル3つに対して圧縮強度の測定を行い、圧縮強度の平均値を求めた。上記実施例および比較例についての圧縮強度の測定結果を表1に示す。
表1に示される結果から、比較例よりも急速な凍結方法である液体冷媒に浸漬することによって作製された実施例1〜3のサンプル(多孔質複合体)は、気孔径が5〜40μmの範囲内となっており、比較例よりも気孔径が小さくなっていることが分かる。また、気孔径が5〜40μmの範囲内にある実施例1〜3のサンプルは、0.3MPa以上の高い圧縮強度を有することが分かる。
71μm以上の気孔割合については、実施例1〜3のサンプルは8%以下であったのに対し、比較例では14%以上となり高い割合を示した。このことから、実施例1〜3のサンプルは気孔径の分布が狭く、より均一な構造的特性を有していることが示された。なお、実施例1の気孔率は89%であり、比較例1の気孔率は92%であった。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の多孔質複合体およびそれを含む骨再生材料は、加工容易性と機械的強度を両立して優れた操作性を有し、かつ高い骨再生能を有することから、主に歯科口腔外科領域、整形外科領域における骨欠損修復に有用である。
1 サンプル、21 試料台、22 クロスヘッド。

Claims (4)

  1. 第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含み、水銀ポロシメーターでの測定による気孔径が5〜40μmであり、200μm以下の気孔全体における71〜200μmの気孔の割合が8%以下であることを特徴とする多孔質複合体。
  2. 請求項1に記載の多孔質複合体を含む骨再生材料。
  3. 第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含む多孔質複合体の製造方法であって、
    第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含むゲル、ゾルまたは液体を液体冷媒に浸漬し凍結する工程を含むことを特徴とする、多孔質複合体の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法によって得られる、第8リン酸カルシウムとコラーゲンとを含む多孔質複合体。
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