JP2012026874A - ステップモータ装置 - Google Patents

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俊成 前田
Toshiaki Fukushima
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Abstract

【課題】従来の連続運針を実現するためのステップモータは、ロータの角速度の変動幅が非常に大きく、長い秒針を設けた場合などには秒針の振れとして時計の使用者に違和感として認識されてしまうという問題があった。また、連続運針を行なわせる場合には、消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【解決手段】本発明のステップモータ装置は、1個のロータに対してその軸方向に互いに絶磁された2個のステータを空間的に位相をずらして重ねて設けており、2個のステータとロータとの間では、コイルの非通電時にロータの位置を安定させる保持トルクが生じない。また、駆動パルスとしてコイルに印加する実効電圧が低い。そして、ロータの回転情報を検出し、非回転時は遅れを補正する信号により、使用者にも違和感なく補正する機能を有する。このような構成にすることで、角速度の変動幅を小さくでき、スムースな連続運針を低消費電力で実現できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、2つのステータと1つのロータを有し、特に、アナログ電子時計の指針を駆動するための駆動源として使用される連続運針をするための時計用のステップモータ装置に関する。
アナログ電子時計の駆動源には、入力するパルス状の駆動信号に同期して回転する、いわゆるステップモータ(ステッピングモータやパルスモータ、あるいは同期モータとも称される)が用いられており、一般に単相ステップモータが採用されている。
その単相ステップモータは、永久磁石からなる1個のロータと、そのロータを回転自在に挿入させるロータ孔を有する軟磁性体のヨークとそのヨーク(磁心)と一体のコイル芯に導線を巻きつけたコイルとからなる1組のステータとを備えており、そのコイルにパルス電流を流すことにとよって、ロータが一定角度だけ回転する。
そして、ステータのヨークにおけるロータ孔の周囲には、コイルによる磁界によってロータに駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット又は磁束飽和部と、ロータに保持トルクを作用させために機能する一対の内ノッチとを設けている。
駆動トルクはロータを回転させるためのトルクであり、保持トルクはロータの回転方向を決めるとともに、コイルの非通電時にロータの位置を安定させるためのトルクである。この保持トルクによって、針が衝撃によって飛ぶのを抑えることもできる。
パルス電流の通電により、ロータが一定角度だけ回転する、その1ステップ動作に要する時間はわずか数[ms]程度であり、再び1[s]後にパルス電流を通電するまでの間、コイルには非通電でありロータは停止したままである。このような運針をステップ運針と呼び、通電時間が非常に短いために消費電力は小さく、腕時計に用いられる小さな電池であっても長期間に亘って指針を駆動できる。そのため、現在多くの腕時計に単相ステップモータが用いられているのである。
また、パルス電流を1[s]周期間隔で通電するのではなく、数十[ms]周期の間隔で通電し、減速比をその周期分増やすことで、運針がさも連続的に動いているように見せることができる。このような運針方法を連続運針と呼ぶ。このような運針方法は多くの提案を見るものであり、そのような運針をする時計は、主に置時計などでは広く普及しており、近年では腕時計に採用されることも多い。特に腕時計にあっては、秒針が1秒ごとに運針するものが主流である中で、秒針が連続運針するものは、特に注目されている。
上述の運針方法を行なう従来から知られている単相ステップモータの構成を図33を用いて説明する。
図33において、永久磁石よりなるロータ103は、ヨーク1011に設けられたロータ孔1011aに回転自在に挿入され、そのロータ孔1011aにはロータ103に駆動トルクを作用させるために必要な磁束飽和部1011dと、保持トルクを作用させるための内ノッチ1011cとが設けられている。
コイル1013へのパルス電流の方向を一定周期毎に切り替え、保持トルクに打ち勝つだけのトルクが発生するようなエネルギーを与えた場合に、ロータを180[deg]ずつ一定方向に回転させることができる。
図33に示したこのような単相ステップモータの構成は広く知られているものであるが、例えば、特許文献1に一例が開示されている。
このようなステップモータにあっては、ロータの駆動に際する高効率化や低消費電力化の取り組みが多く成されている。例えば、2つの単相ステップモータをロータの軸方向に重ねる構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2に示した従来技術は、連続運針をするものではないが、2つの単相ステップモータを制御することで、正逆回転を可能としたステップモータとなっている。
特許文献2に示した従来技術を、図34を用いて説明する。
図34において、互いに直交し、磁気分離された2つのヨーク2011,2021と、2つのコイル2013,2023とからなるステータ201,202を、ロータ203に対して同軸上に配置してある。ヨーク2011,2021にはロータ回転方向に対して同じ位相関係となるようにロータ孔2011a,2021a、及び内ノッチ2011c,2021cが配置されることで、ロータには保持トルクが作用し、ロータ203は、静的安定位置から次の静的安定位置までを1ステップとして回転する。この1ステップは180[deg]である。
このステップモータは、2つのコイル2013,2023より通電する側を選択することで、正回転又は逆回転を切り替えることができる。製造技術に歴史がある単相ステップモータ用のステータ201,202をロータ軸方向に重ねるのみで良いために、製造し易い構造である。
また、2つの単相ステップモータをロータの軸方向に重ねる構成の他の例として、効率よく高トルクを発生させると共に、低消費電力化を行なえる技術も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
特許文献3に示した従来技術は、時計用のステップモータとして高トルク化に貢献する技術であるものの、このような運針方法の技術のみでは、負荷変動などの影響で万が一ロータが回転できなかった場合に、時刻遅れも発生してしまう。
時刻遅れを発生させないためには、想定されうるあらゆる想定負荷変動を考慮して、十分なエネルギーを入力してロータを回転させる必要がある。
このような負荷変動などによるロータの回転不良を補償する技術を、負荷補償技術と呼ぶ。
負荷補償技術は多くの提案を見るものであるが、例えば、通常の1秒毎のステップ運針時にできる限りエネルギーの小さなパルスで駆動し、パルス印加後ロータが停止直前に振動することに起因するコイル通電電流の振幅情報から回転検出を行い、非回転の場合には大きなエネルギーの補正パルスを印加し、次の1秒になる前に時刻遅れを補正してしまう技術がある(例えば、特許文献4参照。)。
特許文献4に示した従来技術を、図35を用いて説明する。
図35において、コイルには、図35(f)、(g)に示すような1秒毎のステップ運針用駆動パルスP1,P2,P3を印加しており、図35(d)の信号によりパルス印加後に回転検出を行い、非回転時には図35(g)に示すような補正パルスFPにより遅れ補正を行っている。
仮に、図35と同様に、約30[ms]後に約10[ms]の補正パルスを印加しても約50[ms]後には完全に回転できているために、1秒間に少なくとも20回(=1[s]/50[ms])はステップ駆動できることとなり、連続運針を行いながら回転検出をし、時刻遅れ補正をすることは十分可能である。
補正パルスにより、万が一ロータが回転しない場合でも、確実に回転させることができ
るために、駆動パルスのエネルギーはできる限り小さく設定でき、1ステップ毎の消費電力を低減できる。
特開昭55−4554号公報(第2頁、第1図) 特公平7−93807号公報(第2頁、第1図) 特開2009−189080号公報(第5頁、第1図) 特公平8−33457号公報(第2貢、第3図)
図33に示した従来知られている単相ステップモータの構造では、ロータ103に保持トルクが作用しており、それに打ち勝ち回転させるために十分高い電圧を印加して回転させる必要がある。そして、ロータ103が停止する際には保持トルクによりロータ103を位置決めするトルクが作用し、減衰振動をしながら静的安定位置で停止する。そのために、1ステップあたりの角速度の変動幅が非常に大きくなってしまう。そうすると、連続運針をするとき、秒針の振れとして時計の使用者には違和感として認識されてしまうという問題がある。この秒針の振れは、長い秒針を設けた場合などに顕著になる。
その1ステップあたりの角速度波形の様子を逆起電力による細かな速度変動などは無視し、かなり簡略化して模式的に示したものが図36である。図中、108a,108bは角速度波形である。角速度の変動幅はΔωdで示している。また、図には角速度波形の1つを拡大した拡大部も表している。その拡大部においてT1,T2は区間、αは領域を示している。
図36(A)は、変動幅が非常に大きく、正側から負側にまで変化する様子を示している。図36(B)は、角速度の変動幅がなく理想的な角速度波形を示している。
ロータに作用する保持トルクがあると、そのロータを回転駆動させようとしたときに、駆動トルクが保持トルクを上回るように駆動パルスをコイルに印加する必要がある。図36(A)に示したように、駆動パルスを印加してそれにより発生した駆動トルクにより、保持トルクが負荷として作用している区間をロータが乗り越えるまでが区間T1であり、それを超えて今度はロータが保持トルクによって回転し始めて、やがて静的安定位置で回転し終わる区間を区間T2とすると、ロータの角速度の変動は、区間T1と区間T2との両方で起きている。ただし、区間T1と区間T2とでは、その発生要因が異なる。
すなわち、区間T1にあっては、駆動トルクが保持トルクに打ち勝とうとするために発生するものであり、保持トルクと駆動パルスの実効電圧との兼ね合いでその変動の大きさ(変動幅)は変わるのである。保持トルクを簡単に超えるほど大きな駆動トルクを発生するような高い実効電圧の駆動パルスを用いてしまうと、ロータは回転しやすくなるものの、かえって角速度の変動を招いてしまう。
一方、区間T1を経てその後にロータが所定角度回転し終わるまでの区間T2にあっては、保持トルクが作用してロータが減衰振動をしながらやがて停止するために起こるものであり、保持トルクの大きさでその変動の大きさ(変動幅)も変わるのである。なお、領域αは、角速度の負の変動の領域を示しており、保持トルクが小さければ、この領域αにおける角速度の変動も小さくなる。
図36(A)に示した角速度波形108aの変動を抑制するために、1秒間あたりに発生させるパルス数を増やし、輪列の減速比を増やすことで、秒針の振れの度合いを使用者に認識され難くすることができる。
しかし、そうすると、消費電力はパルス数に比例して増加してしまうため、図33に示した従来知られている単相ステップモータを腕時計のような小さな電池しか搭載できない機器に適用した場合には、寿命が短く、電池交換が頻繁に必要となってしまうという問題が代わりに発生してしまう。
特許文献2に示した従来技術を応用して電子時計の秒針を連続運針させようとしても、やはり保持トルクがロータ203に作用しているから、180[deg]ずつステップ運針させるために、角速度の変動は図36の(A)の角速度波形108aと同じになってしまい、やはり秒針の振れとして時計の使用者に違和感として認識されてしまうという問題がある。
特許文献3に示した従来技術は、高効率で高トルクを発生させることができる技術であるが、保持トルクがロータに作用しているから、角速度の変動幅もある。ロータの回転をそのまま指針に伝達する機構を搭載した電子時計の場合は、その秒針を連続運針させるとき、秒針の振れが発生してしまうことがある。
つまり、ロータの角速度の変動を小さくすることで電子時計の秒針の振れを小さくするには、ロータにかかる保持トルクを小さくすれば図36(A)に示す区間T2の角速度の変動が改善される。そして、そのような保持トルクが小さいロータを、より小さい実効電圧の駆動パルスで駆動すれば区間T1の角速度の変動が改善される。
しかしながら、そのような、ロータにかかる保持トルクが極めて小さく、かつ角速度の変動を発生しないような低いで実効電圧で動作できるステップモータは、いまだ提案がなされていない。
また、特許文献4に示した従来技術の回転検出技術を、例えば特許文献1の技術に組み合せたとしても、先述したように例えば1秒間に約20回程度のステップ運針を繰り返すために消費電力は、1秒ステップ運針の場合の20倍であるために、まだまだ大きく小さな電池はすぐに消耗してしまうという問題がある。
加えて、回転検出を行うための電流振幅を発生させるために、ロータ停止直前にロータが振動することが必要であり、そのためには、ロータに保持トルクが加わっている必要がある。すでに述べたとおり、保持トルクがロータに作用していると、角速度の変動が発生してしまうから、秒針の振れも発生してしまう。
したがって、ロータの角速度の変動を小さくすることで電子時計の秒針の振れを小さくすることに加え、万が一ロータが回転しない場合でも、確実に回転させることができる技術は、いまだ提案がなされていない。
本発明は上記のような問題を解決し、図36(B)の角速度波形108bにあるように角速度の変動幅が小さい特性で、時計の使用者に秒針の針の振れを違和感として意識させない連続運針を実現する。また、連続運針であっても低消費電力駆動が可能で、かつ秒針の送りを確実に検出し、遅れがある際には補正ができ、製造し易い構造のステップモータ装置を提供することを目的とする。
この発明によるステップモータ装置は上記の目的を達成するため、以下に示す構成を採用するものである。
2極に着磁された永久磁石からなる1個のロータと、ロータを回転自在に挿入されるロータ孔を有する軟磁性体のヨークとこのヨークに一体となるコイル芯に導線を巻きつけたコイルとからなるステータを2個有し、2個のステータは、ロータ孔の位置を互いに一致
させてロータの軸方向に互いに空間的な位相をずらせて重ねると共に互いを絶磁して配置された第1のステータと第2のステータとであるステップモータを有し、それぞれのコイルに電気的な位相をずらした所定の駆動パルスを発生する駆動手段によりこの駆動パルスをそれぞれのコイルに印加することで、ロータを回転させるステップモータ装置において、
そのステップモータは、2個のステータのロータ孔の周囲には、コイルによる磁界によってロータに駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット又は磁束飽和部を設け、2個のステータとロータとでは、コイルの非通電時にロータの位置を安定させるための保持トルクが生じないステップモータであり、
駆動手段は、ロータの回転又は非回転を検出する検出手段を有し、
ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間(M)と、この回転時間(M)を所定の個数(N)に分割した所定の分割周期(T)と、を定義したとき、
駆動手段は、分割周期(T)の期間内に駆動パルスを印加すると共に検出手段によりロータの回転又は非回転を検出し、ロータが非回転と判断されたとき、回転時間(M)内の次の分割周期(T)の期間内に遅れ補正信号によりロータを回転させ、
遅れ補正信号は、駆動パルスよりもその実効電圧が大きく、その周波数が高いことを特徴とする。
このような構成を有することで、保持トルクが生じないために低い電圧でも駆動することができ、角速度の変動幅の小さいスムースな連続運針を実現できるという効果を有すると共に、ロータの回転又は非回転を検出でき、万が一非回転で遅れが発生した場合にも遅れを補正することができるために、更なる低消費電力化と確実な運針とを実現できる。
遅れ補正信号は、駆動パルスの2倍の周波数であってもよい。
このような構成とすることで、遅れを補正する際に、使用者に認識されてしまわないような、違和感のない速度で補正ができるという効果を有することができる。
遅れ補正信号は、所定の実効電圧を第1の時間印加する1つのパルスと、所定の実効電圧を第2の時間印加する複数のパルスと、の組み合わせであり、第1の時間は第2の時間より大きくしてもよい。
実効電圧の大きさを考える際に、波高値(電圧振幅)だけではなく、波高値は同じでも時間平均をとり、その平均値の大きさを、実効電圧の大きさと考えることもできる。
したがって、遅れ補正信号は、実効電圧の大きい区間と実効電圧の小さい区間との組合せで構成できる。このような構成とすれば、遅れ補正段階での無駄な消費電力の消費を抑えるという効果を有することができる。
駆動パルスは、2個のコイルを1−2相励磁するものであり、それぞれのコイルに印加される電圧は、2相通電区間の実効電圧を1相通電区間の実効電圧よりも小さくするようにしてもよい。
このような構成とすることで、2相通電区間での余分なエネルギー投入によるか減速がなくなり、低消電化とスムースな連続運針の実現という効果を有することができる。
検出手段は、2個のコイルの通電電流を微分し、その振幅が設定した閾値以上にあるか否かで、ロータの回転又は非回転を判断するようにしてもよい。
このような構成とすることで、簡単な構成での回転か非回転かの判断という効果を有することができる。
駆動手段は、駆動パルスを発生するために、少なくとも4つのスイッチ素子によるHブリッジ回路2組よりなる駆動回路を備えており、駆動パルスの実効電圧は、ロータに負荷として作用している静止摩擦トルク又は動摩擦トルクより大きいトルクを発生させる電圧値であると共にスイッチ素子を構成するMOSFETの閾値電圧よりも小さい電圧値であるようにしてもよい。
このような構成とすることで、摩擦トルクをわずかに上回る程度のトルクで駆動するため、余計な加減速がなく、角速度の変動幅の小さいスムースな連続運針の実現という効果を有することができる。
2個のステータに備える一対のスリット又は磁束飽和部は、それぞれのステータごとに保持トルクを生じさせない位置となっていてもよい。
このような構成とすることで、組立時にそれぞれのステータの位置関係についてさほどの精度を要するものではなくなり、製造コスト低減という効果を有することができる。
2個のステータに備える一対のスリット又は磁束飽和部は、一方のステータに保持トルクを生じさせての前記ステータによりその保持トルクを打ち消すような位置となっていてもよい。
このような構成とすることで、それぞれのステータの位置関係を組み付け時に微調整し、ロータに作用する保持トルクをきれいに打ち消し、より角速度の変動幅の小さいスムースな連続運針の実現という効果を有することができる。
この発明によるステップモータ装置は、2個のステータとロータとの間では、コイルの非通電時にロータの位置を安定させるための保持トルクが生じないという、従来にない特徴を有している。このために、角速度の変動幅を小さくすることができる。これにより、電子時計の秒針の運針に用いたとき、その秒針が長い秒針であっても、秒針の振れは発生しない。電子時計の秒針が連続運針するときでもスムースな運針が可能になる。
また、この発明によるステップモータ装置は、ステップモータ自体に保持トルクがないため、ロータを駆動し始める期間においても、それぞれのコイルに印加する駆動パルスの実効電圧を小さくできるから、その結果、角速度の変動幅が小さいことに加えて、より消費電力を小さくすることができる。
そして、ロータの回転又は非回転を検出し、非回転時には遅れ補正を行うことができるために、通常の運針時にはできる限り小さいエネルギーで駆動できるだけでなく、遅れなく確実に針を送ることができる連続運針を実現できる。
さらにまた、それぞれのステータ自体は複雑な構造ではないため、製造しやすいという効果もある。
本発明の第1実施形態のステップモータ装置を説明する斜視図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置の第1のステータと第2のステータとをロータ軸方向に分離させた状態を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置の第1のステータと第2のステータとを左右に並べて示す平面図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置のステータによってロータに作用する保持トルクを説明するための図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置の1−2相励磁時の遅れ補正を説明する図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置の1−2相励磁時の駆動を説明する図である。 本発明の第1実施形態のステップモータ装置の遅れ補正を行うためのアルゴリズムを説明する図である。 本発明の第2実施形態のステップモータ装置の2相励磁時の遅れ補正を説明する図である。 本発明の第2実施形態のステップモータ装置の2相励磁時の駆動を説明する図である。 本発明の第3実施形態のステップモータ装置の1相励磁時の遅れ補正を説明する図である。 本発明の第3実施形態のステップモータ装置の1相励磁時の駆動を説明する図である。 本発明の遅れ補正に係る第1変形例を説明する図である。 本発明の遅れ補正に係る第2変形例を説明する図である。 本発明の遅れ補正に係る第3変形例を説明する図である。 本発明の保持トルク打消しに係る第1変形例の構成を説明する図である。 本発明の保持トルク打消しに係る第2変形例の構成を説明する図である。 本発明の保持トルク打消しに係る第3変形例の構成を説明する図である。 本発明の保持トルク打消しに係る第3変形例の作用及び効果を説明する図である。 ステータの絶磁構造の説明のためにロータ孔周辺を模式的に示す断面図である。 駆動回路を説明する図である。 スイッチ素子を構成するMOSFETの特性を説明する図である。 印加電圧とそのときのロータの角速度との関係を示す図である。 印加電圧を下げる手法を説明する図である。 通常運針時に除々に実効電圧を下げていくためのアルゴリズムを説明する図である。 1−2相励磁時の第2の駆動方式を説明する図である。 1−2相励磁時の第2の駆動方式における通電時間比に対する消費電力の変化を説明する図である。 1−2相励磁時の第3の駆動方式を説明する図である。 回転検出方法に係る具体例の説明図であって、1−2相励磁時に回転した場合の電圧、電流、電流微分の波形を示す図である。 回転検出方法に係る具体例の説明図であって、1−2相励磁時に非回転だった場合の電圧、電流、電流微分の波形を示す図である。 図28(C)及び図29(C)の区間ts2を拡大表示した図である。 ロータの駆動手法を説明する図であって、駆動方法選択のアルゴリズムを説明する図である。 ロータの駆動手法を説明する図であって、高速駆動時の駆動パルスとステップ状駆動時の駆動パルスとを説明する図である。 従来技術を説明する図である。 特許文献2に示した従来技術を説明する図である。 特許文献4に示した従来技術を説明する図である。 1ステップあたりの角速度波形の様子を説明する模式的な波形図である。
ステップモータ装置は、1個のロータに対して2個のステータを上下に重ねる構成を有している。2つのステータは、各ロータ孔の位置を1個のロータに対して一致させており
、その軸方向に互いに空間的な位相をずらせて重ねると共に互いを絶磁して配置している。
ステップモータ装置は、ステータによりロータに駆動トルクを作用させる機能は有しているが、コイルへの非通電時に保持トルクをロータに作用させる機能は有していない。そうすることで、角速度の変動幅を小さくすることができる。
ステップモータ装置は、電気的な位相をずらした駆動パルスをそれぞれのコイルに印加することで、ロータを回転させる。
ロータの回転又は非回転を検出する検出手段を有しており、所定の分割周期(T)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段によりロータの回転又は非回転を検出する。ロータが非回転の時にはすぐ次の分割周期(T)の期間内で、実効電圧が大きく、2倍の周波数の遅れ補正信号により、遅れを補正する。そうすることで、低消費電力化と使用者にも違和感なく補正でき、確実な運針を実現できる。
回転を検出し、遅れを補正する構成としては、以下の3つの実施形態がある。
第1実施形態は、1−2相励磁で駆動する構成である。
第2実施形態は、2相励磁で駆動する構成である。
第3実施形態は、1相励磁で駆動する構成である。
以下、各実施形態に共通するのは、ステップモータ装置を構成するステップモータは保持トルクを有していないという点である。実施例1として保持トルクを有さない構成の一例を示し、その構成において上述の3つの励磁方法を説明する。そして、実施例2として保持トルクを有さない別の構成例を説明する。
[第1実施形態の構成の説明:図1〜図4]
図1〜図4はステップモータ装置の第1実施形態の構成を示す図であり、図1はステップモータの斜視図、図2は図1に示したステップモータの第1のステータと第2のステータとをロータ軸方向に分離させた状態を示す斜視図、図3は第1のステータと第2のステータとを左右に並べて示す平面図、図4はステータによってロータに作用する保持トルクを説明するための図である。
第1実施形態のステップモータ装置の特徴は、上下に重ねたステータそれぞれで、コイルへの非通電時に保持トルクをロータに作用させない構成である。
具体的には、それぞれのステータに一対のスリットと、その一対のスリットを設けたことによって生じる保持トルクを打ち消すための一対の内ノッチとを設けており、スリットと内ノッチとは互いに直交するように設けている。これにより保持トルクをロータに作用させない構成としている。
更に、駆動パルスの印加とロータの回転又は非回転の検出とを同じ分割周期の期間内で行い、非回転時にはすぐ次の分割周期内にて、駆動パルスよりも大きい実効電圧で、かつ2倍の周波数の遅れ補正信号により、遅れを補正している。
まず、保持トルクをロータに作用させない構成について説明する。
図1において、3は永久磁石からなる1個のロータである。11はロータ3を回転自在に挿入させるロータ孔11aと一対のスリット11bと一対の内ノッチ11cとを有する軟磁性体のヨーク(磁心)、12はヨーク11と一体となるコイル芯、13はコイル芯12に導線を巻きつけたコイルである。これらで第1のステータ1を構成している。
同様に、21はロータ3を回転自在に挿入させるロータ孔21aと一対のスリット21bと一対の内ノッチ21cとを有する軟磁性体のヨーク、22はコイル芯、23はコイルであり、これらで第2のステータ2を構成している。
なお、コイル13,23は細い導線を巻回したものであるが、その様子は図面を見やすくするために省略している。
そして、コイル13とコイル23とに電気的な位相をずらした所定の駆動パルスを印加する駆動手段30とを備えている。駆動手段30は、コイル13,23に駆動パルスを印加する駆動回路10と、駆動回路10からコイル13,23に流れる電流情報などを読み取ることでロータ3の回転又は非回転を検出する検出手段30bと、検出手段30bの結果に基いて駆動パルスの実効電圧を可変したり、駆動回路10に送る制御信号のDutyを可変するための可変電圧手段30aと、を備える。
図1に示すように、第1のステータ1と第2のステータ2とは、各ロータ孔11a,21aの位置を1個のロータ3に対して一致させて、その軸方向に互いに空間的な位相をずらせて重ねると共に互いを絶磁して配置している。双方のステータの絶磁は、図示しない保持部材などより空隙を有するようにしているが、図示はしないが双方のステータ間に非磁性体のスペーサを挿入することにより絶磁してもよい。このようなスペーサを用いた絶磁の詳細については後述する。
なお、図示しないがロータ3には歯車が固定され、秒針までは歯車輪列のみにより駆動力が伝えられている。
このような第1のステータ1と第2のステータ2との位置関係及びロータ孔周辺の構成を見易くするようにロータ3の軸方向の中心線Aに沿って分離させた図が図2である。
図2に示すように、本実施形態で説明する第1のステータ1と第2のステータ2とは同形状である。図2に示す例では、上側の第2のステータ2は、下側の第1のステータ1上下にひっくり返して配置している。このように、2つの同形状のステータを重ねるため、ステップモータ装置を製造しやすいという特徴もある。
図3は第1のステータ1と第2のステータ2とを横に並べるように示す平面図であり、それぞれのステータに設けるスリットと内ノッチとの位置関係を説明する図である。
図3に示すように、第1のステータ1のヨーク11におけるロータ孔11aの周囲には、コイル13による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット11bと、その一対のスリット11bを設けたことによって生じる保持トルクを打ち消すための一対の内ノッチ11cとが設けられており、これらは互いにロータ孔11aの中心を通って直交する中心線a及び中心線bの各線上に設けている。つまり、スリット11bと内ノッチ11cとは、90[deg]ずれる位置関係にある。
同様に、第2のステータ2のヨーク21におけるロータ孔21aの周囲にも、コイル23による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット21bと、その一対のスリット21bを設けたことによって生じる保持トルクを打ち消すための一対の内ノッチ21cとが設けられており、これらは互いにロータ孔21aの中心を通って直交する中心線e及び中心線dの各線上に設けている。つまり、スリット21bと内ノッチ21cとは、90[deg]ずれる位置関係にある。
なお、内ノッチ11c,21cは、ロータ孔11a,21aの内周からその径方向に形成された切り込みである。
また、図3に示す中心線gと角度θとについては後述する説明に用いるものであるから、ここでの説明は省略する。
このような構成にすることで、上下に重ねたステータそれぞれで、保持トルクを打ち消すことができ、ロータ3に保持トルクを作用させなくすることができる。
さらに、第1のステータ1の一対のヨーク11に設けたスリット11bを結ぶ直線aと、第2のステータ2のヨーク22に設けた一対のスリット21bを結ぶ直線dとが互いに
直交するようにしたうえで、コイル13のコイル芯12の中心線cと、コイル23のコイル芯12の中心線fとの方向が平面上で互いに直交するように配置している。
このようにすると、それぞれのコイルにより発生する磁界とロータの磁石との相互作用により発生する駆動トルクの大きさの変動が減り、角速度変動幅が小さくなるという効果がある。
知られているように、駆動トルクは、ロータの回転中に正弦波状に変化する。2つのステータを直交させると、正弦波状の駆動トルクのピーク近傍となる領域でのみロータを回転させることができる。そうすると、駆動トルクの変動が減り、角速度の変動の幅が小さくなる。
なお、図示はしないがロータ3から秒針までの間には歯車輪列しかないために、ロータ3の動きと図示しない秒針の動きは1対1の対応をしており、ロータ3の回転又は非回転が秒針での送り又は停止となる。そのため、ロータ3で回転の検出をすれば、秒針の停止(時刻遅れ)があった場合にも、ロータ3の回転により秒針の遅れを補正することができる。
[第1実施形態の作用の説明1]
まず、保持トルクをロータに作用させない構成の作用について説明する。
図4は、それぞれのステータによってロータに作用する保持トルクを説明するための図である。4aはステータのスリットにより保持トルク、4bは内ノッチによる保持トルク、4はステータによりロータに作用する保持トルクである。横軸はロータ回転角度、縦軸は保持トルクを示している。
第1実施形態のステップモータ装置は、図3に示すように、スリット11bを設けた位置から反時計回りに+90[deg]戻した位置を絶対位置原点とし、その絶対位置原点から反時計周りにロータ3が回転する角度をθとすると、ロータ3の回転角度による合成保持トルクTh(θ)は数1で表わされる。
Figure 2012026874
数1において、Tstator1(θ)は第1のステータ1によりロータ3に作用する保持トルク、Tstator2(θ)は第2のステータ2によりロータ3に作用する保持トルクである。Tstator1_slit(θ+π/2)は一対のスリット11bによる保持トルク、Tstator1_notch(θ)は一対の内ノッチ11cによる保持トルク、Tstator2_slit(θ+π/2)は一対のスリット21bによる保持トルク、Tstator2_notch(θ)は一対の内ノッチ21cによる保持トルクである。
図4は保持トルクが合成されることでゼロになることを示しており、例えば第1のステータ1を例にすると、一対のスリット11bによる保持トルクTstator1_slit(θ+π/2)である4aが、1対の内ノッチ11cによる保持トルクTstator1_notch(θ)である4bと合成されることで、第1のステータ1によりロータ3
に作用する保持トルクTstator1(θ)である4は打ち消されてゼロとなる。
このように、一対のスリット11bによる保持トルクTstator1_slit(θ+π/2)をちょうど打ち消すには、一対の内ノッチ11cの切り欠き幅を調整することで保持トルクTstator1_notch(θ)の振幅を調整すればよい。図4に示すように、保持トルクをきれいに打ち消せるのは一対のスリット11bと一対の内ノッチ11cとがロータ孔の中心に対して直交しているからである。
なお、以上の説明は、第1のステータ1を例にしたが、すでに説明したように、第1のステータ1と第2のステータ2とは同形状であるから、第2のステータ2でも同様である。
第2のステータ2においての保持トルクの関係は、前述の文章の符号を読み換えればよく、一対のスリット21bによる保持トルクTstator2_slit(θ+π/2)である4aが、一対の内ノッチ21cによる保持トルクTstator1_notch(θ)である4bと合成されることで、第2のステータ2によりロータ3に作用する保持トルクTstator2(θ)である4は打ち消されてゼロとなる。
第2のステータ2の場合にも、1対のスリット21bによる保持トルクTstator2_slit(θ+π/2)をちょうど打ち消すには、一対のノッチ21cの切り欠き幅を調整することで保持トルクTstator2_notch(θ)の振幅を調整すればよい。
[第1実施形態の構成要素の位置関係のまとめ]
ここで、第1実施形態の保持トルクを作用させないための各構成要素の位置関係をまとめると、次のようになる。
第1のステータ1の一対のスリット11bを結ぶ直線aと、一対の内ノッチ11cを結ぶ直線bとは直交している。同じく、第2のステータ2の一対のスリット21bを結ぶ直線dと、一対の内ノッチ21cを結ぶ直線eとは直交している。この構成により、それぞれのステータにおいて保持トルクを打ち消しあっている。
加えて、直線aと直線dとも直交しており、第1のステータ1のコイル芯12の中心線cと、第2のステータ2のコイル芯22の中心線fとも直交している。この構成により、ステータの相互インダクタンスを小さくさせることができる。
[第1実施形態の駆動手段による遅れ補正の説明:図5]
次に、駆動パルスの印加と回転又は非回転の検出、更に遅れを補正する手段について説明する。
第1実施形態は、1−2相励磁でロータを駆動する。この方式は、ステップモータの2つのコイルのうち、一方をコイルA、他方をコイルBとすると、コイルAとコイルBとに対して両方に通電する期間と、どちらか一方にのみ通電する期間とを交互に繰り返してロータに回転磁界を作用させることで、回転させる方式である。
図5はその1−2相励磁時の遅れ補正を説明する図である。保持トルクを打ち消し、生じないようにしているために、図5のように、2個あるコイルの少なくともどちらか一方に常に通電している状態であることが特徴である。
ここで、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
図5において、区間ts1で、ロータ3は360[deg]回転する。そして、ロータ3が所定の角度、つまりここでは360[deg]を回転するのに必要な回転時間Mが区間ts1又はts1’である。この回転時間Mを所定の個数N(図5では2)に分割した
所定の分割周期Tは、区間ts2又はts2’となる。区間tf2は遅れ補正を行なう区間であり、区間ts2又はts2’と時間は等しい。
なお、区間ts1ではモータが回転した場合を示し、区間ts1’では非回転の場合を示しており、双方の時間は等しい。
まず、回転時の区間であるts1について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が回転と判断されると、回転時間M(区間ts1)内の次の分割周期T(区間ts2’)の期間内にも、駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。
次に、非回転の区間であるts1’について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1’内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、回転時間M(区間ts1’)内の次の分割周期T(区間tf2)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。
遅れ補正信号の実効電圧は、駆動パルスの実効電圧Vr12よりも大きく確実に回転できるエネルギーを有するVrf12であり、その周波数が2倍である。区間ts2で非回転であったために、区間ts2に送った信号と回転していた場合に送る予定であったはずの信号を合わせて区間tf2内に送っている。区間ts2で発生した遅れを、区間tf2において補正しており、区間tf2が完了した時点で、時計内部に保管されている正確な時間情報に追随する。
このような構成にすることで、万が一ロータ3が非回転であっても、遅れをすぐに補正することができる。
[第1実施形態の作用の説明2:図6、図7]
次に、駆動手段30の作用について説明する。
ロータ3が非回転と判断されると、可変電圧手段30aでは通常運針時のために実効電圧を下げた印加電圧を駆動回路10に供給している状態を切り替えて、実効電圧を上げ必ず回転するように余裕のあるエネルギーをコイル13,23に供給する。実効電圧の上げ方として電圧振幅自体を上げる方法や、PWM(Pulse Width Modulation)駆動の場合にはDutyを高くする方法をとり得る。
次に、駆動パルスの印加と回転又は非回転の検出、更に遅れを補正する作用について説明する。
図6は1−2相励磁を行った場合で正回転方向に回転させる場合の駆動シーケンス図であり、図7は遅れ補正を行う場合のアルゴリズムである。
図5の区間ts1でロータが360[deg]回転していく様子を、図6により説明する。なおこの回転している状態は、起動時などではなくロータが定常回転をしているときの状態である。起動時のロータ磁極の位置は定まっていないが、次第に回転磁界に追従することで定常回転を行う。ロータ磁極位置を定めるために、予め初期位置決め用の駆動パルスを印加してもよいが、ここでの詳細な説明は省略する。
STEP1において、コイル13とコイル23とに通電することで、コイル13には矢印5dのような磁界が、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、ロータ3に作用
する。矢印5cはロータの磁極方向を表わす。コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3の磁極方向は回転をし、STEP2の状態になる。後述するようにそれぞれのコイルに印加する実効電圧は低いために、ロータ3は最も回転し易い範囲内のみを回転するために、STEP2の状態でロータは回転するためのトルクが摩擦トルクに負けて停止する。
続いてSTEP2において、STEP1の状態からコイル23の通電をやめ、コイル13のみの通電で発生する磁界をロータ3に作用させることで、ロータ3を回転させる。矢印5cはSTEP3の状態になる。
STEP3において、コイル23の通電する方向をSTEP1とは逆にすることで、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP4の状態になる。
STEP4において、STEP3の状態からコイル13の通電をやめ、コイル23のみの通電で発生する磁界をロータ3に作用させることで、ロータ3を回転させる。矢印5cはSTEP5の状態になる。STEP5において、コイル13の通電する方向をSTEP3とは逆にすることで、コイル13には矢印5dのような磁界が発生し、コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP6の状態になる。
STEP6において、STEP5の状態からコイル23の通電をやめ、コイル13のみの通電で発生する磁界をロータ3に作用させることで、ロータ3を回転させる。すると、矢印5cはSTEP7の状態になる。
STEP7において、コイル23の通電する方向をSTEP5とは逆にすることで、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、コイル13とコイル23により発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP8の状態になる。
STEP8において、STEP7の状態からコイル13の通電をやめ、コイル23のみの通電で発生する磁界をロータ3に作用させることで、ロータ3を回転させる。すると、矢印5cはSTEP1の状態になる。
このSTEP1からSTEP8までの動作を繰り返すことでロータ3は連続的に正回転方向に回転を続ける。なお、ロータ3を逆回転させるには、コイルAかコイルBのどちらか一方の極性を入れ替えるのみで良い。
図5において、回転時(区間ts1)の場合、区間ts2で、STEP1からSTEP4まで動き、区間ts2’でSTEP5からSTEP8まで動く。
非回転時(区間ts1’)の場合には、区間ts2では駆動できず、ロータ3はSTEP1からSTEP4のどれかの状態で停止している。そのため、区間tf2において、確実に駆動できる高いエネルギーを保有する実効電圧で2倍の周波数をもつパルスを印加することで、再度STEP1の励磁状態からスタートし、ロータ3は最終的にtf2区間完了時にはSTEP8の励磁状態にまで動くことで遅れを補正する。
続いて、遅れ補正を行うアルゴリズムを、図7を用いて説明する。
図7のSTEP1では、駆動パルスの印加と回転の検出とを同時に行い、STEP2において回転か非回転かの判断を行っている。図7のSTEP1とSTEP2とが、図5の
区間ts2に相当する。STEP2で回転と判断されれば、再度STEP1の処理に戻るが、非回転と判断されれば、STEP3にて遅れ補正処理を行い、2倍の周波数で高い実効電圧の駆動パルスで駆動する。図7のSTEP3が図5の区間tf2に相当する。そして、STEP3で遅れが補正された後には、再度STEP1の処理に戻る。
[第1実施形態の効果の説明]
ここで、第1実施形態の効果についてまとめると、次のようになる。
第1実施形態のステップモータ装置は、2個のステータそれぞれとロータと間で、コイルの非通電時にロータの位置を安定させるための保持トルクが生じないために、角速度の変動幅を小さくすることができ、このため、アナログ電子時計の指針を連続運針させる際に、その秒針が長い秒針であっても秒針の振れは発生せず、違和感のない運針が可能となる。
さらに、第1のステータ1及び第2のステータ2の構造は、製造技術の進んでいる単相ステップモータのステータ構造そのままを用いていることができるため、製造し易いという効果もある。
すでに説明したように、それぞれのステータにおいては、スリットと内ノッチとの位置が決められており、第1のステータ1と第2のステータ2との重なりにおいては、コイル芯の中心線同士の交差状態が決められているが、それぞれのステータ同士の位置関係については、さほどの精度を要するものではない。図1〜図3に示した例では、双方のステータが直交する位置にあるように示しているが、その重なり具合にあっては、双方をわずかの誤差も許されないほど非常に高精度に直交させなければならないというわけではないのである。したがって、第1実施形態のステップモータ装置は、組立において高い精度を必要とせず、更に製造し易い構造となっている。
また、2つのステータにはそれぞれスリット11b,21bが設けてあるから、第1のステータ1と第2のステータ2とも、コイル13,23に印加する実効電圧を下げても、コイル13,23により発生する磁界が効率良く漏れてロータ3に作用し、駆動トルクを発生させることができる。そのため、より低消費電力でロータ3を駆動することができ、より速度変動が小さい低回転速度での連続運針の駆動が可能となる。
また、後述するが本発明のステップモータ装置は、実効電圧を摩擦トルクに釣り合う程度にまで下げている。摩擦トルクは環境などの影響により経時変化し易く、摩擦トルクが上昇するとロータ3は回転できなくなってしまう。しかし、図1に示す駆動手段30のようにすれば、高い実効電圧をコイルに供給できるから、非回転時にも必ず回転させることができるようになる。
更に、本実施形態のステップモータ装置の構成では、後述するように1相励磁や2相励磁での駆動方法も可能であるが、1−2相励磁で駆動することで、他の1相励磁や2相励磁の場合よりも、ロータが1回転するためのステップ数が倍あるために、速度変動も小さく、秒針の動きの振れも小さい。その上、発明者の行った実験によると、他の1相励磁や2相励磁の場合と比較して、もっとも消費電力を下げることができた。本発明では1−2相励磁の場合が最も望ましい駆動方法である。
何よりも連続運針で、保持トルクがないために常に通電し続けることで駆動トルクを作用させている駆動方法にも関らず、時刻遅れ発生時にはすぐに時刻遅れを補正することができる。そして、この時刻遅れを補正する機能があるために、常に負荷変動を見越した余裕のあるエネルギーで駆動する必要がなく、負荷が軽い時にはできる限り小さいエネルギーで駆動でき、低消費電力化を更に進めることが可能となる。
また、本実施形態の場合には、図5に示す区間ts2で、ロータが180[deg]回転する区間内の全範囲にわたって回転の検出を行うために、万が一モータ構造に偏芯があり、保持トルクが完全に打ち消すことができずわずかに残り、等間隔でのステップ運針ができないような場合であっても、回転検出の判断に必要な信号が少なくとも区間ts2のどこかで検出されるために、確実な回転検出と遅れ補正とが可能となる。
また、遅れ補正信号が駆動パルスの2倍であるために、遅れを補正する際にも停止状態から急激に針が動くのではなく、使用者にもそれほど違和感のないように遅れを補正できる。
[第2実施形態の遅れ補正の説明:図8、図9]
次に、第2実施形態のステップモータ装置について説明する。
第2実施形態のステップモータ装置の特徴は、第1実施形態で説明した構成のステップモータを、2相励磁で駆動するものである。
2相励磁とは、コイルAとコイルBとに対して常に両方に通電することを繰り返してロータに回転磁界を作用させることで、回転させる方式である。
具体的には、2個のコイルに対して常に両方通電している状態において、駆動パルスを印加する区間にて、回転または非回転を検出し、非回転時に次の区間で2倍の周波数で高い実効電圧を印加することで遅れを補正する構成としている点である。
第2実施形態のステップモータ装置の駆動の様子は、図8を用いて説明する。
図8は、2相励磁の場合の駆動パルスの具体例を示すタイムチャート図である。
ここで、第1実施形態と同様に、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
図8においても第1実施形態の説明に用いた図5と同様に、区間ts1で、ロータ3は360[deg]回転する。そして、ロータ3が所定の角度、つまりここでは360[deg]を回転するのに必要な回転時間Mが区間ts1又はts1’である。この回転時間Mを所定の個数N(図5では2)に分割した所定の分割周期Tは、区間ts2又はts2’となる。なお、区間tf2は遅れ補正を行なう区間であり、区間ts2又はts2’と時間は等しい。
なお、区間ts1ではモータが回転した場合を示し、区間ts1’では非回転の場合を示しており、双方の時間は等しい。
図8に示すように、それぞれのコイルに印加する実効電圧を第1実施形態の1−2相励磁の場合よりも下げることができる。
第1実施形態の遅れ補正方法とは励磁方法の違いがある点と、コイルに印加する実効電圧が各励磁方式で異なっており、実効電圧は1−2相励磁Vr12>2相励磁Vr2の大きさで設定される点とが異なっている。
まず、回転時の区間であるts1について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が回転と判断されると、回転時間M(区間ts1)内の次の分割周期T(区間ts2’)の期間内にも、駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。
次に、非回転の区間であるts1’について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1’内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、回転時間M(区間ts1’)内の次の分割周期T(区間tf2)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。
遅れ補正信号の実効電圧は、駆動パルスの実効電圧Vr2よりも大きく確実に回転できるエネルギーを有するVrf2であり、その周波数が2倍である。区間ts2で非回転であったために、区間ts2に送った信号と回転していた場合に送る予定であったはずの信号を合わせてtf2区間内に送っている。区間ts2で発生した遅れを、区間tf2において補正しており、区間tf2が完了した時点で、時計内部に保管されている正確な時間情報に追随する。
このような構成にすることで、万が一ロータ3が非回転であっても、遅れをすぐに補正することができる。
[第2実施形態の作用の説明:図9]
第2実施形態の作用を図面に基づいて説明する。
図9は2相励磁を行った場合で正回転方向に回転させる場合の駆動シーケンス図である。なお、遅れ補正を行う場合のアルゴリズムについては、第1実施形態と全く同じであるために説明を省略する。
図8の区間ts1でロータが360[deg]回転していく様子を、図9により説明する。なおこの回転している状態は、起動時などではなくロータが定常回転をしているときの状態である。
STEP1においてコイル13とコイル23とに通電することで、コイル13には矢印5dのような磁界が、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、ロータ3に作用する。矢印5cはロータの磁極方向を表わす。コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータの磁極方向は回転をし、STEP2の状態になる。
続いてSTEP2において、STEP1の状態からコイル23のみ通電する方向をSTEP1とは逆にすることで、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP3の状態になる。
STEP3において、STEP2の状態からコイル13のみ通電する方向をSTEP2とは逆にすることで、コイル12には矢印5dのような磁界が発生し、コイル13とコイル23とにより発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP4の状態になる。
STEP4において、STEP3の状態からコイル23のみ通電する方向をSTEP3とは逆にすることで、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、コイル13とコイル23により発生した磁界を合成した方向に倣うようにロータ3は回転する。すると、矢印5cはSTEP1の状態になる。
このSTEP1からSTEP4までの動作を繰り返すことでロータ3は連続的に正回転方向に回転を続ける。なお、逆回転させるには、コイルAかコイルBのどちらか一方の極性を入れ替えるのみで良い。
図8において、回転時(区間ts1)の場合、区間ts2で、STEP1からSTEP2まで動き、区間ts2’でSTEP3からSTEP4まで動く。非回転時(区間ts1’)の場合には、区間ts2では駆動できず、ロータ3はSTEP1からSTEP2のどれかの状態で停止している。そのため、区間tf2において、確実に駆動できる高いエネルギーを保有する実効電圧で2倍の周波数をもつパルスを印加することで、再度STEP1の励磁状態からスタートし、ロータ3は最終的にtf2区間完了時にはSTEP4の励磁状態にまで動くことで遅れを補正する。
[第2実施形態の効果の説明]
第2実施形態の効果は、第1実施形態で説明した1−2相励磁の場合と比較して、遅れ補正信号により送る際に、ステータ1とステータ2との両方から駆動パルスを与えることができ、実効電圧を高くできるから高トルクで送ることができ、より確実にロータを回転させることができる。
[第3実施形態の構成の説明]
次に、第3実施形態のステップモータ装置について説明する。
第3実施形態のステップモータ装置の特徴は、第1実施形態で説明した構成のステップモータを、1相励磁で駆動するものである。
1相励磁とは、コイルAとコイルBとに対してどちらか一方のみに通電することを繰り返してロータに回転磁界を作用させることで、ロータを所定の方向に回転させる方式である。
具体的には、2個のコイルに対してどちらか一方にのみ通電しており、駆動パルスを印加する区間において、回転または非回転を検出し、非回転時に次の区間で2倍の周波数で高い実効電圧を印加することで遅れを補正する構成としている点である。
第3実施形態のステップモータ装置の駆動の様子は、図10を用いて説明する。
図10は、1相励磁の場合の駆動パルスの具体例を示すタイムチャート図である。
ここで、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
図10においても第1実施形態の説明に用いた図5、第2実施形態の説明に用いた図8と同様に、区間ts1で、ロータ3は360[deg]回転する。そして、ロータ3が所定の角度、つまりここでは360[deg]を回転するのに必要な回転時間Mが区間ts1又はts1’である。この回転時間Mを所定の個数N(図10では2)に分割した所定の分割周期Tは、区間ts2又はts2’となる。区間tf2は遅れ補正を行なう区間であり、区間ts2又はts2’と時間は等しい。
なお、区間ts1ではモータが回転した場合を示し、区間ts1’では非回転の場合を示しており、双方の時間は等しい。
図10に示すように、励磁方法が違うためすでに説明した実施形態と比べて実効電圧は、次のようになっている。
1−2相励磁Vr12<1相励磁Vr1
このような実効電圧の大きさで設定される点が異なっている。
まず、回転時の区間であるts1について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が回転と判断されると、回転時間M(区間ts1)内の次
の分割周期T(区間ts2’)の期間内にも、駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。
次に、非回転時の区間であるts1’について説明する。
この実施形態のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(区間ts1’内のts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、回転時間M(区間ts1’)内の次の分割周期T(区間tf2)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。
遅れ補正信号の実効電圧は、駆動パルスの実効電圧Vr1よりも大きく確実に回転できるエネルギーを有するVrf1であり、その周波数が2倍である。区間ts2で非回転であったために、区間ts2に送った信号と回転していた場合に送る予定であったはずの信号を合わせて区間tf2内に送っている。区間ts2で発生した遅れを、区間tf2において補正しており、区間tf2が完了した時点で、時計内部に保管されている正確な時間情報に追随する。
[第3実施形態の作用の説明:図11]
第3実施形態の作用を図面に基づいて説明する。
図11は1相励磁を行った場合で正回転方向に回転させる場合の駆動シーケンス図である。なお、遅れ補正を行う場合のアルゴリズムについては、第1実施形態と全く同じであるために説明を省略する。
図10の区間ts1でロータが360[deg]回転していく様子を、図11により説明する。なおこの回転している状態は、起動時などではなくロータが定常回転をしているときの状態である。
STEP1においてコイル13に通電することで、コイル13には矢印5dのような磁界が発生し、ロータ3に作用する。矢印5cはロータの磁極方向を表わす。コイル13により発生した磁界に対して倣うようにロータの磁極方向は回転をし、STEP2の状態になる。このSTEP1においてコイル23には通電をしていない。
続いてSTEP2において、コイル23に通電することで、コイル23には矢印5eのような磁界が発生し、ロータ3に作用し更に回転させる。すると、矢印5cはSTEP3の状態になる。
STEP3において、コイル13にSTEP1とは逆方向に通電することで、磁界の矢印5dは図のようになり、ロータ3に作用し更に回転させる。
STEP4において、コイル23にSTEP2とは逆方向に通電することで磁界の矢印5eは図のようになり、ロータ3に作用し更に回転させる。すると、矢印5cはSTEP1の状態になる。
このSTEP1からSTEP4までの動作を繰り返すことでロータ3は連続的に正回転方向に回転を続ける。なお、逆回転させるには、コイルAかコイルBのどちらか一方の極性を入れ替えるのみで良い。
図10において、回転時(区間ts1)の場合、区間ts2で、STEP1からSTEP2まで動き、区間ts2’でSTEP3からSTEP4まで動く。非回転時(区間ts1’)の場合には、区間ts2には駆動できず、ロータ3はSTEP1からSTEP2のどれかの状態で停止している。そのため、区間tf2において、確実に駆動できる高いエ
ネルギーを保有する実効電圧で2倍の周波数をもつパルスを印加することで、再度STEP1の励磁状態からスタートし、ロータ3は最終的にtf2区間完了時にはSTEP4の励磁状態にまで動くことで遅れを補正する。
[第3実施形態の効果の説明]
第3実施形態の効果は、第1実施形態で説明した1−2相励磁の場合と比較して、ロータの角速度の変動幅は若干大きくなってしまうものの、ロータの回転角の位置決めがし易くなる。このようなステップモータ装置は、例えば、ストップウォッチの指針駆動に好適である。
[遅れ補正に係る第1変形例の構成の説明:図12]
すでに説明した第1〜第3実施形態は、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間MをN個(N=2)に分割した例で説明した。次に、N=4に分割した場合の駆動と検出及び遅れ補正を説明する。この例にあっては、すでに説明したどの実施形態(どの励磁方式)でも適用できるが、第3実施形態で説明した1相励磁を例にして説明する。
図12は、1相励磁の場合の駆動パルスの具体例を示すタイムチャート図である。以後、第3の実施形態と異なる点についてのみ記載し、第3の実施形態の駆動シーケンス図として用いた図11も適宜参照して説明する。
ここで、すでに説明した実施形態と同様に、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
図12においても、区間ts1で、ロータ3は360[deg]回転する。そして、ロータ3が所定の角度、つまりここでは360[deg]を回転するのに必要な回転時間Mが区間ts1又はts1’である。この回転時間Mを所定の個数N(図12では4)に分割した所定の分割周期Tは、区間ts4となる。なお、区間tf4は遅れ補正を行なう区間であり、区間ts4と時間は等しい。
なお、区間ts1ではモータが回転した場合を示し、区間ts1’では非回転の場合を示しており、双方の時間は等しい。
まず、回転時の場合について説明する。
この遅れ補正に係る第1変形例に用いるステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(図12では区間ts1内で一番左の区間ts4)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が回転と判断されると、回転時間M(区間ts1)内の次の分割周期T(図12ではts1内で左から2つめの区間ts4)の期間内にも、駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。
次に、非回転の場合について説明する。
この遅れ補正に係る第1変形例に用いるステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(図12ではts1’区間内で一番左の区間ts4)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、回転時間M(ts1’)内の次の分割周期T(図12ではts1’内の区間tf4)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。区間ts4に送った信号と回転していた場合に送る予定であったはずの信号を合わせて区間tf4内に送っている。
[遅れ補正に係る第1変形例の作用及び効果の説明]
第3実施形態では、回転時間Mを2個(N=2)に分割した例であるから、ロータ3が180[deg]回転する区間内で回転の検出を行っていたのに対して、遅れ補正に係る第1変形例では、回転時間Mを4個(N=4)に分割した例であるから、ロータ3が90[deg]回転する区間内で回転の検出を行い、遅れの補正も半分の区間で行っている点が異なる点であり、大きな実効電圧で駆動周波数が2倍である点は同じである。
第3実施形態の場合のように180[deg]回転するはずの時間範囲内で回転か非回転かを検出して、次の時間範囲で補正を行う遅れ補正方法の場合、モータ構造に偏芯があった場合にも確実に検出できるという利点がある一方で、万が一回転検出の機能がうまく働かず、ロータ3が実際は回転しているにも係らず、回転検出により非回転と判断した場合に問題がある。
すなわち、第3実施形態の駆動シーケンスを表わす図11において、遅れ補正に係る第1変形例の遅れ補正方法の場合には、ロータ3の磁極方向はSTEP3の状態にあるにも係らず、コイルにはSTEP1の励磁を行うために、ロータ3が瞬間的に少しの角度(45[deg]程度)だけ逆回転をし、使用者には針が瞬間停止してしまったように見える可能性がある。
実際には第3実施形態の場合であっても、通常運針時には実効電圧を駆動できる限界まで下げて駆動する方式であるために、ロータ3は駆動できずに非回転となる確率の方が高いことと、遅れ補正をする際に仮に瞬間的に逆転したとしても回転磁界が作用しているためにすぐ正回転側に回転し始め、送り過ぎることもないため、大きな問題とは言えない。しかし、身に付ける腕時計は装飾品として価値もあるから見栄えも重要な要素である。このため、瞬間的に針が停止したように見えないようにする必要もあり、そのために、遅れ補正に係る第1変形例の遅れ補正方法が有効となる。
遅れ補正に係る第1変形例の場合、ロータ3は90[deg]回転するはずの時間範囲内で回転か非回転かを検出しているために、モータに偏芯があった場合などには、回転か非回転かをうまく検出できず、回転しているにも係らず非回転として遅れ補正を行ってしまう可能性がありうる。しかし、ロータ3が実際には回転していた場合であっても、ロータ3の磁極方向は第3実施形態の説明に用いた図11のSTEP2の状態にあるため、コイルにSTEP1のような励磁を行っても瞬間的に逆回転することはなく、もちろん送り過ぎてしまうということもない。
[遅れ補正に係る第2変形例の構成の説明:図13]
すでに説明した遅れ補正に係る第1変形例は、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間Mを4個(N=4)に分割した例である。次に、N=1の場合の駆動と検出及び遅れ補正を、同じく第3実施形態で説明した1相励磁を例にして説明する。
図13は、1相励磁の場合の駆動パルスの具体例を示すタイムチャート図である。以後、第3の実施形態と異なる点についてのみ記載し、第3の実施形態の駆動シーケンス図として用いた図11も適宜参照して説明する。
ここで、すでに説明した実施形態と同様に、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
図13においても、区間ts1で、ロータ3は360[deg]回転する。そして、ロータ3が所定の角度、つまりここでは360[deg]を回転するのに必要な回転時間Mが区間ts1である。この回転時間Mを所定の個数N(図13では1)に分割した所定の
分割周期Tは、同じく区間ts1である。区間tf1は遅れ補正を行なう区間であり、区間ts1と時間は等しい。
非回転の場合についてのみ説明する。
この第2変形例のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(図13では区間ts1)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、次の分割周期T(図13では区間tf1)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。区間ts1に送った信号と回転していた場合に送る予定であったはずの信号を合わせて区間tf1内に送っている。
[遅れ補正に係る第2変形例の作用及び効果の説明]
第3実施形態では、回転時間Mを2個(N=2)に分割した例であるから、ロータ3が180[deg]回転する区間内で回転の検出を行っていたのに対して、遅れ補正に係る第2変形例では、回転時間Mを1個(N=1)に分割した例であるから、ロータ3が360[deg]回転する区間内で回転の検出を行い、遅れの補正を次の360[deg]回転するはずであった区間内で行っている点が異なる点であり、大きな実効電圧で駆動周波数が2倍である点は同じである。
第3実施形態と異なり、遅れ補正に係る第2変形例の場合、ロータが360[deg]回転するはずの時間内で回転か非回転かの検出を行う。この場合、万が一回転検出の機能がうまく働かず、ロータ3が実際は回転しているにも係らず、回転検出により非回転と判断した場合には、遅れ補正により時刻が進み過ぎてしまうという課題があり得る。
しかし、実際には、通常運針時には実効電圧を駆動できる限界まで下げて駆動する方式であるために、ロータ3は駆動できずに非回転となる確率の方が高いために、大きな課題とはならない。それよりも、ロータの偏芯があったとしても360[deg]回転するはずの区間内で検出しているために、回転検出の精度が高くなるという効果がある。
[遅れ補正に係る第3変形例の説明:図14]
次に、遅れ補正区間の低消電化に係る技術を遅れ補正に係る第3変形例として説明する。説明にあっては、第1実施形態で説明した1−2相励磁を例にして説明する。
図14は、1−2相励磁の場合の駆動パルスの具体例を示すタイムチャート図を示しており、特に第1実施形態の説明に用いた図4の区間ts1’の変形例である。以後、第1実施形態と異なる点についてのみ記載する。
ここで、すでに説明した実施形態と同様に、ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間をM、この回転時間Mを所定の個数Nに分割したときの所定の分割周期をTと定義する。
非回転の場合に遅れ補正をする場合について説明する。
この遅れ補正に係る第3変形例のステップモータ装置の駆動手段30は、分割周期T(図14では区間ts1’内の区間ts2)の期間内に駆動パルスを印加すると共に、検出手段30bによりロータ3の回転又は非回転を検出する。ロータ3が非回転と判断されると、回転時間M(ts1’)内の次の分割周期T(図14では区間tf2)の期間内に遅れ補正信号によりロータ3を回転させる。
区間ts8は、1−2相励磁で通常運針時にロータ3が1ステップ駆動するのに必要な時間である。一方、区間tf16は、1−2相励磁で遅れ補正時にロータ3が1ステップ
駆動するのに必要な時間である。区間tf2を8ステップ駆動することで、ロータ3は360[deg]回転する。このとき、遅れ補正信号の実効電圧は、駆動パルスの実効電圧Vr12よりも大きく確実に回転できるエネルギーを有するVrf12である。
ここで、遅れ補正信号は、所定の実効電圧を第1の時間印加する1つのパルスと、所定の実効電圧を第2の時間印加する複数のパルスと、を組み合わせてもよい。図14の拡大図に示す例では、1ステップ区間である区間tf16のパルスを10[ms]程度の長さのパルス1個と、1[ms]程度の長さのパルスを複数個という組合せで構成している。
この例のように、実効電圧の大きさを考える際に、波高値(電圧振幅)だけではなく、波高値は同じでも時間平均をとり、その平均値の大きさを、実効電圧の大きさと考えてもよい。したがって、図14に示す例では、遅れ補正信号は、実効電圧の大きい区間と実効電圧の小さい区間との組合せで構成していることになる。このことが遅れ補正に係る第3変形例の特徴とする点である。
なお、図14に示す例では、第1の時間を10[ms]程度とする1つのパルスの波高値と、第2の時間を1[ms]程度とする複数のパルスの波高値とは、同じVrf12として示したが、双方のパルスの波高値を異ならせてもよいことは無論である。
[遅れ補正に係る第3変形例の作用及び効果の説明(1−2相励磁)]
遅れ補正信号は、十分大きな実効電圧を持つパルスであるため、1ステップ駆動する場合、ロータ3は区間ts16よりも短い時間で駆動し終えてしまい、その位置で停止している。具体的には区間ts16は15〜40[ms]程度であるが、高い実効電圧で駆動した場合に1ステップにかかる時間は5[ms]程度である。残りの時間は停止している。
停止させておく際に、この発明のステップモータでは保持トルクがないために、どちらか一方のコイルには通電し続けておく必要がある。しかし、遅れ補正をする時のみとは言え、実効電圧の大きな電圧をずっと通電し続けておくのは消費電力の無駄である。そこで、上述のようにすることで、10[ms]程度のパルスで確実に1ステップ動作させた後は、1[ms]程度の長さを持つ複数のパルスを印加することで、実効電圧を下げ、ロータ3をその場に停止させておく程度の大きさのトルクをロータ3に作用させる。
このように構成することで、遅れ補正をする際の無駄な電力の消費を防ぎ、更なる低消費電力化を達成できる。
なお、遅れ補正に係る第3変形例のような遅れ補正手段は、1−2相励磁以外の1相励磁や2相励磁の場合に対しても適用できることは言うまでもない。
[保持トルク打消しに係る第1変形例の構成の説明:図15]
次に、保持トルクを打ち消すための、別の構成を説明する。この説明にあっては、第1実施形態で説明した1−2相励磁方式で説明する。
保持トルク打消しに係る第1変形例のステップモータ装置の特徴は、すでに説明した第1実施形態と同様に、上下に重ねたステータそれぞれで、コイルへの非通電時に保持トルクをロータに作用させない構成である。
具体的には、それぞれのステータにロータを駆動するための一対の磁束飽和部を備えるものの、内ノッチを設けないことで保持トルクを発生しない構成としている。
保持トルク打消しに係る第1変形例のステップモータ装置の構成は図15を用いて説明する。
図15は、第1のステータ及び第2のステータのロータ孔11a,21aの周辺部のみを部分拡大し上下に並べ、コイルなど他の構成要素を省略して示す詳細図である。なお、すでに説明した同一の構成には同一の符号を付してあり、それらの同じ説明は省略する。
図15においては、説明しやすいように2つのステータを図中上下に並べて示してあるが、1個のロータ3を2つのステータで共有していることは変わっておらず、2個のロータがあるわけではない。
第1のステータ1のヨーク11におけるロータ孔11aの周囲には、コイル13による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対の磁束飽和部11dのみを設けている。磁束飽和部11dは、ステータに設ける切り欠き状の部分である。同じく、第2のステータ2のヨーク2におけるロータ孔21aの周囲にも一対の磁束飽和部21dのみを設けている。
保持トルク打消しに係る第1変形例では、第1のステータ1のヨーク11に設けた一対の磁束飽和部11dを結ぶ直線を直線a1とし、第2のステータ2のヨーク22に設けた一対の磁束飽和部21dを結ぶ直線を直線d1としている。そして、この直線a1と直線d1とが互いに直交するように上下のステータを配置している。
なお、図15には、直線a1と直交するように直線b1、直線d1と直交するように直線e1を示している。
この図15に示す直線a1,d1は、図3に示す、ヨーク11に設けた一対のスリット11bを結ぶ直線aと、ヨーク22に設けた一対のスリット21bを結ぶ直線dとに、位置的に対応しており、図15に示す直線b1及び直線e1も、図3に示す直線b及び直線eに、それぞれ対応しているので、保持トルク打消しに係る第1変形例のステップモータ装置の配置関係を理解するためには、図3を参照してその構成においてロータ孔11a,21aの周辺部のみ図15の構成に置き換えるとよい。
[保持トルク打消しに係る第1変形例の作用及び効果の説明]
次に、この保持トルク打消しに係る第1変形例の作用を説明する。
第1のステータ1及び第2のステータ2には、それぞれ一対の磁束飽和部11d,21dを設けているが、内ノッチを設けなければコイルへの非通電時に保持トルクは発生しない。これは、一般的なステップモータにおいては、ロータ3から発生した磁束のみでは磁束飽和部11d、21dを飽和させるには不十分だからである。そのため、この保持トルク打消しに係る第1変形例の場合は、第1のステータ1と第2のステータ2ともそれぞれのステータにおいて、そもそも保持トルクがほとんど生じないのである。
次に、効果について説明する。
この保持トルク打消しに係る第1変形例も、保持トルクが生じないために、角速度の変動幅を小さくすることができる。第1のステータ1及び第2のステータ2に、それぞれ一対の磁束飽和部11d,21dを設けているために、コイル13,23からの磁界は、まずこの磁束飽和部11d,21dを飽和させてからでないとロータ3に作用しない。このため、コイル13,23に印加する実効電圧を第1実施形態と同じ程度までは下げることができないが、第1実施形態に比べて製造しやすく、製造コストも低減できるという効果がある。
すなわち、ステータにスリットがないので、それぞれのヨーク11,12とも1枚の板で構成でき、プレス加工のみでステータを形成することができるという点である。
さらに、内ノッチもないためにロータ孔周辺が円形で済むことによりプレスの金型も単純な形状で済み、その寿命も長くすることができる。これにより、製造コストを低下させることが可能である。
また、第1のステータ1と第2のステータ2とも、それぞれのステータにおいて保持トルクを打ち消しあっているため、第1実施形態と同様に2個のステータの位相関係を高精度で配置するように設計する必要がなく組立の精度を必要としないから、更に製造し易い構造である。
[保持トルク打消しに係る第2変形例の構成の説明:図16]
続いて、第1実施形態の保持トルクを打ち消す方法に係る第2変形例について説明する。
保持トルク打消しに係る第2変形例のステップモータ装置の特徴は、すでに説明した第1実施形態と同様に、上下に重ねたステータそれぞれで、コイルへの非通電時に保持トルクをロータに作用させない構成である。
具体的には、一方のステータに一対のスリットと一対の内ノッチとを互いに直交するように設けて保持トルクを打ち消し、他方のステータにロータを駆動するための一対の磁束飽和部を備えるものの、内ノッチを設けないことで保持トルクを発生しない構成としている点である。つまり、第1実施形態で説明したステータ構造と保持トルク打消しに係る第1変形例で説明したステータ構造とをそれぞれのステータが有している構成である。
保持トルク打消しに係る第2変形例のステップモータ装置の構成は、図16を用いて説明する。
図16は、第1のステータ1及び第2のステータ2のロータ孔11a,21aの周辺部のみを部分拡大し上下に並べ、コイルなど他の構成要素を省略して示す詳細図である。なお、すでに説明した同一の構成には同一の符号を付してあり、それらの同じ説明は省略する。
また、すでに説明した保持トルク打消しに係る第1変形例と同様に図16においても、説明しやすいように2つのステータを図中上下に並べて示してあるだけで、2個のロータがあるわけではない。
第1のステータ1のヨーク11におけるロータ孔11aの周囲には、コイル13による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット11bと、その一対のスリット11bを設けたことによって生じる保持トルクを打ち消すための一対の内ノッチ11cとが設けられており、これらは互いにロータ孔11aの中心を通って直交する中心線a及び中心線bの各線上に設けている。つまり、スリット11bと内ノッチ11cとは、90[deg]ずれる位置関係にある。
第2のステータ2のヨーク21におけるロータ孔21aの周囲には、コイル23による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対の磁束飽和部21dのみを設けている。磁束飽和部21dは、ステータに設ける切り欠き状の部分である。この磁束飽和部21dは、ロータ孔21aの中心を通って直交する中心線d2の線上に設けている。
この保持トルク打消しに係る第2変形例では、第1のステータ1のヨーク11に設けた一対のスリット11bを結ぶ直線aと、第2のステータ2のヨーク22に設けた一対の磁束飽和部21dを結ぶ直線を直線d2とが互いに直交するように上下のステータを配置している。
なお、この図16には、直線d2と直交する向きに直線e2を示している。これら直線d2,e2は、図3に示す、ヨーク22に設けた一対のスリット21bを結ぶ直線dと、ヨーク22に設けた一対の内ノッチ21cを結ぶ直線eとに位置的に対応している。保持トルク打消しに係る第2変形例のステップモータ装置の配置関係を理解するためには、図
3を参照してその構成においてロータ孔11a,21aの周辺部のみ図16の構成に置き換えるとよい。
なお、以上の説明では、第1のステータ1にスリットと内ノッチとを設け、第2のステータ2には磁束飽和部を設ける構成を説明したが、もちろん、第1のステータ1に磁束飽和部を設け、第2のステータ2にスリットと内ノッチとを設ける構成としてもよい。
[保持トルク打消しに係る第2変形例の作用及び効果の説明]
次に、この保持トルク打消しに係る第2変形例における保持トルクを打ち消す作用を説明する。
第2のステータ2には一対の磁束飽和部21dが設けられており、内ノッチを設けなければ保持トルクは発生しない。また、第1のステータ1には、一対のスリット11bが設けられているが、第1実施形態の図4で説明したように、一対のスリット11bによる保持トルクは、それに直交するように設けられた一対の内ノッチ11cによる保持トルクにより打ち消され、やはり保持トルクは発生しない。そのため、この保持トルク打消しに係る第2変形例の場合、第1のステータ1と第2のステータ2ともそれぞれのステータにおいて、保持トルクが生じないのである。
次に、効果について説明する。
この保持トルク打消しに係る第2変形例も、保持トルクが生じないために、角速度の変動幅を小さくすることができる。第1のステータ1にはスリット11bと内ノッチ11cとを設けているが、第2のステータ2には一対の磁束飽和部21dを設けている。すでに説明したように、コイル23からの磁界は、まずこの磁束飽和部21dを飽和させてからでないとロータ3に作用しない。このため、コイル23に印加する実効電圧は、コイル13に印加する実効電圧よりも下げることはできないが、2つのステータ全体でみたとき、コイルを駆動するための実効電圧は、第1実施形態と保持トルク打消しに係る第1変形例との中間程度まで下げることができる。
もちろん、すでに説明したように、第2のステータ2を製造するときは、スリットや内ノッチがないから製造しやすいという効果は有している。この保持トルク打消しに係る第2変形例では、2つのステータの構造が異なるが、双方ともにステータにスリット、内ノッチ、磁束飽和部を設けるという構成そのものは知られている構成であるから、ステップモータ装置の製造時の負荷は多くはない。
また、第1のステータ1と第2のステータ2とも、それぞれのステータにおいて保持トルクを打ち消しあっているため、第1実施形態及び保持トルク打消しに係る第1変形例と同様に2個のステータの位相関係を高精度で配置するように設計する必要がなく、組立の精度を必要としないというメリットもある。
[保持トルク打消しに係る第3変形例の構成の説明:図17]
次に、第1実施形態の保持トルク打消しに係る第3変形例のステップモータ装置について説明する。
保持トルク打消しに係る第3変形例のステップモータ装置の特徴は、すでに説明した構成とは異なり、それぞれのステータにより生じる保持トルクを上下のステータに設けるスリットの配置位置により打ち消し、コイルへの非通電時に保持トルクをロータに作用させない構成である。
具体的には、それぞれステータに一対のスリットを設け、2つのステータを重ねたとき、双方のスリットが直交するように設けて保持トルクを打ち消す構成としている。つまり、それぞれのステータには保持トルクが発生しているが、2つのステータによりそれを打ち消す構成である。
保持トルク打消しに係る第3変形例のステップモータ装置の構成は、図17を用いて説明する。
図17は、第1のステータ1及び第2のステータ2のロータ孔11a,21aの周辺部のみを部分拡大し上下に並べ、コイルなど他の構成要素を省略して示す詳細図である。なお、すでに説明した同一の構成には同一の符号を付してあり、それらの同じ説明は省略する。
また、すでに説明した構成と同様に図7においても、説明しやすいように2つのステータを図中上下に並べて示してあるだけで、2個のロータがあるわけではない。
第1のステータ1のヨーク11におけるロータ孔11aの周囲には、コイル13による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット11bが設けられている。この一対のスリット11bは、ロータ孔11aの中心を通る中心線aの線上に設けている。
同じく、第2のステータ2のヨーク21におけるロータ孔21aの周囲にも、コイル23による磁界によってロータ3に駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット21bが設けられている。この一対のスリット21bは、ロータ孔21aの中心を通る中心線dの線上に設けている。
この保持トルク打消しに係る第3変形例では、第1のステータ1のヨーク11に設けた一対のスリット11bを結ぶ直線aと、第2のステータ2のヨーク22に設けた一対のスリット21bを結ぶ直線を直線dとが互いに直交するように上下のステータを配置している。
なお、この図17には、直線aと直交する向きに直線b2を示し、直線dと直交する向きに直線e3を示している。これら直線b2,e3は、図3に示す、ヨーク11に設けた一対の内ノッチ11cを結ぶ直線bと、ヨーク22に設けた一対の内ノッチ21cを結ぶ直線eとに位置的に対応している。保持トルク打消しに係る第3変形例のステップモータ装置の配置関係を理解するためには、図3を参照してその構成においてロータ孔11a,21aの周辺部のみ図17の構成に置き換えるとよい。
保持トルク打消しに係る第3変形例では、それぞれのステータが有する保持トルクを2つのステータにより打ち消すため、第1のステータ1のヨーク11に設けた一対のスリット11bと、第2のステータ2のヨーク21に設けた一対のスリット21bとは、正しく直交している必要がある。つまり、直線aと直線dとが直交している必要がある。
[保持トルク打消しに係る第3変形例の作用及び効果の説明:図4、図18]
次に、この保持トルク打消しに係る第3変形例における保持トルクを打ち消す作用を図18を用いて説明する。
図18は図3に示す中心線gで切断した様子を模式的に示す断面図である。
ロータ3’はロータ磁石3aとロータカナ3bとから構成しているものとし細部は省略している。5,5a,5a’,5b,5b’は磁束である。
ロータ磁石3a内で発生した磁束5は、図18右側の矢印のように第1のステータ1のヨーク11及び第2のステータ2のヨーク21にそれぞれ分かれて5a、5bの磁束となって流れ込む。この磁束5a,5bは、図示しないコイル芯を通って再度図18左側の矢印のように磁束5a’,5b’としてロータ磁石3aに戻ることで、磁気回路が構成されている。
この磁束5a,5bの磁束量の二乗に比例する大きさの保持トルクが、それぞれヨーク11,21によってロータ3に発生する。この第6変形例では、磁束5a,5bの磁束量
が全く同じとなるようにロータ磁石3aとヨーク11,21とが設けられている。そのため、図17に示す第1のステータ1及び第2のステータ2で発生したそれぞれの保持トルクの振幅は等しい。
これを上述した数1の式を用いて考える。第1のステータ1の保持トルクをTstator1(θ)、第2のステータ2の保持トルクをTstator2(θ)とおく。この場合、次のようになる。
Tstator1_notch(θ)=Tstator2_notch(θ)=0
また、それぞれの一対のスリットは直交して配置されているために、先述した図4の保持トルクの関係に当てはめてみると、図4における4aがTstator1_slit(θ+π/2)であり、4bがTstator2_slit(θ+π/2)に相当する。そのため、モータ全体としては保持トルクがゼロとなる。
次に、効果について説明する。
この保持トルク打消しに係る第3変形例も、保持トルクが生じないために、角速度の変動幅を小さくすることができる。第1のステータ1に一対のスリット11bを設け、第2のステータ2には一対のスリット21bを設けている。すでに説明したように、ロータ磁石からの磁束を第1のステータ1のヨーク11と第2のステータ2のヨーク21に等しい量を流すためには、ロータ3の軸方向の高さ方向の精度まで出す必要があり、そのため、すでに説明した構成に比べ、それぞれのステータ同士の位置関係について高い精度が必要になる。
しかし、内ノッチがないためにロータ孔周辺が円形で済むことによりプレスの金型も単純な形状で済み、その寿命も長くすることができる。また、組立時にそれぞれのステータの位置関係を微調整することで、ロータに作用する保持トルクをきれいに打ち消し、より角速度の変動幅の小さいスムースな連続運針を実現できる。
また、第1のステータ1及び第2のステータ2とも、それぞれ一対のスリット11b,21bが形成されているために、磁束飽和部を有する場合に比べてそれぞれのコイル13,23に印加する実効電圧を下げることができる。
[ステップモータ装置の詳細な説明]
以上、ステップモータの保持トルクを打ち消すための各構成を説明した。次に、第1実施形態を例にして、ステップモータの細部やステップモータ装置の駆動回路及び駆動方法について詳述する。
まず、ステップモータの細部及びロータの駆動方法について図面を用いて説明する。各説明においては新たな図面を参照して行なうが、適宜図1〜図3も参照されたい。
[ステータの絶磁構造の説明:図19]
まずは、ステータの絶磁構造に係る具体例について図19を用いて説明する。この構造は、すでにスペーサを用いて絶磁する例として説明したが、ここでは図面を用いて詳述する。
図19は図3に示す中心線gで切断した様子を模式的に示す断面図である。図19(A)は絶磁構造例1、図19(B)は絶磁構造例2を示している。なお、すでに説明した同一の構成には同一の符号を付してあり、それらの同じ説明は省略する。
図19(A)に示す絶磁構造例1では、第1のステータ1のヨーク11及び第2のステータ2のヨーク21に設けるそれぞれのロータ孔11a,21aを非磁性体の中座6により、ロータ3’の径方向に位置決めをしている。中座6は、ロータ3’の軸方向についてもヨーク11とヨーク21との間の距離を正確に決めている。
また、図19(B)に示す絶磁構造例2では、中座6’はスペーサ6aと下座6bとよりなる構成を有している。第1のステータ1のヨーク11及び第2のステータ2のヨーク21に設けるそれぞれのロータ孔11a,21aをロータカナ3bの軸受けを兼ねた非磁性体の下座6bによりロータ3’の径方向に位置決めしている。また、ロータ3’の径方向については、スペーサ6aによりヨーク11とヨーク21との間の距離を正確に決めている。
図19に示す構成とすることで、1個のロータと2個のステータのヨークとが径方向、軸方向に正確に位置決めされる。そのために、それぞれのステータから作用するロータへのトルクが安定し、一層速度変動が小さい連続運針の駆動が可能となる。
以上の説明は、保持トルク打消しに係る第3変形例の場合のように、一方のステータにより生じる保持トルクを他方のステータによる保持トルクで打ち消す際に、特に有効である。双方のステータを正確に位置決めで切ることに加え、それぞれのステータへの磁束量を等しくすることができるからである。
図19に示す絶磁構造例2は、ロータの径方向と軸方向とを別部品により位置決めしており、この点が絶磁構造例1の構成と異なる。絶磁構造例2のように、下座がロータカナの軸受けを兼ねるような構成にすることで、部品点数を減らしたり、部品同士の位置決めを不要にできる。
知られているように、電子時計の内部には余剰な部分が少ない。電子時計が腕時計の場合はさらに余剰部分がなく、ステップモータ周辺は他の部材により混み合っている。本発明のステップモータ装置をこのような電子時計に搭載するときは、搭載する部分の形状などを鑑みて絶磁構造例1と絶磁構造例2との構成を使い分ければよい。
[駆動回路の構成の説明:図20、図21]
次に、ステータのコイルに駆動パルスを発生させる駆動回路について図面に基づいて説明する。まず、図を用いて、回路構成について説明する。
図20及び図21は、この発明による駆動回路に係る具体例について説明するための図で、図20はそれぞれのコイルに駆動パルスを印加する駆動回路図、図21は駆動回路を構成するスイッチ素子であるMOS型電界効果トランジスタ(以降は、単にMOSFETと表記する)の電圧電流特性図である。
図20に示す駆動回路10は、図1に示す駆動手段30を構成する回路であり、コイルに印加する駆動パルスを発生するために、少なくとも4つのスイッチ素子10a,10b,10c,10dによるHブリッジ回路よりなる。これらスイッチ素子は、MOSFETを用いている。
Hブリッジ回路は、ステータのコイルの数と同じ数だけ必要であり、第1のステータ1のコイル13と第2のステータ2のコイル23とに対応する2組のHブリッジ回路を備えている。
各Hブリッジ回路は、コイルへの印加電圧を供給する第1の電源線10g(VDD)と、基準電圧(例えばGND)を供給する第2の電源線10h(VSS)と、4個のスイッチ素子の駆動電圧信号を供給する4本の信号線10iと、を接続されている。信号線10iは、スイッチ素子のMOSFETのゲートにゲート電圧を供給する信号線となっている。
第1の電源線10gと第2の電源線10hとの間にスイッチ素子を2つ直列接続したカラム回路を2つ備えている。一方のカラム回路は、スイッチ素子10aとスイッチ素子1
0cとを直列接続し、他方のカラム回路は、スイッチ素子10bとスイッチ素子10dとを直列接続している。
直列接続したスイッチ素子間同士を繋ぎ、その接続部分に出力線及び出力端子を設けている。すなわち、一方のカラム回路の出力線を出力線10eとし、その端部に出力端子Out1を備え、他方のカラム回路の出力線を出力線10fとし、その端部に出力端子Out2を備えている。これらの出力端子にコイルを接続することで駆動パルスがコイルに供給される
腕時計用などの一般的なステップモータの駆動回路では、回路規模を小さくするために4つのスイッチ素子10a,10b,10c,10dは、PチャネルMOSFET(以下、単にP−MOSFETと表記する)、NチャネルMOSFET(以下、単にN−MOSFETと表記する)で構成している。
具体的には、P−MOSFETは高電位側でスイッチ動作し易いため、Hブリッジ回路の高電位側であるVDD側に用いる。N−MOSFETは低電位側でスイッチ動作し易いため、低電位側であるVSS側に配置する。
P−MOSFETは、Low信号(低電位の信号)をゲートに供給した際にソース−ドレイン間が導通され、N−MOSFETは、High信号(高電位の信号)をゲートに供給した際にドレイン−ソース間が導通される。本実施形態で示す望ましい4つのスイッチ素子10a,10b,10c,10dは、スイッチ端子10a,10bをトランスファーゲート、スイッチ端子10c,10dをN−MOSFETとする回路構成である。
スイッチ素子10a,10bに用いるトランスファーゲートは、知られているように、P−MOSFET及びN−MOSFETのソースとドレインとを並列に接続した回路である。
図20に示す例では、スイッチ素子10a,10bにおいては、P−MOSFETのソース側とN−MOSFETのドレイン側とを端子TR1a,TR2aとし、P−MOSFETのドレイン側とN−MOSFETのソース側とを端子TR1c,TR2cとしている。
なお、スイッチ素子10a,10bを構成するトランスファーゲートには、P−MOSFETのゲートに論理反転素子を設けており、N−MOSFETと同じゲート信号で動作するようにしたものである。これにより、高電位でも低電位でも幅広い電位に対応できるスイッチ素子となっている。
また、図20に示す例では、スイッチ素子10c,10dにおいては、N−MOSFETのドレイン側を端子TR3a,TR4aとし、N−MOSFETのソース側を端子TR3c,TR4cとしている。
4つのスイッチ素子10a,10b,10c,10dは、ゲートにHigh信号又はLow信号を入力するが、その端子はそれぞれ、端子TR1b,TR2b,TR3b,TR4bとしている。
なお、図1に示す駆動手段30には、図20に示す駆動回路10の他に、他の回路も含まれているが、大切なことは、駆動回路10に同じ構成の2組のHブリッジ回路を備えるということである。
図21は、MOSFETのゲート−ソース間電圧VGSとドレイン電流IDとの関係を模式的に示した図であり、いわゆるMOSFETのVgs−Id特性と呼ばれるものである。
図示するように、閾値電圧VHを超える電位差をゲート−ソース間に加えることで、M
OSFETはスイッチとして動作をし、ソース−ドレイン間には電圧にほぼ比例して電流が流れ始める。一般的な腕時計用ステップモータの駆動回路として用いられるMOSFETの閾値電圧は0.35[V]〜0.50[V]程度である。
本発明のステップモータ装置を時計用として用いるとき、通常運針時においては、コイルに印加する駆動パルスの実効電圧は後述するように摩擦トルクの関係から定まり、MOSFETの閾値電圧よりも小さい0.1[V]〜0.3[V]程度である。そのために、第1の電源線10g(VDD)には駆動パルスの実効電圧として0.1[V]が供給される。
なお、スイッチ素子にゲート電圧を供給する信号線10iには、Low信号としてGNDの0[V]、High信号として腕時計に用いられる電池電圧(例えば1.5[V])から半分程度降圧した0.75[V]程度の大きさの電圧信号を印加する。
[駆動回路の作用の説明:図20]
次に、駆動回路の作用について、図20を参照しつつ説明する。
まず、スイッチ素子10a,10bにトランスファーゲートを用いる理由を説明する。
ここで、一般的な腕時計用ステップモータの駆動回路に用いられているP−MOSFETのみによるスイッチ素子で10a,10bを構成した場合を考えてみる。特にチョッパ駆動のように時間平均により実効電圧を下げる場合ではなく、フルパルス駆動で電圧振幅を下げることで低い実効電圧を印加する場合を考えてみる。
スイッチ素子を動作させ、ソース−ドレイン間を非通電の状態から導通させるために、端子TR1b,TR2bを介して信号線10iにLow信号(この場合0[V])を供給した場合、P−MOSFETのソース側(TR1a,TR2a)の電位は、第1の電源線10gより供給される実効電圧0.1[V]と低いために、閾値電圧0.35[V]〜0.5[V]を超える電位差をつくりだせずに、ドレイン電流が流れずにスイッチとして動作しない。
このような状況にあるため、本発明のステップモータ装置の駆動回路では、スイッチ素子10a,10bにトランスファーゲートを用いている。
トランスファーゲートでは、N−MOSFETがP−MOSFETと並列に接続しているために、この場合には、N−MOSFET側がスイッチとして動作する。ゲートにHigh信号(この場合1[V]程度)が入力されたとき、N−MOSFETのソース側(TR1c、TR2c)の電位は、スイッチ素子10c,10d(これらが導通状態の際)を介して第2の電源線10hよりGND(0[V])が供給されているために、ソース−ドレイン間電圧が1[V]となり、電圧を十分に超えているために、スイッチとして動作しドレイン−ソース間に電流が流れる。
トランスファーゲートにすることにより、チョッパ駆動で時間平均として実効電圧を下げる場合や後述するようにロータを高速回転させるために高い電圧(例えば1.5[V])をコイルに印加させる場合には、N−MOSFETの代わりに、並列に接続しているP−MOSFETがスイッチとして動作するため、様々な運針に対応できる。
次に通常運針時において、コイルに印加する駆動パルスの実効電圧が0.1[V]〜0.3[V]程度が望ましいことの説明をする。
説明にあっては、簡単のために1つのコイルのみに印加している状態を想定した場合とする。そのとき、ロータに作用するトルクの釣り合いと、印加している側のコイルの電圧の釣り合いは、数2で表される。なお、ここでは概算結果を導くのに簡単のため、1相励磁の場合について考える。
Figure 2012026874
数2において、θはロータの回転角度、ωはロータの角速度、iはコイルに流れる電流、Kはトルク係数(=逆起電圧係数)、J・dω/dtは慣性負荷、Th(θ)は保持トルク、D・ωは速度依存負荷、TLは摩擦トルク(起動時は静止摩擦トルク、回転時は動摩擦トルク)、eはコイルへの印加電圧、Lはコイルのインダクタンス、Rはコイルの抵抗である。
なお、2個のコイルからロータに作用するそれぞれのトルクの大きさは等しく、コイルの仕様も等しく、等しい印加電圧を加えているとしている。また、コイル間の相互インダクタンスは小さいものとして省略している。
本発明のステップモータ装置は、保持トルクTh(θ)が生じない(ほぼゼロ)構成であるから、数2より、ロータの角速度ω及びコイルに流れる電流iは、コイルへの印加電圧eを小さくすればするほど小さくなることが分かる。
ロータの角速度ωやコイルに流れる電流iが小さくなるにつれて、それらの微分であるdω/dt、di/dtの影響も小さくなる。過渡応答的な挙動をする従来技術のようなステップモータとは異なり、ロータの余分な加減速を極力抑えて摩擦力をわずかに上回る程度の駆動トルクを常に与えることによって、非常に低い角速度で動く駆動方式であるために、数2は数3のように書き換えられる。
Figure 2012026874
数3において、ロータが1つのステップが完了し終わる時には、ロータの角速度はほぼω=0となり、数3は更に近似的に数4のように書き換えられる。
Figure 2012026874
発明者が実験したところによると、K=約6e−4[Vs]、R=約2800[Ω]、e=約0.12[V]のときに、i=約42[uA]、ω=約3[deg/ms]程度と
いう非常に低い回転速度でロータはゆっくりとスムースに回転し続けた。
なお、一般的な時計用の単相ステップモータの駆動時のロータの回転速度は、約35[deg/ms]程度である。このとき、摩擦トルクTLを上述の数4より計算すると、約2.5e−8[Nm]となるが、非常に低速度であることからこのTLは摩擦トルク及びヨークの磁性体のヒステリシス特性に基づく損失によるトルクと考えられる。
実験では、ヨークにはヒステリシスの少ないパーマロイを用いており、ほとんどが摩擦トルクによるものと考えられる。なお、上記実験結果は回転し続けている定常状態であり、起動時には印加電圧を少し上げる必要があるが、これは静止摩擦トルクが動いている状態の摩擦トルク(動摩擦トルク)よりも大きいためであると考えられる。
ところで、印加するパルスの幅は、短すぎてもロータが所定の角度まで回転しきらないために、実験などにより所定の角度まで回転させうるようにパルス幅を増やしていくことで設定する。そのため、知られているステップモータのように所定のパルスレートで回転させるというわけではない。しかし、このような設定方法とすることでパルスレートに同期した回転動作をする同期モータ、あるいはその小分類であるステップモータではあるものの、過渡的な起動と停止が少なく速度変動の小さいDCモータのように回転させることができる。そのため、非常に速度変動の小さい連続運針を実現できる。
[駆動回路の効果の説明:図22]
次に、駆動回路の効果について、図22を参照しつつ説明する。
図22は、印加電圧とそのときのロータの角速度との関係を模式的に示す図である。図22(A)は従来技術の場合、図22(B)は本発明の小さい印加電圧を加えた場合のロータの角速度の関係を示す図である。図中、Δωdは従来技術の角速度の変動幅、Δωfは本発明の角速度の変動幅である。
図20を用いて説明した回路の構成とすると、通常運針時、コイルには図22(B)のような小さい実効電圧を印加させてもスイッチ動作を正常にさせることができる。本発明のステップモータ装置では、保持トルクを生じさせないようにしているため、駆動トルクを発生させるのに必要な大きい印加電圧を加える必要がない。従来から知られている単相ステップモータは、保持トルクを上回るような大きい印加電圧が必要であり、ロータが大きな加減速を繰り返すことで角速度の変動幅Δωdも大きくなっていたが、そのような動作は起こさない。
常に摩擦トルクをわずかに上回る程度の駆動トルクを常に作用させて回転させる駆動でよいから、余分な加減速がなく、ロータの角速度の変動幅Δωfも小さくて済む。
ロータが1ステップあたり、図22(B)のような角速度の動きをつなげていくことで、速度変動の小さい運針を実現できる。つまり、連続運針を行なうとき、その角速度の変動は緩やかな正弦波のようになり、そして、すでに説明した図36(B)に示したような目標とするフラットな角速度波形108bに近い波形になるのである。
図22(A)のような従来技術の場合、印加電圧をVd[V]、通電時間をtd[s]とし、その区間にコイルに流れる平均電流をid[A]とした場合、入力エネルギーEd[J]は、Ed=Vd*id*tdである。
一方、図22(B)に示す本発明の場合、印加電圧をVf[V]、通電時間をtf[s]とし、その区間にコイルに流れる平均電流をif[A]とした場合、入力エネルギーEf[J]は、Ef=Vf*if*tfである。
図22(A)では、td[s]が小さいが、Ed[V]及びid[A]は大きくなる。一方、図22(B)では、tf[s]は大きいが、Ef[V]及びif[A]は小さくなる。
所定のパルスレートに設定するためにtfを任意に設定することができず、ロータが所定の角度を回転しきるのみ十分な幅のパルスに設定する必要があるものの、従来技術のようにパルス数に比例して消費電力が上がっていくことはなく、印加する実効電圧を下げることで入力エネルギーである消費電力を上げることなく連続運針を実現できる。
なお、繰り返しになるが、印加電圧をほぼ摩擦トルクに釣り合う程度にまで下げることができるのは、本発明のステップモータ装置が保持トルクを有さない構成であるためである。保持トルクを有していないから、図22(B)には、図36(A)に示した領域α(角速度の負の変動の領域)は存在せず、角速度の変動幅Δωfは大変小さくなっている。
[駆動回路の変形例の説明:図23]
次に、駆動回路の実効電圧を下げる手法について、図23を参照しつつ説明する。
なお、図14に示す遅れ補正に係る第3変形例で説明したように、実効電圧とは、電圧振幅値だけを言うのではなく、印加する時間幅も考慮した時間平均を取った値として考えることもできる。
図23は、印加電圧としてチョッパ電圧を加えた場合の電流の関係を模式的に示す特性図である。図23(A)は、印加電圧Vaの電圧パルス7cの振幅が大きく、この印加電圧Vaを腕時計に用いられているような電池電圧(例えば1.5[V])のままチョッパとした場合の電流特性9cを示している。
図23(B)は、電池電圧を半分程度(例えば0.75[V])に降圧したものを印加電圧Vbの電圧パルス7dとし、チョッパとした場合の電流特性9dを示している。
図23(C)は、電池電圧を1/10から1/15程度に降圧したものを印加電圧Vcの電圧パルス7eとし、チョッパではなくフルパルスとして印加した場合の電流特性9eを示している。
電流特性9c,9d,9eのそれぞれの実効値Ia,Ib,Icは、それぞれ同程度の値である。チョッパ化した場合、Dutyを調整することで、実効値を制御できる。しかし、印加電圧が大きいほど、基本周波数を高くしていかないとDutyによる実効値の調整は困難となる。
例えば、図23(A)及び図23(B)の場合、区間tgを仮に30分割にした場合、図23(A)では、1.5×1/30=0.05[V]分の実効電圧の分解能しかないのに対して、図23(B)では、0.75×1/30=0.025[V]であり、図23(A)の倍の分解能を持つことができる。
先述したように本発明のステップモータ装置に必要な実効電圧の値は0.1〜0.3[V]程度であるために、仮に摩擦トルクに釣り合うように、0.175[V]近傍で電圧を調整しようとしても、図23(A)の場合には、0.05[V]幅の0.15[V]、0.20[V]の値しか取り得ない。入力エネルギーは実効電圧の二乗に比例するために、電圧が0.05[V]変化することで大きく変動してしまい、過剰なエネルギーをロータの回転に投入してしまうか、ロータの回転に不十分なエネルギーしか投入できないことになってしまう。また、チョッパ駆動のために周波数を上げていくにつれて、回路の消費電力を上がってしまうという問題も発生する。
そのため、本発明のステップモータ装置では、印加電圧を可能な限り下げ、最後のチョッパで実効電圧を微調整するというのが、製造誤差などによるばらつきの影響の大きい摩擦トルクに対して印加電圧を設定し易い手法と言える。
[ロータの駆動手法の説明1:図24]
次に、図1に示す駆動手段30の制御の仕方について、図24を参照しつつ説明する。
図24は、通常運針時に除々に実効電圧を下げていくためのアルゴリズムである。
起動時(STEP1)には、ロータや輪列には静止摩擦トルクが作用しているために、高い実効電圧を印加しないと回転しない。この電圧としては0.2〜0.3[V]程度である。例えば、図5に示す区間ts1をn=1として、nがa(aは整数で2以上)回経過したと判断したら(STEP2)、中程度の実効電圧に下げる(STEP3)。この電圧は0.15[V]〜0.2[V]程度である。
そしてまた、nがb(bは整数で2以上)回経過したと判断したら(STEP4)、更に低い実効電圧に下げる(STEP5)。この電圧は0.08[V]〜0.15[V]程度である。ロータがこの低い実効電圧のまま回転し続けていれば、そのままの電圧であるが、万が一回転しなかったら、先述したような非回転を検出した場合の処理として実効電圧を上げ(例えば本アルゴリズムではSTEP1)、再度図24のアルゴリズムにしたがって実効電圧を下げていく。もちろん実効電圧の制御は先述したようにチョッパのDuty制御をしても構わない。
このように起動時などに高い実効電圧で駆動し、除々に実効電圧を下げていく制御を行うことにより、確実な回転と低消費電力化を達成することができる。
[1−2相励磁時の第2の駆動方式の説明:図25]
すでに図4を用いて本発明のステップモータ装置を電子時計の連続運針用に用いるとき、正回転方向に、1−2相励磁でどのように動かすのかを説明した。ここでは、1−2相励磁の場合の駆動パルスの第2の駆動方式を、図25を用いて説明する。この駆動方式は、2相通電する区間の時間幅がすでに説明した駆動方式と異なっている。
図25(A)は、図5の区間ts1を用いてすでに説明した1−2相励磁の駆動パルスを示す図であり、図25(B)は、第2の駆動方式であり、より望ましい1−2相励磁の駆動パルスを示す図である。
1−2相励磁では、図25(A)のように、2相通電する区間tr2と1相通電する区間tr1とが交互に配置される。しかし、図25(B)に示す第2の駆動方式では、2相通電する区間tr2の幅を1相通電する区間tr1よりも短くする駆動パルスを印加している。
2相通電する区間においては、2つのコイルによりロータは駆動トルクを作用させられるために、駆動トルクに余裕がある。そこで、図25(B)のような駆動パルスを印加することで、2相通電する区間の駆動トルクを下げても回転できるのである。
[1−2相励磁時の第2の駆動方式の効果の説明:図26]
次に、この第2の駆動方式による効果について図26を用いて説明する。
図26において、縦軸は消費電力、横軸は2相通電区間と1相通電区間との時間の比を示している。それぞれの時に印加する実効電圧を可変することで消費電力の違いについて第1実施形態の場合に得られた実験結果を示す概要図である。
この図で0:10の時は1相励磁と同じであり、10:0は2相励磁と同じであり、5:5は一般的な1−2相励磁の場合である。図26に示すように、2相通電区間と1相通電区間の時間比を3:7程度にした場合に、消費電力は最も下がった。
なお、上述のように、これらの調整は、区間tr2と区間tr1との時間幅を変えるのみで良いために、制御や調整が容易である。
[1−2相励磁時の第3の駆動方式の説明:図27]
図25を用いて説明した第2の駆動方式では、2相通電する区間の時間幅を変えること
で、2相通電する区間の駆動トルクを下げたが、図25を用いてすでに説明した区間tr2と区間tr1との時間幅が同じである駆動方式であっても、Duty、周波数、実効電圧を変えることで駆動トルクを下げるようにしても構わない。それが図27に示す第3の駆動方式である。
図27(A)では、チョッパ駆動の場合で、2相通電区間のDutyを1相通電区間のDutyよりも小さくしている場合であって、Dutyを変えるのみで良いために最も制御し易い。
図27(B)もチョッパ駆動の場合で、2相通電区間の周波数を1相通電区間の周波数よりも小さくしている場合であって、Dutyは同じである。この場合、周波数を増やす必要があり、図27(A)の場合よりも消費電力が増えてしまうが、より高い分解能で実効電圧を調整できるという利点がある。
図27(C)は、フルパルスで駆動する場合であって、電圧振幅を変えることで区間tr2の実効電圧Vf2を区間tr1の実効電圧Vf1よりも小さくしている。このような微妙な電圧変化を付けるためには、降圧回路の規模が多少大きくなってしまうという課題があるが、チョッパ駆動の場合と異なりコイルに流れる電流にノイズがのりにくく、電流からロータの回転情報を抽出し易いという利点がある。
[回転検出方法に係る具体例の説明:図28、図29、図30]
続いて第1実施形態を例にして、回転か非回転かを判断するための回転検出方法について説明する。
図28、図29とも1−2相励磁で駆動した場合であり、図28は回転した場合の波形で、図29は非回転であった場合の波形である。
図28(A)、図29(A)は、コイル印加電圧を示す図である。
図28(B)、図29(B)は、コイルに流れる電流を示す図である。
図28(C)、図29(C)は、図28(B)、図29(B)の電流値を増幅した後に微分した値を示す図である。
また、図30(A)、(B)は、それぞれ図28(C)、図29(C)の区間ts2を拡大表示した拡大図である。図30において、tset1,tset2は所定の時間、Comp1,Comp2は閾値である。
図1に示す検出手段30bは、2個のコイルの通電電流を微分しその振幅が、設定した閾値以上にあるかないかで、回転か非回転かを判断している。図28(B)と図29(B)とを比較すると、区間tr2において、回転した場合には電流波形の落ち込みが見られるが、非回転時にはその落ち込みが見られない。同様に区間tr1においても、回転した場合には落ち込みが見られるが、非回転時にはその落ち込みが見られない。この特徴を回転検出に利用しているのである。つまり、この特徴を検出するために、電流波形を微分する。
図28(C)、図29(C)のts2区間を拡大表示した、図30(A)、図30(B)に基づいて詳述する。
区間tr2は、コイルAとコイルBとの2相両方に通電している区間であり、設定したtset2時間以降の電流微分値の振幅を比較すると、回転した場合である図30(A)の振幅は、非回転である場合の図30(B)よりも小さい。そのため、Comp2という閾値を超えたかどうかで回転か非回転かを判断できる。
tset2時間の設定が必要なのは、加えるパルスが矩形波であるために、電圧の立上り、立下り直後には電流微分値の振幅にその影響が大きく現れてしまっているためである。この影響を避け、正確にロータの回転の影響だけを抽出するために、ある一定時間のtset2時間を設定する。
なお、閾値の設定は電流の流れる方向により正側に設定するか負側に設定するかを決めれば良い。例えば区間tr2においては、コイルAの側の電流は正に流れているために閾値も正側に設定する。一方、コイルB側の電流は負に流れているために、閾値も負側に設定する。
閾値による判定は2相通電区間でなくとも1相通電区間である区間tr1で行っても良い。設定したtset1時間以降の電流微分値の振幅を比較すると、回転した場合である図30(A)の振幅は、非回転である場合の図30(B)よりも小さい。そのため、Comp1という閾値を超えたかどうかで回転か非回転かを判断しても良い。
1相の通電区間であるtr1で判断する場合、駆動エネルギーが小さいために、電流微分値に現れるその振幅も小さい。そのため、誤検出し易いという問題もあるが、非回転時にはほとんど信号変化がないために、回転時と非回転時の判断をよりし易いという利点もある。
1つの区間tr2や区間tr1だけではなく、2つ以上の区間tr2や区間tr1の振幅から、回転か非回転かを判断することで、より検出の精度を向上させることができる。
例えば、図30(B)において、区間ts2はロータ3が180[deg]回転するはずの区間であるが、はじめの区間tr2と次の区間tr2の電流微分波形は形状が異なる。これは、モータの偏芯の影響などによりロータ3の停止位置がばらつき、1ステップ毎に等しい角度ずつ駆動しないことが原因と考えられる。この場合、はじめの区間tr2だけで判断すると、閾値の設定の仕方によっては非回転にも係らず、回転していると誤検出してしまう可能性がある。2つ以上の区間tr2や区間tr1で判断し、どれか1つの区間でも非回転と判断した場合に、遅れ補正信号を印加するというように決めておくことで、より精度良く回転か非回転かを検出し、遅れ補正を正しく行うことができる。
この例では、最も複雑な1−2相励磁の場合の回転検出について記載したが、上述した、遅れ補正方法に係る第1変形例に示した1相励磁の場合でも、遅れ補正方法に係る第2変形例に示した2相励磁の場合であっても、電流の微分の振幅が設定した閾値以上かどうかで回転か非回転かを判断できるため、ここではそれらの説明は、省略する。
[ロータの駆動手法の説明2:図31、図32]
次に、本発明のステップモータ装置を電子時計に用い、その運針を、高速駆動、ステップ状駆動、連続運針用と切り換えて用いるとき、それぞれをどのように動かすのかを図31及び図32を用いて説明する。
図31は、駆動方法選択のアルゴリズムについて説明するための図であり、図32(A)は高速駆動時の駆動パルスの例、図32(B)はステップ状駆動時の駆動パルスの例を示す図である。
なお、説明にあっては、図32(A)では2相励磁を、図32(B)では1相励磁を例にしているが、1相励磁でも、1−2相励磁でも構わない。
これまでは、特に通常運針時の特に連続運針について速度変動が小さく、低消電力で駆動する方法について説明してきた。しかし、駆動パルスを選択することにより、その他の駆動方法も可能となる。
図32では、まず初期化処理(STEP1)として、ロータの初期位置を決めるためのパルスを印加する。続いて正回転か逆回転かを選択(STEP2)する。続いて高速駆動か通常運針かを選択(STEP3)を行う。
STEP3で高速駆動の選択を行うと(選択は図示しない外部スイッチなどの信号に基づく)、高実効電圧(例えば電池電圧の1.5[V])をコイルに印加し、また高い周波数の高速運針パルス(図32(A)を参照)を出力する(STEP5)。高速運針パルス
はクロノグラフなどに用いることができる。
本発明のステップモータ装置は、一般的な単相ステップモータと異なり、ロータからの磁束はそれぞれ2つのステータに分かれ、それぞれのコイルを鎖交する。そのため、それぞれのコイルに発生する逆起電圧が小さくなるため、特に高速回転させた場合には逆起電圧と電源電圧とのバランスにより決まってくる回転速度の限界が高く、単相ステップモータの場合よりも高速に駆動させることができる。
STEP3で通常運針を選択すると、次にステップ状運針かどうかを選択(STEP4)する。
ここでステップ状運針を選択すると、高実効電圧(例えば電池電圧の1.5[V])で、ステップ状運針パルス(図32(B)を参照)をコイルに印加する(STEP6)。
ステップ状運針とは、例えばロータを10回転分高速で送り(区間tstep)、その後ロータを停止させた状態のままにし(区間tstay)、ある所定の周期後に再度ロータを10回転分高速で送り、再びその後ロータを停止させた状態のままにしておくなどとする運針方法のことである。このような運針方法をすることにより、使用者は針がまるでステップ運針をしているかのように認識することができる。
STEP4でステップ状運針ではない連続運針を選択すると、先述してきたような低実効電圧(例えば0.1〜0.3[V])の連続運針パルスをコイルに印加する(STEP7)。
このように本発明のステップモータ装置は、連続運針以外の駆動方法も選択でき、使用者は運針を気分に応じて選択できる。
以上、本発明のステップモータ装置の細部及びロータの駆動方法について図面を用いて説明した。主に第1実施形態の構成を例示して説明したが、もちろん、それらは第1実施形態に限定するものではない。スペーサを用いた絶磁構造や駆動手法は、他の実施形態や構成においても用いることができる。
この発明は、腕時計をはじめとする各種の指針を備えた電子時計の駆動源として利用できる。電池のような一次電池を電源とするもののほか、太陽電池や熱発電素子あるいは機械式発電ユニットなどと二次電池の組合せを電源とするものにも適用することができる。
1 第1のステータ
2 第2のステータ
11,21 ヨーク
11a,21a ロータ孔
11b,21b スリット
11c,21c 内ノッチ
11d,21d 磁束飽和部
12,22 コイル芯
13,23 コイル
3,3’ロータ
3a ロータ磁石
3b ロータカナ
4,4a,4b 保持トルク
5,5a,5a’,5b,5b’ 磁束
5c,5d,5e 磁界
6,6’ 中座
6a 下座
6b スペーサ
9c,9d,9e 電流特性
10 駆動回路
30 駆動手段
30a 可変電圧手段
30b 検出手段

Claims (8)

  1. 2極に着磁された永久磁石からなる1個のロータと、
    前記ロータを回転自在に挿入されるロータ孔を有する軟磁性体のヨークと該ヨークに一体となるコイル芯に導線を巻きつけたコイルとからなるステータを2個有し、
    前記2個のステータは、前記ロータ孔の位置を互いに一致させて前記ロータの軸方向に互いに空間的な位相をずらせて重ねると共に互いを絶磁して配置された第1のステータと第2のステータとであるステップモータを有し、
    それぞれの前記コイルに電気的な位相をずらした所定の駆動パルスを発生する駆動手段により該駆動パルスをそれぞれの前記コイルに印加することで、前記ロータを回転させるステップモータ装置において、
    前記ステップモータは、前記2個のステータの前記ロータ孔の周囲には、前記コイルによる磁界によって前記ロータに駆動トルクを作用させるために機能する一対のスリット又は磁束飽和部を設け、
    前記2個のステータと前記ロータとでは、前記コイルの非通電時に前記ロータの位置を安定させるための保持トルクが生じないステップモータであり、
    前記駆動手段は、前記ロータの回転又は非回転を検出する検出手段を有し、
    前記ロータが所定の角度を回転するのに必要な回転時間と、この回転時間を所定の個数に分割した所定の分割周期と、を定義したとき、
    前記駆動手段は、前記分割周期の期間内に前記駆動パルスを印加すると共に前記検出手段により前記ロータの回転又は非回転を検出し、前記ロータが非回転と判断されたとき、前記回転時間内の次の前記分割周期の期間内に遅れ補正信号により前記ロータを回転させ、
    前記遅れ補正信号は、前記駆動パルスよりもその実効電圧が大きく、その周波数が高いことを特徴とするステップモータ装置。
  2. 前記遅れ補正信号は、前記駆動パルスの2倍の周波数であることを特徴とする請求項1に記載のステップモータ装置。
  3. 前記遅れ補正信号は、所定の実効電圧を第1の時間印加する1つのパルスと、所定の実効電圧を第2の時間印加する複数のパルスと、の組み合わせであり、前記第1の時間は前記第2の時間より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のステップモータ装置。
  4. 前記駆動パルスは、前記2個のコイルを1−2相励磁するものであり、それぞれの前記コイルに印加される電圧は、2相通電区間の実効電圧を1相通電区間の実効電圧よりも小さくすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のステップモータ装置。
  5. 前記検出手段は、前記2個のコイルの通電電流を微分し、その振幅が設定した閾値以上にあるか否かで、前記ロータの回転又は非回転を判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のステップモータ装置。
  6. 前記駆動手段は、前記駆動パルスを発生するために、少なくとも4つのスイッチ素子によるHブリッジ回路2組よりなる駆動回路を備えており、前記駆動パルスの実効電圧は、前記ロータに負荷として作用している静止摩擦トルク又は動摩擦トルクより大きいトルクを発生させる電圧値であると共に前記スイッチ素子を構成するMOSFETの閾値電圧よりも小さい電圧値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のステップモータ装置。
  7. 前記2個のステータに備える前記一対のスリット又は磁束飽和部は、それぞれの前記ステータごとに保持トルクを生じさせない位置となっていることを特徴とする請求項1から
    6のいずれか1つに記載のステップモータ装置。
  8. 前記2個のステータに備える前記一対のスリット又は磁束飽和部は、一方の前記ステータに保持トルクを生じさせて他方の前記ステータによりその保持トルクを打ち消す位置となっていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のステップモータ装置。
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