JPWO2016002884A1 - 酸化型γ−グルタミルシステイン及び酸化型グルタチオンの製造方法 - Google Patents

酸化型γ−グルタミルシステイン及び酸化型グルタチオンの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、酸化型グルタチオンGSSG及びその前駆体である酸化型γ−グルタミルシステインを簡便な工程により製造する方法を提供することを解決課題とする。本発明のGSSGの製造方法は、上記課題を解決する手段として、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させて酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’と、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させてGSSGを生成する工程B’とを含む。

Description

本発明は酸化型γ−グルタミルシステインを製造する方法に関する。
本発明はまた酸化型グルタチオンを製造する方法に関する。
グルタチオンは、L−システイン、L−グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸から成るペプチドで、人体だけでなく、他の動物や植物、微生物など多くの生体内に存在し、活性酸素の消去作用、解毒作用、アミノ酸代謝など、生体にとって重要な化合物である。
グルタチオンは生体内で、L−システイン残基のチオール基が還元されたSHの形態である還元型グルタチオン(N−(N−γ−L−グルタミル−L−システイニル)グリシン、以下「GSH」と称することがある)と、L−システイン残基のチオール基が酸化されグルタチオン2分子間でジスルフィド結合を形成した形態である酸化型グルタチオン(以下「GSSG」と称することがある)とのいずれかの形態で存在する。
GSSGはGSHよりも保存安定性が高いことが知られている(特許文献1等)。グルタチオンは生体内では通常還元型のGSHとして存在している場合が多く、酵母等を用いてGSHを大量生産することは容易であるのに対して、GSSGを効率的に大量生産することは従来容易ではなかった。GSHを先に製造し、それを化学的又は生物的な手法で酸化させてGSSGを得ることが従来一般的であった。例えば特許文献1では、先にGSHを含む酵母エキスを製造し、次いで酵母エキスのpHを6以上11未満に調整し、溶存酸素の存在下にGSHをGSSGに変換するという方法が開示されている。
特許第3160335号公報 特表2013−505712号公報 特開2013−188177号公報
本発明はGSSG及びその前駆体化合物を簡便な工程により製造する方法を提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは比較的安価なL−シスチンを原料として、GSSG及びその前駆体である酸化型γ−グルタミルシステインを簡便な工程により製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、L−シスチンは、L−システインのチオール基が酸化されて2分子のL−システインがジスルフィド結合を介して結合してなる化合物である。L−シスチンは、L−システインを製造するための原料として用いられる例(特許文献2)や、乳酸菌発酵によるGSH生産のための原料として用いられる例(特許文献3)が知られているが、L−シスチンから直接GSSGを製造する方法は存在しなかった。
本発明は具体的には以下の発明を包含する。
(1)γ−グルタミルシステイン合成酵素及び2機能性グルタチオン合成酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素とアデノシン三リン酸(ATP,アデノシン5’−三リン酸ともいう)との存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程Aを含むことを特徴とする、酸化型γ−グルタミルシステインの製造方法。
本発明により比較的安価なL−シスチンから酸化型γ−グルタミルシステインを直接製造することができる。
(2)前記工程Aが、アデノシン二リン酸(ADP,アデノシン5’−二リン酸ともいう)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、(1)に記載の方法。
工程AはATPを消費してADPを生成するが、本発明によればATPを再生しながら、工程Aを持続的に行うことが可能である。
(3)前記γ−グルタミルシステイン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、(1)又は(2)に記載の方法。
このようなγ−グルタミルシステイン合成酵素は、L−シスチンとL−グルタミン酸から酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性が特に高いため好ましい。
(4)前記2機能性グルタチオン合成酵素がストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)由来である、(1)又は(2)に記載の方法。
このような2機能性グルタチオン合成酵素は、L−シスチンとL−グルタミン酸から酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性が特に高いため好ましい。
(5)グルタチオン合成酵素とアデノシン三リン酸(ATP)との存在下で、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程Bを含むことを特徴とする、酸化型グルタチオンの製造方法。
本発明によれば酸化型グルタチオンを簡便な工程で製造することができる。
(6)前記工程Bが、アデノシン二リン酸(ADP)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、(5)に記載の方法。
工程BはATPを消費してADPを生成するが、本発明によればATPを再生しながら、工程Bを持続的に行うことが可能である。
(7)前記グルタチオン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、(5)又は(6)に記載の方法。
このようなグルタチオン合成酵素は、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンから酸化型グルタチオンを生成する活性が特に高いため好ましい。
(8)γ−グルタミルシステイン合成酵素及び2機能性グルタチオン合成酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素とアデノシン三リン酸(ATP)との存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程Aを更に含み、
前記工程Bに用いられる酸化型γ−グルタミルシステインが、前記工程Aにより生成されたものである、
(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、比較的安価なL−シスチンから酸化型グルタチオンを簡便な工程により製造することができる。
(9)前記工程Aが、アデノシン二リン酸(ADP)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、(8)に記載の方法。
工程AはATPを消費してADPを生成するが、本発明によればATPを再生しながら、工程Aを持続的に行うことが可能である。
(10)前記γ−グルタミルシステイン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、(8)又は(9)に記載の方法。
このようなγ−グルタミルシステイン合成酵素は、L−シスチンとL−グルタミン酸から酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性が特に高いため好ましい。
(11)前記2機能性グルタチオン合成酵素がストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)由来である、(8)又は(9)に記載の方法。
このような2機能性グルタチオン合成酵素は、L−シスチンとL−グルタミン酸から酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性が特に高いため好ましい。
(12)L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’を含むことを特徴とする、酸化型γ−グルタミルシステインの製造方法。
本発明により比較的安価なL−シスチンから酸化型γ−グルタミルシステインを直接製造することができる。本発明では、より好ましくは、前記工程A’が(1)に記載の前記工程Aである。
(13)酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程B’を含むことを特徴とする、酸化型グルタチオンの製造方法。
本発明によれば酸化型グルタチオンを簡便な工程で製造することができる。本発明では、より好ましくは、前記工程B’が(5)に記載の前記工程Bである。
(14)L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’を更に含み、
前記工程B’に用いられる酸化型γ−グルタミルシステインが、前記工程A’により生成されたものである、(13)に記載の方法。
本発明によれば、比較的安価なL−シスチンから酸化型グルタチオンを簡便な工程により製造することができる。本発明では、より好ましくは、前記工程A’が(1)に記載の前記工程Aである。
なお、本明細書において「L−シスチン」、「L−グルタミン酸」、「グリシン」「酸化型γ−グルタミルシステイン」、「酸化型グルタチオン」、「L−システイン」、「γ−グルタミルシステイン」、「グルタチオン」、「アデノシン三リン酸」、「アデノシン二リン酸」、「アデノシン一リン酸」、「ポリリン酸」、「縮合リン酸」等の各用語は、それぞれ、各化合物の形態を限定するものではなく、フリー体の形態であってもよいし、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩の形態や、水和物等の溶媒和物の形態や、電離したイオンの形態である場合も包含する。
酸化型γ−グルタミルシステインのフリー体は次式で表される化合物である:
酸化型グルタチオンのフリー体は次式で表される化合物である:
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2014−137202号の開示内容を包含する。
本発明によれば、酸化型グルタチオン(GSSG)及び酸化型γ−グルタミルシステインを安価な原料を用いて簡便な工程により生産することが可能である。
<本発明で用いる酵素>
本明細書では、γ−グルタミルシステイン合成酵素を「GSH I」、グルタチオン合成酵素を「GSH II」、2機能性グルタチオン合成酵素を「GSH F」、アデニル酸キナーゼを「ADK」、ポリリン酸依存的AMPトランスフェラーゼを「PAP」とそれぞれ略記する場合がある。
<GSH I>
本発明に用いられるγ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH I)は、ATPの存在下でL−Cysを基質として認識し、L−Gluと結合させることでγ−Glu−Cysを生成する反応を触媒する活性を有する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本発明において、当該活性を、γ−グルタミルシステイン合成酵素活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのγ−グルタミルシステインを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。本発明では、γ−グルタミルシステイン合成酵素が、ATPの存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性も有するという新たな知見を利用する。
(測定条件)
10mM ATP、15mM L−グルタミン酸、15mM L−システイン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のγ−グルタミルシステインを定量する。
上記高速液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。この条件では、還元型グルタチオン(GSH)、還元型γ−グルタミルシステイン(γ−GC)、酸化型γ−GC、酸化型グルタチオン(GSSG)の順で溶出する。
[HPLC条件]
カラム:ODS−HG−3(4.6mmφ×150mm、野村化学社製);
溶離液:リン酸2水素カリウム12.2g及びヘプタンスルホン酸ナトリウム3.6gを蒸留水1.8Lで溶解した後、該溶液をリン酸でpH2.8に調整し、メタノール186mlを追加して溶解した液;
流速:1.0ml/分;
カラム温度:40℃;
測定波長:210nm
GSH Iとしてはタンパク質1mgあたりのγ−グルタミルシステイン合成酵素活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
GSH Iの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のGSH Iが好ましく、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等の腸内細菌や、コリネ型細菌等の細菌、酵母等の真核微生物等に由来するGSH Iが好ましい。
エシェリヒア・コリ由来のGSH Iの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号1及び配列番号9に示す。
GSH Iとしてはまた、配列番号9に示すアミノ酸配列からなるGSH Iに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、GSH I活性を有する他のポリペプチドも使用できる。GSH I活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号9に示すアミノ酸配列からなるGSH Iを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドであり、好ましくは、ATPの存在下でL−シスチンとL−グルタミン酸とから酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性に関して、配列番号9に示すアミノ酸配列からなるGSH Iを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。上記の活性変異体、他種オルソログ等の、GSH I活性を有する他のポリペプチドには、例えば、配列番号9に示すアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号9に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)や、配列番号9に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドが該当する。更に、配列番号9に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなる前記ポリペプチド、並びに、配列番号9に示すアミノ酸配列に対して前記のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドの、GSH I活性を有する断片も、前記他のポリペプチドとして使用することができ、該断片としては、アミノ酸数が好ましくは250以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上のポリペプチドを用いることができる。該断片もまたATPの存在下でL−シスチンとL−グルタミン酸とから酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性を有する。本明細書において「複数個」とは、例えば、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜4個又は2〜3個をいう。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号9に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換をいう。性質の類似するアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類することができる。前記各ポリペプチドは適宜化学修飾されていてもよい。
GSH Iの調製に用いることができる、GSH Iをコードする遺伝子(DNA又はRNA)の塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列には限定されず、目的とするGSH Iのアミノ酸配列をコードする、宿主生物の種類に応じた適当な塩基配列であることができる。
<GSH II>
本発明に用いられるグルタチオン合成酵素(GSH II)は、ATPの存在下でγ−Glu−Cysを基質として認識し、Glyと結合させることでγ−Glu−Cys−Glyを生成する反応を触媒する活性を有する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本発明において、当該活性をグルタチオン合成酵素活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのグルタチオンを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。本発明では、グルタチオン合成酵素が、ATPの存在下で、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する活性も有するという新たな知見を利用する。
(測定条件)
10mM ATP、15mM γ−グルタミルシステイン、15mM グリシン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のグルタチオンを定量する。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、GSH Iの活性測定法に関して上述したのと同じ条件を用いる。
GSH IIとしてはタンパク質1mgあたりのグルタチオン合成酵素活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
GSH IIの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のGSH IIが好ましく、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等の腸内細菌や、コリネ型細菌等の細菌、酵母等の真核微生物等に由来するGSH IIが好ましい。
エシェリヒア・コリ由来のGSH IIの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号4及び配列番号10に示す。
GSH IIとしてはまた、配列番号10に示すアミノ酸配列からなるGSH IIに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、GSH II活性を有する他のポリペプチドも使用できる。GSH II活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号10に示すアミノ酸配列からなるGSH IIを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドであり、好ましくは、ATPの存在下で酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとから酸化型グルタチオンを生成する活性に関して、配列番号10に示すアミノ酸配列からなるGSH IIを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。上記の活性変異体、他種オルソログ等の、GSH II活性を有する他のポリペプチドには、例えば、配列番号10に示すアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号10に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)や、配列番号10に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドが該当する。更に、配列番号10に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号10に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなる前記ポリペプチド、並びに、配列番号10に示すアミノ酸配列に対して前記のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドの、GSH II活性を有する断片も、前記他のポリペプチドとして使用することができ、該断片としては、アミノ酸数が好ましくは150以上、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上のポリペプチドを用いることができる。該断片もまたATPの存在下で酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとから酸化型グルタチオンを生成する活性を有する。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号10に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。ここで「複数個」の好適な範囲、アミノ酸同一性の算出方法、保存的アミノ酸置換についてはGSH Iに関して説明した通りである。前記各ポリペプチドは適宜化学修飾されていてもよい。
GSH IIの調製に用いることができる、GSH IIをコードする遺伝子(DNA又はRNA)の塩基配列は、配列番号4に示す塩基配列には限定されず、目的とするGSH IIのアミノ酸配列をコードする、宿主生物の種類に応じた適当な塩基配列であることができる。
<GSH F>
本発明に用いられる2機能性グルタチオン合成酵素(GSH F)は、ATP存在下でL−Cysを基質として認識し、L−Gluと結合させることでγ−Glu−Cysを生成する反応を触媒する活性及びATP存在下でγ−Glu−Cysを基質として認識し、Glyと結合させることでγ−Glu−Cys−Glyを生成する反応を触媒する活性を併せ持つ酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本発明において、当該活性を、2機能性グルタチオン合成酵素活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのγ−Glu−Cys−Gly(グルタチオン)を生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。本発明では、2機能性グルタチオン合成酵素が、ATPの存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性も有するという新たな知見を利用する。
(測定条件)
10mM ATP、15mM L−グルタミン酸、15mM L−システイン、15mM グリシン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のグルタチオンを定量する。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、GSH Iの活性測定法に関して上述したのと同じ条件を用いる。
GSH Fとしてはタンパク質1mgあたりの2機能性グルタチオン合成酵素活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
GSH Fの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のGSH Fが好ましい。特に細菌由来GSH Fが好ましく、具体的には、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌;ラクトバシルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)等のラクトバシルス(Lactobacillus)属細菌;デスルフォタレア・サイクロフィラ(Desulfotalea psychrophila)等のデスルフォタレア(Desulfotalea)属細菌;クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)等のクロストリジウム(Clostridium)属細菌;リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)等のリステリア(Listeria)属細菌;エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌;パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)等のパスツレラ(Pasteurella)属細菌;マンハイミア・スクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciprodecens)等のマンハイミア(Mannheimia)属細菌;及び、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)等のヘモフィルス(Haemophilus)属細菌からなる群から選択される少なくとも1種に由来するGSH Fが好ましい。
ストレプトコッカス・アガラクチエ由来のGSH Fの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号11及び配列番号12に示す。また、配列番号7の第4塩基〜第2253塩基からなる塩基配列は、配列番号12に示すアミノ酸配列からなるストレプトコッカス・アガラクチエ由来GSH Fをコードする塩基配列であって、大腸菌でのコドン使用頻度に適合させた塩基配列の例である。
GSH Fとしてはまた、配列番号12に示すアミノ酸配列からなるGSH Fに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、GSH F活性を有する他のポリペプチドも使用できる。GSH F活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号12に示すアミノ酸配列からなるGSH Fを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドであり、好ましくは、ATPの存在下でL−シスチンとL−グルタミン酸とから酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性に関して、配列番号12に示すアミノ酸配列からなるGSH Fを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。上記の活性変異体、他種オルソログ等の、GSH F活性を有する他のポリペプチドには、例えば、配列番号12に示すアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号12に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)や、配列番号12に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドが該当する。更に、配列番号12に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号12に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなる前記ポリペプチド、並びに、配列番号12に示すアミノ酸配列に対して前記のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドの、GSH F活性を有する断片も、前記他のポリペプチドとして使用することができ、該断片としては、アミノ酸数が好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上、より好ましくは700以上、より好ましくは730以上のポリペプチドを用いることができる。該断片もまたATPの存在下でL−シスチンとL−グルタミン酸とから酸化型γ−グルタミルシステインを生成する活性を有する。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号12に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。ここで「複数個」の好適な範囲、アミノ酸同一性の算出方法、保存的アミノ酸置換についてはGSH Iに関して説明した通りである。前記各ポリペプチドは適宜化学修飾されていてもよい。
GSH Fの調製に用いることができる、GSH Fをコードする遺伝子(DNA又はRNA)の塩基配列は、配列番号11に示す塩基配列には限定されず、目的とするGSH Fのアミノ酸配列をコードする、宿主生物の種類に応じた適当な塩基配列であることができる。
<ADK>
本発明に用いられるアデニル酸キナーゼ(ADK)は、2分子のADPからATP、AMPを1分子ずつ生成する反応を触媒する活性を有する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本発明において、当該活性をADK活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのAMPを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。
(測定条件)
10mM ADP、70mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のAMPを定量した。
上記高速液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。この条件ではアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(5’−アデニル酸)(AMP)の順で溶出する。
[HPLC条件]
カラム:ODS−HG−3(4.6mmφ×150mm、野村化学社製);
溶離液:リン酸2水素カリウム12.2g及びヘプタンスルホン酸ナトリウム3.6gを蒸留水1.8Lで溶解した後、該溶液をリン酸でpH2.8に調整し、メタノール186mlを追加して溶解した液;
流速:1.0ml/分;
カラム温度:40℃;
測定波長:210nm
ADKとしてはタンパク質1mgあたりのADK活性(比活性)が20U以上のものを使用することが好ましい。
ADKの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来ADKが好ましい。特に細菌由来ADKが好ましく、具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来ADKが好ましい。
エシェリヒア・コリ由来のADKの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号13及び配列番号14に示す。
ADKとしてはまた、配列番号14に示すアミノ酸配列からなるADKに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、ADK活性を有する他のポリペプチドも使用できる。ADK活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号14に示すアミノ酸配列からなるADKを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。上記の活性変異体、他種オルソログ等の、ADK活性を有する他のポリペプチドには、例えば、配列番号14に示すアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号14に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)や、配列番号14に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドが該当する。更に、配列番号14に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号14に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなる前記ポリペプチド、並びに、配列番号14に示すアミノ酸配列に対して前記のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドの、ADK活性を有する断片も、前記他のポリペプチドとして使用することができ、該断片としては、アミノ酸数が好ましくは100以上、より好ましくは150以上、より好ましくは200以上のポリペプチドを用いることができる。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号14に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。ここで「複数個」の好適な範囲、アミノ酸同一性の算出方法、保存的アミノ酸置換についてはGSH Iに関して説明した通りである。前記各ポリペプチドは適宜化学修飾されていてもよい。
ADKの調製に用いることができる、ADKをコードする遺伝子(DNA又はRNA)の塩基配列は、配列番号13に示す塩基配列には限定されず、目的とするADKのアミノ酸配列をコードする、宿主生物の種類に応じた適当な塩基配列であることができる。
<PAP>
本発明に用いられるポリリン酸依存的AMPトランスフェラーゼ(PAP)は、ポリリン酸をリン酸ドナーとしてAMPをリン酸化してADPを生成する反応を触媒する活性を有する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本発明において、当該活性をPAP活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのADPを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。
(測定条件)
5mM メタリン酸ナトリウム、10mM AMP、70mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のADPを定量した。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、ADKの活性測定法に関して上述したのと同じ条件を用いる。
PAPとしてはタンパク質1mgあたりのPAP活性(比活性)が20U以上のものを使用することが好ましい。
PAPの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来PAPが好ましい。特に細菌由来PAPが好ましく、具体的にはアシネトバクター・ジョンソニ(Acinetobacter johnsonii)由来PAPが好ましい。
アシネトバクター・ジョンソニ由来のPAPの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号15及び配列番号16に示す。また、配列番号8の第4塩基〜第1428塩基からなる塩基配列は、配列番号16に示すアミノ酸配列からなるアシネトバクター・ジョンソニ由来PAPをコードする塩基配列であって、大腸菌でのコドン使用頻度に適合させた塩基配列の例である。
PAPとしてはまた、配列番号16に示すアミノ酸配列からなるPAPに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、PAP活性を有する他のポリペプチドも使用できる。PAP活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号16に示すアミノ酸配列からなるPAPを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。上記の活性変異体、他種オルソログ等の、PAP活性を有する他のポリペプチドには、例えば、配列番号16に示すアミノ酸配列において、1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号16に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)や、配列番号16に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドが該当する。更に、配列番号16に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号16に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなる前記ポリペプチド、並びに、配列番号16に示すアミノ酸配列に対して前記のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドの、PAP活性を有する断片も、前記他のポリペプチドとして使用することができ、該断片としては、アミノ酸数が好ましくは250以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上のポリペプチドを用いることができる。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号16に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。ここで「複数個」の好適な範囲、アミノ酸同一性の算出方法、保存的アミノ酸置換についてはGSH Iに関して説明した通りである。前記各ポリペプチドは適宜化学修飾されていてもよい。
PAPの調製に用いることができる、PAPをコードする遺伝子(DNA又はRNA)の塩基配列は、配列番号15に示す塩基配列には限定されず、目的とするPAPのアミノ酸配列をコードする、宿主生物の種類に応じた適当な塩基配列であることができる。
<酵素の調製>
本発明で用いる上記の各酵素を取得する方法は特に限定されない。上記各酵素は該酵素の活性を有する生物、例えば微生物の野生株又は変異株から調製することができる。目的とする酵素の活性を有する生物としては、本来的に該酵素の活性を有する生物と、該酵素の活性が増強された生物とのどちらでもよい。酵素の活性が増強された生物としては、遺伝子工学の手法により上記各酵素をコードする遺伝子の発現が増強された組換え生物細胞が挙げられる。なお「酵素の活性が増強された生物」とは、本来的に該酵素の活性を有する生物において該酵素の活性が増大された生物と、本来的には該酵素の活性を有さない生物において該酵素の活性が付与された生物との両方を包含する。
遺伝子工学の手法を用いて得られる組換え生物細胞とは、典型的には、目的の酵素をコードする遺伝子(DNA又はRNA)を適当なベクターに挿入して組換えベクターとし、該組換えベクターにより適当な宿主生物細胞を形質転換して得られる、該酵素を生産する能力を有する組換え生物細胞である。該組換え生物細胞を培養することにより目的とする上記各酵素を製造することができる。宿主生物細胞としては細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、導入及び発現効率の観点から細菌が好ましく、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
<工程A及び工程A’>
本発明による酸化型γ−グルタミルシステインの製造方法は、γ−グルタミルシステイン合成酵素及び2機能性グルタチオン合成酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素とATPとの存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程Aを含むことを特徴とする。
本発明による酸化型γ−グルタミルシステインの製造方法はまた、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’を含むことを特徴とする。工程A’は酵素反応により行ってもよいし、酵素を用いず化学的な反応により行ってもよいが、好ましくは酵素反応により行う工程であり、特に好ましくは前記工程Aである。酵素反応によれば基質化合物の官能基による保護等が不要であることや、反応の特異性が高いことなどの理由で化学的合成反応よりも有利である。
酵素を用いない化学的な反応による工程A’としては、特に限定されないが、例えば、2つのカルボキシル基を適当な保護基で保護したL−シスチンと、α−カルボキシル基及びアミノ基を適当な保護基で保護したL−グルタミン酸とを反応させて、L−シスチン1分子中の2つのアミノ基の各々に対し1分子のL−グルタミン酸のγ−カルボキシル基を脱水縮合させてペプチド結合を形成する工程が挙げられる。該工程では脱水縮合反応後に必要に応じて保護基の1つ以上を脱保護する。カルボキシル基に対する保護基としてはベンジル基等の公知のカルボキシル基用保護基が使用でき、アミノ基に対する保護基としてはt−ブトキシカルボニル(Boc)基、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基等の公知のアミノ基用保護基が使用できる。
工程AにおいてGSH I及び/又はGSH Fは、GSH I及び/又はGSH F活性を有する生物の細胞を生細胞のまま用いてもよいし、死滅しているが損傷していない前記細胞の形態で用いてもよいし、GSH I及び/又はGSH Fが細胞外に存在する形態、具体的には、前記生物の細胞の粉砕物(破砕物と同義)の形態で用いてもよいし、前記細胞から分離され精製されたタンパク質の形態で用いてもよい。ここでGSH I及び/又はGSH F活性を有するタンパク質の精製の程度は特に限定されず、粗精製であってもよい。好ましくは、工程AにおいてGSH I及び/又はGSH F活性を有する生細胞を用いず、より好ましくは、工程AにおいてGSH I及び/又はGSH F活性を有する生細胞及び損傷していない死滅細胞を用いない。特に、細胞外に存在するGSH I及び/又はGSH F、具体的には、前記細胞の粉砕物の形態のGSH I及び/又はGSH F、又は、前記細胞から分離され精製されたタンパク質の形態のGSH I及び/又はGSH Fを用いる場合、生細胞を用いる場合と比較して、反応混合液中で原料であるL−シスチン及び生成物である酸化型γ−グルタミルシステインが酸化型のまま保持され易いと考えられ、酸化型γ−グルタミルシステインを効率的に得ることができるため好ましい。細胞外に存在するGSH I及び/又はGSH Fを工程Aに用いる場合、反応系内に生細胞による還元作用が存在しないため上記の作用が生じると推定される。この傾向は反応混合液が空気と接触する条件にあるときに特に顕著である。また、GSH I及び/又はGSH Fを、当該活性を有する生細胞の形態で工程Aに用いる場合は、反応系中でアデノシン一リン酸(AMP)が分解され易い傾向がある。AMPは後述するATP再生反応の中間体の1つであるため、AMPが分解されると、ATP再生反応の効率が低下する。一方、細胞外に存在するGSH I及び/又はGSH Fを工程Aに用いる場合はAMPの分解が生じ難く、ATP再生反応を効率的に進めることができるため好ましい。すなわち、細胞外に存在するGSH I及び/又はGSH Fを用いて本発明の工程Aを行うことにより、AMPの分解抑制と酸化型γ−グルタミルシステインの還元抑制を両立させることが可能となる。
本明細書において細胞の「粉砕」(「破砕」と同義)とは、細胞内で形成された酵素が細胞外からアクセス可能な程度に細胞の表面構造に損傷を与える処理を指し、必ずしも細胞が断片化される必要はない。本明細書において細胞の「粉砕物」(「破砕物」)は、粉砕処理された細胞の処理物を指す。細胞の粉砕処理(破砕処理)は、1つ又は複数の粉砕処理を適当な順序で行うことにより実施できる。細胞の粉砕処理としては、物理的処理、化学的処理、酵素的処理等を挙げることができる。物理的処理としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、フレンチプレス、ボールミル等の使用、或いは、これらの組み合わせを挙げることができる。上記化学的処理としては、例えば、塩酸、硫酸等の酸(好ましくは強酸)を用いる処理、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基(好ましくは強塩基)を用いる処理等や、これらの組み合わせを挙げることができる。上記酵素的処理としては、例えば、リゾチーム、ザイモリアーゼ、グルカナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ等を用いる方法や、これらの組み合わせを挙げることができる。
工程A及び/又は工程A’において基質として用いるL−シスチン及びL−グルタミン酸並びに工程Aに用いるATPはそれぞれ塩の形態、フリー体の形態、水和物等の溶媒和物の形態等の各種の形態で反応系中に添加することができる。
工程A及び/又は工程A’の反応系(例えば反応混合液)中にはL−システインは実質的に含まれず、具体的には、工程A及び/又は工程A’の反応系中では、L−シスチンとL−システインとの総モル量に対してL−シスチンが70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、最も好ましくは100モル%含まれる。L−シスチンとL−システインとの総モル量に対するL−シスチンの割合が前記範囲内であるという要件は、少なくとも工程A及び/又は工程A’の反応開始時において満足されることが好ましく、工程A及び/又は工程A’の反応開始時から反応後までの期間に満足されることがより好ましい。
工程Aでは、GSH I及び/又はGSH Fを、ATPの存在下でL−シスチンとL−グルタミン酸とを含む反応系に作用させる。反応は適当なpHに調整された水等の溶媒を含む反応混合液中で行うことができる。このときの条件としては特に限定されないが、基質濃度(L−シスチンとL−グルタミン酸との合計濃度)は好ましくは約0.1〜99重量%、より好ましくは1〜20重量%とすることができる。反応開始時の基質中のL−シスチンとL−グルタミン酸との量比は、L−シスチン1モルに対してL−グルタミン酸を2モル前後とすることができ、例えばL−シスチン1モルに対してL−グルタミン酸を1〜4モル、好ましくは1.5〜3モルとすることができる。反応温度は好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜50℃とすることができる。反応のpHは好ましくは4〜11、より好ましくは6〜9とすることができる。反応時間は好ましくは1〜120時間、より好ましくは1〜72時間とすることができる。反応混合液が空気と接触した状態で工程A及び/又は工程A’の反応を進める場合、原料であるL−シスチン及び生成物である酸化型γ−グルタミルシステインが酸化型のまま保持され易いため好ましい。工程A及び/又は工程A’での反応後の反応系(例えば反応混合液)中には還元型γ−グルタミルシステインは実質的に含まれず、具体的には、工程A及び/又は工程A’での反応後の反応系中には、酸化型γ−グルタミルシステインと還元型γ−グルタミルシステインとの総モル量に対して酸化型γ−グルタミルシステインが70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、最も好ましくは100モル%含まれる。
反応混合液中の各酵素の濃度は適宜調整することができ、例えば各酵素のタンパク質濃度として下限が1μg/ml以上、上限は特に設けないが好ましくは100mg/ml以下の範囲内で適宜調整することができる。工程AにGSH Iが用いられる場合、工程A反応混合液中のGSH I活性は特に限定されないが下限は0.1U/ml以上が好ましく、上限は特に設けないが通常は10000U/ml以下とすることができる。工程AにGSH Fが用いられる場合、工程A反応混合液中のGSH F活性は特に限定されないが下限は0.1U/ml以上が好ましく、上限は特に設けないが通常は10000U/ml以下とすることができる。
反応混合液中のATPの濃度は、基質であるシスチンの濃度やATP再生系の有無に応じて適宜調整することができる。工程Aにおいて、ATPはシスチンに対しモル比で2倍消費される。工程AをATP再生反応と共役させて実施する場合は、シスチンに対するATPの添加量を大幅に低減することができる。そこで、工程Aにおける反応混合液中のATP濃度の上限は特に限定されないが、シスチン濃度に対してモル濃度比で4倍以下が好ましく、2.2倍以下がより好ましい。また、工程Aにおける反応混合液中のATP濃度の下限は特に限定されないが、シスチン濃度に対してモル濃度比で0.0001倍以上が好ましく、0.001倍以上がより好ましく、0.01倍以上が更に好ましい。
<工程B及び工程B’>
本発明による酸化型グルタチオン(GSSG)の製造方法は、グルタチオン合成酵素(GSH II)とATPとの存在下で、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程Bを含むことを特徴とする。
本発明によるGSSGの製造方法はまた、GSH IIとATPとの存在下で、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程B’を含むことを特徴とする。工程B’は酵素反応により行ってもよいし、酵素を用いず化学的な反応により行ってもよいが、好ましくは酵素反応により行う工程であり、特に好ましくは前記工程Bである。酵素反応によれば基質化合物の官能基による保護等が不要であることや、反応の特異性が高いことなどの理由で化学的合成反応よりも有利である。
酵素を用いない化学的な反応による工程B’としては、特に限定されないが、例えば、L−グルタミン酸残基中のα−カルボキシル基及びアミノ基を適当な保護基で保護した酸化型γ−グルタミルシステインと、カルボキシル基を適当な保護基で保護したグリシンとを反応させて、酸化型γ−グルタミルシステイン1分子中の2つのカルボキシル基の各々に対して1分子のグリシンのアミノ基を脱水縮合させてペプチド結合を形成する工程が挙げられる。該工程では脱水縮合反応後に必要に応じて保護基の1つ以上を脱保護する。カルボキシル基に対する保護基としてはベンジル基等の公知のカルボキシル基用保護基が使用でき、アミノ基に対する保護基としてはt−ブトキシカルボニル(Boc)基、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基等の公知のアミノ基用保護基が使用できる。
工程BにおいてGSH IIは、GSH II活性を有する生物の細胞を生細胞のまま用いてもよいし、死滅しているが損傷していない前記細胞の形態で用いてもよいし、GSH IIが細胞外に存在する形態、具体的には、前記生物の細胞の粉砕物(破砕物と同義)の形態で用いてもよいし、前記細胞から分離され精製されたタンパク質の形態で用いてもよい。ここでGSH II活性を有するタンパク質の精製の程度は特に限定されず、粗精製であってもよい。細胞の「粉砕物」については既述の通りである。好ましくは、工程BにおいてGSH II活性を有する生細胞を用いない。好ましくは、工程BにおいてGSH II活性を有する生細胞を用いず、より好ましくは、工程BにおいてGSH II活性を有する生細胞及び損傷していない死滅細胞を用いない。特に、細胞外に存在するGSH II、具体的には、前記細胞の粉砕物の形態のGSH II、又は、前記細胞から分離され精製されたタンパク質の形態のGSH IIを用いる場合、生細胞を用いる場合と比較して、反応混合液中で原料である酸化型γ−グルタミルシステイン及び生成物である酸化型グルタチオンが酸化型のまま保持され易いと考えられ、酸化型グルタチオンを効率的に得ることができるため好ましい。細胞外に存在するGSH IIを工程Bに用いる場合、反応系内に生細胞による還元作用が存在しないため上記の作用が生じると推定される。この傾向は反応混合液が空気と接触する条件にあるときに特に顕著である。また、GSH IIを、当該活性を有する生細胞の形態で工程Bに用いる場合は反応系中でアデノシン一リン酸(AMP)が分解され易い傾向がある。AMPが分解されると、ATP再生反応の効率が低下する。一方、細胞外に存在するGSH IIを工程Bに用いる場合はAMPの分解が生じ難く、ATP再生反応を効率的に進めることができるため好ましい。すなわち、細胞外に存在するGSH IIを用いて本発明の工程Bを行うことにより、AMPの分解抑制と、酸化型グルタチオン及び酸化型γ−グルタミルシステインの還元抑制とを両立させることが可能となる。
工程B及び/又は工程B’において基質として用いる酸化型γ−グルタミルシステイン及びグリシン並びに工程Bに用いるATPはそれぞれ塩の形態、フリー体の形態、水和物等の溶媒和物の形態等の各種の形態で反応系中に添加することができる。
工程B及び/又は工程B’の反応系(例えば反応混合液)中には還元型γ−グルタミルシステインは実質的に含まれず、具体的には、工程B及び/又は工程B’の反応系中では、酸化型γ−グルタミルシステインと還元型γ−グルタミルシステインとの総モル量に対して酸化型γ−グルタミルシステインが70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、最も好ましくは100モル%含まれる。酸化型γ−グルタミルシステインと還元型γ−グルタミルシステインとの総モル量に対する酸化型γ−グルタミルシステインの割合が前記範囲内であるという要件は、少なくとも工程B及び/又は工程B’の反応開始時において満足されることが好ましく、工程B及び/又は工程B’の反応開始時から反応後までの期間に満足されることがより好ましい。
工程Bでは、GSH IIを、ATPの存在下で酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを含む反応系に作用させる。反応は適当なpHに調整された水等の溶媒を含む反応混合液中で行うことができる。このときの条件としては特に限定されないが、基質濃度(酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとの合計濃度)は好ましくは約0.1〜99重量%、より好ましくは1〜20重量%とすることができる。反応開始時の基質中の酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとの量比は、酸化型γ−グルタミルシステイン1モルに対してグリシンを2モル前後とすることができ、例えば酸化型γ−グルタミルシステイン1モルに対してグリシンを1〜4モル、好ましくは1.5〜3モルとすることができる。反応温度は好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜50℃とすることができる。反応のpHは好ましくは4〜11、より好ましくは6〜9とすることができる。反応時間は好ましくは1〜120時間、より好ましくは1〜72時間とすることができる。反応混合液が空気と接触した状態で工程B及び/又は工程B’の反応を進める場合、原料である酸化型γ−グルタミルシステインと生成物である酸化型グルタチオンが酸化型のまま保持され易いため好ましい。工程B及び/又は工程B’での反応後の反応系(例えば反応混合液)中には還元型グルタチオンは実質的に含まれず、具体的には、工程B及び/又は工程B’での反応後の反応系中には、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンとの総モル量に対して酸化型グルタチオンが70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、最も好ましくは100モル%含まれる。
工程Bで原料となる酸化型γ−グルタミルシステインは上記工程Aにより得ることができる。工程A終了後の反応混合物から酸化型γ−グルタミルシステインを分離し、工程Bに用いてもよいし、酸化型γ−グルタミルシステインを分離することなく、工程A終了後の反応混合物にGSH IIとグリシンとを追加して工程Bを行ってもよい。或いは、工程Aを、GSH IIとグリシンの各要素のうち少なくとも1つが不足し工程Bが進行しない条件で行い、次いで工程A終了後の反応混合液から酸化型γ−グルタミルシステインを分離することなく前記不足していた要素を反応混合液に追加して工程Bを行ってもよい。
また工程Aの反応と工程Bの反応とは順次行う必要はなく同時に行ってもよい。すなわち、L−シスチンと、L−グルタミン酸と、グリシンとを含む原料混合物を、工程Aに用いる上記酵素と工程Bに用いる上記酵素とATPとの存在下で反応させてもよい。この実施形態もまた、工程Bに原料として用いられる酸化型γ−グルタミルシステインが工程Aにより生成されたものである本発明の実施形態の1つである。
同様に、工程B’で原料となる酸化型γ−グルタミルシステインは上記工程A’により得ることができる。工程A’終了後の反応混合物から酸化型γ−グルタミルシステインを分離し、工程B’に用いてもよいし、酸化型γ−グルタミルシステインを分離することなく、工程A’終了後の反応混合物にグリシンを追加し適宜反応条件を調整して工程B’を行ってもよい。また、工程A’の反応と工程B’の反応とは順次行う必要はなく同時に行ってもよい。すなわち、L−シスチンと、L−グルタミン酸と、グリシンとを含む原料混合物を反応させてもよい。この実施形態もまた、工程B’に原料として用いられる酸化型γ−グルタミルシステインが工程A’により生成されたものである本発明の実施形態の1つである。
反応混合液中の各酵素の濃度は適宜調整することができ、例えば各酵素のタンパク質濃度として下限が1μg/ml以上、上限は特に設けないが好ましくは100mg/ml以下の範囲内で適宜調整することができる。工程BにGSH IIが用いられる場合、工程Bの反応混合液中のGSH II活性は特に限定されないが下限は0.1U/ml以上が好ましく、上限は特に設けないが通常は10000U/ml以下とすることができる。
反応混合液中のATPの濃度は、基質である、酸化型γ−グルタミルシステインの濃度やATP再生系の有無に応じて適宜調整することができる。工程Bにおいて、ATPは、酸化型γ−グルタミルシステインに対しモル比で2倍消費される。工程BをATP再生反応と共役させて実施する場合は、酸化型γ−グルタミルシステインに対するATPの添加量を大幅に低減することができる。そこで、工程Bにおける反応混合液中のATP濃度の上限は特に限定されないが、酸化型γ−グルタミルシステイン濃度に対してモル濃度比で4倍以下が好ましく、2.2倍以下がより好ましい。また、工程Bにおける反応混合液中のATP濃度の下限は特に限定されないが、酸化型γ−グルタミルシステイン濃度に対してモル濃度比で0.0001倍以上が好ましく、0.001倍以上がより好ましく、0.01倍以上が更に好ましい。
<ATP再生反応>
工程A及びBはいずれもATPを消費しADPを生成する工程である。ATPは比較的高価な原料であるため、工程A及びBを、該工程で生じたADPからATPを再生するATP再生反応と共役させて行うことが好ましい。
ATP再生反応としては、リン酸基供給源とホスホトランスフェラーゼとを用いてADPをATPへと再生する反応が挙げられる。
ATP再生反応のスキームの一例を以下に示す。該スキームは、リン酸基供給源としてポリリン酸(縮合リン酸)を用い、ホスホトランスフェラーゼとして、ポリリン酸依存的AMPトランスフェラーゼ(PAP)とアデニル酸キナーゼ(ADK)との組み合わせを用いるATP再生反応のスキームである。
スキームにおいて、AMPはアデノシン一リン酸を示し、PAPはポリリン酸依存的AMPトランスフェラーゼを示し、ADKはアデニル酸キナーゼを示し、PolyPはリン原子がn個のポリリン酸(縮合リン酸)を示し、PolyPn-1はリン原子がn−1個のポリリン酸(縮合リン酸)を示し、「反応原料」は工程A又はBでの反応原料を示し、「生成物」は工程A又はBでの生成物を示す。
すなわち、工程A及びBをポリリン酸とPAPとADKとの存在下で行うことにより、ATPが消費されて生じたADPはADKの作用によりATPとAMPとに変換され、ADKの作用により生じたAMPはPAPの作用によりADPに変換される。このATP再生反応は工程A及びBの反応と共役することができる。
ADK及びPAPとしては、各酵素の活性を有する生物の細胞を生細胞のまま用いてもよいし、死滅しているが損傷していない前記細胞の形態で用いてもよいし、ADK及び/又はPAPが細胞外に存在する形態、具体的には、前記生物の細胞の粉砕物(破砕物と同義)の形態で用いてもよいし、前記細胞から分離され精製されたタンパク質の形態で用いてもよい。ここでADK又はPAPの各活性を有するタンパク質の精製の程度は特に限定されず、粗精製であってもよい。細胞の「粉砕物」については既述の通りである。好ましくは、工程A又はBにおいてADK及び/又はPAP活性を有する生細胞を用いず、より好ましくは、工程A又はBにおいてADK及び/又はPAP活性を有する生細胞及び損傷していない死滅細胞を用いない。
ATP再生反応で用いる酵素としては、細胞外に存在するADK及び/又はPAP、具体的には、前記細胞の粉砕物の形態のADK及び/又はPAP、又は、前記細胞から分離されたタンパク質の形態のADK及び/又はPAPを用いることが好ましい。ADK及び/又はPAPを、当該活性を有する生細胞の形態でATP再生反応に用いる場合はAMPが分解され易い傾向がある。AMPが分解されると、ATP再生反応の効率が低下する。一方、細胞外に存在するADK及び/又はPAPをATP再生反応に用いる場合はAMPの分解は生じ難く、ATP再生反応を効率的に進めることができるため好ましい。なお、生細胞を用いず工程A及び/又は工程Bを行う場合、生細胞による還元作用が存在しないために、酸化型γ−グルタミルシステイン及び/又は酸化型グルタチオンの還元を抑制することができ有利である。すなわち、細胞外に存在するADK及び/又はPAPをATP再生反応に用い本発明の工程A及び/又は工程Bを行うことにより、AMPの分解抑制と酸化型γ−グルタミルシステイン及び/又は酸化型グルタチオンの還元抑制を両立させることが可能となる。
ATP再生反応に用いる各酵素の反応混合液中での濃度は適宜調整することができ、例えば各酵素のタンパク質濃度として下限が1μg/ml以上、上限は特に設けないが好ましくは100mg/ml以下の範囲内で適宜調整することができる。工程A又はBにATP再生反応を共役させる場合、反応混合液中のADK活性は特に限定されないが下限は5U/ml以上が好ましく、上限は特に設けないが通常は500000U/ml以下とすることができ、反応混合液中のPAP活性は特に限定されないが下限は1U/ml以上が好ましく、上限は特に設けないが通常は100000U/ml以下とすることができる。
ポリリン酸(縮合リン酸)添加量は反応基質の量に応じて適宜調節すればよい。ポリリン酸はナトリウム塩、カリウム塩等の塩の形態、フリー体の形態、水和物等の溶媒和物の形態等の各種の形態で添加することができる。ポリリン酸の重合度(1分子あたりのリン原子数)は特に限定されない。なお、実施例及び比較例で使用したメタリン酸Naは種々の重合度の縮合リン酸ナトリウム塩の混合物であった。
<実験1>
大腸菌K12株由来γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH I)の調製
大腸菌K12株に由来するGSH I遺伝子(配列番号1)のN末端部分の塩基配列に制限酵素SacIの切断部位及びSD配列を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−1:配列番号2)と、C末端部分の塩基配列に制限酵素KpnI切断部位を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−2:配列番号3)を調製した。このDNAプライマーを用いて、この配列の間のDNAをPCRにより増幅することでGSH I遺伝子の全長を含むDNA断片を取得した。このときPCR増幅に用いた鋳型は大腸菌K12株のゲノムDNAである。得られたDNA断片の塩基配列を解析し、GSH I遺伝子の全長(配列番号1)が含まれていることを確認した。得られたDNA断片をプラスミドpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)のlacプロモーターの下流のSacI認識部位とKpnI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpUCGSHIを構築した。この組換えベクターpUCGSHIを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pUCGSHI)を得た。得られた形質転換体を、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)50mlに接種し、37℃で24時間振とう培養した。酵素活性を測定すると、GSH I活性は5U/ml、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADK活性は90U/mlであった。続いて、遠心分離により菌体を集め、2.5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁、超音波破砕し酵素液とした。
<実験2>
大腸菌K12株由来グルタチオン合成酵素(GSH II)の調製
大腸菌K12株に由来するGSH II遺伝子(配列番号4)のN末端部分の塩基配列に制限酵素NdeIの切断部位を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−3:配列番号5)と、C末端部分の塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を結合させた配列をもつDNAプライマー(Primer−4:配列番号6)を調製した。このDNAプライマーを用いて、この配列の間のDNAをPCRにより増幅することでGSH II遺伝子の全長を含むDNA断片を取得した。このときPCR増幅に用いた鋳型は大腸菌K12株のゲノムDNAである。得られたDNA断片の塩基配列を解析し、GSH II遺伝子の全長(配列番号4)が含まれていることを確認した。得られたDNA断片をプラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とEcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNGSHIIを構築した。この組換えベクターpNGSHIIを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNGSHII)を得た。得られた形質転換体を、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)50mlに接種し、37℃で24時間振とう培養した。酵素活性を測定すると、GSH II活性は5U/ml、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADK活性は90U/mlであった。続いて、遠心分離により菌体を集め、2.5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁、超音波破砕し酵素液とした。
<実験3>
ストレプトコッカス・アガラクチエ由来2機能性グルタチオン合成酵素(GSH F)の調製
大腸菌での発現用にコドンを最適化し、N末端部分の塩基配列に制限酵素NdeIの切断部位、C末端部分の塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を結合させたストレプトコッカス・アガラクチエ由来のGSH F遺伝子断片(配列番号7)を遺伝子合成法にて取得(ユーロジェンテック社製)した。得られた遺伝子断片をプラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とEcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNGSHFを構築した。この組換えベクターpNGSHFを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNGSHF)を得た。得られた形質転換体を、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)50mlに接種し、37℃で24時間振とう培養した。酵素活性を測定すると、GSH F活性は3U/ml、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADK活性は90U/mlであった。続いて、遠心分離により菌体を集め、2.5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁、超音波破砕し酵素液とした。
<実験4>
アシネトバクター・ジョンソニ由来AMPホスホトランスフェラーゼ(PAP)の調製
大腸菌での発現用にコドンを最適化し、N末端部分の塩基配列に制限酵素NdeIの切断部位、C末端部分の塩基配列に制限酵素EcoRI切断部位を結合させたアシネトバクター・ジョンソニ由来のPAP遺伝子断片(配列番号8)を遺伝子合成法にて取得(ユーロジェンテック社製)した。得られた遺伝子断片をプラスミドpUCN18(PCR法によりpUC18(タカラバイオ社製、GenBank Accession No.L09136)の185番目のTをAに改変してNdeIサイトを破壊し、更に471−472番目のGCをTGに改変することにより新たにNdeIサイトを導入したプラスミド)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とEcoRI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNPAPを構築した。この組換えベクターpNPAPを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNPAP)を得た。得られた形質転換体を、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)50mlに接種し、37℃で24時間振とう培養した。酵素活性を測定すると、PAP活性は40U/ml、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADK活性は90U/mlであった。続いて、遠心分離により菌体を集め、2.5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁、超音波破砕し酵素液とした。
<収率の算出>
本明細書の実験における各化合物の収率の算出方法は以下の通り。
反応生成物を高速液体クロマトグラフィーにて分析することにより定量し、下記式により収率を求めた。
収率:各化合物の生成量(mol)/初発のL−シスチン(mol)×100
上記高速液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。この溶出条件では、還元型グルタチオン(GSH)、還元型γ−グルタミルシステイン(γ−GC)、酸化型γ−GC、酸化型グルタチオン(GSSG)の順で溶出する。
[収率の分析]
カラム:ODS−HG−3(4.6mmφ×150mm、野村化学社製);
溶離液:リン酸2水素カリウム12.2g及びヘプタンスルホン酸ナトリウム3.6gを蒸留水1.8Lで溶解し、該溶液をリン酸でpH2.8に調整し、メタノール186mlを追加して溶解した液;
流速:1.0ml/分;
カラム温度:40℃;
測定波長:210nm。
<実施例1>
L−グルタミン酸Na1水和物0.3629g(2.15mmol)、L−シスチン2塩酸塩0.3113g(0.99mmol)、硫酸マグネシウム7水和物0.7079g、ATP0.0583g(0.11mmol)、メタリン酸Na0.8g、蒸留水12gを混合し、15重量%水酸化ナトリウム水溶液0.8gでpHを7.5に調整した。そこへ実験1で調製したγ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH I)酵素液を2g、実験4で調製したPAP酵素液2gを添加し、反応開始した。反応温度は30℃で行なった。1時間反応後に反応液を分析したところ、酸化型γ−グルタミルシステインの生成が確認できた。収率は、対初発L−シスチンで1時間反応後に20mol%であり、22時間反応後に95mol%であった。この際、22時間反応後の還元型γ−グルタミルシステインの生成量は、対初発L−シスチンで1mol%以下であった。
なお、実験1で調製したGSH I酵素液と実験4で調製したPAP酵素液には、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADKが含まれるため、ADKを別途調製する必要はなかった。
<実施例2>
上記実施例1の反応22時間後の反応液にグリシン0.19g(2.53mmol)、実験2で調製したグルタチオン合成酵素(GSH II)酵素液を2g、実験4で調製したPAP酵素液2gを添加し、反応を開始した。この際、15質量%水酸化ナトリウム水溶液0.2gでpHを7.5に調整した。1時間反応後で反応液を分析したところ、酸化型グルタチオンの生成が確認できた。収率は、対初発L−シスチンで1時間反応後に20mol%であり、6時間反応後に86mol%であった。この際、6時間反応後の還元型グルタチオンの生成量は、対初発L−シスチンで1mol%以下であった。
なお、実験2で調製したGSH II酵素液と実験4で調製したPAP酵素液には、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADKが含まれるため、ADKを別途調製する必要はなかった。
<実施例3>
L−グルタミン酸Na1水和物0.0717g(0.42mmol)、L−シスチン2塩酸塩0.0643g(0.21mmol)、硫酸マグネシウム7水和物0.2053g、ATP0.24g(0.44mmol)、蒸留水17gを混合し、15重量%水酸化ナトリウム水溶液0.26gでpHを7.5に調整した。そこへ実験1で調製したγ−グルタミルシステイン合成酵素(GSH I)酵素液2gを添加し、反応開始した。反応温度は30℃で行なった。2時間反応後に反応液を分析したところ、酸化型γ−グルタミルシステインの生成が確認できた。収率は、対初発L−シスチンで2時間反応後に12mol%であり、23時間反応後に95mol%であった。この際、23時間反応後の還元型γ−グルタミルシステインの生成量は、対初発L−シスチンで1mol%以下であった。
<実施例4>
上記実施例3の反応23時間後の反応液にグリシン0.0426g(0.57mmol)、硫酸マグネシウム7水和物0.2064g、ATP0.2392g(0.4mmol)、実験2で調製したグルタチオン合成酵素(GSH II)酵素液2gを添加し、反応を開始した。この際、15質量%水酸化ナトリウム水溶液0.2gでpHを7.5に調整した。1時間反応後で反応液を分析したところ、酸化型グルタチオンの生成が確認できた。収率は、対初発L−シスチンで1時間反応後に6mol%であり、5時間反応後に70mol%であった。この際、5時間反応後の還元型グルタチオンの生成量は、対初発L−シスチンで1mol%以下であった。
<実施例5>
L−グルタミン酸Na1水和物0.3662g(2.17mmol)、L−シスチン2塩酸塩0.3121g(1.00mmol)、硫酸マグネシウム7水和物0.7019g、ATP0.058g(0.11mmol)、メタリン酸Na0.8g、蒸留水12gを混合し、15重量%水酸化ナトリウム水溶液0.8gでpHを7.5に調整した。そこへ実験3で調製した2機能性グルタチオン合成酵素(GSH F)酵素液を2g、実験4で調製したPAP酵素液2gを添加し、反応開始した。反応温度は30℃で行なった。1時間反応後に反応液を分析したところ、酸化型γ−グルタミルシステインの生成が確認できた。収率は、対初発L−シスチンで1時間反応後に9mol%であり、19時間反応後に61mol%であった。この際、19時間反応後の還元型γ−グルタミルシステインの生成量は、対初発L−シスチンで1mol%以下であった。
なお、実験3で調製したGSH F酵素液と実験4で調製したPAP酵素液には、宿主細胞として用いたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に由来するADKが含まれるため、ADKを別途調製する必要はなかった。
配列番号2:プライマー
配列番号3:プライマー
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (14)

  1. L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’を含むことを特徴とする、酸化型γ−グルタミルシステインの製造方法。
  2. 前記工程A’が、γ−グルタミルシステイン合成酵素及び2機能性グルタチオン合成酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素とアデノシン三リン酸(ATP)との存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程Aである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程Aが、アデノシン二リン酸(ADP)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記γ−グルタミルシステイン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記2機能性グルタチオン合成酵素がストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)由来である、請求項2又は3に記載の方法。
  6. 酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程B’を含むことを特徴とする、酸化型グルタチオンの製造方法。
  7. 前記工程B’が、グルタチオン合成酵素とアデノシン三リン酸(ATP)との存在下で、酸化型γ−グルタミルシステインとグリシンとを反応させることにより酸化型グルタチオンを生成する工程Bである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記工程Bが、アデノシン二リン酸(ADP)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記グルタチオン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、請求項7又は8に記載の方法。
  10. L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程A’を更に含み、
    前記工程B’に用いられる酸化型γ−グルタミルシステインが、前記工程A’により生成されたものである、
    請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記工程A’が、γ−グルタミルシステイン合成酵素及び2機能性グルタチオン合成酵素からなる群から選択される少なくとも1種の酵素とアデノシン三リン酸(ATP)との存在下で、L−シスチンとL−グルタミン酸とを反応させることにより酸化型γ−グルタミルシステインを生成する工程Aである、
    請求項10に記載の方法。
  12. 前記工程Aが、アデノシン二リン酸(ADP)をATPへと再生するATP再生反応と共役させて行われる、請求項11に記載の方法。
  13. 前記γ−グルタミルシステイン合成酵素がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記2機能性グルタチオン合成酵素がストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)由来である、請求項11又は12に記載の方法。
JP2016531446A 2014-07-02 2015-07-02 酸化型γ−グルタミルシステイン及び酸化型グルタチオンの製造方法 Ceased JPWO2016002884A1 (ja)

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