JP2008086676A - リン酸カルシウム系骨補填材 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞等の初期付着性に優れ、かつ、十分な機械的強度を有し、骨親和性および骨誘導性に優れた多孔質構造を有するリン酸カルシウム系骨補填材を提供する。
【解決手段】β‐リン酸三カルシウムの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面の少なくとも一部にβ‐リン酸三カルシウムの針状粒子が接しており、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下、各気孔間の連通部の平均孔径が30μm以上100μm以下である骨補填材を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】β‐リン酸三カルシウムの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面の少なくとも一部にβ‐リン酸三カルシウムの針状粒子が接しており、前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下、各気孔間の連通部の平均孔径が30μm以上100μm以下である骨補填材を用いる。
【選択図】なし
Description
本発明は、骨欠損部の補填に好適に用いることができるリン酸三カルシウムの多孔体からなる骨補填材に関する。
近年、骨腫瘍の摘出や外傷等によって生じた骨欠損部に、骨補填材等を補填することにより骨を再生させて、欠損部を修復することが可能になってきた。
前記骨補填材の材質としては、リン酸カルシウム系化合物であるハイドロキシアパタイト(HAp)、リン酸三カルシウム(TCP)等が知られている。
前記骨補填材の材質としては、リン酸カルシウム系化合物であるハイドロキシアパタイト(HAp)、リン酸三カルシウム(TCP)等が知られている。
上記リン酸カルシウム系化合物のうち、骨補填材の材質として最も一般的なHApは、骨誘導能に優れているものの、生体内ではほとんど吸収されない。
このため、体内に異物を残留させないようにする観点から、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)等の生体吸収性を有する材料が、骨再生の足場として多く使用されるようなってきている。
β‐TCPは、骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ‐TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングを行うことができる。すなわち、骨欠損部に補填されたβ‐TCPは、経時的に自家骨に置換される。
このため、体内に異物を残留させないようにする観点から、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)等の生体吸収性を有する材料が、骨再生の足場として多く使用されるようなってきている。
β‐TCPは、骨欠損部の骨細胞に接触させておくと、破骨細胞がβ‐TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成する、いわゆるリモデリングを行うことができる。すなわち、骨欠損部に補填されたβ‐TCPは、経時的に自家骨に置換される。
また、近年、骨補填材は、上記のような材質の選択のみならず、様々な形態の検討もなされており、骨補填材に適した構造として、例えば、多孔体やそれとの複合体等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−329005号公報
上記のような多孔体は、骨補填材として生体内に埋入した際、該多孔体内部への骨芽細胞、破骨細胞、血管等の生体組織の侵入が促進されるため、生体吸収性を高めることができる。
しかしながら、β‐TCPのような生体吸収性材料の場合、その吸収速度は、多孔体の気孔率や構造が大きく関与しており、生体内での骨形成速度と骨補填材の吸収速度とのバランスのとれた多孔体を作製することは困難であった。例えば、生体吸収性を高めるために、多孔体の気孔率を高くすると、機械的強度が低下するため、このような多孔体は、負荷のかかる比較的高い強度が要求される部位には使用できないという課題を有していた。
したがって、骨が再生するまでの間、骨に代わって荷重を支えるのに十分な機械的強度を有しており、かつ、細胞等との親和性に優れ、骨形成速度と生体吸収速度との適度なバランスを保持可能であるリン酸カルシウム系多孔体が求められていた。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、細胞等の初期付着性に優れ、かつ、十分な機械的強度を有し、骨親和性および骨誘導性に優れた多孔質構造を有するリン酸カルシウム系骨補填材を提供することを目的とするものである。
本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、β‐TCPの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面に、β‐TCPの針状粒子を有していることを特徴とする。
骨親和性および骨誘導性に優れたβ‐TCP多孔体を、結晶面の異なる球状粒子と針状粒子とを用いて構成することにより、細胞等の初期付着性および機械的強度の向上を図ることができる。
骨親和性および骨誘導性に優れたβ‐TCP多孔体を、結晶面の異なる球状粒子と針状粒子とを用いて構成することにより、細胞等の初期付着性および機械的強度の向上を図ることができる。
前記リン酸カルシウム系骨補填材においては、多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下、各気孔間の連通部の平均孔径が30μm以上100μm以下であり、該多孔体表面の少なくとも一部に前記針状粒子が接していることが好ましい。
β‐TCP多孔体が、上記のような独自の気孔間連通構造を有していることにより、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進され、骨の形成促進が図られ、また、その表面に針状粒子が形成されていることにより、細胞等の初期付着性の向上を図ることができる。
β‐TCP多孔体が、上記のような独自の気孔間連通構造を有していることにより、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進され、骨の形成促進が図られ、また、その表面に針状粒子が形成されていることにより、細胞等の初期付着性の向上を図ることができる。
また、前記針状粒子は、長軸長さ10μm以上100μm以下、アスペクト比20以上であることが好ましい。
このような形態の針状粒子であれば、多孔体の気孔同士、または、気孔と多孔体の骨格壁とにわたって接した状態とすることができ、細胞等の付着性の向上を図ることができる。
このような形態の針状粒子であれば、多孔体の気孔同士、または、気孔と多孔体の骨格壁とにわたって接した状態とすることができ、細胞等の付着性の向上を図ることができる。
さらに、前記針状粒子の重量が、前記多孔体に対して1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
針状粒子の量を上記範囲内とすることにより、前記多孔体への細胞等の接着性を向上させることができる。
針状粒子の量を上記範囲内とすることにより、前記多孔体への細胞等の接着性を向上させることができる。
上述したとおり、本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材によれば、結晶面の異なる2種類のβ‐TCP粒子を用いて多孔体を構成することにより、細胞等の初期付着性および機械的強度の向上が図られる。
したがって、本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、骨親和性および骨誘導性に優れた骨補填材として好適に用いることができるのみならず、組織工学の細胞足場材料(スキャホールド)としての利用も期待される。
したがって、本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、骨親和性および骨誘導性に優れた骨補填材として好適に用いることができるのみならず、組織工学の細胞足場材料(スキャホールド)としての利用も期待される。
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、β‐TCPの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面に、β‐TCPの針状粒子を有しているものである。
すなわち、本発明に係る骨補填材は、針状および球状の2種類の形態のβ‐TCP粒子からなる。
本発明に係るリン酸カルシウム系骨補填材は、β‐TCPの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面に、β‐TCPの針状粒子を有しているものである。
すなわち、本発明に係る骨補填材は、針状および球状の2種類の形態のβ‐TCP粒子からなる。
β‐TCPは、人体への適用も既に認められており、上述したように、骨親和性および骨誘導性に優れており、骨補填材に好適な材質である。
このβ‐TCPの一つの結晶面には、リン酸イオンまたはカルシウムイオンの少なくともいずれかが存在し、表面に存在するこれらのイオン数は、針状と球状との粒子形態の相違によって異なる。このため、異なる結晶面を有する粒子が、多孔体表面に存在することにより、該多孔体への細胞等の付着性等を向上させることができる。
なお、本発明におけるβ‐TCPは、リン酸カルシウム水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が、炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換されたものが含まれていてもよい。
このβ‐TCPの一つの結晶面には、リン酸イオンまたはカルシウムイオンの少なくともいずれかが存在し、表面に存在するこれらのイオン数は、針状と球状との粒子形態の相違によって異なる。このため、異なる結晶面を有する粒子が、多孔体表面に存在することにより、該多孔体への細胞等の付着性等を向上させることができる。
なお、本発明におけるβ‐TCPは、リン酸カルシウム水酸イオンおよび/またはリン酸イオンの一部が、炭酸イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン等で置換されたものが含まれていてもよい。
前記β‐TCP多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下、各気孔間の連通部の平均孔径が30μm以上100μm以下であり、該多孔体表面の少なくとも一部に前記針状粒子が接している構造であることが好ましい。
このように、β‐TCP多孔体が、多数の球状の気孔が全体にわたって三次元的に分布し、隣接する気孔同士が相互に連通した独自の気孔間連通構造を有していることにより、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進され、骨の形成促進が図られる。
なお、球状の気孔とは、厳密な真球状に限定されるものではなく、真球がやや扁平したり、歪んだりした形状等の気孔も含む。
このように、β‐TCP多孔体が、多数の球状の気孔が全体にわたって三次元的に分布し、隣接する気孔同士が相互に連通した独自の気孔間連通構造を有していることにより、該多孔体の内部への細胞の侵入が促進され、骨の形成促進が図られる。
なお、球状の気孔とは、厳密な真球状に限定されるものではなく、真球がやや扁平したり、歪んだりした形状等の気孔も含む。
前記多孔体は、気孔内部での骨形成促進の観点から、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下であることが好ましい。
前記平均気孔径が150μm未満である場合は、該多孔体の内部に、細胞や組織が侵入しにくく、気孔内部での骨の形成促進を十分に図ることができない。
一方、前記平均気孔径が300μmを超える場合は、空間が大きすぎるため、気孔内に侵入した細胞が係留されにくく、十分に定着することが困難となり、この場合も、気孔内部での骨の形成促進効果は不十分となる。
なお、前記気孔率は、体積、重量、真比重から求めたものである。
また、気孔の平均孔径は、該多孔体を樹脂包埋して、表面を研磨し、電子顕微鏡観察等での画像解析による気孔断面積から求めたものである。測定する気孔の個数は、多いほど高精度であるが、一般には、300個以上測定すれば足りる。前記気孔断面積は、必ずしも気孔の直径断面ではなく、ほぼ球状の気孔の一部の断面の面積であるため、Johnson−Salktov法により三次元的な補正を行った値が用いられる。この気孔断面積から気孔の直径分布が求められ、気孔体積の累積分布において、総気孔体積の50%を占める気孔径を気孔の平均孔径とする。
前記平均気孔径が150μm未満である場合は、該多孔体の内部に、細胞や組織が侵入しにくく、気孔内部での骨の形成促進を十分に図ることができない。
一方、前記平均気孔径が300μmを超える場合は、空間が大きすぎるため、気孔内に侵入した細胞が係留されにくく、十分に定着することが困難となり、この場合も、気孔内部での骨の形成促進効果は不十分となる。
なお、前記気孔率は、体積、重量、真比重から求めたものである。
また、気孔の平均孔径は、該多孔体を樹脂包埋して、表面を研磨し、電子顕微鏡観察等での画像解析による気孔断面積から求めたものである。測定する気孔の個数は、多いほど高精度であるが、一般には、300個以上測定すれば足りる。前記気孔断面積は、必ずしも気孔の直径断面ではなく、ほぼ球状の気孔の一部の断面の面積であるため、Johnson−Salktov法により三次元的な補正を行った値が用いられる。この気孔断面積から気孔の直径分布が求められ、気孔体積の累積分布において、総気孔体積の50%を占める気孔径を気孔の平均孔径とする。
また、隣接する前記気孔間の連通部の平均孔径は、30μm以上100μm以下である。
上記範囲内の大きさを有する連通部であれば、細胞や生体組織、血管等が侵入可能であり、多孔体内部での骨の形成促進を図ることができる。
なお、この気孔間の連通部の平均孔径は、水銀ポロシメータにより測定したメジアン径(体積基準)である。
上記範囲内の大きさを有する連通部であれば、細胞や生体組織、血管等が侵入可能であり、多孔体内部での骨の形成促進を図ることができる。
なお、この気孔間の連通部の平均孔径は、水銀ポロシメータにより測定したメジアン径(体積基準)である。
本発明に係る骨補填材においては、上記のようなβ‐TCPからなる多孔体表面の少なくとも一部に、β‐TCPの針状粒子が接している構成からなることが好ましい。
この針状粒子は、多孔体の骨格を構成している球状粒子と結晶面が異なるようにするため、長軸長さ10μm以上100μm以下、アスペクト比20以上であることが好ましい。
また、上記のようなサイズ、形態とすることにより、多孔体の気孔同士、または、気孔と多孔体の骨格壁とにわたって接した状態とすることができ、細胞等の付着性の向上を図ることができる。
この針状粒子は、多孔体の骨格を構成している球状粒子と結晶面が異なるようにするため、長軸長さ10μm以上100μm以下、アスペクト比20以上であることが好ましい。
また、上記のようなサイズ、形態とすることにより、多孔体の気孔同士、または、気孔と多孔体の骨格壁とにわたって接した状態とすることができ、細胞等の付着性の向上を図ることができる。
また、前記針状粒子は、前記多孔体に対する重量が1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
前記重量が1重量%未満である場合、針状粒子を用いることによる効果が十分に得られない。
一方、前記重量が10重量%を超える場合、多孔体の骨格を構成する球状粒子の露出面積が小さくなり、骨形成促進効果が抑制されることとなる。
前記重量が1重量%未満である場合、針状粒子を用いることによる効果が十分に得られない。
一方、前記重量が10重量%を超える場合、多孔体の骨格を構成する球状粒子の露出面積が小さくなり、骨形成促進効果が抑制されることとなる。
上記のような構造を有する本発明に係るβ‐TCPの球状粒子を骨格とする多孔体は、例えば、特開2002−121088号公報に記載されているような製造方法、すなわち、β‐TCPを含むスラリーを撹拌起泡させる方法によって作製することができる。
撹拌起泡により気孔が形成された多孔体は、気孔を区画する骨格自体は緻密であり、気孔がほぼ球状となり、高気孔率であるにもかかわらず、比較的高強度であり、また、毛管現象により、細胞や血液等が浸透しやすい性状が得られる。さらに、単位体積当たりの表面積が大きく、侵入した細胞の足場としても好適な性状となりやすい等の優れた特性を有している。
撹拌起泡により気孔が形成された多孔体は、気孔を区画する骨格自体は緻密であり、気孔がほぼ球状となり、高気孔率であるにもかかわらず、比較的高強度であり、また、毛管現象により、細胞や血液等が浸透しやすい性状が得られる。さらに、単位体積当たりの表面積が大きく、侵入した細胞の足場としても好適な性状となりやすい等の優れた特性を有している。
一方、前記針状粒子の作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特開2004−284933号公報に記載された方法、あるいはまた、水熱処理による方法等により作製することができる。
水熱処理法においては、具体的には、湿式法により合成したβ‐TCPスラリーを吸引ろ過し、得られた固体を、オートクレーブ中にて、飽和蒸気圧下、24時間水熱処理を施すことにより、針状粒子が得られる。
水熱処理法においては、具体的には、湿式法により合成したβ‐TCPスラリーを吸引ろ過し、得られた固体を、オートクレーブ中にて、飽和蒸気圧下、24時間水熱処理を施すことにより、針状粒子が得られる。
そして、上記のようにして作製したβ‐TCPの多孔体の成形体の表面に、前記針状粒子のスラリーを均一にコーティングし、乾燥した後、焼成することにより、本発明に係る骨補填材が得られる。
前記焼成温度は、1000〜1200℃であることが好ましい。
前記焼成温度が1000℃未満であると、焼結が不十分となる場合がある。
一方、前記焼成温度が1200℃を超える場合、粒成長が生じ、生体内で吸収されにくくなる。
上記範囲内で焼成温度を調整することによって、粒子径を制御することができ、これにより、TCP多孔体の生体吸収速度を制御することができるため、用途に応じた多孔体の物性設計が自在となる。
前記焼成温度が1000℃未満であると、焼結が不十分となる場合がある。
一方、前記焼成温度が1200℃を超える場合、粒成長が生じ、生体内で吸収されにくくなる。
上記範囲内で焼成温度を調整することによって、粒子径を制御することができ、これにより、TCP多孔体の生体吸収速度を制御することができるため、用途に応じた多孔体の物性設計が自在となる。
なお、β‐TCP原料粉末は、一般に知られている方法により製造することができる。本発明に係る骨補填材においては、例えば、生体必須元素の一つであり、骨中に多く存在しており、また、多孔体の焼結性および強度の向上を図ることができることから、下記に示すような方法で合成されたMg添加β‐TCP粉末を好適に用いることができる。
TCP中のCa分の所望のMg置換量に基づいて、所定量の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と塩化マグネシウム(MgCl2)と水とを撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製し、これに、リン酸(H3PO4)水溶液を徐々に全量滴下した後、撹拌する。エージング後、ろ過し、固形分を乾燥させ、仮焼することにより、Mg添加されたTCP合成粉末が得られる。
また、同様の方法で、MgCl2を添加せずに合成して得られたMgを含まないβ‐TCP粉末を用いてもよい。
TCP中のCa分の所望のMg置換量に基づいて、所定量の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と塩化マグネシウム(MgCl2)と水とを撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製し、これに、リン酸(H3PO4)水溶液を徐々に全量滴下した後、撹拌する。エージング後、ろ過し、固形分を乾燥させ、仮焼することにより、Mg添加されたTCP合成粉末が得られる。
また、同様の方法で、MgCl2を添加せずに合成して得られたMgを含まないβ‐TCP粉末を用いてもよい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
(Ca+Mg)/P=1.528、Ca分のMg置換量が2mol%であるβ‐TCP粉末を、以下のようにして作製した。
まず、Ca(OH)213.4770molと、MgCl20.2750molと、純水15dm3とを30分間撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製した。
一方、H3PO49.0mol、純水3dm3を30分間撹拌して、リン酸水溶液を調製した。
前記水酸化カルシウムスラリーに、前記リン酸水溶液を20〜25cm3・min-1で徐々に全量滴下した後、4時間撹拌した。
得られたβ‐TCPスラリーを24時間エージング後、ろ過し、固形分を80℃で乾燥させた。
得られた合成粉末を800℃で仮焼し、β‐TCP粉末を得た。
[実施例1]
(Ca+Mg)/P=1.528、Ca分のMg置換量が2mol%であるβ‐TCP粉末を、以下のようにして作製した。
まず、Ca(OH)213.4770molと、MgCl20.2750molと、純水15dm3とを30分間撹拌混合して、水酸化カルシウムスラリーを調製した。
一方、H3PO49.0mol、純水3dm3を30分間撹拌して、リン酸水溶液を調製した。
前記水酸化カルシウムスラリーに、前記リン酸水溶液を20〜25cm3・min-1で徐々に全量滴下した後、4時間撹拌した。
得られたβ‐TCPスラリーを24時間エージング後、ろ過し、固形分を80℃で乾燥させた。
得られた合成粉末を800℃で仮焼し、β‐TCP粉末を得た。
また、上記と同様の方法で作製したβ‐TCPスラリーを吸引ろ過し、得られた固形分をオートクレーブ内で、200℃で24時間静置し、針状粒子を得た。
次に、β‐TCP多孔体を以下のようにして作製した。
上記により得られた平均粒子径1μmのMg添加β‐TCP原料粉末500.00gに、分散媒として20重量%ポリエチレンイミン水溶液334.59gを加え、ボールミルで48時間混合してスラリーを調製した。
得られたβ‐TCPスラリー700.00gに、起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル1.40gを添加し、機械的撹拌により1200cm3まで起泡し、泡沫状のスラリーを得た。
これに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル13.7gを添加し、撹拌した後、200mm×300mm×30mmの型に鋳込んだ。
上記により得られた平均粒子径1μmのMg添加β‐TCP原料粉末500.00gに、分散媒として20重量%ポリエチレンイミン水溶液334.59gを加え、ボールミルで48時間混合してスラリーを調製した。
得られたβ‐TCPスラリー700.00gに、起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル1.40gを添加し、機械的撹拌により1200cm3まで起泡し、泡沫状のスラリーを得た。
これに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル13.7gを添加し、撹拌した後、200mm×300mm×30mmの型に鋳込んだ。
前記針状粒子30gを20重量%ポリエチレンイミン水溶液30gに懸濁させた針状粒子スラリーを作製し、これに、架橋剤としてソルビトールポリグリシジルエーテル1.38gを添加した。
この針状粒子スラリー5gを、前記泡沫スラリーのゲル化体の表面全体に満遍なくコーティングした。
得られたゲル化体を乾燥した後、1200℃で焼成し、TCP多孔体を得た。
得られた多孔体は、気孔同士が全体にわたって連通しており、気孔率70.2%、平均気孔径140μm、連通部の平均孔径38μmであった。
なお、気孔率は、体積、重量、真比重から求めた。また、平均気孔径は、該多孔体を樹脂包埋し、表面を研磨したものを電子顕微鏡観察し、画像解析により求めた。また、気孔間連通部の平均孔径は、水銀ポロシメータを用いて、水銀圧入法により測定した。
この針状粒子スラリー5gを、前記泡沫スラリーのゲル化体の表面全体に満遍なくコーティングした。
得られたゲル化体を乾燥した後、1200℃で焼成し、TCP多孔体を得た。
得られた多孔体は、気孔同士が全体にわたって連通しており、気孔率70.2%、平均気孔径140μm、連通部の平均孔径38μmであった。
なお、気孔率は、体積、重量、真比重から求めた。また、平均気孔径は、該多孔体を樹脂包埋し、表面を研磨したものを電子顕微鏡観察し、画像解析により求めた。また、気孔間連通部の平均孔径は、水銀ポロシメータを用いて、水銀圧入法により測定した。
[比較例1]
針状粒子スラリーによるコーティングを施さず、それ以外については、実施例1と同様にして、TCP多孔体を得た。
得られた多孔体の多孔質構造は、実施例1とほぼ同様であった。
針状粒子スラリーによるコーティングを施さず、それ以外については、実施例1と同様にして、TCP多孔体を得た。
得られた多孔体の多孔質構造は、実施例1とほぼ同様であった。
上記実施例1および比較例1において得られた各TCP多孔体について、細胞培養試験を行った。
培養試験は、12穴の細胞培養用ポリスチレンプレートを用い、播種する細胞は新生児C57BL/6 マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞様樹立株MC3T3−E1、培地は牛胎児血清(FBS;GIBCO BRL)を10vol%添加したα−最小必須培地(α−MEM;GIBCO BRL)を用いた。
直径22.1mm、厚さ2mmの円板状の前記多孔体上に、細胞密度3×104個/cm3の細胞懸濁液2cm3を播種し、5%CO2インキュベータ内で37℃で5時間培養を行った。
培養試験は、12穴の細胞培養用ポリスチレンプレートを用い、播種する細胞は新生児C57BL/6 マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞様樹立株MC3T3−E1、培地は牛胎児血清(FBS;GIBCO BRL)を10vol%添加したα−最小必須培地(α−MEM;GIBCO BRL)を用いた。
直径22.1mm、厚さ2mmの円板状の前記多孔体上に、細胞密度3×104個/cm3の細胞懸濁液2cm3を播種し、5%CO2インキュベータ内で37℃で5時間培養を行った。
この培養開始5時間後の前記多孔体への細胞の初期付着率を求めたところ、実施例1に係る多孔体は76.3%、比較例1に係る多孔体は73.5%、標準基材(12穴の細胞培養用ポリスチレンプレート)は78.7%であった。
各試験対象間で分散分析(ANOVA)による統計処理を行ったところ、危険率5%で有意差は認められなかったが、多孔体表面に針状粒子と球状粒子の2種類の結晶が存在する方が、細胞の初期付着率が高くなる傾向が認められた。
各試験対象間で分散分析(ANOVA)による統計処理を行ったところ、危険率5%で有意差は認められなかったが、多孔体表面に針状粒子と球状粒子の2種類の結晶が存在する方が、細胞の初期付着率が高くなる傾向が認められた。
Claims (4)
- β‐リン酸三カルシウムの多孔質球状粒子を骨格とした多孔体表面に、β‐リン酸三カルシウムの針状粒子を有していることを特徴とするリン酸カルシウム系骨補填材。
- 前記多孔体は、球状の気孔が全体にわたって連通した多孔質構造を有し、気孔率が65%以上85%以下、平均気孔径が150μm以上300μm以下、各気孔間の連通部の平均孔径が30μm以上100μm以下であり、該多孔体表面の少なくとも一部に前記針状粒子が接していることを特徴とする請求項1記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
- 前記針状粒子が、長軸長さ10μm以上100μm以下、アスペクト比20以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
- 前記針状粒子の重量が、前記多孔体に対して1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のリン酸カルシウム系骨補填材。
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