JPWO2016047710A1 - タイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。これら熱可塑性の高分子材料(熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂材料等)は、射出成形が可能であるなど、生産性の向上の観点から有利な点が多い。例えば、前記熱可塑性の高分子材料としてポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いたタイヤが提案されている(特開2012−46030号公報参照)。
そして、低ロス性及びリム組み性は、いずれも優れており、両立されていることが、熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤにおいて求められている。
前記タイヤでは、タイヤ骨格体が上記構成の熱可塑性エラストマーを含むため、低ロス性及びリム組み性が共に優れる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
そして、前記タイヤでは、熱可塑性エラストマーの結合部が剛性の高い芳香族環を有するため、結合部が芳香族環を有さない場合に比べてタイヤの弾性率が高くなり、リム組みに適した弾性率が得られやすいと考えられる。
以上のように、結合部が芳香族環を有する熱可塑性エラストマーを適用した前記タイヤは、低ロス性及びリム組み性が共に優れるのであると推測される。
さらに、ハードセグメントが芳香族環を含む場合、ハードセグメントの剛直性が増すことによって分子鎖が折りたたまれにくく、芳香族環の立体障害によりハードセグメントが結晶化しにくくなり、熱可塑性エラストマーの弾性率が低く、タイヤのリム組み性が低下することが考えられる。
これに対して前記タイヤでは、ハードセグメントが芳香族環を含まず、かつ、結合部が芳香族環を含む熱可塑性エラストマーを適用しているため、低ロス性及びリム組み性が共に優れ、かつ、ハードセグメントが芳香族環を含む場合に比べて耐光性が優れると推測される。
また、本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
<熱可塑性エラストマー>
上述のように、前記タイヤは、樹脂材料を用いたタイヤ骨格体を有する。そして、前記樹脂材料として用いられる熱可塑性エラストマーは、芳香族環を含まないハードセグメントと、ソフトセグメントと、芳香族環を含みハードセグメントとソフトセグメントとを結合する結合部と、を有する。
なお、前記樹脂材料は、上記熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーや、任意の成分を含んでいてもよい。また、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であるが、天然ゴムは含まない。
ハードセグメントを構成するポリマーとしては、芳香族環を含まないポリマーであれば特に限定されず、目的に応じて選択すればよい。ハードセグメントを構成するポリマーの具体例としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
ソフトセグメントを構成するポリマーとしては、特に限定されず、ハードセグメントの種類や目的に応じて選択すればよいが、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリアルキルアクリレート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
芳香族環を含む鎖長延長剤は、芳香族環と、ハードセグメントの末端基と結合する基と、ソフトセグメントの末端基と結合する基と、を有する化合物であれば特に限定されない。
結合部は、上記芳香族環の中でも、ベンゼン環を有する芳香族環を含むことが好ましく、置換基を有さないベンゼン環を有する芳香族環を含むことがより好ましく、ベンゼン環である芳香族環及び複数のベンゼン環で構成された多環式の芳香族環の少なくとも1種を含むことがさらに好ましく、複数のベンゼン環で構成された多環式の芳香族環を含むことが特に好ましい。
ここで、芳香族環数は、1つの結合部に含まれる芳香族環の個数である。例えば、1つの結合部に芳香族環として、ビフェニル構造を1つのみ有する場合は芳香族環数が2個であり、アントラセン構造を1つのみ有する場合は芳香族環数が3個であり、ポルフィリン構造を1つのみ有する場合は芳香族環数が4個であると考える。
なお、連結基としては、例えば、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルフィド結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。
また、芳香族環を含む鎖長延長剤の具体例としては、例えば、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ジアミン又は芳香族ジカルボン酸が好ましい。
すなわち、結合部が、芳香族ジアミンに由来する構成単位又は芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位であることが好ましい。
FH−RH−Ar−RS−FS 一般式(A)
一般式(A)中、FHはハードセグメントの末端基と結合する基を表し、FSはソフトセグメントの末端基と結合する基を表し、RH及びRSはそれぞれ独立に単結合又は炭素数1以上4以下の直鎖のアルキレン基を表し、Arは芳香族環を含む連結基を表す。
一般式(A)中のRH及びRSは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1以上2以下の直鎖のアルキレン基が好ましく、単結合又はメチレン基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。
また、連結基Arが芳香族環を2個以上含む場合、2個以上の芳香族環が、縮合環を形成していてもよく、スピロ環を形成していてもよく、単結合を介して結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。2個以上の芳香族環が連結基を介して結合している場合、芳香族環を連結する原子の数(一方の芳香族環と他方の芳香族環とをつなぐ最小の原子数)は、それぞれ、4以下が好ましく、2以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
本明細書において、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されるポリアミドを挙げることができる。
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜22の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ポリアミド11は、例えば、{CO−(CH2)10−NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド12は、例えば、{CO−(CH2)11−NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド66は、例えば、{CO(CH2)4CONH(CH2)6NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、低ロス性及びリム組み性の観点から、ハードセグメントとして、−[CO−(CH2)11−NH]−で表される単位構造を有するポリアミド(ポリアミド12)、及び−[CO−(CH2)5−NH]−で表される単位構造を有するポリアミド(ポリアミド6)の少なくとも1つを有することが好ましい。
前記ソフトセグメントを形成するポリマー(ソフトセグメントを形成する高分子化合物)としては、例えば、ポリエステルや、ポリエーテルが挙げられ、更に、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを挙げることができる。
上述のジアミンは単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組合せて使用してもよい。
ただし、ソフトセグメントを構成するポリマーは、耐光性の観点から、芳香族環を含まないことが好ましい。
上述の通り、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの結合部としては、例えば、芳香族環を含む鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。
芳香族環を含む鎖長延長剤としては、例えば、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体、芳香族ジアミン、芳香族ジオール、並びに芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、例えば15,700〜200,000が挙げられる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が15,700未満であると、リム組み性が低下してしまう場合がある。また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が200,000を超えると、溶融粘度が高くなり、タイヤ骨格体を形成する際の充填不足を防ぐために成形温度、金型温度を高くする必要がある場合がある。そして、充填不足を防ぐために成形温度及び金型温度を高くした場合、サイクルタイムが長くなる為、生産性が劣る。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー全量に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、15〜85質量%が特に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー全量に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、15〜85質量%が特に好ましい。
前記鎖長延長剤を用いる場合、その含有量は前記ソフトセグメントを形成するポリマーの末端基(例えば水酸基、アミノ基等)と、鎖長延長剤におけるソフトセグメントの末端基と結合する基(例えばカルボキシル基等)と、がほぼ等モルになるように設定されることが好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、芳香族環を含む結合部に加えて芳香族環を含まない結合部を有していてもよい。ポリアミド系熱可塑性エラストマーが有する結合部全体に対する、芳香族環を含む結合部の割合(質量比)としては、例えば1質量%以上100質量%以下が挙げられ、3質量%以上100質量%以下が望ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを、鎖長延長剤を用いて公知の方法によって共重合することで合成することができる。
例えば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを構成するモノマー(例えば、12−アミノドデカン酸などのω−アミノカルボン酸や、ラウリルラクタムなどのラクタム)と鎖長延長剤(例えば、アジピン酸又はデカンジカルボン酸)とを容器内で重合させた後、ソフトセグメントを構成するポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール、ABA型トリブロックポリエーテル、これらの末端がアミノ基に変性されたジアミン等)を添加し、さらに重合させることで得ることができる。
例えば、無機系リン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機スズ化合物等が挙げられる。
具体的には、無機系リン化合物としては、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン含有酸、リン含有酸のアルカリ金属塩、リン含有酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、チタンアルコキシド〔チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等〕等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアルコキシド〔ジルコニウムテトラブトキシド(「Zr(OBu)4」または「Zr(OC4H8)4」とも称される)等〕等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、ジスタノキサン化合物〔1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等〕、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレート等が挙げられる。
触媒添加量及び触媒添加時期は、目的物を速やかに得られる条件であれば特に制限されない。
また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントが前記一般式(1)若しくは一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されたポリアミドに由来する構成単位であり、ソフトセグメントが末端に水酸基若しくはアミノ基を有するポリエーテルに由来する構成単位であり、かつ、結合部が芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位であるもの、又はハードセグメントが前記一般式(1)若しくは一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されたポリアミドに由来する構成単位であり、ソフトセグメントが末端にカルボキシ基を有するポリエーテルに由来する構成単位であり、かつ、結合部が芳香族ジアミンに由来する構成単位であるものが好ましい。
さらに、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコール/テレフタル酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコール/テレフタル酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/テレフタル酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/テレフタル酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジアミン/2,6−アントラセンジカルボン酸の組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジアミン/2,6−アントラセンジカルボン酸の組み合わせ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリエチレングリコール/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリプロピレングリコール/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジアミン/テレフタル酸の組み合わせ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリエチレングリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリプロピレングリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジアミン/2,6−アントラセンジカルボン酸の組み合わせが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテル/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルジアミン/2,6−アントラセンジカルボン酸の組み合わせ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/テレフタル酸の組合せ、アミノドデカン酸の重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/2,6−アントラセンジカルボン酸の組合せが特に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、構成単位の組み合わせ、その構成比、分子量等について上述した好ましい態様同士を組み合わせたものを用いることができる。
本明細書において、「ポリエステル系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にエステル結合(−COO−)を有するものを意味する。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントを形成する結晶性のポリエステルとしては、脂肪族ポリエステルを用いることができる。脂肪族ポリエステルは、例えば、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
ハードセグメントを形成する脂肪族ポリエステルの具体例としては、例えば、ドデカンジオールとドデカン二酸とを反応して得られるポリエステル、ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、両末端カルボン酸PBTと両末端ジオールPPGとを反応して得られるポリエステル、ポリプロピレングリコールとドデカン二酸とを反応して得られるポリエステル等が挙げられ、この中でもポリプロピレングリコールとドデカン二酸とを反応して得られるポリエステルが好ましい。
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエーテルから選択されたポリマーが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
結合部は、例えば、芳香族環を含む鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。鎖長延長剤としては上述したものが挙げられるが、その中でも特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの鎖長延長剤としては、反応性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、例えば、リム組み性及び生産性の観点から15,700〜200,000が挙げられ、20,000〜200,000が好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメント(HS)及びソフトセグメント(SS)の質量比(HS/SS)は、成形性の観点から、30/70〜90/10が好ましく、リム組性及び低ロス性の観点から、40/60〜80/20が更に好ましく、50/50〜70/30が特に好ましい。
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを、鎖長延長剤を用いて公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
式A中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。式A又は式B中、Rは、脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素を表す。式B中、P’は、短鎖脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素を表す。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及び4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素又は脂環族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオールが挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、式B中のRは、式A中のRと同じである。
結合部は、例えば、芳香族環を含む鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。鎖長延長剤としては上述したものが挙げられるが、その中でも特にポリウレタン系熱可塑性エラストマーの鎖延長剤としては、反応性の観点から、芳香族ジオールが好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、例えば、リム組み性及び生産性の観点から15,700〜200,000が挙げられ、20,000〜200,000が好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメント(HS)及びソフトセグメント(SS)の質量比(HS/SS)は、30/70〜90/10が好ましく、40/60〜80/20が更に好ましく、50/50〜70/30が特に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを、鎖長延長剤を用いて公知の方法によって共重合することで合成することができる。
次に、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の好ましい物性について説明する。前記タイヤ骨格体は、上述の樹脂材料を用いるものである。
このように、融点が120℃〜250℃の樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、前記タイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する樹脂材料の融点(又は軟化点)よりも10℃〜150℃高い温度が好ましく、10℃〜100℃高い温度が更に好ましい。
溶融混合して得られた樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
以下に、図面に従って本発明の第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1Bは、リムに装着したビード部の断面図である。図1Aに示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
まず、上述のように熱可塑性樹脂エラストマーを含む樹脂材料を用いて、タイヤケース半体を形成する。これらタイヤケースの形成は、射出成形で行うことが好ましい。次に、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体17Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する樹脂材料の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱や加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱してもよく、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧してタイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、図を省略するが、補強コード26を巻き付けたリール、コード加熱装置、各種ローラ等を備えたコード供給装置を用い、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28を形成することができる。
本実施形態のタイヤ10は、タイヤケース17が、芳香族環を含まないハードセグメントと、ソフトセグメントと、芳香族環を含み前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントを結合する結合部と、有する熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料によって形成される。このため、本実施形態のタイヤ10は、低ロス性及びリム組み性が共に優れる。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、1,2−アミノドデカン酸(アルドリッチ製)44g、アミノドデカノラクタム600g、テレフタル酸(結合部となる鎖長延長剤)18gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、280℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で5時間反応させた。圧力を解放したあと、窒素気流下でさらに1時間反応させ、分子量2500のポリアミド12重合物である白色固体を得た(重合反応A)。
なお、得られたポリアミド12重合物は、ハードセグメントである分子量2500のポリアミド(ポリアミド12)の一方の末端に鎖長延長剤であるテレフタル酸が結合したものである。
テレフタル酸18gの代わりにイソフタル酸18gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを141gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:76000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりにフェニレン二酢酸21gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを205gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:88000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに4,4’−ビフェニルジカルボン酸43gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを205gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:82000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸23gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを205gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:77000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに2,6−アントラセンジカルボン酸32gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを189gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:74000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに4,8−ピレンジカルボン酸31gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを213gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:72000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに2,7−トリフェニレンジカルボン酸33gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを204gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:70000)を得た。
ポリオキシプロピレンジアミン196gの代わりにポリオキシプロピレン−ポリテトラメチレングリコール−ポリオキシプロピレンジアミン(PPG−PTMG−PPG、HUNTSMAN社製 品名:ジェファーミン 型番:XTJ−548、重量平均分子量1700)147gを用い、重合反応Aにおける条件のうちテレフタル酸仕込み量18gを17gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:85000)を得た。
ポリオキシプロピレンジアミン196gの代わりにポリテトラメチレングリコールジアミン(両末端アミン化PTMG、重量平均分子量:1000)197gを用い、重合反応Aにおける条件のうちテレフタル酸仕込み量18gを17gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:79000)を得た。
上記両末端アミン化PTMGは、原料である両末端水酸基のポリテトラメチレングリコール(和光純薬製、製造元コード:164−17745、重量平均分子量:2000)とトシルクロリドとを反応させてトシル化したのち、アジ化ナトリウムによるアジド化、白金触媒による還元反応を経ることで、得た。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、アルドリッチ製カプロラクタム500g、2,6−ナフタレンジカルボン酸116g、アミノヘキサン酸77gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、250℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で4時間反応させた。圧力を解放したあと、窒素気流下でさらに1時間反応させ、水洗工程を経て、数平均分子量3000のポリアミド6重合物である白色固体を得た。
なお、得られたポリアミド6重合物は、ハードセグメントである分子量3000のポリアミド(ポリアミド6)の一方の末端に鎖長延長剤である2,6−ナフタレンジカルボン酸が結合したものである。
テレフタル酸18gの代わりにドデカン二酸24gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを205gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:85000)を得た。
テレフタル酸18gの代わりに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸18gを用い、重合反応Bにおける条件のうちPPG仕込み量196gを205gとした以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:80000)を得た。
得られた熱可塑性エラストマーを用いて、以下の項目について評価した。具体的には、得られた熱可塑性エラストマーをペレット化し、射出成形機としてファナック(株)製「ROBOSHOT α15−C」を用い、成形温度220℃、金型温度50℃、の条件で射出成形し、サンプル片を得た。各種測定は、このサンプル片から、28mm×100mm、厚さ2mmの金型を用いて試験片を打ち抜いたサンプルを用いて実施した。結果を表1及び表2に示す。
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、φ8mm、厚さ2mmのサンプルを用いて温度30℃、歪み1%、周波数20Hzで損失正接(tanδ)を測定した。比較例1のサンプルにおいて得られたtanδを100として指数化し、195以下の場合を「A」、195より大きく366以下の場合を「B」、366より大きい場合を「C」とした。指数は小さい程低ロス性が良好であることを示し、「A」が最も良く、「C」が最も悪い。
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマーを用いて、それぞれ上述の第1の実施形態を参照し、タイヤを形成した。次いで、タイヤをリムに装着し、エアシール性が確保できた場合を「A」、リム組みの際に、硬くてハンドリング性に劣る場合を「B」、割れの発生や、エアシール性が確保できなかった場合を「C」とした。
得られたサンプルについて、示差走査型熱量分析(DSC)装置〔ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、DSC Q2000〕を用い、0℃から200℃まで10℃/分で昇温させて融解開始温度を測定した。融解開始温度が155℃以上の場合を「A」、147℃以上155℃未満の場合を「B」、147℃未満の場合を「C」とした。
また、表1及び表2中、「PA12」はポリアミド12に、「PA6」はポリアミド6に、「PPG」はポリプロピレングリコールに、「PTMG」はポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来することを意味する。さらに、「PPG−PTMG−PPG」は、PTMG由来の構成単位とPPG由来の構成単位を有する三元共重合体を意味する。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (5)
- 熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有し、
前記熱可塑性エラストマーは、芳香族環を含まないハードセグメントと、ソフトセグメントと、芳香族環を含み前記ハードセグメント及び前記ソフトセグメントを結合する結合部と、を有するタイヤ。 - 前記結合部に含まれる芳香族環数が1〜4個である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記ハードセグメント(HS)と前記ソフトセグメント(SS)との質量比(HS/SS)が30/70〜90/10である請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
- 前記結合部がジアミンまたはジカルボン酸に由来する構成単位である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記ハードセグメントがポリアミド構造を有し、前記ソフトセグメントがポリエーテル構造を有し、前記結合部がジカルボン酸に由来する構成単位である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
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