JPWO2016039354A1 - 絵画の複製物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、様々な種類の絵画を原画として、原画の有するマチエールを再現することができ、更に、インクの耐光性も向上させる、絵画の複製物の製造方法を提供することである。本発明によれば、基材シート上に、有機バインダーと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が10μm以下の水酸化カルシウムと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が5.0μm以下の水不溶性無機粉体とを含有するスラリー状混合物を用いて、原画となる絵画の凹凸を反映した凹凸を有する凹凸再現層を形成し、該凹凸再現層上に前記絵画をインクジェットにより印刷することを特徴とする絵画の複製物の製造方法が提供される。

Description

本発明は、基材シート上に、原画となる絵画の凹凸に同調した凹凸を有する凹凸再現層を形成し、該凹凸再現層上に前記絵画をインクジェットにより印刷する、絵画の複製物の製造方法に関する。
油彩画、アクリル画、日本画等の絵画にはマチエール(matiere、iとrの間のeには重アクサン記号がつく)が存在する。マチエールは、絵画表面の凹凸や質感を表す美術用語であり、絵具の材質感や絵具の厚塗り/薄塗りなどによって生じる。
例えば油彩画には、亜麻仁等の植物の種から採取された乾性油で顔料を溶いた油絵具が用いられるが、油絵具は粘稠度が高いため塗り重ねることができ、筆跡(タッチ)によりマチエールを形成させる手法を可能にする。
また、アクリル画は、顔料にアクリル樹脂エマルションを加えて練り上げた絵具(アクリル絵具)を用いて描画される絵画である。アクリル絵具は、油絵具と比較すると速乾性であり、油絵具同様厚塗りによるマチエールの形成を可能にするだけでなく、水溶性であるため、透明水彩絵具に似た技法を用いることもできる。
日本画の中には、胡粉等の岩絵具を用い、膠を接着剤として描きマチエールを形成させる技法がある。
このように、絵画の多くは独特の色調を有する他、大小の凹凸、即ちマチエールを有しているので、水彩画のような平面的な絵画に比べ特殊な風合いを醸し出すことができる。そのため、マチエールを有する絵画は、優美さを持ち合わせている。
従って、複製画等の絵画の複製物の製作においては、できる限り原画特有のマチエールを再現することが必要となっている。
特許文献1では、岩絵具特有の微小な凹凸を再現することを目的として、紙基材上に、下地凹凸層、UVインキ層、隠蔽層、受容層および絵柄層がこの順に形成された複製画が開示されている。具体的には、寒水粉と炭酸カルシウム粉とを含む下地凹凸層を形成し、この下地凹凸層により凸部と凹部との平均高度差、並びに凸部又は/及び凹部の形成密度を所定の範囲に制御した複製画が開示されている。また、寒水粉と炭酸カルシウム粉とを用いてUVインキ層上に隠蔽層を形成し、この隠蔽層によって、UVインキ層由来の照りを隠蔽し、且つ、岩絵具調の質感を付加する旨も開示している。
特許5437860号
しかし、特許文献1の方法では、粒径の大きい寒水粉や炭酸カルシウムを下地凹凸層や隠蔽層に使用するため、日本画特有の微小な凹凸は再現できるが、油絵のように表面が滑らかなマチエールを有する原画をもとに複製画を製造することが困難であった。更に、特許文献1の方法で得られた複製画は耐光性の点で劣っており、経時とともにインクの色が褪せていくという欠点もあった。更にまた、工程が複雑であるため小ロット製造時にはコスト的に不利であった。
従って、本発明の目的は、様々な種類の絵画を原画として、原画の有するマチエールを再現することができ、更に、インクの耐光性も向上させる、絵画の複製物の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、原画となる絵画の画像だけでなく、原画の有するマチエールまで再現されており、更に、インクの耐光性にも優れている、絵画のインクジェット複製物を提供することである。
本発明者等は、絵画の複製物において原画のマチエールを再現するために、原画の凹凸を反映させた層を複製物に設けるにあたり、かかる層の組成、並びにかかる層にインクジェットプリントを施したときの印刷性について多くの実験を行い研究した。その結果、上記課題を解決するに至った。即ち、本発明の構成は次のとおりである。
本発明によれば、基材シート上に、有機バインダーと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が10μm以下の水酸化カルシウムと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が5.0μm以下の水不溶性無機粉体とを含有するスラリー状混合物を用いて、原画となる絵画の凹凸を反映した凹凸を有する凹凸再現層を形成し、該凹凸再現層上に前記絵画をインクジェットにより印刷することを特徴とする絵画の複製物の製造方法が提供される。
本発明の絵画の複製物の製造方法においては、
(1)前記有機バインダーが、アクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種類の樹脂からなること、
(2)前記基材シート上にインクジェットで補助画像を印刷し、次いで該補助画像を基準にして前記凹凸再現層を形成すること、
(3)前記基材シートが、半固化状態の漆喰を含む層が基材紙上に形成されたものであること、
(4)前記絵画の複製物が複製画であること、
が好ましい。
また、本発明によれば、絵画のインクジェット複製物において、基材シートと、該基材シート上に形成され且つ前記絵画の凹凸が反映された凹凸再現層と、該凹凸再現層上に形成された前記絵画のインクジェット印刷像とから成り、前記凹凸再現層が、炭酸カルシウムと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準でのメディアン径(d50)が5.0μm以下の、炭酸カルシウムとは異なる水不溶性無機粉体とを含むことを特徴とする、絵画のインクジェット複製物が提供される。
本発明の絵画のインクジェット複製物においては、前記基材シート上に、補助画像として、前記絵画の凹凸情報を表すグレースケール画像が形成されており、該グレースケール画像を覆うように、前記凹凸再現層が形成されていることが好ましい。
本発明の絵画の複製物の製造方法は、水酸化カルシウムと水不溶性無機粉体とを有するスラリー状混合物を用いて、基材層とインクジェット印刷像の間に、原画の凹凸を反映した凹凸を有する凹凸再現層を形成する点に重要な特徴を有する。
水酸化カルシウム(通称:消石灰)には、経時とともに空気中の炭酸ガスと反応して漆喰、即ち炭酸カルシウムとなっていく性質がある。そのため、凹凸再現層では、一部の水酸化カルシウムが炭酸化されて漆喰(炭酸カルシウム)となっている。このように、水酸化カルシウムと、水酸化カルシウムが炭酸化して生じる炭酸カルシウムとが混在していることを、本明細書においては、半固化状態の漆喰と呼ぶ。半固化状態の漆喰を有する凹凸再現層の表面は、多孔質且つ親水性である。従って、凹凸再現層上にインクジェット印刷を施すと、インク(顔料乃至染料)が凹凸再現層に浸透するとともに、凹凸再現層中に残存していた水酸化カルシウムが印刷インク中の水分に溶け出して表面に浮き上がる。その後、表面に浮き上がった水酸化カルシウムおよび凹凸再現層中に残っていた水酸化カルシウムが炭酸化し、凹凸再現層内に顔料乃至染料が取り込まれた状態で、完全に固化した漆喰が形成される。そのため、本発明の方法においては、凹凸再現層が印刷層としての機能も有することとなり、凹凸再現層上に直接インクジェット印刷を施すことが可能である。加えて、本発明により製造された絵画の複製物においては、炭酸カルシウムの薄層が保護層として機能し、顔料乃至染料が紫外線等での劣化を免れ、複製物の耐光性が向上する。
更に、本発明においては、凹凸再現層形成用のスラリー状混合物に水不溶性無機粉体も配合されている。水不溶性無機粉体は、スラリー状混合物にチキソトロピー性を付与する。かかるスラリー状混合物を用いて原画のマチエールに応じた凹凸を形成すると、凹凸の形状を維持したままスラリー状混合物の固化を進行させることができる。そのため、本発明の製造方法によれば、原画と同様の凹凸が維持された絵画の複製物を得ることができる。
更にまた、本発明においては、スラリー状混合物を塗布するだけで容易に凹凸再現層を形成することができ、更に凹凸再現層の上から直接インクジェット印刷により画像を印刷することができるので、絵画の複製物を容易に且つ低コストで得ることを可能にし、しかも、例えば製造枚数200枚以下のような小ロット製造にも適している。
本発明の絵画の複製物の一例を示す概略断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の製造方法により得られる絵画の複製物の一例を示す概略断面図である。図1の複製物は、基材シート1、補助画像2、凹凸再現層3およびインクジェット印刷像4から構成されている。以下、図1を参照し、本発明において、複製物を構成する各部材とその製造方法について説明する。
<基材シート>
基材シート1としては、その表面に後述するスラリー状混合物を塗布して凹凸再現層3を形成し得るものであれば特に制限されず、任意の材料を用いることができる。具体的には、基材シートとして、木材パルプ紙、または以下の樹脂等からなる樹脂製シート乃至フィルムを用いることができる。
ビニル系樹脂、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等;
アクリル系樹脂、例えばポリ(メタ)アクリレート等;
ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等;
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート等;
あるいは、基材シートとして、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の繊維状物からなる織布または不織布を用いることもできる。基材シートは、これらを2種類以上積層した積層フィルム乃至シートであってもよい。
上記基材シートのうち好適な基材シート1は、可撓性を有しており、適度な腰の強さを有しているものである。このような性質を有する基材シート1は、折り曲げても折り目が形成され難く、そのため、この基材シート1上に設けられる凹凸再現層3に割れ目が形成されるなどの不都合を有効に抑制することができるからである。このような好適な基材シート1としては、一般的に、和紙或いは画材紙のようなパルプ紙;ガラス繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の化学繊維をバインダー繊維としてパルプと混抄した合成紙;炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムとパルプを混抄した無機質紙;あるいは、基材紙上に半固化状態の漆喰を含む印刷層が形成された特許第5039701号に記載の印刷シート;を挙げることができる。これらの基材シートは、一般的に入手可能であり、可撓性や曲げ強さを有し、しかも凹凸再現層3との密着性を良好なものとすることができる。
尚、「基材紙上に半固化状態の漆喰を含む印刷層が形成された特許第5039701号に記載の印刷シート」とは、具体的には、基材紙上に設けられる印刷層が水酸化カルシウムを有しており、この水酸化カルシウムの一部が空気中の炭酸ガスと反応して漆喰(炭酸カルシウム)となっている、印刷シートを意味する。
基材シート1の表面は、コロナ処理などを行って親水性を向上させてもよい。これにより、凹凸再現層3と基材シート1との接合強度を向上させることができる。
基材シート1の厚みは原画の種類や目的とする複製物の種類に応じて適宜の範囲に設定されるが、通常、平均厚みが0.015〜0.5mmとなるように設定される。基材シートが厚すぎると、凹凸再現層形成後に絵画をインクジェット印刷する場合に、かかる凹凸再現層付き基材シートがプリンタを通過できない虞がある。基材シートが薄すぎると、最終的に得られる複製物の強度が低下する虞がある。
<補助画像の形成>
本発明においては、凹凸再現層3を形成する前に予め原画の凹凸情報を基材シート1の表面に印刷し、補助画像2を形成しておくことが好適である。補助画像2を基準にして凹凸再現層3を形成することで、具体的には、補助画像2を覆うようにスラリー状混合物を塗布することで、原画のマチエールがより高い精度で再現された絵画の複製物を得ることができるからである。凹凸情報とは、例えば、原画のうち最も厚みが薄い部分を基準として、この基準点における厚みと、原画の各位置における厚みの差を意味する。
基材シート1に原画の凹凸情報を印刷する方法としては、従来公知の印刷方法、例えばインクジェット印刷、レーザープリンタ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等を挙げることができる。複製物の製造枚数が少量(例えば10枚以下)の場合、インクジェット印刷が好適に用いられる。
印刷する原画の凹凸情報としては、グレースケール画像のデータが好ましい。グレースケール画像は、例えば、パーソナルコンピュータを用い、次の(1)〜(3)に示す工程により得られる。
(1)原画を高解像度で撮影し、原画の高解像度画像を得る。
(2)得られた高解像度画像を用いて、原画の凹凸状態を疑似3D画像に
変換する。
(3)得られた疑似3D画像をグレースケール画像に変換する。
グレースケール画像としては、絵具が厚塗りされているところほど黒く、絵具が薄く塗られているところほど白い、16階調のグレースケールであることが好ましい。また、図1に表されているように、基材シート1が白色である場合、グレースケール画像のうち白色の部分については、インクの塗布を省略して補助画像2を形成してもよい。
補助画像2の厚みは、最も厚い部分において20μm未満であることが好適である。補助画像2が厚すぎると、凹凸再現層3を形成する際、凹凸再現層の凹凸と補助画像由来の凹凸とが混在し、原画の忠実な複製が困難となる虞がある。
<凹凸再現層の形成>
本発明において、基材シート1(補助画像2を設ける場合は補助画像2)の上には凹凸再現層3が形成される。凹凸再現層3には、(1)油絵のような滑らかで且つ光沢がある表面となること、(2)基材シート1に密着し、乾燥工程やインクジェット印刷工程中のハンドリング操作によって剥離や亀裂が起きないこと、および(3)インクジェット印刷像形成時にインクを塗布又は吹き付けた場合に滲みや色むらが発生しないことが要求される。
上記の要求を満たす凹凸再現層3は、有機バインダー、レーザ回折散乱法で測定した通過分積算分布の体積基準メディアン径(d50)(以下、単に「d50」と呼ぶことがある。)が10μm以下の水酸化カルシウム粒子およびd50が5.0μm以下の水不溶性無機粉体を含有するスラリー状混合物を、原画の凹凸を反映するようにして塗布し、その後、適度に乾燥することにより容易に得られる。
凹凸再現層3の形成に用いられるスラリー状混合物は、水系またはアルコール系であることが好ましい。具体的には、かかるスラリー状混合物における媒体(溶媒乃至分散媒)として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらの媒体は、1種単独で用いてもよく或いは2種以上を混合して用いてもよい。
スラリー状混合物に配合される有機バインダーには、(1)スラリー状混合物を塗布しやすい粘度に保つこと、(2)無機粉体(水酸化カルシウムおよび水不溶性無機粉体)を均一に分散させること、(3)乾燥後に基材シート1(補助画像2を設ける場合は補助画像2)との接着性を高めること、(4)無機粉体の結着性を高めることが要求される。このような要求を満たす有機バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ウレタン樹脂を挙げることができるが、疎水性であるという観点から、アクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用される。
上記有機バインダーは、そのまま使用してもよいが、媒体(水、アルコール)に溶解した状態、或いはエマルジョンのように媒体に分散した状態にしてから使用してもよい。
スラリー状混合物中に存在する固形分中の有機バインダーの含有量は、得られる凹凸再現層に靭性とインク浸透性の両方を最大限付与する観点から、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
スラリー状混合物は、上記の有機バインダー以外に水酸化カルシウムと水不溶性無機粉体とを含有する。
水酸化カルシウムのメディアン径(d50)は10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。下限は特に限定されないが、一般に0.1μm以上であることが好ましい。このような粒径を有する水酸化カルシウムは、スラリー状混合物を滑らかに塗ることを可能にし、その結果、形成される凹凸再現層3に滑らかな表面を容易に与える。
本発明では、スラリー状混合物を塗布し、乾燥させて媒体(水、アルコール)を除去(揮発)することにより凹凸再現層3を形成するが、スラリー状混合物に含まれる一部の水酸化カルシウムは、空気中の炭酸ガスと反応し徐々に漆喰(炭酸カルシウム)となる。即ち、凹凸再現層3は、水酸化カルシウムが炭酸化して生じる炭酸カルシウム(漆喰)と、まだ炭酸化が行われていない水酸化カルシウムとを含む半固化状態の漆喰を有する。この凹凸再現層3上に画像を印刷してインクジェット印刷像4を形成させ、空気中に放置すると、残存する水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して漆喰(炭酸カルシウム)となり、さらに固化が進行する。このとき、インク中に含まれていた色材の一部が生成する漆喰(炭酸カルシウム)に取り込まれ、その結果、紫外線等による色材の劣化抑制効果が発揮されることとなり、得られる絵画の複製物の耐光性が向上する。このように、得られた凹凸再現層3を画像印刷後に大気中に放置すると、凹凸再現層3中に残存していた水酸化カルシウムが炭酸化していき、最終的には凹凸再現層3が完全に固化する。
スラリー状混合物中に存在する固形分中の水酸化カルシウム含有量は、凹凸再現層3中の水酸化カルシウム量が後述の数値範囲となるように適宜決定されるが、通常は、10〜70質量%が好ましく、15〜60質量%が特に好ましい。
スラリー状混合物には、水不溶性無機粉体も含まれる。ここで、水不溶性無機粉体とは、25℃における水100gに対する溶解度が0.1g以下の無機粉体をいう。このような水不溶性無機粉体を用いた場合、水性インクで描画する際に凹凸再現層がインク中の水により膨潤したり溶解したりすることがなく、凹凸再現層の形状を強固に保持することができる。水不溶性無機粉体としては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられるが、白色度が高く、印刷画像を形成したときに鮮明な画像が得られるという観点から、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは硫酸カルシウムが好適に使用され、コストの観点から、特に酸化アルミニウムが好適に使用される。水不溶性無機紛体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
水不溶性無機粉体の粒径は、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が5.0μm以下である必要があり、2.0μm以下であることが好ましい。かかる粒径の水不溶性無機粉体をスラリー状混合物に配合すると、スラリー状混合物にチキソトロピー性(撹拌等をすると粘度が低下してゾル化し、静置すると粘度が上昇してゲル化する性質)を付与し、凹凸再現層3の形成を容易にすることができるからである。スラリー状混合物のチキソトロピー性が高いと、スラリー状混合物を塗布した直後、スラリー状混合物が凸部分から凹部分へ流れることがなく、塗布直後の凹凸を保ったまま乾燥することができ、原画に同調した凹凸再現層3を形成することができる。
スラリー状混合物中に存在する固形分中の水不溶性無機粉体の量は、10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。水不溶性無機粉体が少なすぎると、スラリー状混合物のチキソトロピー性が十分に発現されない虞がある。水不溶性無機粉体が多すぎると、得られる凹凸再現層の靱性が低く、基材シート(補助画像を形成する場合は補助画像)との接着性が低下し、印刷工程などのハンドリングの際に凹凸再現層の一部が剥がれたり、欠落したりするなどの不都合が生じる傾向が強い。
スラリー状混合物中には、上記の有機バインダー、無機粉体および媒体以外に、物性を調整するための各種添加剤、例えば界面活性剤、高分子分散剤等が配合されていてよい。これらの添加剤は、スラリー状混合物の安定性を向上させたり、印刷層としても機能する凹凸再現層3の印刷特性を向上させたりすることを目的として添加される。
界面活性剤は、スラリー状混合物中に配合される有機バインダーや無機粉体等を媒体(水、アルコール)に安定に均一分散させるために使用される。
界面活性剤は、特にスラリー状混合物が水系の場合に添加される。この場合、界面活性剤は、水に可溶なものであれば良く、イオン性、両性及びノニオン性のいずれの界面活性剤も使用できる。界面活性剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。配合量は、良好な分散が確保されるように適宜決定される。
イオン性界面活性剤としては、以下のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が代表的である。
アニオン性界面活性剤;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク
酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ア
ンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ア
ンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル
、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル等
カチオン性界面活性剤;
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデ
シルアンモニウムクロライド等
両性界面活性剤の代表例としては以下のものを挙げることができる。
ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等
ノニオン系界面活性剤の代表例としては以下を挙げることができる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキ
ルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポ
リマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ
ンソルビタン脂肪酸エステル等
また、高分子分散剤は、スラリー状混合物が水系の場合に添加することが好ましい。高分子分散剤としては、分子量が大きく、親水性であり、水酸化カルシウムや水不溶性無機粉体を分散し得るものであれば特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。その代表例としては、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩等を挙げることができる。これらの中でもポリカルボン酸塩が好適に使用される。
ポリカルボン酸塩としては、以下のものを例示することができる。
スチレン−無水マレイン酸共重合体またはその部分エステルの塩(
特開平1−92212号参照)、
アリルエーテル−無水マレイン酸共重合体またはその誘導体の塩(
特開昭63−285140号参照)、
(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体または
その誘導体の塩(特開昭58−74552号、特開平1−22675
7号等参照)、
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体またはその誘導体の塩(特
開昭60−103062号参照)、
これらのポリカルボン酸塩の側鎖にアルキレングリコール鎖がグラ
フト結合したもの(特開2007−332027号参照)
また、塩の形態としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、低級アミン塩、低級アルカノールアミン塩などを例示することができる。本発明においては、これらポリカルボン酸類の中でもアルキレングリコール鎖を有するものが好適に使用される。ポリカルボン酸塩の質量平均分子量は1000〜10万の範囲にあることが好適である。
高分子分散剤は、無機粉体あたり0.5〜10質量%の量で使用することが好ましい。高分子分散剤の使用量が少なすぎると、分散効果が十分に発現されない虞がある。一方、高分子分散剤を必要以上に多量に使用すると、消石灰(水酸化カルシウム)の水性スラリーの粘性が経時と共に大きく変化するようになり、得られるスラリー状混合物が不安定となる虞がある。
スラリー状混合物は、媒体中に、上述の有機バインダー、水酸化カルシウム、水不溶性無機粉体及び必要により使用される添加剤を投入し、適量の媒体と混合することにより調整される。各材料及び媒体は一斉に投入してもよく、或いは、有機バインダーと媒体とを投入・撹拌してから残りの材料を投入してもよい。混合は、公知の方法に従って行えばよい。
スラリー状混合物の粘度は、媒体の添加量によって調整することができる。スラリー状混合物の粘度は、凹凸再現層を形成するために5〜100Pa・Sに調整されることが好ましい。
このようにして得られたスラリー状混合物は、基材シート1(補助画像2を設ける場合は補助画像2)の上に塗布され、その後乾燥されて、凹凸再現層3となる。
塗布は、具体的には、スクリーン印刷やグラビア印刷等の各種印刷手段を用いたり、あるいは、筆、刷毛、ヘラなどの絵画用具を用いて、原画の凹凸に対応する凹凸を形成するようにして行えばよいが、筆、刷毛、ヘラなどの絵画用具を用いて原画の凹凸に対応する凹凸を形成するようにスラリー状混合物を塗布することが好ましい。また、スラリー状混合物は、基材シート1全体に塗布されてもよいが、原画のマチエールの態様によっては、基材シート1上に部分的にスラリー状混合物を塗布してもよい。詳述すると、例えば日本画には、絵画の大部分は平面的に描かれ、ある一部分だけに絵具と膠とが厚く塗られているというような作品があるが、このように原画が部分的に凹凸を有しているような場合には、スラリー状混合物もまた部分的に塗布すればよい。このとき凹凸再現層3は、基材シート1(補助画像2を形成する場合は補助画像2)の上に部分的に存在することとなる。
乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥等公知の方法により行えばよいが、短時間で乾燥を行う観点から加熱乾燥が好ましく、基材シートの変形等が生じないという観点から、40〜120度での加熱乾燥がより好ましい。乾燥は、凹凸再現層3中の媒体(水、アルコール)含有率が5%以下となる程度に行えばよい。
凹凸再現層3の厚さとしては、最も厚い部分が50〜500μmであることが好適である。凹凸再現層3の厚さが薄すぎると、視覚により凹凸感を感じることができず、マチエールにより原画が有する優美さ等の特徴を複製物に付与できない虞がある。厚さが厚すぎると、後述するインクジェット印刷の際の搬送性が損なわれる虞があり、加えて、インクジェットのプリンタヘッドと凹凸再現層3が接触して凹凸再現層3が欠落する虞も生じる。凹凸再現層3の厚さは、スラリー状混合物の塗布量により調整することができる。
凹凸再現層3における重合体(ポリマー)の固形分量は、インクジェット印刷の前の段階で、5〜40質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%であることが好適である。スラリー状混合物を塗布・乾燥させて得られる凹凸再現層3において、有機バインダー中の媒体(水、アルコール)は蒸発しているが、重合体成分は残存している。残存した重合体成分には、凹凸再現層3の靭性を高め、基材シート1(補助画像2を設ける場合は補助画像2)との接着性を高める効果があるが、一方で、重合体の固形分(即ちポリマー)が凹凸再現層3に過度に存在すると、印刷画像(印刷インク)の凹凸再現層3への浸透性を低下させる虞がある。よって、重合体量が上記範囲にある凹凸再現層3は、靱性と浸透性のバランスに優れている。
凹凸再現層3は、水酸化カルシウムが完全に炭酸化して固化する前の半固化状態であればよく、具体的には、凹凸再現層3中の水酸化カルシウム量が、印刷直前において10〜70質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることが更に好ましい。水酸化カルシウムの含有量が上記範囲よりも少ないと、得られる画像の耐光性が低下し、退色などを生じ易くなる傾向がある。即ち、印刷を行なったとき、印刷インク中に溶出して表面に移行する水酸化カルシウムの量が少なくなるため、印刷画像の保護効果が低下し、紫外線等による印刷画像の劣化抑制効果の低下が生じる。また、水酸化カルシウムの量が多すぎると、凹凸再現層の靱性が低下することなり、印刷工程中に凹凸再現層の破損等を生じ易くなる。
凹凸再現層3中の水酸化カルシウムの量の調整は、凹凸再現層の形成に用いる水酸化カルシウム質量割合や、その炭酸化率(前述したスラリーの調製に用いた水酸化カルシウムの質量に対する、生成した炭酸化カルシウムの質量割合)、あるいは、有機バインダーや水不溶性無機粉体等の割合の調節によって行うことができる。
上記調整方法のうち、凹凸再現層3の形成に用いる水酸化カルシウムの炭酸化率を調整する方法を採用する場合、炭酸化率の上限は、60%、特に40%とすることが望ましい。即ち、炭酸化が過度に進みすぎた場合、凹凸再現層の表面が緻密化され、印刷インクの浸透性が低下する傾向がある。尚、炭酸化による表面の緻密化の程度は、例えば凹凸再現層表面の耐摩擦度によって判定することができる。
凹凸再現層3中の水酸化カルシウムの量は、示差熱分析や強熱減量法により確認することができる。
尚、水酸化カルシウムの炭酸化反応は炭酸ガスとの接触により進行するが、凹凸再現層3を形成した後に非通気性の袋や容器等に密封状態で保存し、大気中の炭酸ガスとの接触を断っている限り、所定の炭酸化率を維持し、凹凸再現層3中の水酸化カルシウム量を一定の範囲に保持することができる。
凹凸再現層3中の水不溶性無機粉体の量は、スラリー状混合物に配合する水不溶性無機粉体の量によって適宜決定されるが、通常は、インクジェット印刷の前の段階で、10〜60質量%であることが好ましい。
<インクジェット印刷像の形成>
凹凸再現層3形成後、原画の画像をインクジェットにより印刷し、インクジェット印刷像4を形成する。原画の画像を印刷するには、非接触式のインクジェットプリンタを用いるのが好適である。本発明においては、凹凸再現層3がインクジェット印刷の印刷層としての機能も発揮するように、凹凸再現層3の組成等の条件が調整されており、従って、かかる凹凸再現層3上に画像を印刷すると、原画に忠実で、インクの滲みや色むらがなく、更に表面が滑らかで艶感のあるインクジェット印刷像4が得られる。
<絵画のインクジェット複製物>
インクジェット印刷像形成後放置(通常、1〜30日間)して、凹凸再現層3の表面および内部に残存している水酸化カルシウムを完全に漆喰(炭酸カルシウム)とすることで、原画の凹凸や質感といったマチエールが忠実に再現された、絵画のインクジェット複製物(以下、本発明の複製物と呼ぶことがある。)が得られる。
本発明の複製物は、基材シート、凹凸再現層およびインクジェット印刷像をこの順で有している。更に、製造時に補助画像として例えばグレースケール画像を形成した場合は、基材シートと凹凸再現層との間にグレースケール画像も有している。
本発明の複製物中の凹凸再現層は、原画となる絵画の凹凸を反映した凹凸を有している。本発明の複製物中の凹凸再現層は、炭酸カルシウムと、d50が5.0μm以下の水不溶性無機粉体とを含有している。即ち、上述の通り、インクジェット印刷像形成後の放置期間中に、凹凸再現層の表面および内部に存在していた全ての水酸化カルシウムは炭酸化され、漆喰(炭酸カルシウム)となっている。そのため、本発明の複製物における凹凸再現層は、水酸化カルシウムが炭酸化した炭酸カルシウムを含有することとなる。更に、本発明の複製物中の凹凸再現層には、チキソトロピー性を付与するためスラリー状混合物に配合されていた水不溶性無機粉体がそのまま残っている。
このような特徴を有する本発明の複製物には、複製画だけでなくポストカード、メッセージカード、ポスター、パンフレット等も含まれる。本発明の効果が最大限に発揮されるという観点からは、複製画が好適である。複製画には、原画と同じ大きさだけでなく、原画を縮小あるいは拡大した大きさのものも含まれる。
本発明の優れた効果を、次の実験例で説明する。以下に、実験例で用いた各試験方法および材料を示す。尚、本実施例において「d50」とは、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径を意味する。
(1)複製画の質感(凹凸)と艶感(光沢)の評価
(a)各実験例で作製した複製画と原画(油絵)とを目視で比較し、以下の基準に基づいて質感(凹凸)の評価を行った。
良い :原画と同様の質感が忠実に再現されている。
良くない:原画と同様の質感がやや再現されている。
悪い :原画と同様の質感が全く再現されていない。
(b)各実験例で作製した複製画と原画(油絵)とを目視で比較し、以下の基準に基づいて艶感(光沢)の評価を行った。
良い :原画と同様の艶感が忠実に再現されている。
良くない:原画と同様の艶感がやや再現されている。
悪い :原画と同様の艶感が全く再現されていない。
(2)イエローインキ耐候性評価
各実験例に示す条件で製造されたスラリー状混合物を、各実験例で用いる基材シート(300mm×300mm)上に乾燥後の厚さが100〜150μmとなるようにローラ刷毛(ナイロン製短毛)で塗布し、凹凸再現層を有する試験体を製作した。次に、インクジェットプリンタ(エプソン製PX−5600型、顔料が分散された水性インク使用)により、イエロー(濃度:黄色100%)を全面に印刷した。1時間乾燥後、印刷されたシートを100mm×100mmの大きさに2枚カットした。1枚(紫外線照射試験体)を紫外線照射用蛍光ランプ(三菱電機製「ネオルミスーパー」、型式:FL30SBL−360)により、500μW/cmの強度の紫外線を4カ月間照射し、残りの1枚(暗所保存試験体)は暗所に保存した。
紫外線を照射した紫外線照射試験体と暗所に保存した暗所保存試験体を取り出し、分光色差計(日本電色工業製、ハンディ型簡易分光色差計、型番:NF333)を用い、JIS Z 8730に準じて、紫外線照射試験体と暗所保存試験体のイエローのL*、a*、b*表色系における色差(△E)を求めた。尚、色の変化が大きい場合、色差(△E)が大きくなる。
(3)印刷画像のにじみ評価
各実験例に示す条件で製造されたスラリー状混合物を、各実験例で用いる基材シート(300mm×300mm)上に乾燥後の凹凸再現層の厚さが100〜150μmとなるようにローラ刷毛(ナイロン製短毛)で塗布し、凹凸再現層を有する試験体を製作した。次に、インクジェットプリンタ(エプソン製PX−5600型、顔料が分散された水性インク使用)により、記録紙の表面に、マゼンタ(色濃度:100%)シアン(色濃度:100%)、イエロー(色濃度:100%)、マットブラック(色濃度:100%)の4色について一辺が10mmの正方形を別々に印刷して、24時間室内にて放置し、試験体を得た。
得られた試験体をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−5000型)を用いてパーソナルコンピュータに読み込み、デジタル画像を取得し、画像処理ソフトを用いて各色のピクセル数を測定し4色の合計値を求めた。比較としてインクジェット専用紙(エプソン純正品)に同様に印刷した場合の各色のピクセル数を測定し4色の合計値を求めた。試験体とインクジェット専用紙の合計ピクセル値から下記式によりにじみ率(SR)を算出した。尚、試験体のにじみがインクジェット専用紙のにじみと同程度であればSR=1となり、試験体のにじみがインクジェット専用紙に比べて大きい場合、にじみ率(SR)が大きくなる。
SR=P1/P0
SR:にじみ率(−)
P1:試験体に印刷した4色の合計ピクセル数(ピクセル)
P0:インクジェット専用紙に印刷した4色の合計ピクセル数(ピク
セル)
(4)炭酸化率の測定
強熱減量法により、凹凸再現層中の水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを定量し、水酸化カルシウムの炭酸カルシウムへの変化率を炭酸化率として算出した。
<各実験例で用いられた材料>
基材シート;
基材シートA:インクジェット原紙(富士共和製紙製FKスラットR−
IJ、厚み:0.17mm、目付量:160g/m
基材シートB:基材シートAの一方の表面に半固化状態の漆喰を含む層を
有するインクジェット紙(トクヤマ製フレスコジクレー、
厚み:0.40mm)
水酸化カルシウム;
水酸化カルシウムA:高純度消石灰分級品(宇部マテリアルズ製、d50
:2.0μm)
水酸化カルシウムB:JIS特号消石灰分級品(宇部マテリアルズ製、
d50:29.3μm)
水不溶性無機粉体;
水不溶性無機粉体A:酸化アルミニウム(アルミナ1水和物)(大明化
学工業製ベーマイトC06、d50:0.7μm)
水不溶性無機粉体B:二酸化ケイ素{トクヤマ製エクセリカ(分級品)、
d50:1.5μm}
水不溶性無機粉体C:炭酸カルシウム(白石カルシウム製ホワイトンSB
、d50:2.0μm)
水不溶性無機粉体D:硫酸カルシウム2水和物{和光純薬製(粉砕分級品
)、d50:2.6μm}
水不溶性無機粉体E:酸化アルミニウム(和光純薬工業製アルミナ1水和
物、d50:25μm)
有機バインダー;
有機バインダーA:水性アクリル樹脂エマルジョン(旭化成工業株式会社
製ポリトロン、固形分濃度:40質量%)
有機バインダーB:水性酢酸ビニル系エマルジョン(日信化学工業株式会
社製ビニブラン、固形分濃度:44質量%)
分散剤;
分散剤A:ポリカルボン酸コポリマー(竹本油脂製チューポールSSP、
固形分濃度:40質量%)
<実験例1>
図1に示される複製画を次の方法に従って製造した。
(補助画像2の形成)
予め作成していた原画(油絵)の凹凸情報のグレースケール画像を、A3サイズにカットした基材シートA(パルプ紙)の一方の表面にインクジェットプリンタで印刷し、室温で5時間乾燥させ、補助画像2を有する基材シートAを得た。尚、このときの補助画像2の厚みは3ミクロン以下であった。
(スラリー状混合物の作製)
有機バインダーA150質量部(固形分の量で60質量部)、水酸化カルシウムA150質量部、水不溶性無機粉体A(酸化アルミニウム、d50:0.7μm)150質量部および分散剤A5質量部を秤取り、水を添加しながらホバートミキサーで10分混錬し、粘度が64Pa・sのスラリー状混合物を得た。このスラリー状混合物の組成を表1に示す。
(凹凸再現層3の形成)
得られたスラリー状混合物を、補助画像2を有する基材シートA上に、市販の4号の硬毛筆を用いて補助画像2の凹凸情報に従って塗布し、乾燥させて、凹凸再現層3を形成した。尚、このときの凹凸再現層3の最大高さは、240μmであった。得られた凹凸再現層3の組成をICP発光分光分析法および強熱減量法(炭酸化の測定)等で測定した。測定結果を表2に示す。
(インクジェット印刷像4の形成)
続いて、得られた凹凸再現層3を有する基材シートAの上に、インクジェットプリンタ(エプソン製PX−5600型、顔料が分散された水性インク使用)を用いて原画の画像をインクジェット印刷し、インクジェット印刷像4を形成した。室内にて24時間乾燥後、原画(油絵)の凹凸に同調した凹凸を有する複製画を得た。
(複製画の評価)
前述の複製画の質感(凹凸)と艶感(光沢)の評価方法に従って、評価を行った。その結果を表3に示す。
(凹凸再現層3の評価)
前述の印刷画像のにじみ評価方法、およびイエローインキ耐候性評価方法に従って評価を行った。結果を表3に示す。
<実験例2>
実験例1において用いた基材シートAを基材シートBに代え、且つ有機バインダーAを有機バインダーBに代えたこと以外は実験例1と同様の操作を行い、複製画を製造した。製造した複製画について、複製画の評価と凹凸再現層3の評価を行った。結果を表3に示す。
<実験例3〜8>
実験例2において、スラリー状混合物を表1の組成に従って製造した以外は同様の操作を行い、複製画を製造した。製造した複製画について、複製画の評価と凹凸再現層3の評価を行った。結果を表3に示す。
<実験例9>
実験例1において、水酸化カルシウムAを水酸化カルシウムBに代えたこと以外は同様の操作を行い、複製画を製造した。製造した複製画について、複製画の評価と凹凸再現層3の評価を行った。結果を表3に示す。
<実験例10>
実験例1において、水不溶性無機粉体Aを水不溶性無機粉体Eに代えたこと以外は同様の操作を行い、複製画を製造した。製造した複製画について、複製画の評価と凹凸再現層3の評価を行い、その結果を表3に示す。
<実験例11>
実験例1において、水酸化カルシウムAを水不溶性無機粉体Eに代えたこと以外は同様の操作を行い、複製画を製造した。製造した複製画について、複製画の評価と凹凸再現層3の評価を行い、その結果を表3に示す。
1:基材シート
2:補助画像
3:凹凸再現層
4:インクジェット印刷像

Claims (7)

  1. 基材シート上に、有機バインダーと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が10μm以下の水酸化カルシウムと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準のメディアン径(d50)が5.0μm以下の水不溶性無機粉体とを含有するスラリー状混合物を用いて、原画となる絵画の凹凸を反映した凹凸を有する凹凸再現層を形成し、
    該凹凸再現層上に前記絵画をインクジェットにより印刷することを特徴とする絵画の複製物の製造方法。
  2. 前記有機バインダーが、アクリル樹脂、スチレンーアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種類の樹脂からなる、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記基材シート上にインクジェットで補助画像を印刷し、
    次いで、該補助画像を基準にして前記凹凸再現層を形成する、請求項1記載の製造方法。
  4. 前記基材シートが、半固化状態の漆喰を含む層が基材紙上に形成されたものである、請求項1記載の製造方法。
  5. 前記絵画の複製物が複製画である、請求項1記載の製造方法。
  6. 絵画のインクジェット複製物において、
    基材シートと、該基材シート上に形成され且つ前記絵画の凹凸が反映された凹凸再現層と、該凹凸再現層上に形成された前記絵画のインクジェット印刷像とから成り、
    前記凹凸再現層が、炭酸カルシウムと、レーザ回折散乱法で測定した体積基準でのメディアン径(d50)が5.0μm以下の、炭酸カルシウムとは異なる水不溶性無機紛体とを含むことを特徴とする、絵画のインクジェット複製物。
  7. 前記基材シート上に、補助画像として、前記絵画の凹凸を表すグレースケール像が形成されており、該グレースケール画像を覆うように、前記凹凸再現層が形成されている、請求項6記載のインクジェット複製物。
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