本発明は、
画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
静電潜像担持体と、
トナーを用いて該静電潜像担持体を帯電するための帯電部材と、
該静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像手段と
を有し、
該帯電部材は、導電性基体と導電性の表面層を有する帯電部材であって、
該表面層は、結着樹脂Cと、該結着樹脂Cに分散されている導電性粒子と、該表面層を粗面化させている樹脂粒子と、を含み、
該表面層は、その表面に、該樹脂粒子に由来する複数の凸部を有し、
該凸部を形成している該樹脂粒子は、その内部に空孔を有し、
該樹脂粒子全体の空孔率Vtが、2.5体積%以下であり、かつ、
該樹脂粒子が空孔を有さない中実粒子であると仮定したときの該中実粒子内の11体積%を占める領域であって該導電性基体からの距離が最も離れた領域における空孔率V11が、5体積%以上20体積%以下であることを特徴とし、
該トナーは、結着樹脂Tおよび着色剤を含有するトナー粒子ならびに、外添剤としてシリカ微粒子を含有するトナーであって、
X線光電子分光装置(ESCA)により求めた、該トナー表面の該シリカ微粒子による被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下であり、
該シリカ微粒子による理論被覆率をX2としたとき、下記式1で示される拡散指数が下記式2を満足する
(式1)拡散指数=X1/X2
(式2)拡散指数≧−0.0042×X1+0.62
ことを特徴とするプロセスカートリッジである。
本発明者らの検討によれば、上記のようなプロセスカートリッジを用いることにより、使用環境によらず、画像形成装置を小型化および長期間繰り返し使用した条件においても、安定した画像濃度が得られ、感光体融着を抑制可能なプロセスカートリッジを提供することができる。
また、長期間繰り返し使用後半にしばらく放置された後にでもかぶりなどの画像欠陥を抑制したプロセスカートリッジを提供することができる。
まず、本発明における帯電部材について説明する。
図1(1a)は本発明に係る帯電部材の断面の一例を示しており、この帯電部材は導電性基体1と、その周面を被覆している導電性の表面層3とを有するものである。また、図1(1b)および(1c)に示すように、本発明に係る帯電部材は、導電性基体1と導電性の表面層3の間に、1層以上の導電性の弾性層2を設けた構成とすることができる。なお、導電性基体1と導電性基体上に順次積層する層(例えば、図1(1a)に示す導電性の表面層3、図1(1b)に示す導電性の弾性層2、図1(1c)に示す導電性の弾性層21)は、導電性接着剤を介して接着してもよい。導電性にするための接着剤には、公知の導電剤を用いることができる。また、図1(1b)に示す、導電性の弾性層2と導電性の表面層3の間、図1(1c)に示す導電性の弾性層21と導電性の弾性層22の間も、導電性接着剤を介して接着することができる。
図2は、本発明に係る帯電部材の部分断面図である。表面層3は、結着樹脂Cと該結着樹脂Cに分散されている導電性粒子と、該表面層を粗面化させている樹脂粒子104を含み、該表面層は、その表面に該樹脂粒子に由来する複数の凸部105を有している。
図3は、凸部105の拡大断面図である。凸部105を形成している樹脂粒子104は、内部に空孔を有している。そして、該樹脂粒子の全体の空孔率Vtは2.5体積%以下であり、かつ、「凸部頂点側領域」における空孔率V11が、5体積%以上20体積%以下であることを特徴としている。なお、「凸部頂点側領域」とは、帯電部材の表面層の凸部を形成している樹脂粒子について、該樹脂粒子が空孔を有しない中実粒子であると仮定したときの該中実粒子内の11体積%を占める領域であって、導電性基体からの距離が最も遠い領域を意味する。「凸部頂点側領域」は、具体的には、図3の符号106で示される領域である。
本発明者らは、帯電部材が、感光体を帯電する際の当接状態および放電状態について検討を行った。その過程で、帯電部材と感光体とのニップ部を詳細に観察した。その結果、樹脂粒子などに由来する凸部を有する帯電部材は、感光体とのニップ内において、凸部頂点近傍で接触し、凸部と凸部の間に存在する凹部においては、空隙を有していることが観察できた。そして、上記空隙においては、ニップ内放電が観察された。
一方、感光体と帯電部材との接触は、凸部頂点近傍の狭い範囲に限られており、このような状態で、特に高速での画像形成を行った場合、凸部頂点近傍の接触部において、スリップが発生していることが分かった。さらに、上記スリップにより、感光体の表面に、深さ数μm程度の傷を形成していることが分かった。
本発明者らは、さらに検討を行った結果、上記スリップにより、感光体の表面に傷が形成されると、感光体の傷周辺部にトナーが融着する、いわゆる感光体融着という課題が発生しやすいという課題もあった。感光体融着が発生すると、ベタ黒画像を出力したときに、感光体周期で白ポチという画像欠陥が発生しやすい。
一方で、本発明者らの検討の結果、上記凸部を形成しない場合は、上記傷の発生はないことが確認できた。しかしながら、この場合には、ニップ内放電は発生せず、感光体の帯電が不均一となる傾向にある。
そこで、本発明者らは、ニップ内放電を維持しつつ、上記傷の発生を抑制する検討を行った。その過程において、上記凸部を形成している樹脂粒子の内部に複数の空孔を形成すると、樹脂粒子が変形しやすくなり、帯電部材の凸部と感光体との接触面積を拡大することができることが分かった。樹脂粒子の空孔率が大きくなればなるほど、上記凸部の変形は大きくなり、上記接触面積を拡大することが可能になる。これは、凸部頂点近傍の圧力集中を緩和することにつながり、上記スリップの抑制を可能にする。しかしながら、樹脂粒子の空孔率が大きくなりすぎると、逆に、ニップ部において、空隙を維持することが困難になる。すなわち、ニップ内放電が発生しにくくなってしまうのである。
本発明者らは、さらに検討を行った結果、凸部頂点近傍に、樹脂粒子内部の空孔を集中させることで、上記スリップの抑制と、ニップ内放電の維持が可能であるとの知見を得た。すなわち、凸部を形成している樹脂粒子は、内部に空孔を有している。そして、樹脂粒子の全体の空孔率Vtは2.5体積%以下であり、かつ、「凸部頂点側領域」(すなわち、図3の符号106で示す領域)における空孔率V11を、5体積%以上20体積%以下とすれば、上記課題を解決できるとの知見を得たのである。
上記の樹脂粒子の空孔率の数値は、帯電部材の表面に形成された凸部頂点近傍、特に、感光体と帯電部材の表面の凸部との接触部に、空孔が集中して存在することを数値化したものである。なお、上記空孔率の測定方法については、後に詳述する。
前記樹脂粒子の全体の空孔率Vtは、2.5体積%以下である。本範囲内とすることにより、前記ニップ内放電の維持が可能になる。より好ましい範囲としては、2.0体積%以下である。これにより、前記ニップ内放電を、より容易に維持することが可能になる。また前記「凸部頂点側領域」における空孔率V11は、5体積%以上20体積%以下である。本範囲内とすることにより、前記スリップの抑制が可能になる。より好ましい範囲としては、5.5体積%以上15体積%以下である。これにより、上記スリップをより容易に抑制することが可能になる。
上記構成の帯電部材は、帯電部材の表面に存在する凸部頂点近傍のみが変形しやすく、感光体の表面との接触面積が拡大されている。これにより、当接圧力が緩和され、上記スリップの発生が抑制されることにより、上記傷の発生を抑制することができる。
これにより、ニップ内放電を維持しながら、感光体傷の発生を抑制することで、感光体融着による白ポチや、かぶりなどの画像欠陥を抑制することができると本発明者らは推察している。
一方、樹脂粒子全体の空孔率Vtは、上記「凸部頂点側領域」の空孔率よりも小さいため、帯電部材の凸部全体は変形しにくく、帯電部材と感光体とのギャップは維持される。これにより、ニップ内放電の発生が可能となる。本発明者らは、これらの効果により、ニップ内放電を維持しつつ、上記傷の発生を抑制することが可能になったと推察している。ここで、ニップ内放電強度を安定して維持するために、さらには、異常放電を発生させないために、前記表面層中の結着樹脂Cには、導電性粒子が分散されている必要があるとの知見も、同時に得た。
<導電性基体>
本発明に係る帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる導電性の表面層などを支持する機能を有するものである。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属やその合金を挙げることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理を施してもよい。さらに、導電性基体として、樹脂製の基材の表面を金属で被覆して表面導電性としたものや導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
<導電性の表面層>
〔結着樹脂C〕
本発明に係る帯電部材の導電性の表面層に用いる結着樹脂(バインダー樹脂)は、公知のゴムまたは樹脂を使用することができる。以下、帯電部材の表面層に用いる結着樹脂を「結着樹脂C」ともいう。ゴムとしては、例えば、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムを挙げることができる。
合成ゴムとしては例えば以下のものが挙げられる。エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびフッ素ゴム。
樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂がより好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら結着樹脂Cの原料である単量体を共重合させ、共重合体としてもよい。これらの中でも、結着樹脂Cは、上述した樹脂を使用することが好ましい。これは、感光体との密着性および摩擦性の制御を、より容易に行うことができるためである。
導電性の表面層は、プレポリマー化した結着樹脂Cの原料に架橋剤などを添加し、硬化または架橋することによって形成してもよい。本明細書においては、架橋剤などを含む上記混合物についても、以下、「結着樹脂C」と称して説明する。
〔樹脂粒子〕
本発明に係る帯電部材の表面層の凸部を形成している樹脂粒子は、前述の空孔率を有する多孔質の樹脂粒子である。樹脂粒子の材質としては、例えば以下の高分子化合物が挙げられる。アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体などの樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー。これらの高分子化合物からなる樹脂粒子は、結着樹脂Cへの分散が容易である。また、アクリル樹脂、スチレン樹脂、およびアクリルスチレン樹脂から選択される1種以上の樹脂を使用することがより好ましい。これは、多孔質の樹脂粒子を作製しやすいという観点、および、帯電部材の表面に凸部を形成した際、感光体との間に、ニップ内放電を発生させるための空隙を、すべての環境で維持しやすいという観点からである。樹脂粒子は、1種を使用しても、2種以上を組み合わせてもよく、また、表面処理、変性、官能基や分子鎖の導入、コーティングなどを施してもよい。
表面層中における樹脂粒子の含有量は、結着樹脂C100質量部に対して、2質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上80質量部以下がさらに好ましい。本範囲内とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
また、樹脂粒子の体積平均粒径は、10μm以上50μm以下が特に好ましい。本範囲内とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
帯電部材の表面層に含まれる樹脂粒子は、上述した空孔率の制御を行う必要がある。そのため、表面層に含まれる樹脂粒子の原料として、多孔質形状の樹脂粒子(以下、「多孔質粒子」と称す。)を使用することが好ましい。さらに、樹脂粒子の内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質粒子を使用することがより好ましい。後に詳述するが、このような多孔質粒子を使用することで、帯電部材の表面の凸部を形成している樹脂粒子に関して、上述した空孔率を容易に制御することが可能になる。
なお、本発明において、「多孔質粒子」とは、粒子表面に貫通する多数の細孔を有する粒子であると定義する。以下に、本発明の多孔質粒子について詳細に説明する。
[多孔質粒子]
多孔質粒子の材質としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂などを例示することができる。これらの樹脂は、単独で、または、2種以上を用いることができる。また、これらの樹脂の原料となる単量体を共重合させ、共重合体としても用いてもよい。さらに、これらの樹脂を主成分として、必要に応じてその他公知の樹脂を含有してもよい。
本発明の多孔質粒子は、製懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法、ならびに、樹脂溶液に樹脂の溶解度を低下させる溶質や溶媒を添加し析出させる方法などの公知の製法により作製することができる。例えば、懸濁重合法においては、架橋性単量体の存在下、重合性単量体に多孔化剤を溶解し、油性混合液を作製する。この油性混合液を用いて界面活性剤や分散安定剤を含有する水性媒体中で水性懸濁重合を行い、重合終了後、洗浄、乾燥工程を行うことで水および多孔化剤を取り除き、樹脂粒子を得ることができる。なお、重合性単量体の官能基と反応する反応性基を有する化合物、有機フィラーなどを添加することもできる。また、多孔質粒子の内部に空孔を形成するために、架橋性単量体の存在下に重合を行うことが好ましい。
重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロフルフリル、メタクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなど。これらの重合性単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。なお、本発明において、用語「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの両方を含む概念である。
架橋性単量体としては、ビニル基を複数個有するものであれば特に限定されず、以下のものを例示することができる。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体。これらは単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。
架橋性単量体は、単量体中において5質量%以上90質量%となるように使用するのが好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子の内部に確実に空孔を形成することが可能になる。
多孔化剤としては、非重合性溶媒や、重合性単量体の混合物に溶解する直鎖状ポリマーと非重合性溶媒との混合物や、セルロース樹脂を使用することができる。非重合性溶媒としては、以下のものを例示することができる。トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルヘキサン、ノルマルオクタン、ノルマルドデカン。セルロース樹脂としては、特に限定されないが、エチルセルロースなどを挙げることができる。これらの多孔化剤は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。多孔化剤の添加量は使用目的に応じ適宜設定することができるが、重合性単量体、架橋性単量体および多孔化剤からなる油相100質量部中において、20質量部から90質量部の範囲で使用するのが好ましい。本範囲内とすることにより、多孔質粒子がもろくなりにくく、帯電部材と感光体とのニップにおいて空隙を形成しやすくなる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、重合性単量体に可溶なものが好ましい。公知のパーオキサイド開始剤およびアゾ開始剤などを使用でき、以下のものを例示することができる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルおよび2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル。
界面活性剤としては、以下のものを例示することができる。ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩などのカチオン性界面活性剤;アジピン酸ジエタノールアミン縮合物、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩などのノニオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどの両性界面活性剤;ポリビニルアルコール、デンプン、および、カルボキシメチルセルロースなどの高分子型分散剤。
分散安定剤としては、以下のものを例示することができる。ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリアクリル酸微粒子、ポリエポキシド微粒子などの有機微粒子;コロイダルシリカなどのシリカ;炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム。
上記重合法のうち、特に、懸濁重合法の具体的な一例について、下記に示す。懸濁重合は、耐圧容器を用い、密閉下で行うことが好ましく、重合前に原料成分を分散機などで懸濁してから、耐圧容器に移して懸濁重合してもよく、耐圧容器内で懸濁させてもよい。重合温度は、50℃〜120℃がより好ましい。重合は、大気圧下で行ってもよいが、多孔化剤を気体状にさせないようにするため加圧下(大気圧に0.1〜1MPaを加えた圧力下)で行うことが好ましい。重合終了後は、遠心分離や濾過などによって、固液分離および洗浄などを行ってもよい。固液分離や洗浄の後、樹脂粒子を構成する樹脂の軟化温度以下にて乾燥や粉砕してもよい。乾燥および粉砕は、公知の方法により行うことができ、気流乾燥機、順風乾燥機およびナウターミキサーを使用できる。また、乾燥および粉砕は粉砕乾燥機などによって同時に行うこともできる。界面活性剤および分散安定剤は、製造後に洗浄濾過などを繰り返すことにより除去することができる。
多孔質粒子の粒径は、重合性単量体や多孔化剤からなる油性混合液と界面活性剤や分散安定剤を含有する水性媒体との混合条件や、分散安定剤などの添加量、撹拌分散条件により調整することができる。分散安定剤の添加量を増加させることで、平均粒径を下げることができる。また、撹拌分散条件において、撹拌速度を上げることで、多孔質粒子の平均粒径を下げることが可能である。本発明の多孔質粒子の体積平均粒径は、5〜60μmの範囲内であることが好ましい。さらには、10〜50μmの範囲内であることがより好ましい。本範囲内とすることで、上記ニップ内放電をより安定して発生させることができる。
また、多孔質粒子の細孔径は、架橋性単量体の添加量、多孔化剤の種類や添加量により調整することができる。多孔化剤の添加量を増加させる、および、架橋性単量体の添加量を減少させる方向が、細孔径を大きくする方向である。また、細孔径をさらに大きくする場合、多孔化剤としてセルロース樹脂を用いることが好ましい。
多孔質粒子における細孔径は、10〜500nm、かつ、樹脂粒子の平均粒径に対して20%以下の範囲内であることが好ましい。さらには、細孔径は20〜200nm、かつ、樹脂粒子の平均粒径に対して10%以下の範囲内であることがより好ましい。本範囲内とすることで、帯電部材と感光体とのニップにおいて空隙を形成しやすくなり、安定したニップ内放電を行うことができる。安定したニップ内放電を行うことができると、ベタ黒画像などを出力したときに、面内での濃度の均一性も向上する傾向にあり、その結果、繰り返し使用初期および繰り返し使用後半での画像濃度も比較的高めに維持することができる傾向にある。
なお、2種類の多孔化剤を使用する、特に、溶解度パラメーター(以下、「SP値」と称す。)に差のある2種類の多孔化剤を使用することにより、粒子の内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質粒子を作製することができる。
具体的な一例として、多孔化剤に、ノルマルへキサンと酢酸エチルを使用した場合を例にして以下説明する。上記2種の多孔化剤を使用した場合、重合性単量体および多孔化剤を混合した油性混合液を水性媒体に投入すると、水とSP値の近い酢酸エチルが、水性媒体側、すなわち、懸濁液滴の外層部に多く存在することになる。一方、液滴の内層部には、ノルマルへキサンがより多く存在する。液滴の外層部に存在する酢酸エチルは、水とSP値が近いため、酢酸エチル中に、ある程度の水が溶解することになる。この場合、液滴の内層部と比較して液滴の外層部においては、重合性単量体に対する多孔化剤の溶解性が低下し、重合性単量体と多孔化剤とが、内層部と比較して分離しやすい状態になっている。すなわち、上記液滴の外層部においては、多孔化剤が、内層部と比較してより大きな塊で存在しやすい状態となる。このように、液滴の内層部と外層部で、多孔化剤の存在が異なるように制御した状態で、前述した重合反応、さらに後処理などを行う。そうすることにより、上述した粒子の内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質粒子を作製することができる。
従って、2種類の多孔化剤のうちの1種類を、媒体である水とのSP値の差が小さいものとすることで、多孔質粒子の外層部の空孔径を大きく、且つ、空孔率を大きくすることができる。上記手段に使用する好ましい多孔化剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸部チル、アセトン、および、メチルエチルケトンが例示できる。一方で、もう1種類として、重合性単量体の溶解性が高く、水とのSP値の差が大きい多孔化剤を使用することで、多孔質粒子の内層部の空孔径を小さく、且つ、空孔率を小さくすることができる。上記手段に使用する好ましい多孔化剤としては、ノルマルへキサン、ノルマルオクタン、および、ノルマルドデカンが例示できる。
本発明においては、帯電部材の表面層の凸部頂点近傍のみに、空孔を集中して存在させることを目的として、粒子の内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質粒子を使用することが好ましい。
この観点から、水とのSP値の差が小さい多孔化剤は、多孔化剤全体100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。より好ましくは、15〜25質量部の範囲内である。
なお、本発明の空孔率制御のために使用する、内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質粒子について、図4を用いて説明する。まず、多孔質粒子201を中実粒子であると仮定した際に、粒子半径rおよび粒子中心108を算出する。そして、該中心108から凸部頂点側に向かい、粒子半径rの(√3)/2倍移動した位置、例えば109を算出する。粒子外周に対して均などに配置するよう、点109と同様にして100箇所の点を算出し、これらの点(位置)を直線で結んだ仮想線114を算出する。内層部とは、この仮想線114より粒子中心108側の領域、すなわち、112の領域(斜線部)と定義し、外層部とは、粒子半径rの(√3)/2倍移動した位置109より外側の領域、すなわち、111の領域と定義する。各パラメーターの測定方法は、後に詳述する。
上記粒子において、内層部の空孔率は、5体積%以上35体積%以下であることが好ましく、内層部の平均空孔径は、10nm以上45nm以下であることが好ましい。また、外層部の空孔率は、10体積%以上55体積%以下であることが好ましく、外層部の平均空孔径は、30nm以上200nm以下であることが好ましい。本範囲内とすることにより、上述した帯電部材の表面層の凸部を形成している樹脂粒子の「凸部頂点側領域」の空孔率V11の制御をより容易に行いやすくなる。
〔導電性粒子〕
本発明の導電性の表面層は、導電性を発現するため、公知の導電性粒子を含有する。導電性粒子としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀などの金属系の微粒子や繊維;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物。また、前記の金属系微粒子、繊維および金属酸化物の表面を、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子。また、カーボンブラック、および、カーボン系微粒子。カーボンブラックとしては、ブラックファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック。
ファーネスブラックとしては、例えば以下のものが挙げられる。SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HSを例示することができる。サーマルブラックとしては、FT、および、MT。カーボン系微粒子としては、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン粒子、および、ピッチ系カーボン粒子を例示することができる。
また、列挙した導電性粒子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。導電性の表面層中における導電性粒子の含有量は、結着樹脂C100質量部に対して2質量部から200質量部、好ましくは5質量部から100質量部の範囲が適当である。
導電性粒子は、その表面を表面処理してもよい。表面処理剤としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、およびポリシロキサンなどの有機ケイ素化合物;シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコネート系の各種カップリング剤;オリゴマーまたは高分子化合物が使用可能である。これらは一種で使用しても、二種以上を用いてもよい。好ましくは、アルコキシシラン、ポリシロキサンなどの有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系またはジルコネート系の各種カップリング剤であり、さらに好ましくは、有機ケイ素化合物である。
〔表面層の形成方法〕
表面層の形成方法としては、静電スプレー塗布、ディッピング塗布、またはロール塗布のような塗布法により導電性基体上に導電性樹脂組成物の層を形成し、乾燥、加熱、架橋などによってこの層を硬化させる方法が挙げられる。また、導電性樹脂組成物を所定の膜厚に成膜し硬化させたシート形状またはチューブ形状の層を導電性基体に対して接着または被覆する方法が挙げられる。さらに、導電性基体を配置した型の中に導電性樹脂組成物を入れて硬化させて表面層を形成することができる。これらの中でも、帯電部材の表面層の凸部における空孔率を制御し、均一な表面層を形成するため、静電スプレー塗布、ディッピング塗布、ロール塗布により表面層を形成する方法が好ましい。
また、これらの塗布法を使用する場合、結着樹脂C中に、導電性粒子、および、多孔質粒子を分散した「表面層用の塗布液」を作成し、導電性基体の表面に塗布を行うことが好ましい。さらには、上記空孔率の制御をより容易なものにするため、塗布液には、溶剤を使用することが好ましい。特に、上記結着樹脂Cを溶解することが可能であり、前記多孔質粒子と親和性の高い、極性溶剤を使用することが好ましい。
このような極性溶剤としては、具体的には以下のものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類。
なお、上記塗布液に、結着樹脂C、導電性粒子、多孔質粒子を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルなどの溶液分散手段を用いることができる。
そして、上述したように、多孔質粒子としては、内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きいものを使用することが好ましい。
上記の手法により表面層を形成した場合、帯電部材の表面の凸部において、上記空孔率の制御がより容易になる理由を、図7を用いて下記に説明する。
図7(7a)は、導電性基体の表面に、表面層用の塗布液を上記の方法により塗布して塗膜303を形成した直後の状態を示す模式図である。塗膜303は、溶剤、結着樹脂C、導電性粒子、および、多孔質粒子300を含有しており、多孔質粒子は、内層部領域301と外層部領域302により形成されている。そして、多孔質粒子においては、内層部領域の空孔率よりも外層部領域の空孔率が大きく、内層部領域の空孔径よりも外層部領域の空孔径が大きい状態を示している。なお、上記状態において、多孔質粒子の空孔内部には、少なくとも溶剤および結着樹脂Cが均等に浸透していると推察される。そして、上記塗布液を導電性基体の表面に塗布した直後より、塗布液の表面側から溶剤の揮発が進行する。この際、溶剤の揮発は図7(7b)の304で示す方向に進行するため、塗膜303の表面側は、結着樹脂Cの濃度が高まってくる。塗膜303の内部では、溶剤と結着樹脂Cとの濃度を一定に維持しようとする力が働き、塗膜中の結着樹脂Cは、305で示す方向に流れることになる。
一方、多孔質粒子の内層部領域301は、外層部領域302よりも空孔径が小さく、且つ、空孔率が小さいため、内層部領域における溶剤および結着樹脂Cの移動速度は、外層部領域における溶剤および結着樹脂Cの移動速度よりも遅い。従って、結着樹脂Cは、305の方向に移動するものの、多孔質粒子の内層部領域と外層部領域における移動速度の差により、内層部領域における結着樹脂Cの濃度よりも、外層部領域における結着樹脂Cの濃度が高い状態が発生する。図7(7c)は、内層部領域301と比較し、外層部領域302において、結着樹脂Cの濃度が高い状態を示している。
そして上記濃度差がある状態になった後、多孔質粒子の内層部領域と外層部領域の結着樹脂Cの濃度差を緩和する方向に、結着樹脂Cの流れ306が発生する。そして、溶剤の揮発は常に303の方向に進行しているため、多孔質粒子の内層部領域と比較して、外層部領域の結着樹脂C濃度が低下する状態、すなわち、(7d)に示す状態へと変化していく。
上記図7(7d)の状態において、使用している溶剤の沸点以上の温度で、塗膜を、乾燥、硬化、または、架橋などを行う。そうすることにより、多孔質粒子の外層部領域302に残存した溶剤が、一気に揮発し、最終的に、多孔質粒子の外層部領域に空孔307を形成することができる。
一方、上記図7(7d)の状態において、内部層部領域の空孔内に存在した溶剤は、外層部に完全に移動せず、一部は、内層部に残存する場合がある。この場合、溶剤の揮発により、内層部に空孔が形成される。また、多孔質粒子内層部において、多孔質粒子表面に貫通していない細孔が存在する場合には、結着樹脂Cが浸透せず、空孔が形成された状態が維持される。
上記手法を用いることにより、上述した帯電部材の凸部の空孔率の制御を確実に行うことが可能になると本発明者らは考察している。そして、上記制御をより容易に行うため、多孔質粒子の内層部領域と外層部領域の空孔率および空孔径の比率を制御することがより好ましい。すなわち、内層部の空孔率に対し、外層部の空孔率は、1.5倍以上3倍以下とすることが好ましく、且つ、内層部の空孔径に対し、外層部の空孔径は、2倍以上10倍以下とすることが好ましい。また、上記溶剤の流れを制御するため、多孔質粒子と親和性の高い、前述した極性溶剤を使用することが好ましい。上記の溶剤の中でも、ケトン類、および、エステル類を使用することがさらに好ましい。
そして、表面層用の塗布液を塗布した後の、乾燥、硬化、または、架橋などの工程は、温度および時間を制御することが好ましい。温度および時間を制御することにより、上述した溶剤および結着樹脂Cの移動速度を制御することが可能になる。そして、具体的に、塗膜形成後の工程は、三段階以上とすることが好ましい。以下、塗膜形成後の工程を三段階とした場合の状態を詳細に説明する。
一段階目は、塗膜形成後に、室温雰囲気下で、15分間以上1時間以下放置することが好ましい。これにより、前述した図7(7b)の状態を緩やかに形成することが容易になる。
二段階目は、室温以上の温度、かつ使用する溶剤の沸点以下の温度で、15分間以上1時間以下放置することが好ましい。使用する溶剤の種類によって若干の違いは見られるものの、具体的には、40℃以上100℃以下に制御し、30分間以上50分間以下放置することがより好ましい。そして、この二段階目により、図7(7c)の溶剤揮発速度が大きくなり、多孔質粒子の内層部領域301の結着樹脂Cの濃度を高める制御を、より容易に行うことができる。
そして、三段階目は、溶剤の沸点以上の温度における、乾燥、硬化、または、架橋の工程である。この際、二段階目と三段階目の温度は、急激に昇温させて制御することが好ましい。これにより、凸部頂点近傍に空孔を形成しやすくなる。具体的には、同一の乾燥炉内での温度制御ではなく、二段階目と三段階目の乾燥炉は、別の装置、あるいは、別エリアとすることが好ましく、装置あるいはエリアの移動は、できる限り短い時間とすることが好ましい。
すなわち、本発明に係る帯電部材の表面層の形成方法としては、以下の工程(1)と工程(2)を有する方法が挙げられる。
(1)導電性基体の表面、または、該導電性基体上に形成した他の層の表面に、結着樹脂C、溶剤、導電性粒子、および、多孔質粒子を含む表面層用の塗布液の塗膜を形成する工程、
(2)該塗膜中の溶剤を揮発させて表面層を形成する工程。
工程(2)は、塗膜中の溶剤を揮発させる過程で、以下の工程(3)と工程(4)とを有することが好ましい。
(3)多孔質粒子の空孔中に浸透した溶剤を結着樹脂Cに置換させる工程、
(4)塗膜を溶剤の沸点以上の温度で乾燥する工程。
また、前記多孔質粒子は、内層部の空孔率よりも外層部の空孔率が大きく、且つ、内層部の空孔径よりも外層部の空孔径が大きい多孔質形状の樹脂粒子であることが好ましい。
上記製法によって得られる帯電部材の表面層の「凸部頂点側領域」における「樹脂粒子」の空孔径は、原料である「多孔質粒子」の外層部が有する平均の空孔径よりも大きくなる場合が多い。これは、多孔質粒子の外層部に存在する空孔のうち、比較的大きな空孔が、溶剤の揮発により、空孔を形成しやすいためであると推測している。
帯電部材の表面層の「凸部頂点側領域」における「樹脂粒子」の空孔径は、平均空孔径で、30nm以上200nm以下の範囲内であることが、好ましい。より好ましくは、60nm以上150nm以下である。本範囲内とすることにより、上記ニップ内放電の維持と、感光体の傷の発生抑制を、より容易に行うことができる。
上記表面層の形成方法の具体的な一例を下記に示す。
まず、結着樹脂Cに多孔質粒子以外の分散成分(例えば導電性粒子および溶剤)を直径0.8mmのガラスビーズとともに混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて5時間から60時間かけて分散処理する。次いで、多孔質粒子を添加して、さらに分散処理する。分散時間としては2分間以上30分間以内が好ましい。ここで、多孔質粒子が粉砕されない条件であることが必要である。その後、この分散液の粘度を3〜30mPa、より好ましくは3〜20mPaになるように調整して表面層用の塗布液を得る。次いで、ディッピングなどにより導電性基体の上に、表面層用の塗布液の塗膜を形成する。塗膜の厚みは、乾燥後の膜厚が0.5〜50μm、より好ましくは1〜20μm、特に好ましくは1〜10μmとなるようすることが好ましい。
表面層の膜厚は、帯電部材の断面を鋭利な刃物で切り出して光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して測定することができる。帯電部材の長手方向において任意の3点、さらに、周方向に3点の計9点において測定を行い、その平均値をもって膜厚とする。膜厚が厚い場合、すなわち、塗布液の溶剤量が少ない場合、溶剤の揮発速度が遅くなり、空孔制御が困難になる場合がある。従って、塗布液の固形分濃度は、比較的小さくすることが好ましい。塗布液に対して、溶剤の占める割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは、50質量%以上、特には、60質量%以上とすることが好ましい。
塗布液の比重としては、0.8000以上1.200以下に調整することが好ましく、0.8500以上1.000以下がより好ましい。本範囲内とすることで、多孔質粒子の内層部の空孔中と外層部の空孔中への結着樹脂Cの浸透を所望の速度に制御しやすくなるためである。
〔その他の材料〕
本発明の導電性の表面層は、前記の導電性微粒子に加え、絶縁性粒子を含有してもよい。
絶縁性粒子を構成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタンなど)、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、タルク、カオリンクレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリナイト、中空ガラス球、有機金属化合物および有機金属塩。また、フェライト、マグネタイト、ヘマタイトなどの酸化鉄類や活性炭も使用することができる。
導電性の表面層には、さらに、離型性を向上させるために、離型剤を含有させてもよい。導電性の表面層に離型剤を含有させることで、帯電部材の表面に汚れが付着することを防ぎ、帯電部材の耐久性を向上させることができる。離型剤が液体の場合は、導電性の表面層を形成する際にレベリング剤としても作用する。
導電性の表面層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物を表面に付着および/または含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
〔体積抵抗率〕
本発明の導電性の表面層の体積抵抗率は、温度23℃、相対湿度50%の環境において、1×102Ω・cm以上1×1016Ω・cm以下であることが、好ましい。本範囲内とすることで、感光体を、放電により適切に帯電することが、より容易になる。
導電性の表面層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、帯電部材から、導電性の表面層を、縦5mm、横5mm、厚さ1mm程度の短冊形に切り出す。得られた試験片の両面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。導電性の表面層が薄膜で切り出せない場合には、アルミニウム製シートの上に表面層用の塗布液を塗布して塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて微小電流計(商品名:ADVANTESTR8340AULTRAHIGHRESISTANCEMETER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。導電性の表面層の体積抵抗率は、前述した導電微粒子により調整することができる。
また、導電性粒子は、平均粒径が0.01μmから0.9μmがより好ましく、0.01μmから0.5μmであることがさらに好ましい。この範囲内であれば、表面層の体積抵抗率の制御が容易になる。
<導電性の弾性層>
本発明に係る帯電部材には、導電性基体と導電性の表面層との間に、導電性の弾性層を形成してもよい。導電性の弾性層に使用する結着材料(バインダー材料)としては、公知のゴムまたは樹脂を使用することができる。帯電部材と感光体との間で十分なニップを確保するという観点から、比較的低い弾性を有することが好ましく、ゴムを使用することがより好ましい。ゴムとしては、例えば、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムを挙げることができる。
合成ゴムとしては、例えば以下のものが挙げられる。エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびフッ素ゴム。
導電性の弾性層は、その体積抵抗率が、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、102Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。導電性の弾性層の体積抵抗率は、バインダー材料中に、前述した導電性微粒子、イオン導電剤を適宜添加して、調整することができる。イオン導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムなどの無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートなどの陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインなどの両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩;および、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどの有機酸リチウム塩。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
バインダー材料が極性ゴムである場合は、特に、アンモニウム塩を用いることが好ましい。また、導電性の弾性層には、導電性微粒子の他に硬度などを調整するために、軟化油、可塑剤などの添加剤や、上述の絶縁性粒子を含有させてもよい。導電性の弾性層は、接着剤により導電性基体や導電性の表面層に接着して設けることもできる。接着剤としては導電性のものを用いることが好ましい。
なお、導電性の弾性層の体積抵抗率は、導電性の弾性層に使用する材料を厚さ1mmのシートに成型し、その両面に金属を蒸着して得た体積抵抗率測定試料を用いて、上記表面層の体積抵抗率の測定方法と同様にして測定できる。
<帯電部材>
本発明に係る帯電部材は、導電性基体と導電性の表面層を有するものであればよく、その形状も、ローラー状、平板状などいずれであってもよい。以下において、帯電部材の一例としての、帯電ローラーによって帯電部材を詳細に説明する。
導電性基体は、その直上の層と、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系の公知のものを用いることができる。接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、前記導電性微粒子、イオン導電剤から適宜選択し、単独でまた2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の帯電ローラーは、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗値が、温度23℃、相対湿度50%の環境中において、1×103Ω以上1×1010Ω以下であることがより好ましい。
一例として、図8に帯電ローラーの電気抵抗値の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受け33により感光体と同じ曲率の円柱形金属32に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラー5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。このときに流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラーの電気抵抗値を計算する。本発明において、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secとされる。
本発明の帯電ローラーは、感光体に対して、長手方向のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向中央部が一番太く、長手方向両端部にいくほど細くなるクラウン形状が好ましい。クラウン量は、中央部の外径と中央部から両端部へ各90mm離れた位置の外径との差(平均値)が、30μm以上200μm以下であることが好ましい。
帯電部材の表面の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型タイプA)で90°以下が好ましく、より好ましくは、40°以上80°以下である。本範囲内とすることにより、感光体との当接を安定させることが容易となり、より安定したニップ内放電を行うことができる。なお、「マイクロ硬度(MD−1型タイプA)」とは、アスカーマイクロゴム硬度計MD−1型タイプA(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度である。具体的には、常温常湿(温度23℃、相対湿度55%)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
帯電部材の表面の十点平均表面粗さ(Rzjis)は、8μm以上100μm以下が、好ましい。より好ましくは、12μm以上60μm以下である。また、表面の凹凸平均間隔(RSm)は、20μm以上300μm以下、より好ましくは、50μm以上200μm以下である。本範囲内とすることにより、感光体とのニップにおいて空隙を形成しやすくなり、安定したニップ内放電を行うことができる。
なお、十点平均表面粗さおよび凹凸平均間隔は、JISB0601−1994表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。十点平均表面粗さは、帯電部材を任意に6箇所測定し、その平均値である。また、平均凹凸間隔は、前記任意の6点の各箇所において10点の凹凸間隔を測定してその平均値を求め、「6箇所の平均値」の平均値として算出する。測定に際し、カットオフ値は0.8mm、評価長さは8mmに設定する。
ここで、感光体融着、および、繰り返し使用後半にかぶりが悪化しやすい要因について述べる。
長期間の耐久試験(繰り返し使用)を実施すると、トナーはブレードニップによる摺擦によりストレスを受け、外添剤が埋めこまれることで、繰り返し使用初期と繰り返し使用後期で流動性などのトナー物性変化が異なる、いわゆる「トナー劣化」が生じる。
また、小型化に対応して、現像スリーブを小径化した場合には、チャージアップしたトナーが生じやすく、帯電が不均一になりやすい。
これにより、例えば、非画像領域へのかぶりといった画像欠陥を引き起こしやすくなるだけでなく、トナーと他の部材との付着力が高まることによる、様々な課題が発生しやすくなる。
例えば、チャージアップしたトナーが現像スリーブ上に留まることにより、画像濃度が低下しやすくなる。また、感光体に傷がついてしまった場合などは、付着力の高いトナーが傷周辺に融着(感光体融着)することで、感光体の回転周期でベタ黒画像に白ポチ画像が発生する場合がある。
また、上述のように、長期間繰り返し使用により、ストレスを受けて劣化したトナーは、流動性が悪いため、ブレードニップ内での循環性が悪く、トナー全体が適正に摩擦帯電されにくくなり、帯電が不均一となりやすい。特に、トナーの流動性が低下しやすい高温高湿環境において、この現象は顕著となる。
この状態で、しばらく放置された後に画出しすると、かぶりが悪化しやすい。
本発明者らは、上述のような特定の帯電部材と、以下に述べる特定のトナーを搭載したプロセスカートリッジを用いることで、はじめて上記の課題が格段に改善できることを見出した。
本発明におけるトナーについて説明する。
上記のような課題を引き起こさないためには、トナーの劣化を抑制し、同時にチャージアップを抑制し、なおかつ感光体とトナーの付着力を低減することが重要である。
本発明に係るトナーは、X線光電子分光装置(ESCA)により求めた、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下である。さらに、シリカ微粒子による理論被覆率をX2としたとき、下記式1で示される拡散指数が下記式2を満足することが重要である。
(式1)拡散指数=X1/X2
(式2)拡散指数≧−0.0042×X1+0.62
上記被覆率X1の算出方法については後述する。
被覆率X1は、好ましくは、45.0面積%以上70.0面積%以下であり、より好ましくは、45.0面積%以上68.0面積%以下である。
被覆率X1および拡散指数が上記範囲にあるとき、トナーの部材への付着力が低減しやすく、すなわち、感光体に対する付着力が低くなりやすく、さらに下記に示すように、ブレードニップ内でのトナー循環性も高まりやすい。
すなわち、長期間繰り返し使用をしても、トナーの流動性および帯電性を良好な状態に維持しやすい。
上述のような均一帯電やチャージアップ抑制が、トナーが劣化した場合にも、適正に行われるためには、ブレードニップにおける摺擦が、繰り返し使用後期においても、トナー一粒一粒に行われるよう、トナーがほぐれやすいことが重要である。
本発明者らは、この「トナーが劣化した際にも、ブレードニップ内のような圧密状態においても、トナーが一粒一粒にほぐれやすくなる現象」には、上述の被覆率および拡散指数が密接に関係していることを見出した。この理由については後述する。
すなわち、本発明に係るトナーは、部材への付着力が低く、圧密状態でもほぐれやすいため、流動性が低下しやすい高温高湿環境であったり、繰り返し使用後半であったりしても、ブレードニップ内でトナーが循環しやすく、優れた帯電均一性を維持しやすい。
そのような本発明に係る帯電部材により、感光体が均一に帯電され、傷の発生が抑制された状態で、本発明に係るトナーを使用する。すると、トナーの帯電均一性が不利な状況においても、各段にかぶりや、感光体融着に伴う画像結果が大幅に抑制することが初めて可能となる。
ここで、被覆率X1が40.0面積%未満のとき、トナーのほぐれやすさを十分に得られにくくなる。また、付着力が高くなりやすく、トナーの帯電均一性や付着性低減効果が不十分となり、評価条件によっては、かぶりや感光体融着に伴う画像欠陥が発生しやすい。
一方、被覆率X1が75.0面積%を超える場合には、低温定着性を阻害しやすい傾向にある。
ここで、シリカ微粒子による理論被覆率X2は、トナー粒子100質量部あたりのシリカ微粒子の質量部数、およびシリカ微粒子の粒径などを用い、下記式4より算出される。これはトナー粒子表面を理論的に被覆できる面積の割合を示す。
(式4)理論被覆率X2(面積%)=31/2/(2π)×(dt/da)×(ρt/ρa)×C×100
da:シリカ微粒子の個数平均粒径(D1)。
dt:トナーの重量平均粒径(D4)。
ρa:シリカ微粒子の真比重。
ρt:トナーの真比重。
C:シリカ微粒子の質量/トナーの質量(=シリカ微粒子の質量部数/(シリカ微粒子の質量部数+100)。
(Cは後述するトナー中のシリカ微粒子の含有量を用いる。)
また、本発明においては、トナー粒子への外添剤の埋め込み率が25%以上60%以下であることが好ましい。より好ましくは、30%以上55%以下である。上述のように、被覆率と拡散指数を制御するとともに、埋め込み率を上記範囲とすることで、大幅にトナーと部材の付着力を低減させやすい。
この理由は定かではないが、本発明者らは次のように考えている。
感光体や現像ブレードおよび現像スリーブなどの部材とトナーの付着力を低減するには、部材とトナー粒子の間に、無機微粒子である外添剤が介在することが非常に重要となる。
上述のように、高度に均一拡散した外添剤が、ある特定の状態で埋めこまれていることにより、トナー粒子表面の状態がより均一化されると考えられる。その結果、トナーと感光体が接触した際に、外添剤が介在する確率を最大限に高くできるため、トナーと部材との付着力が大幅に低減できると考えられる。
例えば、凝集体の状態で埋め込み率だけを制御したとしても、凝集体の一部の外添剤は完全に埋没していたり、またある一部の外添剤は全く埋没せずに存在することになる。
すると、埋没していない部分がトナー粒子表面で動くなどして、外添剤の付着していない部分が露出し、トナーと部材とが直接接触することになる確率が高くなる。その結果、トナーと部材との付着力を低減させにくい。
一方、本発明のように、一定以上の被覆率を有し、拡散指数を制御した状態だとしても、外添剤の埋め込み率が25%未満の場合、繰り返し使用試験において、トナーにシェアがかかった場合に、外添剤が脱離しやすい傾向にある。
逆に、外添剤の埋め込み率が60%を超える場合は、トナーの循環性が低下しやすい傾向にある。
外添剤の埋め込み率は、以下の式により算出する。
(式5)外添剤の埋め込み率(%)=100−(Bt−Bm)/Br×100
Bt:トナーのBET比表面積。
Bm:トナー粒子のBET比表面積。
Br:トナーに外添剤を単に添加した場合に上昇するBET比表面積の理論値。
(BET比表面積とは、BET法で測定した窒素吸着による比表面積(m2/g)である。)
(式6)Br=外添剤1のBET比表面積(B1)×外添剤1の質量部数/100+外添剤2のBET比表面積(B2)×外添剤2の質量部数/100+・・・外添剤nのBET比表面積(Bn)×外添剤nの質量部数/100。
(本発明においては、外添剤としてシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子を用いるため、外添剤1および2として、それぞれのBET比表面積および質量部数を用いる。)
上記BET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行う。測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。
上記式1で示される拡散指数の物理的な意味を以下に示す。
拡散指数は、実測の被覆率X1と理論的な被覆率X2の乖離を示す。この乖離の程度は、トナー粒子表面から垂直方向に二層、三層と積層したシリカ微粒子の多さを示すと考えている。理想的には拡散指数は1になるが、これは、被覆率X1が理論被覆率X2と一致した場合であり、二層以上積層したシリカ微粒子が全く存在しない状態である。一方、シリカ微粒子が、凝集体としてトナー表面に存在すると、実測の被覆率と理論的な被覆率の乖離が生じ、拡散指数が低くなる。つまり、拡散指数は、凝集体として存在するシリカ微粒子の量を示すと言い換えることもできる。
本発明において、拡散指数は、上記式2で示される範囲であることが重要であり、この範囲は従来の技術で製造されるトナーよりも大きいと考えている。拡散指数が大きいということは、トナー粒子表面のシリカ微粒子のうち、凝集体として存在している量が少なく、一次粒子として存在する量が多いことを示す。なお、上述したとおり、拡散指数の上限は1である。
被覆率X1、および、拡散指数が式2で示される範囲を同時に満たした場合、加圧時のトナーのほぐれやすさが大幅に改善できることを本発明者らは見出した。
これまで、トナーのほぐれやすさは、数nm程度の小粒径の外添剤を多量に外添して被覆率X1を上げることで、向上すると考えられてきた。一方、本発明者らの検討によると、被覆率X1を同じにして、拡散指数の異なるトナーのほぐれやすさを測定した場合、トナーのほぐれやすさに差が生じることが明らかとなった。さらに、加圧しながらほぐれやすさを測定した場合、さらに顕著な差が見られることも明らかとなった。
特に、ブレードニップにおけるトナーの挙動をより反映するのは、加圧時のトナーのほぐれやすさであると本発明者らは考えている。このため、加圧時のトナーのほぐれやすさをより緻密に制御するために、被覆率X1に加えて拡散指数も非常に重要であると本発明者らは考えている。
被覆率X1、および、拡散指数が式2で示される範囲を同時に満たした場合、トナーのほぐれやすさが良好になる理由について、詳細は分かっていないが、本発明者らは次のように推測している。
トナーがブレードニップのような狭く圧の高い場所に存在するとき、トナー同士は表面に存在する外添剤同士が衝突しないように、「噛みあわせ」の状態になりやすいことに起因すると考えている。このとき、凝集体として存在しているシリカ微粒子が多いと、噛みあわせの影響が大きくなりすぎてしまい、迅速にトナー同士をほぐすのが困難になってしまう。
特に、トナーが劣化した際には、少なからず、シリカ微粒子がトナー粒子表面に埋没してしまい、トナーの流動性が低下する。そのときに、埋没していない凝集体として存在するシリカ微粒子同士による噛みあわせの影響が大きくなり、トナーのほぐれやすさを阻害すると推察される。
本発明に係るトナーは、多くのシリカ微粒子が一次粒子として存在するため、トナーが劣化した際にも、トナー同士の噛み込みが発生しづらく、ブレードニップで摺擦を受けた際に、一粒一粒へ非常にほぐれやすい。すなわち、従来の被覆率X1の制御だけでは困難であった「トナーのほぐれやすさ」を劇的に改善することが可能となった。
そのため、従来のトナーでは、ストレスを受けて劣化したトナーは、ブレードニップ内での循環性が悪く、トナー全体が適正に摩擦帯電されにくくなり、転写残トナーが多くなりやすかったが、本発明に係るトナーにおいてはその課題が解消された。
すなわち、本発明に係るトナーにおいては、劣化が抑制されると同時に、劣化した場合でも、トナーのほぐれやすさを維持することができると同時に、現像ブレードや現像スリーブとの付着力も低減しているため、ブレードニップ内でよくトナーが循環する。
その結果、トナー全体が適正に帯電されることになり、不均一な帯電やチャージアップに伴う課題が大幅に改善することができる。
本発明における拡散指数の境界線は、被覆率X1が40.0面積%以上75.0面積%以下の範囲において、被覆率X1を変数とした関数である。この関数の算出は、シリカ微粒子、外添条件などを変化させて、被覆率X1と拡散指数を得た際、トナーが加圧時に十分にほぐれやすくなる現象から、経験的に得たものである。
図12は、3種の外添混合条件を用いて、添加するシリカ微粒子の量を変えて被覆率X1を任意に変化させたトナーを製造し、被覆率X1と拡散指数の関係をプロットしたグラフである。このグラフにプロットしたトナーのうち、式2を満足する領域にプロットされるトナーは、加圧時のほぐれやすさが十分に向上することが分かった。
ここで、拡散指数が被覆率X1に依存する理由に関して、詳細は分かっていないが、本発明者らは次のように推測している。加圧時のトナーのほぐれやすさを改善するためには、二次粒子として存在しているシリカ微粒子の量が少ない方が良いが、被覆率X1の影響も少なからず受ける。被覆率X1が増加するにつれて、トナーのほぐれやすさが徐々に良好になるため、二次粒子として存在するシリカ微粒子の量の許容量が増えることになる。このように、拡散指数の境界線は、被覆率X1を変数とした関数になると考えている。すなわち、被覆率X1と拡散指数の間には相関関係があり、被覆率X1に応じて拡散指数を制御することが重要であることを、上記のように実験的に求めた。
拡散指数が下記に示される式3の範囲にある場合、凝集体として存在するシリカ微粒子の量が多くなり、トナーの劣化を抑制しにくく、および、トナーのほぐれやすさを十分に向上させにくいため、本発明の意図する効果を十分に発揮できない。
(式3)拡散指数<−0.0042×X1+0.62
また、本発明に係るトナーは、外添剤として、さらにチタン酸ストロンチウム微粒子を含有し、該チタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)が60nm以上200nm以下であることが好ましい。
本発明者らは、シリカ微粒子が高度に均一拡散した状態で、特定範囲の粒径のチタン酸ストロンチウム微粒子を添加することで、トナー粒子表面において、チタン酸ストロンチウム微粒子も高度に均一拡散させることが可能であることを見出した。その結果、チタン酸ストロンチウム微粒子によるトナーのチャージアップ抑制効果を十分に発揮させうることを同時に見出した。
特に、シリカ微粒子が凝集体の状態だと、チタン酸ストロンチウム微粒子の周りにシリカ微粒子が付着するなどして、トナーのチャージアップ抑制効果を十分に発揮しにくい。
上記のように、2種類の無機微粒子を高度に均一拡散させることにより、チタン酸ストロンチウム微粒子がトナー粒子表面に高度に均一拡散した状態で付着するため、チャージアップを効果的に抑制することができる。
すると、例えば、現像スリーブを小径化し、チャージアップしたトナーが生じやすく、帯電が不均一になりやすい場合においても、チャージアップ抑制効果を十分に発揮することができ、トナーのチャージアップに起因する課題を抑制することができる。
上述のように、本発明において添加されるチタン酸ストロンチウム微粒子は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が、60nm以上200nm以下であることが好ましい。好ましくは、80nm以上150nm以下である。この範囲であることにより、チタン酸ストロンチウム微粒子が一次粒子の形で、トナー粒子表面に付着しやすいため、外添剤の埋め込み率を制御しやすくなる。また繰り返し使用試験においても脱離しにくいため、チャージアップ抑制効果が得られやすい。
60nm未満の場合、マイクロキャリアとしての帯電調整の効果が十分に得られない。一方、200nmより大きい場合には、トナー表面から脱離しやすく、十分なチャージアップ抑制効果が得られにくい。
また、より好ましくは、立方体状の粒子形状および/または直方体状の粒子形状を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸ストロンチウム微粒子が用いられる。
立方体状の粒子形状および/または直方体状の粒子形状を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸ストロンチウム微粒子は、焼結工程を経由せずに、主に水系媒体中にて製造する。このため、均一な粒径に制御しやすいことから、本発明において好ましく用いられる。すなわち、このようなチタン酸ストロンチウム微粒子は、より均一にトナーに付着し、脱離しにくい状態でトナー粒子表面に留まることが可能である。
チタン酸ストロンチウム微粒子の結晶構造がペロブスカイト型(3種類の異なる元素で構成された面心立方格子)であることを確認するには、X線回折測定を行うことで確認することができる。
また、本発明において、チタン酸ストロンチウム微粒子は現像特性を考慮し、摩擦帯電極性、環境による摩擦帯電量を制御できる点から、チタン酸ストロンチウム微粒子の表面を処理したほうが好ましい。
表面処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩またはオルガノシラン化合物などの処理剤が挙げられる。
表面処理を行うことで、例えば、親水基と疎水基を有する化合物であるカップリング剤
の場合、親水基側がチタン酸ストロンチウム微粒子表面を覆うことで疎水基側が外側になるので、チタン酸ストロンチウム微粒子の疎水化処理がなされる。そうすることで環境による摩擦帯電量の変動を抑制させることができる。また、アミノ基、フッ素などの官能基を導入したカップリング剤により、摩擦帯電量の制御も容易にでき、本発明の効果をより発揮させやすい。
また、上述のような表面処理剤の場合には分子レベルでの表面処理のために、チタン酸ストロンチウム微粒子の形状がほとんど変化せず、略立方体、直方体形状による掻き取り力が維持されるのでより好ましい。
表面処理剤としてはチタネート系、アルミニウム系、シラン系カップリング剤などが挙げられる。また、脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられ、脂肪酸であるステアリン酸などでも同様の効果が得られる。
処理の方法は、処理する表面処理剤などを溶媒中に溶解、分散させ、その中にチタン酸ストロンチウム微粒子を添加し、撹拌しながら溶媒を除去して処理する湿式方法が挙げられる。また、カップリング剤、脂肪酸金属塩とチタン酸ストロンチウム微粒子を直接混合して撹拌しながら処理を行う乾式方法などが挙げられる。
また、表面処理についてはチタン酸ストロンチウム微粒子を完全に処理、被覆する必要は無く、効果が得られる範囲でチタン酸ストロンチウム微粒子が露出していてもよい。つまり表面の処理が不連続に形成されていてもよい。
さらに、チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率が20%以上70%以下であることが好ましい。より好ましくは、30%以上60%以下である。遊離率がこの範囲であると、適度なマイクロキャリアとしての作用とチャージアップ抑制効果を発揮することができる。
遊離率が20%未満の場合、マイクロキャリアとしての効果が不十分になりやすく、トナー全体が均一に帯電しにくい傾向にある。
遊離率が70%を超える場合には、チャージアップ抑制効果が不十分になりやすく、部材との付着力低減の効果が低減する傾向にある。
なお、チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率の測定方法の詳細は後述するが、水溶液中で半ば強制的に遊離させたときの遊離率である。上述の外添剤の埋め込み率はシリカ微粒子とチタン酸ストロンチウム微粒子の両方の寄与となるので、チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率とは直接関係しない。本発明者らは、チタン酸ストロンチウムによる、チャージアップ抑制効果は、外添剤の埋め込み率よりも、チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率により、制御しやすいことを見出した。
これは、外添剤の埋め込み率に寄与するシリカ微粒子とチタン酸微粒子の付着状態よりも、直接マイクロキャリアとして作用するチタン酸ストロンチウムの付着状態を検出する上記の遊離率の方が、チャージアップ抑制効果と相関しやすいためと考えている。
また、本発明においては、上述のマイクロキャリアとしての作用とチャージアップ抑制効果を十分に発揮するために、チタン酸ストロンチウム微粒子をトナー粒子100質量部当り0.1質量部以上1.0質量部以下含有することが好ましい。より好ましくは、0.1質量部以上0.6質量部である。
チタン酸ストロンチウム微粒子を多めに含有させても、遊離率が高い場合には十分なチャージアップ抑制効果を発揮しにくい。
チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率を上記範囲に制御する手段としては、外添混合処理時の動力や処理時間の調整が挙げられる。外添混合処理時の動力を下げるか、処理時間を短くすることで、遊離率を高くすることができる。また、外添混合処理時の動力を上げるか、処理時間を長くすることで遊離率を低くすることができる。
本発明に係るトナーに用いられる結着樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。特に限定されずこれら従来公知の樹脂を用いることができる。なかでも帯電性と定着性の両立の観点から、ポリエステル樹脂もしくはビニル系樹脂を含有することが好ましい。以下、トナーに用いる結着樹脂を「結着樹脂T」ともいう。
本発明に係る結着樹脂Tは、低温定着性と保存性の両立がしやすいという観点から、ガラス転移温度(Tg)が、通常45℃以上70℃以下、好ましくは50℃以上70℃以下である。
Tgが45℃未満の場合には、保存性が悪化しやすい傾向にある。また、Tgが70℃より高い場合には、低温定着性が悪化しやすい傾向にある。
本発明に係るトナー粒子は、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、以下のものが挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、以下のものが挙げられる。
縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
イエロー系着色剤としての有機顔料または有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、およびシアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
着色剤を用いる場合、好ましくは重合性単量体または結着樹脂T100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
本発明に係るトナー粒子には、磁性体を含有させることも可能である。本発明において、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
本発明において用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物などが挙げられる。
これらの磁性体は個数基準の平均粒子径が2μm以下であり、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、795.8kA/m印加での磁気特性が、抗磁力:1.6〜12.0kA/m、飽和磁化:50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化:2〜20Am2/kgのものが好ましい。
本発明に係るトナーにおける、磁性体の含有量は、通常35質量%以上50質量%以下、好ましくは、40質量%以上50質量%以下である。
35質量%未満の場合には、現像スリーブ内のマグネットロールとの磁気引力が低下し、かぶりが悪化しやすい傾向がある。
一方、50質量%を超える場合には、現像性が低下することにより、濃度が低下する傾向にある。
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100〜750℃まで間の減量質量をトナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
本発明に係るトナーに用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5から10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄を成長させる。このとき、任意のpHおよび反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状および磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法により濾過、洗浄、乾燥することにより磁性粉を得ることができる。
また、本発明において重合法にてトナーを製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・濾過・乾燥した磁性体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させ、カップリング処理を行う。または、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。具体的には、再分散液を十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、あるいは、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することでカップリング処理を行う。この中でも、均一な表面処理を行うという観点から、酸化反応終了後、濾過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリー化し、表面処理を行うことが好ましい。
磁性体の表面処理を湿式で、すなわち水系媒体中において磁性体をカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性体を一次粒子となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根などで撹拌する。次いで上記分散液に任意量のカップリグ剤を投入し、カップリング剤を加水分解しながら表面処理する。このときも撹拌を行いつつピンミル、ラインミルなどの装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ表面処理を行うことがより好ましい。
ここで、水系媒体とは、水を主要成分とする媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5.0質量%添加することが好ましい。pH調整剤としては、塩酸などの無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類などが挙げられる。
本発明における磁性体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn(I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1〜3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
この中で、高い疎水性を磁性体に付与するという観点では、下記一般式(II)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3(II)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
上記式におけるpが2以上であると、磁性体に疎水性を付与しやすくなる。またpが20以下であると磁性体同士の合一が抑制しやすくなる。さらに、qが3以下であるとシランカップリング剤の反応性が向上しやすくなり、好ましい。式中のpが2〜20の整数を示し、qが1〜3の整数を示すアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することが好ましい。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、あるいは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性体100質量部に対して0.9〜3.0質量部であることが好ましく、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性などに応じて処理剤の量を調整することが重要である。
また、本発明に係るトナーには、荷電制御剤を添加してもよい。なお、本発明に係るトナーの帯電性は正負のどちらでもよいが、結着樹脂T自体は負帯電性が高いので、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電性のものとしては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効である。その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ハイドロキシカルボン酸または芳香族ダイカルボン酸の金属錯体およびその金属塩、無水物、エステル類やビスフェノールなどのフェノール誘導体類などが挙げられる。
これらの金属錯化合物は、単独でもあるいは二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらの荷電制御剤の使用量は、トナーの帯電量の点から、結着樹脂T100質量部あたり0.1〜5.0質量部が好ましい。
本発明においては、ワックスとして、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの公知の炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。例としては次のものが挙げられる。
また、該ワックスの示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、70〜140℃であることが好ましい。より好ましくは90〜135℃である。融点が70℃以下の場合は、トナーの粘度が低下しやすく、感光体融着が発生しやすくなる傾向にある。一方、融点が140℃以上の場合は、低温定着性が悪化しやすくなる傾向にある。
ワックスの「融点」は、示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定することによって求められる。測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/min、常温常湿下で測定を行う。
2回目の昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において最大吸熱ピークが得られるので、そのときの温度をワックスの融点として用いる。
ワックスの量は、トナー製法にもよるが、結着樹脂T100質量部あたり、通常1〜40質量部、好ましくは2〜30質量部である。
本発明に用いられるシリカ微粒子として、特に好ましくは、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粒子であり、乾式法シリカまたはヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、例えば塩化アルミニウムまたは塩化チタンなどの他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能である。本発明にはそのような複合微粒子を用いることもできる。
本発明におけるシリカ微粒子は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が5nm以上20nm以下であることが好ましく、より好ましくは、5nm以上15nm以下、さらに好ましくは、7nm以上15nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が上記範囲にあることにより、外添混合処理時に、シリカ微粒子同士よりも、トナー粒子とシリカ微粒子との衝突頻度が高くなりやすく、被覆率X1、拡散指数、および外添剤の埋め込み率を制御しやすくなる。
本発明における、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定法は後述する。
シリカ微粒子の一次粒径が比較的小さく、一次粒子の個数平均粒径が5nm未満となると、シリカ微粒子同士が凝集しやすく、トナー粒子表面においても、凝集体として存在しやすい。シリカ微粒子が凝集体で存在する場合、繰り返し使用試験を重ねると、トナー同士の摺擦により、シリカ微粒子が解されることにより、トナー粒子表面から脱離しやすい。
そのため、繰り返し使用初期に被覆率X1を調整するようにシリカ微粒子を添加しても、繰り返し使用後期にはシリカ微粒子による被覆率が低下する。さらに凝集体であることにより、シリカ微粒子同士の力によりトナーにシリカ微粒子がより多く埋めこまれやすく、繰り返し使用初期と繰り返し使用後期のトナー物性が大きく異なる、トナー劣化を引き起こしやすい。
一方、本発明では、被覆率X1と拡散指数を同時に制御することにより、トナー粒子表面にシリカ微粒子を、高度に均一拡散させることが可能である。
この場合、シリカ微粒子がより一次粒子に近い状態でトナー粒子表面に付着している。そのため、繰り返し使用試験を行っても、トナー粒子表面からシリカ微粒子が脱離しにくく、シリカ微粒子同士が接触する確率が低くなるとともに、シリカ微粒子同士の力でトナー粒子に埋めこまれやすくなることも抑制することが可能である。
また、本発明で用いられるシリカ微粒子は、長期間繰り返し使用を通じてトナーの良好な流動性を確保させるために、BET比表面積が130m2/g以上330m2/g以下のものが好ましい。より好ましくは、200m2/g以上320m2/g以下である。上記範囲のシリカ微粒子を上記疎水化処理することが好ましい。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、見掛け密度が15g/L以上50g/L以下であることが好ましい。シリカ微粒子の見掛け密度が上記範囲にあることは、シリカ微粒子が密に詰まりにくく、微粒子間に空気を多く介在しながら存在しており、見掛け密度が非常に低いことを示している。このため、トナーにおいても、トナー同士が密に詰まりにくくなるため、劣化の速度を大幅に低下することが可能である。より好ましい範囲は、18g/L以上45g/L以下である。
シリカ微粒子の見掛け密度を上記範囲に制御する手段としては、シリカ微粒子に用いるシリカ微粒子原体の粒径、上述の解砕処理の有無とその強度、およびシリコーンオイルの処理量などを調整することが挙げられる。シリカ微粒子原体の粒径を低下させることで、得られるシリカ微粒子のBET比表面積が大きくなり、空気を多く介在できるようになるため、見掛け密度を低下させることができる。また、解砕処理を行うことで、シリカ微粒子に含有される、比較的大きな二次粒子を、比較的小さな二次粒子へほぐすことができ、見掛け密度を低下させることが可能である。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、シリカ微粒子原体100質量部に対して15.0質量部以上40.0質量部以下のシリコーンオイルによって疎水化処理して製造される。疎水化処理の程度は、高温多湿環境における帯電性の低下の抑制という観点から、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
本発明において、シリカ微粒子の処理に用いるシリコーンオイルの25℃における動粘度は、30cSt以上500cSt以下であることが好ましい。動粘度が上記範囲の場合、シリカ微粒子原体をシリコーンオイルで疎水化処理する際に、均一性を制御しやすい。さらに、シリコーンオイルの動粘度は、シリコーンオイルの分子鎖長に密接に関係しており、動粘度が上述の範囲にある場合、シリカ微粒子の凝集度を好適な範囲に制御しやすいため、好ましい。シリコーンオイルの25℃における動粘度のより好ましい範囲は、40cSt以上300cSt以下である。シリコーンオイルの動粘度を測定する装置としては、細管式動粘度計(蕪木科学器械工業(株)製)または全自動微量動粘度計(ビスコテック(株)製)が挙げられる。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、シリカ微粒子原体をシリコーンオイルにより処理した後に、アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方で処理されたものであることが好ましい。こうすることにより、シリコーンオイルで疎水化処理できなかったシリカ微粒子原体表面を疎水化処理できるため、高疎水化度のシリカ微粒子を安定して得ることが可能である。さらに、トナーのほぐれやすさを大幅に改善できるため、好ましい。ほぐれやすさを改善できる理由の詳細は明らかになっていないが、本発明者らは以下のように考えている。シリカ微粒子表面のシリコーンオイル分子末端のうち、片末端のみが自由度を有しており、シリカ微粒子同士の凝集性に影響する。一方、上述のような2段処理を行うことで、シリカ微粒子の最表面にシリコーンオイル分子末端がほとんど存在しなくなるため、シリカ微粒子の凝集性をより低下させることができる。これにより、外添した際のトナー同士の凝集性を大幅に低下させることができ、トナーのほぐれやすさを向上することが可能である。
本発明において、シリカ微粒子原体は、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、および水ガラスなどから製造された、いわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。
本発明に用いられるシリカ微粒子は、上記処理工程中に、または、処理工程後に解砕処理を行ってもよい。さらに、2段処理を行う場合、処理の間に解砕処理を行うことも可能である。
上記シリカ微粒子原体のシリコーンオイルによる表面処理、ならびに、アルコキシシランおよびシラザンによる表面処理は乾式処理または湿式処理のいずれでもよい。
上記シリカ微粒子原体のシリコーンオイルによる表面処理の具体的な手順は、例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸などでpH4に調整)の中にシリカ微粒子を入れて反応させ、その後、溶剤を除去する。その後、解砕処理を施してもよい。
続いて、アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方による表面処理を行う場合の具体的な手順としては、アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方を溶かした溶剤の中に、解砕したシリコーンオイル処理済シリカ微粒子を入れて反応させる。その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、以下のような方法でもよい。例えば、シリコーンオイルによる表面処理では、シリカ微粒子を反応槽に入れる。そして、窒素雰囲気下、撹拌しながらアルコール水を添加し、シリコーンオイルを反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去し、解砕処理を行う。アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方による表面処理では、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。
上記アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好適に例示できる。一方、シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザンが好適に例示できる。
これらアルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方による処理量は、シリカ微粒子原体100質量部に対して、アルコキシシランおよびシラザンの少なくとも一方の総量として、0.1質量部以上20.0質量部以下である。
上記シリカ微粒子における、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率を上げるためには、上述のシリカ微粒子を得る過程において、シリコーンオイルをシリカ微粒子原体の表面に化学的に固定化させる必要がある。そのためには、シリカ微粒子を得る過程において、シリコーンオイルの反応のために、加熱処理を行う方法が好適に例示できる。加熱処理温度は100℃以上が好ましく、加熱処理温度が高いほど、固定化率を上げることが可能である。この加熱処理工程は、シリコーンオイル処理を行った直後に行うことが好ましいが、解砕処理を行う場合は、解砕処理工程後に加熱処理工程を行ってもよい。
ここで、シリカ微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、通常0.3質量部以上2.0質量部以下であり、好ましくは、0.3質量部以上1.5質量部以下である。シリカ微粒子の添加量が上記範囲であることにより、被覆率、拡散指数、および外添剤の埋め込み率を適正に制御しやすい。
上記シリカ微粒子を外添混合する混合処理装置としては、公知の混合処理装置を用いることができるが、被覆率X1、拡散指数および外添剤の埋め込み率を容易に制御できる点で図13に示すような装置が好ましい。
図13は、本発明に用いられる無機微粒子(シリカ微粒子および、場合によりチタン酸ストロンチウム微粒子)を外添混合する際に、用いることができる混合処理装置の一例を示す模式図である。
当該混合処理装置は、トナー粒子と無機微粒子に対して、狭いクリアランス部において、シェアがかかる構成になっているために、無機微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー粒子表面に付着させることができる。無機微粒子を一次粒子へとほぐすことで、被覆率X1、拡散指数、および外添剤の埋め込み率を好ましい範囲に制御しやすくなる。
さらに、後述するように、回転体の軸方向において、トナー粒子と無機微粒子が循環しやすく、固着が進む前に十分に均一混合されやすい点で、被覆率X1、拡散指数および外添剤の埋め込み率を本発明において好ましい範囲に制御しやすい。
一方、図14は、上記混合処理装置に使用される攪拌部材の構成の一例を示す模式図である。
以下、上記無機微粒子の外添混合工程について図13および図14を用いて説明する。
上記無機微粒子を外添混合する混合処理装置は、少なくとも複数の攪拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体を回転駆動する駆動部8と、攪拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1とを有する。
本体ケーシング1の内周部と、撹拌部材3との間隙(クリアランス)は、トナー粒子に均一にシェアを与え、無機微粒子を二次粒子から一次粒子へとほぐしながら、トナー粒子表面に付着しやすくするために、一定かつ微小に保つことが好ましい。
また本装置は、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下である。図13において、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径(回転体2から撹拌部材3を除いた胴体部の径)の1.7倍である例を示す。本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下であると、トナー粒子に力が作用する処理空間が適度に限定されるため、二次粒子となっている無機微粒子に十分に衝撃力が加わるようになる。
また、上記クリアランスは、本体ケーシングの大きさに応じて、調整することが好ましい。本体ケーシング1の内周部の径の、1%以上5%以下程度とすることで、無機微粒子に十分なシェアをかけることができる。
具体的には、本体ケーシング1の内周部の径が130mm程度の場合は、クリアランスを2mm以上5mm以下程度とし、本体ケーシング1の内周部の径が800mm程度の場合は、10mm以上30mm以下程度とすればよい。
本発明における無機微粒子の外添混合工程は、混合処理装置を用い、駆動部8によって回転体2を回転させ、混合処理装置中に投入されたトナー粒子および無機微粒子を攪拌、混合することで、トナー粒子の表面に無機微粒子を外添混合処理する。
図14に示すように、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、回転体2の回転に伴って、トナー粒子および無機微粒子を回転体の軸方向の一方向に送る送り用撹拌部材3aとして形成される。また、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、トナー粒子および無機微粒子を、回転体2の回転に伴って、回転体の軸方向の他方向に戻す戻し用撹拌部材3bとして形成されている。
ここで、図13のように、原料投入口5と製品排出口6が本体ケーシング1の両端部に設けられている場合には、原料投入口5から製品排出口6へ向かう方向(図13で右方向)を「送り方向」ともいう。
すなわち、図14に示すように、送り用撹拌部材3aの板面は送り方向(13)にトナー粒子を送るように傾斜している。一方、撹拌部材3bの板面は戻り方向(12)にトナー粒子および無機微粒子を送るように傾斜している。
これにより、「送り方向」への送り(13)と、「戻り方向」への送り(12)とを繰り返し行いながら、トナー粒子の表面に無機微粒子の外添混合処理を行う。
また、撹拌部材3aと3bは、回転体2の円周方向に間隔を置いて配置した複数枚の部材が一組となっている。図14に示す例では、撹拌部材3a、3bが回転体2に互いに180度の間隔で2枚の部材が一組をなしているが、120度の間隔で3枚、あるいは90度の間隔で4枚、というように多数の部材を一組としてもよい。
図14に示す例では、撹拌部材3aと3bは等間隔で、計12枚形成されている。
さらに、図14において、Dは撹拌部材の幅、dは撹拌部材の重なり部分を示す間隔を示す。トナー粒子および無機微粒子を、送り方向と戻り方向に効率よく送る観点から、図14における回転体2の長さに対して、Dは20%以上30%以下程度の幅であることが好ましい。図14においては、23%である例を示す。さらに撹拌部材3aと3bは撹拌部材3aの端部位置から垂直方向に延長線を引いた場合、撹拌部材3bと撹拌部材の重なり部分dをある程度有することが好ましい。これにより、二次粒子となっている無機微粒子に効率的にシェアをかけることが可能である。Dに対するdは、10%以上30%以下であることがシェアをかける点で好ましい。
なお、羽根の形状に関しては、図14に示すような形状以外にも、送り方向および戻り方向にトナー粒子を送ることができる。クリアランスを維持することができれば、曲面を有する形状や先端羽根部分が棒状アームで回転体2に結合されたパドル構造であってもよい。
以下、図13および図14に示す装置の模式図に従って、本発明をさらに詳細に説明する。
図13に示す装置は、少なくとも複数の攪拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体2を回転駆動する駆動部8と、攪拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1を有する。さらに、本体ケーシング1の内側および回転体端部側面10にあって、冷熱媒体を流すことのできるジャケット4を有している。
さらに、図13に示す装置は、トナー粒子および無機微粒子を導入するため、本体ケーシング1上部に形成された原料投入口5、外添混合処理されたトナーを本体ケーシング1から外に排出するため本体ケーシング1下部に形成された製品排出口6を有している。
さらに、図13に示す装置は、原料投入口5内に、原料投入口用インナーピース16が挿入されており、製品排出口6内に、製品排出口用インナーピース17が挿入されている。
本発明においては、まず、原料投入口5から原料投入口用インナーピース16を取り出し、トナー粒子を原料投入口5より処理空間9に投入する。次に無機微粒子を原料投入口5より処理空間9に投入し、原料投入口用インナーピース16を挿入する。次に、駆動部8により回転体2を回転させ(11は回転方向を示す)、上記で投入した処理物を、回転体2表面に複数設けられた撹拌部材3により撹拌、混合しながら外添混合処理する。
なお、投入する順序は、先に無機微粒子を原料投入口5より投入し、次に、トナー粒子を原料投入口5より投入しても構わない。また、ヘンシェルミキサーのような混合機で予め、トナー粒子と無機微粒子を混合した後、混合物を、図13に示す装置の原料投入口5より投入しても構わない。
また、本発明においては、トナー粒子とシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子を一度混合した後、さらにシリカ微粒子を添加して混合する、2段階混合を行ってもよい。2段階混合は、被覆率X1、拡散指数、および外添剤の埋め込み率を制御しやすい点で好ましい。
より具体的には、外添混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.2W/g以上2.0W/g以下に制御することが、本発明で規定する被覆率X1、拡散指数および外添剤の埋め込み率を得るうえで好ましい。また、駆動部8の動力を、0.6W/g以上1.6W/g以下に制御することが、より好ましい。
0.2W/gより動力が低い場合には、被覆率X1が高くなりにくく、拡散指数が低くなりすぎる傾向にある。一方、2.0W/gより高い場合には、拡散指数が高くなるが、外添剤が埋め込まれすぎてしまう傾向にある。
処理時間としては、特に限定されないが、好ましくは、3分以上10分以下である。処理時間が3分より短い場合には、被覆率X1および拡散指数が低くなる傾向にある。
外添混合時の撹拌部材の回転数については特に限定されない。図13に示す装置の処理空間9の容積が2.0×10−3m3の装置において、撹拌部材3の形状を図14のものとしたときの撹拌部材の回転数としては、800rpm以上3000rpm以下であることが好ましい。800rpm以上3000rpm以下であることで本発明で規定する被覆率X1、拡散指数および外添剤の埋め込みを得やすくなる。
さらに、本発明において、特に好ましい処理方法は、外添混合処理操作の前に、プレ混合工程を持たせることである。プレ混合工程を入れることにより、シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子がトナー粒子表面上で高度に均一分散される。そのため、被覆率X1が高くなりやすく、拡散指数を高くしやすく、また、外添剤の埋め込み率を制御しやすくなる。
より具体的には、プレ混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.06W/g以上0.20W/g以下とし、処理時間を0.5分以上1.5分以下とすることが好ましい。プレ混合処理条件として、0.06W/gより負荷動力が低い、あるいは処理時間が0.5分より短い場合には、プレ混合として十分な均一混合がなされにくい。一方、プレ混合処理条件として、0.20W/gより負荷動力が高い、あるいは処理時間1.5分より長い場合には、十分な均一混合がなされる前に、トナー粒子表面にシリカ微粒子が固着されてしまう場合がある。
プレ混合処理の撹拌部材の回転数については、図13に示す装置の処理空間9の容積が2.0×10−3m3の装置において、撹拌部材3の形状を図14のものとしたときの撹拌部材の回転数としては、50rpm以上500rpm以下であることが好ましい。当該範囲であることで本発明で規定する被覆率X1および拡散指数を得やすくなる。
外添混合処理終了後、製品排出口6内の、製品排出口用インナーピース17を取り出し、駆動部8により回転体2を回転させ、製品排出口6からトナーを排出する。得られたトナーを、必要に応じて円形振動篩機などの篩機で粗粒などを分離し、トナーを得る。
本発明に係るトナー粒子の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
粉砕法によって製造することも可能であるが、得られるトナー粒子は一般に不定形のものである。このため、平均円形度が0.960以上という物性を得るためには、機械的・熱的あるいは何らかの特殊な処理を行うことが好ましい。そこで、本発明に係るトナー粒子は分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法など、水系媒体中でトナー粒子を製造することが好ましく、特に懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしやすく非常に好ましい。本発明に係るトナー粒子は、重合性単量体、着色剤を含有する重合性単量体組成物を、水系媒体中に分散して造粒し、造粒された粒子中に含有される重合性単量体を重合して得ることができる。重合性単量体には、上記結着樹脂Tの材料として知られる公知のものを用いることができる。
本発明に係るトナーは、現像性や定着性のバランスの観点から、重量平均粒径(D4)が、通常5.0μm以上10.0μm以下であり、好ましくは、6.0μm以上9.0μm以下である。
また、本発明において、トナー粒子の平均円形度は、0.960以上であることが好ましく、0.970以上であることがより好ましい。トナー粒子の平均円形度が0.960以上の場合、トナーの形状が球形またはこれに近い形となり、流動性に優れ均一な摩擦帯電性を得られやすい。そのため、繰り返し使用後半においても高い現像性を維持しやすくなるために好ましい。加えて、平均円形度が高いトナー粒子は、上記無機微粒子の外添混合処理において、上記被覆率X1、拡散指数および外添剤の埋め込み率を本発明の範囲へ制御しやすくなるため、好ましい。さらに、加圧時のトナーのほぐれやすさという観点においても、トナー粒子の表面形状における噛み合わせ効果が発生しにくくなり、ほぐれやすさをさらに向上できるため、好ましい。
特に、均一性を判断する指標としては、顕微鏡観察などで定性的あるいは半定量的に知ることも可能である。上記のような円形度範囲においては、特に、本発明における被覆率X1および、拡散指数によれば、より精度高く、トナーの付着力や循環性と相関する傾向にある。
前記水系媒体中でトナー粒子を製造した場合には、平均円形度を上記範囲に制御することが容易になる。粉砕法の場合は、熱球形化処理や、表面改質および微粉除去を行うことで、上記範囲に制御することが可能である。
粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂Tおよび着色剤、ならびに、必要に応じて離型剤などのその他の添加剤などを、ヘンシェルミキサーまたはボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーなどの熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散または溶解し、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得る。分級および表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
上記粉砕には、機械衝撃式、ジェット式などの公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、本発明の好ましい平均円形度を有するトナー粒子を得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃力を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いてもよい。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミルなどの機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムなどの装置のように、圧縮力、摩擦力などの力によりトナー粒子に機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
懸濁重合法においては、まず、重合性単量体および着色剤(さらに必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー粒子(以後「重合トナー粒子」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、平均円形度が0.960以上という本発明に好適な物性要件を満たすトナー粒子が得られやすい。さらにこういったトナー粒子は帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては、公知のものが使用できるが、その中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の重合性単量体と混合して使用することがトナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。
本発明において、上記懸濁重合法に使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30.0時間以下であるものが好ましい。また、重合開始剤の添加量は重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
具体的な重合開始剤例としては、アゾ系またはジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤などが好ましい。
上記懸濁重合法において、重合反応時に上記架橋剤を添加してもよく、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が好ましい。例えば、芳香族ジビニル化合物、二重結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニル化合物、および3個以上のビニル基を有する化合物が好ましい。これらを単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
以下、具体的に懸濁重合法によるトナー粒子の製造を説明するが、これに限定されるわけではない。まず、上述の重合性単量体および着色剤などを適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機などの分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して造粒する。このとき、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加するときに同時に加えてもよいし、水系媒体中に懸濁する直前に混合してもよい。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体または溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
上記分散安定剤として公知の界面活性剤、有機分散剤または無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じにくく、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナー粒子に悪影響を与えにくいため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどの燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩などが挙げられる。また、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物も挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.20質量部以上20.00質量部以下の量を用いる事が好ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、重合性単量体100質量部に対して、0.0001質量部以上0.1000質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。
上記重合性単量体の重合反応における、重合温度は40℃以上、一般には50℃以上90℃以下の温度に設定される。
上記重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、無機微粒子であるシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子を外添混合してトナー粒子の表面に付着させることで、本発明に係るトナーを得る。
また、製造工程(無機微粒子の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉を除去することも可能である。
<プロセスカートリッジ>
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明に係る帯電部材が被帯電体と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。本発明のプロセスカートリッジの一例の概略構成を図10に示す。このプロセスカートリッジは、静電潜像担持体である感光体4、帯電装置(帯電部材)、現像ローラー6を有する現像装置、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器14を有するクリーニング装置などを一体化し、電子写真装置に着脱可能に構成されている。
<電子写真装置>
本発明に係る電子写真装置は、前記帯電部材と、前記トナーを有することを特徴とする電子写真装置である。本発明に係る帯電部材を備える電子写真装置の一例の概略構成を図9に示す。この電子写真装置は、
感光体、
感光体を帯電するための帯電装置、
露光を行うための露光装置(潜像形成装置)、
トナー像に現像するための現像装置、
転写材に転写するための転写装置、
感光体上の転写トナーを回収するためのクリーニング装置、
トナー像を定着するための定着装置
などから構成されている。
感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、感光体4に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラー5を有する。帯電ローラー5は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源19から所定の直流電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。
感光体4に静電潜像を形成する潜像形成装置11は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置は、感光体4に近接または接触して配設される現像スリーブまたは現像ローラー6を有する。感光体の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像を現像してトナー像を形成する。
転写装置は、接触式の転写ローラー8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材7に転写する。転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器14を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。定着装置9は、加熱されたロールなどで構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着し、機外に排出する。
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
<シリカ微粒子の定量方法>
(1)トナー中のシリカ微粒子の含有量の定量(標準添加法)
トナー3gを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製する。そして、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、珪素(Si)の強度を求める(Si強度−1)。なお、測定条件は使用するXRF装置で最適化されたものであれば良いが、一連の強度測定はすべて同一条件で行うこととする。トナーに、一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子を、トナーに対して1.0質量%添加して、コーヒーミルにより混合する。
混合後、上記と同様にペレット化したのちに、上記同様にSiの強度を求める(Si強度−2)。同様の操作を、シリカ微粒子を、トナーに対して2.0質量%、3.0質量%添加混合したサンプルにおいても、Siの強度を求める(Si強度−3,Si強度−4)。Si強度−1〜4を用いて、標準添加法によりトナー中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(2)トナーからシリカ微粒子の分離
トナーが磁性体を含有する場合、次の工程を経て、シリカ微粒子の定量を行う。
トナー5gを、精密天秤を用いて200mlの蓋付きポリカップに秤量し、メタノールを100ml加え、超音波分散機で5分間分散させる。ネオジム磁石によりトナーを引き付け、上澄み液を捨てる。メタノールによる分散と上澄みを捨てる操作を3回繰り返す。その後、10%NaOHを100mlと、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加え、軽く混合したのち、24時間静置する。その後、再びネオジム磁石を用いて分離する。なお、この際にNaOHが残留しないように繰り返し蒸留水ですすぐ。回収された粒子を真空乾燥機により十分に乾燥させ、粒子Aを得る。上記操作により、外添されたシリカ微粒子は溶解、除去される。
(3)粒子A中のSi強度測定
3gの粒子Aを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製し、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Siの強度を求める(Si強度−5)。Si強度−5とトナー中のシリカ含有量の定量で使用したSi強度−1〜4を利用して、粒子A中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(4)トナーから磁性体の分離
5gの粒子Aに対して、100mlのテトラヒドロフランを加え、良く混合した後に超音波分散を10分間行う。磁石により磁性粒子を引き付け、上澄み液を捨てる。この作業を5回繰り返し、粒子Bを得る。この操作で、磁性体以外の樹脂などの有機成分はほぼ取り除くことができる。ただし、樹脂中のテトラヒドロフラン不溶解分が残存する可能性があるため、上記操作で得られた粒子Bを800℃まで加熱して残存する有機成分を燃焼させることが好ましく、加熱後に得られた粒子Cを、トナーに含有されていた磁性体と近似することができる。
粒子Cの質量を測定することにより、磁性トナー中の磁性体含有量W(質量%)とすることができる。この際、磁性体の酸化増量分を補正するために、粒子Cの質量に0.9666(Fe2O3→Fe3O4)を乗じる。
各定量値を以下の式に代入することにより、外添されたシリカ微粒子量を算出する。
外添されたシリカ微粒子量(質量%)=トナー中のシリカ含有量(質量%)−粒子A中のシリカ含有量(質量%)
<チタン酸ストロンチウム微粒子の定量方法>
チタン酸ストロンチウムの定量は、上記シリカ微粒子の定量方法と同様に、標準添加法により定量可能である。この際、個数平均粒径が120nmのチタン酸ストロンチウム微粒子を用いた。波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Srの強度を使用することにより、定量可能である。
<被覆率X1の測定方法>
トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、以下のようにして算出する。
下記装置を下記条件にて使用し、トナー表面の元素分析を行う。
・測定装置:Quantum 2000(商品名、アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAlKα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15kV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・PassEnergy:58.70eV
・ステップサイズ:1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、Si原子の定量値の算出には、C1c(B.E.280〜295eV)、O1s(B.E.525〜540eV)およびSi2p(B.E.95〜113eV)のピークを使用した。ここで得られたSi元素の定量値をY1とする。
次いで、上述のトナー表面の元素分析と同様にして、シリカ微粒子単体の元素分析を行い、ここで得られたSi元素の定量値をY2とする。
本発明において、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率X1は、上記Y1およびY2を用いて下式のように定義される。
被覆率X1(面積%)=Y1/Y2×100
なお、本測定の精度を向上させるために、Y1およびY2の測定を、2回以上行うことが好ましい。
定量値Y2を求めるに際して、外添に使用されたシリカ微粒子を入手できれば、それを用いて測定を行えばよい。また、トナー表面から分離したシリカ微粒子を測定試料とする場合、シリカ微粒子のトナー粒子からの分離は以下の手順で行う。なお、シリカ微粒子について、他の物性を測定する場合も、同様である。
1)磁性トナーの場合
まず、イオン交換水100mLに、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6ml入れ分散媒を作成する。この分散媒に、トナー5gを添加し、超音波分散機で5分間分散させる。その後、いわき産業社製「KMShaker」(model:V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振とうする。その後、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束し、上澄みを採取する。この上澄みを乾燥させることにより、シリカ微粒子を採集する。十分な量のシリカ微粒子を採集することができない場合には、この作業を繰り返して行う。
この方法では、シリカ微粒子以外の外添剤が添加されている場合には、シリカ微粒子以外の外添剤も採集される。このような場合には、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、シリカ微粒子を選別すればよい。
2)非磁性トナーの場合
イオン交換水100mlにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作成する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを上記シェイカーにて1分当たり350往復の条件で20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30minの条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナーが存在し、下層の水溶液側にはシリカ微粒子が存在する。下層の水溶液を採取して、遠心分離を行い、ショ糖とシリカ微粒子とを分離し、シリカ微粒子を採集する。必要に応じて、遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、シリカ微粒子を採集する。
磁性トナーの場合と同様に、シリカ微粒子以外の外添剤が添加されている場合には、シリカ微粒子以外の外添剤も採集される。そのため、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、シリカ微粒子を選別する。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する(トナー粒子の場合も同様に算出する)。測定装置としては、100μmのアパーチャチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンターMultisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールターMultisizer3Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTONIIに設定し、「測定後のアパーチャチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「UltrasonicDispersionSystemTetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡にて撮影されるトナー表面のシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子画像から算出される。日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡としては、具体的には、S−4800(商品名)((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いた。S−4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S−4800観察条件設定
シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径の算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べてのチャージアップが少ないため、粒径を精度良く測定することが出来る。
S−4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PCSTEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)の算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を100000(100k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止めるまたは最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作をさらに2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、トナー表面上の少なくとも300個のシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子について粒径を測定して、平均粒径を求める。ここで、シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子は凝集塊として存在するものもある。そのため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均する。それによって、シリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)を得る。
<トナー粒子の平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定および解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となるように適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、DukeScientific社製の「RESEARCHANDTESTPARTICLESLatexMicrosphereSuspensions5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本発明においては、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用する。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けたときの測定および解析条件で測定を行う。
フロー式粒子像測定装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長Lなどが計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形のときに円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
<シリカ微粒子の見掛け密度の測定方法>
シリカ微粒子の見掛け密度の測定は、100mlのメスシリンダーに、紙の上にのせた測定試料をゆっくり加えて100mlになるようにし、試料を加える前と後のメスシリンダーの質量差を求め次式によって算出する。なお、試料をメスシリンダーに加える場合、紙を叩いたりしないよう注意する。
見掛け密度(g/L)=(100ml投入した時点の質量(g))/0.1
<トナーおよびシリカ微粒子の真比重の測定方法>
トナーおよびシリカ微粒子の真比重は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記のとおりである。
セル :SMセル(10ml)
サンプル量 :約2.0g(トナー)、0.05g(シリカ微粒子)
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真比重を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率の測定方法>
サンプルの準備
遊離前トナー:後述する実施例で作製した各種トナーをそのまま用いた。
遊離後トナー:50ml容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、
陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の2質量%水溶液20gを秤量し、トナー1gと混合する。いわき産業社製「KMShaker」(model:V.SX)にセットし、speedを50に設定して30秒間振とうする。その後、遠心分離機(1000rpmにて5分間)にて、トナーと水溶液を分離する。上澄液を分離し、沈殿しているトナーを真空乾燥することで乾固させて、サンプルとする。
外添剤除去トナー:外添剤除去トナーとは、この試験において遊離しうる外添剤を除いた状態を意味する。サンプル調製方法はイソプロパノールなどのトナーを溶かさない溶媒中にトナーを入れ、超音波洗浄機にて10分振動を与える。その後、遠心分離機(1000rpmにて5分間)にて、トナーと溶液を分離する。上澄液を分離し、沈殿しているトナーを真空乾燥することで乾固させてサンプルとする。
この遊離外添剤除去前後のサンプルについて、波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、Srの強度を使用することにより、チタン酸ストロンチウム微粒子の定量を行い、どの程度遊離したかを求めた。
(i)使用装置の例
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
試料プレス成型機MAEKAWATestingMachine(MFGCo,LTD製)
(ii)測定条件
測定電位、電圧50kV、50〜70mA
2θ角度a
結晶板LiF
測定時間60秒
(iii)トナーからの遊離率の算出方法について
まず、上記方法にて遊離前トナー、遊離後トナーおよび外添剤除去トナーの元素の強度を求める。その後、下記式に基づき遊離率を算出する。
[式]チタン酸ストロンチウム微粒子の遊離率=100−(遊離後トナーのSr元素の強度−外添剤除去トナーのSr元素の強度)/(遊離前トナーのSr元素の強度−外添剤除去トナーのSr元素の強度)×100
<シリカ微粒子における、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率の測定方法>
(遊離シリコーンオイルの抽出)
(1)ビーカーにシリカ微粒子0.50g、クロロホルム40mlを入れ、2時間攪拌する。
(2)攪拌を止めて、12時間静置する。
(3)サンプルを濾過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
(炭素量測定)
酸素気流下、1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO2量をIRの吸光度により測定して、試料中の炭素量を測定する。シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイルの炭素量基準の固定化率を下記のとおり計算する。
(1)試料0.40gを円筒金型に入れプレスする。
(2)プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA−110で測定する。
(3)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
なお、シラン化合物などで疎水処理後にシリコーンオイルによる表面処理を行っている場合は、シラン化合物などで疎水処理後に試料中の炭素量を測定し、シリコーンオイル処理後に、シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較する。そして、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化率を下記のとおり計算する。
(4)[シリコーンオイル抽出後の炭素量]/[(シリコーンオイル抽出前の炭素量−シラン化合物などで疎水処理後の炭素量)]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
一方、シリコーンオイルによる表面処理後にシラン化合物などで疎水処理を行っている場合は、シリコーンオイル由来の炭素量基準の固定化率を下記のとおり計算する。
(5)[(シリコーンオイル抽出後の炭素量−シラン化合物などで疎水処理後の炭素量)]/[シリコーンオイル抽出前の炭素量]×100、をシリコーンオイルの炭素量基準の固定化率とする。
<本発明における帯電部材の各種パラメーターの測定方法>
〔1−1〕原料としての樹脂粒子の断面の観察
(1)「多孔質粒子」である樹脂粒子A1〜A6の観察
まず、多孔質粒子を光硬化型樹脂、例えば、可視光硬化性包埋樹脂(商品名:D−800、日新EM(株)社製、あるいは、商品名:Epok812セット、応研商事(株)社製)により包埋する。次に、ダイヤモンドナイフ(商品名:DiATOMECRYODRY、DIATOME社製)を装着したウルトラミクロトーム(商品名:LEICAEMUCT、ライカ社製)、および、クライオシステム(商品名:LEICAEMFCS、ライカ社製)を使用して、面出しをする。その後、多孔質粒子の中央(図5に示す重心107近辺が含まれるように)を切り出し、100nmの厚みの切片を作成する。この後、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、あるいは、りんタングステン酸のいずれかの染色剤を使用して染色処理を行い、透過型電子顕微鏡(商品名:H−7100FA、日立製作所社製)にて、多孔質粒子の断面画像を撮影する。これを任意の粒子100個につき行う。なお、包埋する樹脂、および、染色剤は、多孔質粒子の材質により、適宜適切なものを選択して行う。その際、多孔質粒子の空孔が鮮明に確認できる組み合わせを選択する。
〔1−2〕原料としての樹脂粒子の体積平均粒径の測定
上記〔1−1〕で得られた粒子の断面画像に対し、空孔部分を含む領域を含めた総面積を算出し、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、この直径をこの粒子の粒径とする。100個の樹脂粒子について粒径を算出し、その平均値を樹脂粒子の体積平均粒径とする。
〔1−3〕原料としての樹脂粒子の空孔率の測定
樹脂粒子の空孔率の算出方法について、図4を用いて詳述する。上記〔1−1〕で得られた粒子の断面画像に対し、上記〔1−2〕に記載の方法で得られた円201から、樹脂粒子の中心108を算出し、さらに、上記円を断面画像に重ねあわせる。上記円の外周を均等に100分割した円周上の点(例えば113)を算出し、円周上の点と樹脂粒子中心を結ぶ直線を引く。該中心108から凸部頂点側(例えば108から113の方向)に向かい、粒子半径rの(√3)/2倍移動した位置(例えば109)を算出する。この計算を上記100分割した円周上の点(113−1、113−2、113−3、・・・・)全てについて行い、上記109に対応する100箇所の点(109−1、109−2、109−3、・・・・)を求める。これらの100箇所の点を直線で結んだ閉曲線を描き、その内側の領域112を、樹脂粒子の内層部領域とし、その外側の領域111を樹脂粒子の外層部領域とする。
そして、上記樹脂粒子の内層部領域および外層部領域それぞれにおいて、空孔部分を含む領域を含めた総面積Sに対し、上記断面画像において、空孔部分の総面積Svの割合(100Sv/S)を算出する。この平均値を樹脂粒子の空孔率(%)とする。
〔1−4〕原料としての樹脂粒子の空孔径の測定
上記樹脂粒子の内層部領域および外層部領域のそれぞれに、黒く観察される空孔部分において、任意の10箇所に関し、各体積を算出し、この体積と等しい体積をもつ球の直径を求める。この作業を任意の樹脂粒子10個について行い、得られた計100個の球の直径の平均値を算出し、その平均値を樹脂粒子の空孔径とする。
〔1−5〕表面層中に含まれる樹脂粒子の「立体的な粒子形状」の測定
帯電部材の表面の任意の凸部において、帯電部材の表面に並行になるような、縦200μm、横200μmの領域に亘って、帯電部材の凸部頂点側から20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所社製)にて切り出す。そして、その断面画像を撮影する。そして同じ粒子を撮影した画像を20nm間隔で組み合わせ、「立体的な粒子形状」を算出する。この作業を、帯電部材の表面の任意の100箇所について行う。
〔1−6〕表面層中に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径の測定
上記〔1−5〕に記載の方法で得られた「立体的な粒子形状」において、空孔を含む領域を含めた総体積を算出する。これが、該樹脂粒子が空孔を有さない中実粒子であると仮定したときの、該樹脂粒子の体積となる。そして、この体積と等しい体積を持つ球の直径を求める。得られた計100個の球の直径の平均値を算出し、これを樹脂粒子の「体積平均粒径」とする。
〔1−7〕表面層中に含まれる樹脂粒子の空孔率の測定
上記〔1−5〕に記載の方法で得られた「立体的な粒子形状」から、該樹脂粒子が空孔を有さない中実粒子であると仮定したときの該中実粒子の「凸部頂点側領域」を算出する。図5は、帯電部材の表面の凸部を形成している樹脂粒子を模式的に示した図である。本図を使用して空孔率の算出方法を下記に説明する。まず、「立体的な粒子形状」より、樹脂粒子の重心107を算出する。そして、帯電部材の表面と平行し、且つ、樹脂粒子の重心を通る仮想の平面115を作製し、この平面を、樹脂粒子の重心から、上記球の半径rの(√3)/2倍の距離だけ凸部頂点側へ、すなわち、重心107を117の位置まで、平行移動させる。平行移動により形成された平面116と樹脂粒子の表面とによって囲まれた、凸部頂点側の領域106を、該樹脂粒子が空孔を有さない中実粒子であると仮定したときの該中実粒子の「凸部頂点側領域」とする。そして、該領域において、上記「立体的な粒子形状」から、空孔の総体積を算出し、該領域の空孔を含めた総体積に対する割合を算出する。これを樹脂粒子の「凸部頂点側領域」における空孔率V11とする。
また、上記「立体的な粒子形状」から、樹脂粒子全体の空孔の総体積を算出し、前記樹脂粒子の空孔を含む領域を含めた総体積に対する割合を算出する。これを樹脂粒子全体の空孔率Vtとする。
〔1−8〕表面層中に含まれる樹脂粒子の空孔径の測定
該樹脂粒子が空孔を有さない中実粒子であると仮定したときの該中実粒子の「凸部頂点側領域」において、上記で得られた「立体的な粒子形状」から、空孔部の10箇所に関し、空孔部の最大長さと最小長さを測定し、この2つの長さの平均値を算出する。そして、この作業を任意の樹脂粒子10個について行う。得られた計100個の測定値の平均値を算出し、これを、樹脂粒子の「凸部頂点側領域」における空孔径とする。同時に、内層部領域の空孔径についても、上記と同様の方法で該領域の平均径を算出し、これを内層部領域の空孔径とする。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例および比較例の部数および%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<多孔質粒子などの製造例>
〔樹脂粒子A1の製造例〕
脱イオン水400質量部に、第三リン酸カルシウム8.0質量部を添加し、水性媒体を調製した。次いで、
重合性単量体としてのメチルメタクリレート32.0質量部、
架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート21.9質量部、
第1の多孔化剤としてのノルマルへキサン43.1質量部、
第2の多孔化剤としての酢酸エチル10.8質量部、および、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部
を混合し、油性混合液を調製した。上記の油性混合液をホモミキサーにより、回転数3600rpmにて水性媒体に分散させた。その後、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、250rpmで撹拌しながら、60℃で6時間かけて懸濁重合を行い、多孔質の樹脂粒子とノルマルへキサンおよび酢酸エチルを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4質量部を加え、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの濃度を水に対し、0.1質量%に調整した。
得られた水性懸濁液を蒸留してノルマルへキサンおよび酢酸エチルを除去し、残った水性懸濁液に関し、濾過と水洗を繰り返した後、80℃で5時間乾燥した。音波式分級機により、解砕および分級処理をおこない、体積平均粒径20.2μmの樹脂粒子A1を得た。前述した方法により、粒子の断面を観察したところ、樹脂粒子A1は、粒子の内層部に、22nm程度の空孔を有し、外層部に90nm程度の空孔を有する「多孔質粒子」であった。
〔樹脂粒子A2〜A6の製造例〕
油性混合液として、重合性単量体、架橋性単量体、第1の多孔化剤、第2の多孔化剤を、表1に示すように変更し、且つ、ホモミキサーの回転数を表1に示すように変更した以外は、製造例A1と同様にして、樹脂粒子A2〜A6を得た。これらの粒子は「多孔質粒子」であった。
〔樹脂粒子A7およびA9の製造例〕
内部に空孔を有しない以下の粒子を準備した。樹脂粒子A7としては、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(商品名:MBX−30、積水化成品工業社製)をそのまま使用した。樹脂粒子A9は、上記粒子を分級処理して得られた、体積平均粒径が10.0μmの粒子である。
〔樹脂粒子A8の製造例〕
樹脂粒子A8としては、熱膨張マイクロカプセル(商品名:EXPANSEL930−120、日本フィライト社製)をそのまま使用した。この粒子は、体積平均粒径20.2μmであり、内部に空孔を有していなかった。
〔多孔質粒子などの特性評価〕
(1)多孔質粒子の断面の観察
樹脂粒子A1〜A6については、可視光硬化型包埋樹脂D−800と四酸化ルテニウムを使用して観察することにより、空孔を鮮明に確認することができた。その際、樹脂部分は白く、空孔部分は、黒く観察された。
(2)その他の評価
各樹脂粒子について、前述した方法にて、体積平均粒径、内層部領域および外層部領域の空孔率、内層部領域および外層部領域の空孔径を測定した。また、内層部領域に対する外層部領域の空孔率の比、および、空孔径の比を算出した。これらの結果を表2に示す。なお、各樹脂粒子の形状(多孔質粒子、中実粒子、多中空粒子、または、単中空粒子)についても、表2に記載する。
<導電性粒子の製造例>
〔製造例B1〕
シリカ粒子(平均粒子径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。このときの攪拌速度は22rpmであった。その中に、カーボンブラック「#52」(商品名、三菱化学(株)製)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、さらに588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆したシリカ粒子の表面にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性微粒子を作製した。このときの攪拌速度は22rpmであった。なお、得られた複合導電性微粒子は、体積平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は1.1×102Ω・cmであった。
<絶縁性粒子の製造例>
〔製造例B2〕
針状ルチル型酸化チタン粒子(体積平均粒径15nm、縦:横=3:1、体積抵抗率2.3×1010Ω・cm)1000gに、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン110gおよび溶媒としてトルエン3000gを配合してスラリーを調製した。このスラリーを、攪拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得たスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30〜60℃、減圧度:約100Torr)によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理した粒子を室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理酸化チタン粒子を作製した。なお、得られた表面処理酸化チタン粒子は、体積平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は5.2×1015Ω・cmであった。
<帯電部材1の製造例>
〔1.導電性基体の作製〕
直径6mm、長さ244mmのステンレス鋼製の基体に、カーボンブラックを10質量%含有させた熱硬化性接着剤を塗布し、乾燥したものを導電性基体として使用した。
〔2.導電性ゴム組成物の作製〕
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共化合物、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対し、下記表3に示す他の7種類の材料を加えた。そして、50℃に調節した密閉型ミキサーで10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
これに、加硫剤として硫黄0.8質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部およびテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加した。次いで20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、導電性ゴム組成物を作製した。その際、二本ロールの間隙を1.5mmに調整した。
〔3.弾性ローラーの作製〕
クロスヘッドを具備する押出成形装置を用いて、前記導電性基体を中心軸として、その外周部を同軸円筒状に前記導電性ゴム組成物によって被覆し、ゴムローラーを得た。被覆したゴム組成物の厚みは、1.75mmに調整した。
このゴムローラーを、熱風炉にて160℃で1時間加熱したのち、弾性層の端部を除去して、長さを224mmとし、さらに、160℃で1時間2次加熱を行い、層厚1.75mmの予備被覆層を有するローラーを作成した。
得られたローラーの外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨した。研磨砥石としてビトリファイド砥石を用い、砥粒は緑色炭化珪素(GC)で粒度は100メッシュとした。ローラーの回転数を350rpmとし、研磨砥石の回転数を2050rpmとした。ローラーの回転方向と研磨砥石の回転方向は、同方向(従動方向)とした。切込み速度は、砥石が未研磨ローラーに接してから直径9mmに研磨されるまでに10mm/minから0.1mm/minまで段階的に変化させ、スパークアウト時間(切込み0mmでの時間)は5秒間に設定し、弾性ローラーを作製した。弾性層の厚みは、1.5mmに調整した。なお、このローラーのクラウン量は100μmとした。
〔4.表面層用塗布液の作製〕
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、(株)ダイセル製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が12質量%となるように調整した。この溶液834質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表4の成分(1)の欄に示す他の4種類の材料を加え、混合溶液を調製した。
次いで、内容積450mLのガラス瓶内に上記混合溶液188.5gを、メディアとしての体積平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した。分散後、樹脂粒子A1を7.2g添加した。なお、これは、アクリルポリオール固形分100質量部に対して、樹脂粒子A1が、40質量部相当量である。その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用の塗布液を作製した。上記塗布液の比重は、0.9110であった。なお、比重は、塗布液に市販の比重計を投入して測定した。
〔5.表面層の形成〕
前記弾性ローラーを、その長手方向を鉛直方向にして、前記塗布液中に浸漬して、ディッピング法で塗工した。浸漬時間は9秒間、引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度は、2mm/s、その間は、時間に対して、直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を、23℃で30分間風乾した後、熱風循環乾燥炉にて温度80℃で30分間、さらに、温度160℃で1時間乾燥して、塗膜を硬化させて、導電性基体の外周部に、弾性層および表面層がこの順に形成された帯電部材1を得た。表面層の膜厚は5.0μmであった。なお、表面層の膜厚は、樹脂粒子が存在しない箇所において、測定した。
〔6.表面層に含まれる樹脂粒子の各種特性値の測定〕
前述した方法により、樹脂粒子の体積平均粒径、樹脂粒子全体の空孔率Vt、「凸部頂点側領域」の空孔率V11、および「凸部頂点側領域」の空孔径を測定した。結果を表8に示す。
〔7.帯電部材の電気抵抗の測定〕
前述した方法により、帯電部材1の電気抵抗値を測定した。結果を表8に示す。
〔8.ニップ内放電強度の確認〕
ガラス板(縦300mm、横240mm、厚み4.5mm)の表面上に5μmのITO膜を形成し、さらに、その上に、電荷輸送層のみを17μmに成膜した。図6に示すように、上記成膜後のガラス板401の表面側から、帯電部材5を、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接できるような工具を作成した。さらに、ガラス板401を、モノクロレーザプリンタ(商品名:「LBP6300、キヤノン(株)製)と同様のスピードで走査できるようにした。
上記ガラス板401を感光体であると見做した。そして、当接部下側(ガラス板401の表面と反対側)から高速度ゲートI.I.ユニットC9527−2(製品名、浜松ホトニクス(株)製)を介して、高速度カメラFASTCAM−SA1.1(製品名、浜松ホトニクス(株)製)で観察した。そうすることにより、帯電部材のニップ内放電強度を確認した。帯電部材への印加電圧は、上記画像評価(耐久性評価)と同条件とした。
まず、上記耐久性評価前の帯電部材について観察を行い、さらに、上記耐久性評価後の帯電部材について観察を行った。これにより、ニップ内放電強度が維持できているかどうかを確認し、上記電子写真画像の品位との相関を確認した。
ニップ内放電について、撮影速度3000fpsで、約0.3秒間撮影を行い、その動画を平均化処理した画像を出力した。撮影に際しては、適宜感度を調整し、撮影画像の明るさを調整した。出力した画像を、耐久性評価前および耐久性評価後で比較し、下記基準で判定した。評価結果を表16に示す。
なお、ニップ内放電の観察環境は、温度15℃、相対湿度10%の環境とした。この環境は、湿度が低いため、帯電部材の電気抵抗値の不均一性が最も促進されやすい環境であるためである。帯電部材と同時に、観察のためのガラス板も同時に、上記の環境に放置し、上記の環境から取り出した直後に、観察を行った。
ランク1;耐久性評価前後でニップ内放電強度が変化しない。
ランク2;耐久性評価前後でニップ内放電強度の変化が、軽微に認められる。
ランク3;耐久性評価前後でニップ内一部に、ニップ内放電強度の低下が認められる。
ランク4;耐久性評価後において、ニップ内放電がほとんど発生していない。
<帯電部材2の製造例>
樹脂粒子の種類を表8に示すように変更したこと以外は、帯電部材1の製造例と同様にして、帯電部材2を得た。
<帯電部材3の製造例>
〔1.表面層塗布液の作製〕
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、(株)ダイセル製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が11質量%となるように調整した。この溶液714質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記表5の成分(1)の欄に示す他の4種類の材料を加え、混合溶液を調製した。なお、このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
次いで、内容積450mLのガラス瓶内に上記混合溶液187gを、メディアとしての体積平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した。分散後、樹脂粒子A6を8.25g添加した。なおこれは、アクリルポリオール固形分100質量部に対して、樹脂粒子A6が、50質量部相当量である。その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用の塗布液を作製した。上記塗布液の比重は、0.9000であった。上記以外は、帯電部材1の製造例と同様にして、帯電部材3を得た。
<帯電部材4の製造例>
樹脂粒子の種類を表8に示すように変更した以外は、帯電部材3の製造例と同様にして、帯電部材4を得た
<帯電部材5の製造例>
樹脂粒子の種類を表8に示すように変更した以外は、帯電部材1の製造例と同様にして、帯電部材5を得た。
<帯電部材6の製造例>
〔1.弾性ローラーの作製〕
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(商品名:N230SV、JSR(株)製)100質量部に対し下記表7の成分(1)の欄に示す他の4種類の材料を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
これに、加硫剤として硫黄1.2質量部、加硫促進剤としてテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)(商品名:パーカシットTBzTD、フレキシス社製)4.5質量部を添加した。そして、温度25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、導電性ゴム組成物を作製した。
この後、樹脂粒子の種類を表8に示すように変更した以外は、帯電部材3の製造例と同様にして、帯電部材6を得た。
<比較用帯電部材7の製造例>
〔1.弾性ローラーの作製〕
エピクロルヒドリンゴムとして、エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共化合物、EO/EP/AGE=56mol%/40mol%/4mol%)を用いた以外は、<帯電部材1の製造例>と同様にして、弾性ローラーを得た。
〔2.表面層用の塗布液の作製〕
ポリビニルブチラール「エスレックB」(商品名、積水化学工業社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が10質量%になるように調整した。この溶液1000質量部(ポリビニルブチラール固形分100質量部)に対して下記表6の成分(1)の欄に示す他の3種類の材料を加え、混合溶液を調製した。
次いで、内容積450mLのガラス瓶内に上記混合溶液170gを、メディアとしての体積平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて30時間分散した。分散後、樹脂粒子A7を7.5g添加した。なおこれは、アクリルポリオール固形分100質量部に対して、樹脂粒子A7が、50質量部相当量である。その後、5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用の塗布液を作製した。上記塗布液の比重は、0.9100であった。
この後、弾性ローラーおよび表面層用の塗布液を上記に変更し、且つ、表面層塗膜の最終乾燥温度を130℃に変更したこと以外は、帯電部材1の製造例と同様にして、比較用帯電部材7を得た。
<比較用帯電部材8の製造例>
弾性ローラーとして、比較例6と同様のローラーを使用した。表面層用の塗布液としては、<比較用帯電部材7>の表面層用の塗布液に使用する溶剤を、メチルイソブチルケトンからメチルエチルケトンへ変更し、樹脂粒子A7の代わりに樹脂粒子A8(マイクロカプセル)を用い、添加部数を20質量部に変更した。
この後、表面層塗膜の最終乾燥温度を160℃、乾燥時間を30分間に変更した以外は、比較用帯電部材7の製造例と同様にして、比較用帯電部材8を得た。本比較例においては、最終乾燥温度投入時に、樹脂粒子A8が膨張し、帯電部材の表面には、「単中空粒子」に由来する凸部が形成された。この樹脂粒子は本発明の空孔率の条件を満足していなかった。
<比較用帯電部材9の製造例>
樹脂粒子A7の代わりに樹脂粒子A9(中実粒子)を用いたこと以外は、<比較用帯電部材7>と同様にして、比較用帯電部材9を得た。この帯電部材の凸部は空孔を有していなかった。
〔各種評価〕
各帯電部材について、帯電部材の凸部において、樹脂粒子の体積平均粒径、樹脂粒子全体の空孔率Vt、「凸部頂点側領域」の空孔率V11、および「凸部頂点側領域」の空孔径を測定した。
なお、表面層用の塗布液の比重、表面層の膜厚の測定、耐久性評価の実施と、それに伴う、ニップ内放電強度の確認、帯電ローラーの電気抵抗値の測定を実施した。
これらの評価結果を表8に示す。
<磁性体の製造例>
(磁性体1)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対してリン元素換算で0.12質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.60質量%となる量のSiO2を混合した。そのようにして、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対して0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた。その後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。このとき、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整した。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100質量部に対し1.7質量部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにて濾過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.23μmの磁性体1を得た。
(磁性体2)
磁性体1の製造例において、リン元素を添加せずに、珪素元素換算で0.40質量%となる量のSiO2を混合した以外は同様にして、スラリー液を調整し、磁性体1の製造例と同様に、酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。
濾過、洗浄、乾燥した後、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体2を得た。
<ポリエステル樹脂の製造例>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、下記成分を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物75質量部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物25質量部
・テレフタル酸110質量部
・チタン系触媒0.25質量部
(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))
次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2mgKOH/g以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸8質量部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕してポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されたメインピーク分子量(Mp)が9500であった。
<トナー粒子の製造例1>
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン78.0質量部
・n−ブチルアクリレート22.0質量部
・ジビニルベンゼン0.6質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土谷化学工業(株))2.0質量部
・磁性体190.0質量部
・ポリエステル樹脂13.0質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して重合性単量体組成物を得た。得られた重合性単量体組成物を60℃に加温し、フィッシャートロプシュワックス(融点:74℃、数平均分子量Mn:500)15.0質量部を添加混合した。溶解した後に重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド7.0質量部を溶解し、トナー組成物を得た。
上記水系媒体中に上記トナー組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12500rpmで12分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ74℃で6時間反応させた。
反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥してトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1の物性を表9に示す。
<トナー粒子の製造例2、3>
トナー粒子の製造例1において、ホモミキサーの回転数を12500rpmから10500rpmおよび9500rpmへ低下させること以外は同様にして、それぞれトナー粒子2および3を製造した。得られたトナー粒子2および3の物性を表9に示す。
<トナー粒子の製造例4>
・スチレンアクリル共重合体100質量部
(スチレンとn−ブチルアクリレートの質量比が78.0:22.0、メインピーク分子量Mpが10000)
・磁性体290質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土谷化学工業(株))2.0質量部
・フィッシャートロプシュワックス4質量部
(融点:74℃、数平均分子量Mn:500)
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて機械式粉砕(微粉砕)した。得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉および粗粉を同時に分級除去して、トナー粒子Aを得た。
このトナー粒子Aに対し熱球形化処理を行った。熱球形化処理はサーフュージングシステム(日本ニューマチック(株)製)を使用して行った。熱球形化装置の運転条件は、
フィード量=5kg/hr、
熱風温度C=260℃、
熱風流量=6m3/min、
冷風温度E=5℃、
冷風流量=4m3/min、
冷風絶対水分量=3g/m3、
ブロワー風量=20m3/min、
インジェクションエア流量=1m3/min、
拡散エア=0.3m3/min
とした。
上記条件の表面処理によって、重量平均粒径(D4)8.2μmであるトナー粒子4を得た。得られたトナー粒子4の物性を表9に示す。
<トナー粒子の製造例5>
トナー粒子の製造例4において、得られたトナー粒子Aを、表面改質装置ファカルティー(ホソカワミクロン社製)で表面改質および微粉除去を行い、トナー粒子5を得た。表面改質装置ファカルティーを用いた表面改質および微粉除去の条件は、分散ローターの回転周速を200m/secとした。また、微粉砕品の投入量を1サイクル当たり6kgとし、表面改質時間(サイクルタイム:原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)を90秒間とした。また、トナー粒子排出時の温度は45℃であった。得られたトナー粒子5の物性を表9に示す。なお、トナー粒子1〜5について、真密度を測定した結果、いずれも1.6g/cm3であった。
<シリカ微粒子の製造例1>
撹拌機付きオートクレーブに、BET比表面積300m2/gの乾式シリカ(平均1次粒径=8nm)を入れ、窒素雰囲気下、ジメチルシリコーオイル(動粘度50cSt)を、乾式シリカ100質量部に対して、20質量部添加し、250℃で30分保持した。
引き続き、ヘキサメチルジシラザン(以下、表中ではHMDSと記載する。)を10質量部添加後、反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、乾式シリカ100質量部に対し、10質量部のヘキサメチルジシラザンを内部に噴霧した。そして、200℃に加熱した状態で、シリカの流動化状態でシラン化合物処理を行った。この反応を60分間継続した後、反応を終了した。反応終了後、オートクレーブを脱圧し、窒素ガス気流による洗浄を行い、疎水性シリカから過剰のヘキサメチルジシラザンおよび副生物を除去した。
その後、取り出したのち、解砕処理を実施し、シリカ微粒子1を得た。シリカ微粒子1の物性を表10に示す。
<シリカ微粒子の製造例2〜13>
シリカ微粒子の製造例1において、使用する未処理乾式シリカの粒径・BETを変更し、解砕処理強度を適宜調整した以外は同様にして、シリカ微粒子2〜13を得た。シリカ微粒子2〜13の物性を表10に示す。なお、シリカ微粒子1〜13について、真密度を測定した結果、いずれも2.2g/cm3であった。
<チタン酸ストロンチウム微粒子の製造例1〜5>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンを純水で濾液の電気伝導度が2200μS/cmになるまで洗浄した。該含水酸化チタンスラリーにNaOHを添加して吸着している硫酸根をSO3として0.24%になるまで洗浄した。次に該含水酸化チタンスラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.0としてチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを6.0として上澄み液の電気伝導度が120μS/cmになるまで純水を用いてデカンテーションによって洗浄した。
以上のようにして得られた含水率91%のメタチタン酸533g(0.6モル)をSUS製反応容器に入れ、窒素ガスを吹き込み20分間放置し反応容器内を窒素ガス置換した。Sr(OH)2・8H2O(純度95.5%)183.6g(0.66モル)を加え、さらに蒸留水を加えて0.3モル/リットル(SrTiO3換算)、SrO/TiO2モル比1.10のスラリーに調製した。
窒素雰囲気中で該スラリーを90℃まで昇温し、反応を行った。反応後40℃まで冷却し、窒素雰囲気下において上澄み液を除去し、2.5リットルの純水を加えてデカンテーションを行うという操作を2回繰り返して洗浄を行った後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを110℃の大気中で4時間乾燥し、チタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
脂肪酸金属塩であるステアリン酸ナトリウム水溶液(ステアリン酸ナトリウム7部と水100部)中にチタン酸ストロンチウム微粒子を100部添加した。ここに撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を滴下し、チタン酸ストロンチウム微粒子の表面にステアリン酸アルミニウムを析出、吸着させてステアリン酸で処理したチタン酸ストロンチウムを作製した。また、該スラリーを90℃まで昇温したのちの反応時間を長くしていくことで粒径を大きくし、目的の粒径を有するチタン酸ストロンチウム微粒子1〜5を調製した。チタンストロンチウム微粒子1〜5の物性について、表11に示す。
ST微粒子:チタン酸ストロンチウム微粒子
<トナーの製造例1>
トナー粒子の製造例1で得たトナー粒子1に対して、図13に示す装置を用いて、外添混合処理を行った。
本実施例においては、図13に示す装置で、本体ケーシング1の内周部の径が130mmであり、処理空間9の容積が2.0×10−3m3の装置を用い、駆動部8の定格動力を5.5kWとし、攪拌部材3の形状を図14のものとした。そして、図14における攪拌部材3aと攪拌部材3bの重なり幅dを攪拌部材3の最大幅Dに対して0.25Dとし、攪拌部材3と本体ケーシング1内周とのクリアランスを3.0mmとした。
上記した装置構成で、トナー粒子1の100質量部と、シリコーンオイルとシランカップリング剤で疎水化処理したシリカ微粒子1の0.40質量部と、チタン酸ストロンチウム微粒子1の0.30質量部とを、図13に示す装置に投入した。
トナー粒子とシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子を投入後、トナー粒子とシリカ微粒子およびチタン酸ストロンチウム微粒子を均一に混合するために、プレ混合を実施した。プレ混合の条件は、駆動部8の動力を0.10W/g(駆動部8の回転数150rpm)とし、処理時間を1.2分間とした。
プレ混合終了後、外添混合処理を行った。外添混合処理条件は、駆動部8の動力を0.60W/g(駆動部8の回転数1400rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を3分間とした。
その後、シリカ微粒子を0.10質量部添加(トナー粒子に対してトータル0.50質量部)し、駆動部8の動力を0.60W/g(駆動部8の回転数1400rpm)で一定となるように攪拌部材3の最外端部周速を調整し、さらに処理を2分間実施とした。
外添混合処理後、直径500mm、目開き75μmのスクリーンを設置した円形振動篩機で粗粒などを除去し、トナー1を得た。トナー1を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、8nmであった。また、トナー表面のチタン酸ストロンチウム微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、120nmであった。トナー1の外添条件、物性を表12に示す。
<トナー2〜30、および比較トナー1〜8の製造例>
実施例用トナー1の製造例において、表12または表13に示す、外添剤の種類および添加部数、トナー粒子、外添装置、外添条件などへ変更した以外は同様にして、トナー2〜30、および比較トナー1〜8を製造した。得られたトナー2〜30、および比較トナー1〜8の物性を表14にそれぞれ示す。
ここで、外添装置としてヘンシェルミキサーを使用する場合、ヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機(株))を用いた。また、一部の製造例においては、プレ混合工程を行わなかった。
<実施例1>
画像形成装置として、LBP−6300(キヤノン製)を用い、プロセススピードを約1.5倍の300mm/secに改造した。
カートリッジには、現像スリーブとして、直径14mm径から直径10mm径スリーブを搭載させ、さらに帯電部材として帯電部材1を搭載させた。さらに、トナー充填部の容積を1.5倍とした改造カートリッジを用いた。
小径の現像スリーブを搭載した画像形成装置において、プロセススピードを上げることによって、トナー劣化に伴う画像欠陥を厳しく評価することができる。
この改造機を用いて、トナー1を使用し、高温高湿環境下(32.5℃/80%RH)にて、印字率が1%の横線を2枚間欠モードで10000枚画出し試験を行った。
特に、高温高湿環境下(32.5℃/80%RH)で評価することによって、トナー劣化に伴う画像欠陥をより厳しく評価できるとともに、トナーの帯電分布が不均一になりやすく、
繰り返し使用後半に放置された後に画出しされた場合などには、非画像部へのかぶりが発生しやすく、厳しい評価を行っていることになる。
上記、トナー1の評価結果においては、繰り返し使用試験前後で濃度が高く、感光体融着に伴う画像欠陥も抑制され、さらに、繰り返し使用後半に放置された後に画像出力された場合も、非画像部へのかぶりが抑制された良好ない画像を得ることができた。評価結果を表15に示す。
本発明の実施例および比較例で行った各評価の評価方法とその判断基準について以下に述べる。
<画像濃度>
画像濃度はベタ黒画像部を形成し、このベタ黒画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
繰り返し使用初期1枚目における、ベタ黒画像の反射濃度の判断基準は以下のとおりである。
A:非常に良好(1.48以上)
B:良好(1.44以上1.48未満)
C:普通(1.40以上1.44未満)
D:悪い(1.40未満)
繰り返し使用後半での画像濃度の判断基準は以下のとおりである。
繰り返し使用初期のベタ黒画像の反射濃度と、10000枚繰り返し使用後のベタ黒画像の反射濃度の差が、小さいほど良好とした。
A:非常に良好(差が0.06未満)
B:良好(差が0.06以上0.12未満)
C:普通(差が0.12以上0.17未満)
D:悪い(差が0.17以上)
<繰り返し使用後半放置かぶり>
上記、10000枚繰り返し使用後、さらに、評価機および改造プロセスカートリッジを、同環境に3日間放置した。その後、放置かぶりを評価した。放置かぶりの評価は、放置後、ベタ白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETERMODELTC−6DSを使用して測定した。一方、ベタ白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。ベタ白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてかぶりを算出した。
かぶり(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−ベタ白画像サンプルの反射率(%)
なお、かぶりの判断基準は以下のとおりである。
A:紙面内のカブリ最大値が1.0%未満。
B:紙面内のカブリ最大値が1.0%以上1.5%未満。
C:紙面内のカブリ最大値が1.5%以上2.5%未満。
D:紙面内のカブリ最大値が2.5%以上。
<感光体融着>
感光体融着は、上記、10000枚の耐久試験中にベタ黒画像を出力することにより判断した。
感光体融着の判断基準は以下のとおりである。
A:耐久試験中、感光体を観察しても、感光体融着の形跡が見られない。
B:耐久試験中、感光体には感光体融着がわずかに確認できるが、ベタ黒画像に白ポチ画像として現れない。
C:耐久試験中、ベタ黒画像に感光体融着に伴う、感光体周期の白ポチ画像がわずかに見られる。
D:耐久試験中、ベタ黒画像に感光体融着に伴う、感光体周期の白ポチ画像が目立つ。
<実施例2〜30、比較例1〜12>
実施例2〜30として、トナー1の代わりにトナー2〜30を用いて、実施例1と同様に評価を行った。また、比較例として、表15に示す帯電部材とトナーの組み合わせで同様に評価した。評価結果を表15に示す。