以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
<各実施形態の特徴>
第1の実施形態の特徴は本発明の基本的な構成であり、ステップモータの通常駆動と高速駆動で回転検出条件を変更し、高速駆動では検出パルスの出力数を少なくして早期に非回転と判断することである。
第2の実施形態の特徴は、ステップモータの高速駆動において、回転検出のための検出抵抗値、または回転検出回路の閾値を切り替えることで、高速駆動では早期に非回転と判断することである。
第3の実施形態の特徴は、ステップモータの回転が速すぎる(駆動力が強すぎる)場合、駆動パルスの駆動力を低下させる制御を行い、駆動電力を低減してステップモータの駆動を最適化することである。
第4の実施形態の特徴は、高速駆動時のスタートデューティを決定するにあたり、デューティの異なる運針を複数回行い、それらの回転検出結果に基いて、スタートデューティを決定することである。
<第1の実施形態>
<第1の実施形態の電子時計の構成説明:図1>
第1の実施形態の電子時計の概略構成を図1を用いて説明する。図1において、符号1は第1の実施形態の電子時計である。電子時計1は、水晶振動子(図示せず)によって所定の基準信号P1を出力する発振回路2、基準信号P1を入力して各回路を制御するために必要なタイミング信号T1〜T4を出力する制御回路3、パルス発生制御信号P2を出力する駆動間隔切替回路4、駆動パルスSPを出力する駆動パルス発生回路5、補正パルスFPを出力する補正パルス発生回路6、第1、第2検出パルスCP1、CP2を出力する検出パルス発生回路10を有する。
さらに電子時計1は、駆動パルスSP等を入力して選択パルスP3と検出抵抗パルスRPを出力するパルス選択回路7、選択パルスP3を入力して駆動パルス等を出力するドライバー回路20、駆動パルスSP等を入力して指針(図示せず)を動かすステップモータ30、ステップモータ30からの第1、第2検出信号DS1、DS2を入力してステップモータ30の回転検出を行う回転検出回路40などによって構成される。
なお、電子時計1は、指針によって時刻を表示するアナログ表示式時計であり、電源となる電池、操作部材、輪列、指針等を有するが、これらは本発明に直接係わらないので、ここでの図示は省略する。
検出パルス発生回路10は、第1検出パルス発生回路11と第2検出パルス発生回路12とを有し、タイミング信号T1とパルス発生制御信号P2を入力して動作し、ステップモータ30の回転/非回転を検出する検出パルスを出力する。第1検出パルス発生回路11は、駆動パルスSPでステップモータ30を駆動したときに発生する逆起電力で、駆動パルスSPと異なる側(逆極性)に発生する誘起電流を検出するための第1検出パルスCP1を出力する。また、第2検出パルス発生回路12は、駆動パルスSPと同じ側(同極性)に発生する誘起電流を検出するための第2検出パルスCP2を出力する。
駆動間隔切替回路4は、駆動パルスSPの通常駆動間隔(たとえば1秒間隔)と、通常駆動間隔よりも短い駆動間隔である高速駆動間隔とに切り替える機能を備えており、タイミング信号T4と回転検出回路40からの判定信号P5等を入力して動作する。
この駆動間隔切替回路4は、各パルス発生回路を制御するパルス発生制御信号P2と、通常駆動間隔と高速駆動間隔に応じて回転検出の条件を変更する検出制御信号P4を回転検出回路40に対して出力する。また、駆動間隔切替回路4は、内部に回転検出回数をカウントする連続回転カウンタ4aを有し、そのカウント値等に基づいて駆動パルスSPのデューティのランクを制御するランク信号P6を駆動パルス発生回路5に対して出力する。
駆動パルス発生回路5は、タイミング信号T3とパルス発生制御信号P2、ランク信号P6を入力して動作し、ステップモータ30を駆動するための駆動パルスSPを出力する。この駆動パルス発生回路5は、駆動間隔切替回路4からのパルス発生制御信号P2によって制御され、1秒毎の通常駆動間隔の駆動パルスSPや、早送り動作のための高速駆動間隔の駆動パルスSPを出力する。また、ランク信号P6によってパルスのデューティを制御し、駆動パルスSPを複数の異なる駆動力に切り替えることができる。
補正パルス発生回路6は、タイミング信号T2とパルス発生制御信号P2を入力して動作し、ステップモータ30が回転検出回路40によって非回転と判断された場合に、駆動の補償用の補正パルスFPを出力する。
パルス選択回路7は、駆動パルスSP、補正パルスFP、第1、第2検出パルスCP1、CP2をそれぞれ入力し、各パルスを選択して選択パルスP3としてドライバー回路20に出力する。また、第1、第2検出パルスCP1、CP2から生成し、検出抵抗部50を制御する検出抵抗パルスRPを出力する。
回転検出回路40は、ステップモータ30からの第1、第2検出信号DS1、DS2(ドライバー回路20の出力に発生する)、パルス選択回路7からの検出抵抗パルスRP、駆動間隔切替回路4からの検出制御信号P4を入力して動作する。
回転検出回路40は、第1検出判定回路41と第2検出判定回路42、及び検出抵抗部50とを有している。第1検出判定回路41は、第1検出パルスCP1により発生する第1検出信号DS1を入力して検出位置を調べる第1検出位置カウンタ41aと、同じく第1検出信号DS1を入力して検出発数を調べる第1検出発数カウンタ41bとを有している。
また、第2検出判定回路42は、第2検出パルスCP2により発生する第2検出信号DS2を入力して検出位置を調べる第2検出位置カウンタ42aと、同じく第2検出信号DS2を入力して検出発数を調べる第2検出発数カウンタ42bとを有している。また、検出抵抗部50は、ドライバー回路20の出力に検出抵抗を接続して、第1、第2検出信号DS1、DS2を取り出す回路であるが、詳細は後述する。
この回転検出回路40は、前述した複数のカウンタによる計測情報から第1、第2検出信号DS1、DS2の発生位置や発生数を検出し、その情報に基づいてステップモータ30の回転状態を把握して回転/非回転を判定し、その判定結果等を判定信号P5として駆動間隔切替回路4に出力する。また、回転検出回路40は、駆動間隔切替回路4からの検出制御信号P4によって、回転検出条件を変更できる機能を有している。
ドライバー回路20は、ここでは図示しないが二つのドライバー回路によって構成され、それぞれの出力端子OUT1、OUT2から駆動パルスSP、補正パルスFP、第1、第2検出パルスCP1、CP2を低インピーダンスに変換して出力し、ステップモータ30を駆動する。なお、ドライバー回路20の詳細な構成は後述する。
<ステップモータの概略構成と基本動作の説明:図2>
次に、ステップモータ30の概略構成と基本的な動作を図2を用いて説明する。図2(a)において、ステップモータ30は、ロータ31、ステータ32、コイル33などによって構成される。ロータ31は2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極に着磁されている。ステータ32は、軟磁性材により成り、ロータ31を囲む半円部32a、32bがスリットで分割されている。また、半円部32a、32bが結合している基部32eに単相のコイル33が巻装されている。単相とはコイルが1個であり、駆動パルス等を入力する入力端子C1、C2が2個であることを意味している。
また、ステータ32の半円部32a、32bの内周面の対向する所定の位置に、凹状のノッチ32h、32iが形成されている。このノッチ32h、32iによって、ステータ32の電磁的安定点(直線Aで示す)に対してロータ31の静的安定点(制止時の磁極の位置:斜線Bで示す)がずれることになる。このずれによる角度差を初期位相角θiと称し、この初期位相角θiによって、ロータ31が所定の方向に回転しやすいように癖付けされることになる。
次に、ステップモータ30の基本動作を図2(a)とタイミングチャートの図2(b)を用いて説明する。図2(b)において、駆動パルスSPは、図示するように連続する複数のパルス群によって構成され、このパルス群はパルス幅(すなわち、デューティ)が可変される。この駆動パルスSPがステップモータ30の入力端子C1、C2へ交互に供給されることで、ステータ32が交互に反転磁化されてロータ31が回転する。そして、駆動パルスSPの繰り返し周期を可変することで、ロータ31の駆動間隔を制御でき、また、駆動パルスSPのデューティを可変することで、ステップモータ30の駆動力(回転力)を調整することができる。
ここで図2(a)において、ステップモータ30のコイル33に駆動パルスSPが供給されると、ステータ32は磁化され、ロータ31は静的安定点Bから180度回転(図面上左回転)するが、その位置で直ちに停止することはなく、実際には180度の位置をオーバーランして振動し、しだいに振幅が小さくなり停止する(曲線の軌跡Cで示す)。このときのロータ31の減衰振動はコイル33への磁束変化となり、電磁誘導による逆起電力が発生してコイル33に誘起電流が流れる。
図2(b)の電流波形I1は、ロータ31が駆動パルスSPによって正常に180度回転したときのコイル33に流れる誘起電流の一例である。ここで、駆動パルスSPが供給されている駆動期間t1での電流波形I1は、複数のパルス群による駆動電流と誘起電流が重なった電流波形となり、駆動パルスSP終了後の減衰期間t2では、ロータ31の減衰振動による誘起電流が発生する。
また、図2(a)の曲線の軌跡Dは、ステップモータ30が外部磁場等の何らかの影響によって、駆動パルスSPが供給されたのにもかかわらず、ロータ31が回転できずに元の位置に戻ってしまう場合の軌跡を示している。そして、図2(b)の電流波形I2は、ロータ31が正常に回転できなかったときのコイル33に流れる誘起電流の一例である。
ここで、ロータ31が回転できなかった場合の減衰期間t2における電流波形I2は、ロータ31が回転しないために、前述した電流波形I1と比較して振幅が小さく周期が長い誘起電流が発生する。
本発明は、図2(b)で示す駆動パルスSP終了後の減衰期間t2における誘起電流を複数の検出区間に分けて検出すると共に、高速駆動のときにおける回転検出条件を変更して早期に回転/非回転を判定することで、ステップモータの性能を最大限に生かし、安定した高速駆動を実現する電子時計を提供するものである。なお、図2(a)に示すステップモータ30は、後述する第1から第3の実施形態のすべてに用いられている。
<ドライバー回路と検出抵抗部の回路構成の説明:図3>
次に、ステップモータ30を駆動するドライバー回路20と、ステップモータ30の回転状態を検出する回転検出回路40の一部である検出抵抗部50の回路構成の一例を図3を用いて説明する。図3において、ドライバー回路20は、ON抵抗が小さいPチャンネルMOSトランジスタであるドライブトランジスタDP1(以下、トランジスタDP1と略す)とON抵抗が小さいNチャンネルMOSトランジスタであるドライブトランジスタDN1(以下、トランジスタDN1と略す)とのコンプリメンタリ接続でなる第1ドライバー回路21と、同じくON抵抗が小さいPチャンネルMOSトランジスタであるドライブトランジスタDP2(以下、トランジスタDP2と略す)とON抵抗が小さいNチャンネルMOSトランジスタであるドライブトランジスタDN2(以下、トランジスタDN2と略す)とのコンプリメンタリ接続でなる第2ドライバー回路22とによって構成される。
第1ドライバー回路21の出力OUT1は、ステップモータ30のコイル33の一方の端子に接続され、第2ドライバー回路22の出力OUT2は、ステップモータ30のコイル33の他方の端子に接続される。また、トランジスタDP1、DN1、DP2、DN2の各ゲート端子Gは、パルス選択回路7(図1参照)からの選択パルスP3が接続される。
この構成によって、パルス選択回路7が選択する駆動パルスSP、補正パルスFP、第1、第2検出パルスCP1、CP2のいずれかのパルスが、選択パルスP3としてドライバー回路20に入力され、ドライバー回路20の出力OUT1、OUT2から交互に、ステップモータ30を駆動する各パルスが出力される。
また、回転検出回路40に含まれる検出抵抗部50は、PチャンネルMOSトランジスタTP1、TP2(以下、トランジスタTP1、TP2と略す)を有し、トランジスタTP1、TP2のソース端子Sは電源VDDに接続され、各ゲート端子Gはパルス選択回路7からの検出抵抗パルスRPが入力される。また、トランジスタTP1のドレイン端子Dは検出抵抗R1の一方の端子に接続され、トランジスタTP2のドレイン端子Dは検出抵抗R2の一方の端子に接続される。
検出抵抗R1の他方の端子は、ドライバー回路20の第1ドライバー回路の出力OUT1(すなわち、トランジスタDP1とDN1のドレイン結合点)に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40aに接続される。また、検出抵抗R2の他方の端子は、ドライバー回路20の第2ドライバー回路の出力OUT2(すなわち、トランジスタDP2とDN2のドレイン結合点)に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40bに接続される。なお、検出抵抗R1とR2の抵抗値は略等しく、比較的高抵抗が好ましい。
ここで、検出抵抗R1、R2が接続されたゲート回路40a、40bに入力される一対の信号が、ステップモータ30からの検出信号DSである。すなわち、検出信号DSはステップモータ30からの誘起電流が検出抵抗R1、R2に流れることによって、検出抵抗R1、R2の両端に発生するのである。この検出信号DSは、詳細は後述するが、第1検出区間に検出される信号を第1検出信号DS1と称し、第2検出区間に検出される信号を第2検出信号DS2と称する。なお、ゲート回路40a、40b以降の回路構成については図示を省略するが、前述した第1検出判定回路41と第2検出判定回路42に接続され、検出信号DSを波形整形した後に回転検出のためのカウント動作等が実行される。
<ロータの回転検出の基本動作の説明:図1〜図4>
次に図4のタイミングチャートを用いて、前述した図2においてロータ31が正常回転した場合(図2(a)の軌跡C)を例として、電子時計1がどのようにロータ31の回転状態を検出するかの基本動作を説明する。なお、電子時計1の構成は図1と図3を参照する。また図4は、ステップモータ30に流れる電流波形Iを駆動電流Id(駆動期間t1)と誘起電流Ig(減衰期間t2)として示す。
図4において、例えば、出力OUT1から駆動パルスSPがステップモータ30に供給されると、ロータ31が軌跡Cのように180度回転し、その後、減衰振動する(図2参照)。ここで、駆動パルスSPは前述したように複数のパルス群で成り、ドライバー回路20のトランジスタDP1、DN1(図3参照)のゲートGに入力され、トランジスタDP1、DN1が交互にON、OFFを繰り返すことで、ステップモータ30のコイル33には、駆動電流Idが流れる(図4:駆動期間t1)。
次に、駆動パルスSP終了後の減衰期間t2における誘起電流Igを詳細に説明すると、駆動期間t1の終了後、ロータ31の減衰振動によって、駆動パルスSPと反対側(GNDに対してプラス側)に誘起電流Igが流れ、この電流の山形状の領域を「裏の山」(記号Ir)と称する。また、この裏の山Irのあと、ロータ31の減衰振動によって、駆動パルスSPと同じ側(GNDに対してマイナス側)に誘起電流が流れ、この電流の山形状の領域を「表の山」(記号If)と称する。
また、図4に示すように、駆動期間t1の終了直後で、且つ、裏の山Irの直前に、駆動パルスSPと同じ側(GNDに対してマイナス側)に誘起電流が発生し、この電流の山形状の領域を「ダミーの表の山」(以下、ダミー(記号Im)と略す)と称する。このダミーImは、駆動パルスSPが終了しても、ロータ31が180−θi度(図2(a)参照)を回り終えていない場合(ロータの回転が遅い場合)に出現する。
また、図4では図示しないが、ダミーImが発生しない場合もあり、これは、駆動パルスSPの出力中にロータ31が180−θi度を回り切っている場合(ロータの回転が速い場合)である。
ここで一例として、裏の山Irを検出する第1検出パルスCP1による回転検出を図4を用いて説明する。この図4の例では、駆動パルスSPが出力OUT1から出力しているので、第1検出パルスCP1は出力OUT2から出力され、一つの検出区間の中で3発の検出パルス(CP11〜CP13)が出力されたことを示している。この第1検出パルスCP1が出力される区間、すなわち、裏の山Irを検出する区間を第1検出区間G1と称する。
ここで、裏の山Irを検出するために第1検出パルス発生回路11から第1検出パルスCP1が出力されると、パルス選択回路7から第1検出パルスCP1が選択パルスP3として出力し、また、第1検出パルスCP1に同期した検出抵抗パルスRPが出力する。すると、選択パルスP3によってドライバー回路20のトランジスタDP1が短時間ONし、同時に検出抵抗パルスRPによって検出抵抗部50のトランジスタTP2が短時間ONする(図3参照)。なお、他のトランジスタはOFFである。この動作によって、コイル33の出力OUT1側は電源VDDに接続され、コイル33の出力OUT2側は検出抵抗R2が接続される。すなわち、コイル33の両端は、電源VDDを介して検出抵抗R2が接続される。
これにより、コイル33に発生する誘起電流Igは、第1検出パルスCP1の短いパルス幅の期間だけ検出抵抗R2に流れ、出力OUT2に第1検出信号DS1が図4に示すように発生する。すなわち、第1検出信号DS1は、第1検出パルスCP1と同一タイミングで発生するひげ状の信号である。
この第1検出信号DS1は、検出抵抗R2に接続されているゲート回路40bに入力し、ゲート回路40bの閾値Vthを超える検出信号DS1のみがゲート回路40bを通過して、第1検出判定回路41(図1参照)によって検出位置や検出数がカウントされる。
具体的には、図4に示すように、一例として1発目の第1検出パルスCP11は、誘起電流IgのダミーImの領域で出力されるので、このCP11によって発生する第1検出信号DS11は、GNDよりプラス側となり、このタイミングではDS11はゲート回路40bの閾値Vthを超えられないので検出されない。
また、2発目と3発目の第1検出パルスCP12、CP13は、誘起電流Igの裏の山Irの領域で出力されるので、このCP12、CP13によって発生するDS12、DS13は、GNDよりマイナス側となってゲート回路40bの閾値Vthを超えることができる。すなわち、図4に示す例では、第1検出区間G1の第1検出信号DS1の2発目と3発目が検出されたことになり、裏の山Irがこのタイミングで発生したことを知ることができる。このように、裏の山Irを検出する第1検出区間G1は、裏の山が発生する可能性のある期間に設定される。
また、図4では示していないが、表の山Ifが発生する可能性のある期間に第2検出区間G2を設定して所定の数の第2検出パルスCP2を出力し、第2検出信号DS2によって表の山を検出する。この第2検出区間G2による第2検出パルスCP2は、図4の例では、駆動パルスSPが出力OUT1から出力しているので、出力OUT1から出力される。
すなわち、表の山Ifを検出するために第2検出パルス発生回路12から第2検出パルスCP2が出力されると、パルス選択回路7から第2検出パルスCP2に同期した選択パルスP3と検出抵抗パルスRPが出力する。すると、選択パルスP3によってドライバー回路20のトランジスタDP2が短時間ONし、同時に検出抵抗パルスRPによって検出抵抗部50のトランジスタTP1が短時間ONする。なお、他のトランジスタはOFFである。この動作によって、コイル33の出力OUT2側は電源VDDに接続され、コイル33の出力OUT1側は検出抵抗R1が接続される。すなわち、コイル33の両端は、電源VDDを介して検出抵抗R1が接続される。
これにより、コイル33に発生する誘起電流Igは、第2検出パルスCP2の短いパルス幅の期間だけ検出抵抗R1に流れ、出力OUT1に第2検出信号DS2が発生する。すなわち、第2検出信号DS2は、第2検出パルスCP2と同一タイミングで発生する。
この第2検出信号DS2は、検出抵抗R1に接続されているゲート回路40aに入力し、ゲート回路40aの閾値Vthを超える第2検出信号DS2のみがゲート回路40bを通過して、第2検出判定回路42によって検出位置や検出数がカウントされる。なお、図4は駆動パルスSPが出力OUT1から出力される場合を示したが、次の駆動ステップで駆動パルスSPは出力OUT2から出力されるので、第1検出区間G1での第1検出パルスCP1は出力OUT1側に出力され、第2検出区間G2での第2検出パルスCP2は出力OUT2側に出力される。
このように本発明の基本的な回転検出動作は、第1検出パルスCP1と第2検出パルスCP2を所定の検出区間に分けて出力し、その検出区間での検出信号から裏の山Irと表の山Ifを検出してステップモータ30の回転/非回転を判定するのである。そして、その判定結果に応じて駆動パルスSPの駆動間隔やパルスのデューティを選択し、ステップモータ30の高速駆動を最適化する。
<第1の実施形態の通常駆動間隔における回転検出の説明:図5、図6>
次に、第1の実施形態の通常駆動間隔における回転検出動作を図5のフローチャートと図6のタイミングチャートを用いて説明する。ここで、図6のタイミングチャートは、ステップモータ30に流れる電流波形I、駆動パルスSP、及び第1、第2検出信号DS1、DS2の一例を模式的に示している。なお、電流波形Iは、前述したように、駆動電流Idと誘起電流Igに分けられる。なお、電子時計1の構成は図1と図3を参照する。
まず、通常駆動における回転検出動作フローを説明する。なお、図5の条件Aは第1検出区間G1での回転検出条件であり、条件Bは第2検出区間G2での回転検出条件である。図5において、電子時計1が通常駆動間隔(たとえば、1秒運針動作)を行っている場合は、ステップS1において否定判定となってステップS2へ進む。
ステップS2において、条件A:3/8とは8発中3発を意味する。すなわち、通常駆動での条件Aは、裏の山Irを検出するための第1検出区間G1において、8発の第1検出パルスCP1の出力で3発の第1検出信号DS1が検出された場合、正常に裏の山Irを検出したと判定する。
また、条件B:2/5とは5発中2発を意味する。すなわち、通常駆動での条件Bは、表の山Ifを検出するための第2検出区間G2において、5発の第2検出パルスCP2の出力で2発の第2検出信号DS2が検出された場合、正常に表の山Ifを検出し、ロータ31が正常に回転したと判断する。
次に電子時計1は、駆動パルス発生回路5から駆動パルスSPを出力し、パルス選択回路7を経由して、ドライバー回路20の出力OUT1から駆動パルスSPを出力する(ステップS4)。図6(a)は、出力OUT1から、所定のデューティによる駆動パルスSPが出力されたことを示している。ここで、駆動パルスSPは、駆動期間t1において所定のデューティによる連続した複数のパルス群によって構成される。
次に電子時計1の駆動間隔切替回路4は、駆動期間t1終了後の減衰期間t2において、通常駆動の条件Aに基づいて8発の第1検出パルスCP1を出力するように検出パルス発生回路10に指示する(ステップS5)。
次に電子時計1の回転検出回路40は、第1検出パルスCP1によって発生する第1検出信号DS1を検出する(第1検出区間G1での検出動作:ステップS6)。
次に回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第1検出信号DS1を内部のカウンタによってカウントし、条件Aに基づいて判定する(ステップS7)。ここで、第1検出信号DS1が3発以上カウントされたならば、条件Aを満たしているので(肯定判定)、次の第2検出動作であるステップS8に進む。
また、第1検出信号DS1が3発以上カウントされないならば、条件Aを満たさないので(否定判定)、非回転と判断して駆動の補償用の補正パルスFPを出力する(ステップS11)。さらに、駆動パルスSPの駆動力を上げるために、駆動パルスSPのデューティをランクUPし(ステップS12)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。ここで、駆動パルスSPのデューティをランクUPする理由は、条件Aを満たさないことはステップモータ30の駆動力が弱いためと想定できるからである。
また、ステップS7で肯定判定がなされたならば、駆動間隔切替回路4は通常駆動における条件Bに基づいて5発の第2検出パルスCP2を出力するように検出パルス発生回路10に指示する(ステップS8)。
次に回転検出回路40は、第2検出パルスCP2によって発生する第2検出信号DS2を検出する(第2検出区間G2での検出動作:ステップS9)。
次に回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第2検出信号DS2を内部のカウンタによってカウントし、条件Bに基づいて判定する(ステップS10)。ここで、第2検出信号DS2が2発以上カウントされたならば、条件Bを満たしているので(肯定判定)、通常駆動においてロータ31が正常に回転したと判断し、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
また、第2検出信号DS2が2発以上カウントされないならば、条件Bを満たさないので(否定判定)、非回転と判断して補正パルスFPを出力する(ステップS11)。さらに、駆動パルスSPの駆動力を上げるために、駆動パルスSPのデューティをランクUPし(ステップS12)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
次に図6のタイミングチャートを用いて、図5で示したフローチャートに基づいた通常駆動における回転検出動作例を説明する。図6(a)は、駆動期間t1において出力OUT1から出力される駆動パルスSPと、減衰期間t2における第1検出区間G1と第2検出区間G2を示している。すなわち、第1検出区間G1は、誘起電流Igの裏の山Irを検出する区間であって出力OUT2に第1検出パルスCP1が出力され、第2検出区間G2は、誘起電流Igの表の山Ifを検出する区間であって出力OUT1に第2検出パルスCP2が出力される。ここで、第1検出区間G1と第2検出区間G2が時間的に重なっているのは、第1検出区間G1で条件Aが満たされたなら、直ちに第2検出区間G2がスタートするからである。
図6(b)、図6(c)、図6(d)は、通常駆動においてステップモータ30のロータ31の回転の速さの違いによって、第1検出信号DS1と第2検出信号DS2がどのように検出されるかの一例を示している。図6(b)は、ロータ31が速く回転した一例であり、ロータ31の回転が速いので、誘起電流Igのダミー(図4参照)の発生がなく、駆動期間t1終了直後から裏の山Irが大きく発生することを示している。
この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が出力されると、すでに裏の山Irが大きく発生しているので、第1検出パルスCP1によって発生する第1検出信号DS1の先頭からの3発が閾値Vthを超え(DS1の1発目から3発目を○で示す)、ステップS7による通常駆動の条件A判定が肯定判定となって、直ちに第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、誘起電流Igはすぐに表の山Ifが発生するタイミングになるので、出力OUT1に第2検出パルスCP2が出力されると、第2検出パルスCP2によって発生する第2検出信号DS2の先頭からの2発が閾値Vthを超え(DS2の1発目と2発目を○で示す)、ステップS10による通常駆動の条件B判定が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断される。このように、図6(b)ではロータ31の回転が速いので、回転検出が図6の中で最も早く成立する。
次に図6(c)は、ロータ31の回転がやや遅い一例であり、誘起電流Igに短期間ダミーImが発生することを示している。この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が出力されると、先頭の1発目の第1検出信号DS1は、ダミーによって逆極性に発生するので検出されない。そして、ダミーの後、やや遅れて発生する裏の山Irによって第1検出信号DS1の2発目からの4発目までの3発が閾値Vthを超えるので(DS1の1発目を×、2発目から4発目を○で示す)、ステップS7による条件A判定が肯定判定となり、やや遅いタイミングで第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、誘起電流Igは、まだ裏の山Irが発生しているタイミングなので、第2検出パルスCP2が出力されると、先頭からの2発目までの第2検出信号DS2が検出されない。そして、表の山Ifが発生したタイミングで、第2検出信号DS2の3発目と4発目が閾値Vthを超え(DS2の1発目と2発目を×、DS2の3発目と4発目を○で示す)、ステップS10による条件B判定が肯定判定となって、ステップモータ30は、図6(b)より遅いタイミングで正常に回転したと判断される。このように、図6(c)ではロータ31の回転がやや遅いので、回転検出がやや遅く成立する。
次に図6(d)は、外部磁場等の影響でロータ31の回転が遅い一例であり、ロータ31の回転が遅いので、誘起電流Igに長い期間ダミーImが発生することを示している。この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が出力されると、1発目から5発目まで第1検出信号DS1がダミーによって検出されない。そして、ダミーの後、かなり遅れて発生する裏の山Irによって第1検出信号DS1の6発目からの8発目までの3発が閾値Vthを超えるので(DS1の1発目から5発目までを×、6発目から8発目を○で示す)、ステップS7による条件A判定がぎりぎりで肯定判定となり、かなり遅いタイミングで第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、誘起電流Igは、まだ裏の山が発生しているタイミングなので、第2検出パルスCP2が出力されると、先頭からの2発目までの第2検出信号DS2が検出されない。そして、表の山Ifが発生したタイミングで、第2検出信号DS2の3発目と4発目が閾値Vthを超え(DS2の1発目と2発目を×、DS2の3発目と4発目を○で示す)、ステップS10による条件B判定が肯定判定となって、ステップモータ30は、図6(c)より遅いタイミングで正常に回転したと判断される。このように、図6(d)ではロータ31の回転が遅いので、回転検出が最も遅く成立する。
このように通常駆動での回転検出は、誘起電流Igを第1検出区間G1と第2検出区間G2に分けて検出し、且つ、各検出区間での検出パルス数を多く設定することで、ロータ31の回転の速さが外乱等の影響によって大きく変動しても、ロータ31の回転を正しく検出できる。また、ロータ31の回転が遅くても正常回転したと判定できるので、ステップモータ30は低電力駆動を継続できる。
しかし、このような1秒運針などの通常駆動では問題ないが、早送り運針などの高速駆動が必要な場合は、回転検出の成立が遅いことによって、ステップモータ30を高速に駆動できない問題がある。
たとえば、図6(d)に示すようにロータ31の回転がかなり遅い場合、ぎりぎりの検出タイミングで回転したと判断できても、回転検出の成立が遅いために、次の駆動パルスSPを出力するタイミングが遅れることになり、結果として、高速駆動が回転検出の遅さによって制限を受けることになる。本発明は、この不具合を解消するものであり、電子時計が高速駆動を選択した場合、回転検出条件を変更して早期に非回転と判断できるようにすることで、ステップモータ30の高速回転性能を最大限に生かした高速駆動を実現するものである。
<第1の実施形態の高速駆動間隔における回転検出の説明:図5、図7>
次に、本発明の特徴である第1の実施形態の高速駆動間隔における回転検出動作を図5のフローチャートと図7のタイミングチャートを用いて説明する。ここで、図7のタイミングチャートは、前述の図6と同様であり、電流波形I、駆動パルスSP、第1、第2検出信号DS1、DS2、及び補正パルスFPを模式的に示している。
図5において、電子時計1が高速駆動間隔(早送り動作)を行う場合は、ステップS1において肯定判定となってステップS3へ進む。ステップS3において、高速駆動に移行した時の駆動パルスSPの最初のデューティ(スタートデューティ)を決定する。このスタートデューティの決定は、高速駆動に移行する前の通常駆動のときでの駆動パルスSPのデューティを参考にして決定するが、決定方法の詳細は後述する。
次に、同じステップS3において、高速駆動での回転検出の条件Aとして、第1検出区間G1の検出条件を3発中3発とする。すなわち、高速駆動での条件Aは、第1検出パルスCP1の出力数を減らして3発とし、3発の第1検出パルスCP1の出力で3発の検出信号DS1が検出された場合、正常に裏の山Irを検出したと判定する。
また、条件Bとして、第2検出区間G2の検出条件を2発中2発とする。すなわち、高速駆動での条件Bは、第2検出パルスCP2の出力数を減らして2発とし、2発の第2検出パルスCP2の出力で2発の検出信号DS2が検出された場合、正常に表の山Ifを検出し、ロータ31が正常に回転したと判断する。
次にステップS4は、通常駆動と同様であるので説明は省略する。
次に電子時計1の駆動間隔切替回路4は、駆動期間t1終了後の減衰期間t2において、高速駆動の条件Aに基づいて3発の第1検出パルスCP1を出力するように検出パルス発生回路10に指示する(ステップS5)。
次に電子時計1の回転検出回路40は、第1検出パルスCP1によって発生する第1検出信号DS1を検出する(第1検出区間G1での検出動作:ステップS6)。
次に回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第1検出信号DS1を内部のカウンタによってカウントし、高速駆動における条件Aに基づいて判定する(ステップS7)。ここで、第1検出信号DS1が3発中3発カウントされたならば、条件Aを満たしているので(肯定判定)、次の第2検出動作であるステップS8に進む。
また、第1検出信号DS1が3発カウントされないならば、条件Aを満たさないので(否定判定)、非回転と判断して駆動の補償用の補正パルスFPを出力する(ステップS11)。さらに、駆動パルスSPの駆動力を上げるために、駆動パルスSPのデューティをランクUPし(ステップS12)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
また、ステップ7で肯定判定がなされたならば、駆動間隔切替回路4は高速駆動における条件Bに基づいて2発の第2検出パルスCP2を出力するように検出パルス発生回路10に指示する(ステップS8)。
次に回転検出回路40は、第2検出パルスCP2によって発生する第2検出信号DS2を検出する(第2検出区間G2での検出動作:ステップS9)。
次に回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第2検出信号DS2を内部のカウンタによってカウントし、条件Bに基づいて判定する(ステップS10)。ここで、第2検出信号DS2が2発カウントされたならば、条件Bを満たしているので(肯定判定)、高速駆動においてロータ31が正常に回転したと判断し、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
また、第2検出信号DS2が2発カウントされないならば、条件Bを満たさないので(否定判定)、非回転と判断して補正パルスFPを出力する(ステップS11)。さらに、駆動パルスSPの駆動力を上げるために、駆動パルスSPのデューティをランクUPし(ステップS12)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
次に、図7のタイミングチャートを用いて、図5で示したフローチャートに基づいた高速駆動における回転検出動作例を説明する。図7(a)は、前述した図6(a)と同様であるので説明は省略する。なお、高速駆動における第1検出区間G1と第2検出区間G2は、通常駆動よりも各検出パルスCPの出力数(すなわちサンプリング数)が少ないので期間が短い。
図7(b)、図7(c)、図7(d)は、高速駆動においてステップモータ30のロータ31の回転の速さの違いによって、第1検出信号DS1と第2検出信号DS2がどのように検出されるかの一例を示している。図7(b)は、ロータ31が速く回転した一例であり、ロータ31の回転が速いので、誘起電流Igのダミー(図4参照)の発生がなく、駆動期間t1終了直後から裏の山Irが大きく発生することを示している。
この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2に第1検出パルスCP1が3発出力されると、すでに裏の山Irが大きく発生しているので、第1検出信号DS1の先頭からの3発が閾値Vthを超え(DS1の1発目からの3発を○で示す)、ステップS7による高速駆動の条件A判定が肯定判定となって、直ちに第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、誘起電流Igはすぐに表の山Ifが発生するタイミングになるので、出力OUT1に第2検出パルスCP2が出力されると、第2検出信号DS2の先頭からの2発が閾値Vthを超え(DS2の1発目と2発目を○で示す)、ステップS10による高速駆動の条件B判定が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断される。このように、図7(b)ではロータ31の回転が速いので、回転検出が正常に成立する。
ここで、図7(b)では、ステップモータ30が正常に回転したと判断されたので、所定の時間の後、たとえば、6mS後に次の駆動パルスSPが、出力OUT2より出力される。このように、ロータ31が正常に回転したと判断された場合は、駆動パルスSPが出力OUT1と出力OUT2から短い間隔で交互に出力されることで、ステップモータ30の高速駆動が実現できる。すなわち、この図7(b)で示す高速駆動は、ロータ31の回転速度が速く減衰振動も短くなるので、回転検出を速く成立でき、ステップモータ30の性能を最大限に生かす安定した高速駆動となる。
次に図7(c)は、ロータ31の回転がやや遅い一例であり、誘起電流Igに短期間ダミーImが発生することを示している。この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が出力されると、第1検出信号DS1の先頭の1発目は、ダミーによって逆極性に発生するので検出されない(DS1の1発目を×で示す)。
高速駆動での条件Aは、第1検出パルスCP1の3発中3発すべてが検出されることなので、先頭の1発目が検出されなければ、ステップS7による条件A判定が否定判定となり(すなわち、非回転と判断)、ただちにステップS11に進んで駆動の補償用の補正パルスFPが、出力OUT1から出力される。この補正パルスFPの出力によって、回転が遅いロータ31を確実に回転させることができる。
次に、補正パルスFPの出力後、駆動パルスSPのデューティをランクUPし、次に出力される駆動パルスSPの駆動力を強くする処理を実行する(ステップS12)。このランクUPによって、次の駆動パルスSPの駆動力が強くなるので、ロータ31の回転が速くなる。
この結果、図7(c)の誘起電流Igは、次の駆動パルスSPによって図7(b)で示す誘導電流Igの波形に近づくので、条件A検出(ステップS7)、条件B検出(ステップS10)で共に肯定判定となり、高速駆動が継続するように制御される。すなわち、ロータ31の回転が遅い状態であったとしても、早期に非回転と判断されて補正パルスFPの出力とランクUPが実施されるので、図7(b)で示す高速駆動に適した動作に向かって最適化されていく。
次に図7(d)は、外部磁場等の影響でロータ31の回転がかなり遅い一例であり、ロータ31の回転が遅いので、誘起電流Igに長い期間ダミーImが発生することを示している。この場合においても、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が出力されると、第1検出信号DS1の先頭の1発目がダミーによって検出されない(DS1の1発目を×で示す)。
高速駆動での条件Aは、前述したように、第1検出パルスCP1の3発中3発すべてが検出されることなので、ステップS7による条件A判定が否定判定となり(すなわち、非回転と判断)、ただちにステップS11とステップS12に進み、図7(c)の場合と同様に補正パルスFPが出力され、ランクUPが実施される。このランクUPの処理によって、次の駆動パルスSPの駆動力が強くなるので、ロータ31の回転が速くなる。
この結果、図7(d)の誘起電流Igは、次の駆動パルスSPによって、図7(b)で示す誘導電流Igの波形に近づくので、条件A検出(ステップS7)、条件B検出(ステップS10)で共に肯定判定となり、高速駆動が継続するように制御される。すなわち、ロータ31の回転がかなり遅い状態であったとしても、早期に非回転と判断されて補正パルスFPの出力とランクUPが実施されるので、図7(b)で示す高速駆動に適した動作に向かって最適化されていく。
なお、1回の補正パルスFPの出力とランクUP処理で、図7(b)に示す高速駆動動作に近づかないとしても、駆動パルスSP出力後の回転検出動作を繰り返すことで、ロータ31の回転速度は短期間で上昇し、図7(b)の高速駆動動作に最適化される。また、図7(b)に示す高速駆動動作では、駆動電力の増加となる補正パルスFPを出力することも、駆動パルスSPのランクUPを実施することもないので、低電力による高速駆動を安定して継続できる。
また、図7では図示していないが、高速駆動において、第1検出区間G1での条件A検出(ステップS7)で肯定判定がなされ、次の第2検出区間G2での条件B検出(ステップS10)で否定判定がなされた場合は、その第2検出区間G2のタイミングからただちにステップS11、S12へ進んで補正パルスFPが出力され、ランクUPが実施される。
このように本実施形態は、ステップモータ30を高速駆動する場合、通常駆動での回転検出条件よりも検出条件を厳しくし、ロータ31の回転速度の低下を早期に非回転と判断できるように変更している。
この回転検出条件の変更は、本実施形態では図5のステップS3で記載したように、第1検出区間G1と第2検出区間G2での検出パルスの出力数を少なくしている。具体的には、高速駆動の場合、一例として前述したように、第1検出区間G1での検出パルス数を8発から3発に減らし、第2検出区間G2での検出パルス数を5発から2発に減らしている。
これにより、電子時計1が高速駆動を選択した場合、第1、第2検出区間G1、G2の各先頭の検出パルスによる検出信号の検出可否によって非回転を判定することができる。この結果、ロータ31の回転速度の低下を早期に非回転と判断し、直ちにステップモータの駆動力を強めて最適化することで、低電力で安定した高速駆動を実現する電子時計を提供できる。
なお、高速駆動において、検出パルスの出力数を少なくするだけでなく、たとえば、検出パルスの周期を短くする制御を行ってもよい。具体的には、通常駆動では検出パルスの周期St(図4参照)が0.5mSである場合、高速駆動では0.25mSに短くする。これにより、回転/非回転の判定をさらに早くすることが可能となる。また、各検出パルスのスタート位置も、誘起電流Igの波形に合わせて任意に変更してよい。
また、駆動補償用として出力される補正パルスFPであるが、通常駆動のときでの回転検出においてステップモータ30が非回転と判断された場合(図5:ステップS1で否定判定、ステップS7又はS10で否定判定)は、ステップモータ30は確かに回転していない可能性が高いので(図2:軌跡D参照)、駆動パルスSPより大きな駆動力の補正パルスFPを供給してロータ31を確実に回転させる必要がある。
しかし、高速駆動のときでの回転検出で非回転と判断された場合(図5:ステップS1で肯定判定、ステップS7又はS10で否定判定)は、ロータ31の回転速度の低下を早期に非回転と判断するために、ロータ31の回転速度が遅いだけで実際には回転している可能性が高い。このため、高速駆動のときで非回転と判断された場合の補正パルスFPは、駆動パルスSPと同程度、もしくは、それ以下の駆動力でもよい。従って、補正パルスFPは、通常駆動のときと高速駆動のときで、駆動力が異なる仕様のパルスを出力できるように構成してもよい。
このように、高速駆動のときでの補正パルスFPの駆動力を弱くすることで、高速駆動での駆動電力を低減でき、また、適切な駆動力の補正パルスFPをステップモータ30に供給することで、ロータ31の高速回転が円滑になり、結果的に高速駆動の更なる高速化を実現できる。なお、高速駆動のときでの補正パルスFPの仕様は、後述する第2、第3の実施形態においても同様である。
<駆動パルスSPのデューティの決定方法についての説明:図8>
次に、電子時計1が通常駆動(たとえば1秒運針)から高速駆動に移行する時(図5で示すフローチャートのステップS3)の駆動パルスSPのスタートデューティの決定について図8を用いて説明する。
図8において、1秒運針などの通常駆動での駆動パルスSPのデューティは、ステップモータ30の性能や外乱等の影響にもよるが、比較的小さなデューティが選択される(図8(a)参照)。一方、高速駆動では、短時間にロータ31を回転させる必要があるので、駆動パルスSPのデューティは、通常駆動よりも大きく設定されることが好ましい(図8(b)参照)。
ここで、電子時計1が通常駆動から高速駆動に移行する時、駆動パルスSPのスタートデューティは、通常駆動のときでの駆動パルスSPのデューティを参考にして決定するとよい。図8に示す表(DUTYテーブル)は、通常駆動から高速駆動に移行する時のスタートデューティを決定する為のテーブルの一例である。テーブルの縦軸は、通常駆動での駆動パルスSPのデューティの範囲である。たとえば、16/32は通常駆動でのデューティが50%であり、31/32は通常駆動での最大のデューティである。
カウンタ回数とは、前述した駆動間隔切替回路4の内部にある連続回転カウンタ4aのカウント値である。連続回転カウンタ4aは、回転検出回路40が正常回転と判断した毎にカウントされ、非回転と判断した場合にリセットされる。従って、カウンタ回数が少ない場合は、ステップモータ30の回転が不安定であり(非回転検出が多い)、カウンタ回数が多い場合は、回転が安定している(非回転検出が少ない)ことを示している。
ここで、ステップモータ30の回転が不安定であることは、ランクUPの頻度が高く駆動パルスSPの駆動力を強くした状態であることが想定される。従って、その状態から高速駆動に移行する場合は、駆動力を更に強くする必要は少ないと判断して、スタートデューティのランクUPを小さく設定する。たとえば、図8で示すテーブルにおいて、通常状態のデューティが18/32である場合(太枠で囲う)、カウンタ回数が49以下では、回転が不安定であると想定できるので18/32に近い22/32が設定される。
また、ステップモータ30の回転が安定であることは、駆動パルスSPの駆動力が弱い低電力駆動であることが想定される。従って、その低電力駆動状態で高速駆動に移行すると駆動力が不足すると考えられるので、スタートデューティのランクUPを大きく設定する。たとえば、図8で示すテーブルにおいて、通常状態のデューティが18/32である場合、カウンタ回数が256以上では、回転が安定していると想定できるので、比較的大きなデューティである25/32が設定される。
一方、高速駆動から通常駆動に戻る場合のデューティも、このテーブルを参照して決定することができる。たとえば、通常駆動における駆動パルスSPのデューティが18/32であり、カウンタ回数が256以上であった場合、そこから高速駆動に移行するとスタートデューティは25/32となる。
この高速駆動中に、前述したフローチャート(図5参照)に基づいて非回転検出を起きてランクUPし、たとえば、30/32で高速駆動が継続されているとする。その後、通常駆動に戻った場合、テーブル上の最初の通常駆動でのデューティである18/32に戻ってもよいし、または、テーブル上で高速駆動の現在のデューティ30/32の位置から、図面上左にシフトして得られる通常駆動のデューティ23/32としてもよい。
このように、通常駆動における駆動パルスSPのランクと、連続回転カウンタ4aのカウンタ回数を参考にしてテーブルを作成し、高速駆動のスタートデューティ、及び、通常駆動に戻る時のデューティを決定することで、通常駆動と高速駆動の切り替え動作を円滑に実施することができる。なお、高速駆動のスタートデューティは、後述する第2及び第3の実施形態においても同様に決定することができる。
以上のように第1の実施形態は、通常駆動のときよりもステップモータの回転/非回転が早期に判断できるように、高速駆動のときにおける回転検出条件としての検出パルスの出力数を少なく変更している。この結果、ステップモータの回転検出の遅れによる高速駆動の制限が排除され、ステップモータの高速駆動を最適化し、低電力で安定した高速駆動を実現する電子時計を提供することができる。
<第2の実施形態>
<第2の実施形態の電子時計の構成説明:図9>
次に第2の実施形態の電子時計の概略構成を図9を用いて説明する。なお、第2の実施形態の基本構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一要素には同一番号を付し、第2の実施形態の特徴である回転検出回路40に含まれる検出抵抗部50を中心にして説明する。
図9において、符号100は第2の実施形態の電子時計である。電子時計100は、第1の実施形態と同様の構成要素を備えているが、回転検出回路40に含まれる検出抵抗部50の構成が異なる。すなわち、検出抵抗部50は、第1検出抵抗部51と第2検出抵抗部52との二つの検出抵抗部を備えている。
この検出抵抗部50の詳細は後述する図10で説明するが、検出抵抗部50は、駆動間隔切替回路4からの検出制御信号P4と、パルス選択回路7からの検出抵抗パルスRPと、によって制御され、第1検出抵抗部51と第2検出抵抗部52とが、通常駆動のときと高速駆動のときで切り替えられて動作する。
<第2の実施形態のドライバー回路と検出抵抗部の回路構成の説明:図10>
次に、第2の実施形態のドライバー回路20と回転検出回路40の一部である検出抵抗部50の回路構成を図10を用いて説明する。なお、ドライバー回路20の回路構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略し、本実施形態の特徴である検出抵抗部50の回路構成を中心に説明する。
図10において、回転検出回路40の一部である検出抵抗部50は、第1検出抵抗部51と第2検出抵抗部52によって構成される。第1検出抵抗部51は、第1の実施形態と同様に、トランジスタTP1、TP2を有し、トランジスタTP1、TP2のソース端子Sはそれぞれ電源VDDに接続される。また、トランジスタTP1のドレイン端子Dは検出抵抗R1の一方の端子に接続され、トランジスタTP2のドレイン端子Dは検出抵抗R2の一方の端子に接続される。また、各ゲート端子Gはパルス選択回路7からの検出抵抗パルスRPと、駆動間隔切替回路4からの検出制御信号P4と、によって生成される制御信号(図示せず)が接続される。
検出抵抗R1の他方の端子は、ドライバー回路20の出力OUT1(すなわち、トランジスタDP1とDN1のドレイン結合点)に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40cに入力される。また、検出抵抗R2の他方の端子は、ドライバー回路20の出力OUT2(すなわち、トランジスタDP2とDN2のドレイン結合点)に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40dに入力される。
第2検出抵抗部52は、第1検出抵抗部51と同様の構成である。すなわち、PチャンネルMOSトランジスタTP3、TP4(以下、トランジスタTP3、TP4と略す)を有す。トランジスタTP3、TP4のソース端子Sは電源VDDに接続され、トランジスタTP3のドレイン端子Dは検出抵抗R3の一方の端子に接続され、トランジスタTP4のドレイン端子Dは検出抵抗R4の一方の端子に接続される。また、各ゲート端子Gは検出抵抗パルスRPと検出制御信号P4とによって生成される制御信号(図示せず)が接続される。
検出抵抗R3の他方の端子は、ドライバー回路20の出力OUT1に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40cに入力される。また、検出抵抗R4の他方の端子は、ドライバー回路20の出力OUT2に接続され、さらに、回転検出回路40のゲート回路40dに入力される。
ここで、第1検出抵抗部51の検出抵抗R1、R2と、第2検出抵抗部52の検出抵抗R3、R4の抵抗値は、(R1=R2)>(R3=R4)の関係に設定される。
また、各検出抵抗が接続されたゲート回路40cとゲート回路40dに入力される信号が、ステップモータ30からの検出信号DS(詳しくは第1の実施形態と同様に第1検出信号DS1、第2検出信号DS2)である。すなわち、検出信号DSはステップモータ30からの誘起電流Igが各検出抵抗に流れることによって、各検出抵抗の両端に発生するのである。なお、ゲート回路40c、40d以降の回路構成については第1の実施形態と同様である。また、ゲート回路40c、40dの制御端子Cvは、後述する第2の実施形態の変形例1で追加される構成である。
<第2の実施形態の回転検出フローの説明:図11>
次に、第2の実施形態のステップモータの回転検出動作フローを図11のフローチャートを用いて説明する。なお、電子時計100の構成は図9を参照し、ドライバー回路20と検出抵抗部50の回路構成は図10を参照する。
図11において、電子時計100は運針するために駆動パルス発生回路5から所定の駆動パルスSPを出力し、ドライバー回路20から駆動パルスSPがステップモータ30に供給される(ステップS21)。
次に電子時計100は、第1検出区間G1で回転検出を実行するために、現在の運針モードが通常駆動(たとえば1秒運針)か高速駆動(早送り運針)かを判定する(ステップS22)。ここで、電子時計100が通常駆動である場合は(否定判定)、第1検出区間G1での回転検出動作時に、検出抵抗値が高い第1検出抵抗部51が動作するように選択される(ステップS23)。
また、電子時計100が高速駆動である場合は(肯定判定)、第1検出区間G1での回転検出動作時に、検出抵抗値が低い第2検出抵抗部52が動作するように選択される(ステップS24)。ここで、高速駆動のときに検出抵抗値が低い第2検出抵抗部52を選択する理由は、検出信号DSは検出抵抗の両端に発生するので、検出抵抗値が低いと検出信号DSの信号レベルが小さくなり、これにより、検出信号DSに対するゲート回路40c、40dの見かけ上の閾値Vthが高くなって、検出信号DSが検出され難くできるからである。
この結果、高速駆動のときに検出抵抗値の低い第2検出抵抗部52を選択することで、高速駆動のときの回転検出条件が厳しくなり、第1の実施形態(検出パルスの出力数を少なくして検出条件を厳しくした)と同様な検出動作を実施することができる。
次に電子時計100の駆動間隔切替回路4は、第1検出区間G1での回転検出動作として、駆動パルスSPの出力終了後の減衰期間t2において、たとえば1発の第1検出パルスCP1を出力するように検出パルス発生回路10に指示し、回転検出回路40は、第1検出パルスCP1によって発生する第1検出信号DS1を検出する(ステップS25)。なお、第1検出パルスCP1の出力数は限定されない。
次に電子時計100の回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第1検出信号DS1を検出し、1発の第1検出パルスCP1に対して、1発の第1検出信号DS1を検出できたか否かを判定する(ステップS26)。ここで、肯定判定(DS1を1発検出した)であれば、次のステップS27へ進み、否定判定(DS1検出できず)であれば、非回転と判断してステップS32へ進む。
次に、ステップS26で肯定判定であれば、第2検出区間G2での回転検出動作へ進み、現在の運針モードが通常駆動か高速駆動かを判定する(ステップS27)。ここで、通常駆動の場合は(否定判定)、第2検出区間G2での回転検出動作時に、検出抵抗値が高い第1検出抵抗部51が動作するように選択される(ステップS28)。
また、電子時計100が高速駆動の場合は(肯定判定)、第2検出区間G2での回転検出動作時に、検出抵抗値が低い第2検出抵抗部52が動作するように選択される(ステップS29)。ここで、高速駆動のときに第2検出抵抗部52を選択する理由は、前述した第1検出区間G1での回転検出動作と同様である。
次に電子時計100の駆動間隔切替回路4は、第2検出区間G2での回転検出動作として、たとえば6発の第2検出パルスCP2を出力するように検出パルス発生回路10に指示し、回転検出回路40は、第2検出パルスCP2によって発生する第2検出信号DS2を検出する(ステップS30)。なお、第2検出パルスCP2の出力数は限定されない。
次に回転検出回路40は、所定の閾値Vthを超えた第2検出信号DS2を検出し、6発の第2検出パルスCP2に対して、たとえば3発以上の第2検出信号DS2を検出できたか否かを判定する(ステップS31)。ここで、肯定判定(DS2を3発以上検出した)であれば、ロータ31が正常に回転したと判断し、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
また、第2検出信号DS2が、3発以上検出されないならば(否定判定)、非回転と判断して補正パルスFPを出力する(ステップS32)。さらに、駆動パルスSPの駆動力を上げるために、駆動パルスSPのデューティをランクUPし(ステップS33)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
なお、第2検出区間G2での誘起電流Igは、時間と共に減衰するので小さくなる(図4参照)。このため、高速駆動で検出抵抗値が低い第2検出抵抗部52を選択すると、第2検出信号DS2の信号レベルが小さ過ぎて検出できない場合がある。このような場合は、第2検出区間G2では、高速駆動でも第1検出抵抗部51を選択し、第2検出信号DS2の信号レベルを大きくして検出し易くするとよい。
この場合は、図11のフローにおいて、ステップS27の判定を削除し、ステップS26で肯定判定がなされたならば、無条件でステップS28に進み、第2検出区間G2では、常に検出抵抗値が高い第1検出抵抗部51を選択するようにする。なお、ステップS24、S29の(Vth切替)は、後述する第2の実施形態の変形例1の動作を示している。
<第2の実施形態の通常駆動における回転検出動作の説明:図11、図12>
次に、図12のタイミングチャートを用いて、第2の実施形態の通常駆動における回転検出動作を説明する。なお、通常駆動であるので、第1検出区間G1と第2検出区間G2での回転検出は、共に抵抗値が高い検出抵抗R1、R2を有する第1検出抵抗部51が選択されるものとする。また、動作フローは図11を参照する。なお、第2の実施形態の動作を説明するタイミングチャート図12、及び後述する図13、図14で示す誘起電流Igは、ダミーImが発生しない例を示している。
図12(a)は、駆動期間t1において出力OUT1から出力される駆動パルスSPと、減衰期間t2における第1検出区間G1と第2検出区間G2を示している。ここで、第1検出区間G1と第2検出区間G2が時間的に重なっているのは、第1検出区間G1での判定(1発の第1検出パルスCP1で1発の第1検出信号DS1を検出したか否か:ステップS26)が肯定判定であれば、直ちに第2検出区間G2がスタートするからである。
図12(b)、図12(c)、図12(d)は、通常駆動においてステップモータ30のロータ31の回転の速さの違いによって、第1検出信号DS1と第2検出信号DS2がどのように検出されるかの一例を示している。図12(b)は、ロータ31が速く回転した一例であり、ロータ31の回転が速いので、駆動期間t1終了直後から誘起電流Igの裏の山Irが大きく発生することを示している。
この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、すでに裏の山Irが大きく発生しているので、その第1検出パルスCP1による第1検出信号DS1が閾値Vthを大きく超え(DS1の1発目を○で示す)、ステップS26が肯定判定となって、直ちに次の第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、6発の第2検出パルスCP2が出力OUT1から出力されるが、誘起電流Igはしばらく裏の山Irが続くので、先頭からの3発まで第2検出信号DS2は検出されない。そして、誘起電流Igが表の山Ifになる4発目から6発目までの3発の第2検出信号DS2が閾値Vthを超える(DS2の1発目〜3発目までを×、4発目から6発目までを○で示す)。これにより、ステップS31が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断される。
次に図12(c)は、ロータ31の回転がやや遅い一例であり、誘起電流Igには減衰振動による窪みが発生する。ここで、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、その第1検出パルスCP1による第1検出信号DS1は、減衰振動による窪みで信号レベルがやや小さくなるが、十分に閾値Vthを超えるので(DS1の1発目を○で示す)、ステップS26が肯定判定となって、次の第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、6発の第2検出パルスCP2が出力OUT1から出力されるが、誘起電流Igはしばらく裏の山が続くので、先頭からの2発まで第2検出信号DS2は検出されない。そして、3発目以降の3発の第2検出信号DS2が閾値Vthを超える(DS2の1発目と2発目を×、3発目以降の3発を○で示す)。これにより、3発の第2検出信号DS2を検出しカウントした直後でステップS31が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断される。
次に図12(d)は、外部磁場等の影響でロータ31の回転が遅い一例であり、ロータ31の回転が遅いので、誘起電流Igには減衰振動による大きな窪みが発生する。ここで、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、その第1検出パルスCP1による第1検出信号DS1は、減衰振動による窪みで信号レベルが小さくなるが、ぎりぎりで閾値Vthを超えるので(DS1の1発目を○で示す)、ステップS26が肯定判定となって、次の第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、6発の第2検出パルスCP2が出力OUT1から出力されるが、誘起電流Igは減衰振動によってしばらく裏の山Irが続くので、先頭からの3発まで第2検出信号DS2は検出されない。そして、誘起電流Igが表の山Ifになる4発目から6発目までの3発の第2検出信号DS2が閾値Vthを超える(DS2の1発目〜3発目までを×、4発目から6発目までを○で示す)。これにより、ステップS31が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断される。
このように、ステップモータ30のロータ31の回転の速さによって、誘起電流Igの減衰振動が変化し、それにより、第1、第2検出信号DS1、DS2の信号レベルも変化する。しかし、前述したように、通常駆動では、第1検出区間G1、第2検出区間G2共に、抵抗値が高い第1検出抵抗部51が選択されるので、第1、第2検出信号DS1、DS2の信号レベルは減衰せず、ロータ31の回転が比較的遅い場合でも、正常に回転したと判断される(図12(d)参照)。
これは、1秒運針などの通常駆動では、回転検出にある程度時間がかかっても、次の駆動までに十分な余裕があるので、問題にならないからである。なお、たとえば、第1検出信号DS1が、閾値Vthを超えられず検出できなかった場合は、非回転と判断し、ステップS32、S33が実行され、補正パルスFPが出力し、駆動パルスSPのランクUPとなる。
<第2の実施形態の高速駆動における回転検出動作の説明:図11、図13>
次に、本発明の特徴である第2の実施形態の高速駆動における回転検出動作を図13のタイミングチャートを用いて説明する。なお、図13の回転検出動作例においては、第1検出区間G1の回転検出は、抵抗値が低い第2検出抵抗部52が選択され、第2検出区間G2の回転検出は、抵抗値が高い第1検出抵抗部51が選択されるものとする。また、動作フローは図11を参照する。
図13(a)は、図12(a)と同様であるので説明は省略する。
図13(b)、図13(c)、図13(d)は、高速駆動においてステップモータ30のロータ31の回転の速さの違いによって、第1検出信号DS1と第2検出信号DS2がどのように検出されるかの一例を示している。図13(b)は、ロータ31が速く回転した一例であり、ロータ31の回転が速いので、駆動期間t1終了直後から誘起電流Igの裏の山Irが大きく発生することを示している。
この場合、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、その第1検出パルスCP1による第1検出信号DS1は、抵抗値が低い検出抵抗R4が選択されているので、その信号レベルは通常駆動での検出(図12(b)参照)と比較して小さいが、それでも、閾値Vthを超えるので(DS1の1発目を○で示す)、ステップS26が肯定判定となって、次の第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、6発の第2検出パルスCP2が出力OUT1から出力される。ここで、第2検出区間G2は、抵抗値が高い検出抵抗R1が選択されるので、検出動作は前述した図12(b)で示す通常駆動の第2検出区間G2と同様である。すなわち、誘起電流Igはしばらく裏の山Irが続くので、先頭からの3発目まで第2検出信号DS2は検出されず、4発目から6発目までの3発の第2検出信号DS2が閾値Vthを超える(DS2の1発目〜3発目までを×、4発目から6発目までを○で示す)。これにより、ステップS31が肯定判定となって、ステップモータ30は正常に回転したと判断され、たとえば、6mS後に次の駆動パルスSPが出力OUT2から出力される。
次に図13(c)は、ロータ31の回転がやや遅い一例であり、誘起電流Igにはロータ31の減衰振動によって、駆動期間t1と裏の山Irとの間に電流値が減少する窪みが発生する。ここで、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、誘起電流Igの窪みの影響で第1検出信号DS1の信号レベルは小さくなる。
そして、第1検出区間G1では抵抗値が低い検出抵抗R4が選択されているので、第1検出信号DS1の信号レベルは、通常駆動での信号レベル(図12(c)参照)と比較してさらに小さくなるが、それでも、ぎりぎりで閾値Vthを超えるので(DS1の1発目を○で示す)、ステップS26が肯定判定となって、次の第2検出区間G2に移行する。
第2検出区間G2に移行すると、6発の第2検出パルスCP2が出力OUT1から出力される。ここで、第2検出区間G2は、抵抗値が高い検出抵抗R1が選択されるので、検出動作は前述した図12(c)で示す通常駆動の第2検出区間G2と同様である。すなわち、誘起電流Igはしばらく裏の山Irが続くので、先頭からの2発目まで第2検出信号DS2は検出されない。そして、3発目以降の3発の第2検出信号DS2が閾値Vthを超える(DS2の1発目と2発目を×、3発目以降の3発を○で示す)。これにより、3発の第2検出信号DS2を検出しカウントした直後でステップS31が肯定判定となって、ステップモータ30は、正常に回転したと判断され、たとえば、6mS後に次の駆動パルスSPが出力OUT2から出力される。
次に図13(d)は、外部磁場等の影響でロータ31の回転が遅い一例であり、ロータ31の回転が遅いので、誘起電流Igにはロータ31の減衰振動によって、駆動期間t1と裏の山Irとの間に電流値が減少する大きな窪みが発生する。ここで、第1検出区間G1において、出力OUT2から第1検出パルスCP1が1発出力されると、誘起電流Igの大きな窪みの影響で第1検出信号DS1の信号レベルはかなり小さくなる。
そして、第1検出区間G1では抵抗値が低い検出抵抗R4が選択されているので、第1検出信号DS1の信号レベルは、通常駆動での信号レベル(図12(d)参照)と比較してさらに小さくなり、閾値Vthを超えることができない(DS1の1発目を×で示す)。
これにより、図11で示すステップS26が否定判定となって、ロータ31は非回転と判断され、ただちにステップS32に進んで駆動の補償用の補正パルスFPが、出力OUT1から出力される。この補正パルスFPの出力によって、回転が遅いロータ31を確実に回転させることができる。
次に、補正パルスFPの出力後、駆動パルスSPのデューティをランクUPし、次に出力される駆動パルスSPの駆動力を強くする処理を実行する(ステップS33)。このランクUPの処理によって、次の駆動パルスSPの駆動力が強くなるので、ロータ31の回転が速くなり、図13(b)で示すタイミングに近づいていく。
このように、ステップモータ30の誘起電流Igは、ロータ31の回転が速いと裏の山Irは大きく盛り上がって発生するが(図13(b)参照)、ロータ31の回転が遅くなると減衰振動によって駆動期間t1と裏の山Irとの間に窪みが発生する(図13(d)参照)。本実施形態は、この誘起電流Igに発生する窪みによって、第1検出区間G1での第1検出パルスCP1の1発目による第1検出信号DS1の信号レベルが小さくなる現象に着目し、検出抵抗値を低くして見かけ上の閾値Vthを高くすることで、ロータ31の回転速度に応じて信号レベルが変動する第1検出信号DS1の検出可否により、ロータ31の回転速度の低下を早期に判断するのである。
以上のように第2の実施形態は、ステップモータ30を高速駆動する場合、検出抵抗部50の検出抵抗値を低くして検出信号DSの信号レベルを減少させ、検出信号DSに対する見かけ上の閾値Vthを高くし、回転検出条件を第1の実施形態と同様に厳しくしている。この結果、ロータ31の回転速度の低下を早期に非回転と判断し、ステップモータの駆動力を強めて最適な高速駆動を継続できるので、安定した高速駆動を実現する電子時計を提供できる。
また、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて、高速駆動のときにおいては、通常駆動のときより検出パルスの出力数を少なくし、且つ、検出抵抗値を変更して見かけ上の閾値Vthを高く設定してもよい。これにより、ステップモータ30の回転/非回転をさらに早期に判定して、ロータ31の回転速度のわずかな低下を検出し、最速の高速駆動を維持する電子時計を実現できる。
<第2の実施形態の変形例1の構成説明:図10>
次に、第2の実施形態の変形例1の構成を図10を用いて説明する。第2の実施形態の変形例1の特徴は、検出信号の検出可否を判断するための回転検出回路40の閾値Vthを駆動間隔切替回路4によって制御し、高速駆動のときには閾値Vthを高くして、検出抵抗の抵抗値を低くしたことと同様の効果を得ることである。
図10において、変形例1では、回転検出回路40の二つのゲート回路40c、40dのそれぞれに制御端子Cvを設け、駆動間隔切替回路4からの検出制御信号P4が入力される。ゲート回路40c、40dは、この検出制御信号P4によって、入力信号(第1、第2検出信号DS1、DS2)に対する閾値Vthを変化させる機能を有している。
すなわち、駆動間隔切替回路4が高速駆動のときに検出制御信号P4を論理“1”とすると、ゲート回路40c、40dは、閾値Vthを通常駆動のときよりも高くなるように機能する。一例として、閾値Vthが通常駆動のときでは電源電圧の約1/2である場合、高速駆動では電源電圧の約2/3になるように制御される。なお、変形例1においては、検出抵抗を切り替える必要が無いので、検出抵抗部50は、第1検出抵抗部51のみの構成でよい。
<第2の実施形態の変形例1の回転検出動作の説明:図10、図11、図14>
次に、第2の実施形態の変形例1の高速駆動での回転検出動作を図11のフローチャートと図14のタイミングチャートを用いて説明する。なお、構成は図10を参照する。図11において、電子時計が高速駆動の場合、ステップS24とステップS29が実行されるが、変形例1では第2検出抵抗部を選択するのではなく、ステップS24とステップS29において、駆動間隔切替回路4は、検出制御信号P4によってゲート回路40c、40dの閾値Vthを切り替えて、通常駆動のときよりも高くなるように設定する。
なお、前述したように、第2検出区間G2での誘起電流Igは、時間と共に減衰して小さくなるので、ステップS24によって第1検出区間G1の回転検出のみゲート回路40c、40dの閾値Vthを高くするように設定してもよい。この場合はステップS27、S29は不要となる。
図14のタイミングチャートは、高速駆動において第1検出区間G1の回転検出のみゲート回路40c、40dの閾値Vthを高く設定した場合の検出動作の一例を示している。この図14のタイミングチャートの基本は、前述した第2の実施形態の高速駆動のタイミングチャート図13と同様であり、重複する説明は省略する。
ここで、図14で示す変形例1の動作では、第1、第2検出区間G1、G2共に、検出抵抗値が高い第1検出抵抗部51が接続されるので、第1検出信号DS1の信号レベルは減衰せず、図13で示す信号レベルより大きくなる。また、第1検出区間G1での閾値Vth´は(絶対値が)高く設定されている(破線で示す)。図14(b)はロータ31の回転が速い場合、図14(c)は回転がやや遅い場合、図14(d)は回転が遅い場合である。
図14(b)と図14(c)で示す回転検出例では、第1検出区間G1で発生する第1検出信号DS1は、信号レベルが大きいので閾値Vth´を超え、次の第2検出区間G2での第2検出信号DS2も検出され、その結果、ロータ31は正常に回転したと判断されて、次の駆動パルスSPが出力OUT2から出力される。
一方、図14(d)で示す回転検出例では、ロータ31の回転が遅いので、第1検出区間G1で発生する第1検出信号DS1は、誘起電流Igの窪みによって信号レベルが小さくなって閾値Vth´を超えることができない(DS1を×で示す)。これにより、直ちに非回転と判断されて、補正パルスFPが出力OUT1から出力され、その後、ランクUPがなされて駆動パルスSPの駆動力を強めて高速駆動を継続する。
以上のように、第2の実施形態の変形例1は、高速駆動において、検出信号の検出可否を判断するためのゲート回路40c、40dの閾値Vthを高くすることで、高速駆動での回転検出条件を厳しくすることができる。この結果、ロータ31の回転速度の低下を早期に非回転と判断できるようになり、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第2の実施形態の変形例2の回転検出動作の説明:図9、図15>
次に、第2の実施形態の変形例2の回転検出動作を図9の構成図と図15のタイミングチャートを用いて説明する。第2の実施形態の変形例2の特徴は、駆動間隔切替回路4の制御によって、検出パルスのパルス幅を通常駆動のときより高速駆動のときの方を狭くしてロータに対する電磁ブレーキの効きを強くすることである。
図9の構成図において、変形例2では、駆動間隔切替回路4が高速駆動のときにパルス発生制御信号P2によって検出パルス発生回路10を制御し、第1検出パルスCP1、第2検出パルスCP2のパルス幅を切り替えて通常駆動のときのパルス幅より狭くする。
図15のタイミングチャートは、一例として、第1検出パルスCP1のパルス幅が、通常駆動のときと高速駆動のときで切り替えられることを示している。図15において、駆動パルスSPが終了して減衰期間t2が開始すると誘起電流Igが発生し、その誘起電流Igの発生タイミングに合わせて、第1検出パルスCP1が所定の数だけ出力される。
ここで、第1検出パルスCP1aは、通常駆動のときにおける検出パルスの波形であり、第1検出パルスCP1bは、高速駆動のときにおける検出パルスの波形である。第1検出パルスCP1aのパルス幅Waと第1検出パルスCP1bのパルス幅Wbの関係は、Wa>Wbである。なお、ここでは第1検出パルスCP1について示したが、第2検出パルスCP2についても同様に設定される。このように、変形例2では、駆動間隔切替回路4の制御によって、高速駆動のときの第1、第2検出パルスCP1、CP2のパルス幅Wbを通常駆動のときのパルス幅Waより狭くしている。
高速駆動のときの第1、第2検出パルスCP1、CP2のパルス幅を狭くする理由は、検出パルスが出力されている期間、ステップモータ30のコイル33は、検出抵抗に接続されてオープンに近い状態となるので、その期間は誘起電流Igが流れにくくなってロータ31に対する電磁ブレーキの効きが弱くなり、ロータ31の減衰振動を長引かせることになる。
しかし、高速駆動においては、できるだけ早くロータ31の減衰振動を収束させて、次の駆動を行う必要があるので、電磁ブレーキが弱い期間は、可能な限り短い方が好ましい。このため、変形例2では、高速駆動のときでの検出パルスのパルス幅を狭くして、電磁ブレーキが効く期間を長くし、少しでも早くロータ31の減衰振動が収束するように制御する。
以上のように、第2の実施形態の変形例2は、高速駆動のときにおいて、検出パルスのパルス幅を狭くしてロータ31に対する電磁ブレーキの効きを強くし、その結果、ロータ31の減衰振動の収束を早めて、更なる高速駆動が可能となる電子時計を提供できる。
<第3の実施形態>
<第3の実施形態の電子時計の動作説明:図16、図17>
次に、第3の実施形態の電子時計の動作を図16のフローチャートと図17のタイミングチャートを用いて説明する。なお、第3の実施形態の基本構成は、第1の実施形態と同様であるので、構成は図1を参照する。
図16のフローチャートは、第1の実施形態のフローチャート(図5)のステップS7以降を示している。すなわち、第3の実施形態は、第1の実施形態のステップS7以降の動作フローが異なり、具体的には、ステップS7での否定判定以降のステップS13からステップS16が追加された制御となる。
図16において、高速駆動のときにステップS7の条件A判定で否定判定がなされたならば、非回転と判断して駆動の補償用の補正パルスFPを出力する(ステップS13)。
次に、第1検出区間G1での検出動作(ステップS6:図5参照)において、第1検出信号DS1が先頭の1発、または、先頭から2発までが検出され、以降の第1検出信号DS1を検出していないかを判定する(ステップS14)。
ここで、ステップS14が肯定判定(1発または2発検出)のとき、駆動間隔切替回路4は、駆動パルスSPの駆動力が強すぎるのでロータ31の回転速度が速すぎると判断し、駆動パルスSPのデューティをランクDOWNして駆動力を弱くし(ステップS15)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。
また、ステップS14が否定判定(1発も検出されない)のとき、駆動間隔切替回路4は、駆動パルスのSPの駆動力が弱いと判断し、駆動パルスSPのデューティをランクUPして駆動力を強くし(ステップS16)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。なお、ステップS14での判定は、第1検出信号DS1の検出数にかかわらず、少なくとも先頭の1発が検出されたか否かにより行ってもよい。また、ステップS7〜S12の動作は、第1の実施形態と同一であるので説明は省略する。
次に、図17のタイミングチャートを用いて、第3の実施形態の回転検出動作を説明する。図17(a)は、ステップモータ30のロータ31が、正常に回転している場合の一例であり、第1検出信号DS1が3発検出された後、第2検出信号DS2が2発検出されている。従って、図16のフローにおいて、ステップS7とステップS10で共に肯定判定となり、ロータ31は正常に回転したと判断して、次の駆動パルスSPが出力OUT2から出力される。
図17(b)と図17(c)は、ステップモータ30への駆動力が強すぎて、ロータ31の回転が速すぎる一例であり、本実施形態の機能が動作する場合を示している。図17(b)は、ロータ31の回転が速すぎて、減衰期間t2の開始後、短時間で誘起電流Igの裏の山Irが終了し、表の山Ifに移行してしまう例である。
この場合、第1検出信号DS1の1発目と2発目は閾値Vthを超えて検出されるが、3発目は誘起電流Igが表の山Ifの領域になってしまうので検出されない(DS1の1発目と2発目を○、3発目を×で示す)。この結果、図16のフローにおいて、ステップS7で否定判定され、補正パルスFPの出力後、ステップS14で肯定判定(DS1を2発検出:駆動力が強すぎると判定)されて、ランクDOWN(ステップS15)が実行される。
図17(c)は、ロータ31の回転が更に速すぎて、減衰期間t2の開始後、図17(b)より更に短時間で裏の山Irが終了し、表の山Ifに移行してしまう例である。この場合、第1検出信号DS1の1発目は閾値Vthを超えて検出されるが、2発目以降は誘起電流Igが表の山Ifの領域になってしまうので検出されない(DS1の1発目を○、2発目と3発目を×で示す)。この結果、図16のフローにおいて、ステップS7で否定判定され、補正パルスFPの出力後、ステップS14で肯定判定(DS1を1発検出:駆動力が強すぎると判定)されて、ランクDOWN(ステップS15)が実行される。
また、図17(d)は、ロータ31の回転が遅すぎる場合の一例で有り、減衰期間t2の開始後、誘起電流IgはダミーImが続くので、第1検出信号DS1は1発目から一つも検出されない。この結果、図16のフローにおいて、ステップS7で否定判定され、補正パルスFPの出力後、ステップS14で否定判定(駆動力が弱いと判定)されて、ランクUP(ステップS16)が実行される。
以上のように第3の実施形態は、ステップS7で非回転と判断された後、第1検出信号DS1の検出状態によって、誘起電流Igの裏の山Irが短時間で終了するか否かを判定し、裏の山Irが短時間で終了したと判定されたならば、ステップモータ30に対する駆動力が強すぎると判断して、駆動パルスSPのデューティを小さく(ランクDOWN)する。
これにより、駆動パルスSPの駆動力が強すぎる時はランクDOWNし、駆動パルスSPの駆動力が弱い時はランクUPするので、ステップモータ30は図17(a)で示すような最適化された回転速度による高速駆動を継続できる。この結果、必要以上の駆動力を供給しない低電力駆動を実現しつつ、ステップモータの高速駆動を最適化し、安定した高速駆動を実現する電子時計を提供することができる。
また、図16のフローチャートには示していないが、ステップS7とステップS10で共に肯定判定となり、ロータ31は正常に回転したと判定された回数が所定回数(たとえば256回)を超えた場合、ステップモータ30の回転が安定していると判断して低電力駆動のためにランクDOWNを実施してもよい。
<第3の実施形態の変形例の動作説明:図18,19>
次に、第3の実施形態の変形例の電子時計の動作を図18のフローチャートと図19のタイミングチャートを用いて説明する。なお、本変形例における基本構成は第3の実施形態と同じく第1の実施形態と同様であるので、その構成は図1を参照するものとする。本変形例の特徴は、ロータ31の回転速度が速すぎると判断されて駆動パルスのランクDOWNを行う際に、不要な補正パルスの出力を抑制して電力消費を抑えることにある。
図18のフローチャートもまた、第1の実施形態のフローチャート(図5)のステップS7以降を示している。すなわち、この変形例は、第1の実施形態のステップS7での否定判定以降のステップS14からステップS17が追加された制御である。
図18において、高速駆動のときにステップS7の条件A判定で否定判定がなされたならば、非回転の可能性があると判断してステップS14へと進む。ここで、第3の実施形態と異なり、直ちに駆動の補償用の補正パルスFPを出力しないのは、条件A判定に失敗する場合には、ロータ31が非回転の場合や、駆動力が弱く回転が遅すぎる場合だけでなく、駆動力が強すぎて、ロータ31の回転が速すぎる場合が含まれるからである。ロータ31の回転が速すぎる場合には、ロータ31は正常に回転しており、また、回転検出の遅れによる高速駆動の制限が生じることもないと考えられるため、元来補正パルスFPは必要ない。
ステップS14では、第3の実施形態と同様に、第1検出区間G1での検出動作(ステップS6:図5参照)において、第1検出信号DS1が先頭の1発または2発まで検出され、以降は検出されていないかを判定する。
ステップS14で肯定判定のときは、駆動パルスSPの駆動力が強く、ロータ31の回転速度が速すぎると考えられるから、この場合は、駆動間隔切替回路4は、駆動パルスSPのデューティをランクDOWNして駆動力を弱くする(ステップS15)。このときロータ31は正常に回転しているから、補正パルスFPを出力することなく駆動を終了し、次の駆動までウエイトとする。
一方、ステップS14で否定判定のときは、駆動パルスSPの駆動力が弱く、ロータ31の回転速度が遅すぎるか、又は非回転と考えられるから、この場合は、駆動間隔切替回路4は駆動パルスSPのデューティをランクUPして駆動力を強くする(ステップS16)。さらに駆動の補償用の補正パルスFPを出力し(ステップS17)、駆動を終了して次の駆動までウエイトとする。図18におけるステップS7〜S12の動作は、第1の実施形態と同一であるので説明は省略する。
次に、図19のタイミングチャートを用いて、第3の実施形態の変形例の回転検出動作を説明する。図19(a)は、ステップモータ30のロータ31が、正常に回転している場合の一例であり、図17(a)にて説明したものと同一である。したがって、図18のフローにおいても、ステップS7とステップS10で共に肯定判定となり、ロータ31は正常に回転したと判断して、次の駆動パルスSPが出力OUT2から出力される。
図19(b)と図19(c)は、ステップモータ30への駆動力が強く、ロータ31の回転が速すぎる例であり、先の図17(b)と図17(c)と同様の状態を示している。すなわち、いずれの場合もロータ31の回転が速すぎて、減衰期間t2の開始後、短時間で誘起電流Igの裏の山Irが終了し、表の山Ifに移行してしまう例である。この場合、図18のフローにおいて、ステップS7で否定判定されるまでは、第3の実施形態で示した図16のフローと同様である。しかしながら、本変形例では、補正パルスFPが直ちに出力されることはなく、つづくステップS14での判定がなされる。この結果、肯定判定(DS1を1発または2発検出:駆動力が強すぎると判定)されて、ランクDOWN(ステップS15)が実行される。補正パルスFPは出力されることはなく、また、補正パルスFPの出力を待つことなく次の駆動パルスSPが出力されるから、無駄な電力消費が抑えられ、また、高速駆動の遅れも生じない。
これに対し、図19(d)は、ロータ31の回転が遅すぎる場合の一例であり、先の図17(d)と同様の状態を示している。すなわち、減衰期間t2の開始後、誘起電流IgはダミーImが続き、第1検出信号DS1は一つも検出されない。この結果、図18のフローにおいては、ステップS7で否定判定された後、さらにステップS14で否定判定(駆動力が弱いと判定)され、ランクUP(ステップS16)が実行され、さらに補正パルスFPが出力(ステップS17)される。
以上のように、本変形例は、第3の実施形態において、ロータ31の回転が速すぎる場合に、不要な補正パルスFPを出力することによる無駄な消費電力を抑え、高速駆動の遅れを回避しつつ、図19(a)で示すような最適化された回転速度による高速駆動を継続するものである。
なお、図18中に破線矢印で示したように、ステップS15にて駆動パルスSPのデューティをランクDOWNした後、さらにステップS8へと進み、第2検出区間G2での検出動作を行うようにしてもよい。このようにすることにより、さらに確実にロータ31の回転の有無を検出することができる。
ただし、この場合には、図19(c)に示す場合の取り扱いに注意を要する。すなわち、駆動力があまりに強く、ロータ31の回転があまりに速すぎる場合には、第2検出区間G2への移行前に、表の山Ifが減衰してしまい、第2検出信号DS2が1発も検出されない、又は検出数が条件Bに満たない可能性が考えられる。かかる条件では、図18のフローのステップS10で否定判定されてしまい、ステップS15でランクDOWNした駆動パルスSPのデューティが、ステップS12で再度ランクUPされてしまい、駆動パルスSPのデューティが変更できなくなる。このような場合が出現しうると考えられる場合には、先に説明したように、ステップS15の後、単純に駆動を終了して次の駆動までウエイトとするか、ステップS15にてランクUPがなされた場合には、ステップS12でのランクDOWNを制限するとよい。
<第4の実施形態>
<第4の実施形態の電子時計の動作説明:図20、図21>
最後に、第4の実施形態の電子時計の動作を図20、図21のフローチャートを用いて説明する。第4の実施形態の基本構成についても、第1の実施形態と同様であるから、構成は図1を参照するものとする。
先の第1の実施形態においては、電子時計1が通常駆動から高速駆動に移行する時の駆動パルスSPのスタートデューティの決定方法として、図8に示すDUTYテーブルを参照して、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティより大きなデューティを設定する方法を示した。これに対し、第4の実施形態では、スタートデューティの決定方法として、デューティの異なる運針を複数回行い、それらの回転検出結果に基いて、スタートデューティを決定する方法を採用している。
図20のフローチャートは、通常駆動から高速駆動に移行された時に実行される、スタートデューティ決定動作を示している。スタートデューティ決定動作では、まず、ステップS41において、指定デューティとして、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティから、ランクが1つ高いデューティを指定する。例えば、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティが18/32であれば、指定デューティは1ランク上の19/32となる。指定デューティは、次のステップS42で実行される運針(試行運針)時に使用される駆動パルスSPのデューティである。
続くステップS42では、指定デューティの駆動パルスSPを用いて試行運針を行う。試行運針は、高速運針を行い、回転検出を行うものであり、上述した第1〜第3の実施形態およびそれらの変形例のいずれかと同様の運針を行うものとしてよい。ただし、試行運針時には、回転検出の結果に伴うデューティのランクの変更は行われない。
図21のフローチャートは、第1の実施形態に準じたものとしての試行運針の動作を示すものである。まず、ステップS421では、運針時の駆動パルスSPのデューティ(ランク)として、指定デューティを設定する。指定デューティとして、通常運針時のランクのデューティより1ランク上のデューティが指定されていれば、試行運針時の駆動パルスSPのデューティのランクは通常運針時の1ランク上のものとなる。続くステップS422では、第1検出期間G1における回転検出の条件である条件A及び第2検出期間G2における回転検出の条件である条件Bをセットする。この条件は、第1の実施形態において高速駆動時に用いられる条件と同じであり、図5のステップS3にて設定されるものと同じである。なお、試行運針時の動作として、第2の実施形態と同様の運針を行う場合には、ステップS422にて、図11のステップS24と同様に、第2検出抵抗部52を選択して、見掛け上の検出閾値Vthを切り替えるものとしてもよい。第3の実施形態についても同様である。
これ以降のステップS423〜S430の動作は、第1の実施形態における図5のフローに示したステップS4〜S11と同一であるから、その重複する説明は省略する。これにより、条件A及び条件Bによる回転検出が行われ、正常に回転していると判定されなかった場合には、ステップS430にて補正パルスFPが出力される。なお、試行運針時の動作として、第2の実施形態と同様の運針を行う場合には、図11のステップS25〜32(ステップS27〜S30は除いてよい)と同一の動作をステップS423〜S430の動作に換えて行えばよい。第3の実施形態についても同様である。
ここで、試行運針においては、図5のフロー中のステップS12に見られる駆動パルスSPのデューティのランクUPは行われない。試行運針は、指定デューティに従ってなされる運針であり、それ自体でランクの変更を伴うものではないからである。なお、ステップS426における第1検出期間G1での検出パルスDS1の検出結果は記憶され、後ほど参照される。
再び図20に戻り、ステップS43で、今度は指定デューティとして、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティから、ランクが1つ低いデューティを指定する。例えば、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティが18/32であれば、指定デューティは1ランク下の18/32となる。
ステップS44において、同様に指定デューティにて試行運針を行う。この場合には、通常駆動時のデューティより1ランク下のデューティで試行運針がなされることになる。
以上のステップS41〜S44の動作により、まず、複数の異なるデューティの駆動パルスSPによる複数回の運針をおこない、それぞれについて、回転検出が行われることになる。
続くステップS45で、複数回の試行運針(ステップS42,S44)における、第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1の有無を判定する。本実施形態では、ステップS45において、ステップS42及びステップS44の両方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出された場合(ケース1)、ステップS42及びステップS44の両方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出されなかった場合(ケース2)、ステップS42及びステップS44のいずれか一方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出され、他方では検出されなかった場合(ケース3)の3通りの場合を判別している。
ステップS45でケース1(ステップS42及びステップS44の両方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出された)と判定された場合、ステップS46にて、スタートデューティとして、通常駆動時のデューティの2ランク下のデューティを設定する。これは、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティのランクの上下のランクのデューティが、高速駆動においてロータ31を高速に回転させるのに十分な強さの駆動力を持っていることを意味しているから、安定した高速駆動時のデューティのランクとして、より低いランクのものを選択する意図である。スタートデューティが決定された後は、上述の第1〜第3の実施形態及びそれらの変形例のいずれかに従って、高速駆動を継続すれば良い。
ステップS45でケース2(ステップS42及びステップS44の両方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出されなかった)と判定された場合、ステップS47にて、スタートデューティとして、通常駆動時のデューティの2ランク上のデューティを設定する。これは、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティのランクの上下のランクのデューティが、高速駆動においてロータ31を高速に回転させるのに十分な強さの駆動力を持っておらず、駆動力が不足していることを意味しているから、安定した高速駆動時のデューティのランクとして、より高いランクのものを選択する意図である。スタートデューティが決定された後は、同様に上述の第1〜第3の実施形態及びそれらの変形例のいずれかに従って、高速駆動を継続すれば良い。
ステップS45でケース3(ステップS42及びステップS44のいずれか一方で第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1が検出され、他方では検出されなかった)と判定された場合、ステップS48にて、スタートデューティとして、通常駆動時のデューティと等しいデューティを設定する。これは、高速駆動においてロータ31を安定して高速駆動できるデューティが、通常駆動時の駆動パルスSPのデューティのランク付近にあることを意味しているから、安定した高速駆動時のデューティのランクとして、通常駆動時のものを選択する意図である。スタートデューティが決定された後は、同様に上述の第1〜第3の実施形態及びそれらの変形例のいずれかに従って、高速駆動を継続すれば良い。
以上のステップS45〜S48の動作により、複数の異なるデューティの駆動パルスSPによる複数回の運針についての回転検出の結果に基いて、スタートデューティが決定されることになる。これにより、何らかの事情により通常駆動時の駆動パルスSPのデューティのランクが必ずしも安定駆動に適した比較的小さなデューティにない場合であっても、安定して高速駆動できるデューティにより近いランクのデューティをスタートデューティとして選択することができ、高速駆動が速やかに安定すると考えられる。
なお、試行運針の回数(本実施形態では2回)や、各試行運針時の指定デューティは、ここで示した例に限定されるものではなく、より多くの回数の試行運針を行ってもよいし、指定デューティとして異なるデューティを採用してもよい。また、スタートデューティを決定するにあたって、第1検出区間G1での1発目の検出信号DS1以外の検出信号を考慮してもよく、検出結果に応じてよりきめ細かくスタートデューティを決定してもよい。例えば、本実施形態ではスタートデューティをケース1〜ケース3の3通りの中から選択しているが、より多くの場合分けを行い、それぞれの場合に応じて最適なスタートデューティを選択してよい。
なお、本発明の各実施形態で示した構成図、フローチャート、タイミングチャート等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更することができる。たとえば、各検出区間における検出パルスの出力数、検出期間、検出数等は限定されるものではなく、ステップモータの性能や電子時計の仕様に応じて任意に変更できる。