JPWO2015040959A1 - 長尺光学フィルム、該長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

長尺光学フィルム、該長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

本発明の一局面は、セルロース誘導体と、シリカ系微粒子とを含み、長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差Ro550が、120nm以上160nm以下であり、以下の式(1)〜(3)を満たす、長尺光学フィルムである。1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)(式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である)

Description

本発明は、長尺光学フィルム、該長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
近年、一般的な表示装置として液晶表示装置が普及している。液晶表示装置には、表示性能や耐久性に対する要求が高まっており、良好なコントラストや色調バランスを広い視野角で得られることが求められている。また、昨今では、省電力への要望が高まるとともに、視野角および表示性能に対する要求も一層高まりつつある。このような状況において、新たな方式の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する。)をバックライトとして用いた有機ELディスプレイが注目されている。有機ELディスプレイは、消費電力が小さく、高い正面コントラストが得られるとともに、視野角特性も優れる。
一方、有機ELディスプレイでは、発光層からの光を視認側に効率よく取り出すために、陰極を構成する電極層として光反射性の高い金属材料を用いる方式や、別途反射部材として金属板を設けることにより鏡面を有する反射部材を光取り出し面とは反対側の面に設ける方式が一般的となっている。そのため、有機ELディスプレイでは、光取り出し用の反射部材に外光が反射して写り込みが発生し、照度の高い環境下ではコントラストが大きく低下するという問題がある。
このような問題を解決するために、たとえば、鏡面の外光反射を防止する円偏光素子を使用する方法がある(たとえば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような位相差板では、白色光に対して各波長での偏光状態に分布が生じ、有色の偏光に変換されるという問題がある。これは、位相差板を構成する材料が、位相差について波長分散性を有することに起因している。
このような問題を解決するために、たとえば、複屈折光の位相差が1/4波長であるλ/4波長板と、複屈折光の位相差が1/2波長であるλ/2波長板とを、それぞれの光軸が交差した状態で貼り合わせた位相差板がある(たとえば、特許文献2参照)。
しかしながら、このような位相差板は、製造工程が煩雑であることに加え、薄型化を達成できないという問題がある。
そこで、単層構成で、広帯域λ/4位相差フィルムを得るための技術として、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の複屈折性を有するモノマー単位とを共重合させた高分子フィルムを一軸延伸してλ/4位相差フィルムとする方法が検討されている(たとえば、特許文献3参照)。また、光学補償機能と偏光板保護フィルムとしての機能とを兼ね備えた光学フィルムが検討されている(たとえば、特許文献4参照)。これらのフィルムには、偏光板の製造適正に優れる観点から、セルロースエステル樹脂が好ましく使用される。ほかにも、湿度変動による位相差変動を抑制するために、フィルムの主成分であるセルロースエステル樹脂のエステル基に水が配位することを阻害する化合物を添加する方法が提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
しかしながら、特許文献3に記載の方法により得られる位相差フィルムは、偏光板を作製する際に偏光子との接着性が優れないという問題がある。また、特許文献3や4に記載の方法により得られるフィルムでは、セルロースエステル樹脂が好ましく使用されるが、セルロースエステル樹脂は、もともと位相差変動を生じやすく、湿度変動による位相差変動が生じやすい。
さらに、一般的に、長尺の光学フィルムを作製する場合、ヘイズの上昇を抑制する観点から、マット剤が添加される。しかしながら、マット剤を含有するセルロースエステルフィルムに特許文献5に記載の添加剤を加えると、マット剤が凝集してしまい、ヘイズが上昇するという問題がある。また、λ/4フィルムを作製するには、フィルム原反を高倍率で延伸する必要があるため、得られるフィルムの脆性が低下するという問題がある。
特開平8−321381号公報 特開平10−68816号公報 国際公開第2000/026705号 特開2007−47537号公報 特開2012―067218号公報
本発明は、これら上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、充分な位相差発現性を示し、湿度変動による位相差変動が抑制され、偏光子との接着性や脆性に優れ、ヘイズ上昇の抑制された長尺光学フィルム、該長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、セルロース誘導体と、シリカ系微粒子とを含み、長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差Ro550が120nm以上160nm以下であり、以下の式(1)〜(3)を満たす、長尺光学フィルムである。
1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)
0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)
0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)
(式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である。)
上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載と添付図面とから明らかになるだろう。
図1は、斜め延伸における収縮倍率を説明するための模式図である。 図2は、本発明の一実施形態の光学フィルムの製造に適用可能な斜め延伸機のレールパターンの一例を示した概略図である。 図3は、本発明の一実施形態の光学フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図である。 図4は、本発明の一実施形態の光学フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図である。 図5は、本発明の一実施形態の有機ELディスプレイの構成の一例を示す模式図である。
本発明者らは、鋭意検討の末、マット剤であるシリカ系微粒子とセルロース誘導体とを含む長尺光学フィルムにおいて、セルロース誘導体の置換基の割合を所定の範囲とすることにより、上記課題を解決し得ることを見いだし、後述する本発明を完成させた。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<長尺光学フィルム>
本実施形態の長尺光学フィルム(以下、単に光学フィルムや位相差フィルムともいう)は、長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であることを特徴とする。すなわち、長尺光学フィルムは、その長手方向と面内の遅相軸とのなす角が、40〜50°である。また、長尺光学フィルムは、波長550nmにおける面内位相差Ro550が120nm以上160nm以下であることを特徴とする。また、長尺光学フィルムは、セルロース誘導体とシリカ系微粒子とを含み、セルロース誘導体が、以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。本実施形態の長尺光学フィルムは、遅相軸や面内位相差Ro550が上記範囲内となる光学特性を有しているため、可視光の広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができる。また、長尺光学フィルムは、構成成分として、置換基の割合が以下の式(1)〜(3)を満たすよう調整されたセルロース誘導体を含むため、湿度変動に対する光学性能(色味性能、反射特性)の変化が抑制されるとともに、ヘイズ上昇の抑制効果も充分に得られ、かつ、フィルムに優れた脆性が付与される。以下、本実施形態の長尺光学フィルムについて、光学特性、構成成分の順に説明する。
1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)
0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)
0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)
式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である。
なお、本明細書において、「長尺」とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有するものをいう。また、「光学フィルム」とは、透過する光に対して所望の位相差を付与する光学的な機能を有するフィルムをいう。また、光学的な機能としては、たとえば、ある特定の波長の直線偏光を楕円偏光や円偏光に変換する、あるいは楕円偏光や円偏光を直線偏光に変換する機能等が挙げられる。特に、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となる特性を備えた光学フィルムを「λ/4位相差フィルム」という。また、本実施形態の光学フィルムは、可視光の波長の広い範囲において直線偏光をほぼ完全な円偏光に変換するために、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。なお、本明細書において、「可視光の波長の範囲において概ね1/4の位相差」とは、波長400nm以上700nm以下の領域において、長波長ほど位相差値が大きい逆波長分散特性を備えることをいう。
(フィルムの光学特性)
本実施形態の光学フィルムにおける面内位相差Roは、以下の式で定義される。
Ro=(nx−ny)×d(nm)
(式中、nxは光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し、nyは光学フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し、d(nm)は、光学フィルムの厚みを表す。)
また、Roは、自動複屈折率計を用いて、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で測定することができる。自動複屈折率計としては、例えば、Axometrics社製のAxoScan、王子計測機器(株)製のKOBRA−21ADH等が挙げられる。
ここで、波長550nmにおける光学フィルムの面内位相差をRo550とする場合において、本実施形態の光学フィルムは、Ro550が120nm以上160nm以下であることを特徴とする。なお、この波長550nmにおける面内位相差Ro550とは、波長550nmの光で測定された面内位相差である。Ro550は、120nm以上160nm以下であればよく、好ましくは130nm以上150nm以下であり、より好ましくは135nm以上148nm以下である。Ro550が120nm以上160nm以下の範囲を超える場合(Ro550が、120nm未満であるか、又は160nmを超える場合)、波長550nmにおける位相差が概ね1/4波長とならず、このようなフィルムを用いて円偏光板を作製して、たとえば、有機ELディスプレイに適用した場合に、室内照明の映り込みなどが大きくなり、明所では黒色が表現できなくなる場合がある。
また、波長450nmにおける光学フィルムの面内位相差をRo450とし、波長550nmにおける光学フィルムの面内位相差をRo550とする場合において、Ro550に対するRo450の比率(Ro450/Ro550)は、0.70以上0.98以下であることが好ましく、0.75以上0.92以下であることがより好ましく、0.80以上0.87以下であることがさらに好ましい。なお、この波長450nmにおける面内位相差Ro450とは、波長450nmの光で測定された面内位相差である。Ro450/Ro550が0.70以上0.98以下の範囲を超える場合(Ro450/Ro550が、0.70未満であるか、又は0.98を超える場合)、光学フィルムは、位相差が適度な逆波長分散特性を示さず、たとえば円偏光板を作製した場合に色相変化や湿度環境による色相変動を起こす傾向がある。
本実施形態の光学フィルムは、長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であり、好ましくは42〜48°であり、より好ましくは43〜47°である。本実施形態の光学フィルムは、このような遅相軸を有するため、ロール状の原反フィルムと、長尺方向に平行な透過軸を有するロール状の偏光子フィルムとをそれぞれ巻き出して、長尺方向同士が重なるように、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせることで、円偏光板を容易に製造することができる。これにより、フィルムのカットロスを減らすことができる。長尺方向に対する遅相軸の範囲をこのような範囲とする方法としては、たとえば、製膜された延伸前のフィルムに対して、後述する斜め延伸を行う方法がある。
(フィルムの構成成分)
次に、本実施形態の光学フィルムの構成成分について説明する。光学フィルムは、主たる成分となる樹脂成分(セルロース誘導体を含む樹脂組成物)と、添加剤成分(上記樹脂成分以外の成分、シリカ系微粒子等のマット剤を含む)とから構成される。
(セルロース誘導体を含む樹脂組成物)
光学フィルムは、主たる成分として、セルロース誘導体を含む。なお、本明細書において、「主たる成分」とは、光学フィルムを構成する樹脂成分において55質量%以上含まれる成分をいう。よって、光学フィルムは、構成する樹脂成分として、セルロース誘導体を55質量%以上含む樹脂組成物が用いられたものが挙げられる。
セルロース誘導体は、セルロースの水酸基が置換基により置換された構造を有し、具体的には、後述するエステル結合やエーテル結合によりグルコース骨格に置換基が結合した構造を有する。本実施形態の光学フィルムは、グルコース骨格が有する置換基の置換度が以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。なお、「グルコース骨格が有する置換基」としては、後述する「グルコース骨格とエステル結合した置換基」および「グルコース骨格とエーテル結合した置換基」が挙げられる。
1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)
0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)
0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)
(式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である。)
また、セルロース誘導体は、下記一般式で表されるグルコース骨格単位を有する。
Figure 2015040959
(式中、Rは、グルコース骨格の2位に位置する置換基であり、Rは、グルコース骨格の3位に位置する置換基であり、Rは、グルコース骨格の6位に位置する置換基である。R、RおよびRは、置換度が上記式(1)〜(3)を満たすように選択されればよく、各々水素原子または置換基を表す。)
式(1)に示されるように、総置換度Yは、1.8以上2.6以下であり、好ましくは1.9以上2.4以下であり、より好ましくは2.0以上2.3以下である。総置換度Yが1.8未満の場合、単独で溶解する溶剤の種類が限定される上に、フィルムの吸水性が高くなり、湿度変動により位相差が変動する傾向がある。一方、総置換度Yが2.6を超える場合、充分な位相差発現性が発揮されないばかりか、樹脂が高価になりコストがかかる傾向がある。本実施形態では、総置換度Yは、エステル平均置換度XESとエーテル平均置換度XETHとの和により表される。なお、本明細書において「総置換度」とは、平均総置換度をいい、セルロースを構成するグルコース骨格が有する3個のヒドロキシ基(水酸基)のうち、エステル化またはエーテル化されているヒドロキシ基の数の平均値で示され、0〜3.0の値をとる。そのため、総置換度Yが1.8以上2.6以下である場合、ヒドロキシ基の割合は、0.4以上1.2以下となる。ヒドロキシ基の割合がこのような範囲である場合、セルロース誘導体間の水素結合性が高まるため、得られる光学フィルムの脆性が改良される。また、ヒドロキシ基の割合がこのような範囲であれば、光学フィルムは、膜厚が、たとえば、20〜60μmの場合に、所望の面内位相差値Roを発現しやすい。
式(2)に示されるように、エステル平均置換度XESは、0.3以上1.5以下であり、好ましくは0.5以上1.4以下であり、より好ましくは0.7以上1.4以下である。エステル平均置換度XESが0.3未満の場合、フィルムの透明性が低下する傾向がある。一方、エステル平均置換度XESが1.5を超える場合、フィルムの吸水性が高くなり、湿度変動により位相差が変動する傾向がある。
式(3)に示されるように、エーテル平均置換度XETHは、0.3以上2.3以下であり、好ましくは0.5以上1.9以下であり、より好ましくは0.5以上1.6以下である。エーテル平均置換度XETHが0.3未満の場合、上記式(2)に示される範囲に基づいてエステルに置換されたフィルムの総置換度Yが下限値である1.8に満たなくなり、湿度変動により位相差が変動する傾向がある。一方、エーテル平均置換度XETHが2.3を超える場合、後述する方法により円偏光板を作製する際に、接着性が優れず、製造適正が悪くなる傾向があるほか、上記式(2)に示される範囲に基づいてエステルに置換されたフィルムの総置換度Yが上限値である2.6を超え、得られるフィルムが充分な位相差発現性を発揮しない傾向がある。
以下、本実施形態のセルロース誘導体が上記式(1)〜(3)を満たすための、セルロース誘導体が備える置換基について説明する。
(グルコース骨格とエステル結合した置換基)
本実施形態のセルロース誘導体は、式(2)を満たすよう、グルコース骨格にエステル結合した置換基を有する。
グルコース骨格とエステル結合した置換基としては、上記セルロース誘導体の一般式におけるR、RおよびRが脂肪族アシル基、芳香族基が挙げられる。芳香族基としては芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基などが挙げられる。芳香族基としては、芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、芳香族炭化水素基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、6〜10のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、チオフェニル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
グルコース骨格とエーテル結合で結合している芳香族基の具体例としては、ベンジルエーテル、4−フェニルベンジルエーテル、4−チオメチルベンジルエーテル、4−メトキシベンジルエーテル、2,4,5−トリメチルベンジルエーテル、2,4,5−トリメトキシベンジルエーテル等が挙げられる。また、グルコース骨格とエーテル結合で結合している芳香族基の他の例としては、2−チエニルエーテル、3−チエニルエーテル、4−チアゾリルエーテル、2−チアゾリルエーテル、2−フリルエーテル、3−フリルエーテル、4−オキサゾリルエーテル、2−オキサゾリルエーテル、2−ピロリルエーテル、3−ピロリルエーテル、3−イミダゾリルエーテル、2−トリアゾリルエーテル、1−ピロリルエーテル、1−イミダゾリルエーテル、1−ピラゾリルエーテル、2−ピリジルエーテル、3−ピリジルエーテル、4−ピリジルエーテル、2−ピラジルエーテル、4−ピリミジルエーテル、2−ピリミジルエーテル、2−キノリルエーテル、2−キノキサリルエーテル、7−キノリルエーテル、9−カルバゾリルエーテル、2−ベンゾチエニルエーテル、2−ベンゾフリルエーテル、2−インドリルエーテル、2−ベンゾチアゾリルエーテル、2−ベンゾオキサゾリルエーテル、2−ベンゾイミダゾリルエーテル等が挙げられる。
芳香族アシル基の好ましい例としては、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル、4−チオメチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、2,4,5−トリメチルベンゾイル基、3,4,5−トリメトキシベンゾイル基およびナフトイル基等が挙げられる。また、芳香族アシル基の他の例としては、2−チオフェンカルボン酸エステル、3−チオフェンカルボン酸エステル、4−チアゾールカルボン酸エステル、2−チアゾールカルボン酸エステル、2−フランカルボン酸エステル、3−フランカルボン酸エステル、4−オキサゾールカルボン酸エステル、2−オキサゾールカルボン酸エステル、2−ピロールカルボン酸エステル、3−ピロールカルボン酸エステル、3−イミダゾールカルボン酸エステル、2−トリアゾールカルボン酸エステル、1−ピロールカルボン酸エステル、1−イミダゾールカルボン酸エステル、1−ピラゾールカルボン酸エステル、2−ピリジンカルボン酸エステル、3−ピリジンカルボン酸エステル、4−ピリジンカルボン酸エステル、2−ピラジンカルボン酸エステル、4−ピリミジンカルボン酸エステル、2−ピリミジンカルボン酸エステル、2−キノリンカルボン酸エステル、2−キノキサリンカルボン酸エステル、7−キノリンカルボン酸エステル、9−カルバゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾチオフェンカルボン酸エステル、2−ベンゾフランカルボン酸エステル、2−インドールカルボン酸エステル、2−ベンゾチアゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾオキサゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾイミダゾールカルボン酸エステル等が挙げられる。これらの芳香族基は、さらに置換基を有していてもよいが、カルボキシル基(−C(=O)O−)を含む置換基を有していないことが好ましい。これらの芳香族基は、カルボキシル基を含んでいると、フィルムの親水性が増大し、光学特性の湿度依存性が悪化する傾向がある。芳香族基は、芳香族部位が、無置換であるか、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されているのが好ましい。
脂肪族アシル基は、−(C=O)RのRが脂肪族基である基をいう。脂肪族基部位は、直鎖、分岐及び環状の脂肪族基のいずれであってもよい。脂肪族アシル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がよりさらに好ましい。脂肪族アシル基は、脂肪族基部位に置換基を有していてもよい。脂肪族アシル基は無置換であるのが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基であることがより好ましい。
(グルコース骨格とエーテル結合した置換基)
本実施形態のセルロース誘導体は、式(3)を満たすよう、グルコース骨格にエーテル結合した置換基を有する。これは、仮にセルロース誘導体のグルコース骨格と結合する置換基の大部分がエステル基である場合、得られる光学フィルムはエステル基と水との相互作用により複屈折変化を引き起こしやすくなる。そのため、湿度変化に対する色味変化や反射性能変化が助長されるが、置換基としてエーテル基を導入することにより、セルロース誘導体の疎水性が向上する。また、エーテル基は、水との相互作用が小さく、複屈折変化を引き起こしにくいため、湿度変化に対する色味変化や反射性能変化が改良されると考えられる。
グルコース骨格とエーテル結合した置換基としては、上記セルロース誘導体の一般式におけるR、RおよびRが脂肪族炭化水素基または芳香族基である場合が挙げられる。R、RおよびRが芳香族基である場合には、R、RおよびRは、後述する多重結合を有する置換基(多重結合性基)に含まれる場合がある。
これらの中でも、グルコース骨格とエーテル結合した置換基としては、グルコース骨格と脂肪族炭化水素基とがエーテル結合した置換基であることが、得られる光学フィルムを用いて作製した有機ELディスプレイにおいて湿度変化に対する色味変化や反射性能変化が抑制されるため好ましい。脂肪族炭化水素基の中でも無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
無置換の脂肪族炭化水素基とは、炭素原子および水素原子以外の原子を含まない脂肪族基であり、直鎖、分岐および環状の基のいずれでもよい。当該脂肪族炭化水素基は、アルキル基であるのが好ましく、直鎖アルキル基であるのがより好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。中でも、メチル基およびエチル基が特に好ましい。このような炭素数の脂肪族炭化水素基がグルコース骨格とエーテル結合することにより、得られる光学フィルムは、薄い膜厚であっても、有機ELディスプレイに使用した際に、外光下における色味変化や反射性能変化が抑制される。
脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合、カルボキシル基(−C(=O)O−)を含む置換基を有していないことが好ましい。カルボキシル基を含んでいると、親水性が増大し、光学特性の湿度依存性が悪化する傾向がある。置換基を有する脂肪族炭化水素基としてはたとえば、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
本実施形態のセルロース誘導体は、上記式(2)に規定されるエステル平均置換度XESの範囲を満たすようグルコース骨格とエステル結合した置換基を有し、上記式(3)に規定されるエーテル平均置換度XETHの範囲を満たすようグルコース骨格とエーテル結合した置換基を有する。また、セルロース誘導体は、これら置換基を併せ持つことにより、上記式(1)に規定される総置換度Yの範囲を満たす。
(多重結合を有する置換基(多重結合性基))
本実施形態のセルロース誘導体は、多重結合性基を有することが好ましい。多重結合性基としては、少なくとも1つの二重結合または三重結合を有し、波長220nm以上350nm以下において吸収極大を有するものであれば特に限定されない。また、セルロース誘導体における多重結合性基の平均置換度は、0.3以上0.7以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましく、0.3以上0.5以下であることがさらに好ましい。セルロース誘導体は、上記範囲の吸収極大および平均置換度を示す多重結合性基を有することにより、得られる光学フィルムの逆波長分散特性をより向上させることができる。
このような多重結合性基としては、たとえば、芳香族構造を有する置換基が挙げられる。このような芳香族基は、二重結合と三重結合との組み合わせであってもよい。また、芳香族基には、電子吸引性、電子供与性の官能基が結合してもよく、得られる光学フィルムの波長分散性を改良する観点から、芳香族基に電子供与性基が結合していることが好ましい。
より具体的には、多重結合性基は、上記セルロース誘導体の一般式におけるR、RおよびRが−R、−OC−R、−OCNH−R、−OC−O−R等(ただし、Rは芳香族基である)であることが好ましい。また、R、RおよびRが芳香族基である場合、多重結合性基は、グルコース骨格にエーテル結合することとなり、上記したグルコース骨格とエーテル結合を有する置換基に含まれる。多重結合性基の少なくとも一部がグルコース骨格とエーテル結合で結合されている場合、得られる光学フィルムを用いて作製された有機ELディスプレイにおいて、色味変化や反射性能変化が抑制される。
また、多重結合性基が芳香族基である場合、優れた生産性が達成される。これは、多重結合性基を、波長に対する複屈折変化が大きい芳香族構造とすることにより、多重結合性基による波長分散調整効果が発現しやすいため、置換度が低くても、充分な波長分散調整効果が得られるためである。そのため、多重結合性基をグルコース骨格に導入する際の反応時間を短くすることができ、他の置換基の脱離等の影響を抑制することが可能となり、生産の安定性が高まる。また、多重結合性基の置換度を小さくすることが可能となるため、グルコース骨格単位当たりの、ヒドロキシ基の数を増やすことができ、結果として、樹脂間の水素結合性を高めることによるフィルム脆性を改良することも可能となる。
なお、本明細書において芳香族とは、理化学辞典(岩波書店)第4版1208頁に芳香族化合物として定義されたものをいう。また、芳香族基は、芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、6〜10のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、中でもフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましく、フェニル基が好ましい。
芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。このようなヘテロ環の具体例としては、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられ、中でもピリジル基、チオフェニル基、トリアジニル基、キノリル基が好ましい。
グルコース骨格とエーテル結合で結合している芳香族基の具体例としては、ベンジルエーテル、4−フェニルベンジルエーテル、4−チオメチルベンジルエーテル、4−メトキシベンジルエーテル、2,4,5−トリメチルベンジルエーテル、2,4,5−トリメトキシベンジルエーテル等が挙げられる。
また、グルコース骨格とエーテル結合で結合している芳香族基の他の例としては、2−チエニルエーテル、3−チエニルエーテル、4−チアゾリルエーテル、2−チアゾリルエーテル、2−フリルエーテル、3−フリルエーテル、4−オキサゾリルエーテル、2−オキサゾリルエーテル、2−ピロリルエーテル、3−ピロリルエーテル、3−イミダゾリルエーテル、2−トリアゾリルエーテル、1−ピロリルエーテル、1−イミダゾリルエーテル、1−ピラゾリルエーテル、2−ピリジルエーテル、3−ピリジルエーテル、4−ピリジルエーテル、2−ピラジルエーテル、4−ピリミジルエーテル、2−ピリミジルエーテル、2−キノリルエーテル、2−キノキサリルエーテル、7−キノリルエーテル、9−カルバゾリルエーテル、2−ベンゾチエニルエーテル、2−ベンゾフリルエーテル、2−インドリルエーテル、2−ベンゾチアゾリルエーテル、2−ベンゾオキサゾリルエーテル、2−ベンゾイミダゾリルエーテル等が挙げられる。
芳香族アシル基の好ましい例としては、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル、4−チオメチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、2,4,5−トリメチルベンゾイル基、3,4,5−トリメトキシベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
また、芳香族アシル基の他の例としては、2−チオフェンカルボン酸エステル、3−チオフェンカルボン酸エステル、4−チアゾールカルボン酸エステル、2−チアゾールカルボン酸エステル、2−フランカルボン酸エステル、3−フランカルボン酸エステル、4−オキサゾールカルボン酸エステル、2−オキサゾールカルボン酸エステル、2−ピロールカルボン酸エステル、3−ピロールカルボン酸エステル、3−イミダゾールカルボン酸エステル、2−トリアゾールカルボン酸エステル、1−ピロールカルボン酸エステル、1−イミダゾールカルボン酸エステル、1−ピラゾールカルボン酸エステル、2−ピリジンカルボン酸エステル、3−ピリジンカルボン酸エステル、4−ピリジンカルボン酸エステル、2−ピラジンカルボン酸エステル、4−ピリミジンカルボン酸エステル、2−ピリミジンカルボン酸エステル、2−キノリンカルボン酸エステル、2−キノキサリンカルボン酸エステル、7−キノリンカルボン酸エステル、9−カルバゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾチオフェンカルボン酸エステル、2−ベンゾフランカルボン酸エステル、2−インドールカルボン酸エステル、2−ベンゾチアゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾオキサゾールカルボン酸エステル、2−ベンゾイミダゾールカルボン酸エステル等が挙げられる。
これらの芳香族基は、さらに置換基を有していてもよいが、カルボキシル基(−C(=O)O−)を含む置換基を有していないことが好ましい。カルボキシル基を含んでいると、親水性が増大し、光学特性の湿度依存性が悪化する傾向がある。前記芳香族基は、芳香族部位が、無置換であるか、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されていることが好ましい。
本実施形態のセルロース誘導体は、公知の方法、たとえば「セルロースの事典」第131頁〜第164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考にして製造することができる。具体的には、本実施形態のセルロース誘導体は、2位、3位および6位のヒドロキシ基の一部がエーテル基に置換されたセルロースエーテルを原料として用い、ピリジン等の塩基存在下、酸クロリドもしくは酸無水物を加えることにより所望の置換基や、エステル結合した所望の置換基を導入することにより製造することができる。
なお、グルコース骨格の置換基の置換度は、たとえば、Cellulose Communication 6,73−79(1999)およびChrality 12(9),670−674に記載の方法を利用して、H−NMRあるいは13C−NMRにより、決定することができる。
セルロースエーテル誘導体の重量平均分子量は、好ましくは10万から40万であり、より好ましくは13万から30万であり、さらに好ましくは15万から25万である。分子量が40万よりも大きい場合、溶剤に対する溶解度が低下するだけでなく、得られる溶液の粘度が高くなりすぎて、溶剤キャスト法に適さず、熱成形を困難にし、フィルムの透明性が低下する等の問題を生じる傾向がある。一方、分子量が10万よりも小さい場合、得られるフィルムの機械的強度が低下する傾向がある。
セルロースエーテル誘導体としては、単一の原料から製造されるセルロースエーテル誘導体を用いてもよいし、原料の異なるセルロースエーテル誘導体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
(シリカ系微粒子)
本実施形態の光学フィルムは、マット剤であるシリカ系微粒子を含む。このようなシリカ系微粒子としては、二酸化ケイ素、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等を挙げることができる。これらの中でも、得られるフィルムのヘイズ上昇を抑制する観点から、二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、平均一次粒子径が1〜20nmであり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。中でも、平均一次粒子径が5〜16nmであるものが、得られる光学フィルムのヘイズを良好に下げることができるため好ましい。また、見かけ比重は、90〜200g/Lであることが好ましく、100〜200g/Lであることがより好ましい。見かけ比重は、値が大きいほど、高濃度の分散液を調整でき、ヘイズ、凝集物が改良されるため好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子の具体例として、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)などの市販品が挙げられる。中でも、アエロジル200VおよびアエロジルR972Vが、平均一次粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であり、得られるフィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため好ましい。
シリカ系微粒子は、通常、平均粒子径が0.05〜2.0μmである二次粒子を形成する。これら二次粒子は、光学フィルム中では、一次粒子の凝集体として存在し、光学フィルム表面に0.05〜2.0μmの凹凸を形成させる。平均二次粒子径としては、0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.7μmであることがより好ましく、0.1〜0.4μmであることがさらに好ましい。一次粒子径および二次粒子径は、たとえば、光学フィルム中の微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径を粒子サイズとすることにより算出することができる。この際、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする方法を採用することができる。
シリカ系微粒子の調製方法としては、特に限定されず、たとえば、溶媒と微粒子とを撹拌混合した微粒子分散液を調製し、この微粒子分散液を、インラインミキサーを用いて別途用意したセルロース誘導体ドープ液等と混合する方法を採用することができる。
シリカ系微粒子の表面に疎水化処理が施されている場合、他の疎水性添加剤が添加されると、この添加剤が微粒子表面に吸着され、これを核とする添加剤の凝集物が発生しやすい。そのため、相対的に親水的な添加剤をあらかじめ微粒子分散液と混合したのちに、疎水的な添加剤を混合することにより、シリカ系微粒子の表面での添加剤の凝集を抑制することが好ましい。これにより、得られるフィルムのヘイズが低くなり、このようなフィルムを採用した円偏光板を有機ELディスプレイに組み込んだ場合、黒表示における光漏れを抑制することができる。
二酸化ケイ素の微粒子を溶媒などと混合して分散する場合、二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましく、15〜20質量%であることがさらに好ましい。セルロース誘導体のドープ溶液中でのマット剤の最終的な添加量は、0.001〜1.0質量%の範囲が好ましく、0.005〜0.5質量%の範囲がより好ましく、0.01〜0.1質量%の範囲がさらに好ましい。
(その他の添加剤)
本実施形態の光学フィルムは、上記したシリカ系微粒子以外に、その他の添加剤として、たとえば、以下に挙げられる各種添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、たとえば、劣化抑制剤、紫外線吸収剤、シリカ系微粒子以外のマット剤、可塑剤等が挙げられる。
(劣化抑制剤)
本実施形態の光学フィルムには、たとえば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル重合禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類等の劣化抑制剤を含有することができる。劣化抑制剤としては、たとえば、特開平3−199201号公報、特開平5−197073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報に記載のものを使用することができ、具体的には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を使用することができる。劣化抑制剤の含有量としては、フィルム表面へのブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、セルロース溶液(ドープ)の0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.2質量%の範囲内であることがより好ましい。
(紫外線吸収剤)
本実施形態の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、たとえば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。これらの中でも、着色が少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本実施形態の光学フィルムを、位相差フィルムのほかに、偏光板の保護フィルムとして使用する場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や有機EL素子の劣化を防止する観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ有機EL素子の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、たとえば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等が挙げられる。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)328(以上、BASFジャパン(株)製)が好ましく使用される。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロース誘導体に対して0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましい。
(シリカ系微粒子以外のマット剤)
本実施形態の光学フィルムは、上記したシリカ系微粒子以外のマット剤を含有することができる。このようなマット剤としては、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。これらマット剤の粒子サイズ、見かけ比重、調製方法および添加量は、シリカ系微粒子と同様であるため、説明は省略する。
(可塑剤)
本実施形態の光学フィルムは、組成物の流動性や柔軟性を向上する目的で、各種可塑剤を併用することができる。可塑剤としては、たとえば、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
<光学フィルムの製造方法>
次に、上記した光学フィルムの製造方法を説明する。本実施形態の光学フィルムは、公知の方法に従って製膜することができる。以下、代表的な溶液流延法および溶融流延法について説明する。
(溶液流延法)
本実施形態の光学フィルムは、溶液流延法によって製造することができる。溶液流延法では、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂および添加剤等(シリカ系微粒子を含む)を有機溶媒に加熱溶解させてドープを調製する工程、調製したドープをベルト状またはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、剥離したウェブを延伸または収縮する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程等が含まれる。
(ドープ調製工程)
ドープ調整工程において、ドープ中のセルロース誘導体は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷は低減できて好ましいが、セルロース誘導体の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増大し、濾過精度が悪くなる。そのため、これらを両立する濃度としては、10質量%以上35質量%以下の範囲内であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
(流延工程)
流延(キャスト)工程において、使用する金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルト、または鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は、1m以上4m以下の範囲とすることが好ましい。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃以上であって、溶剤が沸騰して発泡しない温度の範囲で適宜設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるが、過度に高すぎるとウェブが発泡し、平面性が劣化する場合がある。好ましい金属支持体の表面温度は0℃以上100℃以下であり、より好ましくは5℃以上30℃以下である。また、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することできる。金属支持体の温度を制御する方法は特に限定されず、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法を採用することができる。温水を用いる方法は、熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる方法では、溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡を防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は、10質量%以上150質量%以下の範囲内であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下または60質量%以上130質量%以下の範囲内であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下または70質量%以上120質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料を115℃で1時間の加熱した後の質量である)
(乾燥工程)
乾燥工程において採用される乾燥方法としては、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640,731号および同第736,892号の各明細書、ならびに特公昭45−4554号公報、同49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、同60−203430号公報および同62−115035号公報に記載の方法がある。ドラムまたはバンド上での乾燥は、ウェブに対し空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行うことができる。
乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離してさらに乾燥し、残留溶媒量を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.01質量%以下にすることがより好ましい。
乾燥工程では、一般にローラ乾燥方式、たとえば、上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通し乾燥させる方式や、テンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採用される。
(延伸工程)
本実施形態の光学フィルムは、上記のとおり、波長550nmで測定した面内位相差Ro550が、120nm以上160nm以下であることが好ましい。このような位相差は、フィルムを延伸することによって付与し得る。
延伸方法は、特に限定されず、たとえば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法を、単独または組み合わせて採用することができる。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性を減少させることができるので好ましい。
延伸工程としては、通常、幅手方向(TD方向)に延伸し、搬送方向(MD方向)に収縮する場合が多いが、収縮させる際、斜め方向に搬送させると主鎖方向を合わせやすくなるため、位相差発現効果はさらに大きい。収縮率は、搬送させる角度によって決めることができる。
図1は、斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図である。図1において、セルロースアシレートフィルムFを参照符号112の方向に斜め延伸する際に、搬送方向である長軸Mが、斜め屈曲することでMに収縮する。
このとき、収縮率(%)は、
収縮率(%)=((M−M)/M)×100
で表される。屈曲角度をθとすると、
=M×sin(π−θ)
となり、収縮率は、
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
で表される。
図1において、参照符号111は延伸方向であり、参照符号113は搬送方向(MD方向)であり、参照符号114は遅相軸を示している。
円偏光板の生産性を考慮すると、本実施形態の光学フィルムは、搬送方向に対する配向角が45°±2°であることが、偏光フィルムとのロール・トゥ・ロールでの貼合が可能となり好ましい。
(斜め延伸装置による延伸)
次いで、45°の方向に延伸する斜め延伸方法について、さらに説明する。本実施形態の光学フィルムの製造方法において、延伸する光学フィルムに斜め方向の配向を付与する方法として、斜め延伸装置を用いることが好ましい。
本実施形態に適用可能な斜め延伸装置としては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリタデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2は、本実施形態の光学フィルムの製造に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図である。なお、ここに示す図は一例であって、本実施形態で適用可能な延伸装置はこれに限定されるものではない。
一般的に、斜め延伸装置においては、図2に示されるように、長尺のフィルム原反の繰出方向D1は、延伸後の延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、繰出角度θiを成している。繰出角度θiは0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。
長尺のフィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具(テンター)によって把持され、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具Ci、Coは、左右非対称なレールRi、Ro上を走行し、延伸終了時の位置(図中Bの位置)で、把持したフィルムを解放する。
このとき、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で相対していた左右の把持具は、左右非対称なレールRi、Ro上を走行するにつれて、Ri側を走行する把持具CiがRo側を走行する把持具Coに対して進行する位置関係となる。
すなわち、斜め延伸装置入口(フィルムの把持具による把持開始位置)Aで、フィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci、Coが、フィルムの延伸終了時の位置Bにある状態で、該把持具Ci、Coを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2と略直交する方向に対して角度θLだけ傾斜している。
以上の方法に従って、フィルム原反が、配向角がθLとなるように斜め延伸され、光学フィルムが得られることとなる。ここで略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
より詳細には、本実施形態の製造方法では、上記で説明した斜め延伸可能な延伸装置を用いて斜め延伸を行うことが好ましい。この延伸装置は、フィルム原反を、延伸可能な任意の温度に加熱し、斜め延伸することができる。この延伸装置は、加熱ゾーンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。延伸装置の入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、加熱ゾーン内にフィルムを導き、延伸装置の出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、延伸装置の出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、延伸装置のレールパターンは左右で非対称な形状となっており、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、そのレールパターンは手動または自動で調整できる。本実施形態の製造方法で用いられる斜め延伸装置では、各レール部およびレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい(図2中の○部は連結部の一例である)。
本実施形態において、延伸装置の把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。把持具の走行速度は、適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸装置の出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸装置の出口においてシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的な延伸装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本実施形態で述べる速度差には該当しない。
本実施形態の延伸装置において、特にフィルムの搬送が斜めになる箇所には、把持具の軌跡を規制するレールにしばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が曲線を描くようにすることが好ましい。
本実施形態において、長尺フィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルム進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有する加熱ゾーンを通過する。
予熱ゾーンとは、加熱ゾーン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。延伸ゾーンでは、上記のような斜め延伸が行われるが、必要に応じて斜め延伸前後において縦方向あるいは横方向の延伸を行ってもよい。斜め延伸の場合、屈曲時に遅相軸とは垂直の方向であるMD方向(進相軸方向)への収縮を伴う。
熱固定ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。熱固定ゾーンを通過した後に、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以下に設定される区間(冷却ゾーン)を通過してもよい。このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、予め対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
各ゾーンの温度は、セルロース誘導体のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンではTg〜Tg+30℃の範囲内で、延伸ゾーンではTg〜Tg+30℃の範囲内で、冷却ゾーンではTg−30℃〜Tgの範囲内で設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラを制御するために、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。
予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーンの長さは適宜選択でき、延伸ゾーンの長さに対して、予熱ゾーンの長さは通常100〜150%の範囲内であり、熱固定ゾーンの長さは通常50〜100%の範囲内である。
延伸工程における延伸倍率(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.8の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラを小さくすることができる。斜め延伸装置の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに改善することが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
本実施形態において適用可能な斜め延伸方法としては、上記図2に示した方法のほかに、図3の(a)〜(c)、図4の(a)および(b)に示す延伸方法を挙げることができる。
図3は、本実施形態の光学フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図であり、一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンを示す。図4は、本実施形態の光学フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図であり、長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示す。
図3および図4において、参照符号15は、斜め延伸装置を示し、参照符号16は、フィルム繰り出し装置を示し、参照符号17は、搬送方向変更装置を示し、参照符号18は、巻き取り装置を示し、参照符号19は、製膜装置を示している。それぞれの図において、同じものを示す参照符号については省略している場合がある。
フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸装置入口に対して所定角度でフィルムを送り出せるように、スライドおよび旋回可能となっているか、スライド可能となっており搬送方向変更装置17により斜め延伸装置入口にフィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。図3(a)〜(c)は、フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17の配置をそれぞれ変更したパターンを示している。図4(a)および(b)は、製膜装置19により製膜されたフィルムを直接延伸装置に繰り出すパターンを示している。フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置および角度を細かく制御することが可能となり、フィルムの厚み、光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。また、フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻き取り装置18は、斜め延伸装置出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように配置することにより、フィルムの引き取り位置および角度を細かく制御することが可能となる。その結果、フィルムの厚み、光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムが得られる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本実施形態において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの範囲内で調整することが好ましい。
(溶融製膜法)
上記した光学フィルムは、溶融製膜法によって製膜してもよい。溶融製膜法は、セルロース誘導体等を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロース誘導体を含む溶融物を流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法は、たとえば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類することができる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。
溶融押出し法に用いる複数の原材料は、通常、予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、たとえば、乾燥セルロース誘導体や添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷または空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよく、あるいはそれぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。なお、微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
ペレット化に用いる押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工する方式が好ましい。たとえば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーに投入して押出し機に供給し、加熱溶融した後、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸タイプや2軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200℃以上300℃以下の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラとでフィルムをニップし、冷却ローラ上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体が複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量とにより密度を変え、濾過精度を調整することができる。
可塑剤や微粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するためには、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラとでフィルムをニップする際のタッチローラ側のフィルム温度は、フィルムのTg以上(Tg+110℃)以下の範囲内とすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラとしては、公知の弾性タッチローラを使用することができる。弾性タッチローラは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過した後、延伸操作により延伸および収縮処理を施すことができる。延伸および収縮する方法は、上記のような公知のローラ延伸装置や斜め延伸装置などを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg以上(Tg+60℃)以下の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品の幅になるよう端部をスリットして裁ち落としたり、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
上記した光学フィルムは、遅相軸と、後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板とすることができる。なお、本明細書において、「実質的に45°」とは、40°以上50°以下の範囲内であることをいう。
上記した光学フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度とは、41°以上49°以下の範囲内であることが好ましく、42°以上48°以下の範囲内であることがより好ましく、43°以上47°以下の範囲内であることがさらに好ましく、44°以上46°以下の範囲内であることが特に好ましい。
<円偏光板>
本実施形態の円偏光板は、長尺状の保護フィルム、長尺状の偏光子および上記した長尺状の光学フィルム(位相差フィルム)をこの順に有する長尺ロールを断裁して作製される。円偏光板は、上記光学フィルムを用いて作製されるため、後述する有機ELディスプレイ等に適用することにより、可視光の全波長において、有機EL素子の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現し得る。その結果、観察時の映り込みを防止することができるとともに、黒色表現を向上させることができる。
また、本実施形態の円偏光板は、紫外線吸収機能を備えていることが好ましい。視認側の保護フィルムが紫外線吸収機能を備えている場合、偏光子と有機EL素子との両方に、紫外線に対する保護効果を発現することができる。また、発光体側の位相差フィルムも紫外線吸収機能を備えていると、後述する有機ELディスプレイに用いた場合に、より有機EL素子の劣化を抑制し得る。
また、本実施形態の円偏光板は、遅相軸の角度(すなわち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」となるように調整した上記位相差フィルムを用いることにより、一貫した製造ラインにより接着剤層の形成及び偏光子と位相差フィルムとの貼り合わせが可能となる。具体的には、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中、または乾燥工程後に、偏光子と位相差フィルムとを貼合する工程を組み込むことでき、それぞれを連続的に供給することができ、かつ、貼合後もロール状態で巻き取ることにより、次工程に一貫した製造ラインでつなげることができる。なお、偏光子と位相差フィルムを貼合する際に、同時に保護フィルムもロール状態で供給し、連続的に貼合することができる。性能および生産効率の観点からは、偏光子に位相差フィルムと保護フィルムとを同時に貼合することが好ましい。すなわち、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中、または乾燥工程後に、両側の面にそれぞれ保護フィルムと位相差フィルムを接着剤により貼合し、ロール状態の円偏光板を得ることが可能である。
本実施形態の円偏光板は、偏光子を上記位相差フィルムと保護フィルムとによって挟持することが好ましく、該保護フィルムの視認側に硬化層が積層されることが好ましい。
(保護フィルム)
円偏光板に使用される保護フィルムとしては、セルロースエステル含有フィルムが好適に用いられ、たとえば、市販のセルロースエステルフィルム(たとえば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上、コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上、富士フイルム(株)製)が好ましく用いられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されず、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜70μmである。
(偏光子)
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、たとえば、ポリビニルアルコール系偏光フィルムがある。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後に染色するか、あるいはポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理をさらに行うことにより作製することができる。偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲が好ましく、5〜15μmの範囲であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールフィルムとしては、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量が1〜4モル%であり、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で作製することができる。
<有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機ELディスプレイ)>
本実施形態の有機ELディスプレイは、上記円偏光板を用いて作製される。より詳細には、本実施形態の有機ELディスプレイは、上記位相差フィルムを用いた円偏光板と、有機EL素子とを備える。有機ELディスプレイの画面サイズは、特に限定されず、20インチ以上とすることができる。
図5は、本実施形態の有機ELディスプレイの構成の概略図である。なお、図5に示される有機ELディスプレイ100の構成は一例であり、本実施形態の有機ELディスプレイの構成は、何ら限定されるものではない。
図5に示されるように、ガラスやポリイミド等を用いた透明基板1上に順に金属電極2、TFT(薄膜トランジスタ)3、有機発光層4、透明電極(ITO(酸化インジウムスズ)等)5、絶縁層6、封止層7およびフィルム8(省略可)を有する有機EL素子200上に、偏光子10を上記した位相差フィルム9と保護フィルム11とによって挟持した上記した円偏光板300を設けて、有機ELディスプレイ100を構成する。保護フィルム11には硬化層12が積層されていることが好ましい。硬化層12は、有機ELディスプレイの表面のキズを防止するだけではなく、円偏光板による反りを防止する効果を有する。さらに、硬化層上には、反射防止層13を有していてもよい。上記有機EL素子自体の厚さは、1μm程度である。
一般に、有機ELディスプレイは、透明基板上に金属電極と有機発光層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、たとえば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機ELディスプレイは、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。再結合のメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機ELディスプレイにおいては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要であり、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極が陽極として好ましく用いられる。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常はMg−Ag、Al−Liなどの金属電極が陰極として用いられる。
上記した位相差フィルムを有する円偏光板は、画面サイズが20インチ以上、すなわち対角線距離が50.8cm以上の大型画面からなる有機ELディスプレイに適用することができる。
このような構成の有機ELディスプレイにおいて、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。そのため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機ELディスプレイの表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む有機ELディスプレイにおいて、透明電極の表面側(視認側)に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4位相差フィルムで構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機ELディスプレイに入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となる。特に位相差フィルムがλ/4位相差フィルムでしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムにおいて再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。したがって、本実施形態の有機ELディスプレイによれば、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
本明細書は、上述したように、様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一局面は、セルロース誘導体と、シリカ系微粒子とを含み、長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差Ro550が、120nm以上160nm以下であり、以下の式(1)〜(3)を満たす、長尺光学フィルムである。
1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)
0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)
0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)
式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である。
本発明の一局面に係る長尺光学フィルムでは、セルロース誘導体に水が配位することにより起こる位相差変動を、添加剤を添加して抑制するのではなく、使用するセルロース誘導体の置換基の割合を調整することにより抑制している。その結果、得られる光学フィルムは、湿度変動に対する光学性能(色味性能、反射特性)の変化が抑制される。また、添加されたマット剤(シリカ系微粒子)が凝集しにくいため、当該マット剤によるヘイズ上昇の抑制効果も充分に得られる。さらに、本発明の長尺光学フィルムは、可視光の広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができるとともに、優れた脆性を示す。
また、前記長尺光学フィルムにおいて、Ro550に対する波長450nmにおける面内位相差Ro450の比率(Ro450/Ro550)が、0.70以上0.98以下であることが好ましい。このことにより、優れた逆波長分散特性を示す。
また、前記長尺光学フィルムにおいて、前記セルロース誘導体は、波長220nm以上350nm以下において吸収極大を有する多重結合性基を有し、前記セルロース誘導体における前記多重結合性基の平均置換度が、0.3以上0.7以下であることが好ましい。このことにより、逆波長分散特性をより向上させることができる。
また、前記長尺光学フィルムにおいて、膜厚が、20〜60μmの範囲内であることが好ましい。このことにより、所望の面内位相差値Roを発現しやすい。
また、本発明の他の一局面は、前記長尺光学フィルムと、偏光子とが貼合されている、円偏光板である。
このような構成によれば、有機ELディスプレイ等に適用することにより、可視光の全波長において、有機EL素子の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現し得る。その結果、観察時の映り込みを防止することができるとともに、黒色表現を向上させることができる。
また、本発明の他の一局面は、前記円偏光板が具備されている、有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
このような構成によれば、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
本発明によれば、充分な位相差発現性を示し、湿度変動による位相差変動が抑制され、偏光子との接着性や脆性に優れ、ヘイズ上昇の抑制された長尺光学フィルム、該長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表すものとする。また、以下に示す置換度、置換基数は、いずれも平均値を表す。
<実施例1>
以下の方法により位相差フィルム1を作製した。
(セルロース誘導体1の合成)
(第1工程:セルロースエーテルの合成)
まず、広葉樹前加水分解クラフト法パルプ(αセルロース含量98.4%)の100gに、60%の水酸化ナトリウム溶液140gを加え混合した。次に、ブロモブタンの400gを加え、撹拌しながら0〜5℃の温度範囲に約1時間保った後、30〜40℃の温度範囲に加温して6時間反応させた。内容物を濾別して、沈殿物を取除いた後、これに温水を加えた。1%のリン酸水溶液で中和した後、アセトン中に滴下して反応生成物を析出させた。濾別により分離し、アセトン/水(9:1)溶液で数回洗浄を繰り返し、60℃で真空乾燥を行い、ブチルセルロースを得た。生成物のブロモブタンによる置換度(MS)は、NMRによる測定の結果、1.1であり、これをセルロースエーテルとした。
(第2工程:セルロースエーテルへのアセチル基の導入)
メカニカルスターラー、温度計、冷却管および滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、第1工程で得られたセルロースエーテルを200g、アセトンを2000mL添加し、室温で撹拌した。ここに350gのアセチルクロリドをゆっくりと滴下し、添加後さらに50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール20Lへ激しく撹拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することによりセルロース誘導体1を得た。得られたセルロース誘導体1のグルコース骨格の置換基の置換度について、Cellulose Communication 6,73−79(1999)およびChrality 12(9),670−674に記載の方法に準じて、H−NMRおよび13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた。その結果、エーテル結合を有する置換基であるブトキシ基の置換基数は2.1であり、アセチル基の置換基数は0.3であり、総置換度は2.4であった。
(位相差フィルム1の作製)
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
(微粒子添加液1の調製)
溶解タンクにジメチルクロライドを50質量部入れ、ジメチルクロライドを充分に撹拌しながら、上記調製した微粒子分散液の50質量部をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が、所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液1を調製した。
(ドープの調製)
はじめに、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記合成したセルロース誘導体1を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。次いで、微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロース誘導体1 100質量部
微粒子添加液1 2質量部
(製膜)
上記調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した後、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。剥離した原反フィルムを、加熱しながら延伸装置を用いて、幅手方向(TD方向)にのみ一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーを介して搬送させながら乾燥を終了させ、ロール状の原反フィルムを作製した。
(延伸工程)
この原反フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、搬送方向に対して、フィルムの光学遅相軸が45°となるよう斜め方向に延伸することでロール状の位相差フィルム1を作製した。なお、延伸条件としては、光波長550nmで測定したフィルム面内位相差Ro550が138nm、膜厚が50μm、Ro450/Ro550が0.9となるように、原反フィルムの膜厚、延伸温度、幅手方向(TD方向)および搬送方向(MD方向)の延伸倍率を適宜調整した。
なお、上記Ro550およびRo450/Ro550は、23℃、55%RH環境下で、Axometrics社製のAxoscanを用いて、450nm、550nmの波長での面内位相差Ro450、Ro550を測定するとともに、Ro450/Ro550を算出した。
<比較例1〜6、実施例2>
(セルロース誘導体2〜8の合成)
上記セルロース誘導体1の合成において、第1工程〜第2工程における各構成材料の比率および反応条件を適宜選択して、表1に記載のグルコース骨格の置換基構成となるように合成し、セルロース誘導体1〜8を得た。
(位相差フィルム2〜8の作製)
上記位相差フィルム1の作製において、セルロース誘導体1に代えて、それぞれセルロース誘導体2〜8を用いた以外は同様にして、位相差フィルム2〜8を作製した。なお、延伸条件としては、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro550が140nm、膜厚が50μm、Ro450/Ro550が表1に記載の値となるように、原反フィルムの膜厚、延伸温度、幅手方向(TD方向)および搬送方向(MD方向)の延伸倍率を適宜調整した。
<実施例3>
(セルロース誘導体9の合成)
(第1工程)
実施例1と同様の方法により、セルロースエーテルを作製した。
(第2工程)
メカニカルスターラー、温度計、冷却管および滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、第1工程で得られたセルロースエーテルを200g、ピリジンを120mL、アセトンを2000mL添加し、室温で撹拌した。ここに1650gのアセチルクロリドをゆっくりと滴下し、添加後さらに50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール20Lへ激しく撹拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することによりセルロース誘導体9を得た。
上記調製したセルロース誘導体9のグルコース骨格の置換基の置換度について、Cellulose Communication 6,73−79(1999)およびChrality 12(9),670−674に記載の方法に準じて、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた。その結果、エーテル結合を有する置換基であるブトキシ基の置換基数は0.7であり、アセチル基の置換基数は1.4であり、アセチル基置換度のうち、アセチル基を含みかつ多重結合を有する置換基であるベンゾエート基の置換基数は0.4であり、総置換度は2.1であった。
(位相差フィルム9の作製)
上記位相差フィルム1の作製において、セルロース誘導体1に代えて、セルロース誘導体9を用いた以外は同様にして、位相差フィルム9を作製した。
<実施例4>
(セルロース誘導体10の合成)
(第1工程)
実施例1と同様の方法により、セルロースエーテルを作製した。
(第2工程)
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、第1工程で得られたセルロースエーテルを200g、ピリジンを120mL、アセトンを2000mL添加し、室温で撹拌した。42gのチオフェン−2−カルボニルクロリドをゆっくりと滴下した後、さらに50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール20Lへ激しく撹拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することによりセルロース誘導体10を得た。
上記調製したセルロース誘導体10のグルコース骨格の置換基の置換度について、Cellulose Communication 6,73−79(1999)およびChrality 12(9),670−674に記載の方法に準じて、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた。その結果、エーテル結合を有する置換基であるブトキシ基の置換基数は0.7であり、アセチル基の置換基数は1.4であり、アセチル基置換度のうち、アセチル基を含みかつ多重結合を有する置換基であるチオフェンカルボニル基の置換基数は0.4であり、総置換度は2.1であった。
(位相差フィルム10の作製)
上記位相差フィルム1の作製において、セルロース誘導体1に代えて、セルロース誘導体10を用いた以外は同様にして、位相差フィルム10を作製した。
<比較例7>
帝人化成(株)製の「ピュアエース」WR−W142を用い、位相差フィルム11とした。
位相差フィルム1〜11について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
(ヘイズ評価)
ヘイズは23℃、55%RH環境下で、ヘイズメータ(日本電色工業(株)製のNDH2000)を用いて測定した。
(評価基準)
◎:ヘイズが0.1未満であった。
○:ヘイズが0.1以上0.5未満であった。
×:ヘイズが0.5以上であった。
(脆性評価)
以下の方法により円偏光板を作製し、作製した円偏光板を5cm四方に切り取り、水に30分間浸漬させた後、円偏光板からフィルムを剥離することにより脆性を評価した。
(円偏光板の作製方法)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。位相差フィルム1〜11の遅相軸と、偏光子の吸収軸とが45°となるように、粘着剤を用いて貼合し、偏光子の裏面側には保護フィルム(コニカミノルタタックKC4UY、厚さ40μm、コニカミノルタ(株)製)を水糊によって貼り合せ、それぞれ円偏光板を作製した。
(評価基準)
○:剥離する際にフィルムが全く裂けることがなかった。
×:剥離する際にフィルムが裂けた。
(偏光子との接着性)
上記作製した各偏光板を、23℃80%RHの雰囲気下で24時間保存し、その後、同雰囲気下において、手で剥離性を測定し剥離できたかどうかで確認した。
(評価基準)
○:手で剥がせなかった。または端部のみが剥がれ、それ以上剥がすと部材が破壊された。
×:手で端部以外の部分も剥がせた。
(有機ELセルの作製)
3mm厚の50インチ(127cm)用無アルカリガラスを用いて、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、特開2010−20925号公報の図8に記載された構成からなる有機ELセルを作製した。
(有機ELディスプレイの作製)
上記作製した各円偏光板の位相差フィルム1〜11の表面に接着剤を塗工した後、有機ELセルの視認側に貼合することでそれぞれ有機ELディスプレイを作製した。
(有機ELディスプレイの評価)
上記作製した各有機ELディスプレイについて、以下の評価を行った。
(黒の色味 湿度安定性)
23℃、20%RHの低湿環境下で、各有機ELディスプレイの最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機ELディスプレイに黒画像を表示した。次いで、23℃、80%RHの高湿環境下で、同様に黒画像を表示した。上記二つの環境下で、各有機ELディスプレイの正面位置(面法線に対し0°)と、面法線に対し40°の斜め角度からの黒画像の色味を比較観察し、湿度による黒味への影響の有無を一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、○以上であれば、黒味の湿度安定性としては実用上可と判断した。
(評価基準)
◎:9人以上のモニターが、表示された黒の湿度影響はなしと判定した。
○:5〜8人のモニターが、表示された黒の湿度影響はなしと判定した。
×:表示された黒の湿度影響はなしと判定したモニターが、4人以下であった。
(反射防止性能 湿度安定性)
上記有機ELディスプレイの作製において、有機ELセルを作製した段階で、視認側表面にマジックインキで赤、青、緑の線を付与した以外は同様にして、評価用の有機ELディスプレイを作製した。作製した赤、青、緑の線を有する有機ELディスプレイについて、23℃、20%RHの低湿環境下で、各有機ELディスプレイの最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機ELディスプレイに付したマジックインキの線の視認性(反射性能)を評価した。次いで、23℃、80%RHの高湿環境下で、同様にマジックインキの線の視認性(反射性能)を、一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、○以上であれば、反射性能の湿度安定性としては実用上可と判断した。なお、ここでいう反射性能とは、円偏光板の表面の反射でなく、円偏光板の内部に入った有機ELセルにおける反射をいう。
(評価基準)
◎:9人以上のモニターが、湿度によるマジックインキの線の視認性影響はなしと判定した。
○:5〜8人のモニターが、湿度によるマジックインキの線の視認性影響はなしと判定した。
×:湿度によるマジックインキの線の視認性影響はなしと判定したモニターが、4人以下であった。
Figure 2015040959
Figure 2015040959
表1および表2に示されるように、置換度が式(1)〜(3)の数値範囲を満たす実施例1〜4の光学フィルム(位相差フィルム1、8〜10)は、ヘイズが小さく、脆性が優れた。また、これら光学フィルムは、偏光子との接着性も優れ、これを用いて作製した有機ELディスプレイは、黒の色味や反射防止性能も優れていた。
一方、エステル平均置換度が式(2)の下限未満であった比較例1の光学フィルム(位相差フィルム2)は、ヘイズが大きかった。エステル平均置換度が式(2)の上限を超えた比較例2や比較例3の光学フィルム(位相差フィルム3および位相差フィルム4)は、これを用いて作製した有機ELディスプレイの黒の色味や反射防止性能が優れなかった。また、エーテル平均置換度が式(3)の上限を超え、総置換度が式(1)の上限を超えた比較例4の光学フィルム(位相差フィルム5)は、脆性が優れず、これを用いて作製した有機ELディスプレイの反射防止性能が優れなかった。さらに、総置換度が式(1)の下限未満であった比較例5の光学フィルム(位相差フィルム6)は、ヘイズが大きく、これを用いて作製した有機ELディスプレイの黒の色味や反射防止性能が優れなかった。エーテル平均置換度が式(3)の下限未満であった比較例6の光学フィルム(位相差フィルム5)は、偏光子との接着性が優れなかった。また、樹脂としてセルロース誘導体ではなく変性ポリカーボネートを使用した比較例7の光学フィルム(位相差フィルム11)は、偏光子との接着性が悪かった。
この出願は、2013年9月19日に出願された日本国特許出願特願2013−193688号を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明によれば、充分な位相差発現性を示し、湿度変動による位相差変動が抑制され、偏光子との接着性や脆性に優れ、ヘイズ上昇の抑制された長尺光学フィルムが得られる。そのため、本発明は、たとえば、良好なコントラストや色調バランスを広い視野角で得られることが求められる画像表示装置等の分野において好適に利用することができる。また、本発明によれば、前記長尺光学フィルムを備える円偏光板ならびに有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
A 斜め延伸装置入口
B 延伸終了時の位置
Ci、Co 把持具
D1 繰出方向
D2 巻取方向
F セルロースアシレートフィルム
Ri、Ro レール
100 有機ELディスプレイ
200 有機EL素子
300 円偏光板
1 透明基板
2 金属電極
3 TFT
4 有機発光層
5 透明電極
6 絶縁層
7 封止層
8 フィルム
9 位相差フィルム
10 偏光子
11 保護フィルム
12 硬化層
13 反射防止層
15 斜め延伸装置
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻き取り装置
19 製膜装置
111、112 延伸方向
113 搬送方向
114 遅相軸

Claims (6)

  1. セルロース誘導体と、シリカ系微粒子とを含み、
    長尺方向と遅相軸とのなす角が、40〜50°であり、
    波長550nmにおける面内位相差Ro550が、120nm以上160nm以下であり、
    以下の式(1)〜(3)を満たす、長尺光学フィルム。
    1.8≦Y≦2.6 ・・・ (1)
    0.3≦XES≦1.5 ・・・ (2)
    0.3≦XETH≦2.3 ・・・ (3)
    (式中、XESは、セルロース誘導体のエステル平均置換度であり、XETHは、セルロース誘導体のエーテル平均置換度であり、Yは、セルロース誘導体の総置換度である)
  2. Ro550に対する波長450nmにおける面内位相差Ro450の比率(Ro450/Ro550)が、0.70以上0.98以下である、請求項1記載の長尺光学フィルム。
  3. 前記セルロース誘導体は、波長220nm以上350nm以下において吸収極大を有する多重結合性基を有し、
    前記セルロース誘導体における前記多重結合性基の平均置換度は、0.3以上0.7以下である、請求項1または2記載の長尺光学フィルム。
  4. 膜厚が、20〜60μmの範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺光学フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺光学フィルムと、偏光子とが貼合されている、円偏光板。
  6. 請求項5記載の円偏光板が具備されている、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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