JPWO2016052657A1 - 万能性幹細胞の培養方法 - Google Patents

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Abstract

万能性幹細胞のより安全性が高く効率的な培養方法が提供される。本発明は、単離された万能性幹細胞を擬微小重力環境下で培養することにより、万能性幹細胞を未分化性を保持した状態で増殖させ、万能性幹細胞のスフェロイドを形成及び成長させることを含む、万能性幹細胞の培養方法、及びその方法を用いた万能性幹細胞の分化誘導方法に関する。

Description

本発明は、万能性幹細胞の培養方法に関する。
人工多能性幹細胞(本明細書では、しばしば「iPS細胞」と称する)の発見(非特許文献1〜3)により、それを用いた再生医療の実用化の機運が高まっている。iPS細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)と同様に様々な組織や器官に分化が可能な万能性幹細胞であるが、胚性幹細胞と比較して多くの利点を有している。例えば胚性幹細胞は受精卵から樹立されるため倫理的問題を伴うのに対して、iPS細胞は体細胞からの樹立が可能であるため、倫理的問題は生じない。また胚性幹細胞は主要組織適合抗原(MHC)の相違により移植後の拒絶反応がしばしば生じるのに対し、iPS細胞は移植対象者由来の細胞から樹立されるため拒絶反応もほとんど生じることはない。
一方で、再生医療等におけるiPS細胞の利用には、実験室で用いられる細胞数106個程度の量では到底不十分であり、臨床応用する上では109〜1010オーダーの細胞数が必要であるが、その大量培養技術はまだ十分に確立されていない。またiPS細胞の場合、一般的に未分化状態を保持して培養するためにマウス胎児由来初代培養線維芽細胞(MEF)やSTO細胞などのフィーダー細胞上で培養する必要があるとされているが、フィーダー細胞の混入は再生医療に用いる上で大きな妨げとなる。そこで、フィーダーフリーでの細胞培養法の研究も行われており、マトリゲルでコーティングした基材表面上でiPS細胞を培養する手法や、ラミニンやラミニンの部分ペプチドによるコーティングを利用した培養法により、フィーダー細胞の存在がなくとも培養可能な方法が開発されている。また、通常のディッシュ培養ではなく、バッグを用いた培養も行われている。しかし、フィーダーフリーで培養可能な系においてもコーティングした基材上で培養を繰り返す必要があるため、培養工程が複雑であり、また培養にかかるコストが顕著に増大し、一患者の治療を行うための費用が莫大となるという深刻な問題を有している。未分化性を保持した安定なiPS細胞を効率的に大量培養する方法は未だ開発されていない。
ところで、細胞から3次元組織の構築を行う場合、通常適当な足場材料を用いて3次元培養を行うか、撹拌培養を行う必要がある。しかし、従来の撹拌培養では、細胞に与えられる機械的刺激や損傷が強く、大きな組織を得ることは困難か、あるいは得られたとしても内部で壊死を起こしていることが多かった。これに対し、重量を最適化するために設計された一連のバイオリアクターが存在する。その一つであるRWV(Rotating Wall Vessel)バイオリアクターは、NASAが開発したガス交換機能を備えた回転式バイオリアクターである。本発明者らは、以前からこのRWVバイオリアクターを用いた3次元培養による骨髄細胞等からの軟骨再生技術等の研究開発を行ってきた(特許文献1〜3)。
しかしフィーダー細胞やコーティング剤等の足場の存在しない環境では未分化状態での生育が難しいと考えられているiPS細胞を効率的に3次元培養する方法については未だ開発されていない。
国際公開WO2005/056072号 特開2009−159887号公報 国際公開WO2006/135103号
Takahashi, K. and Yamanaka, S., (2006) Cell 126, p.663-676 Takahashi K., et al., (2007) Cell 131, p.862-872 Nakagawa M., et al. (2008) Nat. Biotechnol., 26(1): p.101-106
本発明は、万能性幹細胞のより安全性が高く効率的な培養方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、擬微小重力環境下で万能性幹細胞を培養することにより、フィーダー細胞やコーティング剤の不在下であっても、未分化性を維持した万能性幹細胞を増殖させ、スフェロイドを形成させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。特にiPS細胞は、フィーダー細胞上で又はマトリゲルなどのコーティング剤の上で生育し、フィーダー細胞やコーティング剤の存在しない環境での生育は難しいと考えられていたことから、そのような細胞足場材料なしでiPS細胞を簡便に大量培養でき、スフェロイドを生成できるという本発明者らの発見は驚くべきものであった。本発明では、この培養方法によりコンタミネーションのリスクの少ない閉鎖系で万能性幹細胞を増殖させることができるため、安全性を高めることもできる。
より具体的には、本発明は以下を包含する。
[1]単離された万能性幹細胞を擬微小重力環境下で培養することにより、万能性幹細胞を未分化性を保持した状態で増殖させ、万能性幹細胞のスフェロイドを形成及び成長させることを含む、万能性幹細胞の培養方法。
[2]万能性幹細胞がiPS細胞である、上記[1]に記載の方法。
[3]細胞足場材料の不在下で前記培養を行う、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]万能性幹細胞が4x104〜6x104細胞/cm3の細胞密度で播種される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]アポトーシス阻害因子の存在下で培養を行う、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]アポトーシス阻害因子がROCKインヒビターである、上記[5]に記載の方法。
[7]擬微小重力環境が、時間平均して地球の重力の1/10〜1/100に相当する重力を物体に与える環境である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]擬微小重力環境が、回転で生じる応力により地球の重力を相殺することにより擬微小重力環境を地上で実現する1軸回転式バイオリアクターを用いて得られるものである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記1軸回転式バイオリアクターがRWVバイオリアクターである、上記[8]に記載の方法。
[10]スフェロイドから細胞を分散させ、培養することをさらに含む、上記[1]〜[9]に記載の方法。
[11]スフェロイドをろ過粒度40〜100μmのフィルターを通して1回又は2回以上破砕し、破砕されたスフェロイドを擬微小重力環境下で培養してスフェロイドを形成及び成長させる工程を1回又は2回以上繰り返すことを含む、上記[10]に記載の方法。
[12]前記の破砕されたスフェロイドを擬微小重力環境下で2〜7日間培養してスフェロイドを形成及び成長させる、上記[11]に記載の方法。
[13]上記[1]〜[12]のいずれかに記載の方法を実施し、得られた万能性幹細胞及び/又はスフェロイドを分化誘導培地でさらに培養することを含む、万能性幹細胞の分化を誘導する方法。
[14] 分化誘導培地での培養を、擬微小重力環境下で行う、上記[13]に記載の方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2014-201875号及び2015-017679号の開示内容を包含する。
本発明によれば、未分化性を維持した万能性幹細胞をより安全かつ効率的に増殖させることができる。
図1は253G1細胞をROCKインヒビター存在下でRWVバイオリアクターにより3日間回転培養して作製した球状スフェロイドの位相差像を示す写真である。図中のバーは500μmを示す。 図2は253G1細胞をROCKインヒビター存在下でRWVバイオリアクターにより3日間回転培養して作製した球状スフェロイドの直径分布を示す。 図3はRWVバイオリアクターにより3日間回転培養して作製した球状スフェロイド由来の細胞における多能性幹細胞マーカーの発現をフローサイトメトリーにより解析した結果を示す。AはFSC-A/SSC-Aドットプロット、BはSSC-A/PIドットプロット、CはSSEA-4/TRA-1-60ドットプロット、Dは図3A、B、Cで定義された各領域におけるイベント数とその割合を示す。 図4はフローサイトメトリーのネガティブコントロールの解析結果を示す。AはFSC-A/SSC-Aドットプロット、BはSSC-A/PIドットプロット、CはSSEA-4/TRA-1-60ドットプロット、Dは図4A、B、Cで定義された各領域におけるイベント数とその割合を示す。 図5はRWVバイオリアクターにより3日間回転培養(3次元培養)して作製した球状スフェロイド由来の253G1細胞における未分化マーカー遺伝子Nanog、Oct3/4及びSox2の発現量と、2次元培養した253G1細胞における発現量とを比較したグラフである。左が2次元培養、右が3次元培養の結果である。 図6はRWVバイオリアクターにより3日間回転培養(3次元培養)して作製した球状スフェロイド由来の253G1細胞を三胚葉分化キットを用いて染色した結果を示す。抗Otx2抗体(外胚葉染色用)、抗Brachyury抗体(中胚葉染色用)、及び抗Sox17抗体(内胚葉染色用)を染色に用いた。 図7は50mlベッセルを用いて253G1細胞を連続継代培養する試験の模式図である。 図8は50mlベッセルを用いて253G1細胞を3日間培養し作製した球状スフェロイドを、70μmフィルターを通すことにより砕いた小スフェロイドの位相差像を示す写真である。A:低倍率での位相差像、図中のバーは1000μmを示す。B:高倍率での位相差像、図中のバーは500μmを示す。 図9は50mlベッセルを用いた253G1細胞を連続培養した後の球状スフェロイドを採取し、未分化マーカーの発現量についてリアルタイムPCR測定を行った結果を示す。未分化マーカー遺伝子Nanog、Oct3/4及びSox2の発現量と、2次元培養した253G1細胞における発現量とを比較した。2Dは2次元培養の結果を表す。P5、P6、P7、及びP8は、平面培養からの各継代後(図7の模式図も参照されたい)の結果を表す。 図10はRWVバイオリアクターでの回転培養後に神経分化培地で培養したスフェロイドの細胞に対する、神経分化マーカーPax6(上段)及び未分化マーカーOct3/4(下段)を標的とした免疫抗体染色の結果を示す。 図11はRWVバイオリアクターでの回転培養後に神経分化培地で培養したスフェロイドの細胞に対するリアルタイムPCRによる解析結果を示す。AはNanog、BはPax6、CはSox1の発現量の培養時間依存的変化を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、単離された万能性幹細胞を擬微小重力環境下で培養することにより、万能性幹細胞を未分化性を保持した状態で増殖させることを含む、万能性幹細胞の培養(増殖)方法を提供する。
1. 擬微小重力環境及びバイオリアクター
本発明において、「擬微小重力環境」とは、宇宙空間等における微小重力環境を模して人工的に作り出された微小重力(simulated microgravity)環境を意味する。こうした擬微小重力環境は、例えば、回転で生じる応力によって地球の重力を相殺することにより実現される。回転している物体は、地球の重力と応力のベクトル和で表される力を受けるため、その大きさと方向は時間により変化する。回転している物体には、結局、時間平均すると物体には地球の重力(1g)よりもはるかに小さな重力しか作用しないこととなり、宇宙空間によく似た「擬微小重力環境」が実現される。
本発明における「擬微小重力環境」は、培養液(培地)中で万能性幹細胞が沈降することなく増殖でき、かつ生成した3次元細胞凝集体(スフェロイド)が沈降せずに液中に浮いた状態となるように調節されることが好ましい。例えば培養系に細胞に対する地球の重力の影響を最小化する回転速度で回転をかけることができる。具体的には、培養細胞にかかる微小重力を、時間平均して地球の重力(1g)の1/10〜1/100程度に相当する重力に低減するような回転速度とすることが好ましい。
本発明では、回転式のバイオリアクターを使用して、擬微小重力環境を実現することができる。そのようなバイオリアクターとしては、例えば、RWV(Rotating-Wall Vessel: US特許No.5,002,890)、RCCS(Rotary Cell Culture SystemTM: Synthecon Incorporated)、3D-clinostat、並びに特開平8-173143号、特開平9-37767号、及び特開2002-45173号に記載されているようなものを挙げることができる。本発明では1軸回転式のバイオリアクターを用いることが好ましい。多軸回転式(例えば、2軸式のclinostat等)では、ずれ応力(シェアストレス)を最小化することができず、またサンプル自体も回転するため、1軸回転式のようにベッセル内にふわふわと浮かんだ状態を再現することができないからである。なかでも、RWV及びRCCSはガス交換機能を備えているという点で優れている。
RWVバイオリアクターは、NASAによって開発されたガス交換機能を備えた1軸回転式のバイオリアクターであり、横向き円筒形バイオリアクター内に培養液を満たし、細胞を播種した後、その円筒の水平軸方向に沿って回転しながら培養を行う1軸回転式の回転培養装置である。RWVバイオリアクター内では、回転による応力のため地球の重力が相殺され、地上の重力に比較してはるかに小さい(100分の1程度)微小重力環境が実現され、細胞は培養液中に懸濁された状態で増殖し、3次元培養が可能となる。この擬微小重力環境下において、培養液中に懸濁された万能性幹細胞は効率よく増殖し、凝集してスフェロイド(3次元細胞凝集体;典型的には球状の、細胞凝集塊)を形成することができる。また擬微小重力環境下での培養により、万能性幹細胞のスフェロイドはより大きなサイズのスフェロイドに成長することができる。
万能性幹細胞を擬微小重力環境下で培養するための培養容器(例えば、ベッセル)としては、特に限定されないが、1軸回転式のバイオリアクター、例えばRWVバイオリアクターで使用可能な任意の形状又は容量の培養容器を使用することができる。培養容器(例えば、ベッセル)は、以下に限定するものではないが、例えば5ml〜5000ml、10ml〜2000ml、又は10ml〜100mlの容量を有するものであってもよい。
RWVバイオリアクターを用いた場合の好ましい回転速度は、ベッセルの直径及び作製しようとするスフェロイドの大きさや質量に応じて適宜設定することができるが、容量100ml程度までのベッセル、例えば直径5cmのRWVベッセル(容量10 ml)を用いた場合であれば5〜15rpm程度、7〜15 rpm程度、例えば7.5〜8.5 rpm又は6〜8.5rpmに調整することが好ましい。回転速度が一定の場合は回転中心からの半径に比例して流速が早くなる。そのため、容量がさらに大きいベッセル、例えば250ml、500ml、1000ml、及び2000mlなどの大きな容量及び直径を有するベッセルを用いる場合は、当業者であれば、回転速度を低下させる方向で適切な回転速度に調節することができる。このような回転速度で培養を行うとき、ベッセル内の細胞に作用する重力は実質的に地上の重力(1g)の1/10〜1/100程度となり、スフェロイドが沈降せず浮遊している状態を維持することができる。
2. 万能性幹細胞とその培養条件
本発明の方法で培養する万能性幹細胞は、限定するものではないが、好ましくはiPS細胞とも呼ばれる人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)、又はES細胞と呼ばれる胚性幹細胞であってよい。iPS細胞は体細胞に初期化因子を導入して(典型的には1つ又は複数の初期化誘導遺伝子を導入して)リプログラミングすることによって誘導される多能性幹細胞であり、当業者には周知である。初期化因子としては、Octファミリー、Klfファミリー、Soxファミリー、Mycファミリー、Nanogファミリー、Linファミリー等が挙げられるが、これらに限定されない。初期化因子の具体例としては、以下に限定されないが、Oct3/4、Klf4、Klf2、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox17、c-Myc、N-Myc、L-Myc、T58A、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、β-カテニン、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3、p53shRNA、及びGlis1が挙げられる。初期化因子として、少なくともOctファミリー、特にOct3/4を体細胞に導入することが好ましい。初期化因子の導入は、初期化因子をコードする遺伝子(初期化誘導遺伝子)を体細胞に導入することにより、行うことができる。
例えばiPS細胞は、Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、並びにSoxファミリー遺伝子及び/又はMycファミリー遺伝子(例えば、Oct3/4、Sox2、及びKlf4)を導入することにより作製することができる。iPS細胞はまた他の方法により作製したものであってもよい。iPS細胞は典型的には動物由来であり、好ましくは哺乳動物由来であり、例えば、ヒト、サル等の霊長類、マウス、ラット等のげっ歯類、イヌ、ネコ、ウサギ等由来のものが挙げられる。iPS細胞は、任意の組織(体細胞)由来であってよく、例えば皮膚、骨髄、鼻、消化管、肝臓等由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊を取り出して培養することによって得られる多能性細胞である。iPS細胞やES細胞は、例えば、理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室(RIKEN BRC CELL BANK)(日本)、ATCC(American Type Culture Collection)、iPSアカデミアジャパン株式会社(日本)等から入手することができるが、当業者であれば常法により作製することもできる。なお本発明の万能性幹細胞に関して「単離された」とは、当該細胞が生体から取り出された細胞又は生体から取り出された細胞から作製された細胞株であることを意味する。「単離された」万能性幹細胞は、単一細胞であっても、細胞塊やスフェロイド等であってもよい。
本発明の方法において、万能性幹細胞は、増殖及びスフェロイド生成のためには、任意のES/iPS用培地(未分化維持用培地)を用いて回転培養することができる。そのような培地としては、mTeSR1培地、TeSR1培地(Stem Cell Technologies)、Essensial 8TM培地、Essential 6TM培地(Gibco)、StemPro(R)-34 SFM(Life Technologies)等が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、万能性幹細胞を、例えば1x104〜1x105 細胞/cm3、より好ましくは3x104〜8x104細胞/cm3、さらに好ましくは4x104〜6x104細胞/cm3の細胞密度で培養液に播種し、それを擬微小重力環境下で培養(典型的には回転培養)することにより、細胞の効率的な増殖及びスフェロイド生成(スフェロイドの形成及び成長)をもたらすことができる。例えば直径4〜6cmのベッセル、例えば直径5cm(容量10ml)のベッセルにおいて、この細胞密度での播種はとりわけ好ましい。しかしこのような細胞密度での播種は、前記のサイズのベッセルに限定されず、例えば10〜2000mlのベッセルでも万能性幹細胞を効率よく増殖させることができる。
播種する万能性幹細胞は、常法により調製したものを用いることができる。例えば、万能性幹細胞は、通常の培養条件での培養後、例えば機械的、化学的、又は生物学的な任意の細胞分散法により剥離し、上記回転培養等に用いることができる。具体的には、限定するものではないが、EDTA(例えば1〜10mM EDTA)、TryPLETM Select、アキュターゼTM、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、トリプシン/EDTA、トリプシン/コラゲナーゼ、ReLeSRTM(STEMCELL)等を細胞剥離液として使用して細胞を分散させてもよい。あるいは、浮遊培養で形成された万能性幹細胞のスフェロイドを、フィルター通過などにより機械的に粉砕し、それにより細胞を分散させて、上記回転培養等に用いてもよい。
万能性幹細胞は、3〜1,000個程度、好ましくは5〜600細胞程度、より好ましくは5〜300細胞、例えば30〜200細胞、10〜100細胞又は20〜40細胞程度の小スフェロイド(細胞塊)に分離し分散させたものを播種して、回転培養等の擬微小重力環境下での培養を行ってもよい。擬微小重力環境下での1回目の培養(1回目の継代後の培養)では、好ましくは5〜300細胞、より好ましくは10〜100細胞、さらに好ましくは20〜40細胞からなる小スフェロイド(細胞塊)に分離し分散させたものを播種し、回転培養等の擬微小重力環境下での培養を行ってもよい。細胞剥離液などを用いた化学的破砕により生成された万能性幹細胞の小スフェロイドは、典型的には300μm未満、例えば約50〜200μmの直径を有する。小スフェロイドの形態で播種した万能性幹細胞を、擬微小重力環境下で培養することにより、スフェロイドの形成及び成長を促進することができる。なお本明細書において用いる「小スフェロイド」とは、比較的少数の細胞から構成される比較的サイズの小さな細胞塊を意味し、典型的には3〜1,000個程度の細胞塊、例えば5〜600細胞、30〜200細胞、10〜100細胞又は20〜40細胞の細胞塊が包含される。小スフェロイドは球状であっても細長い形状であってもよく、あるいはそれ以外の形状であってもよい。あるいは、スフェロイドの形態の万能性幹細胞又は個々の細胞に分散させた万能性幹細胞を、上述のように擬微小重力環境下で培養(回転培養等)してもよい。
万能性幹細胞は、回転培養等の擬微小重力環境下での培養をアポトーシス阻害剤の存在下で行ってもよい。アポトーシス阻害剤としては、限定するものではないが、ROCK(ロック; Rho-associated kinase; Rho結合キナーゼ)インヒビターを好適に用いることができる。ROCKインヒビターはES細胞の生存に有効であり、アポトーシスの誘導に寄与することが知られている(Watanabe K., Nat. Biotechnol., (2007) 25(6), p.681-686; Ohgushi M., et al., Cell Stem Cell, (2010) 7(2), p.225-239)。ROCKインヒビターとしては、Y27632((R)-(+)-トランス-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド・2HCl・H2O)(例えば、Calbiochem、WAKO Pure Chemicalsなど)、Fasudil(1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンハイドロクロリド)(例えば、Calbiochem)等が挙げられる。アポトーシス阻害剤は、一実施形態では、培養液中、1μM〜100μM、好ましくは3μM〜30μM、より好ましくは5μM〜15μMの濃度であってよい。アポトーシス阻害剤の存在下で培養することにより、万能性幹細胞のスフェロイドの形成及び成長を促進することができる。本発明において「スフェロイド」とは、多数の細胞が凝集した細胞塊を指し、典型的には300μm以上、例えば300〜2000μmの直径を有する細胞塊を指す。
万能性幹細胞の培養温度は、特に限定されないが、好ましくは36.0〜38.0℃、より好ましくは36.5〜37.5℃である。バイオリアクターを用いた回転培養は、特に限定されないが、好ましくは2〜7日間、より好ましくは2〜5日間、例えば3〜5日間、さらに好ましくは3〜4日間行うことができる。より長期間培養する場合は、以下に限定するものではないが、好ましくは2〜7日間、より好ましくは2〜5日間、例えば3〜5日間、さらに好ましくは3〜4日間毎に細胞を継代しながら培養することができる。
本発明では、以上のような培養により、培養液中に、万能性幹細胞のスフェロイド(主に球状スフェロイド)を大量に生成させることができる。一実施形態では、3日間の培養後に得られるスフェロイドは、主に300〜1000μmの範囲の直径を有し、最も多くが700〜900μmの範囲の直径を有する。
以上のような培養によって得られる万能性幹細胞又はスフェロイドを構成する細胞は、未分化性を保持している。未分化性の保持は、未分化マーカーの発現をフローサイトメトリー等により検出することによって確認することができる。未分化マーカーとしては、例えば、SSEA-4、TRA-1-60、Nanog Oct3/4、Sox2、REX-1、LIN28、LEFTB、GDF3、ZFP42、FGF4、ESG1、DPPA2、TERT、KLF4、c-Myc等が挙げられるが、これらに限定されない。
細胞の未分化性の確認のためには、未分化マーカー遺伝子の発現状態を解析することがさらに好ましい。未分化マーカー遺伝子の発現状態の解析は、例えば、リアルタイムPCRを用いた定量により好適に行うことができる。
本発明の培養方法では、細胞足場材料を使用することなく、万能性幹細胞を回転培養し、未分化性を保持しながら増殖させることもできる。本発明において細胞足場材料とは、コラーゲン、ポリマー、ゲル、ガラス、プラスチック、ファイバー、フィルム、ビーズ等の細胞培養において使用可能な任意の細胞足場材料(スキャホールド)をいう。
本発明では、擬微小重力環境を実現する回転式バイオリアクター、例えばRWVバイオリアクターを用いて回転培養することにより、コンタミネーションのリスクの少ない閉鎖系で万能性幹細胞を増殖させることができ、それにより安全性を高めることもできる。
本発明の培養方法では、擬微小重力環境下での培養により生成した万能性幹細胞のスフェロイドをより少数の細胞、例えば小スフェロイドに分離し分散させ、さらに培養してもよい。スフェロイドからの細胞の分離及び分散は、上述のとおり、例えば機械的、化学的、又は生物学的な任意の方法により行うことができる。
スフェロイドから分散させた細胞は、上述のような擬微小重力環境下でさらに培養(典型的には回転培養)することにより、大量の細胞を増殖させ、多数のスフェロイドを生成させることができる。あるいはスフェロイドから分散させた細胞は、フィーダー細胞上で通常の幹細胞培養法により培養してもよく、それにより多数の細胞コロニーを作製することができる。
本発明の好ましい実施形態では、上記方法において擬微小重力環境下での培養により生成したスフェロイド(典型的には球状スフェロイド)を、機械的(力学的)、化学的、又は生物学的な任意の方法により破砕し、生成された小スフェロイドを擬微小重力環境下でさらに培養してスフェロイドを形成及び成長させる工程を1回、又は2回以上(複数回、例えば、2〜30回)繰り返して行うことも好ましい。擬微小重力環境下でさらに培養する小スフェロイドは、異なる粉砕方法で得られた小スフェロイドの混合物であってもよい。好ましい一実施形態では、例えば、上記方法において擬微小重力環境下での培養により生成したスフェロイドを、典型的にはフィルターを通して破砕し、その機械的(力学的)破砕で得られた小スフェロイドを擬微小重力環境下でさらに培養してスフェロイドを形成及び成長させる工程を1回、又は2回以上繰り返して行うことができる。スフェロイドのフィルター通過はピペット等を用いて圧力をかけて行ってもよい。フィルターは、生成したスフェロイドをより小さいサイズを有する小スフェロイドに破砕することができるろ過粒度を有するものを使用することができ、ろ過粒度40〜100μm、好ましくは60〜80μm、例えば70μmを有するものが好ましい。なおフィルター通過による破砕で得られる小スフェロイドは一般的には細長い形状となる。例えば70μmのフィルターを通した破砕で得られる小スフェロイドは、一般的には、化学的破砕により得られる小スフェロイドと同等又はそれより大きめである。スフェロイドは、フィルターを通して1回又は2回以上(複数回、例えば、2〜30回)破砕してもよい。フィルター通過による破砕を2回以上行う場合、それぞれのフィルター通過の際に、ろ過粒度が同一のフィルターを用いてもよいし、ろ過粒度が異なるフィルターを用いてもよい。例えば、フィルターに通してスフェロイドを破砕した後、破砕されたスフェロイド(小スフェロイド)を、より大きなろ過粒度を有するフィルターに通してさらに破砕してもよく、それによって、得られる小スフェロイドの大きさ(とりわけ長径)をより狭い範囲に揃えることができる。粉砕されたスフェロイド(小スフェロイド)の擬微小重力環境下での培養期間は、以下に限定されないが、2〜7日間、好ましくは2〜5日間が好ましく、例えば3〜5日間又は3〜4日間がより好ましい。擬微小重力環境下での各培養工程における培養量、すなわち培養容器のサイズ及び培地量は、培養毎に同じでもよいし、異なっていてもよい。大量培養する場合には培養の度にスケールアップしてもよい。本発明では、擬微小重力環境下での培養によるスフェロイドの形成及び成長、それにより生成したスフェロイドの破砕、及び破砕で生じた小スフェロイドの再播種を繰り返す方法により、iPS細胞等の万能性幹細胞を非常に長期にわたって未分化状態のまま維持し、増殖させることができる。その結果、iPS細胞等の万能性幹細胞の大量生産がより容易になる。
3. 分化誘導
本発明の方法により培養した万能性幹細胞(増殖させた万能性幹細胞又は生成させたスフェロイドから分散させた万能性幹細胞)やスフェロイドを得た後、それらの細胞を分化誘導することができる。例えば、万能性幹細胞を、外胚葉分化培地、中胚葉分化培地、又は内胚葉分化培地等の分化誘導培地で培養することにより、それぞれ外胚葉、中胚葉、又は内胚葉への分化を誘導することができる。外胚葉分化培地、中胚葉分化培地、及び内胚葉分化培地は市販されており、例えば、三胚葉分化キットStem Cell Kit: Human Pluripotent Stem Cell Functional Identification Kit(R&D Systems)に含まれるものが挙げられる。分化誘導培地に播種する万能性幹細胞は、小スフェロイドであっても単一細胞に分散させたものであってもよい。分化誘導培地での培養は、MEF等のフィーダー細胞上又はコーティング剤等の細胞足場材料上で行ってもよいし、上述のような擬微小重力環境下での回転培養により実施してもよい。分化誘導培地での培養により、万能性幹細胞の目的の胚葉又は細胞への分化を誘導し、万能性幹細胞から分化した細胞を作製することができる。したがって本発明は、上記の万能性幹細胞の培養方法を実施し、それによって得られた万能性幹細胞(増殖させた万能性幹細胞又は生成したスフェロイドから分散させた万能性幹細胞)及び/又はスフェロイドを分化誘導培地でさらに培養することを含む、万能性幹細胞の分化を誘導する方法(万能性幹細胞から分化した細胞を作製する方法)も提供する。分化誘導培地での培養は、上述のような擬微小重力環境下での培養(回転培養等)により行ってもよいし、分化誘導のために用いられる他の細胞培養法により行ってもよい。
外胚葉、中胚葉、又は内胚葉への分化は、それぞれのマーカー遺伝子の発現を検出することにより、確認することができる。外胚葉マーカー遺伝子としてはOtx2、Nestin、TP63等が挙げられ、中胚葉マーカー遺伝子としてはBrachyuryが挙げられ、内胚葉マーカー遺伝子としてはSox17、AFP、GATA-4、PDX-1等が挙げられる。これらのマーカー遺伝子の強い発現が確認された場合、それぞれの胚葉への分化が示される。
好ましい一実施形態では、本発明の方法により、すなわち、上述のような擬微小重力環境下での培養を用いる未分化維持用培地における万能性幹細胞の培養方法により得られた、万能性幹細胞のスフェロイドを、分化誘導培地でさらに培養することにより、スフェロイド形態を保持したまま、スフェロイド中の細胞の分化を誘導することができる。分化誘導培地での培養は、擬微小重力環境下での培養により行ってもよいし、分化誘導のために用いられる他の細胞培養法により行ってもよい。例えば、擬微小重力環境下で未分化維持用培地における培養(回転培養等)を行い、スフェロイドを得た後、培地を分化誘導培地に交換して擬微小重力環境下での培養を継続することにより、スフェロイドを構成する万能性幹細胞(未分化細胞)を目的の細胞(使用した分化誘導培地が目的とする細胞)へと分化させることができる。これにより、万能性幹細胞から分化させた細胞を含むスフェロイドを作製することができる。あるいは、擬微小重力環境下で未分化維持用培地における培養(回転培養等)を行ってスフェロイドを得た後、そのスフェロイドを分化誘導培地に移して培養、例えば、擬微小重力環境下で培養(回転培養等)することにより、スフェロイドを構成する万能性幹細胞(未分化細胞)を目的の細胞へと分化させてもよい。したがって本発明は、上記の万能性幹細胞の培養方法を実施し、それにより得られたスフェロイドを分化誘導培地でさらに培養することを含む、万能性幹細胞の分化を誘導する方法、及び、その方法により、万能性幹細胞から分化させた細胞を含むスフェロイドを製造する方法も提供する。
本発明の方法において、万能性幹細胞の分化誘導には、所定の細胞への分化誘導を目的とした任意の分化誘導培地を使用することができる。そのような分化誘導培地は、例えば、神経分化培地、骨芽細胞分化培地、心筋細胞分化培地、脂肪細胞分化培地、腸上皮細胞分化培地等であってもよい。例えば、分化誘導培地として神経分化培地を使用して万能性幹細胞又はスフェロイドを培養することにより、万能性幹細胞を神経系細胞に分化させることができる。あるいは、分化誘導培地は、外胚葉分化培地、中胚葉分化培地、又は内胚葉分化培地であってもよい。これらの分化誘導培地としては様々な市販品を用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例ではヒト人工多能性幹細胞(hiPSCs)として253G1細胞を用いた。253G1細胞(Oct3/4、Sox2、及びKlf4導入; 非特許文献3)は細胞番号HPS0002の下で理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室(RIKEN BRC CELL BANK)(日本)より購入した。
[実施例1]RWVバイオリアクターを用いた3次元培養による人工多能性幹細胞(iPS細胞)からのスフェロイド作製
(1)球状スフェロイドの構築
253G1細胞は、マトリゲル(BD MatrigelTM, BD Biosciences)をコートした6cm又は10cm培養ディッシュを用いて、ヒトES/iPS細胞維持用培地mTeSR1(STEMCELL Technologies)中で培養し、毎日培養液交換を行い、5mM EDTAと0.5x TrypLETM Select(Life Technologies)を用いて継代維持した。
3次元培養を行うため、播種に用いる253G1細胞を、5mM EDTAを用いておよそ20〜40細胞からなる小スフェロイド(直径およそ50μm〜200μmのルーズな細胞塊)に剥離した。4.9x105細胞の剥離した253G1細胞(化学的粉砕により得た小スフェロイド)を、10ml RWVベッセル(直径5cm; Synthecon)中、ROCK(ロック; Rho-associated kinase; Rho結合キナーゼ)インヒビターY27632(WAKO Pure Chemicals、10μM)含有mTeSR1培地(10ml)、又はROCKインヒビターY27632不含有mTeSR1培地(10ml)に播種し、RWVバイオリアクター(Synthecon)を用いて37℃、8rpmで3日間回転培養した。培養後、培養液中に生成した球状スフェロイドの位相差像を倒立顕微鏡Axio Observer(Carl Zeiss)を用いて撮影した(図1)。また、球状スフェロイドの直径を計測し、サイズ分布を調べた(図2)。
続いて球状スフェロイドを採取し、ピペットを用いてピペッティングにより砕き、細胞を分散させた。自動セルカウンターCountessTM(Invitrogen)を用いて細胞数をカウントした。培養液中の全細胞数から、播種した細胞数(4.9x105細胞)に対する増殖倍率(全細胞数/4.9x105細胞)を算出した。
ROCKインヒビター含有培地を用いたベッセルでは、球状スフェロイドが多数形成された(図1)。全細胞数は3.1x106細胞であり、増殖倍率は6.5倍であった。また球状スフェロイドの直径の分布は700〜900μmにピークを持っていた(図2)。一方、ROCKインヒビター不含有培地を用いたベッセルでは、球状スフェロイドは形成されず、単一細胞のみの懸濁液であった。
この結果から、ROCKインヒビター含有培地でのRWVバイオリアクターを用いた回転培養により、iPS細胞から球状スフェロイドを作製できることが示された。
(2)ROCKインヒビター濃度の検討
より好適なROCKインヒビター濃度について調べるため、3μM、10μM、又は30μMの3種類のROCKインヒビター濃度を用いること以外は上記と同じ条件で、253G1細胞を3日間回転培養した。培養後、生成した球状スフェロイドの数は、3μMで10個、10μMで50個、30μMで20個であった。
この結果から、3種類の条件の中ではROCKインヒビター10μMの濃度条件が最も球状スフェロイドを多く得るのに適していることが示された。
(3)細胞播種数の検討
より好適な細胞播種数を調べるため、10ml RWVベッセルに、5mM EDTAとTrypLETM Selectを用いておよそ20〜40細胞からなる小スフェロイドに剥離した253G1細胞を4.27x105細胞、8.55x105細胞、又は1.28x106細胞播種し、ROCKインヒビターY27632(10μM)含有又は不含有のmTeSR1培地中で上記(1)と同様の方法で5日間回転培養した。培養後、上記と同様にして細胞数をカウントし、増殖倍率を算出した。結果を以下の表1に示す。
Figure 2016052657
さらに同様の実験を複数回繰り返して行った結果、10ml培地に対し播種数4x105〜6x105細胞、すなわち4x104〜6x104細胞/cm3の初期細胞密度の場合に、増殖倍率が顕著に高いことが示された。なおROCKインヒビター不含有培地でも細胞増殖が認められたが、ROCKインヒビター含有培地では増殖倍率が顕著に増加した。
さらに、5mM EDTAのみを用いておよそ20〜40細胞からなる小スフェロイドに剥離した253G1細胞を上記の好ましい範囲の播種数で10ml RWVベッセルに播種し、10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地(10ml)で3日間回転培養した。細胞剥離に5mM EDTAのみを用いて得られた結果の例を表2に示す。
Figure 2016052657
この結果から、細胞剥離条件にかかわらず、上記の好ましい細胞播種数の範囲で特に良好な増殖倍率を得ることができることが示された。
[実施例2]RWVバイオリアクターで培養したiPS細胞の特性評価
実施例1に記載の方法に従い、5 mM EDTAを用いて剥離した253G1細胞を10mlベッセルに播種し、10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中でRWVバイオリアクターを用いて3日間回転培養した。培養後、生成したスフェロイドをアキュターゼTMで処理して単一細胞にし、マトリゲルでコートした24ウエルプレートに播種し、3日間培養した。培養後、253G1細胞における多能性幹細胞マーカーの発現を解析するため、フローサイトメトリーによる解析を行った。フローサイトメトリーは、フローサイトメーターAttune(R) Acoustic Focusing Cytometer(Applied Biosystems)により、多能性幹細胞を染色する蛍光標識抗体(抗SSEA-4抗体:Alexa Fluor488 anti-human SSEA4(Cat330441, BioLegend)、及び抗TRA-1-60抗体:PE anti-human TRA-1-60(Cat330609, BioLegend))を使用して行った(試験サンプル)。ネガティブコントロールはAlexa Fluor 488 Mouse IgG3,κIsoType Ctrl(Cat401323, BioLegend)及びPE Mouse IgM,κIsoType Ctrl(Cat401609, BioLegend)を用いて行った。
その結果を図3(試験サンプル)及び図4(ネガティブコントロール)に示す。SSEA-4、TRA-1-60のマーカーはいずれも陽性であったことから(図3)、RWVバイオリアクターで培養した253G1細胞がiPS細胞としての未分化性を保持していることが示された。
[実施例3]リアルタイムPCRによるiPS細胞マーカー遺伝子の発現の評価
RWVバイオリアクターで培養した253G1細胞におけるiPS細胞のマーカー遺伝子の発現状態を評価するため、リアルタイムPCRを用いた解析を行った。未分化マーカー遺伝子Nanog、Oct3/4(Pou5f1)、及びSox2をターゲットとした。
リアルタイムPCR測定は、StepOneTM Real-Time PCR System(Life Technologies, Applied Biosystems)を用いて、以下の手順で行った。まず、実施例1及び2と同様に5 mM EDTAを用いて剥離した253G1細胞を10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中でRWVバイオリアクターを用いて3日間回転培養し、生成したスフェロイドを回収し、得られた細胞ペレットを-80℃で凍結した。並行して、5 mM EDTAを用いて剥離した253G1細胞をマトリゲルでコートした培養ディッシュに播種し、mTeSR1培地中で3日間培養(2次元培養)した後、遠心分離にかけて細胞を回収し、得られた細胞ペレットを-80℃で凍結した。-80℃で凍結保存しておいた細胞ペレットを氷上で凍結融解し、RNeasy(R) Mini Kit(QIAGEN)を使用してTotal RNA(総RNA)を抽出した。抽出したTotal RNAのサンプルについて、分光光度計NanoDrop 1000 Spectrophotometer(Thermo Fischer Scientific)を使用してRNA濃度を測定した。1.5 μgのTotal RNAから、High-Capacity RNA-to-cDNA Kit(Applied Biosystems)を使用して20 μlの反応系でcDNAの合成を行った。続いて、DNAポリメラーゼ、基質及びバッファー等が含まれた酵素反応プレミックス溶液であるTaqMan(R) Fast Universal PCR Master Mix (2x), No AmpErase UNG(Applied Biosystems)と、上記の各ターゲット遺伝子のReal-Time PCR測定用に予め調製されたプライマーとプローブを含むアッセイミックス(TaqMan(R) Gene Expression Assays, Inventoried(Applied Biosystems))とを混合して反応ミックスを調製した。TaqMan(R)Gene Expression Assaysとしては、ターゲットの未分化マーカー遺伝子NanogについてはAssay ID: Hs04260366_g1、Oct3/4(Pou5f1)についてはAssay ID: Hs04260367_gH、Sox2についてはAssay ID: Hs01053049_s1の製品を使用した。内在性コントロール(リファレンス遺伝子)として用いるGAPDH(グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)については、Assay ID: Hs99999905_m1の製品を使用した。
リアルタイムPCRにおけるRNA量測定はメーカーのプロトコールに従って行い、Applied Biosystems StepOneTM Real-Time PCR System Software v2.2.2を用いてΔΔCT法により解析を行った。
3日間のRWVバイオリアクターでの回転培養により253G1細胞から得た球状スフェロイドと、マトリゲル上で同時に3日間2次元培養した253G1細胞との間で、未分化マーカー遺伝子Nanog、Oct3/4、及びSox2のリアルタイムPCR及びΔΔCT法による相対定量に基づいて発現量を比較した結果を図5に示す。図5から明らかなように、通常の2次元培養を行った場合(図5左)よりも、回転培養(3次元培養)によって構築した球状スフェロイド(図5右)の方が3つの代表的な未分化マーカー遺伝子の発現量が高かった。同様の実験を複数回行ったが、常に同様の結果が示された。したがって、RWVバイオリアクターを用いた回転培養は、2次元培養と比べて未分化性を維持した培養の点で優位性を持つことが示された。
[実施例4]RWVバイオリアクターを用いた回転培養により作製した球状スフェロイド由来のiPS細胞の分化実験
実施例1に記載の方法に従い、5 mM EDTAを用いて剥離した253G1細胞を10mlベッセルに播種し、10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中でRWVバイオリアクターを用いて3日間回転培養し、球状スフェロイドを作製した。
得られたスフェロイドについて、三胚葉分化キットStem Cell Kit: Human Pluripotent Stem Cell Functional Identification Kit(R&D Systems)を用いて三胚葉への分化を観察した。まず、スフェロイドをアキュターゼTMを用いて単一細胞に分散させ、Culture BME(Cultrex*PathClear*BME Reduced Growth factor Basement Membrane Extract、R&D Systems)でコートした24ウエルディッシュ中、4ng/ml FGF Basicを含むMEF馴化培地に、1.1x105細胞/cm2の細胞密度で播種した。細胞を50%コンフルエントになるまで培養した後、外胚葉、中胚葉、又は内胚葉への分化誘導培地を用いて分化誘導を行った。外胚葉分化誘導では、上記キットに付属する外胚葉分化培地(Ectoderm Differentiation Media)に培地を交換(1日目)し、2日目及び3日目も同様に外胚葉分化培地にさらに培地交換しながら培養した後、4日目に外胚葉マーカーOtx2の発現を検出する抗体による蛍光抗体染色を行った。中胚葉分化誘導では、上記キットに付属する中胚葉分化培地(Mesoderm Differentiation Media)に培地を交換(1日目)し、12〜16時間後に同様に中胚葉分化培地にさらに培地交換しながら培養して、分化誘導培地への最初の培地交換の24〜36時間後に中胚葉マーカーBrachyuryの発現を検出する抗体による蛍光抗体染色を行った。内胚葉分化誘導では、上記キットに付属する内胚葉分化培地I(Endoderm Differentiation Media I)に培地を交換(1日目)し、分化誘導培地への最初の培地交換から16〜24時間後に内胚葉分化培地II(Endoderm Differentiation Media II)に交換し、さらに3日目に内胚葉分化培地II(Endoderm Differentiation Media II)に交換しながら培養して、4日目に内胚葉マーカーSox17の発現を検出する抗体による蛍光抗体染色を行った。細胞固定と染色は、具体的には、培養後の24ウエルディッシュをPBSで洗浄し、室温で4%パラホルムアルデヒド/PBSで20分間処理して固定し、その後1%BSA/PBSで洗浄し、0.3% Triton X-100、1% BSA及び10%ロバ血清を含むPBS溶液でブロッキングした後、1次抗体としてのヤギ抗ヒトOtx2抗体(外胚葉マーカー検出用)、ヤギ抗ヒトBrachyury抗体(中胚葉マーカー検出用)、又はヤギ抗ヒトSOX17抗体(内胚葉マーカー検出用)とのインキュベート(室温、3時間)を行い、1%BSA/PBSで洗浄した後、NL557結合ロバ抗ヤギ2次抗体(R&D NL001)(1:200希釈)を加えて室温で60分インキュベートした。洗浄後、細胞サンプルのスライドを作製し、蛍光顕微鏡観察を行った。蛍光測定は、同じ光源強度、同じ感度での撮影を行った。なおコントロールとして、1次抗体として抗体を入れないバッファーのみを用いたインキュベーションを行い同様の実験を行った。
結果を図6に示す。蛍光強度の差異から、外胚葉分化培地、中胚葉分化培地、及び内胚葉分化培地を用いた培養においてそれぞれOtx2、Brachyury、及びSOX17の発現が確認された(図6)。このことから、RWVバイオリアクターによる回転培養で得られた球状スフェロイドを構成するiPS細胞は、分散後、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉に分化する能力を保持していることが示された。
[実施例5]50mlベッセルを用いたRWVバイオリアクターによるiPS細胞の増殖実験
実施例1(1)に記載の方法に従い、5 mM EDTAを用いて小スフェロイドに剥離した253G1細胞を50mlベッセルに播種し、10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中でRWVバイオリアクターを用いて3日間、8rpmの回転速度で回転培養し、球状スフェロイドを作製した。実施例1(3)の記載と同様の方法で細胞の好適な播種密度を検討した結果、50mlベッセルにトータル2.5x106個播種した場合に最も増殖倍率が高く、すなわち、10mlベッセルと同程度の播種密度(5.0x104細胞/cm3)で特に高い増殖倍率を示した。その増殖率は3日間で3.8〜4.5倍であった。
[実施例6]連続継代培養試験
本実施例では連続継代培養試験を行った。その手順を模式的に図7に示す。
実施例5に記載の方法に従い、5 mM EDTAを用いて小スフェロイドに剥離した253G1細胞(2.5x106個)を50mlベッセルに播種し、10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中でRWVバイオリアクターを用いて3日間回転培養し、球状スフェロイドを作製した。
続いて、50mlベッセルからピペットを用いて球状スフェロイドを採取し、ろ過粒度70μmのフィルター(BD Falcon(R) 70μm Cell Strainer Nylon REF 352350;BD BIosciences)にピペットの圧力で通すことにより球状スフェロイドを小スフェロイドに砕いた。得られた小スフェロイド(機械的粉砕により得た小スフェロイド)を、新しい50mlベッセルに播種し8rpmにて3日間回転培養し、球状スフェロイドを作製した。その後、70μmフィルターによる粉砕、新しい50mlベッセルへの播種、3日間の回転培養を繰り返した(連続継代培養)。
70μmフィルターにより粉砕した直後の小スフェロイドの画像を図8に示す。図8Aは低倍率での位相差像、図8Bは高倍率での位相差像を示す。フィルターによる粉砕後の小スフェロイドは、細長い形状となり、短径70〜100μm、長径70〜400μm(1個当たりの細胞数およそ30〜200個)の大きさを持ち、形態学的に明らかに小スフェロイドを形成していた。この小スフェロイドを、新しいベッセルに播種し、3日間回転培養することにより、球状のより大きなスフェロイドを得ることができた。
上記のようにして継代培養を9回(P9;トータルの培養期間は30日間)まで繰り返したが、常に同程度の3〜5倍の増殖倍率を得た(図7)。
[実施例7]連続継代培養による未分化性の維持に関する評価
50mlベッセルを用いたRWVバイオリアクターで連続継代培養した253G1細胞におけるiPS細胞マーカー遺伝子の発現状態を評価するため、各回転培養(3次元培養;P5〜P8)後にフィルターにかける前の球状スフェロイドを一部採取し、リアルタイムPCRを用いた解析を行った。未分化マーカー遺伝子Nanog、Oct3/4(Pou5f1)、及びSox2をターゲットとした。リアルタイムPCRの実験手法は、実施例3と同じである。
結果を図9に示す。Nanog、Oct3/4、Sox2のいずれについても発現量の顕著な減衰は観察されず、P9まで2次元培養と同程度の未分化性を維持することが示された。
各培養段階で3〜5倍の増殖倍率が得られたことから、P9まで培養細胞全量を用いて連続培養を繰り返せば、計算上、2.5x106個からスタートして1010個以上のiPS細胞を未分化性を維持した状態で得られることになる。すなわち本発明の方法により、iPS細胞を未分化性を維持したまま大量に培養できることが示された。
[実施例8]分化誘導試験
実施例5に記載の方法に従い、50mlベッセルを用いたRWVバイオリアクターを用いて、253G1細胞を10μM ROCKインヒビターY27632含有mTeSR1培地中で37℃で3日間、8rpmの回転速度で回転培養し、球状スフェロイド(iPSスフェロイド)を作製した。その後、mTeSR1培地を神経分化培地(STEMdiffTM Neural Induction Medium, STEMCELL Technologies Inc., cat#05835)に全交換し(0日目)、同じ条件で培養を継続した。その後の培地交換は、3日目、5日目、7日目及び10日目に行い、12日目まで回転培養を行った。iPSスフェロイドを構成する細胞の神経細胞への分化の評価は、免疫抗体染色法及びリアルタイムPCR法により行った。
免疫抗体染色法では、iPSスフェロイドをアキュターゼTM(AccutaseTM; Innovative Cell Technologies, Inc.)を用いて細胞へと分散させ、それを3cmディッシュに播種し、神経分化培地により20時間培養した後、汎用プロトコール(ABC法)に従い免疫染色した。免疫染色には、抗Pax6抗体(BioLegend, rabbit polyclonal anti-Pax-6 antibody)を神経細胞の指標として、また抗Oct3/4抗体(hES/iPS Cell Characterization Kit, Applied StemCell, cat# ASK-3006)をiPS未分化の指標として用いた。
リアルタイムPCR法による評価は、実施例3と同様にΔΔCT法による解析手法を用いて行った。iPS細胞の未分化マーカーとしてNanogを用いた。使用したプライマー&プローブセットはTaqman Gene Expression assay(ID: Hs04260366_g1)である。具体的には、神経分化のマーカーとしてPax6及びSox1を選択し、それぞれについてTaqman Gene Expression assayのID: Hs00240871_m1、Hs01057642_s1の製品を用いた。内在性コントロール(リファレンス遺伝子)として用いるGAPDH(グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)のプライマー&プローブセットとしては、Assay ID: Hs99999905_m1の製品を使用した。
免疫抗体染色の結果を図10に示す。図10に示されるように、7日目、10日目、及び12日目(神経分化培地での培養開始日を0日目とする)の抗Pax6抗体及び抗Oct3/4抗体による免疫染色を比較した。7日目、10日目、及び12日目のいずれにおいても、抗Oct3/4抗体による染色は殆ど観察できないが、抗Pax6抗体による染色は、7日目に弱く観察され、その後10日目及び12日目には時間が経つにつれてより強い強度を示した。なお、12日目の染色結果とDAPIによる核染色の結果との比較から、ほぼ90%の数の細胞で抗Pax6抗体による染色が陽性であることが示された。
リアルタイムPCRによる解析結果を図11に示す。これらの図には、細胞をRWVベッセルに播種した−3日目(3日前)、神経分化培地への最初の培地交換を行った0日目、さらに3日目、7日目、10日目及び13日目のNanog(図11A)、Pax6(図11B)、又はSox1(図11C)の発現レベルが示されている。iPS細胞の未分化マーカーであるNanogの発現量は、RWVベッセルへの播種後、3日間の未分化維持用培地(mTeSR1)での培養により3倍程度増加したが(0日目)、神経分化用培地への交換の3日後には発現レベルは0日目の10分の1程度まで減少し、さらに7日目以降は0日目と比較しておよそ二桁オーダーで発現量が減少した。一方、神経分化マーカーであるPax6の発現は、未分化維持用培地での培養期間(−3日目〜0日目)は見られなかったが、神経分化培地への交換後の3日間で急激に上昇し、13日目まで増加傾向が観察された。神経分化マーカーの一つであるSox1に関しても、未分化維持用培地での培養期間は若干の発現が見られたのみであったのに対し、Pax6と同様に、神経分化培地への交換の3日後には発現量が上昇し、13日目までその発現レベルが増加した。
以上の結果は、神経分化培地での培養によりiPSスフェロイド中の細胞が神経細胞に分化したことを示している。このことから、RWVバイオリアクターを用いた未分化維持用培地中でのiPS細胞の擬微小重力環境下での培養によりiPSスフェロイドを構築した後、培地を神経分化培地に交換して培養するだけで、iPSスフェロイドを構成するiPS細胞が、スフェロイドの形態を保ったまま、未分化性を失い、神経細胞に分化誘導されることが示された。
本発明は、人工多能性幹細胞などの万能性幹細胞を増殖し、またスフェロイドを効率よく作製するために用いることができる。本発明の方法は、万能性幹細胞を、フィーダー細胞やコーティング剤などを用いる必要なく、未分化性を保持したまま、より安全かつ安定に大量培養するために用いることができる。さらに本発明は、万能性幹細胞から分化させた細胞を大量生産するために用いることができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (14)

  1. 単離された万能性幹細胞を擬微小重力環境下で培養することにより、万能性幹細胞を未分化性を保持した状態で増殖させ、万能性幹細胞のスフェロイドを形成及び成長させることを含む、万能性幹細胞の培養方法。
  2. 万能性幹細胞がiPS細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 細胞足場材料の不在下で前記培養を行う、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 万能性幹細胞が4x104〜6x104細胞/cm3の細胞密度で播種される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. アポトーシス阻害因子の存在下で培養を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. アポトーシス阻害因子がROCKインヒビターである、請求項5に記載の方法。
  7. 擬微小重力環境が、時間平均して地球の重力の1/10〜1/100に相当する重力を物体に与える環境である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 擬微小重力環境が、回転で生じる応力により地球の重力を相殺することにより擬微小重力環境を地上で実現する1軸回転式バイオリアクターを用いて得られるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記1軸回転式バイオリアクターがRWVバイオリアクターである、請求項8に記載の方法。
  10. スフェロイドから細胞を分散させ、培養することをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. スフェロイドをろ過粒度40〜100μmのフィルターを通して1回又は2回以上破砕し、破砕されたスフェロイドを擬微小重力環境下で培養してスフェロイドを形成及び成長させる工程を1回又は2回以上繰り返すことを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記の破砕されたスフェロイドを擬微小重力環境下で2〜7日間培養してスフェロイドを形成及び成長させる、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を実施し、得られた万能性幹細胞及び/又はスフェロイドを分化誘導培地でさらに培養することを含む、万能性幹細胞の分化を誘導する方法。
  14. 分化誘導培地での培養を、擬微小重力環境下で行う、請求項13に記載の方法。
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