[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態によるエネルギー処置システム1(以下、処置システム1と称する)が、図1乃至図12を参照して説明される。
図1は、処置システム1を概略的に示す図である。処置システム1は、処置具2と、制御装置3とを有している。処置システム1は、超音波振動と高周波電流との併用出力を用いて処置対象(例えば、生体組織)の凝固、切開などの処置を行うシステムである。処置具2は、術者に把持されるハンドピースであり、超音波振動エネルギーとバイポーラ高周波エネルギー(すなわち、双極型の電極に高周波電流を流すことにより発生する電気エネルギー)とを同時に出力可能な外科手術用エネルギーデバイスである。処置具2は、ケーブル4によって制御装置3に着脱可能に接続されている。
処置具2は、ハウジング5と、先端側でハウジング5に連結されたシース6と、シース6の先端部に設けられたエンドエフェクタ7(後述する第1の把持片14及び第2の把持片15)と、基端側でハウジング5に連結された振動子ユニット8とを有している。ハウジング5には、固定ハンドル11が設けられている。また、ハウジング5には、可動ハンドル12が回動可能に取り付けられている。可動ハンドル12がハウジング5に対して回動することにより、可動ハンドル12が固定ハンドル11に対して開閉する。
処置具2では、プローブ13が、ハウジング5の内部からシース6の内部を通って先端側に向かって延びている。プローブ13は、64チタン(Ti−6Al−4V)等の振動伝達性の高い材料から形成されている。プローブ13の先端部は、第1の把持片14となっている。プローブ13は、第1の把持片14がシース6の先端から突出しているようにしてシース6内に挿通されている。第1の把持片14は、後述する超音波振動子22の超音波振動を伝達して処置対象に超音波振動による処置を行うプローブ処置部として機能する。また、第1の把持片14は、後述する第2の把持片15とともに処置対象に高周波エネルギーを与えるためのプローブ電極として機能する。
シース6の先端部には、第2の把持片(ジョー)15が回動可能に取り付けられている。第2の把持片15の一部は、第1の把持片14とともに処置対象に高周波エネルギーを与えるためのジョー電極として機能する。したがって、第1の把持片14及び第2の把持片15は、1対の電極として機能する。
シース6の内部では、可動部材16が基端側から先端側へと延びている。可動部材16の先端は、第2の把持片15に接続されている。可動部材16の基端部は、図示しないが、ハウジング5の内部で可動ハンドル12に連結されている。可動ハンドル12を固定ハンドル11に対して開閉することにより、可動部材16が基端側又は先端側へ移動する。これにより、第2の把持片15がシース6に対して回動して、第2の把持片15が第1の把持片14に対して開閉する。
第2の把持片15は、パッド部材17と、パッド部材17が取り付けられたホルダ部材18とを有している。パッド部材17は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成されており、電気絶縁性である。第1の把持片14と第2の把持片15との間が閉じた状態では、パッド部材17は、第1の把持片14に当接する。パッド部材17が第1の把持片14に当接した状態では、第2の把持片15におけるパッド部材17以外の部材は、第1の把持片14と接触しない。すなわち、第1の把持片14と第2の把持片15とが閉じた状態であっても、プローブ電極とジョー電極とは短絡しない。
振動子ユニット8は、振動子ケース21と、振動子ケース21の内部に設けられた超音波振動子22とを有している。超音波振動子22は、振動子ケース21の内部からハウジング5の内部に延び、ハウジング5内のプローブ13の基端側に接続されている。振動子ケース21には、ケーブル4の一端が接続されている。また、ケーブル4の他端は、制御装置3に着脱可能に接続されている。なお、振動子ケース21が設けられず、ハウジング5の内部に超音波振動子22が配置されてもよい。この場合、ケーブル4の一端はハウジング5に接続される。
ハウジング5には、回転ノブ23が取り付けられている。回転ノブ23を回転させることにより、シース6、第1の把持片14を含むプローブ13、第2の把持片15及び超音波振動子22が、ハウジング5に対して回転ノブ23と一緒にシース6の中心軸回りに回転する。これにより、エンドエフェクタ7のシース6の中心軸回りの角度が調整される。なお、回転ノブ23は設けられなくてもよい。
また、ハウジング5には、操作ボタン24が設けられている。操作ボタン24では、制御装置3から、超音波振動子22を超音波振動させるための電気エネルギーを供給させる操作及びエンドエフェクタ7に高周波電流を流すための電気エネルギーを供給させる操作が入力される。なお、操作ボタン24の代わりに、又は、操作ボタン24に加えて、処置具2とは別体のフットスイッチ(図示されない)が設けられてもよい。また、1つの操作ボタン24のみが図示されるが、複数の操作ボタン24が設けられてもよい。
図2は、処置システム1を概略的に示すブロック図である。制御装置3は、第1の電源31と、第2の電源32とを有している。第1の電源31は、ケーブル4内を通って延びた電気経路41を介して超音波振動子22に電気的に接続されている。第2の電源32は、ケーブル4内を通って延びた電気経路42を介してプローブ13の第1の把持片14に電気的に接続されている。また、第2の電源32は、ケーブル4内を通って延びた電気経路43から、振動子ケース21の導電性部分及びシース6(図2には示されない)を介して第2の把持片15に電気的に接続されている。
第1の電源31は、超音波振動子22を超音波振動させるための電気エネルギーを供給する電源である。第1の電源31は、バッテリー電源又はコンセント電源からの電力を超音波振動子22に供給される電気エネルギーに変換する変換回路等を有している。第2の電源32は、エンドエフェクタ7に高周波電流を流すための電気エネルギーを供給する電源である。第2の電源32もまた、バッテリー電源又はコンセント電源からの電力をエンドエフェクタ7に供給される電気エネルギーに変換する変換回路等を有している。第1の電源31及び第2の電源32は、変換回路で変換された電気エネルギーを出力する。第1の電源31から出力された電気エネルギーは、電気経路41を介して超音波振動子22に供給される。第2の電源32から出力された電気エネルギーは、電気経路42、43を介してエンドエフェクタ7に供給される。このように、第1の電源31は、超音波振動子22に振動発生電力を供給する超音波電力出力部であり、また、第2の電源32は、第1の把持片14及び第2の把持片15に高周波電力を供給する高周波電力出力部である。
制御装置3は、処置システム1全体を制御するプロセッサ(制御部)33と、記憶媒体34とを有している。プロセッサ33は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含む集積回路からなる。プロセッサ33は、1つの集積回路から形成されてもよく、複数の集積回路から形成されてもよい。また、制御装置3には、1つのプロセッサ33が設けられてもよく、複数のプロセッサ33が別体で設けられてもよい。プロセッサ33での処理は、プロセッサ33又は記憶媒体34に記憶されたプログラムに従って行われる。記憶媒体34には、プロセッサ33で用いられる処理プログラム、及び、プロセッサ33での演算で用いられるパラメータ及びテーブル等が記憶されている。
処置具2は、スイッチ25を有している。スイッチ25は、操作ボタン24での操作に連動しており、また、ケーブル4内を通って延びた電気経路26を介してプロセッサ33に電気的に接続されている。スイッチ25は、例えば、検出回路であり、操作ボタン24への入力に基づいて切り替えられる。すなわち、スイッチ25は、操作ボタン24での操作入力により、OFF状態からON状態に切り替えられる。プロセッサ33は、スイッチ25がON状態に切り替えられたことに基づいて、操作ボタン24に操作が入力されたことを検出する。
プロセッサ33は、超音波出力制御部35と、高周波出力制御部36とを有している。超音波出力制御部35は、例えば、操作ボタン24への入力によりスイッチ25から伝達される電気信号に基づいて、第1の電源31からの振動発生電力の出力を制御する。高周波出力制御部36は、例えば、操作ボタン24への入力によりスイッチ25から伝達される電気信号に基づいて、第2の電源32からの高周波電力の出力を制御する。
超音波出力制御部35からの制御信号に基づいて第1の電源31から超音波振動子22に電気エネルギーが供給されることにより、超音波振動子22の不図示の電極から圧電素子に印加される交流電圧が超音波振動に変換されて、超音波振動子22で超音波振動が発生する。発生した超音波振動は、プローブ13を通じて基端側から先端側へ伝達される。そして、第1の把持片14を含むプローブ13が超音波振動する。処置具2は、第1の把持片14に伝達された超音波振動を用いて処置対象に処置を行う。
また、高周波出力制御部36からの制御信号に基づいて第2の電源32からエンドエフェクタ7、すなわち、プローブ電極として機能する第1の把持片14及びジョー電極として機能する第2の把持片15に電気エネルギーが供給されることにより、第1の把持片14と第2の把持片15との間に高周波電圧が印加されて、高周波電流が流れる。処置具2は、第1の把持片14と第2の把持片15との間に高周波電流を流すことによって処置対象に処置を行う。
制御装置3は、第1の電流検出回路44と、第1の電圧検出回路45と、第2の電流検出回路46と、第2の電圧検出回路47と、アナログ/デジタル(A/D)変換器48、49とを有している。第1の電流検出回路44は、第1の電源31から超音波振動子22への出力電流を検出する。第1の電圧検出回路45は、第1の電源31から超音波振動子22への出力電圧を検出する。第2の電流検出回路46は、第2の電源32からエンドエフェクタ7への出力電流を検出する。第2の電圧検出回路47は、第2の電源32からエンドエフェクタ7への出力電圧を検出する。A/D変換器48、49には、それぞれ、第1の電流検出回路44及び第2の電流検出回路46で検出された電流値を示すアナログ信号、及び、第1の電圧検出回路45及び第2の電圧検出回路47で検出された電圧値を示すアナログ信号が送信される。A/D変換器48、49は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換してプロセッサ33に送信する。
プロセッサ33は、電気的特性検出部37と、高周波インピーダンス検出部38とを有している。電気的特性検出部37(以下、特性検出部37と称する)は、例えば、検出回路であり、A/D変換器48から受信した出力電流及び出力電圧の信号に基づいて、超音波振動子22の電気的特性値を経時的に検出する。ここで、電気的特性値とは、超音波振動子22の電気インピーダンス値、超音波振動子22に印加された電圧値、超音波振動子22に供給された電力値などのいずれかである。特性検出部37は、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーに関する特性値として、超音波振動子22の電気インピーダンス値、電圧値、電力値などを検出する(算出する)。以下の説明では、特性検出部37は、電気的特性値として超音波振動子22の電気インピーダンス値を検出するものとする。しかしながら、電気的特性値として、上述したように、電圧値又は電力値が用いられることができる。なお、本明細書では、超音波振動子22の電気インピーダンスを「超音波インピーダンス」と称する。高周波インピーダンス検出部38は、例えば、検出回路であり、A/D変換器49から受信した出力電流及び出力電圧の信号に基づいて、プローブ電極である第1の把持片14とジョー電極である第2の把持片15との間の高周波電力のインピーダンス値(高周波インピーダンス値)を検出する(算出する)。
プロセッサ33は、判定部39を有している。判定部39は、例えば、判定回路であり、特性検出部37で検出された電気的特性値及び高周波インピーダンス検出部38で検出された高周波インピーダンス値などに基づいて出力制御に関する判定を行う。超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36は、判定部39による判定結果に基づいて、それぞれ、第1の電源31及び第2の電源32の出力を制御する。
プロセッサ33はまた、仮ピーク保持部51を有している。仮ピーク保持部51は、特性検出部37で検出された電気的特性値の経時的な変化に基づいて判定部39が判定した電気的特性値のピーク、例えば、超音波インピーダンスの最大値(極大値)を保持する。
なお、本実施形態では、超音波出力制御部35は、例えば、第1の電源31から超音波振動子22に電気エネルギーが供給されている状態において、出力電流を経時的に一定に保つ定電流制御で、第1の電源31からの電気エネルギーの出力を制御する。この場合、超音波インピーダンス値の変化に対応させて、第1の電源31からの出力電圧が調整される。すなわち、超音波インピーダンスが増加すると、出力電圧を増加させ、出力電流を経時的に一定に保つ。この際、出力電力も出力電圧の増加に対応して増加する。逆に、超音波インピーダンスが減少すると、出力電圧を減少させ、出力電流を経時的に一定に保つ。この際、出力電力も出力電圧の減少に対応して減少する。
制御装置3は、告知部52を有している。プロセッサ33は告知制御部を含み、告知制御部が、判定部39での判定結果に基づいて、告知部52の動作を制御する。告知部52では、ブザーによる報知音などの聴覚的告知、光の点灯又は点滅、文字等の画面表示などの視覚的告知、又はこれらの組合せにより、ユーザー等への告知が行われる。
なお、超音波出力制御部35、高周波出力制御部36及び告知制御部が、プロセッサ33における出力制御部として機能する。
制御装置3は、ユーザーである術者からの指示を受け取る入力装置53を有している。入力装置53は、タッチパネル、キーボードなどである。また、不図示のユーザーインターフェースが、入力装置53からの入力操作により記憶媒体34に記憶された各種パラメータの設定をしたり、処置具2の各種機能のON/OFFの切り替え、すなわち動作の種類又は動作の有無の切り替えをしたりする。
次に、処置システム1を用いて処置対象を処置する動作が説明される。まず、術者は、処置具2の固定ハンドル11及び可動ハンドル12を把持する。そして、術者は、第1の把持片14と第2の把持片15との間に処置対象を配置して、可動ハンドル12を固定ハンドル11に対して閉じる。これにより、第2の把持片15が第1の把持片14に対して閉じ、これら把持片14、15間に処置対象が挟持される。そして、術者が操作ボタン24で操作入力を行う。これにより、スイッチ25がON状態となり、プロセッサ33は、操作ボタン24で操作入力が行われたことを検出する。
操作ボタン24での操作入力が検出されることにより、プロセッサ33の超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に電気エネルギーを出力させる。これにより、超音波振動子22で超音波振動が発生し、超音波振動がプローブ13を通じて第1の把持片14に伝達される。処置対象が把持片14、15間に把持された状態で第1の把持片14に超音波振動が伝達されると、第1の把持片14と処置対象との間に摩擦熱が発生する。そして、この摩擦熱によって、処置対象が凝固されると同時に切開される。
また、操作ボタン24での操作入力が検出されることにより、プロセッサ33の高周波出力制御部36が、第2の電源32からエンドエフェクタ7に高周波エネルギーを出力させる。処置対象が把持片14、15間に把持された状態でこれらの間に高周波電圧が印加されると、処置対象に高周波電流が流れる。そして、処置対象の抵抗に基づいたジュール熱が発生し、これを用いて処置対象が加熱されて、凝固をしながら切開がなされる。
次に、処置システム1による処置開始から処置終了までの流れが、図3並びに図4を参照して説明される。図3は、処置時の超音波インピーダンス及び高周波インピーダンスの時間変化の一例を示す図である。図3には、処置システム1を用いて厚く固い生体組織を超音波エネルギー及び高周波エネルギーによって凝固しながら切開したときの超音波インピーダンス及び高周波インピーダンスの経時的な変化が示されている。ここで、時刻をt、時刻tにおける超音波インピーダンスをZt=Z(t)、時刻tにおける高周波インピーダンスをHZt=HZ(t)とする。
処置システム1を用いた処置では、上述したように、把持片14、15間に把持される処置対象が、第1の把持片14から与えられる超音波エネルギー、及び、第1の把持片14及び第2の把持片15から与えられる高周波エネルギーによって凝固されながら切開される。そして、把持片14、15間に把持された処置対象は、エンドエフェクタ7の幅方向に分断される。エンドエフェクタ7の幅方向に処置対象が分断されるこの現象は、本明細書において「切れ分かれ」と称される。把持片14、15間に把持された処置対象が分断されると、第2の把持片15のパッド部材17は第1の把持片14に接触する。
処置時において、超音波インピーダンスZ(t)は、超音波出力開始後いったん減少していき、その後安定する。超音波インピーダンスZ(t)がいったん減少するのは、例えば、生体組織の水分が蒸散して生体組織のタンパク質変性が始まることによるものである。
その後、超音波振動によって処置対象を凝固させながら切開しているとき、把持片14、15間に把持された処置対象の一部に切れ分かれが発生するまでは、超音波インピーダンスZ(t)は漸増する。これは、例えば、生体組織のタンパク質変性後、生体組織が凝固・硬化して第1の把持片14と生体組織との間の摩擦係数が増加することによるものであり、また、第1の把持片14が第2の把持片15のパッド部材17に接触することによってこれら把持片14、15間の摩擦係数が増加することによるものである。ここで、「漸増する」とは、時刻tが進むにつれて超音波インピーダンスZ(t)が徐々に増加することを意味し、例えば、数十Ω以下の微小な増減、あるいは100Ωを超える増減を含みながら超音波インピーダンスZ(t)が徐々に増加することを含む。
把持された処置対象が切れ分かれた後は、超音波インピーダンスZ(t)は漸減する。これは、例えば、処置対象が切れ分かれると第2の把持片15が第1の把持片14に対して閉じ、その把持力量が減少することによるものであり、また、第2の把持片15のパッド部材17の摩耗状態が安定に向かっていき把持片14、15間の摩擦係数が減少することによるものである。ここで、「漸減する」とは、時刻tが進むにつれて超音波インピーダンスZ(t)が徐々に減少することを意味し、例えば、数十Ω以下の微小な増減、あるいは100Ωを超える増減を含みながら超音波インピーダンスZ(t)が徐々に減少することを含む。
それ故、制御装置3のプロセッサ33が、処置時の超音波インピーダンスの経時的な変化を、例えば、超音波インピーダンスが漸増から漸減に転じたときの値(ピーク値、すなわち最大値)から所定量だけ漸減したこと、及び、ピーク値に達してから所定の時間が経過したことを検出することにより、処置対象が切れ分かれたこと、すなわち処置対象の切開が完了したことを検出することが可能である。また、ここでは、超音波インピーダンスの挙動を説明したが、超音波インピーダンスに代えて、第1の電源31から超音波振動子22に印加される電圧、供給される電力などの電気的特性値の経時的な変化を利用することによっても、同様にして、処置対象が切れ分かれたことを検出可能である。
しかしながら、例えば、子宮頚部のような厚く固い生体組織の切開を行う場合、あるいは、術者が処置具2の固定ハンドル11及び可動ハンドル12をゆっくりと握り込みながら生体組織の切開を行う場合などにおいて、把持片14、15間に把持された生体組織は一気に切開されず、段階的に切開される。このため、そのような場合には電気的特性値の経時的な変化が複雑となり、複数のピーク(例えば、図3に示される第1のピークP1及び第2のピークP2)が発生してしまうことがある。例えば、図3では、電気的特性値は、出力開始後に安定してから漸増し、第1のピークP1に達した後、漸減する。処置対象である生体組織は、電気的特性値の第1のピークP1の時点では、その一部が切開されているものの、完全には切れ分かれていない。そして、電気的特性値は、第1のピークP1以後に漸減した後、再び漸増に転じ、第2のピークP2に達する。生体組織は、第2のピークP2の時点で完全に切れ分かれる。
したがって、図3に示される一例では、プロセッサ33による切開完了との判定は、第2のピークP2以降の時刻になされなければならない。そうでなければ、把持片14、15間に把持された生体組織は、プロセッサ33により切開完了と判定されたにもかかわらず、切れ分かれていないこととなる。言い換えれば、例えば、プロセッサ33の判定部39が電気的特性値の第1のピーク値のみに基づいて切開完了の判定をすると、第1のピークP1ではまだ切開が完了していないにもかかわらず判定部39が切開完了であると判定する虞がある。すなわち、図3に示される時刻t1において、上述したような、電気的特性値がピーク値から所定の値だけ減少したこと、及び、ピーク値を検出してから所定の時間が経過したことの検出をもって切開完了とすると、実際にはまだ処置対象が切れ残っているにもかかわらず処置を終了してしまう虞がある。
また、図3には、超音波インピーダンスZ(t)の時間変化の一例とともに、高周波インピーダンスHZ(t)の時間変化の一例も示されている。高周波インピーダンスHZ(t)は、生体組織がまだ切れ分かれていないときには比較的低いが、切開が進むにつれて上昇し、生体組織が完全に切れ分かれると比較的高くなることが知られている。これは、切開が進むにつれて把持片14、15間の生体組織の性状が変化し、これらの間に高周波電流が流れにくくなることによるものである。
以上のことを踏まえて、本実施形態では、超音波インピーダンス、電圧、電力を含む電気的特性値と高周波インピーダンスとの経時的な変化に基づいて、処置対象の切れ分かれが判定される。以下、本実施形態における処置システム1による処置フロー、すなわち、制御装置3のプロセッサ33で行われる処理が説明される。
図4は、第1の実施形態における処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。プロセッサ33は、まず、開始処理をする(ステップS101)。図5は、開始処理を示すフローチャートである。
開始処理において、プロセッサ33は、スイッチ25がON状態であるか否かに基づいて、操作ボタン24で操作入力が行われたか否か、すなわち操作ボタン24での操作入力がONかOFFかを判定する(ステップS111)。操作入力がされていない場合には(No)、処理はステップS111に戻る。すなわち、プロセッサ33は、操作ボタン24で操作入力が行われるまで待機する。操作入力がなされた場合には(Yes)、プロセッサ33は、判定のためのパラメータである超音波インピーダンスZt、超音波インピーダンスの最大値Zmax、高周波インピーダンスHZt及びカウント時間Tをリセットする(Zt=0、Zmax=0、HZt=0、T=0)(ステップS112)。
ステップS112の後、超音波出力制御部35が第1の電源31に超音波振動子22への電気エネルギーの出力を開始させるとともに、高周波出力制御部36が第2の電源32にエンドエフェクタ7への電気エネルギーの出力を開始させる(ステップS113)。出力が開始された後、所定の条件を満たすと、PLL(Phase Locked Loop)制御が開始される。PLL制御により、第1の電源31からの電気エネルギーの出力における周波数が、出力電流と出力電圧との間の位相差が所定の閾値よりも小さくなるように調整される。すなわち、第1の電源31の出力周波数が振動計の共振周波数と一致するように調整される。PLL制御が開始されると、ロックイン(超音波共振周波数探査完了)信号を起点として、特性検出部37が、電気的特性値として超音波インピーダンスZtの検出を開始するとともに、高周波インピーダンス検出部38が、高周波インピーダンスHZtの検出を開始する(ステップS114)。ステップS114の後、開始処理が終了し、処理はステップS102へと進む。
なお、PLL制御の開始時以後、超音波出力制御部35は、出力電流を経時的に一定に保つ上述のような定電流制御で、第1の電源31からの出力電力を制御する。出力電流が経時的に一定に保たれることにより、超音波振動子22で発生する超音波の振幅及び振動速度も経時的に略一定となり、第1の把持片14での超音波振動の振幅及び振動速度も経時的に略一定となる。
超音波インピーダンスZt及び高周波インピーダンスHZtの検出開始後、プロセッサ33の判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいか否か、すなわち、超音波インピーダンスZtが漸減を始めたか否かを判定する(ステップS102)。最大値Zmaxが超音波インピーダンスZt以下である場合には(No)、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxを特性検出部37で検出した超音波インピーダンスZtに更新する(Zmax=Zt)(ステップS103)。すなわち、特性検出部37が超音波インピーダンスZtの時間変化を監視し、第1の電源31からの電気エネルギーによる超音波出力開始からの超音波インピーダンスの最大値Zmaxが更新される。プロセッサ33は、超音波インピーダンスZtが漸減を始めるまでステップS102、S103を繰り返す。
ステップS102において、最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいと判定された場合には(Yes)、プロセッサ33の仮ピーク保持部51が、その最大値Zmaxを超音波インピーダンスの仮ピーク値として保持し、また、プロセッサ33が、カウント時間Tをリセットする(T=0)(ステップS104)。
ステップS104の後、判定部39は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの超音波インピーダンスZtの漸減値、すなわちZmax−Ztが、漸減確定閾値Z1(例えば、図3に示される)よりも大きいか否か(第1の条件)、及び、最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間的閾値である時間T1(例えば、図3に示される)よりも大きいか否か(第2の条件)を判定する(ステップS105)。
閾値Z1及び時間T1は、それぞれ、記憶媒体34に予め記憶された規定値であることができる。これら規定値は、例えば、処置具2の機種ごとに設定した閾値Z1及び時間T1の関係を示すルックアップテーブル(LUT)であることができる。例えば、処置具2が不図示の記憶媒体を有し、この記憶媒体に処置具2の識別情報が記憶されている。識別情報は、例えば、処置具2の機種(型番)を識別するための情報であり、処置具2のシリアル番号であってもよい。処置具2がケーブル4を介して制御装置3に接続されることにより、プロセッサ33が、処置具2の記憶媒体から識別情報を読み取る。そして、プロセッサ33が、読み取った識別情報に基づいて処置具2の機種を特定し、それに対応する閾値Z1及び時間T1の値をLUTから読み出して設定する。あるいは、処置具2が不図示の記憶媒体を有し、この記憶媒体にその処置具2の機種に対応した閾値Z1及び時間T1が記憶されていてもよい。この場合、処置具2がケーブル4を介して制御装置3に接続されることにより、プロセッサ33が、処置具2の記憶媒体から閾値Z1及び時間T1を読み取って設定する。あるいは、閾値Z1及び時間T1は、超音波インピーダンスZtの経時的な変化に基づいて入力装置53から術者が入力することにより設定されてもよい。
ステップS105において、第1の条件及び第2の条件が満たされている場合には(Yes)、処理は次のステップS106に進む。満たされていない場合には(No)、処理は再度ステップS105に戻る。すなわち、判定部39が第1の条件及び第2の条件を満たしたと判定するまで、プロセッサ33はステップS105を繰り返し行う。なお、第1の条件と第2の条件とはある時刻tにおいて同時に満たされる必要はなく、例えば、図3に示されるように、時刻t1よりも前の時刻tにおける超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの漸減値Zmax−Ztが設定した閾値Z1よりも大きく、かつ、時刻t1におけるカウント時間Tが設定した時間T1であれば、判定部39は、2つの条件が満たされていると判定することができ、処理はステップS106に進んでよい。すなわち、時刻t1において、処理はS106に進む。
処理がステップS105でYesに進んだ後、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1(例えば、図3に示される)よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。このように、本実施形態では、判定部39が、ステップS105における超音波インピーダンスZtの経時的な変化を用いた切開完了判定に加えて、ステップS106における高周波インピーダンスHZtの経時的な変化を用いた切開完了判定を行う。閾値HZ1は、記憶媒体34に予め記憶された規定値であるか、高周波インピーダンスHZtの経時的な変化に基づいて入力装置53から術者が入力することにより設定された値であることができる。また、閾値Z1及び時間T1について上述したのと同様に、機種ごとに設定された値であってもよい。
ステップS106において、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、判定部39による高周波インピーダンスHZtの経時的な変化に基づいた切開完了判定によれば、切開がまだ完了していない、すなわち処置対象が切れ分かれていないこととなる。すなわち、超音波インピーダンスZtの経時的な変化に基づいた切開完了判定では切開完了と判定されたが、高周波インピーダンスHZtの経時的な変化に基づいた切開完了判定では切開完了と判定されていない。つまり、処置対象はまだ切れ分かれておらず、この後、処置対象が完全に切れ分かれるので、超音波インピーダンスZtが再度漸増から漸減に転じて超音波インピーダンスZtのピークが現れると考えられる。そこで、ステップS106において高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxをリセットし(Zmax=0)(ステップS107)、処理はステップS102に戻る。つまり、処置対象の切開がまだ完了していないため、プロセッサ33は、制御に用いている内部変数である超音波インピーダンスの最大値Zmaxをクリアし、特性検出部37により、再度、超音波インピーダンスZtの経時的な変化を監視し始める。
例えば、図3に示される時刻t1において、ステップS105における超音波インピーダンスZtに基づく切開完了判定では、判定部39が処置対象の切開が完了したと判定する。しかしながら、次のステップS106では、時刻t1における高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であるため、判定部39は処置対象の切開がまだ完了していないと判定する(ステップS106−No)。そこで、ステップS107においてプロセッサ33が超音波インピーダンスの最大値Zmaxをリセットして処理がステップS102に戻る。つまり、プロセッサ33が超音波インピーダンスZtの経時的な変化を再び監視し始める。そして、超音波インピーダンスZtのピークP2が現れた後、判定部39が、そのピーク値である新たな最大値Zmaxからの超音波インピーダンスの漸減値Zmax−Ztが閾値Z1よりも大きいか否か、及び、新たな最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間T1よりも大きいか否かを判定する。
一方、ステップS106において、判定部39が高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(Yes)、超音波インピーダンスの経時的な変化のみならず高周波インピーダンスの経時的な変化からも処置対象が切れ分かれたと判定されたこととなる。したがって、プロセッサ33の超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が、第1の電源31及び第2の電源32の出力等を制御する(ステップS108)。ステップS108の後、処置フローが終了する。
例えば、ステップS108において、超音波出力制御部35が、第1の電源31からの電気エネルギーの出力を自動で停止させ、また、高周波出力制御部36が、第2の電源32からの電気エネルギーの出力を自動で停止させる。あるいは、ステップS108において、超音波出力制御部35が第1の電源31からの電気エネルギーの出力を低減させる。これにより、プローブ13の第1の把持片14の超音波振動の振幅が低減される。あるいは、ステップS108において、プロセッサ33が、告知部52を作動させる制御信号を告知部52に送信する。これにより、告知部52による告知(上述のような聴覚的告知、視覚的告知、又はこれらの組合せによる告知)が行われる。告知は、単独で行われてもよいし、上述の出力自動停止又は出力低減と組み合わせて行われてもよい。告知が単独で行われる場合には、術者は、それに基づいて操作ボタン24での操作入力を解除し、スイッチ25がON状態からOFF状態に切り替えられる。プロセッサ33の超音波出力制御部35は、スイッチ25がOFF状態に切り替えられたことに基づいて、第1の電源31から超音波振動子22への電気エネルギーの出力を停止させる。
以上説明したように、処置システム1において超音波振動による凝固切開作用を用いて処置対象を切開する場合、処置対象が切れ分かれるときに例えば超音波インピーダンスである電気的特性値のピークが現れる。本実施形態では、そのピークを検知するための従来のアルゴリズムに対して、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づいたフィードバックを用いて切開完了検知のための各種パラメータを最適化する。すなわち、本実施形態では、処置システム1は、超音波インピーダンス、電圧、電力を含む電気的特性値のピーク検出に基づく切れ分かれ検知に加えて、高周波インピーダンスの経時的な変化によるフィードバック値から、切れ分かれ検知を最適化する。
したがって、例えば、図3に示される時刻t1において、電気的特性値の経時的な変化のみに基づいて切開完了判定を行う従来技術では切開が完了したと判定されるが、本実施形態によれば、プロセッサ33の判定部39が、電気的特性値の経時的な変化に基づいた切開完了判定の結果、切開完了であると判定しても、高周波インピーダンスが閾値よりも低いことを検知して、時刻t1ではまだ切開が完了していないと判定することができる。すなわち、本実施形態によれば、厚く固い生体組織の切開などにおいて電気的特性値の経時的な変化に複数のピークが現れるような場合に、プロセッサ33が切開完了の誤検知を回避できる。
さらに、例えば、図3に示される時刻t2において、高周波インピーダンス検出部38による高周波インピーダンスの経時的な変化の監視に基づいて、プロセッサ33は、切開が完了したことを検出することができる。したがって、本実施形態によれば、処置対象が完全に切れ分かれたことを確実に判断することができる。
また、本実施形態によれば、処置対象が完全に切れ分かれた後にプロセッサ33の超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36がそれぞれ第1の電源31及び第2の電源32の出力を停止することにより、処置対象の切れ残りを防止できる。
また、本実施形態によれば、処置対象が完全に切れ分かれた後に、超音波出力制御部35が、第1の電源31からの電気エネルギーの出力を停止又は低減する。このため、大きい振幅及び振動速度で第1の把持片14が超音波振動する状態において第2の把持片15のパッド部材17が第1の把持片14に接触し続けることが有効に防止される。したがって、第2の把持片15のパッド部材17の摩耗及び変形が有効に防止される。
以上説明したように、本実施形態では、処置対象が切れ分かれるタイミングが、プロセッサ33によって適切に検出される。そして、検出された適切なタイミングに基づいて、第1の電源31からの電気エネルギーの出力が停止又は低減される、あるいは、停止又は低減すべきことを知らせる告知がなされる。
なお、本実施形態では、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切開完了判定(ステップS106)において、判定部39が、高周波インピーダンスの絶対値と所定の閾値とを比較しているが、例えば、判定部39は、ある時刻tにおける高周波インピーダンス値からの高周波インピーダンス値の差分と所定の閾値とを比較することにより処置対象が切れ分かれたと判定してもよい。
また、本実施形態では、超音波振動エネルギーと高周波エネルギーとの併用出力可能な処置システム1において処置具2から処置対象の凝固切開のために出力される高周波エネルギーのインピーダンスを切開完了判定に用いているが、切開完了判定のために用いられる高周波エネルギーのインピーダンスは、処置対象の凝固切開のために出力されるものに限定されない。例えば、超音波振動のみによる凝固切開を行う超音波処置具を含む処置システム1であっても、切開完了判定のために別途高周波電流を流して高周波インピーダンスを監視することにより、上述したような処置システム1と同様の切開完了判定が行われることができる。この場合、切開完了判定のために流される電流は高周波電流である必要はなく、プロセッサ33は、高周波インピーダンス検出部の代わりにインピーダンス検出部を有してもよい。
以上の説明では、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切開完了判定において切開が完了していないと判定された場合にプロセッサ33が電気的特性値の最大値Zmaxをリセットして特性検出部37により再度電気的特性値の経時的な変化を監視し始めたが、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切開完了判定において切開が完了していないと判定された場合にプロセッサ33が行う処理は、これに限定されない。以下、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切開完了判定において切開が完了していないと判定された場合に行われる他の処理が、変形例として説明される。
[第1の実施形態:第1の変形例]
図6は、第1の実施形態の第1の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。ステップS101〜S106は、図4に示されるフローと同様である。
ステップS106において、判定部39が高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定した場合には(No)、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを低レベルに設定させる(ステップS121)。すなわち、超音波出力制御部35が、第1の把持片14の超音波振動の振幅を弱めさせる。そして、ステップS121の後、処理はステップS106に戻り、再度、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する。すなわち、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きくなるまで、超音波の出力が低レベルで維持される。
一方、ステップS106において、判定部39が高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定した場合には(Yes)、超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が、第1の電源31及び第2の電源32の出力等を制御する(ステップS122)。例えば、ステップS122において、超音波出力制御部35が、第1の電源31からの電気エネルギーの出力を自動で停止させ、また、高周波出力制御部36が、第2の電源32からの電気エネルギーの出力を自動で停止させる。あるいは、ステップS122において、超音波出力制御部35が第1の電源31からの電気エネルギーの出力を低減させる。あるいは、ステップS122において、プロセッサ33が告知部52を作動させることにより、告知部52による告知が行われる。ステップS122の後、処置フローが終了する。
このように、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合に、超音波出力制御部35が第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを低減させることにより、把持片14、15間に把持された処置対象の一部が切れ分かれている状態において、超音波振動により振動している第1の把持片14が第2の把持片15のパッド部材17に大きい振幅及び振動速度で接触し続けることが有効に防止される。したがって、第2の把持片15のパッド部材17の摩耗及び変形が有効に防止される。
なお、ステップS121において、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを低減させて、さらに、高周波出力制御部36が、第2の電源32からエンドエフェクタ7に出力される電気エネルギーを増加させてもよい。これによっても、超音波振動エネルギーの出力の低下分を高周波エネルギーの出力で補い、第2の把持片15のパッド部材17の摩耗及び変形を防止しつつ、処置対象を確実に切開することができる。
[第1の実施形態:第2の変形例]
図7は、第1の実施形態の第2の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。ステップS101〜S106、S108は、図4に示されるフローと同様である。ステップS106において、判定部39が高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定した場合には(No)、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの閾値Z1をZ2に変更して新たな閾値Z1とし、また、設定時間T1をT2に変更して新たな設定時間T1とする(ステップS123)。すなわち、プロセッサ33は、切開完了を検知するためのパラメータである漸減確定閾値Z1及び時間的閾値T1を変更する。閾値Z2及び時間T2は、閾値Z1及び時間T1と同様に、記憶媒体34に予め記憶された規定値であるか、処置具2の機種に対応して記憶媒体34から読み込まれた値であるか、処置具2の記憶媒体から読み込まれた値であることができる。
ステップS123の後、処理はステップS105に戻り、再び、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmax(ピークP1における超音波インピーダンスZtの値)からの超音波インピーダンスZtの漸減値、すなわちZmax−Ztが、新たな閾値Z1(すなわち、閾値Z2)よりも大きいか否か、及び、最大値Zmaxが保持され始めてから(ピークP1から)のカウント時間Tが新たな時間T1(すなわち、時間T2)よりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、プロセッサ33が、閾値Z1及び設定時間T1を変更してから、判定部39が、再度、超音波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切れ分かれ判定をする。
このように、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合に、プロセッサ33が判定パラメータである閾値Z1及び時間T1を変更することにより、プロセッサ33が電気的特性値の経時的な変化を再度監視して切開完了判定を行い、処置対象が完全に切れ分かれたことを確実に判断することができる。
以上説明したように、本実施形態では、ステップS106において判定部39が高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定した場合には(No)、プロセッサ33は、適宜、電気的特性(例えば、超音波インピーダンス、電圧、電力)制御の内部変数をクリアして再度組織切開状態を監視したり(図4:第1の実施形態)、超音波出力を低減させたり(図6:第1の変形例)、切開完了検知のパラメータを変更したり(図7:第2の変形例)する。これにより、処置対象が切れ分かれて切開が完了したことを適切に検知し、切れ残りを防止することができるエネルギー処置システムを提供することができる。
以上の説明では、プロセッサ33が、電気的特性値のピークである最大値Zmaxを算出して、ピークからの経過時間や漸減値を用いることにより切開完了を判定したが、電気的特性値の経時的な変化を利用した切開完了の判定は、電気的特性値の時間変化率又は積算値を用いても行われることができる。以下、時間変化率を用いた切れ分かれ判定及び積算値を用いた切れ分かれ判定がそれぞれ説明される。
[第1の実施形態:第3の変形例]
図8は、プロセッサ33の一例を示すブロック図である。プロセッサ33は、超音波出力制御部35と、高周波出力制御部36と、電気的特性検出部37と、高周波インピーダンス検出部38と、判定部39と、算出部55とを有している。
図9は、処置時の超音波インピーダンスZtの時間変化の一例を示す図である。超音波インピーダンスZt=Z(t)は、時刻t3までの時刻において漸増し、時刻t3以後に漸減する。時刻t3は、超音波インピーダンスZtが漸増した後に漸減を開始する漸減開始時である。時刻t3又はその直近で、第1の把持片14と第2の把持片15との間に把持された処置対象に切れ分かれが発生する。
また、漸減開始時である時刻t3から所定時間Tthが経過した時点の時刻をt4とする。そして、時刻t4以後の時刻t5において、超音波インピーダンスZ(t5)の時間変化率ΔZ(t5)が所定の閾値ΔZthよりも大きくなる。すなわち、時刻t5において、時間変化率Δz(t)が所定の閾値ΔZth以下の状態から時間変化率ΔZ(t)よりも大きい状態に切り替わる。そして、時間t5又はその直近で、第1の把持片14と第2の把持片15との間に把持された処置対象が完全に切れ分かれる。なお、時刻t4での時間変化率ΔZ(t4)は、所定の閾値ΔZth以下である。また、図4には、時刻t4における超音波インピーダンスZ(t4)の接線M(t4)、及び、時刻t5における超音波インピーダンス(t5)の接線M(t5)が示される。そして、接線M(t4)の傾きが時刻t4での時間変化率ΔZ(t4)となり、接線M(t5)の傾きが時刻t5での時間変化率ΔZ(t5)となる。
図10は、第1の実施形態の第3の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。ステップS101、S106〜S108は、図4に示されるフローと同様である。
開始処理の後、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxを特性検出部37で検出した超音波インピーダンスZtに更新し、時間Tをリセットする(Zt=Zmax、T=0)(ステップS131)。ステップS131の後、プロセッサ33の判定部39が、超音波インピーダンスZtがステップS131において更新された超音波インピーダンスの最大値Zmaxよりも大きいか否か、すなわち、超音波インピーダンスZtが漸減を始めたか否かを判定する(ステップS132)。超音波インピーダンスZtが最大値Zmaxよりも大きい場合には(Yes)、プロセッサ33は、最大値Zmaxを更新し、カウント時間Tをリセットする(T=0)(ステップS133)。そして、処理はステップS134に進む。超音波インピーダンスZtが最大値Zmaxよりも小さい場合には(No)、処理はステップS134に進む。すなわち、超音波インピーダンスZtが最大値Zmaxよりも小さければ、プロセッサ33は、最大値Zmaxを更新することなく保持し、カウント時間Tをリセットしない。
そして、判定部39が、カウント時間Tが所定の時間Tth以上であるか否かを判定する(ステップS135)。所定の時間Tthもまた、記憶媒体34に予め記憶された規定値などである。カウント時間Tが所定の時間Tthよりも短い場合には(No)、処理はステップS132に戻る。一方、カウント時間Tが所定の時間Tth以上である場合には(Yes)、算出部55が、超音波インピーダンスZ(t)の時間変化率ΔZ(t)を算出する。そして、判定部39が、算出された時間変化率ΔZ(t)が閾値ΔZthよりも大きいか否かを判定する(ステップS135)。ここで、閾値ΔZthは、負の値となり、ゼロに近い値に設定される(例えば、−1)。閾値ΔZthもまた、記憶媒体34に予め記憶された規定値などである。
ステップS134において、時間変化率ΔZ(t)が閾値ΔZthよりも大きくないと判定された場合には(No)、処理はステップS131に戻る。一方、時間変化率ΔZ(t)が閾値ΔZthよりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS106に進む。そして、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが予め設定した閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。以降の処理(ステップS106〜S108)は、図4に示されるフローと同様であるため、その説明を省略する。
[第1の実施形態:第4の変形例]
図11は、処置時の超音波インピーダンスZtの時間変化の一例を示す図である。超音波インピーダンスZt=Z(t)は、時刻t6までの時刻において漸増し、時刻t6以後に漸減する。時刻t6は、超音波インピーダンスZtが漸増した後に漸減を開始する漸減開始時である。時刻t6又はその直近で、第1の把持片14と第2の把持片15との間に把持された処置対象に切れ分かれが発生する。
また、漸減開始時である時刻t6よりも後の時刻t7、及び、時刻t7よりも後の時刻t8が規定される。そして、時刻t6から時刻t7までの超音波インピーダンスの変化量の積算値Σ(Zmax−Z(t))を積算値ΣZ1、時刻t6から時刻t8までの超音波インピーダンスの変化量の積算値Σ(Zmax−Z(t))を積算値ΣZ2とする。積算値ΣZ1は、閾値ΣZth以下であり、また、積算値ΣZ2は、閾値ΣZthより大きくなる。そして、差分値Zmax−Z(t)の漸減開始時である時刻t6からの積算値Σ(Zmax−Z(t))は、時刻t8において、閾値ΣZth以下の状態から閾値ΣZthよりも大きい状態に切り替わる。そして、時刻t8又はその直近で、第1の把持片14と第2の把持片15との間に把持された処置対象が完全に切れ分かれる。なお、図11において、直線t=t7、直線Z=Z(t6)及び曲線Z=Z(t)で囲まれる部分の面積が、差分値(Zmax−Z(t))の時間t6から時間t7までの積算値ΣZ1である。また、直線t=t8、直線Z=Z(t8)及び曲線Z=Z(t)で囲まれる部分の面積が、差分値(Zmax−Z(t))の時間t6から時間t8までの積算値ΣZ2となる。
図12は、第1の実施形態の第4の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。ステップS101、S106〜S108は、図4に示されるフローと同様であるが、ステップS112においてリセットされる制御パラメータは、超音波インピーダンスZt、最大値Zmax、高周波インピーダンスHZtの3つであってよく、カウント時間Tは不要である。
開始処理の後、プロセッサ33の判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいか否か、すなわち、超音波インピーダンスZtが漸減を始めたか否かを判定する(ステップS141)。最大値Zmaxが超音波インピーダンスZt以下である場合には(No)、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxを特性検出部37で検出した超音波インピーダンスZtに更新する(Zmax=Zt)(ステップS142)。すなわち、特性検出部37が超音波インピーダンスZtの時間変化を監視し、第1の電源31からの電気エネルギーによる超音波出力開始からの超音波インピーダンスの最大値Zmaxが更新される。プロセッサ33は、超音波インピーダンスZtが漸減を始めるまでステップS141、S142を繰り返す。
ステップS141において、最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいち判定された場合には(Yes)、処理はステップS143に進む。すなわち、超音波インピーダンスZtが最大値Zmaxよりも小さければ、プロセッサ33は、最大値Zmaxを更新することなく保持する。
プロセッサ33は、超音波インピーダンスZtが最大値Zmax以上の状態から最大値Zmaxよりも小さい状態に切り替わった時点を超音波インピーダンスZが漸増した後に漸減を開始する漸減開始時として検出する。そして、プロセッサ33の算出部55が、最大値Zmaxである漸減開始時での超音波インピーダンスZ(t)のピーク値から超音波インピーダンスZ(t)を減算した差分値Zmax−Z(t)を算出するとともに、差分値Zmax−Z(t)の漸減開始時からの積算値Σ(Zmax−Z(t))を算出する。そして、判定部39が、漸減開始時から時間tまでの算出された積算値Σ(Zmax−Z(t))が、閾値ΣZthよりも大きいか否かを判定する(ステップS143)。ここで、閾値ΣZthは、正の値である。閾値ΣZthもまた、記憶媒体34に予め記憶された既定値などである。
ステップS143において、積算値Σ(Zmax−Z(t))が閾値ΣZthよりも大きくないと判定された場合には(No)、処理はステップS143に戻る。一方、積算値Σ(Zmax−Z(t))が閾値ΣZthよりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS106に進む。そして、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが予め設定した閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。以降の処理(ステップS106〜S108)は、図4に示されるフローと同様であるため、その説明を省略する。
以上説明したように、超音波振動子の電気的特性の経時的な変化を用いた切開完了判定は、電気的特性値の最大値を検出することによるものに限定されず、電気的特性値の時間変化率(第3の変形例)又は積算値(第4の変形例)を算出することによってもなされることができる。したがって、第3の変形例及び第4の変形例によっても、本実施形態について上述したのと同様の効果が得られる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態が、図13乃至図15を参照して説明される。以下では、第1の実施形態と同様の構成及び動作についてはその説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について説明する。
図13は、処置システム1による処置時の超音波インピーダンス及び高周波インピーダンスの時間変化を示す図である。図14は、第2の実施形態の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS101〜ステップS106、S121は、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、高周波インピーダンスの複数の閾値が設定され、高周波インピーダンスの経時的な変化に基づく切開完了判定が複数回行われる。
処理がステップS105でYesに進んだ後、判定部39は、高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを低レベルに設定させる(ステップS121)。すなわち、超音波出力制御部35が、第1の把持片14の超音波振動の振幅を弱めさせる。例えば、超音波出力制御部35は、第1の電源31から出力される電気エネルギーを初期値又は直前の値から10%低減させる(例えば、90%にする)。そして、ステップS121の後、ステップS106に戻り、再度、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する。一方、ステップS106において、判定部39が高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1よりも大きいと判定した場合には(Yes)、処理はステップS201に進む。
そして、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2(例えば、図13に示される)よりも大きいか否かを判定する(ステップS201)。ここで、第2の閾値は第1の閾値よりも大きい(HZ1<HZ2)。高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2以下であると判定された場合には(No)、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーをさらに低レベルに設定させる(ステップS202)。すなわち、超音波出力制御部35が、第1の把持片14の超音波振動の振幅を弱めさせる。例えば、超音波出力制御部35は、第1の電源31から出力される電気エネルギーを初期値又は直前の値から20%低減させる(例えば、80%にする)。そして、ステップS202の後、処理はステップS201に戻り、再度、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2よりも大きいか否かを判定する。
一方、ステップS201において、高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2よりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS122に進む。そして、超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が出力等を制御する(ステップS122)。ステップS122の後、処置フローが終了する。
このように、第2の実施形態では、高周波インピーダンスの複数の閾値、例えば、高周波インピーダンスの2つの閾値HZ1、HZ2を設定し、電気的特性値のピークからの漸減量及びカウント時間に基づいた切開完了検出を行った後に、さらに、高周波インピーダンスの複数の閾値に基づいた切開完了検出を行う。本実施形態によれば、高周波インピーダンスの複数の閾値を設けて超音波の出力の段階的な制御を行うことにより、処置対象を確実に切開しつつ、処置対象や第2の把持片のパッド部材の破損等の好ましくない影響を低減させるエネルギー処置システムを提供することができる。
[第2の実施形態:変形例]
図15は、第2の実施形態の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。本変形例では、ステップS101〜S106、S123は、第1の実施形態の第2の変形例と同様である。
処理がステップS105でYesに進んだ後、判定部39は、高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの第1の閾値Z1をZ2に変更して新たな閾値Z1とし、また、設定時間T1をT2に変更して新たな設定時間T1とする(ステップS123)。すなわち、プロセッサ33は、切開完了を検知するためのパラメータである漸減確定閾値Z1及び時間的閾値T1を変更する。
ステップS123の後、処理はステップS105に戻り、再び、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの超音波インピーダンスZtの漸減値、すなわちZmax−Ztが、閾値Z1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否か(第1の条件)、及び、最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間T1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否か(第2の条件)を判定する(ステップS105)。すなわち、プロセッサ33が、閾値Z1及び設定時間T1を変更してから、判定部39が、再度、超音波インピーダンスの経時的な変化に基づいた切れ分かれ判定をする。一方、ステップS106において、高周波インピーダンスHZtが第1の閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(No)、処理がステップS201に進む。
そして、判定部39が、高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2(例えば、図13に示される)よりも大きいか否かを判定する(ステップS201)。高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2以下であると判定された場合には(No)、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの閾値Z1をZ3に変更して新たな閾値Z1とし、また、設定時間T1をT3に変更して新たな設定時間T1とする(ステップS203)。すなわち、プロセッサ33は、切開完了を検知するためのパラメータである漸減確定閾値Z1及び時間的閾値T1を変更する。
ステップS203の後、ステップS105に戻り、再び、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの超音波インピーダンスZtの漸減値、すなわちZmax−Ztが、閾値Z1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否か(第1の条件)、及び、最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間T1(例えば、図13に示される)よりも大きいか否か(第2の条件)を判定する(ステップS105)。すなわち、プロセッサ33が、閾値Z1及び設定時間T1を変更してから、判定部39が、再度、超音波インピーダンスの変化に基づいた切れ分かれ判定をする。
一方、ステップS201において、高周波インピーダンスHZtが第2の閾値HZ2よりも大きいと判定された場合には(No)、処理はステップS108に進む。そして、超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が出力等を制御する(ステップS108)。ステップS108の後、処置フローが終了する。
本変形例によっても、第2の実施形態について上述したのと同様の効果が得られる。なお、図14に示される例では、ステップS121、S202において超音波出力制御部35が超音波出力の低減を行い、図15に示される例では、ステップS123、S203においてプロセッサ33が閾値Z1、T1の変更を行っているが、これらを組み合わせることも可能である。具体的には、例えば、高周波インピーダンスの第1の閾値HZ1に関する切れ分かれ判定後には超音波出力制御部35が超音波出力を低レベルに設定し、高周波インピーダンスの第2の閾値HZ2に関する切れ分かれ判定後にはプロセッサ33が閾値Z1、T1の変更を行ってもよい。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態が、図16並びに図17を参照して説明される。以下では、第1の実施形態と同様の構成及び動作についてはその説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について説明する。本実施形態では、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの経時的な変化にかかわらず、高周波インピーダンスの経時的な変化を常に監視し、この変化に基づいて適宜超音波出力を調整する。
第1の実施形態及び第2の実施形態では、プロセッサ33の判定部39は、電気的特性値の経時的な変化に基づいた切開完了判定により処置対象が切れ分かれたと判定した後に、高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいた切開完了判定を行っている。ここで、高周波インピーダンス値の時間変化を用いた切開完了判定は、電気的特性値の時間変化を用いた切開完了判定に対する補助的又は補完的なものに限定されない。本発明において、プロセッサ33の判定部39は、電気的特性値の経時的な変化を用いた切れ分かれ判定と高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいた切れ分かれ判定とを組み合わせた切開完了判定を行う。第3の実施形態では、これら2つを組み合わせた切開完了判定の一例として、プロセッサ33は、高周波インピーダンス値の経時的な変化を常に監視しながら、電気的特性値の経時的な変化に基づいた切開完了判定を行う。
図16は、第3の実施形態の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。プロセッサ33は、まず、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の開始処理をする(ステップS101)。
ステップS101の後、プロセッサ33の判定部39が、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS301)。本実施形態では、判定部39は、常に、すなわち、電気的特性値を用いた切れ分かれ判定をする前であっても、高周波インピーダンス検出部38で検出した高周波インピーダンス値が閾値HZ1よりも大きいか否かを監視している。
ステップS301において、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、処理はステップS303に進む。一方、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS302に進む。そして、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを調整する(ステップS302)。本実施形態では、判定部39は、超音波インピーダンス値を用いた切開完了検知において切開完了と判定される以前であっても、高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいて超音波出力を調整、例えば低レベルに設定する。したがって、超音波出力制御部35が、第1の把持片14の超音波振動の振幅を弱めさせる。そして、処理はステップS303に進む。
ステップS303において、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいか否か、すなわち、超音波インピーダンスZtが漸減を始めたか否かを判定する。最大値Zmaxが超音波インピーダンスZt以下である場合には(No)、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxを特性検出部37で検出した超音波インピーダンスZtに更新する(Zmax=Zt)(ステップS304)。そして、処理はステップS301に戻る。すなわち、判定部39が超音波インピーダンスZtが閾値Zmaxよりも小さいと判定するまで、プロセッサ33はステップS301〜S303を繰り返し行う。一方、最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS305に進む。そして、プロセッサ33の仮ピーク保持部51が、その最大値Zmaxを超音波インピーダンスの仮ピーク値として保持し、また、プロセッサ33が、カウント時間Tをリセットする(T=0)(ステップS305)。
ステップS305の後、プロセッサ33の判定部39は、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS306)。高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、処理はステップS308に進む。一方、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS307に進む。そして、超音波出力制御部35が、第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを調整する(ステップS307)。上述したように、判定部39は、超音波インピーダンス値を用いた切開完了検知において切開完了と判定される以前であっても、高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいて超音波出力を調整、例えば低レベルに設定する。したがって、超音波出力制御部35が、第1の把持片14の超音波振動の振幅を弱めさせる。そして、処理はステップS308に進む。
ステップS308において、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの超音波インピーダンスZtの漸減値Zmax−Ztが、閾値Z1よりも大きいか否か(第1の条件)、及び、最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間T1よりも大きいか否か(第2の条件)を判定する。第1の条件及び第2の条件が満たされていないと判定された場合には(No)、処理はステップS306に戻る。すなわち、判定部39が第1の条件及び第2の条件が満たされていると判定するまで、プロセッサ33はステップS306〜S308を繰り返し行う。
一方、ステップS308において、第1の条件及び第2の条件が満たされていると判定された場合には(Yes)、処理はステップS309に進む。そして、超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が出力等を制御する(ステップS309)。ステップS309の後、処置フローが終了する。
このように、第3の実施形態では、高周波インピーダンスの経時的な変化を常に監視し、これに基づいて超音波出力制御部35が第1の電源31から超音波振動子22に出力される電気エネルギーを適宜調整する。これにより、処置が進んでいる状態において、超音波振動により振動している第1の把持片14が第2の把持片15のパッド部材17に大きい振幅及び振動速度で接触し続けることが有効に防止される。したがって、第2の把持片15のパッド部材17の摩耗及び変形が有効に防止される。
第3の実施形態においても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、電気的特性値の経時的な変化を用いた判定と高周波インピーダンスの経時的な変化を用いた判定とを組み合わせた切開完了判定を行うことにより、処置対象が切れ分かれたことを適切に検知し、切れ残りを防止することができる。
[第3の実施形態:変形例]
図17は、第3の実施形態の変形例の処置システム1による処置の一例を示すフローチャートである。プロセッサ33は、まず、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の開始処理をする(ステップS101)。
ステップS101の後、プロセッサ33の判定部39が、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS301)。本変形例においても、判定部39は、常に、すなわち、電気的特性値を用いた切れ分かれ判定をする前であっても、高周波インピーダンス検出部38で検出した高周波インピーダンス値が閾値HZ1よりも大きいか否かを監視している。
ステップS301において、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、処理はステップS313に進む。一方、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS312に進む。そして、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの第1の閾値Z1をZ2に変更して新たな閾値Z1とし、また、設定時間T1をT2に変更して新たな設定時間T1とする(ステップS312)。本変形例では、判定部39は、超音波インピーダンス値を用いた切開完了検知において切開完了と判定される以前であっても、高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいて切開完了を検知するためのパラメータである漸減確定閾値Z1及び時間的閾値T1を変更する。そして、処理はステップS313に進む。
ステップS313において、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいか否かを判定する。最大値Zmaxが超音波インピーダンスZt以下である場合には(No)、プロセッサ33は、超音波インピーダンスの最大値Zmaxを特性検出部37で検出した超音波インピーダンスZtに更新する(Zmax=Zt)(ステップS314)。そして、処理はステップS311に戻る。一方、最大値Zmaxが超音波インピーダンスZtよりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS315に進む。そして、プロセッサ33の仮ピーク保持部51が、その最大値Zmaxを超音波インピーダンスの仮ピーク値として保持し、また、プロセッサ33が、カウント時間Tをリセットする(T=0)(ステップS315)。
ステップS315の後、プロセッサ33の判定部39は、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいか否かを判定する(ステップS316)。高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1以下であると判定された場合には(No)、処理はステップS318に進む。一方、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合には(Yes)、処理はステップS317に進む。そして、プロセッサ33が、超音波インピーダンスの第1の閾値Z1をZ2に変更して新たな閾値Z1とし、また、設定時間T1をT2に変更して新たな設定時間T1とする(ステップS317)。上述したように、判定部39は、超音波インピーダンス値を用いた切開完了検知において切開完了と判定される以前であっても、高周波インピーダンス値の経時的な変化に基づいて漸減確定閾値Z1及び時間的閾値T1を変更する。そして、処理はステップS318に進む。
ステップS318において、判定部39が、超音波インピーダンスの最大値Zmaxからの超音波インピーダンスZtの漸減値Zmax−Ztが、閾値Z1よりも大きいか否か(第1の条件)、及び、最大値Zmaxが保持され始めてからのカウント時間Tが時間T1よりも大きいか否か(第2の条件)を判定する。第1の条件及び第2の条件が満たされていないと判定された場合には(No)、処理はステップS316に戻る。
一方、ステップS318において、第1の条件及び第2の条件が満たされていると判定された場合には(Yes)、処理はステップS319に進む。そして、超音波出力制御部35及び高周波出力制御部36が出力等を制御する(ステップS319)。ステップS319の後、処置フローが終了する。
本変形例によっても、第3の実施形態について上述したのと同様の効果が得られる。また、本変形例では、高周波インピーダンスHZtが閾値HZ1よりも大きいと判定された場合に、プロセッサ33が判定パラメータである閾値Z1及び時間T1を変更してから、プロセッサ33の判定部39が電気的特性値の経時的な変化に基づいた切開完了判定を行う。これにより、判定部39が、処置対象が完全に切れ分かれたことを確実に判断する。したがって、誤検知なく切開完了検知することができるエネルギー処置システムが提供される。
以上説明したように、本発明の各実施形態及び変形例によれば、超音波インピーダンス値のピークを検出することで処置対象が切れ分かれたと判定して出力を停止する従来技術に対し、超音波インピーダンス、電圧、電力を含む電気的特性値の検知時に高周波インピーダンス値の監視結果から切れ残っている処置対象の有無を判定するアルゴリズムを併用することで、処置対象の切れ残りを防止することができる。
以上、本発明の実施形態及び変形例が説明されてきたが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能であることが当業者にとって自明である。また、各実施形態及び各変形例が適宜組み合わせ可能であることも当業者にとって自明である。例えば、第2の実施形態及び第3の実施形態は、第1の実施形態の第3の変形例や第4の変形例と組み合わせることが可能である。