JPWO2015001756A1 - 乗物用暖房システム - Google Patents

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Abstract

本開示の乗物用暖房システム(100)は、シートヒータ(20a)と、温風暖房器(5)とを備える。温風暖房器(5)は、筐体(50)と、筐体(50)の内部空間(53)に設けられたファン(55)及びヒータ(57)とを有し、温風を乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられている。本開示の乗物用暖房システム(100)は、吹出口(52)における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータ(20a、20b)に向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、シートヒータ(20a)、ファン(55)、及びヒータ(57)が動作する。

Description

本開示は、乗物用暖房システムに関する。
従来、ヒータを有する乗物用シートが知られている。例えば、特許文献1には、それぞれ車両用の座席に設けられた大腿部ヒータユニット、臀部ヒータユニット、及び腰部ヒータユニットを有する車両用座席加熱装置が開示されている。この車両用座席加熱装置は、さらに、大腿部温度センサ、臀部温度センサ、腰部温度センサ、及びヒータ制御部を備えている。ヒータ制御部は、初期モードにおいて、大腿部及び臀部を腰部に優先して温めるために、大腿部ヒータユニット及び臀部ヒータユニットの出力を最大にしている。また、ヒータ制御部は、定常モードにおいて、上記の各温度センサによって検出した座席の表面近傍の温度が、腰部近傍、臀部近傍、大腿部近傍の順番で小さくなるように各ヒータユニットの出力を制御している。
また、乗物用シートの座部の下方に設けられたヒータを有する乗物用暖房システムも知られている。特許文献2には、赤外線光源と、集光部材とを有する車両用暖房システムが開示されている。赤外線光源は座席の座面よりも低い位置に配置されている。また、集光部材は、座席に座った乗員の膝下部分に赤外線光源からの赤外線を照射するように形成されている。
さらに、特許文献3及び特許文献4には、乗物用シートに着座した乗員の下腿に向かって温風を供給する暖房付き乗物用シートが開示されている。
特開2009−178247号公報 特開2007−1355号公報 特開2011−254882号公報 特開2012−183154号公報
特許文献1〜4に記載された発明では、乗物用シートに着座した乗員が温感を得られる部位は限定されている。本開示は、乗物用シートに着座した乗員がより広い部位で温感を得ることができ、車室内の温度がより低い場合でも、全身の快適感を得ることができる乗物用暖房システムを提供する。
本開示にかかる乗物用暖房システムの一態様は、
乗物用シートに設けられたシートヒータと、
吸気口及び吹出口を有する筐体と、前記吸気口から前記吹出口への空気の流路としての前記筐体の内部空間に設けられたファン及びヒータとを有し、前記ファン及び前記ヒータによって生成された温風を前記吹出口から前記乗物用シートに着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられた温風暖房器と、を備え、
前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータが動作する。
上記の乗物用暖房システムによれば、乗物用シートに着座した乗員がシートヒータによる暖房から得る温感と温風暖房器による暖房から得る温感とがバランスしやすい。このため、車室内の温度がより低い場合あっても、乗物用シートに着座した乗員は全身の快適感を得ることができる。
図1は、第1実施形態に係る乗物用シート及びその周辺の側面図である。 図2は、第1実施形態に係る温風暖房器及びその周辺の側面図である。 図3は、図2に示す温風暖房器の斜視図である。 図4は、第1実施形態に係る乗物用暖房システムのブロック図である。 図5は、第1実施形態に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図6は、第1実施形態の変形例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図7は、第2実施形態に係る乗物用暖房システムのブロック図である。 図8Aは、加熱モードが強モードであるときのシートヒータの回路図である。 図8Bは、加熱モードが弱モードであるときのシートヒータの回路図である。 図9は、第2実施形態に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図10は、第2実施形態の変形例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図11は、第3実施形態の一例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図12は、第3実施形態の一例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図13は、第3実施形態の一例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。 図14は、第3実施形態の一例に係る乗物用暖房システムの動作を示すフロー図である。
(本発明に至った経緯)
例えば、電気自動車の車室内を冬期に暖房する場合、電気自動車の航続可能距離が著しく低下する。また、従来のハイブリッド電気自動車のHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)システムによる暖房のみでは、暖房運転の始動時に空調風の温度が上昇しにくい。このため、車室内の温度が快適な温度になるまでに時間がかかる。また、外気温が低い場合(例えば、0℃以下)、エンジンからの排熱が不足して快適な暖房を得られない可能性がある。
本発明者らは、従来乗員が全身の快適感を得ていた温度にまで車室内の温度を高めなくても、乗員が従来と同程度に全身の快適感を得られる乗物用暖房システムを実現できないかと考えた。すなわち、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くできれば(例えば、23℃)、車室内の全ての空間を所定の温度(例えば、26℃)にまで高める必要がなくなり、車室内の暖房に必要な出力を削減できるのではないかと考えた。そこで、本発明者らは、車室内の温度がより低い場合であっても、乗員が全身の快適感を得ることができる乗物用暖房システムを実現すべく鋭意検討したところ、以下の知見を得た。
まず、本発明者らは、乗員の身体の特定の部位を部分的、局所的に加熱することで、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くすることができるのではないかと考えた。しかしながら、これらの部位を単独で加熱するのみでは、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くすることはできなかった。
次に、乗員を加熱する部位を複数にするとともに、加熱する部位の組合せを異ならせることを検討した。その結果、従来の車室内全体の空調に加えて、下腿を加熱するとともに下腿よりも上方に位置する他の部位(大腿部、臀部、腰、又は背中)を加熱する場合には、乗員は広い部位に亘って温感を得られ、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くすることができることが判明した。
さらに、従来の車室内全体の空調に加えて、乗員の下腿を加熱するとともに下腿よりも上方に位置する他の部位を加熱することで、暖房運転の始動時に乗員が全身の快適感を得られるまでの時間が従来よりも極めて短くなることを見出した。例えば、乗員が、外気に晒されるなどして寒気を感じているときに、従来の車室内全体の空調に加えて、乗員の腰及び背中を加熱する場合よりも、従来の車室内全体の空調に加えて、乗員の下腿及び背中を加熱する方が、暖房運転の始動時に乗員が全身の快適感を得られるまでの時間が極めて短くなることを見出した。
そして、これらの効果は、従来の車室内全体の空調に加えて、乗員の下腿と組み合わせて大腿部及び背中を加熱する場合に特に顕著であった。
上記の効果が得られる原因は十分には解明していないが、本発明者らは以下の通りであると推測している。すなわち、乗員の下腿及び人体背部の血流を加熱しやすい部位が加熱されると、乗員の身体の血流が促進されるとともに、加熱された血液が乗員の身体を巡る。これにより、乗員は広い部位に亘って温感を感じることができ、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くすることができる。また、乗員の下腿及び下腿よりも上方に位置する他の部位を加熱することで、乗員が快適さを感じるパターン(周囲温度を含む外的要因と、それにより乗員が感じる快適さの関係)が変化する。これにより、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くすることができる。
かかる知見に基づき、乗員の大腿(上腿)、臀部、腰、又は背中等の部位を加熱するシートヒータを備えた乗物用シートと、ファン及びヒータを含み乗員の下腿に温風を吹出す温風暖房器と、を備えた乗物用暖房システムを検討したところ、さらに、以下の知見を得た。
乗員が乗物用シートに着座すると、乗員の大腿(上腿)、臀部、腰、又は背中等の部位は乗物用シートに密着する。そのため、乗物用シートのシートヒータからの熱は、乗員のこれらの部位に効率良く伝達される。一方、温風暖房器からの温風は、空間を介して乗員の下腿に到達する。そのため、温風暖房器からの温風の温度は、温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達するまでの間に、熱拡散等により低くなる。つまり、温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達した温風の温度は、吹出口から吹出された直後の温風の温度より低くなる。
したがって、乗物用暖房システムにおいて、温風暖房機の吹出口における温度と、乗物用シートの表面のうちシートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度とが略等しくなるように、シートヒータ、ファン、及びヒータを動作させる場合、乗員は、大腿(上腿)、臀部、腰、又は背中等の部位では温感を得られるが、下腿部では寒気を感じることとなる。この場合、シートヒータによる暖房から得られる温感と温風暖房器による暖房から得られる温感とをバランスさせることができず、乗員は広い部位に亘って温感を得られない。
本発明者らは、上記知見に基づき、温風暖房機の吹出口における温度が乗物用シートの表面のうちシートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように乗物用暖房システムを構成することで、乗物用暖房システムから得られる温感をバランスさせることができ、車室内の温度がより低い場合あっても、乗物用シートに着座した乗員が全身の快適感を得ることができることを見出した。
上記知見に基づき、本発明者は、以下に説明する各態様の発明を想到するに至った。
本開示の第1態様にかかる乗物用暖房システムは、
乗物用シートに設けられたシートヒータと、
吸気口及び吹出口を有する筐体と、前記吸気口から前記吹出口への空気の流路としての前記筐体の内部空間に設けられたファン及びヒータとを有し、前記ファン及び前記ヒータによって生成された温風を前記吹出口から前記乗物用シートに着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられた温風暖房器と、を備え、
前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータが動作する、ものである。
前記の通り、温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達した温風の温度は、熱拡散等により、吹出口から吹出された直後の温風の温度より低くなる。第1態様によれば、前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータが動作する。このため、乗物用シートに着座した乗員がシートヒータによる暖房から得る温感と温風暖房器による暖房から得る温感とがバランスしやすい。よって、車室内の温度がより低い場合あっても、乗物用シートに着座した乗員が全身の快適感を得ることができる。
また、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くできるため(例えば、23℃)、第1態様にかかる乗物用暖房システムを備えた自動車は、車室内の全ての空間を所定の温度(例えば、26℃)にまで上げる必要がなくなる。その結果、車室内の暖房に必要な出力を削減できる。
また、第1態様にかかる乗物用暖房システムを電気自動車に備える場合、電気自動車の車室内を冬期に暖房する場合であっても、電気自動車の航続可能距離が著しく低下することを抑制できる。
さらに、従来のハイブリッド電気自動車のHVACシステムによる暖房のみでは、暖房運転の始動時に空調風の温度が上昇しにくい。このため、車室内の温度が快適な温度になるまでに時間がかかる。これに対し、第1態様にかかる乗物用暖房システムによれば、乗員は広い部位に亘って温感を得られるので、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くでき、暖房運転の始動時に乗員が全身の快適感を得られるまでの時間が極めて短くなる。
ここで、特許文献1の車両用座席加熱装置によれば、乗員は、乗員の大腿部、臀部、及び腰部で温感を得られる。しかし、乗員のそれ以外の部位(例えば、乗員の下腿部)の寒気が際立つため、乗員はより広い部位で温感を得にくい。特許文献2の車両用暖房システム、並びに、特許文献3及び特許文献4の暖房付き乗物用シートも、乗員の特定の部位(下腿)を暖房するので、より広い部位で乗員は温感を得にくい。また、特許文献1に係る暖房及び特許文献2に係る暖房が同時に行われたとしても、これらの暖房から得られる温感のバランス次第では、乗員は広い部位に亘って温感を得ることができず、乗員が全身の快適感を得られる車室内の温度を従来よりも低くできない。
これに対して、本開示の第1態様にかかる乗物用暖房システムによれば、乗物用シートに着座した乗員がシートヒータによる暖房から得る温感と温風暖房器による暖房から得る温感をバランスしてコントロールでき、車室内の温度がより低い場合でも、乗員は全身の快適感を得ることができる。
本開示の第2態様にかかる乗物用暖房システムは、第1態様に加えて、例えば、
前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータを制御する制御器をさらに備える。
第2態様によれば、制御器が、シートヒータ、ファン、及びヒータを制御するため、簡素な構成により、温感のバランスがとれた暖房を実現することができる。
本開示の第3態様にかかる乗物用暖房システムは、第2態様に加えて、例えば、
前記ヒータよりも前記空気の流路の下流側に設けられた温風温度センサをさらに備え、
前記制御器は、前記シートヒータの発熱状態に関する情報に基づいて、前記温風によって前記乗物用シートに着座した乗員の下腿付近の温度が所定の温度となるように前記温風温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように前記ヒータを制御する。
第3態様によれば、制御器が、シートヒータの発熱状態に関する情報に基づいて温風温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、温風温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように温風暖房器の前記ヒータを制御するため、温感のバランスがとれた暖房をより確実に実現することができる。
本開示の第4態様にかかる乗物用暖房システムは、第3態様に加えて、例えば、
前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出するシート温度センサをさらに備え、前記シートヒータの発熱状態に関する情報が前記シート温度センサによって検出された温度である。
第4態様によれば、乗員が実際に接する乗物用シートの特定部分の温度又はこの特定部分の温度に近い温度を、シート温度センサによって検出できる。このため、制御器は、シートヒータによって乗員が実際に加熱されている温度に準じた温度に基づいて目標温度を決定できる。これにより、制御器は、この目標温度に基づいて、温風暖房器による暖房から得られる温感がシートヒータによる暖房から得られる温感にバランスする条件で、温風暖房器のヒータを制御できる。
本開示の第5態様にかかる乗物用暖房システムは、第4態様に加えて、例えば、
前記制御器は、前記目標温度が前記シート温度センサによって検出された温度よりも所定温度以上高くなるように前記目標温度を決定する。
上記の通り、温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達した温風の温度は、熱拡散等により、吹出口から吹出された直後の温風の温度より低い。第5態様によれば、制御器は、シート温度センサで検出された温度よりも所定温度以上高い温風が吹出口から吹出されるように温風暖房器のヒータを制御する。このため、シートヒータによる暖房から得られる温感が温風暖房器による暖房から得られる温感にバランスする条件で、温風暖房器のヒータを制御できる。
本開示の第6態様にかかる乗物用暖房システムは、第3態様に加えて、例えば、
前記シートヒータは、出力が異なる複数の加熱モードを有し、
前記シートヒータの発熱状態に関する情報が前記シートヒータの前記加熱モードである。
第6態様によれば、シートヒータの加熱モードは、シートヒータの発熱状態に関する情報として容易に取得できる。また、シートヒータの近傍に温度センサを設けなくてもよいので、乗物用暖房システムの構成を簡素化できる。
本開示の第7態様にかかる乗物用暖房システムは、第3態様〜第6態様のいずれかに加えて、例えば、
前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分の温度が所定の温度範囲に収まるように前記シートヒータの出力を調整するサーモスタットをさらに備える。
第7態様によれば、乗物用シートの表面のうちシートヒータに向かい合う部分又はその近傍の温度が所定の温度範囲に収まるので、シートヒータによる暖房から得られる温感が温風暖房器による暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータの出力を調整できる。
本開示の第8態様にかかる乗物用暖房システムは、第7態様に加えて、例えば、
前記制御器は、前記サーモスタットの設定温度よりも前記目標温度が所定温度以上高くなるように前記目標温度を決定する。上記の通り、温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達した温風の温度は吹出口から吹出された直後の温風の温度よりも低い。
第8態様によれば、温風暖房器の吹出口からサーモスタットの設定温度よりも高温の温風が吹出される。このため、温風暖房器による暖房から得られる温感がシートヒータによる暖房から得られる温感にバランスする条件で、温風暖房器のヒータを制御できる。
本開示の第9態様にかかる乗物用暖房システムは、第3態様及び第6態様〜第8態様のいずれか1つに加えて、例えば、
前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度を超えた場合には、前記シートヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度以下である場合には、前記シートヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する。
すなわち、本開示の第9態様は、第3態様及び第6態様〜第8態様のいずれか1つに加えて、前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下である場合には、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。第9態様によれば、温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下である場合にウォームアップ時の関係を用いて目標温度を決定するので、温風暖房器の吹出口から吹出される温風の温度を短期間で上昇させることができる。
本開示の第10態様にかかる乗物用暖房システムは、第4態様又は第5態様に加えて、例えば、
前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度を超えた場合には、前記シート温度センサで検出された温度と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度以下、かつ、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下である場合には、前記シート温度センサによって検出された温度と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する。
すなわち、本開示の第10態様は、第4態様又は第5態様に加えて、前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下、かつ、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下である場合には、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。
第10態様によれば、温風温度センサで検出された温度に加えて、例えばシート温度センサで検出された温度に基づいてウォームアップが必要かどうか判断できる。
本開示の第11態様にかかる乗物用暖房システムは、第2態様に加えて、例えば、
前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出するシート温度センサをさらに備え、前記制御器は、前記ヒータの発熱状態に関する情報に基づいて、前記乗物用シートの表面の温度が所定の温度となるように前記シート温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように前記のシートヒータを制御する。
第11態様によれば、制御器が、ヒータの発熱状態に関する情報に基づいてシート温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、シート温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように乗物用シートの前記シートヒータを制御するため、温感のバランスがとれた暖房をより確実に実現することができる。
本開示の第12態様にかかる乗物用暖房システムは、第11態様に加えて、例えば、
前記ヒータよりも前記空気の流路の下流側に設けられた温風温度センサをさらに備え、前記ヒータの発熱状態に関する情報が前記温風温度センサによって検出された温度である。
第12態様によれば、温風暖房器の吹出口から吹出された温度を、温風温度センサによって検出できる。このため、制御器は、温風暖房器の吹出口から吹出された温度に基づいて目標温度を決定できる。これにより、制御器は、この目標温度に基づいて、シートヒータによる暖房から得られる温感がヒータによる暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータを制御できる。
本開示の第13態様にかかる乗物用暖房システムは、第12態様に加えて、例えば、
前記制御器は、前記目標温度が前記温風温度センサによって検出された温度よりも所定温度以上低くなるように前記目標温度を決定する。温風暖房器の吹出口から吹出されて乗員の下腿に到達した温風の温度は、熱拡散等により、吹出口から吹出された直後の温風の温度より低い。
第13態様によれば、制御器は、乗員が実際に接する乗物用シートの特定部分の温度又はこの特定部分の温度に近い温度が温風温度センサで検出された温度よりも所定温度以上低くなるようにシートヒータを制御する。このため、温風暖房器による暖房から得られる温感がシートヒータによる暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータを制御できる。
本開示の第14態様は、第11態様に加えて、例えば、前記ヒータは、出力が異なる複数の加熱モードを有し、前記ヒータの発熱状態に関する情報が前記ヒータの前記加熱モードである。
第14態様によれば、温風暖房器のヒータの加熱モードは、温風暖房器のヒータの発熱状態に関する情報として容易に取得できる。また、ヒータの近傍に温度センサを設けなくてもよいので、乗物用暖房システムの構成を簡素化できる。
本開示の第15態様にかかる乗物用暖房システムは、第11態様〜第14態様に加えて、前記ヒータよりも前記空気流路の下流側に位置する部位の温度が所定の温度範囲に収まるように前記ヒータの出力を調整するサーモスタットをさらに備える。
第15態様によれば、前記ヒータよりも前記空気の流路の下流側に位置する部位の温度が所定の温度範囲に収まるので、シートヒータによる暖房から得られる温感が温風暖房器による暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータの出力を調整できる。
本開示の第16態様にかかる乗物用暖房システムは、第11態様、第14態様、第15態様のいずれか一つに加えて、例えば、
前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度を超えた場合には、前記ヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度以下である場合には、前記ヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する。
すなわち、本開示の第16態様は、第11態様、第14態様、第15態様のいずれか一つに加えて、前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下である場合には、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。
第16態様によれば、シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下である場合にウォームアップ時の関係を用いて目標温度を決定するので、シートヒータの温度を短期間で上昇させることができる。
本開示の第17態様にかかる乗物用暖房システムは、第12態様又は第13態様に加えて、例えば、
前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度を超えた場合には、前記温風温度センサで検出された温度と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度以下、かつ、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下である場合には、前記温風温度センサによって検出された温度と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する。
すなわち、本開示の第17態様は、第12態様又は第13態様に加えて、前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下、かつ、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下である場合には、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。
第17態様によれば、シート温度センサで検出された温度に加えて、温風温度センサで検出された温度に基づいてウォームアップが必要かどうか判断できる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本開示の一例に関するものであり、本開示はこれらによって限定されるものではない。以下の説明において、乗物は水平面に載置されているものとする。
<第1実施形態>
図1に示すように、乗物用シート1は、座部側シートクッション2s、背もたれ側シートクッション2b、及びヘッドレスト2hを備える。座部側シートクッション2sは、座面である座部Sを有する。背もたれ側シートクッション2bは、乗員の腰及び背と対向する面である背もたれ部Bを有する。なお、添付の図面において、XY平面が水平面であり、Z軸方向が鉛直方向である。X軸の正方向が、乗物用シート1の前方(乗物の進行方向)であり、Y軸方向が乗物用シート1の幅方向である。乗物用シート1の右から左に向かう方向が、Y軸の正方向である。また、本明細書において「左」及び「右」は、乗物用シート1に着座する乗員を基準にして定めている。また、図1に示す車室内には、車室内全体の温度が所定の温度になるように制御する空調装置(図示せず)が備えられている。
乗物用シート1には、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが設けられている。シートヒータ20aは、座部Sの近傍で座部側シートクッション2sに埋設されている。また、シートヒータ20bは、背もたれ部Bの近傍で背もたれ側シートクッション2bに埋設されている。シートヒータ20a及びシートヒータ20bは、例えば、通電により発熱する電気ヒータである。シートヒータ20aは、乗員の大腿(上腿)又は臀部を温める。シートヒータ20bは、乗員の腰又は背中を温める。なお、シートヒータ20bは省略可能である。
乗物用シート1の表面(座部S)のうちシートヒータ20aに向かい合う部分の近傍には、シート温度センサ21が設けられている。具体的に、シート温度センサ21は、シートヒータ20aと乗物用シート1の表面との間で座部側シートクッション2sに埋設されている。シート温度センサ21は、乗物用シート1の表面(座部S)のうちシートヒータ20aに向かい合う部分に設けられてもよい。シート温度センサ21は、乗物用シート1の表面(座部S)のうちシートヒータ20aに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出する。
シート温度センサ21は、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20bに向かい合う部分の近傍に設けられていてもよい。この場合、シート温度センサ21は、例えば、シートヒータ20bと乗物用シート1の表面との間で背もたれ側シートクッション2bに埋設されている。また、シート温度センサ21は、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20bに向かい合う部分に設けられていてもよい。
乗物用シート1には、温風暖房器5が取り付けられている。図2及び図3に示すように、温風暖房器5は、筐体50と、ファン55と、ヒータ57と、温風温度センサ58とを有する。筐体50は、吸気口51及び吹出口52と、吸気口51から吹出口52への空気の流路53としての内部空間とを有する。ファン55及びヒータ57は、内部空間に設けられている。温風温度センサ58は、ヒータ57より空気の流路53の下流側に設けられている。温風暖房器5は、ファン55及びヒータ57によって生成された温風を吹出口52から乗物用シート1に着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように乗物用シート1に取り付けられている。
吹出口52は、温風暖房器5が乗物用シート1に取り付けられた使用状態(以下、「使用状態」という)において、吸気口51よりも上方に位置し、かつ、水平方向よりも下方に向かって温風を吹出すように形成されている。つまり、吹出口52は、斜め下に向かって開口している。使用状態において、吸気口51は、前方又は下方に向かって開口している。図3に示すように、筐体50は、使用状態において、後方又は側方から吸気口51への吸気を抑制する隔壁59を備えている。
空気の流路53は、使用状態において、吸気口51から上方に向かって延びており、筐体50の上端で斜め下に向きを変えて吹出口52まで延びている。筐体50は、吹出口52が形成されている部分として、鉤状に曲がっている部分を有する。ファン55が作動することによって、吸気口51の周辺の空気が吸気口51から吸い込まれ、内部空間に供給される。ファン55によって上方に送り出された空気は空気の流路53を流れる過程でヒータ57によって加熱される。ヒータ57によって加熱された空気(温風)は、吹出口52から筐体50の外部へ吹出される。
吹出口52から外部に吹出された温風は、乗員の下腿に沿うように下方に流れて乗物の床面に到達する。乗物の床面に到達した温風は、吹出口52からさらに吹出された温風に押し出されるように上方かつ後方に向かって流れて吸気口51の周辺に到達する。この吸気口51の周辺に到達した温風の一部が吸気口51に吸い込まれて筐体50の内部の流路に供給される。すなわち、吹出口52から吹出された温風は、乗員の足元で循環気流を形成し、吸気口51に到達しやすい。従って、吸気口51に吸い込まれる空気の温度が比較的高いので、ヒータ57に要求される出力が低減される。
本実施形態では、ファン55は、ヒータ57よりも吸気口51の近くに位置している。つまり、本実施形態によれば、流路53のファン55よりも上流側の部分でヒータ57が存在しない。このような構成によれば、ファン55よりも上流側の流路53の空気の流れの圧力損失が低減されるので、ファン55の吸引力が低下しにくい。また、ヒータ57は流路53のファン55よりも下流側の部分に位置するので、ヒータ57と吹出口52との間の流路53の長さが比較的短い。このため、ヒータ57によって加熱された空気の熱損失が低減される。さらに、ファン55から吹出された空気がヒータ57を必ず通過するので、吹出口52から吹出される温風の流速分布がばらつきにくい。なお、図3に示すように、ファン55は吸気口51に隣り合う位置に設けられていてもよい。
ヒータ57は、ファン55よりも吸気口51の近くに位置してもよい。このような構成によれば、ファン55と吹出口52との距離が比較的短いので、吹出口52から吹出される温風の流速を高めることができる。このため、吹出口52と吸気口51との間で温風が循環しやすい。
温風温度センサ58は、空気の流路53のヒータ57よりも下流側に設けられているので、ファン55及びヒータ57によって生成された温風の温度を検出する。すなわち、温風温度センサ58は、吹出口52から吹出される直前の温風の温度を検出する。温風温度センサ58は、温度を検知可能であればどのような構成であってもよい。例えば、温風温度センサ58として、赤外線センサを用いてもよい。ヒータ57と吹出口52との間において温風の温度はほとんど変化しないので、温風温度センサ58によって検出された温度は、吹出口52から吹出された直後の温風の温度とほぼ等しい。温風温度センサ58を設ける位置は、空気の流路53のヒータ57よりも下流であれば特に制限されないが、例えば、空気の流路53のうち吹出口52に向かって斜め下に延びている部分に設けられていてもよい。
ファン55としては、軸流ファン又は遠心ファンを用いることができる。ファン55による風量は特に制限されないが、例えば、ファン55から送り出された直後の空気の流速が0.4〜2.0m/secであるとよい。これにより、上記のような温風の循環流が形成されやすい。温風暖房器5は、ファン55の回転がロックされたことを検出するファンロックセンサ56を有している。
ヒータ57は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ、セラミックヒータ等の電気ヒータである。ヒータ57の出力は特に制限されないが、例えば、50〜300Wである。ヒータ57は、出力を変更できるヒータである。詳細には、ヒータは、出力を段階的に変更できるヒータであってもよいし、出力を連続的に変更できるヒータであってもよい。ただし、ヒータ57の出力を変更できることは必須ではない。また、ヒータ57は、温風暖房器5の外部の熱源(例えば、水冷式エンジン)と熱交換したクーラントによって加熱を行う温水ヒータ等であってもよい。
使用状態において、乗物用シート1の幅方向(Y方向)における筐体50の一端側(左側)と他端側(右側)とのそれぞれに吹出口52が設けられている。筐体50の一端側(左側)に設けられた吹出口52を左吹出口52l、筐体50の他端側(右側)に設けられた吹出口52を右吹出口52rとする。左吹出口52lは乗員の左足の下腿と対向し、右吹出口52rは乗員の右足の下腿と対向する。このため、左吹出口52l又は右吹出口52rから吹出された温風が乗員の下腿に沿って流れやすい。
筐体50は、左吹出口52lと右吹出口52rとを幅方向において仕切り、空気の吹出しを遮断する仕切部54をさらに有している。このため、仕切部54から温風が吹出されないので、左吹出口52l又は右吹出口52rから吹出される温風の流速を高めることができる。もしくは、ファン55に必要とされるファンの大きさ、回転速度等を低減できる。また、乗員の左足の下腿と右足の下腿との間に温風が供給されにくいので、吸気口51に到達する温風の量が低下しにくい。
幅方向における筐体50の一端側(左側)と他端側(右側)のそれぞれに吸気口51が設けられている。筐体50の一端側(左側)に設けられた吸気口51を左吸気口51l、筐体50の他端側(右側)に設けられた吸気口51を右吸気口51rとする。座部Sの前方から温風暖房器5を平面視したとき、左吹出口52lの下方に左吸気口51lが位置し、右吹出口52rの下方に右吸気口51rが位置している。そのため、左吹出口52lから吹出された温風が左吸気口51lに到達しやすく、右吹出口52rから吹出された温風が右吸気口51rに到達しやすい。
詳細には、左吹出口52lの真下に左吸気口51lが位置し、右吹出口52rの真下に右吸気口51rが位置している。左吹出口52lの幅及び右吹出口52rの幅は、それぞれ、左吸気口51lの幅及び右吸気口51rの幅よりも大きい。左吸気口51lの幅W1に対する左吹出口52lの幅W2の比率(W2/W1)は、例えば、1.2〜10の範囲にある。このことは、右吸気口51r及び右吹出口52rにもあてはまる。幅方向において、左吸気口51lが左吹出口52lの範囲内に収まっており、右吸気口51rが右吹出口52rの範囲内に収まっている。このような構成によれば、乗員のふくらはぎの温感と吸気口51における空気の効率的な吸込みとを両立できる。
図3に示すように、筐体50の空気の流路53は、左吸気口51lから左吹出口52lへの左流路53lと、右吸気口51rから右吹出口52rへの右流路53rとを含んでいる。また、左流路53l及び右流路53rのそれぞれにヒータ57が個別に配置されている。すなわち、ヒータ57は、左流路53lに配置された左ヒータ57lと右流路53rに配置された右ヒータ57rとを含んでいる。これにより、ヒータ57の幅方向の長さを抑えることができるので、ヒータ57に要求される出力を抑制できる。さらに、左流路53lと右流路53rのそれぞれにファン55が個別に配置されている。
温風温度センサ58は、左ヒータ57lよりも左流路53lの下流側に設けられた左温風温度センサ58lと、右ヒータ57rよりも右流路53rの下流側に設けられた右温風温度センサ58rとを含んでいる。このため、左流路53lを流れる温風の温度と右流路53rを流れる温風の温度とを個別に検出できる。
上記の構成によれば、左流路53lの空気と右流路53rの空気とを個別に加熱できる。場合によっては、左吹出口52lから吹出される温風の温度と右吹出口52rから吹出される温風の温度とを相違させることもできる。
乗物の室内空間における左吸気口51l及び右吸気口51rの位置関係に起因して、左吸気口51lから吸い込まれる空気の温度と右吸気口51rから吸い込まれる空気の温度とが異なる可能性がある。この場合に、上記の構成によれば、左吹出口52l及び右吹出口52rから吹出される温風の温度をバランスさせるために、左流路53l及び右流路53rのいずれか一方に設けられたヒータ57の出力を他方に設けられたヒータ57の出力よりも高くしてもよい。なお、ヒータ57は、左流路53lを流れる空気及び右流路53rを流れる空気を加熱するように幅方向に連続的に延びていてもよい。
次に、本実施形態に係る乗物用暖房システム100について説明する。図4に示すように、乗物用暖房システム100は、操作パネル30、シート温度センサ21、温風温度センサ58、ファンロックセンサ56、制御器10、温風暖房器5、シートヒータ20a、及びシートヒータ20bを備えている。
図1に示すように、操作パネル30は乗物用シート1の前方に位置するインストルメントパネル3に設けられている。操作パネル30は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房と温風暖房器5による暖房とを組み合わせた組み合わせ暖房を開始するための組み合わせ暖房スイッチ31を有している。操作パネル30において受け付けた乗員の指示に関する入力信号は制御器10に入力されている。
シート温度センサ21で検出された温度に関する信号は制御器10に入力されている。また、温風温度センサ58によって検出された温度に関する信号は制御器10に入力されている。さらに、ファンロックセンサ56の信号は制御器10に入力されている。
制御器10は、所定の制御信号を出力することによって、ファン55、ヒータ57、シートヒータ20a、及びシートヒータ20bを制御する。具体的に、制御器10は、乗物の電源(図示省略)から、ファン55、ヒータ57、シートヒータ20a、及びシートヒータ20bへの電力の供給を制御する。
乗物用暖房システム100は、エアコンアンプ70を有する。エアコンアンプ70は、通常、乗物のHVACシステムを制御する。制御器10は、エアコンアンプ70からの指示を受け付けることができるようにエアコンアンプ70に接続されている。制御器10は、エアコンアンプ70からの指示に基づいて、ファン55、ヒータ57、シートヒータ20a、及びシートヒータ20bへの電力の供給を制御するためのリレーの開閉を行う。
乗物用暖房システム100の動作について説明する。図5に示す通り、操作パネル30の組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、乗物用暖房システム100は、組み合わせ暖房を開始する。制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetを取得する(S100)。次に、制御器10は、温度Tsetに基づいて、温風暖房器5から吹出される温風によって乗物用シート1に着座した乗員の下腿付近の温度が所定の温度となるように温風温度センサ58で検出されるべき目標温度Tdを決定する(S101)。例えば、温風暖房器5から吹出される温風によって乗物用シート1に着座した乗員の下腿付近の温度が温度Tsetと同一又は近似の温度となるように目標温度Tdが決定される。目標温度Tdは、例えば、下記の式1によって算出できる。Ksknは、温度Tsetに1対1で対応するように予め決められているゲインである。また、Cは実験によって予め決められている定数である。制御器10は、例えば、複数に区分された乗物の環境温度(外気温度)の区分ごとに定められているゲインKskn及び定数Cの値を保持していてもよい。このような構成によれば、制御器10は、乗物の環境温度等を考慮して目標温度Tdを決定できる。なお、目標温度Tdは温度Tsetに定数を乗じて決められる値であってもよい。
Td=Kskn×Tset+C (式1)
ステップS101において、制御器10は、目標温度Tdがシート温度センサ21で検出された温度Tsetよりも所定温度(例えば、20℃)以上高くなるように、目標温度Tdを決定する。すなわち、ゲインKskn及び定数Cは、目標温度Tdが温度Tsetよりも所定温度以上高くなるように定められている。
吹出口52から吹出されて乗員の下腿(ふくらはぎ)に到達した温風の温度は、熱拡散等により、吹出口52から吹出される直前の温風の温度よりも低い。図1に示す乗物(自動車)において、乗物の環境温度(外気温度)が0℃、吹出口52から吹出される直前の温風の温度(温風温度センサ58で検出された温度)が60℃という条件で、温風暖房器5による暖房を60分間行ったところ、乗員の下腿付近の温風の温度は約40℃であった。従って、シートヒータ20aによる暖房から得られる温感と温風暖房器5による暖房から得られる温感とをバランスさせるためには、温風の温度の低下を考慮して目標温度Tdを決定することが望ましい。そこで、目標温度Tdは温度Tsetよりも所定温度以上高くなるように決定されることが望ましい。
制御器10は、目標温度Tdに基づいてヒータ57の出力を設定する(S102)。制御器10は、例えば、目標温度Tdとヒータ57の出力との相関関係が記述されたテーブルを保持している。制御器10は、このテーブルに基づいてヒータ57の出力を設定する。制御器10は、ヒータ57が設定された出力を発揮するようにヒータ57を制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。
制御器10によって設定された出力でヒータ57による加熱が所定時間行われた後、制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1を取得する(S103)。制御器10は、温度Td1が目標温度Td1以上であるか否かを判断する(S104)。検出された温度Td1が目標温度Tdより小さい場合、制御器10は、ヒータ57の出力が所定量だけ増加するようにヒータ57を制御し(S105)、ステップS103に戻る。一方、検出された温度Td1が目標温度Td以上である場合、制御器10は、温度Td1が目標温度Tdに許容値ΔTを加えた温度(Td+ΔT)以下であるか否かを判断する(S106)。許容値ΔTは、例えば1℃である。制御器10は、温度Td1がTd+ΔT以下である場合には、ヒータ57の出力を維持するようにヒータを制御する(S107)。一方、温度Td1がTd+ΔTより大きい場合には、ヒータ57の出力が所定量だけ減少するようにヒータ57を制御し(S108)、ステップS103に戻る。このようにして、制御器10は、温風温度センサ58で検出される温度が目標温度Tdに近づくように温風暖房器5のヒータ57を制御する。
次に、制御器10は、組み合わせ暖房スイッチ31がオフか否かを判断する(S109)。組み合わせ暖房スイッチ31がオンの場合、ステップS100に戻る。一方、組み合わせ暖房スイッチ31がオフの場合、ヒータ57の通電をオフにして(S110)、組み合わせ暖房を終了する。
温風暖房器5の左ヒータ57l及び右ヒータ57rは、上記の制御に従いそれぞれ独立して制御される。すなわち、左温風温度センサ58lで検出されるべき目標温度Td及び右温風温度センサ58rで検出されるべき目標温度Tdは独立して定められている。この構成によれば、左吹出口52lから吹出される温風の温度と右吹出口52rから吹出される温風の温度とを異ならせることもできる。例えば、左吹出口52l及び右吹出口52rのうち、乗物の外側の空間と乗物の室内空間とを隔てている乗物の窓に近い吹出口52からより高温の温風が吹出されるように、左温風温度センサ58lで検出されるべき目標温度Td及び右温風温度センサ58rで検出されるべき目標温度Tdを決定してもよい。これにより、乗物の外側から流れ込む冷気によって乗員の右足又は左足の下腿の温感が部分的に低下することを防止できる。
また、制御器10が左ヒータ57lの出力を設定するための目標温度Tdと左ヒータ57lの出力との相関関係が記述されたテーブルと右ヒータ57rの出力を設定するための目標温度Tdと右ヒータ57rの出力との相関関係が記述されたテーブルとは異なっていてもよい。例えば、左吸気口51lから吸い込む空気の温度と右吸気口51rから吸い込む空気の温度とが異なる場合、同一の目標温度に対する一方のヒータ57の出力が他方のヒータ57の出力よりも大きくなるようにこれらのテーブルが作成されていてもよい。
図1に示す乗物(自動車)において、フロントガラスの晴れ性を確保する(フロントガラスの曇りを防止する)ために乗物のHVACシステムを500Wの出力で作動させて温風をフロントガラスに供給し、乗物の環境温度(外気温度)が0℃である条件の下で、上記の組み合わせ暖房を実施した。シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力合計は約40Wであった。温風暖房器5の出力は約70Wであった。この組み合わせ暖房中に乗物用シート1に着座した被験者に、被験者の各部位の温感を以下の通り評価してもらった。
(温感の評価対象の部位)
つま先、すね、膝、かかと、ふくらはぎ、シートヒータ20a及びシートヒータ20bに対応する部位(腰、背中、大腿部後面、及び腿部の平均)、肩、頭
(温感の評価基準)
3:かなり暑い、2:暑い、1:暖かい、0:穏やかに暖かい、−1:少し寒い、−2:寒い、−3:かなり寒い
4名の被験者の温感の評価結果の平均値を表1に示す。比較のために、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房のみを行った場合の被験者の温感の評価結果の平均値も表1に示す。
Figure 2015001756
シートヒータ20a及びシートヒータ20bのみの暖房では、シートヒータ20a及びシートヒータ20bに接した部位の温感は高いが、つま先、すね、膝、かかと、及びふくらはぎの温感が低かった。一方、組み合わせ暖房では、つま先、すね、膝、かかと、及びふくらはぎの温感が向上し、全ての部位の温感のバランスが取れていた。
外気温0℃の環境で1500ccクラスの自動車の室内空間を通常のHVACシステムによって暖房する場合、HVACシステムには1500W程度の出力が必要である。これに対し、本実施形態の組み合わせ暖房によれば、HVACの出力500Wと、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力約40Wと、温風暖房器5の出力約70Wとの合計約610Wの出力で、乗員に全身の快適感を与えることができた。
<変形例>
上記の実施形態は、様々な観点から変形が可能である。例えば、制御器10は、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報に基づいて目標温度Tdを決定するのであれば、上記の実施形態に限られない。本実施形態では、シートヒータ20aの発熱状態に関する情報がシート温度センサ21によって検出された温度Tsetである。シート温度センサ21は、シートヒータ20bの近傍の温度を検出するセンサであってもよい。この場合、シートヒータ20bの発熱状態に関する情報がシート温度センサ21によって検出された温度Tsetである。シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報は、例えば、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20aにおける発熱量、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20aにおける消費電力量、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20aの回路における電流値である。シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報は、温度Tsetに所定の演算を行うことによって得られる値であってもよい。例えば、シートヒータ20bの発熱状態に関する情報は、温度Tsetに所定の定数(例えば、1.2)を乗じて得られる値であってもよい。
複数の温風暖房器5が、乗物用シート1の幅方向に互いに離れて乗物用シート1に取り付けられていてもよい。例えば、乗員の左足用の温風暖房器5と乗員の右足用の温風暖房器5とが独立した筐体で構成されていてもよい。この場合、一の温風暖房器5は、例えば、吸気口51、ファン55、ヒータ57、温風温度センサ58、及び吹出口52を1つずつ有するように構成されている。また、複数の温風暖房器5は、乗物用シート1の幅方向に移動可能であるように乗物用シート1に取り付けられていてもよい。
また、温風暖房器5は、乗物用シート1に取り付けられていなくてもよい。例えば、乗物用シート1に隣接して、温風暖房器5が設けられていてもよい。
上記の組み合わせ暖房において、乗物用暖房システム100は、ウォームアップ時と定常時とで異なる動作をしてもよい。例えば、乗物用暖房システム100は図6に示すように動作してもよい。組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetを取得する(S200)。また、制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1を取得する(S201)。
次に、制御器10は、温度Tsetがシート基準温度(例えば、10℃)を超えているか否かを判断する(S202)。温度Tsetがシート基準温度を超えている場合、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度Tsetと目標温度Tdとの定常時の関係を用いて目標温度Tdを決定する(S204)。一方、温度Tsetがシート基準温度以下である場合、温度Td1が温風基準温度(例えば、10℃)を超えているか否か判断する(S203)。温度Td1が温風基準温度を超えている場合、制御器10は、ステップS204に移行する。一方、温度Td1が温風基準温度以下である場合、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度Tsetと目標温度Tdとのウォームアップ時の関係を用いて目標温度Tdを決定する(S214)。すなわち、シート温度センサ21で検出された温度Tsetがシート基準温度以下、かつ、温風温度センサ58で検出された温度Td1が温風基準温度以下である場合には、制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて目標温度Tdを決定する。
上記のウォームアップ時の関係は、ウォームアップ時の関係を用いて決定される目標温度Tdが同一の温度Tsetを用いて定常時の関係を用いて決定される目標温度よりも高くなるように定められている。
制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて決定された目標温度Tdに基づいてヒータ57の出力を設定する(S215)。制御器10は、設定した出力をヒータ57が出力するようにヒータ57を制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。次に、制御器10は、ヒータ57の出力開始からウォームアップ時間が経過したか否か判断する(S216)。制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1とウォームアップ時間との相関関係を記述したタイムデータテーブルを保持している。制御器10は、このタイムデータテーブルを参照して温度Td1に基づいてウォームアップ時間を決定している。
ヒータ57の出力開始からウォームアップ時間が経過した場合、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度Tsetを取得する(S217)。次に、制御器10は、ステップS204に移行する。図6におけるステップS205〜ステップS213は、図5におけるステップS102〜ステップS110と同様のステップであるので、詳細な説明を省略する。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る乗物用暖房システム200について説明する。なお、特に説明する場合を除き、第2実施形態は、第1実施形態と同様に構成される。第1実施形態の構成要素と同一又は対応する第2実施形態の構成要素には、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略することがある。すなわち、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、本実施形態にも適用される。
図7に示すように、乗物用暖房システム200の操作パネル30が加熱モード選択スイッチ32を有している。シートヒータ20a及びシートヒータ20bは、出力が異なる複数の加熱モードを有している。加熱モード選択スイッチ32は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードを切り替えるためのスイッチである。加熱モード選択スイッチ32の状態は制御器10に入力されている。
シートヒータ20a及びシートヒータ20bは、例えば、複数の加熱モードとして、出力が比較的大きい強モードと、出力が比較的小さい弱モードとを有している。図8Aに示す通り、シートヒータ20a及びシートヒータ20bは、例えば、第1発熱体25a、第2発熱体25b、第3発熱体25c、及びサーモスタット27を有している。加熱モード選択スイッチ32によって強モードが選択されているとき、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの回路のプラス極及びマイナス極は図8Aに示すように接続されている。また、加熱モード選択スイッチ32によって弱モードが選択されているとき、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの回路のプラス極及びマイナス極は図8Bに示すように接続されている。強モードにおける第1発熱体25a、第2発熱体25b、及び第3発熱体25cの合成抵抗は、弱モードにおける第1発熱体25a、第2発熱体25b、及び第3発熱体25cの合成抵抗より小さい。そのため、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの強モードの出力は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの弱モードの出力よりも大きい。
サーモスタット27は、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a又はシートヒータ20bに向かい合う部分の温度が所定の温度範囲に収まるようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を調整する。乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a又はシートヒータ20bに向かい合う部分の温度が所定の上限設定温度を超えると、サーモスタット27の内部スイッチ(図示省略)がオンになる。この場合、第1発熱体25a、第2発熱体25b、及び第3発熱体25cの一部の発熱体(例えば、第3発熱体25c)がシートヒータ20a又はシートヒータ20bの回路から切り離される。これにより、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの出力が低下する。その後、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a又はシートヒータ20bに向かい合う部分の温度が所定の下限設定温度を下回ると、サーモスタット27の内部スイッチ(図示省略)がオフになる。この場合、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの回路から切り離されていた発熱体が、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの回路に復帰する。この動作を繰り返すことによって、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a又はシートヒータ20bに向かい合う部分の温度が所定の温度範囲に収まる。サーモスタット27の内部スイッチは、例えばバイメタルによって形成されている。
乗物用暖房システム200の制御方法を説明する。図9に示すように、組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードに関する情報を取得する(S300)。次に、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードに基づいて目標温度Tdを決定する。すなわち、本実施形態において、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの発熱状態に関する情報がシートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードである。シートヒータ20a及びシートヒータ20bが強モードである場合の目標温度Tdは、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが弱モードである場合の目標温度Tdよりも高くなるように定められている。また、制御器10は、例えば、サーモスタット27の設定温度(上限設定温度)よりも所定温度(例えば、15℃)以上高くなるように目標温度Tdを決定する。これにより、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの近傍の温度よりも高温の温風が吹出口から吹出されるので、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房から得られる温感と温風暖房器5から得られる温感とがバランスしやすい。このため、乗物用暖房システム200は、車室内の温度がより低い場合でも、乗員に全身の快適感を与えることができる。
次に、乗物用暖房システム200は、図9に示す通り、ステップS302〜S310のように動作するが、この動作は、第1実施形態のステップS102〜S110と同様に行われるので、詳細な説明を省略する。
乗物用暖房システム200の動作の一例によれば、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが強モードである場合には、制御器10は、目標温度Tdを約60℃に決定する。この場合、乗員の下腿(ふくらはぎ)付近の温風の温度は約40℃である。シートヒータ20a及びシートヒータ20bが弱モードである場合には、制御器10は、目標温度Tdを約50℃に決定する。この場合、乗員の下腿(ふくらはぎ)付近の温風の温度は約33℃である。これにより、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房から得られる温感と温風暖房器5による暖房から得られる温感とがバランスする。
<変形例>
本実施形態においても、様々な観点から変形が可能である。例えば、サーモスタット27は省略してもよい。また、シートヒータ20bは省略してもよい。シートヒータ20a又はシートヒータ20bは、サーモスタット27の内部スイッチがオンである場合に全ての発熱体に電流が流れないように構成されてもよい。
上記の実施形態の組み合わせ暖房において、乗物用暖房システム200のウォームアップ時の動作は、以下に説明する通り、乗物用暖房システム200の定常時の動作と異なっていてもよい。図10に示すように、組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードに関する情報を取得する(S400)。次に、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度Td1を取得する(S401)。次に、制御器10は、温度Td1が温風基準温度を超えているか否かを判断する(S402)。
温度Td1が温風基準温度を超えている場合、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードと目標温度Tdとの定常時の関係を用いて目標温度Tdを決定する(S403)。制御器10は、定常時の関係を用いて決定された目標温度Tdに基づいてヒータ57の出力を設定する(S404)。制御器10は、ヒータ57が設定された出力を発揮するようにヒータ57を制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。これ以降の乗物用暖房システム200の動作(図10のステップS405〜S412)は、上記実施形態に係る乗物用暖房システム200のステップS303〜S310の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
一方、温度Td1が温風基準温度以下である場合、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードと目標温度Tdとのウォームアップ時の関係を用いて目標温度Tdを決定する(S413)。ウォームアップ時の関係を用いて決定される目標温度Tdは、同一の温度Td1に対して定常時の関係を用いて決定される目標温度Tdよりも高い。制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて決定された目標温度Tdに基づいてヒータ57の出力を設定する(S414)。制御器10は、ヒータ57が設定した出力を発揮するようにヒータ57を制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。次に、制御器10は、ヒータ57の出力開始からウォームアップ時間が経過したか否か判断する(S415)。制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1とウォームアップ時間との相関関係を記述したタイムデータテーブルを有している。制御器10は、このタイムデータテーブルを参照して温度Td1に基づいてウォームアップ時間を決定する。
ヒータ57の出力開始からウォームアップ時間が経過した場合、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの加熱モードに関する情報を取得し(S416)、ステップ403に移行する。
上記の定常時の関係及び上記のウォームアップ時の関係は、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報と目標温度Tdとの関係として定められているのであれば、上記の実施形態に限られない。この場合、制御器10は、例えば、そのシートヒータ20a又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報に基づいて目標温度Tdを決定する。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る乗物用暖房システム300について説明する。第1実施形態及び第2実施形態では、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの発熱状態に関する情報に基づいて、ヒータ57を制御したが、第3実施形態では、これとは逆に、ヒータ57の発熱状態に関する情報に基づいて、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bを制御する。
なお、特に説明する場合を除き、第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態、及びそれらの変形例のいずれかの乗物用暖房システムと同様に構成される。第1実施形態の構成要素と同一又は対応する第3実施形態の構成要素には、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。すなわち、第1実施形態、第2実施形態、及びそれらの変形例に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、本実施形態にも適用される。
乗物用暖房システム300は、乗物用シート1に設けられたシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bと、吸気口51及び吹出口52を有する筐体50と、吸気口51から吹出口52への空気の流路としての筐体50の内部空間に設けられたファン55及びヒータ57と、ファン55及びヒータ57によって生成された温風を吹出口52から乗物用シート1に着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられた温風暖房器5と、乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出するシート温度センサ21と、吹出口52における温度が乗物用シート1の表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるようにヒータ57及びシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bを制御し、ヒータ57の発熱状態に関する情報に基づいて、乗物用シート1の表面の温度が所定の温度となるようにシート温度センサ21で検出されるべき目標温度を決定し、シート温度センサ21で検出される温度が目標温度に近づくようにシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bを制御する制御器10と、を備える。
ヒータ57の発熱状態に関する情報は、例えば、ヒータ57における発熱量、温風温度センサ58によって検出された温度Td1、ヒータ57における消費電力量、ヒータ57の回路における電流値である。ヒータ57の発熱状態に関する情報は、温度Td1に所定の演算を行うことによって得られる値であってもよい。
<変形例>
上記の第3実施形態は、様々な観点から変形が可能である。例えば、ヒータ57よりも空気の流路の下流側に設けられた温風温度センサ58をさらに備え、ヒータ57の発熱状態に関する情報が温風温度センサ58によって検出された温度であってよい。この場合、制御器10は、温風暖房器5の吹出口52から吹出された温度に基づいて目標温度を決定できる。これにより、制御器10は、この目標温度に基づいて、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bによる暖房から得られる温感がヒータ57による暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bを制御できる。
また、制御器10は、目標温度が温風温度センサ58によって検出された温度Td1よりも所定温度以上低くなるように目標温度を決定してもよい。これにより、温風暖房器5による暖房から得られる温感がシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bによる暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bを制御できる。
また、ヒータ57は、出力が異なる複数の加熱モードを有し、ヒータ57の発熱状態に関する情報がヒータ57の加熱モードであってもよい。温風暖房器5のヒータ57の加熱モードは、温風暖房器5のヒータ57の発熱状態に関する情報として容易に取得できる。ヒータ57の近傍に温度センサを設けなくてもよいので、乗物用暖房システム300の構成を簡素化できる。
また、乗物用暖房システム300は、ヒータ57よりも空気流路の下流側に位置する部位の温度が所定の温度範囲に収まるようにヒータの出力を調整するサーモスタットをさらに備えていてもよい。ヒータ57よりも前記空気の流路の下流側に位置する部位の温度が所定の温度範囲に収まるので、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bによる暖房から得られる温感が温風暖房器5による暖房から得られる温感にバランスする条件で、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの出力を調整できる。
また、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度を超えた場合には、ヒータ57の発熱状態に関する情報と目標温度との定常時の関係を用いて目標温度を決定し、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度以下である場合には、ヒータ57の発熱状態に関する情報と目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて目標温度を決定してもよい。すなわち、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度以下である場合には、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度以下である場合にウォームアップ時の関係を用いて目標温度を決定するので、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの温度を短期間で上昇させることができる。
また、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度が温風基準温度を超えた場合には、温風温度センサ58で検出された温度と目標温度との定常時の関係を用いて目標温度を決定し、温風温度センサ58で検出された温度が温風基準温度以下、かつ、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度以下である場合には、温風温度センサ58によって検出された温度と目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて目標温度を決定してもよい。すなわち、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度が温風基準温度以下、かつ、シート温度センサ21で検出された温度がシート基準温度以下である場合には、温風温度センサ58で検出された温度が温風基準温度を超えた場合に決定される目標温度よりも高い目標温度を決定する。これにより、シート温度センサ21で検出された温度に加えて、温風温度センサ58で検出された温度に基づいてウォームアップが必要かどうか判断できる。
次に、第3実施形態に係る乗物用暖房システム300の動作の一例について説明する。図11に示す通り、操作パネル30の組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、乗物用暖房システムは、組み合わせ暖房を開始する。制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1を取得する(S500)。次に、制御器10は、温度Td1に基づいて、乗物用シート1の表面の温度が所定の温度となるようにシート温度センサ21で検出されるべき目標温度Td’を決定する(S501)。例えば、温風暖房器5から吹出される温風によって乗物用シート1に着座した乗員の下腿付近の温度が温度Td1と同一又は近似の温度となるように目標温度Td’が決定される。目標温度Td’は、例えば、下記の式2によって算出できる。Kskn’は、温度Td1に1対1で対応するように予め決められている値である。また、C’は実験によって予め決められている定数である。制御器10は、例えば、複数に区分された乗物の環境温度(外気温度)の区分ごとに定められているKskn’及び定数C’の値を保持していてもよい。このような構成によれば、制御器10は、乗物の環境温度等を考慮して目標温度Td’を決定できる。なお、目標温度Td’は温度Td1に定数を乗じて決められる値であってもよい。
Td’=Kskn’×Td1−C’ (式2)
ステップS501において、制御器10は、目標温度Td’が温風温度センサ58で検出された温度Td1よりも所定温度(例えば、20℃)以上低くなるように、目標温度Td’を決定する。すなわち、Kskn’及び定数C’は、目標温度Td’が温度Td1よりも所定温度以上低くなるように定められている。
吹出口52から吹出されて乗員の下腿(ふくらはぎ)に到達した温風の温度は、熱拡散等により、吹出口52から吹出される直前の温風の温度よりも低い。従って、シートヒータ20aによる暖房から得られる温感と温風暖房器5による暖房から得られる温感とをバランスさせるためには、温風の温度の低下を考慮して目標温度Td’を決定することが望ましい。そこで、目標温度Td’は温度Td1よりも所定温度以上低くなるように決定されることが望ましい。
制御器10は、目標温度Td’に基づいてシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を設定する(S502)。制御器10は、例えば、目標温度Td’とシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力との相関関係が記述されたテーブルを保持している。制御器10は、このテーブルに基づいてシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を設定する。制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが設定された出力を発揮するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。
制御器10によって設定された出力でシートヒータ20a及びシートヒータ20bによる加熱が所定時間行われた後、制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetを取得する(S503)。制御器10は、温度Tsetが目標温度Td’以上であるか否かを判断する(S504)。検出された温度Tsetが目標温度Td’より小さい場合、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力が所定量だけ増加するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御し(S505)、ステップS503に戻る。一方、検出された温度Tsetが目標温度Td’以上である場合、制御器10は、温度Tsetが目標温度Td’に許容値ΔTを加えた温度(Td’+ΔT)以下であるか否かを判断する(S506)。許容値ΔTは、例えば1℃である。制御器10は、温度TsetがTd’+ΔT以下である場合には、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を維持するようにヒータを制御する(S507)。一方、温度TsetがTd’+ΔTより大きい場合には、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力が所定量だけ減少するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御し(S508)、ステップS503に戻る。このようにして、制御器10は、シート温度センサ21で検出される温度が目標温度Td’に近づくように温風暖房器5のシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御する。
次に、制御器10は、組み合わせ暖房スイッチ31がオフか否かを判断する(S509)。組み合わせ暖房スイッチ31がオンの場合、ステップS500に戻る。一方、組み合わせ暖房スイッチ31がオフの場合、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの通電をオフにして(S510)、組み合わせ暖房を終了する。
図11に示す組み合わせ暖房において、乗物用暖房システム300は、ウォームアップ時と定常時とで異なる動作をしてもよい。例えば、乗物用暖房システムは図12に示すように動作してもよい。組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、温風温度センサ58によって検出された温度Td1を取得する(S600)。また、制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetを取得する(S601)。
次に、制御器10は、温度Td1が温風基準温度(例えば、10℃)を超えているか否かを判断する(S602)。温度Td1が温風基準温度を超えている場合、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度Td1と目標温度Td’との定常時の関係を用いて目標温度Td’を決定する(S604)。一方、温度Td1が温風基準温度以下である場合、温度Tsetがシート基準温度(例えば、10℃)を超えているか否か判断する(S603)。温度Tsetがシート基準温度を超えている場合、制御器10は、ステップS604に移行する。一方、温度Tsetがシート基準温度以下である場合、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度Td1と目標温度Td’とのウォームアップ時の関係を用いて目標温度Td’を決定する(S614)。すなわち、温風温度センサ58で検出された温度Td1が温風基準温度以下、かつ、シート温度センサ21で検出された温度Tsetがシート基準温度以下である場合には、制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて目標温度Td’を決定する。
上記のウォームアップ時の関係は、ウォームアップ時の関係を用いて決定される目標温度Td’が同一の温度Td1を用いて定常時の関係を用いて決定される目標温度よりも高くなるように定められている。
制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて決定された目標温度Td’に基づいてシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を設定する(S615)。制御器10は、設定した出力をシートヒータ20a及びシートヒータ20bが出力するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。次に、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力開始からウォームアップ時間が経過したか否か判断する(S616)。制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetとウォームアップ時間との相関関係を記述したタイムデータテーブルを保持している。制御器10は、このタイムデータテーブルを参照して温度Tsetに基づいてウォームアップ時間を決定している。
シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力開始からウォームアップ時間が経過した場合、制御器10は、温風温度センサ58で検出された温度Td1を取得する(S617)。次に、制御器10は、ステップS604に移行する。図12におけるステップS605〜ステップS613は、図11におけるステップS502〜ステップS510と同様のステップであるので、詳細な説明を省略する。
第3実施形態に係る乗物用暖房システム300の他の制御方法を説明する。図13に示すように、組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、ヒータ57の加熱モードに関する情報を取得する(S700)。次に、制御器10は、ヒータ57の加熱モードに基づいて目標温度Td’を決定する。すなわち、本実施形態において、ヒータ57の発熱状態に関する情報がヒータ57の加熱モードである。ヒータ57が強モードである場合の目標温度Td’は、ヒータ57が弱モードである場合の目標温度Td’よりも高くなるように定められている。
次に、乗物用暖房システムは、図13に示す通り、ステップS702〜S710のように動作するが、この動作は、図11におけるステップS502〜S510と同様に行われるので、詳細な説明を省略する。
乗物用暖房システムの動作の一例によれば、ヒータ57が強モードである場合には、制御器10は、目標温度Td’を約40℃に決定する。この場合、吹出口52付近の温風の温度は約60℃であり、乗員の下腿(ふくらはぎ)付近の温風の温度は約40℃である。ヒータ57が弱モードである場合には、制御器10は、目標温度Td’を約33℃に決定する。この場合、吹出口52付近の温風の温度は約50℃であり、乗員の下腿(ふくらはぎ)付近の温風の温度は約33℃である。これにより、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房から得られる温感と温風暖房器5による暖房から得られる温感とがバランスする。
図13に示す組み合わせ暖房において、乗物用暖房システム300のウォームアップ時の動作は、以下に説明する通り、乗物用暖房システムの定常時の動作と異なっていてもよい。図14に示すように、組み合わせ暖房スイッチ31がオンされると、制御器10は、ヒータ57の加熱モードに関する情報を取得する(S800)。次に、制御器10は、シート温度センサ21で検出された温度Tsetを取得する(S801)。次に、制御器10は、温度Tsetがシート基準温度を超えているか否かを判断する(S802)。
温度Tsetがシート基準温度を超えている場合、ヒータ57の加熱モードと目標温度Td’との定常時の関係を用いて目標温度Td’を決定する(S803)。制御器10は、定常時の関係を用いて決定された目標温度Td’に基づいてシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を設定する(S804)。制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが設定された出力を発揮するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。これ以降の乗物用暖房システムの動作(図14のステップS805〜S812)は、図13に示す乗物用暖房システムのステップS703〜S710の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
一方、温度Tsetがシート基準温度以下である場合、ヒータ57の加熱モードと目標温度Td’とのウォームアップ時の関係を用いて目標温度Td’を決定する(S813)。ウォームアップ時の関係を用いて決定される目標温度Td’は、同一の温度Tsetに対して定常時の関係を用いて決定される目標温度Td’よりも高い。制御器10は、ウォームアップ時の関係を用いて決定された目標温度Td’に基づいてシートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力を設定する(S814)。制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bが設定した出力を発揮するようにシートヒータ20a及びシートヒータ20bを制御する。また、制御器10は、所定の回転数でファン55が回転するようにファン55を制御する。これにより、吹出口52から温風が吹出される。次に、制御器10は、シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力開始からウォームアップ時間が経過したか否か判断する(S815)。制御器10は、シート温度センサ21によって検出された温度Tsetとウォームアップ時間との相関関係を記述したタイムデータテーブルを有している。制御器10は、このタイムデータテーブルを参照して温度Tsetに基づいてウォームアップ時間を決定する。
シートヒータ20a及びシートヒータ20bの出力開始からウォームアップ時間が経過した場合、制御器10は、ヒータ57の加熱モードに関する情報を取得し(S816)、ステップ403に移行する。
上記の定常時の関係及び上記のウォームアップ時の関係は、ヒータ57の発熱状態に関する情報と目標温度Td’との関係として定められているのであれば、上記の実施形態に限られない。この場合、制御器10は、例えば、そのヒータ57の発熱状態に関する情報に基づいて目標温度Td’を決定する。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る乗物用暖房システム400について説明する。なお、特に説明する場合を除き、第4実施形態は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及びそれらの変形例のいずれかの乗物用暖房システムと同様に構成される。第1実施形態の構成要素と同一又は対応する第4実施形態の構成要素には、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。すなわち、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及びそれらの変形例に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、本実施形態にも適用される。
第4実施形態に係る乗物用暖房システム400は、乗物用シートに設けられたシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bと、吸気口51及び吹出口52を有する筐体50と、吸気口51から吹出口52への空気の流路としての筐体50の内部空間に設けられたファン55及びヒータ57と、ファン55及びヒータ57によって生成された温風を吹出口52から乗物用シートに着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられた温風暖房器と、を備え、吹出口52における温度が乗物用シートの表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるようにシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57が動作する。
乗物用暖房システム400は、例えば、複数の加熱モードを有することができる。加熱モードが強モードである場合には、例えば、吹出口52における温度は約60℃に、乗物用シートの表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度は約40℃になるように、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57が動作する。加熱モードが弱モードである場合には、吹出口52における温度は約50℃に、乗物用シートの表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度は約33℃になるように、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57が動作する。このように、シートヒータ20a又はシートヒータ20bの近傍の温度よりも高温の温風が吹出口52から吹出されるので、シートヒータ20a及びシートヒータ20bによる暖房から得られる温感と温風暖房器5から得られる温感とがバランスしやすい。このため、乗物用暖房システム400は、車室内の温度がより低い場合でも、乗員に全身の快適感を与えることができる。
さらに、乗物用暖房システム400は、吹出口52における温度が乗物用シートの表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57を制御する制御器10を備えていてもよい。
制御器10は、吹出口52における温度が乗物用シートの表面のうちシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57を制御するために必要な、シートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの出力とヒータ57の出力とファン55の回転数との関係が記述されたテーブルを保持している。制御器10は、このテーブルに基づいてシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20bの出力とヒータ57の出力とファン55の回転数を設定する。制御器10は、例えば、外気温を検知する検知器により取得された外気温の情報に基づき、テーブルの内容を異ならせることとしてもよい。
上記の構成によれば、制御器10が、予め設定されたテーブルに基づきシートヒータ20a及び/又はシートヒータ20b、ファン55、及びヒータ57を制御するため、シート温度センサ21や温風温度センサ58が不要となる。このため、簡素な構成により、温感のバランスがとれた暖房を実現することができ、車室内の温度がより低い場合でも、乗員に全身の快適感を与えることができる。
本開示の乗物用暖房システムは、車室内の温度がより低い場合あっても、乗物用シートに着座した乗員は全身の快適感を得ることができる。このため、例えば、本開示の乗物用暖房システムを電気自動車に備える場合、電気自動車の車室内を冬期に暖房する場合であっても、電気自動車の航続可能距離が著しく低下することを抑制できる。
1 乗物用シート
5 温風暖房器
10 制御器
20a,20b シートヒータ
21 シート温度センサ
27 サーモスタット
50 筐体
51 吸気口
52 吹出口
53 空気の流路(内部空間)
55 ファン
57 ヒータ
58 温風温度センサ
100,200,300,400 乗物用暖房システム

Claims (17)

  1. 乗物用シートに設けられたシートヒータと、
    吸気口及び吹出口を有する筐体と、前記吸気口から前記吹出口への空気の流路としての前記筐体の内部空間に設けられたファン及びヒータとを有し、前記ファン及び前記ヒータによって生成された温風を前記吹出口から前記乗物用シートに着座した乗員の下腿へ向かって吹出すように設けられた温風暖房器と、を備え、
    前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように、前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータが動作する、
    乗物用暖房システム。
  2. 前記吹出口における温度が前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍における温度よりも高くなるように前記シートヒータ、前記ファン、及び前記ヒータを制御する制御器をさらに備えた、請求項1に記載の乗物用暖房システム。
  3. 前記ヒータよりも前記空気の流路の下流側に設けられた温風温度センサをさらに備え、
    前記制御器は、前記シートヒータの発熱状態に関する情報に基づいて、前記温風によって前記乗物用シートに着座した乗員の下腿付近の温度が所定の温度となるように前記温風温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように前記ヒータを制御する、請求項2に記載の乗物用暖房システム。
  4. 前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出するシート温度センサをさらに備え、
    前記シートヒータの発熱状態に関する情報が前記シート温度センサによって検出された温度である、請求項3に記載の乗物用暖房システム。
  5. 前記制御器は、前記目標温度が前記シート温度センサによって検出された温度よりも所定温度以上高くなるように前記目標温度を決定する、請求項4に記載の乗物用暖房システム。
  6. 前記シートヒータは、出力が異なる複数の加熱モードを有し、
    前記シートヒータの発熱状態に関する情報が前記シートヒータの前記加熱モードである、請求項3に記載の乗物用暖房システム。
  7. 前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分の温度が所定の温度範囲に収まるように前記シートヒータの出力を調整するサーモスタットをさらに備える、請求項3〜6のいずれか1項に記載の乗物用暖房システム。
  8. 前記制御器は、前記サーモスタットの設定温度よりも前記目標温度が所定温度以上高くなるように前記目標温度を決定する、請求項7に記載の乗物用暖房システム。
  9. 前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度を超えた場合には、前記シートヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度以下である場合には、前記シートヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する、請求項3、6〜8のいずれか1項に記載の乗物用暖房システム。
  10. 前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度を超えた場合には、前記シート温度センサで検出された温度と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度以下、かつ、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度以下である場合には、前記シート温度センサによって検出された温度と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する、請求項4又は5に記載の乗物用暖房システム。
  11. 前記乗物用シートの表面のうち前記シートヒータに向かい合う部分又はその近傍の温度を検出するシート温度センサをさらに備え、
    前記制御器は、前記ヒータの発熱状態に関する情報に基づいて、前記乗物用シートの表面の温度が所定の温度となるように前記シート温度センサで検出されるべき目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出される温度が前記目標温度に近づくように前記シートヒータを制御する、
    請求項2に記載の乗物用暖房システム。
  12. 前記ヒータよりも前記空気の流路の下流側に設けられた温風温度センサをさらに備え、
    前記ヒータの発熱状態に関する情報が前記温風温度センサによって検出された温度である、請求項11に記載の乗物用暖房システム。
  13. 前記制御器は、前記目標温度が前記温風温度センサによって検出された温度よりも所定温度以上低くなるように前記目標温度を決定する、請求項12に記載の乗物用暖房システム。
  14. 前記ヒータは、出力が異なる複数の加熱モードを有し、
    前記ヒータの発熱状態に関する情報が前記ヒータの前記加熱モードである、請求項11に記載の乗物用暖房システム。
  15. 前記ヒータよりも前記空気流路の下流側に位置する部位の温度が所定の温度範囲に収まるように前記ヒータの出力を調整するサーモスタットをさらに備える、請求項11〜14のいずれか1項に記載の乗物用暖房システム。
  16. 前記制御器は、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度を超えた場合には、前記ヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記シート温度センサで検出された温度が前記シート基準温度以下である場合には、前記ヒータの発熱状態に関する情報と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する、請求項11、14、15のいずれか1項に記載の乗物用暖房システム。
  17. 前記制御器は、前記温風温度センサで検出された温度が温風基準温度を超えた場合には、前記温風温度センサで検出された温度と前記目標温度との定常時の関係を用いて前記目標温度を決定し、前記温風温度センサで検出された温度が前記温風基準温度以下、かつ、前記シート温度センサで検出された温度がシート基準温度以下である場合には、前記温風温度センサによって検出された温度と前記目標温度とのウォームアップ時の関係を用いて前記目標温度を決定する、請求項12又は13に記載の乗物用暖房システム。
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