JPWO2015099143A1 - ガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置 - Google Patents

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Abstract

内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置を用いて、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含む。また、熔融ガラスを処理する工程では、処理装置の内壁と熔融ガラスの表面により形成される気相空間に、熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、白金族金属の揮発が抑制されるように気相空間の酸素濃度を制御する。また、処理装置の内部において、熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる泡放出量最大位置と熔融ガラスの熔融ガラスの流れ方向の温度分布の最高温度位置とが熔融ガラスの流れ方向において離間するように、泡放出量最大位置が調整される。

Description

本発明は、ガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置に関する。
一般的に、ガラス基板の製造は、ガラス原料から熔融ガラスを生成させた後、清澄工程、攪拌工程あるいは均質化工程を経た後、熔融ガラスをガラス基板へと成形する工程を含む。
上記工程を行ういずれの処理装置においても、熔融ガラスに接する部材には、その部材に接する熔融ガラスの温度、要求されるガラス基板の品質等に応じ、適切な材料を用いる必要がある。すなわち、高温の熔融ガラスから品位の高いガラス基板を量産するためには、ガラス基板の欠陥の要因となる異物等が、ガラス基板を製造するいずれのガラス処理装置からも熔融ガラスへ混入しないよう考慮することが望まれる。たとえば、熔融ガラスを生成した後、成形工程に供給するまでの間の熔融ガラスは極めて高温状態であるため、熔融、清澄、供給、攪拌等の各処理を行う処理装置は、耐熱性の高い白金族金属(例えば、白金)を含有する部材が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
上記の工程には、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する清澄工程が含まれる。液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのパネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いるガラス基板では、熔融ガラスに残存する気泡による欠陥を排除する必要がある。
このため、パネルディスプレイやFPD用ガラス基板の製造においては清澄工程が行われている。清澄は、清澄管の本体を加熱しながら、この清澄管本体に清澄剤を含有する熔融ガラスを通過させ、清澄剤の酸化還元反応により熔融ガラス中の気泡が取り除かれることで行われる。
より具体的には、還元反応により酸素を放出する清澄剤を用い、粗熔解した熔融ガラスの温度を清澄管においてさらに上げることで清澄剤の還元により酸素を放出させ、熔融ガラス中の気泡を浮上脱泡させた後、温度を下げることにより、脱泡しきれずに残った酸素を還元された清澄剤の酸化に用いることで熔融ガラスに吸収させるようにしている。高温で清澄工程が行われる清澄管もまた、耐熱性の高い白金族金属(例えば、白金)を含有する部材が用いられる。
特開2010−111533号公報
清澄工程は、熔解工程から成形工程にいたるまでの間で熔融ガラスの温度が最も高くなる工程であり、清澄工程を行う清澄管は、熔融ガラスを加熱するために極めて高い温度に加熱される。すると、清澄管に用いられる白金族金属は熔融ガラス中の清澄剤の還元により発生する酸素によって酸化され、酸化物として揮発する。一方、白金族金属の酸化物は、清澄管の局所的に温度が低下した位置で還元され、還元された白金族金属が清澄管の内壁面に凝集して付着する。内壁面に付着した白金族金属の一部が異物として熔融ガラス中に混入すると、ガラス基板の品質の低下を招くおそれがある。特に、清澄工程は、熔解工程から成形工程にいたるまでの間で熔融ガラスの温度が最も高くなる工程であるので、清澄工程を主に行う清澄管では、極めて高い温度に加熱される。このため、清澄管における白金族金属の揮発は盛んであり、白金族金属の揮発及び凝集を低減することが特に望まれる。
本発明の目的は、ガラス基板の成形前に熔融ガラスを処理する工程において、ガラス処理装置に用いられる白金族金属の揮発を低減し、これにより、熔融ガラスに異物が混入することを抑制することができるガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置を提供することにある。
本発明のガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置は、以下の形態を含む。
(形態1)
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置を用いて、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程では、
前記処理装置の内壁と前記熔融ガラスの表面により形成される気相空間に、前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態2)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する際、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ガラス基板の製造方法。
(形態3)
前記ガラス基板は、酸化錫を0.01モル%〜0.3モル%含有し、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量は、前記酸化錫の含有量により調整される、形態1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
(形態4)
前記気相空間から前記処理装置の外部に排出される酸素の量をさらに調整することで前記酸素濃度を制御する、形態1〜3のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態5)
前記酸素濃度が所定の範囲となるように、供給量を調節したガスを前記気相空間に供給する、形態1〜4のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態6)
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記酸素の放出量は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記熔融ガラスの流れ方向の位置における前記酸素の放出量の分布を調整することで、
前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の前記熔融ガラスの流れ方向における酸素濃度の分布を調整する、形態1〜5のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態7)
前記処理装置の温度は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記酸素の放出量の分布は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
前記熔融ガラスの流れ方向における前記酸素の放出量が最大となる位置が、前記処理装置の温度が最高となる位置から離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、形態6に記載のガラス基板の製造方法。
(形態8)
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、 前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、形態1〜7のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態9)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
ガラスの原料を熔解して熔融ガラスを生成する工程を有し、
還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程では、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、かつ、前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、
前記熔融ガラスの処理において前記気相空間と接する熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置を調整する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態10)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程は、前記清澄管において前記熔融ガラスの脱泡を行う脱泡処理を含む清澄工程である、請求項8または9に記載のガラス基板の製造方法。
(形態11)

前記泡放出量最大位置は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
前記泡放出量最大位置が前記最高温度位置と前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、請求項8〜10のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態12)
前記泡放出量最大位置の調整は、前記熔融ガラスの温度分布、及び、前記熔融ガラスの流速の少なくともいずれか1つの調整によって行われる、形態8〜11のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態13)
前記泡放出量最大位置は、前記最高温度位置に対して前記熔融ガラスの流れの下流側に位置する、形態8〜12のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態14)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記清澄管には、前記気相空間と前記処理装置の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記泡放出量最大位置と前記最高温度位置との間である、形態8〜13のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態15)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記清澄管には、前記気相空間と前記清澄管の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記泡放出量最大位置と、前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記温度分布の最高温度位置を基準として前記熔融ガラスの流れ方向の同じ側にある、形態8〜14のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態16)
前記処理装置の外周には、前記処理装置の外側に延びるフランジ部材が設けられ、前記フランジ部材の前記熔融ガラスの流れ方向の配置位置は、前記泡放出量最大位置と前記排気管の配置位置との間の領域以外の領域にある、形態14または15に記載のガラス基板の製造方法。
(形態17)
前記温度分布の前記最高温度位置、前記排気管の配置位置、及び前記泡放出量最大位置は、前記熔融ガラスの流れ方向の上流側から前記最高温度位置、前記排気管の配置位置、及び前記泡放出量最大位置の順に位置する、形態14〜16のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態18)
前記処理装置には、前記気相空間と前記処理装置の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記泡放出量最大位置と、前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置とは、前記熔融ガラスの流れ方向の同じ位置である、形態8〜13のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態19)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造装置であって、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように構成された処理装置と、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整するとともに、前記気相空間より排出される酸素の量を調整することで、前記気相空間の酸素濃度が所定の範囲となるように調整するように構成された制御装置と、を備える、ガラス基板製造装置。
(形態20)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板製造装置であって、
ガラスの原料を熔解して熔融ガラスを生成する熔解槽と、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに、前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成され、前記気相空間と接する前記内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有するように構成された処理装置と、を有し、 前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの前記表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
(形態21)
前記処理装置は、前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含む、形態19または20に記載のガラス基板製造装置。
(形態22)
前記処理装置の内部を流れる熔融ガラスの最高温度は1630℃〜1750℃である、形態1〜17のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜21のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
(形態23)
前記ガラス基板の酸化錫の含有量は、0.01モル%〜0.3モル%である、形態1〜18及び22のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜22のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
(形態24)
前記気相空間中の白金族金属の蒸気圧は、0.1Pa〜15Paである、形態1〜18、22、及び23のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜23のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
(形態25)
前記白金族金属の揮発により生成された酸化物の凝集により生成される凝集物(以下、白金族金属の凝集物)は、例えば、最大長さの最小長さに対する比であるアスペクト比が100以上である、形態1〜24のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜24のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
また、例えば、白金族金属の凝集物の最大長さは50μm〜300μm、最小長さは0.5μm〜2μmである。ここで、白金族金属の凝集物の最大長さとは、白金族金属の凝集物を撮影して得られる異物の像に外接する外接長方形のうち最大長辺の長さをいい、最小長さとは、前記外接長方形の最小短辺の長さをいう。
あるいは、前記白金族金属の揮発物の凝集により生成される凝集物として、最大長さの最小長さに対する比であるアスペクト比が100以上であり、白金族金属の凝集物の最大長さが100μm以上、好ましくは100μm〜300μmであるものを定めることができる。
(形態26)
前記ガラス基板は、ディスプレイ用ガラス基板である、形態1〜25のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜25のいずれか1つに記載のガラス基ガラス基板製造装置。
また、前記ガラス基板は、酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板又はLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。
上述の各形態のガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置によれば、熔融ガラスの処理工程、例えば清澄工程において、白金族金属の揮発を抑制することにより、熔融ガラスに異物が混入することを抑制することができる。
ガラス基板の製造方法の工程を示すフローチャートである。 ガラス基板製造装置の構成を示す模式図である。 図2の製造装置に用いられる第1の実施形態の清澄管の概略図である。 第1の実施形態の清澄管の長手方向における鉛直断面図である。 第1の実施形態の清澄管の長手方向における位置と、清澄管120の上端部の温度、および、酸素放出量との関係を示す図である。 第2の実施形態に係る清澄管の外観図である。 第2の実施形態に係る清澄管の断面と清澄管の温度分布を表す図である。 実験例1の結果を示す図である。
本発明に係るガラス基板の製造方法及びガラス処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、酸素濃度等による調整によって熔融ガラスに異物が混入することを抑制するとは、上記調整を行なわない場合に対して、熔融ガラスに異物が混入する量を低減させることであって、熔融ガラスに異物が混入する量をゼロにすることも含まれるが、熔融ガラスに異物が混入する量をゼロにすることに限定している訳ではない。
本明細書において、液面の上部とは、液面に対して鉛直方向上方にある部分をいう。
本明細書において、熔解槽から成形装置に向かって流れる熔融ガラスの上流側とは、注目する位置に対して熔融ガラスをつくる熔解槽の側をいう。また上記熔融ガラスの下流側とは、注目する位置に対して成形装置の側をいう。
本明細書において、処理装置の内部とは、内壁に囲まれた空間をいう。
また、白金族金属の凝集物による異物とは、例えば、一方向に細長い線状の形状をなし、最大長さの最小長さに対する比であるアスペクト比が100を超えるものをいう。例えば、白金族金属の凝集物の最大長さは50μm〜300μm、最小長さは0.5μm〜2μmである。ここで、白金族金属の凝集物の最大長さとは、白金族金属の凝集物を撮影して得られる異物の像に外接する外接長方形のうち最大長辺の長さをいい、最小長さとは、前記外接長方形の最小短辺の長さをいう。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)、清澄工程(ST2)、攪拌工程(ST3)、成形工程(ST4)、徐冷工程(ST5)、および、切断工程(ST6)を主に有する。
熔解工程(ST1)では、ガラス原料を加熱することにより熔融ガラスを作る。熔融ガラスの加熱は、熔融ガラス自身に電気を流して発熱させて加熱する通電加熱により行うことができる。さらに、バーナーの火焔による補助的に加熱しガラス原料を熔解することもできる。
なお、熔融ガラスは、清澄剤を含有する。清澄剤として、酸化錫、亜ヒ酸、アンチモン等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤として酸化錫を用いることが好ましい。
清澄工程(ST2)では、熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が発生する。この泡が清澄剤の還元反応により生じた酸素を吸収して泡の径が拡大し(成長し)、熔融ガラスの液面、すなわち熔融ガラスの自由表面に浮上して破泡して消滅する、すなわち泡中のガスが放出される。その後、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、残存する泡の径が縮小し、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。
なお、清澄工程は、熔融ガラスに存在する泡の径を減圧雰囲気で拡大させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。減圧脱泡方式は、清澄剤を用いない点で有効である。しかし、減圧脱泡方式は装置が複雑化及び大型化する。このため、清澄剤を用い、熔融ガラス温度を上昇させる清澄方法を採用することが好ましい。
攪拌工程(ST3)では、スターラを用いて熔融ガラスを攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。
成形工程(ST4)及び徐冷工程(ST5)は、成形装置で行われる。
成形工程(ST4)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形には、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST5)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST6)では、徐冷後のシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス基板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
(ガラス基板製造装置)
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行うガラス基板製造装置の概略図である。ガラス基板製造装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄管120と、攪拌槽103と、移送管104、105と、ガラス供給管106と、を有する。
図2に示す熔解槽101には、図示されないバーナー等の加熱手段が設けられている。熔解槽には清澄剤が添加されたガラス原料が投入され、熔解工程(ST1)が行われる。熔解槽101で熔融した高温(例えば、1500℃〜1600℃)の熔融ガラスは、移送管104を介して清澄管120に供給される。なお、熔解槽101では、少なくとも1対の電極間に電流を流すことで、電極間の熔融ガラスが通電加熱されてもよく、また、通電加熱に加えてバーナーによる火焔を補助的に与えることで、ガラス原料が加熱されてもよい。
清澄管120では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスの清澄工程(ST2)が行われる。
具体的には、熔解槽101で得られた熔融ガラスは、熔解槽101から移送管104を通過して清澄管120に流入する。清澄管120および移送管104,105及びガラス供給管106は、白金族金属製の管である。清澄管120には、熔解槽101と同様に加熱手段が設けられている。また、少なくとも移送管104にも加熱手段が設けられている。清澄工程ST2では、熔融ガラスを昇温することで熔融ガラスを清澄する。例えば、清澄管120における熔融ガラスの温度は、1600℃〜1720℃である。清澄管120において清澄された熔融ガラスは、清澄管120から移送管105を通過して攪拌装置103に流入する。熔融ガラスは、移送管105を通過する際に冷却される。このように、清澄剤の還元反応により酸素が放出され、この放出される酸素は熔融ガラス中に含まれる気泡に吸収される。酸素を吸収して泡径の増大した気泡は熔融ガラスの表面(液面)に浮上し、破泡して消滅する。次に、熔融ガラスの温度を低下させる。これにより、還元された清澄剤が酸化反応を起こし、熔融ガラスは、熔融ガラス中に残存している酸素を吸収する。
清澄後の熔融ガラスは、移送管105を介して攪拌槽103に供給される。
攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスが攪拌されて攪拌工程(ST3)が行われる。例えば、攪拌装置103において、熔融ガラスの温度は、1250℃〜1450℃である。例えば、攪拌装置103において、熔融ガラスの粘度は、500ポアズ〜1300ポアズである。攪拌槽103で攪拌された熔融ガラスは、ガラス供給管106を介して成形装置200に供給される。熔融ガラスは、移送管106を通過する際に、熔融ガラスの成形に適した粘度となるように冷却される。例えば、熔融ガラスは、1100〜1300℃まで冷却される。 成形装置200では、オーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスからシートガラスが成形され(成形工程ST4)、徐冷される(徐冷工程ST5)。
切断装置300では、シートガラスから切り出された板状のガラス基板が形成される(切断工程ST6)。
清澄管120、攪拌槽103、移送管104、105、および、ガラス供給管106は、内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる。より好ましくは、清澄管120、攪拌槽103、移送管104、105、および、ガラス供給管106は、白金族金属製の管である。なお、本明細書において、「白金族金属」は、白金族元素からなる金属を意味し、単一の白金族元素からなる金属のみならず白金族元素の合金を含む用語として使用する。ここで、白金族元素とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の6元素を指す。白金族金属は高価ではあるが、融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
(ガラス基板の適用例)
ガラス基板の表面にある白金族金属の凝集物は、ガラス基板を用いたパネル製造工程においてガラス基板の表面から離脱すると、離脱した表面の部分が凹部となり、ガラス基板上に形成される薄膜が均一に形成されず、画面の表示欠陥を引き起こすという問題がある。さらに、ガラス基板中に白金族金属の凝集物が存在すると、徐冷工程において、ガラスと白金族金属の熱膨張率差により歪が生じるため、画面の表示欠陥を引き起こすという問題がある。そのため、本実施形態は、画面の表示欠陥に対する要求の厳しいディスプレイ用ガラス基板の製造に好適である。特に、本実施形態は、画面の表示欠陥に対する要求がさらに厳しい、IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)等の酸化物半導体を使用した酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板及びLTPS(低温度ポリシリコン)半導体を使用したLTPSディスプレイ用ガラス基板等の高精細ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
以上のことから、本実施形態のガラス基板の製造方法によって製造されるガラス基板は、アルカリ金属酸化物の含有量が極めて少ないことが求められる液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイ用のガラス基板やフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に好適である。また、酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板又はLTPSディスプレイ用ガラス基板にも好適である。さらに、ディスプレイを保護するカバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板としても、適している。パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板としては、無アルカリガラス、または、アルカリ微量含有ガラスが用いられる。パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板は、高温時における粘性が高い。例えば、102.5ポアズの粘性を有する熔融ガラスの温度は、1500℃以上である。
なお、ディスプレイ用ガラス基板としては、ガラス基板中の白金族金属の凝集物数は1000個/m以下であることが好ましく、100個/m以下であることがより好ましく、50個/m以下であることがさらに好ましい。また、ガラス基板中の泡数は1000個/m以下であることが好ましく、200個/m以下であることがより好ましく、50個/m以下であることがさらに好ましい。このように、ガラス基板中の白金金属凝集物数及び泡数を低減することで、ディスプレイの表示不良数を低減することができ、歩留りを向上させることができる。
(ガラス組成)
熔解槽101では、図示されない加熱手段によりガラス原料が熔解され、熔融ガラスが生成される。ガラス原料は、所望の組成のガラスを実質的に得ることができるように調製される。ガラスの組成の一例として、パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として好適な無アルカリガラスは、SiO2:50質量%〜70質量%、Al23:10質量%〜25質量%、B23:0質量%〜15質量%、MgO:0質量%〜10質量%、CaO:0質量%〜20質量%、SrO:0質量%〜20質量%、BaO:0質量%〜10質量%を含有する。ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。
あるいは、酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板及びLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適なガラス基板は、SiO2:55質量%〜70質量%、Al23:15質量%〜25質量%、B23:0質量%〜10質量%、MgO:0質量%〜10質量%、CaO:0質量%〜20質量%、SrO:0質量%〜20質量%、BaO:0質量%〜10質量%を含有する。ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。このとき、上記ガラス基板は、SiO2を60質量%〜70質量%、BaOを3質量%〜10質量%を含有することがより好ましい。
パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として、無アルカリガラスの他に、アルカリ金属を微量含むアルカリ微量含有ガラスを用いてもよい。ガラス基板のガラスが、酸化錫を含む無アルカリガラス、又は、酸化錫を含むアルカリ微量含有ガラスであると、後述する本実施形態のガラス処理装置の内壁に用いる白金族金属の揮発によって生じる白金族金属の凝集物の異物が熔融ガラスに混入することを抑制する効果は顕著となる。無アルカリガラス又はアルカリ微量含有ガラスは、アルカリガラスと比較してガラス粘度が高い。熔解工程で熔融温度を高くすることにより多くの酸化錫が熔解工程で還元されることから、清澄効果を得るために清澄工程における熔融ガラス温度を高くして、酸化錫の還元を促進し、かつ熔融ガラス粘度を低下させることが必要がある。また、酸化錫は、従来清澄剤として用いられていた亜ヒ酸やアンチモンと比較して還元反応を促進する温度が高いため、熔融ガラスの温度を高くして清澄を促進させるために、清澄管120の内壁の温度を高くする必要がある。つまり、酸化錫を含む無アルカリガラス基板、又は、酸化錫を含むアルカリ微量含有ガラスのガラス基板を製造する場合には、清澄工程における熔融ガラス温度を高くする必要があるので、白金族金属の揮発が生じやすい。
なお、無アルカリガラス基板とは、アルカリ金属酸化物(Li2O、K2O、及びNa2O)を実質的に含有しないガラスである。また、アルカリ微量含有ガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量(Li2O、K2O、及びNa2Oの合量)が0超0.8モル%以下のガラスである。アルカリ微量含有ガラスは、成分として、例えば0.1質量%〜0.5質量%のアルカリ金属酸化物を含み、好ましくは、0.2質量%〜0.5質量%のアルカリ金属酸化物を含む。ここで、アルカリ金属酸化物は、Li2O、Na2OおよびK2Oから選択される少なくとも1種である。アルカリ金属酸化物の含有量の合計は、0.1質量%未満であってもよい。 ガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有量が0〜0.8モル%であっても、後述するような方法によって、熔融ガラス中に白金族金属の凝集物が異物として混入することを抑制することができる。
本実施形態によって製造されるガラス基板は、上記成分に加えて、SnO 0.01質量%〜1質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.5質量%)、Fe 0質量%〜0.2質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.08質量%)をさらに含有してもよい。本実施形態によって製造されるガラス基板は、環境負荷を考慮して、As23、Sb23およびPbOを含有しない、あるいは実質的に含有しないことが好ましい。
また、本実施形態で製造されるガラス基板として、さらに、以下のガラス組成のガラス基板も例示される。したがって、以下のガラス組成をガラス基板が有するようにガラス原料は調合される。
例えば、モル%表示で、SiO2 55〜75モル%、Al23 5〜20モル%、B23 0〜15モル%、RO 5〜20モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)、 R’2O 0〜0.4モル%(R’はLi2O、K2O、及びNa2Oの合量)、SnO2 0.01〜0.4モル%、含有する。 このとき、SiO2、Al23、B23、及びRO(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaのうち前記ガラス基板に含有される全元素)の少なくともいずれかを含み、モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.0以上であってもよい。モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.0以上であるガラスは、高温粘性の高いガラスの一例である。高温粘性の高いガラスは、一般的に清澄工程における熔融ガラス温度を高くする必要があるので、白金族金属の揮発が生じやすい。つまり、このような組成を有するガラス基板を製造する場合には、後述する本実施形態の効果、すなわち熔融ガラス中に白金族金属の凝集物が異物として混入することを抑制するといった効果は顕著になる。なお、高温粘性とは、熔融ガラスが高温になるときのガラスの粘性を示し、ここでいう高温とは、例えば、1300℃以上を示す。
本実施形態で用いる熔融ガラスは、粘度が102.5ポアズであるときの温度は1500〜1700℃であるガラス組成であってもよい。このようなガラスは高温粘性の高いガラスであり、高温粘性の高いガラスは、一般的に清澄工程における熔融ガラス温度を高くする必要があるので、白金族金属の揮発が生じやすい。すなわち、高温粘性の高いガラス組成であっても、後述する本実施形態の効果、すなわち、熔融ガラス中に白金族金属の凝集物が異物として混入することを抑制する効果は顕著になる。
本実施形態で用いる熔融ガラスの歪点は650℃以上であってもよく、660℃以上であることがより好ましく、690℃以上であることがさらに好ましく、730℃以上が特に好ましい。また、歪点が高いガラスは、粘度が102.5ポアズにおける熔融ガラスの温度が高くなる傾向にある。つまり、歪点が高いガラス基板を製造する場合ほど、後述する本実施形態の効果、すなわち熔融ガラス中に白金族金属の凝集物が異物として混入することを抑制する効果は顕著になる。また、歪点が高いガラスほど、高精細ディスプレイに使用されるため、白金族金属の凝集物が異物として混入する問題に対する要求が厳しい。そのため、高歪点のガラス基板ほど、白金族金属の凝集物が異物混入を抑制できる本実施形態が好適となる。
また、酸化錫を含み、粘度が102.5ポアズであるときの熔融ガラスの温度が1500℃以上となるガラスになるようにガラス原料を熔解した場合、より本実施形態の上記効果は顕著になり、粘度が102.5ポアズであるときの熔融ガラスの温度は、例えば1500℃〜1700℃であり、1550℃〜1650℃であってもよい。
熔融ガラスに含まれる清澄剤、例えば酸化錫の含有量が変化すれば、熔融ガラスから気相空間に放出される酸素の放出量も変化する。白金族金属の揮発を抑制する点から、気相空間における酸素濃度は、酸化錫の含有量によって制御(調整)されることが好ましい。したがって白金または白金合金等の揮発を抑制する点から、酸化錫の含有量は制限され、0.01〜0.3モル%、好ましくは0.03〜0.2モルであることが好ましい。酸化錫の含有量が多いと酸化錫の2次結晶が熔融ガラス中で発生する問題が生じるので好ましくない。また、酸化錫の含有量が多すぎると、熔融ガラスから気相空間に放出される酸素が増加し、気相空間の酸素濃度が上昇し過ぎてしまい、処理装置からの白金族金属の揮発量が増加してしまうという問題が生ずる。酸化錫の含有量が少なすぎると熔融ガラスの泡の脱泡が十分でない。
(第1の実施形態の清澄管の構成)
次に、図3、図4を参照して、第1の実施形態にかかる清澄管120の構成について説明する。図3は、第1の実施の形態の清澄管120の構成を示す概略図であり、図4は清澄管120の長手方向における鉛直断面図である。
図3、図4に示すように、清澄管120の長さ方向の両端の外周面には、電極121a、121bが設けられており、清澄管120の気相空間と接する壁には、排気管127が設けられている。すなわち、本実施形態の清澄工程は、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程であり、この清澄工程では、内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部において、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように熔融ガラスが供給される。そして、清澄管120では、熔融ガラスが、清澄管120の長手方向に流れる。
なお、清澄管120の外部には、図示されない断熱材(例えば、耐火レンガ、耐火断熱レンガ等)が設けられていてもよい。
清澄管120は、電極121a、121bおよび排気管127は、上記の白金族金属から構成されている。
なお、本実施例では、清澄管120が白金族金属から構成されている場合を具体例として説明するが、清澄管120の一部が、耐火物や他の金属などから構成されていてもよい。
電極121a、121bは、電源装置122に接続されている。電極121a、121bの間に電圧が印加されることにより、電極121a、121bの間の清澄管120に電流が流れて、清澄管120が通電加熱される。この通電加熱により、清澄管120の本体の最高温度が例えば、1600℃〜1750℃、より好ましくは1630℃〜1750℃となるように加熱され、移送管104から供給された熔融ガラスの最高温度は、脱泡に適した温度、例えば、1600℃〜1720℃、より好ましくは1620℃〜1720℃に加熱される。
また、通電加熱によって熔融ガラスの温度を制御することで、熔融ガラスの粘度を調節し、これにより清澄管120を通過する熔融ガラスの流速を調節することができる。
また、電極121a、121bには、図示しない温度計測装置(熱電対等)が設けられていてもよい。温度計測装置は電極121a、121bの温度を計測し、計測した結果を、制御装置123に出力する。
制御装置123は電源装置122が清澄管120に通電させる電流量を制御し、これにより清澄管120を通過する熔融ガラスの温度および流速を制御する。制御装置123は、CPU、メモリ等を含むコンピュータである。
図3、図4に示すように、電極121aには、清澄管120内の気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)の上方の気相空間120aにパージガスを供給するためのパージガス供給管124aが設けられていてもよい。同様に、電極121bには、清澄管120内の気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)の上方の気相空間120aにパージガスを供給するためのパージガス供給管124bが設けられていてもよい。
本実施形態において、パージガス供給管124aはパージガス供給装置125aと接続され、パージガス供給装置125aからパージガス供給管124aを介して清澄管120内の気相空間120aに、熔融ガラスの上流側からパージガスが供給される。同様に、パージガス供給管124bはパージガス供給装置125bと接続され、パージガス供給装置125bからパージガス供給管124bを介して清澄管120内の気相空間120aに、熔融ガラスの下流側からパージガスが供給される。ここで、上流側及び下流側とは、熔融ガラスが流れる方向の気相空間120aの中央位置に対して上流側及び下流側を意味する。
パージガス供給管124a、124bの内径を調節することで、パージガス供給管124a、124bから供給されるパージガスの量を調節することができる。
パージガスとして、白金にとって不活性な気体、白金族金属との反応性が酸素よりも低い気体を用いることができる。具体的には、窒素(N)、希ガス(例えばアルゴン(Ar))等を用いることができる。なお、図4ではパージガスとして窒素を例に挙げて記載している。
パージガス供給装置125a、125bは制御装置123により制御され、パージガスの供給量、供給圧力が調整される。
清澄管120の気相空間と接する壁には、排気管127が設けられている。排気管127は気相空間120aの上部に設けられている。排気管127は、清澄管120における熔融ガラスの流れ方向の上流側端部と下流側端部の間の位置に設けられていることが好ましい。排気管127は、清澄管120の本体外壁面から外側に向かって煙突状に突出する形状であってもよい。排気管127は、気相空間120a(図4参照)と、清澄管120の外部空間とを連通している。
排気管127には、酸素濃度計128が設けられている。酸素濃度計128は排気管127を通過する気体の量および酸素濃度を計測し、その計測信号を制御装置123に出力する。酸素濃度計128は、特に制限されず、公知の酸素濃度計が用いられる。
本実施形態においては、例えば、清澄剤の含有量、熔融ガラスの温度、熔融ガラスの粘度、ガラス原料の種類、熔融ガラスの温度履歴の1つ又はその組み合わせを調整することによって、熔融ガラスから放出される酸素量が制御されている。放出される酸素量の制御は、以下説明するような清澄剤の含有量、熔融ガラスの温度および粘度、ガラス原料の種類、及び熔融ガラスの温度履歴、の少なくとも1つの調整によって行なわれる。
(清澄剤の含有量)
例えば、清澄剤の含有量が増加すれば、清澄管120において気相空間120aに放出される酸素量が増加する。一方、清澄剤の含有量を減らせば熔融ガラスから放出される酸素量を低減することができる。
なお、清澄剤の量が少なすぎると熔融ガラスに残存する気泡を十分に低減することができなくなる。そのため、清澄剤の含有量は、例えば酸化錫であれば0.01モル%〜0.3モル%、好ましくは、0.03モル%〜0.2モル%、あるいは0.01〜0.5質量%であることが好ましい。つまり、本実施形態では、ガラス基板の酸化錫の含有量を0.01モル%〜0.3モル%の範囲で調整し、気相空間の酸素濃度を調整することで、清澄剤による泡低減と白金族金属の揮発抑制を両立する。
(熔融ガラスの温度および粘度)
熔融ガラスの温度は、清澄管120の温度により調整することができる。熔融ガラスの温度を上昇させると、清澄剤の還元反応により熔融ガラスから放出される酸素の量が増加する。熔融ガラスの温度が低いと酸素の発生量が少なく、清澄効果を十分に得ることができない。また、熔融ガラスの温度が低いと熔融ガラス粘度が大きくなり、気泡の浮上速度が遅くなる。このため、熔融ガラス中の気泡を気相空間120aが放出されなくなり、清澄を十分に行えなくなる。
一方、熔融ガラスの温度を上げるために清澄管120の温度を上げると、白金族金属の揮発の問題が生じる。そこで、白金族金属の揮発を抑制しつつ気泡の発生を維持するために、清澄管120の温度は、例えば1600〜1750℃となるように制御される。これにより、清澄管120内の熔融ガラスの最高温度は、1630℃〜1750℃、好ましくは1650℃〜1750℃となる。このとき、熔融ガラスの最小粘度は、200〜800ポアズとなる。つまり、本実施形態では、清澄工程における清澄管の最高温度を1600℃〜1750℃の範囲で調整し、気相空間の酸素濃度を調整することで、清澄剤による泡低減と白金族金属の揮発抑制を両立することができる。
(ガラス原料の種類)
ガラス原料に含まれる酸化物の量によって熔融ガラス中に含有される酸素量が変化する。このため、ガラス原料の種類および量を調整することで、具体的には、ガラス原料に含まれる酸化物の量を調整することで、清澄管120内の気相空間120aに放出される酸素量を調整することができる。
(熔融ガラスの温度履歴)
清澄工程よりも前の工程(熔解工程)でも清澄剤の還元反応が生じ、熔融ガラスから酸素が放出されることがあるため、清澄工程よりも前の工程(熔解工程)で熔融ガラスから放出される酸素量によって、清澄管120内の気相空間120aに放出される酸素量が変化する。このため、熔解槽101における熔解温度等によって清澄管120内の気相空間120aに放出される酸素量を調整することができる。具体的には、熔解工程での温低いほど、熔解工程における清澄剤の還元反応が減少し、熔解工程における熔融ガラスからの酸素放出量が減少するので、清澄管120内の気相空間120aに放出される酸素量が増加する。しかし、熔解工程での熔融温度が低すぎるとガラス原料を十分に熔解できないという問題が生じ、熔解工程での熔融ガラス温度が高すぎると清澄剤の還元反応が増加しすぎてしまい、結果的に清澄工程における清澄効果を十分に得られないという問題が生じる。そのため、例えば、熔解工程における熔融ガラス温度の最高温度を1500℃〜1610℃の範囲で調整し、清澄管120内の気相空間の酸素濃度を調整することで、ガラス原料の十分な熔解と清澄管120の壁を構成する白金族金属の揮発抑制を両立することができる。
また、熔解工程の後の熔融ガラスの昇温速度によっても清澄剤の還元反応量が変化する。具体的には、熔解工程の後の熔融ガラスの昇温速度が速いほど清澄剤の還元反応は促進される。しかし、昇温速度が速すぎると移送管104や清澄管120の温度が高くなり過ぎてしまい、移送管104や清澄管120の熔損や移送管104や清澄管120の白金族金属の揮発が増加するという問題が生じ、昇温速度が遅すぎると清澄工程における清澄効果を十分に得られないという問題が生じる。そのため、例えば、移送管104において熔融ガラス温度を1630℃以上に昇温させる場合、移送管における熔融ガラスの昇温速度を、3℃/分〜20℃/分の範囲で調整し、の昇温速度で前記熔融ガラスの温度を1630℃以上に昇温させる清澄管120内の気相空間の酸素濃度を調整することで、清澄剤による泡低減と白金族金属の揮発抑制を両立することができる。より好ましくは、3℃/分〜10℃/分の昇温速度で熔融ガラスの温度を1630℃以上に昇温させるという範囲で昇温速度及び熔融ガラス温度を調整することが好ましい。
白金族金属の揮発を抑えるために、気相空間120aの酸素濃度は0〜10%となるように調整することが好ましい。なお、気相空間120aの酸素濃度を0%にすれば、白金族金属の揮発を抑えられるので、白金族金属の揮発を抑える点からは、酸素濃度を0%にすることが好ましい。しかし、気相空間120aの酸素濃度を常に0%とするには、清澄剤の含有量を極めて減らすことや、コストがかかるという問題があるため、清澄又は低コストと白金族金属の揮発の抑制とを実現するためには、気相空間120aの酸素濃度は、0.01%以上となるように調節することが好ましい。また、気相空間120aの酸素濃度は、10%以下となるように調節することが好ましい。白金族金属の揮発抑制と泡数低減を両立するためには、酸素濃度は、0.1%以上3.0%以下の範囲となるように調節することが好ましく、0.1%以上1.0%以下の範囲となるように調整することがより好ましく、0.3%以上0.7%以下の範囲となるように調整することがさらに好ましい。ここで、気相空間の酸素濃度が小さくなり過ぎると、熔融ガラスと気相空間の酸素濃度差が大きくなることで熔融ガラスから気相空間120aに放出される酸素が増加し、熔融ガラスが還元され過ぎてしまうことで、結果的に成形後のガラス基板に硫黄酸化物や窒素等の気泡が残存するおそれがある。一方、酸素濃度が大きすぎると、白金族金属の揮発が促進され、揮発した白金族金属の析出量が増大するおそれがある。また、気相空間の酸素濃度が大きすぎると、熔融ガラスと気相空間の酸素濃度差が小さくなり過ぎてしまい、熔融ガラスから気相空間120aに酸素が放出され難くなるため、結果的にガラス基板に酸素等の気泡が残存する量が増加する。
また、本実施形態においては、熔融ガラスの温度分布や、熔融ガラスの流速、清澄剤の含有量を調整することによって、清澄管120の長手方向の位置における熔融ガラスから放出される酸素量の分布、気相空間と接する熔融ガラスの液面(液面)から気相空間に放出される酸素の放出量が最大となる熔融ガラスの流れ方向の位置(酸素放出量最大位置)を調整することもできる。これにより、気相空間120aにおける酸素濃度の分布を制御することができる。
酸素放出量最大位置は、本実施形態においては、熔融ガラスの温度が最高となる熔融ガラスの流れ方向における位置(最高温度位置)から、熔融ガラスの流れ方向において離間するように、調整されている。
なお、白金族金属の揮発は、温度が高いほど促進される。このため、最高温度位置は、白金族金属が最も盛んに揮発し易い温度条件となっている。また、酸素の含有量が多い雰囲気ほど白金族金属の揮発は盛んになる。
したがって、酸素放出量最大位置と最高温度位置とが、熔融ガラスの流れ方向において離間するように、酸素放出量最大位置を調整することにより、酸素放出量最大位置において気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)から放出された泡中の酸素が最高温度位置に流れることは少なくなる。このため、清澄管120の壁から白金族金属が盛んに揮発する最高温度位置に、熔融ガラスの脱泡により放出された酸素が流れ込んで、白金族金属の揮発を促進する場合に比べて、最高温度位置における白金族金属の揮発は低減する。このため、白金族金属の揮発物が、清澄管120の壁に凝集して凝集物をつくり、この凝集物の一部が微粒子として離脱して熔融ガラスに異物が混入することを抑制することができる。以下この点を説明する。
図5は、清澄管120の長手方向における位置(熔融ガラスの流れ方向の位置)と、清澄管120の上端部の温度、および、酸素放出量との関係を示す図である。図5において、横軸は、熔融ガラスの流れ方向の位置、すなわち清澄管120の長手方向の位置を表し、左側の縦軸は、清澄管120の温度を表し、右側の縦軸は酸素放出量を表す。
図5の実線の曲線は長手方向における位置と清澄管120の温度との関係を示している。本実施形態の清澄管120では、電極121a、121bがフランジ形状であり、高い放熱機能を有するので、清澄管120の両端近傍の温度は、局所的に低温になり易い。また、排気管127も、清澄管120から突出しているので、清澄管120の排気管127近傍の温度も、局所的に低温になり易い。このため、清澄管120の壁の温度は、熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化する。
例えば、清澄管120の両端近傍(すなわち、電極121a、121bの近傍)及び排気管127の近傍は、熔融ガラスの流れ方向の位置において低温の領域となる。一方、排気管127と電極121a、121bとの間の中間部分は、熔融ガラスの流れ方向の位置において高温の領域となる。このような清澄管120の温度分布における最低温度は、電極121a、121bによる清澄管120の通電加熱により、例えば1500℃以上の高温になる。
図5は、清澄管120の温度分布の一例を示す。この温度分布では、温度が最高温度Tmax℃になる長手方向における位置(最高温度位置)をPで表している。
ここで、最高温度位置は、位置Pに限定されず、位置P周りの許容範囲を有する。最高温度位置の許容範囲は、好ましくは、(Tmax−20)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域であり、さらに好ましくは、(Tmax−10)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域であり、特に好ましくは、(Tmax−5)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域である。以降、許容範囲を有する最高温度位置を最高温度位置範囲Rという。図5では最高温度位置範囲Rを(Tmax−20)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域で示している。
一方、図5の一点鎖線の曲線は長手方向における位置と酸素放出量との関係を示している。熔融ガラスが清澄管120内で加熱されると、熔融ガラス内の清澄剤の還元反応により酸素が熔融ガラス中へ放出される。この酸素の放出は急激に発生する。放出された酸素は、熔融ガラス中の気泡に吸収されて気泡の径が拡大し(気泡が成長し)、あるいは、熔融ガラス中の気泡となって熔融ガラス中の既存の気泡を吸収して気泡の径が拡大し(気泡が成長し)、熔融ガラスの粘性に打ち勝って気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)に向かって浮上を開始する。このとき熔融ガラスの表面(液面)から放出される酸素の放出量が最大となる清澄管120の長手方向の位置(酸素放出量最大位置)Aは、上記最高温度位置範囲Rと、清澄管120の長手方向(熔融ガラスの流れ方向)において離間するように調整されている。具体的には、酸素放出量最大位置Aが、最高温度位置範囲Rに対して、熔融ガラスの流れの下流側に位置するように調整されていることが好ましい。
一般に、酸素を放出する清澄剤の還元反応は熔融ガラスの温度が高くなるほど活発になり、熔融ガラスの温度が高い領域ほど、熔融ガラスの粘度が小さくなるほど、熔融ガラスの浮上速度は速くなる。また、熔融ガラスと接する内壁の温度が高い領域ほど、熔融ガラスの温度は高くなり、したがって、熔融ガラスからの泡の放出は活発になる。このため、一般的には、酸素放出量最大位置Aと、最高温度位置範囲Rは略一致している。しかし、本実施形態では、上述したように酸素放出量最大位置Aが最高温度位置範囲Rに対して離間するように、酸素放出量最大位置Aは調整されている。
なお、コンピュータシミュレーションを利用して、酸素放出量及び酸素放出量の分布を求めることができる。例えば、予め実験等により、酸素放出量の上限及び下限、及び酸素放出量の分布を定める。酸素放出量が増大することで気相空間の酸素濃度が上昇して白金族金属の揮発が促進することを抑制するために酸素放出量の上限は設定され、酸素放出量が減ることで、熔融ガラス中の泡の径が増大せず泡の浮上速度が増大せず、脱泡効果が低いことが生じないように酸素放出量の下限が設定される。また、効率のよい脱泡と白金族金属の揮発を抑制するのに適した酸素放出量の分布においても、上記の上限と下限の間で定める。このような酸素放出量が上記上限と下限の間に位置するような目標酸素放出量及び目標酸素放出量の分布が実現するように、コンピュータシミュレーションを利用して、清澄条件を抽出することができる。清澄条件には、例えば、清澄剤の含有量、熔融ガラスの温度、熔融ガラスの粘度、ガラス原料の種類、及び、熔融ガラスの温度履歴、の1つあるいはこれらの組み合わせが含まれる。
コンピュータシミュレーションでは、例えば清澄管120と、その周りに設けられる図示されない断熱材と、清澄管120の通電加熱と、をモデル化して熱伝導シミュレーションを行うとともに、このシミュレーション結果である熔融ガラスの温度及び温度分布の計算結果を用いて、予め定められている熔融ガラスの温度と清澄剤の酸素の放出量の対応関係を用いて清澄剤の酸素の放出量及び放出量の分布を定めることで、熔融ガラス中の還元反応をシミュレーションし、さらに、熔融ガラス中に予め定めた泡が酸素を吸収して泡の径が拡大することと径の拡大した泡の浮上をシミュレーションすることにより、酸素放出量及びその分布を予測することができる。
さらに、清澄管120と、その周りに設けられる図示されない断熱材と、清澄管120の通電加熱と、をモデル化して熱伝導シミュレーションを行うとともに、このシミュレーション結果である熔融ガラスの温度の計算値を用いて、予め定められている熔融ガラスの温度と清澄剤の酸素の放出量の対応関係を用いて清澄剤の酸素の放出量を定め所定のサイズの泡を発生させることで、熔融ガラス中の酸化還元反応をシミュレーションし、さらに、熔融ガラス中に予め定めた泡が酸素を吸収して泡の径が拡大することと径の拡大した泡の浮上をシミュレーションすることにより、酸素放出量最大位置Aを予測することができる。この場合、酸素の全体の放出量も予測することができる。このようなシミュレーションは、公知のシミュレーションプログラム等を用いてコンピュータ上で実行することができる。そして、酸素放出量最大位置Aが最高温度位置範囲Rと熔融ガラスの流れ方向において離間するように、コンピュータシミュレーションを用いて清澄条件を決定することができる。
ここで、酸素放出量最大位置Aは、清澄管120内を流れる熔融ガラスの温度分布、熔融ガラスの流速、清澄剤の含有量および種類の少なくともいずれか1つの調整によって行うことができる。熔融ガラスの温度分布は、清澄剤から放出される酸素の量及び酸素の放出開始位置、さらには、熔融ガラス中の泡の浮上速度に影響を与える。熔融ガラスの温度分布は、例えば、加熱電極121bの通電加熱における清澄管120の加熱量によって、あるいは、清澄管120の周上の電流分布の調整によって調整することができる。また、熔融ガラスの温度分布は、例えば、清澄管120の外周から外側に向かう放熱量の調整によって調整することができる。放熱量の調整は、清澄管120の外周を囲む断熱材の断熱特性(熱伝導率等)や熱抵抗(=(断熱材の厚さ)/熱伝導率)を調整することにより行われる。このような調整パラメータを変更して、コンピュータシミュレーションを用いて酸素放出量最大位置Aを調整することができる。
熔融ガラスの流速は、熔融ガラス中における酸素の放出開始位置から熔融ガラスの表面(液面)における酸素の放出位置までの距離に影響を与える。熔融ガラスの流速の調整は、例えば、清澄管120の熔融ガラスの流出口近傍における熔融ガラスの温度(粘度)あるいは、成形装置200等の後工程に位置する装置による熔融ガラスの引き出し量によって調整することができる。このような調整パラメータを変更して、コンピュータシミュレーションを用いて酸素放出量最大位置Aを調整することができる。
実際にガラス基板を製造するとき、コンピュータシミュレーションで調整した酸素放出量最大位置Aが所望の位置になるときの上記調整パラメータの各値(清澄条件)を用いる。
本実施形態では、清澄管120に、気相空間120aと清澄管120の外側の大気を連通する排気管127が設けられている。熔融ガラスの流れ方向における排気管127の配置位置は、酸素放出量最大位置Aと最高温度位置範囲Rとの間であることが好ましい。このように排気管127の配置位置を定めることにより、気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)から酸素を含んだ泡が多量に放出される酸素放出量最大位置Aでは、表面から放出された泡中の酸素が、気流によって最高温度位置範囲Rに流れる前に、酸素の大部分は排気管127から清澄管120aの外側に放出される。このため、酸素放出量最大位置Aで放出された泡中の酸素が最高温度位置範囲Rに流れる可能性は低く、最高温度位置範囲Rにおける白金族金属の揮発を低減することができる。
酸素放出量最大位置Aおよび排気管127はいずれも最高温度位置範囲R(最高温度位置Pを含む)に対して同じ側にあることが好ましい。すなわち、酸素放出量最大位置Aおよび排気管127は、いずれも熔融ガラスの流れ方向において最高温度位置範囲Rよりも上流側にあるか、いずれも最高温度位置範囲Rよりも下流側にあることが好ましい。この場合において、酸素放出量最大位置Aで放出された泡中の酸素が最高温度位置範囲Rに流れる可能性は低く、最高温度位置範囲Rにおける白金族金属の揮発を低減することができる。
例えば、熔融ガラスの上流側から最高温度位置範囲R、酸素放出量最大位置A、及び排気管127の順に配置してもよい。この場合、酸素放出量最大位置Aで放出された酸素は、排気管127の方向に流れるので、酸素放出量最大位置Aで放出された酸素は、熔融ガラスの最高温度位置範囲R近傍の気相空間120aの温度の高い雰囲気に流れ難い。
特に、熔融ガラスの上流側から最高温度位置範囲R、排気管127の配置位置、酸素放出量最大位置Aの順に配置することが好ましい。
また、酸素放出量最大位置Aと、排気管127の配置位置は、熔融ガラスの流れ方向において同一の位置とすることもできる。酸素放出量最大位置Aと排気管127の配置位置を、熔融ガラスの流れ方向において同一の位置とすることにより、酸素放出量最大位置Aで熔融ガラスの表面(液面)から放出された酸素を上方に位置する排気管127を経由して清澄管120の外側に放出することができる。この場合、酸素放出量最大位置Aで熔融ガラスの表面から放出された酸素は、気相空間120a内に拡散することなく、また、気相空間120a内を流れることなく、排気管127に向かう。このため、酸素放出量最大位置Aで熔融ガラスの表面(液面)から放出された酸素は、白金族金属の揮発に用いられることはほとんど無くなる。なお、酸素放出量最大位置Aと排気管127の配置位置を熔融ガラスの流れ方向において同一の位置にするとは、熔融ガラスの流れ方向において、排気管127の中心位置を中心とする排気管127の管直径の寸法の範囲内の領域に酸素放出量最大位置Aがあることをいう。また、酸素放出量最大位置Aについて酸素放出量最大位置Aの許容範囲が定められている場合、この許容範囲が、上記管直径の寸法の範囲内の領域と一部が重なっていればよい。
本実施形態では、清澄管120の外周には、清澄管120の外側に延びるフランジ形状の部材(例えば電極121a、121b等)が設けられる。フランジ形状の部材は、熔融ガラスの流れ方向において、酸素放出量最大位置Aと排気管127の位置との間の領域以外の領域にあることが好ましい。すなわち、フランジ形状の部材は、酸素放出量最大位置Aおよび排気管127の位置よりも熔融ガラスの上流側、または、酸素放出量最大位置Aおよび排気管127の位置よりも熔融ガラスの下流側にあることが好ましい。フランジ形状の部材から外部への放熱量が大きいため、清澄管120のフランジ形状の部材が設けられる部分の近傍は、局所的に温度が低くなる。この場合、気相空間120a内の白金族金属の揮発物が、フランジ形状の部材の近傍を通過することで冷却されて還元され、還元された白金族金属が清澄管120の内壁面に凝集する場合がある。このため、酸素放出量最大位置Aと排気管127の配置位置との間の領域には、フランジ形状の部材が配置されていないことが好ましい。
また、本実施形態においては、気相空間120aの上部に設けられた排気管127より排出される酸素の量が調整されている。
排気管127より排出される酸素の量は、排気管127から排出される気体の酸素濃度を酸素濃度計128により計測するとともに、排気管127から排出される気体の全量を計測することで、算出することができる。酸素濃度計128により計測される酸素濃度に応じて排気管127から排出される気体の全量を調節することで、排出される酸素の量を調整することができる。
例えば、排気管127に気相空間120a内の気体を吸引する吸引装置を設け、吸引装置の出力を調整することで排気管127から排出される気体の全量を調整することができる。また、図4に示すように、気相空間120aにパージガスを供給する場合、吸引装置を制御することで、気相空間120aに供給されるパージガスの量を調節してもよい。
本実施形態においては、熔融ガラスから放出される酸素の量を調整するとともに、気相空間120aの上部に設けられた排気管127より排出される酸素の量を調整することで、気相空間120aの酸素濃度が所定の範囲となるように調整されている。これにより、白金族金属が酸化されて揮発することを抑制し、揮発した白金族金属が還元されることによる白金族金属の析出量を低減することができる。清澄剤として酸化錫を用いる場合、As23、Sb23を用いる場合と比較して、酸化錫が清澄効果を発揮する温度域は高く、白金族金属の揮発が顕著となるため、本実施形態の効果は特に有効である。
なお、本実施形態では、清澄管120内の気相空間120aにパージガス供給管124aおよびパージガス供給管124bからパージガスを供給することで、清澄管120内の熔融ガラスから放出される酸素を排出し、気相空間120aの酸素濃度を低下させることができる。この際、酸素濃度計128により計測される酸素濃度に応じてパージガスの供給量を調節することで、気相空間120aの酸素濃度が所定の範囲となるように調節することができる。これにより、白金族金属が酸化されて揮発することを抑制し、揮発した白金族金属が還元されることによる白金族金属の析出量を低減することができる。
本実施形態においては、排気管127から排出される気体の量を計測するとともに、酸素濃度を酸素濃度計128により計測し、排気管127から排出される酸素量(=排気管127から排出される気体の全量×酸素濃度)が所定の範囲となるように、パージガスの供給量が調節される。すなわち、酸素濃度計128により計測された排気管127からの全排気量および排気中の酸素濃度の信号が制御装置123に出力され、制御装置123は酸素濃度計128からの信号に応じてパージガス供給装置125a、125bを制御し、パージガスの供給量、供給圧力を調整する。
清澄管120内の熔融ガラスから放出される酸素の量は、本実施形態では、熔融ガラスの上流側のほうが下流側よりも多くなるように調整されているため、熔融ガラスの上流側から供給されるパージガスを、熔融ガラスの下流側から供給されるパージガスよりも多くすることが好ましい。すなわち、パージガス供給管124aから供給されるパージガスの量を、パージガス供給管124bから供給されるパージガスの量よりも多くすることが好ましい。パージガス供給管124aから供給されるパージガスの量をパージガス供給管124bから供給されるパージガスの量よりも多くすることで、熔融ガラスから放出される酸素をより効率的にパージガスで希釈して排出することができる。
なお、排気管127に、気相空間120a内の気体を吸引する吸引装置を設けてもよい。吸引装置により排気管127側を減圧(例えば気相空間120a内の圧力よりも10Pa程度減圧)することで、気相空間120a内の酸素およびパージガスを効率的に排出することができる。また、吸引装置を制御することで気相空間120aに供給されるパージガスの量を調節してもよい。
(第2の実施形態の清澄管の構成)
次に、第2の実施形態の清澄管120の構成について詳細に説明する。なお、清澄装置は、清澄管120の他に、排気管(通気管)127、電極121a、121b、及び、清澄管120の外周を囲む図示されない耐火物保護層及び耐火物レンガを含む。図6は、清澄管120を主に表す外観図である。図7は、清澄管120の内部を表す断面図と清澄管の温度分布の一例を示す図である。
清澄管120には、排気管(通気管)127、および、一対の電極121a、121bが取り付けられている。清澄管120の内部では、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスの清澄工程が行なわれる。この清澄工程では、内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる清澄管120の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、かつ、清澄管120において熔融ガラスを、熔融ガラスの気相空間と接する表面に沿った方向、具体的には、清澄管120の長手方向に流す。気相空間は、熔融ガラスの流れの方向に沿って形成されている。気相空間を囲む内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成されている。本実施形態では、気相空間を囲む壁全体が白金族金属を含む材料で構成されている。
排気管(通気管)127は、熔融ガラスが流れる方向の途中であり、気相空間と接する内壁に設けられ、気相空間と清澄管120の外側の大気とを連通させる。排気管(通気管)127は、清澄管120と同様に、白金族金属で成形されることが好ましい。排気管(通気管)127は放熱機能により、排気管(通気管)127の温度が低下し易いので、排気管(通気管)127を加熱するための加熱機構を設けてもよい。
一対の電極121a、121bは、清澄管120の両端に設けられたフランジ形状の電極板である。電極121a、121bは、図示されない電源から供給される電流を清澄管120に流し、この電流により、清澄管120は通電加熱される。清澄剤として酸化錫を用いる場合、例えば清澄管120は最高温度が1600℃〜1750℃、より好ましくは1630℃〜1750℃となるように加熱され、熔融ガラスは最高温度が酸化錫の還元反応が起こる温度、例えば1600℃〜1720℃、より好ましくは1620℃〜1720℃に加熱される。清澄管120を流れる電流を制御することで、清澄管120の内部を流れる熔融ガラスの温度を制御することができる。このように、清澄管120の内部を通過する熔融ガラスが加熱されて清澄される。電極121a、121bは清澄管120に一対設けられるが、電極の数は特に制限されない。電極121a、121bによる通電加熱により、清澄管120の気相空間と接する内壁の温度は、例えば1500〜1750℃の範囲にある。
清澄管120の内部では、熔融ガラスに添加されている清澄剤、例えば酸化錫の酸化還元反応によって、熔融ガラスに含まれるCO2またはSO2を含む泡が除去される。具体的には、最初に、熔融ガラスの温度を上げて、清澄剤を還元させることにより、酸素の泡を熔融ガラス中に発生させる。熔融ガラス中に含まれるCO2、N2、SO2等の気体成分を含む泡は、清澄剤の還元反応によって生じた酸素を吸収する。酸素を吸収して泡の径が拡大した(成長した)泡は、気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)に浮上し泡を放出する、すなわち破泡して消滅する。消滅した泡に含まれていたガスは、気相空間に放出され、排気管127を経由して清澄管120の外部に排出される。次に、熔融ガラスの温度を下げて、還元された清澄剤を酸化させる。これにより、熔融ガラス中に残留している泡の酸素が熔融ガラスに溶けこみ吸収される(吸収処理)。これにより、残存する泡は小さくなり、消滅する。このように、清澄剤の酸化還元反応によって、熔融ガラスに含まれる泡が除去される。
図示されていないが、清澄管120の外壁面には耐火物保護層が設けられる。耐火物保護層の外側には、さらに、耐火物レンガが設けられる。耐火物レンガは、基台(図示せず)に載置されている。
このような清澄管120において、清澄管120のうち気相空間と接する壁の温度は、熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有する。そして、熔融ガラスの脱泡を行うとき、気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)から気相空間に放出される泡の放出量が最大となる熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と熔融ガラスの流れ方向における温度分布の最高温度位置とが、熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整されている。
なお、白金族金属は、内壁の温度が高いほど揮発は促進する。このため、最高温度位置は、白金族金属が最も盛んに揮発し易い温度条件となっている。また、酸素の含有量が多い雰囲気ほど白金族金属の揮発は盛んになる。
したがって、前記泡放出量最大位置と前記最高温度位置とが、熔融ガラスの流れ方向において離間するように、泡放出量最大位置を調整することにより、泡放出量最大位置において熔融ガラスの表面(液面)から放出された泡中の酸素が最高温度位置に流れることは少なくなる。このため、清澄管120の壁から白金族金属が盛んに揮発する最高温度位置に、熔融ガラスの脱泡により放出された酸素が流れ込んで、白金族金属の揮発を促進する場合に比べて、最高温度位置における白金族金属の揮発は低減する。このため、白金族金属の揮発物が、清澄管120の壁に凝集して凝集物をつくり、この凝集物の一部が微粒子として離脱して熔融ガラスに異物が混入することを抑制することができる。以下この点を説明する。
図7は、清澄管120の断面と、清澄管120の壁の温度分布との位置関係を表す図である。図7の上段は、清澄管120の断面図である。図7の下段は、清澄管120の気相空間と接する内壁の温度分布を表すグラフである。清澄管120の気相空間と接する内壁の温度分布を表すグラフにおいて、横軸は、熔融ガラスの流れ方向の位置、すなわち清澄管120の長手方向の位置を表し、縦軸は、清澄管120の気相空間と接する内壁の温度を表す。
本実施形態の清澄管120では、フランジ形状を有する電極(フランジ部材)121a、121bは、高い放熱機能を有するので、清澄管120の両端近傍の壁は、その内壁の熔融ガラスの流れ方向(X方向:清澄管120の長手方向)に沿った周辺の内壁(気相空間と接する清澄管120の内壁)の部分に比べて低温になり易い。また、排気管127も、清澄管120から突出しているので、排気管127近傍の気相空間と接する清澄管120の内壁も、その内壁のX方向に沿った周辺の内壁(気相空間と接する清澄管120の内壁)の部分に比べて低温になり易い。このため、気相空間と接する清澄管120の内壁の温度は、X方向に沿って温度分布を持つ。清澄管120の両端近傍、すなわち、一対の電極121a、121bの端近傍の内壁及び排気管127の近傍の壁は、X方向において温度が低い低温領域となり、排気管127と電極121a、121bとの間の中間部分は、X方向において温度が高い高温領域となる。このような内壁の温度分布における温度は最も低い温度でも、電極121a、121bによる清澄管120の通電加熱により高温、例えば1500℃以上の温度になる。このため、気相空間には、清澄管120を構成する白金族金属が揮発して白金族金属の揮発物が存在する。図7は、温度分布の一例を示す。この温度分布では、温度が最高温度Tmax℃になるX方向における位置をPで表している。
ここで、温度分布の最高温度位置は、位置Pに限定されず、位置P周りの許容範囲を有する。最高温度位置の許容範囲は、好ましくは、(Tmax−20)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域であり、さらに好ましくは、(Tmax−10)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域であり、特に好ましくは、(Tmax−5)℃〜Tmax℃の範囲内の温度領域である。以降、許容範囲を有する最高温度位置を最高温度位置Rという。
一方、熔融ガラスは、清澄管120内で加熱され、清澄剤が還元反応をして、熔融ガラス中への酸素の放出を開始する。この酸素の放出は急激に発生する。放出された酸素は、熔融ガラス中の泡に吸収されて泡の径を拡大させ(成長させ)、あるいは、熔融ガラス中の泡となって熔融ガラス中の既存の泡を吸収して泡の径を拡大させ(成長させ)、熔融ガラスの粘性に打ち勝って気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)に向かって浮上を開始する。このとき熔融ガラスの表面(液面)から放出される泡の放出量が最大となる清澄管120の長手方向の泡放出量最大位置Aは、上記最高温度位置Rと、X方向において離間している。具体的には、最高温度位置Rに対して、熔融ガラスの流れの下流側に位置していることが好ましい。
このように泡放出量最大位置Aが最高温度位置Rに対して離間するように、泡放出量最大位置Aは調整されている。
泡放出量最大位置Aは、実験によって求めることができるが、コンピュータシミュレーションにより予測して求めることもできる。コンピュータシミュレーションの場合、清澄管120と、その周りに設けられる図示されない耐火物保護層及び耐火物レンガと、清澄管120の通電加熱によりつくられる加熱源と、をモデル化して熱伝導シミュレーションを行うとともに、このシミュレーション結果である熔融ガラスの温度の計算値を用いて、予め定められている熔融ガラスの温度と清澄剤の酸素の放出量の対応関係を用いて清澄剤の酸素の放出量を定め所定のサイズの泡を発生させることで、熔融ガラス中の酸化還元反応をシミュレーションし、さらに、熔融ガラス中に予め定めた泡が酸素を吸収して泡の径が拡大することと径の拡大した泡の浮上をシミュレーションすることにより、泡放出量最大位置Aを予測することができる。この場合、泡の放出量も予測することができる。このようなシミュレーションは、公知のシミュレーションプログラム等を用いてコンピュータ上で実行することができる。そして、泡放出量最大位置Aが最高温度位置RとX方向において離間するように、コンピュータシミュレーションを用いて清澄条件を決定することができる。
ここで、泡放出量最大位置Aは、清澄管120内を流れる熔融ガラスの温度分布、及び、熔融ガラスの流速の少なくともいずれか1つの調整によって行われることが好ましい。熔融ガラスの温度分布は、清澄剤から放出される酸素の量及び酸素の放出開始位置、さらには、熔融ガラス中の泡の浮上速度に影響を与える。熔融ガラスの温度分布は、例えば、加熱電極121bの通電加熱における清澄管120の加熱量によって、あるいは、清澄管120の周上の電流分布の調整によって調整することができる。また、熔融ガラスの温度分布は、例えば、清澄管120の外周から外側に向かう放熱量の調整によって調整することができる。放熱量の調整は、清澄管120の外周を囲む耐火物保護層あるいは耐火物レンガの断熱特性(熱伝導率等)や熱抵抗(=(耐火物保護層や耐火物レンガの厚さ)/熱伝導率)を調整することにより行われる。このような調整パラメータを変更して、コンピュータシミュレーションを用いて泡放出量最大位置Aを調整することができる。
熔融ガラスの流速は、熔融ガラス中における酸素の放出開始位置から気相空間と接する熔融ガラスの表面(液面)における酸素の放出位置までの距離に影響を与える。熔融ガラスの流速の調整は、例えば、清澄管120の熔融ガラスの流出口近傍における熔融ガラスの温度(粘度)あるいは、成形装置200等の後工程に位置する装置による熔融ガラスの引き出し量によって調整することができる。このような調整パラメータを変更して、コンピュータシミュレーションを用いて泡放出量最大位置Aを調整することができる。
実際にガラス基板を製造するとき、コンピュータシミュレーションで調整した泡放出量最大位置Aが所望の位置になるときの上記調整パラメータの各値(清澄条件)を用いる。
本実施形態では、清澄管120に、気相空間と清澄管120の外側の大気を連通する排気管127が設けられるが、このとき、X方向における排気管127の配置位置は、泡放出量最大位置Aと最高温度位置Rとの間であることが好ましい。このように排気管127の配置位置を定めることにより、酸素を含んだ泡が多量に熔融ガラスの気相空間と接する表面から放出される泡放出量最大位置Aでは、表面から放出された泡中の酸素が、気流によって泡放出量最大位置Aに流れる前に、酸素の大部分は排気管127から清澄管120aの外側に放出される。このため、泡放出量最大位置Aで放出された泡中の酸素が最高温度位置Rに流れる可能性は低く、最高温度位置Rにおける白金族金属の揮発を低減することができる。
泡放出量最大位置Aと、X方向における排気管127の配置位置は、清澄管120の壁の温度分布の最高温度位置Rを基準としてX方向の同じ側にあることが好ましい。この場合においても、泡放出量最大位置Aで放出された泡中の酸素が最高温度位置Rに流れる可能性は低く、最高温度位置Rにおける白金族金属の揮発を低減することができる。
最高温度位置R、排気管127の配置位置、及び泡放出量最大位置Aは、X方向の上流側から最高温度位置R、排気管127の配置位置、及び泡放出量最大位置Aの順に位置することが好ましい。
本実施形態では、清澄管120の外周には、清澄管120の外側に延びる電極121a、121bを含むフランジ形状の部材(フランジ部材)が設けられるが、フランジ形状の部材のX方向の配置位置は、泡放出量最大位置Aと排気管127の配置位置との間の領域以外の上記長手方向の領域にあることが好ましい。フランジ形状の部材は、その形状に起因して排気管127の外側への放熱量が大きいため、フランジ形状の部材が設けられる清澄管120の内壁近傍では、局部的に温度が低くなり易い。この場合、気相空間内の白金族金属の揮発物が、上記フランジ形状の部材が設けられている内壁近傍を通過することで、揮発物が冷やされて清澄管120の内壁で凝集する場合がある。このため、フランジ形状の部材の配置位置は、泡放出量最大位置Aと排気管127の配置位置との間の領域以外の領域にあることが好ましい。
本実施形態では、最高温度位置R、排気管127の配置位置、及び泡放出量最大位置Aは、X方向の上流側から最高温度位置R、排気管127の配置位置、及び泡放出量最大位置Aの順に位置するが、泡放出量最大位置Aと、排気管127の配置位置は、最高温度位置Rを基準としてX方向(清澄管120の長手方向)の同じ側にある限りにおいて、最高温度位置R、排気管127の配置位置、及び泡放出量最大位置Aは制限されない。例えば、熔融ガラスの流れるX方向の上流側から最高温度位置R、泡放出量最大位置A、及び排気管127の配置位置、の順に位置してもよい。この場合、泡放出量最大位置Aで放出された酸素は、排気管127の方向に流れるので、泡放出量最大位置Aで放出された酸素は、熔融ガラスの最高温度位置R近傍の気相空間の温度の高い雰囲気に流れ難い。
また、泡放出量最大位置Aと、排気管127の配置位置は、X方向の同じ位置とすることもできる。泡放出量最大位置Aと排気管127の配置位置を、X方向の同じ位置とすることにより、泡放出量最大位置Aで熔融ガラスの表面(液面)から放出された酸素を上方に位置する排気管127を経由して清澄管120の外側に放出するので、酸素は、気相空間内に拡散することなく、また、気相空間内を流れることなく、排気管127に向かう。このため、泡放出量最大位置Aで熔融ガラスの表面(液面)から放出された酸素は、白金族金属の揮発に用いられることはほとんど無くなる。なお、泡放出量最大位置Aと排気管127の配置位置をX方向の同じ位置にするとは、X方向における、排気管127の管の中心位置に対して排気管127の管直径の寸法の範囲内の領域(X方向に沿った領域)に泡放出量最大位置Aがあることをいう。また、泡放出量最大位置Aについて泡放出量最大位置Aの許容範囲が定められている場合、この許容範囲が、上記管直径の寸法の範囲内の領域と一部が重なっていればよい。
清澄管120の気相空間と接する清澄管120の内壁の温度が1500℃以上であっても、本実施形態では、白金族金属の揮発を低減し、白金族金属の揮発物の凝集を抑制するので、本実施形態の効果は顕著になる。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても、気相空間における白金族金属の蒸気圧は、白金族金属の揮発を抑制するために調整されることが好ましい。白金族金属の揮発及び凝集を抑制する点から、気相空間における白金族金属の蒸気圧は0.1Pa〜15Paであることが好ましく、3Pa〜10Paであることが好ましい。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する装置として、清澄管120を用いて説明したが、必ずしも清澄管120に限定されない。気相空間を有し、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する部分であれば、清澄管に限定されない。
(実験例1)
第1の実施形態の効果を確認するために、清澄剤として酸化錫を用い、図3に示す第1の実施形態の清澄管120を用いて、熔融ガラスの清澄を1時間行うとともに、上記実施形態の調整を行った。この清澄後、2270mm×2000mmであり、厚さが0.5mmのシートガラスに成形し、100枚のガラス基板を作製した。
このとき、実施例1〜8では、熔融ガラスからの酸素放出量、パージガス(N)の供給量及び排気管127の吸引量を調整して、気相空間120aの酸素濃度を0.1%〜3%の範囲で調整した。実施例1の酸素濃度は0%、実施例2の酸素濃度は0.1%、実施例3の酸素濃度は0.3%、実施例4の酸素濃度は0.5%,実施例5の酸素濃度は0.7%、実施例6の酸素濃度は1%、実施例7の酸素濃度は2%、実施例8の酸素濃度は3%となるように調整した。
従来例として、気相空間120aの酸素濃度の調整を行なわなかった。このとき、酸素濃度は21%であった。 ガラス基板の白金凝集物は、目視によって検査して、100枚当たりの白金凝集物数で評価した。白金凝集物は、アスペクト比が100以上であり、最大長さが100μm以上のものを検査対象の白金異物とした。
上記検査の結果、実施例1〜8の順に、白金凝集物数は、0.10個/m、1.2個/m、3.9個/m、7.4個/m、12個/m、19個/m、57個/m、113個/m、であった。これらの結果は、従来例の異物量4306個/m、に比べて少ない。これより、実施例1〜8では、従来例対比異物量を低減することができることがわかる。なお、実施例1〜8の、ガラス基板に欠陥として残存する泡の数は、実施例1〜8の順に、34個/m、28個/m、19個/m、13個/m、11個/m、15個/m、88個/m、255個/m、であった。これらの結果は、従来例の異物量19201個/m、に比べて少ない。なお、ガラス基板のガラス組成は、SiO 66.6モル%、Al 10.6モル%、B 11.0モル%、MgO,CaO,SrO及びBaOの合量 11.4モル%、SnO 0.15モル%、Fe 0.05%、アルカリ金属酸化物の合量 0.2モル%であり、歪点は660℃、粘度が102.5ポアズであるときの熔融ガラスの温度は1570℃であった。
図8は、実験例1の実施例1〜8の結果を示す図である。図8では、他の実施例の結果についてもプロットしている。
(実験例2)
第2の実施形態の効果を確認するために、清澄剤として酸化錫を用い、図6に示す第2の実施形態の清澄管120を用いて、熔融ガラスの清澄を1時間行うとともに、上記実施形態の調整を行った。具体的には、熔融ガラスの温度分布を調整して、泡放出量最大位置Aを変えた。この清澄後、2270mm×2000mmであり、厚さが0.5mmのシートガラスに成形し、100枚のガラス基板を作製した。 このとき、実施例9では、泡放出量最大位置Aと温度分布の最高温度位置とが熔融ガラスの流れ方向において離間するように熔融ガラスの温度を調整した。排気管127の位置は、熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置Aと温度分布の最高温度位置との間とした。
従来例として、泡放出量最大位置Aと温度分布の最高温度位置との調整を行なわなかった。この場合、泡放出量最大位置Aと温度分布の最高温度位置は略一致していた。
ガラス基板の白金凝集物は、目視によって検査して、100枚当たりの白金凝集物数で評価した。
白金凝集物は、アスペクト比が100以上であり、最大長さが100μm以上の白金異物を検査対象の異物とした。
上記検査の結果、泡放出量最大位置Aと温度分布の最高温度位置とが一致する従来例と比較して、実施例9では、ガラス基板に混入した白金に起因する白金凝集物数が1/3以下であった。実施例9、ガラス基板に欠陥として残存する泡の数は300個/m以下であった。であった。これにより、実施例9では、従来例対比白金凝集物数を低減することを確認できた。なお、ガラス基板のガラス組成は、SiO 66.6モル%、Al 10.6モル%、B 11.0モル%、MgO,CaO,SrO及びBaOの合量 11.4モル%、SnO 0.15モル%、Fe 0.05%、アルカリ金属酸化物の合量 0.2モル%であり、歪点は660℃、粘度が102.5ポアズであるときの熔融ガラスの温度は1570℃であった。
(実験例3)
実験例1に対して、ガラス基板のガラス組成を、SiO 70モル%、Al 12.9モル%、B 2.5モル%、MgO 3.5モル%、CaO 6モル%、SrO 1.5モル%、BaO 3.5モル%、SnO 0.1モル%に変更した以外実施例1と同様の方法でガラス基板を作製した。このとき、ガラス基板の歪点は745℃であった。
その結果、実験例1と同様に、従来例対比で白金凝集物個数を低減できることがわかった。
(実験例4)
実験例2に対して、ガラス基板のガラス組成を、SiO 70モル%、Al 12.9モル%、B 2.5モル%、MgO 3.5モル%、CaO 6モル%、SrO 1.5モル%、BaO 3.5モル%、SnO 0.1モル%に変更した以外実施例2と同様の方法でガラス基板を作製した。このとき、ガラス基板の歪点は745℃であった。
その結果、実験例2と同様に、従来例対比で白金凝集物個数を低減できることがわかった。
以上、本発明のガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。上記の説明では処理装置として清澄管を例として説明したが、本発明はこれに限らず、熔解槽、攪拌槽や成形装置、移送管、供給管に本発明を適用してもよい。
100 熔解装置
101 熔解槽
103 攪拌槽
104、105 移送管
106 ガラス供給管
120 清澄槽
121a、121b 電極
122 電源装置
123 制御装置
124a、124b パージガス供給管
125a、125b パージガス供給装置
127 排気管
128 酸素濃度計
200 成形装置
300 切断装置
A 酸素放出量最大位置
P 最高温度位置
R 最高温度位置範囲
(形態1)
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置を用いて、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程では、
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記処理装置の内壁と前記熔融ガラスの表面により形成される気相空間に、前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを行い、
前記酸素の放出量は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記熔融ガラスの流れ方向の位置における前記酸素の放出量の分布を調整することで、
前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の前記熔融ガラスの流れ方向における酸素濃度の分布を調整する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態2)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する際、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを行い、
前記酸素の放出量は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記熔融ガラスの流れ方向の位置における前記酸素の放出量の分布を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の前記熔融ガラスの流れ方向における酸素濃度の分布を調整する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態3)
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置を用いて、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程では、
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記処理装置の内壁と前記熔融ガラスの表面により形成される気相空間に、前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを行い、
前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、
前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態4)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する際、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、
前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを行い、
前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、
前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
(形態5)
前記ガラス基板は、酸化錫を0.01モル%〜0.3モル%含有し、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量は、前記酸化錫の含有量により調整される、形態1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
(形態6)
前記気相空間から前記処理装置の外部に排出される酸素の量をさらに調整することで前記酸素濃度を制御する、形態1〜5のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態7)
前記酸素濃度が所定の範囲となるように、供給量を調節したガスを前記気相空間に供給する、形態1〜6のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態8)
前記処理装置の温度は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記酸素の放出量の分布は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
前記熔融ガラスの流れ方向における前記酸素の放出量が最大となる位置が、前記処理装置の温度が最高となる位置から離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、形態1または2に記載のガラス基板の製造方法。
(形態10)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記熔融ガラスを処理する工程は、前記清澄管において前記熔融ガラスの脱泡を行う脱泡処理を含む清澄工程である、形態1〜9のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
(形態11)
前記泡放出量最大位置は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
前記泡放出量最大位置が前記最高温度位置と前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、形態3、4、9及び10のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態12)
前記泡放出量最大位置の調整は、前記熔融ガラスの温度分布、及び、前記熔融ガラスの流速の少なくともいずれか1つの調整によって行われる、形態3、4、9〜11のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態13)
前記泡放出量最大位置は、前記最高温度位置に対して前記熔融ガラスの流れの下流側に位置する、形態3、4、9〜12のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態14)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記清澄管には、前記気相空間と前記処理装置の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記泡放出量最大位置と前記最高温度位置との間である、形態3、4、9〜13のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態15)
前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
前記清澄管には、前記気相空間と前記清澄管の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記泡放出量最大位置と、前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記温度分布の最高温度位置を基準として前記熔融ガラスの流れ方向の同じ側にある、形態3、4、9〜14のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態18)
前記処理装置には、前記気相空間と前記処理装置の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
前記泡放出量最大位置と、前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置とは、前記熔融ガラスの流れ方向の同じ位置である、形態3、4、9〜13のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法。
(形態19)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造装置であって、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように構成され、前記熔融ガラスが、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流れる、処理装置と、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整するとともに、前記気相空間より排出される酸素の量を調整することで、前記気相空間の酸素濃度が所定の範囲となるように調整するように構成された制御装置と、を備え
前記酸素の放出量は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
前記制御装置は、前記熔融ガラスの流れ方向の位置における前記酸素の放出量の分布を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の前記熔融ガラスの流れ方向における酸素濃度の分布を調整する、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
(形態20)
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板製造装置であって、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように構成された処理装置と、
前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整するとともに、前記気相空間より排出される酸素の量を調整することで、前記気相空間の酸素濃度が所定の範囲となるように調整するように構成され、前記熔融ガラスが、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流れる、制御装置と、を備え、
前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、
前記制御装置は、前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置を調整する、ことを特徴とするガラス基板製造装置、
あるいは、
熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板製造装置であって、
ガラスの原料を熔解して熔融ガラスを生成する熔解槽と、
内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに、前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成され、前記気相空間と接する前記内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有するように構成された処理装置と、を有し、
前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの前記表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
(形態22)
前記処理装置の内部を流れる熔融ガラスの最高温度は1630℃〜1750℃である、形態1〜18のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜21のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
(形態25)
前記白金族金属の揮発により生成された酸化物の凝集により生成される凝集物(以下、白金族金属の凝集物)は、例えば、最大長さの最小長さに対する比であるアスペクト比が100以上である、形態1〜18及び22〜24のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜24のいずれか1つに記載のガラス基板製造装置。
また、例えば、白金族金属の凝集物の最大長さは50μm〜300μm、最小長さは0.5μm〜2μmである。ここで、白金族金属の凝集物の最大長さとは、白金族金属の凝集物を撮影して得られる異物の像に外接する外接長方形のうち最大長辺の長さをいい、最小長さとは、前記外接長方形の最小短辺の長さをいう。
あるいは、前記白金族金属の揮発物の凝集により生成される凝集物として、最大長さの最小長さに対する比であるアスペクト比が100以上であり、白金族金属の凝集物の最大長さが100μm以上、好ましくは100μm〜300μmであるものを定めることができる。
(形態26)
前記ガラス基板は、ディスプレイ用ガラス基板である、形態1〜18及び22〜25のいずれか1つに記載のガラス基板の製造方法、あるいは形態19〜25のいずれか1つに記載のガラス基ガラス基板製造装置。
また、前記ガラス基板は、酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板又はLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。

Claims (19)

  1. 内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置を用いて、還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
    前記熔融ガラスを処理する工程では、
    前記処理装置の内壁と前記熔融ガラスの表面により形成される気相空間に、前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  2. 熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
    還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する際、
    内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、
    前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整することで、前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の酸素濃度を制御する、ガラス基板の製造方法。
  3. 前記ガラス基板は、酸化錫を0.01モル%〜0.3モル%含有し、
    前記熔融ガラスから放出される酸素の量は、前記酸化錫の含有量により調整される、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. 前記気相空間から前記処理装置の外部に排出される酸素の量をさらに調整することで前記酸素濃度を制御する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 前記酸素濃度が所定の範囲となるように、供給量を調節したガスを前記気相空間に供給する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  6. 前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、
    前記酸素の放出量は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
    前記熔融ガラスの流れ方向の位置における前記酸素の放出量の分布を調整することで、
    前記白金族金属の揮発が抑制されるように前記気相空間の前記熔融ガラスの流れ方向における酸素濃度の分布を調整する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  7. 前記処理装置の温度は前記熔融ガラスの流れ方向の位置に応じて変化し、
    前記酸素の放出量の分布は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
    前記熔融ガラスの流れ方向における前記酸素の放出量が最大となる位置が、前記処理装置の温度が最高となる位置から離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、請求項6に記載のガラス基板の製造方法。
  8. 前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、

    前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、 前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  9. 熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板の製造方法であって、
    ガラスの原料を熔解して熔融ガラスを生成する工程を有し、
    還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスを処理する工程を含み、
    前記熔融ガラスを処理する工程では、
    内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなる処理装置の内部に、熔融ガラスを、熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように供給し、かつ、前記処理装置において前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、

    前記処理装置のうち気相空間と接する内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有し、 前記熔融ガラスの処理において前記気相空間と接する熔融ガラスの表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置を調整する、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  10. 前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、
    前記熔融ガラスを処理する工程は、前記清澄管において前記熔融ガラスの脱泡を行う脱泡処理を含む清澄工程である、請求項8または9に記載のガラス基板の製造方法。

  11. 前記泡放出量最大位置は、コンピュータシミュレーションを用いて予測され、
    前記泡放出量最大位置が前記最高温度位置と前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記コンピュータシミュレーションを用いて処理条件を決定する、請求項8〜10のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。

  12. 前記泡放出量最大位置の調整は、前記熔融ガラスの温度分布、及び、前記熔融ガラスの流速の少なくともいずれか1つの調整によって行われる、請求項8〜11のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。

  13. 前記泡放出量最大位置は、前記最高温度位置に対して前記熔融ガラスの流れの下流側に位置する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  14. 前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、

    前記清澄管には、前記気相空間と前記処理装置の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
    前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記泡放出量最大位置と前記最高温度位置との間である、請求項8〜13のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  15. 前記処理装置は、前記内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料で構成された、少なくとも前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含み、

    前記清澄管には、前記気相空間と前記清澄管の外側の大気を連通する排気管が設けられ、
    前記泡放出量最大位置と、前記熔融ガラスの流れ方向における前記排気管の配置位置は、前記温度分布の最高温度位置を基準として前記熔融ガラスの流れ方向の同じ側にある、請求項8〜14のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  16. 前記処理装置の外周には、前記処理装置の外側に延びるフランジ部材が設けられ、前記フランジ部材の前記熔融ガラスの流れ方向の配置位置は、前記泡放出量最大位置と前記排気管の配置位置との間の領域以外の領域にある、請求項14または15に記載のガラス基板の製造方法。
  17. 熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板製造装置であって、
    内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成されるように構成された処理装置と、
    前記熔融ガラスから放出される酸素の量を調整するとともに、前記気相空間より排出される酸素の量を調整することで、前記気相空間の酸素濃度が所定の範囲となるように調整するように構成された制御装置と、を備える、ガラス基板製造装置。
  18. 熔融ガラスを処理する処理装置を用いて熔融ガラスを処理するガラス基板製造装置であって、
    ガラスの原料を熔解して熔融ガラスを生成する熔解槽と、

    内壁の少なくとも一部が白金族金属を含む材料からなり、内部に還元反応により酸素を放出する清澄剤を含む熔融ガラスが供給されるとともに、前記熔融ガラスを、前記熔融ガラスの前記気相空間と接する表面に沿った方向に流し、前記熔融ガラスの表面の上部に気相空間が形成され、前記気相空間と接する前記内壁の温度は、前記熔融ガラスの流れ方向に沿って温度分布を有するように構成された処理装置と、を有し、 前記熔融ガラスの処理において熔融ガラスの前記表面から前記気相空間に放出される泡の放出量が最大となる前記熔融ガラスの流れ方向の泡放出量最大位置と前記熔融ガラスの流れ方向における前記温度分布の最高温度位置とが前記熔融ガラスの流れ方向において離間するように、前記泡放出量最大位置が調整される、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
  19. 前記処理装置は、前記熔融ガラスの脱泡を行なう清澄管を含む、請求項17または18に記載のガラス基板製造装置。

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