[第1の実施の形態]
以下、本発明のアンテナ装置の一態様としての周波数共用アンテナ装置の第1の実施の形態を、図面を参照して説明する。この周波数共用アンテナ装置は、携帯電話機用の基地局アンテナとして用いられる。なお、以下の説明では、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置を高周波信号の送信に用いる場合について説明するが、この周波数共用アンテナ装置を受信のために用いることも可能である。
(周波数共用アンテナ装置の機能構成)
図1A〜図1Dは、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置の機能構成を示す概略図である。この周波数共用アンテナ装置は、1.5〜2GHz帯の水平偏波及び垂直偏波、ならびに700〜800MHz帯の水平偏波及び垂直偏波の各高周波信号を送信することが可能である。以下、1.5〜2GHz帯を第1周波数帯とし、700〜800MHz帯を第2周波数帯とする。
図1Aは第1周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第1送信部1Aの構成例を示す概略構成図である。この第1送信部1Aは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Aに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1水平偏波アンテナ素子15Aに分配するように構成されている。
具体的には、第1送信部1Aは、端子部10Aに入力された信号を分配する第1分配線路11Aと、第1分配線路11Aによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Aと、第2分配線路12Aによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Aと、第3分配線路13Aによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Aとを備えている。
また、第1分配線路11Aと第2分配線路12Aとの間、及び第2分配線路12Aと第3分配線路13Aとの間には、それぞれ複数の移相器20が設けられている。この移相器20によって信号の位相を変化させることにより、複数の第1水平偏波アンテナ素子15Aから放射される電波の指向性を調節することが可能である。移相器20の構成については後述する。
またさらに、第2分配線路12A又は第3分配線路13Aと第4分配線路14Aとは、後述する接続部材としての接続ピン30によって接続されている。
図1Bは、第1周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第2送信部1Bの構成例を示す概略構成図である。この第2送信部1Bは、第1送信部1Aと同様に構成されている。すなわち、第2送信部1Bは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Bに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1垂直偏波アンテナ素子15Bに分配するように構成されている。
具体的には、第2送信部1Bは、端子部10Bに入力された信号を分配する第1分配線路11Bと、第1分配線路11Bによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Bと、第2分配線路12Bによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Bと、第3分配線路13Bによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Bとを備え、第1分配線路11Bと第2分配線路12Bとの間、及び第2分配線路12Bと第3分配線路13Bとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12B又は第3分配線路13Bと第4分配線路14Bとは、接続ピン30によって接続されている。
図1Cは、第2周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第3送信部1Cの構成例を示す概略構成図である。この第3送信部1Cは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Cに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2水平偏波アンテナ素子15Cに分配するように構成されている。
具体的には、第3送信部1Cは、端子部10Cに入力された信号を分配する第1分配線路11Cと、第1分配線路11Cによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Cと、第2分配線路12Cによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Cと、第3分配線路13Cによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Cとを備え、第1分配線路11Cと第2分配線路12Cとの間、及び第2分配線路12Cと第3分配線路13Cとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12C又は第3分配線路13Cと第4分配線路14Cとは、接続ピン30によって接続されている。
図1Dは、第2周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第4送信部1Dの構成例を示す概略構成図である。この第4送信部1Dは、第3送信部1Cと同様に構成されている。すなわち、第4送信部1Dは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Dに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2垂直偏波アンテナ素子15Dに分配するように構成されている。
具体的には、第3送信部1Dは、端子部10Dに入力された信号を分配する第1分配線路11Dと、第1分配線路11Dによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Dと、第2分配線路12Dによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Dと、第3分配線路13Dによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Dとを備え、第1分配線路11Dと第2分配線路12Dとの間、及び第2分配線路12Dと第3分配線路13Dとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12D又は第3分配線路13Dと第4分配線路14Dとは、接続ピン30によって接続されている。
以下、第1水平偏波アンテナ素子15A,第1垂直偏波アンテナ素子15B,第2水平偏波アンテナ素子15C,第2垂直偏波アンテナ素子15Dを総称して、アンテナ素子15という。
(周波数共用アンテナ装置の構成)
図2は、周波数共用アンテナ装置1の外観を示す外観斜視図である。図3は、周波数共用アンテナ装置1のレドーム10の内部を示す構成図である。
周波数共用アンテナ装置1は、高周波信号を伝送及び分配する伝送線路100と、伝送線路100によって分配された高周波信号を送信可能な複数のアンテナ素子15と、移相器20の誘電体(後述する第1の誘電体板21及び第2の誘電体板22)を移動させる移動機構2と、FRP(fiber reinforced plastics)等の絶縁性の樹脂からなるレドーム10とを備えている。
レドーム10は、両端がアンテナキャップ(不図示)によって閉塞される円筒状であり、その長手方向が鉛直方向となるように一対の取付金具10aによってアンテナ塔等に取り付けられる。伝送線路100、複数のアンテナ素子15、及び移動機構2は、レドーム10内に配置されている。
伝送線路100は、複数対の板状導体の間にそれぞれ中心導体を挟んでなるトリプレート構造を有している。本実施の形態では、伝送線路100が、電気的に接地された複数対の板状導体として第1乃至第3のグランド板41〜43を備え、第1乃至第3のグランド板41〜43のうち、対をなす第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に第1の中心導体51が配置され、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に第2の中心導体52が配置されている。
第1乃至第3のグランド板41〜43は、互いに平行に積層され、第1のグランド板41と第3のグランド板43がそれぞれ最外層に位置し、第2のグランド板42は第1のグランド板41と第3のグランド板43との間に位置している。また、第1乃至第3のグランド板41〜43は、レドーム10の中心軸方向に長手方向を有する長板状である。なお、図3では、第1乃至第3のグランド板41〜43ならびに第1及び第2の中心導体51,52の間に配置された後述するスペーサ等の部材の図示を省略している。レドーム10の中心軸方向の長さは、例えば1〜2.7mである。
第1のグランド板41の長手方向の両端部には、第1のグランド板41をレドーム10に固定するための固定金具10bが固定されている。固定金具10bは、取付金具10aとの間にレドーム10を挟み、ボルト10cによってレドーム10に締結されている。
図4及び図5は、レドーム10内において、第3のグランド板43上に配置された複数のアンテナ素子15を示し、図4は全体図、図5は部分斜視図である。なお、第3のグランド板43は、周波数共用アンテナ装置1の使用状態において、図4の図面上方が鉛直方向上側になるように設置される。
複数のアンテナ素子15は、放射素子として機能する図略の配線パターンが板状の誘電体に形成されたプリント基板からなるプリントダイポールアンテナである。複数のアンテナ素子15のうち、第1水平偏波アンテナ素子15Aと第1垂直偏波アンテナ素子15Bとは、十字状に交差して配置されている。第2水平偏波アンテナ素子15Cは、その基板面が水平方向となるように配置されている。第2垂直偏波アンテナ素子15Dは、水平方向に向かい合う一対のプリント基板によって構成されている。
複数のアンテナ素子15は、ボルト431及びナット432によって第3のグランド板43に固定されたL字状の取付金具433により、第3のグランド板43に対して垂直に固定されている。
また、複数のアンテナ素子15には、第3のグランド板43に形成された開口を挿通する図略の凸部が設けられ、この凸部を介して放射素子として機能する配線パターンが第2の中心導体52に電気的に接続されている。
図6は、第1の中心導体51の一部を示す斜視図である。第1の中心導体51は、例えばガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂(誘電体)からなる第1の基板510の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1D(図1参照)の第1分配線路11A,11B,11C,11D、第2分配線路12A,12B,12C,12D、及び第3分配線路13A,13B,13C,13Dは、第1の中心導体51によって構成されている。また、第1の中心導体51は、後述する移相器20の一部を構成している。
図7は、第2の中心導体52の一部を示す斜視図である。第2の中心導体52も、第1の中心導体51と同様に、ガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂(誘電体)からなる第2の基板520の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1Dの第4分配線路14A,14B,14C,14Dは、第2の中心導体52によって構成されている。
第1の基板510及び第2の基板520の厚みは、例えば0.8mmである。なお、第1の中心導体51としての配線パターンは、第1の基板510の両面に設けられていてもよく、一方の面のみに設けられていてもよい。同様に、第2の中心導体52としての配線パターンは、第2の基板520の両面に設けられていてもよく、一方の面のみに設けられていてもよい。
図8A及び図8Bは、伝送線路100における第1乃至第3のグランド板41〜43の固定構造及び第1乃至第2の基板510,520の支持構造を説明するための説明図である。図8Aは伝送線路100の組み付け前の状態を示し、図8Bは伝送線路100の組み付け後の状態を示している。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ金属スペーサ50が配置されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50は、第1の基板510に形成された挿通孔510aを挿通している。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ50は、第2の基板520に形成された挿通孔520aを挿通している。
金属スペーサ50は、導電性を有し、例えば銅メッキ又は錫メッキされた黄銅からなる。また、金属スペーサ50は、軸部501と雄ねじ部502とを一体に有し、軸部501には、ねじ穴500が形成されている。図8A及び図8Bでは、このねじ穴500を破線で示している。本実施の形態では、金属スペーサ50の軸部501が六角柱状であるが、軸部501は円柱状であってもよい。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、ならびに第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ金属スペーサ50の軸部501が介在し、この軸部501の長さに応じた空間が形成されている。軸部501の長さは、例えば5.0mmである。第1乃至第3のグランド板41〜43は、金属スペーサ50によって互いに電気的に接続されている。すなわち、金属スペーサ50は、第1乃至第3のグランド板41〜43の間を電気的に接続する本発明の接地導体の一態様である。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502には、ナット54が螺合する。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502が螺合する。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、ボルト55の雄ねじ部551が螺合する。
第1乃至第3のグランド板41〜43には、金属スペーサ50の雄ねじ部502又はボルト55の雄ねじ部551を挿通させる挿通孔41a,42a,43aがそれぞれ形成されている。
このように、伝送線路100は、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55が相互に固定されることにより、第1乃至第3のグランド板41〜43がそれぞれ所定の間隔を以って互いに平行に配置される。なお、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55からなる固定構造は、伝送線路100の複数箇所に設けられ、第1乃至第3のグランド板41〜43の間隔が一定に保たれている。
第1の基板510は、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第2の基板520は、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第1の基板510を支持する樹脂スペーサ56は、第1の基板510の両面に例えば接着によって固定されている。同様に、第2の基板520を支持する樹脂スペーサ56は、第2の基板520の両面に例えば接着によって固定されている。それぞれの樹脂スペーサ56の厚さは、例えば2.1mmである。
図9は、第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続構造を示す概略図である。第2のグランド板42を挟んで配置された中心導体同士(第1の中心導体51と第2の中心導体52)は、第2のグランド板42に形成された接続ピン挿通孔42bに挿通された軸状の接続部材としての接続ピン30によって電気的に接続されている。
接続ピン30は、例えば銅や黄銅等の良導電性の金属からなる。本実施の形態では、接続ピン30が円柱状の部材であるが、これに限らず、例えば四角柱状や六角柱状であってもよい。接続ピン30は、その両端部が第1の基板510に形成された挿通孔510b及び第2の基板520に形成された挿通孔520bにそれぞれ挿通され、第1の中心導体51及び第2の中心導体52に半田付けされている。
この接続ピン30を用いた接続構造により、第1送信部1Aの第3分配線路13Aと第4分配線路14A、第2送信部1Bの第3分配線路13Bと第4分配線路14B、第3送信部1Cの第3分配線路13Cと第4分配線路14C、及び第4送信部1Dの第3分配線路13Dと第4分配線路14Dがそれぞれ接続される。
(接続ピンの保持構造)
図10Aは、接続ピン30を保持する保持部材6を示す上面図、側面図、及び下面図である。図10Bは、保持部材6の斜視図である。本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置1は、接続ピン30を保持する保持部材6を備え、この保持部材6に形成された保持孔60に接続ピン30が挿通されている。保持部材6は、フッ素樹脂等の絶縁性の樹脂材料からなる。
保持部材6は、図9に示すように、第2のグランド板42の接続ピン挿通孔42bに挿通されている。また、保持部材6は、接続ピン挿通孔42bよりも大径の大径筒部61と、接続ピン挿通孔42bよりも小径の小径筒部62とを有し、大径筒部61と小径筒部62との間の段差面6aが第2のグランド板42に対向している。
また、保持部材6は、保持孔60の中心軸線C1方向における大径筒部61側の端面6bが第1の基板510に接触し、同じく中心軸線C1方向における小径筒部62側の端面6cが第2の基板520に接触している。保持部材6の両端面6b,6cは、中心軸線C1に対して垂直な平坦面である。保持部材6は、両端面6b,6cが第1の基板510及び第2の基板520に接触することにより、中心軸線C1が第2のグランド板42に対して直交して配置される。
図11Aは、接続ピン30が保持部材6の保持孔60内で傾斜した状態を示す断面図である。接続ピン30の傾きは、保持孔60の内面60aへの接触により規制されている。つまり、接続ピン30が第2のグランド板42に対して傾くと、接続ピン30の外周面30aが保持孔60の内面60aに接触し、さらなる接続ピン30の傾きが抑止される。本実施の形態では、接続ピン30の第2のグランド板42に対する傾きが保持部材6によって3°以内に規制されている。
図11Bは、接続ピン30の第2のグランド板42に対する傾斜角θと、この接続ピン30を介して伝搬する信号の位相ずれとの関係を示すグラフである。接続ピン30が傾くと、信号伝搬特性が変化することにより、接続ピン30において意図しない信号の位相ずれが発生してしまう。この位相ずれは、図11Bに示すように、保持孔60の中心軸線C1及び接続ピン30の中心軸線C2を含む断面における中心軸線C1と中心軸線C2とがなす角度である傾斜角θが3°を超えると顕著に大きくなってしまう。すなわち、本実施の形態では、中心軸線C1が第2のグランド板42に直交するように保持部材6が配置された場合に、傾斜角θが3°以内となるように保持孔60の内径が設定されており、これにより信号の位相ずれが抑制されている。
(移相器及び移動機構の構成)
図12は、移相器20を示す平面図であり、図13は、移相器20を示す斜視図である。図14は、移相器20及びその周辺部を示す断面図である。
移相器20は、第1のグランド板41及び第2のグランド板42と第1の中心導体51との間にそれぞれ配置された可動式の第1及び第2の誘電体板21,22を有する誘電体挿入型の移相器である。この移相器20は、第1及び第2の誘電体板21,22が第1の中心導体51に対して移動することで、複数のアンテナ素子15に分配される高周波信号の位相を変化させることが可能である。
なお、本実施の形態では、第1及び第2の誘電体板21,22が第1の中心導体51を挟んで配置されており、第2の中心導体52と第2及び第3のグランド板42,43との間には配置されていないが、第1及び第2の誘電体板21,22を第2の中心導体52と第2及び第3のグランド板42,43との間に配置することも可能である。ただし、第1及び第2の誘電体板21,22を第1の中心導体51と第1及び第2のグランド板41,42との間のみに配置することにより、伝送線路100の構成を簡素化することができ、第1及び第2の基板510,520上における第1及び第2の中心導体51,52のパターン設計が容易となる。
第1及び第2の誘電体板21,22は、例えばガラスエポキシ等の誘電体からなり、その両端部に設けられた一対の連結棒23によって互いに連結されている。連結棒23は、第1の基板510に形成された長穴510c及び第1のグランド板41に形成された長穴41cを挿通し、第1のグランド板41から突出している。
第1の基板510の長穴510c及び第1のグランド板41の長穴41cは、レドーム10の中心軸方向に平行に延びるように形成されている。これにより、第1及び第2の誘電体板21,22は、連結棒23が長穴510c,41cによって案内され、第1のグランド板41及び第1の基板510の長手方向に沿って進退移動可能である。図12では、第1及び第2の誘電体板21,22の移動方向を矢印A1及びA2で示している。以下の説明では、矢印A1の方向を前進方向といい、矢印A2の方向を後退方向という。
第1の中心導体51は、第1及び第2の誘電体板21,22に挟まれる部分がミアンダ状に蛇行している。すなわち、第1の中心導体51は、第1及び第2の誘電体板21,22の移動方向に対して直交する方向に延在する第1乃至第5の延在部511〜515を有している。
第1の誘電体板21と第2の誘電体板22とは、同一の形状に形成されているので、図12及び図3を参照し、第1のグランド板41と第1の基板510との間に配置された第1の誘電体板21について、その形状を詳細に説明する。なお、図12では、第1の誘電体板21に覆われた部分の第1の中心導体51を破線で示している。
第1の誘電体板21は、連結棒23が立設された両端部の間に、第1の中心導体51の第1乃至第5の延在部511〜515のそれぞれに対応する第1乃至第5の誘電体部211〜215を有している。本実施の形態では、第1乃至第5の誘電体部211〜215が三角形状であり、第1の誘電体板21が前進方向(矢印A1方向)に移動する際に第1乃至第5の延在部511〜515と第1乃至第5の誘電体部211〜215とが重なる面積が拡大し、第1の誘電体板21が後退方向(矢印A2方向)に移動する際に第1乃至第5の延在部511〜515と第1乃至第5の誘電体部211〜215とが重なる面積が縮小する。ただし、第1の誘電体板21は、図12及び図13に例示する形状に限らず、移動に伴って第1の中心導体51と重なる面積が変化するように構成されていればよい。
第1及び第2の誘電体板21,22が前進方向又は後退方向に移動すると、第1の中心導体51と第1及び第2のグランド板41,42との間の空間における第1及び第2の誘電体板21,22が占める割合が変化するため、第1乃至第5の延在部511〜515における実効誘電率が変化する。この実効誘電率の変化によって、第1乃至第5の延在部511〜515の電気線路長が変化し、位相の調節が可能となる。
図15は、第1及び第2の誘電体板21,22を移動させる移動機構2を示す斜視図である。
移動機構2は、第1直動モータユニット24及び第2直動モータユニット25と、第1直動モータユニット24によって駆動される一対の第1駆動棒26と、第2直動モータユニット25によって駆動される一対の第2駆動棒27と、第1駆動棒26及び第2駆動棒27をガイドするガイド部材28とを有している。この移動機構2は、第1乃至第3のグランド板41〜43のうち、複数のアンテナ素子15が固定された第3のグランド板43とは反対側の最外層における第1のグランド板41を第1の誘電体板21との間に挟んで配置されている。
第1直動モータユニット24と第2直動モータユニット25とは、第1のグランド板41の長手方向に沿って並列して配置されている。第1直動モータユニット24は、駆動源として電動モータ241を有し、電動モータ241のトルクによって直動軸242を第1のグランド板41の長手方向に沿って直線移動させる。直動軸242には、第1のグランド板41の短手方向に延びる駆動部材243が連結され、この駆動部材243の両端部に一対の第1駆動棒26が連結されている。
第2直動モータユニット25は、第1直動モータユニット24と同様に構成されている。すなわち、第2直動モータユニット25は、電動モータ251、電動モータ251のトルクによって直線移動する直動軸252、直動軸252に連結されて第1のグランド板41の短手方向に延びる駆動部材253、及び駆動部材253の両端部に連結された一対の第2駆動棒27を有している。一対の第1駆動棒26及び一対の第2駆動棒27は、第1のグランド板41に固定されたガイド部材28に案内され、第1のグランド板41の長手方向に沿って進退移動する。
第1駆動棒26及び第2駆動棒27には、移相器20の連結棒23が連結されている。すなわち、第1直動モータユニット24の作動によって一対の第1駆動棒26が移動すると、この第1駆動棒26に連結棒23が連結された移相器20の第1及び第2の誘電体板21,22が第1駆動棒26と同方向に移動する。また、第2直動モータユニット25の作動によって一対の第2駆動棒27が移動すると、この第2駆動棒27に連結棒23が連結された移相器20の第1及び第2の誘電体板21,22が第1駆動棒26と同方向に移動する。
本実施の形態では、図1に示す第1送信部1A及び第2送信部1Bにおける移相器20の第1及び第2の誘電体板21,22が連結棒23を介して第2駆動棒27に連結され、第3送信部1C及び第4送信部1Dにおける移相器20の第1及び第2の誘電体板21,22が連結棒23を介して第1駆動棒26に連結されている。すなわち、第1水平偏波アンテナ素子15A及び第1垂直偏波アンテナ素子15Bから放射される第1周波数帯の水平偏波及び垂直偏波の位相が第2直動モータユニット25の作動によって調節され、第2水平偏波アンテナ素子15C及び第2垂直偏波アンテナ素子15Dから放射される第2周波数帯の水平偏波及び垂直偏波の位相が第1直動モータユニット24の作動によって調節される。
(接続ピンと金属スペーサとの位置関係)
図16は、第1の基板510に対して垂直な方向から見た接続ピン30と金属スペーサ50との位置関係を示す模式図である。
金属スペーサ50は、接続ピン30の近傍に、接続ピン30を囲むように配置されている。ここで、「接続ピン30の近傍に金属スペーサ50が配置される」とは、具体的には、接続ピン30の中心軸線C2に対して直交する方向における接続ピン30の外周面30aから金属スペーサ50までの最短距離が5.0mm以内であることをいう。また、「接続ピン30を囲むように」とは、具体的には、接続ピン30の近傍に配置された金属スペーサ50の中心を結んで形成される多角形(図16に二点鎖線で示す)の内部に接続ピン30の少なくとも一部が位置していることをいう。
図16に示す例では、接続ピン30の近傍に、3つの金属スペーサ50が接続ピン30を囲むように配置されている。これら3つの金属スペーサ50のうち、接続ピン30に最も近い位置に配置される1つの金属スペーサ50と接続ピン30との距離d1は、3.0mm以下である。ここで、距離d1は、接続ピン30の中心軸線C2に対して直交する方向における接続ピン30の外周面30aと金属スペーサ50との最短距離である。なお、この距離d1は、金属スペーサ50と接続ピン30又は第1の中心導体51との干渉を防ぐため、1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上、確保されていることが望ましい。
なお、接続ピン30との距離が3.0mm以下となる範囲に複数の金属スペーサ50が配置されていてもよい。すなわち、接続ピン30の近傍に配置された複数の金属スペーサ50のうち、少なくとも1つの金属スペーサ50と接続ピン30との間の距離が3.0mm以下であればよい。
図17は、複数の金属スペーサ50が上記のように接続ピン30の近傍に配置された場合において、互いに平行に配置された第1及び第2の中心導体51,52の信号伝送線路51a,52aに2.2GHzの高周波信号を供給した際の電流分布を示している。図18は、比較例として、接続ピン30の近傍に1つの金属スペーサ50が配置された場合の電流密度の分布を示している。
図17及び図18では、電流密度を色の濃淡で示し、電流密度が高い部分を淡色で、電流密度が低い部分を濃色で、ぞれぞれ表している。また、図17及び図18では、第1及び第2のグランド板41,42ならびに第1及び第2の基板510,520の図示を省略し、第3のグランド板43における電流密度を示している。
図17と図18との比較から明らかなように、接続ピン30の近傍において、接続ピン30を囲むように3つの金属スペーサ50を配置した場合には、接続ピン30の近傍に1つのみの金属スペーサ50を配置した場合に比較して、第3のグランド板43における高電流密度領域の拡がりが抑制されている。特に、3つの金属スペーサ50によって囲まれた範囲の外側では、3つの金属スペーサ50によって囲まれた範囲内に比較して、電流密度が顕著に低下している。なお、図示は省略しているが、第1のグランド板41及び第2のグランド板42においても、第3のグランド板43と同様に電流密度が分布する。
このことは、上記のように複数の金属スペーサ50を接続ピン30の近傍に配置することによって高い電流密度を示す範囲が限定され、電流の漏れが抑制されることを示している。したがって、図16に示すように複数の金属スペーサ50を接続ピン30の近傍に配置することにより、通過送損失が低減される。
なお、接続ピン30の近傍に配置される金属スペーサ50の数は、3つに限定されない。ただし、複数の金属スペーサ50によって囲まれる範囲に接続ピン30が位置するように、接続ピン30の近傍に配置される金属スペーサ50の数は、3つ以上であることが望ましい。
(接地金具の構成)
次に、接続ピン30の周辺における電流漏れを抑制し、通過損失を低減するために配置される接地金具7について説明する。この接地金具7は、伝送線路100における複数の接続ピン30のうち、その近傍に金属スペーサ50が配置されていない接続ピン30に近接して配置される。
図19Aは、接地金具7を示す上面図、側面図、正面図、及び下面図である。図19Bは、接地金具7の斜視図である。図20は、接地金具7が第1グランド板41と第3グランド板43との間に配置された状態を示す概略図である。図21Aは、図20のA−A線断面図である。図21Bは、図20のB−B線断面図である。
接地金具7は、銅や黄銅等の良導電性の金属からなり、接続ピン30によって接続された第1及び第2の中心導体51,52の端部を収容する切り欠き70が形成された本体部71と、板状の座金部72とを一体に有している。切り欠き70は、接続ピン30に沿って本体部71を貫通している。座金部72の下面72aは、第2のグランド板42又は第3のグランド板43に面接触し、電気的に接地されている。
接地金具7を第3のグランド板43に対して垂直な方向から見た場合に、切り欠き70の内面70aは、U字状を呈している。すなわち、切り欠き70は、第1乃至第3のグランド板41〜43に平行な一方向に窪んだ凹部として形成されている。つまり、本体部71は、切り欠き70を介して対向する一対の対向壁部71a,71bと、一方の対向壁部71aと他方の対向壁部71bとの間に介在する底壁部71cとを有し、底壁部71cにおける内面70aが円弧状に湾曲している。ただし、底壁部71cにおける切り欠き70の内面70aは、必ずしも湾曲していなくともよく、平坦な面であってもよい。
接地金具7は、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43との間にそれぞれ配置されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された接地金具7の本体部71は、第1の基板510に形成された貫通孔510dを貫通している。第1の基板510の貫通孔510dは、図21Aに示すように、本体部71との間に所定の幅の隙間を介して本体部71を挿通させる形状に形成されている。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された接地金具7の本体部71は、第2の基板520に形成された貫通孔520dを貫通している。第2の基板520の貫通孔520dは、図21Bに示すように、本体部71との間に所定の幅の隙間を介して本体部71を挿通させる形状に形成されている。
座金部72には、位置決め用のボス部721が下面72aから突出して形成されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された接地金具7のボス部721は、第2のグランド板42に形成された嵌合穴42cに嵌合して接地金具7を位置決めする。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された接地金具7のボス部721は、第3のグランド板43に形成された嵌合穴43cに嵌合して接地金具7を位置決めする。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された接地金具7は、その座金部72と第1のグランド板41との間に配置された金属スペーサ57によって固定されている。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された接地金具7は、その座金部72と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ57によって固定されている。
座金部72には、金属スペーサ57の雄ねじ部571又はボルト55の雄ねじ部551を挿通させるボルト挿通孔722が形成されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された接地金具7のボルト挿通孔722には、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ57の雄ねじ部571が挿通され、この雄ねじ部571が第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ57のねじ穴に螺合する。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された接地金具7のボルト挿通孔722には、ボルト55の雄ねじ部551が挿通され、この雄ねじ部551が第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ57のねじ穴に螺合する。また、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ57の雄ねじ部571はナット54に螺合する。
図21Aに示すように、第1の中心導体51における接続ピン30との接続部51bは、接地金具7の一対の対向壁部71a,71bに挟まれている。また、図21Bに示すように、第1の中心導体51における接続ピン30との接続部52bは、接地金具7の一対の対向壁部71a,71bに挟まれている。
第1の中心導体51は、一対の対向壁部71a,71bに挟まれた接続部51bにおける導体幅w11が、接地金具7の近傍における他の部分における導体幅w12よりも狭く形成されている。また、図21Bに示すように、第2の中心導体52は、一対の対向壁部71a,71bに挟まれた接続部52bにおける導体幅w21が、接地金具7の近傍における他の部分における導体幅w22よりも狭く形成されている。
本実施の形態では、第1の中心導体51における接続ピン30との接続部51bの導体幅w11と、第2の中心導体52における接続ピン30との接続部52bの導体幅w21とが同一であり、第1の中心導体51における切り欠き70の外部における導体幅w12と、第2の中心導体52における切り欠き70の外部における導体幅w22とが同一であるが、導体幅w11と導体幅w21とは必ずしも同一でなくともよく、導体幅w12と導体幅w22とは必ずしも同一でなくともよい。ただし、導体幅w12と導体幅w22とが同一であれば、第1の中心導体51及び第2の中心導体52の外縁と切り欠き70の内面70aとの距離が等しくなるので、より好ましい。切り欠き70の内部における第1の中心導体51及び第2の中心導体52の外縁と切り欠き70の内面70aと距離の望ましい範囲は、0.8〜1.2mm(0.8mm以上かつ1.2mm以下)である。
上記のように形成された接地金具7を用いることにより、複数の金属スペーサ50を接続ピン30の近傍に配置した場合と同様に、電流の漏れが抑制され、通過損失が低減される。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
(1)周波数共用アンテナ装置1の伝送線路100は、互いに平行に積層された第1乃至第4のグランド板41〜43の間に第1乃至第2の中心導体51,52を挟んでなる2層のトリプレート構造であるので、伝送線路100の構成が複雑化しても、周波数共用アンテナ装置1の大型化を抑制することができる。つまり、第1の中心導体51と第2の中心導体52とを積み重ねて配置することができるので、信号伝送線路を立体的に交差させることができ、設計の自由度が増すと共に、第1乃至第4のグランド板41〜43の幅を狭くすることが可能となる。
(2)第1乃至第3のグランド板41〜43は、互いに平行に積層され、第1及び第2のグランド板41,42と第1の中心導体51、ならびに第2及び第3のグランド板42,43と第2の中心導体52がそれぞれトリプレート線路を構成し、このトリプレート線路によって、第1〜第4送信部1A〜1Dにおける第1分配線路11A,11B,11C,11D、第2分配線路12A,12B,12C,12D、第3分配線路13A,13B,13C,13D、及び第4分配線路14A,14B,14C,14Dが構成されるので、各線路の線路構造を共通化することができ、反射や損失を抑制することができる。
(3)移相器20は、第1のグランド板41と第1の中心導体51との間に配置された第1の誘電体板21、及び第2のグランド板42と第1の中心導体51との間に配置された第2の誘電体板22を移動させることで信号の位相を変化させることができるので、トリプレート線路内に移相器20を配置することができ、周波数共用アンテナ装置1を小型化に寄与する。また、移相器20を第2分配線路12A,12B,12C,12D、第3分配線路13A,13B,13C,13D、及び第4分配線路14A,14B,14C,14Dと共通の線路構造によって構成することができるので、移相器20における反射や損失を抑制することが可能となる。
(4)複数のアンテナ素子15(第1水平偏波アンテナ素子15A,第1垂直偏波アンテナ素子15B,第2水平偏波アンテナ素子15C,第2垂直偏波アンテナ素子15D)は、第3のグランド板43に固定されているので、複数のアンテナ素子15を固定するための専用の固定部材を設ける必要がなく、周波数共用アンテナ装置1の部品点数の増大を抑制すると共に小型化が可能となる。
(5)移動機構2は、第1のグランド板41に固定されているので、移動機構2との間に第1のグランド板41を挟んで配置された第1及び第2の誘電体板21,22を連結棒23を介して移動させる構成が容易となる。
(6)第1乃至第3のグランド板41〜43は、レドーム10の中心軸方向に長手方向を有する長板状であるので、レドーム10内の空間を有効に活用することができる。
(7)第1の中心導体51及び第2の中心導体52は、誘電体からなる第1の基板510及び第2の基板520の表面に設けられた金属箔からなるので、第1の中心導体51及び第2の中心導体52を第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に固定する固定構造を簡素に構成することができる。
(8)第1の中心導体51と第2の中心導体52とは、第2のグランド板42に形成された挿通孔42bに挿通された接続ピン30によって接続されるので、例えば両中心導体間を同軸ケーブルによって接続する場合に比較して、その接続構造が容易となる。
(9)接続ピン30は、保持部材6によって保持され、第2のグランド板42の挿通孔42bに保持部材6と共に挿通されているので、接続ピン30と第2のグランド板42が接触してしまうことを抑制することができる。
(10)接続ピン30は、保持部材6によって保持されることにより、その傾きが3°以内に抑制されているので、信号の位相ずれが実質的に問題ない範囲に抑制される。
(11)保持部材6は、大径筒部61と小径筒部62とを有し、大径筒部61と小径筒部62との間の段差面6aが第2のグランド板42に対向するので、保持部材6の第2のグランド板42に対する傾きが抑制される。
(12)複数の金属スペーサ50が、接続ピン30の近傍に、接続ピン30を囲むように配置されているので、漏れ電流が抑制され、通過損失が低減される。さらに、接続ピン30に最も近い位置に配置される1つの金属スペーサ50と接続ピン30との距離d1が3.0mm以下であるので、より確実に漏れ電流が抑制され、通過損失の低減効果が大きくなる。
(13)接続ピン30によって接続された第1の中心導体51の接続部51b及び第2の中心導体52の接続部52bが接地金具7の本体部71に形成された切り欠き70に収容されることにより、接続ピン30の周辺部における漏れ電流が抑制され、通過損失が低減される。
(14)第1及び第2の中心導体51,52は、接地金具7の切り欠き70に収容される部分における導体幅w11,w12が切り欠き70の外部における他の部分の導体幅w21,w22よりも狭いので、接地金具7を小型化することが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図22及び図23を参照して説明する。
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置1´を示す構成図である。図23は、周波数共用アンテナ装置1´における伝送線路100Aの一部断面図である。図22及び図23において、第1の実施の形態について説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、伝送線路100が、第1乃至第3のグランド板41〜43と、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された第1の中心導体51と、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された第2の中心導体52とによって構成されていたが、本実施の形態では、伝送線路100Aが、第1乃至第4のグランド板41〜44と、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された第1の中心導体51と、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された第2の中心導体52と、第3のグランド板43と第3のグランド板44との間に配置された第3の中心導体53とによって構成されている。
すなわち、伝送線路100Aは、複数対の板状導体の間にそれぞれ中心導体を挟んでなるトリプレート構造を有し、対をなす第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に第1の中心導体51が挟まれ、同じく対をなす第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に第2の中心導体52が挟まれ、さらに同じく対をなす第3のグランド板43と第4のグランド板44との間に第3の中心導体53が挟まれている。
第1の中心導体51及び第2の中心導体52は、第1の実施の形態と同様に、ガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂からなる第1の基板510及び第2の基板520の表面に配線パターンとして設けられている。第3の中心導体53もまた、ガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂からなる第3の基板530の表面に配線パターンとして設けられている。
図23に示すように、第1乃至第4のグランド板41〜44は、3つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55によって固定されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間、及び第3のグランド板43及び第4のグランド板44との間には、金属スペーサ50の長さに応じた空間が形成されている。第1乃至第3の基板510,520,530は、第1の実施の形態と同様に、図略の樹脂スペーサによって第1乃至第4のグランド板41〜44のそれぞれの間に支持されている。
複数のアンテナ素子15は、第1乃至第4のグランド板41〜44のうち、最外層に位置する第4のグランド板44に固定されている。また、移動機構2は、第1の実施の形態と同様に、第1のグランド板41に固定されている。
第1の中心導体51と第2の中心導体52とは、伝送線路100Aの複数箇所において接続ピン30によって接続されている。また、第2の中心導体52と第3の中心導体53とは、伝送線路100Aの複数箇所において接続ピン30によって接続されている。またさらに、図示は省略しているが、第1の中心導体51と第3の中心導体53とを接続ピン30によって直接的に接続することも可能である。
伝送線路100Aにおける複数の移相器20の第1及び第2の誘電体板21,22は、第1の実施の形態と同様に、第1の中心導体51を挟んで第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置されるが、第1及び第2の誘電体板21,22を第2の中心導体52を挟んで配置してもよく、第3の中心導体53を挟んで配置してもよい。ただし、伝送線路100Aの構成を簡素化する上では、第1及び第2の誘電体板21,22を第1のグランド板41と第2のグランド板42との間のみに配置することが望ましい。
本実施の形態では、伝送線路100Aが3層のトリプレート構造を有しているので、第1の実施の形態に係る伝送線路100に比較して、より複雑な構成に対応することが可能となる。
例えば、第1周波数帯における1.5GHz帯の信号と2GHz帯の信号とを分離するデュプレクサを伝送線路100A内に構成し、分離したそれぞれの周波数帯の信号について移相器20によって位相を調整してもよい。この場合、デュプレクサは、主として第2の中心導体52によって構成するとよい。すなわち、第2の中心導体52によって構成されたデュプレクサによって各周波数帯毎に分離された信号を第1の中心導体51を含んで構成された移相器20によって位相調整し、位相調整された信号を第3の中心導体53によって構成された分配線路によって各アンテナ素子15に分配する。
またさらに、複数のアンテナ素子15から放射される電波信号の位相を調整するための位相調整回路を第2の中心導体52によって構成してもよい。この位相調整回路は、例えば信号伝送線路を蛇行させ、線路長を長くすることによって構成することができる。位相調整回路によって、複数のアンテナ素子15のうち鉛直方向下方に配置されたアンテナ素子15ほど位相を遅らせることで、電波の指向性を下方に向けることができ、高所に配置された周波数共用アンテナ装置1´と使用者が所持する携帯電話との通信を的確に行うことができる。
ただし、第1乃至第3の中心導体51〜53の何れによってデュプレクサや位相調整回路、及び移相器20を構成するかは、伝送線路100Aの設計によって適宜選択可能であり、例えば第1乃至第3の中心導体51〜53の全てによって位相調整回路や移相器20が構成されていてもよい。なお、デュプレクサや位相調整回路ならびに移相器20の各機能を複数相に構成された何れかのトリプレート線路に集約することで、伝送線路100Aの構成を簡素化することができ、その設計も容易となる。
すなわち、本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した作用及び効果に加え、伝送線路100Aの構成が複雑となっても、周波数共用アンテナ装置1´の大型化を抑制することができる。また、伝送線路100Aが3層のトリプレート構造を有するため、設計の自由度が増し、デュプレクサや位相調整回路等を備えた複雑な線路構成にも対応することが可能となる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]複数対の板状導体(41〜43/41〜44)の間にそれぞれ中心導体(51,52/51〜53)を挟んでなるトリプレート構造の伝送線路(100/100A)と、前記伝送線路(100/100A)によって分配された高周波信号を送信可能な複数のアンテナ素子(15)とを備え、前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)が互いに平行に積層された、アンテナ装置(1/1A)。
[2]前記複数対の板状導体として、第1乃至第3の板状導体(41〜43)を備え、前記第1の板状導体(41)と前記第2の板状導体(42)との間、及び前記第2の板状導体(42)と前記第3の板状導体(43)との間に、それぞれ前記中心導体(51、52)が配置された、前記[1]に記載のアンテナ装置(1)。
[3]前記複数対の板状導体として、第1乃至第4の板状導体(41〜44)を備え、前記第1の板状導体(41)と前記第2の板状導体(42)との間、前記第2の板状導体(42)と前記第3の板状導体(43)との間、及び前記第3の板状導体(43)と前記第4の板状導体(44)との間に、それぞれ前記中心導体(51〜53)が配置された、前記[1]に記載のアンテナ装置(1A)。
[4]前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)のうち一対の板状導体(41,42)と当該一対の板状導体(41,42)の間に配置された前記中心導体(51)との間に可動式の誘電体(21,22)が配置され、前記可動式の誘電体(21,22)は、前記中心導体(51)に対して移動することで、前記複数のアンテナ素子(15)に分配される前記高周波信号の位相を変化させることが可能な移相器(20)を構成する、前記[1]乃至[3]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[5]前記複数のアンテナ素子(15)は、前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)のうち最外層に位置する1つの板状導体(43/44)に固定された、前記[1]乃至[4]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[6]前記複数のアンテナ素子(15)は、前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)のうち最外層に位置する1つの板状導体(43/44)に固定され、前記可動式の誘電体(21,22)を移動させる移動機構(2)が、前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)のうち前記アンテナ素子(15)が固定された前記1つの板状導体(43/44)とは反対側の最外層における板状導体(41)を前記可動式の誘電体(21/22)との間に挟んで配置された、前記[4]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[7]前記伝送線路(100/100A)、前記複数のアンテナ素子(15)、及び前記移動機構(2)が、円筒状のレドーム(10)内に配置され、前記複数対の板状導体(41〜43/41〜44)は、前記レドーム(10)の中心軸方向に長手方向を有する長板状である、前記[1]乃至[6]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[8]前記中心導体(51,52/51〜53)は、誘電体からなる基板(510,520/510,520,530)の表面に設けられた金属箔によって形成され、前記基板(510,520/510,520,530)が、当該基板を挟んで対をなす前記板状導体(41〜43/41〜44)の間に支持された、前記[1]乃至[7]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[9]前記板状導体(42)を挟んで配置された前記中心導体同士(51,52)が、当該板状導体(42)に形成された挿通孔(42a)に挿通された軸状の接続部材(30)によって電気的に接続された、前記[1]乃至[8]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[10]前記板状導体(42)に形成された前記挿通孔(42a)に挿通され、前記接続部材(30)を保持する絶縁材料からなる筒状の保持部材(6)をさらに備えた、前記[9]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[11]前記保持部材(6)は、前記接続部材(30)を保持する保持孔(60)が形成された大径筒部(61)及び小径筒部(62)を有し、前記大径筒部(61)と前記小径筒部(62)との間の段差面(6a)が前記板状導体(42)に対向する、前記[10]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[12]前記接続部材(30)の前記板状導体(42)に対する傾きが前記保持部材(6)によって3°以内に規制されている、前記[10]又は[11]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[13]前記接続部材(30)の近傍に、前記板状導体(42)間を電気的に接続する複数の接地導体(50)が、前記接続部材(30)を囲むように配置された、前記[9]乃至[12]の何れか1つに記載のアンテナ装置(1/1A)。
[14]前記複数の接地導体(50)のうち少なくとも1つの接地導体(50)と前記接続部材(30)との間の距離(d1)が3.0mm以下である、前記[13]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[15]前記接続部材(30)によって接続された前記中心導体(51,52)の端部を収容する切り欠き(70)が形成され、前記板状導体(41,43)に接触して固定された導電性金属からなる金具(7)をさらに備えた、前記[9]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
[16]前記中心導体(51,52)は、前記金具(7)の前記切り欠き(70)に収容される部分における導体幅(w1)が他の部分における導体幅(w2)よりも狭く形成された、前記[15]に記載のアンテナ装置(1/1A)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。