本発明者らは、特許文献1及び2に記載の帯電部材が、感光体を帯電する際の当接状態及び放電状態について検討を行った。その過程で、帯電部材と感光体とのニップ部を詳細に観察した。その結果、感光体と帯電部材との接触は、凸部頂点近傍の狭い範囲に限られており、この様な状態で、特に高速での画像形成を行った場合、凸部頂点近傍の接触部において、スリップが発生していることが分かった。更に、上記スリップにより、振動が発生し、感光体にもその振動が伝達していることが分かった。
本発明者らは、更に検討を行った結果、以下のことが分かった。まず、上記スリップにより発生した振動が、感光体を振動させる。そして、転写工程後に感光体の表面に残存しているトナーが、クリーニング工程において、感光体の振動により発生した微細な隙間からクリーニング部材をすり抜けてしまうことが分かった。更に、より球形に近いトナーを使用した場合、トナーのすり抜けが顕著になることが分かった。同時に前記のトナーのすり抜けは、凝集した残留トナーがクリーニング部材に衝突する箇所で発生し易いことも分かった。
一方で、本発明者らの検討の結果、上記凸部を形成しない場合は、上記スリップの発生はなく、スリップ起因の振動も発生していないことが確認できた。しかしながら、この場合には、ニップ内放電は発生せず、前記横スジ状画像の発生を抑制することは困難であるとの知見を得た。
そこで、本発明者らは、ニップ内放電を維持しつつ、上記スリップの発生を抑制する検討を行った。その過程において、上記凸部を形成する樹脂粒子の内部に複数の空孔を形成すると、凸部が変形しやすくなり、帯電部材の凸部と感光体との接触面積が拡大されることを見出した。樹脂粒子の空孔率が大きくなればなるほど、上記凸部の変形は大きくなり、上記接触面積を拡大することが可能になる。これは、凸部頂点近傍の圧力集中を緩和することにつながり、上記スリップの抑制を可能にする。また、凸部の変形が感光体の振動を吸収し、感光体の回転を安定化していることも見出した。しかしながら、樹脂粒子の空孔率が大きくなりすぎると、逆に、ニップ部において、空隙を維持することが困難になる。即ち、ニップ内放電が発生しにくくなってしまう。ここで、樹脂粒子中の空孔は、一つではなく、複数に分割することで、空孔に加わる圧力を分散し、変形性と空隙の維持を両立可能となるという知見を得た。
更に本発明者らは、帯電部材とトナー用いた画像形成装置、または、プロセスカートリッジにおいて、帯電部材のスリップ、クリーニング部材からのトナーのする抜け及び帯電部材の汚れの発生機構について鋭意検討した。一例としてロール形状の帯電部材及びブレード形状のクリーニング部材を用いて検討した結果に基づき、以下詳細に説明する。
ここで、まず、本発明者らは、帯電部材として、特許文献1の帯電部材を用いて感光体を帯電させ、残留トナーが存在しない場合におけるクリーニング部材表面の挙動観察を行った。感光体の回転を高速化していくと、上記のように帯電部材のスリップが確認された。結果、帯電部材のスリップによる振動が感光体に伝達し、クリーニング部材と感光体の間に微細な空隙が発生していることも確認できた。
一方で、本発明者らは、従来トナーを用いた画像形成装置を使用して、転写工程を経たトナーを準備した。即ち、残留トナーを模擬的に再現した凝集トナーとして、上記トナーを別途用意した(以下、「凝集トナー」とも称す)。そして、上記高速回転した感光体と当接しているクリーニング部材に、上記凝集トナーを供給した。その結果、上記クリーニング部材と感光体の接触部において、上記のように凝集トナーがクリーニング部材に衝突した箇所から顕著にトナーがすり抜け、帯電部材へのトナー固着が確認された。更に回転を続けると、トナーのすり抜けを発生する箇所が拡大し、帯電部材へのトナー固着が増加した。これは、転写工程を経た凝集トナーは、厚密状態を経ていると同時に、大きな電界を付与されている場合が多く、感光体の表面への付着力が大きい。即ち、感光体との離型性が小さい。離型性の小さいトナーが増加し、かつ上記のように帯電部材のスリップによる振動が感光体に伝わり生じる微細な隙間により、トナーのすり抜けが誘発される。その結果、クリーニング部材通過後の感光体表面に、残留トナーが増加し、その残留トナーが帯電部材に擦りつけられ、帯電部材の表面のトナー固着が増加していったものと考えている。
続いて、上記従来の帯電部材に換えて本発明に係る帯電部材を使用し、まず上記凝集トナーを存在させない状態で、帯電部材の観察を行った。結果、従来の帯電部材で観察された帯電部材のスリップは確認できなかった。更に、感光体の回転が安定化していることが確認できた。その後、上記凝集トナーを上記と同様にしてクリーニング部材に供給すると、供給直後は、すり抜けるトナーの発生はなかったものの、供給後しばらくすると、すり抜けるトナーが発生し、帯電部材の表面に固着はしないもののトナーの付着が発生してしまった。これは、クリーニング部材の表面には、除去された凝集トナーが残存している場合が多く、次から次へとやってくる凝集トナー同士が、クリーニング部材の表面近傍で集積と再凝集を繰り返す。この集積・再凝集したトナーは、感光体の表面との付着力が更に大きくなる。これにより、上記集積・再凝集したトナーは、クリーニング部材に衝撃を与えることになり、トナーのすり抜けによる帯電部材へのトナー付着が発生する要因であると推察している。
更に、本発明者らは、本発明に係るトナーを使用し、上記と同様に検討を行った。まず、上記凝集トナーの準備と同様にして、残留トナーを模擬的に再現しようとしたものの、本発明に係るトナーは、転写工程を経ても、感光体の表面に凝集トナーを形成しにくいことがわかった。
続いて、上記と同様にして、本発明に係る帯電部材により感光体を帯電させながら、感光体を高速回転させた。そして、転写工程を経た本発明に係るトナーをクリーニング部材に供給した。その結果、上記クリーニング部材をすり抜けるトナーは、ほとんど確認できず、帯電部材の表面へのトナーの付着もほとんど認められなかった。その後、更に長時間にわたって本発明に係る帯電部材により感光体を帯電させながら、感光体を高速回転させ、転写工程を経た本発明に係るトナーをクリーニング部材に供給した。その結果、クリーニング部材をすり抜けるトナーが軽微に観察されるものの、帯電部材へのトナーの固着はほとんどなく、トナーの付着も軽微であった。尚、トナーの表面のシリカ微粒子状態を詳細に制御することによる、凝集トナーの発生抑制についての考察は、後に詳述する。
上記一連の検討より、発明者らは、本発明に係る帯電部材と本発明に係るトナーを用いることで、帯電部材の表面の汚れを抑制できるメカニズムを下記のように推測している。
本発明に係る帯電部材は、表面に凸部を形成している樹脂粒子の空孔を制御している。これにより、凸部の変形性を制御し、ニップ内放電を維持しながら、感光体とのスリップを抑制している。
一方で、本発明に係るトナーは、トナーの表面のシリカ微粒子の状態を詳細に制御し、トナー同士の凝集性を大幅に低減している。これにより、転写工程を経た後の凝集トナー発生と、クリーニング部材の表面近傍でのトナーの集積・再凝集を大幅に低減している。本発明に係るトナーを用いると、たとえクリーニング部材からすり抜けたトナーが発生した場合も、すり抜けたトナーは凝集せず、ばらけた状態で存在しやすい。加えて、本発明に係る帯電部材の凸部の変形性により、それぞれのすり抜けたトナーに加わる圧力が軽減され、帯電部材の表面への付着が大幅に抑えられる。更に、凸部の変形及びその復元により、帯電部材に接触したトナーを擦りつけることなく、感光体に押し戻すことが可能となり、帯電部材の表面のトナー固着及び付着を抑制しているものと推察している。
このように、本発明に係る帯電部材及びトナーを合わせて用いた相乗効果により、クリーニング部材からのトナーのすり抜けを抑え、帯電部材の表面のトナー固着や汚れを抑制していると推測している。
<帯電部材>
本発明に係る帯電部材は、上記導電性基体と導電性の樹脂層を有するものであればよく、その形状も、ローラ状、平板状等いずれであってもよい。
図1(1a)は本発明に係る帯電部材の断面の一例を示しており、導電性基体1と、その周面を被覆している、導電性の樹脂層2とを有するものである。導電性の樹脂層2は、樹脂粒子3を含有している。また、図1(1b)に示すように、導電性基体1と導電性の樹脂層2の間に、1層以上の導電性の弾性層4を設けてもよい。図1(1c)に示すように、導電性の弾性層4は、導電性の接着剤5を介して接着してもよい。また、図1(1b)に示す、導電性の弾性層4と導電性の樹脂層2の間、導電性の接着剤を介して接着してもよい。接着剤には公知の結着樹脂及び導電剤を用いることができる。更に、導電性の樹脂層2の内側に別の樹脂層を1層以上設けることも可能である。
例えば、接着剤の結着樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系の公知のものを用いることができる。接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、導電性粒子、イオン導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
図2は、導電性基体1及び帯電部材の表面を形成している導電性の樹脂層2の模式断面図である。該樹脂層2は、結着樹脂と該結着樹脂に分散されている導電性粒子と、該樹脂層2を粗面化させるための樹脂粒子3を含み、該樹脂層2の表面に該樹脂粒子3に由来する複数の凸部を有している。凸部を形成する上記樹脂粒子3は、内部に複数の空孔6を有していることを特徴としている。以下、帯電部材の樹脂層に含まれる結着樹脂を結着樹脂Cとも称する。
上記に示すように、本発明に係る帯電部材は、凸部頂点近傍において、感光体と接触し、凸部以外の部分においては、空隙を有している。そして、上記空隙においては、ニップ内放電が行われ、前記横スジ状の画像の発生を抑制している。更に、凸部を形成している樹脂粒子の内部に複数の空孔を有することにより、凸部の変形性を高め、帯電部材のスリップ及び感光体の回転を安定化させている。これにより、スリップ起因の帯電部材の振動を抑え、更に感光体の振動を吸収することでクリーニング部材と感光体に隙間が生じることを抑え、残留トナーのすり抜けを抑える。そして、帯電部材のスリップによるクリーニング部材をすり抜けたトナーの擦りつけを抑制する。これらの効果により、前記横スジ状画像及びポチ状画像の発生を抑制することができると本発明者らは推察している。
上記の効果を十分に発揮するため、凸部を形成する樹脂粒子全体の空孔率は、2.5体積%以下であることが好ましい。本範囲とすることにより、感光体との接触を拡大しながら、感光体との空隙を維持し前記ニップ内放電を十分に行うことができる。より好ましい範囲としては、0.5体積%以上2.0体積%以下である。これにより、前記ニップ内放電を、より効果的に維持することが可能になる。
また、凸部を形成している樹脂粒子の内部に複数の空孔は、樹脂粒子凸部頂点側における空孔率(以降、この空孔率を「空孔率V11」とも称する)が、5体積%以上、20体積%以下であることが好ましい。空孔率V11のより好ましい範囲としては、5.5体積%以上、15体積%以下である。空孔率V11の値を本範囲内とすることにより、より効果的に前記ニップ内放電とスリップの抑制の両立が可能になる。詳しくは、後に詳述する。
更に、上記帯電部材の放電状態と樹脂層の状態の関係についての検討を行った。その結果、ニップ内放電強度を安定して維持するための、樹脂層の好ましい状態に関する知見を得た。前記樹脂層には、カーボンブラック及び無機粒子を有する凝集体が分散されていることが好ましいという知見が得られた。これは、樹脂層中の導電性を発揮するためのカーボンブラックによる導電パスに、無機粒子による誘電性の高い部分が組み込まれることで、安定した放電性を達成することが可能となるからと推測している。これにより、帯電部材表面トナーで多少汚れてもニップ内放電を安定して行うことが可能となる。
<樹脂層>
〔結着樹脂C〕
導電性の樹脂層に用いる結着樹脂Cは、公知のゴムまたは樹脂を使用することができる。ゴムとしては、例えば、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムを挙げることができる。
合成ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴムが使用できる。
樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の如き樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂がより好ましい。特に好ましいのは、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂である。この樹脂を用いることで、感光体との当接状態が安定し、スリップを抑制し易くなる。特にポリウレタン樹脂は上記の導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体を安定して形成し、且つ前記凝集体のメジアン径(D50粒径)を調整することが容易であるため、好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら結着樹脂の原料である単量体を共重合させ、共重合体としてもよい。これら結着樹脂は、プレポリマー化した結着樹脂の原料に架橋剤を添加し、硬化または架橋することによって形成してもよい。
本発明においては、上記混合物についても、以下、結着樹脂と称して説明する。
〔ポリウレタン樹脂〕
ポリウレタン樹脂は公知のポリオールとイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ポリオールとしては、例えばラクトン変性アクリルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては特に限定されるものではないが、前述した導電性粒子、あるいは導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体の形成とその安定性の観点から環状構造を有することが好ましい。具体的には、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートを用いることが好ましい。脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。
更に、上記イソシアネートに加え、脂肪族イソシアネートを併用することが好ましい。これにより、画像形成のために感光体の接触による帯電部材の変形が繰り返された際に、その変形により、導電性粒子、あるいは導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体の再分散・再凝集による異常放電の発生を抑制する。そのため、長期にわたって安定した放電を行うことが可能となる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
本発明に用いる前記イソシアネートは、これらの変性物や共重合物である誘導体を用いることができる。特に、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、樹脂層がより密に架橋することができ、導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体の安定性をより一層効果的に高めることができる。また、本発明に用いる前記イソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。イソシアネート基は反応し易く、樹脂層形成用塗布液を長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗布液の特性が変化してしまう恐れがあるからである。これに対してブロックイソシアネートは、活性なイソシアネート基がブロックされ、ブロック剤の解離温度までは反応しないので、塗布液の取扱が容易になるというメリットがある。マスキングを行うブロック剤には、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシムの如きオキシム類が挙げられる。本発明の場合、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
また、ポリウレタン樹脂をポリオールとイソシアネート化合物との反応により得る際に、ポリオールに導電性粒子を分散した後にイソシアネートを加えることが好ましい。このように添加順序を調整することにより、導電性粒子の分散を安定化することができる。更に、無機粒子を添加する場合には、導電性粒子と無機粒子の均一に混合された凝集体を形成することが容易となる。その結果、長期にわたり安定したニップ放電を行うことが可能となる。
〔樹脂粒子〕
導電性の樹脂層に含まれる樹脂粒子の材質としては、例えば以下の高分子化合物からなる粒子が挙げられる。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体の如き樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーの如き熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
これらの中でも、結着樹脂Cへの分散が容易であることから、上述した高分子化合物からなることが好ましい。更には、帯電部材表面に、凸部を形成した際、感光体との間に、ニップ内放電を発生させるための空隙を、すべての環境で維持しやすいという観点から、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することがより好ましい。
樹脂粒子は、1種を使用しても、2種以上を組み合わせてもよく、また、表面処理、変性、官能基や分子鎖の導入、コーティングを施してもよい。
樹脂層中における、樹脂粒子の含有量は、結着樹脂C100質量部に対して、2質量部以上、100質量部以下が好ましく、5質量部以上、80質量部以下が更に好ましい。本範囲とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
また、樹脂粒子の体積平均粒径は、10μm以上、50μm以下が好ましい。本範囲とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
樹脂層に含まれる樹脂粒子は、内部に複数の空孔を有するため、多孔質形状の樹脂粒子(以下、「多孔質粒子」と称す)あるいは、多中空形状の樹脂粒子(以下、「多中空粒子」と称す)を用いる。
樹脂粒子内の空孔の状態としては、樹脂層中の樹脂粒子として、上述したように樹脂粒子全体の空孔率が、2.5体積%以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては、0.5体積%以上2.0体積%以下である。この範囲とすることで、より効果的に、ニップ内放電を維持しつつ、上記スリップの発生を抑制することが可能になる。
また、樹脂層に含まれる樹脂粒子は、樹脂粒子の内部領域に有する空孔が、樹脂粒子の表面近傍領域に集中している状態であることがより好ましい。即ち、樹脂粒子の内部領域の空孔率に対し、樹脂粒子の表面近傍領域の空孔率が大きい、コアシェル構造を有していることが好ましい。上記粒子において、内部領域の空孔率は、5体積%以上35体積%以下、内部領域の平均空孔径は、10nm以上45nm以下に制御することが好ましい。また、表面近傍領域の空孔率は、10体積%以上55体積%以下、表面近傍領域の平均空孔径(以降、この平均空孔径を「平均空孔径R11」とも称する)は、30nm以上200nm以下であることが好ましい。平均空孔径R11をこの範囲とすることにより、上述した帯電部材の表面凸部頂点近傍の空孔率の制御をより容易に行いやすくなる。
尚、本発明の空孔率制御のために使用する、コアシェル構造を有する多孔質粒子について、図3を用いて説明する。まず、樹脂粒子3を中実粒子であると仮定した際の樹脂粒子3の中心7を算出する。そして、該中心7から粒子外側に向かい、粒子半径の(3)1/2/2倍移動した位置、例えば8を算出する。粒子外周に対して均等に配置するよう、8と同様にして100点を算出し、この点を直線で結んだ領域を算出する。内部領域とは、この点を結んだ領域の粒子の中心7側の領域、即ち、9の領域と定義し、表面近傍領域とは、該半径の(3)1/2/2倍移動した位置8より外側の領域、即ち、10の領域と定義する。各パラメーターの方法は、後に詳述する。
樹脂層に含有させる前の、原料としての樹脂粒子として、多孔質粒子を使用することが好ましい。後に詳述するが、この様な多孔質粒子を使用することで、帯電部材の表面の凸部を形成する樹脂粒子に関して、上述した空孔率を容易に制御することが可能になる。
尚、本発明において多孔質粒子とは、樹脂粒子の表面に貫通する多数の細孔を有する粒子であると定義する。多中空粒子とは、内部に空気を含む領域を有する空孔を複数有する粒子であって、その空孔は樹脂粒子の表面に貫通していない状態の粒子であると定義する。以下に、多孔質粒子及び多中空粒子について詳細に説明する。
〔多孔質粒子〕
多孔質粒子の材質としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂を例示することができる。これらの樹脂は、単独で、または、2種以上を用いることができる。更に、これらの樹脂の原料となる単量体を共重合させ、共重合体としても用いても良い。これらの樹脂を主成分として、必要に応じてその他公知の樹脂を含有しても良い。
多孔質粒子は、製懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法、樹脂溶液に樹脂の溶解度を低下させる溶質や溶媒を添加し析出させる公知の製法により作製することができる。例えば、懸濁重合法においては、架橋性単量体の存在下、重合性単量体に多孔化剤を溶解し、油性混合液を作製する。この油性混合液を用いて界面活性剤や分散安定剤を含有する水性媒体中で水性懸濁重合を行い、重合終了後、洗浄、乾燥工程を行うことで水及び多孔化剤を取り除き、樹脂粒子を得ることができる。尚、重合性単量体の官能基と反応する反応性基を有する化合物、有機フィラーを添加することもできる。また、多孔質粒子の内部に空孔を形成するために、架橋性単量体の存在下に重合を行うことが好ましい。
重合単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンの如きスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロフルフリル、メタクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー。これらの重合単量体は、単独で場合によっては2種以上を組み合わせて使用される。なお、本発明において、用語(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの両方を含む概念である。
架橋性単量体としては、ビニル基を複数個有するものであれば特に限定されず、以下のものを例示することができる。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートの如き(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体。これらは単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。
架橋性単量体は、単量体中において5質量%以上90質量%となるように使用するのが好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子の内部に確実に空孔を形成することが可能になる。
多孔化剤としては、非重合性溶媒や、重合性単量体の混合物に溶解する直鎖状ポリマーと非重合性溶媒との混合物や、セルロース樹脂を使用することができる。非重合性溶媒としては、以下のものを例示することができる。トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルヘキサン、ノルマルオクタン、ノルマルドデカン。セルロース樹脂としては、特に限定されないが、エチルセルロースを挙げることができる。これらの多孔化剤は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。多孔化剤の添加量は使用目的に応じ適宜添加量を選択することができるが、重合単量体、架橋性単量体および多孔化剤からなる油相100質量部中において、20質量部から90質量部の範囲で使用するのが好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子がもろくなりにくく、帯電部材と感光体とのニップにおいて空隙を形成しやすくなる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、重合性単量体に可溶なものが好ましい。公知のパーオキサイド開始剤及びアゾ開始剤を使用でき、以下のものを例示することができる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル。
界面活性剤としては、以下のものを例示することができる。ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(重合度1〜100)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(重合度1〜100)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩の如きカチオン性界面活性剤;アジピン酸ジエタノールアミン縮合物、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩の如きノニオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムの如き両性界面活性剤;ポリビニルアルコール、デンプン、及び、カルボキシメチルセルロースの如き高分子型分散剤。
分散安定剤としては、以下のものを例示することができる。ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリアクリル酸微粒子及びポリエポキシド微粒子等の有機微粒子;コロイダルシリカ等のシリカ;炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、及び、水酸化マグネシウム。
上記重合法のうち、特に、懸濁重合法の具体的一例について、下記に示す。懸濁重合は、耐圧容器を用い、密閉下で行うことが好ましく、重合前に原料成分を分散機等で懸濁してから、耐圧容器に移して懸濁重合してもよく、耐圧容器内で懸濁させてもよい。重合温度は、50℃〜120℃がより好ましい。重合は、大気圧下で行ってもよいが、多孔化剤を気体状にさせないようにするため加圧下(大気圧に0.1〜1MPaを加えた圧力下)で行うことが好ましい。重合終了後は、遠心分離や濾過によって、固液分離及び洗浄等を行ってもよい。固液分離や洗浄の後、樹脂粒子を構成する樹脂の軟化温度以下にて乾燥や粉砕してもよい。乾燥及び粉砕は、公知の方法により行うことができ、気流乾燥機、順風乾燥機及びナウターミキサーを使用できる。また、乾燥及び粉砕は粉砕乾燥機によって同時に行うこともできる。界面活性剤及び分散安定剤は、製造後に洗浄濾過を繰り返すことにより除去することができる。
樹脂粒子の粒径は、重合性単量体や多孔化剤からなる油性混合液と界面活性剤や分散安定剤を含有する水性媒体との混合条件や、分散安定剤の添加量、撹拌分散条件により調整することができる。分散安定剤の添加量を増加させることで、平均粒径を下げることができる。また、撹拌分散条件において、撹拌速度を上げることで、多孔質粒子の平均粒径を下げることが可能である。多孔質粒子の体積平均粒径は、5〜60μmの範囲であることが好ましい。更には、10〜50μmの範囲であることがより好ましい。本範囲内とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
また、多孔質粒子の空孔率及び空孔径は、架橋性単量体の添加量、多孔化剤の種類や添加量により調整することができる。
空孔率及び空孔径は、重合単量体に対し、多孔化剤の添加量の増減により調整することができる。また、架橋性単量体の添加量の増減によっても調整することができる。多孔化剤の量を増加させる、及び、架橋性単量体の添加量を減少させる方向が、空孔率及び空孔径を大きくする方向である。
また、細孔径を更に大きくする場合、多孔化剤としてセルロース樹脂を用いることで達成することができる。
多孔質粒子における細孔径は、10〜500nm、かつ、樹脂粒子の平均粒径に対して20%以下の範囲内であることが好ましい。更には、20〜200nm、かつ、樹脂粒子の平均粒径に対して10%以下の範囲内であることがより好ましい。本範囲内とすることで、帯電部材の表面において、凸部を形成する際に、空孔を上記の好ましい範囲に調整することが容易となる。
尚、多孔質粒子としては、粒子の表面近傍領域の空孔率を粒子の内部領域の空孔率よりも大きくしたコアシェル構造を有することが好ましい。このような内部領域の空孔率よりも表面近傍領域の空孔率が大きい多孔質粒子は、2種類の多孔化剤を使用して作製することができる。このようなコアシェル構造を有する多孔質粒子を用いることで、帯電部材の表面において、凸部を形成する際に、空孔が、樹脂粒子の凸部頂点側の領域に集中している状態を形成することが容易となる。この状態とすることで、ニップ内放電を弱めることなく、感光体と帯電部材のスリップ抑制効果を効果的に発揮させることができる。内部と表面近傍において異なる構造を有する多孔質粒子は、多孔化剤として、溶解度パラメーター(以下、「SP値」と称す)に差のある2種類の多孔化剤を使用することにより、作製することができる。
具体的一例として、多孔化剤に、ノルマルへキサンと酢酸エチルを使用した場合を例にとって以下説明を行う。上記2種の多孔化剤を使用した場合、重合性単量体及び多孔化剤を混合した油性混合液を水性媒体に投入すると、媒体と使用している水とSP値の近い酢酸エチルが、水性媒体側、即ち、懸濁液滴の外側に多く存在することになる。一方、液滴内部には、ノルマルへキサンがより多く存在する。液滴外側に存在する酢酸エチルは、水とSP値が近いため、酢酸エチル中に、ある程度の水が溶解することになる。この場合、液滴内側と比較して液滴外側部分においては、重合性単量体に対する多孔化剤の溶解性が低下し、重合性単量体と多孔化剤とが、内部と比較し分離し易い状態になっている。即ち、上記液滴の外側においては、多孔化剤が、内部と比較してより大きな塊で存在しやすい状態となる。このように、液滴内部と外側で、多孔化剤の存在が異なるように制御した状態で、前述した重合反応、更に後処理等を行う。それにより、樹脂粒子内部の空孔率よりも表面近傍の空孔率が大きく、且つ、内部の空孔径よりも表面近傍の空孔径が大きい多孔質粒子を作製することができる。
従って、2種類の多孔化剤のうちの1種類を、媒体として使用する水により近いSP値を有する多孔化剤を使用することで、多孔質粒子表面近傍の空孔径を大きく、且つ、空孔率を大きくすることができる。上記手段に使用する好ましい多孔化剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸部チル、アセトン、及び、メチルエチルケトンが例示できる。一方で、もう1種類として、重合性単量体の溶解性が高く、水により遠いSP値を有する多孔化剤を使用することで、多孔質粒子内部の空孔径を小さく、且つ、空孔率を小さくすることができる。上記手段に使用する好ましい多孔化剤としては、ノルマルへキサン、ノルマルオクタン、ノルマルドデカンが例示できる。
また、使用する多孔化剤の比率により、空孔率及び空孔径の異なる領域を制御することが可能であるが、本発明においては、帯電部材表面に形成される凸部頂点近傍のみに、空孔を集中して存在させることを目的として、上記粒子を使用している。この観点から、水により近いSP値を有する多孔化剤は、多孔化剤全体100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。より好ましくは、15〜25質量部の範囲である。
〔多中空粒子〕
多中空粒子の材質としては、上記多孔質粒子と同様の樹脂を例示することができる。これらの樹脂は、単独で、または、2種以上を用いることができる。更に、これらの樹脂の原料となる単量体を共重合させ、共重合体としても用いても良い。これらの樹脂を主成分として、必要に応じてその他公知の樹脂を含有しても良い。
多中空粒子は、懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法の公知の製法により製造することができる。
例えば、懸濁重合法においては、架橋剤の存在下、疎水性の重合性単量体と、親水性の重合性単量体と重合開始剤とからなる油性混合液を作製する。この油性混合液を、分散安定化剤を含有する水性媒体液中で水性懸濁重合を行い、重合終了後、洗浄、乾燥工程を得て、多中空粒子を得ることができる。
本方法の場合、油性混合液と水性媒体液の混合中に、油性混合液の液滴に水が入りこんで水を抱え込む形態をとることになる。これにより、中空形状が形成された多中空粒子が得られる。また、あらかじめ、油性混合液に水を添加し、エマルジョン化した混合液を、水性媒体液に分散させ、更に、懸濁重合を行って、上記多中空粒子を得ることもできる。
上記の場合、疎水性単量体と親水性単量体の合計に対し、疎水性の単量体は、70質量%から99.5質量%、親水性の単量体は、0.5質量%から30質量%に調整することが好ましい。これにより、多中空粒子が得られやすくなる。
疎水性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、多官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニルが挙げられる。この内、熱分解性の観点から(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが好ましく、メタクリル酸エステル系モノマーがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。上記疎水性単量体は、複数種組み合わせて用いてもよい。
親水性単量体としては、水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート。これらは複数種を組み合わせて用いてもよい。
架橋性単量体としては、前記多孔質粒子と同様の単量体を使用することができる。前記疎水性単量体と親水性単量体の合計に対し、0.5質量%から60質量%に調整することが好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子の内部に確実に空孔を形成することが可能になる。
その他、重合開始剤、界面活性剤、分散安定剤については、前記多孔質粒子と同様の化合物を使用可能である。上記の重合開始剤、分散安定剤及び界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合開始剤の使用割合は、単量体100質量部に対して0.01質量部から2質量部であることが好ましい。分散安定剤の使用割合は、単量体100質量部に対して0.5質量部から30質量部であることが好ましい。界面活性剤は、水100質量部に対し0.001質量部から0.3質量部であることが好ましい。
重合反応は、油性混合液と水性媒体とを混合した後、撹拌しながら昇温して行う。重合温度は40°から90℃、重合時間は1時間から10時間程度が好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子の内部に確実に空孔を形成することが可能になる。
この時、単量体と水との混合条件及び撹拌条件をコントロールすることで、多中空粒子の平均粒子径を適宜決定することができる。
〔導電性粒子〕
導電性の樹脂層は、導電性を発現するため、公知の導電性粒子を含有する。導電性粒子としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の微粒子や繊維。酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物。前記記載の金属系微粒子、繊維及び金属酸化物表面に、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子。カーボンブラック、及び、カーボン系微粒子。
カーボンブラックとしては、ブラックファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックを例示することができる。ファーネスブラックとしては、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HSを例示することができる。サーマルブラックとしては、FT、MTを例示することができる。カーボン系微粒子としては、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン粒子、ピッチ系カーボン粒子を例示することができる。
上記帯電部材の好ましい状態として示すように無機粒子との凝集体を形成するため、導電性粒子として、カーボンブラックを含むことが好ましい。導電性粒子がカーボンブラックを含むことで、結着樹脂Cとの相互作用により、無機粒子と凝集体を形成することが容易となり、異常放電を効果的に抑制することが可能となる。
更に、カーボンブラックは、無機粒子の表面の少なくとも一部をカーボンブラックにより被覆した複合粒子として使用することが好ましい。複合粒子とすることで、カーボンブラックのみの導電性の高い凝集を形成することがなく、異常放電を抑制することができる。また、カーボンブラック単体で用いた場合に比べ、分散性が向上し、上記の無機粒子との凝集体の形成もさらに容易となる。
また、列挙した導電性粒子は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
導電性の樹脂層に添加する導電性粒子の添加量は、結着樹脂C100質量部に対して2質量部から200質量部、好ましくは5質量部から100質量部の範囲が適当である。
導電性粒子は、その表面を表面処理してもよい。表面処理剤としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の如き有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物が使用可能である。これらは一種で使用しても、二種以上を用いても良い。好ましくは、アルコキシシラン、ポリシロキサン等の如き有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤であり、更に好ましくは、有機ケイ素化合物である。
導電性粒子は、樹脂層中で微分散されていることが好ましい。微分散されることで、樹脂層の導電パスが均一化され、急激に電流の流れる部分と流れない部分がなくなり、異常放電を抑制することができる。具体的には樹脂層用の塗布液中に導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体のメジアン径(D50粒径)が90nm以上230nm以下になるように調整することが好ましい。
また、導電性粒子としては、帯電部材の表面粗さに実質的な影響を与えることのないように、平均粒径で、5nm以上、300nm以下、特には、10nm以上、100nm以下のものを用いることが好ましい。なお、上記導電性粒子の平均粒径は以下のようにして算出する。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、視野内に少なくとも100個の凝集していない導電性粒子が観察されるような倍率に調整する。そして、該視野内の100個の凝集していない導電性粒子について、面積相当径を求める。そして、当該100個の導電性粒子の面積相当径の相加平均値の小数点第一位を四捨五入した値を導電性粒子の平均粒径とする。
〔無機粒子〕
樹脂層は、前記導電性粒子に加え、無機粒子を含有することが好ましい。無機粒子は、帯電部材の帯電電位を高め、被帯電体を均一に帯電させる働きをする。更に、樹脂層中において、導電性粒子と無機粒子により凝集体を形成することで、導電パスに、無機粒子による誘電性の高い部分が組み込まれる。これにより、安定した導電パスが形成され、より安定した放電性を発揮することができる。
無機粒子としては、金属酸化物、シリカ粒子、及びチタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸ケイ素粒子の如き複合酸化物等が挙げられる。特には比誘電率の大きな金属酸化物、複酸化物の絶縁性粒子が好ましい。この中でも、特に、シリカ、酸化チタンが好ましい。更には、二種以上の無機粒子を併用することが好ましい。これにより、効果的に導電性粒子との凝集体を形成し、安定した放電を行うことができる。
無機粒子は樹脂層形成用塗布液に分散しやすくするため、表面処理を行う事がより好ましい。表面処理としては、カップリング剤による処理や、シリコーンオイルによる処理が挙げられる。
〔その他の材料〕
導電性の樹脂層には、更に、離型性を向上させるために、離型剤を含有させても良い。導電性の樹脂層に離型剤を含有させることで、帯電部材の表面に汚れが付着することを防ぎ、帯電部材の耐久性を向上させることができる。離型剤が液体の場合は、導電性の樹脂層を形成する際にレベリング剤としても作用する。
〔その他の処理〕
導電性の樹脂層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
〔樹脂層の形成方法〕
樹脂層の形成方法としては、導電性基体の表面に、導電性樹脂組成物を被覆し、乾燥、硬化、または、架橋等を行う方法を例示することができる。被覆方法としては、静電スプレー塗布、ディッピング塗布、ロール塗布、リング塗布、所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆する方法、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法が挙げられる。上述した帯電部材の表面の凸部における空孔率を制御するため、これらの中でも、静電スプレー塗布、ディッピング塗布、ロール塗布、リング塗布により、樹脂層を形成する方法を使用することが均一な樹脂層を形成する点で好ましい。
また、これらの塗布法を使用する場合、結着樹脂C中に、導電性粒子、無機粒子といったその他の材料及び、樹脂粒子を分散した導電性樹脂組成物塗布液を作製し、塗布を行う。更には、樹脂粒子の空孔率の制御をより容易なものにするため、塗布液には、溶剤を使用することが好ましい。特に、上記結着樹脂Cを溶解することが可能であり、前記樹脂粒子と親和性の高い、極性溶剤を使用することが好ましい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールの如きアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドの如きアミド類、ジメチルスルホキシドの如きスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルの如きエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル類を例示することができる。
なお、上記塗布液中に、結着樹脂C、導電性粒子、無機粒子といったその他の材料、及び、樹脂粒子を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如き溶液分散手段を用いることができる。
以下に、本発明に係る帯電部材の製造方法の好ましい一例を示す。
本発明に係る帯電部材の製造方法は、下記(A−1)、(A−2)の工程を有する。
(A−1)結着樹脂C(ウレタン樹脂)、溶剤、導電性粒子、その他の材料、及び、空孔を有する樹脂粒子とを含む樹脂層形成用塗布液の塗膜を導電性基体の表面、または、上記導電性基体の外周に形成した他の層の表面、に形成する工程。
(A−2)上記塗膜中の溶剤を揮発させて樹脂層を形成する工程。
ここで、(A−1)の工程において、上記導電性粒子、あるいは、導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体を微分散させ、かつその微分散状態を安定化するため、下記(B−1)から(B−4)の工程を有することが好ましい。
(B−1)ポリオール、溶剤、導電性粒子、及び、無機粒子等のその他の材料を分散する工程。
(B−2)イソシアネートあるいは、その誘導体を(B−1)で作製した分散液に添加し、混合し、樹脂層形成用塗料を作製する工程。
(B−3)上記樹脂層形成用塗料の塗膜を導電性基体の表面、または、上記導電性基体の外周に形成した他の層の表面に形成する工程。
(B−4)上記塗膜中の溶剤を揮発させて樹脂層を形成する工程。
(B−2)の段階で、イソシアネートあるいは、その誘導体を添加することで、導電性粒子、あるいは、導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体の塗布液中及び塗膜後の樹脂層中での分散状態を安定化させることができる。
また、空孔を有する樹脂粒子は、上記工程(B−1)あるいは(B−2)で、添加することができる。
尚、上記工程(A−1)、あるいは、上記工程(B−1)、(B−2)において、導電性粒子、あるいは、導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体のメジアン径(D50粒径)は、90nm以上230nm以下になるように調整することが好ましい。このように導電性粒子、あるいは、導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体を微分散することにより、安定して異常放電を抑制することができる。
更に、樹脂層中の樹脂粒子の空孔率を制御するために、空孔を有する樹脂粒子として多孔質粒子を用いた場合、上記工程(A−2)又は工程(B−4)において、塗膜中の溶剤を揮発させる過程で、下記(C−1)、(C−2)の工程を有することが好ましい。
(C−1)上記樹脂粒子の空孔中の溶剤を該バインダーに置換させる工程。
(C−2)上記塗膜を該溶剤の沸点以上の温度で乾燥する工程。
このように樹脂層を形成することで、樹脂粒子中の空孔率を上記好ましい範囲に調整することが容易となる。更に、樹脂粒子として、上記の内部の空孔率及び空孔径よりも表面近傍の空孔率及び空孔径が大きい多孔質粒子を用いる。これにより、帯電部材の表面に形成した凸部において、凸部を形成する樹脂粒子中の空孔が、樹脂粒子の凸部頂点側の領域に集中している状態を形成することができる。
上記の手法により樹脂層を形成した場合、帯電部材表面の凸部において、上記のように空孔を制御することが容易になる理由を図4を用いて下記に説明する。
図4(4a)は、導電性基体表面に、上記樹脂層用塗布液の塗膜303を上記の方法により塗布した直後の状態を示す模式図である。塗膜11は、溶剤、結着樹脂C、導電性粒子、及び、樹脂粒子3として多孔質粒子を含有しており、粒子3は、内部領域9と表面近傍領域10より形成されている。そして、粒子3においては、内部領域9の空孔率よりも表面近傍領域10の空孔率が大きく、内部領域9の空孔径よりも表面近傍領域10の空孔径が大きい状態を示している。なお、上記状態において、粒子3の空孔内部には、少なくとも溶剤及び結着樹脂Cが均等に浸透していると推察される。そして、上記樹脂層用塗布液を導電性基体表面に塗布した直後より、塗布液表面側から溶剤の揮発が発生する。この際、溶剤の揮発は(4b)の12で示す方向に進行するため、塗膜11の表面側は、結着樹脂Cの濃度が高まってくる。塗膜11内部では、溶剤と結着樹脂Cとの濃度を一定に維持しようとする力が働き、塗布液中の結着樹脂Cは、13で示す方向に流れることになる。
一方、粒子3の内部領域9は、表面近傍領域10よりも小さく空孔径が小さく、且つ、空孔率が小さいため、内部領域9に均一に浸透している溶剤及び結着樹脂Cは、表面近傍領域10に浸透しているものよりも、移動速度が遅くなる。
従って、結着樹脂Cは、13の方向に移動してくるものの、粒子の内部領域9と表面近傍領域10の上記移動速度の差により、内部領域9の結着樹脂Cの濃度よりも、表面近傍領域10の結着樹脂Cの濃度が高まる状態が発生する。(4c)は、内部領域9と比較し、表面近傍領域10において、結着樹脂Cの濃度が高い状態を示している。
そして次の瞬間には、粒子3の内部領域9と表面近傍領域10の結着樹脂Cの濃度差を緩和する方向に、結着樹脂Cの流れ14が発生する。そして、溶剤の揮発は常に12の方向に進行しているため、次の瞬間には、粒子3の内部領域9と比較して、表面近傍領域10の結着樹脂C濃度が低下する状態、即ち、(4d)に示す状態となる。
上記(4d)の状態で、使用している溶剤の沸点以上の温度で、塗布した樹脂層用塗布液を、乾燥、硬化、または、架橋等を行う。これにより、粒子3の表面近傍領域10に残存した溶剤が、一気に揮発し、最終的に、粒子3の表面近傍領域10に空孔6を形成することができる。
上記手法を用いることにより、上述した帯電部材凸部の空孔率制御を確実に行うことが可能になると本発明者らは考察している。
そして、上記制御をより容易に行うため、多孔質粒子の内部領域と表面近傍領域の空孔率及び空孔径の比率を制御することがより好ましい。即ち、内部の空孔率に対し、表面近傍の空孔率は、1.5倍以上3倍以下とすることが好ましく、且つ、内部の空孔径に対し、表面近傍の空孔径は、2倍以上10倍以下とすることが好ましい。
また、上記溶剤の流れを制御するため、多孔質粒子と親和性の高い、前述した極性溶剤を使用することが好ましい。上記の溶剤の中でも、ケトン類、及び、エステル類を使用することが更に好ましい。
そして、樹脂層用塗布液塗布後の、乾燥、硬化、または、架橋等の工程は、温度及び時間を制御することが好ましい。温度及び時間を制御することにより、上記に示した溶剤及び結着樹脂Cの移動速度を制御することが可能になる。そして、具体的に、塗膜形成後の工程は、三段階以上とすることが好ましい。以下、塗膜形成後の工程を三段階とした場合の状態を詳細に説明する。
一段階目として、塗膜形成後に、室温雰囲気下で、15分以上1時間以下放置することが好ましい。これにより、前述した図4(4b)の状態を緩やかに形成することが容易になる。
二段階目として、室温以上、使用する溶剤の沸点以下の温度で、15分以上、1時間以下放置することが好ましい。使用する溶剤の種類によるって若干の違いは見られるものの、具体的には、40℃以上、100℃以下に制御し、30分以上、50分以下放置することがより好ましい。そして、この二段階目により、図4(4c)の溶剤揮発速度が大きくなり、多孔質粒子内部領域9の結着樹脂C濃度を高める制御を、より容易に行うことができる。
そして、三段階目は、溶剤の沸点以上の温度における、乾燥、硬化、または、架橋の工程である。この際、二段階目と三段階目の温度は、急激に昇温させる制御を行うことが好ましい。これにより、凸部頂点近傍に空孔を形成しやすくなる。具体的には、同一の乾燥炉内での温度制御ではなく、二段階目と三段階目の乾燥炉は、別の装置、或いは、別エリアとすることが好ましく、装置あるいはエリアの移動は、できる限り短い時間とすることが好ましい。
上記によって帯電部材樹脂層凸部の頂点側11体積%の領域における空孔径は、多孔質粒子そのものの表面近傍領域が有する平均の空孔径よりも大きくなる場合が多い。これは、多孔質粒子の表面近傍領域に存在する空孔のうち、比較的大きな空孔が、溶剤の揮発により、空孔を形成しやすいためであると推測している。
そして、樹脂粒子全体の空孔率は、0.1体積%以上2.5体積%以下であることが好ましい。本範囲とすることにより、感光体との接触を拡大しながら、感光体との空隙を維持し前記ニップ内放電を十分に行うことができる。より好ましい範囲としては、1.0体積%以上2.0体積%以下である。これにより、前記ニップ内放電を、より効果的に維持することが可能になる。更には、樹脂粒子全体の空孔率が上記範囲にあり、かつ樹脂粒子凸部頂点側における空孔率が、5体積%以上、20体積%以下である。より好ましい範囲としては、5.5体積%以上、15体積%以下である。本範囲内とすることにより、より効果的に前記ニップ内放電とスリップの抑制の両立が可能になる。
帯電部材樹脂層凸部の頂点側11体積%の領域における空孔径は、平均空孔径で、30nm以上、200nm以下の範囲であることが、好ましい。より好ましくは、60nm以上、150nm以下である。本範囲とすることにより、上記ニップ内放電の維持と、帯電部材のスリップ発生抑制を、より容易に行うことができる。
更に、本方法の具体的な詳細の一例を下記に示す。
まず、ポリオール及び溶剤に多孔質粒子以外の分散成分、例えば導電性粒子及び無機粒子を、直径0.8mmのガラスビーズとともに混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて5時間から60時間かけて分散する。次いで、イソシアネート及び空孔を有する樹脂粒子を添加して分散する。分散時間としては2分以上、30分以内が好ましい。ここで、空孔を有する樹脂粒子が粉砕してしまうことがないような条件であることが必要である。その後、粘度を、3〜30mPa、より好ましくは3〜20mPaになるように調整して導電性塗布液を得る。次いで、ディッピング等により導電性基体の外周に、乾燥後の膜厚が0.5〜50μm、より好ましくは1〜20μm、特に好ましくは1〜10μmとなるよう、樹脂層を形成することが好ましい。
なお、樹脂層の膜厚は、帯電部材の断面を鋭利な刃物で切り出して光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して測定することができる。帯電部材の長手において任意の3点、更に、周方向に3点の計9点において測定を行い、その平均値をもって膜厚とする。
膜厚が厚い場合、即ち、上記塗布液の溶剤量が少ない場合、上記溶剤の揮発速度が遅くなり、上記空孔制御が困難になる場合がある。従って、上記塗布液の固形分濃度は、比較的小さくすることが好ましい。塗布液に対して、溶剤の占める割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは、50質量%以上、特には、60質量%以上とすることが好ましい。
塗布液の比重としては、0.8000以上1.200以下に調整することが好ましく、0.8500以上1.000以下がより好ましい。本範囲とすることで、上記多孔質粒子の空孔に対し、内部と表面近傍の結着樹脂Cの浸透を所望の速度に制御しやすくなるためである。
〔体積抵抗率〕
導電性の樹脂層の体積抵抗率は、温度23℃/湿度50%RH環境において、1×102Ω・cm以上1×1016Ω・cm以下であることが、好ましい。本範囲とすることで、感光体を、放電により適切に帯電することが、より容易になる。
導電性の樹脂層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、帯電部材から、導電性の樹脂層を、縦5mm、横5mm、厚さ1mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。導電性の樹脂層が薄膜で切り出せない場合には、アルミシートの表面に導電性の樹脂層形成用の導電性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。導電性の樹脂層の体積抵抗率は、前述した導電性粒子により調整することができる。
また、導電性粒子は、平均粒径が0.01μmから0.9μmがより好ましく、0.01μmから0.5μmであることが更に好ましい。この範囲であれば、樹脂層の体積抵抗率の制御が容易になる。
<導電性の弾性層>
本発明に係る帯電部材には、導電性基体と導電性の樹脂層との間に、導電性の弾性層を形成してもよい。導電性の弾性層に使用する結着樹脂としては、公知のゴムまたは樹脂を使用することができる。帯電部材と感光体との間で十分なニップを確保するという観点から、比較的低い弾性を有することが好ましく、ゴムを使用することがより好ましい。ゴムとしては、例えば、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムを挙げることができる。
合成ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴムが使用できる。
導電性の弾性層は、その体積抵抗率が、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、102Ωcm以上、1010Ωcm以下であることが好ましい。導電性の弾性層の体積抵抗率は、結着樹脂中に、前述した導電性微粒子、イオン導電剤を適宜添加して、調整することができる。イオン導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムの如き無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートの如き陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩;及び、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの如き有機酸リチウム塩。これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
結着樹脂が極性ゴムである場合は、特に、アンモニウム塩を用いることが好ましい。また、導電性の弾性層には、導電性微粒子の他に硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤や、上述の絶縁性粒子を含有させてもよい。導電性の弾性層は、接着剤により導電性基体や導電性の樹脂層に接着して設けることもできる。接着剤としては導電性のものを用いることが好ましい。
尚、導電性の弾性層の体積抵抗率は、導電性の弾性層に使用する材料を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して得た体積抵抗率測定試料を用いて、上記樹脂層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
<導電性基体>
本発明に係る帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その外周に設けられる導電性の樹脂層等を支持する機能を有するものである。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケルの如き金属やその合金を挙げることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理を施してもよい。さらに、導電性基体として、樹脂製の基材の表面を金属で被覆して表面を導電性としたものや導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
<帯電部材の物性>
本発明に係る帯電部材は、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、温度23℃/湿度50%RH環境中において、1×103Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
一例として、図5に帯電部材の電気抵抗の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受けにより感光体と同じ曲率の円柱形金属15に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属15を回転させ、当接した帯電部材14を従動回転させながら安定化電源から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計16で測定し、帯電部材の抵抗を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとした。
本発明に係る帯電部材は、感光体に対して、長手のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向中央部が一番太く、長手方向両端部にいくほど細くなるクラウン形状が好ましい。クラウン量は、中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差が、30μm以上200μm以下であることが好ましい。
帯電部材の表面の十点平均表面粗さ(Rzjis)は、8μm以上100μm以下が、好ましい。より好ましくは、12μm以上60μm以下である。また、表面の凹凸平均間隔(RSm)は、20μm以上、300μm以下、より好ましくは、50μm以上、200μm以下である。Rzjis及びRSmを上記の範囲とすることにより、感光体とのニップにおいて空隙を形成しやすくなり、安定したニップ内放電を行うことができる。
尚、Rzjis及びRSmは、JIS B 0601−1994表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器(商品名:SE−3500、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。十点平均表面粗さは、帯電部材を任意に6箇所測定し、その平均値である。測定に際し、カットオフ値は0.8mm、評価長さは8mmに設定する。
<トナー>
本発明者らは、高品位な現像性の維持と、帯電部材の表面のトナー固着及び汚れの要因となるクリーニング部材からのトナーのすり抜けを抑制するための上記凝集トナーの発生抑制とを両立するためのトナー要件として下記の4点が必要であると考えている。
(1)トナー表面の無機微粒子(以下、「外添剤」とも称す。)がトナーへ埋め込まれにくいこと。
外添剤がトナーへ埋め込まれてしまうと、上記外添剤により付与したトナーの下記離型性や、前述したスペーサー効果が発現できなくなる。
(2)トナーの離型性。
これにより、前記凝集トナーの発生が抑制できると同時に、帯電部材の表面へのトナー成分の固着が抑制できる。
(3)トナーの潤滑性。
これにより、帯電部材の表面に付着したトナー成分が、入れ替わりやすくなる。
(4)トナーのほぐれ易さ。
これにより、上記凝集トナーの発生が抑制できる。
そして、本発明者らは、上記(1)乃至(4)を達成するため、外添剤である、シリカ微粒子の表面性状を規定すると同時に、トナーの表面に存在するシリカ微粒子の外添状態を規定するに至った。
以下に、本発明の形態の詳細について説明する。本発明に係るトナーは、「シリカ微粒子の表面性状」を以下のように規定する。
本発明に係るトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と、無機微粒子とを含有する。以下、トナー粒子中に含有される結着樹脂を結着樹脂Tとも称する。
本発明において、無機微粒子がシリカ微粒子であり、トナーは該シリカ微粒子をトナー粒子100質量部あたり0.40質量部以上、1.50質量部以下含有する。好ましくは、シリカ微粒子をトナー粒子100質量部あたり0.50質量部以上1.30質量部以下含有する。
シリカ微粒子の含有量を上述範囲に制御することで、トナーの離型性を高めることができると同時に、外添剤のトナーの埋め込みを抑制することができる。これにより、クリーニング部材からのトナーのすり抜け及び帯電部材への汚れの付着が抑制可能になる。
シリカ微粒子の含有量が、0.40質量部未満の場合、トナーの離型性が十分でなく、クリーニング部材をすり抜けるトナーが発生する。
本発明に係るトナーにおいて、シリカ微粒子はシリカ原体100質量部に対して15.0質量部以上40.0質量部以下のシリコーンオイルによって処理されており、該シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率(%)が70%以上である。
ここで、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率は、シリカ原体表面に化学的に結合しているシリコーンオイル分子の量に対応する。
本発明に係るトナーに用いられるシリカ微粒子において、シリコーンオイルによる処理部数及び固定化率を上記範囲に制御することで、シリカ微粒子間の凝集性および摩擦係数を本発明に必要な範囲に制御できる。そして、このシリカ微粒子を外添したトナーにも、同様な性質を付与させることができ、上述(2)の効果を改善しやすくなる。本発明者らは、効果発現メカニズムを以下のように推測している。
一般に、シリカ原体に添加されるシリコーンオイル部数が増加すると、シリコーンオイル分子の有する低表面エネルギー性により、前記現像部材からの離型性が向上することが知られている。一方、シリコーンオイルの分子同士の親和性により、シリカ微粒子同士の離型性、又は凝集性は悪化するとともに、シリカ微粒子同士の摩擦係数が増加する。本発明では、シリコーンオイル処理部数が比較的多く、固定化率も高いシリカ微粒子が特徴である。このようなシリカ微粒子は、シリカ微粒子同士の凝集性を悪化させずに、摩擦係数を増加させることができる。シリコーンオイル分子の末端をシリカ原体表面に固定化することで、凝集性の悪化が軽減できている、と本発明者らは考えている。これにより、前述した凝集トナーの発生を抑制し、クリーニング部材からのトナーのすり抜け及び帯電部材への汚れの付着を抑制することができる。
次に、上記シリカ微粒子をトナー粒子に外添した時の、トナー表面への影響について述べる。後述するトナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1の範囲においては、トナー同士が接触する場合に、微視的には、トナー粒子表面に存在するシリカ微粒子同士の接触が支配的であるため、トナーもシリカ微粒子の性質の影響を強く受ける。このため、本発明に係るトナーは、トナー同士の凝集性を悪化させずに、トナー同士の摩擦係数を増加させたトナーである。これは、上記(2)と(3)の効果を同時に得ることを可能としている。これにより、前述した凝集トナーの発生を抑制し、クリーニング部材からのトナーのすり抜けを抑制することができる。同時に、帯電部材表面へのトナー成分の付着を抑え、帯電部材汚れを抑制することができる。
上記シリコーンオイルによる処理部数が15.0質量部未満の場合、十分な摩擦係数を得ることができず、トナーの循環性が低下する。一方、40.0質量部より多い場合、十分な摩擦係数を得ることができるものの、固定化率を適正な範囲に制御することが難しく、シリカ微粒子同士の凝集性が悪化するため、前記(4)の効果を得ることができない。
また、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率が70%未満の場合、シリカ微粒子同士の凝集性が悪化するため、前記(4)の効果を得ることができない。そのため、クリーニング部材からのトナーのすり抜けが発生してしまう。
尚、上記シリカ微粒子のシリコーンオイルによる処理部数は、シリカ原体100質量部に対して17.0質量部以上30.0質量部以下であること更に好ましく、また、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率(%)は90%以上であることが更に好ましい。これにより、上述した効果の発現をより高めることができる。
次に、本発明に係るトナーは、「シリカ微粒子の外添状態」を以下のように規定する。
トナーは、X線光電子分光装置(ESCA)により求めた、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1が50.0面積%以上75.0面積%以下である。また、トナーは、シリカ微粒子による理論被覆率をX2としたとき、下記式1で示される拡散指数が下記式2を満足することを特徴とする。
(式1)拡散指数=X1/X2
(式2)拡散指数≧−0.0042×X1+0.62
上記被覆率X1は、シリカ微粒子単体をESCAで測定した時のSi元素の検出強度に対して、トナーを測定した時のSi元素の検出強度の比から、算出することができる。この被覆率X1は、トナー粒子表面のうち、シリカ微粒子が実際に被覆している面積の割合を示す。
被覆率X1が50.0面積%以上75.0面積%以下の場合、耐久試験を通じて、トナーの流動性及び帯電性を良好な状態に制御できる。被覆率X1が50.0面積%未満の場合、後述するトナーのほぐれ易さを十分に得ることができない。このため、上述のような厳しい評価条件においては、トナーの劣化により流動性が悪化し、前記現像部材からの離型性が足りずに、耐久放置問題が改善できない。
一方、シリカ微粒子による理論被覆率X2は、トナー粒子100質量部あたりのシリカ微粒子の質量部数、及びシリカ微粒子の粒径等を用い、下記式4より算出される。これはトナー粒子表面を理論的に被覆できる面積の割合を示す。
(式4)理論被覆率X2(面積%)=31/2/(2π)×(dt/da)×(ρt/ρa)×C×100
da:シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)
dt:トナーの重量平均粒径(D4)
ρa:シリカ微粒子の真比重
ρt:トナーの真比重
C:シリカ微粒子の質量/トナーの質量
(Cは後述するトナー中のシリカ微粒子の含有量を用いる。)
上記式1で示される拡散指数の物理的な意味合いを以下に示す。
拡散指数は、実測の被覆率X1と理論的な被覆率X2の乖離を示す。この乖離の程度は、トナー粒子表面から垂直方向に二層、三層と積層したシリカ微粒子の多さを示すと考えている。理想的には拡散指数は1になるが、これは、被覆率X1が理論被覆率X2と一致した場合であり、二層以上積層したシリカ微粒子が全く存在しない状態である。一方、シリカ微粒子が、凝集した二次粒子としてトナー表面に存在すると、実測の被覆率と理論的被覆率の乖離が生じ、拡散指数が低くなる。つまり、拡散指数は、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量を示すと言い換えることもできる。
本発明において、拡散指数は、上記式2で示される範囲であることが重要であり、この範囲は従来の技術で製造されるトナーよりも大きいと考えている。拡散指数が大きいということは、トナー粒子表面のシリカ微粒子のうち二次粒子として存在している量が少なく、一次粒子として存在する量が多いことを示す。なお、上述した通り、拡散指数の上限は1である。
被覆率X1、及び、拡散指数が式2で示される範囲を同時に満たした場合、加圧時のトナーのほぐれ易さが大幅に改善できることを本発明者らは見出した。
これまで、トナーのほぐれ易さは、数nm程度の小粒径の外添剤を多量に外添して被覆率X1を上げることで、向上すると考えられてきた。一方、本発明者らの検討によると、被覆率X1を同じにして、拡散指数の異なるトナーのほぐれ易さを測定した場合、トナーのほぐれ易さに差が生じることが明らかとなった。さらに、加圧しながらほぐれ易さを測定した場合、さらに顕著な差が見られることも明らかとなった。特に、転写工程に代表される圧力のかかった状態におけるトナーの挙動をより反映するのは、加圧時のトナーのほぐれ易さであると本発明者らは考えている。このため、加圧時のトナーのほぐれ易さをより緻密に制御するために、被覆率X1に加えて拡散指数も非常に重要であると本発明者らは考えている。
被覆率X1、及び、拡散指数が式2で示される範囲を同時に満たした場合、トナーのほぐれ易さが良好になる理由について、本発明者らは次のように推測している。トナーがブレードニップのような狭く圧の高い場所に存在するとき、トナー同士は表面に存在する外添剤同士が衝突しないように、「噛みあわせ」の状態になりやすいことに起因すると考えている。このとき、二次粒子として存在しているシリカ微粒子が多いと、噛みあわせの影響が大きくなりすぎてしまい、迅速にトナー同士をほぐすのが困難になってしまう。
特に、トナーが劣化した際には、一次粒子として存在しているシリカ微粒子がトナー粒子表面に埋没してしまい、トナーの流動性が低下する。その時に、埋没していない二次粒子として存在するシリカ微粒子同士による噛みあわせの影響が大きくなり、トナーのほぐれやすさを阻害すると推察される。本発明に係るトナーは、多くのシリカ微粒子が一次粒子として存在するため、トナーが劣化した際にも、トナー同士の噛み込みが発生しづらく、転写工程等で摺擦を受けた場合おいても、一粒一粒へ非常にほぐれやすい。すなわち、従来の被覆率X1の制御だけでは困難であった、上記(4)で述べた「トナーのほぐれ易さ」を劇的に改善することが可能となった。
さらに、被覆率X1、及び、拡散指数が式2で示される範囲を同時に満たした場合、トナーの劣化の進行度合いが大幅に低減されることを本発明者らは見出した。その理由は、トナー粒子表面のシリカ微粒子が一次粒子で存在している場合、トナー同士が接触しても、シリカ微粒子同士の接触する可能性が低くなるとともに、シリカ微粒子のうける圧力がさくなるためだと推察される。即ち、上述した(1)の効果を得ることができる。
本発明における拡散指数の境界線は、被覆率X1が50.0面積%以上75.0面積%以下の範囲において、被覆率X1を変数とした関数である。この関数の算出は、シリカ微粒子、外添条件等を変化させて、被覆率X1と拡散指数を得た際、トナーが加圧時に十分にほぐれ易くなる現象から、経験的に得たものである。
上述の通り、トナーのほぐれ易さを制御することにより、クリーニング部材からのトナーのすり抜けの発生を抑制することができる。また、トナーがばらけて存在することで、それぞれのトナーに帯電部材が加える圧力が軽減され、帯電部材の表面への汚れの付着及び固着が抑制される。
図6は、3種の外添混合条件を用いて、添加するシリカ微粒子の量を変えて被覆率X1を任意に変化させたトナーを製造し、被覆率X1と拡散指数の関係をプロットしたグラフである。このグラフにプロットしたトナーのうち、式2を満足する領域にプロットされるトナーは、加圧時のほぐれ易さが十分に向上することが分かった。
ここで、拡散指数が被覆率X1に依存する理由に関して、本発明者らは次のように推測している。加圧時のトナーのほぐれ易さを改善するためには、二次粒子として存在しているシリカ微粒子の量が少ない方が良いが、被覆率X1の影響も少なからず受ける。被覆率X1が増加するにつれて、トナーのほぐれ易さが徐々に良好になるため、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量の許容量が増えることになる。このように、拡散指数の境界線は、被覆率X1を変数とした関数になると考えている。すなわち、被覆率X1と拡散指数の間には相関関係があり、被覆率X1に応じて拡散指数を制御することが重要であることを、上記の如く実験的に求めた。
拡散指数が下記に示される式3の範囲にある場合、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量が多くなり、トナーのほぐれやすさが足りないため、クリーニング部材からのトナーのすり抜けが発生し、更に帯電部材表面へのトナーの付着や固着が悪化してしまう。
(式3)拡散指数<−0.0042×X1+0.62
上述の通り、クリーニング部材からのトナーのすり抜けの発生を抑制し、且つ、帯電部材汚れを抑制するためのトナー条件として、上記(1)乃至(4)が必要であると考察している。そして、「シリカ微粒子の表面性状」及び「シリカ微粒子の外添状態」双方の制御による相乗効果により、トナーは、上記(1)乃至(4)の特性を発揮し、本発明に係る帯電部材と合わせて用いることにより、上記課題を解決できるものであると推測している。
本発明に係るトナーは、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、以下のものが挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、及びシアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
着色剤を用いる場合、好ましくは重合性単量体又は結着樹脂T100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
本発明に係るトナーは、磁性体を含有させることも可能である。本発明において、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
本発明に用いられる磁性体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などを主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウムなどの元素を含んでもよい。磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、燐片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。本発明における磁性体の含有量は、重合性単量体又は結着樹脂T100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下であることが好ましい。
本発明に係るトナーは、ワックスを含有することが好ましい。該ワックスとして、炭化水素系ワックスを含むことが好ましい。その他のワックスとして、以下のものが挙げられる。アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、ケトンワックス、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体。必要に応じて2種以上のワックスを併用しても良い。その中でも、フィッシャートロプシュ法による炭化水素系ワックスを使用した場合、現像性を長期にわたり良好に維持した上で、耐高温オフセット性を良好に保ち得る。なお、これらの炭化水素系ワックスには、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
ワックスの含有量は、結着樹脂T100質量部に対して、4.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは16.0質量部以上28.0質量部以下である。
本発明に係るトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に含有させることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化し、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
本発明に係るトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
荷電制御剤の配合量は、重合性単量体又は結着樹脂T100質量部に対して、0.3質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上8.0質量部以下である。
本発明に係るトナーは、トナー粒子と無機微粒子とを含有する。本発明において、前記無機微粒子はシリカ微粒子である。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、シリカ原体100質量部に対して15.0質量部以上40.0質量部以下のシリコーンオイルによって疎水化処理して製造される。疎水化処理の程度は、高温多湿環境における帯電性の低下の抑制という観点から、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
本発明において、シリカ微粒子の処理に用いるシリコーンオイルの25℃における動粘度は、30cSt以上500cSt以下であることが好ましい。動粘度が上記範囲の場合、シリカ原体をシリコーンオイルで疎水化処理する際に、均一性を制御しやすい。更に、シリコーンオイルの動粘度は、シリコーンオイルの分子鎖長に密接に関係しており、動粘度が上述の範囲にある場合、シリカ微粒子の凝集度を好適な範囲に制御しやすいため、好ましい。シリコーンオイルの25℃における動粘度のより好ましい範囲は、40cSt以上300cSt以下である。シリコーンオイルの動粘度を測定する装置としては、細管式動粘度計(蕪木科学器械工業(株)製)又は全自動微量動粘度計(ビスコテック(株)製)が挙げられる。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、シリカ原体をシリコーンオイルにより処理した後に、アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方で処理されたものであることが好ましい。こうすることにより、シリコーンオイルで疎水化処理できなかったシリカ原体表面を疎水化処理できるため、高疎水化度のシリカ微粒子を安定して得ることが可能である。さらに、トナーのほぐれ易さを大幅に改善できるため、好ましい。ほぐれ易さを改善できる理由の詳細は明らかになっていないが、本発明者らは以下のように考えている。シリカ微粒子表面のシリコーンオイル分子末端のうち、片末端のみが自由度を有しており、シリカ微粒子同士の凝集性に影響する。一方、上述のような2段処理を行うことで、シリカ微粒子の最表面にシリコーンオイル分子末端がほとんど存在しなくなるため、シリカ微粒子の凝集性をより低下させることができる。これにより、外添した際のトナー同士の凝集性を大幅に低下させることができ、トナーのほぐれ易さを向上することが可能である。
本発明において、シリカ原体は、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造された、いわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、上記処理工程中に、又は、処理工程後に解砕処理を行ってもよい。さらに、2段処理を行う場合、処理の間に解砕処理を行うことも可能である。
上記シリカ原体のシリコーンオイルによる表面処理、並びに、アルコキシシラン及びシラザンによる表面処理は乾式処理または湿式処理の何れでも良い。
上記シリカ原体のシリコーンオイルによる表面処理の具体的な手順は、例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にシリカ微粒子を入れて反応させ、その後、溶剤を除去する。その後、解砕処理を施してもよい。
続いて、アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方による表面処理を行う場合の具体的な手順は、以下の通りである。
アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方を溶かした溶剤の中に、解砕したシリコーンオイル処理済シリカ微粒子を入れて反応させる。その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、以下のような方法でも良い。例えば、シリコーンオイルによる表面処理では、シリカ微粒子を反応槽に入れる。そして、窒素雰囲気下、撹拌しながらアルコール水を添加し、シリコーンオイルを反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去し、解砕処理を行う。アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方による表面処理では、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。
上記アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好適に例示できる。一方、シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザンが好適に例示できる。
これらアルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方による処理量は、シリカ原体100質量部に対して、アルコキシシラン及びシラザンの少なくとも一方の総量として、0.1質量部以上20.0質量部以下である。
上記シリカ微粒子における、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率を上げるためには、上述のシリカ微粒子を得る過程において、シリコーンオイルをシリカ原体の表面に化学的に固定化させる必要がある。そのためには、シリカ微粒子を得る過程において、シリコーンオイルの反応のために、加熱処理を行う方法が好適に例示できる。加熱処理温度は100℃以上が好ましく、加熱処理温度が高いほど、固定化率を上げることが可能である。この加熱処理工程は、シリコーンオイル処理を行った直後に行うことが好ましいが、解砕処理を行う場合は、解砕処理工程後に加熱処理工程を行ってもよい。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、見掛け密度が15g/L以上50g/L以下であることが好ましい。シリカ微粒子の見掛け密度が上記範囲にあることは、シリカ微粒子が密に詰まり難く、微粒子間に空気を多く介在しながら存在しており、見掛け密度が非常に低いことを示している。このため、トナーにおいても、トナー同士が密に詰まりにくくなるため、劣化の速度を大幅に低下することが可能である。より好ましい範囲は、18g/L以上45g/L以下である。
シリカ微粒子の見掛け密度を上記範囲に制御する手段としては、シリカ微粒子に用いるシリカ原体の粒径、上述の解砕処理の有無とその強度、及びシリコーンオイルの処理量を調整することが挙げられる。シリカ原体の粒径を低下させることで、得られるシリカ微粒子のBET比表面積が大きくなり、空気を多く介在できるようになるため、見掛け密度を低下させることができる。また、解砕処理を行うことで、シリカ微粒子に含有される、比較的大きな二次粒子を、比較的小さな二次粒子へほぐすことができ、見掛け密度を低下させることが可能である。
本発明に用いられるシリカ原体は、トナーに良好な流動性を付与する為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積(BET比表面積)が130m2/g以上330m2/g以下のものが好ましい。この範囲の場合、トナーに付与する流動性及び帯電性が耐久を通じて確保しやすくなる。シリカ原体のBET比表面積は、200m2/g以上320m2/g以下であることがより好ましい。
上記窒素吸着によるBET法で測定した比表面積(BET比表面積)の測定は、JISZ8830(2001年)に準じて行う。測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。
また、本発明に用いられるシリカ原体の一次粒子の個数平均粒径は、3nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上40nm以下であることがより好ましい。
本発明に係るトナーは、現像性や定着性のバランスの観点から、重量平均粒径(D4)が、5.0μm以上、10.0μm以下であることが好ましく、より好ましく5.5μm以上、9.5μm以下である。
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、0.960以上であることが好ましく、0.970以上であることがより好ましい。トナー粒子の平均円形度が0.960以上の場合、トナーの形状が球形又はこれに近い形となり、流動性に優れ均一な摩擦帯電性を得られやすい。そのため、耐久後半においても高い現像性を維持し易くなるために好ましい。加えて、平均円形度が高いトナー粒子は、後述する無機微粒子の外添処理において、上記被覆率X1及び拡散指数を本発明の範囲へ制御しやすくなるため、好ましい。さらに、加圧時のトナーのほぐれ易さという観点においても、トナー粒子の表面形状における噛み合わせ効果が発生し難くなり、ほぐれ易さをさらに向上できるため、好ましい。
以下に、本発明に係るトナーの製造方法について例示するが、これに限定されるわけではない。
本発明に係るトナーは、シリカ微粒子のシリコーンオイルによる処理部数、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率、被覆率X1及び拡散指数を調整することができる。また、好ましくは平均円形度を調整する工程を有する製造方法であれば、それ以外の製造工程においては、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。
粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂T及び着色剤、並びに、必要に応じて離型剤等のその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散又は溶解し、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得る。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
上記粉砕には、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、好ましい円形度を有するトナーを得るためには、更に熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃力を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法を用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミルの如き機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムの装置のように、圧縮力、摩擦力の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
本発明に用いられるトナー粒子は、分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、及び懸濁重合法等の如き水系媒体中で製造されたものであることが好ましく、懸濁重合法で製造されたものであることがより好ましい。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤、並びに、必要に応じて重合開始剤、架橋剤及び荷電制御剤などのその他の添加剤を、均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散後、重合性単量体組成物中の重合性単量体を重合し、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー粒子(以後、「重合トナー粒子」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、所定の平均円形度を満たし、かつ、帯電量の分布も比較的均一となるために好ましい。
本発明に関わる重合トナー粒子の製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては公知のものが使用できる。その中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独で、或いは他の重合性単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明において、上記懸濁重合法に使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30.0時間以下であるものが好ましい。また、重合開始剤の添加量は重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
具体的な重合開始剤例としては、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
上記懸濁重合法において、重合反応時に架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下である。ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。例えば、芳香族ジビニル化合物、二重結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニル化合物、及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
以下、具体的に懸濁重合法によるトナー粒子の製造を説明するが、これに限定されるわけではない。まず、上述の重合性単量体及び着色剤を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
上記分散安定剤として公知の界面活性剤、有機分散剤又は無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトの如き燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムの如き無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.20質量部以上20.00質量部以下の量を用いる事が好ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、重合性単量体100質量部に対して、0.0001質量部以上0.1000質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
上記重合性単量体の重合反応における、重合温度は40℃以上、一般には50℃以上90℃以下の温度に設定される。
上記重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、無機微粒子であるシリカ微粒子を外添混合してトナー粒子の表面に付着させることで、本発明に係るトナーを得る。また、製造工程(無機微粒子の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉を除去することも可能である。
本発明に係るトナーには、上記シリカ微粒子に加えて、一次粒子の個数平均粒径(D1)が80nm以上、3μm以下の粒子を添加してもよい。例えば、フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;シリカ等のスペーサー粒子を本発明の効果に影響を与えない程度に少量用いることもできる。
上記シリカ微粒子を外添混合する混合処理装置としては、公知の混合処理装置を用いることができるが、被覆率X1及び拡散指数を容易に制御できる点で図7に示すような装置が好ましい。
図7は、本発明に用いられるシリカ微粒子を外添混合する際に、用いることができる混合処理装置の一例を示す模式図である。
当該混合処理装置は、トナー粒子とシリカ微粒子に対して、狭いクリアランス部において、シェアがかかる構成になっているために、シリカ微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー粒子表面に付着することができる。
更に、後述するように、回転体の軸方向において、トナー粒子とシリカ微粒子が循環しやすく、固着が進む前に十分に均一混合されやすい点で、被覆率X1及び拡散指数を本発明において好ましい範囲に制御しやすい。
一方、図8は、上記混合処理装置に使用される攪拌部材の構成の一例を示す模式図である。
以下、上記シリカ微粒子の外添混合工程について図7及び図8を用いて説明する。
上記シリカ微粒子を外添混合する混合処理装置は、少なくとも複数の攪拌部材19が表面に設置された回転体18と、回転体18を回転駆動する駆動部24と、攪拌部材19と間隙を有して設けられた本体ケーシング17とを有する。
本体ケーシング17の内周部と、撹拌部材19との間隙(クリアランス)は、トナー粒子に均一にシェアを与え、シリカ微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー粒子表面に付着しやすくするために、一定かつ微小に保つことが重要である。
また本装置は、本体ケーシング17の内周部の径が、回転体18の外周部の径の2倍以下である。図7において、本体ケーシング17の内周部の径が、回転体18の外周部の径(回転体18から撹拌部材19を除いた胴体部の径)の1.7倍である例を示す。本体ケーシング17の内周部の径が、回転体18の外周部の径の2倍以下であると、トナー粒子に力が作用する処理空間が適度に限定されるため、二次粒子となっているシリカ微粒子に十分に衝撃力が加わるようになる。
また、上記クリアランスは、本体ケーシング17の大きさに応じて、調整することが重要である。本体ケーシング17の内周部の径の、1%以上5%以下程度とすることが、シリカ微粒子に十分なシェアをかけるという点で重要である。具体的には、本体ケーシング17の内周部の径が130mm程度の場合は、クリアランスを2mm以上5mm以下程度とし、本体ケーシング17の内周部の径が800mm程度の場合は、10mm以上30mm以下程度とすればよい。
本発明におけるシリカ微粒子の外添混合工程は、混合処理装置を用い、駆動部24によって回転体18を回転させ、混合処理装置中に投入されたトナー粒子及びシリカ微粒子を攪拌、混合することで、トナー粒子の表面にシリカ微粒子を外添混合処理する。
図8に示すように、複数の撹拌部材19の少なくとも一部が、回転体18の回転に伴って、トナー粒子及びシリカ微粒子を回転体の軸方向の一方向に送る送り用撹拌部材19aとして形成される。また、複数の撹拌部材19の少なくとも一部が、トナー粒子及びシリカ微粒子を、回転体18の回転に伴って、回転体18の軸方向の他方向に戻す戻し用撹拌部材19bとして形成されている。
ここで、図7のように、原料投入口21と製品排出口22が本体ケーシング17の両端部に設けられている場合には、原料投入口21から製品排出口22へ向かう方向(図7で右方向)を「送り方向」という。
すなわち、図8に示すように、送り用撹拌部材19aの板面は送り方向(31)にトナー粒子を送るように傾斜している。一方、撹拌部材19bの板面は戻り方向(30)にトナー粒子及びシリカ微粒子を送るように傾斜している。
これにより、「送り方向」への送り(31)と、「戻り方向」への送り(30)とを繰り返し行いながら、トナー粒子の表面にシリカ微粒子の外添混合処理を行う。
また、撹拌部材19aと19bは、回転体18の円周方向に間隔を置いて配置した複数枚の部材が一組となっている。図8に示す例では、撹拌部材19a、19bが回転体18に互いに180度の間隔で2枚の部材が一組をなしているが、120度の間隔で3枚、あるいは90度の間隔で4枚、というように多数の部材を一組としてもよい。
図8に示す例では、撹拌部材19aと19bは等間隔で、計12枚形成されている。
更に、図8において、Dは撹拌部材の幅、dは撹拌部材の重なり部分を示す間隔を示す。トナー粒子及びシリカ微粒子を、送り方向と戻り方向に効率よく送る観点から、図8における回転体24の長さに対して、Dは20%以上30%程度の幅であることが好ましい。図8においては、23%である例を示す。さらに撹拌部材19aと19bは撹拌部材19aの端部位置から垂直方向に延長線を引いた場合、撹拌部材19bと撹拌部材の重なり部分dをある程度有することが好ましい。これにより、二次粒子となっているシリカ微粒子に効率的にシェアをかけることが可能である。Dに対するdは、10%以上30%以下であることがシェアをかける点で好ましい。
尚、羽根の形状に関しては、図8に示すような形状以外にも、送り方向及び戻り方向にトナー粒子を送ることができ、クリアランスを維持することができれば、曲面を有する形状や先端羽根部分が棒状アームで回転体2に結合されたパドル構造であってもよい。
以下、図7及び図8に示す装置の模式図に従って、本発明を更に詳細に説明する。
図7に示す装置は、複数の攪拌部材19が表面に設置された回転体18と、回転体18を回転駆動する駆動部24と、攪拌部材19と間隙を有して設けられた本体ケーシング17を有する。さらに、図7に示す装置は、本体ケーシング17の内側及び回転体端部側面26にあって、冷熱媒体を流すことのできるジャケット20を有している。
更に、図7に示す装置は、トナー粒子及びシリカ微粒子を導入するために、本体ケーシング17上部に形成された原料投入口21を有している。また、図7に示す装置は、外添混合処理されたトナーを本体ケーシング17から外に排出するために、本体ケーシング17下部に形成された製品排出口22を有している。更に、図7に示す装置は、原料投入口21内に、原料投入口用インナーピース27が挿入されており、製品排出口22内に、製品排出口用インナーピース28が挿入されている。
本発明においては、まず、原料投入口21から原料投入口用インナーピース27を取り出し、トナー粒子を原料投入口21より処理空間25に投入する。次にシリカ微粒子を原料投入口21より処理空間25に投入し、原料投入口用インナーピース27を挿入する。次に、駆動部24により回転体18を回転させ(29は回転方向を示す)、上記で投入した処理物を、回転体18表面に複数設けられた撹拌部材19により撹拌、混合しながら外添混合処理する。
尚、投入する順序は、先にシリカ微粒子を原料投入口21より投入し、次に、トナー粒子を原料投入口21より投入しても構わない。また、ヘンシェルミキサーのような混合機で予め、トナー粒子とシリカ微粒子を混合した後、混合物を、図7に示す装置の原料投入口21より投入しても構わない。
より具体的には、外添混合処理条件として、駆動部24の動力を、0.2W/g以上、2.0W/g以下に制御することが、本発明で規定する被覆率X1及び拡散指数を得るうえで好ましい。また、駆動部24の動力を、0.6W/g以上、1.6W/g以下に制御することが、より好ましい。
0.2W/gより動力が低い場合には、被覆率X1が高くなりにくく、拡散指数が低くなりすぎる傾向にある。一方、2.0W/gより高い場合には、拡散指数が高くなるが、シリカ微粒子が埋め込まれすぎてしまう傾向にある。
処理時間としては、特に限定されないが、好ましくは、3分以上、10分以下である。処理時間が3分より短い場合には、被覆率X1及び拡散指数が低くなる傾向にある。
外添混合時の撹拌部材の回転数については特に限定されない。しかし、処理空間25の容積が2.0×10−3m3の装置において、撹拌部材19の形状を図8のものとしたときの撹拌部材19の回転数は、800rpm以上、3000rpm以下であることが好ましい。800rpm以上、3000rpm以下であることで本発明で規定する被覆率X1及び拡散指数を得やすくなる。
更に、本発明において、特に好ましい処理方法は、外添混合処理操作の前に、プレ混合工程を持たせることである。プレ混合工程を入れることにより、シリカ微粒子がトナー粒子の表面で高度に均一分散されることで、被覆率X1が高くなりやすく、さらに拡散指数を高くしやすい。
より具体的には、プレ混合処理条件として、駆動部24の動力を、0.06W/g以上、0.20W/g以下とし、処理時間を0.5分以上、1.5分以下とすることが好ましい。プレ混合処理条件として、0.06W/gより負荷動力が低い、或いは処理時間が0.5分より短い場合には、プレ混合として十分な均一混合がなされにくい。一方、プレ混合処理条件として、0.20W/gより負荷動力が高い、或いは処理時間1.5分より長い場合には、十分な均一混合がなされる前に、トナー粒子表面にシリカ微粒子が固着されてしまう場合がある。
プレ混合処理の撹拌部材の回転数については、処理空間25の容積が2.0×10−3m3の装置において、撹拌部材19の形状を図8のものとしたときの撹拌部材19の回転数は、50rpm以上、500rpm以下であることが好ましい。50rpm以上、500rpm以下であることで本発明で規定する被覆率X1及び拡散指数を得易くなる。
外添混合処理終了後、製品排出口22内の、製品排出口用インナーピース28を取り出し、駆動部24により回転体18を回転させ、製品排出口22からトナーを排出する。得られたトナーを、必要に応じて円形振動篩機等の篩機で粗粒等を分離し、トナーを得る。
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
<シリカ微粒子の定量方法>
(1)トナー中のシリカ微粒子の含有量の定量(標準添加法)
トナー3gを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製する。そして、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、珪素(Si)の強度を求める(Si強度−1)。なお、測定条件は使用するXRF装置で最適化されたものであれば良いが、一連の強度測定はすべて同一条件で行うこととする。トナーに、一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子を、トナーに対して1.0質量%添加して、コーヒーミルにより混合する。
混合後、上記と同様にペレット化したのちに、上記同様にSiの強度を求める(Si強度−2)。同様の操作を、シリカ微粒子を、トナーに対して2.0質量%、3.0質量%添加混合したサンプルにおいても、Siの強度を求める(Si強度−3,Si強度−4)。Si強度−1乃至4を用いて、標準添加法によりトナー中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(2)トナーからシリカ微粒子の分離
トナーが磁性体を含有する場合、次の工程を経て、シリカ微粒子の定量を行う。
トナー5gを、精密天秤を用いて200mlの蓋付きポリカップに秤量し、メタノールを100ml加え、超音波分散機で5分間分散させる。ネオジム磁石によりトナーを引き付け、上澄み液を捨てる。このメタノールによる分散と上澄みを捨てる操作を3回繰り返した。その後、10%NaOHを100mlと、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加え、軽く混合したのち、24時間静置する。その後、再びネオジム磁石を用いて分離する。なお、この際にNaOHが残留しないように繰り返し蒸留水ですすぐ。回収された粒子を真空乾燥機により十分に乾燥させ、粒子Aを得る。上記操作により、外添されたシリカ微粒子は溶解、除去される。
(3)粒子A中のSi強度測定
3gの粒子Aを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製し、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Siの強度を求める(Si強度−5)。Si強度−5とトナー中のシリカ含有量の定量で使用したSi強度−1乃至4を利用して、粒子A中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(4)トナーから磁性体の分離
5gの粒子Aに対して、100mlのテトラヒドロフランを加え、良く混合した後に超音波分散を10分間行う。磁石により磁性粒子を引き付け、上澄み液を捨てる。この作業を5回繰り返し、粒子Bを得る。この操作で、磁性体以外の樹脂の如き有機成分はほぼ取り除くことができる。ただし、樹脂中のテトラヒドロフラン不溶解分が残存する可能性があるため、上記操作で得られた粒子Bを800℃まで加熱して残存する有機成分を燃焼させることが好ましく、加熱後に得られた粒子Cを、トナーに含有されていた磁性体と近似することができる。
粒子Cの質量を測定することにより、磁性トナー中の磁性体含有量W(質量%)とすることができる。この際、磁性体の酸化増量分を補正するために、粒子Cの質量に0.9666(Fe2O3→Fe3O4)を乗じる。各定量値を以下の式に代入することにより、外添されたシリカ微粒子量を算出する。
外添されたシリカ微粒子量(質量%)=トナー中のシリカ含有量(質量%)−粒子A中のシリカ含有量(質量%)
<被覆率X1の測定方法>
トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、以下のようにして算出する。下記装置を下記条件にて使用し、トナー表面の元素分析を行う。
・測定装置:Quantum2000(商品名、アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、Si原子の定量値の算出には、C 1c(B.E.280〜295eV)、O1s(B.E.525〜540eV)及びSi 2p(B.E.95〜113eV)のピークを使用した。ここで得られたSi元素の定量値をY1とする。
次いで、上述のトナーの表面の元素分析と同様にして、シリカ微粒子単体の元素分析を行い、ここで得られたSi元素の定量値をY2とする。
本発明において、トナーの表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、上記Y1及びY2を用いて下式のように定義される。
被覆率X1(面積%)=Y1/Y2×100
尚、本測定の精度を向上させるために、Y1及びY2の測定を、2回以上行うことが好
ましい。
定量値Y2を求めるに際して、外添に使用されたシリカ微粒子を入手できれば、それを用いて測定を行えばよい。
また、トナー表面から分離したシリカ微粒子を測定試料とする場合、シリカ微粒子のトナー粒子からの分離は以下の手順で行う。
1)磁性トナーの場合
まず、イオン交換水100mLに、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6ml入れ分散媒を作製する。この分散媒に、トナー5gを添加し、超音波分散機で5分間分散させる。その後、いわき産業社製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振とうする。その後、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束し、上澄みを採取する。この上澄みを乾燥させることにより、シリカ微粒子を採集する。十分な量のシリカ微粒子を採集することができない場合には、この作業を繰り返して行う。
この方法では、シリカ微粒子以外の外添剤が添加されている場合には、シリカ微粒子以外の外添剤も採集される。このような場合には、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、シリカ微粒子を選別すればよい。
2)非磁性トナーの場合
イオン交換水100mlにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを上記シェイカーにて1分当たり350往復の条件で20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30minの条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナーが存在し、下層の水溶液側にはシリカ微粒子が存在する。下層の水溶液を採取して、遠心分離を行い、ショ糖とシリカ微粒子とを分離し、シリカ微粒子を採集する。必要に応じて、遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、シリカ微粒子を採集する。
磁性トナーの場合と同様に、シリカ微粒子以外の外添剤が添加されている場合には、シリカ微粒子以外の外添剤も採集される。そのため、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、シリカ微粒子を選別する。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する(トナー粒子の場合も同様に算出する)。測定装置としては、100μmのアパーチャチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、更に60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー表面のシリカ微粒子画像から算出される。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その表面にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S−4800観察条件設定
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径の算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べてシリカ微粒子のチャージアップが少ないため、シリカ微粒子の粒径を精度良く測定することが出来る。
S−4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PCSTEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネルの[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)(前記da)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナーの表面の少なくとも300個のシリカ微粒子について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、シリカ微粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)(da)を得る。
<トナー粒子の平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2ml加える。更に測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
尚、本発明においては、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用する。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
フロー式粒子像測定装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
<シリカ微粒子の見掛け密度の測定方法>
シリカ微粒子の見掛け密度の測定は、100mlのメスシリンダーに、紙の上にのせた測定試料をゆっくり加えて100mlになるようにし、試料を加える前と後のメスシリンダーの質量差を求め次式によって算出する。なお、試料をメスシリンダーに加える場合、紙を叩いたりしないよう注意する。
見掛け密度(g/L)=(100ml投入した時点の質量(g))/0.1
<トナー及びシリカ微粒子の真比重の測定方法>
トナー及びシリカ微粒子の真比重は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記の通りである。
セル :SMセル(10ml)
サンプル量 :2.0g(トナー)、0.05g(シリカ微粒子)
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真比重を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<シリカ微粒子における、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率の測定方法>
(遊離シリコーンオイルの抽出)
(1)ビーカーにシリカ微粒子0.50g、クロロホルム40mlを入れ、2時間攪拌する。
(2)攪拌を止めて、12時間静置する。
(3)サンプルをろ過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
(炭素量測定)
酸素気流下、1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中の炭素量を測定する。シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率を下記の通り計算する。
(1)試料0.40gを円筒金型に入れプレスする。
(2)プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA−110で測定する。
(3)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
なお、シラン化合物等で疎水化処理した後に、シリコーンオイルによる表面処理を行っている場合は、まず、シラン化合物等で疎水化処理した後に試料中の炭素量を測定する。そして、シリコーンオイルによる表面処理後に、シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化率を下記の通り計算する。
(4)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[(シリコーンオイル抽出前の炭素量−シラン化合物等で疎水処理後の炭素量)]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
一方、シリコーンオイルによる表面処理後にシラン化合物等で疎水処理を行っている場合は、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化率を下記の通り計算する。
(5)[(シリコーンオイル抽出後の炭素量−シラン化合物等で疎水処理後の炭素量)]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置の一例の概略構成を図9に示す。
画像形成装置は、感光体、感光体の帯電装置(帯電手段)、帯電された感光体の表面に静電潜像を形成するための露光装置(露光手段)、静電潜像が形成された感光体にトナーを供給してトナー像を感光体の表面に形成するための現像装置(現像手段)を有する。また、図9に示される画像形成装置には、さらに、転写材に転写する転写装置(転写手段)、感光体表面の残留トナーを回収するクリーニング装置(クリーニング手段)、トナー像を定着する定着装置(定着手段)等を有している。
感光体32は、導電性基体の表面に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
帯電装置は、感光体32に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ14を有する。帯電ローラ14は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源40から所定の電圧を印加することにより、感光体32を所定の電位に帯電する。
感光体32に静電潜像を形成する潜像形成装置38は、例えばレーザービームスキャナーの如き露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。
現像装置は、感光体32に近接又は接触して配設される現像スリーブ又は現像ローラ33を有する。感光体の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像を現像してトナー像を形成する。
転写装置は、接触式の転写ローラ35を有する。感光体からトナー像を普通紙の如き転写材34(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材37、回収容器39を有し、転写した後、感光体表面に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
定着装置36は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材34に定着し、機外に排出する。
<プロセスカートリッジ>
感光体、帯電装置(帯電手段)及び現像装置(現像手段)を一体に支持し、画像形成装置から着脱可能に構成されているプロセスカートリッジ(図10)を用いることもできる。
また、画像形成装置は、プロセスカートリッジ、露光装置及び現像装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジであってもよい。
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。まず、実施例に先立ち、トナーに関して、磁性体1の製造例a1、ポリエステル樹脂1の製造例a2、トナー粒子1及びトナー粒子2の製造例a3〜a4、トナーの製造例A1〜A12について説明する。続いて、帯電部材に関して、樹脂粒子及び帯電部材の評価方法、樹脂粒子の製造例B1〜B8、複合導電性微粒子の製造例C1〜C2、並びに、帯電部材の製造例D1〜D19について説明する。
<トナーの製造例>
〔製造例a1〕磁性体1の作製
硫酸第一鉄水溶液に、鉄元素に対し1.00〜1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対し珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水酸化第一鉄を含む水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.90〜1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた。その後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを4.8に調整した。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100質量部に対し1.6質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体1を得た。
〔製造例a2〕ポリエステル樹脂1の作製
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、下記成分を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド2モル付加物 75質量部
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド3モル付加物 25質量部
・テレフタル酸 100質量部
・チタン系触媒 0.25質量部
(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))
次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2mgKOH/g以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸10質量部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕してポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されたメインピーク分子量(Mp)が10500であった。
〔製造例a3〕トナー粒子1の作製
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0質量部
・n−ブチルアクリレート 22.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.6質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土谷化学工業(株)) 3.0質量部
・磁性体1 90.0質量部
・ポリエステル樹脂1 5.0質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して重合性単量体組成物を得た。得られた重合性単量体組成物を60℃に加温し、フィッシャートロプシュワックス(融点:74℃、数平均分子量Mn:500)15.0質量部を添加し、溶解させた。重合性単量体組成物にフィッシャートロプシュワックスを溶解した後に、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド7.0質量部を溶解し、トナー組成物を得た。
上記水系媒体中に上記トナー組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ74℃で6時間反応させた。
反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥してトナー粒子1を得た。得られた磁性トナー粒子1の物性を表1に示す。
〔製造例a4〕トナー粒子2の作製
・スチレンアクリル共重合体 100質量部
(スチレンとn−ブチルアクリレートの質量比が78.0:22.0、メインピーク分子量Mpが10000)
・磁性体1 90質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土谷化学工業(株)) 2質量部
・フィッシャートロプシュワックス 4質量部
(融点:74℃、数平均分子量Mn:500)
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて機械式粉砕(微粉砕)した。得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。
得られた原料トナー粒子を、表面改質装置ファカルティー(ホソカワミクロン社製)で表面改質及び微粉除去を行い、トナー粒子4を得た。この表面改質装置を用いた表面改質及び微粉除去の条件は、分散ローターの回転周速を150m/sec、微粉砕品の投入量を1サイクル当たり7.6kg、表面改質時間(サイクルタイム:原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)を82秒間とした。またトナー粒子排出時の温度は44℃であった。得られたトナー粒子2の物性を表1に示す。
〔製造例A1〕トナーA1の作製
上記トナー粒子1に対して、図5に示す装置を用いて、外添混合処理を行った。
本実施例においては、図5に示す装置で、本体ケーシング11の内周部の径が130mmであり、処理空間19の容積が2.0×10−3m3の装置を用い、駆動部18の定格動力を5.5kWとし、攪拌部材13の形状を図6のものとした。そして、図6における攪拌部材13aと攪拌部材13bの重なり幅dを攪拌部材13の最大幅Dに対して0.25Dとし、攪拌部材13と本体ケーシング11内周とのクリアランスを3.0mmとした。
上記した装置構成で、トナー粒子1の100質量部と、表2に示すシリカ微粒子1(シリカ原体の一次粒子の個数平均粒径:7nm、処理後のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径:8nm)の0.50質量部とを、図5に示す装置に投入した。
トナー粒子とシリカ微粒子を投入後、トナー粒子とシリカ微粒子を均一に混合するために、プレ混合を実施した。プレ混合の条件は、駆動部18の動力を0.10W/g(駆動部8の回転数150rpm)とし、処理時間を1分間とした。
プレ混合終了後、外添混合処理を行った。外添混合処理条件は、駆動部18の動力を0.60W/g(駆動部18の回転数1400rpm)で一定となるように、攪拌部材13の最外端部周速を調整し、処理時間を5分間とした。外添混合処理条件を表3に示す。
外添混合処理後、直径500mm、目開き75μmのスクリーンを設置した円形振動篩機で粗粒等を除去し、実施例用トナーA1を得た。実施例用トナーA1を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、8nmであった、トナーA1の外添条件、物性を表3に示す。
〔製造例A2〜A18〕トナーA2〜A18の作製
上記トナーA1の製造例において、表2、表3に示す、シリカ微粒子の種類及び添加部数、トナー粒子、外添装置、外添条件等へ変更した以外は同様にして、トナーA2乃至トナーA18を製造した。得られたトナーA2乃至トナーA18の外添条件、物性を表3にそれぞれ示す。
ここで、外添装置としてヘンシェルミキサーを使用する場合、ヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機(株))を用いた。また、一部の製造例においては、プレ混合工程を行わなかった。
図11として、トナーA1乃至トナーA18において、被覆率X1と拡散指数をプロットした図を示す。なお、実施例で用いたトナーは○印、比較例で用いたトナーについては、×印で記載している。
<帯電部材の製造例>
<各種パラメーターの測定方法>
〔樹脂粒子の断面の観察〕
樹脂粒子そのものについて、まず、樹脂粒子を光硬化型樹脂、例えば、可視光硬化性包埋樹脂(商品名:D−800、日新EM(株)社製、あるいは、商品名:Epok812セット、応研商事(株)社製)により包埋する。次に、ダイヤモンドナイフ(商品名:DiATOME CRYO DRY、DIATOME社製)を装着したウルトラミクロトーム(商品名:LEICA EM UCT、ライカ社製)、及び、クライオシステム(商品名:LEICA EM FCS、ライカ社製)を使用して、面出しをした後、樹脂粒子の中央(樹脂粒子の重心近辺が含まれるように)を切り出し、100nmの厚みの切片を作製する。この後、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、あるいは、りんタングステン酸のいずれかの染色剤を使用して染色処理を行い、透過型電子顕微鏡(商品名:H−7100FA、日立製作所社製)にて、樹脂粒子の断面画像を撮影した。これを任意の粒子100個につき行った。この際、樹脂部分は白く、空孔部分は、黒く観察された。なお、包埋する樹脂、及び、染色剤は、樹脂粒子の材質により、適宜適切なものを選択して行う。この際、樹脂粒子の空孔が鮮明に確認できる組み合わせを選択する。下記に記載の本発明すべて製造例においては、可視光硬化型包埋樹脂D−800と四酸化ルテニウムを使用して観察することにより、空孔を鮮明に確認することができた。これを任意の粒子100個につき行った。この際、樹脂部分白く、空孔部分は若干灰色に観察された。
〔樹脂粒子の体積平均粒径〕
上記で得られた粒子断面画像に対し、空孔部分を含む領域を含めた総面積を算出し、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求める。得られた直径から、計100個の平均粒径を算出し、これを樹脂粒子の体積平均粒径とする。
〔樹脂粒子の空孔率〕
上記〔樹脂粒子の断面の観察〕で得られた粒子断面画像に対し、空孔部分を含む領域を含めた総面積に対し、上記断面画像において、空孔部分の総面積の割合を算出する。この作業を任意の樹脂粒子10個について行い、その平均を樹脂粒子の空孔率とする。
樹脂粒子の空孔率の算出方法について、図3を用いて、下記に詳述する。
上記〔樹脂粒子の断面の観察〕で得られた粒子断面画像に対し、この面積と等しい面積を持つ円から、樹脂粒子3の中心7を算出する。
該中心7から粒子外側に向かい、粒子半径の(3)1/2/2倍移動した位置(例えば8)を100点算出し、この点を直線で結んだ領域の該中心7側の領域を、樹脂粒子の内部領域9、表面近傍側の領域を樹脂粒子の表面近傍領域10とする。
そして、上記樹脂粒子の内部領域9及び表面近傍領域10それぞれにおいて、空孔部分を含む領域を含めた総面積に対し、上記断面画像において、空孔部分の総面積の割合を算出する。この平均をそれぞれ内部領域空孔率及び表面近傍領域空孔率とする。
〔帯電部材の表面に用いる樹脂層中に含まれる粒子の立体的な樹脂粒子形状の測定〕
帯電部材の表面の任意の凸部で、帯電部材の表面に並行になるような、縦200μm横200μmの領域に亘って、帯電部材凸部頂点側から20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所社製)で切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じ粒子を撮影した画像を20nm間隔で組み合わせ、立体的な粒子形状を算出する。この作業を、帯電部材表面の任意の100箇所について行う。
〔帯電部材の表面に用いる樹脂層中に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径〕
上記で〔帯電部材の表面に用いる樹脂層中に含まれる粒子の立体的な樹脂粒子形状の測定〕に記載の方法で得られた立体的な粒子形状において、空孔を含む領域を含めた総体積を算出する。これが、該樹脂粒子が中実粒子であると仮定したときの、該樹脂粒子の体積となる。そして、この体積と等しい体積を持つ球の直径を求める。100個の樹脂粒子に対して平均粒径を算出し、この平均を樹脂粒子の体積平均粒径とする。
〔帯電部材の表面に用いる樹脂層中に含まれる樹脂粒子の空孔率〕
上記〔帯電部材の表面に用いる樹脂層中に含まれる粒子の立体的な樹脂粒子形状の測定〕で記載の方法で得られた立体的な粒子形状から、樹脂粒子全体の空孔の総体積を算出し、前記樹脂粒子の空孔を含む領域を含めた総体積に対する割合を算出する。この作業を100個の粒子に対して行い、その平均を樹脂粒子全体の空孔率とする。
また、帯電部材の表面側と内部側とで空孔率の異なる場合には、得られた立体的な粒子形状から、該樹脂粒子が中実粒子であると仮定したときの該中実粒子の帯電部材の表面側11体積%の領域を算出する。図12は、帯電部材の表面の凸部を形成する樹脂粒子3の立体的な模式図である。本図を使用して空孔率の算出方法を下記に説明する。まず、立体的な粒子形状より、樹脂粒子3の中心7を算出する。そして、帯電部材表面と平行し、且つ、樹脂粒子3の中心7を通る仮想の平面42を作製する。この平面42を、樹脂粒子3の中心7から、上記球の半径の(3)1/2/2倍の距離だけ帯電部材の表面側の位置43、即ち、樹脂粒子3の中心7を通る仮想平面42を仮想平面44の位置まで、平行移動させる。この平面44によって区切られた帯電部材の表面側の領域41を、該樹脂粒子3が中実粒子であると仮定したときの該中実粒子の該帯電部材の表面側11体積%の領域41とする。そして、該領域において、上記立体的な粒子形状から、空孔の総体積を算出し、該領域の空孔を含めた総体積に対する割合を算出する。
〔帯電部材の表面粗さ〕
十点平均粗さRzjis、は、JIS B 0601−1994表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器(商品名:SE−3500、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。十点平均粗さRzjisは、帯電部材を任意に6箇所測定し、その平均値である。測定に際し、カットオフ値は0.8mm、評価長さは8mmに設定する。
<樹脂粒子の製造例B1〜B17>
〔製造例B1〕 樹脂粒子B1の作製
脱イオン水400質量部に、第三リン酸カルシウム8.0質量部を添加し、水性媒体を調整した。次いで、重合単量体としてのメチルメタクリレート38.0質量部と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート26.0質量部、第1の多孔化剤としてのノルマルへキサン34.1質量部、第2の多孔化剤としての酢酸エチル8.5質量部、及び、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を混合した、油性混合液を調整した。上記の油性混合液をホモミキサーにより、回転数2000rpmにて水性媒体に分散させた。その後、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、250rpmで撹拌しながら、60℃で6時間かけて懸濁重合を行い、多孔質の樹脂粒子とノルマルへキサン及び酢酸エチルを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4質量部を加え、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの濃度を水に対し、0.1質量%に調整した。
得られた水性懸濁液を蒸留してノルマルへキサン及び酢酸エチルを除去し、残った水性懸濁液に関し、ろ過と水洗を繰り返した後、80℃で5時間乾燥した。音波式分級機により、解砕及び分級処理をおこない、平均粒径30.5μmの樹脂粒子B1を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、樹脂粒子B1は、複数の空孔を有し、内部領域と表面近傍領域で構造の異なるコアシェル構造の多孔質粒子であった。樹脂粒子の内部領域は、20%の空孔率であり、21nm程度の空孔を有し、表面近傍は、35%の表面近傍領域空孔率であり、87nm程度の空孔を有していた。
〔製造例B2〜B13〕 樹脂粒子B2〜B13の作製
油性混合液として、重合単量体、架橋性単量体、第1の多孔化剤、第2の多孔化剤を、表4に示すように変更し、且つ、ホモミキサーの回転数を表4に示すように変更した以外は、製造例B1と同様にして、樹脂粒子B2〜B13を得た。得られた樹脂粒子B2〜B13は、多孔質粒子であった。
〔製造例B14〕 樹脂粒子B14の作製
脱イオン水300質量部に、第三リン酸カルシウム10.5量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.015質量部を加え、水性媒体を調製した。次いで、ラウリルメタクリレート65質量部、エチレングリコールジメタクリレート30質量部、ポリ(エチレングリコール‐テトラメチレングリコール)モノメタクリレート0.5質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を混合した、油性混合液を調製した。上記の油性混合液をホモミキサーにより、回転数4000rpmにて水性媒体中に分散させた。その後、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、250rpmで撹拌しながら、70℃で8時間かけて懸濁重合を行った。冷却後、得られた懸濁液に塩酸を加えリン酸カルシウムを分解し、更に、ろ過と水洗を繰り返した。80℃で5時間乾燥した後、音波式分級機により、解砕及び分級処理をおこない、平均粒径20.2μmの樹脂粒子B14を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、樹脂粒子B14は、樹脂粒子内部に、3500nm程度の空孔径の空孔を複数有する空孔率5%程度の多中空粒子であった。
〔製造例B15〕 樹脂粒子B15の作製
脱イオン水300質量部に、第三リン酸カルシウム10.5量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.015質量部を加え、水性媒体を調整した。次いで、ラウリルメタクリレート65質量部と、エチレングリコールジメタクリレート30質量部、ポリ(エチレングリコール‐テトラメチレングリコール)モノメタクリレート0.15質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を混合した、油性混合液を調整した。上記の油性混合液をホモミキサーにより、回転数4000rpmにて水性媒体に分散させた。その後、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、250rpmで撹拌しながら、70℃で8時間かけて懸濁重合を行った。冷却後、得られた懸濁液に塩酸を加えリン酸カルシウムを分解し、更に、ろ過と水洗を繰り返した。80℃で5時間乾燥した後、音波式分級機により、解砕及び分級処理をおこない、平均粒径15.2μmの樹脂粒子B15を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、樹脂粒子B15は、樹脂粒子内部に、800nm程度の空孔を複数有する空孔率0.8%程度の多中空粒子であった。
〔製造例B16〕 樹脂粒子B16の作製
架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(商品名:MBX−30、積水化成品工業(株)製)を分級処理し、体積平均粒径25.1μmの樹脂粒子B16を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、本製造例の樹脂粒子B16は、内部に空孔を有していない、中実粒子であった。
〔製造例B17〕 樹脂粒子B17の作製
脱イオン水300質量部に、第三リン酸カルシウム20量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04質量部を加え、水性媒体を調製した。次いで、メチルアクリレート10質量部、スチレン81質量部、ジビニルベンゼン15質量部と、アゾビスイソブチロニトリル0.8質量部、及び、界面活性剤(商品名:ソルバース26000、ソルバース社製)1.2質量部を混合した、油性混合液を調製した。上記の油性混合液をホモミキサーにより、回転数4000rpmにて水性媒体に分散させた。その後、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、250rpmで撹拌しながら、70℃で8時間かけて懸濁重合を行った。冷却後、得られた懸濁液に塩酸を加えリン酸カルシウムを分解し、更に、ろ過と水洗を繰り返した。80℃で5時間乾燥した後、音波式分級機により、解砕及び分級処理を行い、平均粒径20.2μmの樹脂粒子B17を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、この粒子は、粒子内部に1つの中空部を有する粒子(以下、「単中空粒子」と称す)であった。尚、中空部は、5200nm程度の空孔径を有し、空孔率は、5%程度であった。
下記表5に作製した樹脂粒子の形状、平均粒径、空孔径、空孔率をまとめる。
<微粒子の製造例>
〔製造例C1〕 複合導電性微粒子の作製
シリカ粒子(平均粒径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合撹拌を行った。この時の撹拌速度は22rpmであった。その中に、カーボンブラック(商品名:#52、三菱化学(株)製)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合撹拌を行った。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆されてシリカ粒子の表面にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性微粒子を作製した。この時の撹拌速度は22rpmであった。なお、得られた複合導電性微粒子は、平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は1.1×102Ω・cmであった。
〔製造例C2〕 表面処理酸化チタン粒子の作製
針状ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、縦:横=3:1、体積抵抗率2.3×1010Ω・cm)1000gに、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン110g及び溶媒としてトルエン3000gを配合してスラリーを調製した。このスラリーを、撹拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得たスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30〜60℃、減圧度:100Torr)によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理した粒子を室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理酸化チタン粒子を作製した。なお、得られた表面処理酸化チタン粒子は、平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は5.2×1015Ω・cmであった。
<帯電部材の製造例>
〔製造例D1〕 帯電部材D1の作製
(導電性基体の作製)
直径6mm、長さ244mmのステンレス鋼製の基体に、カーボンブラックを10質量%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。
(導電性ゴム組成物の作製)
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGC三元共化合物、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対し下記表6に示す他の8種類の材料を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーで10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
これに、加硫剤として硫黄0.8質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部及びテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加した。次いで20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、導電性ゴム組成物を作製した。その際、二本ロールの間隙を1.5mmに調整した。
(弾性ローラの作製)
クロスヘッドを具備する押出成形装置を用いて、前記導電性基体を中心軸として、その外周部を同軸円筒状に前記導電性ゴム組成物によって被覆し、ゴムローラを得た。被覆したゴム組成物の厚みは、1.75mmに調整した。
このゴムローラを、熱風炉にて160℃で1時間加熱したのち、弾性層の端部を除去して、長さが226mmとし、更に、160℃で1時間2次加熱を行い、層厚1.75mmの予備被覆層を有するローラを作製した。
得られたローラの外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨した。研磨砥石としてビトリファイド砥石を用い、砥粒は緑色炭化珪素(GC)で粒度は100メッシュとした。ローラの回転数を350rpmとし、研磨砥石の回転数を2050rpmとした。ローラの回転方向と研磨砥石の回転方向は、同方向(従動方向)とした。切込み速度は、砥石が未研磨ローラに接してからΦ9mmに研磨されるまでに10mm/minから0.1mm/minまで段階的に変化させ、スパークアウト時間(切込み0mmでの時間)は5秒間に設定し、導電性の弾性ローラを作製した。弾性層の厚みは、1.5mmに調整した。なお、このローラのクラウン量は100μmとした。
(樹脂層用塗布液d1の作製)
第一段階の分散として、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(商品名:プラクセルDC2016、(株)ダイセル製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が12質量%となるように調整した。この溶液834質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表7の成分(1)の欄に示す導電性粒子としての複合導電性微粒子及び無機粒子としての表面処理酸化チタン粒子及び変性ジメチルシリコーンオイルを加え、混合溶液を調製した。次いで、内容積450mLのガラス瓶中に上記混合溶液188.5gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて20時間分散した。
第二段階の分散として、第一段階の分散後、下記表7の成分(2)及び樹脂粒子B1を添加した。尚、このとき、下記表7の成分(2)であるブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量とした。添加後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して樹脂層用塗布液d1を作製した。上記塗布液の比重は、0.9260であった。上記塗布液中の導電性粒子及び無機粒子を有する凝集体のメジアン径D50は、180nmであった。尚、凝集体のメジアン径D50は、動的光散乱装置(商品名:ナノトラック、UPA日機装株式会社製)を用い、測定した。測定は、塗布液をメチルイソブチルケトンにより100倍に希釈し、5分間の測定を二回行い、その平均をメジアン径とした。
(樹脂層の形成)
前記弾性ローラを、その長手方向を鉛直方向にして、前記塗布液中に浸漬してディッピング法で塗工した。浸漬時間は9秒間、引き上げ速度は初期速度が20mm/s、最終速度は2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を23℃で30分間風乾した後、熱風循環乾燥機にて温度80℃で1時間、更に温度160℃で1時間乾燥して塗膜を硬化させて、弾性層の外周部に樹脂層が形成された帯電部材D1を得た。樹脂層の膜厚は、5.2μmであった。なお、樹脂層の膜厚は、樹脂粒子が存在しない箇所において測定した。
〔製造例D2〜D27〕 帯電部材D2〜D27の作製
帯電部材D2〜D27を作製するための樹脂層用塗布液d2〜d27の材料及び物性を下記表8に記載する。下記表8に記載の材料に変更した以外は、製造例D1と同様の方法で帯電部材D2〜D27を作製した。完成した帯電部材の物性値に関して、下記表9にまとめた。
ここで、導電性微粒子として、カーボンブラックを用いた場合、その添加量は、アクリルポリオール固形分100質量部に対して、29.7質量部とした。また、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量に調整した。
<実施例1>
〔耐久試験〕
図9に示す構成を有する画像形成装置であるモノクロレーザープリンタ(商品名:LBP6300、キヤノン(株)製)を、370mm/secのプロセススピードに改造し、更に、外部より、帯電部材に電圧を印加した。印加する電圧は、交流電圧として、ピークピーク電圧(Vpp)が1600V、周波数(f)が1350Hz、直流電圧(Vdc)が−560Vをとした。画像の解像度は、600dpiで出力した。なお、プロセスカートリッジとして、上記プリンタ用のプロセスカートリッジを用いた。
まず、上記プロセスカーリッジから、トナーをすべて取り出し清掃した。そして、製造例A1で作製したトナーA1を、上記プロセスカーリッジから取り出した重量と同重量投入した。
更に、プロセスカートリッジから付属の帯電部材を取り外し、製造例D1で作製した帯電部材D1をセットした。また、図13に示すように、帯電部材は、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。
このプロセスカートリッジを低温低湿環境(7.5℃/30%RH環境)に24時間馴染ませた後、下記耐久試験により帯電部材表面の汚れ性の評価を行った。
具体的には、感光体の回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔186ドットの横線画像を2枚間欠耐久試験(2枚ごとにプリンタの回転を3秒停止して耐久)を行った。初期及び上記横線画像を3000(3K)枚、6000(6K)枚、9000(9K)枚、10000(10K)枚出力終了時に、それぞれハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力し、評価した。尚、帯電部材表面の汚れがひどくなると、前述した通り、放電性能が低下し、当該画像に横スジ状画像、汚れ部からの異常放電が発生し、当該画像にポチ状画像として観察される。尚、評価は、ハーフトーン画像を目視にて観察し、前述した横スジ状画像及びポチ状画像を、下記基準で判定した。評価結果を表10に示す。
ランク1;横スジ状画像(ポチ状画像)は発生しない。
ランク2;軽微な横スジ状画像(ポチ状画像)が認められるのみである。
ランク3;一部に、横スジ状画像(ポチ状画像)が帯電ローラのピッチで確認されるが、実用画像上問題無い。
ランク4;横スジ状画像(ポチ状画像)が目立ち、画質の低下が認められる。
また、耐久試験後の帯電部材の表面を目視により観察し、その表面の汚れについて、下記基準で判定した。評価結果を表10に示す。
ランク1;全く汚れが存在しない。
ランク2;ごくまれに汚れが存在する。
ランク3;まれに汚れが存在する。
ランク4;多量に汚れが存在する。
〔ニップ内放電強度の評価〕
ガラス板(縦300mm、横240mm、厚み4.5mm)の表面上に5μmのITO膜を形成し、更に、その表面に、電荷輸送層のみを17μmに成膜した。図14で示すように、上記成膜後のガラス板45表面側から、帯電部材14を、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接できるような工具を作製し、更に、ガラス板45を200mm/sで走査できるようにした。上記ガラス板45を感光体に見立て、当接部下側(ガラス板45表面と反対側)から高速度ゲート(製品名:I.I.ユニットC9527−2、浜松ホトニクス(株)社製)を介して、高速度カメラ(製品名:FASTCAM−SA1.1、浜松ホトニクス(株)社製)で観察することにより、帯電部材7のニップ内放電強度を確認した。帯電部材7に印加する電圧は、交流電圧として、ピークピーク電圧(Vpp)が1600V、周波数(f)が1350Hz、直流電圧(Vdc)が−560Vをとした。測定環境は、低温低湿環境下(7.5℃/30%RH環境)とした。
ニップ内放電について、撮影速度3000fpsで、0.3秒間撮影を行い、その動画を平均化処理した画像を出力した。撮影に際しては、適宜感度を調整し、撮影画像の明るさを調整した。出力した画像を、上記耐久前及び耐久後で比較を行い、下記基準で判定した。評価結果を表10に示す。
ランク1;ニップ内全域に、放電が安定して確認される。
ランク2;ニップ内に、放電が不安定な部分が確認されるが、問題無い。
ランク3;ニップ内全域に、放電が不安定である。
ランク4;ニップ内全域に、放電が微弱で、不安定である。
<実施例2〜33>
トナーと帯電部材の組み合わせを表10に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表10に示す。
<比較例1〜8>
トナーと帯電部材の組み合わせを表10に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表10に示す。いずれの比較例においても、耐久試験後の帯電部材表面には多量の汚れが存在し、ニップ内放電も微弱なものとなり、横スジ状画像及びポチ状画像が目立ち、画質の低下が認められた。
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために以下の請求項を添付する。