JPWO2014133088A1 - 脂肪酸β−酸化経路改変株による共重合体ポリヒドロキシアルカン酸の製造法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法であって、該方法は、
(a)ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を用意し;
(b)上記株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させることによって、該遺伝子の発現を抑制し;及び
(c)炭素源として植物油を含有する培地で、該株を増殖させる
ことを含み、ここで、3−ヒドロキシヘキサン酸の分率が1〜20モル%であり、及び株内蓄積率が50〜90重量%であるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法。
[2]前記組換えクプリアヴィダス・ネカトール株が、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、又はMF03−J1株であることを特徴とする、上記[1]に記載の方法。
[3]前記2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、fadB1(配列番号1)、fadB2(配列番号2)、及びfadB’(配列番号3)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、上記[1]及び[2]に記載の方法。
[4]前記遺伝子発現の抑制が遺伝子の破壊であることを特徴とする、上記[1]〜[3]に記載の方法。
[5]3−ヒドロキシヘキサン酸分率を向上させたポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を生成する組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を作製する方法であって、該方法は、
(a)ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を用意し;
(b)上記株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させるためのベクターを構築し;及び
(c)上記(a)の株に上記(b)で構築したベクターを導入し、相同性組換えによって上記遺伝子を破壊又は改変し、該遺伝子の機能を抑制する
ことを含む方法。
[6]前記組換えクプリアヴィダス・ネカトール株が、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、又はMF03−J1株であることを特徴とする、上記[5]に記載の方法。
[7]前記2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、fadB1(配列番号1)、fadB2(配列番号2)、及びfadB’(配列番号3)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、上記[5]及び[6]に記載の方法。
[8]前記遺伝子発現の抑制が遺伝子の破壊であることを特徴とする、上記[5]〜[7]に記載の方法。
前述の通り、本発明は、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法であって、該方法は、
(a)ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株を用意し;
(b)上記株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させることによって、該遺伝子の発現を抑制し;及び
(c)炭素源として植物油を含有する培地で、該株を増殖させる
ことを含み、ここで、3−ヒドロキシヘキサン酸の分率が1〜20モル%であり、及び株内蓄積率が50〜90重量%であるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法を提供する。
本発明の製造方法に使用される微生物としては、P(3HB−co−3HHx)生産能が付与された組換えクプリアヴィダス・ネカトール株が好ましい。ここで、「P(3HB−co−3HHx)生産能が付与された組換えクプリアヴィダス・ネカトール株」とは、P(3HB−co−3HHx)を生合成させることを目的として、クプリアヴィダス・ネカトール株が本来有しているPHAシンターゼを変異あるいは遺伝子破壊などにより欠損した株に、炭素数6の3HHx−CoAを基質とすることができる広基質特異性PHAシンターゼ(例えばアエロモナス・キャビエ株由来PHAシンターゼ又はその変異酵素の遺伝子)を導入された株、あるいは、クプリアヴィダス・ネカトール株が本来有しているPHAシンターゼ遺伝子が広基質特異性PHAシンターゼやその変異酵素の遺伝子に染色体上で置換された株を意味し、該株は、広基質特異性PHAシンターゼの作用によってクプリアヴィダス・ネカトール野生株が生合成できないP(3HB−co−3HHx)を合成する能力を有することを特徴とする。上記のP(3HB−co−3HHx)生産能が付与された組換えクプリアヴィダス・ネカトール株には、上記特徴を有する株であれば特に限定されないが、例えば、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、及びMF03−J1株が挙げられる。ここで、「NSDG株」とは、水素細菌クプリアヴィダス・ネカトールの一種であるH16株の染色体にPHAシンターゼ変異酵素の遺伝子であるphaCNSDGが導入された形質転換体をいう(詳細には、特許文献4を参照されたい)。「NSDGΔA株」とは、前記のNSDG株において、β−ケトチオラーゼ遺伝子であるphaACnを欠失させた形質転換体をいう。一方、「MF01株」とは、前記NSDG株のphaACnを広基質特異性β−ケトチオラーゼ遺伝子bktBCnに置換した形質転換体をいう。「MF03株」とは、前記NSDG株のphaACnをアエロモナス・キャビエ由来の(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼ(R−ヒドラターゼ)遺伝子(phaJAc)に置換した形質転換体をいう。また、「MF03−J1株」とは、前記NSDG株のphaA(β−ケトチオラーゼ遺伝子)をクプリアヴィダス・ネカトール由来のR−ヒドラターゼ遺伝子(phaJ1Cn)に置換した形質転換体をいう(詳細には、上記特許文献4を参照されたい)。上記5種のH16変異株は、クプリアヴィダス・ネカトールのPHAシンターゼ酵素をコードする遺伝子の配列情報を基にして、一般的な遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。
本発明の製造方法に使用される「2−エノイル−CoAヒドラターゼ」とは、脂肪酸β−酸化経路中の中間体である2−エノイル−CoAから(S)−3−ヒドロキシアシル−CoAへの水和反応を触媒する酵素を指す。一方、本発明の製造方法に使用される「3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼ」とは、脂肪酸β−酸化経路中の中間体である上記の(S)−3−ヒドロキシアシル−CoAから3−ケトアシル−CoAへの脱水素反応を触媒する酵素を指す。これらの酵素をコードする遺伝子は、クプリアヴィダス・ネカトール株において複数存在することが知られている。また、本発明によれば、P(3HB−co−3HHx)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株における脂肪酸β−酸化経路中の2−エノイル−CoAから(S)−3−ヒドロキシアシル−CoAの生成(2−エノイル−CoAヒドラターゼによる)、続く3−ケトアシル−CoAの生成(3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼによる)経路を遮断して、(R)−ヒドラターゼ(PhaJ)による該2−エノイル−CoAから(R)−3HHx−CoA(P(3HB−co−3HHx)のモノマー)の生成を促進することができる(図1参照)。よって、本発明によれば、P(3HB−co−3HHx)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株において、該株の染色体上の上記2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は上記3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊(以下、単に「破壊等」と称する場合がある)させることによって、該遺伝子の発現を抑制することにより、P(3HB−co−3HHx)生産能をさらに高めた組換えクプリアヴィダス・ネカトール株を作製することができる。したがって、上記の2つの遺伝子のうちのいずれか1つの遺伝子を破壊等することによって、所望のP(3HB−co−3HHx)生産能を高めた株が得られれば、いずれの遺伝子を破壊等の対象としてもよい。本発明によれば、上記2つの遺伝子の両方を完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させることによって、より好ましくは破壊させることによって目的とする株を作製することができる。なお、本発明の製造方法に使用される上記酵素をコードする核酸(遺伝子)は、一本鎖又は二本鎖型DNA、及びそのRNA相補体も含む。DNAには、例えば、天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせが含まれる。本発明で使用される核酸としてはDNAが好ましい。周知の通り、コドンには縮重があり、1つのアミノ酸をコードする塩基配列が複数存在するアミノ酸もあるが、上記酵素をコードする核酸の塩基配列であれば、いずれの塩基配列を有する核酸も本発明の範囲に含まれる。
本発明の製造方法に使用される組換え微生物は、上記した通り、P(3HB−co−3HHx)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させることによって得られる。ここで、本明細書において遺伝子の「欠失」とは、上記酵素をコードする遺伝子の塩基配列から1以上の塩基を除くことを意味し、これにより該酵素の活性の一部、好ましくは全部が失われることを意味する。なお、本発明における製造方法においては、上記酵素をコードする遺伝子の塩基配列を全て欠失されてもよい。また、本明細書において遺伝子の「改変」とは、上記酵素をコードする遺伝子の塩基配列において、塩基の欠損、置換又は不可を生じさせ、該酵素の活性を抑制するか、又は該酵素を不活性化することを意味する。一方、本明細書において遺伝子の「破壊」とは、上記酵素をコードする遺伝子の塩基配列内に、例えば、外来遺伝子を挿入させることによって該酵素をコードする遺伝子の機能を失わせることを意味する。ここで、本明細書において、対象とする酵素を機能させなくするという目的において使用する場合、「欠失」、「改変」及び「破壊」という用語は、厳密に区別することなく、同義的に用いられてもよい。
ポリエステル合成は、上述したP(3HB−co−3HHx)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株(例えば、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、又はMF03−J1株)を植物油を含む所定の培地で培養し、培養細胞(例えば、菌体)内又は培養物(例えば、培地)中に共重合ポリエステルを生成及び蓄積させ、培養細胞又は培養物から目的とする共重合ポリエステルを採取することにより行われる。なお、本発明の製造方法に使用される形質転換体の培養法は、通常、宿主細胞の培養に使用される方法に従って行われる。
本発明において、共重合ポリエステルは、下記の通り精製することができる:培地から遠心分離によって形質転換体を回収し、蒸留水で洗浄後、乾燥又は凍結乾燥させる。その後、クロロホルムに乾燥した形質転換体を懸濁させ、室温で所定時間撹拌し、共重合ポリエステルを抽出する。抽出の段階で、必要であれば加熱してもよい。濾過によって残渣を除去し、上清にメタノールを加えて共重合ポリエステルを沈殿させ、沈殿物を濾過又は遠心分離によって、上清を除去し、乾燥させて精製した共重合ポリエステルを得ることができる。
以下の実施例では、遺伝子組換え用の宿主として、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株であるNSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、及びMF03−J1株を用いた。「NSDG株」は、水素細菌クプリアヴィダス・ネカトールの一種であるH16株の染色体にPHAシンターゼ変異酵素の遺伝子であるphaCNSDGが導入された形質転換体であり、「NSDGΔA株」は、前記のNSDG株において、β−ケトチオラーゼ遺伝子であるphaACnを欠失させた形質転換体である。一方、「MF01株」は、前記NSDG株のphaACnを広基質特異性β−ケトチオラーゼ遺伝子bktBCnに置換した形質転換体であり、「MF03株」は、前記NSDG株のphaACnをアロエモナス・キャビエ由来のR−ヒドラターゼ遺伝子(phaJAc)に置換した形質転換体であり、及び「MF03−J1株」は、前記NSDG株のphaAをクプリアヴィダス・ネカトール由来のR−ヒドラターゼ遺伝子(phaJ1Cn)に置換した形質転換体である。いずれの株についても、特許文献4を参照し、一般的な遺伝子工学的手法を用いて作製した。
2−エノイル−CoAの水和反応及び(S)−3−ヒドロキシアシル−CoAの脱水素反応を触媒する二機能酵素であるFadBをコードする遺伝子を破壊の対象とした。FadBの遺伝子は、クプリアヴィダス・ネカトール株の染色体において、H16 A1526(染色体1(NC 008313)の485753−488176:配列番号1)(本明細書中、「fadB1」とも称する)、H16 B0724(染色体2(NC 008314)の817223−819301:配列番号2)(本明細書中、「fadB2」とも称する)、及びH16 A0461(染色体1(NC 008313)の485753−488176:配列番号3)(本明細書中、「fadB’」とも称する)として同定されている(図2参照)。
クプリアヴィダス・ネカトールH16株のゲノムDNA(NC 008313)を鋳型に、下記の配列1及び配列2のオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCR法によって、FadBをコードする遺伝子fadB1(配列番号1)とその上下流約1kbpを含む領域を増幅した。PCRはKODプラス(トーヨーボー社製)を用い、98℃で20秒、65℃で15秒、68℃で3分の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。増幅した断片はDNA精製キット(プロメガ社製)にて精製した。
配列1:CCCAAGCTTTCAGCGCGAACCAGTACTCGGC(配列番号4)(下線はHindIII制限酵素サイト)
配列2:TGCTCTAGAGACGAGCAGAAGCGGTTGACG(配列番号5)(下線はXbaI制限酵素サイト)
配列3:GCTGGTTCCTTTGGTGTCAAAAGTTGTCTCG(配列番号6)
配列4:TACCGCCACATGGTTCAGCCTGGAGCTGAGAT(配列番号7)
クプリアヴィダス・ネカトールH16株のゲノムDNA(NC 008314)を鋳型に、下記の配列5及び配列6のオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCR法によって、FadBをコードする遺伝子fadB2(配列番号2)とその上下流約1kbpを含む領域を増幅した。PCRはKODプラスを用い、98℃で20秒、65℃で15秒、68℃で3分の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。増幅した断片はDNA精製キットにて精製した。
配列5:CGCGGATCCGTGCAGAACGTCAGCTTCAACT(配列番号8)(下線はBamHI制限酵素サイト)
配列6:CCGGAATTCCCAGAAGCGCTCGCCGTTCGCGCCCAACGT(配列番号9)(下線はBamHI制限酵素サイト)
配列7:GGATCGGTTCTCCTGGATTGAATCGGTGTG(配列番号10)
配列8:GGCAGCAAGGGCTGCCTCGGCCGGCCGGTGCCAT(配列番号11)
クプリアヴィダス・ネカトールH16株のゲノムDNA(NC 008313)を鋳型に、下記の配列9及び配列10のオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCR法によって、FadBをコードする遺伝子fadB’(配列番号3)とその上下流約1kbpを含む領域を増幅した。PCRはKODプラスを用い、98℃で20秒、65℃で15秒、68℃で3分の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。増幅した断片はDNA精製キットにて精製した。
配列9:CCCAAGCTTGCAGATCGACCGCGAGTTGTCG(配列番号12)(下線はHindIII制限酵素サイト)
配列10:CTAGTCTAGACAAAGGCCTCGTTCAGTTCGATC(配列番号13)(下線はXbaI制限酵素サイト)
配列11:GCTGGTTCCTTTGGTGTCAAAAGTTGTCTCG(配列番号14)
配列12:TACCGCCACATGGTTCAGCCTGGAGCTGAGAT(配列番号15)
実施例2で得られたそれぞれのベクターを用いて、実施例1に記載の組換えクプリアヴィダス・ネカトール株を接合伝達により形質転換した。まず、塩化カルシウム法によって、各ベクターを大腸菌S17−1株に導入した。次に、この組換え大腸菌をLB培地(1%トリプトン、1%塩化ナトリウム、0.5%イーストエキス、pH7.2)3.0ml中で37℃終夜培養した。これと並行して、組換えクプリアヴィダス・ネカトール株をNR培地(1%魚肉エキス、1%ポリペプトン、0.2%イーストエキス)3.0ml中で30℃終夜培養した。その後、大腸菌の培養液0.2mlに対して、組換えクプリアヴィダス・ネカトール株の培養液0.1mlを混合し、30℃で6時間培養した。この菌体混合液を0.2mg/mlカナマイシンを添加したSimmons Citrate寒天培地(ディフコ社製)に塗布し、30℃で3日間培養した。組換え大腸菌のベクターが、クプリアヴィダス・ネカトールに伝達され相同性組換えにより染色体上に取り込まれた該菌体はカナマイシン耐性を示し、一方、組換え大腸菌はSimmons Citrate寒天培地では増殖不能であるため、上記培地上で増殖したコロニーは組換え大腸菌からpK18msΔfadB1が染色体に取り込まれたクプリアヴィダス・ネカトール形質転換体(ポップイン株)である。さらに、ポップイン株をNR培地で30℃終夜培養した後、10%スクロースを添加したNR培地に塗布し、30℃で3日間培養した。pK18mobsacB上のsacBにコードされるレヴァンスクラーゼはスクロースを基質にして細胞内に毒性多糖を蓄積する。このため、10%スクロース添加培地においてはプラスミド領域が脱離した株(ポップアウト株)のみが生育することができる。これらのコロニーの中から染色体上からfadB1、fadB2、又はfadB’が欠失したクローンをPCR法によって選抜し、これらをそれぞれクプリアヴィダス・ネカトール「NSDG−ΔfadB1株」、「NSDG−ΔfadB2株」、及び「NSDG−ΔfadB’株」と命名した。また、上記と同様の方法を用いて、fadB1及びfadB2、並びにfadB1及びfadB’を二重破壊した株を作製し、それぞれ「NSDG−ΔΔfadB1fadB2株」及び「NSDG−ΔΔfadB1fadB’株」と命名した。
NR培地(前述)で前培養した組換えクプリアヴィダス・ネカトール株を100mlのMB培地(0.9%リン酸水素二ナトリウム12水和物、0.15%リン酸二水素カリウム、0.05%塩化アンモニウム、1%微量金属溶液)に植菌し、坂口フラスコ中、30℃で72時間振とう培養した。炭素源として1%大豆油を用いた。破壊ベクターを保持する組換え株においては、培地中に0.1mg/mlカナマイシンを添加した。培養終了後に遠心分離によって菌体を回収し、付着した油分を除くために70%エタノールで洗浄したのち、蒸留水で洗浄した。得られた菌体は凍結乾燥し、乾燥菌体重量(DCM)を測定した。
Claims (8)
- ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法であって、該方法は、
(a)ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を用意し;
(b)上記株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させることによって、該遺伝子の発現を抑制し;及び
(c)炭素源として植物油を含有する培地で、該株を増殖させる
ことを含み、ここで、3−ヒドロキシヘキサン酸の分率が1〜20モル%であり、及び株内蓄積率が50〜90重量%であるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を製造する方法。 - 前記組換えクプリアヴィダス・ネカトール株が、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、又はMF03−J1株であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、fadB1(配列番号1)、fadB2(配列番号2)、及びfadB’(配列番号3)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記遺伝子発現の抑制が遺伝子の破壊であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 3−ヒドロキシヘキサン酸分率を向上させたポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)を生成する組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を作製する方法であって、該方法は、
(a)ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)生産能を付与した組換えクプリアヴィダス・ネカトール(Cupriavidus necator)株を用意し;
(b)上記株の染色体上の2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子の少なくとも1つ、又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つを完全に若しくは部分的に欠失させ、又は改変若しくは破壊させるためのベクターを構築し;及び
(c)上記(a)の株に上記(b)で構築したベクターを導入し、相同性組換えによって上記遺伝子を破壊又は改変し、該遺伝子の機能を抑制する
ことを含む方法。 - 前記組換えクプリアヴィダス・ネカトール株が、NSDG株、NSDGΔA株、MF01株、MF03株、又はMF03−J1株であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 前記2−エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子又は3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、fadB1(配列番号1)、fadB2(配列番号2)、及びfadB’(配列番号3)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
- 前記遺伝子発現の抑制が遺伝子の破壊であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
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