JPWO2016002643A1 - レーザ加工用マスク - Google Patents

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Abstract

レーザ光を通過させるためにマスク本体(41)にピンホール(42)を貫通形成したレーザ加工用マスク(40)であって、マスク本体(41)のレーザ光の入射側にピンホールの軸線に対して傾斜した反射面(43)が切削、研削又は研磨加工により形成され、反射面(43)における傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さく形成することにより、レーザ照射中のマスクからの戻り光をほぼ無くし、レーザ光のモード劣化や発振出力の低下を防止する。

Description

本発明は、レーザ加工装置に用いられるマスクに関するものである。
従来、例えば特許文献1に記載のように、レーザ光源から出射されたレーザ光を反射ミラーで反射させ、マスクの中を通過させた後、再度反射ミラーで反射させ、レンズで集光して被加工物上に照射するレーザ加工装置が知られている。マスクは回転板に周方向に複数個取り付けられており、回転板を回転させることにより、加工目的に沿ったマスクがレーザ光の光軸上に配置される。
特許文献1に記載のマスク60は、図7に示すように、回転板に位置調整可能に取り付けられたスライダ70の穴71に螺着されている。マスク60のレーザ光入射側にはフランジ部61が形成され、中心部にはマスクパターンとなるピンホール63が形成されている。フランジ部61のレーザ光入射側の端面には円錐状のテーパ面62が形成されており、レーザ光Lの一部L2はピンホール63を通過し、残りのレーザ光L1はテーパ面62で反射し、反射光L1のエネルギーがドーナツ状のダンパ72で吸収される。
テーパ面62には、反射効率を向上させるためのコート処理又は切削加工が施されている。テーパ面62にコート処理を施した場合には、加工コストがかかると共に、コーティングが剥れる可能性がある。そのため、マスク60の材料としてレーザ光の反射率の高い材料を使用し、マスク60のレーザ光入射側を切削加工してテーパ面62を形成する方が、コスト面および耐久性の面で望ましい。
上述のようにテーパ面62を円錐状に切削加工した場合、微視的に見ると、テーパ面62の表面に切削加工による円周方向の多数の溝又は凹凸62aが形成される。このような凹凸62aによって反射光が散乱し、一部のレーザ光が入射方向と対向方向の戻り光Laとなることがある。そのため、レーザ発振が不安定になり、レーザ光のモード劣化や発振出力の低下が生じるという問題がある。
特開平10−235484号公報
本発明の目的は、レーザ照射中のマスクからの戻り光をほぼ無くすことができ、レーザ光のモード劣化や発振出力の低下を防止できる、レーザ加工用マスクを提供することにある。
本発明は、マスク本体と、レーザ光を通過させるためにマスク本体に貫通形成されたピンホールとを備えたレーザ加工用マスクである。マスク本体のレーザ光の入射側にピンホールの軸線に対して傾斜した反射面が切削加工、研削加工又は研磨加工により形成され、反射面における傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さいことを特徴とする。
反射面が円錐面形状に切削加工又は研削加工されたマスクの場合、円周方向の溝又は凹凸が発生する。つまり、傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより大きい。そのため、反射光が散乱して一部がレーザ発振器への戻り光となる可能性がある。本発明のマスクは、反射面における傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さい。そのため、マスクに入射されたレーザ光は入射方向と異なる方向に散乱しやすく、入射方向と対向方向の反射を抑制できるため、反射光が入射方向と対向方向の戻り光となるのを抑制できる。その結果、レーザ発振が不安定になったり、レーザ光のモード劣化や発振出力の低下が生じたりという問題を抑制できる。
上述のように、傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さい反射面を形成するには、例えば傾斜方向に沿ってマスク本体を切削加工、研削加工又は研磨加工することで、容易に形成できる。反射面には、傾斜方向に沿ったすじ状の凹凸又は溝が形成されるので、傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さくなる。マスクの材料としてレーザ光の反射率の高い材料を使用し、反射面を切削加工、研削加工又は研磨加工により形成した場合には、加工コストを低減でき、かつ反射面をコートした場合のコート剥がれといった問題もなく、耐久性の面で優れている。
反射面は、前記ピンホールの軸線に対して一定角度で傾斜した1つの平面部であってもよいし、角錐面又は円錐面であってもよい。平面部の場合には、マスク本体の端部を一方向に切削加工することにより容易に作製できる。
本発明で適用されるレーザ波長は特に限定されないが、レーザ波長が長くなると、マスクの表面の凹凸の影響を受けにくくなるという性質がある。そのため、レーザ光の波長が短いレーザ(例えばUVレーザなど)に対して本発明は効果的である。マスク本体の材質は、レーザ光の性質に応じて適切に選択可能である。例えばレーザ光としてUVレーザを使用した場合には、マスク本体としてUVレーザの反射率が高いアルミニウムを使用するのが望ましい。
一般的に、波長が短いレーザを使うときほどマスク表面の面粗さを小さくしなければ散乱の影響が生じる。本発明は、面粗さがあらくて散乱が起きたとしても、その散乱の向きを機械加工の方向によって制御できる点に着目している。これにより、鏡面として機能する程度(例えば面粗さRa=1nm以下など)まで面粗さを仕上げなくてもマスクとして機能できる。
以上のように、本発明によれば、マスク本体のレーザ光の入射側にピンホールの軸線に対して傾斜した反射面を切削、研削又は研磨加工により形成し、反射面における傾斜方向と平行な方向の面粗さRayを傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さくしたので、マスクに入射されたレーザ光は、入射方向と異なる方向に散乱しやすく、入射方向と対向方向の反射を抑制できる。そのため、反射光が入射方向と対向方向の戻り光となるのを抑制でき、レーザ光のモード劣化や発振出力の低下を防止できる。
本発明に係るレーザ加工装置の一例の概略図である。 マスクの第1実施例の正面図(a)、左側面図(b)、平面図(c)である。 マスクの第1実施例の面粗さを示す図である。 マスクの加工方法の一例を示す図である。 マスクの第2実施例の正面図及び右側面図である。 マスクの第3実施例の正面図及び右側面図である。 特許文献1におけるマスクの一例を示す図である。
−第1実施例−
図1は本発明に係るマスクを用いたレーザ加工装置の一例の概略図を示す。レーザ加工装置1は、レーザ光源であるレーザ発振器10、レンズ20、ダンパ30、及びマスク40を備え、マスク40を通過したレーザ光L2は図示しない被加工物に照射される。なお、レーザ光Lの光軸の途中に、ミラーや集光レンズなどを適宜配置することができる。レーザ光Lとしては、例えばUVレーザ、YAGレーザ、CO2レーザなど任意のレーザが使用される。
この実施例のマスク40は、図2に示すように円柱形のマスク本体41を有し、その中心部に断面円形のピンホール42が貫通形成されている。なお、ピンホール42の断面形状は円形に限らない。ピンホール42の軸線とレーザ光Lの光軸とが平行となるように、マスク本体41の向きが設定されている。マスク本体41のレーザ光の入射側には平面部43が形成されており、この平面部43がピンホール42の軸線に対して一定角度θ(0<θ<90°)で傾斜している。具体的には、角度θは60〜85°の範囲から選択するのが好ましい。平面部43は傾斜方向に沿って切削加工、研削加工又は研磨加工されており、レーザ光Lを反射する反射面とされている。
平面部43には、図2(b)、(c)に示すように、傾斜方向と平行な溝又はすじ状の凹凸43aが形成されている。つまり、Y−Z面に平行な方向の凹凸43aが形成される。図3は、平面部43の凹凸43aの面粗さを概略的に示している。なお、図3では、すじ状の凹凸43aを誇張して示してあるが、実際には凹凸の数はもっと多く、凹凸の間隔も狭い。図3で示すように、傾斜方向と平行な方向(B−B断面)の面粗さRayは、傾斜方向と垂直方向(A−A断面)の面粗さRaxより小さい。即ち、
Ray<Rax
とされている。そのため、平面部43に入射したレーザ光は、平面部43の傾斜と凹凸43aとの相乗効果により、入射方向とは異なる方向(例えば図1のYZ面に対して非平行な方向)に散乱しやすくなり、入射方向と対向方向の反射を抑制できる。
レーザ光からの熱を逃がすという観点では、マスク本体41の素材として熱伝導率の高い金属(アルミニウム、金、銀、銅など)を使用するのが望ましい。また、レーザ光の反射率を高めるという観点では、反射率の高い金属(アルミニウム、金)などを使用するのが望ましい。レーザ光は、平行光に限らず、収束光や発散光でもよい。
以下に、加工条件の一例を示す。
レーザ光の入射ビーム径:φ0.1〜15mm
平面部の表面粗さRa:50nm以下
レーザ光の波長:500nm以下
マスク40の平面部43で反射したレーザ光L1は、レーザ光Lの入射方向とは異なる方向に反射する。特に、平面部43の傾斜方向と平行な方向の面粗さRayは、傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さいので、マスク40に入射されたレーザ光は、入射方向とは異なる方向に散乱しやすく、入射方向と対向方向の反射を抑制できる。つまり、反射レーザ光が入射方向と対向方向(z軸マイナス方向)の戻り光となるのを抑制できる。反射したレーザ光L1は、水冷などにより適宜冷却されたダンパ30でそのエネルギーが吸収される。そのため、反射レーザ光L1が周辺部品などに熱影響を及ぼすのを防止できる。この実施例では、ダンパ30が入射レーザ光Lの光軸の片側(図1では上側)にのみ設けられているため、ダンパ30を小型化できる。
図4は、マスク40の加工方法の一例を示す。支点51を中心として傾動可能なベース50を準備し、ベース50上にマスク本体41の原材料41"をチャック52によって固定する。原材料41"は、その中心にピンホール42を有する円柱形部品である。次に、ベース50を支点51を中心として所定角度だけ傾け、水平軸を中心として回転する研削砥石53に対してベース50を水平方向に移動させるか、又は研削砥石53を水平に移動させる。ベース50又は研削砥石53の移動方向は、傾斜面の稜線方向と平行であるが、多少の傾きはあってもよい。研削砥石53としては、例えば140000番以上の砥石が望ましい。研削砥石53との摩擦により原材料41"の頂部が切削加工され、一定角度だけ傾斜した平面部43が形成される。砥石53の砥石面は平面部43の傾斜方向に回転するので、平面部43には傾斜方向に沿った微細な凹凸部が形成される。そのため、上述のように傾斜方向と平行な方向の面粗さRayは、傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さくなり、反射光がレーザ発振器方向への戻り光となるのを抑制できる。研磨加工する場合も、図4に示すように所定の角度だけマスク40を傾けて加工する。研磨加工の例としては、バフ研磨が挙げられる。切削加工の他の例としては、へール加工のような直線運動による加工方法が挙げられる。直線運動により切削するので傾斜方向と平行な方向に加工できる。
−第2実施例−
図5は本発明にかかるマスクの第2実施例を示す。この実施例のマスク45は、4つの傾斜面46を持つ角錐形状に形成されており、4つの傾斜面46には、傾斜方向と平行な溝又は凹凸46aが形成されている。そのため、傾斜方向と平行な方向の面粗さRayは、傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さい。なお、マスク45の中心部に角穴からなるピンホール47が形成されているが、円形の穴であってもよい。
この場合も、傾斜面46の傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さいので、傾斜面46に入射されたレーザ光が四方に発散し、反射光がレーザ発振器方向への戻り光となるのを抑制できる。
−第3実施例−
図6は本発明にかかるマスクの第3実施例を示す。この実施例のマスク48は、1つのテーパ面49を持つ円錐形状に形成されており、テーパ面49には、傾斜方向と平行な放射状の溝又は凹凸49aが形成されている。そのため、傾斜方向と平行な方向の面粗さRayは、傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さい。なお、マスク48の中心部に円形穴からなるピンホール50が形成されているが、角穴であってもよい。
図6のマスク48の場合も、図5と同様に、テーパ面49の傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さいので、テーパ面49に入射されたレーザ光が四方に発散し、反射光が戻り光となるのを抑制できる。
1 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
20 レンズ
30 ダンパ
40 マスク
41 マスク本体
42 ピンホール
43 平面部(反射面)
43a 凹凸

Claims (3)

  1. マスク本体と、レーザ光を通過させるために前記マスク本体に貫通形成されたピンホールとを備えたレーザ加工用マスクにおいて、
    前記マスク本体のレーザ光の入射側に前記ピンホールの軸線に対して傾斜した反射面が切削加工、研削加工又は研磨加工により形成され、
    前記反射面における傾斜方向と平行な方向の面粗さRayが傾斜方向と垂直方向の面粗さRaxより小さい、レーザ加工用マスク。
  2. 前記反射面は、前記ピンホールの軸線に対して一定角度で傾斜した1つの平面部であることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工用マスク。
  3. 前記反射面は角錐面又は円錐面であることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工用マスク。
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