JPWO2015046126A1 - 非水電池用多孔質層、非水電池用セパレータ、非水電池用電極および非水電池 - Google Patents

非水電池用多孔質層、非水電池用セパレータ、非水電池用電極および非水電池 Download PDF

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Abstract

高い安全性を有する非水電池と、前記非水電池を構成するための多孔質層、セパレータおよび電極とを提供する。本発明の非水電池用多孔質層は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとして、特定構造のN−ビニルカルボン酸アミドと特定構造の不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体を含み、前記共重合体における前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合比が、質量比で50:50〜95:5である。また、本発明の非水電池用セパレータは、本発明の多孔質層を多孔質樹脂フィルム上に形成したものであり、本発明の非水電池用電極は、本発明の多孔質層を電極合剤層上に形成したものである。本発明の非水電池は、セパレータが本発明のセパレータであるか、または正極および負極のうちの少なくとも一方が本発明の電極である。

Description

本発明は、高い安全性を有する非水電池と、前記非水電池を構成するための多孔質層、セパレータおよび電極とに関するものである。
非水電池の一種であるリチウム二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。そして、携帯機器の高性能化に伴ってリチウム二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
現行のリチウム二次電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが15〜30μm程度のポリオレフィン系の多孔性フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレンが適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸または二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを前記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の熱暴走温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
また、前記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、シャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
このようなセパレータの熱収縮による短絡を防止し、電池の信頼性を高める技術として、例えば特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を含む樹脂多孔質膜の表面に、耐熱性を高めるための耐熱多孔質層を形成したセパレータを用いることが提案されている。
特許文献1および2に開示の技術によれば、異常過熱した際にも熱暴走が生じ難く、安全性および信頼性に優れた非水電解液電池を提供することができる。
また、特許文献3には、耐熱多孔質層において、その主成分である耐熱性微粒子を結着するためのバインダとして、特定量のN−ビニルアセトアミドの重合体または水溶性セルロース誘導体と、特定量の架橋アクリル樹脂とを併用することで、特許文献1および特許文献2に記載のセパレータよりも、更に電池の信頼性を高め得たセパレータが開示されている。
特開2008−123996号公報 特開2008−210791号公報 国際公開第2010/104127号
ところが、N−ビニルアセトアミドの重合体は、高温環境下において非水電解液に対する耐性に関して改善の余地があることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い安全性を有する非水電池と、前記非水電池を構成するための多孔質層、セパレータおよび電極とを提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電池用多孔質層は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と有機バインダとを含む非水電池用多孔質層であって、前記有機バインダとして、下記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体を含み、前記共重合体における前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合比が、質量比で50:50〜95:5であることを特徴とするものである。
Figure 2015046126
前記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Figure 2015046126
前記一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基または−COOMを、Rは水素原子、メチル基または−COOMを、M、MおよびMは、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミノ基を表し、nは0または1である。
また、本発明の非水電池用セパレータは、本発明の非水電池用多孔質層を、多孔質樹脂フィルム上に形成したことを特徴とするものである。
更に、本発明の非水電池用電極は、非水電池用多孔質層を、電極合剤層上に形成したことを特徴とするものである。
また、本発明の非水電池は、(a)正極、負極、セパレータおよび非水電解質を有しており、前記セパレータが本発明の非水電池用セパレータであるか、または(b)正極、負極および非水電解質を有しており、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が本発明の非水電池用電極であることを特徴とするものである。
なお、本明細書において、「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
本発明によれば、高い安全性を有する非水電池と、前記非水電池を構成するための多孔質層、セパレータおよび電極とを提供することができる。
本発明の非水電池の一例を模式的に表す縦断面図である。
本発明の非水電池用多孔質層(以下、単に「多孔質層」という場合がある)は、非水電池内において正極と負極とを仕切る隔離材として使用されるものであり、耐熱温度が150℃以上の微粒子と有機バインダとを含有しており、前記微粒子同士が前記有機バインダによって結着している。
本発明の多孔質層は、多孔質樹脂フィルム上に形成されることで、本発明の非水電池用セパレータを構成でき、また、非水電池の電極(正極または負極)の電極合剤層上に形成されることで、本発明の非水電池用電極を構成できる。本発明の非水電池用セパレータでは、その有機バインダによって、多孔質層中の構成成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)同士が結着していると共に、多孔質層と多孔質樹脂フィルムとが接着している。また、本発明の非水電池用電極では、その有機バインダによって、多孔質層中の構成成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)同士が結着していると共に、多孔質層と電極の電極合剤層とが接着している。
本発明の多孔質層では、有機バインダとして、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体であって、前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合比が、質量比で50:50〜95:5であるものを使用する。
ポリN−ビニルアセトアミドなどの、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドをモノマーとする重合体は、その組成によっては、通常の非水電池で採用されている非水電解液(非水電解液溶媒)中で100℃以上の高温に曝されると、その接着性が低下することがあり、これをバインダとして使用した多孔質層では、例えば構成成分同士の結着状態を良好に維持し得ず、想定した特性(主に耐熱性)が十分に確保し得ないことがある。
本発明者らは、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミド由来の構造部分と、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマー由来の構造部分とを、特定の比率で含む共重合体であれば、ポリN−ビニルアセトアミドなどに比べて高温の非水電解液に対する耐性を高め得ることを見出し、この知見に基づいて、かかる共重合体を多孔質層の有機バインダとして使用することで、従来よりも更に高い安全性(100℃以上といった高温での安全性)を非水電池に付与し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドとしては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどが挙げられ、共重合体の合成には、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でもN−ビニルアセトアミドが特に好ましい。
また、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩など)、メタクリル酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩などアルカリ金属塩など)などが好ましく、共重合体の合成には、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸のアルカリ金属塩やメタクリル酸のアルカリ金属塩が特に好ましい。
前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体において、その共重合組成は、前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの合計を100質量%としたとき、前記不飽和カルボン酸系モノマーの割合が、5質量%以上であり、7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい(すなわち、前記N−ビニルカルボン酸アミドの割合が、95質量%以下であり、93質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい)。このような共重合組成の共重合体であれば、高温の非水電解液溶媒中での耐性が向上し、その接着力が損なわれ難くなるため、高温での安全性がより優れた非水電池を構成可能な多孔質層を形成できる。
ただし、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体において、前記不飽和カルボン酸系モノマー由来の成分が多くなりすぎると、共重合体の吸湿性が高くなって、多孔質層を用いた非水電池の電池特性が損なわれることがあり、また、多孔質層形成用組成物(前記共重合体の他に、耐熱温度が150℃以上の微粒子や溶媒を含む組成物。詳しくは後述する。)の粘度が増大しすぎて塗布性が損なわれる虞もある。よって、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体において、その共重合組成は、前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの合計を100質量%としたとき、前記不飽和カルボン酸系モノマーの割合が、50質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましい(すなわち、前記N−ビニルカルボン酸アミドの割合が、50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましい)。
前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される数平均分子量(ポリスチレン換算値)で、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上であって、好ましくは5,000,000以下、より好ましくは3,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの比率を前記の範囲とした共重合体を有機バインダとして用いることにより、前記不飽和カルボン酸系モノマーの割合が多すぎる共重合体を有機バインダとした場合よりも、バインダの吸湿に伴って電池内に持ち込まれる水分量を低減することが可能となる。なお、前記有機バインダを含む本発明の非水電池用多孔質層を多孔質樹脂フィルム上に形成した本発明の非水電池用セパレータにおいては、その水分量が、セパレータ全体として1500ppm以下であることが好ましい。
本明細書でいうセパレータの水分量は、下記の方法によって測定することができる。測定用のセパレータのサンプルを、露点:−50℃のグローブボックス中に12時間以上静置した後、窒素ガスをフローした150℃の加熱炉に前記測定サンプルを入れ、1分間保持する。そして、フローした窒素ガスをカールフィッシャー水分計の測定セルに導入し、水分量を測定する。滴定終点までの積算値を含有水分量とする。測定は露点−50℃のグローブボックス中で行い、前記測定値を前記サンプルの質量で割ることにより、セパレータの単位質量あたりの水分量(単位:ppm)を算出する。
なお、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体は、エチレン、プロピレン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリロニトリル、またはそれらの誘導体など、他のエチレン性不飽和モノマー成分を更に含むことができる。ただし、前記作用を阻害しないために、その割合は、共重合体全体の20質量%以下とするのが望ましい。
本発明の多孔質層には、有機バインダとして、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体のみを使用してもよいが、前記共重合体と共に他の有機バインダを使用してもよい。このような他の有機バインダとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、(メタ)アクリレート重合体〔「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートとを含む意味である。〕、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリN−ビニルアセトアミド(N−ビニルアセトアミドの単独重合体)などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。
なお、多孔質層における全有機バインダのうち、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体以外の他の有機バインダの含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子は、本発明の多孔質層において、その主体となったり、後述する繊維状物同士の間に形成される空隙を埋めるなどして、リチウムデンドライトに起因する短絡の発生を抑制する作用を有している。耐熱温度が150℃以上の微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後述する非水電解液や、多孔質層形成用組成物(溶媒を含む組成物)に用いる溶媒に安定であり、高温状態で安定な耐熱性の高いものであれば、特に制限はない。
なお、本明細書でいう「非水電解液に対して安定」とは、非水電解液(非水電池の電解液として使用される非水電解液)中で変形および化学的組成変化の起こらないことを意味している。また、本明細書でいう「高温状態」とは、具体的には150℃以上の温度であり、このような温度の非水電解液中で変形および化学的組成変化の起こらない安定な粒子であればよい。更に、本明細書でいう「電気化学的に安定な」とは、電池の充放電の際に化学変化が生じないことを意味している。
このような耐熱温度が150℃以上の微粒子の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrO、MgO、などの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、ハイドロタルサイトなどの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物;などの無機微粒子が挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の電気絶縁性の耐熱温度が150℃以上の微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子には、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、SiO、Al、ベーマイトなどの酸化物または水酸化物の微粒子が特に好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の形態としては、球状、粒子状、板状などいずれの形態であってもよいが、板状であることが好ましい。板状粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー」(SiO)、石原産業社製「NST−B1」の粉砕品(TiO)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ」、「HLシリーズ」、林化成社製「ミクロンホワイト」(タルク)、林化成社製「ベンゲル」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM」や「BMT」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B」〔アルミナ(Al)〕、キンセイマテック社製「セラフ」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO、Al、ZrO、CeOについては、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合には、多孔質層中において、耐熱温度が150℃以上の微粒子を、その平板面が多孔質層の面にほぼ平行となるように配向させることが好ましく、このような多孔質層を有するセパレータを使用することで、電池の短絡の発生をより良好に抑制できる。これは、耐熱温度が150℃以上の微粒子を前記のように配向させることで、耐熱温度が150℃以上の微粒子同士が平板面の一部で重なるように配置されるため、多孔質層の片面から他面に向かう空隙(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成される(すなわち、曲路率が大きくなる)と考えられ、これにより、リチウムデンドライトが多孔質層を貫通することを防止できることから、短絡の発生がより良好に抑制されるものと推測される。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状の粒子である場合の形態としては、例えば、アスペクト比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚みの比)が、5以上であることが好ましく、10以上でであることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、0.3以上、より好ましくは0.5以上であることが望ましい(1、すなわち、長軸方向長さと短軸方向長さとが同じであってもよい)。板状の耐熱温度が150℃以上の微粒子が、前記のようなアスペクト比や平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値を有する場合には、前記の短絡防止作用がより有効に発揮される。
なお、耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子は、前記例示の各種耐熱温度が150℃以上の微粒子を構成する材料を2種以上含有する粒子であってもよい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは5μm以下である。
本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱温度が150℃以上の微粒子を溶解したり、耐熱温度が150℃以上の微粒子が膨潤したりしない媒体に、耐熱温度が150℃以上の微粒子を分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、100m/g以下であることが好ましく、50m/g以下であることがより好ましく、30m/g以下であることが更に好ましい。比表面積が大きすぎると、微粒子同士を結着したり、微粒子と基材や電極とを結着したりするためのバインダ量が多くなりすぎるために電池とした時の出力特性が悪くなる虞があり、また、微粒子表面に吸着する水分が多くなって、非水電池の電池特性を低下させる虞がある。一方、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積の好適な下限値としては、1m/gである。ここでいう比表面積とは、窒素ガスを用いてBET法により測定した値である。
本発明の多孔質層は、前記のような耐熱性の高い耐熱温度が150℃以上の微粒子を用いた場合、その作用によって、高温時における熱収縮を抑制して寸法安定性を高めることができる。また、このような耐熱性の高い耐熱温度が150℃以上の微粒子を含有する本発明の多孔質層が電極(正極または負極)と一体化している場合には、高温時における多孔質層の寸法安定性を更に高めることができる。
更に、耐熱性の高い耐熱温度が150℃以上の微粒子を含有する本発明の多孔質層と多孔性樹脂フィルムとからセパレータを構成した場合にも、喩え多孔性樹脂フィルムが高温時の寸法安定性に劣るものであっても、耐熱温度が150℃以上の微粒子の作用によって高温時の寸法安定性の良好な多孔質層と一体化しているために、多孔性樹脂フィルムの熱収縮が抑制され、高温時におけるセパレータ全体の寸法安定性が向上する。そのため、本発明の多孔質層を用いた本発明のセパレータでは、例えば従来のPE製多孔性フィルム(PE製微多孔膜)のみで構成されるセパレータで生じていた熱収縮に起因する短絡の発生が防止できることから、電池内が異常過熱した際の信頼性・安全性をより高めることができる。
本発明の多孔質層は、耐熱温度が150℃以上の繊維状物を含有していてもよい。例えば、多孔質層のみでセパレータを構成し、かつ多孔質層を電極と一体化しない場合には、多孔質層を補強し、その取り扱い性を高めたりする観点から、前記繊維状物を含有させることが好ましく、この繊維状物がセパレータの主体をなしていることがより好ましい。また、多孔質層と多孔質樹脂フィルムとでセパレータを構成する場合や、多孔質層を電極と一体化させる場合においても、その補強のために耐熱温度が150℃以上の繊維状物を含有させることができる。
特に、140℃以下の温度で溶融して、多孔質層(セパレータ)の空孔を塞ぎ、セパレータ中のイオンの移動を遮断する機能(所謂シャットダウン機能)を付与できる材料を多孔質層に含有させた場合(詳しくは後述する)、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も多孔質層に含有させておくことで、電池内での発熱などによってシャットダウンが起こった後、更に20℃以上セパレータの温度が上昇しても、その形状をより安定に保ち得るようにできる。他方、シャットダウン機能を付与していない場合でも、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も用いた多孔質層を使用して構成したセパレータでは、150℃の温度においても、その変形を実質的になくすことができる。
繊維状物は、150℃以上の耐熱温度を有し、かつ電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に下記に詳述する電解液や、耐熱温度が150℃以上の微粒子などを含有する多孔質層形成用組成物に用いる溶媒に安定であれば、特に制限はない。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比〔長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)〕が4以上のものを意味している。繊維状物のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。繊維状物は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、繊維状物は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
なお、繊維状物には、耐熱温度が150℃以上の微粒子との接着性を高めるために、コロナ放電処理や界面活性剤による処理などの表面処理を施してもよい。
繊維状物の直径は、多孔質層の厚み以下であればよいが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足して、これらで構成されるシート状物の強度、延いては多孔質層の強度が小さくなって取扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、多孔質層の空孔が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、電池の負荷特性を低下させてしまうことがある。
繊維状物は、それぞれの繊維状物が独立した状態で多孔質層中に含まれていてもよく、繊維状物で構成されたシート状物(織布、不織布など)の状態で多孔質層中に含まれていてもよい。
多孔質層(シート状物)中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレータ面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
多孔質層中における耐熱温度が150℃以上の微粒子の含有量は、耐熱温度が150℃以上の微粒子を使用することによる作用をより有効に発揮させる観点から、多孔質層の構成成分の全体積(空孔部分を除く全体積。多孔質層の各成分の含有量について、以下同じ。)中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが更に好ましい。
なお、前記の繊維状物を含有しない多孔質層であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させて、シャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の体積比率の上限は、例えば80体積%であることが好ましい。他方、シャットダウン機能を有しない多孔質層とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の体積比率は、更に高い比率でもよく、例えば99.5体積%以下であれば問題ない。
他方、前記の繊維状物を含有する多孔質層であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させて、シャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の体積比率の上限は、例えば70体積%であることが好ましい。なお、シャットダウン機能を有しない多孔質層とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の体積比率は、更に高い比率でもよく、例えば80体積%以下であれば問題ない。
また、多孔質層が前記の繊維状物を含有する場合における多孔質層中の繊維状物の含有量は、繊維状物の使用による作用をより有効に発揮させる観点から、多孔質層の構成成分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。他方、前記の繊維状物を含有する多孔質層において、繊維状物の含有量が多すぎると、他の成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)の含有量が少なくなって、これら他の成分による作用が低下することがあるため、繊維状物の含有量は、多孔質層の構成成分の全体積中、90体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。
更に、多孔質層における有機バインダの含有量は、これらの有機バインダによる作用を良好に発揮させる観点から、多孔質層の構成成分の全量中、0.5質量%以上であることが好ましい。他方、有機バインダの含有量が多すぎると、他の成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)の含有量が少なくなって、これら他の成分による作用が低下することがあるため、多孔質層における有機バインダの含有量は、多孔質層の構成成分の全量中、10質量%以下であることが好ましい。
本発明の多孔質層には、シャットダウン機能を付与することができる。シャットダウン機能を有する多孔質層とするには、例えば、前記多孔質層に、80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子や、非水電解液中で膨潤し、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子を含有させればよい。なお、多孔質層には、熱溶融性微粒子と膨潤性微粒子の両者を添加してもよく、これらの複合体を添加しても構わない。
多孔質層における前記のシャットダウン機能は、例えば、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、および電解液を備え、正極および負極のうちの少なくとも一方の電極の電極合剤層上に多孔質層を有するか、または正極、負極、セパレータおよび電解液を備え、かつセパレータの少なくとも片面に多孔質層を有するモデルセルを作製し、このモデルセルを高温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度を多孔質層の有するシャットダウン温度として評価することができる(後述する本発明の非水電池用セパレータについても、そのシャットダウン温度を、これと同じ方法で評価することができる)。
80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜150℃のものを含有する多孔質層では、多孔質層が80〜150℃(またはそれ以上の温度)に曝されたときに、熱溶融性微粒子が溶融して多孔質層の空孔が閉塞されるため、正極と負極との間でのリチウムイオンの移動が阻害され、高温時における急激な放電反応が抑制される。よって、この場合、前記の内部抵抗上昇により評価される多孔質層のシャットダウン温度は、熱溶融性微粒子の融点以上150℃以下となる。熱溶融性微粒子の融点(前記融解温度)は、140℃以下であることがより好ましい。
熱溶融性微粒子の構成材料の具体例としては、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、ポリプロピレン(PP)、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性微粒子は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、熱溶融性微粒子は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
熱溶融性微粒子の粒径としては、耐熱温度が150℃以上の微粒子と同じ測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、0.001μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また15μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
非水電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子を有する多孔質層を有する電池では、内部が高温になったときに、膨潤性微粒子の膨潤によって非水電解液を吸収して大きく膨張する(以下、膨潤性微粒子における温度の上昇に伴って膨潤度が増大する機能を「熱膨潤性」という)ことにより、多孔質層内のLiイオンの伝導性を著しく低下させるため、電池の内部抵抗が上昇し、前記のシャットダウン機能を確実に確保することが可能となる。膨潤性微粒子としては、前記の熱膨潤性を示す温度が、75〜135℃であるものが好ましい。
このような熱膨潤性を有する膨潤性微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン(PS)、架橋アクリル樹脂〔例えば、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)〕、架橋フッ素樹脂〔例えば、架橋ポリフッ化ビニリデン(PVDF)〕などが好適であり、架橋PMMAが特に好ましい。
膨潤性微粒子の粒径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径で、0.1〜20μmであることが好ましい。
膨潤性微粒子の市販品としては、例えば、ガンツ化成社製の架橋PMMA「ガンツパール(製品名)」、東洋インキ社製の架橋PMMA「RSP1079(製品名)」などが入手可能である。
なお、熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を多孔質層に含有させることでシャットダウン機能を持たせる場合、良好なシャットダウン機能を確保する点からは、多孔質層中における熱溶融性微粒子および/または膨潤性微粒子の含有量は、多孔質層の構成成分の全体積中、5〜70体積%であることが好ましい。これらの微粒子の含有量が少なすぎると、これらを含有させることによるシャットダウン効果が小さくなることがあり、多すぎると、多孔質層中における耐熱温度が150℃以上の微粒子や繊維状物の含有量が減ることになるため、これらによって確保される効果が小さくなることがある。
本発明の多孔質層の厚みは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
また、本発明の多孔質層の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。多孔質層の空孔率は、多孔質層の厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記式(3)を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = 100−(Σa/ρ)×(m/t) (3)
ここで、前記式(3)中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:多孔質層の単位面積あたりの質量(g/cm)、t:多孔質層の厚み(cm)である。
本発明の多孔質層は、耐熱温度が150℃以上の微粒子および有機バインダ、更には必要に応じて使用される繊維状物、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを含有する多孔質層形成用組成物(溶媒を含む組成物)を、基材となる多孔質樹脂フィルム(本発明の非水電池用セパレータとする場合)上や、非水電池用の電極の電極合剤層(本発明の非水電池用電極とする場合)上に塗布し、乾燥する工程を経て形成することができる。
また、多孔質層が繊維状物のシート状物(織布、不織布など)を含む場合には、例えば、シート状物を多孔質層形成用組成物中に含浸させ、必要に応じてギャップに通して多孔質層形成用組成物のシート状物の空隙中への侵入を促進させたり、シート状物に多孔質層形成用組成物を塗布した後にギャップに通して多孔質層形成用組成物をシート状物の空隙中へ侵入させたりした後に、乾燥する工程を経て多孔質層を形成することもできる。
多孔質層形成用組成物は、耐熱温度が150℃以上の微粒子および有機バインダ、更には必要に応じて使用される繊維状物、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。多孔質層形成用組成物に用いられる溶媒は、前記の各微粒子を均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
多孔質層形成用組成物は、耐熱温度が150℃以上の微粒子および有機バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子として板状粒子を用いた場合、その配向性を高めるには、多孔質層形成用組成物を基材(多孔質樹脂フィルムや電極、繊維状物のシート状物)に塗布する際に、前記組成物のシェアをかける方法;高固形分濃度(例えば50〜80質量%)の多孔質層形成用組成物を使用する方法;耐熱温度が150℃以上の微粒子を溶媒に、ディスパー、アジター、ホモジナイザー、ボールミル、アトライター、ジェットミルなどの各種混合・攪拌装置、分散装置などを用いて分散させ、得られた分散体にバインダ(更に、必要に応じて繊維状物、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)を添加・混合して調製した多孔質層形成用組成物を使用する方法;表面に油脂類、界面活性剤、シランカップリング剤などの分散性剤を作用させて、表面を改質した耐熱温度が150℃以上の微粒子を用いて調製した多孔質層形成用組成物を使用する方法;形状、径またはアスペクト比の異なる耐熱温度が150℃以上の微粒子を併用して調製した多孔質層形成用組成物を使用する方法;多孔質層形成用組成物を基材上に塗布した後の乾燥条件を制御する方法;本発明の多孔質層を有するセパレータ(本発明のセパレータ)の場合には、セパレータ全体を加圧や加熱加圧プレスする方法;多孔質層形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥前に磁場をかける方法;などが採用でき、これらの方法をそれぞれ単独で実施してもよく、2種以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
本発明の非水電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)は、本発明の多孔質層を多孔質樹脂フィルム上に形成したものである。
本発明のセパレータにおいて、多孔質樹脂フィルムによってシャットダウン機能を確保する場合、多孔質樹脂フィルムを構成する樹脂には、前記熱溶融性微粒子を構成する樹脂と同様の樹脂(熱可塑性樹脂)を使用することができる。なお、多孔質樹脂フィルムのシャットダウン温度は80℃〜150℃の範囲に設定することが望ましく、従ってこれを構成する熱可塑性樹脂にも、融点が80〜150℃のものを用いることが望ましい。
他方、セパレータの耐熱性を重視して、シャットダウン機能を付与しない場合には、耐熱性の多孔質樹脂フィルムを用いることもできる。このような多孔質樹脂フィルムの具体的な構成材料としては、耐熱温度が150℃以上で、電池に用いる非水電解液に対して安定であり、更に電池内部での酸化還元反応に対して安定である樹脂であればいずれでもよい。より具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、PAN、ポリエステル(PET、PBT、PENなど)などの耐熱性樹脂が挙げられる。
多孔質樹脂フィルムには、例えば、従来公知の非水電池などで使用されている前記例示の樹脂で構成された多孔質フィルム、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質フィルム(微多孔膜)を用いることができる。また、薬剤や超臨界COなどを用いた発泡法により微多孔化したフィルムを用いることもできる。
本発明のセパレータにおいては、本発明の多孔質層の作用によって、多孔質樹脂フィルムに熱収縮しやすいものを適用しても良好な耐熱性(耐熱収縮性)を確保し得ることから、例えば、良好なシャットダウン機能を確保し得る多孔質樹脂フィルムを採用することが好ましく、ポリオレフィン(PE、PP、エチレン−プロピレン共重合体など)製の多孔質フィルム(微多孔膜)を用いることがより好ましい。
本発明のセパレータにおいては、多孔質層および多孔質樹脂フィルムは、それぞれ1層ずつである必要はなく、一方または両方が2層以上であってもよいが、セパレータの層数をあまり増やしすぎることは好ましくなく、例えば、多孔質層および多孔質樹脂フィルムの総層数が5層以下であることが好ましい。
セパレータを適用する非水電池の短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して、その取り扱い性を良好とする観点から、本発明のセパレータの厚みは、例えば、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。他方、セパレータを適用する非水電池のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
また、多孔質層の厚みをX(μm)、多孔質樹脂フィルムの厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率Y/Xを1〜20としつつ、セパレータ全体の厚みが前記好適値を満足するようにすることが好ましい。Y/Xが大きすぎると、多孔質層が薄くなりすぎて、例えば、多孔質樹脂フィルムの高温時での寸法安定性が劣る場合に、その熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞がある。また、Y/Xが小さすぎると、多孔質層が厚くなりすぎて、セパレータ全体の厚みを増大させ、負荷特性などの電池特性の低下を引き起こす虞がある。なお、セパレータが、多孔質層を複数枚有する場合には、厚みXはその総厚みであり、多孔質樹脂フィルムを複数枚有する場合には、厚みYはその総厚みである。
なお、多孔質樹脂フィルムの厚み(セパレータが多孔質樹脂フィルムを複数枚有する場合には、その総厚み)を具体的な値で表現すると、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。また、セパレータにおける多孔質層の厚みに関しては、セパレータが多孔質層を複数有する場合には、その総厚みが、先に述べた多孔質層の好適厚みを満たしていることが好ましい。
また、本発明のセパレータは、実施例に記載の方法で測定される非水電解液(その溶媒)中、150℃での熱収縮率が、5%以下であることが好ましい。これまでに説明した構成のセパレータとすることで、かかる熱収縮率を確保することができる。
また、セパレータの空孔率は、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、前記式(3)において、mをセパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tをセパレータの厚み(cm)とすることで、前記式(3)を用いて求めることができる。
更に、前記式(3)において、mを多孔質樹脂フィルムの単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質樹脂フィルムの厚み(cm)とすることで、前記式(3)を用いて多孔質樹脂フィルムの空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質樹脂フィルムの空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、セパレータの強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き敗れによる短絡が発生する虞がある。
また、セパレータの透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎるとセパレータの強度が小さくなることがある。
更にセパレータのガーレー値は下記式(4)の関係を満たすことが望ましい。
Gs≦max{Ga,Gb}+10 (4)
前記式(4)中、Gs:セパレータのガーレー値、Ga:多孔質樹脂フィルムのガーレー値、Gb:本発明の多孔質層のガーレー値、max{a,b}:aとbのどちらか大きい方である。ただし、Gbは、下記式(5)を用いて求める。
Gb=Gs−Ga (5)
前記の突き刺し強度や透気度は、これまでに説明した構成のセパレータとすることで確保できる。
本発明のセパレータにおいて、多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の180°の剥離強度は、0.6N/cm以上であることが好ましく、1.0N/cm以上であることがより好ましい。ここでいう剥離強度とは、以下の方法により測定される値である。セパレータから長さ5cm×2cmの大きさに切り出した試験片に、多孔質層表面の2cm×2cmの領域に粘着テープを貼り付ける。なお、粘着テープのサイズは幅2cm、長さ約5cmで、粘着テープの片端と多孔質層の片端とが揃うように貼り付ける。その後、引張試験機を用い、試験片における粘着テープを貼り付けた方とは反対側の端と、試験片に貼り付けた粘着テープにおける試験片に貼り付けた方とは反対側の端とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、多孔質層が剥離した時の強度を測定する。
本発明のセパレータは、多孔質層(本発明の多孔質層)が、接着性に優れる前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体であって、前記の共重合比を満たすものを有機バインダとして使用していることから、多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の剥離強度を前記のように高めることができる。また、前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体であって、前記の共重合比を満たすものは、高温の非水電解液(非水電解液溶媒)中での耐性に優れていることから、本発明のセパレータが使用された非水電池内が高温となっても、多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の剥離強度を高い値に維持できるため、多孔質層の作用によってセパレータ全体の収縮を高度に抑制することが可能であり、より安全性の高い非水電池を構成できる。
本発明の非水電池用電極(以下、単に「電極」という)は、本発明の多孔質層を電極合剤層(正極合剤層または負極合剤層)上に形成したものである。本発明の電極は、非水電池の正極または負極に使用される。なお、本発明の電極が使用される電池としては、非水一次電池と非水二次電池とがあるが、以下には、本発明の電極が使用される電池として主要な非水二次電池に適した構成の電極の詳細について説明する。
非水電池の正極に使用される場合の本発明の電極としては、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する電極合剤層(正極合剤層)を、集電体の片面または両面に有し、かつこれらの電極合剤層上に、本発明の多孔質層が形成された構造のものが挙げられる。
正極活物質としては、例えば、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物;LiMnO、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物;LiMn、Li4/3Ti5/3などのスピネル構造のリチウム含有複合酸化物;LiFePOなどのオリビン構造のリチウム含有複合酸化物;前記の酸化物を基本組成とし各種元素で置換した酸化物;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料を用いることが好ましく、また、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることもできる。
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水などの溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施し、更にこの正極を基材として、その正極合剤層上に、前記の方法で本発明の多孔質層を形成する工程を経て製造することができる。ただし、正極は、前記の方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
正極集電体には、アルミニウム製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、アルミニウム箔が用いられる。正極集電体の厚みは、10〜30μmであることが好ましい。
また、正極には、必要に応じて、非水電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の含有量が80.0〜99.8質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が0.1〜10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.1〜10質量%であることが好ましい。また、正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、1〜100μmであることが好ましい。
非水電池の負極に使用される場合の本発明の電極としては、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを含有する電極合剤層(負極合剤層)を、集電体の片面または両面に有し、かつこれらの電極合剤層上に、本発明の多孔質層が形成された構造のものが挙げられる。
負極活物質としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料が挙げられる。また、リチウムまたはリチウム含有化合物なども負極活物質として使用することができる。前記のリチウム含有化合物としては、例えば、錫酸化物、ケイ素酸化物、ニッケル−ケイ素系合金、マグネシウム−ケイ素系合金、タングステン酸化物、リチウム鉄複合酸化物などの他、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金が挙げられる。これら例示の負極活物質の中には、製造時にはリチウムを含んでいないものもあるが、充電時にはリチウムを含んだ状態になる。
負極合剤層に係るバインダには、正極合剤層に係るバインダとして先に例示した各種のバインダと同じものを使用することができる。
負極合剤層に導電助剤を含有させる場合、その導電助剤には、正極合剤層に係る導電助剤として先に例示した各種の導電助剤と同じものを使用することができる。
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤などを含有する負極合剤を、NMPや水などの溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施し、更にこの負極を基材として、その負極合剤層上に、前記の方法で本発明の多孔質層を形成する工程を経て製造することができる。ただし、負極は、前記の方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
負極の集電体には、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金などからなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網などを用い得るが、通常、厚みが5〜30μmの銅箔が好適に用いられる。
また、負極には、必要に応じて、非水電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
負極合剤層においては、例えば、負極活物質の含有量が70〜99質量%であることが好ましく、バインダの含有量が1〜30質量%であることが好ましい。また、導電助剤を使用する場合には、負極合剤層における導電助剤の含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。更に、負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、1〜100μmであることが好ましい。
本発明の非水電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を有しており、セパレータが本発明のセパレータであるか、または正極、負極および非水電解質を有しており、正極および負極のうちの少なくとも一方が本発明の電極であればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られているリチウム二次電池のなどの非水電池で採用されている各種構成および構造を適用することができる。
本発明の非水電池において、本発明のセパレータを使用しない場合には、本発明の電極に係る多孔質層(本発明の多孔質層)がセパレータの役割を担うが、別途セパレータを使用してもよく、その場合のセパレータには、セパレータを構成するための前記多孔質樹脂フィルムを使用することができる。また、本発明の非水電池において、本発明の電極を正極に使用しない場合には、その正極には、本発明の多孔質層を有することを除いて本発明の電極と同じ構成の正極を使用することができる。更に、本発明の非水電池において、本発明の電極を負極に使用しない場合には、その正極には、本発明の多孔質層を有することを除いて本発明の電極と同じ構成の負極を使用することができる。
本発明の非水電池において、正極と負極とは、セパレータを介在させて積層するか、または、少なくとも一方の電極合剤層上に形成した多孔質層が間になるように積層して構成した積層体(積層電極体)や、この積層体を渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)の形態で使用される。
非水電池の非水電解質としては、上述したように、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液(非水電解液)が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF などの無機リチウム塩;LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(ROSO〔ここでRはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
また、前記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
更に、前記の非水電解液を含有してゲル化するような高分子材料を添加して、非水電解液をゲル状(ゲル状電解質)にして電池に用いてもよい。非水電解液をゲル状とするための高分子材料としては、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、PAN、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を有する架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルなど、公知のゲル状電解質形成可能なホストポリマーが挙げられる。
本発明の非水電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:90質量部に、導電助剤であるカーボンブラック:5質量部を加えて混合し、この混合物にバインダであるPVDF:5質量部をNMPに溶解させた溶液を加えて混合して正極合剤含有スラリーとし、70メッシュの網を通過させて粒径が大きいものを取り除いた。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後ロールプレス機によって圧縮成形して総厚みを105μmにした後、切断し、集電体の露出部にアルミニウム製のリード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質である人造黒鉛:95質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを混合し、更にNMPを加えて混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後ロールプレス機によって圧縮成形して総厚みを100μmにした後、切断し、集電体の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積比10:10:30の混合溶媒にLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させたものに、ビニレンカーボネートを、非水電解液の全量に対して2.5質量%となるように添加して、非水電解液を調製した。
<セパレータの作製>
耐熱温度が150℃以上の微粒子であるベーマイト粉末(板状、平均粒径:1μm、アスペクト比:10、比表面積:8m/g):4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で90:10、分子量:50万)の5質量%濃度の水溶液:1600gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分濃度が30質量%の多孔質層形成用スラリーを調製した。
片面をコロナ放電処理したPE製微多孔膜(厚み:16μm、空孔率:40%、PEの融点:135℃)の処理面上に、前記の多孔質層形成用スラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して多孔質層を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。
<電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを、多孔質層が正極側に向くように前記正極と前記負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。得られた巻回電極体を、径:18mm、高さ:65mmの鉄製外装缶(電池ケース)に入れ、非水電解液を注入した後に封止を行って、図1に示す構造の非水二次電池を作製した。
ここで、図1に示す電池について説明すると、図1に示す非水二次電池では、正極1と負極2とがセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、巻回電極体として非水電解液4と共に電池ケース5内に収容されている。なお、図1では、繁雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体などは図示しておらず、セパレータの各層も示していない。
電池ケース5はステンレス鋼製で、その底部には前記巻回電極体の挿入に先立って、PPからなる絶縁体6が配置されている。封口板7は、アルミニウム製で円板状をしていて、その中央部に薄肉部7aが設けられ、かつ前記薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、この薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。なお、前記の封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
端子板8は、圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、この端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、アルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、前記突出部9aの下面が、前記のように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を構成している。絶縁パッキング10は、PP製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から非水電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12はPP製で、リード体13はアルミニウム製で、前記封口板7と正極1とを接続し、巻回電極体の上部には絶縁体14が配置され、負極2と電池ケース5の底部とはニッケル製のリード体15で接続されている。
この非水二次電池においては、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとが溶接部分11で接触し、防爆弁9の周縁部と端子板8の周縁部とが接触し、正極1と封口板7とは正極側のリード体13で接続されているので、通常の状態では、正極1と端子板8とはリード体13、封口板7、防爆弁9およびそれらの溶接部分11によって電気的接続が得られ、電路として正常に機能する。
そして、電池が高温に曝されるなど、電池に異常事態が起こり、電池内部にガスが発生して電池の内圧が上昇した場合には、その内圧上昇により、防爆弁9の中央部が内圧方向(図1では、上側の方向)に変形し、それに伴って溶接部分11で一体化されている薄肉部7aに剪断力が働いて該薄肉部7aが破断するか、または防爆弁9の突出部9aと封口板7の薄肉部7aとの溶接部分11が剥離した後、この防爆弁9に設けられている薄肉部9bが開裂してガスを端子板8のガス排出口8aから電池外部に排出させて電池の破裂を防止することができるように設計されている。
本実施例の非水二次電池は、4.2Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.3V)の設計電気容量は、1400mAhである(後記の全ての実施例および比較例の電池も同様である)。
実施例2
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末:4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で70:30、分子量:50万)の5質量濃度の%水溶液:1600gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分濃度が30質量%のスラリーを得た。このスラリーにフッ素系界面活性剤を水:100質量部に対して0.1質量部となる量で添加し、均一になるまで攪拌して、多孔質層形成用スラリーを調製した。
実施例1でセパレータの作製に用いたものと同じPE製微多孔膜上にグラビアコーターを用いて前記の多孔質層形成用スラリーを塗布した後、乾燥することによって厚みが20μmのセパレータを得た。そして、前記のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例3
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末:4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で90:10、分子量:100万)の5質量%濃度の水溶液:1600gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分濃度が30質量%のスラリーを得た。このスラリーにフッ素系界面活性剤を水:100質量部に対して0.1質量部となる量で添加し、均一になるまで攪拌して、多孔質層形成用スラリーを調製した。
前記の多孔質層形成用スラリーを用いた以外は実施例2と同様にして厚みが20μmのセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例4
PE製微多孔膜に代えて、PP層とPE層とを、PP/PE/PPの順に3層積層した微多孔膜(厚み:16μm、空孔率:45%、各層の厚み;PP層:5μm/PE層:6μm/PP層:5μm)を用いた以外は、実施例3と同様にしてセパレータを作製した。そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例5
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末:4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、熱溶融性微粒子であるPE微粒子(PEの融点:135℃)の水分散体(固形分濃度40質量%):4000gと、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で90:10、分子量:50万)の5質量%濃度の水溶液:2100gとを加え、更に水を固形分濃度が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌して、多孔質層形成用スラリーを得た。
PET製不織布(目付け8g/m、厚み16μm)に前記の多孔質層形成用スラリーをディップ塗布して、厚みが20μmの多孔質膜(多孔質層)を作製した。そして、この多孔質膜をセパレータとして用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例6
フィラーとして、アルミナ微粒子(平均粒径0.4μm、比表面積 7m/g)を用い、アルミナ粉末4000gを、水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、熱溶融性微粒子であるPE微粒子(PEの融点135℃)の水分散体(固形分濃度:40質量%):4000gと、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で90:10、分子量:50万)の5質量%濃度の水溶液:1600gとを加え、更に水を固形分濃度が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌して、多孔質層形成用スラリーを調製した。
前記の多孔質層形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両側の負極合剤層上にグラビアコーターを用いて塗布して乾燥し、負極の片面あたりの厚みが20μmの多孔質層を形成した。
実施例1で作製したものと同じ正極と前記の負極とを使用し、セパレータを使用しなかった以外は実施例1と同様にして巻回電極体を作製し、この巻回電極体を用いた以外は実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例7
実施例6で調製したものと同じ多孔質層形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両側の負極合剤層上にグラビアコーターを用いて塗布して乾燥し、負極の片面あたりの厚みが10μmの多孔質層を形成した。また、実施例6で調製したものと同じ多孔質層形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ正極の両側の正極合剤層上にグラビアコーターを用いて塗布して乾燥し、正極の片面あたりの厚みが10μmの多孔質層を形成した。
前記の負極と前記の正極とを用いた以外は実施例6と同様して巻回電極体を作製し、この巻回電極体を用いた以外は実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例1
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末:4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーに、有機バインダであるポリN−ビニルアセトアミド(N−ビニルアセトアミドの単独重合体、分子量100万)の5質量%濃度の水溶液:1200gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分濃度が30質量%の多孔質層形成用スラリーを調製した。そして、この多孔質層形成用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例2
比較例1で用いたものと同じベーマイト粒子:4000gを、水:4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。このスラリーを、有機バインダであるN−ビニルアセトアミドとアクリル酸Na塩との共重合体(共重合比が質量比で40:60、分子量:50万)の5質量%濃度の水溶液:1200gを加え、均一に分散するまで室温で攪拌して、多孔質層形成用スラリーを調製した。そして、この多孔質層形成用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例1〜4および比較例1、2の非水二次電池に使用したセパレータについて、前記の方法によって多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の180°の剥離強度を測定した。
また、実施例1〜4および比較例1、2の非水二次電池に使用したセパレータ、実施例5の非水二次電池にセパレータとして使用した多孔質膜(多孔質層)、並びに実施例6、7の非水二次電池に使用した多孔質層について、非水電解液溶媒中での熱収縮率測定を行った。
実施例1〜4および比較例1、2の非水二次電池に係るセパレータについては、これらのMD方向、TD方向をそれぞれ5cm、10cmとした短冊状のサンプル片を切り取った。ここで、MD方向とは多孔質樹脂フィルム作製の際の機械方向であり、TD方向はそれに垂直な方向である。このサンプル片と非水電解液溶媒(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒)とを耐圧耐熱性容器に入れ、この容器を150℃の恒温槽に入れて1時間後に取り出し、更に耐圧耐熱性容器からサンプル片を取り出して、MD方向およびTD方向の長さを測定することで、それぞれの方向の熱収縮率を測定し、MD方向の熱収縮率およびTD方向の熱収縮率のうちのより大きい方の値を、セパレータの熱収縮率とした。
また、実施例5の非水二次電池に係る多孔質膜については、任意の方向で5cm×10cmとした短冊状のサンプル片を作製した以外は、実施例1の電池に係るセパレータなどと同じ方法で熱収縮率を測定した。更に、実施例6、7の非水二次電池に係る多孔質層については、電極と一体化した状態で5cm×10cmの短冊状のサンプル片を作製した以外は、実施例1の電池に係るセパレータなどと同じ方法で熱収縮率を測定した。なお、実施例7の非水二次電池に係る多孔質層については、正極表面に形成したもの、および負極表面に形成したもののうちのより大きい値の方を、その熱収縮率とした。
また、実施例1〜4および比較例1、2の非水二次電池に係るセパレータ、並びに実施例5の非水二次電池に係る多孔質膜について、前記の方法で水分量を測定した。
前記の各評価結果を表1に示す。なお、表1では、セパレータにおける多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の180°の剥離強度を、単に「剥離強度」と記載し、セパレータまたは多孔質層の非水電解液溶媒中における熱収縮率を、単に「熱収縮率」と記載する。
Figure 2015046126
表1に示す通り、実施例1〜7の非水二次電池に使用したセパレータまたは多孔質層は、非水電解液溶媒中、150℃での熱収縮率が小さかった。すなわち、これらのセパレータや多孔質層は、電池内において非水電解液溶媒の共存下で高温に曝されても収縮し難いことから、安全性に優れた非水二次電池を構成し得るといえる。なお、実施例1〜4の非水二次電池に係るセパレータにおける多孔質層と多孔質樹脂フィルムとの間の180°の剥離強度の測定結果から、実施例1〜7の非水二次電池に使用したセパレータまたは多孔質層で使用した有機バインダは、特定の共重合組成を有しているために、高い接着力を有していることが分かるが、更に前記の熱収縮率の測定結果から、非水電解液溶媒中で高温に曝されても、その優れた接着力が良好に維持できていることも分かる。
更に、実施例および比較例の非水二次電池について、以下の方法で充放電特性を評価した。まず、各電池について、0.2Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電を行った。充電終了までの総充電時間は15時間とした。そして、そのときの充電容量を測定した。次に、充電後の各電池について、0.2Cの放電電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電を行って放電容量を測定した。そして、各電池について、充電容量に対する放電容量の割合を百分率で表して、充電効率を求めた。
その結果、実施例1〜7および比較例1の電池では、充電効率がほぼ100%となり、電池として良好に作動することが確認できた。これに対し、比較例2の電池は、セパレータに係る多孔質層の有機バインダに、共重合組成が不適なものを使用したが、充電効率が低く、前記有機バインダの使用によってセパレータの水分量が多くなったことによるガス発生が顕著に認められた。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。
本発明の非水電池は、従来から知られているリチウム二次電池などの非水二次電池や、非水一次電池と同じ用途に適用することができる。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 非水電解質

Claims (12)

  1. 耐熱温度が150℃以上の微粒子と有機バインダとを含む非水電池用多孔質層であって、
    前記有機バインダとして、下記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドと下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合体を含み、
    前記共重合体における前記N−ビニルカルボン酸アミドと前記不飽和カルボン酸系モノマーとの共重合比が、質量比で50:50〜95:5であることを特徴とする非水電池用多孔質層。
    Figure 2015046126
    〔前記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す〕
    Figure 2015046126
    〔前記一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基または−COOMを、Rは水素原子、メチル基または−COOMを、M、MおよびMは、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基または有機アミノ基を表し、nは0または1である〕
  2. 前記一般式(1)で表されるN−ビニルカルボン酸アミドが、N−ビニルアセトアミドである請求項1に記載の非水電池用多孔質層。
  3. 前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩およびメタクリル酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の非水電池用多孔質層。
  4. 前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系モノマーが、アクリル酸のアルカリ金属塩またはメタクリル酸アルカリ金属塩である請求項3に記載の非水電池用多孔質層。
  5. 前記共重合体の分子量が、30,000〜5,000,000である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電池用多孔質層。
  6. 前記微粒子が、酸化物または水酸化物の微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の非水電池用多孔質層。
  7. 前記有機バインダの含有量が、0.5〜10質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の非水電池用多孔質層。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の非水電池用多孔質層を、多孔質樹脂フィルム上に形成したことを特徴とする非水電池用セパレータ。
  9. 前記多孔質樹脂フィルムが、ポリオレフィン微多孔膜である請求項8に記載の非水電池用セパレータ。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の非水電池用多孔質層を、電極合剤層上に形成したことを特徴とする非水電池用電極。
  11. 正極、負極、セパレータおよび非水電解質を有しており、前記セパレータが請求項8または9に記載の非水電池用セパレータであることを特徴とする非水電池。
  12. 正極、負極、および非水電解質を有しており、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、請求項10に記載の非水電池用電極であることを特徴とする非水電池。
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