JP5360525B2 - 擬微小重力培養による骨・軟骨ハイブリッド組織構築 - Google Patents

擬微小重力培養による骨・軟骨ハイブリッド組織構築 Download PDF

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本発明は、擬微小重力培養による骨・軟骨ハイブリッド組織構築に関する。より詳しくは、骨髄細胞や間葉系幹細胞を二次元培養した後、擬微小重力環境下において軟骨組織構築及び骨組織構築を行なうことにより、骨・軟骨ハイブリッド組織を構築する方法および前記方法によって構築された骨・軟骨ハイブリッド組織に関する。
細胞から三次元組織構築を行う場合、通常適当な足場材料を用いて3次元培養を行うか、攪拌培養を行う必要がある。しかし、従来の攪拌培養では、細胞に与えられる機械的刺激や損傷が強く、大きな組織を得ることは困難か、あるいは得られたとしても内部で壊死を起こしていることが多かった。
これに対し、重量を最適化するために設計された一連のバイオリアクターが存在する。そのひとつであるRWV(Rotating-Wall Vessel)バイオリアクターは、NASAが開発したガス交換機能を備えた回転式バイオリアクターである。RWVバイオリアクターは、横向き円筒形バイオリアクター内に培養液を満たし、細胞を播種した後、その円筒の水平軸方向に沿って回転しながら培養を行う1軸回転式のバイオリアクターである。バイオリアクター内は、回転による応力のため、地上の重力に比較して100分の1程度の微小重力環境となり、細胞は培養液中に均一に懸濁された状態で増殖し、凝集して、大きな組織塊を形成することが可能となる。回転式バイオリアクターの中には、2軸式clinostatなどのように、多軸方向に回転するものもあるが、多軸回転式のバイオリアクターはずれ応力を最小化することができないため、理想的な擬微小重力環境を再現することが困難である。
発明者らは、これまでRWVを用いて骨髄由来間葉系幹細胞から軟骨3次元組織が再生できることを報告している(特許文献1)。この方法で構築される軟骨組織は均一であるが、軟骨疾患の多くの患者では、軟骨部位だけではなくそれに続く骨組織まで欠損していることが多く、骨-軟骨ハイブリッド組織の移植が望まれる。一方、RWVを用いた細胞培養はこれまで種々の細胞について試されているが、骨・軟骨ハイブリッドのような2つの組織のハイブリッド体を作ることを試みた報告はない。
WO2005/056072
本発明の課題は、骨髄細胞や間葉系幹細から、骨軟骨欠損部の修復(再生)に適した骨・軟骨ハイブリッド組織の効率的な構築方法を提供することにある。
本発明者らは、RWV(Rotating-wall vessel)バイオリアクターを用いた擬微小重力環境下での骨髄細胞からの軟骨組織構築において、種々の骨形成促進因子やその遺伝子を含むウイルスベクターを添加した培養系を用いることにより、骨・軟骨のハイブリッド組織構築が可能になることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の工程を含む、骨・軟骨ハイブリッド組織の構築方法に関する:1) 骨髄細胞および/または間葉系幹細胞を二次元培養により増殖させる、2) 細胞を分散後、TGF-βおよびデキサメタゾンを添加して擬微小重力環境下において培養する、3) デキサメタゾンおよび/または骨形成タンパク質を含む培養液に交換するか、あるいはCbfa1、Cbfb、およびosterixから選ばれる骨誘導性転写因子遺伝子を含むウイルスベクターを作用させて、擬微小重力環境下において培養する。
後述する実施例では、一例として、デキサメタゾン、骨形成タンパク質BMP2、骨誘導性転写因子Cbfa1遺伝子を含むウイルスベクターを骨髄細胞および/または間葉系幹細胞からRWVバイオリアクターを用いて構築した3次元軟骨組織に作用させた。このうち、デキサメタゾンを含む培養液を用いた系がもっとも良好な骨・軟骨ハイブリッド組織の構築を達成した。
前記方法において、擬微小重力環境は時間平均して地球の重力の1/10〜1/100程度であることが好ましい。このような擬微小重力環境は、回転で生じる応力によって地球の重力を相殺することにより擬微小重力環境を地上で実現するバイオリアクターを用いて得ることができる。
前記バイオリアクターとしては、1軸回転式バイオリアクターが望ましく、例えばRWV (Rotating-Wall Vessel)バイオリアクターを挙げることができる。RWVバイオリアクターを用いた場合の好適な培養条件は、例えば、播種密度106〜107/cm3、回転速度8.5〜25rpm(直径5cmベッセル)程度であるが、これに限定されるものではない。
本発明の1つの実施形態として、患者から採取された骨髄細胞を用いる方法が挙げられる。患者から採取された骨髄細胞により構築される軟骨組織は、拒絶反応等の問題がないため、当該患者の軟骨欠損部の再生・修復に好適に用いることができる。本発明はまた、そのような骨・軟骨ハイブリッド組織も提供する。
本発明によれば、骨髄細胞から効率的に骨・軟骨ハイブリッド組織を構築することができる。軟骨疾患の多くの患者では、軟骨部位だけではなくそれに続く骨組織まで欠損していることが多い。したがって、本発明の骨・軟骨ハイブリッド組織を利用することにより、より好適な骨軟骨欠損の再生医療が可能になる。
1.擬微小重力環境
本発明において、「擬微小重力環境」とは、宇宙空間等における微小重力環境を模して人工的に作り出された微小重力(simulated microgravity)環境を意味する。こうした擬微小重力環境は、例えば、回転で生じる応力によって地球の重力を相殺することにより実現される。すなわち、回転している物体は、地球の重力と応力のベクトル和で表される力を受けるため、その大きさと方向は時間により変化する。結局、時間平均すると物体には地球の重力(1g)よりもはるかに小さな重力しか作用しないこととなり、宇宙空間によく似た「擬微小重力環境」が実現される。
前記「擬微小重力環境」は、細胞が沈降することなく均一に分散した状態で増殖分化し、3次元的に凝集して、組織塊を形成できるような環境であることが必要となる。言い換えれば、播種細胞の沈降速度に同調するように回転速度を調節して、細胞に対する地球の重力の影響を最小化することが望まれる。具体的には、培養細胞にかかる微小重力は、時間平均して地球の重力(1g)の1/10〜1/100程度であることが望ましい。
2.バイオリアクター
本発明では、擬微小重力環境を実現するために、回転式のバイオリアクターを使用する。そのようなバイオリアクターとしては、例えば、RWV(Rotating-Wall Vessel:US 5,002,890)、RCCS(Rotary Cell Culture SystemTM:Synthecon Incorporated)、3D-clinostat、ならびに特開平8−173143号、特開平9−37767号、および特開2002−45173号に記載されているようなものを挙げることができる。これらのバイオリアクターの中には、1軸回転式のものと2軸以上の多軸回転式のものがあるが、本発明では1軸回転式のバイオリアクターを用いることが好ましい。多軸回転式(例えば、2軸式のclinostat等)では、ずれ応力(シェアストレス)を最小化することができず、またサンプル自体も回転するため、1軸回転式のようにベッセル内にふわふわと浮かんだ状態を再現することができないからである。このふわふわと浮かんだ状態が、特別な細胞足場材料なしに大きな3次元的組織塊を得るための重要な条件となる。なかでも、RWVおよびRCCSはガス交換機能を備えているという点で優れている。
本発明の実施例で用いられているRWVは、NASAによって開発されたガス交換機能を備えた1軸回転式のバイオリアクターである。RWVは、横向き円筒形バイオリアクター内に培養液を満たし、細胞を播種した後、その円筒の水平軸方向に沿って回転しながら培養を行う。バイオリアクター内には、回転による応力のため、実質的に地球の重力よりもはるかに小さい「微小重力環境」が実現される。この擬微小重力環境下において、細胞は培養液内に均一に懸濁され、最小のずり応力下で必要時間培養増殖され、凝集して組織塊を形成する。
RWVを用いた場合の好ましい回転速度は、ベッセルの直径および組織塊の大きさや質量に応じて適宜設定され、例えば直径5cmのベッセルを用いた場合であれば8.5〜25rpm程度であることが望ましい。このような回転速度で培養を行うとき、ベッセル内の細胞に作用する重力は実質的に地上の重力(1g)の1/10〜1/100程度となる。
3.細胞
本発明では軟骨組織構築の材料として骨髄細胞を用いる。本発明に用いられる骨髄細胞とは、骨髄由来の分化・増殖能力を有する未分化細胞であり、特に骨髄由来の間葉系幹細胞が好ましい。前記細胞は、樹立された培養細胞株のほか、軟骨組織の移植を必要とする対象(患者)の生体から単離された骨髄細胞を好適に用いることができる。該細胞は移植対象者から採取された後、常法に従って結合組織等を除去して調製することが好ましい。また、常法により一次培養を行い、予め増殖させてから用いてもよい。さらに移植対象者から採取した培養は、凍結保存されたものであってもよい。つまり、予め採取した骨髄細胞を凍結保存しておき、必要に応じて利用することもできる。
4.培地
本発明では、トランスフォーミング成長因子(TGF-β: transforming growth factor-β)、デキサメタゾン、骨形成タンパク質(BMP: Bone Morphogenetic Proteins)、および骨誘導性転写因子遺伝子を含むウイルスベクターから選ばれるいずれか1または2以上を添加した培地を用いる。用いられる培地としては、MEM培地、α-MEM培地、DMEM培地等、骨髄細胞の培養に通常用いられる培地を、細胞の特性に合わせて適宜選んで用いることができる。
4.1 デキサメタゾン
本発明で用いられるデキサメタゾンは、骨・軟骨細胞分化促進作用を有し、骨軟骨組織構築においては汎用されている分化誘導因子である。通常骨分化のために必要とされるデキサメタゾンの量は軟骨分化のために必要とされる量の10分の1程度である。すなわち、軟骨分化を目的とする場合には100nMが適切な濃度であるが、骨分化を目的とする場合には10nMが適切な濃度となる。
4.2 骨形成タンパク質
本発明で用いられる骨形成タンパク質(BMP: Bone Morphogenetic Proteins)は、骨形成作用を有する因子として特定されたタンパク質である。現在までに、13のBMPのcDNAがクローニングされている。BMP-1を除くBMP(たとえば、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7およびBMP-9等)はすべてTGF-βスーパーファミリーに属する。BMPは未分化な間葉系細胞や、骨芽細胞、軟骨細胞に作用して骨形成を促進するだけでなく、骨以外の種々の組織にも存在し、これらの細胞に作用してその分化の方向性を制御する。本発明では、BMPのなかでも、TGF-β系のシグナル伝達経路を経て、骨芽細胞の分化に必須の転写因子Runx2(runt-related gene 2)の転写を促進する作用を有するBMP-2や米国で認可承認を受けているBMP-7(OP-1)を用いることが好ましい。
4.3 骨誘導性転写因子
本発明で用いられる骨誘導性転写因子は、未分化の細胞を骨に分化誘導する、骨誘導性の転写因子で、例えばCbfa1、Cbfb、osterix等を挙げることができる。Cbfa1は1993年京都大学の小川らによってクローニングされ、大阪大学の小守らにより間葉系幹細胞から骨芽細胞に分化誘導するのに必要不可欠であることが確認された転写因子である(Komori, T. et al., (1997) Cell 89, 755-764)。Cbfbは造血に関与する因子として知られてきたが、近年Runx2との相互作用により骨形成に必須の役割を担っていることが確認された。また、Osterixは骨組織特異的に発現するZinc-Finger型転写因子であり、骨芽細胞の分化等、骨形成に重要な役割を担っていることが確認されている。
これらの骨誘導性転写因子をコードする遺伝子の配列は既に公知であり、当該配列に基づき、骨髄由来細胞等から抽出されたRNAを用いて常法に従い調製することができる。例えば、Cbfa1(ヒト:GenBank Accession Number AH005498、マウス:GenBank Accession Number AF010284等)、Cbfb(ヒト:GenBank Accession Number NM_022845, NM_001755、マウス:GenBank Accession Number NM_022309等)、osterix(ヒト:GenBank Accession Number AF466179、マウス:GenBank Accession Number AY803733等)の配列が公開されている。
骨誘導性転写因子および血管内皮細胞増殖因子の遺伝子は、常法に従い、公知の配列を基に調製することができる。たとえば、骨芽細胞からRNAを抽出し、公知の配列を元にプライマーを作製し、PCR法でクローニングすることにより目的とする増殖因子遺伝子のcDNAが調製できる。
本発明において、骨誘導性転写因子遺伝子の細胞への導入は、動物細胞のトランスフェクションに通常用いられる方法、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、レトロウイルスやバキュロウイルスをベクターとして用いる方法等を用いることができるが、アデノウイルスまたはレトロウイルスをベクターとして用いる方法が安全性、導入効率の点から好ましく、特にアデノウイルスを用いた方法が最も好ましい。
前記アデノウイルスベクターの調製は、例えばMiyakeらの方法(Miyake, S. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. 93:1320-1324, 1993)に基づいて行えばよいが、市販のAdenovirus Cre/1oxP Kit (宝酒造社製) を用いることもできる。このキットはP1ファージのCreリコンビナーゼとその認識配列である1oxPを用いた新たな発現制御系による組換えアデノウイルスベクター作製キットで、転写因子遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスベクターを簡便に作製することができる。
なお、アデノウイルス感染のMOI(mu1tip1icity of infection)は、組み込んだ遺伝子および導入する細胞に依存しているため適宜決定する必要がある。ラットの間葉系幹細胞や骨芽細胞、脂肪細胞に遺伝子導入する場合、骨誘導性転写因子(Cbfa1)組換えアデノウイルスはMOI=200〜1000(より好ましくは500前後)、VEGF組換えアデノウイルスはMOI=50〜200(より好ましくは100前後)がよい。
培地には、FBS(Sigma社製)やAntibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL社製)等の抗生物質等を添加しても良い。また、TGF-β等の骨形成液性因子や、グリセリンリン酸、アスコルビン酸リン酸等のリン酸原を添加してもよい。なお、TGF-βは1ng/ml〜10ng/ml程度を上限として加えられる。
5.細胞の培養条件
細胞は、二次元培養(静置培養)である程度増殖させた後、トリプシン等を用いて細胞を分散した後、TGF-βおよびデキサメタゾンを添加して擬微小重力環境下において培養して軟骨組織を形成する(軟骨組織構築工程)。次いで、上記したデキサメタゾンあるいは骨形成タンパク質を含む培養液に変えて擬微小重力環境下において培養するか、Cbfa1を導入したウイルスベクターを感染させて擬微小重力環境下において培養する(骨組織構築工程)。なお、Cbfa1感染後の培養には、当該ベクターを含まない骨形成性の培養液(例えば、前記した上記したデキサメタゾンあるいは骨形成タンパク質を含む培養液等)を用いることができる。
二次元培養で用いる培地は、MEM培地、α-MEM培地、DMEM培地等、骨髄細胞の培養に通常用いられる培地を、細胞の特性に合わせて適宜選んで用いることができる。なお、二次元培養は細胞の増殖が目的であるため、臨床において患者から単離した細胞を用いる場合は、患者の自己血清を用いて増殖させることになる。擬微小重力条件下での培養については、軟骨組織構築工程においてはChondrogenic Medium、骨組織構築工程ではOsteogenic Mediumを、細胞の特性に合わせて適宜選んで用いることができる。培地には、FBS(Sigma社製)やAntibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL社製)等の抗生物質等を添加しても良い。また骨組織構築工程においては、骨芽細胞分化促進作用を有する、FK-506やシクロスポリン等の免疫抑制剤、骨形成タンパク質等の骨形成液性因子を、グリセリンリン酸、アスコルビン酸リン酸等のリン酸原とともに、添加する。特に、デキサメタゾンを適当なリン酸原とともに添加することが好ましい。この場合、デキサメタゾンは10nM程度加えられる。
培養は、通常3〜10%CO2、30〜40℃、特に5%CO2、37℃の条件下で行うことが望ましい。二次元培養する期間は特に限定されず、用いる細胞の種類に応じて適宜決定されるが、少なくとも7日、好ましくは14〜30日である。また、擬微小重力環境下において培養する期間も特に限定されず、用いる細胞の種類に応じて適宜決定され、軟骨分化誘導期間として少なくとも7日、好ましくは14〜21日、その後、骨分化誘導期間として少なくとも10日、好ましくは14〜21日である。一般的に、ウサギ等に比べて、サルやヒトでは増殖に時間がかかる。
6.骨・軟骨ハイブリッド組織とその利用
本発明の骨・軟骨ハイブリッド組織は、表層周辺に骨組織が形成され内部は軟骨組織が維持された構造を有する。これは、静置培養では軟骨組織は徐々に骨化もしくは繊維化が進むが、RWVによる擬微小重力環境下での培養では内部に軟骨組織が閉じ込められ、組織にかかる重力も特殊な状態になり、培養液の浸透する表層から骨組織形成が進むからである。
前記したように、軟骨疾患の多くの患者では、軟骨部位だけではなくそれに続く骨組織まで欠損していることが多く、骨・軟骨ハイブリッド組織の移植が望まれる。したがって、本発明の方法を再生医療に応用することにより、より好適な骨軟骨欠損部の再生医療が可能になる。すなわち、軟骨組織の移植を必要とする対象から採取した骨髄細胞を擬微小重力下で3次元的に培養して、骨形成作用を有する因子の添加、または遺伝子導入により、効率的に骨・軟骨ハイブリッド組織を再構築し、当該移植対象者の軟骨欠損部に適用することができる。構築された骨・軟骨ハイブリッド組織は拒絶反応の危険性がないうえ、自家軟骨細胞の使用に比較して正常組織の侵襲が少なく、培養により多数の軟骨細胞が得られるため、より広範な軟骨欠損の修復が可能になり、より安全な軟骨再生を可能にする。よって、本発明の方法は、基礎研究はもとより、関節リウマチや変形性関節症の治療を目的とした再生医療に利用することができる。
実施例:RWVバオイリアクターと転写因子Cbfa1の遺伝子導入によるウサギ骨髄由来間葉系幹細胞からの軟骨組織構築
1.材料
(1)ウサギ骨髄由来間葉系幹細胞の調製
ウサギ骨髄由来間葉系幹細胞は、2週齢のJW系家兎(14days, 雌)の大腿骨よりManiatopou1osらの方法(Maniatopou1os, C., Sodek, J., and Me1cher, A. H. (1988) Ce11 Tissue Res. 254, p317-330)に従って採取した。採取した細胞を、10% FBS(Sigma社製)およびAntibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL社製)を含むDMEMで3週間にわたって培養し、増殖させた(図1)。
(2)培養液の調製
下表1に示す組成で、以下の各培養液を調製した。
1)Chondrogenic Medium
2)Osteogenic Medium (DEX)
3)Osteogenic Medium (BMP2)
4)Osteogenic Medium (Cbfa1感染溶液)
なお、感染後はOsteogenic Medium (DEX)と同じ組成の培養液を用いた
Figure 0005360525
(3)Cbfa1導入ウイルスベクターの調製
マウスの骨芽細胞から単離したTotal RNAからAMV reverse transcriptaseを用いてcDNAを合成し、これを鋳型としてCbfa1のcDNA(GenBank Accession No. AF010284:配列番号1)に特異的なプライマーを用いてPCRによりcbfa1 cDNAを増幅して得た。
sense primer 5’-ATGCTTCATTCGCCTCACAAAC-3’(配列番号2)
antisense primer 5’-TCTGTTTGGCGGCCATATTGA-3’(配列番号3)
Cbfa1 cDNAはTA cloning vector (Invitrogen, pCR II-TOPO)にクローニングして大量調製した。Cbfa1 cDNAを制限酵素のSpe IとEcoR Vで切り出し、平滑末端化した後、Adenovirus Cre/loxP kit(宝酒造, 6151)を用いてコスミドベクターpAxCALNLwのSwa Iサイトに挿入し、Kitの説明書に従って組換えアデノウイルスを作製した。作製したウイルスの力価は、約1011PFU/mlの値を示し、感染効率は非常に高いことが確認された。
2.方法
(1)ウサギ骨髄由来間葉系幹細胞の培養
上記のようにして調製したウサギ骨髄由来間葉系幹細胞をRWVべッセルに播種し、2週間の静置(二次元)培養をChondrogenic mediumで行った。2週間後、擬微小重力条件下でChondrogenic mediumを用いて二週間培養したのち、Chondrogenic medium(control)、Osteogenic medium (DEX)、Osteogenic Medium (BMP2) 10ml中で、3週間にわたってRWVバイオリアクター(Synthecon社製)を用いての培養を行った。Cbfa1についてはhondrogenic mediumを用いて二週間培養した直後に、Osteogenic medium (Cbfa1感染用)で1時間培養した後、Osteogenic medium (DEX)に切り替えて上記と同様5週間にわたってRWVバイオリアクターを用いて回転培養を行った。実験のスキームを図2に示す。
RWVバイオリアクターによる回転培養は、直径5cmのベッセルを用いて、回転数:8.0〜24rpm、37℃、5%CO2の条件下で行った。回転数は、目視で組織塊が液中に浮いている状態になるように頻繁に調整した。培養中、細胞の呼吸により泡が生じるが、これは擬微小重力環境を乱すことから頻繁に除去した。
比較として、同様の培養物をコニカルチューブ中で5週間静置培養した。
(2)組織染色
RWV培養軟骨組織および静置培養軟骨組織は、培養5週間後にヘマトキシリン・エオジン(HE)、サフラニンO、およびトルイジンブルーで組織染色を行い、軟骨基質産生能を評価した。
まず、培養組織は、4%パラホルムアルデヒド, O.1%グルタルアルデヒドでマイクロウェーブ固定した後、翌日10%EDTA,100mM Tris(pH7.4)中で約1週間脱灰した。脱灰後、エタノールで脱水し、パラフィンに包埋した。5μmの厚さで切片を作製した。次いで、各切片について脱パラフィン後、常法にしたがい、ヘマトキシリン・エオジン、サフラニンO、およびアルシアンブルー染色を行い観察した。染色像を図4および図5に示す。また偏光顕微鏡観察結果を図6および図7に示す。
(3)免疫染色
5週間培養して得られたRWV培養軟骨組織と、静置培養軟骨組織について、それぞれ抗コラーゲンタイプIモノクローナル抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank製)、抗コラーゲンタイプIIモノクローナル抗体(第一ファインケミカル社製)、および抗オステオカルシン抗体を用いた免疫染色を行った。染色像を図8および図9に示す。
3.結果
図3に示されるように、どの培養液でも静置培養(pellet culture)よりRWV培養の方が大きく、丈夫な組織ができていることが肉眼所見から分かる。3種のosteogenic mediumでの培養に比べ、chondrogenic mediumによる培養で構築した組織の方が白っぽいことが分かる。
図4および図5に示されるように、RWV培養でchondrogenic medium中で培養した場合が、最もサフラニンO染色性が高く、軟骨として成熟した組織である。
図6および図7に示されるように、偏光特性から、静置培養では骨化はおきず、RWV培養のうち、Osteogenic Medium (DEX), Osteogenic Medium (Cbfa1)でのみ一部骨化がおきていることが観察され、骨・軟骨ハイブリッド組織の構築が確認された。構築された骨・軟骨組織は、表層周辺に骨組織が形成され内部は軟骨組織が維持された構造を有していた。
本発明によれば、骨髄細胞から効率的に骨・軟骨ハイブリッド組織を構築することができる。本発明の方法は、関節リウマチや変形性関節症あるいは外傷等による骨軟骨欠損部の治療を目的とした再生医療に利用することができる。
図1は、実験プロトコル(実施例1)を示す。 図2は、培養スケジュールを示す。 図3は、各種培養法により構築した組織の肉眼所見を示す。 図4は、各種培養法(RWV)により構築した組織の染色像を示す。 図5は、各種培養法(静置培養:コニカルチューブ)により構築した組織の染色像を示す。 図6は、各種培養法(RWV)により構築した組織のTB染色と偏光顕微鏡観察結果を示す。 図7は、各種培養法(静置培養:コニカルチューブ)により構築した組織のTB染色と偏光顕微鏡観察結果を示す。 図8は、各種培養法(RWV)により構築した組織の免疫染色像(コラーゲンタイプI, コラーゲンタイプII, オステオカルシン)を示す。 図9は、各種培養法(静置培養:コニカルチューブ)により構築した組織の免疫染色像(コラーゲンタイプI, コラーゲンタイプII, オステオカルシン)を示す。
配列番号2−人工配列の説明:Cbfa1増幅用センスプライマー
配列番号3−人工配列の説明:Cbfa1増幅用アンチセンスプライマー

Claims (5)

  1. 以下の工程を含む、骨・軟骨ハイブリッド組織の構築方法であって
    1) 骨髄細胞および/または間葉系幹細胞を二次元培養により増殖させる、
    2) 細胞を分散後、TGF-βおよびデキサメタゾンを添加して擬微小重力環境下において培養する、
    3) デキサメタゾンを含み、TGF-βを含まない培養液に交換して、擬微小重力環境下においてさらに培養する
    前記擬微小重力環境が、回転で生じる応力によって地球の重力を相殺することにより擬微小重力環境を地上で実現するRWV (Rotating-Wall Vessel)バイオリアクターを用いて得られるものであり、該RWVバイオリアクターの回転速度が、形成された組織塊が液中に浮いている状態になるように調整されている、上記方法
  2. 骨髄細胞の播種密度が106〜107/cm3、RWVの回転速度が直径5cmベッセルに対して8.5〜25rpmの条件下で培養が行われる、請求項に記載の方法。
  3. 前記骨髄細胞が軟骨組織の移植を必要とする対象から採取された細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 骨・軟骨ハイブリッド組織が、表層周辺に骨組織が形成され内部は軟骨組織が維持された構造を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法によって構築された骨・軟骨ハイブリッド組織。
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