JP7177588B2 - 骨補填材および骨補填材の製造方法 - Google Patents
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本発明の一態様は、リン酸カルシウムと生分解性高分子とを、4:1以上10:1未満の質量比で含み、前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、前記生分解性高分子が架橋されている多孔質の骨補填材である。
上記態様の一実施形態において、前記生分解性高分子は化学的架橋される。
上記態様の他の実施形態において、前記粒子の最頻径は1μm以上20μm以下である。
なお、「最頻径」とは、粒子の粒度分布において、粒子径に対する体積%もしくは個数%の極大値であり、モード径とも呼ばれる。
また、前記骨補填材の気孔率を、50%以上であることとしてもよい。
このようにすることで、細胞や血管等の組織の侵入のために必要な骨補填材の気孔径を確保するとともに、細胞増殖および骨組織の形成に必要な血液や体液の循環が可能な空間を確保することができる。その結果、新生骨形成をさらに促進することができる。
このようにすることで、骨伝導能に優れ、かつ、高い生体吸収性を有する骨補填材を生成することができる。
このようにすることで、簡易に柔軟性を有する骨補填材を生成することができる。
このようにすることで、生成した骨補填材の弾力性、柔軟性および、形状回復性を向上させることができ、新生骨形成に必要な細胞や組織が侵入するための空間を維持することができる。また、新生骨形成のための足場環境の安定性を向上させることができる。
このようにすることで、湿潤状態であっても形状回復性が高く、かつ、生体安全性が高い骨補填材を得ることができる。
また、前記骨補填材の気孔率が、50%以上であることが好ましい。
このようにすることで、細胞や血管等の組織の侵入のために必要な骨補填材の気孔径を確保するとともに、細胞増殖および骨組織の形成に必要な血液や体液、酸素の循環が可能な空間を確保することができる。その結果、新生骨形成をさらに促進することができる。
このようにすることで、骨伝導能に優れ、かつ、高い生体吸収性を有する骨補填材を製造することができる。
このようにすることで、簡易に柔軟性を有する骨補填材を製造することができる。
このようにすることで、生成した骨補填材の弾力性、柔軟性および、形状回復性を向上させることができ、新生骨形成に必要な細胞や組織が侵入するための空間を維持することができる。また、新生骨形成のための足場環境の安定性を向上させることができる。
このようにすることで、湿潤状態であっても形状回復性が高く、かつ、生体安全性が高い骨補填材を得ることができる。
本実施形態に係る骨補填材1は、図1および図2に示されるように、生分解性高分子であるコラーゲンを主成分とするコラーゲンマトリクス2と、β-TCP(β型-リン酸三カルシウム)3の微粉体とを混合させてなるコラーゲン/β-TCP複合材である。β-TCP3は、骨欠損部に移植された後、周囲の骨組織からの作用により徐々に生体に吸収されながら自家骨へと置換するようになっている。
化学架橋剤としては、架橋反応のしやすさや、得られた骨補填材1の生体適合性等を考慮すると、エポキシド、カルボジイミド等の架橋剤が特に好ましいが、これらに限られるものではない。
本実施形態に係る骨補填材1の製造方法は、図5(a)~(c)に示されるように、β-TCP3の微粉体を製造するβ-TCP微粉体製造工程SAと、熱変性コラーゲンを製造する熱変性コラーゲン製造工程SBと、β-TCP微粉体製造工程SAおよび熱変性コラーゲン製造工程SB1により得られたβ-TCP3の微粉体およびアテロコラーゲン酸性溶液からコラーゲン/β-TCP複合材からなる骨補填材1を製造する骨補填材製造工程SCとを備えている。
合成ステップSA1は、例えば、カルシウム供給物質とリン酸供給物質から合成されたβ-TCP3の前駆物質を含むスラリーを乾燥することにより行われる。この合成ステップSA1によりβ-TCP3の前駆体が得られる。
焼成ステップSA2は、ステップSA1により得られたβ-TCP3の前駆体を焼成することにより行われる。これにより、β-TCP3の凝集体が得られる。
粉砕ステップSA3は、例えば、ステップSA2により得られたβ-TCP3の凝集体を十分に細かく粉砕すること等により行われる。これにより、β-TCP3の微粉体が得られる。なお、粉砕の方法は特に限定されない。
〔実施例1〕
(形状回復性評価)
β-TCPとコラーゲンの配合質量比を変えた合計4つの骨補填材1の試料を作製し、作製した各試料の形状回復性を、以下の手順により評価した。
まず、xを、コラーゲンを1としたときのβ-TCPの質量比、yを、β-TCP微粉体粒子の最頻径としたとき、xBTyであらわされる以下の4つの試料を調製した。なお、β-TCP微粉体粒子の最頻径yは、全て10μm未満に調製した。
試料1: 4BT10(β-TCP:コラーゲン=4:1(w/w))
試料2: 9BT10(β-TCP:コラーゲン=9:1(w/w))
試料3:13BT10(β-TCP:コラーゲン=13:1(w/w))
試料4:16BT10(β-TCP:コラーゲン=16:1(w/w))
試料1~4は全て1cm3の立方体に加工された。
まず、試料1~4のそれぞれに最大吸水可能量を超えて吸水不可となるまでRO水(Reverse Osmosis水)を滴下した。次に、十分吸水させた試料1~4を、オートグラフを用いて荷重をかけ、厚さが2mmになるまで圧縮した。次に、圧縮された試料1~4を除圧して形状を回復させ、回復した試料1~4の厚さを測定した。以上の手順を10回繰り返し、試料1~4の形状回復率を測定した。試料1~4の形状回復率測定結果を図6に示す。
(新生骨形成能評価)
次に、β-TCPとコラーゲンの配合質量比およびβ-TCP粒子の最頻径を変えた合計10個の骨補填材1のサンプルを作製し、作製した各試料の新生骨形成能を比較した。
具体的には、作製したサンプルA~Jをそれぞれ直径3mmに切り出して、ラットの頭蓋骨の左右に形成した直径3mmの骨欠損部に移植した(図7参照)。移植後、頭蓋骨の骨膜は保存して縫合した。移植から6週間経過後のμCT画像を撮像して各サンプルA~Jの新生骨再生状態を観察した。その写真を図10に示す。また、図14には、各サンプルA~Jの骨補填材1断面を低倍率および高倍率で観察したSEM画像が、それぞれ示されている。移植から6週間経過後のサンプルA~Jを移植部周囲の頭蓋骨とともに摘出し、骨伝導性と骨進入性を評価した。なお、比較例として、骨欠損部に骨補填材1を移植せずに空洞のままとした場合をサンプルKとした。
また、骨進入性の評価は、移植された骨補填材1が骨欠損部の中心部に進入していることが確認された場合には2ポイント(図9(a)参照))、骨欠損部の辺縁部のみで新生骨が形成されていることが確認された場合には1ポイント(図9(b)参照)、骨進入が確認されなかった場合には0ポイント(図9(c)参照)として評価した。
骨伝導性および骨進入性の判定基準を表2に示す。
また、骨補填材1のβ-TCP粒子の最頻径を100-300μmとしたサンプルC~FおよびJ、および、β-TCP粒子の最頻径を50-100μmとしたサンプルIでは、β-TCPとコラーゲンの質量比の大小にかかわらず、骨伝導性および骨進入性の合計スコアは1~2ポイントと低かった。図10に示される6週間経過後のサンプルC~F、I、およびJのμCT画像では、骨欠損部内に充填された骨補填材1の癒合および骨進入が殆ど進んでいないことが確認された。
(成分質量比評価)
次に、実施例2のサンプルAおよびBの成分質量比を測定した。成分質量比測定は、焼成により減少したコラーゲン質量を算出することにより行った。
具体的は、まず、焼成に用いるるつぼの質量を測定した。次に、サンプルA(β-TCP/コラーゲン=10/1(w/w:仕込み時)およびサンプルB(β-TCP/コラーゲン=5/1(w/w:仕込み時)質量を測定した。その後、サンプルAおよびBをるつぼに入れ、マッフル炉により1050℃で10時間焼成した。焼成後、サンプルAおよびBに残存するβ-TCPの質量を測定した。この測定結果から、減少したコラーゲンの重量質量を算出した。最後に、焼成前のサンプルAおよびサンプルBにおけるβ-TCP/コラーゲンの質量比を算出した。
<測定結果>
るつぼAの質量:152.0460g
焼成前質量:るつぼA+サンプルA(β-TCP/コラーゲン複合材)の質量=156.1773g
焼成後質量:るつぼA+サンプルA(β-TCP)の質量=155.7560g
<算出結果>
β-TCP+コラーゲン複合材の質量:4.1313g
β-TCP質量:3,710g
コラーゲン質量:0.4213g
β-TCP/コラーゲン質量比=8.81/1(w/w)
(サンプルB)
<測定結果>
るつぼB質量:10.3905g
焼成前質量:るつぼB+サンプルB(β-TCP/コラーゲン複合材)の質量=10.4572g
焼成後質量:るつぼB+サンプルB(β-TCP)の質量=10.4444g
<算出結果>
β-TCP+コラーゲン複合材の質量:
0.0667g
β-TCP質量:0.0539g
コラーゲン質量:0.0128g
β-TCP/コラーゲン質量比=4.21/1(w/w)
以上より、新生骨形成の促進効果が認められたサンプルAおよびサンプルBのβ-TCP/コラーゲンの質量比が、それぞれ、8.81/1(w/w)、4.21/1(w/w)であることが確認された。
(気孔率および気孔径測定)
次に、骨補填材1のβ-TCP粒子の気孔率および気孔径を測定した結果を以下に示す。気孔率の測定は、水銀圧入法による細孔分布測定とした。
まず、前処理として、β-TCP粒子を120℃で4
時間真空乾燥した。次に、水銀の表面張力を480dynes/cm、水銀とβ-TCP粒子との接触角を140degreesに設定して、β-TCP粒子の細孔に水銀を浸入させた。測定装置としては、オートポアIV9520(micromeritics
社製)を使用した。
測定結果を以下に示す。
<測定結果>
β-TCP粒子の気孔率:96%
β-TCP粒子の気孔径(メジアン径):141.1μm
β-TCP粒子の気孔径の許容範囲:20~1000μm
β-TCP粒子の気孔径最適範囲:50~500μm
最後に、β-TCP粒子の粒度分布を測定した結果を以下に示す。
まず、前処理として、β-TCP粒子を少量取り、精製水を加えて、5分間超音波処理することにより、β-TCP粒子の凝集をキャンセルした。測定条件は、β-TCPの屈折率は1.557-0.000i、水の屈折率を1.333と規定した。測定装置としては、LS
13320(BECKMAN COULTER 社)を使用した。
測定結果を以下に示す。
<測定結果>
β-TCP粒子の最頻径:15.65μm
2 コラーゲンマトリクス(生分解性高分子)
3 β-TCP(リン酸カルシウム)
4 気孔
5 架橋剤
SA β-TCP微粉体製造工程
SB コラーゲンマトリクス製造工程
SC 骨補填材製造工程
Claims (9)
- リン酸カルシウムと、化学架橋剤によって架橋された生分解性高分子とを、4:1以上10:1未満の質量比で含み、前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、
前記化学架橋剤が、エポキシドおよびカルボジイミドの少なくともいずれかを含み、
前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)であり、
前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含む多孔質の骨補填材。 - 前記粒子の最頻径が1μm以上20μm以下である請求項1に記載の多孔質の骨補填材。
- 前記骨補填材の気孔径は、20μmより大きい請求項1または請求項2に記載の骨補填材。
- 前記骨補填材の気孔率は50%以上である請求項1から請求項3のいずれかに記載の骨補填材。
- リン酸カルシウムを含む前駆体を焼成してリン酸カルシウム微粉体を生成するステップと、
該リン酸カルシウム微粉体を、生分解性高分子溶液に混合して攪拌するステップと、
該攪拌ステップにより得られた成果物に架橋剤を添加して架橋することにより三次元構造の生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を形成させる架橋ステップと、
該架橋ステップにより生成した前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材懸濁液を凍結乾燥するステップと、
該凍結乾燥ステップにより得られたスポンジ状の前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材多孔体から未反応の前記架橋剤および反応副生成物を洗浄除去する洗浄ステップと、
洗浄された前記生分解性高分子/リン酸カルシウム複合材多孔体を凍結及び乾燥して骨補填材を生成するステップと、を含み、
前記リン酸カルシウムと前記生分解性高分子との質量混合比が、4:1以上10:1未満であり、
前記リン酸カルシウムは、粒径が異なる複数の粒子を含み、該粒子の最頻径が20μm以下であり、
前記リン酸カルシウムが、β型-リン酸三カルシウム(β-TCP)であり、
前記生分解性高分子が、少なくともコラーゲンを含む骨補填材の製造方法。 - 前記骨補填材の気孔径は、20μmより大きい請求項5に記載の骨補填材の製造方法。
- 前記骨補填材の気孔率は50%以上である請求項5または6に記載の骨補填材の製造方法。
- 前記架橋が化学的架橋である請求項5から請求項7のいずれかに記載の骨補填材の製造方法。
- 前記化学的架橋に用いられる化学架橋剤が、エポキシド、カルボジイミドの少なくともいずれかを含む請求項8に記載の骨補填材の製造方法。
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