JPWO2015025786A1 - ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物及びその製造方法 - Google Patents

ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物は、ヒト抗体κ型軽鎖と、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンとが結合した複合体を含み、前記ヒト抗体κ型軽鎖は二量体であって、2つの前記ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインが、前記金属イオンを介して結合しており、前記ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、前記金属イオンが0.1モル以上結合している。

Description

本発明は、活性が高く、安定性に優れたヒト抗体κ型軽鎖を含有する組成物、及びその製造方法に関する。
本願は、2013年8月20日に、日本に出願された特願2013−170414号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
抗体は、重鎖(H鎖:Heavy chain)及び軽鎖(L鎖:Light chain)から構成されている。重鎖及び軽鎖は、可変領域(VR:Variable Region)及び定常領域(CR:Constant Region)から構成されており、可変領域は、超可変領域(CDR:Complimentarity Determining Region)を有している。さらに、抗体の軽鎖は、κ型及びλ型に分類される。
近年、酵素様活性をもつ抗体、即ち、抗体酵素が注目を集めている。抗体酵素は、抗体の高い分子認識能と酵素活性とを併せ持つため、医療、化学工業、食品工業等といった、多くの面で応用が期待されている。特に、標的分子への特異性が高く、かつ酵素活性によって標的分子に対する障害性を発揮し得る抗体酵素は、副作用の少ない優れた抗がん剤となることが期待される。特にヒト型の抗体酵素は、人体に投与した際の副作用が少ないと予想されるために、国内外の製薬会社などは、有用なヒト型の抗体酵素が開発されることを待ち望んでいる。
本発明者らは、これまで、抗体酵素に関して種々の独創的な研究を行ってきている(例えば、特許文献1を参照のこと)。中でも、特許文献2において、狂犬病ウィルスやインフルエンザウィルス等に対する抗ウィルス活性を有するヒト抗体κ型軽鎖からなる抗体酵素を報告している。
特開2006−197930号公報 国際公開第2011/102517号
抗体酵素を医薬品として臨床上使用するためには、充分な活性を有する抗体酵素を安定して量産可能であることが重要である。しかしながら、多くの抗体酵素は、遺伝子組換え技術を用いて細胞内又は細胞外発現系によって人工的に合成した場合、性能が安定せず、ロット間の差が大きいという問題があった。
本発明は、より高活性なヒト型抗体軽鎖からなる抗体酵素、及び当該抗体酵素を安定的に製造する方法を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、ヒト型抗体軽鎖を、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンとインキュベートすることにより、より高活性なヒト型抗体軽鎖を含有する組成物を安定的に得られることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物、及びその製造方法は、下記[1]〜[11]である。
[1]ヒト抗体κ型軽鎖と、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンとが結合した複合体を含み、
前記ヒト抗体κ型軽鎖は二量体であって、2つの前記ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインが、前記金属イオンを介して結合しており、
前記ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、前記金属イオンが0.1モル以上結合していることを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
[2]前記金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、金イオン、銀イオン、及び白金イオンからなる群より選択される1種以上である、前記[1]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
[3]前記ヒト抗体κ型軽鎖が、
(1)可変領域が配列番号1のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(2)可変領域が配列番号3のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(3)可変領域が配列番号5のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(4)可変領域が配列番号7のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(5)可変領域が配列番号9のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(6)可変領域が配列番号11のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(7)可変領域が配列番号13のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(8)可変領域が配列番号15のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(9)可変領域が配列番号17のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(10)可変領域が配列番号19のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(11)可変領域が配列番号21のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(12)可変領域が配列番号23のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(13)可変領域が配列番号25のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(14)可変領域が配列番号27のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(15)配列番号2のアミノ酸配列中の219番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(16)可変領域が配列番号29のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(17)可変領域が配列番号31のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(18)可変領域が配列番号33のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(19)可変領域が配列番号35のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(20)可変領域が配列番号37のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(21)可変領域が配列番号39のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(22)可変領域が配列番号41のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(23)可変領域が配列番号43のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(24)可変領域が配列番号45のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(25)可変領域が配列番号47のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(26)可変領域が配列番号49のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、及び
(27)可変領域が配列番号51のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
からなる群より選択される、前記[1]又は[2]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかのヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物を有効成分とすることを特徴とする、医薬用組成物。
[5]抗がん剤である、前記[4]の医薬用組成物。
[6]C末端にシステイン残基を有するヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む発現用ベクターを用いて、細胞内又は細胞外発現系によって、前記ヒト抗体κ型軽鎖を発現させる発現工程と、
前記発現工程で得られた発現産物から、前記ヒト抗体κ型軽鎖を精製する精製工程と、を有し、(a)前記発現工程において、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンの存在下で前記ヒト抗体κ型軽鎖を発現させる、又は(b)前記発現工程で得られた発現産物に、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンを添加し、得られた混合物から、前記ヒト抗体κ型軽鎖を精製することを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
[7]前記(b)において、前記混合物を30分間〜48時間インキュベートした後に、当該混合物からヒト抗体κ型軽鎖を精製する、前記[6]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
[8]前記精製工程が、
前記発現工程で得られた発現産物から、第1の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、前記ヒト抗体κ型軽鎖を含む粗精製物を得る第1の精製工程と、
前記第1の精製工程により得られた粗精製物から、第2の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、前記ヒト抗体κ型軽鎖の精製物を得る第2の精製工程と、
からなり、前記金属イオンを、前記第1の精製工程後、前記第2の精製工程前に、前記粗精製物に添加する、前記[6]又は[7]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
[9]前記第2の精製工程前に、前記金属イオンを添加した前記粗精製物を、30分間〜48時間インキュベートする、前記[8]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
[10]前記金属イオンを、前記発現工程において前記発現系内に添加し、さらに、前記第1の精製工程後前記第2の精製工程前に前記粗精製物に添加する、前記[8]又は[9]のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
[11]ヒト抗体κ型軽鎖を、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンを含有する溶液中でインキュベートすることにより、2つの前記ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステイン残基が前記金属イオンを介して結合している複合体を含む組成物を製造することを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物は、従来の金属イオンと結合させていないものよりも活性が高く、かつ安定的に供給可能なヒト抗体κ型軽鎖を含む組成物である。つまり、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物は、高い活性と優れた量産性を有しており、広く臨床適用可能な医薬品として期待できる。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法により、高活性なヒト抗体κ型軽鎖を安定的に製造することができる。
実施例1において、コントロールケース(銅イオン無添加)における陽イオン交換クロマトグラムの結果を示した図である。 実施例1において、コントロールケース(銅イオン無添加)における各ピークのSDS−PAGE(非還元)の結果を示した図である。 実施例1において、ケース1(一次精製後の銅イオン添加)における陽イオン交換クロマトグラムの結果を示した図である。 実施例1において、ケース1(一次精製後の銅イオン添加)における各ピークのSDS−PAGE(非還元)の結果を示した図である。 実施例1において、ケース2(発現時と一次精製後の銅イオン添加)における陽イオン交換クロマトグラムの結果を示した図である。 実施例1において、ケース2(発現時と一次精製後の銅イオン添加)における各ピークのSDS−PAGE(非還元)の結果を示した図である。 実施例1において、コントロールケースのフラクション3の組成物(Fr.3)を添加した場合の細胞生存率を100%とした場合の、ケース1のフラクション1Aの組成物(Fr.1A)、ケース2のフラクション2Aの組成物(Fr.2A)、及びケース2のフラクション2Bの組成物(Fr.2B)を添加した場合の相対細胞生存率(%)を示した図である。 実施例2において、ケース3(一次精製後に15μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを示した図である。 実施例2において、ケース4(一次精製後に40μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを示した図である。 実施例2において、ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)のUV/VISスペクトルの測定結果を、実施例1におけるコントロールケースのフラクション3の組成物(Fr.3)の結果と共に示した図である。 実施例3において、コントロールケース(銅イオン無添加)における陽イオン交換クロマトグラムと、各ピークのSDS−PAGE(非還元)の結果を示した図である。 実施例3において、ケース3(一次精製後に15μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを示した図である。 実施例3において、ケース4(一次精製後に40μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを示した図である。 実施例3において、コントロールケースのフラクション1の組成物(Fr.1)、ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)のUV/VISスペクトルの測定結果を示した図である。 実施例4において、PBSを添加した場合の細胞生存率を100%とした場合の、各組成物を添加した場合の相対細胞生存率(%)を示した図である。 実施例4において、C51(Lot1)及びC51(Lot4)のUV/VISスペクトルの測定結果を示した図である。 実施例5において、A549株における、PBSを添加した場合の細胞生存率を100%とした場合の各種金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖(C51)を添加した場合の相対細胞生存率(%)を示した図である。 実施例5において、WI−38株における、PBSを添加した場合の細胞生存率を100%とした場合の各種金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖(C51)を添加した場合の相対細胞生存率(%)を示した図である。 実施例7において、ES−2株移植マウスに対してヒト抗体κ型軽鎖(W15)を含む複合体含有組成物を投与した場合の、相対腫瘍体積の経時変化を示した図である。 実施例7において、B−16株移植マウスに対してヒト抗体κ型軽鎖(#4)を含む複合体含有組成物を投与した場合の、相対腫瘍体積の経時変化を示した図である。
本発明及び本願明細書において、「ヒト抗体κ型軽鎖」は、ヒト由来の免疫グロブリンのκ型の軽鎖(Light chain)を指す。κ型の抗体軽鎖の遺伝子は、生殖細胞遺伝子(germline gene)に存在するVκ遺伝子群、Jκ遺伝子群及び定常領域の遺伝子群から各遺伝子が選択されて再編成されることにより構築される。
また、本発明及び本願明細書において、「抗がん剤」とは、がん細胞を死滅させる、又は増殖を抑制若しくは阻害する活性を有する薬剤を意味し、「細胞傷害性」とは、細胞に対して死又は機能障害を与える性質を意味する。
ポリペプチドを構成するアミノ酸残基のうちのいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造又は機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造又は機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。なお、本願明細書において、特定のアミノ酸配列X中の1又は複数のアミノ酸を置換、付加、若しくは欠失させることを、変異させるという。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物(以下、「本発明に係る複合体含有組成物」ということがある。)は、2つのヒト抗体κ型軽鎖と特定の金属イオンとが、当該ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインと当該金属イオンとの結合を介して(当該ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインと当該金属イオンとの相互作用により)、特定の量比で結合した複合体を含む組成物である。
<金属イオン>
本発明において、ヒト抗体κ型軽鎖と結合させる金属イオンは、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上である。ヒト抗体κ型軽鎖には、前記金属イオンを1種類のみ結合させてもよく、2種類以上を組み合わせて結合させてもよい。当該金属イオンとしては、生体への安全性の点から、銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、金イオン、銀イオン、及び白金イオンからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、量産性の点から、銅イオン、ニッケルイオン、及び亜鉛イオンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、ヒト抗体κ型軽鎖の生体に対する活性をより高められる点から、銅イオンであることがさらに好ましい。
<ヒト抗体κ型軽鎖>
本発明に係る複合体含有組成物が含有する、特定の金属イオンと結合するヒト抗体κ型軽鎖(以下、「本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖」ということがある。)は、前記金属イオンが結合可能なヒト抗体κ型軽鎖であれば特に限定されるものではないが、医薬用途への適用可能性の点から、触媒三つ組残基様構造を有しているものが好ましい。なお、触媒三つ組残基様構造とは、例えば、セリン残基、ヒスチジン残基及びアスパラギン残基によって形成された、触媒活性を有していると考えられる構造である。触媒三つ組残基様構造を有しているヒト抗体κ型軽鎖としては、例えば、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有するものや、少なくともその可変領域を有するもの、及びこれらの変異体が挙げられる。なお、野生型のヒト抗体κ型軽鎖は、例えば特許文献2に開示されているように、ヒトから採取した生体サンプル(例えば、リンパ球等)由来の核酸を鋳型としたPCR等により得ることができ、さらに得られた野生型から公知の遺伝子組換え技術により各種変異体を得ることもできる。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖としては、特に、アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、又は抗ウィルス活性の少なくともいずれかの活性を有するものが好ましい。これらの活性を有するヒト抗体κ型軽鎖は、抗がん剤や抗ウィルス剤等として特に有用である。
野生型の抗体κ型軽鎖には、ジスルフィド結合を形成するためのシステインがC末端に存在しており、二量体を形成する。当該システインが他のアミノ酸(例えばアラニン等)に置換された変異型の抗体κ型軽鎖は、二量体を形成することができず、単量体で存在する。本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖としては、二量体を形成し、2つのヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインが、金属イオンを介して結合するものである。ヒト抗体κ型軽鎖が金属イオンを介して二量体を形成することにより、前記金属イオンと結合した複合体は、結合前のヒト抗体κ型軽鎖よりも高い活性を有する。また、ヒト抗体κ型軽鎖の種類によっては、単量体よりも二量体のほうが細胞障害性等の活性が高いものもあり、この点においても、二量体が優れている。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖としては、下記(1)〜(27)のポリペプチドのいずれかであることが好ましい。
(1)可変領域が配列番号1のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(2)可変領域が配列番号3のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(3)可変領域が配列番号5のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(4)可変領域が配列番号7のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(5)可変領域が配列番号9のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(6)可変領域が配列番号11のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(7)可変領域が配列番号13のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(8)可変領域が配列番号15のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(9)可変領域が配列番号17のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(10)可変領域が配列番号19のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(11)可変領域が配列番号21のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(12)可変領域が配列番号23のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(13)可変領域が配列番号25のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(14)可変領域が配列番号27のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(15)配列番号2のアミノ酸配列中の219番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(16)可変領域が配列番号29のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(17)可変領域が配列番号31のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(18)可変領域が配列番号33のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(19)可変領域が配列番号35のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(20)可変領域が配列番号37のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(21)可変領域が配列番号39のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(22)可変領域が配列番号41のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(23)可変領域が配列番号43のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(24)可変領域が配列番号45のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(25)可変領域が配列番号47のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
(26)可変領域が配列番号49のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、又は
(27)可変領域が配列番号51のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド。
可変領域が配列番号1のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、「ヒト抗体κ型軽鎖(#7)」と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#7)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#7)におけるCDR1は、配列番号1及び2のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号1及び2のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号1及び2のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号2のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
なお、配列番号2のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号1のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。そこで、配列番号2のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、「ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)」と称することもある。
ヒト抗体κ型軽鎖(#7)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、胃がん細胞、白血病細胞(がん化したT細胞)、膵臓がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(#7)の抗がん活性のためには、標的分子に対する高い分子認識能が重要であることから、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。
このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)としては、可変領域以外の領域が、配列番号2のアミノ酸配列とは相違していてもよい。例えば、配列番号2のアミノ酸配列中のFR−1の1番目(配列番号2のアミノ酸配列における第1番目)のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換されたアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、又はFR−1の2番目(配列番号2のアミノ酸配列における第2番目)のバリンがイソロイシン等に置換されたアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものも、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)に含まれる。なお、当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)」と称することもある。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(#7)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(#7)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3は配列番号1又は2のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域以外且つC末端のシステイン以外のアミノ酸が、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)から変異されている変異体が好ましい。
ヒト抗体κ型軽鎖(#7)の変異体としては、例えば、可変領域が配列番号3のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL)、可変領域が配列番号5のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(I))、可変領域が配列番号7のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(RL))、及び可変領域が配列番号9のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 RLI)等が挙げられる。なお、一実施形態において、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL)の全長のアミノ酸配列は配列番号4に示され、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(I))の全長のアミノ酸配列は配列番号6に示され、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(RL))の全長のアミノ酸配列は配列番号8に示され、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 RLI)の全長のアミノ酸配列は配列番号10に示される。
ヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL)、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(I))、及びヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(RL))は、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性が高く、ヒト抗体κ型軽鎖(#7 RLI)は特に肺がん細胞、胃がん細胞、膵がん細胞に対する細胞障害性が高い。
可変領域が配列番号11のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#4)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号12に示される。なお、配列番号12のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号11のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(#4)におけるCDR1は、配列番号11及び12のアミノ酸配列における第24〜40番目であり、CDR2は、配列番号11及び12のアミノ酸配列における第56〜62番目であり、CDR3は、配列番号11及び12のアミノ酸配列における第95〜103番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号12のアミノ酸配列中の220番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(#4)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞、胃がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(#4)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号12のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号11のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(#4)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(#4)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号11又は12のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ、可変領域中のCDR領域及びC末端の220番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(#4)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号13のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#11)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号14に示される。なお、配列番号14のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号13のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(#11)におけるCDR1は、配列番号13及び14のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号13及び14のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号13及び14のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号14のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(#11)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(#11)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号14のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号13のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(#11)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(#11)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号13又は14のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(#11)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号15のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号16に示される。なお、配列番号16のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号15のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)におけるCDR1は、配列番号15及び16のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号15及び16のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号15及び16のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号16のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号16のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号15のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(23D4)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3及びC末端のシステインは配列番号15又は16のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(23D4)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号17のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W3)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W3)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号18に示される。なお、配列番号18のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号17のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W3)におけるCDR1は、配列番号17及び18のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号17及び18のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号17及び18のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号18のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W3)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、胃がん細胞、膵がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W3)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W3)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号18のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号17のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W3)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W3)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W3)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W3)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号17又は18のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W3)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号19のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W10)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W10)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号20に示される。なお、配列番号20のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号19のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W10)におけるCDR1は、配列番号19及び20のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号19及び20のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号19及び20のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号20のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W10)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、膵がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W10)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W10)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号20のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号19のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W10)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W10)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W10)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W10)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号19又は20のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W10)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号21のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(C51)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号22に示される。なお、配列番号22のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号21のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(C51)におけるCDR1は、配列番号21及び22のアミノ酸配列における第24〜34番目であり、CDR2は、配列番号21及び22のアミノ酸配列における第50〜56番目であり、CDR3は、配列番号21及び22のアミノ酸配列における第89〜97番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号22のアミノ酸配列中の214番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(C51)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(C51)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号22のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号21のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(C51)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(C51)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号21又は22のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の214番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(C51)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号23のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(C82)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(C82)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号24に示される。なお、配列番号24のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号23のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(C82)におけるCDR1は、配列番号23及び24のアミノ酸配列における第24〜34番目であり、CDR2は、配列番号23及び24のアミノ酸配列における第50〜56番目であり、CDR3は、配列番号23及び24のアミノ酸配列における第89〜98番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号24のアミノ酸配列中の215番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(C82)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(C82)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C82)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号24のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号23のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(C82)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(C82)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(C82)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C82)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号23又は24のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の215番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(C82)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号25のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(C89)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(C89)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号26に示される。なお、配列番号26のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号25のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(C89)におけるCDR1は、配列番号25及び26のアミノ酸配列における第24〜35番目であり、CDR2は、配列番号25及び26のアミノ酸配列における第51〜57番目であり、CDR3は、配列番号25及び26のアミノ酸配列における第90〜98番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号26のアミノ酸配列中の215番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(C89)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(C89)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C89)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号26のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号25のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(C89)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(C89)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(C89)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(C89)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号25又は26のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の215番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(C89)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号27のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W2)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W2)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号28に示される。なお、配列番号28のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号27のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W2)におけるCDR1は、配列番号27及び28のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号27及び28のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号27及び28のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号28のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W2)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W2)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W2)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号28のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号27のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W2)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W2)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W2)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W2)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号27又は28のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W2)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号29のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W4)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W4)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号30に示される。なお、配列番号30のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号29のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W4)におけるCDR1は、配列番号29及び30のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号29及び30のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号29及び30のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号30のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W4)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W4)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W4)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号30のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号29のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W4)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W4)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W4)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W4)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号29又は30のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W4)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号31のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W7)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W7)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号32に示される。なお、配列番号32のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号31のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W7)におけるCDR1は、配列番号31及び32のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号31及び32のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号31及び32のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号32のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W7)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W7)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W7)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号32のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号31のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W7)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W7)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W7)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W7)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号31又は32のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W7)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号33のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W8)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W8)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号34に示される。なお、配列番号34のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号33のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W8)におけるCDR1は、配列番号33及び34のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号33及び34のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号33及び34のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号34のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W8)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に肺がん細胞、卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W8)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W8)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号34のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号33のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W8)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W8)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W8)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W8)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号33又は34のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W8)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W11)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W11)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号36に示される。なお、配列番号36のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号35のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W11)におけるCDR1は、配列番号35及び36のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号35及び36のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号35及び36のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号36のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W11)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W11)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W11)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号36のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号35のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W11)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W11)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W11)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W11)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号35又は36のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W11)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号37のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W14)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W14)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号38に示される。なお、配列番号38のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号37のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W14)におけるCDR1は、配列番号37及び38のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号37及び38のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号37及び38のアミノ酸配列における第94〜103番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号38のアミノ酸配列中の220番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W14)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W14)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W14)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号38のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号37のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W14)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W14)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W14)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W14)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号37又は38のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の220番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W14)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号39のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W15)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W15)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号40に示される。なお、配列番号40のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号39のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W15)におけるCDR1は、配列番号39及び40のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号39及び40のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号39及び40のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号40のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W15)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞、白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W15)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W15)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号40のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号39のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W15)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W15)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W15)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W15)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号39又は40のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W15)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号41のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W17)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W17)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号42に示される。なお、配列番号42のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号41のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W17)におけるCDR1は、配列番号41及び42のアミノ酸配列における第24〜40番目であり、CDR2は、配列番号41及び42のアミノ酸配列における第56〜62番目であり、CDR3は、配列番号41及び42のアミノ酸配列における第95〜103番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号42のアミノ酸配列中の220番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W17)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W17)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W17)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号42のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号41のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W17)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W17)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W17)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W17)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号41又は42のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の220番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W17)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号43のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W18)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W18)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号44に示される。なお、配列番号44のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号43のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W18)におけるCDR1は、配列番号43及び44のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号43及び44のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号43及び44のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号44のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W18)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W18)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W18)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号44のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号43のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W18)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W18)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W18)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W18)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号43又は44のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W18)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号45のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W19)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W19)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号46に示される。なお、配列番号46のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号45のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W19)におけるCDR1は、配列番号45及び46のアミノ酸配列における第24〜40番目であり、CDR2は、配列番号45及び46のアミノ酸配列における第56〜62番目であり、CDR3は、配列番号45及び46のアミノ酸配列における第95〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号46のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W19)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に卵巣がん細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W19)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W19)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号46のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号45のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W19)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W19)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W19)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W19)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号45又は46のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W19)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号47のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W21)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W21)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号48に示される。なお、配列番号48のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号47のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W21)におけるCDR1は、配列番号47及び48のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号47及び48のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号47及び48のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号48のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W21)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W21)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W21)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号48のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号47のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W21)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W21)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W21)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W21)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号47又は48のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域以外及びC末端の219番目のシステインのアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W21)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号49のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W26)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W26)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号50に示される。なお、配列番号50のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号49のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W26)におけるCDR1は、配列番号49及び50のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号49及び50のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号49及び50のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号50のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W26)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W26)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W26)としては、可変領域以外の領域が、配列番号50のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号49のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W26)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W26)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W26)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W26)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号49又は50のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W26)から変異されている変異体が好ましい。
可変領域が配列番号51のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(W28)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(W28)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号52に示される。なお、配列番号52のアミノ酸配列は、可変領域が配列番号51のアミノ酸配列によって示される野生型のヒト抗体κ型軽鎖の全長を表す。ヒト抗体κ型軽鎖(W28)におけるCDR1は、配列番号51及び52のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号51及び52のアミノ酸配列における第55〜61番目であり、CDR3は、配列番号51及び52のアミノ酸配列における第94〜102番目である。また、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成し、金属イオンと結合し得るシステインは、配列番号52のアミノ酸配列中の219番目のシステインである。
ヒト抗体κ型軽鎖(W28)は、後記実施例に示すように、がん細胞、特に白血病細胞に対する細胞障害性を有する。このため、抗がん剤の有効成分として好適である。ヒト抗体κ型軽鎖(W28)の抗がん活性の活性中心は、可変領域、特にCDR配列にある。また、金属イオンとの結合点はC末端のシステインである。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W28)としては、可変領域以外且つC末端のシステイン以外の領域が、配列番号52のアミノ酸配列とは相違していてもよい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、可変領域が配列番号51のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。当該ポリペプチドを、「ヒト抗体κ型軽鎖(W28)の変異体」と称することもある。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として用いられるヒト抗体κ型軽鎖(W28)の変異体は、ヒト抗体κ型軽鎖(W28)と同様に抗がん作用を有する。このため、ヒト抗体κ型軽鎖(W28)の変異体は、CDR1、CDR2、及びCDR3、並びにC末端のシステインは配列番号51又は52のアミノ酸配列と同一であり(保存されており)、かつ可変領域中のCDR領域及びC末端の219番目のシステイン以外のアミノ酸がヒト抗体κ型軽鎖(W28)から変異されている変異体が好ましい。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、Hisタグ、Mycタグ、Flagタグ等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドを構成するアミノ酸残基のうちの1又は数個のアミノ酸を容易に変異させたり、エピトープ標識ポリペプチド等を付加することができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体又は付加変異体を作製することができる。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、天然の精製産物、化学合成手順の産物、及び原核生物宿主又は真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、グリコシル化され得るか、又は非グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖はまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖及びイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、当該ヒト抗体κ型軽鎖(ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて、組換え発現系や無細胞発現系等の当該技術分野で公知の発現系を用いて製造することができる。
組換え発現系を用いる場合、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能な宿主に導入し、宿主(形質転換体)内で翻訳されて得られるポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポリペプチドの性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のポリペプチドを精製することが可能である。
無細胞発現系(無細胞タンパク質合成系)を用いる場合、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、リボソームやt−RNA等のタンパク質の翻訳・合成に必要な成分を含む溶液に添加し、適当な温度でインキュベートすることにより、合成されたポリペプチドを精製することが好ましい。
無細胞タンパク質合成系としては、コムギ胚芽抽出液を用いる系、ウサギ網状赤血球抽出液を用いる系、大腸菌S30抽出液を用いる系、及び植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液を用いる系が挙げられる。一般的には、真核生物由来遺伝子の翻訳には真核細胞の系、すなわち、コムギ胚芽抽出液を用いる系又はウサギ網状赤血球抽出液を用いる系のいずれかが選択されるが、翻訳される遺伝子の由来(原核生物/真核生物)や、合成後のタンパク質の使用目的を考慮して、上記合成系から選択されればよい。
これらの合成系としては、種々の市販のキットが用いられ得る。
なお、種々のウィルス由来遺伝子産物は、その翻訳後に、小胞体、ゴルジ体等の細胞内膜が関与する複雑な生化学反応を経て活性を発現するものが多いので、各種生化学反応を試験管内で再現するためには細胞内膜成分(例えば、ミクロソーム膜)が添加される必要がある。植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液は、細胞内膜成分を保持した無細胞タンパク質合成液として利用し得るのでミクロソーム膜の添加が必要とされないので、好ましい。
本明細書中で使用される場合、「細胞内膜成分」は、細胞質内に存在する脂質膜よりなる細胞小器官(すなわち、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、葉緑体、液胞などの細胞内顆粒全般)が意図される。特に、小胞体及びゴルジ体はタンパク質の翻訳後修飾に重要な役割を果たしており、膜タンパク質及び分泌タンパク質の成熟に必須な細胞成分である。
宿主の発現系や無細胞タンパク質合成系により合成されたヒト抗体κ型軽鎖は、精製されることが好ましい。ヒト抗体κ型軽鎖を精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞又は組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、当該ヒト抗体κ型軽鎖を天然に発現する細胞又は組織から精製することもできる。例えば、抗体又はオリゴヌクレオチドを用いて、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖を天然に発現する細胞又は組織を同定することができる。細胞や組織からのヒト抗体κ型軽鎖の精製は、宿主の発現系等を用いて合成されたヒト抗体κ型軽鎖を精製する場合と同様に行うこともできる。
その他、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、化学合成することもできる。化学合成の方法は特に限定されず、ポリペプチドを化学合成する際に用いられるいずれの方法で行ってもよい。
<複合体含有組成物>
本発明に係る複合体含有組成物は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖と前記金属イオンとが結合した複合体を含有する組成物である。
本発明に係る複合体含有組成物は、ヒト抗体κ型軽鎖と前記金属イオンとが結合した複合体を含むものであれば特に限定されず、さらにヒト抗体重鎖を含んでいてもよく、ヒト抗体重鎖を含んでいなくてもよいが、ヒト抗体重鎖を含んでいないことが好ましい。
本発明に係る複合体含有組成物では、ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、前記金属イオンが0.1モル以上結合している。ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たりの前記金属イオンの結合量が多くなるほど、当該ヒト抗体κ型軽鎖が有する細胞障害性等の活性が高くなる傾向にある。
本発明に係る複合体含有組成物における、ヒト抗体κ型軽鎖と前記金属イオンとの結合量比(モル比)は、当該組成物に含まれるヒト抗体κ型軽鎖の全分子数と、当該組成物中で当該ヒト抗体κ型軽鎖と結合している前記金属イオンの全分子数との比である。つまり、「ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、前記金属イオンが0.1モル以上結合している複合体含有組成物」とは、当該組成物中に、仮に10モルのヒト抗体κ型軽鎖が含まれている場合には、ヒト抗体κ型軽鎖と結合している前記金属イオンが1モル含まれていることを意味する。なお、当該組成物において、二量体のヒト抗体κ型軽鎖は、2分子のヒト抗体κ型軽鎖として計測される。また、当該組成物は、金属イオンを介して結合した二量体のヒト抗体κ型軽鎖を含んでいるものであればよく、単量体のヒト抗体κ型軽鎖がさらに含まれていてもよい。
本発明に係る複合体含有組成物に含まれている、ヒト抗体κ型軽鎖と結合している前記金属イオンの量は、例えば、予め当該複合体含有組成物に対して透析処理等を行って遊離の金属イオンを除去した後、変性剤等によりヒト抗体κ型軽鎖を変性させ、解離した金属イオンを比色定量法等の常法により測定することができる。
本発明に係る複合体含有組成物は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖を前記金属イオンと接触させ、少なくとも一部のヒト抗体κ型軽鎖に前記金属イオンを結合させることにより得られる。例えば、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖を、前記金属イオンを含む溶液中でインキュベートすることにより、本発明に係る複合体含有組成物を製造することができる。
金属イオンとインキュベートするヒト抗体κ型軽鎖は、夾雑物を多く含む精製前のものであってもよいが、品質管理の点から、粗精製物又は精製物のほうがより好ましい。また、ヒト抗体κ型軽鎖の二量体と単量体が混在している溶液中で金属イオンとインキュベートしてもよく、二量体のみを含むように精製されたヒト抗体κ型軽鎖を金属イオンとインキュベートしてもよい。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖と前記金属イオンとのインキュベート時間は、充分量の金属イオンがヒト抗体κ型軽鎖と結合し得るように、ヒト抗体κ型軽鎖の種類、金属イオンの種類、溶媒、インキュベート温度等を考慮して適宜決定することができる。例えば、室温で30分間〜48時間インキュベートすることにより、ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、0.1モル以上の金属イオンが結合している複合体含有組成物を得やすくなる。
本発明に係る複合体含有組成物は、ヒト抗体κ型軽鎖の合成反応やその後の精製工程の途中で、前記金属イオンと接触させることによっても製造することができる。
例えば、ヒト抗体κ型軽鎖を、当該ヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む発現用ベクターを用いて、細胞内又は細胞外発現系によって発現させる場合には、発現系内に予め前記金属イオンを存在させておく。これにより、前記金属イオンの存在下でヒト抗体κ型軽鎖を発現させることになり、発現したヒト抗体κ型軽鎖が速やかに金属イオンと接触できるため、発現産物からヒト抗体κ型軽鎖をカラムクロマトグラフィー法等の常法により精製することによって、金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖を含む複合体含有組成物を得ることができる。発現系内に予め前記金属イオンを存在させる方法としては、例えば、発現させる細胞の培養培地や細胞外発現系の発現溶液に、金属イオンを添加しておく方法が挙げられる。
また、ヒト抗体κ型軽鎖を細胞内又は細胞外発現系で発現させる場合には、通常は、発現させたヒト抗体κ型軽鎖は、発現産物から各種精製方法により精製される。そこで、発現後の発現産物に前記金属イオンを添加し、得られた混合物からヒト抗体κ型軽鎖を精製することにより、金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖を含む複合体含有組成物を得ることができる。添加された前記金属イオンが充分にヒト抗体κ型軽鎖と接触して結合できるため、前記金属イオンを添加して得られた混合物は、30分間〜48時間インキュベートした後に、当該混合物からのヒト抗体κ型軽鎖の精製に供されることが好ましい。
ヒト抗体κ型軽鎖を、ヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む発現用ベクターを用いて、細胞内又は細胞外発現系によって、前記ヒト抗体κ型軽鎖を発現させる発現工程と、前記発現工程で得られた発現産物から、前記ヒト抗体κ型軽鎖を精製する精製工程とにより製造する場合には、前記金属イオンの存在下でヒト抗体κ型軽鎖を発現させてもよく、発現工程で得られた発現産物に前記金属イオンを添加し、得られた混合物からヒト抗体κ型軽鎖を精製してもよい。さらに、前記金属イオンの存在下でヒト抗体κ型軽鎖を発現させて、得られた発現産物に前記金属イオンをさらに添加し、必要であれば適当な時間インキュベートした後に、ヒト抗体κ型軽鎖を精製してもよい。
その他、精製工程の途中で前記金属イオンを添加してもよい。例えば、精製工程を、発現工程で得られた発現産物から、第1の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、ヒト抗体κ型軽鎖を含む粗精製物を得る第1の精製工程と、第1の精製工程により得られた粗精製物から、第2の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、ヒト抗体κ型軽鎖の精製物を得る第2の精製工程とにより行う場合には、前記金属イオンを、第2の精製工程前に、第1の精製工程により得られた粗精製物に添加することによって、金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖を含む複合体含有組成物を得ることができる。添加された前記金属イオンが充分にヒト抗体κ型軽鎖と接触して結合できるため、前記金属イオンを添加した粗精製物は、30分間〜48時間インキュベートした後に、第2の精製工程に供されることが好ましい。また、第1の精製工程後、第2の精製工程前に前記金属イオンを添加する場合でも、発現工程において前記発現系内に添加しておいてもよい。
精製工程を2段階のカラムクロマトグラフィー法により行う場合には、第1の充填剤と第2の充填剤の組合せは、最終的に所望の精製度のヒト抗体κ型軽鎖が精製可能な組み合わせであれば特に限定されるものではなく、ヒト抗体κ型軽鎖の種類、付加・修飾の有無等を考慮して適宜決定することができる。例えば、発現系を利用して合成するヒト抗体κ型軽鎖がHisタグ等が付加されたエピトープ標識ポリペプチドの場合、第1の充填剤として標識されたエピトープに対するアフィニティの高いものを用い、第2の充填剤として、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いることが好ましい。この場合、第1の精製工程において、ヒト抗体κ型軽鎖を精製し、第2の精製工程において、単量体と二量体を分離して分画したり、金属イオンの結合の有無で分画したりすることができる。
<医薬用組成物>
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖として、アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、又は抗ウィルス活性の少なくともいずれかの活性を有するものを用いた場合には、本発明に係る複合体含有組成物も、少なくともこれらのいずれかの活性を有する。このため、本発明に係る複合体含有組成物は、抗がん剤や抗ウィルス剤等の医薬用組成物として特に好適に用いられる。
本発明に係る抗がん剤(本発明に係る複合体含有組成物を有効成分とする抗がん剤)は、ヒト又は動物についての使用のために、直接注入により投与され得る。本発明に係る抗がん剤はまた、非経口投与、粘膜投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、眼内投与又は経皮的投与のために処方され得る。代表的には、組成物中に含まれるタンパク質は、0.01〜30mg/kg体重の用量、好ましくは、0.1〜10mg/kg体重、より好ましくは、0.1〜1mg/kg体重の用量で投与され得る。
本発明に係る抗がん剤は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖以外に、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤又は賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含み得る。治療的使用のための薬学的に受容可能なキャリア又は賦形剤は、薬学分野で周知であり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。薬学的に使用可能なキャリア、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準的薬学的慣行に従って、当業者によって容易に選択され得る。また、本発明に係る抗がん剤は、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、被覆剤又は可溶化剤をさらに含み得る。
異なる送達系に依存して、組成/処方の必要条件は、異なり得る。例示として、本発明に係る抗がん剤は、ミニポンプを使用して又は粘膜経路により、例えば、吸入のための鼻スプレー又はエアロゾルとして、あるいは非経口的に送達するために処方され得る(ここで本発明に係る抗がん剤は、例えば、静脈内経路、筋肉内経路もしくは皮下経路による送達のために注射可能形態として処方される)。あるいは、この処方物は、両方の経路により送達されるように設計され得る。その他、吸入のための鼻スプレー又はエアロゾル等の、鼻や気管支等から肺細胞まで効率よく送達することが可能な形態であることも好ましい。
また、本発明に係る抗がん剤を生体内に投与する用途で用いる場合、有効成分であるヒト抗体κ型軽鎖の生体内における安定性(血中半減期)を向上させるための様々な技術が用いられ得る。例えば、neonatal Fc receptor(FcRn)がFcに結合すると、IgGなどの抗体の血中半減期が延長することが知られており(例えば、Roopenian,D.C.et.al.,Nat Rev Immunol vol.7 715−725(2007)参照)、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖のC末端を、FcRnとの結合活性を有するように改変することができる。また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖をダイマー化すること、PEG(ポリエチレングリコール)を付加することもできる。
本発明に係る抗がん剤は、例えば、服用の態様についての説明書等とともにキット化することもできる。当該キットには、その他、本発明に係る抗がん剤と併用可能な各種医薬を含めることもできる。
また、本発明に係る抗がん剤は、標的分子の認識能が高い抗体κ型軽鎖を有効成分とするため、抗体κ型軽鎖の標的分子が細胞表面に存在していないがん細胞には細胞傷害性を発揮しない。このため、本発明の抗がん剤は、がんの種類の識別に有用であることが期待される。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[ヒト抗体κ型軽鎖の発現系の構築]
以下の実施例等において、配列番号2のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)、配列番号2のアミノ酸配列中の219番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)、配列番号4のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL)、配列番号6のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(I))、配列番号8のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 VL(RL))、配列番号10のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#7 RLI)、配列番号12のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#4)、配列番号14のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(#11)、配列番号16のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(23D4)、配列番号18のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(W3)、配列番号20のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(W10)、配列番号22のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(C51)、配列番号24のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(C82)、配列番号26のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(C89)及び配列番号40のアミノ酸配列からなるヒト抗体κ型軽鎖(W15)を用いた。
これらのヒト抗体κ型軽鎖は、それぞれ、大腸菌発現系により発現させた。具体的には、各ヒト抗体κ型軽鎖をコードする塩基配列からなるcDNAを、Hisタグ配列サイトを有するプラスミドベクターに導入し、当該プラスミドベクターを大腸菌に導入して形質転換体を作製した。各形質転換体を培養し、IPTGによる発現誘導を行ったところ、SDS−PAGE分析及び抗ヒト型(Fab’)抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、大腸菌において発現したタンパク質がヒト型抗体軽鎖であることを同定することができた。得られたヒト型抗体軽鎖は、N末端にM(メチオニン)を、C末端にプラスミドベクター由来のLEHHHHHH(配列番号53)を有していた。
[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]
金属イオンを結合させていないヒト抗体κ型軽鎖は、以下のようにして発現させ、精製した。
まず、前記で作製した発現ベクターを導入した大腸菌の形質転換体を、37℃で一晩、LB培地中で培養した後、培養液にIPTGを終濃度10μM(μmol/L)となるように添加し、18℃で一晩培養した。培養終了後、遠心分離処理により培養物から集菌した菌体に、塩化ナトリウム含有トリスバッファー(25mM Tris−HCl、0.25M NaCl、pH8.0)を添加し、超音波処理により菌体を破砕した後、遠心分離処理を行い、可溶性画分を回収した。
次に、第1の精製工程として、この可溶性画分を、Ni−NTA Agaroseを充填したNi−NTAカラム(Qiagen社製)にアプライし、適量の前記塩化ナトリウム含有トリスバッファーを当該Ni−NTAカラムに通過させて、発現させたヒト抗体κ型軽鎖を当該Ni−NTAカラムに吸着させた。その後、溶離液として、イミダゾール濃度を0.03Mから0.3Mまでグラジエントをかけたイミダゾール含有トリスバッファー(25mM Tris−HCl、0.25M NaCl、imidazole、pH8.0)を用いて、当該Ni−NTAカラムからヒト抗体κ型軽鎖を溶出させ、ヒト抗体κ型軽鎖含有画分を分取した。回収したヒト抗体κ型軽鎖含有画分は、酢酸バッファー(50mM 酢酸、pH5.5)で4℃、12〜24時間透析した。
その後、第2の精製工程として、透析済のヒト抗体κ型軽鎖含有画分を、陽イオン交換カラム(製品番号:SP−5PW、TOSOH社製)にアプライし、適量の前記酢酸バッファーを当該陽イオン交換カラムに通過させて、発現させたヒト抗体κ型軽鎖を当該陽イオン交換カラムに吸着させた。その後、溶離液として、塩化ナトリウム濃度を0.15Mから0.45Mまでグラジエントをかけた塩化ナトリウム含有酢酸バッファー(50mM 酢酸、NaCl、pH5.5)を用いて、当該陽イオン交換カラムからヒト抗体κ型軽鎖を溶出させ、ヒト抗体κ型軽鎖含有画分を分取した。回収したヒト抗体κ型軽鎖含有画分は、塩化ナトリウム含有トリスバッファー(20mM Tris−HCl、0.15M NaCl、pH8.5)で4℃、12〜24時間透析した後、さらにPBS(pH7.4)で4℃、12〜24時間透析した。透析後のものを、複合体含有組成物として用いた。
[複合体含有組成物における、ヒト抗体κ型軽鎖と結合している銅イオン量の測定]
以下の実施例等において、複合体含有組成物における、ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たりの銅イオン結合量(モル)を算出するために、以下の方法にて、ヒト抗体κ型軽鎖と結合している銅イオンの総量(モル)を測定した。銅イオン量の測定は、市販の測定キット「メタロアッセイ 低濃度銅測定LS(尿中銅定量キット)」(メタロジェニックス社製)を用いて行った。また、測定に供される複合体含有組成物(サンプル)は、必要に応じて、予めPBS(リン酸緩衝生理食塩水)等の銅イオンを含まない溶媒を用いて透析処理した。
具体的には、まず、低吸着タイプの96ウェルプレートの各ウェルに、100μLのサンプルを入れ、さらに、予め37℃でインキュベートしておいた140μLのR−A(緩衝液)と3μLのR−R(キレート試薬液:3,5−DiBr−PAESA(4−(3,5−ジブロモ−2−ピリジルアゾ)−N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン誘導体))とを分注し、ピペッティングにより撹拌した。R−R等を添加した後10分間、37℃でインキュベートした後、プレートリーダー「ImmunoMini NJ−2300」(ナルジェヌンク社製)を使用して、590nmの吸光度を測定した。予めキット付属の銅標準液を用いて作成した検量線を用いて、得られた測定値から、当該サンプル中の銅濃度を算出した。
また、各複合体含有組成物における、銅含有量を、下記式にしたがって算出した。式中、「銅イオン(M)」は複合体組成物中でヒト抗体κ型軽鎖に結合している銅イオンの全量を、「ヒト抗体κ型軽鎖(M)」は複合体組成物中に含まれるヒト抗体κ型軽鎖の全量である。
[細胞障害性アッセイ]
がん細胞株を用い、各複合体含有組成物のがん細胞に対する細胞障害性について試験した。がん細胞株としては、A549株(ヒト肺胞上皮がん細胞株)、ES−2株(ヒト卵巣がん細胞株)、MOLT−4株(ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞株)、BxPC−3株(ヒト膵臓腺がん細胞株)、SNU−1株(ヒト転移性胃がん細胞株)、及びPANC−1株(ヒト膵臓がん細胞株)を用いた。
また、対照として、正常細胞株であるWI−38株(ヒト胎児肺繊維芽細胞株)も用いた。
これらは、いずれもATCC(American Type Culture Collection)より購入した。また、A549株は10%FCS(ウシ胎児血清)含有F−12K培地を、ES−2株は10%FCS含有McCoy’s 5A培地を、MOLT−4株、SNU−1株及びBxPC−3株は10%FCS含有RPMI−1640培地を、PANC−1株は10%FCS含有DMEM培地を、WI−38株は10%FCS含有EMEM培地を、それぞれ用い、通常の方法で培養した。
まず、凍結されたがん細胞株を融解して回復させた後、例えば5×10細胞/ウェル(細胞種によって播種数は適宜調整した。)となるように96ウェルプレートに100μLずつ播種した。37℃で24時間培養した後、当該96ウェルプレートに添加されている培地をデカンテーションで除去した後、約1mg/mLに調製した各複合体含有組成物を、各ウェルに100μLずつ添加した。複合体含有組成物を添加してから24時間又は48時間培養後(細胞を播種してから48時間又は72時間培養後)に、各ウェルにWST−1試薬(Roche社製)を10μLずつ添加し、1、1.5、及び2時間インキュベート後に、生成されたホルマザン色素の吸光度(Abs450nm)を測定した(WSTアッセイ)。対照として、複合体含有組成物に代えて、金属イオンを結合させていないヒト抗体κ型軽鎖若しくはPBSを添加し、24時間又は48時間培養後にWSTアッセイを行った。得られた吸光度の結果に基づき、金属イオンを結合させていないヒト抗体κ型軽鎖を添加したウェル又はPBSを添加したウェルの細胞生存率を100%とし、各ウェルの細胞生存率を求め、添加した複合体含有組成物の細胞障害性を評価した。
なお、MOLT−4株の場合には、96ウェルプレートに細胞を播種した時点から、約1mg/mLに調製した各複合体含有組成物を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間又は48時間培養した後にWSTアッセイを行った。
[担癌モデルマウスにおける細胞障害性アッセイ]
担癌モデルマウスを用い、各複合体含有組成物の、担癌モデルマウス中のがん細胞に対する細胞障害性について試験した。
まず、ES−2株(ヒト卵巣がん由来細胞)、又はB−16株(マウスメラノーマ由来)を、2.5×10cells/mouseとなるようにマウス皮下に移植した。マウス皮下に定着した腫瘍に対して、がん細胞移植後4日目から複合体含有組成物を投与した。複合体含有組成物の投与は、皮下腫瘍中の複数個所に対して、マウス体外からシリンジを用いて直接注入することにより行った。また、複合体含有組成物の投与は、5日間且つ1日1回の投与を行った後、2日間投与を休止し、さらに5日間且つ1日1回の投与を行った(計10回投与)。また、対照として、複合体含有組成物に代えて、PBSを同様のスケジュールで投与した群を設けた。
皮下腫瘍の体積をマウス体外から経時的に測定し、がん細胞移植後1日目(移植翌日)の皮下腫瘍の体積を1として、相対腫瘍体積を求め、複合体含有組成物の担癌モデルマウスにおける細胞障害性を評価した。
[実施例1]
ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を用いて、発現及び精製工程における銅イオンの添加時期が、得られた組成物の細胞障害性に対して及ぼす影響を調べた。
具体的には、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]の通り、銅イオン非存在下で発現及び精製する方法(コントロールケース)において、Ni−NTAカラム精製後の溶出液に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に前記酢酸バッファーで透析した以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース1)、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)発現用ベクターを導入した大腸菌の形質転換体を終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加したLB培地で培養し、かつ、前記Ni−NTAカラム精製後の溶出液に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に前記酢酸バッファーで透析した以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース2)により、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含む組成物を得た。
図1Aに、コントロールケース(銅イオン無添加)における陽イオン交換クロマトグラム(各保持時間における溶出液のUV(280nm)吸収値(mAU)と溶離液の塩化ナトリウム濃度(M))を、図1Bに図1Aに示すフラクション1〜3のSDS−PAGE(非還元)の結果を、それぞれ示した。フラクション1にはヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)の単量体のみが含まれており、フラクション2には単量体と二量体の両方が含まれていたが、単量体のほうが多く含まれていた。フラクション3には、主に二量体が含まれていた。
図2Aに、ケース1(一次精製後の銅イオン添加)における陽イオン交換クロマトグラムを、図2Bに図2Aに示すフラクション1AのSDS−PAGE(非還元)の結果を、それぞれ示した。ケース1では、1つの大きなピークが、コントロールケースのフラクション3に相当する位置に観察された。SDS−PAGEの結果によれば、このフラクション1Aに含まれているヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)はほぼ二量体であり、銅イオン存在下で精製することにより、単量体よりも二量体が形成されやすいことがわかった。
図3Aに、ケース2(発現時と一次精製後の銅イオン添加)における陽イオン交換クロマトグラムを、図3Bに図3Aに示すフラクション2A及び2BのSDS−PAGE(非還元)の結果を、それぞれ示した。ケース2では、コントロールケースのフラクション2及びフラクション3に相当する位置にピークが観察された。SDS−PAGEの結果によれば、両フラクションに含まれているヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)は、いずれもほぼ二量体であり、ケース1と同様に、銅イオン存在下で精製することにより、単量体よりも二量体が形成されやすいことがわかった。
各フラクションから精製されたヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含む組成物の、A549細胞株に対する細胞障害性を調べた。各ウェルには、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)が40μMとなるように添加し、添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。コントロールケースのフラクション3の組成物(Fr.3)を添加した場合の細胞生存率を100%とし、ケース1のフラクション1Aの組成物(Fr.1A)、ケース2のフラクション2Aの組成物(Fr.2A)、及びケース2のフラクション2Bの組成物(Fr.2B)を添加した場合の相対細胞生存率を求めた。結果を図4に示す。この結果、Fr.2Bは相対細胞生存率が100%より大きく、銅イオン非存在下で発現・精製されており、銅イオンが結合していないFr.3と同程度の細胞障害性しかなかった。これに対して、Fr.1AとFr.2Aでは、相対細胞生存率が40%よりも低く、銅イオンが結合していないFr.3よりも細胞障害性が向上していた。
コントロールケースのフラクション3の組成物(Fr.3)、ケース1のフラクション1Aの組成物(Fr.1A)、ケース2のフラクション2Aの組成物(Fr.2A)、及びケース2のフラクション2Bの組成物(Fr.2B)について、UV/VISスペクトルを求めたところ、Fr.1AとFr.2Aでは約580nm付近にピークが観察されたのに対して、Fr.3とFr.2Bでは当該ピークは観察されなかった。銅イオンは、約580nm付近に吸収ピークがあることから、Fr.1AとFr.2Aには銅イオンが結合しているヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)が含まれており、Fr.3とFr.2Bには銅イオンが結合しているヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)は含まれていないことがわかった。
これらの結果から、銅イオンが結合することにより、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)の細胞障害活性が顕著に向上することがわかった。
[実施例2]
ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を用いて、第1の精製工程後に銅イオンを添加した後、インキュベートしたものを第2の精製工程に供し、得られた組成物の細胞障害性を調べた。
具体的には、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に、前記酢酸バッファーで12〜24時間透析し、その後に陽イオン交換カラムにアプライした以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース3)により、又は、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が40μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に、前記酢酸バッファーで12〜24時間透析し、陽イオン交換カラムにアプライした以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース4)により、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含む組成物を得た。
図5に、ケース3(一次精製後に15μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを、図6に、ケース4(一次精製後に40μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを、それぞれ示す。
ケース3では、実施例1のケース2と同様に2つのピークがあり、それぞれフラクション3A及び3Bとした。一方で、ケース4では、ケース3のフラクション3Aに相当する位置に1つのピークのみがあり、このピークを含む画分をフラクション4Aとした。各フラクションについてSDS−PAGE(非還元)を行ったところ、いずれも含まれているヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)はほぼ二量体であった(結果図示せず。)。
ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)について、UV/VISスペクトルを求めた。UV/VISスペクトルの測定結果を、実施例1におけるコントロールケースのフラクション3の組成物(Fr.3)の結果と共に図7に示す。この結果、Fr.3AとFr.4Aでは約580nm付近にピークが観察されたのに対して、Fr.3BではとFr.3と同様に当該ピークは観察されなかった。
また、ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)について、銅含有量を求めたところ、Fr.3Aは47.5%、Fr.3Bは3.2%、Fr.4Aは64.6%であった(表1)。
各フラクションから精製されたヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含む組成物の、SNU−1株及びPANC−1株に対する細胞障害性を調べた。各ウェルには、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)が4μM(100μg/mL)となるように添加し、添加後24時間又は48時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、ポジティブコントロールとして、抗がん剤シスプラチンを4μM又は33μMとなるように添加して、同様にして細胞障害性を調べた。銅イオンが結合していないヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含むFr.3Bを添加した場合の細胞生存率を100%とし、Fr.3A、Fr.4A、及びシスプラチンをそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。結果を表1に示す。この結果、銅イオンが結合したヒト抗体κ型軽鎖(#7_wt)を含むFr.3AとFr.4Aは、SNU−1株とPANC−1株の両方について、相対細胞生存率が低く、銅イオンが結合していないFr.3Bよりも細胞障害性が向上していた。
[実施例3]
ヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)を用いて、第1の精製工程後に銅イオンを添加した後、インキュベートしたものを第2の精製工程に供し、得られた組成物の細胞障害性を調べた。
具体的には、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]の通り、銅イオン非存在下で発現及び精製する方法(コントロールケース)、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に、前記酢酸バッファーで12〜24時間透析し、その後に陽イオン交換カラムにアプライした以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース3)、又は、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が40μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に、前記酢酸バッファーで12〜24時間透析し、陽イオン交換カラムにアプライした以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製する方法(ケース4)により、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)を含む組成物を得た。
図8に、コントロールケース(銅イオン無添加)における陽イオン交換クロマトグラムを、図9に、ケース3(一次精製後に15μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを、図10に、ケース4(一次精製後に40μM銅イオン添加してインキュベーション)における陽イオン交換クロマトグラムを、それぞれ示す。コントロールケースでは、実施例1のコントロールケースのフラクション2に相当する位置に1つのピークのみがあり、このピークを含む画分をフラクション1とした。ケース3では、実施例2のケース3と同様に2つのピークがあり、それぞれフラクション3A及び3Bとした。一方で、ケース4では、実施例2のケース4と同様に1つのピークのみがあり、このピークを含む画分をフラクション4Aとした。各フラクションについてSDS−PAGE(非還元)を行ったところ、いずれも単量体のヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)のみが含まれていた(結果図示せず。)。
コントロールケースのフラクション1の組成物(Fr.1)、ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)について、UV/VISスペクトルを求めた。UV/VISスペクトルの測定結果を図11に示す。この結果、Fr.3AとFr.4Aでは約580nm付近にピークが観察されたのに対して、Fr.3BではとFr.1と同様に当該ピークは観察されなかった。
また、ケース3のフラクション3Aの組成物(Fr.3A)、ケース3のフラクション3Bの組成物(Fr.3B)、及びケース4のフラクション4Aの組成物(Fr.4A)について、銅含有量を求めたところ、Fr.3Aは37.5%、Fr.3Bは7.4%、Fr.4Aは51.5%であった(表2)。
各フラクションから精製されたヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)を含む組成物の、SNU−1株に対する細胞障害性を調べた。各ウェルには、ヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)が8.6〜9.1μMとなるように添加し、添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、ポジティブコントロールとして、抗がん剤シスプラチンを4μMとなるように添加して、同様にして細胞障害性を調べた。銅イオンが結合していないヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)を含むFr.3Bを添加した場合の細胞生存率を100%とし、Fr.3A、Fr.4A、及びシスプラチンをそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。結果を表2に示す。この結果、銅イオンが結合したヒト抗体κ型軽鎖(#7_C219A)を含むFr.3AとFr.4Aは、SNU−1株とPANC−1株の両方について、相対細胞生存率が低く、銅イオンが結合していないFr.3Bよりも細胞障害性が向上していた。
[実施例4]
ヒト抗体κ型軽鎖(C51)を、銅イオン非存在下で発現及び精製して得た組成物〔C51(Lot1)及びC51(Lot2)〕と、銅イオン存在下で精製して得た複合体含有組成物〔C51(Lot3)〕と、銅イオン存在下で発現及び精製させて得た複合体含有組成物〔C51(Lot4)〕について、A549株に対する細胞障害性を調べた。
C51(Lot1)及びC51(Lot2)は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]の通りにして調製した。いずれも、陽イオン交換クロマトグラムでは、実施例1のコントロールケースと同様に3つのピークが得られたが、ピーク3を含むフラクション(フラクション3)のみを精製して、細胞障害性を調べた。
C51(Lot3)は、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に前記酢酸バッファーで透析した以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製した。陽イオン交換クロマトグラムでは、実施例1のケース1と同様に1つのピークが得られ、このピークを含むフラクション(フラクション1A)のみを精製して、細胞障害性を調べた。
C51(Lot4)は、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)発現用ベクターを導入した大腸菌の形質転換体を、終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加したLB培地で培養し、かつ、Ni−NTAカラム精製後のヒト抗体κ型軽鎖含有画分に終濃度が15μMとなるように銅イオンを添加して4℃、12〜16時間インキュベートした後に前記酢酸バッファーで透析した以外は、前記の[ヒト抗体κ型軽鎖の発現及び精製]と同様にして調製した。陽イオン交換クロマトグラムでは、実施例1のケース2と同様に2つのピークが得られ、このうち銅イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖(C51)を含むピークを含むフラクション(ピーク2A)のみを精製して、細胞障害性を調べた。
各フラクションから精製されたヒト抗体κ型軽鎖(C51)を含む組成物の、A549株に対する細胞障害性を調べた。各ウェルには、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)が40μMとなるように添加し、添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、抗がん剤シスプラチンを33μM又は330μMとなるように添加したものをポジティブコントロールとし、PBSを添加したものをネガティブコントロールとして、同様にして細胞障害性を調べた。PBSを添加した場合の細胞生存率を100%とし、C51(Lot1)〜C51(Lot4)及びシスプラチンをそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。結果を図12に示す。この結果、銅イオンと結合していないヒト抗体κ型軽鎖(C51)〔C51(Lot1)及びC51(Lot2)〕も、シスプラチン33μM添加と同程度に細胞障害性が見られた。銅イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖(C51)を含むC51(Lot3)及びC51(Lot4)は、C51(Lot1)及びC51(Lot2)よりも相対細胞生存率が明らかに低く、細胞障害性が向上していた。
各フラクションから精製されたヒト抗体κ型軽鎖(C51)を含む組成物について、UV/VISスペクトルを求めた。C51(Lot1)及びC51(Lot4)のUV/VISスペクトルの測定結果を図13に示す。C51(Lot4)及びC51(Lot3)では約580nm付近にピークが観察されたのに対して、C51(Lot1)及びC51(Lot2)では当該ピークは観察されなかった。この結果、銅イオンの結合部位は、ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインと推定された。
[実施例5]
ヒト抗体κ型軽鎖(C51)を、各種金属イオン存在下でインキュベートして結合させて得られた組成物について、A549株及びWI−38株に対する細胞障害性を調べた。
具体的には、まず、実施例4のC51(Lot1)と同様にして、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)を含む組成物を調製した。次いで、このヒト抗体κ型軽鎖(C51)が最終濃度40μMとなるように調整したヒト抗体κ型軽鎖(C51)溶液に、3価の鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、金イオン、銀イオン、又は白金イオンを最終濃度15μMとなるように添加して24時間インキュベートした。インキュベート後、PBS(pH7.4)で4℃、12時間の透析を2回繰り返して得られた組成物を、細胞障害性アッセイに用いた。
銅イオンとインキュベートした後に透析して得られた各組成物についてUV/VISスペクトルを測定したところ、約580nm付近にピークが観察されたことから、精製後のヒト抗体κ型軽鎖を金属イオンとインキュベートすることにより、金属イオンと結合したヒト抗体κ型軽鎖を含む組成物が得られたことが確認された。
細胞障害性アッセイにおいて、各ウェルには、ヒト抗体κ型軽鎖(C51)が4μMとなるように添加し、添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、抗がん剤シスプラチンを4μM(A549株)又は4.2μM(WI−38株)となるように添加したものをポジティブコントロールとし、PBSを添加したものをネガティブコントロールとして、同様にして細胞障害性を調べた。PBSを添加した場合の細胞生存率を100%とし、各組成物及びシスプラチンをそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。
A549株についての結果を図14に、WI−38株についての結果を図15に、それぞれ示す。この結果、A549株においては、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、金イオン、銀イオン、又は白金イオンとインキュベートしたヒト抗体κ型軽鎖(C51)では、シスプラチン添加の場合と同様に相対細胞生存率が60%程度と低く、高い細胞障害性を有していた。一方で、鉄イオン又はコバルトイオンとインキュベートしたヒト抗体κ型軽鎖(C51)では相対細胞生存率が90%以上であり、細胞障害性がみられなかった。これに対して、WI−38株においては、シスプラチン添加の場合には相対細胞生存率が40%と非常に低かったのに対して、金属イオンとインキュベートしたヒト抗体κ型軽鎖(C51)は、金属イオンの種類にかかわらず相対細胞生存率が85%以上と高く、細胞障害性がみられなかった。これらの結果から、ヒト抗体κ型軽鎖を、銅イオン等の第10族元素、第11族元素、又は第12族元素の金属イオンと結合させることにより、がん細胞特異的な細胞障害性を改善し得ることが明らかである。
[実施例6]
各種ヒト抗体κ型軽鎖について、がん細胞に対する細胞障害性に対する銅イオン結合量の影響を調べた。
具体的には、まず、ヒト抗体κ型軽鎖を実施例4のC51(Lot1)と同様にして、ヒト抗体κ型軽鎖を含む組成物を調製した。次いで、このヒト抗体κ型軽鎖が最終濃度40μMとなるように調整したヒト抗体κ型軽鎖溶液に銅イオンを添加して24時間インキュベートした。インキュベート後、PBS(pH7.4)で4℃、12時間の透析を2回繰り返して得られた組成物を、細胞障害性アッセイに用いた。
細胞障害性アッセイにおいては、各組成物を添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、銅イオンとインキュベートしていないヒト抗体κ型軽鎖(銅イオンと結合していないヒト抗体κ型軽鎖)についても同様にして細胞障害性を調べた。銅イオンと結合していないヒト抗体κ型軽鎖を添加した場合の細胞生存率を100%とし、各組成物をそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。
表3及び4に、細胞障害性アッセイにおいて用いたヒト抗体κ型軽鎖、がん細胞株、各ウェルに添加したヒト抗体κ型軽鎖の濃度(μM)、及び相対細胞生存率(%)を示す。
これらの結果からも、各種ヒト抗体κ型軽鎖を、銅イオンと結合させることにより、様々ながん細胞に対する細胞障害性を向上させられることが確認できた。
[実施例7]
各種ヒト抗体κ型軽鎖について、がん細胞に対する細胞障害性に対する銅イオン結合量の影響を調べた。
具体的には、まず、ヒト抗体κ型軽鎖を実施例4のC51(Lot1)と同様にして、ヒト抗体κ型軽鎖を含む組成物を調製した。次いで、このヒト抗体κ型軽鎖が最終濃度40μMとなるように調整したヒト抗体κ型軽鎖溶液に銅イオンを添加して24時間インキュベートした。インキュベート後、PBS(pH7.4)で4℃、12時間の透析を2回繰り返して得られた組成物を、細胞障害性アッセイに用いた。また、各組成物について、銅含有量も求めた。
細胞障害性アッセイにおいては、各組成物を添加後24時間培養した時点における細胞生存率を求めた。また、銅イオンとインキュベートしていないヒト抗体κ型軽鎖(銅イオンと結合していないヒト抗体κ型軽鎖)についても同様にして細胞障害性を調べた。銅イオンと結合していないヒト抗体κ型軽鎖を添加した場合の細胞生存率を100%とし、各組成物をそれぞれ添加した場合の相対細胞生存率を求めた。
表5に、細胞障害性アッセイにおいて用いたヒト抗体κ型軽鎖、がん細胞株、各ウェルに添加したヒト抗体κ型軽鎖の濃度(μM)、ヒト抗体κ型軽鎖組成物の銅含有量(%)、及び相対細胞生存率(%)を示す。この結果、いずれのヒト抗体κ型軽鎖においても、がん細胞株では相対細胞生存率は約85%以下と低かったが、正常細胞株であるWI−38株では相対細胞生存率が90%以上と高かった。これらの結果からも、各種ヒト抗体κ型軽鎖を銅イオンと結合させることにより、特にがん細胞に対する細胞障害性を向上させられることが確認できた。
[実施例7]
ヒト抗体κ型軽鎖(W15及び#4)を、銅イオン存在下でインキュベートして銅を結合させて得られた組成物について、担癌モデルマウスに対する影響を調べた。
具体的には、まず、ヒト抗体κ型軽鎖を実施例4のC51(Lot1)と同様にして、ヒト抗体κ型軽鎖を含む組成物を調製した。次いで、このヒト抗体κ型軽鎖が最終濃度40μMとなるように調整したヒト抗体κ型軽鎖溶液に銅イオンを添加して24時間インキュベートした。インキュベート後、PBS(pH7.4)で4℃、12時間の透析を2回繰り返し、複合体含有組成物を調製した。
次いで、前記[担癌モデルマウスにおける細胞障害性アッセイ]の通り、担癌モデルマウスに対して、上記複合体含有組成物又はPBSを投与し、担癌モデルマウスにおける細胞障害性を評価した。
図16に、ES−2株を移植して得られた担癌マウスに対し、ヒト抗体κ型軽鎖(W15)を含む複合体含有組成物を、1回あたり63.7μg/匹(25.5μM/匹)投与した結果を示す。また、図17に、B−16株を移植して得られた担癌マウスに対し、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)を含む複合体含有組成物を、1回あたり32.3μg/匹(12.9μM/匹)投与した結果を示す。いずれの場合もPBS投与群を対象として設け、各群ともn=2である。
これらの結果、ES−2株移植マウスに対してヒト抗体κ型軽鎖(W15)を含む複合体含有組成物を投与した群では、PBSを投与した対照群に比して、移植後15日目における相対腫瘍体積が約1/4に留まり、明らかながん細胞障害性が認められた。
また、B−16株移植マウスに対してヒト抗体κ型軽鎖(#4)を含む複合体含有組成物を投与した群でも、PBSを投与した対照群に比して、移植後15日目における相対腫瘍体積が約1/3に留まり、明らかながん細胞障害性が認められた。
本発明は、ヒト抗体κ型軽鎖を有効成分とする医薬品の製造分野や、新規抗がん剤の開発、がん治療の分野において利用可能である。

Claims (11)

  1. ヒト抗体κ型軽鎖と、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンとが結合した複合体を含み、
    前記ヒト抗体κ型軽鎖は二量体であって、2つの前記ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステインが、前記金属イオンを介して結合しており、
    前記ヒト抗体κ型軽鎖1モル当たり、前記金属イオンが0.1モル以上結合していることを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
  2. 前記金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、金イオン、銀イオン、及び白金イオンからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
  3. 前記ヒト抗体κ型軽鎖が、
    (1)可変領域が配列番号1のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (2)可変領域が配列番号3のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (3)可変領域が配列番号5のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (4)可変領域が配列番号7のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (5)可変領域が配列番号9のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (6)可変領域が配列番号11のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (7)可変領域が配列番号13のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (8)可変領域が配列番号15のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (9)可変領域が配列番号17のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (10)可変領域が配列番号19のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (11)可変領域が配列番号21のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (12)可変領域が配列番号23のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (13)可変領域が配列番号25のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (14)可変領域が配列番号27のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (15)配列番号2のアミノ酸配列中の219番目のシステインがアラニンに置換されたアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (16)可変領域が配列番号29のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (17)可変領域が配列番号31のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (18)可変領域が配列番号33のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (19)可変領域が配列番号35のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (20)可変領域が配列番号37のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (21)可変領域が配列番号39のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (22)可変領域が配列番号41のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (23)可変領域が配列番号43のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (24)可変領域が配列番号45のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (25)可変領域が配列番号47のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    (26)可変領域が配列番号49のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、及び
    (27)可変領域が配列番号51のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、付加、若しくは欠失したアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、
    からなる群より選択される、請求項1又は2に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物を有効成分とすることを特徴とする、医薬用組成物。
  5. 抗がん剤である、請求項4に記載の医薬用組成物。
  6. C末端にシステイン残基を有するヒト抗体κ型軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む発現用ベクターを用いて、細胞内又は細胞外発現系によって、前記ヒト抗体κ型軽鎖を発現させる発現工程と、
    前記発現工程で得られた発現産物から、前記ヒト抗体κ型軽鎖を精製する精製工程と、を有し、(a)前記発現工程において、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンの存在下で前記ヒト抗体κ型軽鎖を発現させる、又は(b)前記発現工程で得られた発現産物に、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンを添加し、得られた混合物から、前記ヒト抗体κ型軽鎖を精製することを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
  7. 前記(b)において、前記混合物を30分間〜48時間インキュベートした後に、当該混合物からヒト抗体κ型軽鎖を精製する、請求項6に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
  8. 前記精製工程が、
    前記発現工程で得られた発現産物から、第1の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、前記ヒト抗体κ型軽鎖を含む粗精製物を得る第1の精製工程と、
    前記第1の精製工程により得られた粗精製物から、第2の充填剤を含むカラムを用いたカラムクロマトグラフィー法により、前記ヒト抗体κ型軽鎖の精製物を得る第2の精製工程と、
    からなり、前記金属イオンを、前記第1の精製工程後、前記第2の精製工程前に、前記粗精製物に添加する、請求項6又は7に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
  9. 前記第2の精製工程前に、前記金属イオンを添加した前記粗精製物を、30分間〜48時間インキュベートする、請求項8に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
  10. 前記金属イオンを、前記発現工程において前記発現系内に添加し、さらに、前記第1の精製工程後前記第2の精製工程前に前記粗精製物に添加する、請求項8又は9に記載のヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
  11. ヒト抗体κ型軽鎖を、第10族元素、第11族元素、及び第12族元素からなる群より選択される1種以上の金属イオンを含む溶液中でインキュベートすることにより、2つの前記ヒト抗体κ型軽鎖のC末端のシステイン残基が前記金属イオンを介して結合している複合体を含む組成物を製造することを特徴とする、ヒト抗体κ型軽鎖複合体含有組成物の製造方法。
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