JPWO2014174841A1 - 車両用音響制御装置、車両用音響制御方法 - Google Patents

車両用音響制御装置、車両用音響制御方法 Download PDF

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Abstract

乗員の周囲に配置された複数のスピーカ(23)と、複数のスピーカ(23)を個別に駆動することで車室内の音場を制御するコントローラ(21)と、を備える。コントローラ(21)は、車両挙動の変化とは反対方向に、音場を回転させたり変位させたりする。このとき、車両挙動が変化するときの周波数が、予め定めた周波数よりも高いときに、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させ、車両挙動の変化量が大きいほど、音場の変化量を大きくする。

Description

本発明は、車両用音響制御装置、及び車両用音響制御方法に関するものである。
特許文献1では、車両挙動の変化に伴って運転者の頭部が動くことに着目し、地図情報や車両の走行状態から運転者の頭部の動きを予測し、その動きに追従するように車室内の音場を制御することにより、所望の音響効果を保つことを提案している。
特許第4305333号公報
上記特許文献1記載の技術は、運転者の動きと、車室内における音場の動きとの整合性を図っているが、乗員の乗心地を向上させるものではない。
本発明の課題は、乗員の乗心地を向上させることである。
本発明の一態様に係る車両用音響制御装置は、乗員の周囲に複数のスピーカを配置し、これら複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御するものである。そして、車両挙動の上下方向の変化量を検出し、車両挙動の上下方向の変化量に応じて、車両挙動の変化方向と反対方向に、車室内の音場を変化させる。
本発明によれば、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させることにより、車両挙動の抑制を演出することができる。すなわち、実際には車体挙動に変化が生じていても、車両挙動が抑制されているような感覚(印象)を乗員に与えることができ、乗心地を向上させることができる。
車両用音響制御装置の構成図である。 第1実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。 音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である。 音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。 音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。 平面視の車室空間を模式的に示した図である(音場回転)。 平面視の車室空間を模式的に示した図である(音場変位)。 第1実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。 実際の車両挙動に対する乗員の体感挙動について説明したタイムチャートである。 実際の車両挙動に対する乗員の体感挙動について説明した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
先ず、車両用音響制御装置の構成について説明する。
図1は、車両用音響制御装置の構成図である。
車両用音響制御装置は、自動車に搭載されており、音響機器11と、操舵角センサ12と、車輪速センサ13と、6軸モーションセンサ14と、アクセルセンサ15と、マスタバック圧力センサ16と、ナビゲーションシステム17と、サスペンションストロークセンサ18と、コントローラ21と、を備える。
音響機器11は、2チャンネル以上の音声を再生する所謂ステレオフォニック再生が可能な音声信号を出力する。この音響機器11は、例えばCDドライブ、DVDドライブ、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ、AM/FM/TVチューナ、ポータブルオーディオプレイヤ等からなる。すなわち、CDドライブ、DVDドライブ、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ等により、各種記憶媒体から音声情報を読み出したり、AM/FM/TVチューナ等を介した無線通信により、音声情報を受信したり、USBインターフェイスや無線通信モジュールを介して接続されたポータブルオーディオプレイヤから音声情報を入力したりする。音響機器11は、取得した音声信号をコントローラ21へ出力する。
操舵角センサ12は、ロータリエンコーダからなり、ステアリングシャフトの操舵角θsを検出する。この操舵角センサ12は、ステアリングシャフトと共に円板状のスケールが回転するときに、スケールのスリットを透過する光を二つのフォトトランジスタで検出し、ステアリングシャフトの回転に伴うパルス信号をコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力されたパルス信号からステアリングシャフトの操舵角θsを判断する。なお、は、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
車輪速センサ13は、各車輪の車輪速度VwFL〜VwRRを検出する。この車輪速センサ13は、例えばセンサロータの磁力線を検出回路によって検出しており、センサロータの回転に伴う磁界の変化を電流信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電流信号から車輪速度VwFL〜VwRRを判断する。
6軸モーションセンサ14は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)において、各軸方向の加速度(Gx、Gy、Gz)、及び各軸周りの角速度(ωx、ωy、ωz)を検出する。ここでは、車体前後方向をX軸とし、車体左右方向をY軸とし、車体上下方向をZ軸とする。この6軸モーションセンサ14は、加速度の場合には、例えば固定電極に対する可動電極の位置変位を静電容量の変化として検出しており、各軸方向の加速度、及び加速度と方向に比例した電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号から加速度(Gx、Gy、Gz)を判断する。
なお、6軸モーションセンサ14は、前後方向では加速、左右方向では右旋回、上下方向ではバウンドを正の値として検出し、前後方向では減速、左右方向では左旋回、上下方向ではリバウンドを負の値として検出する。また、6軸モーションセンサ14は、角速度の場合には、例えば水晶音叉からなる振動子を交流電圧によって振動させ、そして角速度入力時のコリオリ力によって生じる振動子の歪み量を電気信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電気信号から角速度(ωx、ωy、ωz)を判断する。なお、6軸モーションセンサ14は、前後方向軸(ロール軸)周りでは右旋回、左右方向軸(ピッチ軸)周りでは加速、上下方向軸(ヨー軸)周りでは右旋回を正の値として検出し、前後方向軸(ロール軸)周りでは左旋回、左右方向軸(ピッチ軸)周りでは減速、上下方向軸(ヨー軸)周りでは左旋回を負の値として検出する。
アクセルセンサ15は、アクセルペダルの踏込み量に相当するペダル開度PPO(操作位置)を検出する。このアクセルセンサ15は、例えばポテンショメータであり、アクセルペダルのペダル開度PPOを電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号からアクセルペダルのペダル開度PPOを判断する。なお、アクセルペダルが非操作位置にあるときに、ペダル開度PPOが0%となり、アクセルペダルが最大操作位置(ストロークエンド)にあるときに、ペダル開度PPOが100%となる。
マスタバック圧力センサ16は、マスタバック(ブレーキブースタ)内の圧力、つまりブレーキペダル踏力Pbを検出する。このマスタバック圧力センサ16は、マスタバック内の圧力をダイヤフラム部で受け、このダイヤフラム部を介してピエゾ抵抗素子に生じる歪みを電気抵抗の変化として検出し、圧力に比例した電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号からマスタバック内の圧力、つまりブレーキペダル踏力Pbを判断する。
ナビゲーションシステム17は、自車両の現在位置と、その現在位置における道路地図情報を認識する。このナビゲーションシステム17は、GPS受信機を有し、四つ以上のGPS衛星から到着する電波の時間差に基づいて自車両の位置(緯度、経度、高度)と進行方向とを認識する。そして、DVD‐ROMドライブやハードディスクドライブに記憶された道路種別、道路線形、車線幅員、車両の通行方向等を含めた道路地図情報を参照し、自車両の現在位置における道路地図情報を認識しコントローラ21に出力する。なお、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)として、双方向無線通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)を利用し、各種データをインフラストラクチャから受信してもよい。
サスペンションストロークセンサ18は、各車輪におけるサスペンションストロークを検出する。このサスペンションストロークセンサ18は、例えばポテンショメータからなり、サスペンションリンクの回転角を電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。具体的には、車両が静止状態にある非ストローク時に標準電圧を出力し、バウンドストローク時に標準電圧よりも小さな電圧を出力し、リバウンドストローク時に標準電圧よりも大きな電圧を出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号から各車輪におけるサスペンションストロークを判断する。
コントローラ(ECU)21は、例えばマイクロコンピュータからなり、各センサからの検出信号に基づいて音響制御処理を実行し、アンプ(AMP)22を介してスピーカ23LFL〜23LRR、及び23UFL〜23URRを駆動する。なお、各スピーカを区別する必要のない場合は、符号を“23”として説明する。
アンプ22は、コントローラ21を介して入力される音声信号を増幅してスピーカ23に出力し、また高音域、中音域、低音域の音量を個別に調整したり、ステレオフォニック再生による音量をチャンネルごとに調整したりする。
スピーカ23は、アンプ22を介して入力される電気信号を物理的な信号に変換して音声を出力する。各スピーカ23は、車室内に設けてあり、例えばダイナミックスピーカからなる。すなわち、振動板に直結したコイルに対して電気信号を入力し、電磁誘導によるコイルの振動によって振動板を振動させることで、電気信号に応じた音声を放射する。各スピーカ23は、全帯域用のフルレンジスピーカだけではなく、低音域用のウーファ、中音域用のスコーカ、高音域用のツイータ等、2ウェイ以上のスピーカからなるマルチレンジスピーカとしてもよい。
スピーカ23の符号に付した三つの英字は、車室内の取り付け位置を表しており、一文字目は車室内の上下位置を表し、二文字目の英字は車室内の前後位置を表し、三文字目の英字は車室内の左右位置を表す。すなわち、一文字目の英字が“L”であれば車室内の下側を表し、“U”であれば車室内の上側を表す。また、二文字目の英字が“F”であれば車室内の前側を表し、“R”であれば車室内の後側を表す。また、三文字目の英字が“L”であれば車室内の左側を表し、“R”であれば車室内の右側を表す。
したがって、各スピーカ23のうち、“LFL”は車室内における下側・前側・左側に位置し、“LFR”は車室内における下側・前側・右側に位置し、“LRL”は車室内における下側・後側・左側に位置し、“LRR”は車室内における下側・後側・右側に位置する。また、“UFL”は車室内における上側・前側・左側に位置し、“UFR”は車室内における上側・前側・右側に位置し、“URL”は車室内における上側・後側・左側に位置し、“URR”は車室内における上側・後側・右側に位置する。なお、車室内における下側/上側、前側/後側、左側/右側とは、夫々、運転者のリスニングポイント、具体的には運転者の頭部(イヤーポイント)を基準とすることが好ましい。
上記が車両用音響制御装置の構成である。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をブロック図に基づいて説明する。
図2は、第1実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。
音響制御処理では、音場変化量設定部71と、音声信号調整指令部72と、を備える。
音場変化量設定部71では、車両挙動を入力し、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させる音場変化量Cを設定する。車両挙動とは、車体の前後方向、横方向、上下方向(バウンス方向)、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向等、任意の車両挙動であり、音場変化量Cについても同様である。本実施形態では、音場変化量Cのうち、例えばヨー方向の成分を音場回転量αとし、水平方向の成分を音場変位量βとして説明する。さらに、音場変位量βのうち、前後方向の成分を音場変位量βxとし、横方向の成分を音場変位量βyとする。
ここでは、車両挙動の変化量(振動振幅)Aを算出し、この変化量Aに応じて音場変化量Cを設定する。例えば、車速V、ロール角速度ωx、ピッチ角速度ωy、ヨー角速度ωz等であれば、積分演算により、夫々の変化量Aとして算出する。また、前後方向加速度Gx、横方向加速度Gy、上下方向加速度Gz等であれば、二回の積分演算により、夫々の変化量Aとして算出する。また、ロール角、ピッチ角、バウンス量等は、サスペンションストロークから算出してもよい。また、車両挙動の各パラメータの周波数をハイパスフィルタ処理する。ハイパスフィルタのカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。勿論、ハイパスフィルタ処理に代えて、バンドパスフィルタ処理でもよい。そして、例えば図3〜図5に示すようなマップを参照し、変化量Aに応じて音場変化量Cを設定する。
図3は、音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である。
このマップによれば、変化量Aが0から正方向に増加するほど、音場変化量Cが0から正方向に増加し、変化量Aが0から負方向に減少するほど、音場変化量Cが0から負方向に減少する。
図4は、音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。
ここでは、変化量Aについては、0<|A1|<|A2|の関係となるA1及びA2を予め定め、音場変化量Cについては、0<|CMAX|の関係となる最大変化量CMAXを予め定めている。なお、A1は0近傍と見なせる範囲の値に相当し、A2は、通常の車両挙動で比較的早いと見なせる範囲の値に相当する。また、最大変化量CMAXは、車両挙動の各パラメータの周波数に応じて定める。そして、変化量Aの絶対値が0から|A1|の範囲にあるときには、音場変化量Cが0を維持する。また、変化量Aの絶対値が|A1|から|A2|の範囲にあるときには、変化量Aが速いほど、音場変化量Cが0から最大変化量CMAXの範囲で大きくなる。また、変化量Aの絶対値が|A2|よりも大きいときには、音場変化量Cが最大変化量CMAXを維持する。
図5は、音場変化量Cの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。
このマップは、前述した図4のマップをベースにし、変化量Aの絶対値が増加から減少に転じるときに、ヒステリシスを設けたものである。すなわち、変化量Aの絶対値を増加させていた状態から減少させると、増加から減少に転じた時点の音場変化量Cを維持する。そして、変化量Aの絶対値の減少量が予め定めたヒステリシス量(例えばA1)を上回ると、音場変化量Cが減少する。また、変化量Aの絶対値が増加から減少に転じ、0まで減少する前に再び増加に転じたときには、減少から増加に転じた時点の音場変化量Cを維持する。そして、変化量Aの絶対値の増加量が予め定めたヒステリシス量(例えばA1)を上回ると、音場変化量Cが増加する。
なお、単に変化量Aに応じて音場変化量Cを設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、車両挙動の変化が、予め定めた速度よりも遅かったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場変化量Cを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされることを抑制する。
また、上記の変化量Aを変化速度や変化加速度に置換し、これら変化速度や変化加速度に応じて音場変化量Cを設定するようにしてもよい。
上記が音場変化量Cの設定である。
音声信号調整指令部72では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、車両挙動の変化とは反対方向に変化させるために、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22へ出力する。
先ず、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、車両挙動の変化とは反対方向にαだけ回転させる音場の回転について説明する。
図6は、平面視の車室空間を模式的に示した図である(音場回転)。
ここでは、前左のスピーカをFLとし、前右のスピーカをFRとし、これらのスピーカFL及びFRから音声を出力している音場を、座標原点Oを中心に、左方向(反時計回り)に角度αだけ回転させる場合について説明する。FL′及びFR′は、角度αだけ回転させたと仮定したスピーカ位置である。元々、前右のスピーカ位置FRから聴こえていた音声を、FR′から聴こえるようにするには、先ずベクトルOFR′を、ベクトルOFRとベクトルOFLとに分解する。そして、これらベクトルOFR及びベクトルOFLの大きさの割合に応じて、スピーカFRから出力していた音声を、スピーカFL及びFRに分配し合成する。他のスピーカも同様に分解してから、他のスピーカに分配して合成する。こうして音声信号を調整する駆動指令を生成して出力する。
次に、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、車両挙動の変化とは反対方向にβだけ変位させる音場の変位(並進移動)について説明する。
図7は、平面視の車室空間を模式的に示した図である(音場変位)。
ここでは、前左のスピーカをFLとし、前右のスピーカをFRとし、後左のスピーカをRLとし、後右のスピーカをRRとし、これらのスピーカFL〜RRから音声を出力している音場中心を点P1から点P2まで変位させる場合について説明する。ここで、点P2は車幅方向に沿って点P1から車体左側にβyだけ移動させた位置であり、且つ前後方向に沿って点P1から車体後側にβxだけ変位させた位置である。
先ず、音場中心が点P1にある状態を初期状態とする。このとき、前側のスピーカFL及びFRから出力する音量と、後側のスピーカRL及びRRから出力する音量との前後配分は均等であり、且つ左側のスピーカFL及びRLから出力する音量と、右側のスピーカFR及びRRから出力する音量との左右配分は均等であるとする。この初期状態から音場中心を点P2へと変位させるには、音量の前後配分や左右配分を変化させる。
すなわち、音場中心を、車体後側にβxだけ変位させる場合には、前側のスピーカFL及びFRから出力する音量を相対的に減少させ、且つ後側のスピーカRL及びRRから出力する音量を相対的に増加させる。ここでは、前側のスピーカFL及びFRから出力する音量を実線で示し、後側のスピーカRL及びRRから出力する音量を破線で示す。このとき、前側の減少量と後側の増加量とは、同じでもよいし異なっていてもよい。
また、音場中心を、車体左側にβyだけ変位させる場合には、左側のスピーカFL及びRLから出力する音量を相対的に増加させ、且つ右側のスピーカFR及びRRから出力する音量を相対的に減少させる。ここでは、左側のスピーカFL及びRLから出力する音量を一点鎖線で示し、右側のスピーカFR及びRRから出力する音量を点線で示す。このとき、左側の増加量と右側の減少量とは、同じでもよいし異なっていてもよい。こうして音声信号を調整する駆動指令を生成して出力する。
上記がブロック図に基づく音響制御処理である。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をフローチャート図に基づいて説明する。
図8は、第1実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。
先ずステップS501では、車速Vを検出する。
続くステップS502では、例えば車速Vの周波数にハイパスフィルタ処理を施す。ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。この処理では、車速Vの定常成分を除去し、変化する車両挙動を抽出できればよい。
続くステップS503では、車速Vの積分演算により、車両挙動における前後方向の変化量Axを算出する。
続くステップS504では、横方向加速度Gyを検出する。
続くステップS505では、横方向加速度Gyの周波数にハイパスフィルタ処理を施す。ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。この処理では、横方向加速度Gyの定常成分を除去し、変化する車両挙動を抽出できればよい。
続くステップS506では、横方向加速度Gyに対する二回の積分演算により、車両挙動における横方向の変化量Ayを算出する。
続くステップS507では、各車輪におけるサスペンションストロークを検出する。
続くステップS508では、各車輪のサスペンションストロークに基づいて、ロール角φx、ピッチ角φy、バウンスSzを算出する。
続くステップS509では、ロール角φx、ピッチ角φy、バウンスSzの周波数にハイパスフィルタ処理を施す。ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。この処理では、ロール角φx、ピッチ角φy、バウンスSzの定常成分を除去し、変化する車両挙動を抽出できればよい。
続くステップS510では、ヨーレートωz(以下γで表す)を検出する。
続くステップS511では、ヨーレートγの周波数にハイパスフィルタ処理を施す。ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。この処理では、ヨーレートγの定常成分を除去し、変化する車両挙動を抽出できればよい。
続くステップS512では、ヨーレートγの積分演算により、車両挙動におけるヨー方向の変化量Aγを算出する。
続くステップS513では、車両挙動の変化量A(Ax、Ay、φx、φy、Sz、Aγ)に応じて音場変化量Cを設定する。
続くステップS514では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、車両挙動の変化とは反対方向にCだけ変化させるために、音声信号を調整する駆動指令を生成する。
続くステップS515では、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22に出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記がフローチャートに基づく音響制御処理である。
《作用》
次に、第1実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、平面視で乗員の周囲を囲むように、複数のスピーカ23を配置しており、これら複数のスピーカ23で、2チャンネル以上の音声をステレオフォニック再生している。そして、車両挙動が変化する際に、車両挙動とは反対方向に、車室内の音場を変化させる。具体的には、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させたり、変位方向に並んだ一方のスピーカで出力している音量と、他方のスピーカで出力している音量との配分を変化させることにより、音場中心を変位させたりする。
すなわち、ヨー方向(Z軸周り)に音場を回転させるときには、車体を上方から見て乗員の周囲を囲むスピーカ、つまり左前、右前、左後、右後に位置するスピーカにより、各チャンネルの音量配分を変化させる。また、ロール方向(X軸方向)に音場を回転させるときには、車体を後方から見て乗員の周囲を囲むスピーカ、つまり左上、右上、左下、右下に位置するスピーカにより、各チャンネルの音量配分を変化させる。また、ピッチ方向(Y軸周り)に音場を回転させるときには、車体を側方から見て乗員の周囲を囲むスピーカ、つまり上前、上後、下前、下後に位置するスピーカにより、各チャンネルの音量配分を変化させる。
また、前後方向(X軸方向)に音場を変位させるときには、車体を上方から見て乗員の前方及び後方に位置するスピーカにより、音量の前後配分を変化させることにより、音場中心を変位させる。また、横方向(Y軸方向)に音場を変化させるときには、車体を上方から見て乗員の左方及び右方に位置するスピーカにより、音量の左右配分を変化させることにより、音場中心を変位させる。また、上下方向(Z軸方向)に音場を変化させるときには、車体を側方から見て乗員の上方及び下方に位置するスピーカにより、音量の上下配分を変化させることにより、音場中心を変位させる。
一般に、木が斜めに生えていると、人は道が斜面であると錯覚する傾向があり、音によっても人は自分の姿勢変化を認識することが知られている。そこで、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させると、車両挙動の抑制を演出することができる。これにより、実際には車体挙動に変化が生じていても、車両挙動が抑制されているような感覚(印象)を乗員に与えることができる。すなわち、乗員の体感する車両挙動を抑制できるので、乗心地を向上させることができる。なお、車室空間の静粛性が高いほど、上記のような音響効果が高いと考えられるため、ハイブリッド車両でのモータ走行時(EVモード)や、電気自動車等に好適である。
図9は、実際の車両挙動に対する乗員の体感挙動について説明したタイムチャートである。
ここでは、車両の加減速挙動が変化する場合について説明する。
車両の加減速挙動は、アクセル操作やブレーキ操作等、運転者の加減速操作に応じて変化する。ここでは、車速Vに対するハイパスフィルタ処理を行うことにより、定常成分を除去し、振動成分を抽出した状態を示す。このときの振動成分を積分し、変位量に換算したものが挙動変化量となる。そして、この挙動変化量の符号(正負)を反転させた音場変化量に応じて、音場を変化させる。このように、車両挙動とは反対方向に、車室内の音場を変化させることにより、実際の車両挙動(点線図示)に対して、乗員の感じる体感挙動(実線図示)を抑制することができる。
図10は、実際の車両挙動に対する乗員の体感挙動について説明した図である。
ここでは、車両のバウンス挙動が変化する場合について説明する。
車両のバウンス挙動は、路面の凹凸や起伏に応じて変化する。実際のバウンス挙動は、路面の凹凸や起伏に応じて上下方向に変化するが、所謂スカイフック制御のように、音場中心を一定の高さに維持する。これにより、実際の車両挙動(実線図示)には、バウンスが生じていても、乗員の感じる体感挙動(点線図示)では、バウンスが抑制されているような感覚(印象)を乗員に与えることができる。
音場変化量Cは、挙動変化量Aに応じて設定され、挙動変化量Aが大きいほど、音場変化量Cが大きく設定される。このように、挙動変化量Aが大きいほど、音場変化量Cを大きく設定することで、車両挙動の抑制を効果的に演出することができる。
また、車両挙動に対するハイパスフィルタ処理により、定常成分を除去することで、振動成分を抽出することにより、車両挙動が変化するときの周波数が、予め定めた周波数よりも高いときに、車両挙動の抑制を演出する。したがって、車両挙動の変化がゆっくりであれば、音場を変化させない。このように、車両挙動の変化が比較的早く、振動として入力されるときだけ、車両挙動の抑制を効果的に演出することができる。
また、車両挙動の変化が、予め定めた変化量よりも少なかったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場変化量Cを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされ、運転者に違和感を与えるといった事態を抑制することができる。
以上、スピーカ23LFL〜23LRR、23UFL〜23URRが「複数のスピーカ」に対応し、コントローラ21で実行する音響制御処理が「音場制御部」に対応する。6軸モーションセンサ14が「上下挙動検出部」に対応する。
《効果》
次に、第1実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の車両用音響制御装置では、乗員の周囲に配置された複数のスピーカ23と、複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御するコントローラ21と、を備える。コントローラ21は、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させる。
このように、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させることにより、車両挙動の抑制を演出することができる。すなわち、実際には車体挙動に変化が生じていても、車両挙動が抑制されているような感覚(印象)を乗員に与えることができ、乗心地を向上させることができる。
(2)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、音場の回転及び変位の少なくとも一方により、音場を変化させる。
このように、音場を回転させたり変位させたりすることで、車室内の音場を任意に制御することができる。
(3)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、挙動変化量Aが大きいほど、音場変化量Cを大きくする。
このように、挙動変化量Aが大きいほど、音場変化量Cを大きくすることにより、車両挙動の抑制を効果的に演出することができる。
(4)本実施形態の車両用音響制御装置では、車両挙動が変化するときの周波数が、予め定めた周波数よりも高いときに、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させる。
このように、車両挙動の変化が比較的早く、振動として入力されるときだけ、車両挙動の抑制を効果的に演出することができる。
(5)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、車両挙動が上下方向に変化するときに、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させる。
このように、車両がバウンスするときに、バウンスとは反対方向に車室内の音場を変化させることで、バウンスが生じていても、乗員の感じる体感挙動では、バウンスが抑制されているような感覚を乗員に与えることができる。
(6)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、2チャンネル以上の音声を再生するステレオフォニック再生が可能な音声信号によって複数のスピーカ23を駆動し、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させる。
このように、各チャンネルの音量配分を変化させて音場を回転させることにより、音場の制御を容易に行うことができる。
(7)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、車両挙動の変化方向に並んだ一方のスピーカから出力する音量と、他方のスピーカから出力するスピーカから出力する音量との配分を変化させることにより、音場を変位させる。
このように、音量の配分を変化させて音場を変位させることにより、音場の制御を容易に行うことができる。
(8)本実施形態の車両用音響制御方法では、乗員の周囲に配置した複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御する。そして、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させることにより、車両挙動の抑制を演出する。
このように、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させることにより、車両挙動の抑制を演出することができる。すなわち、実際には車体挙動に変化が生じていても、車両挙動が抑制されているような感覚(印象)を乗員に与えることができ、乗心地を向上させることができる。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願P2013−091683(2013年4月24日出願)の全内容は、ここに引用例として包含される。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
11 音響機器
12 操舵角センサ
13 車輪速センサ
14 6軸モーションセンサ
15 アクセルセンサ
16 マスタバック圧力センサ
17 ナビゲーションシステム
18 サスペンションストロークセンサ
21 コントローラ
22 アンプ
23 スピーカ
71 音場変化量設定部
72 音声信号調整指令部

Claims (7)

  1. 乗員の周囲に配置された複数のスピーカと、
    前記複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御する音場制御部と、
    車両挙動の上下方向の変化量を検出する上下挙動検出部と、を備え、
    前記音場制御部は、
    前記上下挙動検出部にて検出した車両挙動の上下方向の変化量に応じて、前記車両挙動の変化方向と反対方向に、車室内の音場を変化させることを特徴とする車両用音響制御装置。
  2. 前記音場制御部は、
    音場の回転及び変位の少なくとも一方により、音場を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両用音響制御装置。
  3. 前記音場制御部は、
    車両挙動の変化量が大きいほど、音場の変化量を大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用音響制御装置。
  4. 前記音場制御部は、
    車両挙動が変化するときの周波数が、予め定めた周波数よりも高いときに、車両挙動の変化とは反対方向に、車室内の音場を変化させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  5. 前記音場制御部は、
    2チャンネル以上の音声を再生するステレオフォニック再生が可能な音声信号によって前記複数のスピーカを駆動し、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を変化させることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  6. 前記音場制御部は、
    車両挙動の変化方向に並んだ一方の前記スピーカから出力する音量と、他方の前記スピーカから出力する音量との配分を変化させることにより、音場を変化させることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  7. 乗員の周囲に配置した複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御するものであり、
    車両挙動の上下方向の変化量を検出し、車両挙動の上下方向の変化量に応じて、車両挙動の変化方向と反対方向に、車室内の音場を変化させることを特徴とする車両用音響制御方法。
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