JPWO2015111598A1 - 乳酸菌の高濃度の培養法 - Google Patents

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Abstract

特に撹拌などしなくても、基本的には、培養温度のみを管理・制御するだけで、簡便に乳酸菌を高濃度化できる培養法が開示されている。この方法は、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ロイテリまたはラクトバチルス・ブレビスなど、アルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有する乳酸菌、あるいはアルギニンをシトルリンに変換した後に、シトルリンをオルニチンに変換する代謝能を有する乳酸菌を、培地のpHの低下を抑制するために、アルギニンを添加してなる培地で培養することを特徴とする。

Description

本発明は、乳酸菌の培養法に関し、さらに詳しくは、乳酸菌を高濃度化できる培養法に関する。
乳酸菌を培養すると、乳酸菌の作用により乳糖が乳酸に代謝される。一般的に、この乳酸は培地(培養液)のpHを低下させ、その結果、乳酸菌の増殖は抑制される。このような乳酸菌の増殖抑制を回避し、乳酸菌を高濃度で増殖させるために、従来、例えば、乳酸菌の培養中において、培地(培養液)のpHを測定しながら、アルカリ(炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなど)を培地(培養液)に添加し、培地(培養液)のpHを所定の範囲に維持・管理して培養する方法が採られていた。
例えば、乳酸菌を高濃度化できる培養方法として、炭酸マグネシウムを添加してpHの低下を防ぎながら、微生物を培養する方法(特開2004-057020号公報(特許文献1))、乳酸菌の増殖促進物質を使用する培養法(特開2006-230259号公報(特許文献2)、特開平07-099968号公報(特許文献3)、特開平07-099967号公報(特許文献4))、乳酸菌の培養中に乳酸を取り除く培養法(特開2001-211878号公報(特許文献5))、乳酸菌を培養液中から容易に回収できる培地の調製法(特開2007-089511号公報(特許文献6))、乳酸菌と糸状菌の共培養法(特開2006-238743号公報(特許文献7))などが提案されている。
ところで、アルギニンを代謝するラクトコッカス属が知られており(非特許文献1および2)、また、その代謝経路において、アルギニンデイミナーゼやオルニチンカーバミルトランスフェラーゼが関与する反応が知られている。しかし、本発明者らの知る限り、アルギニン代謝時またはこれら反応時のpHの変化などに言及した内容は未だに報告されていない。
また、特開平07-184687号公報(特許文献8)には、アルギニンを添加した乳酸菌生育培地を用いて、乳酸菌スターターを培養し、乳酸菌スターターを構成する乳酸菌を簡便に検査する方法が記載されている。しかし、アルギニンの添加量は微量であり、ここでは、pHの上昇は意図されていない。また、特開2009-112205号公報(特許文献9)には、乳酸菌を用いて、L−アルギニンを含むタンパク質を発酵させる、L−オルニチン含有物の製造方法が記載されている。しかし、L−アルギニン単体の添加は記載されていない。
特開2004-057020号公報 特開2006-230259号公報 特開平07-099968号公報 特開平07-099967号公報 特開2001-211878号公報 特開2007-089511号公報 特開2006-238743号公報 特開平07-184687号公報 特開2009-112205号公報
Crow V. L., T. D. Thomas. 1982. Arginine metabolism in lactic streptococci. J. Bacteriol. 150:1024-1032. Poolman B., A. J. M. Driessen, W. N. Konings. 1987. Regulation of arginine-ornithine exchange and arginine deiminase pathway in Streptococcus lactis. Bacteriol., 169 5597-5604
本発明者らは、今般、シトルリン産生能を有する乳酸菌を、培地のpHの低下を抑制するために、アルギニンを添加してなる培地で培養することで、乳酸菌を高濃度に培養できるとの知見を得た。より具体的には、特に撹拌などしなくても、基本的には、培養温度のみを管理・制御することで、乳酸菌を高濃度に培養できるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。
従って、本発明は、簡便に乳酸菌を高濃度化できる培養法の提供をその目的としている。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(7)に関する。
(1)アルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有する乳酸菌を、培地のpHの低下を抑制するために、アルギニンを添加してなる培地において培養することを特徴とする、乳酸菌の培養法。
(2)乳酸菌の培養液の1mLあたりの菌体数がアルギニンを含まない培地で培養した時に比べて2倍以上となる、(1)に記載の乳酸菌の培養法。
(3)乳酸菌がアルギニンをシトルリンに変換した後に、シトルリンをオルニチンに変換する代謝能を有する、(1)または(2)に記載の乳酸菌の培養法。
(4)アルギニンを培地に0.5〜15質量%で添加する、(1)〜(3)のいずれかに記載の乳酸菌の培養法。
(5)乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブフネリ、エンテロコッカス・フェーカリス、オエノコッカス・オエニ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・デルブレッキーからなる群から選択される1種または2種以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の乳酸菌の培養法。
(6)乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ブレビスからなる群から選択される1種または2種以上である、(5)に記載の乳酸菌の培養法。
(7)培養液を攪拌しない、(1)〜(6)のいずれかに記載の乳酸菌の培養法。
本発明の乳酸菌の培養法によれば、シトルリン産生能を有する乳酸菌を、アルギニンを添加してなる培地で培養して、基本的には(原則的には)、培養温度のみを管理・制御することで、乳酸菌を高濃度に培養できる。従って、本発明の乳酸菌の培養法によれば、例えば、アルカリを添加しながら、培養液のpHを測定する装置・設備や、培養液のpHの変化(低下)に伴い、アルカリを培養液に添加する装置・設備を必須とせずに、乳酸菌を高濃度に培養できる。すなわち、基本的には、特殊な装置・設備を使用せず、通常の培養槽のみを使用して、乳酸菌を高濃度に培養できるため、培養工程で不具合が発生しにくい。このため、本発明の乳酸菌の培養法では、簡便に乳酸菌を高濃度に培養できる点で、従来法に比べて有利であり、その有用性は極めて高いと言える。
アルギニンを添加したMRS培地における、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスJCM5805T株、IFO12007株、MEP1706301株、MEP1706302株およびMEP1706303株の培養時のpHの変化を示すグラフである。 アルギニンを添加したMRS培地における、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスJCM16167T株、MEP1706304株およびMEP1706305株の培養時のpHの変化を示すグラフである。 アルギニンを添加したMRS培地における、ラクトバチルス・ロイテリJCM1112T株およびラクトバチルス・ブレビスJCM1061株の培養時のpHの変化を示すグラフである。 アルギニンを添加した還元脱脂乳培地における、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスJCM5805T株、MEP1706302株およびMEP1706303株の培養時のpHの変化を示すグラフである。 アルギニンを添加した還元脱脂乳培地と還元ホエイ培地における、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスMEP1706302株の培養時のpHの変化を示すグラフである。
高濃度の培養
本発明では、少なくともアルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有する乳酸菌を、アルギニンを添加してなる培地において培養する。これにより、乳酸菌を高濃度に培養できることとなる。具体的には、本発明では、乳酸菌の培養液の1mLあたりの菌体数(生菌数)がアルギニンを含まない培地で培養した時に比べて、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上、特に好ましくは5倍以上を達成(実現)することができる。
乳酸菌
本発明では、乳酸菌が少なくともアルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有すればよいが、本発明の一つの態様では、乳酸菌がアルギニンをシトルリンに変換した後に、シトルリンをオルニチンに変換する代謝能を有することが好ましい。
本発明では、アルギニンを培地に添加することで、乳酸菌を高濃度に培養できる機構(理由)について、下記のように考えている。すなわち、少なくともアルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有する乳酸菌、さらにアルギニンをシトルリンに変換した後に、シトルリンをオルニチンに変換する代謝能を有する乳酸菌では、アルギニンデイミナーゼにより、アルギニンをシトルリンに変換し、さらにオルニチンカーバミルトランスフェラーゼにより、シトルリンをオルニチンに変換する。そして、これらの反応では、アルギニンおよびシトルリンの脱アミノ化が起こり、アンモニアを発生する。このアンモニアが乳酸の産生に伴う培地のpHの低下を抑制して、乳酸菌を高濃度に培養できると考えている。
本発明では、乳酸菌の好ましい例として、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブフネリ、エンテロコッカス・フェーカリス、オエノコッカス・オエニ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・デルブレッキーに属する乳酸菌が挙げられる。
本発明では、乳酸菌のより好ましい例として、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis ssp lactis)、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis ssp cremoris)、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ブレビスが挙げられ、具体的には、Lactococcus lactis ssp lactis JCM5805T、Lactococcus lactis ssp lactis IFO12007、Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706301、Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706302、Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706303、Lactococcus lactis ssp cremoris JCM16167T、Lactococcus lactis ssp cremoris MEP1706304、Lactococcus lactis ssp cremoris MEP1706305、Lactobacillus reuteri JCM1112T、Lactobacillus brevis JCM1061が挙げられる。
培地
本発明では、培地は適宜選択されればよいが、例えば、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳(還元脱脂乳)、およびこれら脱脂乳成分のタンパク質分解物、ホエイ、ホエイ濃縮物、ホエイ粉(還元ホエイ)、およびこれらホエイ成分のタンパク質分解物、生乳、殺菌乳(全脂乳)、全脂濃縮乳、全脂粉乳(還元全脂乳)、およびこれら全脂乳成分のタンパク質分解物などを含む培地が好ましく、脱脂乳、脱脂粉乳、およびこれら脱脂乳成分のタンパク質分解物、ホエイ、ホエイ粉、およびこれらホエイ成分のタンパク質分解物を含む培地がより好ましく、脱脂乳、脱脂粉乳、ホエイ、ホエイ粉を含む培地がさらに好ましい。
アルギニンの添加
本発明では、アルギニンを添加してなる培地で、乳酸菌を培養する。アルギニンの培地への添加量は、菌体量(菌体数)、乳酸の産生量、pHの低下を抑制していると考えられるアンモニアの産生量などを勘案して適宜決定されればよいが、例えば、好ましくは0.5〜15質量%であり、下限がより好ましくは1質量%、さらに好ましくは2質量%であり、上限が好ましくは12質量%である。これは特に、pHの低下を抑制していると考えられるアンモニアの産生量が適切になるためである。
本発明では、乳酸菌の培養の開始前に、アルギニンを培地に添加すればよく、乳酸菌の培養中に、アルギニンを培養液に追加で添加することは必須ではないが、培養液のpHを勘案しながら、乳酸菌の培養中に、アルギニンを培養液に追加で添加する態様(概念)を除外するものではない。また、本発明では、乳酸菌の培養の開始前に、アルギニンを培地に添加せずに、乳酸菌の培養中にのみ、アルギニンを培養液に添加する態様も包含する。乳酸菌の培養中におけるアルギニンの添加は、断続的に行ってもよいし、継続的に行ってもよく、またこれらを組合せた態様であってもよい。なお、乳酸菌の培養中に、アルギニンを培養液に添加する態様であっても、アルギニンの添加量は、その総量において、上記の通りであることが好ましい。
本発明において、「アルギニンを添加してなる培地」とは、培地または培養液のpHの低下を抑制することを少なくとも目的として、アルギニンが人為的または積極的に添加された培地を意味する。したがって、乳酸菌の培養にあって、例えば偶発的に培地または培養液にアルギニンが含まれる態様は本発明の範囲には包含されない。もっとも、自然法則の下その他の人が関与し得ない状況下でアルギニンが培地または培養液に(例えば、極微量に)含まれる態様までをも除外するものではない。
培養条件
本発明では、培養条件は特に限定されず、培養温度は、実際に培養する乳酸菌の至適温度に設定すればよいが、例えば、好ましくは28〜40℃、より好ましくは29〜38℃、さらに好ましくは30〜36℃である。このとき、培養温度は、乳酸菌の培養中に所望の範囲に管理・制御されていることが好ましい。そして、培養時間は、実際に培養する乳酸菌の種類などに合せて適宜設定すればよいが、例えば、好ましくは4〜48時間、より好ましくは8〜36時間、さらに好ましくは12〜24時間である。ところで、本発明では、乳酸菌の培養中に培養液を攪拌しなくてもよく、そのような条件でも、乳酸菌を高濃度に培養できることとなる。そのため、乳酸菌の培養中に培養液を攪拌するためのエネルギーや電気代などの使用量を低減する観点から、培養液を攪拌しないことが好ましい。なお、本発明では、乳酸菌の培養中に培養液を攪拌することは必須ではないが、乳酸菌の培養中に培養液を攪拌する態様(概念)を排除するものではない。つまり、乳酸菌の培養中に培養液を適宜攪拌することで、乳酸菌をより高濃度に培養できることとなる。
本発明では、アルギニンを培地に添加しない場合と比べて、培養液のpHの低下が抑制される。後記の実施例に示される通り、本発明では、しばしば培地のpHは、培養時間の経過と共に、一旦は低下することがあるが、その後に上昇に転じる。また、本発明では、アルギニンを添加していない場合と比べて、培地のpHは、培養時間の経過と共に、依然として高い状態にあっても、徐々に低下することがある。なお、本発明では、アルギニンを添加していない場合と比べて、培地のpHの低下が抑制され、菌体濃度が所望の高い状態を実現できる限り、培地のpHの変化の経緯(プロフィール)は特に限定されない。
また、本発明では、上記の培養の前に、乳酸菌を賦活培養することが好ましい。この賦活培養の培養条件は、実際に培養する乳酸菌の種類などに合せて適宜設定すればよい。
以上のようにして高濃度で得られた乳酸菌は、そのまま、あるいは菌体を遠心分離などしてから利用される。具体的には、発酵食品の製造のためのスターターとして利用することができる。このとき、乳酸菌を高濃度化することで、発酵食品の風味、食感、物性、品質などに影響する有効な成分や、乳酸菌の代謝する機能性の成分などを多量に得ることができる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、下記の実施例において特に断らない限り、百分率は質量基準である。また、菌体濃度は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)(日本国)」に記載の乳酸菌数の測定法により測定した。ただし、BCP培地の培養温度は30℃とした。アンモニア濃度は、バイオセンサー(BF-7、王子計測機器株式会社製)により測定した。また、アルギニン濃度、シトルリン濃度、オルニチン濃度、乳酸濃度はHPLC法により測定した。
実施例1
アルギニンをオルニチンに変換する代謝能を有するラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis ssp lactis)の下記の5菌株を用意した。
(1)Lactococcus lactis ssp lactis JCM5805T
(2)Lactococcus lactis ssp lactis IFO12007
(3)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706301
(4)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706302
(5)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706303
上記(3)〜(5)は、本発明の出願人が十勝地方の生乳から分離した菌株である。
通常のMRS培地にて、上記の菌株を数回で賦活してから使用した。まず、グルコースを1%とアルギニンを2%で添加したMRS培地、またはグルコースを1%で添加したMRS培地に、前記の賦活した菌株の培養液を1%の比率(培地量に対して)で接種して培養した。ここで、グルコースは、MRS培地を滅菌(121℃、15分間)する前に、MRS培地に混合し、アルギニンは、MRS培地を滅菌した後に、0.4倍量のクエン酸で中和して濾過滅菌して、MRS培地に混合した。なお、MRS培地は、元からグルコースを2%で含むため、本実験における初発の時点でグルコースを3%で含むこととなる。培養条件は30℃、16時間とし、培養中に撹拌しなかった。
これらの培養中におけるpHの経時変化を図1に示した。全ての菌株の培養において、アルギニンを添加しない培地では、培養液のpHが4.5付近まで低下した。一方、アルギニンを添加した培地では、pHが5.5前後まで低下してから上昇に転じ、pHの低下が抑制された。
これらの培養後における菌体濃度と培養液のOD(600 nm)を測定した。その結果を表1に示した。アルギニンを添加した培地では、アルギニンを添加しない培地に比べて、菌体濃度は2.2〜8.5倍に、培養液のODは2.2〜4.1倍に上昇した。
これらの培養後における培養液のアルギニン(Arg)、シトルリン(Cit)、オルニチン(Orn)濃度を測定した。その結果を表2に示した。最初に培地へ添加したアルギニンの大部分がオルニチンに変換されていた。この結果から、乳酸菌がアルギニンをオルニチンへ変換し、その過程でアンモニアを放出して、培養液のpHを上昇させると共に、培養液のpHの上昇により、菌体の増殖が促進され、培養後の菌体濃度(菌数)が高まったと考えられた。
Figure 2015111598
Figure 2015111598
実施例2
アルギニンをオルニチンに変換する代謝能を有するラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis ssp cremoris)の下記の3菌株を用意し、実施例1と同様の条件で培養した。
(6)Lactococcus lactis ssp cremoris JCM16167T
(7)Lactococcus lactis ssp cremoris MEP1706304
(8)Lactococcus lactis ssp cremoris MEP1706305
上記(7)および(8)は、本発明の出願人が十勝地方の生乳から分離した株である。
これらの培養中におけるpHの経時変化を図2に示した。全ての菌株の培養において、アルギニンを添加した培地では、pHの低下が抑制された。
これらの培養後における菌体濃度と培養液のOD(600 nm)を表3に示した。アルギニンを添加した培地では、アルギニンを添加しない培地に比べて、菌体濃度は2.7〜6.2倍、培養液のODは1.4〜4.5倍に上昇した。この結果からも、乳酸菌がアルギニンをオルニチンへと変換し、その過程でアンモニアを放出して、培養液のpHを上昇させると共に、培養液のpHの上昇により、菌体の増殖が促進されたと考えられた。
Figure 2015111598
実施例3
アルギニンをオルニチンに変換する代謝能を有する下記の2菌株を用意し、実施例1と同様の条件で培養した。ただし、培養温度は37℃とした。
(9)Lactobacillus reuteri JCM1112T
(10)Lactobacillus brevis JCM1061
これらの培養中におけるpHの経時変化を図3に示した。全ての菌株の培養において、アルギニンを添加した培地では、pHの低下が抑制された。
これらの培養後における培養液のOD(600 nm)を表4に示した。アルギニンを添加した培地では、アルギニンを添加しない培地に比べて、培養液のODは1.1〜1.4倍に上昇した。この結果からも、乳酸菌がアルギニンをオルニチンへと変換し、その過程でアンモニアを放出して、培養液のpHを上昇させると共に、培養液のpHの上昇により、菌体の増殖が促進されたと考えられた。
Figure 2015111598
実施例4
実施例1において用いた下記3菌株を、MRS培地を主成分とする培地から、乳培地を主成分とする培地に代えて、実施例1と同様の条件で培養した。
(1)Lactococcus lactis ssp lactis JCM5805T
(4)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706302
(5)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706303
通常のMRS培地にて、上記の菌株を数回で賦活してから使用した。そして、培地として、酵母エキス(P2G:アサヒフード&ヘルスケア製)を0.5%、アルギニンを2%、クエン酸を0.8%で添加した還元脱脂乳培地(脱脂粉乳(Low heat)の10%水溶液、株式会社明治製)を殺菌(95℃、5分間)したもの(以下「還元脱脂乳培地」ともいう。)を使用した。上記の還元脱脂乳培地に、前記の賦活した菌株の培養液を1%の比率(対・培地)で接種して培養した。培養条件は30℃、16時間とし、培養中に撹拌しなかった。
これらの培養中におけるpHの経時変化を図4に示した。全ての菌株の培養において、アルギニンを添加した培地では、pHの低下が抑制された。
これらの培養後における菌体濃度を表5に示した。アルギニンを添加した培地では、アルギニンを添加しない培地に比べて、菌体濃度は1.2〜2.2倍に上昇した。つまり、乳培地を主成分に使用した場合でも、MRS培地を主成分に使用した場合と同様に、アルギニンを添加することで、培養液のpHの低下が抑制されると共に、菌体の増殖が促進され、乳酸菌を高濃度で培養できることが確認された。
Figure 2015111598
実施例5
下記の菌株を、アルギニンの添加量を変えて、培地の組成を変えた以外は、実施例4と同様の条件で培養した。
(4)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706302
培地として、酵母エキス(P2G:アサヒフード&ヘルスケア製)を0.1%、アルギニンを0、2、3、または4%、クエン酸を前述の各アルギニン濃度の0.4倍量で添加した還元脱脂乳培地(脱脂粉乳(Low heat)の10%水溶液、株式会社明治製)を殺菌(95℃、5分間)したものと、酵母エキスを0.1%、アルギニンを3%、クエン酸を1.2%で添加した還元ホエイ培地(ホエイ粉の10%水溶液、株式会社明治製)を殺菌(95℃、5分間)したもの(以下「還元ホエイ培地」ともいう)を使用した。上記の還元脱脂乳培地と還元ホエイ培地に、前記の賦活した菌株の培養液を1%の比率(対・培地)で接種して培養した。培養条件は32.5℃、16時間とし、培養中に撹拌しなかった。
これらの培養中におけるpHの経時変化を図5に示した。アルギニンを添加した培地では、培養の開始から8〜10時間後に、pHが上昇していたが、その後に、pHは低下した。アルギニンの添加量が多いほど、pHの低下する時期が遅くなり、pHの上昇する変化幅が大きくなった。なお、還元脱脂乳培地と還元ホエイ培地では、pHの経時変化に明らかな差異は見られなかった。
これらの培養の開始から2、4、8、および16時間後におけるアルギニン、オルニチン、アンモニア、乳酸、菌体濃度を測定した。その結果を表6に示した。これらの培養の開始から8時間後と16時間後の間に、アルギニンがオルニチンへと変換されていること、アルギニンのオルニチンへの変換が開始されると同時に、アンモニアの生産も開始され、アンモニア濃度はオルニチン濃度の約2倍に増加することが確認された。培養の経過に伴って、乳酸濃度が上昇しているにも関わらず、培養液のpHが低下していないのは、アンモニアの生産により、pHが中和されているものと考えられた。
培養の開始から16時間後の、還元脱脂乳培地における菌体濃度を比較すると、アルギニンが0%では3.0×109であるのに対し、アルギニンが2%では1.0×1010、アルギニンが3%では1.3×1010、アルギニンが4%では1.6×1010であり、アルギニンを高濃度で添加するにつれて、菌体濃度が上昇していた。また、還元脱脂乳培地と還元ホエイ培地では、菌体濃度に明らかな差異は見られなかった。つまり、還元ホエイ培地でも、還元脱脂乳培地と同様に、アルギニンを添加することで、培養液のpHの低下が抑制されると共に、菌体の増殖が促進され、乳酸菌を高濃度で培養できることが確認された。
Figure 2015111598
実施例6
下記の菌株を、アルギニンの添加量を変え、培養時間を22時間までとした以外は、実施例5と同様の条件で培養した。
(4)Lactococcus lactis ssp lactis MEP1706302
培養の開始から16時間および22時間語におけるアルギニン、シトルリン、オルニチン、乳酸、および菌体濃度を測定した。その結果は表7に示される通りであった。
Figure 2015111598

Claims (7)

  1. アルギニンをシトルリンに変換する代謝能を有する乳酸菌を、培地のpHの低下を抑制するために、アルギニンを添加してなる培地において培養することを特徴とする、乳酸菌の培養法。
  2. 乳酸菌の培養液の1mLあたりの菌体数が、アルギニンを含まない培地で培養したときに比べて2倍以上となる、請求項1に記載の乳酸菌の培養法。
  3. 乳酸菌がアルギニンをシトルリンに変換した後に、シトルリンをオルニチンに変換する代謝能を有する、請求項1または2に記載の乳酸菌の培養法。
  4. アルギニンを培地に0.5〜15質量%で添加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳酸菌の培養法。
  5. 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブフネリ、エンテロコッカス・フェーカリス、オエノコッカス・オエニ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・デルブレッキーからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳酸菌の培養法。
  6. 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ブレビスからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項5に記載の乳酸菌の培養法。
  7. 培養液を攪拌しない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳酸菌の培養法。
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