(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図13を参照して説明する。図1は、超音波処置装置1を示す図である。図1に示すように、超音波処置装置1は、超音波処置具(ハンドピース)2と、制御ユニット(エネルギー制御装置)3と、振動子ユニット5と、を備える。超音波処置具2は、長手軸Cを有する。長手軸Cに平行な2方向の一方が先端方向(図1の矢印C1の方向)であり、先端方向とは反対方向が基端方向(図1の矢印C2の方向)である。超音波処置具2は、ハンドルユニット6を備える。振動子ユニット5は、ハンドルユニット6の基端方向側に着脱可能に連結される。振動子ユニット5の基端部には、ケーブル7の一端が接続されている。ケーブル7の他端は、制御ユニット3に接続されている。
ハンドルユニット6は、長手軸Cに沿って延設される筒状ケース部11と、筒状ケース部11と一体に形成される固定ハンドル12と、筒状ケース部11に対して回動可能に取付けられる可動ハンドル13と、を備える。固定ハンドル12は、筒状ケース部11から長手軸Cに対して離れる状態で、延設されている。筒状ケース部11への取付け位置を中心として可動ハンドル13が回動することにより、可動ハンドル13が固定ハンドル12に対して開動作又は閉動作を行う。また、ハンドルユニット6は、筒状ケース部11の先端方向側に取付けられる回転操作ノブ15を備える。回転操作ノブ15は、筒状ケース部11に対して長手軸Cを中心として回転可能である。また、固定ハンドル12には、エネルギー操作入力部であるエネルギー操作入力ボタン16が設けられている。
超音波処置具2は、長手軸Cに沿って延設されるシース8を備える。シース8が先端方向側から回転操作ノブ15の内部及び筒状ケース部11の内部に挿入されることにより、シース8がハンドルユニット6に取付けられる。また、超音波処置具2は、超音波プローブ9を備える。超音波プローブ9は、筒状ケース部11の内部からシース8の内部を通って、長手軸Cに沿って延設されている。超音波プローブ9は、シース8に挿通されている。また、超音波プローブ9の先端部には、シース8の先端から先端方向に向かって突出する処置部17が、設けられている。
シース8の先端部には、ジョー18が回動可能に取付けられている。可動ハンドル13は、筒状ケース部11の内部でシース8の内周方向側の部位に配設される可動筒状部(図示しない)に接続されている。可動筒状部の先端は、ジョー18に接続されている。固定ハンドル12に対して可動ハンドル13を開動作又は閉動作することにより、可動筒状部が長手軸Cに沿って移動する。これにより、ジョー18が、シース8への取付け位置を中心として回動する。ジョー18がシース8に対して回動することにより、ジョー18が処置部17に対して開動作又は閉動作を行う。シース8、超音波プローブ9及びジョー18は、回転操作ノブ15と一体に、筒状ケース部11に対して長手軸Cを中心として、回転可能である。
また、振動子ユニット5は、振動子ケース21を備える。振動子ケース21が基端方向側から筒状ケース部11の内部に挿入されることにより、振動子ユニット5がハンドルユニット6(超音波処置具2)に取付けられる。筒状ケース部11の内部では、振動子ケース21は、シース8に連結されている。振動子ケース21は、回転操作ノブ15と一体に、筒状ケース部11に対して長手軸Cを中心として、回転可能である。
図2は、振動子ユニット5の構成を示す図である。図2に示すように、振動子ユニット5は、前述の振動子ケース21と、振動子ケース21の内部に設けられる振動発生部である超音波振動子22と、超音波振動子22が取付けられるホーン部材23と、を備える。図3は、超音波処置具2、振動子ユニット5及び制御ユニット3での電気的な接続状態を示す図である。図2及び図3に示すように、超音波振動子22には、電気配線部25A,25Bの一端が、接続されている。制御ユニット3は、振動発生電力Pを出力可能な電源26を備える。電源26では、例えば、コンセント、直流電源等の電力を変換回路等で振動発生電力Pに変換し、振動発生電力Pを出力する。電気配線部25A,25Bの他端は、電源26に接続されている。電源26から出力された振動発生電力Pは、電気配線部25A,25Bを介して、超音波振動子22に供給される。振動発生電力Pが供給されることにより、超音波振動子22で超音波振動が発生する。
ホーン部材23には、超音波振動子22が装着される振動子装着部27が、設けられている。超音波振動子22で発生した超音波振動は、ホーン部材23に伝達される。また、ホーン部材23には、振動子装着部27より先端方向側に断面積変化部28が設けられている。断面積変化部28では、先端方向に向かうにつれて長手軸Cに垂直な断面積が減少する。断面積変化部28によって、超音波振動の振幅が拡大される。ホーン部材23の先端部には、雌ネジ部29Aが設けられている。また、超音波プローブ9の基端部には、雄ネジ部29Bが設けられている。雄ネジ部29Bが雌ネジ部29Aに螺合することにより、ホーン部材23の先端方向側に超音波プローブ9が接続される。超音波プローブ9は、筒状ケース部11の内部で、ホーン部材23に接続される。これにより、超音波プローブ9は、ホーン部材23を介して超音波振動子(振動発生部)22に連結される。
ホーン部材23に伝達された超音波振動は、ホーン部材23及び超音波プローブ9において、基端方向から先端方向へ長手軸Cに沿って伝達される。すなわち、ホーン部材23及び超音波プローブ9は、発生した超音波振動を伝達する振動伝達部である。超音波振動は、処置部17まで、先端方向へ向かって伝達される。処置部17は、伝達された超音波振動を用いて、生体組織等の処置対象を処置する。なお、振動伝達部(ホーン部材23及び超音波プローブ9)では、基端(ホーン部材23の基端)及び先端(超音波プローブ9の先端)が、超音波振動の腹位置となる。また、超音波振動は、振動方向及び伝達方向が長手軸C(長手軸方向)に平行な縦振動である。したがって、長手軸Cに平行な先端方向が、超音波振動の伝達方向となる。
図4は、ホーン部材23及び超音波振動子22を部材ごとに分解して示す図である。図4に示すように、超音波振動子22は、(本実施形態では4つの)リング状の圧電素子31A〜31Dを備える。それぞれの圧電素子31A〜31Dには、ホーン部材23の振動子装着部27が挿通されている。また、それぞれの圧電素子31A〜31Dは、厚み方向が超音波振動の伝達方向(すなわち、長手軸C)に平行で、かつ、径方向が超音波振動の伝達方向(すなわち、先端方向)に垂直な状態で、振動子装着部27に取付けられている。
超音波振動子22は、第1の電極部32と、第2の電極部33と、を備える。第1の電極部32に、電気配線部25Aの一端が接続され、第2の電極部33に、電気配線部25Bの一端が接続されている。第1の電極部32は、第1の電極リング部35A〜35Cを備える。第1の電極リング部35Aは、圧電素子31Aの先端方向側に位置し、第1の電極リング部35Bは、長手軸Cに平行な長手軸方向について圧電素子31Bと圧電素子31Cとの間に位置している。また、第1の電極リング部35Cは、圧電素子31Dの基端方向側に位置している。それぞれの第1の電極リング部35A〜35Cには、振動子装着部27が挿通されている。
第2の電極部33は、第2の電極リング部37A,37Bを備える。第2の電極リング部37Aは、長手軸Cに平行な長手軸方向について圧電素子31Aと圧電素子31Bとの間に位置している。また、第2の電極リング部37Bは、長手軸方向について圧電素子31Cと圧電素子31Dとの間に位置している。それぞれの第2の電極リング部37A,37Bには、振動子装着部27が挿通されている。
前述のような構成にすることにより、圧電素子31Aは、第1の電極リング部35Aと第2の電極リング部37Aとの間に挟まれ、圧電素子31Bは、第2の電極リング部37Aと第1の電極リング部35Bとの間に挟まれる。また、圧電素子31Cは、第1の電極リング部35Bと第2の電極リング部37Bとの間に挟まれ、圧電素子31Dは、第2の電極リング部37Bと第1の電極リング部35Cとの間に挟まれる。したがって、それぞれの圧電素子31A〜31Dは、第1の電極部32と第2の電極部33との間に挟まれている。
また、超音波振動子22は、絶縁リング38A,38Bを備える。絶縁リング38Aは、第1の電極部32の第1の電極リング部35Aの先端方向側に位置している。絶縁リング38Bは、第1の電極部32の第1の電極リング部35Cの基端方向側に位置している。それぞれの絶縁リング38A,38Bには、振動子装着部27が挿通されている。また、超音波振動子22は、バックマス36を備える。バックマス36は、絶縁リング38Bの基端方向側に位置している。バックマス36により、圧電素子31A〜31D、第1の電極部32、第2の電極部33及び絶縁リング38A,38Bは、先端方向に押圧されている。これにより、圧電素子31A〜31D、第1の電極部32、第2の電極部33及び絶縁リング38A,38Bは、ホーン部材23とバックマス36との間で挟持される。
図5は、振動発生部である超音波振動子22と電源26との間の電気的な接続状態を示す図である。図5に示すように、電源26と第1の電極部32との間は、電気配線部25Aによって、電気的に接続されている。また、電源26と第2の電極部33との間は、電気配線部25Bによって、電気的に接続されている。電源26から振動発生電力Pが出力されることにより、第1の電極部32と第2の電極部33との間に、振動発生電圧Vが印加される。振動発生電圧Vが印加されることにより、第1の電極部32と第2の電極部33との間に挟まれる圧電素子31A〜31Dに、振動発生電流Iが流れる。振動発生電流Iは、電流の方向が周期的に変化する交流電流である。また、振動発生電力Pのインピーダンス値である超音波インピーダンス値Zは、式(1)のようになる。
図6及び図7は、処置部17及びジョー18の構成を示す図である。ここで、図6は、ジョー18が処置部17に対して開いた状態を示しており、図7は、ジョー18と処置部17との間に処置対象が存在せず、かつ、ジョー18を処置部17に対して閉じた状態を示している。また、図7は、長手軸Cに垂直な断面を示している。図6及び図7に示すように、ジョー18は、シース8に基端部が取り付けられるジョー本体41と、ジョー本体41に取付けられる把持部材42と、を備える。ジョー本体41及び把持部材42は、例えば導電性を有する金属から形成されている。また、ジョー18は、把持部材42に取付けられるパッド部材43を備える。パッド部材43は、例えば電気絶縁性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成されている。
パッド部材43には、処置部17に対してジョー18が閉じた状態において処置部17に当接可能な当接部(当接面)45が、形成されている。ジョー18と処置部17との間に処置対象が存在しない状態でジョー18を処置部17に対して閉じることにより、パッド部材43の当接部45が処置部17に当接する。当接部45は、処置部17に対向している。また、本実施形態では、当接部45は、ジョー18の開方向(図6及び図7の矢印A1の方向)及び閉方向(図6及び図7の矢印A2の方向)に対して垂直である。
ここで、長手軸Cに垂直で(交差し)、かつ、ジョー18の開閉方向に垂直な2方向を第1の幅方向(図7の矢印B1の方向)及び第2の幅方向(図7の矢印B2の方向)とする。当接部45の第1の幅方向側には、当接部45に対して傾斜する状態で処置部17に対向する傾斜対向部46Aが把持部材42によって、形成されている。また、当接部45の第2の幅方向側には、当接部45に対して傾斜する状態で処置部17に対向する傾斜対向部46Bが把持部材42によって、形成されている。当接部45が処置部17に当接した状態において、傾斜対向部46A,46Bは処置部17から離間している。したがって、当接部45が処置部17に当接した状態においても、把持部材42は処置部17に接触しない。
図3に示すように、制御ユニット3は、電源26に電気的に接続される制御部51を備える。固定ハンドル12の内部には、スイッチ部47が設けられる。エネルギー操作入力ボタン16でエネルギー操作の入力に基づいて、スイッチ部47の開閉状態が切替えられる。スイッチ部47は、振動子ケース21及びケーブル7の内部を通って延設される信号経路部48を介して、制御部51に接続されている。スイッチ部47が閉じられることにより、信号経路部48を介して、操作信号が制御部51に伝達される。伝達された操作信号に基づいて、制御部51は、電源26からの振動発生電力Pの出力状態を制御している。
また、制御ユニット3は、電源26及び制御部51に電気的に接続されるインピーダンス検出部52と、インピーダンス検出部52及び制御部51に電気的に接続されるピーク検出部53と、を備える。インピーダンス検出部52は、電源26から振動発生電力Pが出力されている状態において、振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zを経時的に検出する。ピーク検出部53は、検出された超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に基づいて、超音波インピーダンス値Zのピーク(対象ピーク)を検出する。ピーク検出部53は、漸減検出部55と、仮ピーク値保持部56と、ピーク判定部57と、を備える。漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57の詳細については、後述する。なお、インピーダンス検出部52は、例えば検出回路である。また、制御部51及びピーク検出部53は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(application specific integrated circuit)等を備えるプロセッサ又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路及びメモリ(記憶部)から形成されている。
また、制御ユニット3は、切替え操作部58と、ブザー、ランプ等の告知部59と、を備える。切替え操作部58は、制御部51に電気的に接続されている。切替え操作部58によって、ピーク検出部53が仮ピーク及び対象ピークの検出及び判定(決定)を行わない検出不可状態(非検出状態)とピーク検出部53が仮ピーク及び対象ピークの検出を行う検出許可状態との間の切替え操作が、入力される。また、告知部59は、制御部51に電気的に接続されている。告知部59によって、対象ピークが検出されたことが告知される。なお、対象ピークの説明、及び、対象ピークの検出法については、後述する。
次に、超音波処置装置1の作用及び効果について説明する。超音波処置装置1を用いて生体組織等の処置対象を処置する際には、シース8、超音波プローブ9及びジョー18を、処置対象が位置する体内等に挿入する。そして、処置部17に対して開いたジョー18と処置部17との間に処置対象が位置する状態まで、処置部17及びジョー18を移動させる。そして、可動ハンドル13を固定ハンドル12に対して閉じることにより、処置部17とジョー18との間で処置対象が保持される。
この状態でエネルギー操作入力ボタン16によってエネルギー操作を入力することにより、操作信号が制御部51に伝達され、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始される。振動発生電力Pが供給されることにより、圧電素子31A〜31Dによって振動発生電流Iが超音波振動に変換される。この際、制御部51は、振動発生電流I(の波高)が一定に保たれる定電流制御で、振動発生電力Pの出力状態を制御している。したがって、振動発生電流Iが一定となる状態に、超音波インピーダンス値Zの変化に対応させて振動発生電圧Vを調整している。
超音波振動子22で発生した超音波振動は、ホーン部材23及び超音波プローブ9を介して、処置部17に伝達され、処置部17は縦振動する。処置部17とジョー18との間で処置対象が把持された状態で処置部17が縦振動することにより、処置対象と処置部17の間に摩擦熱が発生する。摩擦熱によって、処置対象を凝固すると同時に切開する処置が行われる。
処置部17とジョー18との間で把持された処置対象を処置することにより、超音波振動の伝達方向について処置対象の少なくとも一部の範囲で、処置対象の切れ分かれが発生する。図8は、処置部17とジョー18との間で把持された処置対象Hの切れ分かれを説明する図である。なお、切れ分かれは、超音波振動の伝達方向(長手軸方向)について処置対象の全範囲に渡って発生することもあり、超音波振動の伝達方向(長手軸方向)について処置対象の一部の範囲にのみ発生することもある。切れ分かれが発生した部位では、超音波振動の伝達方向に平行でかつジョーの開閉方向(図8の矢印A1の方向及び図8の矢印A2の方向)に平行な分断面Dで、処置対象Hが分断される。分断面Dは、第1の幅方向(図8の矢印B1の方向)及び第2の幅方向(図8の矢印B2の方向)に対して垂直である。したがって、切れ分かれが発生した範囲では、処置対象Hが、分断面Dより第1の幅方向側の部位H1と、分断面Dより第2の幅方向側の部位H2と、に分断される。
切れ分かれによって処置対象Hが分断された範囲では、ジョー18の当接部45が処置部17に当接する。ジョー18の当接部45が処置部17に当接する状態で処置部17が超音波振動によって振動(縦振動)することにより、ジョー18の当接部45が摩耗又は熱変形等によって破壊してしまう。このため、処置対象Hが切れ分かれたか否かを適切に判断することが、重要となる。
ここで、振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zは、超音波プローブ9に対する負荷、すなわち超音波プローブ9に接続された超音波振動子22への負荷に対応して、変化する。図9は、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてからの超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の一例を示している。図9では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。処置対象Hが切れ分かれた時点の近傍までは、ジョー18の当接部45と処置部17との間の処置対象Hの状態変化等によって、ジョー18から処置部17への押圧力が徐々に大きくなる。このため、超音波プローブ9に対する負荷が徐々に大きくなる。したがって、処置対象Hの切れ分かれるまでは、超音波インピーダンス値Zは経時的に漸増する。ここで、経時的に漸増するとは、経過時間tが進むにつれて超音波インピーダンス値Zが徐々に増加することを意味し、数十Ω以下の微小な増減を含みながら超音波インピーダンス値Zが徐々に増加することも含まれる。
処置対象Hの切れ分かれると、ジョー18の当接部45が処置部17の近傍に位置するため、処置部17の超音波振動によって発生する摩擦熱に起因して、パッド部材43の表面(当接部45)が変性する。このため、超音波プローブ9に対する負荷が徐々に小さくなる。したがって、処置対象Hの切れ分かれた時点の近傍より後では、超音波インピーダンス値Zは経時的に漸減する。ここで、経時的に漸減するとは、経過時間tが進むにつれて超音波インピーダンス値Zが徐々に減少することを意味し、数十Ω以下の微小な増減を含みながら超音波インピーダンス値Zが徐々に減少することも含まれる。
切れ分かれによって前述のように超音波インピーダンス値Zが変化するため、処置対象Hの切れ分かれた時点の近傍(例えば、ジョー18の当接部45が処置部17に当接し始めた時点の近傍)において、超音波インピーダンス値Zが経時的にピーク(極大値)となる。超音波インピーダンス値Zの経時的なピークが検出されることにより、処置対象Hが切れ分かれたか否かを、適切に判断可能となる。ここで、図9に示す一例では、超音波インピーダンス値Z1が、処置対象Hの切れ分かれに起因するピーク(ピーク値)である対象ピークとなる。また、経過時間t1が、対象ピークが発生する対象ピーク時となる。
図10は、検出許可状態での振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図10に示すように、電源26から振動発生電力Pの出力が開始される(ステップS101)と、インピーダンス検出部52によって、振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される(ステップS102)。これにより、超音波インピーダンス値Zが経時的に検出される。例えば、超音波振動の振幅を一定にするために、振動発生電流I(の波高)が一定となる定電流制御が行われる場合、振動発生電力P及び振動発生電圧Vの少なくとも一方の経時的な変化を検出する。そして、検出した振動発生電力P及び/又は振動発生電圧Vに基づいて、式(1)を用いて、超音波インピーダンス値Zを算出する。これにより、超音波インピーダンス値Zが経時的に検出される。また、ある実施例では、インピーダンス検出部52は、振動発生電圧V及び振動発生電流Iを経時的に検出し、式(1)を用いて、超音波インピーダンス値Zを算出する。
そして、ピーク検出部53によって、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に基づいて、処置対象Hの切れ分かれに起因する超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出処理が行われる(ステップS103)。この際、超音波インピーダンス値Zが対象ピーク(対象ピーク値)となる対象ピーク時が検出されてもよい。なお、切替え操作部58での切替え操作によって検出不可状態に切替えられた場合、ピーク検出部53による対象ピークの検出は行われない。したがって、制御部51は、切替え操作部58での切替え操作に基づいて、検出不可状態又は検出許可状態にピーク検出部53(漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57)を制御している。例えば、ピーク検出部53によって対象ピークが検出されなくても処置対象が切れ分かれたか否かを判断できる術者が超音波処置装置1を使用する場合に、検出不可状態に切替えられて、処置が行われる。
対象ピークが検出されると、ある実施例では、制御部51によって、電源26からの振動発生電力Pの出力が停止又は経時的に徐々に出力が低減される(ステップS104)。徐々に出力を低減させる場合、例えば一次関数的、階段関数的、又は指数関数的に経時的に出力を減少させる。これにより、超音波プローブ9が縦振動しなくなり、ジョー18の当接部45が処置部17に当接した場合でも、当接部45の摩耗が防止される。特に、経時的に徐々に出力を低減させた場合、処置対象Hの切り残りを防止できるとともに処置部17の発熱を防止できる。また、別のある実施例では、告知部59によって、対象ピークが検出されたことが告知される(ステップS104)。ここで、告知部59がブザーである場合は、電子音を発信し、告知部59がランプである場合は、点灯する。告知部59によって、術者は、処置対象Hが切れ分かれたか否かを判断する。
図11は、ピーク検出部53によって行われる超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出処理(図10のステップS103)を示す図である。すなわち、図11では、検出許可状態においてピーク検出部53によって対象ピークを検出する方法が示されている。図11に示すように、対象ピークの検出処理においては、まず、漸減検出部55が、インピーダンス検出部52での超音波インピーダンス値Zの検出結果に基づいて、超音波インピーダンス値Zが漸減を開始する漸減開始時を検出する(ステップS111)。図9に示す一例では、経過時間t1が漸減開始時として検出される。漸減開始時が検出されると(ステップS111−Yes)、仮ピーク値保持部56が、検出された漸減開始時での超音波インピーダンス値Zを仮ピーク値として保持する(ステップS112)。図9に示す一例では、経過時間t1での超音波インピーダンス値Z1が、仮ピーク値として保持される。
そして、ピーク判定部57によって、保持された仮ピーク値に対する漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理が行われる(ステップS113)。図9に示す一例では、ステップS113の比較処理において、仮ピーク値として保持された超音波インピーダンス値Z1に対して、経過時間t1以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較される。そして、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較に基づいて、ピーク判定部57が、仮ピーク値が処置対象Hの切れ分かれに起因する対象ピークであったか否かを判定する(ステップS114)。図9に示す一例では、仮ピーク値として保持された超音波インピーダンス値Z1が、対象ピーク(対象ピーク値)であったか否かが、判定される。この際、検出された漸減開始時が対象ピーク時であったか否かを、判定してもよい。図9に示す一例では、漸減開始時である経過時間t1が対象ピーク時であったと経過時間t1+ΔT1の時点で判定される。この場合、ピーク判定部57は制御部51に信号を出力し、制御部51は告知部59等を作動させる。
図12は、ピーク判定部57によって行われる仮ピーク値に対する漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理(図11のステップS113)を示す図である。すなわち、図12では、検出許可状態においてピーク判定部57によって仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する方法が示されている。図12に示すように、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する際には、まず、比較を行う基準時間ΔTを設定する(ステップS121)。漸減開始時から基準時間ΔTの間、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する。そして、漸減開始時から基準時間ΔTだけ経過した後に、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの、判定が開始される。図9に示す一例では、比較を行う基準時間がΔT1に設定され、経過時間t1+ΔT1以後において、仮ピーク値として保持された超音波インピーダンス値Z1が対象ピークであったか否かが、判定される。
ここで、基準時間ΔTは、既定の長さに定まったものでなく、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよい。この場合、状況に応じて、基準時間ΔTの長さが変化する。ある実施例では、仮ピーク値、すなわち漸減開始時の超音波インピーダンス値Zに基づいて、基準時間ΔTの長さが設定される。また、別のある実施例では、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてから漸減開始時までの間の超音波インピーダンス値Zの平均値Zaveに基づいて、基準時間ΔTの長さが設定される。
そして、ピーク判定部57では、基準時間ΔTだけ経過した後に、漸減開始時以後において連続的に超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値より小さくなったか否かが、比較される(ステップS122)。図9に示す一例では、仮ピーク値であるZ1より連続的に超音波インピーダンス値Zが小さくなったか否かが、比較される。漸減開始時以後において超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値以上となった場合(ステップS122−No)には、判定パラメータZflagを0に設定する(ステップS126)。判定パラメータZflagが0の場合、図11のステップS114において、漸減開始時での超音波インピーダンス値Zである仮ピーク値が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)ではなかったと判定される(ステップS114−No)。
図13は、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてからの超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の、図9とは別の一例を示している。図13では、図9と同様に、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。例えば、処置対象Hが厚い(処置対象Hのジョー18の開閉方向についての寸法が大きい)場合は、ジョー18の当接部45が処置対象Hに当接し、処置対象Hのジョー17との接触表面が切開され始めた瞬間に、超音波インピーダンス値Zのピークが発生する。この場合、切れ分かれに起因する対象ピークより前に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因する超音波インピーダンス値Zのピークが発生してしまう。図13に示す一例では、経過時間t2に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因して、超音波インピーダンス値Zがピーク(ピーク値)Z2となる。また、経過時間t2より後の経過時間t3に、処置対象Hの切れ分かれに起因して、超音波インピーダンス値Zが対象ピーク(対象ピーク値)Z3となる。なお、図13に示す一例では、ピークZ2より対象ピークZ3が大きくなる。
図13に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合、ステップS111で経過時間t2が超音波インピーダンス値Zの漸減開始時として検出され、ステップS112でピークZ2が仮ピーク値として保持される。本実施形態では、ステップS122の比較が行われることにより、図13に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合でも、ステップS114の判定において、仮ピーク値として保持されたピークZ2が切れ分かれに起因する対象ピークではなかったと、判定される。
すなわち、図13に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合、ステップS112で基準時間ΔT2が設定される。基準時間ΔT2の長さは、経過時間t2から経過時間t3までの長さより、長く設定される。ここで、図13に示す一例では、経過時間t2でのピークZ2より経過時間t3での対象ピークZ3が大きくなる。このため、漸減開始時である経過時間t2から基準時間ΔT2経過するまでの間に、超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値として保持されたピークZ2以上となる。このため、ステップS122の比較によって、超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値(Z2)以上となったと判断される。そして、ステップS126において、判定パラメータZflagが0に設定され、図11のステップS114において、ピークZ2が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)ではなかったと判定されるとともに、仮ピーク値保持部56が仮ピーク値Z2を新たな仮ピーク値Z3に更新し、新たな仮ピーク値Z3を時間t3とともに保持する。
図12に示すように、基準時間ΔTの間、連続的に超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値より小さくなった場合(ステップS122−Yes)、超音波インピーダンス値Zの基準減少量εを設定する(ステップS123)。そして、漸減開始時から基準時間ΔTだけ経過した後において仮ピーク値からの超音波インピーダンス値Zの減少量εrealが基準減少量ε以上であったか否かを、比較する(ステップS124)。基準時間ΔT及び基準減少量εは、ピーク判定部57による仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータである。
ここで、基準減少量εは、既定の大きさに定まったものでなく、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよい。したがって、状況に応じて、基準減少量εの大きさが変化する。ある実施例では、仮ピーク値、すなわち漸減開始時の超音波インピーダンス値Zに基づいて、基準減少量εの大きさが設定される。例えば、仮ピーク値が大きくなるほど、基準減少量εも大きく設定される。また、別のある実施例では、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてから漸減開始時までの間の超音波インピーダンス値Zの平均値Zaveに基づいて、基準減少量εの大きさが設定される。例えば、平均値Zaveが大きくなるほど、基準減少量εも大きく設定される。
基準時間ΔT経過する間での超音波インピーダンス値Zの減少量εrealが基準減少量εより小さくなった場合(ステップS124−No)には、判定パラメータZflagを0に設定する(ステップS126)。このため、図11のステップS114において、漸減開始時での超音波インピーダンス値Zである仮ピーク値が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)ではなかったと判定される(ステップS114−No)。一方、基準時間ΔT経過する間での超音波インピーダンス値Zの減少量εrealが基準減少量ε以上となった場合(ステップS124−Yes)には、判定パラメータZflagを1に設定する(ステップS125)。判定パラメータZflagが1の場合、図11のステップS114において、漸減開始時での超音波インピーダンス値Zである仮ピーク値が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)であったと判定される(ステップS114−Yes)。漸減開始時での仮ピーク値が対象ピークであったと判定されることにより、対象ピークが検出される。ピーク判定部57で対象ピークが検出(特定)された場合、制御部51にその情報信号が伝達される。
図9に示す一例では、ステップS123において、基準減少量ε1が設定される。そして、漸減開始時である経過時間t1から基準時間ΔT1経過する間での超音波インピーダンス値Zの減少量ε1realは、基準減少量ε1以上となっている。このため、ステップ124において、超音波インピーンス値Zの減少量ε1realが基準減少量ε1以上であったと判断される。そして、ステップS125において、判定パラメータZflagが1に設定され、図11のステップS114において、ピークZ1が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)であったと判定される。
漸減開始時での仮ピーク値が切れ分かれに起因する対象ピークではなかったと判定された場合(ステップS114−No)、ステップS111に戻る。図13に示す一例では、超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値Z2以上となった以後において、超音波インピーダンス値Zが再び漸減し始める。この場合、ステップS111において、漸減検出部55が、再び漸減し始めた漸減開始時(再漸減開始時)である経過時間t3を検出する。そして、ステップS112において、仮ピーク値保持部56が、経過時間(再漸減開始時)t3での超音波インピーダンス値Z3を、仮ピーク値として保持する。この際、保持された仮ピーク値Z2を経過時間t3での超音波インピーダンス値Z3に更新し、更新された仮ピーク値Z3が経過時間t3とともに保持される。
そして、ステップS113において、経過時間(再漸減開始時)t3から基準時間ΔT3だけ経過するまで、更新された仮ピーク値Z3に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較される。この際、図12に示すステップS121〜S126に従って、比較処理が行われる。そして、ステップS114において、更新された仮ピーク値として保持された再漸減開始時での超音波インピーダンス値Z3が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)であったと判定される。
本実施形態の超音波処置装置1では、超音波インピーダンス値Zの漸減開始時を検出し、漸減開始時での超音波インピーダンス値Zを仮ピーク値として保持している。そして、仮ピーク値に対して漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較することにより、保持された仮ピーク値が検出対象である対象ピークであったか否かを判定している。このため、切れ分かれに起因して発生する対象ピーク(対象ピーク値)の大きさに関係なく、対象ピークを適切に検出することができる。したがって、超音波振動を用いた処置部17とジョー18との間で把持された処置対象Hの処置において、処置対象Hが切れ分かれたか否かを、適切に判断することができる。
また、本実施形態での超音波処置装置1では、前述したように、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ2)が対象ピーク(例えばZ3)より前に発生した場合でも、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ2)が対象ピークではなかったと、判定される。このため、対象ピーク(例えばZ3)とは異なるピーク(例えばZ2)が対象ピーク(例えばZ3)より前に発生した場合でも、適切に対象ピークを検出することができる。
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例として、第1の変形例を図14乃至図16を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図14は、本変形例の制御ユニット3を示す図である。本変形例では、制御ユニット3のピーク検出部53は、漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57に加えて、漸増検出部61を備える。その他の構成については、第1の実施形態の制御ユニット3と同様である。
図15は、ピーク判定部57によって行われる仮ピーク値に対する漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理(図11のステップS113)を示す図である。すなわち、図15では、検出許可状態においてピーク判定部57によって仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する方法が示されている。図15に示すように、本変形例では、第1の実施形態のステップS122の比較が行われない。ただし、本変形例でも、ステップS121、S123〜S126は、第1の実施形態と同様にして、行われる。
本変形例では、漸減開始時以後において超音波インピーダンス値Zが漸増し始めた場合に、漸増検出部61によって、漸増し始めた漸増開始時が検出される。このため、ステップS121で基準時間ΔTが設定されると、漸減開始時から基準時間ΔTだけ経過する間に、超音波インピーダンス値Zが漸増したか否かが、判断される(ステップS131)。超音波インピーダンス値Zが漸増しなかった場合は(ステップS131−No)、ステップS123に進む。
超音波インピーダンス値Zが漸増した場合は(ステップS131−Yes)、超音波インピーダンス値Zの漸増開始時からの増加量ξrealが基準増加量ξ以上となったか否かが、判断される(ステップS132)。超音波インピーダンス値Zの増加量ξrealが基準増加量ξより小さかった場合には(ステップS132−No)、ステップS123に進む。一方、超音波インピーダンス値Zの増加量ξrealが基準増加量ξ以上となった場合には、ステップS126に進み、判定パラメータZflagが0に設定される。したがって、図11のステップS114において、漸減開始時の超音波インピーダンス値Zである仮ピーク値が、切れ分かれに起因する対象ピークではなかったと、判定される。なお、基準増加量ξは、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよく、既定の値に定まったものであってもよい。また、基準増加量ξは、ピーク判定部57による仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータである。
図16は、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてからの超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の、図9及び図13とは別の一例を示している。図16では、図9と同様に、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。第1の実施形態で前述したように、切れ分かれに起因する対象ピークより前に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因して超音波インピーダンス値Zのピークが発生することがある。この場合、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(ピーク値)より、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)が小さくなることもある。図16に示す一例では、経過時間t4に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因して、超音波インピーダンス値Zがピーク(ピーク値)Z4となる。また、経過時間t4より後の経過時間t5に、処置対象Hの切れ分かれに起因して、超音波インピーダンス値Zが対象ピーク(対象ピーク値)Z5となる。そして、図16に示す一例では、ピークZ4より対象ピークZ5が小さくなる。
図16に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合、ステップS111で経過時間t4が超音波インピーダンス値Zの漸減開始時として検出され、ステップS112でピークZ4が仮ピーク値として保持される。本実施形態では、ステップS131、S132が行われることにより、図16に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合でも、ステップS114の判定において、仮ピーク値として保持されたピークZ4が切れ分かれに起因する対象ピークではなかったと、判定される。
すなわち、図16に示すように超音波インピーダンス値Zが経時的に変化した場合、ステップS112で基準時間ΔT4が設定される。基準時間ΔT4の長さは、経過時間t4から経過時間t5までの長さと同一、又は、経過時間t4から経過時間t5までの長さより長く、設定される。そして、漸増検出部61が、経過時間t6を漸増開始時として検出する。漸増開始時t6は、経過時間t4より後で経過時間t5より前に発生する。このため、ステップS131で、超音波インピーダンス値Zが漸増をしたと、判断される。
ここで、図16に示す一例では、漸増開始時である経過時間t6からの超音波インピーダンス値Zの増加量ξ6realが基準増加量ξ6以上となる。このため、ステップS132において、超音波インピーンス値Zの増加量ξ6realが基準増加量ξ6以上となったと判断される。そして、ステップS126において、判定パラメータZflagが0に設定され、図11のステップS114において、ピークZ4が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)ではなかったと判定される。
また、図16に示す一例では、経過時間(漸増開始時)t6からの超音波インピーダンス値Zの増加量ξ6realが基準増加量ξ6以上となった以後において、超音波インピーダンス値Zが再び漸減し始める。この場合、ステップS111において、漸減検出部55が、再び漸減し始めた漸減開始時(再漸減開始時)である経過時間t5を検出する。そして、ステップS112において、仮ピーク値保持部56が、経過時間(再漸減開始時)t5での超音波インピーダンス値Z5を、仮ピーク値として保持する。この際、保持された仮ピーク値Z4を経過時間t5での超音波インピーダンス値Z5に更新し、更新された仮ピーク値Z5が保持される。
そして、ステップS113において、経過時間(再漸減開始時)t5から基準時間ΔT5だけ経過するまで、更新された仮ピーク値Z5に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較される。この際、図12に示すステップS121、S123〜126、S131、S132に従って、比較処理が行われる。そして、ステップS114において、更新された仮ピーク値として保持された再漸減開始時での超音波インピーダンス値Z5が、切れ分かれに起因する対象ピーク(対象ピーク値)であったと判定される。
本変形例での超音波処置装置1では、前述したように、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ4)が対象ピーク(例えばZ5)より前に発生し、かつ、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ4)より対象ピーク(例えばZ5)が小さい場合でも、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ4)が対象ピークではなかったと、判定される。このため、対象ピーク(例えばZ5)とは異なるピーク(例えばZ4)が対象ピーク(例えばZ4)より前に発生し、かつ、対象ピークとは異なるピーク(例えばZ4)より対象ピーク(例えばZ5)が小さい場合でも、適切に対象ピークを検出することができる。
なお、別の変形例として、第1の実施形態のステップS122及び第1の変形例のステップS131、S132の両方が行われる状態に、超音波処置装置1の制御ユニット3が適用されてもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図17乃至図21を参照として説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図17は、本実施形態の制御ユニット3を示す図である。本実施形態では、制御ユニット3は、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53及び告知部59に加えて、周波数調整部63及び極小値検出部65を備える。周波数調整部63は、電源26及び制御部51に電気的に接続されている。また、極小値検出部65は、制御部51及びインピーダンス検出部52に電気的に接続されている。そして、極小値検出部65は、漸増検出部66と、仮極小値保持部67と、極小値判定部68と、を備える。また、本実施形態では、切替え操作部58は設けられていない。なお、周波数調整部62及び極小値検出部65は、例えばCPU、ASIC等を備えるプロセッサ、又は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路及びメモリ(記憶部)から形成されている。
図18は、本実施形態において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図18に示すように、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、ステップS101で電源26からの振動発生電力Pの出力が開始され、ステップS102で振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される。ただし、本実施形態では、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始された以後において、超音波振動の周波数fの調整が、周波数調整部63によって行われる(ステップS141)。
図19は、超音波振動の共振周波数及びその周辺の周波数(振動発生電流Iの周波数)fと超音波インピーダンス値Zとの関係を示す図である。図19に示すように、超音波振動の周波数fが変化することにより、超音波インピーダンス値Zは変化する。周波数調整部63は、超音波振動の周波数fと超音波インピーダンス値Zとの関係に基づいて、振動発生電流Iの周波数を調整している。これにより、超音波振動の周波数fが調整される。超音波インピーダンス値Zと周波数fとの関係では、共振周波数f0で、超音波インピーダンス値Zが極小(最小)となる。したがって、周波数調整部63によって、超音波振動の周波数fが共振周波数f0に調整される。そして、共振周波数f0の超音波振動を用いて、前述した処置対象Hを凝固させながら切開する処置が行われる。
超音波振動の周波数fの調整は、PLL(Phase Locked Loop)制御によって、行われる。すなわち、超音波振動の所定の周波数領域Δfにおいて超音波インピーダンス値Zが最小(極小)となる周波数fを、共振周波数f0として検出する。そして、共振周波数f0の超音波振動が発生する状態に、電源26からの振動発生電力Pが調整される。
図20は、超音波振動の周波数fの調整が行われる場合での超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の一例を示す図である。図20では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。超音波振動の周波数fの調整が行われる場合、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に、周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減する。そして、共振周波数f0に周波数fが調整された時点の近傍で、超音波インピーダンス値Zが極小値となる。図20に示す一例では、経過時間t7で、超音波振動の周波数fの調整が開始される。そして、経過時間t8で、超音波インピーダンス値Zが極小値Z8となる。ここで、図20に示す一例では、経過時間t7が調整開始時となり、経過時間t8が極小時となる。
図18に示すように、本実施形態では、超音波振動の周波数fの調整が開始された調整開始時以後において、極小値検出部65によって、経時的に超音波インピーダンス値Zが極小となる極小値の検出処理が行われる(ステップS142)。この際、超音波インピーダンス値Zが極小値となる極小時が、検出されてもよい。ここで、超音波振動の周波数fの調整が開始された調整開始以後において、極小値検出部65によって最初に極小値を検出した時点を極小検出時とする。制御部51は、超音波インピーダンス値Zの極小値が検出された極小検出時に、対象ピークの検出が行われない検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ、切替える(ステップS143)。すなわち、制御部51は、極小検出時まで、検出不可状態を維持する。検出許可状態に切替えられることにより、第1の実施形態と同様にして、切れ分かれに起因する対象ピークの検出処理が行われる(ステップS103)。すなわち、極小検出時まで対象ピークの検出が行われない状態に、ピーク検出部53(漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57)が、制御されている。
図21は、極小値検出部65によって行われる超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理(図18のステップS142)を示す図である。すなわち、図21では極小値を検出する方法が示されている。図21に示すように、極小値の検出を行う際には、まず、漸増検出部66が、インピーダンス検出部52での超音波インピーダンス値Zの検出結果に基づいて、超音波インピーダンス値Zが漸増を開始する漸増開始時を検出する(ステップS151)。図20に示す一例では、経過時間t8が漸増開始時として検出される。漸増開始時が検出されると(ステップS151−Yes)、仮極小値保持部67が、検出された漸増開始時での超音波インピーダンス値Zを仮極小値として保持する(ステップS152)。図20に示す一例では、経過時間t8での超音波インピーダンス値Z8が、仮極小値として保持される。
そして、極小値判定部68によって、保持された仮極小値に対して漸増開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較される(ステップS153)。図20に示す一例では、仮極小値として保持された超音波インピーダンス値Z8に対して、経過時間t8以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較される。そして、仮極小値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較に基づいて、極小値判定部68が、仮極小値が極小値であったか否かを判定する(ステップS154)。図20に示す一例では、仮極小値として保持された超音波インピーダンス値Z8が、極小値であったか否かが、判定される。この際、検出された漸増開始時が極小時であったか否かを、判定してもよい。
仮極小値に対する超音波インピーダンス値Zの比較及び極小値の判定は、例えば、漸増開始時からの超音波インピーダンス値Zの増加量σrealが基準増加量σ以上となるか否かに基づいて、行われる。図20に示す一例では、漸増開始時である経過時間t8からの超音波インピーダンス値Zの増加量σ8realが基準増加量σ8となった時点で、仮極小値Z8が極小値であったと判定される。また、仮極小値に対する超音波インピーダンス値Zの比較及び極小値の判定は、例えば、漸増開始時以後において超音波インピーダンス値Zが基準値Zth以上となるか否かに基づいて、行われてもよい。この場合、図20に示す一例では、漸増開始時である経過時間t8以後において、超音波インピーダンス値が基準値Z8thになった時点で、仮極小値Z8が極小値であったと判定される。
仮極小値が極小値であったと判定されることにより、極小値が検出される。図20に示す一例では、超音波インピーダンス値Z8が極小値として検出される。そして、経過時間t8より後の経過時間t9が、極小値Z8が検出された極小検出時となる。また、基準増加量σ及び基準値Zthは、制御部51による検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータである。基準増加量σ及び基準値Zthは、既定の大きさに定まったものでなく、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよい。
本実施形態の超音波処置装置1では、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、調整開始時(例えばt7)以後において超音波インピーダンス値Zが極小値(例えばZ8)が最初に検出される極小検出時(例えばt9)まで、対象ピークの検出(検出処理)が行われない検出不可状態(非検出状態)となる。このため、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、適切に対象ピークを検出、すなわち決定することができる。
(第2の実施形態の変形例)
次に、第2の実施形態の変形例として、第2の変形例を図22及び図23を参照して説明する。なお、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
本変形例でも第2の実施形態と同様に、制御ユニット3は、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53、告知部59及び周波数調整部63を備える。ただし、本変形例では、制御ユニット3に、極小値検出部65が設けられていない。
図22は、本変形例において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図22に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、ステップS101で電源26からの振動発生電力Pの出力が開始され、ステップS102で振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される。そして、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始された以後において、超音波振動の周波数fの調整が、周波数調整部63によって行われる(ステップS141)。周波数fの調整は、第2の実施形態と同様にして行われる。
図23は、本変形例での超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の一例を示す図である。図23では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。本変形例でも第2の実施形態と同様に、超音波振動の周波数fの調整が行われるため、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に、周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減する。そして、共振周波数f0に周波数fが調整された時点の近傍で、超音波インピーダンス値Zが極小値となる。図23に示す一例では、経過時間t10で、超音波振動の周波数fの調整が開始される。そして、経過時間t11で、超音波インピーダンス値Zが極小値Z11となる。すなわち、図23に示す一例では、経過時間t10が調整開始時となり、経過時間t11が極小時となる。
ただし、本変形例では第2の実施形態とは異なり、極小値検出部65が設けられていないため、超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理(図18のステップS142)は、行われない。代わりに、図22に示すように、超音波振動の周波数fの調整が開始される調整開始時から所定の設定時間ΔT´だけ経過したか否かが、制御部51によって、判断される(ステップS161)。
そして、調整開始時から所定の設定時間ΔT´経過した場合は(ステップS161−Yes)、対象ピークの検出が行われない検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ、切替える(ステップS143)。ここで、調整開始時から所定の設定時間ΔT´だけ経過した時点を起動時とすると、本変形例では、制御部51は、起動時に対象ピークの検出が行われない検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ、切替える(ステップS143)。すなわち、制御部51は、起動時まで検出不可状態を維持している。検出許可状態に切替えられることにより、第2の実施形態と同様にして、切れ分かれに起因する対象ピークの検出が行われる(ステップS103)。すなわち、起動時まで対象ピークの検出が行われない状態に、ピーク検出部53(漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57)が、制御されている。図23に示す一例では、経過時間t11より後の経過時間t12が、起動時となる。したがって、所定の設定時間ΔT´10は、調整開始時である経過時間t10から極小時である経過時間t11までの長さより、長くなる。ここで、所定の設定時間ΔT´は、制御部51による検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータである。所定の設定時間ΔT´は、既定の大きさに定まったものでなく、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよい。
本変形例の超音波処置装置1では、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、調整開始時(例えばt10)から所定の設定時間ΔT´だけ経過した起動時(例えばt12)まで、対象ピークの検出(検出処理)が行われない検出不可状態となる。そして、所定の設定時間ΔT´は、調整開始時(例えばt10)から極小時(例えばt11)までの長さより、長くなる。このため、第2の実施形態と同様に、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、適切に対象ピークを検出することができる。
また、第2の実施形態の変形例として、第3の変形例を図24及び図25を参照して説明する。なお、第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
本変形例でも第2の実施形態と同様に、制御ユニット3は、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53、告知部59及び周波数調整部63を備える。ただし、本変形例では、制御ユニット3に、極小値検出部65が設けられていない。また、本変形例では、インピーダンス検出部52は、超音波振動の周波数fを経時的に検出する。
図24は、本変形例において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図24に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、ステップS101で電源26からの振動発生電力Pの出力が開始され、ステップS102で振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される。そして、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始された以後において、超音波振動の周波数fの調整が、周波数調整部63によって行われる(ステップS141)。周波数fの調整は、第2の実施形態と同様にして行われる。
そして、本変形例では、インピーダンス検出部52が、超音波振動の周波数fの経時的な検出を開始する(ステップS162)。インピーダンス検出部52は、振動発生電流I及び振動発生電圧Vの経時的な変化を検出する。そして、振動発生電流I及び振動発生電圧Vの位相差等に基づいて、超音波振動の周波数fが検出される。
図25は、本変形例での超音波インピーダンス値Zの経時的な変化及び超音波振動の周波数fの経時的な変化の一例を示す図である。図25では、縦軸が超音波インピーダンス値Z及び周波数fを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。また、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を実線で、周波数fの経時的な変化を一点鎖線で示している。本変形例でも第2の実施形態と同様に、超音波振動の周波数fの調整が行われるため、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に、周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減する。
ただし、本変形例では第2の実施形態とは異なり、極小値検出部65が設けられていないため、超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理(図18のステップS142)は、行われない。代わりに、図24に示すように、超音波振動の周波数fの調整が開始された以後において、超音波振動の周波数fが閾値fthより小さいか否かが、制御部51によって、判断される(ステップS163)。超音波振動子(振動発生部)22に振動発生電力Pが供給され、超音波振動が発生すると、超音波振動子22の温度が高くなる。超音波振動子22の温度が高くなることにより、超音波振動の周波数(共振周波数)fが小さくなる。したがって、超音波振動によって処置対象が切れ分かれる際には、超音波振動子の温度が高くなり、超音波振動の周波数fが小さくなる。
そこで、本変形例では、超音波振動の周波数fが閾値fthより小さい場合は(ステップS163−Yes)、対象ピークの検出が行われない検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ、切替える(ステップS143)。本変形例では、制御部51は、周波数fが閾値fthより小さくなった時点で、対象ピークの検出が行われない検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ、切替える(ステップS143)。すなわち、制御部51は、超音波振動の周波数fが閾値fthより小さくなるまで検出不可状態を維持している。検出許可状態に切替えられることにより、第2の実施形態と同様にして、切れ分かれに起因する対象ピークの検出が行われる(ステップS103)。すなわち、周波数fが閾値fthより小さくなるまで対象ピークの検出が行われない状態に、ピーク検出部53(漸減検出部55、仮ピーク値保持部56及びピーク判定部57)が、制御されている。
図25に示す一例では、経過時間t13で、周波数fが閾値f13thより小さくなる。これにより、検出不可状態から検出許可状態に切替えられる。検出許可状態に切替えられることにより、経過時間t14での超音波インピーダンスZ14が切れ分かれに起因する対象ピークとして検出される。ここで、周波数fの閾値fthは、制御部51による検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータである。閾値fthは、既定の大きさに定まったものでなく、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化等に対応させて設定されてもよい。
本変形例の超音波処置装置1では、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に周波数fの調整に起因して超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、周波数fが閾値fthより小さくなるまで(例えばt13まで)、対象ピークの検出(検出処理)が行われない検出不可状態となる。このため、第2の実施形態と同様に、切れ分かれに起因する対象ピークよりも前に超音波インピーダンス値Zが漸減した場合でも、適切に対象ピークを検出することができる。
なお、別の変形例として、第2の実施形態の極小値の検出処理及び極小検出時での切替えが、第1の変形例の超音波処置装置1の制御ユニット3に適用されてもよい。また、第2の変形例の起動時での切替えが、第1の変形例の超音波処置装置1の制御ユニット3に適用されてもよい。さらに、第3の変形例の周波数fに基づく検出許可状態の切替えが、第1の変形例の超音波処置装置1の制御ユニット3に適用されてもよい。
(第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例)
また、第1実施形態及び第2の実施形態の変形例として、第4の変形例を図26乃至図28を参照して説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図26は、本変形例の超音波処置具、振動子ユニット5及び制御ユニット3での電気的な接続状態を示す図である。図26に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、制御ユニット3は、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53、告知部59、周波数調整部63及び極小値検出部65を備える。ただし、本変形例では、制御ユニット3に、タッチパネル等から形成される出力調整部77が設けられている。出力調整部77では、電源26から出力される振動発生電流Iの大きさ(出力レベル)を調整する操作が入力される。なお、制御部51は、振動発生電流Iが出力調整部77で調整された出力レベルで一定に保たれる定電流制御で、振動発生電力Pの出力状態を制御している。本変形例では、インピーダンス検出部52は、振動発生電流Iの大きさ(出力レベル)を経時的に検出する。
また、本変形例では、ハンドルユニット6の内部には、ROM等の不揮発性メモリである情報記憶部(プローブ情報記憶部)71が設けられている。情報記憶部71は、例えば、ハンドルユニット6の筒状ケース部11に固定されている。情報記憶部71には、超音波プローブ9の種別に関する情報が少なくとも記憶されている。例えば、情報記憶部71には、超音波プローブ9の種別を示す識別番号が記憶されている。なお、情報記憶部71には、超音波プローブ9を含む超音波処置具2(ハンドルユニット6等)に関する情報が記憶されてもよい。ハンドルユニット6に振動子ユニット5が連結され、制御ユニット3にケーブル7が接続されることにより、情報記憶部71は、信号経路72を通して、制御ユニット3の制御部51に電気的に接続される。信号経路部72は、ハンドルユニット6の内部、振動子ケース21の内部及びケーブル7の内部を通って延設されている。
そして、本変形例では、振動子ケース21の内部には、ROM等の不揮発性メモリである情報記憶部(振動子情報記憶部)73が設けられている。情報記憶部73は、例えば、振動子ケース21に固定されている。情報記憶部73には、超音波振動子(振動発生部)22の種別に関する情報が少なくとも記憶されている。例えば、情報記憶部73には、超音波振動子22の種別を示す識別番号が記憶されている。なお、情報記憶部73には、超音波振動子22を含む振動子ユニット5(ホーン部材23等)に関する情報が記憶されてもよい。ハンドルユニット6に振動子ユニット5が連結され、制御ユニット3にケーブル7が接続されることにより、情報記憶部73は、信号経路75を通して、制御ユニット3の制御部51に電気的に接続される。信号経路部75は、振動子ケース21の内部及びケーブル7の内部を通って延設されている。
制御ユニット3の制御部51は、識別部76を備える。識別部76は、例えば、プロセッサの電子回路から形成されている。識別部76は、信号経路部72を介して情報記憶部71に記憶される情報を読取る。そして、情報記憶部71から読取った情報に基づいて、超音波振動子22に連結される超音波プローブ9の種別が識別される。超音波プローブ9の種別が識別されることにより、超音波プローブ9の形状、寸法等も検出される。また、識別部76は、信号経路部75を介して情報記憶部73に記憶される情報を読取る。そして、情報記憶部73から読取った情報に基づいて、振動発生電力Pが電源26から供給される超音波振動子22の種別が識別される。なお、識別部76は、制御部51とは別体であってもよい。
図27は、本変形例において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図27に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、ステップS101で電源26からの振動発生電力Pの出力が開始され、ステップS102で振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される。そして、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始された以後において、超音波振動の周波数fの調整が、周波数調整部63によって行われる(ステップS141)。周波数fの調整は、第2の実施形態と同様にして行われる。
本変形例では、インピーダンス検出部52が、振動発生電流Iの大きさを検出する(ステップS164)。これにより、出力調整部77で調整された振動発生電流Iの出力レベルが検出される。また、識別部76は、情報記憶部71に記憶された情報及び情報記憶部73に記憶された情報を読取る(ステップS165)。識別部76は、情報記憶部(プローブ情報記憶部)71から読み取った情報に基づいて、超音波処置具2(超音波プローブ9、ハンドルユニット6等)の種別を識別する(ステップS166)。これにより、超音波振動子(振動発生部)22に連結される超音波プローブ9の種別が識別され、超音波プローブの寸法(長手軸に平行な方向についての長さ)、形状等が検出される。また、識別部76は、情報記憶部(振動子情報記憶部)73から読み取った情報に基づいて、超音波振動子22の種別を識別する(ステップS167)。
そして、第2の実施形態と同様に、極小値検出部65によって、超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理が行われ(ステップS142)、超音波インピーダンスZの極小値が検出されると、制御部51によって、検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ切替えられる(ステップS143)。そして、検出許可状態に切替えられると、ピーク検出部53によって、超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出処理が行われ(ステップS103)、対象ピークが検出されると、振動発生電力Pの出力が停止されるか、又は、対象ピークの検出が告知される(ステップS104)。
極小値の検出処理(ステップS142)では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果及び超音波振動子22の種別の識別結果に基づいて、第2の実施形態で前述した基準増加量σ、基準値Zth等が設定される。また、極小値の検出処理(ステップS142)では、振動発生電流Iの大きさ(出力レベル)の検出結果に基づいて、基準増加量σ、基準値Zth等が設定される。すなわち、制御部51は、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に基づいて、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータを設定している。
対象ピークの検出処理(ステップS103)では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果及び超音波振動子22の種別の識別結果に基づいて、第1の実施形態で前述した基準増加量ε、基準時間ΔT等が設定される。また、対象ピークの検出処理(ステップS103)では、振動発生電流Iの大きさ(出力レベル)の検出結果に基づいて、基準減少量ε、基準時間ΔT等が設定される。すなわち、ピーク判定部57は、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に基づいて、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータを設定している。
制御部51、ピーク検出部53及び極小値検出部65の一部を形成する記憶部には、超音波処置具2の種別、超音波振動子22の種別及び振動発生電流Iの出力レベルに対するパラメータの設定値を示すテーブルが記憶されている。図28は、制御ユニット3の記憶部に記憶されるテーブルの一例を示す図である。図28は、出力レベル1で振動発生電流Iが出力されている場合での、パラメータの設定値を示すテーブルである。図28に示すように、振動発生電流Iが出力レベル1になる場合については、例えば、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別がTypeJ1〜J3の場合、及び、情報記憶部71が超音波処置具2に設けられていない場合のそれぞれについてのパラメータの設定値が記憶されている。そして、振動発生電流Iが出力レベル1になる場合ついては、例えば、超音波振動子22の種別がTypeK1〜K3の場合、及び、情報記憶部73が振動子ユニット5に設けられていない場合のそれぞれについてのパラメータの設定値が記憶されている。したがって、振動発生電流Iが出力レベル1になる場合ついては、超音波処置具2の種別及び超音波振動子22の種別に対応させて、設定値L1〜L16が記憶されている。振動発生電流Iが出力レベル1以外の出力レベルになる場合ついても、図28と同様のパラメータの設定値を示すテーブルがあり、その出力レベルに応じたパラメータが記憶されている。
ピーク判定部57は、記憶されたテーブルに基づいて、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に対応する設定値Lに、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータ(基準減少量ε、基準時間ΔT)を設定する。同様に、制御部51は、記憶されたテーブルに基づいて、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に対応する設定値Lに、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータ(基準増加量σ、基準値Zth)を設定する。これにより、超音波プローブ9の種別、超音波振動子22の種別、及び、振動発生電流Iの出力レベルに対応させて、適切に対象ピークの検出が行われるとともに、検出不可状態から検出許可状態への切替えも適切に行われる。
なお、第1の実施形態の変形例である第1の変形例において仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータが、第4の変形例と同様にして設定されてもよい。この場合、ピーク判定部57は、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に基づいて、基準減少量ε、基準時間ΔT及び基準増加量ξを設定する。また、第2の実施形態の変形例である第2の変形例及び第3の変形例のそれぞれにおいて検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータが、第4の変形例と同様にして設定されてもよい。この場合、制御部51は、識別部76による超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別及び超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果に基づいて、所定の設定時間ΔT´を設定する、又は、周波数fの閾値fthを設定する。
また、ある変形例では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果、超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果の少なくとも1つに基づいて、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータが設定されてもよい。同様に、ある変形例では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果、超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果の少なくとも1つに基づいて、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータが設定されてもよい。
また、第1実施形態及び第2の実施形態の変形例として、第5の変形例を図29及び図30を参照して説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図29は、本変形例の振動子ユニット5及び制御ユニット3での電気的な接続状態を示す図である。図29に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、制御ユニット3は、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53、告知部59、周波数調整部63及び極小値検出部65を備える。
本変形例では、振動子ケース21の内部には、ROM等の不揮発性メモリである情報記憶部(回数記憶部)81が設けられている。情報記憶部81は、例えば、振動子ケース21に固定されている。情報記憶部81には、超音波振動子(振動発生部)22を備える振動子ユニット5で熱滅菌処理(例えばオートクレーブ滅菌)が行われた回数Nが少なくとも記憶されている。ハンドルユニット6に振動子ユニット5が連結され、制御ユニット3にケーブル7が接続されることにより、情報記憶部81は、信号経路82を通して、制御ユニット3の制御部51に電気的に接続される。信号経路部82は、振動子ケース21の内部及びケーブル7の内部を通って延設されている。
制御ユニット3の制御部51は、回数更新部83を備える。回数更新部83は、超音波振動子22で熱滅菌処理が行われた場合に、情報記憶部81に記憶される回数Nを1だけ加算し、熱滅菌処理が行われた回数Nを更新する。なお、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nを更新する構成及び方法については、参照文献1(国際公開2014/125983号公報)に詳細に記載され、本変形例でも同様にして回数Nが更新される。このため、熱滅菌処理が行われた回数Nを更新する構成及び方法については、詳細な説明を省略する。また、識別部76は、制御部51とは別体であってもよい。
図30は、本変形例において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。図30に示すように、本変形例でも第2の実施形態と同様に、ステップS101で電源26からの振動発生電力Pの出力が開始され、ステップS102で振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される。そして、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始された以後において、超音波振動の周波数fの調整が、周波数調整部63によって行われる(ステップS141)。周波数fの調整は、第2の実施形態と同様にして行われる。
本変形例では、制御部51は、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nを読取る(ステップS168)。そして、第2の実施形態と同様に、極小値検出部65によって、超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理が行われ(ステップS142)、超音波インピーダンスZの極小値が検出されると、制御部51によって、検出不可状態から対象ピークの検出が行われる検出許可状態へ切替えられる(ステップS143)。そして、検出許可状態に切替えられると、ピーク検出部53によって、超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出処理が行われ(ステップS103)、対象ピークが検出されると、振動発生電力Pの出力が停止されるか、又は、対象ピークの検出が告知される(ステップS104)。
極小値の検出処理(ステップS142)では、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、第2の実施形態で前述した基準増加量σ、基準値Zth等が設定される。すなわち、制御部51は、熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータを設定している。対象ピークの検出処理(ステップS103)では、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、第1の実施形態で前述した基準増加量ε、基準時間ΔT等が設定される。すなわち、ピーク判定部57は、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータを設定している。
制御部51、ピーク検出部53及び極小値検出部65の一部を形成する記憶部には、熱滅菌処理の回数Nに対するパラメータの設定値を示すテーブルが記憶されている。ピーク判定部57は、記憶されたテーブルに基づいて、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに対応する設定値に、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータ(基準減少量ε、基準時間ΔT)を設定する。同様に、制御部51は、記憶されたテーブルに基づいて、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに対応する設定値Lに、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータ(基準増加量σ、基準値Zth)を設定する。これにより、超音波振動子22で熱滅菌処理が行われた回数N、すなわち、超音波振動子22の製造時からの劣化具合に対応させて、適切に対象ピークの検出が行われるとともに、検出不可状態から検出許可状態への切替えも適切に行われる。
なお、第1の実施形態の変形例である第1の変形例において仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータが、第5の変形例と同様にして設定されてもよい。この場合、ピーク判定部57は、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、基準減少量ε、基準時間ΔT及び基準増加量ξを設定する。また、第2の実施形態の変形例である第2の変形例及び第3の変形例のそれぞれにおいて検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータが、第45変形例と同様にして設定されてもよい。この場合、制御部51は、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、所定の設定時間ΔT´を設定する、又は、周波数fの閾値fthを設定する。
また、ある変形例では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果、超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果の少なくとも1つに加えて、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、仮ピーク値が対象ピークであったか否かの判定に用いられるパラメータが設定されてもよい。同様に、ある変形例では、超音波処置具2(超音波プローブ9)の種別の識別結果、超音波振動子22の種別の識別結果、及び、インピーダンス検出部52による振動発生電流Iの出力レベルの検出結果の少なくとも1つに加えて、情報記憶部81に記憶される熱滅菌処理が行われた回数Nに基づいて、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かの判定に用いられるパラメータが設定されてもよい。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図31乃至図35を参照として説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
本実施形態では、制御ユニット3は、第1の実施形態と同様に、電源26、制御部51、インピーダンス検出部52、ピーク検出部53、切替え操作部58及び告知部59を備える。ただし、本実施形態では、電源26は、振動発生電力Pに加えて高周波電力P´を出力可能である。本実施形態では、エネルギー操作入力ボタン16でのエネルギー操作の入力によって操作信号が制御部51に伝達されることにより、電源26からの振動発生電力Pの出力が開始されるとともに、高周波電力P´が出力される。なお、電源26では、振動発生電力Pを出力する部位と高周波電力P´が出力される部位とが、一体に設けられてもよく、別体で設けられてもよい。また、電源26では、例えば、コンセント、直流電源等の電力を変換回路等で振動発生電力P及び高周波電力P´に変換し、出力する。
図31は、本実施形態の振動子ユニット5の構成を示す図である。図31に示すように、本実施形態では、ホーン部材23に、電気配線85の一端が接続されている。電気配線85は、ケーブル7の内部を通って延設され、他端が電源26に接続されている。電源26から出力された高周波電力P´は、電気配線85、ホーン部材23及び超音波プローブ9を介して、処置部17に伝達される。高周波電力P´が処置部17に伝達されることにより、処置部17は、電極として機能する。
また、本実施形態では、振動子ケース21に導電部86が設けられている。導電部86には、電気配線87の一端が接続されている。電気配線87は、ケーブル7の内部を通って延設され、他端が電源26に接続されている。電源26から出力された高周波電力P´は、電気配線87、振動子ケース21の導電部86及びシース8の可動筒状部(図示しない)を介して、ジョー18に伝達される。高周波電力P´がジョー18に伝達されることにより、ジョー18の把持部材42は、処置部17とは電位が異なる電極として機能する。
処置部17及びジョー18に高周波電力P´が伝達された状態では、処置部17の電位とジョー18の把持部材42の電位とが、異なる。このため、処置部17とジョー18との間で処置対象Hが把持された状態で処置部17及びジョー18に高周波電力P´が伝達されることにより、処置対象Hに高周波電流I´が流れる。ここで、処置部17とジョー18の把持部材42との間の電位差が高周波電圧V´となる。
本実施形態では、インピーダンス検出部52は、電源26から高周波電力P´が出力されている状態において、高周波電力P´の高周波インピーダンス値Z´を経時的に検出する。したがって、本実施形態では、インピーダンス検出部52によって、超音波インピーダンス値Zが経時的に検出されるとともに、高周波インピーダンス値Z´が経時的に検出される。高周波インピーダンス値Z´は、式(2)のようになる。
したがって、高周波電力P´、高周波電圧V´及び高周波電流I´を経時的に検出することにより、高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化を検出可能となる。なお、インピーダンス検出部52では、超音波インピーダンス値Zを検出する部位と高周波インピーダンス値Z´を検出する部位とが、一体に設けられてもよく、別体で設けられてもよい。
図32は、本実施形態において、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニット3の作動状態を示す図である。本実施形態では、振動発生電力Pの出力が開始される(ステップS101)と同時に、高周波電力P´の出力が開始される(ステップS171)。そして、インピーダンス検出部52によって、振動発生電力Pの超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始される(ステップS102)と同時に、高周波電力P´の高周波インピーダンス値Z´の経時的な検出が開始される(ステップS172)。そして、ステップS103において、処置対象Hの切れ分かれに起因する超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出処理が行われる。ただし、本実施形態では、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に加えて高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に基づいて、対象ピークの検出が行われる。
本実施形態でも第1の実施形態と同様に、対象ピークの検出においては、ステップS111で、超音波インピーダンス値Zが漸減を開始する漸減開始時が検出され、ステップS112で、検出された漸減開始時での超音波インピーダンス値Zを仮ピーク値として保持する(図11参照)。そして、ステップS113で、保持された仮ピーク値に対して漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化が比較され、ステップS114で、仮ピーク値が処置対象Hの切れ分かれに起因する対象ピークであったか否かを判定する(図11参照)。ただし、本実施形態では、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値の経時的な変化の比較処理、及び、対象ピークであったか否かの判定は、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に加えて高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に基づいて、行われる。
図33は、ピーク判定部57によって行われる仮ピーク値に対する漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理(図11のステップS113)を示す図である。すなわち、図33では、検出許可状態においてピーク判定部57によって仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する方法が示されている。図33に示すように、本実施形態では、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する際には、まず、検出された超音波インピーダンス値Zの漸減開始時での高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´th以上であるか否かが、判断される(ステップS181)。
本実施形態では、ステップS181での判断に基づいて、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較を行う基準時間ΔTが、設定される。すなわち、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に加えて高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に対応させて、基準時間ΔTの長さが変化する。高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に対応して基準時間ΔTの長さが変化するため、高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に対応して基準減少量εの大きさも変化する。すなわち、本実施形態では、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化に加えて高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化に基づいて、基準時間ΔTの長さ及び基準減少量εの大きさが、設定される。
超音波インピーダンス値Zの漸減開始時での高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´th以上である場合は(ステップS181−Yes)、第1の時間範囲で基準時間ΔTが設定される(ステップS182)。一方、超音波インピーダンス値Zの漸減開始時での高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´thより小さい場合は(ステップS181−No)、第1の時間範囲より長い第2の時間範囲で、基準時間ΔTが設定される(ステップS183)。すなわち、ピーク判定部57は、超音波インピーダンス値Zの漸減開始時での高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´th以上であるか否かに基づいて基準時間ΔTの長さを設定している。そして、高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´th以上の場合での基準時間ΔTに比べて、高周波インピーダンス値Z´が閾値Z´thより小さい場合での基準時間ΔTを長くしている。
ステップS182又はステップS183で基準時間ΔTが設定されると、第1の実施形態と同様に、ステップS122において漸減開始時以後において基準時間ΔTの間、連続的に超音波インピーダンス値Zが仮ピーク値より小さくなったか否かが、比較される。そして、ステップS123において、音波インピーダンス値Zの基準減少量εが設定される。この際、基準時間ΔTの長さに対応させて、基準減少量εが設定される。そして、ステップS124において、漸減開始時から基準時間ΔTだけ経過する間での仮ピーク値からの超音波インピーダンス値Zの減少量εrealが基準減少量ε以上であったか否かが、比較される。そして、ステップS122及びステップS124での比較に基づいて、判定パラメータZflagが1に設定されるか(ステップS125)、又は、判定パラメータZflagが0に設定される(ステップS126)。そして、第1の実施形態と同様に、図11のステップS114で、仮ピーク値が処置対象Hの切れ分かれに起因する対象ピークであったか否かが、判定される。
図34及び図35は、電源26から振動発生電力Pの出力及び高周波電力P´の出力が開始されてからの超音波インピーダンス値Zの経時的な変化及び高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化の一例を示している。図34及び図35では、縦軸が超音波インピーダンス値Z及び高周波インピーダンス値Z´を示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始(高周波電力P´の出力開始)からの経過時間tを示している。また、図34及び図35では、超音波インピーダンス値Zを実線で、高周波インピーダンス値Z´を一点鎖線で示している。図34は、処置対象Hの濡れ度(湿性)が低い、すなわち処置対象Hが濡れていない場合の一例であり、図35は処置対象Hの濡れ度が高い場合の一例である。
図34に示す一例では、ステップS111において経過時間t15が超音波インピーダンス値Zの漸減開始時として検出され、ステップS112において経過時間t15での超音波インピーダンス値Z15が仮ピーク値として保持される。第1の実施形態で前述したように、処置対象Hが濡れていない場合には、切れ分かれに起因する対象ピークより前に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因する超音波インピーダンス値Zのピーク等は発生しない。実際に、仮ピーク値として保持された超音波インピーダンス値Z15が、切れ分かれに起因する対象ピークである。
処置対象Hの濡れ度が低い場合、処置部17とジョー18との間に把持された処置対象Hに高周波電流I´が流れ難くなる。したがって、高周波インピーダンス値Z´は大きくなる。実際に、図34に示す一例では、超音波インピーダンス値Zの漸減開始時t15において、高周波インピーダンス値Z´15は、閾値Z´th以上となる。したがって、図27に示す一例では、ステップS182において、基準時間ΔTは、第1の時間範囲のΔT15に設定され、設定された基準時間ΔT15は短い。
基準時間ΔT15を短くすることにより、漸減開始時t15の以後において、迅速に仮ピーク値Z15が対象ピークであったか否かが、判定される。したがって、超音波インピーダンス値Zが対象ピーク(例えばZ15)となる対象ピーク時(例えばt15)の以後において、迅速に対象ピーク(例えばZ15)が検出される。すなわち、本実施形態では、高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化を対象ピークの検出に用いることにより、特に処置対象Hの濡れ度(湿性)が低い場合に、対象ピーク時(例えばt15)の以後において迅速に対象ピーク(例えばZ15)を検出することができる。
一方、図35に示す一例では、ステップS111において経過時間t16が超音波インピーダンス値Zの漸減開始時として検出され、ステップS112において経過時間t16での超音波インピーダンス値Z16が仮ピーク値として保持される。第1の実施形態で前述したように、処置対象Hの濡れ度が高い場合には、切れ分かれに起因する対象ピークより前に、当接部45の処置対象Hへの当接に起因する超音波インピーダンス値Zのピークが発生する。実際に、仮ピーク値として保持された超音波インピーダンス値Z16は、切れ分かれに起因する対象ピークではなく、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピークである。
処置対象Hの濡れ度が高い場合、処置部17とジョー18との間に把持された処置対象Hに高周波電流I´が流れ易くなる。したがって、高周波インピーダンス値Z´は小さくなる。実際に、図35に示す一例では、超音波インピーダンス値Zの漸減開始時t16において、高周波インピーダンス値Z´16は、閾値Z´thより小さくなる。したがって、図35に示す一例では、ステップS183において、基準時間ΔTは、第2の時間範囲のΔT16に設定され、設定された基準時間ΔT16は長い。
基準時間ΔT16を長くすることにより、漸減開始時t16から基準時間ΔT16経過するまでの間に、ステップS111において、経過時間t17が再漸減開始時として検出される。そして、ステップS112において、保持された仮ピーク値Z16を経過時間(再漸減開始時)t17での超音波インピーダンス値Z17に更新し、更新された仮ピーク値Z17が保持される。すなわち、基準時間ΔTを長くすることにより、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ16)が対象ピーク(例えばZ17)より前に発生した場合でも、当接部45の処置対象Hへの当接に起因するピーク(例えばZ16)が対象ピークではなかったと、判定され易くなる。すなわち、本実施形態では、高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化を対象ピークの検出に用いることにより、特に処置対象Hの濡れ度(湿性)が高い場合に、対象ピーク(例えばZ17)とは異なるピーク(例えばZ16)が対象ピーク(例えばZ17)ではなかったと、容易に判定することができる。
(第3の実施形態の変形例)
なお、第3の実施形態の高周波インピーダンス値Z´の経時的な変化を対象ピークの検出に用いる構成は、第1の変形例、第2の実施形態、第2の変形例及び第3の変形例のいずれにも適用可能である。また、処置部17及びジョー18に伝達される高周波電力P´は、処置に用いられてもよい。この場合、把持された処置対象Hに高周波電流I´が流れることにより、処置対象(生体組織)Hが変成され、処置対象Hの凝固が促進される。
(その他の変形例)
また、前述の実施形態等の変形例である第6の変形例について図36及び図37を参照にして説明する。図36は、本変形例に係る処置部17及びジョー18を示す図である。図36に示すように、本変形例では、ジョー18のパッド部材43の当接部45は、第1の当接面91と、第2の当接面92とを備える。第1の当接面91は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成さている。第2の当接面92は、第1の当接面91より硬い材料から形成され、例えばPI(ポリイミド)から形成されている。本変形例では、ジョー18の長手方向について略中央の領域に、第2の当接面92が設けられている。そして、ジョー18の長手方向について第2の当接面92の両側(先端側及び基端側)に第1の当接面91が設けられている。
図37は、電源26から振動発生電力Pの出力が開始されてからの超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の一例を示している。図37では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が振動発生電力Pの出力開始からの経過時間tを示している。また、図37では、前述の実施形態等と同様に当接部45が長手方向について全長に渡ってPTFEのみから形成される場合の一例を実線で示し、本変形例と同様に当接部45が第1の当接面91及び第2の当接面92を備える場合の一例を一点鎖線で示している。
図37に示すように、当接部45が長手方向について全長に渡ってPTFEのみから形成される一例では、経過時間t18での超音波インピーンス値Z18が対象ピークとなる。一方、当接部45が第1の当接面91及び第2の当接面92を備える一例では、経過時間t19での超音波インピーンス値Z19が対象ピークとなり、対象ピークでの超音波インピーダンス値Zが大きくなる。本変形例では、当接部45の一部に硬い材料から形成される第2の当接面92を設けることにより、切れ分かれに起因する対象ピークまでの超音波インピーダンス値Zの経時的な増加率が大きくなり、対象ピークでの超音波インピーダンス値Zが大きくなる。すなわち、超音波インピーダンス値Zの経時的な変化において、対象ピークが顕著に示される。これにより、超音波インピーダンス値Zの対象ピークの検出精度が向上する。
また、前述の実施形態等では、告知部59は、制御ユニット3に設けられるランプ、ブザー等であるが、これに限るものではない。例えば、ある変形例では、超音波処置装置1と共に用いられる内視鏡システム(図示しない)の表示部(図示しない)に告知部59が設けられてもよい。この場合、対象ピークが検出されると、表示部に対象ピークが検出されたことを示す指標が表示される。
また、前述の実施形態等では、切替え操作部58は制御ユニット3に設けられているが、これに限るものではない。例えば、ある変形例では、超音波処置具2のハンドルユニット6に、検出許可状態と検出不可状態との間の切替え操作が入力される切替え操作部58が設けられてもよい。
前述の実施形態及び変形例では、超音波処置装置(1)は、電源(26)から振動発生電力(P)が出力されている状態において、振動発生電力(P)の超音波インピーダンス値(Z)を経時的に検出するインピーダンス検出部(52)と、インピーダンス検出部(52)での検出結果に基づいて、超音波インピーダンス値(Z)が漸減を開始する漸減開始時を検出する漸減検出部(55)と、を備える。そして、超音波処置装置(1)は、検出された漸減開始時での超音波インピーダンス値(Z)を仮ピーク値として保持する仮ピーク値保持部(56)と、保持された仮ピーク値に対して漸減開始時以後の超音波インピーダンス値(Z)の経時的な変化を比較することにより、保持された仮ピーク値が検出対象である対象ピークであったか否かを判定するピーク判定部(57)と、を備える。
(参照例)
次に、前述の実施形態等に関連する参照例について説明する。まず、第1の参照例について、図38乃至図40を参照して、説明する。図38は、本参照例おいて、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニットの作動状態を示す図である。図38に示すように、本参照例では第2の実施形態と同様に、振動発生電力Pが出力されると(ステップS101)、超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始され(ステップS102)、周波数調整部63によって、超音波振動の周波数fの調整が行われる(ステップS141)。ただし、本参照例では、周波数fの調整開始(調整開始時)を0とする時間τが設定される(ステップS191)。そして、時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの変化の観測処理が行われる(ステップS192)。そして、制御部51は、ステップS192での観測結果に基づいて、検出不可状態から検出許可状態へ切替えるか否かを判断する(ステップS193)。
図39は、制御部51等によって行われる周波数fの調整開始をゼロとする時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの変化の観測処理(図38のステップS192)を示す図である。すなわち、図39では、時間τに基づいて超音波インピーダンス値Zの変化を観測する方法が示されている。そして、図40は、超音波インピーダンス値Zの変化の一例を示す図である。図40では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が周波数の調整開始を0とする時間τを示している。
図40に示すように、例えば超音波振動の振幅が大きい場合は、処置において、周波数fの調整が開始されてから、超音波インピーダンス値Zがほとんど変化しないことがある。この場合、処置対象の切れ分かれても、切れ分かれに起因する超音波インピーダンス値Zの対象ピークは、発生しない。また、処置対象が切れ分かれる前に、超音波インピーダンス値Zの極小値も発生しない。このため、対象ピークの検出に基づいて振動発生電力Pの出力を停止する構成では、図40に示す一例のように超音波インピーダンス値Zが変化した場合、処置対象が切れ分かれた後においても、振動発生電力Pが出力される。すなわち、処置対象が切れ分かれても、切れ分かれに起因する対象ピークが発生しないのため、切れ分かれた後(対象ピーク時以後)において、当接部45が処置部17に当接した状態で処置部17が振動してしまう。
そこで、本参照例では、ステップS192で時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの観測処理が行われる。図39に示すように、時間τに基づく超音波インピーダンスZの観測処理(ステップS192)では、まず、時間τが保持時間τholdでの超音波インピーダンス値Zを保持値として保持する(ステップS201)。ここで、保持時間τholdは、例えば周波数fの調整開始(τ=0)から100ms(ミリ秒)経過した時点である。図40に示す一例では、保持時間τ20holdでの超音波インピーダンス値Z20が、保持値として保持される。そして、保持時間τhold以後の超音波インピーダンス値Zの変化が保持値に対して比較される(ステップS202)。
ステップS202での比較の結果、保持値と超音波インピーダンス値Zとの差の絶対値が基準変化量γより小さいか否かが、判断される(ステップS203)。すなわち、保持値をZholdとした場合、式(3)が成立するか否かが判定される。
保持値と超音波インピーダンス値Zとの差の絶対値が基準変化量γより小さい場合は(ステップS203−Yes)、時間τが規定時間τstopより短いか否かが判断される(ステップS204)。すなわち、周波数fの調整開始から規定時間τstop経過したか否かが判断される。ここで、規定時間τstopは、例えば0〜5s(秒)程度である。時間τが規定時間τstopより短い場合は(ステップS204−Yes)、ステップS201に戻り、再びステップS201〜S203が行われる。ここで、図38のステップS193での判断に用いられる判定パラメータτflagを、設定する。時間τが規定時間τstopより長い場合は(ステップS204−No)、判定パラメータτflagを0に設定する(ステップS205)。
また、保持値と超音波インピーダンス値Zとの差の絶対値が基準変化量γ以上の場合は(ステップS203−No)、判定パラメータτflagを1に設定する(ステップS206)。図40に示す一例では、保持時間τ20holdと規定時間τ20stopとの間で、常時、保持値Z20と超音波インピーダンス値Zとの差の絶対値が基準変化量γ20より小さくなる。すなわち、超音波インピーダンス値Zが、(Z20+γ20)以上にならず、かつ、(Z20−γ20)以下とならない。ここで、(Z20+γ20)は、例えば0〜200Ωであり、100Ω程度であることが好ましい。このため、図40に示す一例では、判定パラメータτflagが0に設定される。ステップS193では、判定パラメータτflagに基づいて、判断が行われる。
判定パラメータτflagが1の場合、検出不可状態から検出許可状態へ切替えると、判断される(ステップS193−Yes)。検出許可状態に切替えられることにより、第2の実施形態と同様に、対象ピークの検出処理が行われる(ステップS103)。そして、対象ピークが検出されると、振動発生電力Pの出力が停止されるか、又は、対象ピークの検出が告知される(ステップS104)。一方、判定パラメータτflagが0の場合、検出許可状態へ切替えないと判断され(ステップS193−No)、検出不可状態で保持される。そして、時間τが規定時間τstopになった時点で、振動発生電力Pの出力が停止される(ステップS194)。
前述のように、本参照例では、検出許可状態への切替えが行われず、対象ピークが検出されない場合でも、規定時間τstopで、振動発生電力Pの出力が停止される。このため、対象ピークが検出されない場合(例えば図40の一例)でも、超音波振動に起因するジョー18の当接部45の摩耗が、有効に防止される。
なお、第2の参照例として図41乃至図43に示すように、時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの観測処理(図38のステップS192)において、第1の参照例とは異なる処理が行われてもよい。図41は、制御部51及び極小値検出部65によって行われる周波数fの調整開始をゼロとする時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの変化の観測処理(図38のステップS192)を示す図である。そして、図42は、超音波インピーダンス値Zの変化の一例を示す図であり、図43は、図42とは別の、超音波インピーダンス値Zの変化の一例を示す図である。図42及び図43では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が周波数fの調整開始(調整開始時)を0とする時間τを示している。
図42に示すように、処置において、周波数fの調整が開始されてから、超音波インピーダンス値Zが連続的に漸減し、再び漸増を開始しないことがある。また、図43に示すように、周波数fの調整が開始されてから超音波インピーダンス値Zが漸減した後に再び漸増を開始した場合も、漸増による増加量σrealが基準増加量σより小さく、極小値検出部65によって、極小値が検出されないこともある。前述のような超音波インピーダンス値Zの変化は、例えば、処置部17の先端部とジョー18の先端部との間にのみ処置対象が位置し、処置部17の基端部とジョー18の基端部との間には処置対象が存在しない状況で、発生する。この場合も、第1の参照例と同様に、処置対象の切れ分かれても、切れ分かれに起因する超音波インピーダンス値Zに対象ピークは、発生しない。また、処置対象が切れ分かれる前に、超音波インピーダンス値Zの極小値も発生しない。
そこで、本参照例では、図38のステップ192において、以下のようにして、時間τに基づく超音波インピーダンス値Zの観測が行われる。図41に示すように、周波数fの調整開始以後において、超音波インピーダンス値Zの漸増開始を検出したか否かが、判断される(ステップS211)。漸増を開始した場合は(ステップS211−Yes)、漸増開始時での超音波インピーダンス値Zが、仮極小値として保持される(ステップS152)。そして、仮極小値に対して漸増開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化を比較する(ステップS153)。ステップS152、S153は、第2の実施形態と同様にして行われる。
ステップS153での比較の結果、仮極小値からの超音波インピーダンス値の増加量σrealが、基準増加量σより小さいか否かが、判断される(ステップS212)。漸増の開始が検出されない場合(ステップS211−No)、及び、漸増による増加量σrealが基準増加量σより小さい場合(ステップS212−Yes)は、時間τが規定時間τstopより短いか否かが判断される(ステップS213)。すなわち、周波数fの調整開始から規定時間τstop経過したか否かが判断される。ここで規定時間τstopは、例えば0〜5s(秒)程度である。時間τが規定時間τstopより短い場合は(ステップS213−Yes)、ステップS211に戻り、再びステップS211のみが行われるか、又は、ステップS211、S152、S153、S212が順次に行われる。ここで、図38のステップS193での判断に用いられる判定パラメータτ´flagを、設定する。時間τが規定時間τstopより長い場合は(ステップS213−No)、判定パラメータτ´flagを0に設定する(ステップS214)。
また、仮極小値からの超音波インピーダンス値Zの増加量σrealが基準増加量σ以上の場合は(ステップS212−Yes)、判定パラメータτ´flagを1に設定する(ステップS215)。図42に示す一例では、周波数fの調整開始(τ=0)から規定時間τ21stopまで間で、連続的に超音波インピーダンス値が漸減している。すなわち、ステップS211において、漸増が検出されない。このため、図42に示す一例では、判定パラメータτ´flagが0に設定される。
また、図43に示す一例では、周波数fの調整開始(τ=0)以後において、一時的に、超音波インピーダンス値が漸増するが、増加量σ22realは、基準増加量σ22より小さい。すなわち、ステップS152において、超音波インピーダンス値Z22が仮極小値として保持されるが、ステップS212において、仮極小値Z22からの超音波インピーダンス値Zの増加量σ22realが基準増加量σ22より小さいと、判断される。ここで、基準増加量σ22は、例えば0〜200Ωであり、50Ω程度であることが好ましい。このため、図43に示す一例では、判定パラメータτ´flagが0に設定される。ステップS193では、判定パラメータτ´flagに基づいて、判断が行われる。
判定パラメータτ´flagが1の場合、検出不可状態から検出許可状態へ切替えると、判断される(ステップS193−Yes)。一方、判定パラメータτ´flagが0の場合、検出許可状態へ切替えないと判断され(ステップS193−No)、検出不可状態で保持される。そして、時間τが規定時間τstopになった時点で、振動発生電力Pの出力が停止される(ステップS194)。本参照例では、図42の一例又は図43の一例のように超音波インピーダンス値が変化した場合でも、規定時間τstopで、振動発生電力Pの出力が停止され、超音波振動に起因するジョー18の当接部45の摩耗が、有効に防止される。
なお、図38のステップS192において、第1の参照例で前述した処理、及び、第2の参照例で前述した処理の両方が、行われてもよい。この場合、τflagが1で、かつ、τ´flagが1の場合にのみ、ステップS193において、検出不可状態から検出許可状態へ切替えると、判断される。
また、第3の参照例について、図44乃至図47を参照して、説明する。図44は、本参照例おいて、振動発生電力Pの出力が開始されてからの制御ユニットの作動状態を示す図である。図44に示すように、本参照例では第2の実施形態と同様に、振動発生電力Pが出力されると(ステップS101)、超音波インピーダンス値Zの経時的な検出が開始され(ステップS102)、周波数調整部63によって、超音波振動の周波数fの調整が行われる(ステップS141)。そして、極小値検出部65によって、超音波インピーダンス値Zの極小値の検出処理が行われ(ステップS142)、検出不可状態から検出許可状態へ切替えられる(ステップS143)。ただし、本参照例では、検出許可状態への切替え時を0とする時間Yが設定される(ステップS221)。そして、時間Yに基づく超音波インピーダンス値Zの変化の観測処理が行われる(ステップS222)。そして、制御部51は、ステップS222での観測結果に基づいて、対象ピークが検出されたか否かが判断される(ステップS223)。
図45は、制御部51及びピーク検出部53によって行われる検出許可状態への切替え時をゼロとする時間Yに基づく超音波インピーダンス値Zの変化の観測処理(図44のステップS222)を示す図である。すなわち、図45では時間Yに基づいて超音波インピーダンス値Zの変化を観測する方法を示している。そして、図46は、超音波インピーダンス値Zの変化の一例を示す図であり、図47は、図46とは別の超音波インピーダンス値Zの変化の一例を示す図である。図46及び図47では、縦軸が超音波インピーダンス値Zを示し、横軸が検出許可状態への切替え時を0とする時間Yを示している。
図46に示すように、処置において、検出許可状態へ切替えられてから、超音波インピーダンス値Zが連続的に漸増し、漸減を開始しないことがある。また、図47に示すように、検出許可状態へ切替えられてから漸減を開始した場合も、漸減開始から超音波インピーダンス値Zがほとんど減少せず、ピーク検出部53によって、対象ピークが検出されないこともある。この場合、処置対象が切れ分かれても、切れ分かれに起因する超音波インピーダンス値Zに対象ピークは、発生しない。
そこで、本参照例では、図44のステップ222において、以下のようにして、時間Yに基づく超音波インピーダンス値Zの観測処理が行われる。図45に示すように、ステップS222では、まず、検出許可状態への切替え時以後において、超音波インピーダンス値Zの漸減開始を検出したか否かが、判断される(ステップS231)。漸減を開始した場合は(ステップS231−Yes)、漸減開始時での超音波インピーダンス値Zが、仮ピーク値として保持される(ステップS112)。そして、仮ピーク値に対する漸減開始時以後の超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理が行われる(ステップS113)。そして、ステップS113での比較の結果に基づいて、仮ピーク値が対象ピークであったか否かが判定される(ステップS114)。ステップS112〜S114は、第1の実施形態と同様にして行われる。なお、仮ピーク値に対する超音波インピーダンス値Zの経時的な変化の比較処理(ステップS113)は、第1の実施形態と同様にして行われてもよく(図12参照)、第1の変形例と同様にして行われてもよい(図15参照)。
仮ピーク値が対象ピークでないと判断された場合は(ステップS114−No)、ステップS231に戻り、再びステップS231のみが行われるか、又は、ステップS231、S112、S113、S114が順次に行われる。漸減の開始が検出されない場合(ステップS231−No)、及び、仮ピーク値が対象ピークでないと判断された(ステップS114−No)後に漸減が検出されない場合(ステップS231−No)は、時間Yが規定時間Ystopより短いか否かが判断される(ステップS232)。すなわち、検出許可状態へ切替え時から規定時間Ystop経過したか否かが判断される。時間Yが規定時間Ystopより短い場合は(ステップS232−Yes)、ステップS231に戻り、再びステップS231のみが行われるか、又は、ステップS231、S112、S113、S114が順次に行われる。ここで、図44のステップS223での判断に用いられる判定パラメータYflagを、設定する。時間Yが規定時間Ystopより長い場合は(ステップS232−No)、判定パラメータYflagを0に設定する(ステップS233)。
また、ステップS112で保持された仮ピーク値が対象ピークであると判定された場合は(ステップS114−Yes)、判定パラメータYflagを1に設定する(ステップS234)。図46に示す一例では、検出許可状態への切替え時(Y=0)から規定時間Y23stopまで間で、連続的に超音波インピーダンス値が漸増している。すなわち、ステップS231において、漸減が検出されない。このため、図46に示す一例では、判定パラメータYflagが0に設定される。
また、図47に示す一例では、検出許可状態への切替え時(Y=0)以後において、一時的に、超音波インピーダンス値が漸減するが、漸減開始時Y24から基準時間ΔY24の間の減少量ε24realは、基準減少量ε24より小さい。すなわち、ステップS112において、超音波インピーダンス値Z24が仮ピーク値として保持されるが、ステップS114において、仮ピーク値Z24は対象ピークではないと判断される。また、漸減開始時Y24以後において、再び超音波インピーダンス値Zは漸減を開始しない。したがって、ステップS114で仮ピーク値Z24は対象ピークではないと判断された後に、ステップS231において再び漸減が検出されることはない。このため、図47に示す一例では、判定パラメータYflagが0に設定される。ステップS223では、判定パラメータYflagに基づいて、判断が行われる。なお、図47に示す一例では、漸減開始時Y24以後において、仮ピーク値Z24から更新されることなく、仮ピーク値Z24が連続的に保持される。
判定パラメータYflagが1の場合、対象ピークが検出されたと、判断される(ステップS223−Yes)。対象ピークが検出されることにより、第1の実施形態と同様に、振動発生電力Pの出力が停止されるか、又は、対象ピークの検出が告知される(ステップS104)。一方、判定パラメータYflagが0の場合、対象ピークが検出されなかったと、判断される(ステップS223−No)。そして、時間Yが規定時間Ystopになった時点で、振動発生電力Pの出力が停止される(ステップS224)。前述のように、本参照例では、図46の一例又は図47の一例のように超音波インピーダンス値が変化した場合でも、規定時間Ystopで、振動発生電力Pの出力が停止され、超音波振動に起因するジョー18の当接部45の摩耗が、有効に防止される。
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は前述の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
以下、特徴的事項を付記する。
記
(付記項1)
振動発生電力が供給されることにより超音波振動を発生する振動発生部と、前記振動発生部で発生した前記超音波振動が伝達され、伝達された前記超音波振動を用いて処置を行う処置部と、前記処置部に対して開閉可能なジョーであって、前記処置部に対して前記ジョーが閉じた状態において前記処置部に当接可能な当接部を備えるジョーと、を備える超音波処置装置において、前記振動発生部への前記振動発生電力の供給を制御する制御ユニットであって、
前記振動発生電力を出力可能な電源と、
前記電源から前記振動発生電力が出力されている状態において、前記振動発生電力の超音波インピーダンス値を経時的に検出するインピーダンス検出部と、
前記インピーダンス検出部での検出結果に基づいて、前記超音波インピーダンス値が漸減を開始する漸減開始時を検出する漸減検出部と、
検出された前記漸減開始時での前記超音波インピーダンス値を仮ピーク値として保持する仮ピーク値保持部と、
保持された前記仮ピーク値に対して前記漸減開始時以後の前記超音波インピーダンス値の経時的な変化を比較することにより、保持された前記仮ピーク値が検出対象である対象ピークであったか否かを判定するピーク判定部と、
を具備する制御ユニット。